(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】遮断コーティング用組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240326BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20240326BHJP
C04B 14/40 20060101ALI20240326BHJP
C04B 14/46 20060101ALI20240326BHJP
C04B 16/02 20060101ALI20240326BHJP
C04B 24/42 20060101ALI20240326BHJP
C04B 28/04 20060101ALI20240326BHJP
C04B 28/06 20060101ALI20240326BHJP
C04B 28/08 20060101ALI20240326BHJP
C04B 28/12 20060101ALI20240326BHJP
C04B 41/64 20060101ALI20240326BHJP
C04B 111/27 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/10 A
C04B14/40
C04B14/46
C04B16/02 Z
C04B24/42 Z
C04B28/04
C04B28/06
C04B28/08
C04B28/12
C04B41/64
C04B111:27
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562963
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 FR2022050677
(87)【国際公開番号】W WO2022219275
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502425053
【氏名又は名称】サン-ゴバン イゾベール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー ゴドフロイド
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ベケ
【テーマコード(参考)】
4G028
4G112
【Fターム(参考)】
4G028CA00
4G112PA16
4G112PA17
4G112PA18
4G112PA22
4G112PA29
4G112PA34
4G112PB41
4G112PD02
(57)【要約】
【要約】
本発明は、ミネラルウール又は植物性ウールのフレーク、粉末状のミネラルバインダー、及び撥水剤を含む組成物に関する。それは、さらに、遮断コーティングを得る方法に関し、及び支持体であって、遮断コーティングを用いてその一方の表面上がコーティングされた支持体、を含む建物要素に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミネラルウール又は植物性ウールのフレーク、粉末状のミネラルバインダー、及び撥水剤を含む組成物。
【請求項2】
前記ミネラルウールが、グラスウール、スラグウール、及びストーンウールから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ミネラルウール又は植物性ウールのフレークが、1~10cmの大きさを有する、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粉末状のミネラルバインダーが、水硬性バインダーであり、特には、ポルトランドセメント、ベライトセメント、アルミナスセメント、スルホアルミネートセメント、ポゾランブレンドセメント、フライアッシュ、メタカオリン、水硬性石灰、及びこれらの水硬性バインダーの2種以上の混合物によって形成される群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記バインダーが、ポルトランドセメント、硫酸カルシウム源、及び随意のアルミネートセメントの混合物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記撥水剤が、有機ケイ素化合物を含み、特にはシラン及び/又はシロキサンの、モノマー、ダイマー、オリゴマー又はポリマー基を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記撥水剤が、粉末状である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記撥水剤が、有機ケイ素化合物及び無機若しくは有機固体担体を含むか、又は再分散性粉末である、請求項6又は請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
