(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】使用済みナトリウム冷却炉燃料アセンブリのザマック安定化
(51)【国際特許分類】
G21F 9/36 20060101AFI20240326BHJP
G21C 19/06 20060101ALI20240326BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20240326BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G21F9/36 511F
G21C19/06 100
G21C19/32 080
G21F9/28 591B
G21F9/36 541A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562941
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 US2021027249
(87)【国際公開番号】W WO2022220819
(87)【国際公開日】2022-10-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コルビン,ロバート,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイツラー,パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】トルアックス,ジョン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー,マーク アール.
(57)【要約】
本明細書には、ザマックを用いてナトリウム冷却原子炉由来の使用済み燃料アセンブリを安定化させるための方法およびシステムが記載されている。ザマックとナトリウムとの間には相乗作用があることが確認されおり、この相乗作用によって、燃料アセンブリのナトリウム濡れ表面との熱伝導性インターフェースを、ザマックが形成できるようになる。この方法では、1または複数の使用済み燃料アセンブリが、ナトリウム冷却材プールから取り出され、保護シース内に配置される。次いで、シースの残余空間に、液体ザマックが充填される。ある程度まで、ザマックは、燃料アセンブリ上に残存するナトリウムと溶け合って、合金を形成することとなる。溶解せずに残る余剰ナトリウムは、ザマックの充填によって、シースから移動される。次いで、ザマックが固体になるまで冷却され、シースが密閉される。計算によれば、結果的に得られるザマック安定化使用済み燃料アセンブリは、液体冷却の必要なく貯蔵および移送できるのに十分な内部熱伝導率を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み核燃料アセンブリの貯蔵準備をする方法であって、
前記使用済み核燃料アセンブリは、外部と、底部ノズルおよび頂部ノズルを通じてアクセス可能な1または複数の内部チャンバと、を有し、
第1融点を有するある量のザマックを用意する工程と、
前記第1融点よりも高い第2融点を有する材料から作製されたシースであって、前記使用済み核燃料アセンブリの前記底部ノズルと係合するように構成されたレセプタクルをさらに含むシースを用意する工程と、
前記使用済み核燃料アセンブリを液体ナトリウム環境から除去する工程と、
前記使用済み核燃料アセンブリをシース内に配置して、前記レセプタクルを前記底部ノズルと係合させる工程と、
前記ある量のザマックを前記第1融点よりも高いが前記第2融点よりも低い温度に加熱することによって液体ザマックを生成する工程と、
前記レセプタクルおよび前記底部ノズルを通じて液体ザマックを流すことによって、前記使用済み核燃料アセンブリの1または複数の前記内部チャンバに液体ザマックを充填する工程と、
前記シースと前記使用済み核燃料アセンブリの前記外部との間の空間内へ液体ザマックを当該液体ザマックで満ちるまで流すことによって、前記シースに液体ザマックを充填する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ザマックは、ザマック2、KS、ザマック3、ザマック4、ザマック5およびザマック7から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ザマックは、ザマック3である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記シースに液体ザマックを充填する工程の後に、前記シース内の前記ザマックを前記第1融点未満の温度に冷却する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記使用済み核燃料アセンブリを不活性環境下の前記シース内に配置する工程と、
前記シースに液体ザマックを充填する工程であって、それによって前記不活性環境を置換する工程と、
をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1融点よりも高い第2融点を有する前記材料は、304ステンレス鋼、316ステンレス鋼、およびT91鋼から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記使用済み核燃料アセンブリから液体ナトリウムを排出する工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数の前記充填操作によって前記シースと1または複数の前記内部チャンバとから移動されたナトリウムを収集する工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記配置操作は、
前記使用済み核燃料アセンブリを前記シース内に配置する工程の後に、前記シースに蓋をする工程
をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記シースおよび1または複数の前記内部チャンバにザマックを充填する工程の後に、前記シースを冷却する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却操作は、
前記シースを底部から冷却する工程
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シースおよび1または複数の前記内部チャンバにザマックを充填する工程の後に、前記シースを乾式貯蔵装置内に配置する工程をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記シースおよび1または複数の前記内部チャンバにザマックを充填する工程の後に、前記シースを乾燥した地下貯蔵場所に配置する工程をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記使用済み核燃料アセンブリを前記ナトリウム環境から除去する工程と前記使用済み核燃料アセンブリに液体ザマックを充填する工程との間に、前記使用済み核燃料アセンブリの少なくとも1つの表面上における酸化物の形成を防止する工程をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記使用済み核燃料アセンブリを低酸素環境下に維持することによって、前記使用済み核燃料アセンブリ上における酸化物層の形成を阻害する工程をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法の1または複数の操作は、不活性雰囲気または低酸素雰囲気のうちの一方の中で行われることで、前記使用済み核燃料アセンブリの表面上における酸化物層の形成が阻害される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
使用済み核燃料アセンブリの貯蔵準備をする方法であって、
第1融点を有するある量のザマックを用意する工程と、
前記使用済み核燃料アセンブリの酸素への曝露を制御しつつ前記使用済み核燃料アセンブリを液体ナトリウム環境から除去する工程であって、それによって、前記使用済み核燃料アセンブリ上における酸化物層の形成を阻害する工程と、
ザマック充填使用済み核燃料アセンブリが得られるよう前記使用済み核燃料アセンブリに液体状態の前記ザマックを充填する工程であって、それによって、前記使用済み核燃料アセンブリにおける少なくとも一部の液体ナトリウムを前記ザマック内へ溶解させ、残存する液体ナトリウムを前記使用済み核燃料アセンブリから移動させる工程と、
前記ザマックが前記第1融点未満の温度になるまで前記ザマック充填使用済み核燃料アセンブリを冷却して、ザマック安定化使用済み核燃料アセンブリを得る工程と、
前記ザマック安定化使用済み核燃料アセンブリを乾式貯蔵する工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
前記充填操作は、
前記第1融点よりも高い第2融点を有する材料から作製されたシース内に前記使用済み核燃料アセンブリを配置する工程と、
