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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】埋め込み型食道プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20240326BHJP
   A61F 2/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61F2/07
A61F2/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562996
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2022060355
(87)【国際公開番号】W WO2022223578
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】2021/5309
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】523387356
【氏名又は名称】フォークト,カースティン-エヴリン
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォークト,カースティン-エヴリン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA18
4C097BB01
4C097CC04
(57)【要約】
本発明は、供給チューブを備えた埋め込み型食道プロテーゼ(即ち、インプラント可能な人口食道)であって、供給チューブがハウジングによって少なくとも部分的に取り囲まれ、ハウジング内に加圧部材が適用され、加圧部材が、供給チューブの外壁に対する蠕動圧力を生成するように配置された圧力印加要素を備えてなる、埋め込み型食道プロテーゼに関する。前記加圧部材は、初期位置から所定の距離にわたって供給チューブに沿って移動できるように適用され、前記圧力印加要素は、食道プロテーゼが埋め込まれるべき身体の胃に向かって延びる第1の方向での供給チューブに沿った移動時に蠕動圧力を連続的に生成するように設けられている。前記加圧部材は、圧力印加要素をその初期位置に戻すべく、第1の方向とは反対の第2の方向に作用する戻し力を加えるように設けられた戻し部材を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給チューブ(3)を備えた埋め込み型食道プロテーゼ(1)であって、前記供給チューブがハウジング(2)によって少なくとも部分的に取り囲まれ、前記ハウジング(2)内に加圧部材(4,5)が適用され、前記加圧部材が、前記供給チューブの外壁に対する蠕動圧力を生成すべく設けられた圧力印加要素(4)を備えてなる、埋め込み型食道プロテーゼにおいて、
前記加圧部材は、初期位置(8)から始まる所定の距離にわたって前記供給チューブに沿って移動可能であるように設けられ、前記圧力印加要素(4)は、当該食道プロテーゼが埋め込まれるべき身体の胃に向かって延びる第1の方向(L1)での前記供給チューブに沿った移動時に蠕動圧力を連続的に生成するべく設けられており、
前記加圧部材は、前記圧力印加要素をその初期位置に向かって戻すべく、前記第1の方向とは反対の第2の方向(L2)で延びる戻し力を印加するために設けられた戻し部材(5)を備えている、ことを特徴とする埋め込み型食道プロテーゼ(1)。
【請求項2】
前記圧力印加要素(4)は、圧力下にある液圧流体又はガスを使用することによって連続的な蠕動圧力を生成するために設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項3】
前記圧力印加要素(4)が流体入力(16)及び流体出力(17)を備え、前記圧力印加要素は、前記供給チューブを少なくとも部分的に包囲するように構成された内壁であって、第1の一連の出力ゲート(24)及び少なくとも第2の一連の入力ゲート(25)が設けられた内壁を備え、
前記入力ゲートは、前記第1の方向で見て、前記出力ゲート下に適用され、
前記出力ゲート及び前記入力ゲートのそれぞれは、前記流体入力(16)及び前記流体出力(17)のそれぞれに接続され、
前記流体入力は、少なくとも2バールの圧力で液圧流体を供給するために設けられたポンプ(14)に接続されている、
ことを特徴とする、請求項2に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項4】
前記第1の一連の出力ゲート(24)は少なくとも2つの出力ゲートを備え、前記第2の一連の入力ゲート(25)は少なくとも1つの入力ゲートを備えることを特徴とする、請求項3に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項5】
当該食道プロテーゼは、前記供給チューブ内に存在する食物によって加えられた圧力を測定するべく設けられた圧力センサ(10)を備え、当該食道プロテーゼはまた、前記圧力センサに接続された制御ユニット(12)も備え、
前記圧力センサは、測定された圧力に基づいて第1のトリガ信号を生成するべく設けられ、前記制御ユニットは、前記第1のトリガ信号に基づいて、前記ポンプ(14)を制御するために前記ポンプに供給されるべき振幅及び周期を有する第2のトリガ信号を生成するべく設けられていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項6】
