(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】タワー様構造物の2つのチューブセグメント間の連結部を作製する方法
(51)【国際特許分類】
E04H 12/00 20060101AFI20240326BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20240326BHJP
E04H 12/12 20060101ALI20240326BHJP
E04H 12/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E04H12/00 A
F03D13/25
E04H12/12
E04H12/08
E04H12/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562490
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022057415
(87)【国際公開番号】W WO2022218655
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】102021109035.0
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523383587
【氏名又は名称】エル・ヴェー・エー オフショア ウィンド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】RWE Offshore Wind GmbH
【住所又は居所原語表記】RWE Platz 4,45141 Essen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル バルトミン
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB35
3H178BB77
3H178CC23
3H178DD67X
(57)【要約】
タワー様構造物、特に風力発電所の2つのチューブセグメント間の連結部を作製する方法であって、第1のチューブセグメントは、端面において第2のチューブセグメント中に押し込まれ、第1のチューブセグメントと第2のチューブセグメントとの間に環状の空間が形成され、環状の空間には、チューブセグメントの長手方向において互いから離間配置された少なくとも部分的に周方向の2つの接合要素が配置されており、接合要素は、チューブセグメントの一方の外壁および/またはチューブセグメントの一方の内壁に配置されており、チューブセグメントは、環状の空間の接合要素を介して互いに機械的に結合されており、チューブセグメント間の機械的結合の機械的パラメーターは、チューブセグメントの少なくとも一方にある少なくとも1つの測定センサーによって検出される、方法であって、構造物の初期設置および試運転の後に、検出された機械的パラメーターに応じて、環状の隙間が打設材料で充填されることを特徴とする、方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワー様構造物、特に風力タービンの、2つのチューブセグメント間の連結部を作製する方法であって、
- 第1のチューブセグメントは、第2のチューブセグメントの端面中に押し込まれるか、または
- 第1のチューブセグメントは、前記第2のチューブセグメントの前記端面を覆うように嵌められ、
- 前記第1のチューブセグメントと前記第2のチューブセグメントとの間に環状の空間が形成され、
- 前記環状の空間には、前記チューブセグメントの長手方向において互いから離間配置された2つの接合要素が配置されており、
- 前記接合要素は、前記チューブセグメントの一方の外壁および/または前記チューブセグメントの一方の内壁に配置されており、
- 前記チューブセグメントは、前記環状の空間の前記接合要素を介して互いに機械的に結合されており、
- 前記チューブセグメント間の前記機械的結合の機械的パラメーターは、前記チューブセグメントの少なくとも一方にある少なくとも1つの測定センサーによって検出される、
方法であって、
- 前記構造物の初期設置および試運転の後に、前記検出された機械的パラメーターに応じて、前記環状の隙間が打設材料で充填されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記チューブセグメントは、ダブルスリップジョイント方式の前記接合要素によって互いに機械的に結合されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チューブセグメントにおいて互いに対応する前記接合要素は、前記互いに対応する接合要素が前記結合された状態で互いに接触するように配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記接合要素の少なくとも1つは、前記チューブセグメントの端面方向においてテーパー状であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
