(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池材料からの金属抽出
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20240326BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20240326BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20240326BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20240326BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240326BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20240326BHJP
C22B 3/46 20060101ALI20240326BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20240326BHJP
C22B 3/26 20060101ALI20240326BHJP
C22B 3/02 20060101ALI20240326BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B23/00 102
C22B26/12
C22B47/00
C22B1/00 601
C22B1/02
C22B3/46
C22B3/04
C22B3/26
C22B3/02
H01M10/54
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023563803
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 FI2021050269
(87)【国際公開番号】W WO2022219222
(87)【国際公開日】2022-10-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523389279
【氏名又は名称】メッツォ フィンランド オーワイ
【氏名又は名称原語表記】Metso Finland Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】トゥオマス ヴァン デル メール
(72)【発明者】
【氏名】マリカ ティーホネン
(72)【発明者】
【氏名】アヌーカ マキネン
(72)【発明者】
【氏名】ニコ イソマキ
(72)【発明者】
【氏名】ロシャン ブダトーキ
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001CA02
4K001CA11
4K001DB30
5H031EE01
5H031EE02
5H031EE03
5H031HH03
5H031HH06
5H031RR02
(57)【要約】
本発明は、リチウムイオン電池の黒色集合体から金属を抽出する方法に関し、黒色集合体は、電池の負極(anode)材料および正極(cathode)材料、ならびに若干の銅を含有し、正極材料はリチウムおよびニッケルを含む。さらに、本発明は、この方法に使用するのに適した設備に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池の黒色集合体から金属を抽出する方法であって、黒色集合体は電池の負極材料および正極材料、ならびに幾分の銅を含有し、また正極材料はリチウムおよびニッケルを含み、該方法は以下のステップ、すなわち、
a)1つ以上の前処理ステップであり、非金属材料の画分が黒色集合体から分離され、負極材料および正極材料を含有する前処理された黒色集合体が回収される、該前処理ステップと、
b)1つ以上浸出ステップであり、前処理された黒色集合体の正極材料が溶解され、溶解された正極材料を含有する浸出溶液が回収される、該浸出ステップと、及び、
c)1つ以上の金属材料の初期画分を浸出溶液から分離し、また少なくともニッケルおよびリチウムを含む主要画分を回収する、金属分離ステップであり、
i)該金属分離ステップは、ニッケルを還元剤として使用する銅のセメンテーションを含み、また浸出溶液のニッケルが回収される前に実施される銅を回収するステップを含み、
ii)ニッケルは銅の回収後、かつリチウムの回収前に回収され、及び
iii)ニッケルは溶媒抽出によって回収される、
該金属分離ステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法で、黒色集合体から金属を抽出するのに使用される該方法において、正極材料はリチウムおよびニッケル、ならびに、随意的に1つ以上のマンガン、コバルトおよびアルミニウムを酸化物の形態として含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法で、金属の形態としての銅を含有する黒色集合体から金属を抽出するのに使用される、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法において、前処理ステップは1つ以上の洗浄または加熱ステップ、もしくはその両方を含み、加熱ステップは好ましくは、熱分解または蒸発をもたらすために実施される、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法において、前処理ステップは、有機化合物などの非金属成分を黒色集合体から分離するために実施され、その結果、有機化合物を3重量%未満、好ましくは1.5重量%未満含有する前処理した黒色集合体となる、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、少なくとも1つの浸出ステップは、追加の酸および1つ以上の浸出試薬とともに操作され、酸は好ましくは塩酸、硝酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、クエン酸、および硫酸から選択され、