(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電力変換器の制御方法、変換器装置およびコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240326BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564214
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 IT2021000020
(87)【国際公開番号】W WO2022224280
(87)【国際公開日】2022-10-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロジーニ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】タッキー,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ボンフィリョ,アンドレーア
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770BA11
5H770CA03
5H770CA05
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770GA19
5H770LA05Y
(57)【要約】
電力変換器(11)を制御する方法は、周波数制御誤差(Ferr)、有効電力目標(PSet)、位相角目標(Φ)、電圧制御誤差(Verr)、無効電力目標(Exc)、および出力電圧目標(Vd*)を決定するステップと、出力電圧目標(Vd*)および位相角目標(Φ)に基づいて電力変換器(11)を制御するステップとを含む。本方法は、障害を示す障害信号(SF)が検出された場合に周波数制御誤差(Ferr)とは無関係に、そうでない場合は少なくとも周波数制御誤差(Ferr)に応じて有効電力目標(PSet)を決定するステップと、それぞれの障害信号(SF)の場合に有効電力目標(PSet)とは無関係に、そうでない場合は少なくとも有効電力目標(PSet)に応じて位相角目標(Φ)を決定するステップと、それぞれの障害信号(SF)の場合に電圧制御誤差(Verr)とは無関係に、そうでない場合は少なくとも電圧制御誤差(Verr)に応じて無効電力目標(Exc)を決定するステップと、それぞれの障害信号(SF)の場合に無効電力目標(Exc)とは無関係に、そうでない場合は少なくとも無効電力目標(Exc)に応じて出力電圧目標(Vd*)を決定するステップと、のうちの少なくとも1つを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器(11)を制御する方法であって、
-少なくとも設定点周波数(FSet)および実周波数(F_act)に応じて周波数制御誤差(Ferr)を決定するステップと、
-有効電力目標(PSet)を決定するステップと、
-位相角目標(Φ)を決定するステップと、
-少なくとも設定点電圧(VSet)および実電圧(V_act)に応じて電圧制御誤差(Verr)を決定するステップと、
-無効電力目標(Exc)を決定するステップと、
-出力電圧目標(Vd*)を決定するステップと、
-前記出力電圧目標(Vd*)および前記位相角目標(Φ)に基づいて前記電力変換器(11)を制御するステップと、を含み、
前記方法は、
-障害を示す障害信号(SF)が検出された場合には前記周波数制御誤差(Ferr)とは無関係に前記有効電力目標(PSet)を決定し、そうでない場合には少なくとも前記周波数制御誤差(Ferr)に応じて前記有効電力目標(PSet)を決定するステップと、
障害を示す障害信号(SF)が検出された場合には前記有効電力目標(PSet)とは無関係に前記位相角目標(Φ)を決定し、そうでない場合には少なくとも前記有効電力目標(PSet)に応じて前記位相角目標(Φ)を決定するステップと、
-障害を示す障害信号(SF)が検出された場合には電圧制御誤差(Verr)とは無関係に前記無効電力目標(Exc)を決定し、そうでない場合には少なくとも電圧制御誤差(Verr)に応じて前記無効電力目標(Exc)を決定するステップと、
-障害を示す障害信号(SF)が検出された場合には前記無効電力目標(Exc)とは無関係に前記出力電圧目標(Vd*)を決定し、そうでない場合には少なくとも前記無効電力目標(Exc)に応じて前記出力電圧目標(Vd*)を決定するステップと、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項2】
障害を示す前記障害信号(SF)が検出された場合、前記電力変換器(11)の実有効電力(P_act)および実無効電力(Q_act)の少なくとも一方の初期化値を決定するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
データを所定の周期でメモリ(16)に連続的に記憶するステップを含み、
前記データは、前記実有効電力(P_act)および前記実無効電力(Q_act)の少なくとも一方を含み、
前記初期化値を決定するステップは、前記メモリ(16)に記憶された前記データの中から前記初期化値を選択するステップを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
-前記障害がもはや検出されないと決定するステップと、
-前記実有効電力(P_act)の初期化値を使用して前記有効電力目標(PSet)を決定するステップ、および/または前記実無効電力(Q_act)の前記初期化値を使用して前記無効電力目標(Exc)を決定するステップと、
を含む、
請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記障害がもはや検出されないことを検出した後、前記実有効電力(P_act)の前記初期化値を使用して前記有効電力目標(PSet)を決定するステップ、および/または前記実無効電力(Q_act)の前記初期化値を使用して前記無効電力目標(Exc)を決定するステップの前に所定時間待機するステップを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
同期発電機を模倣するように構成される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
障害を示す障害信号(SF)が検出されない場合、少なくとも前記有効電力目標(PSet)に応じて前記位相角目標(Φ)を決定するステップは、
-少なくとも前記有効電力目標(PSet)および実有効電力(P_act)に応じて有効電力誤差(Perr)を決定するステップと、
-少なくとも前記有効電力誤差(Perr)に応じて前記位相角目標(Φ)を決定するステップと、を含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
障害を示す前記障害信号(SF)が検出された場合、前記有効電力目標(PSet)とは無関係に前記位相角目標(Φ)を決定するステップは、目標周波数(f)を一定にするステップを含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