前記シースと前記使用済み核燃料アセンブリとの両方に液体ザマックを充填する工程と、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ザマックは、ザマック2、KS、ザマック3、ザマック4、ザマック5、およびザマック7から選択される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記ザマックは、ザマック3である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記シースに液体ザマックを充填する工程の後に、前記シース内の前記ザマックを前記第1融点未満の温度に冷却する工程をさらに含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記使用済み核燃料アセンブリを不活性環境下の前記シース内に配置する工程と、
前記シースに液体ザマックを充填する工程であって、それによって前記不活性環境を置換する工程と、
をさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1融点よりも高い第2融点を有する前記材料は、304ステンレス鋼、316ステンレス鋼、およびT91鋼から選択される、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記使用済み核燃料アセンブリから液体ナトリウムを排出する工程をさらに含む、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
複数の前記充填操作によって前記シースと前記使用済み核燃料アセンブリとから移動されたナトリウムを収集する工程をさらに含む、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記配置操作は、
前記使用済み核燃料アセンブリを前記シース内に配置する工程の後に、前記シースに蓋をする工程
をさらに含む、請求項17~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記シースおよび前記使用済み核燃料アセンブリにザマックを充填する工程の後に、前記シースを冷却する工程をさらに含む、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記冷却操作は、
前記シースを底部から冷却する工程
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記シースおよび前記使用済み核燃料アセンブリにザマックを充填する工程の後に、前記シースを乾式貯蔵装置内に配置する工程をさらに含む、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記シースおよび前記使用済み核燃料アセンブリにザマックを充填する工程の後に、前記シースを乾燥した地下貯蔵場所に配置する工程をさらに含む、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法は、前記使用済み核燃料アセンブリを酸素に曝露することなく行われる、請求項17~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法の1または複数の操作は、前記使用済み核燃料アセンブリを酸素に曝露することなく行われる、請求項17~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法の1または複数の操作は、不活性雰囲気中で行われる、請求項17~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
固体ザマックを充填した燃料アセンブリを備える、装置。
【請求項35】
前記燃料アセンブリは、容器内に密閉されている、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記燃料アセンブリと前記容器との間の空間には、固体ザマックが充填されている、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
ナトリウム冷却原子炉由来の使用済み核燃料アセンブリを安定化させるためのシステムであって、
ザマック貯蔵タンクと、
融点を有する、ある量のザマックと、
前記使用済み核燃料アセンブリを受け入れて密閉保定するように構成されたシースであって、液体ザマックを受け入れて前記シースに注入するための入口ポートを有するシースと、
前記融点よりも高い温度にザマックを加熱するように適合された加熱器と、
を備える、システム。
【請求項38】
前記シース内への液体ザマックの流れを制御するように構成された制御装置をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記シースとその内容物とを前記融点未満に冷却するように適合された冷却器をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記シースから液体ナトリウムを収集するように構成されたナトリウムトラップをさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
複数の燃料アセンブリを収容するナトリウムプールを含む前記ナトリウム冷却原子炉をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項42】
複数の燃料アセンブリを前記ナトリウムプールから前記シースへ移送するように適合された燃料アセンブリ取扱システムをさらに備える、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記使用済み核燃料アセンブリを低酸素環境下に維持するように適合されたカバーガスシステムをさらに備える、請求項37~42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
ナトリウムに曝露した表面を有するコンポーネントの貯蔵準備をする方法であって、
第1融点を有するある量のザマックを用意する工程と、
ザマック被覆表面が前記コンポーネント上に得られるように、ナトリウムを前記表面から液体ザマックによって移動させる工程と、
ザマック安定化コンポーネントが得られるように、前記第1融点未満の温度になるまで前記ザマックを冷却する工程と、
を含む、方法。
【請求項45】
前記コンポーネントは、ナトリウムが充填された管を含み、
移動させる工程は、
前記管に液体ザマックを充填する工程
をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔イントロダクション〕
使用済み核燃料アセンブリを処分する方法が必要とされている。使用済み燃料アセンブリは、崩壊熱と称される熱を生成し続ける。アセンブリ内の核物質が分裂し続けるからである。崩壊熱が除去されなければ、この崩壊熱によって、燃料アセンブリ内のコンポーネントは、許容できないほど高温となり得る。潜在的には、このことが、コンポーネントの破損、ならびにアセンブリ内の核物質および核分裂生成物の放出を招来する可能性がある。
【0002】
使用済み燃料アセンブリの過熱を防止するために、しばしば、使用済み燃料アセンブリを大きな水プールに浸漬する「湿式貯蔵(wet storage)」が採用される。水プールは、使用済み燃料アセンブリによって生成される崩壊熱を除去するための冷却材として機能する。しかしながら、湿式貯蔵は、長期貯蔵の解決策であるとは考えられていない。プールの完全性が維持される必要があるからである。液体浴またはその他の能動的冷却を要しない「乾式貯蔵(dry storage)」は、長期貯蔵には好ましい。これによって、使用済み燃料アセンブリを最小限のコストで通常に貯蔵することが可能になる。
【0003】
長期間の乾式貯蔵のために使用済み燃料アセンブリを安定化させる、提案される一方法は、燃料アセンブリに空隙充填固体材料を充填することである。熱伝導性を有する金属または金属合金(例えば、鉛)は、その融点よりも高い温度に加熱され、使用済み燃料アセンブリ内へと流されて燃料アセンブリ内の全空間(例えば、燃料アセンブリを通る冷却材流れのために設けられたチャネル)を満たし、次いで、冷却および固体化するようにされ得るだろう。理論的には、使用済み燃料アセンブリが金属によって完全に満たされた場合、安定化された使用済み燃料アセンブリの熱伝導率は、燃料アセンブリの外部へ崩壊熱を迅速に輸送し、当該崩壊熱が自然対流および伝導によって外部環境へ放散されることによって、コンポーネントが許容できないほど高温になることを防止するのに十分なものとなり得るだろう。したがって、理論上は、このように安定化された使用済み燃料アセンブリは、液体冷却浴またはその他の能動的冷却手段を要することなく、移送および貯蔵することができるだろう。
【0004】
しかしながら、研究によって、この方法には1つの大きな問題があることがわかった。調査された空隙充填材料と燃料アセンブリ内のコンポーネントの外面との間に、空隙充填材料の固体化時に、通常、ギャップが形成されることが見出されたのである。このギャップによって、燃料アセンブリコンポーネントと空隙充填材料との間の熱伝達は、この方法が実行不可能となるほどに減少してしまう。
【0005】
〔使用済みナトリウム冷却炉燃料アセンブリのザマック安定化〕