- 前記チューブセグメントの膨張、
- 前記チューブセグメントの圧縮、
- 前記チューブセグメントの振動、
- 前記チューブセグメントの加速度、
- 前記チューブセグメントの互いに対する相対運動、
- 前記構造物の固有振動数、
- 前記構造物の前記固有振動数の変化、
- 応答挙動、特に前記構造物の前記周波数の範囲における応答挙動、
- 前記チューブセグメントの応力/ひずみ値
- の少なくとも1つの機械的パラメーター
を特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出された機械的パラメーターは設定点値と比較され、偏差が限界値を上回る場合には、前記環状の隙間は打設材料で充填されることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記検出された機械的パラメーターの時間勾配は設定点値と比較され、偏差が限界値を上回る場合には、前記環状の隙間は打設材料で充填されることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記打設材料の強度は、前記構造物の所与の残りの耐用年数に応じて決定され、残りの耐用年数が短いほど低くなることを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
- 鋼製チューブセグメントもしくは鉄筋コンクリートが、チューブセグメントとして使用され、かつ/または
- 筒状もしくは円錐状のチューブセグメントが、少なくとも前記環状の隙間の領域においてチューブセグメントとして使用され、かつ/または
- 洋上構造物のチューブセグメントが、チューブセグメントとして使用され、かつ/または
- 風力タービン、具体的には洋上風力タービンの、タワーセグメントが、チューブセグメントとして使用される
ことを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記チューブセグメントは、前記チューブセグメント間に前記環状の隙間を形成するように、互いに同心になるように位置決めされることを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記外側チューブセグメントおよび/または内側チューブセグメントは、前記環状の隙間の領域に少なくとも1つのスラストリブを有し、特に、前記少なくとも1つのスラストリブは、前記チューブセグメントに少なくとも実質的に周方向に配置されており、特に、前記少なくとも1つのスラストリブは、前記チューブセグメントに少なくとも実質的に環状に配置されていることを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記打設材料として打設用モルタルおよび/またはグラウトが使用されること、具体的には、硬化中に膨張するグラウト、いわゆる膨張性グラウトが使用されること、ならびに/または、アルカリシリカ反応性骨材、ベントナイト混合剤、カルシウムスルホアルミネートセメント、および/もしくはアルミネートを含むグラウトが使用されることを特徴とする、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
立方体圧縮強さが60MPa超、好ましくは90MPa超、特に90MPa超の前記打設用モルタルおよび/またはグラウトが打設材料として使用されることを特徴とする、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記構造物は洋上構造物であること、および前記チューブセグメント間の前記機械的結合は、水面の下方に配置されることを特徴とする、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記環状の隙間における互いに対する前記長手方向の前記2つの接合面間の距離は、前記内側チューブセグメントの直径の少なくとも0.5倍、好ましくは前記内側チューブセグメントの前記直径の少なくとも1倍、特に前記内側チューブセグメントの前記直径の少なくとも1.5倍、好ましくは前記内側チューブセグメントの前記直径の3倍以下になるようにされていることを特徴とする、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記環状の隙間の外径とその径方向の広がりとの比は、少なくとも20になるようにされていることを特徴とする、請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記打設材料は、前記内側チューブセグメントの開口部を介して前記環状の隙間に取り入れられること、または前記打設材料は、前記接合要素の少なくとも1つにある開口部を介して前記環状の隙間に取り入れられることを特徴とする、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、タワー様構造物の2つのチューブセグメント間の連結部を作製する方法に関する。具体的には、本方法は、洋上構造物、風力タービン、または洋上風力タービンの2つのチューブセグメント間の連結部に関する。
