(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】冷却装置、システムおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240326BHJP
F28F 1/42 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F28D15/02 102C
F28F1/42 A
F28D15/02 A
F28D15/02 104A
F28D15/02 101L
F28D15/02 106Z
F28D15/02 101G
F28D15/02 101M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563202
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 GB2021051950
(87)【国際公開番号】W WO2022223938
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521338961
【氏名又は名称】カトリック テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KATRICK TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラユサム,カーティキヤン
(57)【要約】
冷却装置が開示される。この冷却装置は、ハウジングと、ハウジング内に位置する第1の液体および第2の液体とを備える。第1の液体は、第2の液体よりも密度が高く、沸点が低い。冷却装置は、第1の液体に熱を伝達して第1の液体を蒸発させ、それにより第1の液体の蒸気を形成する熱交換装置をさらに備える。冷却装置は、ハウジングを通って延びる複数の独立したエネルギー放散部材も備える。それら部材は、第1の液体の蒸気と第2の液体との相互作用によって生じる流体の流れに応じて動き、ハウジングの外部のボリュームに熱を伝達する。この冷却装置は、最小限の電力で、あるいは電力を消費することなく、物体を冷却することができる。そのため、この冷却装置は環境に優しく、運転コストも低い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に位置する第1の液体および第2の液体であって、前記第1の液体が、前記第2の液体よりも密度が高く沸点が低い、第1の液体および第2の液体と、
前記第1の液体に熱を伝達して前記第1の液体を蒸発させ、それにより第1の液体の蒸気を形成する熱交換装置と、
前記ハウジングを通って延びる複数の独立したエネルギー放散部材とを備え、独立したエネルギー放散部材が、前記第1の液体の蒸気と前記第2の液体の相互作用によって生じる流体の流れに応じて動き、前記ハウジングの外部のボリュームに熱を伝達することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却装置において、
前記ハウジングが、単一のチャンバを含み、または2以上のチャンバと、前記2以上のチャンバを接続する1または複数のパイプとを有することを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却装置において、
前記第1の液体が1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(R1233ZD)、前記第2の液体が純水であり;または、前記第1の液体がジクロロトリフルオロエタン、前記第2の液体が純水であり;または、前記第1の液体が1,2-ジクロロテトラフルオロエタン、前記第2の液体が純水であり;または、前記第1の液体が1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、前記第2の液体が純水であり;または、前記第1の液体がR1234 YF、前記第2の液体が純水であり;または、前記第1の液体がR-1234ze(トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロプ-1-エン)、前記第2の液体が純水であることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の冷却装置において、
当該冷却装置が3以上の液体を含むことを特徴とする冷却装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の冷却装置において、
前記熱交換装置が、1または複数のパイプ、1または複数のコイル状パイプ、前記ハウジングの第1の部分、1または複数の伝導性部材、流体密封ケーシングおよび/または蒸発器を備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の冷却装置において、
前記複数の独立したエネルギー放散部材が複数のロッドであり、各ロッドの第1の端部が前記ハウジングの内部ボリューム内に延び、各ロッドの第2の端部が前記ハウジングの外部のボリューム内に延び、各ロッドの取付部分が前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とする冷却装置。
【請求項7】
請求項6に記載の冷却装置において、
前記複数のロッドが、前記ハウジングの周りに均一または不均一に分布し、かつ/または前記ハウジングに対して垂直または非垂直に向けられていることを特徴とする冷却装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の冷却装置において、
前記複数のロッドのうちの各ロッドの第1の端部および/または第2の端部が、少なくとも1の伝導性表面を有する拡大領域を含むことを特徴とする冷却装置。
【請求項9】
請求項6~8の何れか一項に記載の冷却装置において、
前記複数のロッドが、寸法、デザインおよび材料組成が均一または不均一であることを特徴とする冷却装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の冷却装置において、
凝縮ループをさらに備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の冷却装置において、
シンクをさらに備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載の冷却装置において、
ポンプシステムおよび/または1または複数の貯蔵タンクをさらに備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載の冷却装置において、
1または複数のコンプレッサおよび/またはリリーフバルブおよび/または膨張バルブをさらに備えることを特徴とする冷却装置。
【請求項14】
冷却システムであって、
請求項1~13の何れか一項に記載の冷却装置と、
冷却対象の物体とを備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項15】
請求項14に記載の冷却システムにおいて、
熱伝達装置をさらに備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項16】
請求項15に記載の冷却システムにおいて、
前記熱伝達装置が、循環ループを含むことを特徴とする冷却システム。
【請求項17】
請求項16に記載の冷却システムにおいて、
前記循環ループが、空気;または流体;または第1の流体を有する第1のループと第2の流体を有する第2のループを含むことを特徴とする冷却システム。
【請求項18】
請求項15~17の何れか一項に記載の冷却システムにおいて、
前記熱伝達装置が、1または複数の伝導性部材を含むことを特徴とする冷却システム。
【請求項19】
請求項14~18の何れか一項に記載の冷却システムにおいて、
前記冷却装置が、前記物体の上方に配置されていることを特徴とする冷却システム。
【請求項20】
請求項14に記載の冷却システムにおいて、
前記物体が、前記冷却装置であることを特徴とする冷却システム。
【請求項21】
請求項14~19の何れか一項に記載の冷却システムにおいて、
作動流体を有する冷却ループをさらに備えることを特徴とする冷却システム。
【請求項22】
請求項21に記載の冷却システムにおいて、
前記冷却ループと前記循環ループがともに前記冷却装置を通過することを特徴とする冷却システム。
【請求項23】
冷却装置の製造方法であって、
・ハウジングを提供するステップと、
・前記ハウジング内に位置する第1の液体および第2の液体を提供するステップであって、前記第1の液体が、前記第2の液体よりも密度が高く沸点が低い、ステップと、
・前記第1の液体に熱を伝達して前記第1の液体を蒸発させ、それにより第1の液体の蒸気を形成する熱交換装置を提供するステップと、
・前記ハウジングを通って延びる複数の独立したエネルギー放散部材を提供するステップであって、前記独立したエネルギー放散部材が、前記第1の液体の蒸気と前記第2の液体の相互作用によって生じる流体の流れに応じて動き、前記ハウジングの外部のボリュームに熱を伝達する、ステップとを備えることを特徴とする冷却装置の製造方法。
