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特表2024-514645化学反応器におけるプラズマトーチの動作のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】化学反応器におけるプラズマトーチの動作のための方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20240326BHJP
   C01B 3/24 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B01J19/08 E
C01B3/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563076
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 GB2022050939
(87)【国際公開番号】W WO2022219342
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】2105246.9
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2105247.7
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523386005
【氏名又は名称】ハイイロック-エックス デベロップメンツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィーカンプ,アテ
【テーマコード(参考)】
4G075
4G140
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075BA05
4G075CA47
4G075CA65
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB01
4G075EB43
4G075EC21
4G075FC11
4G140DA03
4G140DB05
(57)【要約】
プラズマトーチと、液体循環システムと、を備える、化学反応器においてプラズマトーチを動作させる方法が、記載される。スズ液体循環システムは、周囲温度では導電性材料固体、反応温度では液体を含む。この方法は、第一に、供給原料ガスを分解するためにプラズマトーチを動作させて、分解生成物が液体循環システムに出力されるようにすることを含む。次いで、プラズマトーチは、シャットダウンされ、その結果、プラズマトーチの電極は、液体循環システムからの導電性材料によって少なくとも部分的に浸水される。導電性材料は、導電性プラグを形成するために冷却される。化学反応器を再始動するためにプラズマトーチを再点火することで、導電性経路は、導電性プラグを溶融するために導電性プラグを通って形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマトーチ及び液体循環システムを備える化学反応器においてプラズマトーチを動作させる方法であって、前記液体循環システムは、周囲温度では導電性材料固体、反応温度では液体を含み、前記方法は、
供給原料ガスを分解するために前記プラズマトーチを動作させることであって、それによって、分解生成物が前記液体循環システムに出力される、動作させることと、
前記プラズマトーチをシャットダウンすることであって、それによって、前記プラズマトーチの電極が前記液体循環システムからの導電性材料によって少なくとも部分的に浸水されており、前記導電性材料が導電性プラグを形成するために冷却されている、シャットダウンすることと、
前記化学反応器を再始動するために前記プラズマトーチを再点火することであって、導電性経路は、前記導電性プラグを溶融するために前記導電性プラグを通って形成されている、再点火することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記導電性プラグの溶融時に、前記導電性プラグの前記導電性材料は、前記液体循環システムに移動する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶融時に前記導電性プラグを前記液体循環システムに押し込むために、圧力を使用することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧力は、前記導電性プラグの後ろの前記プラズマトーチにおいて提供されたガス圧力によって提供されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力は、前記導電性プラグと前記液体循環システムとの間に提供された真空によって提供されている、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性材料は、金属又は金属合金である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性材料は、鉛及びビスマスのうちの1つ以上を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化学反応器は、炭化水素を炭素及び水素に分解するためのプラズマトーチ反応器を備える、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマトーチ反応器は、メタンの分解用である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化学反応器は、圧力容器内に配置されており、前記化学反応器は、実質的に周囲圧力を上回る圧力で動作するように適合されている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化学反応器は、10barg超で、好ましくは30barg超での動作のために、より好ましくは40~60bargの範囲における動作のために適合されている、請求項10に記載に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応器におけるプラズマトーチの動作に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン熱分解は、メタンから水素及び炭素を得るための産業プロセスとして広く開発されており、同様の熱分解プロセスは、他の炭化水素に使用することができる。炭化水素から水素を形成するためのほとんどの方法とは異なり、二酸化炭素は副生成物ではないため、これは、主に汚染廃棄物ガスとして扱われるメタンなどの炭化水素から有用な生成物を形成するための特にクリーンな方法であり得る。プラズマトーチは、このような反応器タイプにおける使用のために提案されている。
【0003】