酸性浸出溶液を生成し、浸出試薬は好ましくは過酸化水素、炭水化物、および二酸化硫黄から選択される、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法において、前記主要画分として少なくともニッケルイオンおよびリチウムイオンを回収するためのステップは、浸出溶液から金属材料の初期画分を分離するための1つ以上のステップに先行する、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法において、金属材料の初期画分には、鉄イオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、フッ化物イオンの少なくとも1つ、および随意的にリン酸イオンが含まれる、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法において、金属材料の初期画分の分離は、溶媒抽出として実施される少なくとも1つのステップを含み、鉄およびアルミニウムなどの不純物を浸出溶液から除去することを目的とし、随意的に固体分離が先行し、すべての固体不純物を除去し、また、溶媒抽出の選択性を高める、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法において、金属材料の初期画分の分離は、沈殿として実施される少なくとも1つのステップを含み、鉄およびアルミニウムなどの不純物、ならびに存在する可能性のあるリン酸塩を浸出溶液から除去することを意図し、好ましくは、溶媒抽出が後続する、方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法において、銅は、金属材料の初期画分の分離前に浸出溶液から回収される、方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法において、銅は、還元剤としてニッケルを使用する前記セメンテーションステップ、またはセメンテーションに続く溶媒抽出によって浸出溶液から回収され、それによって得られた銅を取り除いた溶液は、後続の金属分離ステップに搬送される、方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法において、粉末状の金属ニッケルは、銅のセメンテーションにおいて使用されている、方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法において、浸出溶液および銅セメンテーションの両方に由来するニッケルは、溶媒抽出によって回収され、硫酸ニッケル溶液(NiSO
4)を生成し、好ましくは、カルボン酸官能基を有する抽出化学物質を使用し、好適な抽出化学物質の市販品の一例として、Versatic
TM10が挙げられ、それはネオデカン酸である、方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法において、浸出溶液および銅セメンテーションの両方に由来するニッケルは、硫酸ニッケル溶液を生成する溶媒抽出によって回収され、該溶液はそのまま利用される、あるいはイオン交換および随意的に結晶化などによってさらに精製される、あるいは水酸化物または炭酸塩に沈殿される、方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法において、金属分離ステップは、銅を取り除いた浸出溶液からコバルトを回収するステップを含み、コバルトの回収は、ニッケルの回収と同時または直前に、好ましくはニッケルの回収の直前に実施される、方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法において、金属分離ステップは、銅を取り除いた浸出溶液からコバルトを回収するステップを含み、コバルトの回収は、硫酸コバルト溶液(CoSO
4)を生成する溶媒抽出によって行われ、好ましくは、ホスフィン酸官能基のようなカルボン酸官能基を有する抽出化学物質を使用し、好適な抽出化学物質の一例は、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィネートとしても知られるCyanex
TM272である、方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法において、金属分離ステップは、銅を取り除いた浸出溶液からコバルトを回収するステップを含み、コバルトの回収は、硫酸コバルト溶液を生成する溶媒抽出によって行われ、該溶液はそのまま利用される、あるいはイオン交換および随意的に結晶化などによってさらに精製される、あるいは水酸化物や炭酸塩に沈殿される、方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法において、リチウムは、浸出溶液中に存在するマンガン、コバルト、ニッケルの回収がすべて実施された後に回収され、リチウムは、例えばリチウムを炭酸塩またはリン酸塩試薬と反応させることによって回収され、随意的に、さらなる変換、蒸発または結晶化が後続する、方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法において、金属分離ステップは、銅を取り除いた浸出溶液からマンガンを回収するステップを含み、該ステップは銅分離の後に実施され、好ましくはニッケルまたはコバルトのいかなる回収が行われる前、より好ましくはコバルト、ニッケルまたはリチウムのいかなる回収が行われる前に実施され、マンガンの回収は、例えば溶媒抽出または沈殿によって、または溶媒抽出に続く沈殿によって実施される、方法。
【請求項21】
リチウムイオン電池の黒色集合体から金属を抽出するため、電池の負極材料および正極材料を含有し、正極材料はリチウムおよびニッケルを含む、前記黒色集合体から金属を抽出する設備であって、
- 黒色集合体から非金属成分の画分を分離し、負極材料および正極材料を含有する前処理された黒色集合体を回収するための1つ以上の前処理ユニット(1)と、
- 前処理された黒色集合体の正極材料を溶解し、前記溶解した正極材料を含有する浸出溶液を回収するための1つ以上の浸出ユニット(2)と、
