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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】燃料電池パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20240326BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240326BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240326BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240326BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04858
H01M8/04 H
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562967
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2022060277
(87)【国際公開番号】W WO2022223537
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】21315067.5
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523386957
【氏名又は名称】ジュネーヴォ エスエーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,フィル
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB03
5H126BB04
5H126BB05
5H126BB06
5H127AA02
5H127AA03
5H127AA04
5H127AA06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AC02
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA03
5H127BA05
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127CC06
5H127DB96
5H127DC43
5H127DC44
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
本発明は、封止隔壁(21)によって別個の密閉されたコンパートメントにさらに分けられた、封止されたケーシング(2)に収容された燃料電池パワーモジュールに向けたものであり、前記コンパートメントの一方は、電力管理部品(31、32、33)を含む電気コンパートメント(3)であり、他方は、燃料電池(41)を含むとともに、その入口回路及び出口回路が可燃性流体を包含している燃料電池コンパートメント(4)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池パワーモジュールであって、封止隔壁(21)によって分けられた2つの密閉されたコンパートメントであって、一方が電力管理部品(31、32、33)を含む電気コンパートメント(3)であり、他方が燃料電池(41)を含むとともに、その入口回路及び出口回路が可燃性流体を包含している燃料電池コンパートメント(4)であるコンパートメントを含む燃料電池パワーモジュールにおいて、前記燃料電池コンパートメントが強制換気のための手段を含むことを特徴とする燃料電池パワーモジュール。
【請求項2】
前記燃料電池コンパートメント4が、前記燃料電池コンパートメントの外部と、前記燃料電池コンパートメントの内部との間のインタフェースに設けられた空気入口i4Air及び空気出口o4Airによって換気される、請求項1に記載の燃料電池パワーモジュール。
【請求項3】
ケーブル並びに非可燃性流体及び関連付けされた配管が、前記隔壁を貫通する封止接合部を介して前記モジュールの前記隔壁を貫通して、コンパートメント間の別個の空間を維持する、請求項1に記載のモジュール。
【請求項4】
前記封止隔壁に電力管理接続ケーブル(c1、c2)のみが貫通している、請求項1に記載のモジュール。
【請求項5】
前記封止隔壁に燃料電池カソードガス入口導管(cO2f)のみが貫通している、請求項1に記載のモジュール。
【請求項6】
前記封止隔壁に電力管理接続ケーブル(c1、c2)のみが貫通しており、及び/又は、カソードガス導管(cO2f)の前記入口が前記電気コンパートメントの中へと開かれているとともに、前記燃料電池(41)の空気供給システムに接続され、及び/又は、パイプcCoolFPT及びパイプcHotがそれぞれ、前記燃料電池41に冷却水を供給し、前記燃料電池から冷却水を放出する、請求項1に記載のモジュール。
