(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】自動穿孔装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20240326BHJP
A61B 18/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B18/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564187
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 US2022071815
(87)【国際公開番号】W WO2022226506
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522152359
【氏名又は名称】ヴィース・センター・フォー・バイオ・アンド・ニューロ・エンジニアリング
【氏名又は名称原語表記】WYSS CENTER FOR BIO AND NEURO ENGINEERING
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】ロドリケス・サミュエル・ジー
(72)【発明者】
【氏名】セガール・デイビッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ベッツ・ラクロワ・ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ガンダー・ジェロム
(72)【発明者】
【氏名】ラピンスキ・マシュー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL09
(57)【要約】
自動穿孔のための外科用装置は、骨に穴をあけるように構成されたドリルビットを備えるドリルと、組織検出センサを備える検出器とを含む。ドリル及び検出器は、ドリルビットによって生成されたボアにおける、ドリルビット及び組織検出センサの挿入及び除去のために独立して作動可能である。外科用システムは、外科用装置と、骨に穴をあけるようにドリルを作動させ、ボアからドリルビットを後退させるようにドリルを作動させ、組織検出センサをボアに挿入するように検出器を作動させ、組織検出センサからの検知信号に基づいてボアの遠位位置における組織特性を決定するように構成された制御装置とを含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動穿孔のための外科用装置であって、
骨に穴をあけるように構成されたドリルビットを備えるドリルと、
組織検出センサを備える検出器と
を備え、
前記ドリル及び前記検出器が、前記ドリルビットによって生成されたボアにおける、前記ドリルビット及び前記組織検出センサの挿入及び除去のために独立して作動可能である、
外科用装置。
【請求項2】
前記ドリル及び前記検出器が、ステージ要素上に配設され、電動フレームへの選択的な取付けのために構成される、請求項1に記載の外科用装置。
【請求項3】
前記組織検出センサが、光学プローブである、請求項1又は請求項2に記載の外科用装置。
【請求項4】
穿孔中に前記ドリルビット上に及ぼされる圧力を検出するように構成された背圧形センサをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の外科用装置。
【請求項5】
前記ドリルのアクチュエータによって加えられるトルクを検出するように構成されたトルクセンサをさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の外科用装置。
【請求項6】
前記ドリルビットの直径が約1mm未満である、請求項1~5のいずれか一項に記載の外科用装置。
【請求項7】
前記ドリルビットの長さが、少なくとも約7mmの深さまで穿孔するために構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の外科用装置。
【請求項8】
治療又は診断装置を取り外し可能に受けて、前記ドリルビットによって生成された前記ボアにおける挿入及び除去のために、前記治療又は診断装置の少なくとも構成要素の独立した作動を可能にするように構成されたツールシャーシをさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の外科用装置。
【請求項9】
前記治療又は診断装置が、カニューレ、電気焼灼要素、電気プローブ、圧力センサ、生検装置、及びレーザアブレーション装置から選択される、請求項8に記載の外科用装置。
【請求項10】
前記ツールシャーシが、前記検出器及び前記治療又は診断装置を取り外し可能に受けるように構成される、請求項8に記載の外科用装置。
【請求項11】
自動穿孔のための外科用システムであって、
請求項1~10のいずれか一項に記載の外科用装置と、
骨に穴をあけるように前記ドリルを作動させ、前記ボアから前記ドリルビットを後退させるように前記ドリルを作動させ、前記組織検出センサを前記ボアに挿入するように前記検出器を作動させ、前記組織検出センサからの検知信号に基づいて前記ボアの遠位位置における組織特性を決定するように構成された制御装置と
を備える、
外科用システム。
【請求項12】
前記組織特性の前記決定が、前記遠位位置における又は前記遠位位置の近くにおける解剖学的構造の変化の決定を含む、請求項11に記載の外科用システム。
【請求項13】
前記組織特性の前記決定が、前記遠位位置における又は前記遠位位置の近くにおける血管の存在の決定を含む、請求項11又は請求項12に記載の外科用システム。
【請求項14】
前記組織特性の前記決定が、前記遠位位置における組織層の厚さの決定、前記遠位位置における組織層の密度の決定、又は、それらの組合せを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項15】
前記制御装置が、前記背圧形センサによって検出される圧力、前記トルクセンサによって検出されるトルク、又は、それらの組合せに基づいて、より硬度が高い組織からより硬度が低い組織への前記ドリルビットの貫入を検出するようにさらに構成される、請求項11~14のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項16】
前記制御装置が、前記検出された貫入に基づいて、前記ドリルビットによる穿孔を停止するように構成される、請求項15に記載の外科用システム。
【請求項17】
前記制御装置が、前記電動フレームへの前記ドリル及び前記検出器の選択的な取付けのために、前記ステージ要素を作動させるように構成される、請求項11~16のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項18】
前記制御装置が、前記ドリル及び前記検出器のうちの1つを前記ボアに配置するために、前記電動フレームの並進を作動させるようにさらに構成される、請求項17に記載の外科用システム。
【請求項19】
前記制御装置が、前記ボアを通しての前記検出器の直線移動、回転移動、又はそれらの組合せを作動させるようにさらに構成される、請求項11~18のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項20】
前記制御装置が、前記ボアを通しての治療又は診断装置の構成要素の直線移動、回転移動、又はそれらの組合せを作動させるようにさらに構成される、請求項11~19のいずれか一項に記載の外科用システム。
【請求項21】
前記制御装置が、前記ボアに前記治療又は診断装置を配置するために、前記フレームの並進を作動させるようにさらに構成される、請求項20に記載の外科用システム。
【請求項22】
ドリルビットを備えるドリルで、骨にボアをあけることと、
前記ボアから前記ドリルビットを除去することと、
組織検出センサを備える検出器で、前記組織検出センサを前記ボアに挿入することと、
前記組織検出センサからの検知信号に基づいて前記ボアの遠位位置において組織特性を検出することと
を含み、
前記ドリル及び前記検出器が、前記ドリルビットによって生成された前記ボアにおける、前記ドリルビット及び前記組織検出センサの挿入及び除去のために独立して作動可能である、
自動穿孔方法。
【請求項23】
前記ドリルビット及び前記組織検出器のうちの1つを前記ボアに配置するため、電動フレームへの前記ドリルビット及び前記組織検出器センサのうちの1つの選択的な取付けのために前記ドリル及び前記検出器が配設されるステージ要素を並進させることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
組織特性を検出することが、前記遠位位置における又は前記遠位位置の近くにおける血管の存在、前記遠位位置における又は前記遠位位置の近くにおける解剖学的構造の変化、前記遠位位置における組織層の厚さ、及び、前記遠位位置における組織層の密度のうちの少なくとも1つを決定することを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記決定が干渉法に基づく、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
穿孔中に前記ドリルビット上に及ぼされる圧力の変化、及び、前記ドリルのアクチュエータによって加えられるトルクの変化のうちの少なくとも1つを検出することをさらに含む、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