前記ポンプ(14)が前記供給チューブ(3)の周りに巻き付けられていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項7】
前記戻し部材(5)が前記ハウジングの内側に配置されたばねによって形成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項8】
前記圧力印加要素は、前記供給チューブ(3)に対して後方及び前方への移動を実現すべく設けられた一対の圧縮部材(33,34)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項9】
前記圧力印加要素は、前記供給チューブに沿った前記移動をもたらすべく設けられた駆動部材(32)に取り付けられたプッシャ(30)及びコンプレッサ(31)を備え、
前記コンプレッサは前記プッシャの下流側に取り付けられ、
前記圧力部材が前記コンプレッサの一部であり、
前記プッシャは、前記圧縮部材に前記後方及び前方への移動を行わせるために設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項10】
前記駆動部材は、
前記圧縮部材に前記前方への移動を行わせるため、第1の動作段階時に、前記プッシャを駆動するべく設けられていると共に、
前記第1の動作段階に続く第2の動作段階時に、前記第1の方向(L1)での前記供給チューブに沿った移動を行わせるべく設けられている、
ことを特徴とする、請求項9に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項11】
前記駆動部材は、
前記第2の動作段階に続く第3の動作段階時に、前記圧縮部材に前記後方への移動を行わせるために前記プッシャを駆動するべく設けられていると共に、
第4の動作段階時に、前記第2の方向(L2)での前記供給チューブに沿った戻し移動を行わせるべく設けられている、
ことを特徴とする、請求項10に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項12】
前記第3及び第4の動作段階が、互いに後続しあう、又は互いに時間的に一致することを特徴とする、請求項11に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項13】
前記圧縮部材はそれぞれ、軸(41)で回転するように構成されたロールで形成されていることを特徴とする、請求項8~12のいずれか一項に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項14】
前記コンプレッサ(31)は、前記第1の方向に対して傾斜するように構成されたスリット(37,38,39,40)のセットが設けられてなるリングを備え、前記スリットのセットは、前記軸を受けるために当該リングの両側に適用されてなる、一つの圧縮要素あたり2つのスリットを含むことを特徴とする、請求項13に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項15】
前記圧力印加要素が前記供給チューブに沿って移動する際に到達する最終位置(9)の下方において前記供給チューブに設けられた食物通過制御弁(7)を備えることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項16】
前記食物通過制御弁(7)は第1の弁要素及び第2の弁要素を備え、前記第1の弁要素は前記第2の弁要素に対して同軸で設けられ、
前記第1の弁要素は、胃への前記供給チューブの第1の通過を可能にするために設けられており、前記第2の弁要素は、胃から前記供給チューブへの第2の通過を可能にするために設けられていることを特徴とする、請求項15に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【請求項17】
前記第1の弁要素は、約25mbarの開放圧力で較正され、
前記第2の弁要素は、少なくとも150mbar、好ましくは200mbarの開放圧力で較正されることを特徴とする、請求項16に記載の埋め込み型食道プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給チューブを備える埋め込み型食道プロテーゼ(即ち、インプラント可能な人口食道)に関し、この供給チューブがハウジングによって少なくとも部分的に取り囲まれ、ハウジング内に加圧部材が適用され、この加圧部材は、供給チューブの外壁に対する蠕動圧力を生成するために設けられた圧力印加要素を備えてなる、埋め込み型食道プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような埋め込み型食道プロテーゼは、特許文献1(WO2019/241414)から知られており、人の体内の天然の(生来の)食道を置換するために使用される。既知の埋め込み型食道プロテーゼは、例えば生物医学用途のためのシリコーン製のチューブを備える。また、プロテーゼは、加圧部材が毎回収容される複数のハウジングも備え、この加圧部材は、供給チューブの外壁に対する蠕動圧力を生成し、したがって、供給チューブ内の食物の移動に寄与するように設けられた圧力印加要素を備える。
【0003】