【請求項7】
前記燃料電池コンパートメントが、コンプレッサ(43)、及び/又は水フィルタ(45)、及び/又は冷却液ポンプ(46)、及び/又はサーモスタットタップ(47)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項8】
前記電気コンパートメントが、前記燃料電池コンパートメントの前記強制換気のための手段とは別個の強制換気のための手段を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項9】
前記電気コンパートメントが、前記電気コンパートメント3の外部と、前記電気コンパートメント3の内部との間のインタフェースに設けられた空気入口i3Air及び空気出口o3Airによって換気される、請求項8に記載のモジュール。
【請求項10】
前記電気コンパートメントの前記換気手段が、前記電気コンパートメント内の空気圧を前記燃料電池コンパートメント内の圧力よりも高く保つように適合されている、請求項8に記載のモジュール。
【請求項11】
共通の燃料入口及び排出口を共有する複数の燃料電池が、燃料電池空間内に存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項12】
封止隔壁(21)によって2つのコンパートメント(3、4)に分けられた封止されたケーシング(2)であって、前記2つのコンパートメントのうちの一方が、システムコントローラ(31)を含む電気コンパートメント(3)であり、他方が、水素入口接続(iH2)に接続された水素供給システムによって水素が供給され、空気入口接続(iO2)に接続された空気供給システムによって酸素が供給されるように配置された燃料電池(41)を含むセルコンパートメント(4)である封止されたケーシング(2)で形成され、跳ね除け接続(iGaz)に接続されたガス放出システムによってガスを中に通さないようにし、跳ね除け接続(iH20)に接続された水放出システムによって水を中に通さないようにし、且つ、冷却接続(iCool)に接続された液体冷却システムによって冷却されるように提供されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項13】
電力出力を負荷印加に直接接続することができるように電圧及び/又は電流を調整するように適合され、ハイブリッド化を制御し、外部からの電気的調整の必要性をなくした電力管理システムを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の燃料電池パワーモジュール。
【請求項14】
追加の支持構造もキャビネットもなしで、複数のモジュールを、安全に組み合わせること及び/又は垂直に幾重にも積み重ねることができるように、前記ケーシングが適合された、請求項1~13のいずれか一項に記載の燃料電池パワーモジュール。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の燃料電池パワーモジュールを含む水素貯蔵及び電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、燃料電池パワーモジュールに関する。特に、本発明は、海上用途用の燃料電池パワーモジュールに関する。さらに、本発明は、このような燃料電池パワーモジュールを含む水素貯蔵及び電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
燃料電池パワーモジュールは、燃料及びオキシダントから電力を生成するデバイスである。電気は、電極(アノード)での還元燃料、例えば水素の酸化と、もう一方の電極(カソード)での酸化剤、通常は空気供給源から抽出された酸素の還元との結合を通して生成される。
【0003】
燃料電池パワーモジュールは、所望の電力出力に達するように直列に接続された複数のセルで構成することができる。
【0004】
燃料電池パワーモジュールを組み込むことは、車両、ボート又は定置型電源用途において、その耐用年数を通じて燃料電池システムの安全な動作及び信頼性を確保するための重要な要素である。しかしながら、燃料電池システムは、多数の構成部品を含むので、設置がかなり複雑になる可能性がある。
【0005】
船舶など海上用途用の燃料電池パワーモジュールの安全対策は、火災又は損傷の場合に、船舶から出て徒歩で逃げ出す可能性を想定していないため、大抵の場合陸上用途の安全対策よりも厳格である。
【0006】
加えて、攻撃的な海上環境から船舶上の燃料電池を保護しなければならない。したがって、周囲の空間に対して気密の空間が、船舶に搭載されている燃料電池設備には必要である。さらに、空気をろ過し、乾燥させる手段もまた、燃料電池システムの継続的な信頼性を確保するために必要である。
