(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】香持続性が増進された喫煙物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A24D 1/02 20060101AFI20240326BHJP
A24B 15/30 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A24D1/02
A24B15/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562797
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 KR2022005251
(87)【国際公開番号】W WO2022220529
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0048462
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、イク チュン
(72)【発明者】
【氏名】イ、コン チャン
(72)【発明者】
【氏名】チュン、キュン ピン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ウン ミ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ミン ヒ
【テーマコード(参考)】
4B043
4B045
【Fターム(参考)】
4B043BB11
4B043BB17
4B043BB22
4B043BC02
4B043BC03
4B043BC04
4B043BC18
4B043BC20
4B045AA41
4B045AA43
4B045AB11
4B045AB14
(57)【要約】
香持続性が増進された喫煙物品及びその製造方法が提供され、いくつかの実施形態による喫煙物品は、喫煙物質部、フィルタ部及び喫煙物質部の少なくとも一部を覆い包んでいるラッパ(wrapper)を含むものでもある。このとき、該ラッパには、ハイドロコロイド物質及び香料を含む香料シートが適用されることにより、喫煙物品の香持続性が増進されうる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物質部と、
フィルタ部と、
前記喫煙物質部の少なくとも一部を覆い包んでいるラッパと、を含み、
前記ラッパには、ハイドロコロイド物質及び香料を含む香料シートが適用される、喫煙物品。
【請求項2】
前記香料シートが前記ラッパに利用される、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記香料シートの厚みは、40μmないし150μmである、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記香料シートは、前記ラッパの内側に付着される、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項5】
前記香料シートは、接着剤なしに、前記ラッパの内側に付着される、請求項4に記載の喫煙物品。
【請求項6】
前記ラッパの少なくとも一部は、金属ホイルによってなり、
前記香料シートは、前記金属ホイルの内側に配される、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項7】
前記ラッパの内側は、前記香料シートの組成物にコーティングされる、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項8】
前記組成物のコーティング厚みは、70μm以下である、請求項7に記載の喫煙物品。
【請求項9】
前記ハイドロコロイド物質は、メチルセルロースを含む、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項10】
前記ハイドロコロイド物質は、LM(low methoxyl)ペクチンを含み、
前記LMペクチンは、カルボキシル基を50%未満で含み、放冷時、ゲル化しない特性を有する物質である、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項11】
ハイドロコロイド物質及び香料を含む香料組成物、または前記香料組成物から製造された香料シートを利用し、ラッピング材料を製造する段階と、
前記製造されたラッピング材料をもって、喫煙物質部の少なくとも一部をラッピングし、前記喫煙物質部を含む喫煙物品を製造する段階と、を含む、喫煙物品の製造方法。
【請求項12】
前記ラッピング材料を製造する段階は、
粘着性または接着性がない液体を噴射し、前記香料シートとラッピングペーパーとを合紙する段階を含む、請求項11に記載の喫煙物品の製造方法。
【請求項13】
前記ラッピング材料を製造する段階は、
ラッピングペーパーに前記香料組成物を塗布して乾燥させる段階を含む、請求項11に記載の喫煙物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香持続性が増進された喫煙物品及びその製造方法に係り、さらに詳細には、香料シートまたはその組成物をラッパ部位に適用することにより、香持続性を増進させた喫煙物品及びその喫煙物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙者の嗜好を充足させるために、喫煙物品(例:シガレット)には、多様な方式で加香処理が施される。代表的な加香処理方式の例としては、刻みタバコのような喫煙物質またはフィルタプラグに、香液を直接添加(例えば、「噴射」)することを挙げることができる。しかしながら、例示された方式は、香液添加量に制限があるか、意図された香りが発現されないか、あるいは喫煙中に香発現性が急激に落ちるというような多様な問題がある。
【0003】
具体的には、喫煙物質に香液を添加する方式は、香液が喫煙物質と相互凝集され、多量の香液を添加し難い。また、喫煙時、高い加熱温度(または、燃焼温度)により、香液が変質されることにより、意図されていない香りが発現されうる。次に、フィルタプラグに香液を添加する方式は、前述の方式に比べ、多量の香液を許容することができるが、依然として添加量に限界が存在する。
【0004】
なお、いかなる方式によっても、添加された香液が、喫煙初期に急激に発現されることにより、喫煙後半に行くほど、香発現性が落ちるという問題があり、香液が過量添加されれば、フィルタプラグまたは喫煙物質を覆い包んでいるラッパ(wrapper)が濡れ、汚染の原因にもなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示のいくつかの実施形態を介して解決しようとする技術的課題は、香持続性が増進された喫煙物品を提供することである。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態を介して解決しようとする他の技術的課題は、香持続性が増進された喫煙物品の製造方法を提供することである。
【0007】