再分散性ポリマー粉末及び/又は界面活性剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
ミネラルウール又は植物性ウール及びミネラルバインダーの累積重量に対して、50~90重量%のミネラルウール又は植物性ウール、10~50重量%のミネラルバインダー、及び0.1~2%の撥水剤を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
支持体上の又は支持体に対する遮断コーティングを得る方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物を水と混合すること、及び得られた混合物を前記支持体上に又は前記支持体に対して堆積させること、を含む方法。
【請求項12】
前記混合物の前記堆積が、吹付けによって行われ、前記組成物が、吹付けノズルに運ばれ、前記水が、前記ノズルの出口にありうる限り早く添加される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記支持体が、垂直であり、特には建物の外壁であり、前記堆積が、前記壁の外部表面上において行われる、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
支持体であって、その一方の表面を、硬化したミネラルバインダーによって一緒に結合されているミネラルウール又は植物性ウールのフレーク、及び撥水剤を含む、遮断コーティングを用いてコーティングした支持体、を含む建物要素であって、前記遮断コーティングは、特には、請求項11~13のうち少なくとも1項に記載の方法によって得られる、建物要素。
【請求項15】
前記遮断コーティングが、30~300mmの厚さを有する、請求項14に記載の建物要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築分野に関する。より特には、良好な熱遮断特性を有するコーティングを得ることに関する。
【背景技術】
【0002】
遮断(絶縁)材のパネル、例えばミネラルウール又はポリスチレンのパネルなどを、建物の外壁上に配置することによって、建物を外側から熱遮断(熱絶縁)することが知られている。この技術は、屋内遮断に比べて、居住者のスペースを節約することを可能にし、かつ熱橋がなくなるため熱遮断性が向上することを可能にする。さまざまな建築システムが、この目的のために用いられている。特には、通気ファサードシステムでできており、フェーシングプレートが遮断材から一定の距離を置いてフレームによって保持され、それによって、空隙を作り出しているもの、又は外部遮断システム(ITE又はETICS)であって、これにおいて補強材及び仕上げプラスターが遮断材と直接接触するように置かれているもの、を挙げてよい。これらの様々な技術では、遮断パネルは、機械的ファスナー又は接着剤のいずれかを用いて、遮断される壁に取り付けられる。
【0003】
しかしながら、これらの技術は、複雑であり、特には遮断材及びフェーシングプレートを固定するために、多大な設置時間を要する。また、現場でパネルを切断すると、大量の廃棄物が発生し、パネル間の接合不良が、熱遮断性能の低下につながりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、より簡単かつ迅速に実施することとともに、ファサードをより効果的に熱遮断することを可能にする、建築技術及びこの技術に適した組成物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本発明は、ミネラルウール又は植物性ウールのフレーク(片)、粉末状のミネラルバインダー、及び撥水剤、を含む組成物に関する。組成物は、一般的には乾燥したもの、すなわち本質的に粉末混合物から成る。
【0006】
本発明はまた、支持体上の又は支持体に対する遮断(絶縁)コーティングを得る方法であって、このような組成物を水と混合すること、及び得られた混合物を上記支持体上に又は上記支持体に対して堆積させること、を含む方法に関する。
【0007】
最終的に、本発明の目的は、支持体であって、その一方の表面上を、硬化したミネラルバインダーによって一緒に結合されているミネラルウール又は植物性ウールのフレーク、及び撥水剤を含む、遮断コーティングを用いてコーティングした支持体、を有する建物要素である。このような遮断コーティングは、好ましくは、本発明による方法によって得られるか、又は得られうる。