本明細書には、ザマックを用いてナトリウム冷却原子炉由来の使用済み燃料アセンブリを安定化させるための方法およびシステムが記載されている。ザマックとナトリウムとを使用する場合には相乗作用があることが確認されており、この相乗作用によって、燃料アセンブリのナトリウム濡れ表面との熱伝導性インターフェースを、ザマックが形成できるようになる。この方法では、1または複数の使用済み燃料アセンブリが、ナトリウム冷却材プールから取り出され、保護シース内に配置される。次いで、シースの残余空間に、液体ザマックが充填される。ある程度まで、ザマックは、燃料アセンブリ上に残存するナトリウムと溶け合って、合金を形成する。溶解せずに残る余剰ナトリウムは、ザマックの充填によって、シースから移動される(のけられる、displaced)。次いで、ザマックが固体になるまで冷却され、シースが密閉される。計算によれば、結果的に得られるザマック安定化使用済み燃料アセンブリは、液体冷却の必要なく貯蔵および移送できるのに十分な内部熱伝導率を有する。
【0006】
金属安定化の一欠点(すなわち、ギャップ形成)が、本明細書に記載の方法およびシステムによって回避される。初期の安定化の取り組みにおけるギャップ形成の主な原因は、燃料アセンブリのコンポーネントの外面上の酸化物層の存在であることが確認されている。通常の原子炉運転の間、またはその後の湿式貯蔵の間に、水、空気またはその他の酸素含有冷却材との接触によって、燃料アセンブリのコンポーネントの外面に酸化物層が発達する。例えば、高温時には、数マイクロメートルの酸化物層が、わずか数秒間の空気への曝露で発達し得ることが確認されている。調査された空隙充填材料と燃料アセンブリの金属コンポーネントとの間の良好な金属結合は、酸化物層によって妨害されてしまう。燃料アセンブリのコンポーネントと空隙充填材料との接触面に良好な金属結合が存在しなければ、液体空隙充填材料が固体化するときに、接触面にギャップが形成される。
【0007】
燃料アセンブリ表面上における酸化物層の形成は、本明細書に記載の方法によって防止される。従来の加圧水型原子炉とは異なり、ナトリウム冷却炉内の燃料アセンブリは酸素に曝露しておらず、燃料アセンブリ上の酸化物層の形成は液体ナトリウムによって防止されている。その後に使用済み燃料アセンブリが酸素へ曝露することを、ナトリウム冷却材プールからアセンブリを取り出し、アセンブリにザマックを充填するプロセスの間に防止することによって、酸化物層の誘起するギャップ形成が防止され、良好な金属結合をザマックと燃料アセンブリの外面との間に形成することができる。
【0008】
〔図面の簡単な説明〕
少なくとも1つの実施例の様々な態様が、添付の図面を参照しつつ、以下に論じられる。図面は、一定の縮尺で描かれることを意図したものではない。図面は、様々な態様および実施例の例示とさらなる理解とを提供するよう添付したものであって、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するものである。しかしながら、図面は、特定の実施例の限定を定めるものと意図したものではない。図面は、明細書の残りの部分と協働して、説明され特許請求された態様および実施例の原理および動作を説明する機能を有する。図面において、様々な図に示される同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の数字によって表されている。明確さのため、どの図におけるどの構成要素にもラベルが付されているとは限らない。
【0009】
図1は、ナトリウム冷却炉を有する統合エネルギーシステムの一実施形態を示す。
【0010】
図2は、ナトリウム冷却炉内で使用するための燃料アセンブリの分解図である。
【0011】
図3は、異なる種類の燃料アセンブリの側面図を示す。
【0012】
図4は、
図1に示す統合エネルギーシステムにおける使用に適したザマック安定化システムの一実施形態を示す。
【0013】
図5は、シースの任意の実施形態に実装され得るであろう追加の特徴(構成)を含むシースの代替的な一実施形態を示す。
【0014】
図6は、ザマックを用いてナトリウム冷却炉由来の使用済み核燃料アセンブリを安定化させるための方法の一実施形態を示す。
【0015】
〔詳細な説明〕
ザマック安定化の方法およびシステムを開示および説明する前に、本開示は、本明細書に開示された特定の構造、処理工程、構成要素、または材料に限定されるものではなく、当業者であれば認識するであろうそれらの均等物にまで拡張されることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、単にナトリウム濡れ燃料アセンブリを安定化させる特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されるものであり、限定を意図するものではないことを理解されたい。単数形「a」、「an」、および「the」には、本明細書で使用される場合、文脈に別段の定めのない限り、複数の指示対象が含まれることに留意されたい。それゆえ、例えば、「a lithium hydroxide(水酸化リチウム)」の言及は、定量的または源限定的(source limiting)であるとして解釈されるべきではなく、「a step(工程)」の言及には、複数の工程が含まれ得、「producing(生成する工程)」または反応の「products(生成物)」の言及は、反応の生成物の全てであると解釈されるべきではなく、「reacting(反応させる工程)」の言及には、1または複数のかかる反応工程の言及が含まれ得る。このように、反応させる工程には、特定された反応生成物を生成する、同様の材料の複数回または繰り返しの反応が含まれ得る。
【0016】
ザマックを用いてナトリウム冷却原子炉由来の使用済み燃料アセンブリを安定化させるための方法およびシステムを、以下に説明する。上述したように、ザマックとナトリウムとの間には、燃料アセンブリのナトリウム濡れ表面との熱伝導性インターフェースをザマックが形成できるようにする相乗作用が存在することが確認されている。ある程度まで、ザマックはナトリウムと溶け合って、合金を形成するが、結果的に得られるナトリウム富化(sodium-enriched)ザマックの安定化材料としての有効性は低減されない。さらに、液体ザマックの密度は液体ナトリウムよりも大きいため、任意の余剰液体ナトリウムを、ザマック充填プロセス中に、燃料アセンブリおよびシースから容易に移動させ、収集することができる。
【0017】
ザマック(Zamak)は、主要成分金属である亜鉛と合金元素であるアルミニウム、マグネシウムおよび銅とを有する合金の族を指す。ザマック合金は、亜鉛-アルミニウム合金族の一部であり、4%(実質的に3.5~4.3重量%のAl)という一定の公称アルミニウム組成によって、その他の亜鉛-アルミニウム合金と区別される。一般に、ザマックは、3.5~4.3%のAl、0.0~0.25%のCuおよび0.01~0.02%のMgを有し、残りがZnである。本文献の目的に関しては、ザマック合金は、1~10%のAl;0~1%のCu;0.01~1%のMg;0.5%未満の不純物(この場合、不純物はAl、Cu、MgおよびZn以外の任意の元素);および、残りのZnを有する合金として定義される。具体的には、ASTM B240規格では、ザマック族の種々のメンバーのインゴットに関する式(処方)が定義されている。ASTM B240に定義されたザマック族のメンバーの一部に、ザマック2、KS、ザマック3、ザマック4、ザマック5、およびザマック7がある。ザマック族の任意の特定のメンバーが、本明細書で用いられてもよい。一実施形態では、ザマック3が用いられる。ザマック3の組成および性質を以下に示す。ザマック族のその他のメンバーの組成は、ASTM B240規格内に見出すことができる。ASTM B240規格は、参照によって本明細書に援用される。
【0018】
【0019】
【0020】
この方法では、1または複数の使用済み燃料アセンブリが、ナトリウム冷却材プールから取り出され、保護シース内に配置される。次いで、シースの残余空間に、液体ザマックが充填される。ある程度まで、ザマックは、燃料アセンブリ上に残存するナトリウムと溶け合って、合金を形成する。溶解せずに残る余剰ナトリウムは、ザマックの充填によってシースから移動される(のけられる)。次いで、ザマックが固体になるまで冷却され、シースが密閉される。計算によれば、結果的に得られるザマック安定化使用済み燃料アセンブリは、液体冷却の必要なく貯蔵および移送できるのに十分な内部熱伝導率を有する。
【0021】
図1は、ナトリウム冷却炉102を有する統合エネルギーシステム100の一実施形態を示す。ナトリウム冷却炉102は、ナトリウム106のプールを含む原子炉容器104を含む。核燃料を含む1または複数の燃料アセンブリ108(3つ図示されている)が、ナトリウム106のプールに浸漬されている。ナトリウム106に浸漬されると、燃料アセンブリ108の内部チャンバにはナトリウムが充填される。ナトリウム106は一次冷却材として作用し、運転中に、浸漬された燃料アセンブリ108から二次冷却材へ熱を伝達する。
図3および
図4に関して、燃料アセンブリがより詳細に説明される。
【0022】
一設計では、
図1に示すように、プール内のナトリウムは、燃料アセンブリ108と、一次熱交換器110と称される浸漬されたプール内熱交換器との間を循環する。加熱されたナトリウムが、燃料アセンブリ108から一次熱交換器110へ流れ、冷却されたナトリウムが燃料アセンブリ108へ流れ戻る、循環ループ(液体流れの方向の矢印111によって示される)が形成されている。