メタン熱分解における使用のために積極的に評価されている技術の1つは、液体金属反応器である。Perezら、「Methane pyrolysis in a molten gallium bubble column reactor for sustainable hydrogen production:Proof of concept & techno-economic assessment」、International Journal of Hydrogen Energy、第46巻、第7号、2021年1月27日、4917~4935ページは、溶融金属気泡塔におけるメタン熱分解の概念実証評価を記載する。十分に高い温度で、液体金属反応器は、反応生成物として水素及び炭素でそれらを熱分解するために、吸熱反応において炭化水素供給原料ガスにエネルギーを伝達する。効果的な熱分解プロセスに効果的に、かつ連続的反応において大規模に適合される反応器構造を開発することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、本発明は、プラズマトーチ及び液体循環システムを備える化学反応器においてプラズマトーチを動作させる方法であって、液体循環システムは、周囲温度では導電性材料固体、反応温度では液体を含み、該方法は、供給原料ガスを分解するためにプラズマトーチを動作させることであって、それによって、分解生成物が液体循環システムに出力される、動作させることと、プラズマトーチをシャットダウンすることであって、それによって、プラズマトーチの電極が液体循環システムからの導電性材料によって少なくとも部分的に浸水されており、導電性材料が導電性プラグを形成するために冷却されている、シャットダウンすることと、化学反応器を再始動するためにプラズマトーチを再点火することであって、導電性経路は、導電性プラグを溶融するために導電性プラグを通って形成されている、再点火することと、を含む、方法を提供する。
【0005】
このアプローチは、浸水した電極が老化に対して保護されるそのような方式においてプラズマトーチの延長された動作を可能にし、導電性材料は、初期のサージに対して電極を保護するプラズマトーチにおける「ソフトスタート」を可能にし、プラグが迅速に除去されるにつれて、通常の動作条件への急速な戻りを可能にする。
【0006】
実施形態では、導電性プラグの溶融時に、導電性プラグの導電性材料は、液体循環システムに移動する。これは、溶融時に導電性プラグを液体循環システムに押し込むために、圧力を使用することによって達成され得る。これは、導電性プラグの後ろのプラズマトーチにおいて提供されたガス圧力を使用することによって、又は導電性プラグと液体循環システムとの間に提供された真空を使用することによって行うことができる。
【0007】
導電性材料は、金属又は金属合金であり得、それは、鉛及びビスマスのうちの1つ以上を含み得る。
【0008】
実施形態では、化学反応器は、炭化水素を炭素及び水素に分解するためのプラズマトーチ反応器を備える。このプラズマトーチ反応器は、メタンの分解用であり得る。実施形態では、化学反応器は、圧力容器内に配置されており、化学反応器は、実質的に周囲圧力を上回る圧力で動作するように適合されている。これは、10barg超での、好ましくは30barg超での、より好ましくは40~60bargの範囲における動作のための圧力であり得る。
【0009】
第2の態様では、本発明は、液体金属反応器であって、少なくとも1つの供給原料ガス入力と、液体金属循環システムと、液体金属循環システムを加熱するための手段と、を備え、液体金属反応器は、供給原料ガスを反応させて複数の反応生成物を形成し、反応生成物を分離し、それらを液体金属反応器からの出力生成物として提供するように適合されている、液体金属反応器を提供する。
【0010】
このアプローチを使用して、液体金属循環システムが反応生成物の反応及び分離の両方のために効果的に使用されるため、液体金属反応器は、反応のために特に効果的に使用することができる。
【0011】
実施形態では、液体金属循環システムは、出力生成物が遠心作用によって液体金属から分離されるように適合されている。次いで、液体塩は、出力生成物から液体金属を除去するために使用され得る。固体出力生成物は、重力によって液体金属反応器のベースから抽出することができる。
【0012】
液体金属システムは、例えば、フロートバルブを使用して、液体金属反応器の上からガス状出力生成物の抽出について適合され得る。
【0013】
実施形態では、液体金属循環システムを加熱するための手段は、プラズマトーチであり得る。これは、熱を与えることに加えて、プラズマトーチが、例えば、液体金属を液体金属循環システムを通して駆動するためにプラズマジェットを送達することによって、液体金属システムの液体金属に運動量を与えるために配置され得るため、特に効果的なアプローチである。そのようなプラズマトーチは、液体金属を更なる供給原料ガスについての反応温度まで加熱するように適合され得る。
【0014】
プラズマトーチがこのように使用されているときに、プラズマトーチ及び液体金属反応器は、圧力容器内に配置され得る。
【0015】
そのような液体金属反応器はまた、ガス状出力生成物からの熱を使用して供給原料ガスを反応温度まで上昇させるための熱交換器を備え得る。
【0016】
実施形態では、供給原料ガスは、炭化水素を含む。この反応器の構造は、メタンなどの炭化水素の熱分解について特に効果的である。いくつかの実施形態では、更なる供給原料ガスは、炭素と反応させて一酸化炭素を形成するための二酸化炭素を更に含み得、この場合、合成ガスは、出力生成物として提供される。反応器は、水素及び合成ガスの両方が別個のガス状出力生成物として提供されるように構造化され得る。
【0017】
実施形態では、プラズマトーチ自体は、炭化水素の分解のために適合されたプラズマトーチ反応器であり、プラズマトーチからの反応生成物は、炭素及び水素を含む。そのようなプラズマトーチ反応器は、例えば、メタンの分解のために適合され得る。このアプローチを使用して、プラズマトーチ反応器の反応生成物は、液体金属反応器からの出力生成物として提供され得る。
【0018】
第3の態様では、本発明は、液体金属反応器において供給原料を反応させる方法であって、液体金属循環システムへの少なくとも1つの供給原料ガス入力を提供することと、液体金属循環システムの液体金属を供給原料ガスについての反応温度まで加熱することと、供給原料ガスを反応させて複数の反応生成物を形成することと、反応生成物を分離し、それらを液体金属反応器から出力生成物として提供することと、を含む方法を提供する。
【0019】
この方法はまた、遠心作用によって液体金属から出力生成物を分離することを含み得、それは、出力生成物から液体金属を分離するために、出力生成物を液体塩を通して移動させることを更に含み得る。次いで、固体出力生成物は、重力によって液体金属反応器のベースで抽出され得る。次いで、気体出力生成物は、液体金属反応器の上から抽出され得る。
【0020】
実施形態では、液体金属循環システムは、プラズマトーチで加熱されている。このアプローチを使用して、運動量は、プラズマトーチで液体金属循環システムの液体金属に提供され得、液体金属は、反応温度まで加熱することができる。
【0021】
供給原料ガスは、炭化水素を含み得る。実施形態では、供給原料ガスは、炭素と反応させて一酸化炭素を形成するための二酸化炭素を更に含み得、合成ガスは、出力生成物として提供される。化学反応器は、水素及び合成ガスの両方が別個のガス状出力生成物として提供されるように構成され得る。