【0008】
特には吹付けによって、遮断コーティングを堆積させるための本発明による組成物の使用は、前述の欠点を克服することを可能にする。驚くべきことに、本発明はまた、低減されたカーボンインパクト及び良好な熱遮断特性のために、遮断コーティングの、壁に対する(特にはコンクリート壁に対する、しかしこれのみではない)良好な接着性を確保し、コーティングの良好な凝集性を、意図される遮断性能によって一般的に要求される大きな厚さに関しても確保し、環境及び経年劣化に対する良好な耐性を確保し、かつ特には圧縮における、良好な機械的特性を、可能にする。
【0009】
組成物を水と混合し、ミネラルバインダーを硬化させた後、得られるコーティングは、硬化したミネラルバインダーによって一緒に結合されたミネラルウール又は植物性ウールのフレークを含む。組成物中に存在するミネラルバインダー粉末は、水と混合された後、硬化する前に糊状(ペースト状)になる。したがって、「バインダー」という用語は、組成物中に存在する粉末バインダー、及び最終コーティング中の硬化した最終バインダーの両方を対象とする。以下の詳細は、組成物及び最終コーティングの両方に適用される。
【0010】
ミネラルウールは、好ましくは、グラスウール、スラグウール及びストーンウールから選択される。ミネラルウール繊維は、好ましくは、30~75重量%のSiO2、5~40%のCaO+MgO、0~20%のNa2O+K2O、0~30%のAl2O3、及び0~15%のFe2O3を含む化学組成を有する。
【0011】
グラスウールの使用は、一般的に、特に比較的低い密度という利点によって、より優れた熱遮断性能を達成することを可能にする。
【0012】
グラスウールは、一般的に、粉末状の原料及びカレット(再生ガラス)の混合物の電気的な溶融又は火炎に基づく溶融、次いで延伸、特には繊維化スピナーによる内部遠心分離によって、形成される。グラスウールの繊維は、好ましくは、50~75重量%のSiO2、12~20重量%のNa2O+K2O、5~20重量%のCaO+MgO、0~8重量%のAl2O3、特には0~3重量%のAl2O3、及び2~10重量%のB2O3を含む化学組成を有する。
【0013】
ストーンウール及びスラグウールは、それらの一部に関して、一般的に、ブロック若しくはブリケットの形態で原料を溶融し、又は電熱若しくは浸漬されたバーナーによって粉末原料を溶融し、次いで複数の回転子による外部遠心分離によって延伸することによって、形成される。ストーンウール繊維は、好ましくは、30~50%のSiO2、10~26%のAl2O3、15~40%のCaO+MgO、0~5%のNa2O+K2O、及び3~15%のFe2O3を含む化学組成を有する。スラグウール繊維は、好ましくは、30~45%のSiO2、5~18%のAl2O3、30~60%のCaO+MgO、及び0~3%のNa2O+K2Oを含む化学組成を有する。
【0014】
ミネラルウールは一般的に、織り込まれたガラス繊維から成る。原則として、用いられるミネラルウールは、有機バインダーを含有しない。しかしながら、フレークが、建設現場又は工場からの再生廃棄物に由来する場合、例えばミネラルウールパネルを粉砕することによって得られるような場合には、それは若干の有機バインダーを含有しうる。フレークは、ブローウールフレークであってよく、これは、通常有機バインダーを含有しないが、そうではない場合、有機添加剤、例えばシリコーン系の有機添加剤又は帯電防止剤などのものを含有しうる。これらの添加剤は、特には繊維化の際にミネラルウール上に吹付けされる。
【0015】
植物性ウールは、植物繊維を含み、これは、好ましくはリグノセルロース系繊維及び綿繊維から成る群から選択される。リグノセルロース系繊維は、好ましくは、木材繊維、麻繊維、亜麻繊維、サイザル麻繊維、綿繊維、ジュート繊維、ココナッツ繊維、ラフィア繊維、アバカ繊維、穀物わら、稲わら、及びこれらの混合物から選択される。
【0016】
フレークとは、一定の大きさ又は寸法を有する、絡み合った繊維の凝集体(又はクラスター)で形成されたピース(断片)を意味すると理解される。組成物及びコーティングが、分散した個別の繊維の形態、又は層、格子、織物若しくは不織布に配置された繊維の形態ではなく、フレークの形態で、繊維を含むことが不可欠であり、それによって、良好な熱遮断特性を達成できる。したがって、このコーティングは、遮断特性を有しない、繊維強化プラスター又はモルタルとは異なる。
【0017】