障害を示す障害信号(SF)が検出されない場合、少なくとも前記無効電力目標(Exc)に応じて前記出力電圧目標(Vd*)を決定するステップは、
-少なくとも前記無効電力目標(Exc)および実無効電力(Q_act)に応じて無効電力誤差(Qerr)を決定するステップと、
-少なくとも前記無効電力誤差(Qerr)に応じて前記出力電圧目標(Vd*)を決定するステップと、を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
障害を示す障害信号(SF)が検出された場合、前記無効電力目標(Exc)とは無関係に前記出力電圧目標(Vd*)を決定するステップは、前記出力電圧目標(Vd*)を一定に保つステップを含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
変換器装置(10)であって、
-制御装置(12)と、
-電圧制御電圧源変換器として実現される電力変換器(11)と、を備え、
前記制御装置(12)は、請求項1~10のいずれか1項に記載の前記電力変換器(11)を制御する方法を実行するように構成されている、変換器装置(10)。
【請求項12】
請求項11に記載の前記制御装置(12)に、請求項1~10のいずれか1項に記載の前記電力変換器(11)を制御する前記方法を実行させるための命令を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、電力変換器の制御方法、変換器装置、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
電力変換器は、電力変換器の第1の側から電力変換器の第2の側に、一例では第2の側から第1の側にも電力を変換する。電力が第1の側から第2の側に変換され、第2の側から第1の側に変換されるこの能力は、双方向性であると呼ばれる。電力変換器の第1の側は、例えば再生可能エネルギー源またはバッテリまたは他のエネルギー貯蔵デバイスに結合される。第2の側は、例えばグリッドに結合される。
【0003】
典型的には、電力変換器は単相または多相電圧源変換器(略してVSC)である。VSCは、交流電流が一次制御変数である電流制御(電流制御VSCの場合は略してCC-VSC)または交流電圧が一次制御変数である電圧制御(電圧制御VSCの場合は略してVC-VSC)のいずれかであり得る。一次制御変数が交流電流と交流電圧との組み合わせであるハイブリッド制御VSCも存在する。
【0004】
同期発電機(SGと略す)は、電力システムにおける主要な発電デバイスである。それは、原動機および同期機の2つの部分を備える。原動機は、蒸気または天然ガスなどの何らかの形態のエネルギーを回転エネルギーに変換するエネルギー変換デバイスである。同期機は、回転エネルギーを交流電気エネルギーに変換する。
【0005】
電力グリッドは、より多くの再生可能エネルギー源(略してRES)、例えば太陽光発電装置、および蓄電システムがグリッドに統合されることによって、より非中央集権化されつつある。これらのRESまたは貯蔵システムは、エネルギー源または貯蔵システムとグリッドとの間の電力またはエネルギー伝達のためのインターフェースを提供するために電力変換器を使用する。再生可能エネルギーおよび非同期機械インターフェースエネルギー源の割合が増加するにつれて、従来の同期発電機から供給される発電の割合が減少し、これはグリッド強度および剛性の全体的な低下をもたらす。
【0006】
SGは、障害(グリッド、マイクログリッド、および/または接続機器の障害)中に部分的または完全な同期解除を示すことができ、部分的な同期解除は、SGを再同期させて定常状態に戻すために障害後に必要とされる電力が大きくなる可能性がある。完全な同期解除は、SGのロータが1つまたは複数の極対をスリップさせ、その元のインデックス位置から1つまたは複数の360度電気的に再インデックスする「極スリップ」をもたらすことができる。これにより、発電機と電力システムの両方に大電流が流れる可能性があり、発電機がトリップするか、または電力システム内の保護デバイスがトリップする可能性がある。
【0007】
VC-VSCの1つの使用は、交流電気網またはグリッドを作成することである。エネルギーは、バッテリ、フライホイールもしくはスーパーキャパシタなどのエネルギー貯蔵システムもしくはデバイス、または発電機もしくは太陽光発電装置などのエネルギー生成デバイス、またはさらには別のグリッドからもたらされ得る。双方向VC-VSCは、負荷(グリッドからのエネルギーを消費する)または発電機(グリッドにエネルギーを生成する)として使用することができる。エネルギーを生成および消費するこの能力は、VSCがグリッドを生成し、グリッド上の唯一のグリッド形成デバイス、すなわちスタンドアロンとして実行することができるか、または他のデバイスによって形成されたグリッドの周波数または電圧を安定させるために使用することができることを意味する。
【0008】
一例では、VC-VSCは、例えば、VSCのスタンドアロンおよび並列動作、同期発電機などの他のソースとの並列動作、およびグリッドとの並列動作を可能にするために、それらが同期発電機のように見えるかまたはそれを模倣することを可能にする制御システムで実装される。このように動作するVSCは、仮想同期発電機(略してVSG)と呼ぶことができる。
【0009】
論文「Practical application of a complete virtual synchronous generator control method for microgrid and grid-edge application」A.TuckeyおよびS.Round、第19回IEEE 電力エレクトロニクスの制御およびモデリングに関するワークショップ、イタリア、2018年6月25日~28日は、VSGを説明している。
【0010】
VSGは、SGと同様に、部分的および完全な同期解除を経験することができる。一例では、障害中に、機能の特性をリアルタイムで適応的に変更することによって、すなわち、慣性定数H、ゲインKpおよびKi、ならびに周波数調整器機能の最大限界および最小限界などのパラメータを調整することによって、応答を改善することができる。
【0011】
文献欧州特許第3376627号明細書は、電力変換器を制御するための方法および制御システムについて言及している。
【0012】
しかしながら、慣性定数および調速機の利得および制限を調整すると応答が改善されるが、障害中および障害後の優れた障害応答を有する、完全に機能する実用的なVSGを作成するには不十分である。他の制御変動が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の開示
本発明の目的は、改善されたエネルギー伝達および電力変換器制御を提供することであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1の特徴による電力変換器を制御する方法によって解決される。