既知の埋め込み型食道プロテーゼの欠点は、複数のハウジングの使用に起因して、埋め込まれた食道の長さにわたって連続的な圧力を印加することが不可能であるという点である。実際、圧力は、ハウジングが位置する場所に加えられるが、2つの後続のハウジング間の部分には加えられない。これは、導入された食物が2つの後続のハウジング間で埋め込まれた食道プロテーゼ内に詰まる可能性があり、したがってプロテーゼが埋め込まれる人に害を及ぼす状況をもたらす可能性がある。したがって、既知の埋め込み型食道プロテーゼの信頼性は、人体への適用には十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2019/241414号
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0125633号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、より信頼性の高い埋め込み型食道プロテーゼを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼは、次の点を特徴とする。即ち、加圧部材が初期位置から始まる所定の距離にわたって供給チューブに沿って移動できるように適用され、圧力印加要素が、プロテーゼが埋め込まれる身体の胃に向かって延びる第1の方向での供給チューブに沿うその移動中に蠕動圧力を連続的に生成するために設けられ、前記加圧部材が、圧力印加要素をその初期位置に向かって戻すべく、第1の方向とは反対の第2の方向に延びる戻し力を印加するために設けられる戻し部材を備えることを特徴とする。プロテーゼが埋め込まれるようになっている人体の胃に向かって延びる第1の方向での供給チューブに沿うその移動中に供給チューブの外壁に対する連続的な蠕動圧力を生成することによって、供給チューブ内に存在して胃に輸送されるべき食物に対して連続的な圧力が加えられることに注意が払われる。これにより、確実な態様で食道プロテーゼを通じて食物を輸送することが可能になり、それにより、食物が食道プロテーゼに詰まるリスクが大幅に低減される。
【0007】
米国特許出願公開第2018/0125633号明細書が、生体の天然の食道内に埋め込まれ得るとともにこの食道内で移動されて天然の食道の蠕動移動によって生じる力に応答することができる装置を記載していることに留意されたい。しかしながら、米国特許出願公開第2018/0125633号明細書に記載されている装置は、国際公開WO2019/241414号パンフレットに記載されているプロテーゼと組み合わせることができない。実際、米国特許出願公開第2018/0125633号明細書に係る装置は、天然の食道の内側に配置されるが、国際公開WO2019/241414号パンフレットでは、加圧部材が天然の食道に取って代わるプロテーゼの外側に配置される。したがって、2つの特許出願の教示内容を組み合わせることは、技術的に言えば不可能である。
【0008】
本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第1の好ましい実施形態は、圧力印加要素が、加圧下で液圧流体又はガスを使用することによって連続的な蠕動圧力を生成するために設けられることを特徴とする。加圧下での液圧流体又はガスの使用は、人体に埋め込まれたチューブの外壁に対して連続的な蠕動圧力を印加するための適切な解決策を提供する。
【0009】
好ましくは、本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第1の好ましい実施形態は、圧力印加要素が流体入力及び流体出力を備え、圧力印加要素が供給チューブを少なくとも部分的に包囲するように構成されるとともに第1の一連の出力ゲート及び少なくとも第2の一連の入力ゲートが設けられる内壁を備え、入力ゲートが、前記第1の方向で見て、出力ゲート下に適用され、出力ゲート及び入力ゲートのそれぞれが、前記流体入力及び前記流体出力のそれぞれに接続され、流体入力が、少なくとも2バールの圧力で液圧流体を供給するために設けられるポンプ出力に接続されることを特徴とする。出力ゲートは、流体の直接的な出力を可能にし、それによってチューブの外壁に対する連続的な蠕動圧力を生成する。入力ゲートは、出力ゲートによって排出された流体を回収し、したがって閉じられた流体回路を得ることを可能にする。
【0010】
好ましくは、本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第1の好ましい実施形態は、戻し部材が前記ハウジングの内側に収容されるばねによって形成されることを更に特徴とする。これにより、円筒体を初期位置に迅速且つ確実に戻すことができる。
【0011】
本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第2の好ましい実施形態は、圧力印加要素が、供給チューブに対する前後移動を及ぼすために設けられる圧縮部材のセットを備えることを特徴とする。圧縮部材は、機械的に信頼できる解決策を提供する。
【0012】
好ましくは、本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第2の好ましい実施形態は、チューブに沿う前記移動を生成するために設けられる駆動部材に取り付けられるプッシャ及びコンプレッサを圧力印加要素が備え、前記コンプレッサが前記プッシャの下流側に取り付けられ、前記圧縮部材が前記コンプレッサの一部であり、前記プッシャが前記前後移動を可能にするために前記圧縮部材に移動を課すために設けられることを特徴とする。プッシャ及びコンプレッサの使用は、前後移動を可能にする。プッシャ及びコンプレッサの使用は、その後の時間シーケンスの機能において、チューブに沿う前後移動を容易に管理することを可能にする。