【背景技術】
【0002】
タワー様構造物、具体的には洋上構造物、好ましくは洋上風力タービンは、通常、地盤に、特に海底に据え付けられている。このような基礎は、モノパイル、トリパイル、またはパイルとつながれたジャケット、または適切なパイルドライバーを用いて海底に押し込まれた、チューブ、特に鋼製チューブである、トリポッドを用いて作られる。海底に押し込まれたチューブセグメントの上部では、それらのいわゆる基礎パイルが移行部片によって建物構造物の残りの部分に接続される。移行部片は、基礎パイルに機械的に接続される。移行部片は(この文脈では)、内部の有無にかかわらずパイルとタワーとの間のあらゆるチューブ様の要素を指す。このような連結部は、フランジ連結、いわゆる、打設材料を用いたグラウト連結、または互いに摺動して入り込む2つのチューブセグメントの摺動連結、いわゆるスリップジョイントとすることができる。
【0003】
グラウトジョイントでは、互いに摺動して入り込むチューブセグメント間の環状の空間が、設置中に、打設材料、具体的にはセメント系打設材料で充填される。打設材料は硬化し、チューブセグメント間に圧力形状嵌めが形成される。グラウトジョイントは通常、予期される最小の耐用年数が15年から25年である。
【0004】
グラウトジョイントのほかに、別のよく知られたジョイントにスリップジョイントがある。その場合、チューブセグメントは、互いに摺動して入り込み、グラウトジョイントと異なり、挿入されたときは互いに直接的に接触している。そのために、上側タワーセグメントは、下側タワーセグメントを覆うように嵌めることができるか、または下側タワーセグメントの中に挿入することができる。従来のスリップジョイントでは、上側チューブセグメントは、その外壁が下端面に向かってテーパー状であり、それを用いて下側タワーセグメント中に挿入される。下側タワーセグメントは、その内壁が上端面に向かって広がっており、その中に上側チューブセグメントが挿入される。それらのテーパーは、互いに対応しかつ相補形とすることができ、具体的には円錐状である。上側セグメントが下側セグメント上に摺動し、挿入されない場合、テーパーは逆になる。
【0005】
比較的新しい接合技術に、いわゆるダブルスリップジョイントがある。そこでは、互いに挿入されて入り込む2つのチューブセグメントは、互いに噛み合う周囲面全体にわたって互いに直接的に接触することはない。そうではなく、各接合要素が、チューブセグメントの長手方向に互いからある距離の位置に設けられ、それらの要素は、チューブ要素の長手方向軸に垂直な面に延び、チューブセグメントの内壁および/または外壁で周方向に少なくとも部分的に、好ましくは全体に配置されている。接合要素は、互いに対応しかつ相補形の面を有し、それらの面は、接合された状態では互いに接触している。2つのチューブセグメントの接合面は互いに対向する。接合要素は、それぞれの正面に向かって円錐状になるようにテーパー状にすることができ、そこにチューブセグメントが互いに接合される。ダブルスリップジョイントでは、十分に高い寸法正確性を有する必要があるのは接合要素およびその接合面だけであり、チューブセグメント自体はそれらの正面の領域でより低い寸法正確性要件しか有する必要がないため、全面スリップジョイントよりもずっと廉価である。
【0006】
連結部、特に洋上構造物における連結部は、少なくとも10年間、好ましくは10年超、特に20年、またはそれよりも長く確実に安定していなければならないため、現場に導入された新しい技術が継続的な荷重に耐えられないというリスクがある。そのことは、多数が既に導入され、改修される必要がある場合に、問題となる。洋上構造物の場合は、これはほぼ不可能であるか、または新たな設置と同等の高いコストを必要とする。これは明らかに阻止しなければならない。したがって、現在では、数年にわたる試験をせずに多数のダブルスリップジョイントを設置することについて懸念がある。
【0007】
したがって、本主題は、破損のリスクを最小限に抑えてダブルスリップジョイントの使用を可能にするプロセスを提供するという目的に基づいていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
その目的は請求項1に記載の方法によって達成される。
【0009】
本プロセスにおいて、タワー様構造物の2つのチューブセグメントは互いに挿入される。チューブセグメントは、鋼製および/または鉄筋コンクリート製とすることができる。材料の任意の組み合わせが考えられる。
【0010】