本発明のさらなる実施形態は、電力変換器を制御するための変換器装置およびコンピュータプログラム製品に関する。
【0015】
一実施形態によれば、電力変換器を制御する方法は、
-少なくとも設定点周波数および実周波数に応じて周波数制御誤差を決定するステップと、
-有効電力目標を決定するステップと、
-少なくとも有効電力目標に応じて位相角目標を決定するステップと、
-少なくとも設定点電圧および実電圧に応じて電圧制御誤差を決定するステップと、
-無効電力目標を決定するステップと、
-少なくとも無効電力目標に応じて出力電圧目標を決定するステップと、
-出力電圧目標および位相角目標に基づいて電力変換器を制御するステップと、を含む。
【0016】
さらに、本方法は、
-障害を示す障害信号が検出された場合には周波数制御誤差とは無関係に有効電力目標を決定し、そうでない場合には少なくとも周波数制御誤差に応じて有効電力目標を決定するステップと、
-障害を示す障害信号が検出された場合には有効電力目標とは無関係に位相角目標を決定し、そうでない場合には少なくとも有効電力目標に応じて位相角目標を決定するステップと、
-障害を示す障害信号が検出された場合には電圧制御誤差とは無関係に無効電力目標を決定し、そうでない場合には少なくとも電圧制御誤差に応じて無効電力目標を決定するステップと、
-障害を示す障害信号が検出された場合には無効電力目標とは無関係に出力電圧目標を決定し、そうでない場合には少なくとも無効電力目標に応じて出力電圧目標を決定するステップと、のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
有利には、障害を示す障害信号が検出された場合、有効電力目標、位相角目標、無効電力目標、および出力電圧目標のうちの少なくとも1つは、障害を示す障害信号が検出されない場合のようにもはや決定されない。障害を示す障害信号が検出された場合、これらの値の少なくとも1つは、例えば、一定に保たれるか、または電力変換器のエネルギー伝達および制御を改善するために別の方法で決定される。
【0018】
一実施形態によれば、本方法は、障害を示す障害信号が検出された場合、電力変換器の実有効電力および実無効電力の少なくとも一方の初期化値を決定するステップを含む。
【0019】
一実施形態によれば、本方法は、データを所定の周期でメモリに連続的に記憶するステップを含む。データは、実有効電力および実無効電力の少なくとも一方を含む。初期化値を決定するステップは、メモリに記憶されたデータの中から初期化値を選択するステップを含む。
【0020】
一実施形態によれば、本方法は、障害がもはや検出されないと決定し、実有効電力の初期化値を使用して有効電力目標を決定するステップ、および/または実無効電力の初期化値を使用して無効電力目標を決定するステップを含む。
【0021】
一実施形態によれば、本方法は、障害がもはや検出されないことを検出した後、実有効電力の初期化値を使用して有効電力目標を決定する前に、および/または実無効電力の初期化値を使用して無効電力目標を決定する前に、所定時間待機するステップを含む。
【0022】
一実施形態によれば、本方法は、同期発電機を模倣するように構成される。
一実施形態によれば、障害を示す障害信号が検出されない場合、少なくとも有効電力目標に応じて位相角目標を決定するステップは、少なくとも有効電力目標および実有効電力に応じて有効電力誤差を決定するステップと、少なくとも有効電力誤差に応じて位相角目標を決定するステップとを含む。
【0023】
一実施形態によれば、障害を示す障害信号が検出された場合、有効電力目標とは無関係に位相角目標を決定するステップは、目標周波数を作成するかまたは一定に保つステップを含む。
【0024】
一実施形態によれば、障害を示す障害信号が検出されない場合、少なくとも無効電力目標に応じて出力電圧目標を決定するステップは、少なくとも無効電力目標および実無効電力に応じて無効電力誤差を決定するステップと、少なくとも無効電力誤差に応じて出力電圧目標を決定するステップとを含む。
【0025】
一実施形態によれば、障害を示す障害信号が検出された場合、無効電力目標とは無関係に出力電圧目標を決定するステップは、出力電圧目標を一定に保つステップを含む。
【0026】
以下の開示の文脈では、機能という用語は、例えばプログラムコード行、機能ブロック、機能サブルーチンおよび/または手順などの実行可能プログラムコードに基づく1つまたは複数の機能のセットまたはグループを指す。機能という用語は、方法の理解を容易にするために使用される。本方法の可能な実現では、異なる機能を1つの機能に組み合わせることができる。
【0027】
さらなる実施形態によれば、周波数制御誤差を決定し、有効電力目標を決定するステップは、周波数調整器機能によって実行される。内部周波数および位相角目標を決定するステップは、慣性機能によって実行される。電圧制御誤差を決定するステップおよび無効電力目標を決定するステップは、自動電圧調整機能によって実行される。出力電圧目標を決定するステップは、ロータ磁束機能によって実行される。出力電圧目標および位相角目標に基づいて電力変換器を制御するステップは、変換機能によって実行される。任意選択的に、これらの機能は組み合わされる。機能は、プログラムコードの別個のブロックに、またはプログラムコードの結合ブロックに、またはプログラムコードの1つのブロックに書き込むことができる。
【0028】
一例では、定常状態で動作する場合、周波数設定点値および電圧設定点値は一定の値になる。また、周波数制御誤差は0になり、有効電力目標は実有効電力に等しくなり、電圧制御誤差は0になり、無効電力目標は実無効電力に等しくなる。
【0029】
一例では、障害中、実有効電力および実無効電力は定常状態の値から変化し得る。実電圧および実周波数はまた、定常状態の値から変化し得る。実有効電力、実無効電力、実電圧、および実周波数のこれらの変動は、障害中のVSGの同期解除に寄与する。
【0030】
さらに、さらなる実施形態では、本方法は、例えば、障害を示す障害信号が検出されると、周波数調整器機能、自動電圧調整器機能、ロータ磁束機能、および慣性機能のうちの少なくとも1つの機能の実行が保留される。周波数調整器機能、自動電圧調整器機能、またはロータ磁束機能の保留は、アルゴリズムまたは機能の実行が保留され、出力が固定、ロック、一定のまま、およびフリーズのうちの1つであることを意味する。慣性機能の場合、保留は、アルゴリズムまたは機能の実行が保留され、周波数が固定、ロック、一定のまま、およびフリーズのうちの1つであり、角度が進行し続けることを意味する。
【0031】
さらなる実施形態では、一定出力は、障害が発生した時点で取られた値であってもよく、または他の何らかの値であってもよい。
【0032】
さらなる実施形態によれば、有利には、周波数調整器機能、自動電圧調整器機能、慣性周波数機能、およびロータ磁束機能のうちの少なくとも1つの機能が保留され、それぞれの出力は、障害信号が障害がないことを示す後まで一定に保持される。したがって、下流の機能または変換の入力値であるこの機能の出力値は一定である。したがって、下流の機能または変換は、障害の場合にも高い信頼性および/または予測可能性で動作することができる。