- 浸出溶液から1つ以上の金属材料の初期画分を分離し、少なくともニッケルおよびリチウムを含む主要画分を回収するための金属分離ユニット(3)であり、
・該金属分離ユニット(3)は、さらにセメンテーションユニットを含むまたはから成る銅分離ユニット(31)を含み、銅分離ユニット(31)は、ニッケル注入口(311)を装備し、またニッケル回収を意図するすべてのユニット(35)の上流に位置し、
・ニッケルを回収するための該ユニット(35)は、銅分離ユニット(31)の下流であって、リチウム回収ユニット(36)の上流に位置し、及び
・ニッケルを回収するための該ユニット(35)は、溶媒抽出のためのサブユニットを含むものである、
該金属分離ユニット(3)と、
を備える、設備。
【請求項22】
請求項21に記載の設備において、前処理ユニット(1)は、黒色集合体から有機化合物などの非金属成分を除去するための洗浄ユニット(11)または加熱ユニット(12)、あるいはその両方を含み、加熱ユニット(12)は、好ましくは熱分解ユニットまたは蒸発ユニットから選択される、設備。
【請求項23】
請求項21または22に記載の設備において、金属分離ユニット(3)は、少なくともニッケルイオンおよびリチウムイオンを回収するためのユニット(35、36)、ならびに場合によりマンガンイオンおよびコバルトイオンを回収するためのさらなるユニット(33、34)を含み、すべての回収ユニット(33、34、35、36)は、好ましくは、浸出溶液から金属材料の初期画分を分離するための1つ以上のユニット(32)の下流に配置され、最も好適には、少なくとも1つの溶媒抽出ユニットを含む、設備。
【請求項24】
請求項21~23のいずれか一項に記載の設備において、銅分離ユニット(31)は、浸出溶液から初期金属画分を分離するためのユニット(32)の上流に位置する、設備。
【請求項25】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法であり、請求項21~24のいずれかに記載の設備を用いて実施される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池材料、特に、前記電池材料から得られる黒色集合体から金属を抽出する方法に関し、該黒色集合体は、正極(cathode)金属および負極(anode)材料、ならびに電池構成要素に由来する銅を含有し、正極金属は通常、リチウムおよびニッケルを含み、さらに場合によってあり得る正極金属はコバルト、マンガン、およびアルミニウムである。本発明はまた、この方法に使用するのに適した設備(arrangement)に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の使用は、ここ数年、さらには数十年にわたり着実に伸びてきており、新しい電気自動車の開発が進むにつれて、その重要性はさらに高まるものとみられる。
【0003】
このようなリチウムイオン電池は、それらの正極(cathode)に、電池内での再利用または他の目的のためにこれらの電池から回収された場合、有用なものとなり得るいくつかの遷移金属を含有する。正極材料を他の電池構成要素から分離することは、通常、電池材料から銅フォイルのような固体を機械的に除去することから始まり、電解質をさらに除去するための洗浄ステップに続く。残りの正極材料および負極材料は、いわゆる黒色集合体を形成し、この黒色集合体は所望の個別金属を回収するための湿式精錬分離プロセスによる処理に適している。
【0004】
しかし、機械的分離は完全には選択的ではなく、銅の画分(例えば、前記銅フォイルからの)が最後には黒色集合体になり、湿式精錬分離プロセスが正極の遷移金属を可溶化するための浸出ステップに関わるとき、銅もまた溶解する。この銅画分は通常、純銅製品としての回収に関心が高まるのに十分大きいものである。
【0005】
溶液からの銅の除去は重要であるが、それは、溶液中に残っている銅は、遷移金属の生成物画分に不純物として含まれることになるからである。しかし、銅を効果的に除去することは難しい。
【0006】
銅(Cu)回収のための最も典型的なアプローチは溶媒抽出であり、これはCuを濃硫酸Cu溶液に選択的に回収することができ、その後電解採取によってCu正極のような新しいCu製品に作り替えることができる。しかし、このアプローチは複雑で、プロセス材料供給に過剰な化学物質をもたらし、必要な投資額を大幅に増加させる。
【0007】
よりシンプルでコスト効率のよいアプローチで、より純度の高い金属製品を得るには、銅のセメンテーションを利用するのがよく、これは銅を回収するためのよく知られた、そしてさらに選択的な方法である。しかし、極めて込み入った金属混合物を形成する可能性があり、電池材料からの金属回収にはほとんど使用されていない。
【0008】
従って、正極および他の金属の複雑な混合物から、選択した金属を個別に、かつ純粋な形で効率的に回収するための新しい技術が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの具体的な実施形態は従属請求項に定義されている。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、リチウムイオン電池材料から得られる黒色集合体から金属を抽出する方法が提供され、黒色集合体は、電池の負極材料および正極材料、ならびに銅金属を含有する。抽出および回収される金属には、銅のほか、リチウムおよびニッケルなどの電池正極からの遷移金属を含み、ならびに場合によってはコバルトおよびマンガンの一方または両方が含まれる可能性がる。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、黒色集合体から金属を抽出する方法が提供され、該方法は、黒色集合体の所望の金属の可溶化を経て進行し、次いで、得られた溶液からそのような可溶化した金属画分を、さらなる可溶化金属画分とともに回収する。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、残りの溶液から効率的に分離できる試薬によるセメンテーションを使用することで、可溶化した正極材料を含有する得られた溶液から、銅画分の回収を介して進行する方法が提供される。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の方法のステップを実施する際に使用するのに適した設備が提供される。