【0013】
好ましくは、本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第2の好ましい実施形態は、圧縮要素がそれぞれ軸上に回転可能に適用されるローラによって形成されることを更に特徴とする。回転可能に適用されたローラの使用は、圧縮部材とチューブとの間の摩擦を低減することを可能にし、それによって電力消費を低減し、プロテーゼの寿命を延ばす。
【0014】
ここで、添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第1の好ましい実施形態を示す。
図2】圧力印加要素の好ましい実施形態を示す。
図3】圧力印加要素を貫く長手方向の断面を示す。
図4】本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第1の好ましい実施形態の動作を示す。
図5】ポンプの制御を示す。
図6】第2のトリガ信号の一例を示す。
図7】本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第2の実施形態を示す。
図8】第2の実施形態の圧力印加要素を示す。
図9】第2の実施形態のコンプレッサを示す。
図10】スリットの異なる形状を示す(10a,10b,10c)。
図11】供給チューブ内に配置されるべき食物通過制御弁7の一例の断面図を示す。
図12】ポンプの特定の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面では、同じ又は類似の要素に同じ参照番号が割り当てられる。
【0017】
図1は、本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼ1の第1の好ましい実施形態を示す。埋込み可能な食道プロテーゼは、人の人体内の天然の(生来の)食道を置換するために設けられた供給チューブ3を備える。図1に示されるように、供給チューブはハウジング2によって少なくとも部分的に取り囲まれ、ハウジング2内には、初期位置8から始まる所定の距離にわたってチューブに沿って移動されるように加圧部材4、5が適用され、加圧部材はハウジングの最上部に位置される。
【0018】
加圧部材は、プロテーゼが埋め込まれる人体の胃に向かって延びる第1の方向l1(L1)でのチューブに沿うその移動中に、供給チューブ3の外壁に対する連続的な蠕動圧力を生成するために設けられる圧力印加要素4を備える。加圧部材は更に、圧力印加要素を初期位置8に戻すために、第1の方向l1(L1)とは反対の第2の方向l2(L2)に延びる戻し力を加えるために設けられるところの、例えばばねによって形成される戻し部材5を(更に)備える。図示の実施形態では、圧縮ばねが使用される。或いは、圧力印加要素の上側に適用される引張ばねを使用することができる。
【0019】
埋め込み型食道プロテーゼ1は、好ましくは、加圧部材の最終位置9に対応するハウジングの最下部に配置される食物通過制御弁7も備える。食物通過制御弁は、一方では、輸送された食物が胃にアクセスできるようにする役割を果たす。一方、食物通過制御弁は、嘔吐の場合に胃の内容物が供給チューブを介して逆流することを可能にする。また、食物通過制御弁は、人の口領域と人の胃との間を分離するように機能し、それにより、胃からの臭いが口に到達しないようにする。この弁は、食物が供給チューブ3内の最終位置9に到達したときに開く。開放圧力は、人体で実現されるように、好ましくは25mbarに設定される。食物が弁を通過するとすぐに、弁は、例えば更なるばねによって加えられる戻し力によって再び閉じる。
【0020】
また、弁は、胃から口への戻りを閉じるので、患者が嘔吐しなければならない場合に、胃から来る流体が口に戻ることを可能にしない。これは、胃の内部に非常に高い圧力をもたらし、過圧によって引き起こされる深刻な損傷につながる可能性がある。その結果、弁は、食物が反対方向、今度は胃から口に向かう方向をとることを可能にしなければならない。この場合、開放圧力は、例えば150~200mbarの間の高い値に設定されなければならない。実際、気体を含む飲料中にガスが存在する場合、又は嘔吐する場合、高圧が生じ、通常モードと嘔吐モードとの間にしっかりとした分離がなければならないからである。そのような逆流防止及び嘔吐弁のより詳細な説明は、以下に提供される。
【0021】
埋め込み型食道プロテーゼ1は、好ましくは、供給チューブ3上の圧力印加要素4の上流側に取り付けられて、制御ユニット12及び電源ユニット11、例えばバッテリに接続される食物通過検出センサ10を更に備える。制御ユニットはポンプ14にも接続され、ポンプは電源ユニット11によって給電される。ポンプは、流体リザーバ13に接続された入力ラインと、圧力制限弁15を介してハウジング2の流体入力16に接続された出力ラインとを有する。流体リザーバは、例えば水などの液圧流体、又は加圧下のガスを収容するために設けられる。ポンプは、0、5~2バールの、大気圧に対して過圧で液圧流体を供給するために設けられる。ハウジングは、流体リザーバと接続された流体出力17を更に備える。
【0022】