【0033】
さらなる実施形態によれば、機能のうちの1つの実行のみが保留される。他の機能は、障害信号の値とは無関係に動作する。
【0034】
さらなる実施形態によれば、2つの機能の実行が保留される。他の機能は、障害信号の値とは無関係に動作する。
【0035】
さらなる実施形態によれば、3つの機能の実行が保留される。他の機能は、障害信号の値とは無関係に動作する。
【0036】
さらなる実施形態によれば、4つの機能のすべての実行が保留される。
さらなる実施形態では、本方法は、特にグリッドに接続されているときにオンラインで実行され、および/またはリアルタイムで実行される。
【0037】
一実施形態によれば、変換器装置は、制御装置と、電圧制御電圧源変換器として実現される電力変換器とを備える。制御装置は、本開示に記載の方法を実行するように構成される。一例では、電力変換器は、グリッドおよびエネルギー源/負荷装置に接続されるように構成される。
【0038】
一実施形態によれば、コンピュータプログラム製品は、電力変換器を制御する方法を制御装置に実行させるための命令を含む。
【0039】
上述の電力変換器の制御方法およびコンピュータプログラム製品は、例えば、変換器装置に適している。したがって、変換器装置およびコンピュータプログラム製品に関連して説明した特徴および利点を本方法に使用することができ、その逆も可能である。
【0040】
一例では、障害は、グリッド、変換器をグリッドに接続する機器、例えば結合線もしくは回路遮断器もしくは変圧器、または電力変換器自体の意図しないもしくは偶発的な短絡または部分的な短絡である。3相交流システムには、例えば、(1)3相低インピーダンス短絡、(2)相間低インピーダンス短絡、(3)相対接地低インピーダンス短絡、(4)相間対接地低インピーダンス短絡、(5)3相高インピーダンス短絡、(6)相間高インピーダンス短絡、(7)相対接地高インピーダンス短絡、(8)相間対接地高インピーダンス短絡の8つの異なるタイプの短絡がある。1相交流システムには、例えば、(1)相対接地低インピーダンス短絡、(2)相対接地高インピーダンス短絡の2つの異なるタイプの短絡がある。中性点は、状況によっては、直接またはインピーダンスを介して接地に接続されるため、地絡障害は、対中性点障害と同義である。多くの現象が障害を引き起こす可能性がある。例は、異なる相のケーブルが誤って互いに接触している場合、動物が相間あるいは1つの相または複数の相と接地との間、あるいは1つの相または複数の相と中性点との間に導電経路を形成する場合、絶縁体が故障した場合、変圧器または回路遮断器または他の機器の発火時、障害を引き起こすアークを発生させる落雷など多数ある。
【0041】
一例では、変換器の定格を超える負荷である過負荷は、通常、過剰な変換器電流を引き起こす。わずかな過負荷では変換器の出力電圧が過度に低下することはないが、深刻な過負荷では低下する。障害、特に低インピーダンス障害は、深刻な過負荷、すなわち過剰な変換器電流および出力電圧の低下と同様の影響を変換器に及ぼす。一例では、障害を検出する方法は、変換器電流が過剰であり、変換器出力電圧が低下しているかどうかを判定することであり得る。別の例では、回路遮断器または障害リレーを使用して、障害を検出することができる。さらなる例では、上流のデバイスを使用して障害を検出することができる。例示的な方法の1つまたは別の方法を使用して障害が検出されると、障害変数または障害信号のステータスを変更することができる。したがって、障害信号は、障害を示すか、または障害がないことを示すように構成される。
【0042】
一例では、「別のパラメータに応じてパラメータを決定する」という用語は、制御装置が、例えば、制御ループ、ルックアップテーブル、ファジー論理、モデル、およびオブザーバ、または決定プロセスを実行するハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェア/ソフトウェアの組み合わせで実現される別のアイテムのうちの少なくとも1つを含むことを意味する。単語は、パラメータが任意選択的にさらなるパラメータにも依存し得るという意味を有する。
【0043】
一例では、実周波数、実電圧、実有効電力、および実無効電力は、電力変換器の値である。
【0044】
一例では、実周波数、実電圧、実有効電力、および実無効電力は、例えば電力変換器の内部または電力変換器の端子または他の場所で測定または検出される。例えば、これらの値のうちの2つ以上の1つは、電力変換器の第2の側の端子で測定または検出される。第2の側は、例えばグリッドに接続される。
【0045】
一例では、電力変換器を制御する方法および制御装置は、グリッド擾乱中の電力変換器応答を改善するように構成される。制御装置は、制御システムと呼ぶことができる。
【0046】
本開示は、変換器装置および電力変換器を制御する方法のいくつかの態様を含む。それぞれの特徴が特定の態様の文脈で明示的に言及されていなくても、態様の1つに関して説明されたすべての特徴は、他の態様に関しても本明細書に開示される。
【0047】
図面の簡単な説明
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれる。図では、同じ構造および/または機能の要素は、同じ参照符号で参照され得る。図に示される実施形態は例示的な表現であり、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】異なる実施形態による変換器装置の概略図である。
【
図2】異なる実施形態による変換器装置の概略図である。
【
図3A】異なる実施形態による電力変換器を制御する方法の概略図である。
【
図3B】異なる実施形態による電力変換器を制御する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明を実施するための最良の形態
図1は、一実施形態による変換器装置10の概略図である。変換器装置10は、制御装置12と電力変換器11とを備える。電力変換器11は、電圧制御電圧源変換器として実現される。電力変換器11は、グリッド13およびエネルギー源/負荷装置14に接続されるように構成される。源/負荷装置14は、例えば再生可能エネルギー供給源(RESと略す)またはエネルギー貯蔵デバイスまたは別のグリッドのうちの1つとして実現される。制御装置12は、電力変換器11を制御する方法を実行するように構成される。制御装置12は、コンピュータ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、およびFPGAと略されるフィールドプログラマブルゲートアレイのうちの少なくとも1つを含む。制御装置12は、メモリ16と、任意選択的に初期化値メモリ15とを備える。
【0050】
コンピュータプログラム製品17は、電力変換器11を制御する方法を制御装置12に実行させるための命令を含む。
【0051】