【0007】
特許文献米国特許出願公開第2004072046号は、海上用途用の燃料電池パワーモジュールについて記載している。このモジュールは、第1のコンパートメント120及び第2のコンパートメントに分割されたチャンバを含む。第1のコンパートメントは空気ポンプ、水素入口/出口、水素バルブ、電気部品、及びろ過された気流をチャンバの中に受け入れるフィルタ一式を収容している。第2のコンパートメントは、燃料電池のスタック及び加湿部を収容している。チャンバには隔壁が提供されて、冷却用換気装置によって燃料電池のスタックを通して冷却空気を吸引できるようにする導管を形成している。隔壁は封止されて、コンパートメント間で気体と液体とが混ざるのを防いでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
燃料電池システムに隔壁及び導管があるにもかかわらず、第1に、水素ガス配管及び加圧デバイスが十分な換気を伴わずに電気デバイス、すなわちシステムコントローラと共有される、という根本的な安全性の問題がこの概念から生じている。これにより、コンパートメント内に水素が蓄積する可能性があり、水素デバイスからの潜在的な漏出を考慮すると、危険な、爆発性環境に対する耐性のない電気部品(すなわち、非ATEX定格の構成部品)による発火に結びつきかねない濃度に達する可能性がある。
【0009】
上記のことを考慮し、本発明は、海上用途に適したものにするために、発火の潜在的なリスクを最小限に抑える燃料電池パワーモジュールを提供することを第1の目的とする。
【0010】
本発明は、海上用途に適したものにするために、やはり発火の潜在的なリスクを最小限に抑えつつも、可能な限り多くの燃料電池システムを包含している燃料電池パワーモジュールを提供することを別の目的とする。
【0011】
本発明は、(「ケージ内燃料電池」アプローチの場合のような)特定の、密閉され且つ封止された部屋に設置される必要性をなくした、したがって、船舶内であればどこにでも設置することが可能な燃料電池パワーモジュールを提供することを別の目的とする。
【0012】
加えて、本発明の燃料電池パワーモジュールにより、モジュールが設置される船舶、車両、又は他の用途を問わず、燃料電池電力システムの安全システムを標準化し、制御することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明の第1の態様では、燃料電池パワーモジュールが提供され、この燃料電池パワーモジュールは、封止隔壁(21)によって分けられた2つの密閉されたコンパートメントであって、一方が電力管理部品(31、32、33)を含む電気コンパートメント(3)であり、他方が燃料電池(41)を含むとともに、その入口回路及び出口回路が可燃性流体を包含している燃料電池コンパートメント(4)である前記コンパートメントを含み、燃料電池コンパートメントが強制換気のための手段を含むことを特徴としている。
【0014】
燃料電池コンパートメントの換気は、通常動作時における燃料電池スタック、若しくは配管接合部からの軽微な継続的な漏出に関連した爆発性、可燃性又は有毒性ガスの濃度のあらゆる意図しない蓄積、又は水素システムの故障に関連した漏出を防ぐのに重要である。
【0015】
燃料電池コンパートメントの強制換気のためのこれらの手段は、燃料電池コンパートメントの外部と、燃料電池コンパートメントの内部との間のインタフェースに設けられた空気入口及び空気出口を含むことができ、1つのファン又は複数のファンが、空気流量を制御するためにコンパートメント内に存在している。
【0016】
本発明の一実施形態では、電気コンパートメントも同様に、燃料電池コンパートメントの強制換気のための手段とは別個の強制換気のための手段を含み、これにより、別個の、独立して換気されたコンパートメントが得られ、それぞれが外部環境へと換気されて、一方のコンパートメントからの流体が、隣接するコンパートメントの中へと決して直接通過できないようにすることができる。これにより、燃料電池スタック又は水素燃料経路に関連し、強制換気にもかかわらず燃料電池コンパートメント内に刻一刻と蓄積し得るどんな水素漏出も、潜在的な発火源となり得る非防爆の構成部品を包含している電気コンパートメント内に達する潜在的に危険なH2-空気混合ガスを決して生じることがないようにする。
【0017】
電気コンパートメントの強制換気のための手段は、電気コンパートメントの外部と、電気コンパートメントの内部との間のインタフェースに設けられた空気入口及び空気出口を含むことができる。
【0018】
好適な一実施形態では、電気コンパートメントの換気手段は、電気コンパートメント内の空気圧を燃料電池コンパートメント内の圧力よりも高く保つように適合させることができる。
【0019】