本開示の技術的課題は、以上で言及された技術的課題に制限されるものではなく、言及されていない他の技術的課題は、以下の記載から本開示の技術分野における通常の技術者に明確に理解されうるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するための、本開示のいくつかの実施形態による喫煙物品は、喫煙物質部、フィルタ部、及び前記喫煙物質部の少なくとも一部を覆い包んでいるラッパ(wrapper)を含むものでもある。このとき、前記ラッパには、ハイドロコロイド物質及び香料を含む香料シートが適用されうる。
【0009】
前記技術的課題を解決するための、本開示のいくつかの実施形態による、喫煙物品の製造方法は、ハイドロコロイド物質及び香料を含む香料組成物、または前記香料組成物から製造された香料シートを利用してラッピング材料を製造する段階、及び前記製造されたラッピング材料でもって、喫煙物質部の少なくとも一部をラッピングし、前記喫煙物質部を含む喫煙物品を製造する段階を含むものでもある。
【発明の効果】
【0010】
前述の本開示のいくつかの実施形態によれば、香料シートまたはその組成物が喫煙物品のラッパ部位に適用されうる。ここで、該香料シートは、固相に製造された物質であり、香液とは異なり、香料の揮散を遅らせることができ、喫煙初期にほとんどの香りが発現される問題を効果的に解決することができ、それにより、喫煙物品の香持続性が大きく向上されうる。それだけでなく、それにより、香料の添加量、添加位置などが精密に調節されうる。例えば、香料シートをラッパに適用する方式は、該香料シートの切り刻みを喫煙物質部に適用する方式(例:香料シートの切り刻みを刻みタバコと配合する)よりも、香料添加量を調節しやすく、香発現位置を調節することも容易であるいう長所がある。
【0011】
また、喫煙物品のラッピングペーパーと香料シートとが合紙されたり、ラッピングペーパー上に香料シートの組成物が塗布されたりすることにより、喫煙物品のラッピング材料が容易に製造されうる。併せて、製造されたラッピング材料を利用すれば、既存の製造設備(すなわち、喫煙物品のラッピングを行う設備)をそのまま利用し、喫煙物品が製造されうるという長所がある。
【0012】
また、香料シートにハイドロコロイド物質が含まれることにより、接着剤なしにも、香料シートが容易にラッパ部位に付着されうる。例えば、香料シートとラッピングペーパーとが接着剤なしにも容易に合紙されうる。それにより、ラッピング材料の製造工程が簡素化され、接着剤による安全性問題から自由にもなる。
【0013】
本開示の技術的思想による効果は、以上で言及されたところに制限されるものではなく、言及されていない他の効果は、以下の記載から、通常の技術者に明確に理解されうるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示のいくつかの実施形態による、香持続性が増進された喫煙物品を概略的に示す例示的な図である。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態による、香料シートの多様な適用方式について説明するための例示的な図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態による、香料シートの多様な適用方式について説明するための例示的な図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による、香料シートの多様な適用方式について説明するための例示的な図である。
【
図5】本開示の他のいくつかの実施形態による、香持続性が増進された喫煙物品を概略的に示す例示的な図である。
【
図6】本開示のさらに他のいくつかの実施形態による、香持続性が増進された喫煙物品を概略的に示す例示的な図である。
【
図7】本開示のいくつかの実施形態によるラッピング材料製造方法について説明するための例示的な図である。
【
図8】本開示の他のいくつかの実施形態によるラッピング材料製造方法について説明するための例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示のいくつかの実施形態による喫煙物品は、喫煙物質部、フィルタ部、及び前記喫煙物質部の少なくとも一部を覆い包んでいるラッパ(wrapper)を含むものでもある。ここで、前記ラッパには、ハイドロコロイド物質及び香料を含む香料シートが適用されうる。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記香料シートが前記ラッパに利用されうる。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記香料シートの厚みは、40μmないし150μmでもある。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記香料シートは、前記ラッパの内側に付着されうる。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記ラッパの少なくとも一部は、金属ホイル(foil)によってなり、前記香料シートは、前記金属ホイルの内側に配されうる。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記ラッパの内側は、前記香料シートの組成物にコーティングされうる。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態による、喫煙物品の製造方法は、ハイドロコロイド物質及び香料を含む香料組成物、または前記香料組成物から製造された香料シートを利用し、ラッピング材料を製造する段階、及び前記製造されたラッピング材料でもって、喫煙物質部の少なくとも一部をラッピングし、前記喫煙物質部を含む喫煙物品を製造する段階を含むものでもある。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記ラッピング材料を製造する段階は、粘着性または接着性がない液体を噴射し、前記香料シートとラッピングペーパーとを合紙する段階を含むものでもある。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記ラッピング材料を製造する段階は、ラッピングペーパーに前記香料組成物を塗布して乾燥させる段階を含むものでもある。
【0024】
以下、添付図面を参照し、本開示の望ましい実施形態について詳細に説明する。本開示の利点、特徴、及びそれらを達成する方法は、添付図面と共に、詳細に後述されている実施形態を参照すれば、明確になるであろう。しかしながら、本開示の技術的思想は、以下の実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現され、ただし、以下の実施形態は、本開示の技術的思想を完全なものにし、本開示が属する技術分野において通常の知識を有する者に、本開示の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本開示の技術的思想は、請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0025】