【0014】
本発明の方法は、以下のステップ、すなわち、
- 1つ以上の浸出ステップと、及び、
- 通常、銅画分、ならびにリチウムおよびニッケルイオンを含む画分など、浸出溶液から所望の金属を回収するために必要な金属分離ステップ、ニッケルを還元剤として使用する銅セメンテーションを含む銅回収ステップと、
を備える。
【0015】
同様に、上述した方法を使用するのに適した本発明の設備は、
- 1つ以上の浸出ユニットであり、そこから溶解した正極材料を含有する浸出溶液が回収される、該浸出ユニットと、及び、
- 金属分離ユニットであり、そこから銅、ならび、リチウムおよびニッケルイオンを含有する画分が回収され、銅の回収にはセメンテーションユニットが含まれる、該金属分離ユニットと、
を備える。
【0016】
したがって、本発明は、不純物、ならびにCuに加えて少なくともニッケル(Ni)を含む金属イオンの混合物を含有する溶液からの銅(Cu)の回収に基づいている。
【0017】
銅の回収の少なくとも一部はセメンテーションによって行われ、その結果、溶液中のCuがNiで置換され、溶液の成分から容易に分離できるCu金属製品が得られる。セメンテーション反応は、ニッケル試薬の還元電位が銅の還元電位(0.34V)よりも高い、もしくはよりマイナスの還元電位(-0.25V)であることに基づく。ニッケル試薬の選択性は、同様に、浸出溶液中に存在する他の元素、例えばリチウム(-3.04V)、または場合によってはコバルト(-0.28V)、マンガン(-1.19V)、またはアルミニウム(-1.66V)の還元電位が、ニッケル試薬の還元電位よりも負側であり、これらの他の元素は還元されないという事実に一部基づいている。
【0018】
本発明はいくつかの利点を提供する。とりわけ、本発明者らは、セメンテーションに必要なプロセス構成は、例えば電池リサイクル用途で一般的に使用される溶媒抽出に続く電解採取と比較して、Liイオン電池から得られる黒色集合体の浸出溶液からの銅を回収するための、著しく単純で、したがって、より費用対効果の高い解決策であることを見出した。このような単純なプロセス構成は、リチウムイオン電池材料のような複雑な材料混合物を処理する場合に特に有利である。
【0019】
さらに、セメンテーションは、浸出溶液を更なる化学物質で汚染することなく、溶液中の更なる金属、この場合はニッケルの含有量を単に増加させることで、銅を回収する手順を導入し、該更なる金属はその後別々に回収することができる。更なる化学物質の添加がないため、浸出溶液の他の金属を個別に回収できる可能性もある。
【0020】
このような効率的な銅の回収を利用することは、黒色集合体からの金属回収のための選択的な全体プロセスにもつながり、個々の金属製品を高収率および高純度で提供することになる。こうして銅のセメンテーションは、高純度の金属製品となる相乗効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2A】本発明の実施形態による設備のユニットを示す図。
【
図2B】本発明の実施形態による設備のユニットを示す図。
【
図3】本発明の実施形態による設備のユニットを示す図。
【
図4】本発明の実施形態による設備のユニットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[定義]
本明細書において、「黒色集合体(“black mass”)」という用語は、電池のマクロ成分を機械的に分離した後に得られる正極材料および負極材料の混合物を表すことを意図し、黒色集合体はまた、とりわけ電池の銅フォイルに由来する金属形態の銅、および、電池の電解液に由来する化合物等の、黒色集合体の前処理方法に依存する有機化合物も含有する。
【0023】
「有機化合物(“Organic compounds”)」は、本明細書では分子を包含することを意図し、1つ以上の炭素原子が1つ以上の水素、酸素または窒素原子と共有結合的に結合している。したがって、例えばグラファイトまたはその他の純炭素の同素体は、この化合物群から除外される。定義を満たしているにもかかわらず、この化合物のクラスから除外されると一般的に考えられている他の化合物には、化合物の唯一の炭素がこのグループに基づく場合、炭酸塩およびシアン化物、ならびに二酸化炭素が含まれる。
【0024】
「負極(“anode”)」は通常、主にグラファイトまたはシリコンで形成され、これらは本発明の浸出では可溶化されないが、浸出前の黒色集合体には存在する。
【0025】
「正極材料(“cathode material”)」または「正極金属(“cathode metals”)」は同様に、リチウム、ニッケル、コバルト、およびマンガン(Li、Ni、Co、Mn)などの金属イオンを包含し、典型的にはそれらの酸化物の形態である。黒色集合体中のこれらの金属の含有量は、好ましくはすべて1~35重量%の範囲内である。黒色集合体中に存在し得るが、一般的にはより少量の正極成分の他の例としては、スズ、ジルコニウム、亜鉛、銅、鉄、フッ化物、リン、アルミニウム(すなわちSn、Zr、Zn、Cu、Fe、F、P、および、Al)などが挙げられる。
【0026】
本発明は、リチウムイオン電池材料の黒色集合体から金属を抽出する方法に関する。この方法は以下のステップ、すなわち、
(a) 1つ以上の前処理ステップであり、非金属材料の画分が黒色集合体から分離され、負極材料および正極材料を含有する前処理された黒色集合体が回収され、好ましくは浸出によってさらに処理される、該前処理ステップと、
(b) 1つ以上の浸出ステップであり、前処理された黒色集合体の正極材料が溶解され、溶解された正極材料を含有する浸出溶液が回収され、好ましくはそこから金属画分を分離することによってさらに処理される、該浸出ステップと、及び、
(c) 金属材料の1つ以上の初期画分を浸出溶液から分離し、また少なくともニッケルおよびリチウムを含む主要な画分を回収する金属分離ステップであり、