圧力の前記検出された変化、トルクの前記検出された変化、又は、それらの組合せに基づいて、より硬度が高い組織からより硬度が低い組織への又はより硬度が低い組織からより硬度が高い組織への前記ドリルビットの貫入を検出することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
圧力の前記検出された変化、トルクの前記検出された変化、又は、それらの組合せに基づいて、穿孔を停止することをさらに含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記ボアから前記組織検出センサを除去するように前記検出器を作動させることと、前記ボアに治療又は診断装置の少なくとも構成要素を挿入するように前記治療又は診断装置を作動させることとをさらに含む、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記治療装置がカニューレであり、前記ボア内の位置に又は前記ボアより遠位の位置に、前記カニューレを介して薬物を送達することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記治療装置が電気焼灼システムであり、前記ボア内の位置又は前記ボアより遠位の位置の組織を焼灼させることをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記治療装置がレーザアブレーション装置であり、前記ボア内の位置又は前記ボアより遠位の位置の組織を切除することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記診断又は治療装置が電気プローブであり、前記ボア内の位置又は前記ボアより遠位の位置において、電気的に記録すること及び電気的に刺激することのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記電気的に刺激することが、脳深部刺激である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記電気的に記録することが、てんかん患者の脳活動を電気的に記録することである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記診断装置が生検装置であり、前記ボア内の位置又は前記ボアより遠位の位置から組織試料を得ることをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記診断装置がカニューレであり、前記ボア内の位置又は前記ボアより遠位の位置から組織又は流体を抽出することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記診断装置が頭蓋内圧力センサであり、前記ボア内の位置又は前記ボアより遠位の位置から頭蓋内圧を測定することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~10のいずれか一項に記載の外科用装置の作動方法であって、
骨に穴をあけるように前記ドリルを作動させることと、
前記ボアから前記ドリルビットを後退させるように前記ドリルを作動させることと、
前記組織検出センサを前記ボアに挿入するように前記検出器を作動させることと、
前記組織検出センサからの検知信号に基づいて前記ボアの遠位位置における組織型を決定することと
を含む、
方法。
【請求項40】
前記骨が頭蓋である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記骨が椎骨である、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2021年4月20日に出願された米国仮特許出願第63/177,268号明細書の利点を請求する。上記出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多くの医療処置は、頭蓋内空間又は脳室内空間への薬物の送達を含むが、それは、多くの場合、化学療法薬又は生物製剤が血液脳関門を効果的に越えないためである。頭蓋内空間にアクセスするための現在の処置は、高度に侵襲的である。
【0003】
たとえば、成人の白血病患者は、多くの場合、オマヤレザバーなどの埋込型医療装置を介した頭蓋内化学療法薬の送達を必要とする。オマヤレザバーの埋め込みのために、脳神経外科医は、頭皮を5~10cm切開し、頭蓋を通して1~1.5cmの穿頭孔をあけ、脳を通して、脳室に3.5mmのカテーテルを通す。このカテーテルは、所定の位置に残されて、頭蓋の表面上にあるレザバーに接続され、頭皮は、部位上に重ねて閉じられる。この外科的処置は、患者に相当の困難をもたらし、埋め込みに関連する創傷破壊及び感染は一般的であり、破壊的である可能性がある。さらにまた、外科的創傷が治癒しなければならないので、これらの装置の埋め込みは多くの場合、化学療法の即時の開始を妨げる。髄腔内送達などの代替案も、生活の質の観点から限定的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
頭蓋内空間及び脳室内空間へのアクセスを提供するための改善された装置及び方法の必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
自動化された顕微手術のための装置及び方法が提供され、そのような装置及び方法は、脳及び脊椎などの、骨の中又は骨の背後に位置する解剖学的空間への薬物の挿入及び送達と関連付けられる合併症及び苦痛を減少させることができる。
【0006】
自動穿孔のための外科用装置は、骨に穴をあけるように構成されたドリルビットを備えるドリルと、組織検出センサを備える、又は、組織検出センサを取り外し可能に受けるように構成された検出器とを含む。ドリル及び検出器は、ドリルビットによって生成されたボア(穴)における、ドリルビット及び組織検出センサのそれぞれの挿入及び除去のために、独立して作動可能である。
【0007】
ドリル及び検出器は、ステージ要素上に配設することができ、電動フレームへの選択的な取付けのために構成される。組織検出センサは、干渉装置又はセンサ、たとえば、光干渉断層法(OCT)のための光学プローブとすることができる。組織センサは、他の例では、後方散乱プローブ、温度検出器、圧力センサ、又は赤外線検出器とすることができる。任意選択的に、検出器は、2つ以上の種類の組織検出センサを含むことができる。ステージ要素は、モータで、たとえば、手動操作で、所定位置に動かすことができる。
【0008】
装置はさらに、穿孔中にドリルビット上に及ぼされる圧力を検出するように構成された背圧形センサ、ドリルのアクチュエータによって加えられるトルクを検出するように構成されたトルクセンサ、又は、背圧形センサ及びトルクセンサの両方を含むことができる。背圧及びトルクセンサは、それぞれ独立して又は一緒に高密度の組織から低密度の組織に移動するドリルの検出を提供することができる(たとえば、骨からの突破)。
【0009】
ドリルビットは、約2mm未満又は約1mm未満の直径を有することができる。ドリルビットの直径は、約200μm~約2mm又は約200μm~約1mmとすることができる。ドリルビットは、少なくとも約15mm又は少なくとも約7mmの深さまで穿孔するために構成することができる。ドリルビットは、チタン、ステンレス鋼、或いは、構造的完全性を保持し、撓みに抵抗し、及び/又は穿孔中に組織を焼くように放熱を提供しながら骨に穴をあける任意の他の十分に強く且つ硬い材料からつくることができる。
【0010】
装置はさらに、装置とともに使用するための、追加の組織検出センサ、治療装置、及び診断装置を取り外し可能に又は固定的に受けるシャーシ又は他の容器(たとえば、ツールセル)を含むことができる。追加のシャーシは、ドリルビットによって生成されたボアにおける挿入及び除去のために、治療又は診断装置の少なくとも構成要素の独立した作動を可能にすることができる。好適な診断及び治療装置の例は、カニューレ(たとえば、針、カテーテル)、電気焼灼要素、電気プローブ、圧力センサ(たとえば、頭蓋内圧力センサ)、生検装置、外科用装置(たとえば、ブレード、針、トロカール、アスピレータなど)、及び、アブレーション装置(たとえば、レーザアブレーション装置)を含む。検出器又はその一部(たとえば、検出器のシャーシ、或いは、検出器セルとも呼ばれる)は、任意選択的に、他の診断又は治療装置を受けるように構成することができる。たとえば、組織検出センサ、たとえば、光学プローブは、検出器セルから取り外し可能とすることができ、追加のツール(たとえば、診断及び/又は治療装置)は、装置とともに使用するために、検出器セルに受けることができる。或いは、又は、それに加えて、追加のツールセルは、ステージ上で含むことができる。たとえば、ツールセルは、検出器セル及びドリルセルに加えて、ステージ要素に含むことができ、治療又は診断装置の送達のために独立して作動可能とすることができる。
【0011】
自動穿孔のための外科用システムは、外科用装置と、装置を作動させるように構成された制御装置とを含むことができる。制御装置は、骨に穴をあけるようにドリルを作動させ、ボアからドリルビットを後退させるようにドリルを作動させ、組織検出センサをボアに挿入するように検出器を作動させ、組織検出センサからの検知信号に基づいてボアの遠位位置における組織特性を決定するように構成することができる。任意選択的に、制御装置は、外科用装置、診断装置、又は治療装置を標的部位に進めるように構成することができる。