【0023】
一次熱交換器110は、二次冷却材内へ熱を伝達することによって、ナトリウムを冷却する。二次冷却材は、ナトリウムまたは他の何らかの流体冷却材であってもよく、一次熱交換器110と二次熱交換器112との間を循環する。図示の実施形態では、二次熱交換器112は、二次冷却材から蓄熱媒体へ、熱を伝達する。低温媒体の供給物は、低温槽114内に設けられている。二次熱交換器112は、低温媒体へ熱を伝達し、高温となった媒体は、高温槽116内に貯蔵される。
【0024】
蓄熱はよく知られており、現在知られているかまたは今後開発される、任意の適切な蓄熱媒体が使用されてもよい。図示の実施形態では、蓄熱媒体は塩である。適切な蓄熱媒体の例には、共晶溶体(eutectic solution)、相変化材料、混和性間隙合金(miscibility gap alloy)、金属の混合物(例えば、AlSi12)、セメント系材料、溶融塩(例えば、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの1種または複数種の塩化物塩;ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの1種または複数種の硝酸塩。とりわけ、NaKMg、またはNaKMgCl)、固体ケイ素もしくは溶融ケイ素、または、これらの材料もしくはその他の材料の組合せが含まれる。
【0025】
統合エネルギーシステム100からの電力が必要となったとき、高温槽116からの高温塩が、蒸気発生器118を通過させられる。蒸気発生器118において、高温塩から加圧水流へ熱が伝達され、過熱蒸気が生成される。(今や低温となった)塩は、低温槽114へ送られ、二次冷却材からより多くの熱を受け取る必要が生じるまで貯蔵される。
【0026】
過熱蒸気内の熱エネルギーは、過熱蒸気に従来の蒸気タービンおよび凝縮器のシステム120を通過させることによって、機械エネルギーに変換される。図示の実施形態では、蒸気タービン122は、発電機124を駆動して電気をつくり出す。
【0027】
図示の実施形態では、原子炉容器104には、容器ヘッド126によって蓋がされている。容器ヘッド126には、アクセスポートが設けられている。当該アクセスポートによって、燃料アセンブリの挿入および原子炉容器104からの除去(取出し)が可能となっている。燃料アセンブリ取扱システム130は、燃料アセンブリ貯蔵装置132からの新しい燃料アセンブリの回収(取り上げ)、燃料アセンブリ108の挿入および原子炉102からの除去、ザマック安定化システム140への使用済み燃料アセンブリ108の移送のために設けられる。燃料アセンブリ取扱システム130は、取扱時に燃料アセンブリを不活性環境下に維持して、燃料アセンブリが水、空気、または他の任意の望ましくない環境に曝露することを防止し、それによって、原子炉容器104とザマック安定化システム140との間での移送の間に当該燃料アセンブリの表面上に酸化物層が形成されることを、防止はしないとしても阻害する。一実施形態では、燃料アセンブリ取扱システム130は、移送の間に、燃料アセンブリをナトリウム環境下に維持する。代替的な一実施形態では、燃料アセンブリは、取扱の間に、アルゴンまたは窒素等の不活性雰囲気中に維持される。さらに別の一実施形態では、燃料アセンブリ取扱システム130は、0.1%未満の酸素、0.01%未満の酸素、または0.001%未満の酸素を有する低酸素環境下に、燃料アセンブリを維持する。
【0028】
ザマック安定化システム140は、使用済み燃料アセンブリを取扱システム130から受け取る。システム140は、1または複数の使用済み燃料アセンブリを一度に受け取るように実装されてもよい。さらに、システム140は、燃料アセンブリを一度に1つを処理するように実装されてもよく、または、バッチ単位で同時に、もしくは2つ以上を同時に処理するように実装されてもよい。使用済み燃料アセンブリを受け取った後、ザマック安定化システム140は、保護シース(sheath)内にそれを配置する。以下により詳細に説明するように、燃料アセンブリ108内における空きのある任意の空間、および燃料アセンブリ108周囲のシースの残余空間に、液体ザマックが充填される。溶解せずに残る余剰ナトリウムは、ザマックの充填によってシースから移動され、ザマック安定化システム140によって収集される。当該余剰ナトリウムは、原子炉102内、または統合エネルギーシステム100における他の場所で再使用され得る。次いで、ザマック安定化システム140は、外装された(シースに収められた:sheathed)使用済み燃料アセンブリを、ザマックが固体になるまで能動的に冷却し得る。さらに、ザマック安定化システム140は、(冷却前、あるいは冷却中、あるいは冷却後のいずれかのときに)シースを密閉する。結果的に得られる外装されたザマック安定化使用済み燃料アセンブリは、液体冷却の必要なく貯蔵および移送できるのに十分な内部熱伝導率を有するものと計算されている。一実施形態では、ザマック安定化システム140は、安定化プロセスの間、使用済み燃料アセンブリを不活性環境下に維持する。
【0029】
図2は、進行波炉またはその他のナトリウム冷却炉内で使用するための燃料アセンブリ200の一実施形態の分解図である。アセンブリ200には、軸線Aを有する細長い冷却材チャネル202が含まれる。チャネル202は、六角形の断面を有する。内部流路を有するハンドリングソケット204は、チャネル202の第1端部206に固定されており、内部特徴部または外部特徴部を有する。それが原子炉容器内の機構によって把持されて、アセンブリ200を炉心内へ、炉心から外へ、または炉心内において、上昇、下降、およびその他の方法で移動することを、当該内部特徴部または外部特徴部が可能にしている。入口ノズル208は、チャネル202の第2端部210に固定されている。複数の支承リング212および複数の保定リング214は、ハンドリングソケット204および入口ノズル208をチャネル202に取り付けるために用いられる。複数のロックプレート216(この実施例では、2つ)、および複数のロッドストリップレール218は、入口ノズル208の端部に近接して含まれる。複数のロックプレート216および複数のロッドストリップレール218は協働して、燃料棒束220を入口ノズル208に接続する。一実施形態では、燃料棒束220における燃料棒は全て、上述した環状金属燃料棒である。代替的な一実施形態では、燃料棒の一部のみが環状金属燃料棒であって、その他の燃料棒は異なる種類または構造を有してもよい。シールリング222および流量制限器224も示されている。
【0030】
図3は、燃料アセンブリ300の代替的な一設計の側面図を示す。アセンブリは、複数(6つが示されている)のスペーサグリッド330を貫通し、かつ当該複数のスペーサグリッド330によって適所に保持された、複数の燃料棒320のセットを含む。底部ノズルアセンブリ340は、原子炉の炉心内で燃料アセンブリ300を支持する。頂部ノズルアセンブリ310は、複数のガイドシンブル管302を含むアセンブリ300の頂部に設けられている。ガイドシンブル管302は、頂部ノズルアセンブリ310から底部ノズルアセンブリ340まで延在する。スペーサグリッド330は、安定させるために、ガイドシンブル管302に取り付けられてもよい。ホールドダウンスプリング312が、アセンブリ300の頂部における頂部ノズルアセンブリ310の上方に設けられており、これによって、燃料アセンブリのコンポーネントに対して適量のホールドダウン力(抑え力)が保証されている。
【0031】
上述した燃料棒は、その長さ方向に沿って一様である必要はないことに留意されたい。例えば、濃縮度のより多いまたはより少ない領域を、燃料棒の長さ方向に沿って設けることができるだろう。このことは、組み立ての間に燃料の種々の環状スラグまたは異なる粒子状燃料を種々の領域に設けることによって、達成できるだろう。同様に、可燃毒物、他の添加剤、または種々の種類の金属燃料を、特定の領域に設けることができるだろう。種々の材料に加えて、種々の領域は、金属燃料材料は同じままだとしても、種々の属性(例えば、種々のポロシティ、嵩密度、または種々の環状スラグサイズ)を備えることができるだろう。
【0032】
図2および
図3の燃料アセンブリは、本明細書に記載の方法およびシステムを使用して安定化できるであろう燃料アセンブリの2つの例にすぎない。他の種類の原子炉で使用するための、他の多くの燃料アセンブリ設計が存在する。特定の原子炉に対する特定のアセンブリ内における燃料棒およびその他の種類の棒(例えば、制御棒、反射体、および計装棒(instrumentation rod))の構成(配置)は、ザマック安定化技術に影響しない。アセンブリ内における棒の形状および構成(配置)、ならびに、原子炉炉心におけるアセンブリの形状、向きおよび構成(配置)は、特定の原子炉設計に関して、ならびに、使用される環状金属燃料棒の数、種類および性能に応じて、適宜異なり得るが、安定化プロセスに影響はない。
【0033】
図4は、