各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一構成要素については、たとえ他の図面上に表示されているにしても、可能な限り、同一符号を有させるようにしていることに留意しなければならない。また、本開示についての説明にあたり、関連する公知の構成または機能に係わる具体的な説明が、本開示の要旨を不明確にしうると判断される場合には、その詳細な説明は、省略する。
【0026】
取り立てての定義がなければ、本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的な用語を含む)は、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に共通して理解されうる意味にも使用される。また、一般的に使用される事前に定義されている用語は、明白に特別に定義されていない限り、理想的であったり過度であったりするように解釈されるものではない。本明細書で使用された用語は、一実施形態について説明するためのものであり、本開示を制限するものではない。本明細書において、単数形は、文言で特別に言及されない限り複数形も含む。
【0027】
また、本開示の構成要素についての説明にあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)のような用語を使用することができる。そのような用語は、その構成要素を、他の構成要素と区別するためのものであるのみ、その用語により、当該構成要素の本質や、順番または順序などが限定されるものではない。ある構成要素が他の構成要素に、「連結」される、「結合」される、または「接続」されると記載された場合、その構成要素は、他の構成要素に、直接に連結されたり接続されたりしうるが、各構成要素間に、さらに他の構成要素が「連結」される、「結合」される、あるいは「接続」されうると理解されなければならないであろう。
【0028】
本開示で使用される「含む(comprises)」及び/または「含むところの(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作及び/または素子は、1以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除するものではない。
【0029】
まず、本開示の多様な実施形態で使用されるいくつかの用語について明確にさせる。
【0030】
以下の実施形態において、「喫煙物品(smoking article)」とは、タバコ、タバコ派生物、膨化処理タバコ(expanded tobacco)、再生タバコ(reconstituted tobacco)またはタバコ代用物に基づくかということに係わりなく、喫煙可能な任意の製品、または喫煙体験を提供することができる任意の製品を意味しうる。例えば、該喫煙物品は、シガレット、葉巻(cigar)及び小葉巻(cigarillo)のような喫煙可能製品を含むものでもある。他の例として、該喫煙物品は、燃焼型喫煙物品と加熱型喫煙物品とを含むものでもある。
【0031】
以下の実施形態において、「喫煙物質(smoking material)」とは、煙(smoke)及び/またはエアロゾルを発生させるか、あるいは喫煙に利用される物質を意味しうる。例えば、該喫煙物質は、タバコ物質を含むものでもある。該タバコ物質は、例えば、タバコ葉切れ、タバコ茎、またはそれらから加工された物質などを含むものでもある。さらに具体的な例として、該タバコ物質は、粉砕されたタバコ葉、粉砕された再生タバコ、膨化刻みタバコ、膨化主脈及び板状葉などを含むものでもある。しかしながら、それらに限定されるものではない。
【0032】
以下の実施形態において、「上流(upstream)」または「上流方向」は、喫煙者の口部から遠くなる方向を意味し、「下流(downstream)」または「下流方向」は、喫煙者の口部に近くなる方向を意味しうる。該上流及び該下流という用語は、喫煙物品を構成する要素の相対的位置についての説明に利用されうる。例えば、
図1に例示された喫煙物品100において、フィルタ部120は、喫煙物質部110の下流または下流方向に位置し、喫煙物質部110は、フィルタ部120の上流または上流方向に位置する。
【0033】
以下の実施形態において、「長手方向(longitudinal direction)」は、喫煙物品の長手方向軸に相応する方向を意味しうる。
【0034】
以下の実施形態において、「パフ(puff)」は、ユーザ(喫煙者)の吸入(inhalation)を意味し、該吸入とは、ユーザの口や鼻を介し、ユーザの口腔内、鼻腔内または肺に引き入れる状況を意味しうる。
【0035】
以下の実施形態において、「シート(sheet)」は、その厚みより実質的に大きい幅及び長さを有する薄層要素を意味しうる。当該技術分野において、シートという用語は、ウェブ(web)、フィルム(film)のような用語と混用されても使用される。
【0036】
以下の実施形態において、「香料シート(flavor sheetまたはflavoring sheet)」は、シート形態に製造された香料含有材料を意味しうる。
【0037】
以下においては、本開示の多様な実施形態につき、添付された図面によって詳細に説明する。
【0038】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、香持続性が増進された喫煙物品100を概略的に示す例示的な図面である。
【0039】
図1に図示されているように、喫煙物品100は、フィルタ部120、喫煙物質部110及びラッパ130を含むものでもある。ただし、
図1には、本開示の実施形態と関連ある構成要素だけが図示されている。従って、本開示が属する技術分野の通常の技術者であるならば、
図1に図示された構成要素以外に、他の汎用的な構成要素がさらに含まれるものでもあるということが分かるであろう。また、
図1は、本開示の実施形態による喫煙物品の一部例示を図示しているだけであり、該喫煙物品の細部構造は、
図1に図示されたところと異なりうる。該喫煙物品の細部構造の他の例示については、
図5及び
図6をさらに参照する。以下、喫煙物品100の各構成要素について説明する。
【0040】
フィルタ部120は、喫煙物質部110で生じた煙及び/またはエアロゾルに対する濾過機能を遂行することができる。そのために、フィルタ部120は、フィルタ(すなわち、濾過)物質を含むものでもある。該フィルタ物質の例としては、酢酸セルロース繊維、紙などを挙げることができるが、本開示の範囲は、それらに限定されるものではない。フィルタ部120は、フィルタ物質(すなわち、プラグ)を覆い包んでいるラッパ130をさらに含むものでもある。
【0041】
フィルタ部120は、喫煙物質部110の下流に位置し、喫煙物質部110の下流末端と連結されうる。例えば、フィルタ部120と喫煙物質部110は、円柱(すなわち、ロッド)の形状を有して長手軸方向に整列され、ティッピングラッパ(tipping wrapper)によって連結されうる。該ティッピングラッパは、フィルタ部120の少なくとも一部と、喫煙物質部110の少なくとも一部とを共にラッピングし、フィルタ部120と喫煙物質部110とを連結することができる。フィルタ部120が喫煙物品100の下流末端を形成する場合、フィルタ部120は、喫煙時、喫煙者の口部と接触されるマウスピースとして機能することもできる。
【0042】