一例では、本方法は、少なくとも以下の実行可能機能、すなわち、周波数調整器機能21、慣性機能22、自動電圧調整器機能23、およびロータ磁束機能24を含む。本方法は、同期発電機を模倣する。周波数調整器機能21、慣性機能22、自動電圧調整器機能23およびロータ磁束機能24は、同期発電機を模倣する。本方法は、例えば変換機能25などのさらなる機能を有することができる。制御装置12は、例えばコンピュータプログラム製品17を使用して、周波数調整器機能21、慣性機能22、自動電圧調整器機能23、ロータ磁束機能24および変換機能25を実現する。機能は、モジュールまたはブロックと呼ぶこともできる。典型的には、機能はソフトウェアおよび/またはハードウェアによって実現される。
【0052】
同期発電機とVSGの両方が示す一態様は、障害(グリッドまたはマイクログリッドの障害)中の部分的または完全な同期解除である。部分的な同期解除は、同期発電機またはVSGを再同期させて定常状態に戻すために障害後に必要とされる電力(再同期電力または再同期トルクと呼ばれる)が大きくなる。ユーティリティ調整器および規格は、例えば、100ms以内に障害前の値の95%を必要とするこの再同期電力を制限する。完全な同期解除は、同期発電機のロータが1つまたは複数の極対をスリップさせ、その元のインデックス位置から1つまたは複数の360度電気的に再インデックスする「極スリップ」をもたらす。これにより、発電機と電力システムの両方に大電流が流れ、発電機がトリップするか、または電力システム内の保護デバイスがトリップする可能性がある。
【0053】
VSGは、同期発電機と同様に、部分的および完全な同期解除を経験することができる。電力変換器11は、VSGとして動作する。障害中のVSG動作は、
図2、
図3A、および
図3Bで説明するように実現することができる。
【0054】
図2は、
図1に示す実施形態のさらなる発展形態である実施形態による変換器装置10の概略図である。本開示では、「磁束」および「逆起電力」という用語は、VSGにおいて同様であるため、交換可能に使用することができる。「保留」、「フリーズ」および「ロック」の使用は交換されるが、異なるものを指すことができる。仮想慣性周波数fはフリーズまたはロックすることができるが(例えば、仮想慣性周波数fは同じままである)、周波数調整器機能21の動作は保留またはロックされ、これは非アクティブのままであることを意味する。
【0055】
大まかに言えば、電力変換器11を制御する方法は、5つの制御構成要素、すなわちSGロータ磁束モデル、自動電圧調整器(AVRと略す)、慣性および速度/周波数調整器のうちの4つの動作をロックまたはフリーズまたは保留するように構成される。したがって、周波数調整器機能21、慣性機能22、自動電圧調整器機能23、およびロータ磁束機能24のうちの少なくとも1つは、保留、ロック、またはフリーズされる。変換機能25(第5の制御構成要素である)は、フリーズまたはロックまたは保留されない。有利には、本方法は、VSGの障害中に部分的な完全同期解除を低減または回避または停止する。
【0056】
本方法は、障害の検出時またはその少し前に、VSGの実有効電力P_actおよび実無効電力Q_actのスナップショットを取得する。実有効電力P_actは、出力有効電力または有効電力と呼ぶことができる。実無効電力Q_actは、出力無効電力または無効電力と呼ぶことができる。障害停止時には、これらの実有効電力P_actおよび実無効電力Q_actの値(記憶されており、もはや「実際の」値ではなく、障害前の値である)が初期化値として用いられる。また、ロータ磁束および仮想慣性周波数fの値は、ロックまたはフリーズされるか、またはロックまたはフリーズに近く、および/またはそれらのパラメータは、障害の検出時またはそのわずか前に調整される。さらに、周波数調整器機能21およびAVR機能23の動作は障害の検出時に停止され、それらの出力がロックまたはフリーズされることを意味する。上記を行うことは、障害中、磁束/逆起電力および仮想慣性がグリッドと同期したままであり、励磁および調整器電力が変化しないままであることを意味する。
【0057】
障害の停止時または停止直後に、磁束/逆起電力および慣性はフリーズ解除され、それらのパラメータは正常値に回復される(それらが変更された場合)。また、周波数調整器機能21およびAVR機能23は、それぞれ有効電力P_actおよび無効電力Q_actのスナップショットで初期化され、それらの動作が再開される。これにより、再同期電力が小さくなり、短時間で故障前の定常状態に近い動作が得られる。障害がクリアされると、電力変換器10は直ちに定常状態に戻るように構成される。したがって、実無効電力Q_actの初期化値はAVR機能23を初期化するために使用され、および/または実有効電力P_actの初期化値は周波数調整器機能21を初期化するために使用される。
【0058】
制御装置12の動作は、
図3Aおよび
図3Bを使用して以下に説明される。
図3Aは、
図1および
図2に示す実施形態のさらなる発展形態である実施形態による電力変換器11を制御する方法の概略図である。
【0059】
電力変換器11を制御する方法は、
-設定点周波数FSetおよび電力変換器11の実周波数F_actに応じて周波数制御誤差Ferrを決定するステップ(プロセス71)と、
-周波数調整器機能21によって周波数制御誤差Ferrに応じて有効電力目標PSetを決定するステップ(プロセス72)と、
-慣性機能22によって有効電力目標PSetに応じて位相角目標Φを決定するステップ(プロセス73)と、
-設定点電圧VSetおよび電力変換器11によって提供される実電圧V_actに応じて電圧制御誤差Verrを決定するステップ(プロセス74)と、
-AVR機能23によって電圧制御誤差Verrに応じて無効電力目標Excを決定するステップ(プロセス75)と、
-ロータ磁束機能24によって無効電力目標Excに応じて出力電圧目標Vd*を決定するステップ(プロセス76)と、
-出力電圧目標Vd*および位相角目標Φに基づいて電力変換器11を制御するステップ(プロセス77)と、を含む。
【0060】
上述したプロセス71から77は、電力変換器11の通常動作中に(障害のない時間に)実行される。通常動作中、電力変換器10は定常状態にある。したがって、電圧制御誤差Verrおよび周波数制御誤差Ferrは、障害前には0またはほぼ0である。
【0061】
さらに、本方法は、
-障害信号SFが障害を示すように、障害検出後に障害信号SFを変更するステップ(プロセス78)と、
-周波数調整器機能21および慣性機能22、自動電圧調整器機能23およびロータ磁束機能24のうちの少なくとも1つの機能を、少なくとも1つの中断された機能がその出力において一定の値を提供するように保留するステップ(プロセス79)と、を含む。
【0062】
プロセスのいくつかは、並行して行うことができる。例えば、プロセス71から73は、プロセス74から76と並列であってもよい。プロセス79はプロセス78の後に続く。
【0063】
障害の発生は、本方法またはプロセスを使用して検出される。障害信号SFは、例えば、端子電圧が抑制された状態で電力変換器11の電流制限に達するか、または上述の別の状態が検出された場合に、障害を示す(例えば、第1の論理値に設定される)。障害が検出されると、障害信号SFは障害を示す(例えば、第1の論理値を取得する)。これにより、障害が検出された場合に、障害を示す障害信号SFを検出することができる。言い換えれば、障害信号SFが発出され、「高」または「真」または「アクティブ」または「上昇」値を示し、障害信号SFは、制御方式全体にわたって使用される。