図1に示す統合エネルギーシステムにおける使用に適したザマック安定化システムの一実施形態を示す。図示の実施形態では、ザマック安定化システム400によって受け取られたときの使用済み燃料アセンブリ402は、シース404内へ配置され、次いで、エンドキャップ406によってシースに蓋がされる。シース404には、燃料アセンブリ402の底部ノズル408と係合するレセプタクル(容器)410が設けられている。燃料アセンブリの配置を案内し、またはザマックの充填に先立ってシース内にさらなる支持を提供するよう、追加の支持体(図示せず)がシース内に設けられてもよい。一実施形態では、レセプタクル410は、燃料アセンブリ402を支持するとともに、シース404にザマックを全体的に充填する前に、底部ノズル408を介して燃料アセンブリ402内へザマックを注入することを可能にする。レセプタクル410は、シースの底部において、下側アクセスポート415に接続されており、ザマックは、当該下側アクセスポート415を通じて、パイプ416によって送出される。
【0034】
シース404は、任意の適切な構造材料から作製されてもよい。シース材料は、ザマックの融点よりも高い融点を有する必要があり、ザマック動作温度(ザマック使用温度)において適切な量の強度を維持する必要がある。ザマックの融点は、約380~390℃である。一実施形態では、ザマックは、燃料アセンブリおよび/またはシースチャンバを充填するとき、400~450℃の温度で送出される。代替的な一実施形態では、送出時のザマック温度は、380~2,000℃である。
【0035】
シース404、およびザマック流れのループにおけるその他のコンポーネントのための適切な材料には、任意の適切な鋼(例えば、特に、304鋼、316鋼等のステンレス鋼、T-91等のフェライトマルテンサイト鋼、または、適切な融点および強度を有するその他の非腐食性材料)が含まれる。適切な鋼のさらなる例には、マルテンサイト鋼、フェライト鋼、オーステナイト鋼、アルミニウム含有ステンレス鋼を含むステンレス鋼、FeCrAl合金、HT9、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、HT9鋼、316鋼、304鋼、APMT(Fe-22重量%Cr-5.8重量%Al)およびアロイ33(鉄、クロム、およびニッケルの混合物、公称では32重量%Fe-33重量%Cr-31重量%Ni)等の先進(advanced)鋼が含まれる。別段の定めのない限り、本明細書中の全てのパーセンテージ(%)は、重量パーセンテージ(重量%)である。鋼は、任意の種類の微細構造を有してもよい。例えば、一実施形態では、クラッディング106内の実質的に全ての鋼が、焼戻しマルテンサイト相、フェライト相およびオーステナイト相から選択される、少なくとも1つの相を有する。一実施形態では、鋼は、HT9鋼、またはHT9鋼の改質版である。
【0036】
制御可能なバルブ412が設けられており、当該制御可能なバルブ412は、ザマックが底部ノズル408内へ導かれるか、または、シースと使用済み燃料アセンブリの外面との間の空間内へ導かれるかを制御する。これによって、シース404と使用済み燃料アセンブリ402の外面との間の外部空間の充填とは独立して、底部ノズルおよび頂部ノズルを介してアクセス可能な燃料アセンブリの内部空間を充填できるようになる。両空間は、同時に充填されてもよく、または時間をずらして充填されてもよい。図示の実施形態では、バルブ412は、シース404内にある。代替的な一実施形態では、バルブ412は、シース404の外部にあってもよく、これによって、バルブ412が再使用できるようになる。この実施形態では、シースは、少なくとも2つのアクセスポートを有する。1つは、シース404と使用済み燃料アセンブリ402の外面との間の外部空間を充填するためのアクセスポートであり、1つは、底部ノズル408および頂部ノズル414を介してアクセス可能な燃料アセンブリ402の内部空間を充填するためのアクセスポートである。
【0037】
燃料アセンブリ402の内部空間を満たすとき、ザマックとの合金を形成しない余剰ナトリウムは、より重量の大きいザマックによって移動され、最終的には、頂部ノズル414から、シースチャンバ(すなわち、シース404と使用済み燃料アセンブリ402の外面との間の空間)内へと押し出される。シースチャンバが充填されると、余剰ナトリウムはさらに移動され、最終的には、シースキャップ406におけるアクセスポート418を通じて、シースから押し出される。シースキャップ406におけるアクセスポート418は、ザマック貯蔵タンク420に接続されている。
【0038】
アクセスポート418とザマック貯蔵タンク420との間には、ナトリウムトラップ422が示されている。図示の実施形態では、ナトリウムトラップは、ナトリウムセンサ424と、制御可能なバルブ426と、ナトリウム貯蔵タンク428と、を含む。ナトリウムがパイプ内で検出されると、バルブは、ナトリウムをナトリウム貯蔵タンク428内へ導く。ザマックが検出されると、ザマックは、バルブ426によってザマック貯蔵タンク420へと導かれる。ナトリウムトラップ422は、シースからの余剰ナトリウムを収集する可能な一方法にすぎない。他の多くのナトリウムトラップ設計またはナトリウムトラップ戦略を使用して同じ結果が達成でき、かかる任意の適切な設計または戦略がここで利用できるだろう。
【0039】
ザマックループを通るザマックの流れは、ポンプ430によって駆動される。追加のコンポーネントには、温度センサ432および圧力センサ434等のセンサが含まれる。かかるセンサは、システム400全体を通じて配置することができる。図示の実施形態では、センサは、ザマック貯蔵タンク420上とアクセスポート415直前の送出パイプ416上との両方に設けられている。シースへ送出されるザマックの流量および体積がモニタできるようにする流量計436が示されている。
【0040】
種々のコンポーネントのプロセスおよび動作を制御するために、制御装置438が設けられている。制御装置438は、データを受信し、受信したデータの処理に基づいて種々のコンポーネントに指令を送信するために、センサ、制御可能なバルブ、ポンプ430、およびその他のコンポーネントに、通信可能に接続されている。
【0041】
シースおよび使用済み燃料アセンブリにザマックが充填された後、シースは、密閉され、ループから除去される。一実施形態では、底部および頂部における取り付けパイプは、任意の適切な方法で切断、遮蔽または密閉される。しかしながら、これはほんの一技法であって、任意の適切な代替的な密閉および除去技法が利用できるだろう。
【0042】
図示された他のコンポーネントに、貯蔵タンク420内のザマックを加熱し、安定化プロセスの間にそれを液体状態に維持するための加熱器440がある。一実施形態では、加熱器440は、貯蔵タンク420の外部の周りの抵抗ジャケット加熱器の形態をとり得るだろう。
【0043】
図示された他のコンポーネントに、ザマックの充填後にシース404を冷却するためのシース冷却器442がある。一実施形態では、冷却器442は、冷却ジャケットまたはシースの外部に室温空気を導くファンを含む、任意の適切な形態をとり得るだろう。さらに別の一代替形態では、温度制御された部屋を、冷却器442として設けることができるだろう。シースを充填、密閉し、ループから除去した後、温度制御された部屋内にシースを配置できるだろう。次いで、ザマックの冷却を正確に制御できるだろう。一実施形態では、図示のように、冷却器は、シース404の底部を冷却して、ザマックが底部から上方へ固体化するように配置される。
【0044】
システム400の他のコンポーネントに、カバーガス制御システム450がある。カバーガスシステム450は、ザマックがループを完全に満たしていないとき、ループ内にカバーガス環境を維持する。例えば、初めに燃料アセンブリ402がシース404内へ配置されるとき、カバーガスシステム450は、燃料アセンブリ周囲の環境を制御し、燃料アセンブリ402の酸素への曝露を低減して、燃料アセンブリ上における酸化物層表面の形成を、防止はしないとしても阻害する。カバーガスシステムは、当技術分野で知られている。ザマック充填プロセスの前およびザマック充填プロセスの間における燃料アセンブリの酸素への曝露が低減されるよう、システム450に関する任意の適切な構成が用いられてもよい。
【0045】
図5は、任意のシース実施形態に実装され得るであろう追加の構成を示す、シース500の代替的な一実施形態を示す。
【0046】
図示の実施形態では、シース504が、キャップ506によって蓋をされる頂部開口部のみを有する単体の容器となるように、シース504およびキャップ506が設計されている。これによって、シースが容易に作製できるようになり、複雑さが低減する。シース504には、燃料アセンブリ502の底部ノズル508と係合するレセプタクル510が設けられている。
【0047】
ザマックの充填が依然として底部から行われるように、2つのディップチューブ550および552が設けられている。燃料アセンブリディップチューブ550を通って流れるザマックが底部ノズル508を通って燃料アセンブリ502に進入するように、燃料アセンブリディップチューブ550は、レセプタクル510に流体的に接続されている。第2ディップチューブ552は、燃料アセンブリとシースとの間の環状領域を充填するために設けられている。代替的な一実施形態では、この第2ディップチューブは省かれ、燃料アセンブリ502の頂部ノズル514からザマックを溢流させることによって、環状領域が充填される。2つのディップチューブ550、552の間の流れを制御/分配するために、さらなる制御バルブ512がザマック入口ライン上に設けられてもよい。キャップ506とシース504とが接続されたときにディップチューブが適切に配置されるように、ディップチューブ550、552がキャップ内に組み込まれてもよい。あるいは、ディップチューブ550、552はシース504内に組み込まれてもよく、対応する適切な開口がキャップ506内に設けられる。