【請求項24】
請求項23に記載の冷却装置の製造方法において、
前記冷却装置によって冷却される物体の特性を特定するステップをさらに含むことを特徴とする冷却装置の製造方法。
【請求項25】
請求項23または24に記載の冷却装置の製造方法において、
前記物体とともに使用する冷却装置の最適なパラメータを決定するステップを含むことを特徴とする冷却装置の製造方法。
【請求項26】
冷却システムの製造方法であって、
・請求項23~25の何れか一項に記載の方法に従って冷却装置を提供するステップと、
・冷却対象の物体を提供するステップとを備えることを特徴とする冷却システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、システムおよび製造方法に関する。特に、記載の冷却装置は、データセンタなど、空調装置を通常使用する環境の温度を下げるのに適している。
【背景技術】
【0002】
蒸気圧縮冷却システムは、液体と気体の間で相転移を繰り返す作動流体を含む。このタイプの冷却システムは、家庭用冷蔵庫や冷凍庫から建物の空調システムまで、数多くの用途がある。
【0003】
図1は、データセンタ2の冷却に使用される、当該技術分野で既知の蒸気圧縮冷却システム1を示している。データセンタ2は、コンピュータシステム4を収容する建物3の形態をとる。建物3内の温度は、コンピュータシステム4の稼動により、多くの場合、周囲温度より高く、例えば50℃まで上昇する。蒸気圧縮冷却システム1の目的は、コンピュータシステム4が過熱しないように建物3内の温度を下げることである。
【0004】
建物3内の高温(50℃)の空気5は、循環ファン7によって循環ループ6に引き込まれる。循環ループ6を移動する間に、高温の空気5は蒸発器8を通過して熱を失う。その結果、温度25℃の低温の空気9が建物3内に送り込まれる。
【0005】
蒸発器8は、一般に冷媒として知られる作動流体11を含む密封された冷却ループ10の一部である。蒸発器8は、高温空気5から作動流体11に熱を伝達する。このため、蒸発器8は、より一般的には熱交換装置と考えることができる。熱は、作動流体11の液体から気体への相変化を引き起こす。ガス状の作動流体11は冷却ループ10に沿って循環し、そこでコンプレッサ12により圧縮されて、ガス状の作動流体11の温度が、例えば65℃まで上昇する。その後、高温(65℃)の圧縮作動流体11は、凝縮器13で冷却されて、ガス状の作動流体11が熱を放出し、凝縮して液体に戻り、その結果、例えば35℃に温度が低下した液体圧縮作動流体が得られる。その後、液体作動流体11の温度は、膨張バルブ14により液体圧縮作動流体11の圧力を下げることによって、例えば-30℃までさらに低下する。低温(-30℃)の非圧縮作動流体は、蒸発器に再循環され、そこで熱拡散によって再び高温空気5から作動流体11に熱が移動する。このサイクルが繰り返されて、建物3から発生する高温空気5が継続的に冷却される。
【0006】
図1に示す蒸気圧縮冷却システム1は、作動に電力を必要とする。特に、循環ファン7、コンプレッサ12および凝縮器13はすべて電力を消費する。不利なことに、そのようなシステム1は大量の電力を消費する可能性がある。比較的大規模なデータセンタでは、町と同等の電力要件に相当する場合もある。そのような大規模な電力消費は、費用がかかり、環境にも大きな影響を与える。
【0007】
蒸気圧縮冷却システム1のもう一つの欠点は、すべての構成要素、特に循環ファン7、コンプレッサ12および凝縮器13の保守が必要なことである。これは追加の経済的負担となり、蒸気圧縮冷却システム1は、必要な保守による休止中は運転することができない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様の目的は、当該技術分野で知られている冷却システムの上述した欠点の1または複数を取り除くか、または少なくとも軽減する冷却システムを提供することである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、冷却装置が提供され、この冷却装置が、
ハウジングと、
ハウジング内に位置する第1の液体および第2の液体であって、第1の液体が、第2の液体よりも密度が高く沸点が低い、第1の液体および第2の液体と、
第1の液体に熱を伝達して第1の液体を蒸発させ、それにより第1の液体の蒸気を形成する熱交換装置と、
ハウジングを通って延びる複数の独立したエネルギー放散部材とを備え、独立したエネルギー放散部材が、第1の液体の蒸気と第2の液体の相互作用によって生じる流体の流れに応じて動き、ハウジングの外部のボリュームに熱を伝達する。
【0010】
独立したエネルギー放散部材は、各部材が他の部材と機械的に結合されていないため、独立したと呼ばれる。各部材の両端は自由に動くことができる。独立したエネルギー放散部材は、互いに対してランダムに動く。
【0011】
好ましくは、ハウジングが単一チャンバを含む。代替的には、ハウジングが、2以上のチャンバと、2以上のチャンバを接続する1または複数のパイプとを備える。
【0012】
最も好ましくは、ハウジングが密封可能である。冷却装置は閉じた冷却装置である。この構成では、第1および第2の液体が、動作中に追加されることも、除去されることもない。
【0013】
好ましくは、第1および第2の液体が、ハウジングの内部ボリュームを占める。第1および第2の液体は、ハウジングの内部ボリューム内で混ざり合うことができる。
【0014】
好ましくは、第1の液体が、ハウジングの第1の部分内に位置する。第2の液体は、ハウジングの第2の部分内に位置する。
【0015】
最も好ましくは、第1の液体が1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(R1233ZD)であり、第2の液体が純水である。代替的には、第1の液体がジクロロトリフルオロエタンであり、第2の液体が純水である。代替的には、第1の液体が1,2-ジクロロテトラフルオロエタンであり、第2の液体が純水である。代替的には、第1の液体が1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンであり、第2の液体が純水である。代替的には、第1の液体がR1234 YFであり、第2の液体が純水である。代替的には、第1の液体がR-1234ze(トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロプ-1-エン)であり、第2の液体が純水である。
【0016】
任意選択的には、冷却装置が3以上の液体を含む。
【0017】
最も好ましくは、第1の液体に熱を伝達して第1の液体を蒸発させ、それにより第1の液体の蒸気を形成するための熱交換装置が、1または複数のパイプ、より具体的には、1または複数のコイル状パイプを含むことができる。1または複数のパイプは、ハウジングの基端部からハウジングの上端部まで通過することができる。
【0018】
追加的または代替的には、熱交換装置が、ハウジングの第1の部分を含むことができる。
【0019】
追加的または代替的には、熱交換装置が、1または複数の伝導性部材を含むことができる。
【0020】
追加的または代替的には、熱交換装置が、流体密封ケーシングを含むことができる。
【0021】
追加的または代替的には、熱交換装置が、蒸発器を含むことができる。
【0022】
任意選択的には、冷却装置が、1または複数のペレットをさらに含むことができる。1または複数のペレットは、冷却装置の内部ボリューム内に位置する。1または複数のペレットは、第1の液体および/または第2の液体内で浮遊する。1または複数のペレットの密度は、第1の液体の密度と第2の液体の密度との間である。ペレットは、第1の液体、第2の液体および/または第1の液体の蒸気と化学的に反応しない。好ましくは、ペレットは、磁気的に中性である。
【0023】
最も好ましくは、複数の独立したエネルギー放散部材が、複数のロッドの形態をとることができる。複数のロッドのうちの各ロッドは、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間の中央取付部分とを含むことができる。各ロッドは、ハウジングを通って延びる。各ロッドの第1の端部は、ハウジングの内部ボリューム内に延びる。第2の端部は、ハウジングの外部のボリューム内に延びる。各ロッドの取付部分は、ハウジングに取り付けられる。
【0024】
好ましくは、複数のロッドが、ハウジングの周りに均一に分布することができる。代替的には、複数のロッドが、ハウジングの周りに不均一に分布するものであってもよい。
【0025】
好ましくは、複数のロッドが、ハウジングに対して垂直に向くことができる。代替的には、複数のロッドが、ハウジングに対して非垂直に向くようにしてもよい。
【0026】
好ましくは、複数のロッドのうちの各ロッドの第1の端部が、少なくとも1の伝導性表面を有する拡大領域を備える。同様に、複数のロッドのうちの各ロッドの第2の端部が、少なくとも1の伝導性表面を有する拡大領域を備える。伝導性表面は、熱エネルギーの吸収および放散を容易にする。