フィルタ部120は、ロッド形態に製造されるので、場合によっては、「フィルタロッド120」とも称される。しかしながら、フィルタ部120は、円柱型、内部に中空を含むチューブ型、リセス型のように多様な形態に製造されうる。
【0043】
次に、喫煙物質部110は、燃焼または加熱されるとき、煙及び/またはエアロゾルを発生させることができる喫煙物質を含むものでもある。喫煙物質部110は、喫煙物質を覆い包んでいるラッパ130をさらに含むものでもある。
【0044】
喫煙物質部110は、フィルタ部120の上流に位置し、フィルタ部120の上流末端と連結されうる。喫煙物質部110で生じた煙及び/またはエアロゾルは、パフにより、フィルタ部120を経て、喫煙者の口部に伝達されうる。
【0045】
喫煙物質部110も、ロッド形態に製造されるので、場合によっては、「喫煙物質ロッド110」とも称される。
【0046】
喫煙物質は、例えば、タバコ物質を含むものでもある。該タバコ物質は、例えば、タバコ葉切れ、タバコ茎、またはそれらから加工された物質などを含むものでもある。さらに具体的な例として、該タバコ物質は、粉砕されたタバコの葉、粉砕された再構成タバコ、膨化刻みタバコ、膨化主脈及び板状葉などを含むものでもある。しかしながら、それらに限定されるものではない。また、該タバコ物質は、刻みタバコ、タバコ粒子、タバコシート、タバコビード(beads)、タバコ顆粒(granule)またはタバコ抽出物の形態を有することができるが、それらに限定されるものではない。
【0047】
いくつかの実施形態において、喫煙物質は、湿潤剤(保湿剤)、香味剤及び/または有機酸(organic acid)のような添加物質をさらに含むものでもある。例えば、該湿潤剤は、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びオレイルアルコールのうち少なくとも一つを含むものでもある。該湿潤剤は、タバコ物質内の水分を適正レベルに維持し、固有の味をソフトにし、霧化量を豊かにすることができる。また、該香味剤は、例えば、甘草、ショ糖、果糖シロップ、イソ甘味剤(isosweet)、ココア、ラベンダー、シナモン、カルダモン、セロリ、コロハ、カスカリラ、白檀、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、ローズオイル、バニラ、レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、桂皮、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、カモマイル、メントール、イランイラン、セージ、スペアミント、生姜、コリアンダー、クローブ抽出物(または、クローブ物質)またはコーヒーなどを含むものでもある。
【0048】
次に、ラッパ130は、喫煙物質部110及び/またはフィルタ部120の少なくとも一部を覆い包んでいるものを意味しうる。ラッパ130は、喫煙物質部110またはフィルタ部120の個別ラッパを称するものでもあり、喫煙物質部110とフィルタ部120との少なくとも一部を共に覆い包んでいるティッピングラッパを称するものでもあり、喫煙物品100に利用された全てのラッパを総称するものとしても使用される。前記ラッパ130は、多孔性または非多孔性のラッピングペーパーによってもなるが、本開示の範囲は、それらに限定されるものではない。例えば、ラッパ130は、金属ホイルまたはラッピングペーパーと金属ホイルとの合紙形態によってもなる。
【0049】
本開示の多様な実施形態によれば、図示されているように、シート形態に製造された香料材料10(以下、「香料シート」とする)が、喫煙物質部110またはフィルタ部120のラッパ130に適用されうる。そのように適用された香料シート10は、喫煙中、持続的に香りを発現することにより、喫煙物品100の香発現性と香持続性とを増大させることができる。すなわち、該香料シートは、固相に製造された物質であり、香液とは異なり、香料の揮散を遅らせることができ、喫煙初期にほとんどの香りが発現される問題を効果的に解決することができる。ただし、その具体的な適用方式は、異なりうる。
【0050】
いくつかの実施形態においては、
図2に図示されているように、香料シート10がラッパ130内側に配置(例:合紙またはコーティングによる付着)されもする。
図2は、香料シート10が喫煙物質部110を完全に覆い包んでいることを例として図示しているが、それは、理解の便宜を提供するためのものであるのみ、香料シート10は、喫煙物質部110の一部だけを覆い包むようにも配される。また、ラッパ130の少なくとも一部が金属ホイルによってなる場合、香料シート10は、金属ホイルの内側に配されうる。そのような場合、該金属ホイルを介して伝達された熱により、香料シート10の香発現がさらに促進されうる。香料シート10をラッパ130に配する工程については、追って、
図7及び
図8を参照して後述する。
【0051】
いくつかの実施形態においては、
図3に図示されているように、香料シート10がラッパ130の少なくとも一部を構成することもできる。すなわち、香料シート10が、喫煙物品100のラッパ130として機能することができる。このとき、ラッパ130の少なくとも一部は、香料シート10だけによって構成されるか、香料シート10とラッピングペーパーとが一体化された形態で構成されうる。そのような場合、香料シート10をラッパ130に配する工程(例:合紙またはコーティングによる付着工程)が遂行される必要がないが、喫煙物品100の製造工程がさらに簡素化されうる。
【0052】
なお、本開示のいくつかの実施形態によれば、香料シート10が、ラッパ130以外の他の部分に適用されうる。例えば、
図4に図示されているように、香料シート10が、喫煙物質部110内部にも適用される。さらに具体的には、香料シート10が、タバコシート20(例:板状葉のようなシート形態のタバコ物質)と共に、喫煙物質部110に投入されうる。言わば、香料シート10がタバコシート20に付着され、喫煙物質部110に投入されうる。
【0053】
香料シート10の組成物質及び組成比、厚み、製造方式などは、多様に設計されうるが、それらの一部例示については、後述する。
【0054】
以上、
図1ないし
図4を参照し、本開示のいくつかの実施形態による喫煙物品100について説明した。前述のところによれば、香料シート10が、喫煙物品100のラッパ130部位に適用されうる。香料シート10は、固相に製造された物質でもあるので、香液とは異なり、香料の揮散を遅らせることができ、喫煙初期にほとんどの香りが発現される問題を効果的に解決することができる。その結果、喫煙物品100の香持続性が大きく向上されうる。それだけでなく、香料シート10をラッパに適用する方式は、香料シート10の切り刻みを喫煙物質部110に適用する方式(例:香料シートの切り刻みを刻みタバコと配合する)よりも、香料添加量を調節しやすく、香発現位置を調節することも容易であるという長所がある。
【0055】
以下においては、本開示の他のいくつかの実施形態による、香持続性が増進された喫煙物品200,300につき、
図5及び
図6を参照して説明する。ただし、本開示の明瞭さのために、前述の喫煙物品100と重複する内容に係わる説明は、省略する。
【0056】
図5は、本開示の他のいくつかの実施形態による、香持続性が増進された喫煙物品200を示す例示的な図面である。
【0057】