【0012】
制御装置は、プロセッサ及び任意の関連する電子機器とすることができ、それらは、外科用装置の外部に配設することができる。組織特性の決定は、遠位位置における又は遠位位置の近くにおける解剖学的構造の変化の決定、遠位位置における又は遠位位置の近くにおける血管の存在の決定、遠位位置における組織層の厚さの決定、及び、遠位位置における組織層の密度の決定の一部又は全部を任意の組合せで含むことができる。
【0013】
制御装置は、背圧形センサによって検出される圧力、トルクセンサによって検出されるトルク、又は、それらの組合せに基づいて、より硬度が高い組織からより硬度が低い組織へのドリルビットの貫入を検出するようにさらに構成することができる。制御装置は、検出された貫入に基づいて、穿孔を停止することができる。或いは、又は、それに加えて、制御装置は、組織検出センサの作動前に、定義された深さまで穿孔するようにドリルを作動させるように構成することができる。
【0014】
制御装置は、電動フレームへのドリル(たとえば、ドリルセル)及び検出器(たとえば、検出器セル)の選択的な取付けのために、並びに、任意選択的に、ツール(たとえば、外科用ツールを含む診断又は治療装置のためのツールセル)のために、ステージ要素を作動させるように構成することができる。制御装置は、ドリル、検出器、及び治療/診断装置のうちの1つをボアに配設するために、電動フレームの並進を作動させるようにさらに構成することができる。直線移動(たとえば、波形経路に沿った移動などの、平面内及び/又は平面外の移動を含む、たとえば、一次元移動及び/又は多次元移動)、回転移動、或いは、それらの組合せは、ボアを通して検出器及び/又は治療若しくは診断装置を移動させるために、制御装置によって作動させることができる。
【0015】
自動穿孔方法は、ドリルビットを備えるドリルで、骨にボアをあけることと、ボアからドリルビットを除去することとを含む。方法は、組織検出センサを備える検出器で、組織検出センサをボアに挿入することと、組織検出センサからの検知信号に基づいてボアの遠位位置において組織特性を検出することとをさらに含む。ドリル及び検出器は、ドリルビットによって生成されたボアにおけるドリルビット及び組織検出センサの挿入及び除去のために、独立して作動可能である。
【0016】
方法はさらに、ドリルビット及び組織検出器のうちの1つをボアに配設するため、電動フレームへのドリルビット及び組織検出器センサのうちの1つの選択的な取付けのためにドリル及び検出器が配設されるステージ要素を並進させることを含むことができる。
【0017】
組織特性を検出することが、遠位位置における又は遠位位置の近くにおける血管の存在、遠位位置における又は遠位位置の近くにおける解剖学的構造の変化、遠位位置における組織層の厚さ、及び、遠位位置における組織層の密度のうちの少なくとも1つを決定することを含むことができる。決定は、干渉法(たとえば、光干渉断層法(OCT))、後方散乱、温度、圧力、及び赤外線測定の一部又は全部の任意の組合せに基づくことができる。
【0018】
方法はさらに、穿孔中にドリルビット上に及ぼされる圧力の変化、及び、ドリルのアクチュエータによって加えられるトルクの変化のうちの少なくとも1つを検出することを含むことができる。より硬度が高い組織からより硬度が低い組織への又はより硬度が低い組織からより硬度が高い組織へのドリルビットの貫入は、圧力の検出された変化、トルクの検出された変化、又は、それらの組合せに基づいて検出することができる。検出された変化に基づいて、ボアの穿孔を停止することができる。
【0019】
方法はさらに、ボアから組織検出センサを除去するように検出器を作動させることと、ボアへの治療又は診断装置の少なくとも構成要素の挿入のために治療又は診断装置を作動させることとを含むことができる。治療装置は、たとえば、カニューレとすることができ、薬物は、ボア内の位置に又はボアより遠位の位置に、カニューレを介して送達することができる。別の例において、治療装置は、電気焼灼システム又はその構成要素とすることができ、ボア内の位置又はボアより遠位の位置の組織を焼灼することができる。治療装置は、レーザアブレーション装置とすることができ、方法は、ボア内の位置又はボアより遠位の位置の組織を切除することを含むことができる。電気プローブは、ボアに挿入することができ、治療及び/又は診断装置として機能することができる。たとえば、方法は、ボア内の位置又はボアより遠位の位置において、電気的に記録すること及び電気的に刺激すること(たとえば、脳深部刺激)のうちの少なくとも1つを含むことができる。電気的に記録することは、たとえば、てんかん患者の脳活動を電気的に記録することとすることができる。
【0020】
別の例において、診断装置は、生検装置とすることができ、方法は、ボア内の位置又はボアより遠位の位置から組織試料を得ることを含むことができる。診断装置は、カニューレとすることができ、方法は、ボア内の位置又はボアより遠位の位置から組織又は流体を抽出することを含むことができる。圧力センサを挿入することができ、方法は、ボア内の位置又はボアより遠位の位置から圧力を測定することを含むことができる。
【0021】
外科用装置の作動方法は、骨に穴をあけるようにドリルを作動させることと、ボアからドリルビットを後退させるようにドリルを作動させることと、組織検出センサをボアに挿入するように検出器を作動させることとを含む。方法はさらに、組織検出センサからの検知信号に基づいてボアの遠位位置における組織型又は組織特性を決定することを含む。
【0022】
骨は、たとえば、頭蓋とすることができる。或いは、骨は、椎骨とすることができる。本明細書で提供される外科用装置及びシステムは、概して、頭蓋における適用に関して記載される。しかしながら、提供される外科用装置及びシステムは、他の解剖学的構造における作動のために使用することができる。たとえば、脊椎の一部にアクセスするために椎骨に穴をあけること、又は、たとえば、生検のために、髄(たとえば、骨髄生検のための腸骨稜)若しくは潜在的腫瘍にアクセスするために、他の骨に穴をあけること、又は、内部固定装置の配置を容易にするために骨に穴をあけることが望ましいことがある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
前述のものは、添付の図面に示されるような例示的な実施形態の以下のより具体的な記載から明らかであり、図面において、同様の参照符号は、異なる図を通して同じ部分を言及する。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、実施形態を示すことに重点が置かれている。
【
図1B】
図1Aの例示的な外科用システムの構成要素の概略図である。
【
図2】ドリル及び検出器を含む例示的な外科用装置を示す。
【
図3】
図2の例示的な外科用装置のステージ要素を示す。
【
図4】
図2に示される外科用装置の断面図であり、例示的な選択的取付け機構を示す。
【
図5】ドリルセルとも呼ばれる、例示的なドリル要素を示す。
【
図6】検出器セルとも呼ばれる、例示的な検出器要素を示す。
【
図7A】ツールセルとも呼ばれる、
図6の検出器要素の又はツール受渡要素の内部構成要素の例を示す。
【
図7B】
図6の検出器要素の又はツール受渡要素の内部構成要素の別の例を示す。
【
図8】外科用システムのためのソフトウェアパラダイムの図である。
【
図9】
図8に示されるパラダイムのための例示的な制御ソフトウェアアーキテクチャの図である。
【
図10】
図8に示されるパラダイムのための例示的なモータソフトウェアアーキテクチャの図である。
【
図11】
図8に示されるパラダイムのための例示的な組織検出ソフトウェアアーキテクチャの図である。
【
図12】例示的な神経外科的フレームを含む外科用システムを配備することができる例示的環境を示す。
【
図13】ドリル及び検出器を含む外科用装置の別の例を示す。
【
図16】外科用装置の例示的な作動を示すフローチャートである。
【
図17】背圧形センサを有する外科用装置の例示的な作動を示すフローチャートである。
【
図18】組織インタフェースを含む例示的な外科用装置を示す。
【
図19】装置センサから得られる例示的なフィードバック及び装置の作動のための例示的な閾値化特徴を示すグラフの組である。
【
図20】装置によって提供される例示的な組織検出を示す画像の組である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
記載される外科用システム、装置、及び方法は、解剖学的組織(たとえば、骨、血管、実質(柔組織)、腫瘍、室、及び小脳)の自動検出と関連する、骨の正確で効率的な自動穿孔を提供することができ、それは、穿孔及び後続の頭蓋内空間への他の装置の送達の両方を通知するために使用することができる。記載される外科用装置及び方法は、頭蓋内空間にアクセスするための手動手術の欠点に対する解決策を提供することができ、既存の神経外科的システムを上回るいくつかの利点を提供することができる。
【0025】