【0027】
好ましくは、複数のロッドが、同じ材料組成を備えることができる。複数のロッドは銅を含むことができる。銅は高い熱伝導率を有する。
【0028】
任意選択的には、複数のロッドが保護コーティングを含むことができる。
【0029】
好ましくは、複数のロッドは、寸法、デザインおよび材料組成が均一である。代替的には、複数のロッドは、寸法、デザインおよび材料組成が不均一であってもよい。
【0030】
好ましくは、ハウジングが、入口ポートおよび出口ポートを含むことができる。入口ポートおよび出口ポートは、好ましくは密封可能である。
【0031】
任意選択的には、冷却装置が、凝縮ループをさらに備える。凝縮ループは、第1の液体の蒸気を凝縮し、第1の液体をハウジングの第1の部分に戻す。
【0032】
任意選択的には、冷却装置がシンクをさらに備える。シンクは、第1の液体を含むことができる。シンクは、好ましくはハウジングに接続される。シンクは、ハウジングの第1の部分内の第1の液体のレベルを維持する。
【0033】
任意選択的には、冷却装置が、ポンプシステムをさらに備える。ポンプシステムは、第1および第2の液体をハウジングの内外に送り出す。
【0034】
任意選択的には、冷却装置が、1または複数の貯蔵タンクをさらに備える。1または複数の貯蔵タンクは、ポンプシステムに接続される。
【0035】
任意選択的には、冷却装置が、1または複数のコンプレッサをさらに含むことができる。冷却装置は、リリーフバルブをさらに含むことができる。冷却装置は、膨張バルブをさらに含むことができる。冷却装置は、ドレインを有する分離器をさらに含むことができる。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に係る冷却装置と、冷却対象の物体とを備える冷却システムが提供される。
【0037】
任意選択的には、冷却システムが、熱伝達装置をさらに含むことができる。
【0038】
任意選択的には、熱伝達装置が、循環ループを含むことができる。熱伝達装置は、循環ファンをさらに含むことができる。
【0039】
任意選択的には、循環ループが空気を含むことができる。循環ループは、物体から冷却装置に空気を循環させる。循環ループは、物体から冷却装置に高温空気を移送する。冷却装置は、高温空気を冷却する。
【0040】
代替的には、循環ループが流体を含むことができる。流体は、循環ループ内に密封される。流体は、物体または冷却装置を通過するが、循環ループの外部の流体と混ざり合うことはない。流体は、物体からの熱を吸収する。循環ループは、流体を冷却装置に循環させ、冷却装置は流体を冷却する。流体は冷媒であってもよい。
【0041】
代替的には、循環ループが、第1の流体を有する第1のループと、第2の流体を有する第2のループとを含むことができる。第1の流体は、第1のループ内に封入される。第2の流体は、第2のループ内に封入される。第1の流体は、物体からの熱を吸収する。第1のループは、第1の流体を熱交換器に循環させる。熱交換器は、第1の流体から第2の流体に熱を伝達する。第2のループは、第2の流体を冷却装置に循環させ、冷却装置は第2の流体を冷却する。第1および第2の流体は、異なるものであっても、同じものであってもよい。
【0042】
任意選択的には、熱伝達装置が1または複数の伝導性部材を含むことができる。1または複数の伝導性部材の第1の端部は、物体に熱的に接続される。1または複数の伝導性部材の第2の端部は、冷却装置に熱的に接続される。1または複数の伝導性部材の第2の端部は、ハウジングを通って冷却装置の内部ボリューム内に延びる。伝導性部材は、純銅を含む。伝導性部材は、熱拡散によって物体から冷却装置に熱を伝える。1または複数の伝導性部材の第2の端部は、冷却装置の熱交換装置として機能する。
【0043】
任意選択的には、冷却装置を物体の上方に配置することができる。物体内の対流により、高温空気が冷却装置に送られる。
【0044】
任意選択的には、物体が冷却装置であってもよい。物体は、冷却装置の機能を含むことができる。
【0045】
任意選択的には、冷却装置が、作動流体を有する冷却ループをさらに含むことができる。冷却ループは、冷却装置を含む。すなわち、冷却装置は、冷却ループの一構成要素である。冷却ループは、蒸発器、コンプレッサおよび膨張バルブをさらに備える。
【0046】
任意選択的には、冷却ループと循環ループがともに冷却装置を通過する。
【0047】
本発明の第2の態様の実施形態は、本発明の第1の態様の好ましい特徴または任意の特徴を実施するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【0048】
本発明の第3の態様によれば、冷却装置の製造方法が提供され、この方法が、
・ハウジングを提供するステップと、
・ハウジング内に位置する第1の液体および第2の液体を提供するステップであって、第1の液体が、第2の液体よりも密度が高く沸点が低い、ステップと、
・第1の液体に熱を伝達して第1の液体を蒸発させ、それにより第1の液体の蒸気を形成する熱交換装置を提供するステップと、
・ハウジングを通って延びる複数の独立したエネルギー放散部材を提供するステップであって、独立したエネルギー放散部材が、第1の液体の蒸気と第2の液体の相互作用によって生じる流体の流れに応じて動き、ハウジングの外部のボリュームに熱を伝達する、ステップとを備える。
【0049】
好ましくは、冷却装置の製造方法が、冷却装置によって冷却される物体の特性を特定するステップをさらに含むことができる。
【0050】
好ましくは、物体の特性を特定することが、冷却を行わない場合の物体の温度、冷却を行う場合の物体の目標温度、物体の温度変動性、物体の寸法、形状、組成、位置およびアクセス性を特定することを含むことができる。
【0051】
好ましくは、冷却装置の製造方法が、物体とともに使用する冷却装置の最適なパラメータを決定するステップをさらに含むことができる。
【0052】
好ましくは、物体とともに使用する熱冷却装置の最適なパラメータを決定することが、物体の特性を利用することをさらに含むことができる。
【0053】
好ましくは、冷却装置の最適なパラメータを決定することが、冷却装置の寸法および形状、第1および第2の液体の量、相対比および化学組成、ロッドの分布、向き、寸法、デザインおよび材料組成、1または複数のペレットが必要であるかどうか、凝縮ループが必要であるかどうか、シンクが必要であるかどうか、1または複数の貯蔵タンクが必要であるかどうか、熱交換器の形態、並びに、冷却装置を冷却システムに組み込む方法を決定することを含む。
【0054】
本発明の第3の態様の実施形態は、本発明の第1および/または第2の態様の好ましい特徴または任意の特徴を実施するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【0055】
本発明の第4の態様によれば、冷却システムの製造方法が提供され、この方法が、
・本発明の第3の態様に従って冷却装置を提供するステップと、
・冷却対象の物体を提供するステップとを備える。
【0056】
任意選択的には、冷却システムの製造方法が、循環ループを提供するステップをさらに含む。
【0057】
任意選択的には、冷却システムの製造方法が、伝導性部材を提供するステップをさらに含むことができる。
【0058】
任意選択的には、冷却システムの製造方法が、冷却装置を物体の上方に配置するステップを含むことができる。
【0059】
任意選択的には、冷却装置を提供することが、冷却装置の特徴を含むように、冷却対象の物体を変更することを含むことができる。
【0060】
任意選択的には、冷却システムの製造方法が、冷却ループを提供するステップをさらに含む。
【0061】
本発明の第4の態様の実施形態は、本発明の第1、第2および/または第3の態様の好ましい特徴または任意の特徴を実施するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
以下、単なる例として、本発明の様々な実施形態を図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、当該技術分野で知られている冷却システムの概略図を示している。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る冷却システムの概略図を示している。
【
図3】
図3は、
図2の冷却システム内で使用される冷却装置の概略断面図を示している。
【
図5】
図5は、
図3の冷却装置内で使用されるロッドの斜視図を示している。
【
図6】
図6は、
図3の冷却装置の代替的な実施形態の概略断面図を示している。
【
図7】
図7は、
図2の冷却システムの代替的な実施形態の概略図を示している。
【
図8】
図8は、
図2の冷却システムのさらに代替的な実施形態の概略図を示している。
【
図9】
図9は、
図2の冷却システムのさらに別の代替的な実施形態の概略図を示している。
【0063】