【0022】
実施形態では、プラズマトーチ自体は、炭化水素の分解のために適合された反応器である。次いで、本方法は、炭素及び水素を含むプラズマトーチからの反応生成物を用いて、プラズマトーチで更なる供給原料ガスを分解することを更に含み得る。そのようなプラズマトーチ反応器は、メタンの分解のために適合され得る。このアプローチが取られるときに、プラズマトーチ反応器の反応生成物は、液体金属反応器からの出力生成物として提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ここで、本発明の実施形態は、添付の図を参照しながら、実施例として説明される。
【0024】
図1】本発明の実施形態による、反応器の側面図を示す。
図2】本発明の実施形態による、反応器の主な機能要素の高レベルの概略図を示す。
図3】本発明の一施形態による、反応器からのプラズマトーチの長手方向断面図を示す。
図4】アノードの追加の要素を示し、炭素蓄積を防止する特徴を例証する、図3のプラズマトーチからの詳細を示す。
図5図3のプラズマトーチを通る反応ガスの流れを示す。
図6A図3のプラズマトーチにおける使用のための供給原料ガスの入口のためのリングの側面図及び断面図を示す。
図6B図3のプラズマトーチにおける使用のための供給原料ガスの入口のためのリングの側面図及び断面図を示す。
図7】本発明の実施形態による、プラズマトーチのセット及び供給原料システムを備えるリボルバシステムを示す。
図8図7のリボルバシステムからの取り外しのプロセスにおけるプラズマトーチを示す。
図9A図7のリボルバシステムの回転のためのギアリングシステムを示す。
図9B図7のリボルバシステムの回転のためのギアリングシステムを示す。
図10図7のリボルバにおける使用のための供給原料システムを示す。
図11】本発明の実施形態による、反応器システムのための例示的な反応プロセスを例証する。
図12図3図11のプラズマトーチシステムによって駆動され、プラズマトーチシステムのためのハウジングを含む、液体金属熱分解反応器システムを例証する。
図13A】プラズマトーチによって駆動された、図12の反応器の液体金属循環システムを例証する。
図13B】プラズマトーチによって駆動された、図12の反応器の液体金属循環システムを例証する。
図14A図13A及び図13Bの液体金属循環システムの異なる断面図を提供する。
図14B図13A及び図13Bの液体金属循環システムの異なる断面図を提供する。
図15図12の液体金属熱分解反応器をより詳細に例証する。
図16】炭素出力とともに、図15の液体金属熱分解反応器への供給システムを例証する。
図17図16の液体金属熱分解反応器の渦流チャンバにおける供給システムを示す。
図18図15の液体金属熱分解反応器の一部を通る垂直断面を示す。
図19】合成ガス生成のための修正された反応フローを示す。
図20A】本発明の実施形態における使用のためのプラズマトーチの第2の実施形態の異なる図を示す。
図20B】本発明の実施形態における使用のためのプラズマトーチの第2の実施形態の異なる図を示す。
図21A】本発明の実施形態における使用のためのプラズマトーチの第3の実施形態の異なる図を示す。
図21B】本発明の実施形態における使用のためのプラズマトーチの第3の実施形態の異なる図を示す。
図22-1】本発明の更なる実施形態による、反応器システムのシステム図である。
図22-2】本発明の更なる実施形態による、反応器システムのシステム図である。(図22-1の続き)
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一般的及び特定の実施形態は、図面を参照して以下に記載される。
【0026】
図1は、本発明の実施形態による、反応器の斜視図を提供する。反応器1は、プラズマトーチに電力供給するための電気入力(ここには示されないが、図12は、これがシステムにどのように統合されるかを示す)と、ガス状供給原料がシステムに導入されるためのガス入力4と、を有する、圧力容器2として形成されている。これらの入力は各々、アセンブリアパーチャ5に嵌合するように適合されているリボルバアセンブリ(ここには示されておらず、更なる詳細については図7図9及び図12を参照)に方向付けられ、リボルバアセンブリは、プラズマトーチのセットを収容し、各プラズマトーチにガス状供給原料も提供する。ここに示されている反応器は、複数の段階を有し、プラズマトーチは、第1の反応器段階として作用し、液体金属反応器は、プラズマトーチによって生成された熱を消費する更なる反応器段階として作用する。反応生成物は、以下で考察される主な実施例では水素である加熱ガスを含み、熱交換器は、加熱ガスを使用して、供給原料ガスを反応のための正しい温度にし、予備反応器段階として効果的に作用する。
【0027】
反応器システムは、図2に概略的に示されている。ガス状入力11、例えば、メタンなどの炭化水素、及び冷却のための追加の水素(これは出力生成物から再循環され得るが)は、プラズマトーチ12に導入され、プラズマトーチ12は、炭素及び水素などの出力生成物の第1のセットを提供する入力供給原料ガスを消費する。これらの第1の出力生成物は、高温で入力13として液体金属システム14に移動し、次いで、実施形態では、更なる供給原料ガスの熱分解を提供する。設計に応じて、液体金属を通じて、又はガス状出力から抽出され得る炭素、及びガスとして出力される水素などの最終出力生成物15は、分離プロセス後に液体金属反応器14から提供され、これらの最終出力生成物は、プラズマトーチ12からの第1の出力生成物を含み、液体金属反応器14における熱分解から生成される更なる出力生成物によって補完され得る。熱分解反応は、吸熱性であるが、ガス状最終出力生成物が貯蔵のために望ましい温度よりも著しく高い温度にあるのに十分な熱が存在するため、使用される余分な熱が存在する。ここで、この加熱されたガス出力は、反応器プロセスの異なる段階のために供給原料ガスの温度を制御する熱交換器16によって使用される。以下に更に言及されるように、本発明の実施形態は、動作するために図2の配設に示される全ての特徴を必要としない場合があり、図2の配設は、メタンなどの炭化水素から炭素及び水素を特に効果的に生産するための一連のプロセスの相乗的な組み合わせである。以下に更に示されるように、そのようなプロセスはまた、合成ガスなどの他の出力生成物を生成するように適合され得る。
【0028】