Rosa One(登録商標)脳プラットフォーム(Zimmer Biomet)及びneuromate(登録商標)ロボットシステム(Renishaw)などの、いくつかの装置が定位的神経外科ターゲティングを支援するために開発されてきたが、そのようなシステムによって実行される穿孔のスケールは直径数ミリメートルを越え、そのようなシステムは完全には自動化されていない。Craniobot(登録商標)(LABmaker)などのシステムは、mm未満の厚さのマウス頭蓋を除去するためのマイクロメートルスケールのミリング作業を提供するが、たとえば、人間の頭蓋上での作動には不十分である。ロボットシステムは、コンピュータビジョンを使用する外科的処置を案内するために開発されたが、そのようなシステムは、巨視的な手術野においてロボット手術システムを案内するカメラに依存し、したがって、脳用途には不十分な精度である可能性がある。OCTは、生検針と一体化されてきた、しかしながら、そのような装置は、骨を含む用途には適していない。
【0026】
提供される外科用装置及び方法は、顕微手術スケールでの穿孔を案内するために、血管及び組織境界を自動的に検出することができる。本明細書で使用される場合、用語「顕微手術」及び「顕微手術の」は、約2mm未満のスケールで行われる手術を表す。たとえば、記載されるシステム及び方法は、骨に約200μm~約2000μmの直径を有する穴をあけることを提供することができる。記載される顕微手術装置は、非常に改善された治癒及び骨の再成長を提供することができ、用手的穿孔手順、及び、既存のロボット外科用装置によって生成される穿孔と比較して、患者の苦痛を大きく低減させることができる。
【0027】
外科医がそのような小さい直径のドリルビットを用手的に制御することは実用的に不可能であるので、記載される装置及び方法は、血管を検出して、その下の脳組織の損傷を防止するための一体型の光学的及び/又は機械的測定システムなどの一体型の安全システムが組み込まれた自動穿孔を含む。記載される自動顕微手術システム及び方法は、手で実用的に穿孔される可能性がある穴よりも小さい穴の生成を可能にすることができ、そのようなより小さい穴は、結果として、患者の回復時間を短縮し、術後感染のリスクをより低くし、より完全な患者組織の治癒をもたらす。
【0028】
記載されるシステム及び方法は、さまざまな組織型の検出も提供することができ、それは、(たとえば、穿孔、及び、その後の診断又は治療装置の送達の両方の間の)出血のリスクを低減させることができる。システムは、装置の検出プローブの遠位端に又は遠位端の近くに血管が存在する場合、操作者に通知することができる。プローブは、ドリル穴に適合するように寸法決めすることができる。たとえば、プローブの遠位端は、約180μm~1.99mmのサイズとすることができる。たとえば、遠位端が異なる組織型(たとえば、腫瘍)に入った場合に、ユーザは通知を受けることができるので、組織の検出は、プローブの遠位端の位置の決定に対する信頼性を増加させることもできる。
【0029】
例示的な実施形態の説明は以下である。
【0030】
例示的な外科用システム100が
図1Aに示され、それは、外科用装置110、電子機器118、及びユーザ入出力制御装置108を含む。
図1に関して使用される用語「制御装置」は、単なるプロセッサとは対照的なユーザ入出力装置を表す。外科用装置110、電子機器118、及び制御装置108は、有線及び/又は無線接続を通して、通信可能に結合することができる。外科用装置110は、患者と接触させることができ、穿孔及び組織特性検出に関連する操作を行うことができ、任意選択的に、他の外科用装置を含む診断又は治療装置の送達に関する操作を行うことができる。装置110の作動と関連する電子機器118は、装置110に内部又は外部に位置することができる。システムのユーザ又は操作者は、外科用装置110の動作を指示し、装置110の使用によって又は装置110の使用を通して得られたデータを解釈するために、制御装置108とインタフェースすることができる。
【0031】
外科用装置110は、さまざまな構成要素のアクセスを提供するために、ポート112、114、116を含むことができる。たとえば、ポート116は、外部電子機器118への装置のさまざまなアクチュエータの有線通信を提供することができる。ポート114は、装置に又は装置を通して、ツール又はツール構成要素を読み込むためのアクセスを提供することができる(たとえば、OCT検出器、カテーテルなどの光ケーブル)。ポート112は、装置の電動構成要素の電源ケーブルのためのアクセスを提供することができる。追加の又はより少ないポートを含むことができる。
【0032】
自動穿孔のための外科用装置の構成要素の概略図が
図2に示される。外科用装置200は、骨に穴をあけるように構成されたドリルビット212を有するドリル210と、組織検出センサ222を有する検出器220とを含む。たとえば、検出器はOCT検出器とすることができ、センサ222は光学プローブとすることができる。
【0033】
任意選択的に、ツール受渡要素240は、治療又は診断装置との接続を提供するために、装置に含むことができる。たとえば、ツール受渡要素240は、カニューレ又は電気プローブなどの治療又は診断装置242を取り外し可能に受けるように構成することができる。治療又は診断装置は、たとえば、追加の外科用装置(ドリルビット以外)とすることができる。カニューレなどのいくつかの装置は、治療装置及び診断装置の両方とすることができる。たとえば、治療(たとえば、薬物)を送達するために、診断用薬(たとえば、撮像のための造影剤)を送達するために、又は、診断手順を実施するために(たとえば、脳脊髄液(CSF)の試料採取などの、試料採取又は生検のために生体物質を吸引するために)カニューレを設けることができる。
【0034】
示されるように、ドリル210、検出器220、及び任意選択のツール受渡要素240が、ステージ要素230上に配設される。ステージ要素230自体が、ドリル210、検出器220、及びツール受渡要素240のうちの任意の1つを対象280に配設するために移動可能とすることができる。たとえば、ステージ要素は、電動フレーム(たとえば、
図13)に結合可能とすることができる。或いは、又は、それに加えて、ステージ要素230は、装置(たとえば、
図2)のハウジング内に含むことができ、ハウジング内に少なくとも部分的に配設される電動フレームへの、ドリル210、検出器220、及びツール受渡要素240の選択的な結合を提供するように構成することができる。
【0035】
装置200は、
図12に示されるような、フレーム又はロボットなどの外部定位装置280に結合することができる。好適な定位装置280の例は、Leksell(登録商標)システム(Elekta)、CRW(登録商標)機器(Integra)、STarFix(商標)プラットフォーム(FHC)、Rosa One(登録商標)プラットフォーム(Zimmer Biomet)、及び、neuromate(登録商標)ロボットシステム(Renishaw)を含む。
【0036】
ステージ要素230に直接的及び/又は間接的に取り付けられる電動要素によって提供される位置制御の間に、ドリル210、検出器220、及び任意選択のツール受渡要素240のそれぞれは、対象280に装置構成要素を位置付けるために、3つの直線軸(X、Y、Z)に沿って、及び/又は、3つの角軸(θx、θy、θz)のうちの少なくとも2つに沿って、並進させることができる。
【0037】
検出器220は、たとえば、OCTシステム又はその構成要素などの干渉装置とすることができる、又は、それらの干渉装置を含むことができ、システムのプローブ222は、光学信号を収集及び処理することができるOCTベースステーション250に作動可能に結合される。好適なOCTシステムの例は、Telesto(登録商標)OCTシステム(ThorLabs)である。システムは、ドリル210、検出器220、及び任意選択のツール受渡要素240、並びに、任意選択的に、OCTベースステーション250のそれぞれに作動可能に接続されるプロセッサ260をさらに含む。
【0038】
ドリル210は、1つ又は複数のセンサ214を任意選択的に含むことができる。センサ214は、穿孔中にドリルビット上に及ぼされる圧力を検出するように構成された背圧形センサ、又は、ドリルのアクチュエータによって加えられるトルクを検出するように構成されたトルクセンサとすることができる。任意選択的に、背圧形センサ及びトルクセンサは、装置に含むことができる。
【0039】
例示的な外科用装置300が
図2に示される。装置は、ドリル310及び検出器320が内部に配設されるハウジング302を含む。ドリル310はドリルビット312を含む。ドリルビット312は、さまざまなサイズのドリルビットを装置の操作者が使用できるように、ドリル310に取り外し可能に結合可能とすることができる。検出器320は、OCTプローブなどの組織検出センサを受け入れる又は収納するように構成することができる。たとえば、光ケーブルは、
図6及び7A~Bにさらに示されて、記載されるように、検出器ガイド324に通すことができる。或いは、光検知器は、
図15A~Bにさらに示されるように、検出器ガイド324内に一体化することができる。ドリル要素310及び検出器要素320は、本明細書において代わりに、ドリルセル及び検出器セルとも呼ばれる。
【0040】
ドリルセル及び検出器セルは、ドリルビットによって生成されたボアにおける、ドリルビット及び組織検出センサのそれぞれの挿入及び除去のために、独立して作動可能とすることができる。たとえば、
図2に示されるように、ドリルセル310及び検出器セル320は、ステージ要素330上に配設される。セルは、回転カップリング334を介して、セルがフレームの構成要素と係合することができる電動フレーム340に近い位置でのドリル310と検出器320との切替を可能にするために、ステージ要素に取り外し可能に結合することができる。
【0041】
ステージ要素330の例示的な構成が