以下の説明において、本明細書および図面全体を通して、同様の部品には同一の符号が付されている。図面は必ずしも縮尺通りではなく、特定の部分の比率は、本発明の実施形態の詳細および特徴をより良く説明するために誇張されている。
【発明を実施するための形態】
【0064】
【0065】
冷却システム
図2は、建物3内に収容されたコンピュータシステム4の形態をとるデータセンタ2を冷却するのに適した冷却システム15aを示している。冷却システム15は、冷却装置16と、データセンタ2から冷却装置16に熱を伝達する熱伝達装置とを備える。
図2の実施形態では、熱伝達装置が、循環ループ6aと循環ファン7の形態をとる。循環ファン7は、建物3内の高温空気5を循環ループ6aを介して冷却装置16内に引き込む。
【0066】
より具体的には、循環ループ6aは、高温空気5を冷却装置16に導くパイプ17を含む。冷却装置16は高温空気5を冷却して、低温空気9を生成する。低温空気9は、循環ループ6aを介して建物3内に循環し、コンピュータシステム4を冷却する。
【0067】
冷却装置
図2~
図4を明確に見られるように、冷却装置16は、実質的に円錐形の蓋19を有する実質的に円筒形の密閉可能なハウジング18を備える。ハウジング18は、ステンレス鋼、具体的にはSA516 GR.65を含む。理解を容易にするため、
図3および
図4には、r軸、θ軸、z軸を有する円筒座標系が示されている。
【0068】
冷却装置16は、第1の液体20および第2の液体21を含み、それらがともにハウジング18内に位置していることが分かる。第1および第2の液体20、21は、ハウジング18の内部ボリューム22を占める。第1の液体20は、第2の液体21に比べて密度は高いが沸点は低い。そのため、第1および第2の液体20、21はハウジング18内で自由に混合できるが、第1の液体20はハウジング18の底部にあるハウジング18の第1の部分23内に位置し、第2の液体21は第1の液体20の上方にあるハウジング18の第2の部分24内に位置する。
【0069】
一例として、第1の液体20は、トランスクロロトリフルオロプロペンとも呼ばれる、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロプ-1-エン(R1233ZD)であってもよく、第2の液体21は、純水であってもよい。R1233ZDの密度は純水の約1.3倍であり、R1233ZDの沸点は18.3℃であり、純水の沸点100℃よりも低い。R1233ZDおよび純水を第1および第2の液体20、21として含む冷却装置16は、データセンタ2からの19℃を超える高温空気5を冷却するのに適している。冷却装置16が動作するためには、第1および第2の液体20、21の両方が周囲温度で液体の形態であることが必要である。そのため、冷却装置16を取り囲む環境の周囲温度は、第1および第2の液体20、21の沸点未満、この場合、18.3℃未満である必要がある。
【0070】
第1および第2の液体20、21の更なる例を、第1および第2の液体20、21を含む冷却装置16の動作温度範囲とともに表Iに示す。第1および第2の液体20、21の組合せは、異なる動作温度範囲およびシステム構成に適している可能性がある。表Iに開示の液体および組合せを超えて、異なる第1および第2の液体20、21、および第1および第2の液体20、21の異なる組合せを使用することにより、表Iに詳述されたものとは異なる動作温度範囲が達成され得ることが理解されよう。
【0071】
表I:第1の液体の例、第2の液体の例、第1および第2の液体を含む冷却装置によって冷却されるのに適した未冷却の高温空気の温度範囲の例、第1および第2の液体を含む冷却装置の使用例
【0072】
また、冷却装置16は、熱交換装置25も備え、この熱交換装置が、一定量の第1の液体20を蒸発させるために、高温空気5から第1の液体20(および第2の液体21)に熱を伝達する。第1および第2の液体20、21は、データセンタ2からの熱を運ぶ高温空気5または外部流体に直接曝されない。
図2および
図3の実施形態では、熱交換装置25が、冷却装置16のz軸に沿って延びるコイル状パイプ26の形態をとる。より具体的には、コイル状パイプ26は、ハウジング18の内部ボリューム22内に配置されている。コイル状パイプ26は、冷却装置16を通して高温空気5を導く空気循環ループ6aの一部と考えることができる。コイル状パイプ26は、ハウジング18の基端部28に向かう入口27と、円錐蓋19内にある、ハウジング18の上端部30に向かう出口29とを備える。
【0073】
冷却装置16はさらに、複数の独立したエネルギー放散部材31を含む。
図3~
図5に明確に見られるように、複数の独立したエネルギー放散部材31はロッド32の形態をとる。各ロッド32は、第1の端部33と、第2の端部34と、第1の端部33および第2の端部34間の中央取付部分35とを備える。各ロッド32は、ハウジング18を貫通して延びている。より具体的には、各ロッド32の中央取付部分35は、軸受36によってハウジング18に取り付けられている。各ロッド32の第1の端部33は、ハウジング18の中心軸37に向かってハウジング18の内部ボリューム22内に延びている。第2の端部34は、ハウジング18の外部に位置し、ハウジング18の中心軸37から半径方向に離れるように延びている。各ロッド32の第1および第2の端部33、34は自由に動くことができる。軸受36は、各ロッド32の第1の端部33から第2の端部34への(およびその逆の)運動を平行移動させる。ロッド32は、各ロッド32が他のロッド32のいずれとも機械的に結合されていないという点で独立している。このため、ロッドは独立しており、互いに対してランダムに動くことができる。
【0074】
ロッド32は、ハウジング18の周りにθ方向とZ方向の両方に分布している。ロッド32は、ハウジング18の第2の部分24に主に配置されている。
図2~
図4は、ロッド32がハウジング18の周りに均一に分布し、ハウジング18に対して垂直に向き、長さなどの寸法がすべて均一であるものとして示されている。
【0075】
ロッド32の1つを示す
図5から分かるように、第1および第2の端部33、34は両方とも、熱伝導性表面39a、39bを有する拡大領域38a、38bを備える。第1の端部33の拡大領域38aに位置する熱伝導性表面39aは、ハウジング18内に含まれる液体20、21からの熱拡散による熱エネルギーの吸収を促進する。吸収された熱エネルギーは、ロッド32に沿って第2の端部34に伝導することができる。第2の端部34の拡大領域38bに位置する熱伝導性表面39bは、熱拡散によって冷却装置16の外部環境への熱エネルギーの放散を促進する。熱伝導性表面39a、39bは、ロッド32の大部分と同じ材料で作られている。ロッド32は、熱伝導性表面39a、39bを除くすべてを覆う保護コーティング40を含むことができる。熱伝導性表面39a、39bは、高い熱伝導率を有する純銅などの異なる材料で作られてもよいことが理解されよう。
【0076】
図5に示すロッド32は、第2の端部34における熱伝導性表面39bから突出する熱伝導性突起41をさらに備える。熱伝導性突起41は、熱伝導性表面39bの表面積を増大させ、それによりロッド32の第2の端部34の熱エネルギー放散能力を増加させる。
【0077】
ロッド32の寸法、デザインおよび組成は、所望の熱放散特性を達成するように最適化できることが理解されよう。例えば、ロッド32の長さ、拡大領域38a、38bの寸法、熱伝導性表面39a、39bおよび/または熱伝導性突起41の有無を変化させることにより、ロッド32の熱放散特性を増減させることができる。
【0078】
ロッド32は、互いに対してランダムに動作するように構成されている。さらに、各ロッド32の寸法、デザインおよび材料組成を変えることができることが理解されよう。ロッド32のばらつきは、ロッド32の相対的なランダムな動きに寄与する可能性がある。
【0079】
ハウジング18は、密封可能な入口ポート42および密封可能な出口ポート43を備える。密封可能な入口ポート42は、ハウジング18の第2の部分24を介してハウジング18の上端部30に位置し、第1および第2の液体20、21をハウジング18内に加えるための手段を提供する。同様に、密封可能な出口ポート43は、ハウジング18の第1の部分23を介してハウジング18の基端部28に位置し、ハウジング18から第1および第2の液体20、21を排出するための手段を提供する。ハウジング18を正圧で満たし維持するために、ポンプシステム44によって、第1および第2の液体20、21をハウジング18に送り込み、かつハウジングから送り出すことができる。
【0080】
図3は、動作中の
図2の冷却装置16、すなわち高温空気5を冷却している様子を示している。冷却装置16は閉じたデバイスであり、第1および第2の液体20、21が動作中に追加または除去されることはない。熱交換装置25、すなわちコイル状パイプ26は、第1の液体20に熱を伝達する。そのため、第1の液体20の一部が蒸発して第1の液体の蒸気が形成される。第1の液体の蒸気は、気泡45の形態をとる。気泡45は、第1の液体20および第2の液体21の両方よりも密度が低い。そのため、気泡45は正のz方向に移動し、ハウジング18の第2の部分24に入り、第2の液体21を通過する。高温空気5からの熱エネルギーは、気泡45の運動の形態で運動エネルギーに変換される。