下側チューブセグメントは上側正面を有し、上側チューブセグメントは下側正面を有する。上側および下側とはチューブセグメントが設置された状況を指す。好ましくは、下側チューブセグメントは、その設置状況において、地盤に、好ましくは海底に据え付けられている。チューブセグメントは、それらの下側および上側の正面で互いに摺動して入り込む。
【0011】
接合要素は、挿入された状態で互いに対向するチューブセグメントの側面に配置することができる。互いに対応する接合要素が両方のチューブセグメントに設けられることが可能であるか、または接合要素が一方のチューブセグメントに形成されかつ他方のチューブセグメントの外面がその接合要素に対応する相補形になるように形成されることが可能である。このような対応する側面は、広い意味では接合要素と理解することもできる。
【0012】
接合要素は接合面を有し、その接合面において、設置された状態のチューブセグメント間またはそれぞれの接合要素間に直接的な接触が形成される。接合要素は、具体的には、それぞれのチューブセグメントの内側面または外側面の少なくとも部分的に周方向の突出部である。
【0013】
上側チューブセグメントが下側チューブセグメント中に挿入される場合は、接合要素が、下側チューブセグメントの内面および上側チューブセグメントの外面に配置される。上側チューブセグメントが下側チューブセグメントを覆うように嵌められる場合は、接合要素が、下側チューブセグメントの外面および上側チューブセグメントの内面に配置される。
【0014】
互いに対応する接合要素はそれぞれ、チューブセグメントの外面の正面からチューブセグメントの長手方向にある距離の位置に配置される。
【0015】
ダブルスリップジョイントの場合は、少なくとも2つの接合要素がそれぞれチューブセグメントの側面に配置される。少なくとも2つの接合要素は、それぞれのチューブセグメントの長手方向軸の方向において互いからある距離の位置に配置される。
【0016】
受け側チューブセグメントの正面に近い方の接合要素の内寸幅、すなわち最小の自由内径は、概して、受け側チューブセグメントの正面から遠い方の接合要素の内寸幅よりも大きい。そのことによって、挿入されるチューブセグメントはその接合要素がその正面に近い方に位置した状態で、受け側チューブセグメント中に入り、正面に近い方に位置する接合要素を越えて正面から遠い方に位置する接合要素まで挿入できることが保証される。
【0017】
互いに挿入されるチューブセグメントは、接合要素または接合要素の割り当てられた接合面を介して機械的に結合される。チューブセグメントは、具体的には円錐状の接合面によって、互いに対して位置合わせされる。
【0018】
タワー様構造物の2つのチューブセグメントの上述の接合が、いわゆるダブルスリップジョイントになり、そこでは、長手方向において互いから離間配置された少なくとも2つの好ましくはリング形状の接合要素が、それぞれのチューブセグメントの割り当てられた側面上で互いに直接的に接触状態にある。それぞれの接合要素の互いに割り当てられた接合面は、設置された状態では互いに対して着座している。接合面は、チューブセグメントを互いに位置合わせし、それらを機械的に結合する。このような連結は既に知られている。
【0019】
接合要素は、チューブセグメントの径方向に延びる。外側面にある接合要素は、径方向外向きに延び、内側面にある接合要素は径方向内向きに延びる。2つのチューブセグメントの接合要素の接合面が互いに当接するときは、接合要素から離れたチューブセグメント間に、具体的には接合要素間で長手方向に、環状の隙間が形成される。このような環状の隙間は、以下で説明するように、後から充填するために使用される。
【0020】
ここでこのようなダブルスリップジョイントがタワー様構造物に対して広く使用されることになる場合は、それが必要な耐用年数にわたって恒久的に安定していることが必須である。これは、まだ十分に試験されていない可能性があり、したがって、ダブルスリップジョイントが現場で機械的な荷重に耐え得るのかという懸念がある。そのことは、洋上構造物、特に風力タービンに関して特に当てはまる。
【0021】
風力タービンは、風力タービン、低圧変電所(独:Substations,英:substation)、高圧変電所(独:Trafostationen,英:transformer station)などとすることができる。タワー様構造物は、ドリリングプラットフォーム(オイル、ガス)、太陽光発電システムのレセプタクルなどとすることもできる。
【0022】
チューブセグメント間の機械的な結合の少なくとも1つの機械的パラメーターが、少なくとも1つのチューブセグメント上の少なくとも1つの測定センサーによって検出されることが提案される。1つのパラメーターを1つの測定センサーによって検出できるか、または複数のパラメーターを1つもしくは複数の測定センサーによって検出できる。測定センサーは測定値センサーとすることができる。具体的には、測定センサーは、ひずみゲージまたは加速度計でよい。関連する他の測定センサーは、径方向の圧力および張力を検出する圧力セル、接合面の材料の起こり得るクラックについての情報を提供する電磁誘導型測定センサーまたは音響測定センサーとすることができる。