図3に示される。ステージ要素330は、セルのそれぞれへの貫通アクセスを提供するポート334、338を含み、たとえば、各セルに接続するワイヤ、ケーブルなどのために必要とされることがある。ステージ要素は、2つのセルのみ含むように
図2及び3に示されているが、追加のセルを装置に含むことができる。たとえば、追加のポート336は、追加のツールのためのセルのために接続的アクセスを提供するように含むことができる。示されるように、ステージは、アクティブなセルの切替えを提供するために円弧のまわりを回転するように構成される。しかしながら、他の構成が可能である。たとえば、ステージは、カムとして、単一点のまわりを回転するように、又は、直線的に移動するように構成することができる。ステージの移動は、モータ又は空気圧装置などのアクチュエータによって制御することができる、又は、手動制御することができる。ステージは、セルとの係合のための接続要素337を含むことができる。
【0042】
図2に戻ると、電動フレーム340は、リードスクリュー344に沿って並進することができる結合要素342と、モータ346とを含むことができる。電動フレームの最も近くへのドリルセル310及び検出器セル320のうちの1つの位置決めにより、装置の基部に配置された外科用ポート304の方への、選択されたセルの並進を可能にすることができる。セルのそれぞれは、電動フレームの結合要素342と係合するための、相補的な結合要素(すなわち、ドリル結合要素314及び検出器結合要素326)を含むことができる。
【0043】
さらに、例としてドリルセル320が示されている
図4に示されるように、各セルは、ステージ要素330及び電動フレーム340の両方から取り外し可能に結合可能とすることができる。たとえば、ドリルセル320は、ドリル-ステージ結合要素317及びドリル-フレーム結合要素314を含むことができる。ステージ330は、ドリル-ステージ結合要素317に相補的である結合要素333を含むことができる。同様に、電動フレーム結合要素342は、ドリルセル及び検出器セルを係合するための結合要素314、326に相補的とすることができる。結合要素は、たとえば、磁石、クリップ、機械式カップリング、干渉式アタッチメントなどを含むことができる。示されるように、たとえば、結合要素317及び333は磁気的に係合され、結合要素342は、結合要素314の突起315と係合するように構成されたトラック343を含む。結合要素342は、示されるように、リードスクリュー344に沿って並進するように構成されたナットである。アクチュエータ346は、結合要素342の近位及び遠位の並進を制御するために、リードスクリューを駆動することができる。リードスクリュー344は、装置の近位端の端部支持体345によって、及び、装置の遠位端の端部支持体346によって、保持することができる。アクチュエータ346は、たとえば、モータ又は空気圧装置とすることができる。ドリルに関連するアクチュエータ316及びセンサ318も
図4に示されている。
【0044】
ドリルセル310は
図5にさらに示される。示されるように、ドリル構成要素(すなわち、ドリルビット312、アクチュエータ316、及びセンサ318)は、保持要素319a、319bによって、結合要素314内に保持することができる。ドリル構成要素は、ドリルセル内に取り外し可能に保持することができる。ドリルビットカプラ313は、アクチュエータ316へのドリルビット312の確実な結合を提供することができる。センサ318は、たとえば、穿孔中にドリルビット上に及ぼされる圧力を検出するように構成された背圧形センサ、又は、ドリルのアクチュエータによって加えられるトルクを検出するように構成されたトルクセンサとすることができる。任意選択的に、背圧形センサ及びトルクセンサはどちらも、ドリルセルに含むことができる。示されるように、センサ318はアクチュエータ316に当接する。しかしながら、代わりに、センサはアクチュエータからオフセットすることができる。
【0045】
検出器セル320は
図6にさらに示される。示されるように、検出器ガイド324は、光ケーブルを通して、保持することができる開口部328を含むことができる。検出器結合要素326は、電動フレームの結合要素342と係合するための突起325を含む。検出器ガイド324は、保持要素329a、329bによって、結合要素326内に保持することができる。検出器ガイドは、検出器セル内に取り外し可能に保持することができる。検出器ガイドは、治療又は診断装置を受けるためのシャーシの役割をすることもできる。さまざまな組織検出センサ、治療装置、及び診断装置を受けるための2つ以上の検出器ガイド及び/又はシャーシを、装置300に含むことができる。
【0046】
検出器ガイドの内部構成の例が
図7A及び7Bに示される。検出器ガイド324Aは、入口ポート328及び出口ポート378を提供して、センタリング要素372を含み、そのそれぞれが、たとえば、光ケーブル又はカテーテルを装置の中心に向ける開口部374を画定することができる。検出器ガイド324Aは、ネジ付きグリップなどの前進/後退要素376をさらに含む。前進/後退要素は、たとえば、光ケーブル又はカテーテルが検出器セルを通して前進及び/又は回転することを可能にすることができる。
【0047】
検出器ガイド324Bは、前進要素としてローラ375を含み、それは、たとえば、光ケーブル又はカテーテルの検出器セルを通る直線移動及び案内を提供することができる。前進/後退要素375、376は、検出器ガイド324を通されているツールと係合するために、たとえば、ゴム、エラストマ、又は他の可撓性の抵抗性のある材料を備えることができる。
【0048】
検出器ガイド324は、組織検出プローブ又は他の機器(たとえば、カテーテル、針など)が、(たとえば、一定速度又はさまざまな速度で)連続的な方向、或いは、変化する方向(たとえば、前進及び後退のための近位及び遠位方向)のいずれかの方向に、システムを通って直線的に、及び/又は、さまざまな回転量で、移動することを可能にすることができる。回転及び直線移動の組合せに基づいて、組織検出プローブ又は他の機器は、セルを通る螺旋又は旋条移動を有することができる。螺旋又は旋条移動は、所望の組織におけるプローブ又は他の機器の改善された配置を提供することができる。
【0049】
ドリルビット312は、骨(たとえば、人間の骨)に入るように構成することができ、約200μm~約2mmの直径を有することができる。ドリルビット312は、少なくとも約7mm(たとえば、約7mm~約15mm)、又は、少なくとも約15mm(たとえば、約15mm~約20mm)の深さまで穴をあけるように構成された長さを有することができる。ドリルビット312は、たとえば、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、及び15mmのいずれかの深さの穴をあけるように構成された長さを有することができる。ドリルビットは、チタン、ステンレス鋼、或いは、構造的完全性を保持し、撓みに抵抗し、及び/又は穿孔中に組織を焼くように放熱を提供しながら骨に穴をあける任意の他の十分に強く且つ硬い材料からつくることができる。
【0050】
検出器セル及び/又は任意選択の追加のツールセルは、穿孔完了後の治療又は診断装置の選択的な作動のために構成することができる。装置200、300とともに使用することができる治療及び診断装置の例は、カニューレ(たとえば、針、カテーテル、トロカールなど)、電気焼灼要素、電気プローブ、頭蓋内圧力センサ、生検装置、及び、レーザアブレーション装置を含む。そのような治療及び診断装置は、検出器セル又は追加のツールセル内に取り外し可能に受けることができる。たとえば、穿孔の完了及び組織特性の決定時に、組織センサを検出器セルから取り外すことができ、治療又は診断装置を挿入することができる。したがって、装置110、200、300は、ドリルビットによって生成されたボアにおける、治療/診断装置の挿入及び除去を提供することができる。
【0051】
外科用装置500の別の例示的な構成が
図13及び14に示される。外科用装置500は、ドリルビット512を有するドリル510と、組織検出センサ522を有する検出器520とを含む。ドリル510及び検出器520は、電動フレーム540と係合されたステージ要素530上に配設される。電動フレーム540は、摺動可能要素542、544、及び546を含むことができ、それらは、対象の定義された位置にドリル510及び検出器520を配置する際に3つの自由度(x、y、z)を提供するために、1つ又は複数のアクチュエータ548(たとえば、モータ、空気圧装置)によって作動可能とすることができる。ドリル及び検出器は、ドリルビットによって生成されたボアにおける、ドリルビット512及び組織検出センサ522の挿入及び除去のために、独立して作動可能とすることができる。示されるように、1つ又は複数のアクチュエータ516は、ドリルビット512の直線移動及び回転移動を作動させるために、ドリルセル510に含むことができる。少なくとも1つのアクチュエータ525は、センサケーブル523(たとえば、光ファイバケーブル、又は、任意選択的に、カテーテルなどの別のツール)の直線移動及び回転移動を作動させるために、検出器セル520に含むことができる。
【0052】
検出器620の例が