【0081】
気泡45および第2の液体21の相対運動および/または熱勾配の形態での相互作用により、流体の流れが生じる。より具体的には、流体の流れは、第1の液体20、第2の液体21および気泡45の流れを含む。例えば、流体の流れは
図3の矢印で示されている。この流体の流れは層流および/または乱流であってもよい。流体の流れは、ロッド32の第1の端部33を動かし、振動させ、かつ/または揺らす。このため、気泡45の運動エネルギーは機械的エネルギーに変換される。気泡45の層流の流れにより、気泡45がロッド32の第1の端部33に直接衝突し、ロッド32の向きを変える可能性がある。さらに、気泡45および第2の液体21の乱流により、ロッド32の第1の端部33の動きおよび/または機械的振動を引き起こす可能性がある。
【0082】
各気泡45は運動エネルギーおよび熱エネルギーを放散する。その結果、各気泡45は最終的に凝縮し、第1の液体20の液泡46を形成する。液泡46の密度は第2の液体21の密度よりも大きいため、液泡46は、基端部28に向かって沈み、ハウジング18の第1の部分23に戻る。液泡46がハウジング18の第2の部分24を通って沈んで戻ることの利点は、液泡46がさらに流体の流れを作り出し、ロッド32内の動きおよび/または機械的振動を引き起こす可能性があることである。
【0083】
ロッド32の第1の端部33に引き起こされた運動は、軸受36によってロッド32の第2の端部34に伝達される。ロッド32の第1の端部33によって吸収された熱は、ロッド32に沿って第2の端部34に伝導する。ロッド32の第2の端部34における機械的および熱的エネルギーは、冷却装置16の周囲に放散される。このため、冷却装置16は高温空気5を冷却する。その結果、低温空気9が建物3内に循環し、データセンタ2のコンピュータシステム2を冷却する。
【0084】
代替的な実施形態として、ハウジング18は円筒形である代わりに、任意の規則的または不規則な三次元形状を取り得ることが理解されよう。
【0085】
追加的または代替的な実施形態として、冷却装置16が第3の液体を含むことが理解されよう。冷却装置16は複数の液体を含むことができる。
【0086】
追加的または代替的な実施形態として、ハウジング18の周囲のロッド32の分布は不均一であってもよい。別の追加的または代替的な実施形態として、ロッド32は、ハウジング18に対して垂直に向かなくてもよい。更なる追加的または代替的な実施形態として、ロッド32の寸法、デザイン、材料組成、分布および向きを、計算により最適化することができる。
【0087】
追加的または代替的な特徴として、冷却装置16は、ペレット47をさらに備える。
図6に見られるように、ペレット47は、冷却装置16の内部ボリューム22内に位置し、第1および第2の液体20、21内で浮遊している。ペレット47は、気泡45と第2の液体21の相互作用によって生じる流体の流れに応じて、ハウジング18の内部ボリューム22内を動き回る。ペレット47はロッド32と衝突し、流体の流れによって直接引き起こされる動きに加えて、更なる動き、より具体的にはロッド32の機械的振動を引き起こす。ペレット47の密度は、ペレット47が第1および第2の液体20、21内で浮遊するときに重すぎたり浮きすぎたりしないように、第1および第2の液体20、21の密度の間である。さらに、ペレット47は、第1の液体20、第2の液体21および気泡45と化学的に反応しない。また、ペレット47は、好ましくは磁気的にも中性である。ペレット47の寸法および材料組成は、流体の流れとの所望の相互作用を達成するために最適化され得る。
【0088】
追加的または代替的な実施形態として、
図6の冷却装置16は、凝縮器49を有する凝縮ループ48をさらに備える。気泡45がハウジング18内で十分なエネルギーを失ったときに受動的に凝縮する代わりに、凝縮ループ48は気泡45を能動的に凝縮させる。より具体的には、気泡45がハウジング18の第2の部分24を通過すると、気泡16は凝縮ループ48を通過し、そこで凝縮器49が気泡45を能動的に冷却して液泡46に凝縮させる。液泡46はハウジング18の第1の部分23に戻される。凝縮ループ48は、例えば、冷却装置16が過熱されて気泡45がハウジング18の上端部30に蓄積し、ハウジング18内の第1の液体のレベルが低下した場合に有利である。
【0089】
別の追加的または代替的な特徴として、
図6の冷却装置16は、第1の液体20のシンク50をさらに備える。シンク50は、ハウジング18に接続され、ハウジング18の第1の部分23内の第1の液体20のレベルを維持する。第1の液体20が冷却装置16内で蒸発するにつれて、冷却装置16内の圧力および/または体積の無視できない変化が引き起こされる可能性がある。シンク50は、圧力および/または体積の変化を最小限に抑える。
【0090】
別の追加的または代替的な特徴として、
図6の冷却装置16は、貯蔵タンク51をさらに備える。各貯蔵タンク51は、表1に列挙されているような異なる液体を含み、それら貯蔵タンクはポンプシステム44に接続されている。液体は、貯蔵タンク51内に貯蔵するために圧縮することができる。ポンプシステム44は、第1および第2の液体20、21をハウジング18から取り出して、それぞれの貯蔵タンク51内に容易に貯蔵することができる。また、ポンプシステム44は、第1および第2の液体20、21を代替的な組合せの液体と容易に交換することができる。このため、第1および第2の液体20、21の組合せを、冷却装置16の動作条件に応じて最適化することができる。動作要件に従って第1および第2の液体20、21を除去および交換するプロセスは、ポンプシステム44によって自動化され得る。このため、ポンプシステム44は、冷却装置16とその周囲の状態を監視するセンサを含むことができる。
図6には2つの貯蔵タンク51が示されているが、第1および第2の液体20、21の数多くの代替的な組合せを提供する複数の貯蔵タンク51が存在し得ることが理解されよう。
【0091】
第1の液体20への熱伝達、第1の液体20の蒸発による気泡45の形成、気泡45からエネルギー放散部材(すなわち、ロッド32)への機械的エネルギーおよび熱エネルギーの伝達、および気泡45の凝縮による液泡46の形成のプロセスが、繰り返されて、サイクルを形成する。機械的エネルギーおよび熱エネルギーは、冷却装置16によって継続的に放散される。
【0092】
冷却システム15aの主な利点は、動作に必要な電気エネルギーが少ないことである。
図2の実施形態では、電力は循環ファン7を動作させるためにのみ必要とされる。冷却システム15aは、コンプレッサや凝縮器を含まない。そのため、冷却システム15aは、当該技術分野で知られている従来のシステム1よりも少ない電気エネルギーでデータセンタ2のコンピュータシステム4を冷却する。したがって、冷却システム15aは環境に優しい。なお、冷却装置16は、電力を全く消費せずに動作することができる。そのため、冷却装置16は受動的構成要素と見なすことができる。
【0093】
図7は、代替的な冷却システム15bを示し、この冷却システムは、
図2~
図6に示す冷却システム15aと同じ好ましい特徴および任意の特徴を含むことができる。
【0094】
しかしながら、
図2の循環ループ6aの代わりに、
図7の冷却システム15bの熱伝達装置は、流体52が封入された循環ループ6bの形態をとる。循環ループ6bは、流体52をコンピュータシステム4に導くパイプ17bを含む。熱は、コンピュータシステム4から循環ループ6b内の流体52に伝達される。
【0095】
コンピュータシステム4の近傍にあるパイプ17bは、熱交換装置として機能し、コンピュータシステム4から流体52への熱伝達を最大にするように配置することができる。例えば、パイプ17bは、コンピュータシステム4の傍を複数回通過するようにジグザグに往復し、それにより流体52がコンピュータシステム4に曝される時間を増加させて、流体52に伝達される熱を最大化する。
【0096】
循環ポンプ7bは、加熱された流体52を循環ループ6bのパイプ17bを通して冷却装置16に向けて循環させる。冷却装置16は、加熱された流体52を冷却し、冷却された流体52は、より多くの熱を吸収するために、コンピュータシステム4に向けて再び循環される。コンピュータシステム4から熱を吸収し、熱を冷却装置16に伝え、冷却装置16によって熱を放散するプロセスが繰り返され、その結果、コンピュータシステム4が継続的に冷却される。循環ループ6b内に密封された流体52は、建物3内に含まれる空気など、循環ループ6bの外部の空気と混ざり合わない。流体52は、当該技術分野で知られている冷媒など、任意の適切な流体とすることができる。
【0097】