組成物及び/又はコーティング中の、ミネラルウール又は植物性ウールのフレークは、好ましくは1~10cm、特には2~8cm、又はさらには3~7cmのサイズを有する。過度に小さいサイズのフレークは、比較的密度の高いコーティングをもたらし、したがって、これは、比較的低い熱遮断性を有する。フレークを得ること及びそれらのサイズを調整することは、特には機械によって行われうる。吹付け機が、吹付け前にそれらのサイズを小さくすることができる場合には、フレークは、組成物中で比較的大きくてよい。
【0018】
粉末状のミネラルバインダーは、好ましくは水硬性バインダーである。
【0019】
水硬性バインダーは、好ましくは、ポルトランドセメント、ベライトセメント、アルミナスセメント、スルホアルミネートセメント、ポゾランブレンドセメント、スラグ、フライアッシュ、メタカオリン、水硬性石灰、硫酸カルシウム源、及びこれらの水硬性バインダーの2種以上の混合物からなる群から選択される。硫酸カルシウム源は、特には石膏、無水石膏、半水石膏、及びこれらの混合物から選択される。
【0020】
バインダーは、特にはポルトランドセメント、特にはCEM I又はCEM IIタイプから成りうる。
【0021】
別の実施形態によれば、バインダーは、ポルトランドセメントと硫酸カルシウム源との混合物を含む(特には、これらの混合物から成る)。硫酸カルシウム源の存在は、特には耐火性が向上すること、及びバインダーの凝結が促進されることを可能にする。また、それのカーボンインパクトも、ポルトランドセメントと比較して低減される。バインダー中の硫酸カルシウム源の総割合は、好ましくは2~20重量%、特には5~15重量%である。
【0022】
別の実施形態によれば、バインダーは、スルホアルミネートセメントと硫酸カルシウム源との混合物を含む(特には、これらの混合物から成る)。そして、バインダーは、好ましくは凝結促進剤、例えばリチウム塩を含む。バインダー中の硫酸カルシウム源の総割合は、好ましくは2~20重量%、特には5~15重量%である。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、バインダーは、ポルトランドセメント、アルミネートセメント、及び硫酸カルシウム源の混合物を含む(又はこれらの混合物からなる)。バインダーはまた、凝結促進剤、例えばリチウム塩を含んでもよい。このようなバインダーは、硬化をより迅速に仕上げることを可能にする。この実施形態では、バインダー中のその成分の重量比は、好ましくは以下の通りである:65~90%のポルトランドセメント、5~20%のアルミネートセメント、及び2~15%の硫酸カルシウム源。
【0024】
一般的には、ポルトランドセメントの存在は、良好な機械的性能を、特には圧縮強度の点で、達成することを可能にし、また、撥水剤の効率を高めることが証明されている、高いpH値を達成することも可能にする。前述のバインダーに石灰源を添加することも、この点で有益である。
【0025】
バインダーはまた、硫酸カルシウム源から成ってよく、良好な耐火性を得ることを可能にするが、機械的特性及び熱遮断特性は損なわれる。
【0026】
代替的には、ミネラルバインダーは、粘土バインダーであってよい。
【0027】
撥水剤は、特にはコーティングが建物の外面上に配置される場合に、コーティングに良好な耐老化性を付与するために不可欠である。その存在は、高アルカリ性であるバインダーと、アルカリ性媒体に敏感なミネラルウール繊維との間の、望ましくない相互作用を抑制することを可能にする。
【0028】
特に好ましくは、撥水剤は、有機ケイ素化合物を含み(又はこれらから成り)、特にはシラン及び/又はシロキサンの、モノマー、ダイマー、オリゴマー又はポリマー基を含む。
【0029】
このような撥水剤は、他の公知の撥水剤よりも、例えばナトリウム、カリウム又はカルシウム脂肪酸塩など、例えばステアリン酸カルシウム又はオレイン酸ナトリウムなどよりも、はるかに効果的であることが証明された。
【0030】
有機ケイ素化合物は、好ましくは以下から選択される:
- オルガノシラン、例えば式SiR4のテトラオルガノシランなど、例えばテトラアルキルシランなど、
- オルガノシロキサン、例えば式Si(OR)4のテトラオルガノシロキサンなど、例えばテトラアルコキシシランなど、例えばテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランなど、
- オルガノオルガノキシシラン、特には式SiRn(OR’)4-n(n=1~3)のもの、例えばアルキルアルコキシシランなど、特にはイソオクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、又はヘキサデシルトリエトキシシラン、