図15A及び15Bに示される。検出器620は、ケーブル650を貫通配置することができる外部シールド624又はガイドを備えることができる。ケーブル650は、プローブ622とともに作動配置される。任意選択的に、追加のシールド652を含むことができる。検出器620は、OCT装置の一部とすることができる、又は、OCT装置の一部を含むことができ、プローブ622は光学的開口を備え、ケーブル650は光ケーブルを備える。検出器620は代わりに、他の種類のセンサを備えることができる。たとえば、プローブ622は、電気的記録及び/又は電気的刺激のための電気プローブとすることができ、ケーブル650は、検出器の外部構成要素への電気的接続を提供する。別の例において、プローブは、組織試料ポートを備えることができ、検出器に貫通配置されたケーブルは、組織試料を収集するために真空を適用することができるカニューレを備えることができる。
【0053】
プローブ522、622の直径は、ドリルビットによってあけられたボアにプローブを挿入することができるように、ドリルビット512の直径より小さくすることができる。任意選択的に、プローブ522、622は、プローブの暴露部分の少なくとも一部に対して剛性又は支持を提供するために、針などのカニューレを含むことができる。
【0054】
検出器又は検出器セルがOCTプローブを備える場合、プローブは、Gradient Index(GRIN)ロッドとすることができる。プローブは任意選択的に、GRINロッドの背面開口に制御された角度で光を向けることができる1つ又は複数の検流計を含むことができ、それにより、光がGRINロッドを出る角度を制御することを可能にする。GRINロッドからの光の出口角は、GRINロッドの遠位側上での画像の作成を可能にするようにスキャンすることができる。
【0055】
OCTプローブは、光ファイバを備えることができる。ある例において、OCTプローブは、GRINレンズとともに光ファイバを含むことができる(たとえば、Miniprobes(South Australia)による撮像用針、Agiltron,Inc.(Woburn,MA)による光ファイバチップ)。光ファイバ又は光ファイバ-GRINレンズアセンブリに対応する伝達関数を決定するために、一連の較正実験を実行することができる。OCTプローブは任意選択的に、Digital Micromirror Device(DMD)、Spatial Light Modulator(SLM)、又は、空間位置の関数として、光ファイバの背面開口に入る光の振幅及び/又は位相を制御することができる他の光操作装置を備えることができる。DMD及び/又はSLMは、OCTプローブの前面開口から出る光の角度を変更するために使用することができ、それにより、画像の形成を可能にする。
【0056】
任意選択的に、光は、ある角度をなしOCTプローブから出ることができる。これは、たとえば、OCTプローブが、その前面開口にGRINレンズを有する光ファイバである場合に、及び、GRINレンズが、光ファイバの軸に対して固定された角度で光が出ることを可能にするように構成される場合に、起こる可能性がある。OCTプローブは、回転可能とすることができる。OCTプローブを軸方向に並進させて、OCTプローブを回転させることによって、3D画像を得ることができる。
【0057】
ある例において、検出器(たとえば、検出器220、320、520)は、GRINレンズを含むシングルモード光ファイバを備える。別の例において、検出器は多重モードファイバを備え、検出器セルの外部及びファイバの近位端において、ファイバの遠位端で放出される光の焦点面を変えるためにDMD又はSLMが含まれる。検出器のプローブは、1つ又は複数の光ファイバの少なくとも先端部分を含むことができる。
【0058】
図13及び15に示されるように、装置は、ドリル及び検出器セル510、520を含む。任意選択的に、装置は、追加の可変ツールセルを含むように拡張することができる。或いは、又は、それに加えて、検出器セル520は、ケーブル523の除去を提供することができ、アクチュエータ525による治療又は診断装置の挿入及び後退を可能にすることができる。治療/診断装置の直径は、ドリルビットによってつくられるボアに装置を挿入することができるように、ドリルビット512の直径より小さくすることができる。
【0059】
任意選択的に、追加のツールセル又は治療/診断装置は、剛性を提供するためにカニューレ(たとえば、針)に収容されるセンサを含むことができる。たとえば、追加のツールは、26ゲージの針の中に配設される圧力センサとすることができる。追加のツールは、電気焼灼システム、電気的記録又は刺激のためのプローブ、生検パンチ、カテーテル、針及びアスピレータなどのCSFを抽出するためのツール、レーザアブレーションシステム、酸素センサなどの化学センサ、並びに、マイクロダイアリシスプローブのいずれかとすることができる。
【0060】
図2~4及び13~14に示される装置構成が代替的な構成として示されているが、それぞれからの特徴又は構成要素は組み合わせることができることは理解されるべきである。たとえば、検出器セル320は、検出器セル520で示されたものと類似した内部構成を備えることができる(たとえば、前進/後退を提供するアクチュエータ525を含む)。さらなる例において、ステージ要素330は、追加の移動量を提供するステージ530(たとえば、摺動可能要素542、544、546)、及び/又は、ステージの移動をもたらすアクチュエータ548で示されるものと類似した特徴を備えることができる。
【0061】
外科用装置(たとえば、装置300、500)は、
図18に示されているような、たとえば、装置300に加えられる組織インタフェース又は結合要素をさらに含むことができる。組織インタフェース380は、剛性カニューレ382及び切断面384を含むことができる。組織インタフェース380は、患者(たとえば、患者の頭皮)に接触することができ、骨の外部に配置された組織(たとえば、頭蓋の外部の組織)を貫通することができる。ドリル、組織検出センサ、及び、任意選択的に、治療/診断装置は、組織インタフェース380のカニューレ部分382の中を進むことができる。組織インタフェースは、メスでの切開の必要を排除することができ、有利なことには、患者の外部組織層を通る均一で比較的小さい切り口を提供することができる。組織インタフェース380は、手術部位から外部の環境を閉じることもでき、外科用装置から患者まで進むとき、ドリルビットの保護を提供する。カニューレは、ドリルが通って進むことができる針(たとえば、20ゲージの針)とすることができる。組織インタフェースは、処置の間中、外科用装置300に接続されたままとすることができる、又は、組織インタフェースは、装置300から分離可能とすることができるが、たとえば、手術部位の完全性を維持しながら外科用装置のツールを交換する機能を操作者に提供するように、患者に取り付けられたままとすることができる。
【0062】
制御装置(すなわち、1つ又は複数のプロセッサ)は、装置110、200、300に作動可能に結合することができ、骨に穴をあけるようにドリルを作動させ、ボア、アクチュエータ、組織検出センサをボアに挿入する検出器からドリルビットを後退させるようにドリルを作動させ、組織検出センサからの検知信号に基づいてボアの遠位位置における組織特性を決定するように構成することができる。
【0063】
組織特性の決定は、遠位位置における又は遠位位置の近くにおける解剖学的構造の変化の決定、遠位位置における又は遠位位置の近くにおける血管の存在の決定、遠位位置における組織層の厚さの決定、及び/或いは、遠位位置における組織層の密度の決定を含むことができる。組織特性の決定は、さらなる穿孔を通知することができる、又は、治療又は診断装置を進めるためのボア位置の適合性に関して通知することができる。
【0064】
組織検出検知は、たとえば、光干渉断層法を含む干渉法によって、行うことができる。組織検出器の一部として含まれる干渉計測装置は、生体組織との相互作用時に、光、無線、又は音をベースとした波の検出を提供することができる。組織検出器がOCTプローブである場合、血管は、スペックル分散の計算によって検出することができる。スペックル分散イメージングは一般に、当該技術分野において知られており、機能イメージングのために、たとえば、血流の検出のために、使用することができる。スペックル分散法を使用した血流の検出は、血管の存在の検出、又は、組織における血管新生の程度の測定を行うために使用することができる。OCTは、たとえば、
図20の画像に示されるように、組織の密度などの、他の組織性状診断のためにも使用することができる。
【0065】
OCT以外の、又は、OCTと関連する、他の干渉装置及び方法は、設けられた外科用装置における組織特性の検出のために使用することができる。たとえば、検出器(たとえば、検出器220、320、520)は、固定基準、固定波長レーザ、及び固定焦点距離プローブを含む干渉装置を含むことができる。プローブの並進は、干渉法を使用して組織境界を検出するために使用することができる。
【0066】
装置は、ドリルビットが血管に遭遇した場合に、組織へのリスクが存在する生体組織に穴をあけるために使用することができる。装置110、200、300、500を作動させる例示的な制御パラダイム及び方法が
図16及び17に示される。
【0067】