(i) 該金属分離ステップは、ニッケルを還元剤として使用する銅のセメンテーションを含み、また浸出溶液のニッケルが回収される前に実施される、銅を回収するステップを含み、
(ii) ニッケルは、銅の回収後、かつ、リチウムの回収前に回収され、及び
(iii) ニッケルは溶媒抽出によって回収されるものである、
該金属分離ステップと、
を備える。
【0027】
リチウムイオン電池の黒色集合体は通常、正極材料および負極材料の両方、ならびに幾分の銅および有機化合物を含む電解質材料を含有する。有機化合物は、好ましくは上記の前処理ステップで除去される。それぞれが好ましくは、電池材料を水または有機溶媒、最も好適には水と混合することによって実施される、1つ以上の洗浄ステップを用いることができ、前記有機化合物のような前記溶媒に溶解または分散している材料を、黒色集合体の未溶解成分から分離することができる。あるいは、典型的には熱分解または蒸発ステップとして実施される、1つ以上の加熱ステップは有機化合物を除去するために使用することができ、各該加熱ステップは好ましくは195~470℃の温度で実施される。また、洗浄ステップおよび加熱手順の両方を行うことも1つの選択肢である。
【0028】
こうして、前処理ステップは、好ましくは電池正極のリチウムおよびニッケル、そして場合によってはマンガンおよびコバルトを酸化物の形態で、ならびに残存する金属銅を含有し、より好ましくは<3重量%、最も好適には<1.5重量%の有機化合物を含有する、前処理された黒色集合体をもたらす。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、随意的な洗浄ステップで通常失われるリチウムの少なくとも一部は、以下のステップ、すなわち、
・残りの固体から分離され、分離された非金属材料の画分を含有する使用済みの洗浄液をリン酸塩試薬と反応させて、その中のリチウムをリン酸リチウムに沈殿させるステップと、及び、
・残りの洗浄液からリン酸リチウム沈殿物を分離し、また次の浸出ステップに搬送される前処理済みの黒色集合体と組み合わせるステップと、
によって、回収される。
【0030】
前処理ステップの後、通常固液分離が行われ、それにより前処理された黒色集合体は次の浸出ステップに搬送され、随意的に、前処理ステップまたは金属回収ステップのいずれかからリサイクルされたリン酸リチウム沈殿物のような、添加された金属含有固体またはスラリーと混合され得る。
【0031】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの浸出ステップは、酸および1つ以上の浸出試薬を添加して操作される。通常、浸出ステップは1回のみ使用され、これは前記酸浸出ステップである。酸浸出は、好ましくは、前処理した黒色集合体は酸を含有する溶液に分散させ、随意的な抽出材を添加し、そして好ましくは次に混合することによって実施される。
【0032】
浸出ステップで使用される酸は、好ましくは塩酸、硝酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、クエン酸、および硫酸から選択され、そして酸性の浸出溶液を作る。さらに、浸出は、好ましくは、1つ以上の浸出試薬または抽出剤、より好ましくは、過酸化水素、炭水化物および二酸化硫黄から選択されるそれらの還元能力の存在下で行われ、より効果的な溶解を提供する。
【0033】
浸出ステップ中の温度は、好ましくは調節可能であり、それにより、最も好適には、温度は、酸浸出中、高いレベルに維持され、例えば、50℃以上の温度、好ましくは50~95℃の温度、そしてより好ましくは60~90℃の温度である。同様に、酸浸出中の圧力は、好ましくは大気圧、または100~200kPaのわずかに高い圧力に維持される。通常、目的の遷移金属の可溶化は2~6時間以内に完了する。
【0034】
浸出反応が完了した後、すなわち前処理された黒色集合体が浸出条件下で十分な時間、例えば2~6時間を経過した後、正極金属を含有する浸出溶液を回収するために、通常、固液分離が実施され、これにより、別個の金属画分を回収するために、方法の次のステップに搬送できる。
【0035】
本発明の一実施形態では、前記主要画分として、少なくともニッケルイオンおよびリチウムイオンを回収するためのステップは、浸出溶液から金属材料の初期画分(または「初期金属画分(“initial metallic fractions”)」)を分離するための1つ以上のステップに先行し、前記金属材料の初期画分は、鉄、アルミニウム、カルシウムイオンおよびフッ化物イオンのうちの少なくとも1つ、ならびに場合によってあり得るリン酸塩を含む。このステップの順序は、金属材料の主要画分の回収のために精製溶液を得るという利点があり、これは、初期画分が不純物に属すると考えられる物質を含むためである。これらの物質もまた、浸出溶液中に残っていれば、その後の主要画分の回収を損なうか、または、少なくとも純度もしくは収率が低下する。
【0036】
代表的には、金属材料の初期画分の分離は、溶媒抽出(SX)として実施される少なくとも1つのステップを含み、これは鉄およびアルミニウムなどの前記不純物を浸出溶液から除去することを意図しており、随意的に固体分離が先行し、すでに固体形態にある不純物を除去し、したがって、溶媒抽出の選択性および性能が向上する。
【0037】
別の代替案では、金属材料の初期画分の分離は、沈殿として実施される少なくとも1つのステップ、例えば、鉄およびアルミニウムなどの不純物、ならびに可能性のあるリン酸塩を固体画分として浸出溶液から除去することを目的とした水酸化物沈殿、を含む。
【0038】
特に好ましい代替案では、金属材料の初期画分の分離は沈殿を含み、随意的に沈殿した不純物の分離、続いて溶媒抽出を伴うが、両ステップとも上記の通りである。このような2段階の不純物分離の利点は、鉄およびアルミニウムなどの不純物の含有量がこうして精製された浸出溶液中でさらに減少することである。このような初期金属画分の2段階分離では、溶媒抽出の前に沈殿を行うことが特に好ましく、これにより溶媒抽出における高い選択性が容易になるからである。
【0039】