食物通過検出センサ10は、好ましくは、内部に存在する食物によって供給チューブに及ぼされる圧力を測定するために設けられた圧力センサである。また、食物通過検出センサ10は、光ビームを用いた検出器、超音波検出器又は圧力計であってもよい。食物通過検出センサの目的は、食物が供給チューブに入ったことを検出することである。光ビーム検出器が使用される場合、光ビーム検出器は、光ビームを放射して、食物による光ビームの中断を検出する。超音波検出器は超音波ビームを放射し、食物によって引き起こされるこのビームの反射の変化が検出される。しかしながら、分かりやすくするために、説明は圧力センサに限定される。
【0023】
図2及び図3は、圧力印加要素4の好ましい実施形態を示す。圧力印加要素の内部構造の一部を示すべく、部分的な切り欠きが図2に示される。図3は、圧力印加要素を貫く長手方向の断面を示す。圧力印加要素は、流体入力21及び流体出力22を有するところの、好ましくは円筒形状の本体20を備える。円筒形状の本体の使用は、円筒形のチューブと適切な態様で結合することを可能にし、圧力印加部材は、少なくとも第1の一連の出力ゲート24及び少なくとも第2の一連の入力ゲート25が設けられる内壁23も備える。入力ゲートは、前記第1の方向l1(L1)で見て、出力ゲートの下に適用される。出力ゲート24及び入力ゲート25はそれぞれ、流体入力21及び流体出力22のそれぞれと接続されている。流体入力21は流体入力16と協働し、流体出力22は流体出力17と協働する。第1の一連の出力ゲート24は少なくとも2つの出力ゲートを備え、第2の一連の入力ゲートは少なくとも1つの入力ゲートを備える。
【0024】
図3に示されるように、圧力チューブ29が、流体入力16に接続されて、本体20の内壁と平行に延在する。圧力チューブ29は、圧力印加要素4の内側チャンバ28内へと更に延在し、内側チャンバは流体入力から始まる。この内側チャンバ28は、第1の一連の出力ゲート24と接続される底壁を有する。入力ゲートは、流体出力22と接続された更なるチャンバ(図示せず)と接続されている。
【0025】
圧力印加要素4は、好ましくは、本体20の外壁に適用されるとともに、ハウジング2の内壁に適用された案内チャネル(図示せず)と係合する案内バー27を備える。案内バー27及び案内チャネルは、円筒形状の本体がハウジング内で移動する際にハウジング内で回転することによって圧力チューブ29を損傷することを回避する。
【0026】
図4は、本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼ1の第1の好ましい実施形態の動作を示す。食物が供給チューブ3の入口に到達すると、圧力センサ10は、食物によって供給チューブに加えられた圧力を検出する。圧力センサ10は、その値が供給チューブ内の食物によって加えられる圧力に依存する第1のトリガ信号を生成する。第1のトリガ信号は制御ユニット12に供給され、該制御ユニットは、第1のトリガ信号によって供給される値を検証する。第1のトリガ信号の値が所定の閾値を超える場合、制御ユニットは、ポンプ14に供給される第2のトリガ信号を生成する。第2のトリガ信号の制御下で、ポンプが作動されて流体リザーバ13から流体を汲み出し始める。圧送された流体は、圧力下で流体入力16に向かって供給され、圧力チューブ29に到達する。
【0027】
圧力チューブ29が内側チャンバ28内へと延在するので、内側チャンバは加圧下の流体で満たされ、その流体は出力ゲート24の第1のセットに到達することになる。加圧下の流体は、出力ゲート24の第1のセットによって排出され、供給チューブの外壁に対する加圧下で排出され、それにより、図4aに示すように、チューブ3の外壁に対して連続的な蠕動圧力を加える。図4aに示す実施形態において、出力ゲートの第1のセットは、3つの後続のゲートを備え、これは、3つの後続の波形圧力振動が示される(顕現される)理由を説明する。3つの振動の数は例としてのみ与えられ、少なくとも1つの振動が供給チューブの外壁に圧力を生成するのに十分であることは明らかである。
【0028】
出力ゲートの第1のセットによって供給チューブの外壁に対して流体を噴出することによって、供給チューブは局所的に収縮する。供給チューブの目標とする圧縮に達すると、流体圧力は、図4b、図4c、及び図4dに連続して示すように、軸l1(L1)に沿って初期位置8から最終位置9まで圧力印加要素を移動(運動)させる。供給チューブに加えられる圧力及び圧力印加要素の移動(運動)は、チューブ内に存在する食物を胃に向かって移動(運動)させる。この移動(運動)は、戻し部材5に対しても作用する。
【0029】
圧力印加要素が軸l1(L1)に沿って移動(運動)する限り、圧縮効果は依然として有効であり、すなわち、圧縮が行われる位置は圧力印加要素と共に移動している。この収縮移動(収縮運動)は、供給チューブに印加される必要な連続的な蠕動圧力圧縮波をもたらす。圧力印加要素がハウジングの底部に位置する最終位置9に達すると、ポンプ14は送出を停止する。その効果は、加えられた圧力の急速な圧力減衰であり、したがって供給チューブに加えられる圧力の低下である。効果は、供給チューブの圧縮が停止し、戻し部材が圧力印加要素をその初期位置8に押し戻すことである。
【0030】