プラズマトーチの実施形態は、図3図5により詳細に示されている。プラズマトーチ30の長手方向断面図は、図3に提供される。プラズマトーチ30は、概して円筒形であり、本発明の実施形態で使用される配設では、それは、液体金属循環システム40(以下で更に考察される)内に延在し、そこで、それは、液体金属内に直接噴射する。プラズマトーチは、カソード31及びアノード32を含む中央チャンバ300を有する。これらは、中央チャンバ300における条件に好適な任意の導電性材料であり得、炭素(グラファイト)を使用することができ、又は均一であるか、若しくは好適なインサートを有する任意の好適な金属若しくは合金であり得、例えば、ハフニウムインサートを有する銅が可能な選択肢である。ここで、カソード31は、液体金属反応器39から離れたプラズマトーチ30の端部に向かって位置し、セラミックカップ形状の端部セクション38がプラズマトーチを終端する。代替的なトーチ設計では、電極は、反対方向に配置され得、又はアノード及びカソードではなく、電極について伝達することだけを意味する交流プラズマトーチが、使用され得る。アノードは、概して円筒形であるが、ノズル35及び拡散セクション36を備える成形された内面34を有し、これは、以下でより詳細に記載される。保護電極33は、カソード31とアノード32との間に配置され得、当業者であれば、再び、電極構造が、プラズマトーチチャンバ内で所望の電界パターンを達成するために変更され得、ゼロ、1つ、若しくは複数の中間電極を含み得、複数の保護電極が、効果的な点火のためにスパークの安定化に役立つように、又はアノードの摩耗を防止するためにカスケード接続され得ることを理解するであろう。ガス入力37は、ガス状供給原料を反応器内に導入するために提供され、図3に示される配設では、メタンは、保護電極33に配置されたガス入力37に導入される。以下で更に詳細に示されるように、本発明の異なる実施形態では、異なるガス入力位置は、異なる供給原料ガスについて提供されている。以下の考察は主にメタンに関するものであるが、他の炭化水素も同様によく使用され得ることを理解されたく、例えば、プロパンは、液体形態で輸送され得るが、プラズマトーチ反応器における反応のために容易に蒸発し、そのため、処理のための別の特に好適な選択肢となるであろう。
【0029】
図4は、メタンを分解するために図3に示されるプラズマトーチ30の使用における1つの現象を例証する。この反応では、メタンは、摂氏6000度の温度を有し得るプラズマトーチスパークの作用を通じて、高温で水素ガス及び炭素に分解し、瞬間的分解をもたらす。実用上の問題は、これが、トーチを詰まらせる炭素堆積物41をもたらし得、これはプロセスの効率に著しい影響を与え、メンテナンスのための著しいダウンタイムをもたらす可能性があることである。そのような炭素の蓄積を防止し、両方の反応生成物がプラズマトーチ30を出ることが望ましいであろう。これを達成するための1つの特徴は、蓄積を阻害するガスでアノードを保護することである。これは、アノード32を多孔質にすることによって達成することができ、アノードガス出力42は、アノードを通して、ガス(この場合、水素)を送達して、アノードの内側に沿った保護カーテンを提供し、炭素の蓄積を阻害する。ガスは、この保護カーテンを達成するためにプラズマトーチ出力に向かって速度の成分を有するように、アノードに対してある角度で送達され、代替的に、これは、依然として電極に保護カーテンを提供するので、速度の成分は、プラズマトーチ出力から離して提供することができる。保護カーテンを提供することに加えて、水素による堆積炭素のアクティブ侵食もあり得、水素は、メタンに戻る逆反応において炭素と反応することができ、したがって、堆積された炭素を更に侵食する。水素はまた、アノードを冷却する役割を果たし、それが劣化されるのを防止する。このように多孔質アノードを使用することに加えて、カソードはまた、多孔質にされ、同様の方式で冷却することができる。
【0030】
更なる戦略は、炭素の蓄積を防止するために、使用される。アノードの成形はまた、動作中のトーチとのスパークギャップの領域内のアノード上に炭素のための可能性の高い堆積点があるように配設することができ、スパーク作用は、次いで、あらゆる炭素の蓄積を更に侵食することができる。
【0031】
炭素の蓄積を防止する別の特徴は、プラズマトーチ構造を通るガスの通過を例証する図5に示されている。ここで、メタンは、保護電極におけるガス入力37を通って接線方向にプラズマトーチに入り、この入力メタンは、概して螺旋経路に従ってカソードに向かって移動する。ここでのガス入力37は、図6a及び図6bにより詳細に示される、セラミックリング51を通して提供される。セラミックリング51は、リングの周囲の入力ガスの循環のためのギャラリー52を有し、チャンバ内に入力ガスを接線状に送達するいくつかのチャネル53(図示の設計では4つ)に入力ガスが移動することを可能にし、チャンバの壁に隣接する出力ガスの螺旋経路、及び、またプラズマトーチチャンバ内の渦の両方を確立する。これは、所望の流れパターンを達成するために、ガスタイプ、流れ条件、圧力、及び温度を考慮に入れて最適化され得る。壁構造(特に、壁の粗さ及び幾何学的形状)は、ガスの外側螺旋がその運動量を維持し、より速く回転するガスの内側螺旋から分離することを促進し、トーチの幾何学的形状は、ガスを、より速い速度で、かつより緊密な内側円を有する内側戻り螺旋に押し込む。ガスは、カソードとアノードの間を移動する際にこのより緊密な螺旋を採用し、カソードとアノードの間のスパークギャップで炭素と水素に分解されるため、加熱時にこれを維持する。プラズマの形成は、迅速であり、典型的には、1マイクロ秒未満しかかからない。ガスの場合、適した調整は、竜巻と同様に、螺旋間のエネルギー交換を最小限に抑えるために、(圧力、温度、及び密度によって)調整されることを可能にする。この構成は、すでに出力ガス(この場合、水素)にプラズマトーチの出力に向かって著しい速度を与えており、壁ではなくプラズマトーチチャンバの中心に炭素が形成されるため、炭素の凝縮及び堆積を防止する。プラズマは、熱平衡に近い状態でエネルギーバランスのとれたイオン及び電子を含み、分子は、主に原子に分解され、プラズマトーチにおける温度及び圧力の動作条件下では、炭素の安定状態は、ガスとして存在し、炭素堆積の可能性を低減する。プラズマトーチの設計は、概して、反応生成物がプラズマトーチから液体金属反応器に優先的に駆動されるように、チャンバの中央で反応を促進し、壁で反応を抑制するように配設されている。外側螺旋は、内側螺旋における原子状炭素が壁上に凝縮するのを防止しながら、壁を冷却し、断熱する。反応からの水素は、ノズル35を通過し、ノズル35は、ベンチュリ効果に従って速度の増加及び圧力の減少をもたらす。次いで、ガスは、高温(及び運動エネルギー)で拡散器36を通ってプラズマトーチ30から出力され、プラズマは、超音速でトーチから排出される。これらの特徴の累積効果によって、炭素は、概して、アノードの壁上の堆積物の著しい蓄積なしに、プラズマトーチ出力内に運ばれる。拡散器36の役割は、以下でより詳細に記載されるように、プラズマトーチの出力の圧力を次の反応器段階と一致させることである。本明細書に言及されるように、本明細書に詳細に記載される実施形態では、次の反応器段階は、液体金属反応器であり、本明細書の液体金属はまた、以下で更に考察されるように、トーチと直接相互作用するために使用され得る。
【0032】