【0023】
これらの測定センサーは、好ましくは、チューブセグメントに直接的におよび/または接合要素に直接的に配置される。測定センサーは、以下で説明するように、機械的パラメーターを検出するために使用できる。
【0024】
タワー様構造物は、特定の機械的荷重に対して設計および寸法設定されている。具体的には、一定の機械的パラメーターに関して限界値が定められており、その限界値を下回るときは構造物が安定していると考えられる。このような限界値を超える場合またはその限界値に到達しない場合は、構造物の機械的安定性が危険にさらされている可能性がある。具体的には、これは、構成要素の応力-ひずみ挙動、構成要素の振動挙動、互いに対する構成要素の運動挙動などに応じて変わる。機械的パラメーターがその設定点範囲から外れる場合は、構造物全体にリスクがある。既に言及したように、ダブルスリップジョイントは特に洋上の用途ではまだ広く使用されていないため、大きい機械的荷重に耐え得るかどうかが不明である。既存の測定センサーを用いて、チューブセグメントおよび/または接合要素の機械的パラメーターが設定点値内にあるかどうかをチェックすることが可能である。機械的パラメーターは、構造物の初期設置および試運転の後にモニタリングされる。
【0025】
付加的にまたは代替的に、測定センサーは、ベース材料の荷重負担能力および機械的特性に影響を及ぼすかもしくはそれを危険にさらしかつ/または場合によっては突然の変化につながるかもしくは脆性破壊の可能性を高める、材料の瑕疵、クラック、腐食、または他の変化を認識できるかどうかを検出する。そうであると、最終的には、それらの変化は構造物の機械的安定性も危険にさらす。
【0026】
構造物の初期設置および試運転の後に、検出された機械的パラメーターに基づいて構造物の機械的安定性がリスクにさらされている可能性があると判定される場合は、警告信号を出すことができる。その警告信号の結果としてプロセスを開始でき、そのプロセスの終了時にはチューブセグメント間の環状の隙間が打設材料で充填される。警告信号に基づいて、所与の時間に構造物において環状の隙間を打設材料で充填するために建設者を派遣できる。そのことによって、最初にダブルスリップジョイント(DSJ)として設計されていたチューブセグメント間の連結が、打設材料連結としての打設材料のおかげで、構造物の残りの年数にわたって確実に恒久的に安定したままになる。DSJの残りの荷重負担能力とグラウトジョイントとの組み合わせた荷重負担能力によって、安定性を実現するか、高めるか、または延長することができる。
【0027】
以下の説明が、チューブセグメント上で検出される機械的パラメーターを表す場合は、そのことは常にそのパラメーターが接合要素上で検出できることも意味する。機械的パラメーターは、チューブセグメント上、接合要素上、またはその両方で検出できる。これは、音響信号または電磁気信号を測定することから得ることができる機械的パラメーターも意味する。
【0028】
接合要素は、チューブセグメントの一体の部品とすることができるか、またはチューブセグメント上に、具体的にはその内壁(内側面)もしくは外壁(外側面)上に別個の構成要素として配置することができる。具体的には、接合要素は、チューブセグメントの材料に溶接することができる。
【0029】
考え得るパラメーターの一つにチューブセグメントの膨張がある。ひずみゲージを用いて、チューブセグメントの弾性および/または塑性のひずみを検出することができる。
【0030】
別の機械的パラメーターは、チューブセグメントの圧縮とすることができる。ひずみゲージを使用して、チューブセグメントの弾性および/または塑性の圧縮を測定できる。
【0031】
別の機械的パラメーターは、チューブセグメントの振動とすることができる。このような振動は、ひずみゲージならびに加速度計を用いて測定できる。
【0032】
チューブセグメントの加速度も機械的パラメーターとすることができる。加速度は、具体的には加速度センサーを用いて検出できる。
【0033】
チューブセグメントの互いに対する相対運動も機械的パラメーターとして検出することができる。その場合、チューブセグメントの一方にそれぞれ配置された2つのセンサーからの値を互いに関連付けることができ、その結果、セグメントの互いに対する相対運動を検出することができる。
【0034】
やはり固有振動数も機械的パラメーターとすることができる。機械的な構造物は、動的な機械的荷重に対する一定の応答挙動を有することがある。これは、例えば、ステップ応答またはパルス応答として理解できる。このような応答挙動は、周波数スペクトルにおいて評価することができる。具体的には、固有振動数の変化を検出できる。固有振動数の変化は、構造物の機械的変化を示す。これは高周波の自然振動とも呼ばれ、それがクラックについての情報を提供できる。