【0064】
「クリア」されているとして知られる、障害が停止した場合、障害信号SFは障害がないことを示す(例えば、第2の論理値を取得する)。言い換えれば、障害信号SFは弱められ、「低」または「非アクティブ」または「偽」値を示す。障害前有効電力および障害前無効電力の回復を改善するために、この方法では、例えば、クリアされる障害と弱められた障害信号SFとの間に短い所定の遅延が導入される。障害信号SFの第2の論理値は、障害が無いことを示す。
【0065】
これにより、プロセス78では、障害が検出され、障害信号SFが発出される。
プロセス79では、障害信号SFが障害を示している(障害信号SFがアクティブである)間、周波数調整器機能21の動作は保留され、周波数調整器機能21の出力、すなわち有効電力目標PSetは一定値になる。したがって、フリーズは、積分器または他のコントローラタイプが巻き上がらないようにする。周波数調整器機能21は、周波数コントローラ113(FCtrl機能または調整器周波数コントローラとも呼ばれる)を含む。周波数コントローラ113は、例えば、P、PIまたはPIDコントローラである。Pコントローラは、Proportional Controller(比例コントローラ)の略称であり、PIは、Proportional-Integral Controller(比例積分コントローラ)の略称である。PIDは、Proportional-Integral-Derivative Controller(比例積分微分コントローラ)の略称である。周波数コントローラ113は、障害信号SFが適用されるフリーズ制御入力103を含む。障害を示す障害信号SFが(フリーズ制御入力103を介して)周波数コントローラ113に適用される場合、周波数コントローラ113は、例えば周波数制御誤差Ferrとは無関係に、有効電力目標PSetに一定値を提供する。一定値は、障害信号SFが障害を示すように障害信号SFが変化する前の有効電力目標PSetの値である。
【0066】
障害信号SFが変化し、現在障害がないことを示す場合、メモリ16または初期化値メモリ15から周波数コントローラ113に以前の実有効電力P_actの初期化値が適用される。このようにして、周波数調整器機能21が以前に保留されている場合には、周波数調整器機能21を初期化することができる。
【0067】
さらに、障害信号SFが障害を示している間、AVR機能23の動作は保留され、AVR機能23の出力、すなわち無効電力目標Excは一定値になる。これにより、積分器または他のコントローラタイプが巻き上がらない。AVR機能23は、電圧コントローラ115(VCtrl機能とも呼ばれる)を含む。電圧コントローラ115は、例えば、P、PIまたはPIDコントローラである。電圧コントローラ115は、障害信号SFが適用されるフリーズ制御入力108を含む。障害を示す障害信号SFが(フリーズ制御入力108を介して)電圧コントローラ115に適用される場合、電圧コントローラ115は、例えば電圧制御誤差Verrとは無関係に、無効電力目標Excに一定値を提供する。一定値は、障害信号SFが障害を示すように、障害信号SFが変化する前の無効電力目標Excの値である。
【0068】
障害信号SFが変化し、現在障害がないことを示す場合、メモリ16または初期化値メモリ15から電圧コントローラ115に以前の実無効電力Q_actの初期化値が適用される。このようにして、AVR機能23が以前に中断されている場合には、AVR機能23を初期化することができる。
【0069】
図3Bは、
図1、
図2、および
図3Aに示す実施形態のさらなる発展形態である実施形態による電力変換器を制御する方法の概略図である。本方法は、電力変換器11の実有効電力P_actおよび実無効電力Q_actの少なくとも一方の初期化値を初期化値メモリ15に記憶するステップ(プロセス80)を含む。初期化値メモリ15への値の記憶は、障害信号SFが変化し、変化後に障害を示す場合、または障害信号SFが障害を示すように設定された後もしくはその前に行われる。例えば、実有効電力P_actの初期化値は、S/Hメモリ102に記憶される。実無効電力Q_actの初期化値は、S/Hメモリ107に記憶される。
【0070】
一例では、本方法は、所定の周期で電力変換器11のデータをメモリ16に記憶するステップを含む。電力変換器11の実有効電力P_actおよび実無効電力Q_actの少なくとも一方の初期化値を初期化値メモリ15に記憶するステップは、メモリ16に記憶されているデータの中から少なくとも一方の値を選択して初期化値メモリ15に記憶するステップを含む。メモリ16は、例えば循環バッファとして実装される。メモリ16は、例えばデータロガーとして構成される。メモリ16は、実有効電力P_actおよび実無効電力Q_actの少なくとも一方のデータの履歴を記憶する。
【0071】
あるいは、電力変換器11の実有効電力P_actおよび実無効電力Q_actの少なくとも一方の初期化値をメモリ16から直接取り込む。この場合、初期化値メモリ15は省略可能である。
【0072】
障害信号SFが障害を示すように障害信号SFが変更されると、VSGによって供給されている実有効電力P_actおよび/または実無効電力Q_actのスナップショットがメモリ16および/または初期化値メモリ15に記憶される。実有効電力P_actおよび/または実無効電力Q_actは、電力変換器11で測定される値である。初期化値メモリ15は、例えば、サンプルホールドメモリ102(S/Hメモリと略す)およびさらなるS/Hメモリ107を含む。これは、S/Hメモリ102、107の立ち上がりエッジトリガによって示される。したがって、実有効電力P_actおよび/または実無効電力Q_actは、例えば障害信号SFの立ち上がりエッジで初期化値メモリ15に記憶される。記憶される1つまたは複数の値は、適切な定常状態値が記憶されることを確実にするために、障害信号SFのインスタンスにあっても、わずかに早くてもよい。これは、例えば、上述したメモリ16の循環バッファによって達成される。
【0073】
制御装置12は、周波数調整器機能21、慣性機能22、AVR機能23、およびロータ磁束機能24が同期発電機を模倣するように構成されるように実装される。
【0074】
以下では、障害前の制御装置12のプロセスが説明される。障害信号SFが障害がないことを示す場合、慣性機能22によって有効電力目標PSetに応じて位相角目標Φを決定するステップは、
-慣性機能22によって有効電力目標PSetおよび実有効電力P_actに応じて有効電力誤差Perrを決定するステップと、
-慣性機能22によって有効電力誤差Perrに応じて位相角目標Φを決定するステップと、を含む。
【0075】