本発明の実施形態で使用するための代替的なプラズマトーチ設計は、図20a及び図20b(第2のトーチ実施形態について)、並びに図21a及び図21b(第3のトーチ実施形態について)に示されている。図20a及び図20bは、ガス入力ライン200がトーチチャンバと一直線に位置しているが、カソード2031及びアノード2032がスペーサ201によって分離されているプラズマトーチを示しており、カソード2031は、ここでカップ端を形成し、プラズマトーチ出力のために直径の大きい通路領域203に開口しているアノードを通って形成されている直径の小さい通路領域202が形成されている。図21a及び図21bは、管状形態のカソード2131(ここではモリブデン製)に隣接する閉鎖端でチャンバ内へのガス流入を提供する渦流プレート2151を有する代替的な実施形態を示す。アノード2132は、以前と同様に、直径のより小さい通路領域212及び直径のより大きい通路領域213を有して段状になっているが、この場合、これらの領域は、プラズマチャンバに対してより短く、直径のより大きい通路領域213は、直線的に増加する直径の拡散器214において終端する。
【0033】
上で記載されるトーチにおけるこの配設は、ガス状供給原料の非常に高いスループットで、高温(反応点で摂氏6000度を上回る)、及びトーチにおける高圧での動作を可能にする。プラズマトーチに200kWの電力を入力し、反応点でトーチチャンバ内の動作温度が摂氏6000度、圧力が50バールの場合、おおよそ72kg/時間のメタンが、この設計を使用して処理され得る。電極にわたる電圧は、典型的には150V~600V、典型的には約250Vであり、動作電流は、100A~500A、典型的には約200Aである。供給原料ガスは、熱分解反応において放出される熱を利用して(以下の更なる考察を参照)、熱交換器を使用することによって予熱することができるが、アノードを冷却するために使用される水素は、より低い温度で提供される。
【0034】
プラズマトーチの高圧動作は、本明細書で記載される本発明の実施形態に共通しており、反応システムは、典型的には、図1に示されるように、圧力容器内に含まれる。しかしながら、効果的な反応は、様々な圧力レジームで達成することができ、本明細書で記載されるシステムは、50barg(大気圧を50バール上回る)での動作に特に好適であるが、高圧動作による熱分解に関連したプラズマトーチの使用に対する従来のアプローチとは区別され、低いが依然として高圧(20barg、10barg、又は更には1barg)でのシステムの使用は、大気圧で動作する温度よりも効率的な動作を可能にする。以下に更に言及されるように、より低い温度で、及びより低い電力トーチでの動作はまた、可能である(これは、図22に関して以下で更に考察される)。
【0035】
図7図10は、本発明の実施形態において、プラズマトーチを取り付け、プラズマトーチにガス状供給原料及び電力を提供するためのシステムを例証する。
【0036】
このタイプの反応器設計の潜在的な問題の1つは、プラズマトーチを維持する必要がある場合、プラズマトーチを停止させることが必要となる長いサイクル時間のために反応器が著しく効率を失う可能性があることである。これは、トーチをメンテナンスのためにはるかに低い温度及び圧力まで下げる必要があり、次いで、再び動作するためには温度及び圧力に戻す必要があるためである。本発明の実施形態では、取られるアプローチは、反応器における各「トーチ位置」について複数のトーチを使用することであり、プラズマトーチのうちの1つは、アクティブ位置にあり、動作の準備ができており、他のプラズマトーチは、実際に動作しているトーチに影響を与えることなく、取り外し又は動作の準備をすることができる他の位置にある。このアプローチは、プラズマトーチに電力及びガス状供給原料を提供するための効率的なシステムと効果的に組み合わせることができる。
【0037】
図7は、この複数のトーチアプローチの一実施形態を示しており、この実施形態では、3つのトーチ71、72、73は、カルーセル又はリボルバ70に取り付けられている。リボルバ70は、長手方向軸の周りに回転することができるが、回転後、3つのトーチのうちの1つが反応器内で動作するアクティブ位置又はアクティブベイにある3つの位置のうちの1つにロックされている。フィードスルーシステム74は、リボルバ70の軸に沿って提供され、このシステムは、ガス状供給原料及び電力がアクティブ位置にあるプラズマトーチに提供されるように構成される。他の2つのプラズマトーチは、アクティブ位置になく、それらは、使用のために、又は抽出のために準備することができ、例えば、2つの位置のうちの一方は、トーチが動作温度に達する「準備」位置(又はローディングベイ)であることができ、2つの位置のうちの他方は、以前にアクティブトーチが冷却され、メンテナンスのために取り外しの準備ができた「クールダウン」位置(又は冷却ベイ)であり得る。
【0038】
図8は、リボルバにおけるトーチ位置に嵌合するプラズマトーチを示す。3つのトーチ位置は、リボルバの軸の周りに対称的に配設され、プラズマトーチは、それがアクティブベイに回転されるとき、プラズマトーチチャンバ内の圧力を維持することができるように、適切な圧力封止を提供され、所定の位置にロックされるまで、反応器から離れた側からスライドする。
【0039】
図9A及び図9Bは、リボルバのベイが3つの利用可能な位置の間で回転され得るギアシステム91を示しており、任意の適切なギアシステムが使用され得る。ロック機構は、ベイが指定された位置にのみロックされ得るように提供され、3つのベイの場合、これは3つの可能なロック位置を含む。図9Bは、これが行われ得る2つの方式を示す。リボルバキャップ上のピン93は、リボルバコアを貫通し、リボルバを所定の位置にロックするために使用され得る。代替的に、ギアのうちの1つ、例えば、ステッピングモータ接続部のギア92は、モータ制御で所定の場所にロックされ得る(所望される場合、ギアシャフトの各々を、このようにロックすることができる)。
【0040】
図10は、図7図9に示されるリボルバで使用するためのフィードスルーシステムを示す。フィードスルーシステム74は、各リボルバについて提供され、アクティブベイにおけるトーチに電気及びガス状入力を提供し、これらの入力はまた、必要とされる場合、他のベイ(例えば、冷却ベイへの冷却ガス)に提供され得るが、概して、フィードスルーシステムは、作業位置におけるトーチによる使用のためにアクティブベイのみへの入力を有するように形成される。トーチとは対照的に、フィードスルーシステムは、どのトーチが任意の所与の時間にアクティブベイに配置されているかに関係なく、正しい入力がアクティブベイに提供されるように、ベイに対して固定構成を採用する。このアプローチを使用して、特定の入力場所を、特定の入力ガスについて指定することができる。いくつかの場合では、これは、概して、プラズマトーチにおける反応とは独立し得る(例えば、より低温の水素は、いくつかの異なる反応においてアノードを冷却するために入力され得る)が、他の場合では、特定のガス状入力は、特定の反応のために特定の位置75でプラズマトーチに入るために提供され得、プラズマトーチにおける複数のガス入力37(図3を参照)は、これらの供給出力75と交代し得る。フィードスルーシステムは、このようにして、特定の供給原料ガス及び特定の反応についてコード化(例えば、色分け)することができる。図10において、ガス状入力は、示されているが、電気接続部は、示されていない。しかしながら、セラミック絶縁体76は、トーチ上の接続部、特に電気接続部を分離するように示されている。トーチに関しては、この配設は、使用中にプラズマトーチチャンバ内で50バールの圧力を維持することを可能にするのに効果的な圧力封止で提供される必要がある。適切な供給原料システムの構築に対する異なるアプローチが取られ得るが、ここに示されるアプローチは、一連の整列されたディスクを使用し、この場合、これらは、セラミック絶縁ディスク78によって分離された金属ディスク77である。