銅の回収ステップは、他の任意の金属分離ステップの前に、つまり金属材料の初期画分の分離の前に行うのが好ましく、というのも、銅はその後の分離および回収に悪影響を及ぼし、銅自体もこれらのステップの途中で失われる可能性があるためである。同様に、銅の回収に利用されるセメンテーションは選択的な反応であり、不純物が存在しても純粋な銅製品が産出されるため、銅の回収が行われる前に浸出溶液を精製する必要がない。
【0040】
少なくとも1つの浸出ステップは酸性条件下で実施されているため、銅の回収も好ましくは前記条件に耐える。
【0041】
浸出溶液からの銅の回収は、典型的には、還元剤としてニッケルを使用する前記セメンテーションステップによって、または、溶媒抽出の後に前記セメンテーションを行うことによって実施され、それによって、得られた銅を取り除いた溶液は、次の金属分離ステップに搬送される。セメンテーションに使用されるニッケルは、通常、粉末状の金属ニッケルである。セメンテーション中に起こる反応(1)はすなわち、
(1)Cu2+(aq)+Ni0(s)→Cu0(s)+Ni2+(aq)
である。
【0042】
こうして、セメンテーション反応は銅を固体の形状でもたらし、通常は粉末として回収される。得られた銅粉末は、回収後、溶液から分離され、場合によっては沈殿させ、続いて母液を除去するための洗浄ステップを含むことができる濾過をすることが好ましい。
【0043】
上述したように、セメンテーションは、遷移金属含有溶液を更なる化学物質で汚染することなく、しかし溶液中の選択された金属、この場合はニッケルの含有量を単に増加させることによって、銅を回収する手順を導入するという利点を有し、この選択された金属は、その後、別々に回収することができる。この選択された金属であるニッケルは、すでに黒色集合体中、および、その後浸出溶液中にも存在するため、方法全体にこれ以上のステップを加えることはない。この手順は、単に回収されるニッケルの量を増やすだけである。
【0044】
随意的にセメンテーションと組み合わせる溶媒抽出は、回収される銅の収率を高めるというさらなる利点があり、そのため、次の金属回収に持ち込まれる溶液中には、取るに足らないレベルの銅不純物しか残らない。その結果、続いて回収される金属の純度が高くなる。
【0045】
残りの金属の分離および回収を行うために、さらなる浸出または洗浄ステップ、溶媒抽出、沈殿、イオン交換ステップ、および電解採取ステップなど、さまざまな反応および手順を利用することができる。しかしながら、上述のように、金属材料の初期画分の分離には少なくとも1回の溶媒抽出を利用することが好ましく、というのも、その結果残りの溶液の純度が高くなり、従って、その後の主要画分の回収、特にコバルトおよびニッケルの回収も容易になり、これにより、主要画分の全ての金属を高収率かつ高純度で、典型的には電池グレードの材料として回収することができるからである。
【0046】
上述したように、金属の主要画分の回収には、少なくともニッケルを回収するステップが含まれ、なぜなら、セメンテーションステップでは、銅を取り除いた浸出溶液にさらにニッケルが添加されており、その結果、ニッケルは前記溶液中に増加した含有量で存在するからである。主な画分の他の金属には、前述のようにリチウム、そしておそらくコバルトおよびマンガンが含まれる。
【0047】
こうしてニッケルは銅を取り除いた浸出溶液から回収され、ニッケルの回収は従って、銅の回収よりも方法の後の段階で、そしてまた最初の金属画分の分離よりも後の段階で行われる。
【0048】
このニッケル回収は、好ましくはコバルトの随意的な回収と同時またはその直後、より好ましくはコバルトが回収された後、かつ最も好適にはいかなるリチウムが回収される前、に行われる。通常、このニッケル回収は、随意的なマンガンの回収よりも後の段階でも行われる。
【0049】
前記ニッケル回収は、例えば、溶媒抽出(SX)を用いて実施することができ、これは、かなり純粋な硫酸ニッケル溶液(NiSO4)を生成する。この溶液は、随意的に、例えばイオン交換(IX)によりさらに精製され、その後、結晶化、または水酸化物もしくは炭酸塩への沈殿が実施され得る、または硫酸塩溶液は、例えば新しい正極材料の調製において、結晶化または沈殿することなく、そのまま使用され得る。ニッケル回収のための随意的な溶媒抽出は、カルボン酸官能基を有する抽出化学物質を用いて行うのが最も好適であり、好適な抽出化学物質の市販品の一例としてVersaticTM 10が挙げられ、それはネオデカン酸である。
【0050】
本発明の一実施形態では、金属分離ステップは、銅が取り除かれた浸出溶液からコバルトを回収するステップも含み、コバルト回収は、このように銅の回収よりも後の段階で、そしてまた、最初の金属画分の分離よりも後の段階で実施される。
【0051】
コバルト回収は、好ましくはニッケルの回収と同時又はその直前、より好ましくはニッケルが回収される前、そしてまた、最も好適には、いかなるリチウムが回収される前、に行われる。通常、このコバルト回収は、しかしながら、随意的なマンガン回収の後の段階で行われる。
【0052】
前記コバルト回収のための好ましい選択肢は、溶媒抽出(SX)であり、これはかなり純粋な硫酸コバルト溶液(CoSO4)を生成する。この溶液は、随意的に、例えばイオン交換(IX)によりさらに精製され、その後、結晶化、または水酸化物もしくは炭酸塩への沈殿が実施され得る、または硫酸塩溶液は、例えば新しい正極材料の調製において、結晶化または沈殿することなく、そのまま使用され得る。コバルト回収のための随意的な溶媒抽出は、ホスフィン酸官能基のようなカルボン酸官能基を有する抽出化学物質を用いて最も好適に実施され、好適な抽出化学物質の一例は、CyanexTM 272であり、これはトリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィネートとしても知られる。
【0053】
本発明のさらなる実施態様では、金属分離ステップは、銅が取り除かれた浸出溶液からマンガンを回収するステップを含み、マンガンの回収は、このように銅の回収よりも方法の後の段階で、そしてまた初期金属画分の分離よりも後の段階で実施される。
【0054】