【0048】
キャップ506には、出口554がさらに設けられている。シース504が充填されたとき、余剰ナトリウムおよびザマックは、出口554を取って移動されることとなる。各ディップチューブ550、552および出口554には、充填後に閉止可能な接続バルブ556が設けられてもよい。
【0049】
シース504の底外部に接続された冷却器542を用いて、シース504を底部から容易に冷却することができる。シース504は、周囲に作用するためのいかなるフィッティングまたは接続部も、もはや有していない。
【0050】
図示の実施形態では、シース504の外部には、充填前、充填中および充填後におけるシース504の取り扱いおよび持ち上げのための2つの眼部(アイ)558が設けられている。
【0051】
図6は、ザマックを用いてナトリウム冷却炉由来の使用済み核燃料アセンブリを安定化させるための方法の一実施形態を示す。図示の実施形態では、当該方法は、除去操作602において、使用済み燃料アセンブリをナトリウム冷却炉から除去する工程から始まる。除去操作602は、原子炉容器内におけるナトリウムのプール内の使用済み燃料アセンブリにアクセスする(接近する、到達する)工程と、燃料アセンブリ取扱システムを使用して当該使用済み燃料アセンブリを除去する工程と、を含んでもよい。以下により詳細に説明するように、移送の間、燃料アセンブリは、酸素が0.1%未満の被制御環境下に維持され、その結果、この除去操作602におけるプールからの燃料アセンブリの除去から第2充填操作612におけるザマック充填操作の完了までの間における、燃料アセンブリの表面上における酸化物層の形成が低減される。
【0052】
次いで、送達操作604において、使用済み燃料アセンブリがザマック安定化システムへ送達される。
【0053】
外装(シージング:sheathing)操作606において、使用済み燃料アセンブリが受け取られると、当該使用済み燃料アセンブリがシース内に配置される。外装操作606の一実施形態では、燃料アセンブリの底部ノズルがシースの底部にあるレセプタクルと係合され、シースに蓋がされる。次いで、今や密閉状態にあるシースが、ザマック配管に接続される。
【0054】
ザマック生成操作608において、ザマックがまだその液体動作温度に加熱されていない場合、ある量のザマックをその融点よりも高い温度に加熱することによって、液体ザマックが生成される。
【0055】
第1充填操作610が行われ、シースのレセプタクルおよび燃料アセンブリの底部ノズルを通じて液体ザマックを流すことによって、使用済み核燃料アセンブリの(1以上の)内部チャンバに液体ザマックが充填される。余剰ナトリウムは、燃料アセンブリの頂部ノズルから移動される(置換される、のけられる)こととなる。ナトリウムは、頂部ノズルから収集されてもよく、または、燃料アセンブリの外部とシースとの間の環状空間内において、ザマックがその領域にまだ充填されていない場合に貯留できるようになっていてもよい。
【0056】
第2充填操作612が行われ、燃料アセンブリの外面とシースとの間の環状空間に、ザマックが充填される。やはり、燃料アセンブリの外面上の余剰ナトリウムは、当該空間が充填されるときに移動され(のけられ)、ザマックの表面に浮かぶこととなる。一実施形態では、燃料アセンブリの外面とシースとの間の環状空間は、シースの底部におけるシースアクセスポートを通じて充填されてもよい。あるいは、さらなるザマックに燃料アセンブリを通過させ、環状空間が充填されるまで燃料アセンブリの頂部ノズルから余剰ザマックが溢流できるようにすることによって、燃料アセンブリの外面とシースとの間の環状空間が充填されてもよい。余剰ナトリウムの全てがシースから移動され、ザマックがシースから流出するまで、第2充填操作612が行われてもよい。シースから移動された任意の余剰ナトリウムは収集されて、後にクリーニングしかつ/または原子炉プールで再使用するために貯蔵されてもよい。
【0057】
一実施形態では、充填後に、充填されたコンポーネントにザマックがさらに流されるよう(フラッシングされるよう)、シースか燃料アセンブリかのいずれかを通じて余剰量のザマックを流してもよい。空間に流される余剰量のザマックの量は、その空間のサイズに基づいて決定されてもよいが、このことは既知であろう。あるいは、ザマックは、最初の充填後の時間に基づいて流されてもよい(フラッシングされてもよい)(例えば、未充填領域を減少させるため、または残存ナトリウムを移動させるために、シースが充填された後に10分間、ザマックをシースに流す)。
【0058】
さらに別の一実施形態では、いかなる余剰のナトリウムまたはザマックも、シースから除去されない。そうではなく、シースには、部分的にまたは完全に燃料アセンブリがザマックに沈められる点まで充填されるだけであり、次いで当該シースが密閉される。この実施形態では、原子炉由来の全てのナトリウムは、シース内に残り、安定化された最終的な燃料アセンブリと共に処分される。この実施形態では、ナトリウムが浪費され得るものの、照射(irradiated)ナトリウムの取扱量が低減される。
【0059】
一実施形態では、燃料アセンブリの底部ノズル内、およびシース内へのザマックの流れは、独立して制御することができる。これによって、第1充填操作610および第2充填操作612を、任意の順序で行うことができる。例えば、一実施形態では、第1充填操作610が最初に行われ、燃料アセンブリが充填された後にはじめて、第2充填操作612が行われる。第1充填操作610および第2充填操作612は、充填操作中にシースを振動させることによって補助されてもよい。
【0060】
次いで、冷却操作614が、ザマックが充填されたシースに対して行われる。上述したように、冷却処理は、能動的または受動的に行われてもよい。一実施形態では、冷却器は、ザマックの最下部分が最初に固体化するようにシースを下方から冷却するために用いられる。冷却速度が制御されてもよい。ザマックは、その融点未満に冷却される。ザマックは、さらに室温に冷却されてもよい。
【0061】
いったん冷却されると、外装されたザマック安定化燃料アセンブリには、乾式貯蔵操作616が示す乾式貯蔵の準備が整う。これには、外装されたザマック安定化燃料アセンブリを屋外、建物(建屋)内、または地下のボアホールまたは他の室内に配置する工程が含まれてもよい。外装されたザマック安定化燃料アセンブリは、移送または貯蔵の助けとなるよう、キャスク、フレーム、またはその他の容器内にさらに配置されてもよい。
【0062】
除去操作602および送達操作604の一方またはいずれかは、排出操作を含んでもよい。当該排出操作において、液体ナトリウムは、使用済み核燃料アセンブリから排出できるようになっている。これによって、シースを充填するときに回収される余剰ナトリウムの量は減少し、または無くされさえすることになる。
【0063】
安定化方法600の一実施形態では、燃料アセンブリの表面上における酸化物の形成が防止されるように、0.1%を超える酸素を有する環境に使用済み燃料アセンブリを曝露することなく、方法の操作の全てが行われる。これは、使用済み燃料アセンブリの取り扱う間に、当該使用済み燃料アセンブリを不活性雰囲気(すなわち、0.1重量%未満の酸素を有するアルゴン、窒素、およびヘリウム等の1種または複数種の不活性ガスの雰囲気)、低酸素雰囲気(例えば、0.1重量%未満の酸素、0.01重量%未満の酸素)またはナトリウム環境下に維持することによって、行われてもよい。代替的な一実施形態では、除去操作604および送達操作606は、酸化物のいかなる実質的な形成も防止されるように、使用済み燃料のナトリウム濡れに依存して、迅速に実行されてもよい。不活性環境下またはナトリウム環境下においてシース内部の充填操作が行われる場合、移動された不活性材料またはナトリウムは、再使用のために収集されてもよい。
【0064】
方法600の代替的な一実施形態では、シースは省かれる。この実施形態では、使用済み燃料アセンブリにザマックが充填され、ノズルが密閉され、ザマックが冷却されて、その結果、ザマックで安定化されたものの外装されていない使用済み燃料アセンブリが得られる。一実施形態では、崩壊熱生成が最小限である場合には、このより単純なアプローチで十分であり得る。
【0065】
使用済み燃料アセンブリの処分の文脈で説明されているが、上述したシステムおよび方法は、崩壊熱を生成する核物質を含有するか否かにかかわらず、新たな燃料アセンブリ、またはナトリウムに曝露した他の任意のコンポーネントを安定化させるために、使用できるだろう。例えば、一実施形態では、上述したシステムおよび方法は、ナトリウムを保持していた管、またはナトリウム環境下にあった管等の金属コンポーネントを処分するために使用できるだろう。ザマック安定化システムを、管にザマックを充填して当該管内の残留ナトリウムを移動させる(のける)ために使用でき、次いで、安定化された管を冷却して、貯蔵および/または処分の準備ができたザマック安定化管をつくり出せるだろう。
【0066】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示はまた、付番された以下の条項によって定められる。
【0067】
1.