【0041】
供給原料システムは、入力にのみ関連して上で記載されているが、出力についても使用され得る。例えば、再循環がある場合(例えば、出力として生成されるが、冷却ガスとしても使用される水素と同様に)、再循環システムは、供給原料システムを通して入力及び出力の両方を使用し得る。
【0042】
ここでは、異なるトーチが、実際には、異なる反応に使用され得ることに留意されたく、例えば、トーチは、メタンについて最適化された供給原料入力位置で設計され得、別のトーチは、異なる供給原料ガスについて最適化された異なる入力位置で設計され得る。これらの異なる入力位置は、正しい入力ガス及びトーチの組み合わせのみが使用され得るような方式で、供給原料システム上の異なる位置と整列され得る。また、同じ供給原料ガスが異なるトーチ(又は更には異なる反応)について異なる位置に供給することができるように、供給原料システムを再構成することが可能であり得、これは、特定の配設について事前構成されたバルブ位置のセットを伴う供給原料システムにバルブを追加することで達成することができる。
【0043】
反応器の他の要素を記載する前に、全体的な反応フローが、図11に関して記載される。この反応フローは、メタンの分解及び熱分解に特有であるが、本明細書では、より概して、複合反応器の異なる部分において起こる異なる反応プロセスを例証するために使用される。例えば、プロパンなどの他の炭化水素は、プラズマトーチ反応器だけでなく、液体金属反応器においても、メタンではなく供給原料炭化水素として使用され得る。
【0044】
システムへの2つの入力、すなわち、電気1101及び炭化水素1102(この場合、メタン)が、示されている。2つの出力、すなわち、水素1103(ただし、他の反応のために、他の出力ガス若しくは、同様に又は代わりに提供され得、また、生成された水素の一部が反応プロセスにおける使用のために再循環されることに留意されたい)及びカーボンブラック1104が、示されている。
【0045】
両方の入力は、プラズマトーチ1105に提供され、電力及び炭化水素供給原料に加えて、水素は、入力として提供される。示される配設では、低温水素入力1111(ここでは、摂氏200~400度の範囲で示される)は、例えば、反応供給原料として使用される高温炭化水素1112(ここでは、摂氏約700度で示される)でアノードを冷却するために、また、反応チャンバの温度及び圧力を維持し、プラズマトーチを通る材料の流れを促進するために、プラズマトーチ1105に提供される。プラズマトーチが電気エネルギーを消費し、高温出力を生成すると、これは、第2の反応器1122における熱分解反応によって部分的に消費され、そこから加熱された出力ガスが、摂氏約200度の低温炭化水素1113から摂氏約700度のプラズマトーチ反応温度で高温炭化水素1112に上昇させるように、炭化水素供給原料を循環させるために熱交換器1121において使用することができ、熱交換器1121はまた、より冷たい温度でプラズマトーチに水素を供給することができる。したがって、この熱交換器1121は、第1の反応器プロセスとして効果的に作用し、終了プロセスの熱を吸収し、それを使用して、反応段階に必要なガスを正しい温度にする。
【0046】
プラズマトーチ1105自体は、第2の反応器1122として作用し、高温の水素及び(主に)ガス化炭素を出力1114として提供する。その反応生成物を通るプラズマトーチ1105は、液体金属熱分解反応器1123である次の反応器段階で動作する。プラズマトーチ1105は、この反応について熱を提供し、金属(ここでは、鉛)を反応温度まで加熱し、また、鉛に回転を提供し、炭素が反応器の中心で抽出されることを可能にする。より高温の炭化水素1115は、液体金属熱分解反応器1123のための供給原料として熱交換器1121から提供される。熱分解反応器における放熱反応から非常に高い温度(おおよそ摂氏1200度)で提供される水素出力1116は、主に水素ガス出力1104で(より低い温度で)提供されながら、熱交換器1121に戻され、プラズマトーチ1105に部分的に再循環される。
【0047】
液体金属熱分解反応器は、図12図18により詳細に示されている。図12は、反応器アセンブリの主な要素を例証する。トーチ取り付け部121は、メイン反応器容積123に供給する液体金属レーストラック122内に方向付けられている。また、渦流チャンバ125を含むメイン反応器容積123へのガス入力124がある。液体(溶融)金属は、液体金属カラムに回転を与えるように渦流チャンバ125内に送達され、液体金属が入力ガス中で熱分解反応を開始すること、遠心分離器として作用し、回転カラムの中心に向かって反応生成物を分離することの両方を可能にする。次いで、炭素は、炭素出力126において、反応器の基部から抽出可能である。水素は、液体金属から上昇し、反応器の上部から水素出力127を通って放出される。反応は、高温及び高圧(典型的には、摂氏800~1000度及び50バール)で実行される。
【0048】
この機能は、液体金属システム自体が反応器ではない場合でさえも、プラズマトーチの機能と有用に組み合わせられ得、その場合、それは、プラズマトーチ出力のエネルギーによって電力供給されるプラズマトーチから反応生成物を分離するための分離器としてのみ作用する。しかしながら、これは、著しく過剰な熱を残し、液体金属システム自体を、更なる炭化水素の吸熱熱分解のために使用される反応器にすることは、特に効果的な反応器システムにつながることが見出される。
【0049】
図13A及び13Bは、異なる角度からのプラズマトーチ取り付け部及び液体金属レーストラックを示し、図14A及び14Bは、これらの要素の異なる断面図を示す。液体金属は、冷却すると反応チャンバから出て行き、反応生成物が分離され、次いで、エルボージョイント128を通ってプラズマトーチ取り付け部121に向かって液体金属レーストラック122を通過し、プラズマトーチ出力は、液体金属内に噴射される。これは、メタンなどの炭化水素で熱分解反応を開始するのに十分な温度まで液体金属を加熱し、また、プラズマトーチ反応の反応生成物を液体金属反応器に運び、それらをシステムから収集され得るようにする(プラズマトーチジェットから液体金属内に移動するメタンはまた、この時点で熱分解され得る)。加熱された金属は、液体金属レーストラックの残りの部分に沿って移動し、底部から液体金属反応器チャンバに入る。レーストラック構造の部品は、結果として、加熱された液体金属からの高温に耐える必要があり、それらはまた、反応プロセス中の温度と反応プロセス外の温度との間の著しい差からの膨張に対して適合される必要がある。ジョイントは、例えば、図14Bに示されるように、モリブデンスリーブ141の使用によって保護され得る。
【0050】