有効電力目標PSetは、周波数調整器機能21の出力に提供される。有効電力誤差Perrは、有効電力目標PSetおよび実有効電力P_actを入力とする慣性機能22の減算部40によって生成される。位相角目標Φは、少なくとも目標周波数fに応じて慣性機能22の積分器41によって生成される。目標周波数fは、慣性機能22の慣性コントローラ42によって生成される。慣性コントローラ42は、有効電力誤差Perrを受信する。慣性コントローラ42は、例えばPIコントローラとして実現される。慣性コントローラ42は、例えば、順方向分岐におけるパラメータKH/Sと、フィードバック分岐におけるパラメータKdとを含む。あるいは、慣性コントローラ42は、例えばPIDコントローラとして、または別の方法で実現される。
【0076】
周波数調整器機能21において、設定点周波数FSetおよび実有効電力P_actは、周波数調整器機能21の第1の減算ユニット43に供給される。実有効電力P_actは、周波数調整器機能21の周波数ドループ機能44によって修正される。周波数誤差Ferrは、少なくとも実周波数F_actおよび第1の減算ユニット43の出力に応じて、周波数調整器機能21の第2の減算ユニット45によって生成される。有効電力目標PSetは、少なくとも周波数制御誤差Ferrに応じて周波数コントローラ113によって生成される。
【0077】
AVR機能23において、設定点電圧VSetおよび実無効電力Q_actは、AVR機能23の第1の減算ユニット46に提供される。実無効電力Q_actは、AVR機能23の電圧ドループ機能47によって修正される。電圧制御誤差Verrは、少なくとも実電圧V_actおよび第1の減算ユニット46の出力に応じて、AVR機能23の第2の減算ユニット48によって生成される。無効電力目標Excは、少なくとも電圧制御誤差Verrに応じて、電圧コントローラ115によって生成される。
【0078】
障害信号SFが障害がないことを示す場合、ロータ磁束機能24によって少なくとも無効電力目標Excに応じて出力電圧目標Vd*を決定するステップは、
-少なくとも無効電力目標Excおよび実無効電力Q_actに応じて無効電力誤差Qerrを決定するステップと、
-少なくとも無効電力誤差Qerrに応じて出力電圧目標Vd*を決定するステップと、を含む。
【0079】
無効電力誤差Qerrは、少なくとも無効電力目標Excおよび実無効電力Q_actに応じて、ロータ磁束機能24の減算ユニット49によって提供される。ロータ磁束機能24は、磁束モデルコントローラと呼ぶことができる磁束コントローラ52を含む。磁束コントローラ52は、例えば、パラメータKψを有する積分器として、またはPIもしくはPIDコントローラとして実現される。磁束コントローラ52は、少なくとも無効電力誤差Qerrに応じて出力電圧目標Vd*を生成する。
【0080】
変換機能25は、第1および第2の変換53、54を含む。第1の変換53は、位相角目標Φおよび電圧目標Vd*(または電圧目標Vd*から導出された量|Ea|)を受け取り、ベクトル信号Eaを生成する。変換機能25は、仮想インピーダンス55を含む。変換機能25の減算ユニット56は、少なくとも第1の変圧器53の出力および仮想インピーダンス55の出力に応じてさらなるベクトル信号Vaを提供する。第2の変換53は、減算ユニット56の出力を受け取り、電力変換器11に提供される信号を生成する。
【0081】
障害の場合、以下のプロセスのうちの少なくともいくつかが行われる。障害信号SFが障害を示すように障害信号SFが設定されている場合、慣性機能22によって少なくとも有効電力目標PSetに応じて位相角目標Φを決定するステップは、(例えば、追加的に)以下の
-少なくとも慣性機能22のパラメータを調整するステップ、および
-少なくとも慣性機能22の内部信号をフリーズさせるステップ、のいずれかまたは両方を含む(プロセス81)。
【0082】
調整されている慣性機能22の少なくともパラメータの例は、慣性コントローラ42の順方向分岐におけるパラメータKH/Sおよびフィードバック分岐におけるパラメータKdである。慣性機能22の少なくとも内部信号の例は、目標周波数f、パラメータKdを有するフィードバック分器の出力における信号、または他の内部信号である。
【0083】
一例では、障害を示す障害信号SFが検出された場合、有効電力目標PSetとは無関係に位相角目標Φを決定するステップは、例えば、障害を示す障害信号SFが検出された時点またはその少し前の値で、目標周波数fを一定にするステップを含む。
【0084】
障害信号SFが障害を示している(アクティブである)間、スイッチ装置104の動作に応じて、以下の動作、すなわち、
-仮想慣性モデルのパラメータを変更または調整することができる、
-仮想慣性モデルの内部の値はフリーズされる、のいずれかまたは両方が行われ、これにより、出力または目標周波数fがフリーズされ、したがってVSGがグリッド13に同期したままであることが保証される。
【0085】
スイッチ装置104の第1のスイッチ104’が導通状態に設定された場合、障害信号SFは、慣性コントローラ42の第1の制御入力105に提供され、少なくともパラメータを修正するようにトリガする。スイッチ装置104の第2のスイッチ104’’が導通状態に設定された場合、障害信号SFは、慣性コントローラ42の第2の制御入力106に提供され、少なくとも慣性機能22の値をフリーズさせるようにトリガする。第1のスイッチ104’が導通状態に設定され、第2のスイッチ104’’が導通状態に設定された場合、障害信号SFは、慣性コントローラ42の第1の制御入力105に提供され、少なくともパラメータを修正するようにトリガし、障害信号SFは、慣性コントローラ42の第2の制御入力106に提供され、慣性機能22の少なくとも値をフリーズするようにトリガする。
【0086】
障害信号SFが障害を示すように障害信号SFが設定される場合、ロータ磁束機能24によって少なくとも無効電力目標Excに応じて出力電圧目標Vd*を決定するステップは、以下の
-ロータ磁束機能24の少なくともパラメータを調整するステップ、および
-少なくともロータ磁束機能24の信号をフリーズさせるステップ、のいずれかまたは両方を含む(プロセス82)。信号は、内部信号または出力電圧目標Vd*とすることができる。
【0087】
一例では、障害を示す障害信号SFが検出された場合、出力電圧目標Vd*は、例えば、障害を示す障害信号が検出された時点またはその少し前の値で一定に保たれる。
【0088】
障害を示す障害信号SFが検出されているかまたはアクティブである間、さらなるスイッチ装置109の動作に応じて、以下の動作、すなわち、
-磁束モデルのパラメータを変更または調整することができる、
-磁束モデルの内部の値はフリーズされる、のいずれかまたは両方が行われ、これにより、出力電圧目標Vd*がフリーズされ、したがってVSGがグリッド13に同期したままであることが保証される。
【0089】
さらなるスイッチ装置109の第1のスイッチ109’が導通状態に設定された場合、障害信号SFは、磁束コントローラ52の第1の制御入力110に提供され、少なくともパラメータを修正するようにトリガする。さらなるスイッチ装置109の第2のスイッチ109’’が導通状態に設定された場合、障害信号SFは、磁束コントローラ52の第2の制御入力111に提供され、少なくともロータ磁束機能24の値をフリーズさせるようにトリガする。第1のスイッチ109’が導通状態に設定され、第2のスイッチ109’’が導通状態に設定された場合、障害信号SFは、磁束コントローラ52の第1の制御入力110に提供され、少なくともパラメータを修正するようにトリガし、障害信号SFは、磁束コントローラ52の第2の制御入力111に提供され、ロータ磁束機能24の少なくとも値をフリーズするようにトリガする。