- オルガノシラノール、特には式SiRn(OH)4-nのもの
- オリゴシラン及びポリシラン、
- オリゴシロキサン及びポリシロキサン(シリコーン樹脂、例えばメチルシリコーン、エチルシリコーン、フェニルシリコーン、又はH-シリコーン樹脂としても知られている)、特には一般式RaHbSi(OR’)c(OH)dO(4-a-b-c-d)/2(a=0~3、b=0~1、c=0~3、d=0~3かつa+b+c+d≦3.5)の、少なくとも一つの単位を含むもの。
ここで、上記式中、ラジカルRは、同一であるか又は異なり、1~22個の炭素原子を有する分枝若しくは非分枝アルキルラジカル、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカル、2~4個の炭素原子を有するアルキレンラジカル、又は6~18個の炭素原子を有するアリール、アラルキル、アルキルアリールラジカルを表し、ラジカルR’は、それぞれ1~4個の炭素原子を有する、同一の又は異なるアルキレン及びアルコキシアルキレンラジカル、好ましくはメチル及びエチルであり、ラジカルR及びR’はまた、Clなどのハロゲンによって、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、ニトリル、ヒドロキシル、アミン、カルボキシル、スルホン酸、カルボン酸無水物及びカルボニル基によって、置換されうる。
【0031】
撥水剤は、好ましくは粉末状である。例えば、有機ケイ素化合物及び無機又は有機固体担体を含む。ありうる無機担体は、例えば、シリカ(例えば、沈殿シリカ又はヒュームドシリカなど)、炭酸塩又はタルクに基づく。これらは、好ましくは多孔性であり、BET表面積は、好ましくは少なくとも50m2/g、又はさらには少なくとも100m2/gである。
【0032】
撥水剤はまた、再分散性粉末であってもよい。そして、有機ケイ素化合物に加えて、ポリマーを含んでよい。これらのポリマーは、例えば、ビニルエステル(特には、1~15個の炭素原子を有する、非分岐又は分枝アルキルカルボン酸のビニルエステル)、メタクリレート及びアクリレート(特には、1~10個の炭素原子を有する、アルコールの(メタ)アクリレート)、メタクリル酸、アクリル酸、ビニル芳香族、オレフィン、ジエン、並びにハロゲン化ビニルを含む群から選択される、1種以上のモノマーに基づく。粉末はまた、水溶性保護コロイド、脂肪酸、及び/又はアンチブロッキング剤を含有しうる。
【0033】
本発明に関して特に有効な撥水剤は、特にはWacker Chemie AG社によってSilres(登録商標) Powder A及びDの製品名で販売されている。
【0034】
撥水剤は、組成物に粉末の形態で添加されてよく、かつ/又はミネラルウールの繊維の表面上にコーティングの形態で存在してよい。
【0035】
本発明による組成物は、他の成分を含んでよい。
【0036】
それは、特には、パーライト、バーミキュライト、膨張ガラスビーズ、膨張ポリスチレンビーズ、セノスフェア、膨張ケイ酸塩、エアロゲル、及びこれらの混合物から選択される、軽量化充填剤を、特に含みうる。
【0037】
組成物は、有利には再分散性ポリマー粉末を含む。このポリマーは、好ましくは、ビニルエステル(特には、酢酸ビニルなどのC1~C15のカルボン酸のビニルエステル)、(メタ)アクリレート(特には、C1~C10のアルコールのもの)、ビニル芳香族、アルケン(例えば、エチレン)、ジエン、及びハロゲン化ビニルから選択される、1種以上のモノマーに基づく。これらのポリマーは、コーティングの機械的強度を、その熱遮断特性に影響を与えることなく向上させることを可能にする。
【0038】
組成物は、有利には、増粘剤を含み、これもまた、コーティングの機械的強度を、その熱遮断特性に影響を与えることなく向上させること、及びより良好な凝集力を得ることを可能にする。増粘剤は、好ましくはセルロースエーテルである。
【0039】
組成物はまた、特にはコーティング堆積法の実施の際に水による繊維の濡れを容易にするために、界面活性剤を含んでもよい。有利な界面活性剤は、特にはドデシル硫酸ナトリウムである。
【0040】
組成物は、特にはバインダーが石膏などの硫酸カルシウム源を含有する場合に、粉塵排出を低減するために、ミネラルオイル又は植物性オイルをさらに含みうる。
【0041】
ミネラルウール又は植物性ウールの重量による含有量は、ミネラルウール若しくは植物性ウール及びミネラルバインダーの総重量に対して、又はさらには組成物の総重量若しくはコーティングの総重量に対しても、好ましくは50~90%、特には55~85%である。バインダーに対するミネラルウール又は植物性ウールのフレークの密度が低いことを考慮すると、ミネラルウールが、体積比で非常に顕著に優勢であり、良好な熱遮断特性を達成することを可能にする。