一実施形態では、熱交換器が燃料電池コンパートメント内に存在する場合がある。このような熱交換器は、海水などの外部からの冷却液の継続的な流れが、内部燃料電池冷却回路から遠ざけるように熱を移動させる外部冷却回路を通って流れるようにそれぞれが構成された、内部冷却回路及び外部冷却回路を含むことができる。内部冷却回路は、脱イオン水を含むことができる。他の適切な構成を適用することができる。
【0020】
さらに、別の実施形態では、電気コンパートメント内での強制換気又は自然換気の代わりに、熱交換システムを使用することができる。電気コンパートメントの熱交換器は、燃料電池コンパートメントの熱交換器と同様に、又は任意の他の適切なやり方で構成することができる。
【0021】
特に海上用途用のさらなる追加の安全対策は、燃料電池への空気供給をろ過するための空気フィルタ(44)を提供することによって講じることができる。粒子用フィルタ及び/又は薬液用フィルタに加えて、このような空気フィルタは、噴霧及び水噴射がフィルタに入るのを防ぐために通気孔、及び/又は懸濁水の液滴を収集し、集められた水をろ過ユニットの外部に排水するメッシュを含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態では、燃料電池パワーモジュールは、封止隔壁(21)によって別個の密閉されたコンパートメントにさらに分けられた、封止されたケーシング(2)に収容することができ、前記コンパートメントの一方は、電力管理部品(31、32、33)を含む電気コンパートメント(3)であり、他方は、燃料電池コンパートメント(4)である。モジュールは、1つの連続的な構造、又はつなぎ合わされた複数の構造で構成することができる。
【0023】
本発明の一実施形態では、ケーブル並びに非可燃性流体及び関連付けされた配管が、隔壁を貫通する封止接合部を介してモジュールの隔壁を貫通して、コンパートメント間の別個の空間を維持することができる。
【0024】
別の実施形態では、燃料電池コンパートメントは、残りの機械設備構成部品、例えば、水素燃料電池を動作させるために、又は追加のモジュールの機能性を提供するために必要な場合があるコンプレッサ(43)、及び/又は、水フィルタ(45)、及び/又は、冷却液ポンプ(46)、及び/又は、サーモスタットタップ(47)など、追加の構成部品を含むことができる。
【0025】
本発明による特定の一実施形態では、封止隔壁に電力管理接続ケーブル(c1、c2)のみが貫通している。
【0026】
別の特定の実施形態では、封止隔壁に燃料電池カソードガス入口導管(cO2f)のみが貫通している。
【0027】
本発明の好適な一実施形態では、封止隔壁に電力管理接続ケーブル(c1、c2)のみが貫通しており、及び/又は、カソードガス導管(cO2f)の入口が電気コンパートメントの中へと開かれているとともに、燃料電池(41)の空気供給システムに接続され、及び/又は、パイプcCoolFPT及びパイプcHotがそれぞれ、燃料電池41に冷却水を供給し、燃料電池から冷却水を放出する。
【0028】
加えて、1kW当たりのコスト、1kW当たりの重量/サイズ、及び全体的なエネルギー効率(使用される水素1kg当たりに生成される電気エネルギーのkWh)に関してモジュールの効率を損なわずに、電力出力を増加させるために、共通の燃料入口及び排出口を共有している複数の燃料電池が燃料電池空間内に存在する、燃料電池パワーモジュールを提供することができる。
【0029】
本発明の特定の一実施形態では、任意に他の実施形態と組み合わせて、燃料電池パワーモジュールが提供され、この燃料電池パワーモジュールは、封止隔壁(21)によって2つのコンパートメント(3、4)に分けられた封止されたケーシング(2)であって、前記2つのコンパートメントのうちの一方が、システムコントローラ(31)を含む電気コンパートメント(3)であり、他方が、水素入口接続(iH2)に接続された水素供給システムによって水素が供給され、空気入口接続(iO2)に接続された空気供給システムによって酸素が供給されるように配置された燃料電池(41)を含むセルコンパートメント(4)である封止されたケーシング(2)で形成され、跳ね除け(repel)接続(iGaz)に接続されたガス放出システムによってガスを中に通さないようにし、跳ね除け接続(iH20)に接続された水放出システムによって水を中に通さないようにし、且つ、冷却接続(iCool)に接続された液体冷却システムによって冷却されるように提供される。
【0030】
さらに、本発明の燃料電池パワーモジュールは、電力出力を負荷印加に直接接続することができるように電圧及び電流を調整するように適合され、ハイブリッド化を制御し、外部からの電気的調整の必要性をなくした電力管理システムを含むことができる。
【0031】