循環ループ6bの利点は、冷却システム15bの動作パラメータ、例えば動作温度範囲に応じて流体52を選択できることである。循環ループ6bの流体52は空気であってもよいが、循環ループ6aとは対照的に、循環ループ6bは空気の循環に限定されるものではない。このため、循環ループ6bの流体52は、冷却システム15bを強化するのに望ましい熱的および化学的特性を有することができる。さらに、空気の代わりに特定の流体52で動作することが、経済的に有利である場合もある。特に、循環ループ6bの流体52は、空気での動作に必要な比較的高価な高圧装置を必要としない場合がある。
【0098】
図8は、代替的な冷却システム15cを示し、この冷却システムは、
図2~
図7に示す冷却システム15a、15bと同じ好ましい特徴および任意の特徴を備えることができる。
【0099】
しかしながら、
図2および
図7の循環ループ6a、6bの代わりに、
図8の冷却システム15cの熱伝達装置は、第1のループ53および第2のループ54を有する循環ループ6cの形態をとる。第1のループ53は、第1の流体55を含む。第1の流体55は、第1のループ53内に封入されている。同様に、第2のループ54は第2の流体56を含む。第2の流体56は、第2のループ54内に封入されている。第1および第2の流体55、56は互いに混合せず、循環ループ6cの外部の空気とも混合しない。第1および第2の流体55、56は、循環ポンプ7cによって第1および第2のループ53、54を循環する。
【0100】
コンピュータシステム4からの熱は、第1のループ53の第1の流体55に伝達される。
図7の第2の実施形態と同様に、コンピュータシステム4の近傍に位置する第1のループ53のパイプ17cは、熱交換装置として機能し、コンピュータシステム4から第1の流体55への熱伝達を最大化するように配置することができる。
【0101】
第1のループ53は、加熱された第1の流体55を熱交換装置57に移送する。熱交換装置57は、第1のループ53の第1の流体55から第2のループ54の第2の流体56に熱を伝達する。第2のループ54は、加熱された第2の流体56を冷却装置16に送り、冷却装置は、加熱された第2の流体56を冷却する。この冷却された第2の流体56は、第2のループ54内を循環して熱交換装置57に戻り、そこで、加熱された第1の流体55を冷却する。その後、冷却された第1の流体55は、第1のループ53内を循環してコンピュータシステム4に戻り、そのサイクルを繰り返して熱を再吸収し、それによりコンピュータシステム4を継続的に冷却する。
【0102】
第1および第2のループ53、54の第1および第2の流体55、56は、同じであっても異なるものであってもよい。この場合も、
図7の第2の実施形態と同様に、冷却システム15cの動作パラメータに応じて、第1および第2の流体55、56を選択することができる。
【0103】
有利なことに、
図8の冷却システム15cは、冷却装置16により、当該技術分野で知られている既存の冷却システムを改造するのに特に適している。
図8の第1のループ53は、当該技術分野で公知の冷却システムの一部として存在し得る。そのため、改造する場合には、第2のループ54と冷却装置16のみを導入すればよい。これにより、かなりの費用と時間を節約することができる。
【0104】
図8の循環ループ6cは、さらに第3のループ、より一般的には複数のループを含むことができることが理解されよう。熱交換装置と組み合わせた追加のループは、複数のデータセンタ2および/または複数の冷却装置16を冷却システム15cに接続するのに役立つ可能性がある。
【0105】
図9は、さらに代替的な冷却システム15dを示し、この冷却システムは、
図2~
図8に示す冷却システム15a、15b、15cと同じ好ましい特徴および任意の特徴を備えることができる。
【0106】
図2および
図8の循環ループ6a、6b、6cの代わりに、
図9の冷却システム15dの熱伝達装置は、伝導性部材58の形態をとり、各伝導性部材58は、第1の端部59がコンピュータシステム4に直接熱的に接続され、第2の端部60が冷却装置16に熱的に接続されている。伝導性部材58の第2の端部60は、ハウジング18を通って冷却装置16の内部ボリューム22内に延びている。そのため、伝導性部材58の第2の端部60は、冷却装置16内の第1および第2の液体20、21と直接熱接触している。伝導性部材58は、純銅のような高伝導性の固体材料を含む。
【0107】
動作中、熱は、伝導性部材58に沿った熱拡散によって、データセンタ2のコンピュータシステム4から冷却装置16に伝達または輸送される。伝導性部材58の第2の端部60は、冷却装置16の熱交換装置25として機能し、冷却装置16内の第1および第2の液体20、21に熱を伝達する。冷却装置16は、伝導性部材58全体にわたる熱勾配を維持しながら熱を放散する。このため、熱は冷却装置16に継続的に伝達され、コンピュータシステム4を冷却する。
【0108】
有利なことに、
図9の冷却システム15dは、
図2~
図8に示す冷却システム15a、15b、15cよりも、制御および保守の必要性がさらに少ない。循環ループ6a、6b、6cを循環する高温空気5や流体52、55、56が存在しないため、可動部品の数が最小限に抑えられ、ポンプシステム44や貯蔵タンク51の必要性もない。
図9の冷却システム15dは、コンピュータシステム4からの熱を、伝導性部材58全体の単なる熱拡散に依存して、冷却装置16に伝達する固体状態のソリューションを提供する。
【0109】
図10は、代替的な冷却システム15eを示し、この冷却システムは、
図2~
図9に示す冷却システム15a、15b、15c、15dと同じ好ましい特徴および任意の特徴を備えることができる。
【0110】
図2および
図8の循環ループ6a、6b、6cまたは
図9の伝導性部材58の代わりに、
図10の冷却システム15eは、コンピュータシステム4から冷却装置16に熱を伝達するための熱伝達装置として機能する別個の構成要素を必要としないように構成されている。
【0111】
図10から分かるように、冷却装置16は建物3の屋根の上に配置されている。冷却装置16のハウジング18の第1の部分16は、建物3内に延在し、この第1の部分16が建物3内の高温空気5に曝されるようになっている。
【0112】
冷却システム15eは、建物3内に含まれる空気の対流によって動作する。動作中、建物3の床に配置されたコンピュータシステム4からの熱は、建物3の屋根まで上昇する。冷却装置16のハウジング18は、高温空気5がハウジング18を介してハウジング18内にある第1の液体20に熱を伝えるという点で、熱交換装置25として機能する。冷却装置16に伝達された熱は放散される。このため、高温空気5は冷却されて、建物3の床に降下して戻り、コンピュータシステム4のために熱を吸収することができる。このプロセスが繰り返されることにより、コンピュータシステム4が継続的に冷却される。
【0113】
冷却装置16の建物3内の高温空気5への露出度を変えることにより、冷却システム15eの動作、具体的には放熱能力を変更することができることが理解されよう。換言すれば、冷却装置16のより多くの部分が建物3内に延在し、ハウジング18のより多くの部分が高温空気5と熱接触する場合、冷却装置16はより多くの熱を吸収することになる。冷却装置の相対的な熱露出は、具体的な冷却システム15eの特性に応じて最適化することができるパラメータである。
【0114】
図11は、代替的な冷却システム15fを示し、この冷却システムは、
図2~
図10に示す冷却システム15a、15b、15c、15d、15eと同じ好ましい特徴および任意の特徴を含むことができる。
【0115】
図11の冷却システム15fは、
図7の冷却システム15bと、
図10の冷却システム15dとを組み合わせたものである。
【0116】
図11から分かるように、冷却装置16は、
図10の冷却システム15bと同様に、建物3の屋根の上に配置されている。ハウジング18は、建物3からの高温空気5に曝されている。ハウジング18は、高温空気5から冷却装置16に熱が伝達されるため、熱交換装置として機能する。
【0117】
さらに、冷却システム15fは、流体52が封入された循環ループ6fの形態の熱伝達装置を備える。循環ループ6fの一部は、建物3内に配置され、追加の熱交換装置として機能する。循環ループ6fの流体52は、高温空気5から熱を吸収する。加熱された流体52は、冷却装置16内に導かれ、冷却装置が、加熱された流体52を冷却する
【0118】
冷却システム15fは、高温空気5から冷却装置16に熱を伝達する2つの機構、すなわち対流と循環ループ6fを備える。このため、冷却システム15fは、有利なことに、
図7および
図10の冷却システム15b、15dよりも改善された効率を有する。
【0119】
図12は、代替的な冷却システム15gを示し、この冷却システムは、
図2~
図11に示す冷却システム15a、15b、15c、15d、15e、15fと同じ好ましい特徴および任意の特徴を含むことができる。
【0120】