出力ゲート24の第1のセットの2つの列の間には、入力ゲート25の第2のセットの列があり、この列を通じて、供給チューブの「ブロック圧縮」を回避するように供給チューブに圧力を加えた後に排出された流体を収集することができる。入力ゲートセットの数は、出力ゲートのセットの数よりも1つ少ないことが好ましい。初期位置8の空間及び最終位置9の空間のレベルでは、背圧よりも上及び下の圧が常に印加するように、圧力印加要素が戻し経路26に接続されなければならない。入力ゲート25によって収集された流体は、圧力印加要素の下方への移動中に更なるチャンバに一時的に貯蔵され、圧力印加部材がその最終位置に到達したときに戻り経路26に供給される。戻り経路は、流体リザーバ13に向かう流体の逆流を可能にするように第1の流体出力に接続される。このようにして、流体は閉回路に保持され、当該プロテーゼは、それが埋め込まれる人の中で独立した装置として機能することができる。任意選択的に、吸引ポンプを使用して流体を流体リザーバに戻すことができる。このような吸引ポンプは、圧力印加部材がハウジング内の最も低い位置に到達したときに始動される。
【0031】
図1に示す実施形態では、流体リザーバはハウジングの外側にあるが、代わりに、流体リザーバ及び/又はポンプをハウジングに組み込むこともできる。制御ユニット12及び電源ユニット11についても同様である。また、電源ユニットは、ブリスターの内部に具体化され、電源ユニットが空のときに電源ユニットを容易に交換する可能性を与えるプラグインユニットとして構成することもできる。プラグインユニットが使用される場合、接続部が液密であり、ユニットが滅菌されていることに注意しなければならない。更に、誘導(インダクション)によって電池を再充電することが可能である。
【0032】
供給チューブ3の寸法は、患者の形態に応じて選択される。好ましくは、供給チューブは、樹脂系材料が使用される3D印刷プロセス、特にステレオリソグラフィープロセスを使用することによって製造される。使用される材料は、勿論、生体適合性であるべきであり、例えば生物学的細胞を利用することができる。供給チューブは、考慮すべき4つの接続点、すなわち、人の供給チューブの残りの端部に向かう2つのシール18及び19と、人工食道ハウジング2との2つの接続部とを有する。供給チューブは、好ましくは、患者の残りの供給チューブ端部に対してシールされることを可能にする非常に柔らかいシリコーンチューブから実現される四肢を可能にする成形部品から実現される。これらの端部では、チューブの真円度に対する特別な要件はない。しかしながら、本体への接続点には、好ましくは、供給チューブを外側にシールすることを意図してチューブと本体との間の接続部に機械的圧力を加える、供給チューブに一体化された機械的インレーがある。これらのインレーは、接続点に応力を加えるために金属又は任意の他の適合された材料から出ることができる。
【0033】
供給チューブの内部は、特に加圧流体又は気体を使用する第1の実施形態の場合、円形度に対する高い要求で形成されることが好ましい。移動する加圧器との機械的摩擦を避けるために、各圧縮後にチューブが丸い形状に、好ましくは1/2未満に戻るように注意しなければならない。同時に、チューブの壁厚並びに硬度は、それらが圧縮後にその丸い形状を取り戻すのに十分な剛性であるが、それでもなお最小限の労力で圧縮を可能にするようによく選択されなければならない。試験は、2~3mmの壁厚と50ショアAの硬度の組み合わせが必要を満たすことができることを示している。液密性もまた、プロテーゼの要件である。これが、メカニカルシールに加えて、第2のタイプのシールが、例えば接着剤を用いて、想定される理由である。プロテーゼの全体的な可撓性は、患者の身体形態にそれを調整することができ、且つ埋め込まれたプロテーゼに課された動きに追従することができるためには、更に有利である。
【0034】
好ましくは、供給チューブは、「弾性50A」(Elastic 50A)と呼ばれ、且つFa.Formlabsによって商品化されている材料を用いて作られている。(https://support.formlabs.com/s/article/Using-Elastic-Resin?language=en_US)。弾性50A(Elastic 50A)樹脂は、高い伸び及び高いエネルギーリターンを必要とする用途のために設計されたエラストマー材料である。この材料は、曲げられ、伸ばされ、圧縮され、引き裂きなしに反復サイクルまで保持される必要がある物体に特に適している。この材料はまた透明であり、シミュレーション又は教育のための医療モデルによく適している。他の材料と比較して、弾性は、伸張又は圧縮された後にその通常の形状を再開する能力を有する。弾性50A樹脂は、「跳ね返り」、その元の形状に迅速に戻るように設計されている。デュロメータは材料の硬度であり、弾性50A樹脂は他のFormlabs樹脂よりも低いデュロメータを有し、通常シリコーンで製造される部品のプロトタイプに適している。弾性50A樹脂はまた、同等の材料よりも高い引裂強度を有し、反復使用サイクルを可能にする。
【0035】
弾性50A(Elastic 50A)の物理的パラメータは以下の通りである。
デュロメータ/ショア硬度:50A
破断伸び(%):160
引張強度(MPa):3.2
引裂強さ(kN/m):19.1
色: 透明
【0036】
更に、それを半透明材料として有する態様もまた、封止のためにUV活性接着剤を使用することを可能にするので重要である。材料は流体樹脂として得られ、次いで、いわゆるSLAプロセス(ステレオリソグラフィー)で印刷される。
【0037】