図16に示されるように、制御装置(たとえば、制御装置260)は、ドリルビットが固定量、たとえば、血管に遭遇するリスクがない又は最小限である距離に対応する量だけ組織に下降するように作動させるよう、構成することができる(項目702)。次いで、ドリルビットを後退させることができ(項目704)、ドリルで生成された穴又はボアに、たとえば、ドリルビットが挿入された深さよりもわずかに浅い深さまで、検出器(たとえば、OCTプローブ)を挿入することができる(項目706)。次いで、OCTプローブは、組織特性の決定、たとえば、血管の存在の検出のためのOCT画像に向けて測定を行うことができ(項目710)、次いで、後退させることができる。血管が検出された場合(項目712)、その位置での穿孔は終了させることができ(項目714)、システムは、代替的な位置へ移動して、穿孔プロセスを再開することができる(項目716)。血管が検出されていない場合、且つ、所望の穿孔深さにまだ到達していない場合(項目718)、検出器を後退させることができ(項目720)、ドリルビットが再挿入され(項目722)、追加の距離のために穴があけられる(項目724)。追加の距離は、選択された距離を通って血管に遭遇するリスクが最小限であるように選択することができ、それは、OCTプローブ測定に基づいて決定することができる。OCTプローブが血管の存在を検出するまで、又は、ドリルが所望の深さに到達するまで、プロセス自体を繰り返すことができる。所望の深さに到達すると、任意選択的に、追加のツール(たとえば、診断又は治療装置)を挿入することができる(項目726)。
【0068】
所望の深さは、一部の解剖学的構造について知られていないことがある。その代わりに、装置は、特定の組織型に到達するまで、ドリル(又は、ツール)が進み続けるように作動させることができる。OCTプローブによって行われる測定は、ドリルが所望の組織型に到達したかどうか判定するために使用することができる。たとえば、ドリルが頭蓋骨を穿通するために使用されている場合、OCTは、骨及び頭蓋下組織の光学特性の違いに基づいて、潜在的な血管の検出、さらに、ドリルが頭蓋骨を穿通したときの決定の両方を行うために使用されてもよい。
【0069】
或いは、又は、それに加えて、背圧検知自動穿孔を行うことができる。特に、ドリルのアクチュエータと作動配置される背圧形センサ及び/又はトルクセンサは、穿孔プロセス中にドリルビットに及ぼされる(たとえば、0~1N、0~3N、又は0~10Nの範囲の)反力を測定するために使用することができる。背圧検知は、ドリルビットを停止すべきときを決定するために使用することができる。特に、背圧の急落は「突破」イベントに対応する可能性があり、その際には、ドリルビットは、硬質の組織からより硬度が低い組織へ移動しており、その場合、血管にぶつかる大きなリスクが存在する可能性がある。
【0070】
図17に示されるように、制御装置(たとえば、制御装置260)は、ドリルビットを後退させる(項目806)とき、及び、検出器(たとえば、OCTプローブ)を挿入する(項目808)ときを決定するために、ドリル(項目802)を作動させて、背圧及び/又はトルクセンサからの読み取り値を連続的に又は周期的に監視する(項目804)ように構成することができる。要するに、ドリルが所望の深さを達成していない、又は、所望の組織型に遭遇していない限り、制御装置は、背圧で急落の兆候のために、背圧形センサからの読み取り値を監視し続けることができる。そのような低下が検出されると、ドリルは後退させることができ、OCTプローブは、ドリルが挿入されていた深さよりわずかに浅い深さまで挿入することができる。次いで、OCTプローブは、測定を行うことができる(項目810)。血管が検出されていない場合、且つ、所望の深さ又は組織型にまだ到達してない場合(項目812)、ドリルビットは再挿入することができ、穿孔を続けることができる。血管が検出された場合、制御装置は、穿孔を終了して、装置を新しい位置に移動させるように構成することができる(項目816)。血管が検出されていない場合、且つ、所望の深さ又は組織型に到達した場合、診断又は治療装置を挿入することができる(項目818)。
【0071】
任意選択的に、閾値を上回る背圧の検出時(項目804)、ドリルは、穴をあけられている組織の解剖学的特性に基づいて決定することができる事前に指定された距離を回転なしで進めることができ(項目820)、背圧は、閾値を上回る値まで戻ることについて、さらに監視することができる(項目822)。たとえば、穴をあけられている組織が頭蓋骨である場合、事前に指定された距離は、頭蓋骨で一般的に見いだされる空隙の平均サイズと等しいように又は平均サイズより小さいように選択することができる。事前に指定された距離を進む前にドリルビット上の背圧が許容できるレベルまで戻らない場合、ドリルビットを後退させることができ、OCTプローブは、ドリルが挿入されていた深さよりわずかに浅い深さまで挿入することができる。次いで、OCTプローブは、測定を行うことができる。血管が検出されていない場合、且つ、所望の深さ又は組織型にまだ到達していない場合、ドリルビットを再挿入してもよく、穿孔を続けてもよい。
【0072】
システム100のための例示的なソフトウェアアーキテクチャ400が
図8に示される。示されるように、マスタソフトウェア410は、組織検出ソフトウェア420、制御ソフトウェア430、及びモータソフトウェア440とインタフェースする。マスタソフトウェア410は、ユーザ入力から受信した情報、並びに、組織検出ソフトウェア420、制御ソフトウェア430、及びモータソフトウェア440から受信したフィードバックに基づいて、動作及びフローを決定することができる。
【0073】
制御ソフトウェア430のための例示的なアーキテクチャが
図9に示される。制御ソフトウェアは、ドリルの移動及びステージに取り付けられた任意のセルを制御するために、さまざまな状態及びフィードバックループを含むことができる。圧縮ロードセルの出力及びドリルモータのトルクに関して実行される計算に基づいて、制御ソフトウェアは、モータソフトウェアに適切な順序を、又は、マスタソフトウェアにフィードバックを送信することができる。骨に完全に穴をあけると決定されているとき、制御ソフトウェアは、「穿孔停止」コマンドを送信し、対象からのドリルセルの除去をもたらすことができる。制御ソフトウェアは、骨の突破を決定するために、圧縮及びトルクに加えて、任意選択的に、抵抗率、温度、光屈折、光吸収、又は張力などの他のデータを使用することができる。
【0074】
制御ソフトウェア430の例示的なモジュールC1~C9は、(C1)待機状態、任意のコマンドを待っている、(C2)センサ較正、(C3)穿孔対象の表面に到達、(C4)対象の表面を検出して、穿孔を開始する、(C5)穿孔、(C6)突破したかどうかの確認/チェック、(C7)OCTモードに移動する、(C8)針(又は、他のツール)モードに移動する、又は、次の穴のためにパラメータをリセットする、(C9)緊急停止、の一部又は全部を任意の組合せで含むことができる。アスタリスク(*)が図に設けられているが、突破が確認されない場合、穿孔に戻る。
【0075】
モータソフトウェア440のための例示的なアーキテクチャが
図10に示される。モータソフトウェアは、ステージ上の各セルの位置決め、アクティブな位置への各セルの移動、及び、セルの直線移動を含む、装置の三次元運動に関連するさまざまな状態及びループを含むことができる。追加のセルを、任意選択的に、加えて、移動させることができる。モータソフトウェアは、ユーザが装置を制御したいときはマスタソフトウェアによって、又は、作動が自動化されているときは制御ソフトウェアによって送信される順序を実行することができる。モータソフトウェアは、利用可能なデータに基づいて、マスタソフトウェア及び制御ソフトウェアの両方に、いつでも停止させることもできる。
【0076】
モータソフトウェア440の例示的なモジュールM1~M8は、(M1)待機状態、任意のコマンドを待っている、(M2)ドリルを下に(すなわち、近位方向に)移動させる、(M3)ドリルを上に(すなわち、遠位方向に)移動させる、(M4)基点に戻す、(M5)停止し、制御ソフトウェアのコマンドを待つ、(M6)OCTプローブ位置に移動する、(M7)針位置に移動する、(M8)次の登録された座標に進む、の一部又は全部を任意の組合せで含むことができる。
【0077】
組織検出ソフトウェア420のための例示的なアーキテクチャが
図11に示される。組織検出ソフトウェアは、光干渉断層法で1つ又は複数の画像をキャプチャすることと、キャプチャ画像に基づいて画像処理及び計算を行うことと、画像に数値又は値の範囲を割り当てることと、値又は値の範囲に基づいて組織材料を識別することと、次いで、制御装置108上に表示されるように、そのデータを保存し、マスタソフトウェアに提供することとを含むことができる。キャプチャ画像は、制御装置108上でリアルタイムに共有することもできる。画像及び計算は、視覚(たとえば、光屈折)、電気、及び、熱技術を含む他の技術から得られるデータと組み合わせることができる。
【0078】
組織検出ソフトウェア420の例示的なモジュールI1~I6は、(I1)スキャンを開始し、生データを収集する、(I2)生データをフェーズ及び強度データに前処理する、(I3)データを処理して、特徴を抽出する、(I4)分類、(I5)データを保存する、(I6)フィードバックを返す、の一部又は全部を任意の組合せで含むことができる。
【0079】
提供される自動穿孔装置は、物質に穴をあけるために使用することができ、それらにおいては、OCT信号においてスペックル分散信号を生成する粒子を搬送する流体チャンネルとの接触を避けることが重要である可能性がある。そのような使用の1つの例は、骨の遠位側に血管が配置されることがある骨又は他の組織に穴をあけることである。穴をあけられた血管は、医学的合併症を引き起こす可能性がある。提供される装置は、頭蓋イメージングなしで任意選択的に使用することができ、血管検出が安全なエントリーポイントの決定を提供する。たとえば、自動穿孔装置は、患者の高解像度のコンピュータ断層撮影若しくは磁気共鳴血管造影図が利用できない場合に、及び/又は、既存の血管造影図への穿孔装置の位置合せを可能にする定位フレームに患者を配置することが可能ではない若しくは望ましくない場合に、頭蓋骨に穴をあけるために使用することができる。