図5に図示されているように、喫煙物品200は、喫煙物質部210とフィルタ部220とを含むものでもあり、フィルタ部220は、複数のセグメント221,222を含むものでもある。
【0058】
喫煙物質部210は、前述の喫煙物質部110に対応しうる。従って、それに係わる説明は、省略する。
【0059】
次に、フィルタ部220は、第1セグメント221と第2セグメント222とによって構成されうる。ここで、フィルタ部220は、第3セグメント(図示せず)をさらに含むものでもあるということは、言うまでもない。
【0060】
第1セグメント221は、喫煙物質部210で生じた煙及び/またはエアロゾルに対する冷却機能を遂行することができる。従って、場合によっては、第1セグメント221は、「冷却セグメント221」とも称される。
【0061】
第1セグメント221は、多様な形態に製造されうる。一例として、第1セグメント221は、紙材質によって形成され、中空を含む円筒形態の紙管でもある。他の例として、第1セグメント221は、高分子物質または生分解性高分子物質によって作製されたものでもある。例えば、第1セグメント221は、ポリ乳酸(PLA)繊維によっても作製されるが、それに限定されるものではない。他の例として、第1セグメント221は、複数個の孔があいた酢酸セルロースフィルタによっても作製される。さらに他の例として、第1セグメント221は、中空を含むチューブフィルタでもある。例えば、第1セグメント221は、中空を含む酢酸セルロースフィルタでもある。しかしながら、第1セグメント221は、それに限定されるものではなく、冷却機能を遂行することができるいかなる他の形態によっても製造される。
【0062】
いくつかの実施形態においては、第1セグメント221に、香料シート10が適用されうる。例えば、香料シート10は、第1セグメント221の中空にくるくる巻かれた形態に配されるか、あるいは中空の内壁に付着されうる。他の例として、複数のホールが形成されるように加工(例:パンチング)された香料シート10がくるくる巻かれた形態で中空に配されうる。そのような場合、複数のホールを介して気流パスが容易に確保され、香料シート10と気流との接触面積増大により、冷却効果も向上されうる。
【0063】
次に、第2セグメント222は、第1セグメント221を通過した煙及び/またはエアロゾルに対する濾過機能を遂行することができる。従って、場合によっては、第2セグメント222は、「フィルタセグメント222」とも称される。または、第2セグメント222は、マウスピース部位にも位置するが、「マウスピースセグメント222」とも称される。
【0064】
いくつかの実施形態において、第2セグメント222は、少なくとも1つのカプセル240を含むものでもある。ここで、カプセル240は、香味を発生させる機能を遂行することもでき、エアロゾルを発生させる機能を遂行することもできる。例えば、カプセル240は、香料を含む液体を被膜で覆い包んだ構造でもある。また、カプセル240は、球形または円筒状の形状を有することができるが、それらに限定されるものではない。
【0065】
次に、ラッパ230は、前述のラッパ130に対応しうる。従って、それに係わる説明は、省略する。前述のように、ラッパ230には、香料シート10が適用されうる。それにより、喫煙物品200の香持続性が大きく増進されうる。
【0066】
なお、
図5には、図示されていないが、喫煙物品200は、末端に配されたプラグ(図示せず)をさらに含むものでもある。例えば、該プラグは、喫煙物品200の上流末端に配され、喫煙物品200の全体長を適切に調節する機能を遂行することができる。また、喫煙物品200がエアロゾル発生装置(図示せず)に挿入される場合、該プラグは、喫煙物質部210がエアロゾル発生装置内部の適切な位置に配されるように調節する機能を遂行することもできる。
【0067】
図6は、本開示のさらに他のいくつかの実施形態による喫煙物品300を概略的に示す例示的な図面である。
【0068】
図6に図示されているように、喫煙物品300は、喫煙物質部310及びフィルタ部320を含むものでもあり、喫煙物質部310及びフィルタ部320それぞれは、複数のセグメント311,312,321,322を含むものでもある。
【0069】
図示されているように、喫煙物質部310は、第1セグメント311と第2セグメント312とによって構成されうる。ここで、喫煙物質部310は、第3セグメント(図示せず)をさらに含むものでもあるということは、言うまでもない。
【0070】
第1セグメント311は、保湿剤を含むものでもある。例えば、第1セグメント311は、保湿剤が含浸された巻縮紙を含むものでもある。該保湿剤は、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びオレイルアルコールのうち少なくとも一つを含むものでもある。
【0071】
次に、第2セグメント312は、タバコ物質のようなニコチン発生基材を含むものでもある。該ニコチン発生基材は、例えば、刻みタバコ、タバコ粒子、タバコシート、タバコビード、タバコ顆粒を含むものでもある。他の例として、該ニコチン発生基材は、タバコ抽出物が含浸された巻縮紙を含むものでもある。該ニコチン発生基材が加熱される場合、該ニコチン発生基材からニコチンが生じ、フィルタ部320にニコチンが移行されうる。
【0072】
次に、フィルタ部320も、複数のセグメント321,322を含むものでもある。例えば、フィルタ部320は、冷却機能を遂行する第3セグメント321と、濾過機能を遂行する第4セグメント322とを含むものでもある。前述の
図5のフィルタ部220に係わる内容が、フィルタ部320に同一に適用されうるので、それ以上の説明は、省略する。
【0073】
次に、ラッパ330は、前述のラッパ130に対応しうる。従って、それに係わる説明は、省略する。前述のように、ラッパ330には、香料シート10が適用されうる。それにより、喫煙物品300の香持続性が大きく増進されうる。
【0074】
以上、
図5及び
図6を参照し、本開示の他のいくつかの実施形態による喫煙物品200,300について説明した。以下においては、本開示のいくつかの実施形態による、香料シート10と、その製造方法とにつき、簡略に説明する。
【0075】
香料シート10は、次のような工程を介して製造されうる:液状(例:スラリー状態)の香料組成物を製造する段階;製造された香料組成物をシート形態に成形する段階;及び香料組成物を乾燥させる段階。ここで、該液状のものは、液体状態だけではなく、液体と固体とが混合された状態(例:スラリー状態)を含むものでもある。例えば、香料シート10は、香料組成物を所定の基材上に伸長(すなわち、キャスティング)させて乾燥させることによっても製造される。しかしながら、それに限定されるものではなく、具体的な製造方式は、異なりうる。
【0076】
なお、香料組成物の細部組成は、多様に設計されうる。
【0077】
いくつかの実施形態において、香料組成物は、蒸溜水(water)、ハイドロコロイド物質及び香料を含むものでもある。そのような香料組成物から製造された香料シート10は、香保有性にすぐれ、例えば、喫煙物品100の香発現性と香持続性とを大きく増進させることができる。併せて、ハイドロコロイド物質により、香料シート10が、別途の接着剤なしにも、例えば、ラッパ130に付着され、香料シート10の配置工程が簡素化され、接着剤による安全性問題からも自由になる。