供給チューブに加えられる圧力は、食物の性質に依存する。食物が硬い場合、供給チューブの高い圧縮が必要であり、したがって、制御ユニット12は、ポンプへの高い送達速度を要求する。これは、ポンプ流量に相当するポンプ速度に変換され、図5に示されている。図5において、曲線f1及びf2はそれぞれ、柔らかい食物、硬い食物を検出した場合に圧力センサ10によって生成される第1のトリガ信号の値を示す。曲線f1の信号の振幅は、柔らかい食物に対して低い圧力が検出されたため、曲線f2の信号の振幅よりも低い。また、圧力センサが食物によって加えられた圧力を検出する時間は、第1のトリガ信号を生成する際に考慮される。第1のトリガ信号は、ポンプに供給される第2のトリガ信号の振幅及び周期を決定するために制御ユニットによって使用される。図5に示されるように、柔らかい食物(SF)が検出されるときに生成される第2のトリガ信号ALの振幅及び周期は、硬い食物(HF)が検出されるときのAHの振幅及び周期よりも低くかつ短い。
【0038】
患者は異なる速度で食事をするので、例えば一部の患者はゆっくり食事するが、他の患者は速く食事するので、制御ユニットは嚥下頻度を分析するためにも設けられる。この嚥下頻度は、センサ信号f1及びf2の振幅がトリガレベルを超えるときの2つの後続の事象を考慮することによって決定される。この特性時間は、図6においてt1及びt2として示されている。ポンプは、能動ポンプ段階及び受動ポンプ段階のセットで駆動される。患者がゆっくり食べる人である場合、これらのうちの2つの間の時間はより長くなる。患者がより速く食事をしているほど、これらの事象のセットはより近くなる。
【0039】
患者の医師は、患者に埋め込まれた食道プロテーゼの機能、並びに適応治療のための患者の嚥下行動を分析することに関心があるかもしれない。したがって、埋め込み型食道は、必要なデータの無線送信を可能にする手段を備えることが好ましい。後者の場合、制御ユニットは、測定されたデータを記憶するためのメモリを備え、記憶されたデータを読み取るためにWIFI、Bluetooth又は同等の送信ユニットを備える。
【0040】
外部から特定の動作パラメータの設定を設定又は適合させることも興味深い可能性がある。この目的のために、埋め込み型食道プロテーゼは、好ましくは、プロテーゼの初期化時に設定されるものとは異なり得る外部からのパラメータを設定するように制御ユニットと通信するために設けられたインタフェースを備える。
【0041】
他のセンサ(群)をプロテーゼに取り付けることも考えられる。勿論、これらのセンサは制御ユニットに接続される。したがって、加速度計が、プロテーゼが埋め込まれた患者の動きを検出するために組み込まれ得る。したがって、印加される蠕動圧力の管理は、患者の動きを考慮に入れることができる。加速度計の代わりに、又は加速度計と組み合わせても、患者がどの位置に座っているか、又は立っているかを検出することを可能にするジャイロスコープを予測することを考えることができる。温度センサ及び/又は湿度センサの取り付けも考えられる。
【0042】
図12a)は、ポンプ14の特定の実施形態を示す。図12b)、図12c)はそれぞれ、ポンプを貫く線A-A、B-Bに沿った断面を示す。この実施形態では、ポンプは、いわば供給チューブ3の周りに巻かれている。ポンプは、流体リザーバ13に接続される入力70と、同じく流体リザーバに接続される出力71とを備える。ポンプは、ポンプを駆動する電気エンジンの一部であるステータ65を備える。ステータは、図12b)に示すように、ロータ66の周りに固定されて巻き付けられる。ロータは、その内周に、ポンプのポンプ要素の一部である内部リング68と接触する少なくとも1つの突出部69を備えている。内部リングは、固定された外部リング67で周りを巻かれている。ポンプが作動されると、ロータ66がステータ65内で回転駆動される。ロータの回転は、次に突出部69を駆動し、流体を圧送するために内部リング67に圧送作用を及ぼす。ポンプが供給チューブの周りに巻き付けられているので、このようにして圧送された流体は、流体入力16に直接供給される。ポンプが供給チューブの周りに巻き付けられているという事実は、スペースを節約するために有利である。これは、利用可能な空間が非常に限られている人体内に、埋め込み食道を埋め込まなければならない場合に特に興味深い。
【0043】
ポンプのそのような実施形態は、埋め込まれた食道インプラントにおける用途に限定されず、家電機器、医療用ポンプなどの他の装置に適用することができることに留意されたい。
【0044】
図7図10に示される本発明に係る埋め込み型食道プロテーゼの第2の好ましい実施形態によれば、圧力印加要素は、供給チューブ3に沿った上下移動を可能にするために設けられた駆動部材32に取り付けられるプッシャ30及びコンプレッサ31を備える。コンプレッサ31は、l1(L1)が延びる方向で見てプッシャ30の下流側に取り付けられる。コンプレッサは、供給チューブ3に対する前後移動を及ぼすために設けられた一セット(一対)の圧縮部材33、34を備える。プッシャは、前記前後移動を可能にするべく圧縮要素に移動を課すために設けられる。
【0045】
駆動要素32は、コンプレッサロッド36及びプッシャロッド35に接続された電気エンジンを備える。図8に示すように、コンプレッサロッド36はコンプレッサ31に接続され、プッシャロッド35はプッシャ30に接続される。図9a及び図9b(図9の左図および右図)に示すように、コンプレッサ31は、圧力印加要素が移動する第1の方向l1(L1)に対して傾斜されるように適用されるスリット37、38、39及び40のセットが設けられたリングを備える。スリット37,38,39,40は、リングの中心軸に対してV字を形成するように適用される。圧縮部材33、34の軸41は、スリット37、39、38、40内にそれぞれ適用され、軸が適用されるスリット内を移動し、スリットによって案内される。スリット37,39及びスリット38,40はそれぞれ、互いに対してリングの反対側に適用される。