【0042】
ミネラルバインダーの重量による含有量は、ミネラルウール又は植物性ウール及びミネラルバインダーの総重量に対して、好ましくは10~50%、特には15~45%である。
【0043】
スラグウールの場合、バインダーに対するウールの質量比は、好ましくは70:30~90:10である。グラスウールの場合、バインダーに対するウールの質量比は、好ましくは50:50~70:30である。
【0044】
撥水剤の重量による含有量は、ミネラルウール及びミネラルバインダーの総重量に対して、好ましくは0.1~2%、特には0.5~1.8%、又はさらには0.7~1.6%である。
【0045】
したがって、組成物及び/又はコーティングは、好ましくは、ミネラルウール又は植物性ウール及びミネラルバインダーの累積重量に対して、50~90重量%のミネラルウール又は植物性ウール、10~50重量%のミネラルバインダー、及び0.1~2%の撥水剤を含む。
【0046】
組成物中のありうる添加剤の総含有量は、ミネラルウール又は植物性ウール及びミネラルバインダーの総重量に対して、通常40%未満、若しくはさらには30%未満、さらには20%未満若しくは10%未満、又は0.1%超である。それは、好ましくは、再分散性ポリマー粉末及び増粘剤に対して5%以下、オイルに対して最大2%である。換言すれば、組成物又はコーティング中のミネラルウール又は植物性ウール及びミネラルバインダーの総重量比は、好ましくは少なくとも70%、特には少なくとも80%、さらには少なくとも90%である。添加剤、又は少なくともそれらの一部は、代替的には、吹付けに用いる水に添加されうる。
【0047】
上記に示した含有レベルは、組成物及び最終コーティングの両方に適用される。
【0048】
組成物は、水と混合され、次いで、得られた混合物は、支持体上に又は支持体に対して堆積される。
【0049】
混合物は、好ましくは吹付けによって堆積される。好ましくは、組成物は、(乾燥形態で)吹付けノズルに運ばれ、水は、ありうる限り早くノズルの出口に添加される。中央ダクトが提供されている吹付け機が、有利には用いられ、この中央ダクトを通じて組成物が吹付けされ、この周囲に少なくとも1つのオリフィス、特には複数のオリフィスが配置され、これを通じて水が吹付けされる。そして、組成物と水との混合は、混合物が支持体に到達する前に、ノズル出口において行われる。
【0050】
組成物の量に対する水の(重量による)量は、好ましくは0.2~1.5、特には0.5~1.4、又はさらには0.7~1.2である。水の量は、バインダーの凝結及び硬化に対して十分でなければならない。それは、ミネラルウール又は植物性ウールが水の一部を吸収するであろうという事実を考慮することによって調整される。加える水の量が少なすぎると、組成物が支持体に十分に接着せず、剥離する。上に示したように、水はまた、添加剤、例えばポリマー又は界面活性剤などを含有しうる。好ましくは、水は、接着剤を含まない。
【0051】
乾燥物(ミネラルウール又は植物性ウール、ミネラルバインダー、及び随意の固体添加剤)の総流量は、好ましくは1~10kg/分、特には2~8kg/分である。水の流量は、好ましくは5~10L/分である。施工速度は、例えば、140mmのコーティング厚さの場合、0.1~1m2/分である。
【0052】
支持体は、好ましくは垂直である。好ましくは、建物の外壁であり、堆積は、上記外壁の外部表面上で行われる。「外壁」とは、住居の内側を外側から分ける壁を示す。「外部表面」とは、住居の外側に面している表面を示す。そして、コーティングは、その遮断性、機械的特性、及び耐老化性のおかげで、通気ファサードシステム中の遮断材のパネル、及び、冒頭で述べた外部熱遮断に取って代わることができる。この壁は、有利には、付加製造(アディティブマニュファクチャリング)技術(「3Dプリンティング」とも呼ばれる)によって製造された壁である。この場合、(モルタル層が互いに連続して堆積されるという事実と関連して)この技術によって作り出されるテクスチャリングは、コーティングの接着性を向上させることを可能にする。
【0053】
そして、建物要素は、外壁であって、その外部表面上を遮断コーティングによってコーティングされた外壁を有する。この要素は、遮断コーティングとフェーシングとの間に空隙を提供しながら、フェーシングを取り付け、固定することを可能にする、フレームワーク(木材又は金属)をさらに有しうる。フェーシングは、下記の任意の種類のものであってよい:ガラス、金属、木材、PVC、セラミックなど。代替的には、この要素は、遮断コーティング上に直接、一般的に補強メッシュを有する補強プラスター、及び仕上げプラスター又はフェーシングを有しうる。