【0035】
具体的には、1次から5次の固有振動数は、公称値から5%を超えて外れてはならず、好ましくは2%未満にしなければならない。
【0036】
別の機械的パラメーターは、チューブセグメントの応力/ひずみ値とすることができる。これは、例えば、VDI4551に従って測定することができる。別のパラメーターは、欠陥の長さおよび/または数の形態のクラックとすることができる。
【0037】
設定点または設定点範囲は、パラメーターのそれぞれについて指定できる。このような設定点は、シミュレーションを用いて事前に計算することができる。したがって、シミュレーションを用いて、どの機械的パラメーターがどの荷重でどの値を仮定しているかを計算することが可能である。パラメーターがどの偏差のときに構造物で今にも起こりそうな瑕疵または既に起こった瑕疵を示すかを判定することも可能である。それらのシミュレーションは、構造物の設置前にコンピューターの支援によって実行できる。
【0038】
設定点または設定点範囲が決定されると、それらを用いて、検出された実際の機械的パラメーターと比較することができる。機械的パラメーターが設定点または設定点範囲から限界値を超えて外れる場合は、環状の隙間の打設を開始できる。
【0039】
一実施形態によれば、機械的パラメーターだけでなく機械的パラメーターの時間勾配も判定されることが提案される。勾配は、建築構造物の変化を判定するために使用することもできる。そのような勾配は、公称値と同様に事前にシミュレートでき、同じく偏差がある場合は、打設プロセスを開始できる。計測検出は、構造物の完全性および安定性の評価を行うために、視覚的な検査によって支持されるか、補足されるか、または差し替えられることが可能である。
【0040】
一実施形態によれば、打設材料の強度が、構造物の所定の残りの耐用年数に応じて決定され、残りの耐用年数が短いほど低くなることが提案される。打設材料の機械的特性は調節することができる。具体的には、強度はこのような機械的特性でよい。稼働期間は、構造物に対して指定されている。機械的パラメーターは、稼働期間中に、すなわち初期の試運転の後に検出される。残りの耐用年数の長さを検出することもできる。残りの耐用年数が短いほど、構造物を恒久的に保護するために適切な打設材料は少なくなるはずである。したがって、構造物の耐用年数の最後まで構造物を機械的な損傷から保護するために、打設材料の強度は、残りの耐用年数が短いほど低くすることもできる。
【0041】
一実施形態によれば、鋼製チューブセグメントまたは鉄筋コンクリート製セグメントがチューブセグメントとして使用されることが提案される。それら2つの材料の組み合わせが可能である。
【0042】
筒状または円錐状のチューブセグメントが、少なくとも環状の隙間の領域においてチューブセグメントとして使用されることも提案される。具体的には、接合要素も円錐状とすることができる。
【0043】
洋上構造物のチューブセグメントは、チューブセグメントとして好ましい。普通は、それらは、洋上領域の条件に耐え得る材料特性を有する。具体的には、塩水に対する耐疲労性が必要になる場合がある。
【0044】
一実施形態によれば、チューブセグメントが、チューブセグメント間に環状の隙間を形成するように互いに同心になるように位置決めされることが提案される。具体的には、接合要素は、接合された状態で互いに対して同心になるようにチューブセグメントを位置決めできるように、チューブセグメントの外面に配置される。
【0045】
一実施形態によれば、外側チューブセグメントおよび/または内側チューブセグメントが、環状の隙間の領域に少なくとも1つのスラストリブを有し、少なくとも1つのスラストリブが、チューブセグメントに少なくとも実質的に周方向に、好ましくは完全に周方向に配置されており、特に、少なくとも1つのスラストリブが、チューブセグメントに少なくとも実質的に環状に配置されていることが提案される。しかし、スラストリブは、角度部分において部分的にのみ非連続的に配置することもできる。スラストリブは、環状の隙間の領域においてチューブセグメントの外面に接合要素と同様に配置することができる。具体的には、スラストリブは、チューブセグメントの長手方向軸に垂直な面内で延びることができる。しかし、スラストリブは、その径方向の広がりが接合要素よりも小さく、そのため、スラストリブは、好ましくは、それぞれの他のチューブセグメントと接触しない。スラストリブは、打設の場合に、打設材料がスラストリブの周りに確実に係合し、したがって打設材料とそれぞれのチューブセグメントとの間に確実な連結が行われることを保証することが意図されている。
【0046】
一実施形態によれば、打設用モルタルおよび/またはグラウトが打設材料として使用されることが提案される。そのグラウトは、具体的には、膨張性のグラウトである。具体的には、反応性骨材としてアルカリケイ酸塩を使用することができる。ベントナイト、カルシウム(好ましくは合わせて15M%未満)、スルホアルミニウムセメント(独:Sulfoaluminiumzementen,英:sulfoaluminum cement)、および/またはアルミネートの骨材も可能である。骨材の合計は好ましくは60M%未満である。