【0080】
伝統的に、外科医は、主要血管を避けるために自身の視覚に基づいて、患者の頭蓋に穴をあける、又は、その他の場合には、頭蓋の一部を取り外す。この技術を使用するときは、穴を通して見ることができるだけ十分に穴を大きくすることが必要とされる可能性がある。レーザ間質性熱療法又は定位的EEG電極配置のために使用される穴などの、より小さい穴をあけるとき、軌道は通常、手術前又は手術中のCT又はMRイメージングに対して慎重に計画される。大きな血管を避ける処置前の計画の後、処置は通常、遭遇することがあるより小さい血管を可視化する機能なしに、盲目的に実行される(それは、血管がイメージング上で十分に可視化されないため、又は、手術前計画と実際の軌道との間の小さいずれのためである)。OCTプローブ又は他の組織検出センサを穿孔装置に組み込むことによって、特に、背圧検知と組み合わせて、血管を避けることができ、比較的小さい穴をあけることができる。そのような配置は、いくつかの利点をもたらし、より小さい穴は、感染をおこしにくく、より容易に治癒可能であり、患者がより大きな穴をあけられたときよりも患者の心的外傷は小さくなる。
【0081】
穴又はボアがあけられると、追加のツールは、診断、治療、又は他の医学的目的のために、穴に挿入することができる。
【0082】
たとえば、意識レベルの低下した外傷患者の場合、圧力プローブは、頭蓋内圧を監視するために、ドリル穴に挿入することができる。臨床診療では、頭蓋内圧モニターは通常、ベッドサイドでの処置の間、直径数ミリメートルのドリルを使用して、神経外科医によって挿入されており、穿孔及びセンサ挿入は、盲目的に行われる。処置の盲目的な性質のために、安全に処置を行うためにはトレーニングが必要とされ、外科医が出血又はセンサの誤配置の検出を行うことは難しい。提供される顕微手術装置は、プローブ配置の位置の直接の視覚化を可能にすることができ、その用手的な配置が難しい、特に、正確な配置が難しいほど十分に小さいプローブを含む、プローブのより正確な配置も可能にすることができる。
【0083】
外科用装置及びシステムは、自動で又は半自動で操作することができるので、神経外科医又は他の資格のある臨床医は、装置の使用をリモートで監視することができる。
【0084】
別の例において、骨(たとえば、頭蓋)の背後に配置された組織への薬物送達を必要とする患者の場合、穿孔及び組織検出処置後、硬膜下腔、クモ膜腔、実質空間、又は脳室腔などの頭蓋内空間に正確に薬物を注入するために、提供される装置で針を挿入することができる。このように注入することができる薬物の例は、ウイルスベクター、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗体、タンパク質、小分子、化学療法薬、及び、一般的に血液脳関門を越えない他の薬剤を含む。脳の治療効果を達成するために、いくつかの抗生物質又は抗真菌薬は、全身的に毒性のある投与量を必要とし、そのため、脳室内ドレイン又は外科的に埋め込まれたリザーバなしに、所望される完全治療濃度に到達することができない。さらにまた、可変薬物濃度は、腰部CSFと脳室CSFとの間で注目されてきた(たとえば、薬物が脳室空間では検出不可能であるが、腰部のCSFの治療薬物濃度になる可能性がある)。さらに、脳に送達したい多くの薬物(たとえば、いくつかの生物製剤、ウイルス)は、大量には利用可能ではなく、又は、行うには高価であり、そのため、脳への直接の送達は、必要な量を何桁も減少させる可能性がある。たとえば、ウイルス治療薬は一般に、一部の用途のために、神経膠腫のための臨床試験の治療薬のように、開頭及び頭蓋内注入を介して送達される。さらにまた、多くの薬物は、全脳又は全身に送達されるとき、重度の副作用を有し、そのため、空間的に局所的な送達は、所定の治療量での副作用を減少させることができる。毒性のある抗真菌薬は、たとえば、感染部位の近くで高濃度でのみ十分に機能する。感染部位の近くでの直接の投与は、薬物を必要な場所で適切な治療用量に到達することを可能にしながら、毒性を低くすることができる。類似の問題は、メトトレキセートなどの化学療法薬の髄腔内投与で認識されており、腰椎穿刺を介しての投与は、結果として直接の頭蓋投与よりも可変の濃度になる。
【0085】
さらなる例において、針、カテーテル、又は生検パンチは、提供される外科用装置によって配送することができ、診断目的のために組織又はCSFを抽出するために使用することができる。そのような方法で固体生検又は液体生検を得ることは、いくつかの利点を提供する。最初に、硬膜は、臨床的に関連する免疫コンパートメントとして現れている。疾患と関連する特定の免疫細胞、並びに、疾患応答に関連するサイトカインは、脳CSFに存在し、腰部CSFに存在しないことがある。さらに、脳脊髄液のサンプリングについては、脊髄CSFとは異なる脳CSFの態様があることが確定している。いくつかの状態は、腰椎槽からのサンプリングを示すことができ、その一方で、他のものは頭蓋CSFからのサンプリングを示す。さらに、腰椎穿刺は、処置時の不快感、処置後の頭痛、及び他の合併症のために、患者に非常に避けられており、小児患者では全身麻酔薬を必要とする可能性がある。子供たちに最も一般的な悪性脳腫瘍である髄芽細胞腫などのいくつかの疾患は、CSFサンプリングを使用して監視してもよいが、そのような技術の使用は、無理なく行うことができるCSFサンプリングの頻度に制限される。最後に、頭蓋CSFをサンプリングする機能は、クモ膜下腔の薬物濃度の評価を可能にすることができ、それは、治療投与を確実にするために、臨床的に有利である可能性があるが、その空間にアクセスする難しさのために、現在、日常的には行われていない。真菌CNS感染などのいくつかの疾患の治療について、専門家は、CSF薬物濃度サンプリングがこの集団における治療を改善するために重要であるという結論を下した。
【0086】
さらに他の例において、プローブは、脳深部刺激を必要とする患者に関して、電気的刺激又は記録のために、提供された外科用装置によって挿入することができる。非侵襲性EEGは、センチメートルのオーダの分解能を有し、低信号という課題を有する。他方で、硬膜外及び硬膜下ECoGは、ミリメートル又はそれ以上のオーダの分解能を有し、ECoGは、EEGより20×~100×高い信号を実現することができる。さらにまた、個々のニューロンの記録は、侵襲性の微小電極でのみ実現することができる。しかしながら、ECoG及び頭蓋内微小電極は、実際に利用されることはほとんどなく、それは、そのような装置の外科的配置が極めて侵襲的であるためである。提供される外科用装置は、電極を硬膜外又は硬膜下レベルに挿入することを可能にすることができ、硬膜外又は硬膜下電極と同様の性能を実現するが、侵襲性は最小の形式である。したがって、これらの測定様式は、より迅速に、より広い一連の兆候に対して、実行することができる。技術仕様に応じて、電気的記録は、(硬膜外ECoGと同様に)頭蓋内から、硬膜の下で(硬膜下ECoG)、又は、脳組織において、実行することができる。
【0087】
電気的記録とともに、脳の最小限に侵襲的な刺激に対する汎用性がある。難治性てんかんでは、ECoG記録は、発作を検出し、発作活動を阻害する刺激(応答性神経刺激)をトリガするために使用することができる。tACS、tDCS、及び時間的干渉などの様式は、広く増大するさまざまな兆候に対しても研究されている。例は、脳卒中又は外傷性脳損傷の後の強化された運動機能回復、ALSのリハビリテーションのための及び神経発生的障害(たとえば、自閉症スペクトル)の治療のための認知の変調を含む。提供される装置及び方法は、これらのシステムと関連するいくつかの課題を解決する。応答性神経刺激のためのシステムは、現在、オープン開頭を介して埋め込まれ、代わりに、提供された技術を使用して、脳表面に送ることができ、そのような神経刺激装置を患者にとってより好ましくする。非侵襲性刺激パラダイムは、頭皮での神経の刺激によって引き起こされる痛み及び不快感などの副作用によって制限され、脳深部領域に到達する電流密度が刺激に十分であるかは不明である。経頭蓋刺激システムは、より少ない不快感でより高い場の強度を実現することができる。この分野の研究者は、脳表面上の電極を使用する刺激が精度及び有効性を改善することができると楽観的であり、技術の臨床的有効性を向上させる。さらにまた、これらのパラダイムは、長期使用を必要とすることがあり、それは、埋め込み型システムに好都合である。
【0088】
実施例
実施例1.前臨床試験結果
外科用システムのハードウェア、電子機器、及びソフトウェアの開発及び試験を行うために、一連の前臨床実験が生きているウサギで行われた。自動的にウサギ頭蓋に穴をあける間に(ドリルビットに加えられる力を測定する)ロードセル及び穿孔モータトルクを使用する方法が考案されて、証明された。試験中に得られた例示的なデータ出力が
図19に示される。力フィードバックに適用された閾値は、頭蓋穿孔の開始を確認するため、及び、穿孔の完了(及び、ドリルビットの自動停止及び除去)を検出するために使用された。
【0089】
例示的な組織特性検出データが
図20に示され、それは、プロトタイプ装置のOCTプローブからキャプチャされた画像を含む。このデータから、イメージングの貫入深さは組織の密度に依存し、血管と、脳物質(皮質)と、骨(頭蓋)との間の明確な区別を可能にすることは明白である。
【国際調査報告】