使用済み核燃料アセンブリの貯蔵準備をする方法であって、
前記使用済み核燃料アセンブリは、外部と、底部ノズルおよび頂部ノズルを通じてアクセス可能な1または複数の内部チャンバと、を有し、
第1融点を有するある量のザマックを用意する工程と、
前記第1融点よりも高い第2融点を有する材料から作製されたシースであって、前記使用済み核燃料アセンブリの前記底部ノズルと係合するように構成されたレセプタクルをさらに含むシースを用意する工程と、
前記使用済み核燃料アセンブリを液体ナトリウム環境から除去する工程と、
前記使用済み核燃料アセンブリをシース内に配置して、前記レセプタクルを前記底部ノズルと係合させる工程と、
前記ある量のザマックを前記第1融点よりも高いが前記第2融点よりも低い温度に加熱することによって液体ザマックを生成する工程と、
前記レセプタクルおよび前記底部ノズルを通じて液体ザマックを流すことによって、前記使用済み核燃料アセンブリの1または複数の前記内部チャンバに液体ザマックを充填する工程と、
前記シースと前記使用済み核燃料アセンブリの前記外部との間の空間内へ液体ザマックを当該液体ザマックで満ちるまで流すことによって、前記シースに液体ザマックを充填する工程と、
を含む、方法。
【0068】
2.
前記ザマックは、ザマック2、KS、ザマック3、ザマック4、ザマック5およびザマック7から選択される、条項1に記載の方法。
【0069】
3.
前記ザマックは、ザマック3である、条項1に記載の方法。
【0070】
4.
前記シースに液体ザマックを充填する工程の後に、前記シース内の前記ザマックを前記第1融点未満の温度に冷却する工程をさらに含む、条項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
5.
前記使用済み核燃料アセンブリを不活性環境下の前記シース内に配置する工程と、
前記シースに液体ザマックを充填する工程であって、それによって前記不活性環境を置換する(移動させる、のける:displace)工程と、
をさらに含む、条項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0072】
6.
前記第1融点よりも高い第2融点を有する前記材料は、304ステンレス鋼、316ステンレス鋼、およびT91鋼から選択される、条項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0073】
7.
前記使用済み核燃料アセンブリから液体ナトリウムを排出する工程をさらに含む、条項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
8.
複数の前記充填操作によって前記シースと1または複数の前記内部チャンバとから移動されたナトリウムを収集する工程をさらに含む、条項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0075】
9.
前記配置操作は、
前記使用済み核燃料アセンブリを前記シース内に配置する工程の後に、前記シースに蓋をする工程
をさらに含む、条項1~8のいずれか一項記載の方法。
【0076】
10.
前記シースおよび1または複数の前記内部チャンバにザマックを充填する工程の後に、前記シースを冷却する工程をさらに含む、条項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
11.
前記冷却操作は、
前記シースを底部から冷却する工程
をさらに含む、条項10に記載の方法。
【0078】
12.
前記シースおよび1または複数の前記内部チャンバにザマックを充填する工程の後に、前記シースを乾式貯蔵装置内に配置する工程をさらに含む、条項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0079】
13.
前記シースおよび1または複数の前記内部チャンバにザマックを充填する工程の後に、前記シースを乾燥した地下貯蔵場所に配置する工程をさらに含む、条項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
14.
前記使用済み核燃料アセンブリを前記ナトリウム環境から除去する工程と前記使用済み核燃料アセンブリに液体ザマックを充填する工程との間に、前記使用済み核燃料アセンブリの少なくとも1つの表面上における酸化物の形成を防止する工程をさらに含む、条項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0081】
15.
前記使用済み核燃料アセンブリを低酸素環境下に維持することによって、前記使用済み核燃料アセンブリの表面上における酸化物層の形成を阻害する工程
をさらに含む、条項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0082】
16.
前記方法の1または複数の操作は、不活性雰囲気または低酸素雰囲気のうちの一方の中で行われることで、前記使用済み核燃料アセンブリの表面上における酸化物層の形成が阻害される、条項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0083】
17.
使用済み核燃料アセンブリの貯蔵準備をする方法であって、
第1融点を有するある量のザマックを用意する工程と、
前記使用済み核燃料アセンブリの酸素への曝露を制御しつつ前記使用済み核燃料アセンブリを液体ナトリウム環境から除去する工程であって、それによって、前記使用済み核燃料アセンブリ上における酸化物層の形成を阻害する工程と、
ザマック充填使用済み核燃料アセンブリが得られるよう前記使用済み核燃料アセンブリに液体状態の前記ザマックを充填する工程であって、それによって、前記使用済み核燃料アセンブリにおける少なくとも一部の液体ナトリウムを前記ザマック内へ溶解させ、残存する液体ナトリウムを前記使用済み核燃料アセンブリから移動させる工程と、
前記ザマックが前記第1融点未満の温度になるまで前記ザマック充填使用済み核燃料アセンブリを冷却して、ザマック安定化使用済み核燃料アセンブリを得る工程と、
前記ザマック安定化使用済み核燃料アセンブリを乾式貯蔵する工程と、
を含む、方法。
【0084】
18.
前記充填操作は、
前記第1融点よりも高い第2融点を有する材料から作製されたシース内に前記使用済み核燃料アセンブリを配置する工程と、
前記シースと前記使用済み核燃料アセンブリとの両方に液体ザマックを充填する工程と、
をさらに含む、条項17に記載の方法。
【0085】
19.
前記ザマックは、ザマック2、KS、ザマック3、ザマック4、ザマック5、およびザマック7から選択される、条項17または18に記載の方法。
【0086】
20.