加えて、燃料電池パワーモジュールのケーシング(2)は、追加の支持構造もキャビネットもなしで、複数のモジュールを垂直に、幾重にも、安全に組み合わせること及び/又は積み重ねることができるように、適合させることができる。
【0032】
本発明の第2の態様では、本発明に従って記載されているような燃料電池パワーモジュールを含む水素貯蔵及び電力システムが提供される。このような水素貯蔵及び電力システムは、海上用途、及び特に船舶など、高い安全性が要求される用途において設置するのに適している場合がある。
【0033】
図面の説明
本発明の他の利点、及び特殊性は、添付の図面に関して、まったく限定するものではない実装形態及び実施形態の詳細な説明を読めば、明らかになってくるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1の実施形態による電源モジュールを概略的に表したものである。
図2】本発明の第2の実施形態による電源モジュールを概略的に表したものである。
図3】本発明の一実施形態によるシステムを概略的に表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
以下に説明する実施形態は、まったく限定的なものではなく、説明する特徴の選択のみを含む本発明の変形形態は、この特徴の選択が先行技術に対して技術的利点をもたらすのに十分であるか、又は先行技術に対して本発明を差別化するのに十分である場合には、特に考慮することができ、その後、説明する他の特徴から分離することができる。この選択は、少なくとも1つの特徴を含み、構造細部なしで動作可能であるか、又は構造細部の一部のみが先行技術に対して技術的利点をもたらすのに十分であるか、若しくは先行技術に対して本発明を差別化するのに十分である場合には、この一部のみを用いて動作可能であることが好ましい。
【0036】
本発明による燃料電池パワーモジュールについて以下で説明する(1)が、前記モジュールは、封止隔壁(21)によって別個の密閉されたコンパートメントにさらに分けられたケーシング(2)に収容され、前記コンパートメントの一方は、電力管理部品(31、32、33)を含む電気コンパートメント(3)であり、他方は、燃料電池(41)を含み、その入口回路及び出口回路が可燃性流体を包含している、強制換気下にある燃料電池コンパートメント(4)である。この配置構成により、燃料電池コンパートメント内に存在する潜在的な爆発性燃料ガスが電気コンパートメント内で循環するのを防ぐことで、関連する電気部品からの発火のリスクを回避する。
【0037】
加えて、モジュールに組み込まれた強制換気システムにより、漏出の検出及び緊急停止処置に加えて、部品の漏出に起因する爆発性ガスの濃度が確実に、十分な稀釈によってガスの爆発下限(LEL:lower explosion limit)を下回るように理想的に保たれるようにして、爆発性ガス、可燃性ガス、又は有毒性ガス濃度のあらゆる意図しない蓄積を防ぐ。
【0038】
強制換気システムは、危険のない電気コンパートメント内の圧力が、危険な燃料電池コンパートメントの圧力よりも確実に高くなるように制御して、潜在的な燃料ガスの侵入に対する安全性レベルをさらに向上させるようにすることもまた可能である。
【0039】
モジュールのケーシングは、燃料電池用空間の気密安全要求事項を満たす燃料電池システムを可能な限り保護し、包含している。モジュールが船舶の外部につながる通気管に接続されている限り、モジュールを(「ケージ内燃料電池」アプローチの場合のような)特定の、密閉且つ封止された部屋に設置する必要がなくなり、原則として、船舶内部のどんな場所にも設置することができる。一定し、制御された換気空間を筐体内に有することによって、モジュールは確実に、どんな船舶に対しても換気流量が十分に大きく、一定し、且つ制御されるようにして、安全基準を満たすとともに、水素の蓄積を防ぐようにする。本質的に、このモジュールにより、モジュールが設置される船舶、車両、又はその他の用途を問わず、燃料電池電力システム用に安全システムを標準化し、制御することが可能になる。
【0040】
本発明の一実施形態では、封止隔壁には、主に燃料電池を電力管理部品と接続させている制御ケーブル、電力ケーブル、及びその他の電気ケーブル(c1、c2)が貫通している。
【0041】
本発明の一実施形態では、封止隔壁には、燃料電池カソードガス入口パイプ(cO2f)が追加的に貫通している。この燃料電池カソードガス入口導管は、典型的には空気であるカソードガスを燃料電池コンパートメントの空間から離隔し、隔壁の中へと封じ込めておく。
【0042】
この特定の実施形態では、燃料電池カソードガス入口導管は、電気コンパートメントの中へと開かれ、燃料電池の空気供給システムに接続されている。これは、電力管理部品の冷却を助ける場合がある。
【0043】