建物3内に収容されたコンピュータシステム4の熱を冷却装置16に伝達する代わりに、建物3自体が冷却装置16gとなるように構成されている。そのため、熱伝達装置は不要である。建物3には、第1の液体20および第2の液体21が収容されている。コンピュータシステム4および第1の液体20は、建物3の底部に向かって、建物3の第1の部分23に位置し、第2の液体21は、第1の液体20の上方の、ハウジング18の第2の部分24に位置している。コンピュータシステム4は、コンピュータシステム4が第1の液体20内に沈められるため、流体密封ケーシング61を備える。流体密封ケーシング61は、コンピュータシステム4と第1の液体20との間のインターフェースとして機能する。このため、本実施形態では、冷却システム16の熱交換装置25が、流体密封ケーシング61である。建物3は、ロッド32のような複数の独立したエネルギー放散部材31をさらに備える。
【0121】
動作中、建物3は、第1および第2の液体20、21が建物3から漏れないように流体密封されている。建物3は、
図3の冷却装置16と同様に、冷却装置16gとして動作する。第1の液体20は蒸発して気泡45を形成し、それらが建物3内を上昇し、運動エネルギーと熱エネルギーをロッド32に伝達する。ロッド32は、気泡45によって生じる動きを伝達するとともに、第1の端部33から第2の端部34へ、熱エネルギーを伝導し、建物3の外部環境にエネルギーを放散する。
【0122】
有利なことに、コンピュータシステム4が冷却装置16g内に配置されているため、コンピュータシステム4から冷却装置16に熱を伝達する熱伝達装置を必要とせず、その結果、冷却システム15gが簡素化される。
【0123】
図2~
図12の冷却システム15a、15b、15c、15d、15e、15f、15gは、高温空気5を周囲温度、例えば20℃まで冷却することができる。しかしながら、それらの冷却システム15a、15b、15c、15d、15e、15g、15fは、高温空気5を周囲温度20℃未満に冷却することはできない。冷却装置16に入る空気が周囲と同じ温度である場合、冷却装置16内に熱勾配は存在せず、空気から第1の液体20に熱が移動することはない。
【0124】
図13は、代替的な冷却システム15hを示し、この冷却システムは、
図2~
図12に示す冷却システム15a、15b、15c、15d、15e、15f、15gと同じ好ましい特徴および任意の特徴を備えることができる。
【0125】
図13の冷却システム15hは、
図1に示す蒸気圧縮冷却システム1と類似している。しかしながら、
図1とは対照的に、
図13の冷却ループ10hは、凝縮器13の代わりに、冷却装置16hを備える。冷却ループ10hは熱伝達装置である。
【0126】
図13の冷却システム15hは、
図1の冷却装置1と同様に動作する。しかしながら、冷却装置16は、従来の凝縮器13の代わりに、高温の圧縮ガス状の作動流体11を凝縮して液体に戻す。
【0127】
有利なことに、冷却システム15hは、凝縮器に電力を供給する必要なく、高温空気5を周囲温度未満の温度まで冷却することができる。そのため、
図13の冷却システム15hは、当該技術分野で知られている蒸気圧縮冷却システム1よりも運転コストが安く、環境に優しい。
【0128】
図14は、代替的な冷却システム15iを示し、この冷却システムは、
図2~
図13に示す冷却システム15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15hと同じ好ましい特徴および任意の特徴を備えることができる。
【0129】
図14の冷却システム15iは、
図2および
図13の冷却システム15b、15hを組み合わせたものである。
【0130】
図14の冷却システム15iは、循環ループ6iと冷却ループ10iを備える。循環ループ6iと冷却ループ10iはともに熱伝達装置である。循環ファン7iは、建物3からの高温空気5を循環ループ6iを介して蒸発器8に循環させる。しかしながら、
図13の実施形態とは対照的に、高温空気5は、蒸発器8に到達する前に、先ず、冷却装置16iを通して導かれる。高温空気5は、冷却装置16iによって部分的に冷却される。その後、得られた空気は蒸発器8に循環され、そこで冷却ループ10によってさらに冷却される。
【0131】
冷却装置16iは、
図14の冷却ループ10iの一構成要素でもある。そのため、冷却装置16iは、循環ループ6iの高温空気5と冷却ループ10iの作動流体11の両方を冷却する。冷却装置16iは、第1のコイル状パイプ62および第2のコイル状パイプ63の形態の2つの熱交換装置25を備える。第1のコイル状パイプ62は、循環ループ6iの一部を形成し、冷却装置16iを通して高温空気5を導く。第2のコイル状パイプ63は、冷却ループ10iの一部を形成し、冷却装置16iを通して作動流体11を導く。高温空気5と作動流体11は、冷却装置16i内、より一般的には冷却システム15i内で混ざり合わない。
【0132】
冷却装置16iの熱容量は、高温空気5と作動流体11の両方を冷却するのに十分な大きさとなるように最適化されることが理解されよう。より具体的には、冷却装置16iは、
図2および
図13の冷却システム15b、15hと比較して、より大きくすることができ、異なる第1および第2の流体20、21を有することができる。
【0133】
図15は、代替的な冷却システム15jを示し、この冷却システムは、
図2~
図14に示す冷却システム15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15h、15iと同じ好ましい特徴および任意の特徴を備えることができる。
【0134】
図15の冷却システム15jは、作動流体11jを含む密封冷却ループ10jを備える。
図15の実施形態では、作動流体11jが、冷却装置16jの第1の液体20としても機能する。
【0135】
冷却ループ10jは、データセンタ2の建物3内に配置された蒸発器8jを備える。蒸発器8jは、建物3内の高温空気5j(例えば、10℃)から冷却ループ10jの作動流体11jに熱を伝達し、液体から気体への相変化を誘発する。
【0136】
ガス状の作動流体11jは、循環して第1のチャンバ64内に蓄積される。第1のチャンバ64は第2のチャンバ65に流体接続されている。第1および第2のチャンバ64、65の間には、コンプレッサ12jが配置され、その後にリリーフバルブ66が配置されている。コンプレッサ12jは、ガス状の作動流体11jを、例えば40~50℃の温度を有する高温の液体作動流体11jに圧縮する。リリーフバルブ66は、高温の液体作動流体11jを第2のチャンバ65に放出する。リリーフバルブ66は、第2のチャンバ65に流入する高温の液体作動流体11jの流量および圧力を制御する。作動流体11jは、第2のチャンバ65に入る前に圧縮され、熱容量が増大する。
【0137】
第2のチャンバ65は、第2の液体21を含む。第2の液体21は、液体作動流体11jよりも密度が低いが沸点が高い。高温の液体作動流体11jは第2のチャンバ65に入ると、第2の液体21と混ざり合う。高温の液体作動流体11jは、
図2~
図14の第1~第9の実施形態の冷却装置16において説明したように、減圧されてガスになり、第2のチャンバ65を気泡となって上昇し、第2のチャンバ65を通って伸びる独立したエネルギー放散部材31jにエネルギーを放散させる。このため、作動流体11jは、第1の液体20として機能する。
【0138】
ガス状の作動流体11jは、例えば8℃まで冷却される。冷却されたガス状の作動流体11jは、第2のチャンバ65から吸い出され、さらに冷却ループ10jを循環し、そこで別のコンプレッサ12jにより圧縮されて、例えば20℃まで温度が上昇する。コンプレッサ12jは、作動流体11jを冷却ループ10jに沿って循環させるのを補助するポンプとして機能することもできる。圧縮された作動流体11jは、第2のチャンバ65を通って延びるコイル状パイプ26jを通って循環される。コイル状パイプ26は熱交換装置として機能し、圧縮された作動流体11jから第2のチャンバ65内の流体に熱を伝え、それにより作動流体11fをさらに冷却する。
【0139】
冷却された作動流体11f(8℃)は凝縮して液体になり、膨張バルブ14jを介して建物3に戻って循環される。膨張バルブ14jは、冷却された作動流体11fの圧力を下げ、例えば-38℃まで減圧する。低温(-38℃)の非圧縮液体作動流体11fは蒸発器8jに再循環され、そこで熱拡散により高温空気5jから作動流体11jに再び熱が移動する。このサイクルが繰り返されて、建物3の高温空気5jが周囲温度未満に継続的に冷却される。
【0140】
図15の冷却装置16jのハウジング18jは、第1のチャンバ64、第2のチャンバ65およびパイプ17の組合せを含み、冷却ループ10jを形成する。第1の液体20は作動流体11jでもあり、冷却ループ10j全体にわたって位置する。この実施形態は、冷却装置16jのハウジング18jが単一チャンバの形態をとる必要はなく、より一般的には、接続パイプと組み合わせて複数のチャンバを含むことができることを示している。有利なことに、複数のチャンバを含むハウジング18は、特定の冷却システム15のための適切な冷却装置16を設計する際に、より高い柔軟性を提供することができる。
【0141】