【0047】
一実施形態によれば、立方体圧縮強さが60MPa超、好ましくは90MPa超、特に120MPa超の打設用モルタルおよび/またはグラウトが打設材料として使用されることが提案される。
【0048】
チューブセグメント間の連結は、特に、水面の下方の領域にある。圧縮強さは、具体的にはDIN EN12390またはASTM C39もしくはASTM C873に従って判定される。
【0049】
一実施形態によれば、長手方向における外面の2つの接合要素間の距離が、内側チューブセグメントの直径の、特に内側チューブセグメントの外径の少なくとも0.5倍、好ましくはその直径の少なくとも1倍、特にその直径の少なくとも1.5倍になるようにされていることが提案される。しかし、接合要素間の距離は、好ましくは、その直径の3倍未満である。直径は、内側チューブセグメントの内径または外径を意味することができる。好ましくは、距離は、接合要素の有効表面の、すなわち、具体的には接合要素の接合面の、互いに対する距離である。
【0050】
環状の隙間の外径とその径方向の広がりとの比、すなわち、チューブセグメント間の互いに対する径方向の距離が、少なくとも20であり、150よりも小さく、特に100よりも小さく、理想的には45よりも小さいことも提案される。
【0051】
打設材料で後から行う充填を容易にするために、打設材料が、内側チューブセグメントの少なくとも1つの開口部を介して環状の隙間に取り入れられることが提案される。少なくとも1つの接合要素に少なくとも1つの閉鎖可能な開口部が設けられており、その開口部がポッティングのために開放でき、したがって、打設材料を環状の隙間に取り入れできることも可能である。
【0052】
本主題は、実施形態を示す図面を参照しながら、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図2】一実施形態による、互いに摺動して入り込んだ2つのチューブセグメントである。
【
図3】一実施形態による、互いに摺動して入り込んだ2つのチューブセグメントである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、洋上に設置された風力タービン2を示す。風力タービン2の基礎構造物はモノパイル4を有する。モノパイル4は、海底6に据え付けられたチューブセグメントである。モノパイル4が海底6に据え付けられる方法は本質的に知られている。
【0055】
モノパイル4上には移行部片8が水面の上方または下方に配置されており、移行部片8もチューブセグメントである。移行部片8にはボート接岸プラットフォーム8aを設けることができる。
【0056】
移行部片8には風力タービンのタワー10が取り付けられ、タワー10にはナセル12を有する風力タービンが配置されている。タワー10およびナセル12を有する風力タービン2の基本的な構造は、本質的に知られている。
【0057】
モノパイル4および移行部片8を、例を用いて以下で説明する。この説明は、必要な変更を加えることで、ドリリングプラットフォームなど、構造物の他のチューブセグメントにも当てはまる。
【0058】
チューブセグメントとして形成されたモノパイル4と、チューブセグメントとして形成された移行部片8との間の連結を、考えられるチューブセグメントのすべてに関して例を用いてより詳細に説明する。
【0059】
以下の説明では、移行部片8は常に、下側チューブセグメントとしてのモノパイル4に、上側チューブセグメントとして挿入される。ただし、この説明は、必要な変更を加えることで、移行部片8が、下側チューブセグメントとしてのモノパイル4を覆うように嵌められる場合にも当てはまる。本プロセスの本質的な特性は、チューブセグメント間の、この場合はモノパイル4と移行部片8との間の連結がダブルスリップジョイントとして設計され、チューブセグメント間の環状の空間が、始動後の測定値および機械的パラメーターに応じて接合要素の間で必要な場合に充填できることである。
【0060】
図2は、このような連結部を通る長手方向断面図を示す。モノパイル4は、正面開口部4aの領域においてその内側面に第1の接合要素14aが配置された状態で示されている。図示の例では、第1の接合要素14aは、チューブ状要素の開口部断面の対応する輪郭によって形成されている。第2の接合要素14bは、正面開口部4aから長手方向18にある距離の位置で、モノパイル4の内壁に配置されている。2つの接合要素14a、14bは、正面開口部4aの方向のテーパー部分を有し、好ましくは円錐形である。
【0061】