プラズマトーチは、液体金属レーストラック122内に効果的に噴射するように設計されており、特に、プラズマトーチの拡散器は、トーチの外側と圧力を一致させるように設計されている。これは、液体金属レーストラック内の乱流ではなく直線的な流れをサポートするという利点を有する。液体金属は、プラズマジェットを安定させるように作用する渦又は渦巻きにされ得る。プラズマトーチからの反応生成物、示される実施例では、水素及び炭素は、以下に記載されるように、液体金属反応器においてその後の分離及び液体金属反応器からの出力のために液体金属中に運ばれる。
【0051】
液体金属システムはまた、プラズマトーチ反応器の出力を不純物からパージするのに役立ち得る。例えば、エチレンは、副産物として生成され得るが、次いで、液体金属システムにおいて再び分解され得る。
【0052】
液体金属システムからの液体金属は、他の機能を有し得る。例えば、プラズマトーチの拡散器は、液体金属が拡散器をクリーンにし、そこで炭素の蓄積を防止するように作用するように、液体金属レーストラック内に十分に遠くまで延在し得、実施形態では、拡散器セクションは、液体金属の流れをサポートするために部分的に多孔質であり得る。所望に応じて、レーストラックからの液体金属は、プラズマトーチを溢れさせ、反応を急速にクエンチし、その動作を停止させるように駆動されることさえ可能である。したがって、液体金属は、多孔質アノード(及び使用される場合は、カソード)構造を浸水させるために使用され、したがってクリーンにすることができる。
【0053】
これは、シャットダウン及び始動時のシステムの動作について影響を及ぼす。プラズマトーチが停止すると、液体金属レーストラックからのプラズマトーチ構造のある程度の埋め戻しが予想され得、液体金属は、トーチチャンバに入り、(金属の選択肢に応じて)トーチが冷却すると凝固し得る。多孔質電極が使用される場合、電極、又は少なくともトーチアパーチャに最も近い電極は、液体金属で溢れ得る。これは、トーチの効果的な動作ために、及びその作業寿命の延長のために有益に使用され得る。電極は、使用中の侵食について補償し得る、固化された金属によって直接補充され得る。プラズマトーチを再始動することは、通常、高電圧パルスを使用して達成され、これは、典型的には、概して、電極及びトーチ構造に著しい老化効果を及ぼすであろう。液体金属がトーチチャンバに入った場合、特に固体金属プラグを形成した場合、トーチを始動する効果は、著しく軟化する。そのような固体金属プラグは、典型的には、プラズマトーチの電極間のリンクを形成し、それゆえ、高電圧パルスは、典型的には、プラグを通る高電流(おそらく、200A)をもたらし、プラグを非常に迅速に加熱及び溶融し、プラグ溶融とトーチへの供給原料ガスの供給との組み合わせは、金属プラグの迅速な排除をもたらす一方、また、プラズマトーチにソフトスタートを提供して、プラズマトーチのパワーサイクルの老化効果を低減し、結果は、液体金属システムによって支援されるより効果的な自己点火プロセスである。プラグの解除をより迅速にするため、これは、プラグの背後にガスを注入することによって、又はプラグが液体金属システムに前方に圧力をかけるためにプラグの前方で真空にすることによって、刺激され得る。プラグと係合し、プラグを取り出すための機械的システムはまた、可能である。
【0054】
鉛、又は鉛を含有する混合物は、液体金属システムにおいて液体金属として使用され得る。鉛は、高蒸気圧を有することなく反応温度で液体であり、他のほとんどの好適な金属よりも毒性の問題を引き起こすことが少ないため、好適な選択肢である。ガリウムはまた、ビスマスと同様に、別の可能な選択肢である。システムの実施形態において使用される1つの合金は、William Rowland Ltd.から入手可能な、ビスマス及び鉛を含むWR58である。「液体金属」という用語は、本明細書全体を通して使用されるが、実施形態では、循環液体は、それ自体が金属ではない場合があり、それが反応器温度で液体であり、反応生成物の分離をサポートする(反応器として作用する場合、更なる熱分解をサポートする)が、それ自体は供給原料ガス又は熱分解反応生成物との更なる化学反応を持たないことを条件とする。いくつかの塩はまた、適切な特性を有する。上で言及されたように、冷却プラグがトーチの自己点火に使用される場合、反応器が冷たくなったときに循環液体が固体になり、ある程度導電性になる必要がある。
【0055】
上で言及されたように、液体金属システムは、ここでは、分離器としてだけでなく、反応器としても作用するように設計されている。図15は、液体金属熱分解反応器のための反応チャンバを形成する渦流チャンバ125の図を提供する。加熱された液体金属は、入力ガスとともに下からこのチャンバに通され、渦流チャンバ125内の循環は、遠心作用によって分離された反応生成物とともに、循環液体金属カラムの中心への分離につながり、炭素及び水素は、最初に反応器の上部のハット構造151に収集される。これを使用して、クリーンな水素を収集することができ、これは、この時点で唯一のガスであり、フロートバルブを通して単に放出することができる。液体塩構造は、この構造において、鉛と炭素の混合物が浸透するために提供することができ、これは、鉛から炭素が分離し、プロセスは、重力によって完了し、より軽い炭素は、より重い鉛及び塩の両方の上に浮上する。これは、炭素が、チャンバの中央領域におけるシュートを通して落下させることによって、分離されることを可能にする。渦流チャンバ125の下のベースプレート152は、ガス状入力のための貫通孔を有する。冷却金属は、渦流チャンバ125の側面における貫通孔を出て、ベースプレート152を通って下に行き、そこで、図13及び図14に示された液体金属レーストラック上に循環する。
【0056】
渦流チャンバ125の更なる詳細は、図16~18に示されている。
【0057】
図16は、反応が起こる渦流チャンバ125の下の液体金属反応器容器の下部を示す。プラズマトーチから加熱された熱い金属は、ガス入口162を通って入る反応ガスとともに、金属入口161を通って下から入る。炭素は、炭素出力163において、反応器の底部を通って出力される。水素は、その後の循環及び渦流チャンバ上の収集のために、渦流チャンバ125のベースプレート152を通って下に循環される。
【0058】
図17は、渦流チャンバ125のベースプレート152の上の領域を示す。液体金属は、エルボー171を通って液体金属カラムに接線方向に入力され、これは、遠心分離器として作用するように、液体金属カラムに回転を提供する。また、図17に示されるのは、更なる供給原料ガス、この場合、熱分解のためのメタンのための浸透入口172である。浸透入口172は、ここでは、エルボー171からの液体金属の直前に配置され、それにより、更なる供給原料ガスは、熱分解のために液体金属流に直接浸透する。このプロセスは、適切な触媒を使用することによって更に発展され得、例えば、ニッケルボール(ここでは図示せず)は、渦流チャンバ125に含めることができ、これらは、注入されたメタンの流路を延長し、反応を促進するとともに、不純物の水素をクリーンにする。ニッケルボールは、鉛(液体金属として使用される場合)上に浮くが、塩に沈むため、効果的に分離層に閉じ込められるので、魅力的な選択肢である。ベースプレート152を通る接続部は、図18の断面図により詳細に示されている。
【0059】