さらなる一実施形態では、封止隔壁は、燃料電池に接続された他の非可燃性流体用の導管をバイパスさせることができる。これらの導管は、燃料電池換気空間と、電気コンパートメントの空間との間の流体漏出を防ぐために封止される。
【0044】
特定の一実施形態では、電気コンパートメントは、燃料電池冷却システムに接続された封止隔壁をバイパスする冷却材から液体冷却し得る電圧変換器を包含することができる。モジュールに組み込まれた電力管理システムは、外部の印加負荷に適合するように調整された特定の電圧で電力を出力するため、外部の電圧変換器を追加する必要がなくなる。電力管理システムは、モジュールから出力される電流もまた制御し、燃料効率及び燃料電池スタックの寿命を最大化するために外部のバッテリパックとのハイブリッド化を制御するようにする。
【0045】
一実施形態では、燃料電池コンパートメントは、コンプレッサ(43)、及び/又は、水フィルタ(45)、及び/又は、冷却液ポンプ(46)、及び/又は、水素燃料電池用サーモスタットタップ(47)、例えば、水素ガス配管網及びデバイス、カソードガス入口コンプレッサ、並びに液体冷却ポンプなど、残りの機械設備部品を含むことができる。
【0046】
本発明の特定の一実施形態では、電気コンパートメント内の圧力は、燃料電池コンパートメント内の圧力よりも高く保つことができるため、例えば、電気コンパートメント内に入力ファンを追加することにより、万一の接合部の損傷又は故障の場合に起こり得る、隔壁を越えた水素の移動というリスクを軽減する。
【0047】
さらに、電気コンパートメントは、燃料電池から充電され、燃料電池とハイブリッド化された場合に、始動、高速電力応答、又はピーク電力応答に使用可能なバッテリ又はスーパーキャパシタのような、電気エネルギー貯蔵システムを包含することができる。
【0048】
本発明によるさらなる一実施形態では、複数の燃料電池が、共通の燃料入口及び排出口を共有して燃料電池コンパートメントに存在する場合がある。
【0049】
本発明による燃料電池パワーモジュールは、すべての非防爆定格電気部品(非ATEX定格)が確実に、別個のコンパートメント、すなわち、電気コンパートメントに収容されるようにすることにより、発火のリスクを軽減する。モジュールの封止隔壁によって非ATEX電気部品と燃料電池部品が分離されていることにより、爆発性ガスがこれらの電気部品と接触するリスクが確実に軽減されるが、これらの電気部品には、システムコントローラ、電圧変換器、及び、バッテリ又はキャパシタなどのエネルギー貯蔵部品が含まれ得る。
【0050】
加えて、本発明は、燃料システムのバルブ、コネクタ及び配管の潜在的な漏出から燃料電池空間に強制換気を提供して、確実に爆発下限を十分に下回るように燃料ガスの濃度を保つことによって、発火のリスクをさらに軽減する。
【0051】
ここで図1を参照しながら、本発明の一実施形態による燃料電池パワーモジュールをより詳細に説明する。
【0052】
ケーシング2は、水密であり、また気密でもある剛性のケーシングである。
【0053】
電源モジュール1の重量を最小限にするために、ケーシングは、別個の補剛フレームの必要性をなくしたモノコック構造として、複合材料で作ることができる。
【0054】
ケーシングは、難燃性の複合材料で作ることができる。
【0055】
ケーシング2は、封止隔壁21によって、2つのコンパートメント3及び4に分かれている。コンパートメント3には電気部品及び電子部品が装備されており、一方コンパートメント4には水素燃料電池41が装備されている。この配置構成は、コンパートメント4に存在する可能性がある水素ガスが、コンパートメント3に存在する電気部品及び電子部品を循環するのを防ぎ、したがって、潜在的な発火リスクを最小限にする。
【0056】
コンパートメント3は、ケーシング2の外部とコンパートメント3の内部との間のインタフェースに設けられた、空気入口i3Air及び空気出口o3Airによって換気される。
【0057】
コンパートメント3は、ケーシング2の外側表面に設けられた高速接続iCiによって、ケーシング3の外部の1つ又は複数の制御インタフェースCiに接続されたシステムコントローラ31を含む。システムコントローラは、接続ケーブルc1によって燃料電池41の動作を制御するコンピュータプログラム製品を含む。接続ケーブルc1は、封止隔壁5を貫通している。ガスに対する封止が維持されている。
【0058】
電気コンパートメント3は電力制御ユニット32をさらに含む。電力制御ユニット32は、ケーシング2の外側表面に設けられた高速接続iHPiによって、コンパートメント3の外部の電力電流インタフェースHPiに接続されている。電力制御ユニット32は、例えば、DC/DC変換器によって、高電力電圧を要求される出力電圧に変換する。このような制御ユニット32が存在するとき、それは、接続ケーブルc2によってシステムコントローラ31にさらに接続されている。システムコントローラ31のコンピュータプログラムは、したがって電力制御ユニット32を制御する。電力制御ユニット32は、システムコントローラ31の命令に従って、燃料電池41によって生成される電力の量を調整することもまた可能である。