移行部片8は、その外側面に接合要素16a、16bを有する。接合要素16aは、移行部片8の正面開口部8aにある。ここでも、接合要素16aは、正面開口部8aの領域において移行部片8の壁の対応する輪郭によって形成することができる。移行部片8の外側面では、正面開口部8aから長手方向18にある距離の位置に、さらなる接合要素16bが形成されている。接合要素16a、16bも、正面開口部8aの方向のテーパー部分を有し、好ましくは円錐状である。
【0062】
接合要素14a、16bおよび接合要素14b、16aの好ましくは円錐状のテーパー部分はそれぞれ、対応する相補形の輪郭を有する。これは、挿入された状態では、接合要素14a、16bおよび接合要素14b、16aは、それらの互いに対向する面、いわゆる接合面で、互いに直接的に接触していることを意味する。接合要素14、16は、設置された状態では、チューブセグメント間、具体的には移行部片8とモノパイル4との間に環状の空間20が形成されるような形状になっている。移行部片8において、壁には開口部22が設けられており、その開口部22は、以下で説明するように、環状の空間20を打設材料で充填可能にするために、内側から開きかつ/または閉じることができる。
【0063】
図3は、移行部片8が内部に挿入されたモノパイル4のさらなる例を示す。
図2と異なり、接合要素14a、16bは、移行部片8またはモノパイル4の正面縁部に直接的に配置されておらず、正面縁部から長手方向18にずれている。やはり接合要素14a、16bならびに接合要素14b、16aは、互いに相補形であり、そのため、接合された状態では対応する接合面が互いに当接する。ここでも、環状の空間20が形成される。
【0064】
図4は、本主題による一連の方法を示す。ステップ30で、具体的には
図2および
図3による2つのチューブセグメント4、8との間の連結のシミュレーションが、それらの荷重負担能力および機械荷重に対する機械的反応をチェックするためにまず実行される。ここで、既に先に言及した最も多様な機械的パラメーターがシミュレートされ、どのような制限内であれば構造物に損傷を与えることなくパラメーターが動くことができるかがシミュレートされる。構造物が損傷を受けることなく、機械的パラメーターが変化できる程度、または機械的パラメーターが収まる範囲を示す、設定点値または設定点値の範囲が、最も多様なパラメーターに関してシミュレートされる。
【0065】
このようにして得られた値を用いて、ステップ32でモノパイル4と移行部片8との間の連結が実際に構築される。ここで、構造物は、実際に現場で構築され、動作状態に入る。構築中は、ステップ34で、少なくとも1つの測定センサー、好ましくは複数の測定センサーが、チューブセグメント4、8および/または接合要素14、16に配置される。
【0066】
試運転の後に、センサーによって検出された測定値は、ステップ36で連続してモニタリングされる。それぞれの場合に、定義された時間間隔(1分、5分、15分または同様の時間)の後に測定を行うことができるか、または恒久的な測定を行うことができる。検出された測定値は、先にシミュレートされた機械的パラメーターに対応する。
【0067】
ステップ38で、検出された機械的パラメーターは、シミュレートされた設定点値または設定点値範囲と比較される。実際の値が設定点値または設定点値範囲内にある、具体的には限界値を下回るかまたは上回る場合、システムは38aでステップ36に戻る。しかし、パラメーターの1つまたは複数が設定点範囲外にあるかまたは限界値の分だけ設定点外にあることが起こる場合、ステップ38bでシステムはステップ40に進む。
【0068】
ステップ40で、警告信号が出力され、その警告信号によって、ステップ42で、環状の空間20が具体的には打設材料で打設される。
【0069】
そのために、組立てチームに依頼して、既に建設されている構造物にグラウチングを実行する。そのために、組立てチームが、好ましくは、適切な組立て船で構造物に移動する。供給ラインが、不図示の開口部を介して、移行部片8内の開口部22まで敷設される。開口部22は開いており、開口部22を通して環状の空間20中に打設材料が注がれる。環状の空間20が好ましくは完全に充填された後に、開口部22は再び閉じられ、打設材料が硬化することが可能になる。打設材料が硬化した後に、グラウトジョイントが形成される。このようなグラウトジョイントは、打設材料が構造物を損傷から保護するのに十分な強度を有するように機械的に設計されている。この強度は、構造物がその予測される耐用年数の最後まで機械的に安定するように選択されている。
【0070】
したがって、図示のプロセスのおかげで、長期安定性の知識を実際に有していない、既に現場にあるダブルスリップジョイントを使用することが可能である。このような構造物が、具体的にはダブルスリップジョイントに、損傷のリスクを負うかまたはその耐用年数の経過中で既に損傷を受けている場合は、本発明のプロセスによって、後から行う材料打設が可能になり、そのため、そのダブルスリップジョイントは、その耐用年数の残りの期間に十分な機械的安定性を保証する打設材料ジョイントになる。
【国際調査報告】