さらに、この実施形態は、冷却ループ10jの作動流体11jが、冷却装置16jの第1の液体20としても機能し得ることも示している。有利なことに、これにより、冷却システム15が2つの流体で動作できる場合に、作動流体、第1の液体および第2の液体の3つの流体を含む必要がなくなる。
【0142】
追加的な特徴として、
図15の冷却ループ10jは、分離器67を含むことができる。第2のチャンバ65から吸い上げられた冷却された作動流体11jは、冷却ループ10jに沿ってさらに循環される前に、分離器67を通過する。分離器67は、第2のチャンバ65から出る作動流体11jと混合された残留する第2の液体21を分離する。分離された第2の液体21は、ドレイン68によって第2のチャンバ65内に戻される。分離器67は、第2の液体21が第2のチャンバ65に閉じ込められ、作動流体11jのみが冷却ループ10jに沿って循環することを保証する。
【0143】
分離器67は、冷却ループ10jの別個の構成要素として
図15に示されているが、分離器67は、第2のチャンバ65の出口に配置されたコンプレッサ12jの一体構成要素としての形態をとることもできることが理解されよう。
【0144】
さらに追加的な特徴として、
図15の冷却システム15jは、高温空気5jを蒸発器8j内に引き込んで、蒸発器を通過させる循環ファン7jを含むことができる。代替的には、蒸発器8jは、高温空気5jを蒸発器8jに取り込んで、蒸発器を通過させる一体型の循環ファンを含むことができる。
【0145】
図2~
図15の冷却システム15は、建物3内のデータセンタ2、具体的にはコンピュータシステム4を冷却するものとして説明されている。冷却システム15は、データセンタ2の冷却に限定されるものではなく、熱源や建物などの任意の適切な物体を冷却するために採用され得ることが理解されよう。例えば、冷却システム15は、オフィスビルまたはチルド食品用の冷却室を冷却するために採用することができる。
【0146】
冷却装置の製造方法
図16は、冷却装置16の製造方法のフローチャートを示している。この方法は、ハウジングを提供するステップ(S1001)と、ハウジング内に位置する第1および第2の液体を提供するステップであって、第1の液体が第2の液体よりも密度が高く沸点が低い、ステップ(S1002)と、第1の液体に熱を伝達して第1の液体を蒸発させ、それにより第1の液体の蒸気を形成する熱伝達装置を提供するステップ(S1003)と、ハウジングを通って延びる複数の独立したエネルギー放散部材を提供するステップとを備え、独立したエネルギー放散部材が、第1の液体の蒸気と第2の液体との相互作用によって生じる流体の流れに応じて動き、ハウジングの外部のボリュームに熱を伝達する。
【0147】
さらに、冷却装置16の製造方法は、任意選択的に、データセンタ2などの冷却対象の物体を特性評価するステップを含むことができる。例えば、これには、冷却を行わない場合の物体の温度、冷却を行った場合の物体の目標温度、物体の温度変動性、物体の寸法、形状、組成、位置、アクセス性などの特性を評価することが含まれる。
【0148】
更なる追加として、冷却装置16の製造方法は、任意選択的に、物体の特性を利用して、冷却装置16の最適なパラメータを決定するステップを含むことができる。例えば、この最適化プロセスには、冷却装置16の寸法および形状、第1および第2の液体20、21の量、相対比および化学組成、ロッド32の分布、向き、寸法、デザインおよび材料組成、ペレット47が必要かどうか、凝縮ループ48が必要かどうか、シンク50が必要かどうか、貯蔵タンク51が必要なかどうか、熱交換装置25の形態、例えば複数のコイル状パイプ26が必要かどうか、冷却装置16を冷却システムに組み込む方法を決定することが含まれる。パラメータ依存性の一例として、物体の温度が高いほど、また物体の非冷却温度と物体の所望の冷却温度との差が大きいほど、冷却装置16の必要な冷却能力も大きくなる。第1および第2の液体20、21を選択する際には、熱容量、相対密度、相対沸点などの要素が重要な考慮事項となる。冷却装置16を最適化することは、冷却装置16が確実に動作することができるため、換言すれば、物体が任意の量の第1の液体20を蒸発させるのに十分な熱を提供することになるため、有利である。さらに、最適化により、冷却装置16が効率的に動作することが保証される。
【0149】
冷却システムの製造方法
冷却システム15の製造方法は、上述したように、
図16に示すフローチャートに従って冷却装置16を提供するステップと、冷却対象のデータセンタ2などの物体を提供するステップとを備える。
【0150】
加的または代替的な特徴として、冷却システム15の製造方法は、任意選択的に、熱伝達装置を提供して、物体から冷却装置16に熱を伝達するステップを含むことができる。熱伝達装置は、循環ファン7または伝導性部材58と組み合わせた1または複数の循環ループ6の形態をとることができる。追加的または代替的には、対流により物体から冷却装置16に熱が伝わるように、物体の上方に冷却装置16を配置することができる。
【0151】
更なる追加的または代替的な特徴として、冷却システム15の製造方法は、任意選択的に、冷却ループ10を提供するステップを含むことができる。冷却ループ10は、当該技術分野で知られている熱力学的サイクルを作動させて、作動流体11を周囲温度未満に冷却する。
【0152】
本明細書に開示の冷却システム15は、数多くの利点を有する。各冷却システム15の様々な利点が示されている。全体として、冷却システム15はすべて、受動的に熱を放散する冷却装置16を備える。冷却装置16は、電力を供給することなく動作することができるため、経済的に有利であり、環境にも優しい。
【0153】
有利なことに、冷却装置16は、数多くの冷却システム15に組み込むことができる。例えば、冷却装置16は、循環ループ6内の空気または流体を冷却することができる。さらに、冷却装置16は、凝縮器を交換することにより、蒸気圧縮冷却システムなどの既存の冷却システムに後付けすることができる。さらに、冷却装置16は、循環ループ6と冷却ループ10を含む冷却システム15に適している。冷却装置16は、循環ループ6内の流体と冷却ループ10内の作動流体11の両方を冷却することができる。そのような冷却システム15は、周囲温度より低い温度まで冷却することができる。
【0154】
冷却装置16は、従来の熱力学的サイクルに依存せず、その代わりに、第1の液体20の相変化を利用して、流体の流れを生成し、それに続くロッド32との相互作用により、熱を放散するための代替メカニズムを提供する。冷却装置16は、可動構成要素を最小限に抑え、必要とされる保守の量を減らし、装置の寿命を最大限に延ばすことができる。
【0155】
さらに、冷却装置16は、冷却される様々な物体に適合できるように拡張可能である。そのため、冷却装置の寸法は、所望のサイズおよび結果として生じる費用に適合させることができる。冷却装置16は、最小限の可動構成要素を有する密封された装置であるため、比較的安全である。
【0156】
冷却装置16は、ロッド32、特に伝導性表面39および伝導性突起41を特定の冷却システム15に合わせて最適化できるため、カスタマイズ可能である。
【0157】
冷却装置が開示されている。冷却装置は、ハウジングと、ハウジング内に位置する第1の液体と第2の液体とを備える。第1の液体は、第2の液体よりも密度が高く、沸点が低い。冷却装置は、第1の液体に熱を伝達して第1の液体を蒸発させ、それにより第1の液体の蒸気を形成する熱交換装置をさらに備える。また、冷却装置は、ハウジングを通って延びる複数の独立したエネルギー放散部材も備える。それら部材は、第1の液体の蒸気と第2の液体との相互作用によって生じる流体の流れに応じて動き、ハウジングの外部のボリュームに熱を伝達する。この冷却装置は、最小限の電力で、あるいは電力を消費することなく、物体を冷却することができる。そのため、冷却装置は環境に優しく、運転コストも低い。
【0158】
本明細書を通じて、文脈から明らかにそうでないことが要求されない限り、「comprise」または「include」という用語、または「comprises」または「comprising」、「includes」または「including」などのそれらの変化形は、記載の完全体または完全体群を含むことを意味するが、他の完全体または完全体群の除外を意味するものではないことを理解されたい。さらに、文脈から明らかにそうでないことが要求されない限り、「または」という用語は、排他的ではなく包含的であると解釈される。
【0159】
本発明の上記説明は、例示および説明を目的として提示したものであり、網羅的であること、または開示された正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。記載の実施形態は、本発明の原理およびその実際の応用を最もよく説明し、それによって当業者が、想定される特定の用途に適した様々な実施形態および様々な変更を加えて本発明を最大限に利用できるようにするために、選択および記載されたものである。したがって、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、更なる変更または改良を組み入れることができる。
【国際調査報告】