前記ザマックは、ザマック3である、条項17または18に記載の方法。
【0087】
21.
前記シースに液体ザマックを充填する工程の後に、前記シース内の前記ザマックを前記第1融点未満の温度に冷却する工程をさらに含む、条項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【0088】
22.
前記使用済み核燃料アセンブリを不活性環境下の前記シース内に配置する工程と、
前記シースに液体ザマックを充填する工程であって、それによって前記不活性環境を置換する工程と、
をさらに含む、条項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【0089】
23.
前記第1融点よりも高い第2融点を有する前記材料は、304ステンレス鋼、316ステンレス鋼、およびT91鋼から選択される、条項17~22のいずれか一項に記載の方法。
【0090】
24.
前記使用済み核燃料アセンブリから液体ナトリウムを排出する工程をさらに含む、条項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
25.
複数の前記充填操作によって前記シースと前記使用済み核燃料アセンブリとから移動されたナトリウムを収集する工程をさらに含む、条項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
26.
前記配置操作は、
前記使用済み核燃料アセンブリを前記シース内に配置する工程の後に、前記シースに蓋をする工程
をさらに含む、条項17~25のいずれか一項記載の方法。
【0093】
27.
前記シースおよび前記使用済み核燃料アセンブリにザマックを充填する工程の後に、前記シースを冷却する工程をさらに含む、条項17~26のいずれか一項に記載の方法。
【0094】
28.
前記冷却操作は、
前記シースを底部から冷却する工程
をさらに含む、条項27に記載の方法。
【0095】
29.
前記シースおよび前記使用済み核燃料アセンブリにザマックを充填する工程の後に、前記シースを乾式貯蔵装置内に配置する工程をさらに含む、条項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【0096】
30.
前記シースおよび前記使用済み核燃料アセンブリにザマックを充填する工程の後に、前記シースを乾燥した地下貯蔵場所に配置する工程をさらに含む、条項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
31.
前記方法は、前記使用済み核燃料アセンブリを酸素に曝露することなく行われる、条項17~30のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
32.
前記方法の1または複数の操作は、前記使用済み核燃料アセンブリを酸素に曝露することなく行われる、条項17~30のいずれか一項に記載の方法。
【0099】
33.
前記方法の1または複数の操作は、不活性雰囲気中で行われる、条項17~32のいずれか一項に記載の方法。
【0100】
34.
固体ザマックを充填した燃料アセンブリを備える、装置。
【0101】
35.
前記燃料アセンブリは、容器内に密閉されている、条項34に記載の装置。
【0102】
36.
前記燃料アセンブリと前記容器との間の空間には、固体ザマックが充填されている、条項35に記載の装置。
【0103】
37.
ナトリウム冷却原子炉由来の使用済み核燃料アセンブリを安定化させるためのシステムであって、
ザマック貯蔵タンクと、
融点を有する、ある量のザマックと、
前記使用済み核燃料アセンブリを受け入れて密閉保定するように構成されたシースであって、液体ザマックを受け入れて前記シースに注入するための入口ポートを有するシースと、
前記融点よりも高い温度にザマックを加熱するように適合された加熱器と、
を備える、システム。
【0104】
38.
前記シース内への液体ザマックの流れを制御するように構成された制御装置をさらに備える、条項37に記載のシステム。
【0105】
39.
前記シースとその内容物とを前記融点未満に冷却するように適合された冷却器をさらに備える、条項37に記載のシステム。
【0106】
40.
前記シースから液体ナトリウムを収集するように構成されたナトリウムトラップをさらに備える、条項37に記載のシステム。
【0107】
41.
複数の燃料アセンブリを収容するナトリウムプールを含む前記ナトリウム冷却原子炉をさらに備える、条項37に記載のシステム。
【0108】
42.
複数の燃料アセンブリを前記ナトリウムプールから前記シースへ移送するように適合された燃料アセンブリ取扱システムをさらに備える、条項41に記載のシステム。
【0109】
43.
前記使用済み核燃料アセンブリを低酸素環境下に維持するように適合されたカバーガスシステムをさらに備える、条項37~42のいずれか一項に記載のシステム。
【0110】
44.
使用済み核燃料アセンブリの代わりに、ナトリウムに曝露したコンポーネントが安定化される、条項1~43のいずれか一項に記載のシステムおよび方法。
【0111】
45.
ナトリウムに曝露した表面を有するコンポーネントの貯蔵準備をする方法であって、
第1融点を有するある量のザマックを用意する工程と、
ザマック被覆表面が前記コンポーネント上に得られるように、ナトリウムを前記表面から液体ザマックによって移動させる(のける)工程と、
ザマック安定化コンポーネントが得られるように、前記第1融点未満の温度になるまで前記ザマックを冷却する工程と、
を含む、方法。
【0112】
46.
前記コンポーネントは、ナトリウムが充填された管であり、
移動させる工程は、
前記管に液体ザマックを充填する工程
をさらに含む、条項45に記載の方法。
【0113】
47.
前記ザマックは、1~10%のAl;0~1%のCu;0.01~1%のMg;0.5%未満の不純物(すなわち、Al、Cu、MgおよびZn以外の任意の元素);および、残りのZnを有する合金である、条項1~46のいずれか一項に記載のシステムおよび方法。
【0114】
別段の定めのない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量等の性質、反応条件等を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という語によって修飾されているものと理解されたい。したがって、それとは異なる指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、求める所望の性質に応じて変化し得る近似値である。
【0115】
広い範囲の技術を説明する数値範囲および数値パラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示す数値は、可能な限り正確に報告されたものである。しかしながら、いかなる数値も、それぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の(certain)誤差を内在的に含んでいる。
【0116】
本明細書に記載されたシステムおよび方法が、言及した目的および利点、ならびにそれらに内在する目的および利点が達成されるよう十分に適合されたものであることは明らかであろう。当業者であれば、本明細書における方法およびシステムが多くの様態で実装され得るため、上述した例示的な実施形態および実施例によって限定されるものではないことを認識するだろう。言い換えれば、機能的要素は、ハードウェアおよびソフトウェアの様々な組合せにおいて、単一または複数のコンポーネントによって実行され、クライアントレベルあるいはサーバレベルのいずれかにおいて、ソフトウェアアプリケーション間に個々の機能を分散することができる。この点に関して、本明細書に記載された種々の実施形態の任意の数の特徴(構成)が単一の一実施形態内へと組み合わせられてもよく、本明細書に記載された全ての特徴(構成)よりも少数または多数の特徴(構成)を有する代替的な実施形態が考えられる。
【0117】
本開示の目的に関して様々な実施形態を説明してきたが、本開示によって想定される範囲内に十分含まれる、様々な変更および修正が行われてもよい。例えば、読者には、
図1に示す基本設計の代替的な多数の実施形態が直ちに示唆されるだろう。例えば、二次熱交換器112を省き、二次冷却材として蓄熱媒体を用いてもよい。中間熱ループを除去することで、構造、配管、バルブが簡素化され、コストが低減する。当業者に容易に示唆され本開示の精神(趣旨)に包含される、その他の多数の変更が行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】ナトリウム冷却炉を有する統合エネルギーシステムの一実施形態を示す。
【
図2】ナトリウム冷却炉内で使用するための燃料アセンブリの分解図である。
【
図3】異なる種類の燃料アセンブリの側面図を示す。
【
図4】
図1に示す統合エネルギーシステムにおける使用に適したザマック安定化システムの一実施形態を示す。
【
図5】シースの任意の実施形態に実装され得るであろう追加の構成を含むシースの代替的な一実施形態を示す。
【
図6】ザマックを用いてナトリウム冷却炉由来の使用済み核燃料アセンブリを安定化させるための方法の一実施形態を示す。
【国際調査報告】