マンガン回収は、好ましくはニッケルまたはコバルトが回収される前、そして最も好適には、いかなるニッケル、コバルトおよびリチウムが回収される前に行われる。
【0055】
前記マンガン回収の選択肢として、溶媒抽出および沈殿、または溶媒抽出とその後の沈殿、が挙げられる。特に好ましい選択肢の1つは、二酸化硫黄(SO2)および空気を用いた酸化沈殿を利用して、酸化マンガン(MnO2)を形成することである。
【0056】
本発明のさらなる実施態様では、金属分離ステップは、銅が取り除かれた浸出溶液からリチウムを回収するステップを含み、リチウム回収は、このように銅回収よりも方法の後の段階で、そしてまた初期金属画分の分離よりも後の段階で実施される。
【0057】
好ましくは、リチウム回収は、浸出液中に存在するマンガン、コバルト、ニッケルのいずれかが回収された後に実施される。この好ましいステップ順序を用いることで、高純度のリチウム含有溶液からリチウムを回収できる状況になる。
【0058】
通常、リチウムは、リチウムをその炭酸塩またはリン酸塩と反応させることによって回収され、そのまま回収が可能な生成物画分を生成する、または、代わりにさらに水酸化リチウムなどに変換して、純粋な水酸化物結晶に結晶化することもできる。
【0059】
リチウム回収のためのさらなる選択肢は、溶媒抽出を使用することであり、その後、さらなる変換または結晶化を実施することができる。この手順の利点は、より高いリチウムの回収率である。
【0060】
本発明の一実施形態では、リチウムはその炭酸塩に回収され、固体/液体分離によって回収できる生成物画分を生成し、そして、固体生成物画分はそのように回収されるか、あるいはその代わりに、例えば水酸化リチウムにさらに変換される。液体画分は、その結果、さらにリン酸塩試薬、場合によっては別の沈殿試薬と反応させることができ、そのため、そこに残ったリチウムをリン酸リチウム沈殿物に沈殿させる原因となる。この沈殿物は、炭酸塩またはリン酸塩生成物画分と組み合わせるなどしてリチウム回収に持ち込むか、または、前処理した黒色集合体と混ぜ合わせて浸出ステップに再利用することができる。さらなる選択肢は、沈殿物の一部をこれらステップのそれぞれに搬送することである。
【0061】
上記で使用されるリン酸塩試薬は、アルカリ金属または土類アルカリ金属の任意のリン酸塩から選択することができる。しかし、リン酸ナトリウム(Na3PO4)が好ましく、なぜなら、反応混合物に新たな陽イオンをもたらさず、そして適切な反応性を有するためである。
【0062】
随意的な沈殿試薬は、好ましくは、水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤から選択され、溶液のpHを上昇させることにより機能し、その結果、所望のリン酸リチウムの沈殿を容易にする。
【0063】
本発明の方法は、方法のステップを実施するのに必要なユニットおよび機器を備えた、任意の適切な装置または設備で実施することができる。
【0064】
本発明はさらに、上述の方法を使用するのに適した設備に関する。前記設備は以下のユニット(
図1参照)、すなわち、
- 黒色集合体から非金属成分の画分を分離し、負極材料および正極材料を含有する前処理した黒色集合体を回収するための1つ以上の前処理ユニット1であり、好ましくは、下流の浸出ユニット2に適切な接続部を介して導かれることを意図している、該前処理ユニット1と、
- 前処理した黒色集合体の正極材料を溶解し、前記溶解した正極材料を含有する浸出溶液を回収するための1つ以上の浸出ユニット2であり、好ましくは、下流の分離ユニット3に適切な接続部を介して導かれることを意図している、該浸出ユニット2と、
- 浸出溶液から1つ以上の金属材料の初期画分を分離し、少なくともニッケルおよびリチウムを含む主要画分を回収するための金属分離ユニット3であって、
・該金属分離ユニット3は、さらにセメンテーションユニットを含むまたはから成る銅分離ユニット31を含み、銅分離ユニット31は、ニッケル入口311を装備し、またニッケル回収を意図するすべてのユニット35の上流に位置し、
・ニッケル回収のためのユニット35は、銅分離ユニット31の下流で、かつ、リチウム回収ユニット36の上流に位置し、及び
・ニッケル回収のためのユニット35は、溶媒抽出のためのサブユニットを含むものである、
該金属分離ユニット3と、
を備える。
【0065】
図2Aおよび
図2Bに示す様々な選択肢を有する本発明の一実施形態では、前処理ユニット1は、黒色集合体から有機化合物などの非金属成分を除去するための洗浄ユニット11または加熱ユニット12、あるいはその両方を含み、加熱ユニット12は、最も好適には、熱分解ユニット121または蒸発ユニット122から選択される。随意的な洗浄ユニット11は、好ましくはさらに水注入口を備えている。
【0066】
浸出ユニット2は、代表的には前記酸浸出ユニット21で構成され、該酸浸出ユニット21は、酸および随意的な抽出剤のための必要な入口211、ならびに好ましくは、
図3および
図4に示すように、加熱または冷却のいずれかを組み込むことができる温度調節のための手段212を備えている。
【0067】
金属分離ユニット3は、好ましくは複数のサブユニットを含み、すべてのサブユニットは、代表的にはそれらが意図する反応を実施するために必要なさらなるサブユニット、入口および出口を備えている。銅、ニッケル、リチウムをそれぞれ回収するためのユニット31、35、36に加えて、
図4に示すように、他の分離および回収ユニットも金属分離ユニット3に含めることができる。
【0068】
好ましくは、少なくともニッケルイオンおよびリチウムイオン、ならびに場合によってはコバルトイオンおよびマンガンイオンを含む金属材料の主要画分を回収するための1つ以上のユニット33、34、35、36は、浸出溶液から金属材料の初期画分を分離するための1つ以上ユニット32に先行する。
【0069】
好ましくは、銅分離ユニット31は、初期金属画分を分離するための前記ユニット32の上流に配置され、後者のユニット32は、最も好適には、少なくとも1つの溶媒抽出ユニットを含む。
【0070】