【0046】
図7及び図10aでは、スリットがそれらの長さにわたって直線的に延在する。しかしながら、スリットは、図10bに示すように湾曲形状で、又は図10cに示すように凹形状で延びることも可能である。スリットの形状は、供給チューブに加えられる圧力及びエネルギー消費に影響を及ぼす。スリットの形状は、駆動部材によって加えられるトルクプロファイル、したがってエネルギー消費に影響を及ぼす。
【0047】
圧縮プロセスの開始時に、コンプレッサ31及びプッシャ30は、図7に示すように所定の距離だけ離れており、これにより、図9aに示すように、圧縮部材(33,34)を傾斜したスリットの上端、下端にそれぞれ配置することができる。この位置では、供給チューブに圧縮は加えられない。初期動作段階中、駆動部材32の電気エンジンは、コンプレッサロッド36を反時計回りに回転させ始めるが、プッシャロッド35は駆動されない。これにより、プッシャ30がコンプレッサ31に向かって移動する。第1の動作段階では、プッシャがコンプレッサに到達した時点で始まって、プッシャロッドは、圧縮部材が取り付けられている軸を押圧し、圧縮部材に前進移動を課すために傾斜したスリット内でプッシャロッドを移動させる。
【0048】
こうすることで、圧縮部材が取り付けられる軸は、図9b(図9の右図)に示すように、スリット内でコンプレッサの中心に向かって移動し、供給チューブを圧縮する。圧縮が完了すると、第2の動作段階が開始され、その間、駆動部材は、時計回りに回転して、プッシャ及びコンプレッサの両方を供給チューブに沿って方向l1(L1)に移動させ、一方、供給チューブの壁に対する連続的な蠕動圧力をそのような態様で実現するために、供給チューブは圧縮されたままである。この第2の動作段階の終わりに、第3の動作段階が開始され、その間、コンプレッサロッドは時計回りに回転し、これに対し、プッシャロッドは静止している。その効果は、コンプレッサ及びプッシャが分離し、コンプレッサ部材がスリット内の初期位置に戻ることである。その結果、供給チューブは圧縮されなくなる。圧縮が完全に解放されると、第4の動作段階が開始され、その間、戻し部材の役割を果たす駆動部材は、コンプレッサ及びプッシャを最初の上方位置に戻すためにコンプレッサ及びプッシャに反時計回りの動きを課す。第3及び第4の動作段階は、互いに後続するか、又は互いに時間的に一致する。
【0049】
図11は、供給チューブに沿った圧力印加要素の移動時に圧力印加要素が到達する最終位置9の下流側の供給チューブ内に配置されるべき食物通過制御弁7の一例の横断面を示す。食物通過制御弁7は、第1の弁要素50及び第2の弁要素51を備える。第1の弁要素50は、第2の弁要素51に対して同軸に適用される。第1の弁要素は、チューブから胃への第1の通過を可能にするように設けられ、第2の弁要素は、胃からチューブへの第2の通過を可能にするように設けられる。好ましくは、第1及び第2の弁要素は、同じ水平面内に延在する。
【0050】
図11は、更に、第1の弁要素50が、弁体内に適用される空洞によって形成される弁座53を備えた弁体52内に収容されることを示す。弁座は、より正確な開放圧力を可能にするために円錐形状であることが好ましい。第1の弁要素は、弁座に回動可能に適用された第1の関節要素54を備える。第1の弁板55が、第1の関節要素54に接続されており、矢印56で示すように胃に向かう方向で供給チューブ内で回動可能である。第1の弁要素が閉位置にある初期位置に向けて第1の弁板の戻りを可能にするために、ねじりばね57が第1の弁板と弁体との間に適用される。第1の弁要素は、好ましくは約25mbarの開放圧力で較正される。第1の弁板は、胃から患者の口に向かう戻りを回避するように、供給チューブを完全に閉じる。
【0051】
第2の弁要素51は、第1の弁板55上に適用される第2の弁板60を備える。第2の弁要素は、第1の弁要素内に回動可能に適用された第2の関節要素61を備える。第2の弁板60が、矢印62によって示されるように、胃からの方向に供給チューブ内で回動可能である。第2の関節要素が収容される弁座63は、好ましくは円錐形である。第2の弁板の開放圧力は、好ましくは少なくとも150mbar、好ましくは200mbarの圧力で較正される。第2の弁要素が閉位置にある初期位置に向けて第2の弁板の戻りを可能にするために、更なるねじりばね64が第2の弁板と第1の弁板との間に適用される。
【0052】
フランス特許第2621813号明細書が、埋め込み型食道プロテーゼに埋め込まれるべく設けられた弁を記載していることに留意すべきである。しかしながら、従来のバルブでは、開弁方向に応じて開圧差が生じない。
【0053】
図11に示す通過制御弁が、埋め込み型食道プロテーゼに使用するのに適しているだけでなく、流体、ガス、又は固体材料さえも循環している導管又は装置の汎用安全弁としても使用できることに留意すべきである。汎用安全弁は、例えば、油圧送、ガス圧送、化学製品又は食物の流れなど、双方向の流れを制御しなければならない用途に使用することができる。当然ながら、弁が開く圧力は、弁が使用される分野に依存する。
【符号の説明】
【0054】
1 埋め込み型食道プロテーゼ(インプラント可能な人工食道)
2 ハウジング
3 供給チューブ
4 圧力印加要素(4,5は加圧部材)
5 戻し部材(4,5は加圧部材)
7 食物通過制御弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12a)】
図12b)】
図12c)】
【国際調査報告】