【0078】
蒸溜水は、スラリー型香料組成物の粘度を調節するための要素でもある。
【0079】
ハイドロコロイド物質は、香料を被覆して固定させる物質であり、かつシートを形成するシート形成剤でもある。該ハイドロコロイド物質の例としては、ゼラチン、寒天、ゲランガム、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、グルコマンナン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉類などを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
【0080】
香料の例としては、メントール、ニコチン、ニコチン塩、葉タバコ抽出物、ニコチンが含有された葉タバコ抽出物、天然植物性香料(例:シナモン、セイジ、ハーブ、カモマイル、アシ(reeds)、甘茶、クローブ、ラベンダー、カルダモン、丁香、ユニズク(nutmeg)、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、ローズ油、レモン、オレンジ、桂皮、キャラウェイ、ジャスミン、生姜、コリアンダー、バニラエキス、スペアミント、ペパーミント、カシア、コーヒー、セロリ、カスカリラ、白檀、ココア、イランイラン、パネル(panel)、アニス、甘草、セントジョンブレッド(St. John's Bread)、プラムエキス、桃エキスなど)、糖類(例:グルコース、フルクトース、異性化糖、キャラメルなど)、ココア類(パウダー、エキスなど)、エステル類(例:酢酸イソアミル、酢酸リナリル、プロピオン酸イソアミル、酪酸リナリルなど)、ケトン類(例:メントン、イオノン、ダマセノン、エチルマルトールなど)、アルコール類(例:Geraniol、リナロール、アネトール、オイゲノールなど)、アルデヒド類(例:バニリン、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒドなど)、ラクトン類(例:γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラトンなど)、動物性香料(例:麝香、アンバーグリス、シベット、カストリウムなど)、炭化水素類(例:リモネン、ピネンなど)が挙げられる。該香料は、固体状態で使用されてもよく、適切な溶媒、例えば、プロピレングリコール、エチルアルコール、ベンジルアルコール、クエン酸トリエチルに溶解されたり分散されたりして使用されうる。また、乳化剤の添加により、溶媒中に分散状態が形成されやすい香料、例えば、疎水性香料や油溶性香料などが利用されうる。それら香料は、単独でも利用され、混合物でも利用されうる。ただし、本開示の範囲は、前述の例示によって限定されるものではない。
【0081】
いくつかの実施形態において、香料組成物は、多様なハイドロコロイド物質のうちから、改質されたセルロースを含むものでもある。ここで、「改質されたセルロース」は、分子構造内において、特定作用基が置換されたセルロースを意味しうる。改質されたセルロースの例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、カボキシメチルセルロース(CMC)、エチルセルロース(EC)を有することができるが、それらに限定されるものではない。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、ヒドロキシプロピル基及びメチル基(または、メトキシ基)が置換された比率及び分子量により、約4ないし40,000の範囲内の等級(grade)を有しうる。該等級により、改質されたセルロースの粘度が決定されうる。さらに具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の物理化学的特性は、メトキシ基の比率、ヒドロキシプロピル基の比率、及びそれらの分子量と関係があるが、米国薬局方(USP)によれば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の種類は、メトキシ基及びヒドロキシプロピル基の比率により、HPMC1828、HPMC2208、HPMC2906及びHPMC2910などに分類されうる。ここで、前側の2つの数字は、メトキシ基の比率であり、後側の2つの数字は、ヒドロキシプロピル基の比率を意味しうる。本発明者らの持続的な実験結果、改質されたセルロースを含む香料組成物から製造された香料シート10は、シート物理性及び香保有性にすぐれていると確認された。
【0082】
また、いくつかの実施形態において、香料組成物は、LMペクチン(low methoxyl pectin)をさらに含むものでもある。または、該香料組成物は、ハイドロコロイド物質において、LMペクチンをシート形成剤として含むものでもある。該LMペクチンは、エステル化が比較的少なくなされている低エステルペクチンまたは低メトキシルペクチンであり、具体的には、該LMペクチンは、分子構造内部にカルボキシル基(carboxyl group)が約50%未満に含有されたペクチンを意味しうる。該LMペクチンは、カラギーナンと異なり、放冷時、ゲル化されていない特性を有するために、スラリー型香料組成物の粘度を低くすることができる(例:約600cpないし800cpほど)。併せて、乳化剤なしにも、スラリー型香料組成物の製造が可能であり、該乳化剤による安全性問題から自由にもなる。
【0083】
LMペクチンは、分子構造内部にカルボキシル基を、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満または約10%未満で含むものでもある。該LMペクチンの分子構造内部にカルボキシル基含有量が少なくなるほど、該LMペクチンを含むスラリーの粘度が低くなりうる。
【0084】
また、いくつかの実施形態において、香料組成物は、バルキング剤(bulking agent)をさらに含むものでもある。該バルキング剤は、蒸溜水以外の構成成分の合計質量(すなわち、乾物質量)を増加させ、製造される香料シート10の体積を増大させることができ、香料シート10の本来の機能に影響を及ぼさない物質でもある。具体的には、該バルキング剤は、香料シート10の体積を増大させるが、スラリー粘度を実質的に上昇させないか、あるいは香料シート10の香料保留機能に悪影響を及ぼさない特性を有しうる。望ましくは、該バルキング剤は、澱粉類、変性澱粉または澱粉加水分解物でもある。しかしながら、それらに限定されるものではない。
【0085】
変性澱粉は、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピルリン酸二澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸二澱粉、リン酸一澱粉、リン酸化リン酸二澱粉などを示す。
【0086】
澱粉加水分解物とは、澱粉を加水分解する工程を含むプロセスによって得られる物質を示す。該澱粉加水分解物は、例えば、澱粉を直接加水分解して得られる物質(すなわち、デキストリン)、または澱粉を加熱処理した後、加水分解して得られる物質(すなわち、難消化性デキストリン)を含むものでもある。バルキング剤は、例えば、デキストリンであり、さらに具体的には、シクロデキストリンでもある。