【0059】
システムコントローラ31は、燃料電池パワーモジュールの内部に存在し得る他のすべての電子デバイス(ソレノイドバルブ、水素センサ、サーモスタット、等々)、及びモジュールの外部に存在し得る他のすべての電子デバイス(バッテリ管理システム、モータコントローラ、水素タンク圧力、ソレノイドバルブ等々)を読み取り/制御するようにさらに構成されている。
【0060】
電気コンパートメント3は、エネルギー貯蔵部33、例えば、バッテリ又はスーパーキャパシタをさらに含んでいるが、それはオプションである。このようなエネルギー貯蔵部33が存在するとき、それは、存在する場合、接続ケーブルc4によって電力制御ユニットにさらに接続されている。このようなエネルギー貯蔵部33が存在するとき、それは、接続ケーブルc4によってシステムコントローラ31にさらに接続させることができる。システムコントローラ31のコンピュータプログラムは、したがって燃料電池41によって供給されるエネルギーと、エネルギー貯蔵部33との間のハイブリッド化を制御する。
【0061】
燃料電池コンパートメント4は、ケーシング2の外部とケーシング4の内部との間のインタフェースに設けられた、空気入口i4Air及び空気出口o4Airによって換気される。この換気により、漏出の場合の水素の高速放出を保証し、蓄積を防ぐことが可能になる。
【0062】
従来、燃料電池41は、互いの横に設けられた、連続した基本セル(非表示)を含む。これらのセルはそれぞれ、水素からの酸化を発生させるアノードのコンパートメントを画定するだけでなく、空気からの酸素が、発生した水で還元されるカソードのコンパートメントも画定する。
【0063】
さらに、イオン交換膜は、問題のセルのアノードのコンパートメントとカソードのコンパートメントとを物理的に分離し、それはさらに外部の電気回路によって接続される。
【0064】
水素流は、水素供給システムの一部を形成している水素供給パイプcH2によって供給される。水素供給システムは、圧力調整器を含むことができる。水素ガスシステムは、過剰圧力バルブ及びソレノイドバルブを含むこともまた可能である。
【0065】
ガスパイプcH2は、ケーシング2の外側表面上のコンパートメント4のインタフェースに設けられた高速水素接続iH2によって、コンパートメント4の外部の水素源sH2に接続させることができる。
【0066】
水素流は、膜/電極組立体のアノード側の方へ向けられている。水素は、以下の電気化学半反応に従って、アノードにおいて触媒作用で酸化されて、陽子及び電子をもたらす。2H→4H+4e
【0067】
同時に、二酸素流は、二酸素供給システムの一部を形成している空気供給パイプcO2fcによって供給される。
【0068】
より具体的には、パイプc02fcは、空気供給システムの一部を形成し、ガスを加圧するコンプレッサ43の出口に、燃料電池41用に要求される空気入口圧力で接続されている。コンプレッサは、オプションの要素である。
【0069】
コンプレッサ43の空気入口、又はパイプc02fcは、空気供給システムの一部を形成する空気フィルタ44の出口においてパイプc02fによって接続されている。空気フィルタは、オプションの要素である。
【0070】
空気フィルタが存在するとき、空気フィルタの入口は、ケーシング2の外側表面上のコンパートメント4のインタフェースに設けられた高速空気入口接続i02に接続されたパイプc02によって、コンパートメント4の外部の空気源s02に接続させることが可能である。
【0071】
空気供給システムは、追加のろ過、加湿器、空気冷却システム又は流量センサもさらに含むことができる。
【0072】
二酸素流は、膜/電極のカソード側から向けられている。二酸素分子は、水分子を形成するために、高分子電解質膜を通過する陽子、及び外部の回路を通って到着する電子と反応する。電解質半電池のこの還元反応は、次のようになる。O+4H+4e→2H
【0073】
これらの2つの半反応式を組み合わせることによって得られる全体的な反応は、水電気分解の逆以外の何ものでもない。この要約の熱成分及び電気成分が加えられると、以下のようになる。
2H+O→2HO+熱+電気
【0074】
生成された電流は、電気ケーブルc3によって電力制御ユニット32に接続される。接続ケーブルc3は、封止隔壁21を貫通している。ガスに対する封止が維持されている。
【0075】
燃料電池41によって生成された水分子は、過剰空気及び水素と同様に、ガス除去パイプcGazを介して燃料電池41から除去される。ガスパイプcGazは、ケーシング2の外側表面上のコンパートメント4のインタフェースに設けられた高速接続iGazによって、ケーシング2の外部の出口sGazに接続させることができる。