【0054】
しかしながら、本発明は、この用途に限定されるものではなく、コーティングを、例えば天井を下から遮断するために、水平な支持体上に堆積させてもよい。
【0055】
遮断コーティングは、好ましくは30~300mmの厚さを有する。例えば30mmなどの、小さな厚さは、耐火性に関して十分でありうるが、熱遮断性に関しては不十分であろう。したがって、コーティングの厚さは、好ましくは少なくとも40mm、さらには少なくとも50mm又は60mmである。上述した吹付け技術は、1パスで最大240mmの厚みを達成することを可能にする。したがって、コーティングの厚さは、有利には、60~240mmである。これを超えると、2回目のパスが一般的に必要であろう。
【0056】
コーティングの密度は、好ましくは50~250kg/m3、好ましくは60~200kg/m3である。コーティングの熱伝導率は、好ましくは35~60mW/m.Kである。ミネラルウールが、ストーンウール又はスラグウールである場合、この密度は、好ましくは100~200kg/m3であり、熱伝導性は、特には37~60mW/m.Kの範囲にある。ミネラルウールがグラスウールである場合、コーティングの密度は、好ましくは50~100kg/m3、特には60~80kg/m3であり、熱伝導性は、特には35~40mW/m.Kの範囲にある。
【0057】
コーティングの機械的強度は優れており、特には引張では5~20kPa、曲げでは5~60kPa(特にはスラグウール又はストーンウールを用いて40~60kPa)、圧縮では20~110kPa(特にはスラグウール又はストーンウールを用いて90~110kPa)の範囲の強度を有する。
【0058】
以下の非限定的な実施例は、本発明及びその利点を説明するものである。
【0059】
異なる組成物を、接着プライマーの有無にかかわらず、シンダーブロック、合板、砂岩、及びタイルでできている壁に対して投射した。吹付けガンと壁との間の距離は、100~120cmであった。吹付けされた厚さは、160~180mmであり、余分なものを取り除くことによって140mmに減らし、次いでフロート(こて)を用いて平滑にした。異なる基材への接着性は、非常に良好であることが証明された。
【0060】
比較例
【0061】
この比較例では、組成物は、本出願人によってCoatwoolの名称で販売されている、80重量%のスラグウールフレーク、18%のCEM I、及び2%の半水和物セメントを含み、さらに0.59%のセルロースエーテル(チロース)及び1%のミネラルオイルを添加したものであった。乾燥物の流量は、8kg/分、水の流量は、6kg/分であった。
【実施例】
【0062】
実施例1では、吹付けされた組成物は、本出願人によってComblissimoの名称で販売されている、66.7%のガラスブローウールフレーク、30%のセメントCEM I、3.3%の半水和物を含み、さらに0.82%のセルロースエーテル(チロース)及び1%のミネラルオイルを添加したものであった。このブローウールは、0.1~0.4%の撥水剤(シリコーン)、1~2%のミネラルオイル、及び0.2%の帯電防止剤を含み、これらの剤は繊維上に分散していた。乾燥物の流量は、2.5~3kg/分、水の流量は、5kg/分であった。
【実施例】
【0063】
実施例2では、吹付けされた組成物は、80重量%のスラグウールフレーク(Coatwool)、18%のCEM I、及び2%の半水和物セメントを含み、1%の撥水剤(Silres(登録商標) d)及び1%のミネラルオイルも添加したものであった。乾燥物の流量は、8kg/分、水の流量は、5kg/分であった。
【実施例】
【0064】
実施例3では、吹付けされた組成物は、66.7%のスラグウールフレーク、30%のCEM I、及び3.3%の半水和物セメントを含み、1.66%の撥水剤(Silres(登録商標) d)及び1%のミネラルオイルも添加したものであった。乾燥物の流量は、2.5kg/分、水の流量は、6kg/分であった。
【0065】
以下の表1は、それぞれの例について、得られたコーティングの密度(MV)(単位:kg/m3)、コーティングの熱伝導率(λ)(単位:mW/m.K)、ISO 29767に従って測定した1時間後及び24時間後の吸水率(W)(単位:kg/m2)、3点曲げ抵抗(単位:kPa)、圧縮強度(単位:kPa)、及び引張強度(単位:kPa)を示す。
【0066】
【国際調査報告】