上で記載されているように、反応において生成された熱を使用して、反応における使用のための正しい温度の入力ガスを提供することを可能にする熱交換器システムが提供される。高温(摂氏1200度)にある、液体金属反応器から出力された水素は、プラズマトーチ及び液体金属熱分解反応器の両方に供給するためのメタン供給原料を加熱するために使用されている。この水素出力の一部は、はるかに低い温度(例えば、摂氏200~400度)まで冷却され、上で記載されたように、プラズマトーチのアノード及びカソードを冷却するために使用されている。
【0060】
本明細書で記載される反応器の実施形態は、メタンの熱分解に適合されているが、この反応器構造は、いくつかの反応について用いることができる。供給原料システムの考察において言及されているように、例えば、様々な入力ガスは、プラズマトーチ全体を通してガスの正しい循環を達成するために、選択されたガスの入力位置で、異なる反応において使用され得る。同様に、異なる入力は、異なる反応を達成するために、単にメタンではなく、液体金属反応器に提供され得る。
【0061】
上の実施例に記載される反応器プロセスは、メタンからの水素及び炭素の生成を対象としているが、ここで使用される反応器構造は、他の反応プロセスに適合することができる。図19に示されるように、メタン又は別の炭化水素が、プラズマトーチ内で直接、又は液体金属反応器内でのその後の熱分解を通してのいずれかで、水素及び炭素に分解され(191)、分離(192)が、液体金属分離器内で起こった後、合成ガス(syngas)(合成ガス(syngas)又は合成ガス(synthesis gas)は主に水素と一酸化炭素の混合物である)は、更なる入力ガスとして炭素流に二酸化炭素を添加することによって生成され(193)得る。二酸化炭素を炭素によって還元して一酸化炭素を形成し、一酸化炭素は、渦流チャンバの上方の水素で収集し、合成ガスとして抽出することができる。このアプローチを使用して、一酸化炭素は、渦流チャンバの外側に放出され、容器の上部で収集のために浸透する。次いで、水素(渦流チャンバの上のハットから)及び合成ガス(液体金属反応器構造全体の上部から)の両方の出力が存在し得る。
【0062】
上に概して記載されたアプローチでは、プラズマトーチからの熱は、効率的な複合反応器を確立するために、吸熱反応、主な実施例では、メタン熱分解によって使用される。これは、プラズマトーチによって提供される熱の効果的な使用であるが、この熱を使用する代替的な方式がある場合、液体金属システムは、反応器として使用される必要はない。他の実施形態では、例えば、液体金属システムは、プラズマトーチ反応器によって生成された水素及び炭素の分離のために本質的に使用され得、その場合、液体金属システムへのメタンの供給は、必要とされない。
【0063】
プラズマトーチ反応器からの熱の大部分は、吸熱メタン熱分解反応によって使用されるが、熱の著しい割合は、高温(典型的には、摂氏1200度)で提供される水素出力で反応器から除去される。ここに示される配設では、これは、供給原料ガス、すなわちプラズマトーチのためのメタン、及び液体金属反応器のためのメタンを、従来の熱交換器における反応温度までもたらすために使用される。上で記載されたように、熱交換器からの更なる出力は、電極の冷却のための低温の水素流であることが望ましい。しかしながら、この出力熱の効果的な代替的な使用がある場合、この熱交換器は、使用される必要はなく、他のアプローチが、ガスを適切な反応温度まで上げるために採用され得、周囲温度又は別の副反応温度での水素源が、使用され得る。
【0064】
図22は、本発明の更なる実施形態による、反応器システムのシステム図である。この設計では、動作温度は、より低く、液体金属システムは、追加の反応器段階を提供するのではなく、分離のためにトーチから生成物を搬送し、熱交換器段階は、使用されない。この反応器システムは、より低い温度動作(ここでは、プラズマスパークでの局所的な温度が著しく高くなることは、明らかであるが、反応器全体を通して200~300℃の動作範囲を有する250℃の常温について)のために設計されているが、また、高圧動作(通常の反応器圧力として50bargで、40~60bargの動作範囲で)のために設計されている。この配設では、炭化水素供給物2202、好ましくはメタンは、周囲温度で提供され、プラズマトーチ2205に提供される前に80℃まで予熱される。この実施形態では、単一のプラズマトーチは、使用されている(リボルバは、存在しない)。本システムは、システム全体が50barg周辺で動作する、18kg/時のスループットのために設計されている。プラズマトーチ2205は、50kW(最大800VDC、300アンペア)で動作する。水素とカーボンブラックの反応生成物は、液体金属ハンドリングシステム(クエンチ反応器とも呼称される場合があり、これは、図11の配設の「プラズマ反応器」と同等である)に噴出され、この場合、液体金属システムは、少なくとも80℃まで加熱されたWR58合金を使用し、液体金属システム2214は、金属供給タンク2214aから供給される。反応生成物は、ここでは第1及び第2のサイクロン2231、2232と、パルスジェットフィルタ2233(切り替えることができる代替のパルスジェットフィルタを有する)と、を備える、抽出システム2230によって液体金属ハンドリングシステム2214から抽出される。これらのシステムの各々は、主に水素を含むガスを次の段階に進めることを可能にしながら、固体としてカーボンブラックを堆積させる。示された配設では、第1のサイクロン2231は、18kg/時、48barg及び200℃で反応器からの流れを受け入れる。第1のサイクロン2231によって堆積される固体は、いくつかの金属合金を有するカーボンブラックであるため、この時点で分離器が必要とされる。第2のサイクロン2232は、17.66kg/時、47barg、190℃で入力を受け入れ、より多くのカーボンブラックを放出しながら、4.96kg/時、46barg、及び185℃でガスを出力する。この出力は、より多くのカーボンブラックを放出するパルスジェットフィルタ2233によって受容され、冷却器2234内で周囲温度まで冷却される水素ガスを出力する。カーボンブラックは、中間バルク容器2235に堆積され、示された配設は、生成されたカーボンブラックの大部分が液体金属からの分離を必要としないように、第2及び第3のバルク容器の中への堆積を最適化する。
【0065】
更なる実施形態は、図11の配設の高温動作(1200℃であり得る)までのより高い動作温度で生成することができる。そのような設計は、必要に応じて、図11及び図22の配設のいずれか又は両方の特徴を使用し得、例えば、中間設計は、図22に示されるタイプの分離配設を使用しながら、図11に示されるものと同様の熱交換器を有し得る。
【0066】
当業者が理解するように、本明細書に述べられたプラズマトーチ及び反応器技術並びに反応プロセスの他の実施形態は、実施形態に述べられているが、特許請求の範囲によって必要とされない特定の特徴に限定されることなく、提供される特許請求の範囲の範囲内で提供され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22-1】
図22-2】
【国際調査報告】