【0090】
スイッチ装置104およびさらなるスイッチ装置は、スイッチ104’、104’’、109’、109’’を実装する論理、ソフトウェア、またはトランジスタを使用して実現することができる。
【0091】
さらに、本方法は、
-障害信号SFが障害を示すように障害信号SFを変更した後、障害がもはや検出されないと決定するステップと、
-障害信号SFが障害なしを示すように障害信号SFを変更するステップと、
-少なくとも1つの保留された機能を初期化するステップと、を含む(プロセス83)。
【0092】
したがって、周波数調整器機能21および自動電圧調整器23のうちの少なくとも一方または両方は、(非フリーズと呼ぶことができる)保留状態からアクティブ化され、初期化される。少なくとも1つのフリーズ機能を初期化するステップは、初期化値メモリ15および/またはメモリ16に記憶された少なくとも1つのパラメータの初期化値を少なくとも1つの保留された機能に提供するステップを含む。
【0093】
任意選択的に、障害信号SFが障害がないことを示すように障害信号SFを変更するステップは、障害信号SFを変更する前に、障害がもはや検出されないことを検出した後に所定時間待機するステップを含む。
【0094】
以下は、障害がクリアされたときに発生する動作またはプロセスの例を説明する。障害はもはや検出されない、障害信号SFは、障害がもはや検出されなくなったときまたはその直後に障害がないことを示す(すなわち、障害信号SFが低下する)。
【0095】
1.障害信号SFが低下すると、S/Hメモリ102に記憶された有効電力スナップショットは、リセット線112上の障害信号SFが低下することによって、周波数コントローラ113を初期化するために使用され、これは、周波数コントローラ113の立ち下がりエッジトリガによって示される。
【0096】
2.障害信号SFは障害がないことを示す(障害信号SFは現在非アクティブである)ので、周波数コントローラ113の動作がアクティブ化され(例えば、非フリーズ)、周波数コントローラ113および周波数調整器機能21が正常に動作することを可能にする。これは、障害がないことを示す障害信号SFをフリーズ制御入力103に提供することによって達成される。
【0097】
3.ここでは障害信号SFは障害がないことを示すので、以下の動作の両方が発生する。
【0098】
a.仮想慣性モデルを実現する慣性コントローラ42のパラメータを元の値に戻す。これは、障害がないことを示す障害信号SFを第1の制御入力105に提供することから生じる。
【0099】
b.仮想慣性モデルを実現する慣性コントローラ42の内部の値はフリーズされない。これは、障害がないことを示す障害信号SFを第2の制御入力106に提供することによって達成される。
【0100】
4.障害信号SFが低下すると、さらなるS/Hメモリ107に記憶された無効電力スナップショットは、リセット線114上の障害信号SFが低められることによって、AVR電圧コントローラ115を初期化するために使用され、これは、障害信号SFの立ち下がりエッジで行われる。
【0101】
5.ここでは障害信号SFは障害がないことを示すので、AVR電圧コントローラ115の動作がアクティブ化され(例えば、非フリーズ)、電圧コントローラ115およびAVR機能23が正常に動作することを可能にする。これは、障害がないことを示す障害信号SFをフリーズ制御入力108に提供することから生じる。
【0102】
6.ここでは障害信号SFは障害がないことを示すので、以下の動作の両方が発生する。
【0103】
a.磁束モデルのパラメータを元の値に戻す。これは、障害がないことを示す障害信号SFを磁束コントローラ52の第1の制御入力110に提供することによって達成される。
【0104】
b.磁束コントローラ52の内部の値は非フリーズである。これは、障害がないことを示す障害信号SFを磁束コントローラ52の第2の制御入力111に提供することから生じる。
【0105】
上述の動作1から6が発生した後、変換器装置10は通常通り動作し続ける。
障害信号SFが低下すると、実無効電力Q_actの初期化値も任意選択的に電圧ドループ機能47に適用される。実有効電力P_actの初期化値も、任意選択的に周波数ドループ機能44に適用される。
【0106】
本開示は、様々な修正および代替形態を受け入れることができるが、その詳細は、例として図面に示され、詳細に説明されている。しかしながら、その意図は、本開示を記載された特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。むしろ、その意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される開示の範囲内に入るすべての修正、均等物、および代替形態を網羅することである。
【0107】
上述の
図1~
図3Bに示す実施形態は、改良された変換器装置および制御方法の例示的な実施形態を表す。したがって、それらは、改良された変換器装置および方法によるすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際の装置および方法は、例えば、装置、デバイスおよび信号に関して示された実施形態とは異なり得る。
【符号の説明】
【0108】
参照符号
10 変換器装置
11 電力変換器
12 制御装置
13 グリッド
14 エネルギー/負荷装置
15 初期化値メモリ
16 メモリ
21 周波数調整器機能
22 慣性機能
23 自動電圧調整器機能
24 ロータ磁束機能
25 変換機能
40 減算ユニット
41 積分器
42 慣性コントローラ
43、45 減算ユニット
44 周波数ドループ機能
46、48、49 減算ユニット
47 電圧ドループ機能
52 磁束コントローラ
53、54 変換
55 仮想インピーダンス
56 減算ユニット
71~83 プロセス
102 サンプルホールドメモリ
103 フリーズ制御入力
104 スイッチ装置
104’、104’’ スイッチ
105、106 制御入力
107 サンプルホールドメモリ
108 フリーズ制御入力
112 リセット入力
113 周波数コントローラ
108 制御入力
109 さらなるスイッチ装置
109’、109’’ スイッチ
110、111 制御入力
114 リセット入力
115 電圧コントローラ
EA ベクトル信号
Exc 無効電力目標
f 目標周波数
Ferr 周波数制御誤差
FSet 設定点周波数
F_act 実周波数
Perr 有効電力誤差
PSet 有効電力目標
P_act 実有効電力
Qerr 無効電力誤差
Q_act 実無効電力
SF 障害信号
Va さらなるベクトル信号
Vd* 出力電圧目標
Verr 電圧制御誤差
VSet 設定点電圧
V_act 実電圧
Φ 位相角目標
【国際調査報告】