【0087】
澱粉加水分解物は、約2ないし約40の範囲であるDE値を有する澱粉加水分解物、望ましくは、約2ないし約20の範囲に含まれるDE値を有する澱粉加水分解物でもある。約2ないし約20の範囲に含まれるDE値を有する澱粉加水分解物として、例えば、パインデックス#100(松谷化学工業(株))、パインファイバー(松谷化学工業(株))、TK-16(松谷化学工業(株))が活用されうる。
【0088】
ここで、「DE」は、「dextrose equivalent」の略語であり、DE値は、澱粉の加水分解の程度、すなわち、澱粉の糖化率を示す。本開示におけるDE値は、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法によって測定された値でもある。加水分解された澱粉(澱粉加水分解物)の特性、例えば、澱粉加水分解物の分子量や、澱粉加水分解物を構成する糖分子の配列のような特性は、澱粉加水分解物の分子ごとに一定せず、ある分布またはあるバリエーション(variation)を有して存在している。澱粉加水分解物の特性の分布やバリエーション、またはカットされる区間の差などにより、該澱粉加水分解物は、その分子ごとに異なる物性特徴(例えば、DE値)が発現されうる。そのように、該澱粉加水分解物は、異なる物性特徴を示す分子の集合であるが、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法における測定結果(すなわち、DE値)は、澱粉の加水分解の程度を示す代表値として取り扱われている。
【0089】
望ましくは、澱粉加水分解物は、約2ないし約5のDE値を有するデキストリン、約10ないし約15のDE値を有する難消化性デキストリン、及びそれらの混合物によってなる群のうちから選択されうる。約2ないし約5のDE値を有するデキストリンとして、例えば、パインデックス#100(松谷化学工業(株))が活用されうる。約10ないし約15のDE値を有する難消化性デキストリンとして、例えば、パインファイバー(松谷化学工業(株))が活用されうる。
【0090】
また、いくつかの実施形態において、香料組成物は、可塑剤をさらに含むものでもある。該可塑剤は、香料シート10に適切な柔軟性を賦与することにより、シートの物理性を向上させることができる。該可塑剤は、例えば、グリセリン及びプロピレングリコールのうち少なくとも一つを含むものでもあるが、それらに限定されるものではない。
【0091】
また、いくつかの実施形態において、香料組成物は、乳化剤をさらに含むものでもある。該乳化剤は、脂溶性が強い香料と、水溶性のハイドロコロイド物質とが良好に混合されるようにし、香料シート10の香保有力を増大させることができる。該乳化剤の例としては、レシチンを挙げることができるが、それに限定されるものではない。
【0092】
一方、前述の香料組成物から製造された香料シート10は、多様な含量比(組成比)を有しうる。
【0093】
いくつかの実施形態において、香料シート10は、全体100重量部を基準に、水分約2ないし約15重量部、改質されたセルロース約25ないし約90重量部、及び香料約0.1ないし約60重量部を含むものでもある。
【0094】
また、いくつかの実施形態において、香料シート10は、全体100重量部を基準に、水分約2ないし約15重量部、LMペクチン約25ないし約90重量部、及び香料約0.1ないし約60重量部を含むものでもある。
【0095】
また、いくつかの実施形態において、香料シート10は、全体100重量部を基準に、水分約2ないし約15重量部、ハイドロコロイド物質約1ないし約60重量部、LMペクチン約1ないし約60重量部、及び香料約0.1ないし約60重量部を含むものでもある。
【0096】
いくつかの実施形態において、可塑剤は、香料シート10全体100重量部を基準に、約0.1ないし約15重量部ほど含まれるものでもある。そのような数値範囲内において、適切な柔軟性を有するシートが形成されうる。例えば、可塑剤が非常に少なく添加される場合には、シートの柔軟性が落ち、工程中、香料シートが容易に破損され、可塑剤が過度に多く添加される場合には、シートが好ましく形成されないのである。
【0097】
以上、本開示のいくつかの実施形態による、香料シート10及びその製造方法について説明した。以下においては、
図7以下の図面を参照し、本開示のいくつかの実施形態による、例えば、喫煙物品100,200,300の製造方法について説明する。以下においては、説明の便宜上、例えば、喫煙物品100,200,300、及びその構成要素に係わる参照番号は、省略する。
【0098】
一実施形態による、喫煙物品の製造方法は、ラッピング材料を製造する段階、及び製造されたラッピング材料でもって、喫煙物品の少なくとも一部をラッピングし、喫煙物品を製造する段階を含むものでもある。例えば、該ラッピング材料でもって、喫煙物質部の少なくとも一部をラッピングし、喫煙物品が製造されうる。
【0099】
前記ラッピング材料を製造する段階は、前述の香料シート10、または香料シート10の原料である香料組成物を利用し、ラッピング材料を製造する段階を含むものでもある。ただし、その具体的な製造方式は、実施形態によっても異なる。
【0100】
いくつかの実施形態においては、香料シート10とラッピングペーパーとを合紙する工程を介し、ラッピング材料が製造されうる。さらに理解の便宜を提供するために、
図7を参照し、本実施形態について敷衍説明する。
【0101】
図7に図示されているように、ラッピングペーパーが巻き取られている第1ボビン410を介してラッピングペーパーが供給され、それと同時に、香料シート10が巻き取られている第2ボビン420を介して香料シート10が供給されうる。そして、供給されたラッピングペーパーと香料シート10は、プレスローラ440によって合紙されうる。このとき、香料シート10がハイドロコロイド物質によって構成された場合には、噴射機430を介して所定の液体が噴射されうる。そして、噴射された液体により、香料シート10が粘着性を有するようになり、別途の接着剤なしにも、香料シート10がラッピングペーパーと強く合紙されうる。また、それにより、喫煙物品のラッピング材料450が容易に製造されうる。製造されたラッピング材料450は、適切な大きさに切断し、喫煙物品のラッパに利用されうる。
【0102】
前記所定の液体は、例えば、水(蒸溜水)、エタノールなどにもなるが、それらに限定されるものではない。
【0103】
また、第2ボビン420を介して供給される香料シート10の厚みは、約10μmないし150μmでもあり、望ましくは、約30μmないし150μm、約40μmないし150μm、約60μmないし150μm、または約60μmないし120μmでもある。そのような数値範囲内において、香料シート10がラッピングペーパーに容易に合紙され、ラッピング材料450が過度に厚くなる問題が防止され、適切な柔軟性が確保されうる。それだけではなく、香料シート10の香保留性も向上されうる。
【0104】
他のいくつかの実施形態においては、液状の香料組成物をラッピングペーパー上に塗布して乾燥させるコーティング(coating)工程を介し、ラッピング材料が製造されうる。さらに理解の便宜を提供するために、
図8を参照し、本実施形態について敷衍説明する。