【0076】
表されている実施形態では、燃料電池41は、燃料電池41に冷却水を供給するパイプcCoolFPTを含む液体冷却システムによって冷却される。
【0077】
液体冷却システムは、出口がパイプcCoolFPTに接続され、入口がパイプcCoolPTに接続された水フィルタ45をさらに含む。
【0078】
液体冷却システムは、出口がパイプcCoolPTに接続され、パイプcCoolTによって入口に供給が行われるポンプ46を含む。
【0079】
燃料電池41によって生成された熱は、主として水放出システムの冷却出口パイプcHotを通して放出される。パイプcHotは、ケーシング2の外側表面上のコンパートメント4のインタフェースに設けられた高速冷却接続iHotによって、コンパートメント4の外部の出口sHotに接続させることができる。
【0080】
液体冷却システムは、燃料電池温度を調整する、出口がパイプcCoolTに接続され、入口が外部の低温冷却水パイプcCool及び内部循環高温冷却水パイプcHot_intに接続された、サーモスタットタップ47を含む。冷却水パイプcCoolは、ケーシング2の外側表面上のコンパートメント4のインタフェースに設けられた高速接続iCoolによって、コンパートメント4の外部の供給源sCoolに接続させることができる。
【0081】
液体冷却システムは、粒子フィルタ、脱イオン化フィルタ、流量センサ、補充タンク、及び熱交換器をさらに含むことができる。
【0082】
第1の実施形態では、電気的接続のみが封止隔壁21を貫通している。
【0083】
ここで図2を参照しながら、本発明によるモジュールの別の実施形態を、図1の実施形態との違いに関してのみ説明する。
【0084】
この実施形態では、空気供給sO2は、電気コンパートメント3の中に移動されたフィルタ44を通り抜ける。セルに空気を供給する導管c02fは、電気コンパートメント3の中へと開かれて、電子コンパートメントから事前にろ過された空気を戻す。このシステムの利点は、燃料電池の空気フィルタを使用して、電気部品を腐食から保護し、それらの長寿命性を確保することである。接続i02もまた、電気コンパートメント3のインタフェースに移動されている。フィルタも通常、ケーシング2の外部の大気から空気が引き込まれる開口i02でケーシング2に埋め込むか、又は直接接続させることができる。
【0085】
コンパートメントの換気率及びコンパートメント間の差圧を制御するために、ケーシングへのすべての換気接続は、ファンを含むことができる。
【0086】
この特定の実施形態では、電力管理システムへの電気的接続、空気入口パイプ、及び水冷却が、封止隔壁21を貫通している。
【0087】
これらの2つの実施形態では、空気入口及び空気出口のインタフェースは、ケーシング1の向かい合った面に配置されているか、又はモジュールを横に並べるか、若しくはラック形式で上下に積み重ねることができるように、一方の側に配置されている。
【0088】
図3は、複数の燃料電池パワーモジュール1、1’、1’’を含む燃料電池電力システムであって、電力出口が印加負荷200を供給する主要電気母線に直接並列に接続された燃料電池電力システム、典型的には、電気推進システムを図示し、この図では、燃料は、共通の燃料貯蔵システム201からモジュールに送給されている。各モジュールの内部で電圧調整し、共通電圧Vを確保することで、外部電圧調整器の必要性がなくなった結果として、直接的な接続性が実現される。負荷に供給される総電力Pは、単純に、各モジュールから出力される電力の和である(P+P’+P’’)。このモジュール式配置構成により、1つのモジュールが誤動作した場合の冗長性という利点がもたらされ、モジュール間で差動電力を有することで、システム全体の燃料効率を最適化したり、或いは再び効率を高めるためにある特定のモジュールを遮断したりする能力がもたらされる。
【0089】
主として水素を燃料として使用する陽子交換膜燃料電池の点から、本発明を説明してきたが、本発明の適用可能性はそのように限定されておらず、メタノール、アンモニア、プロパン、ブタンなどの他のタイプの燃料、並びにアルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、亜鉛空気電池、及び固体酸化物型燃料電池などの他のタイプの燃料電池ことを認識しなければならない。
【0090】
当然ながら、本発明は、直前に記載した例に限定されず、本発明の範囲から遠ざかることなく、数々の配置構成をこれらの例に適用することができる。加えて、本発明の異なる特徴、形式、変形形態及び実施形態は、それらが互いに非互換的でも、排他的でもない限り、様々な組み合わせに従って互いに関連付けすることができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】