銅分離ユニット31から得られた銅粉末は、代表的には、回収後に溶液から分離される。この目的のため、設備は、好ましくは、粉末を沈降させるサブユニット、および、それに続く固液分離サブユニット、例えば清澄器、ハイドロサイクロン、デカンターまたはフィルター、あるいはこれらのうちの1つ以上、を含む。
【0071】
前記分離および回収を実施するために、様々なタイプの機器、さらなる浸出または洗浄ユニット、溶媒抽出ユニット、沈殿ユニット、イオン交換ユニット、および電解採取ユニットを利用することができる。しかし、溶媒抽出ユニットが好ましい。特に、初期金属画分の分離のために、少なくとも1つの溶媒抽出ユニットを利用することが好ましい。より好ましくは、溶媒抽出ユニットには固体分離ユニットが前置され、この固体分離ユニットには、そのような不純物の沈殿ユニットが前置される。
【0072】
したがって、主要画分を回収するためのユニット33、34、35、36は、少なくともニッケルイオンおよびリチウムイオンを回収するためのユニット35、36、ならびに場合によってはマンガンイオンおよびコバルトイオンを回収するための別個のサブユニット33、34を含む。
【0073】
ニッケルおよびコバルトを回収するためのユニット34、35は、組み合わされているか、別々であるかのどちらかであり、好ましくは別々であり、コバルト回収ユニット34がニッケル回収ユニット35の上流にあり、このように、個々の純粋金属生成物を得るのに必要な機器を設ける。
【0074】
ニッケルおよびコバルトを回収するための前記ユニット34、35は、好ましくは溶媒抽出ユニットを含み、より好ましくは結晶化ユニットに接続され、純粋な生成物結晶を生成する。
【0075】
リチウムを回収するためのユニット36は、今度は、好ましくは、他のすべての金属分離ユニット31、32、33、34、35の下流に配置され、通常、リチウムを高収率で回収できる形態に変換するための1つまたは2つのサブユニットを含む。
【0076】
随意的なマンガン回収ユニット33は、好ましくは、コバルト、ニッケル、およびリチウムを回収するためのユニット34、35、36の上流に配置され、通常、溶媒抽出サブユニットおよび沈殿サブユニットの一方または両方を含む。
【0077】
上述した実施形態の設備が、本発明の方法における使用に適するように構成されていることが特に好ましい。
【0078】
開示された本発明の実施形態は、本明細書に開示された特定の構造、プロセスステップ、または材料に限定されるものではなく、関連技術分野における通常の当業者によって認識されるであろう、それらの等価物に拡張されることを理解されたい。また、本明細書で採用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみに使用され、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0079】
本明細書全体を通して、一実施形態または実施形態への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な箇所で「一実施形態において(“in one embodiment”)」または「或る実施形態において(“in an embodiment”)」という表現が現れるが、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。例えば、約(“about”)または実質的に/ほぼ(“substantially”)などの用語を用いて数値に言及する場合は、正確な数値も開示される。
【0080】
本明細書で使用される場合、複数の項目、構造要素、構成要素、および/または材料は、便宜上、共通のリストで示されることがある。しかし、これらのリストは、リストの各メンバーがそれぞれ別個のユニークなメンバーとして個別に識別されているかのように解釈されるべきである。加えて、本発明の様々な実施形態および実施例が、その様々な構成要素の代替案とともに本明細書で言及される場合がある。このような実施形態、実施例、および代替案は、互いの事実上の等価物と解釈されるものではなく、本発明の別個の自律的な表現とみなされるものであることが理解される。
【0081】
さらなる特徴として、記載された、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0082】
上述した実施例は、1つ以上の特定の用途における本発明の原理を例示するものであるが、形態、使用法および実施の細部における多数の変更が、発明能力を行使することなく、そして本発明の原理および概念から逸脱することなくなされ得ることは、当業者には明らかであろう。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本方法、および前記方法の使用に適する設備は、リチウムイオン電池から得られる黒色集合体から金属を回収するための従来の代替手段に取って代わることができる。
【0084】
特に、本発明の方法および設備は、このような電池材料から、銅、ニッケル、およびリチウム、そして場合によってはコバルトおよびマンガンを良好な収率で回収するための、経済的で効率的な手順を提供する。
【符号の説明】
【0085】
図(
図1~
図4参照)に示すように、本発明の1つ以上の実施形態に従って、以下のユニットおよび概形を本発明の設備に含めることができる。すなわち、
1 前処理ユニットで、以下を含む、または以下のものから構成される、すなわち、
11 洗浄ユニット
12 加熱ユニット、例えば以下の形式、すなわち、
121 熱分解サブユニット
122 蒸発サブユニット
2 浸出ユニットで、通常、固液分離ユニットを有し、
浸出ユニットで、以下を含む、または以下のものから構成される、すなわち、
21 酸浸出ユニットで、以下を含む、すなわち、
211 酸またはさらなる浸出試薬の注入口
212 温度調整手段
3 金属分離ユニットで、以下を含む、すなわち、
31 銅イオン分離ユニット
311 ニッケル注入口
32 金属材料の初期画分を分離するユニット
33 マンガン回収のための随意的なユニット
34 コバルト回収のための随意的なユニット
35 ニッケル回収ユニット
36 リチウム回収ユニット
【国際調査報告】