【0105】
図8に図示されているように、ラッピングペーパーが巻き取られているボビン510を介してラッピングペーパーが供給されうる。そして、塗布機520(例:ノズル)を介し、液状(例:スラリー状態)の香料組成物530が、供給されるラッピングペーパー上に塗布されうる。香料組成物530は、ラッピングペーパーの移送過程(540)の間、自然乾燥させるか、あるいは別途の乾燥設備内で乾燥させうる。その結果として、ラッピングペーパーは、香料組成物530にコーティングされ、ラッピング材料550が製造されうる。製造されたラッピング材料550は、適切な大きさに切断し、喫煙物品のラッパとして利用されうる。
【0106】
このとき、コーティングされた香料組成物530が占める厚みは、約100μm以下でもあり、望ましくは、約90μm、80μm、70μm、60μmまたは50μm以下でもある。そのような数値範囲内において、ラッピング材料550が過度に厚くなることが防止され、適切な柔軟性が確保されうる。
【0107】
以上、
図7及び
図8を参照し、本開示のいくつかの実施形態による、ラッピング材料450,550と喫煙物品との製造方法について説明した。前述の方法によれば、例えば、喫煙物品100のラッピングペーパーと香料シート10とが合紙されるか、あるいはラッピングペーパー上に香料シート10の組成物が塗布されうる。それにより、例えば、喫煙物品100のラッピング材料が容易に製造されうる。併せて、製造されたラッピング材料を利用すれば、既存の製造設備(すなわち、喫煙物品のラッピングを遂行する設備)をそのまま利用し、例えば、喫煙物品100が製造されうるという長所がある。
【0108】
以下においては、実施形態及び実験例を介し、前述の香料シート10の構成及び効果につき、さらに明確にさせる。ただし、以下の実施形態は、香料シート10の一部例示に過ぎないものであるので、本開示の範囲は、以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0109】
実施例1ないし7
【0110】
下記の表1に記載されているような含量比を有する香料シートを製造し、製造された香料シートとラッピングペーパーとを合紙(または、香料組成物をラッピングペーパーにコーティング)し、喫煙物質部のラッパを製造した。そして、製造されたラッパを利用し、シガレットを製造した。
【0111】
【0112】
実験例1:製造容易性及び特性の評価
【0113】
実施例1ないし7による香料シート、ラッパ及びシガレットにつき、組成液(すなわち、香料組成物)製造容易性、製造容易性、外観などの品質特性、香料保留特性及び喫煙時の官能特性を総合的に評価する実験を進めた。該官能特性の評価は、5年以上の喫煙経験を有しているパネルを対象に行われ、以下の3個等級によって評価を進め、評価結果は、下記の表2に記載されている。
【0114】
○:優秀
【0115】
△:良好
【0116】
X:不良
【0117】
【0118】
前記表2を参照すれば、本実施形態による香料シートは、いずれも組成液、シート及びラッパ製造容易性の側面において、すぐれていると評価された。
【0119】
また、実施例6及び7による香料シートは、品質特性が他の実施形態に比べ、若干落ちるように評価された。言い換えれば、ゲランガムとゼランチンとに基づいて製造された香料シートは、他のシート形成剤(例:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、LMペクチンなど)に基づく香料シートに比べ、品質特性が若干落ちるように評価された。
【0120】
また、実施例4,6及び7による香料シートは、喫煙時の官能特性が他の実施形態に比べ、落ちるように評価された。詳細には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ゲランガム及びゼラチンを含む香料シートは、喫煙時に異臭味が生じるように評価され、生じた異臭味がタバコ味に否定的な影響を及ぼすように確認された(実験例2参照)。
【0121】
実験例2:官能評価
【0122】
5年以上の喫煙経験を有しているパネルを対象に、実施例1ないし7によるシガレットの細部的な官能特性を評価する実験を進めた。具体的には、タバコ固有味、メントール清凉感、異臭味及びタバコ味のさっぱりさを評価項目に設定し、1点から7点まで官能評価を実施した。評価結果は、下記表3に記載されている。参照として、異臭味の点数が高いほど否定的な評価を意味し、他項目の場合、点数が高いほど肯定的な評価を意味する。
【0123】
【0124】
表3を参照すれば、実施例4,6及び7によるシガレットの場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ゲランガム及びゼラチンによる異臭味が相対的にさらに生じしているように評価される。
【0125】
また、実施例2,3及び5によるシガレットの場合、相対的にメントール清凉感がさらにすぐれているように評価される。前記シガレットの相対的にすぐれたメントールの清凉感は、香料シートをラッパに適用しても、香発現性が十分に向上されるということを意味し、メチルセルロース(MC)及びLMペクチンに基いて製造された香料シートが、香保留性と香発現性との側面において、すぐれた性能を有していることを意味しうる。
【0126】
実験例3:シート厚みによる製造容易性及び特性評価
【0127】
実施例3による香料シートの厚みを異ならせ、シート及びラッパの製造容易性、香料保留特性及びシガレット製造容易性を評価する実験を進めた。前述の実験例1と同一に、3個等級によって評価を進め、評価結果は、下記の表4に記載されている。参照として、シート厚は、香料シートの自体厚、または香料組成物が乾燥された後のコーティング厚を意味しうる。
【0128】
【0129】
表4を参照すれば、香料シートの厚みが約150μm以上である場合、シート及びラッパの製造容易性とシガレット製造容易性とが若干落ちるように評価された。それは、シートの厚みが厚くなるほど、柔軟性が落ちるためであると判断される。
【0130】
また、香料シートの厚みが約40μm以下である場合には、香料保留特性が若干落ちるように評価された。従って、香料保留特性と製造容易性とを同時に確保するためには、香料シートが約40μmないし150μmの厚みに製造されることが望ましいということを知ることができる。
【0131】
以上、本実施形態及び本実験例を介し、前述の香料シート10の構成及び効果につき、さらに詳細に説明した。
【0132】
以上、添付図面を参照し、本開示の実施形態について説明したが、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者であるならば、その技術的思想や、必須な特徴を変更せずとも、本開示が他の具体的な形態にも実施されうるということを理解することができる。従って、以上で記述された実施形態は、全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解されなければならない。本開示の保護範囲は、特許請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は、本開示によって定義される技術的思想の権利範囲に含まれると解釈されなければならないのである。
【国際調査報告】