(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリエチレンポリマー組成物およびそれから作製された物品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/06 20060101AFI20240326BHJP
C08K 5/5317 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L23/06
C08K5/5317
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564545
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 US2022025852
(87)【国際公開番号】W WO2022226249
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドットソン、ダリン
(72)【発明者】
【氏名】フォリスター、ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】シー、シャオヨウ
(72)【発明者】
【氏名】スン、フア
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002EW126
4J002FD206
4J002GG02
(57)【要約】
ポリマー組成物は、2以上の溶融緩和指数を有するポリエチレンポリマーおよび分枝アルキルホスホン酸の塩を含む。水蒸気および酸素に対する改善されたバリアを有するポリエチレンフィルムは、約930kg/m3~約980kg/m3の密度および2以上の溶融緩和指数を有する高密度ポリエチレンポリマー、ならびに分枝アルキルホスホン酸の塩を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2以上の溶融緩和指数を有するポリエチレンポリマー組成物;および
(b)分枝アルキルホスホン酸の塩
を含むポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレンポリマー組成物が約930kg/m
3~約970kg/m
3の密度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレンポリマー組成物が分子量分布を有し、前記分子量分布が2つ以上の極大値を有する、請求項1または請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が、第1族元素カチオン、第2族元素カチオン、および第12族元素カチオンからなる群から選択される1種以上のカチオンを含む、請求項1~3の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が第2族元素カチオンを含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がカルシウムカチオンを含む、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記分枝アルキルホスホン酸が、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、sec-イソペンチル、ペンタン-3-イル、および2-メチルブチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む、請求項1~6の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記分枝アルキルホスホン酸が第三級アルキル基を含む、請求項1~7の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記分枝アルキルホスホン酸が、tert-ブチル、tert-ペンチルおよびネオペンチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がtert-ブチルホスホン酸の塩である、請求項1~9の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がtert-ブチルホスホン酸のカルシウム塩である、請求項1~10の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が約20m
2/g以上のBET比表面積を有する、請求項1~11の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が約30m
2/g以上のBET比表面積を有する、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて約50百万分率~約2,000百万分率の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1~13の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
水蒸気および酸素に対する改善されたバリアを有するポリエチレンフィルムであって、(i)約930kg/m
3~約980kg/m
3の密度および2以上の溶融緩和指数を有する高密度ポリエチレンポリマー組成物、ならびに(ii)分枝アルキルホスホン酸の塩を含むポリエチレンフィルム。
【請求項16】
前記フィルムが約300cm
3・ミル m
-2日
-1(0.209atm)
-1以下の正規化酸素透過度(nOTR)を有する、請求項15に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項17】
前記フィルムが約3g ミル m
-2日
-1以下の正規化水蒸気透過度(nWVTR)を有する、請求項15または請求項16に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項18】
前記フィルムが約3ミルの厚さで約20%以下のヘーズを有する、請求項15~17の何れか1項に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項19】
前記フィルムが約3ミルの厚さで約90%以上の透明度を有する、請求項15~18の何れか1項に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項20】
前記フィルムが約80%以上の光沢を有する、請求項15~19の何れか1項に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項21】
前記高密度ポリエチレンポリマー組成物が分子量分布を有し、前記分子量分布が2つ以上の極大値を有する、請求項15~20の何れか1項に記載のポリエチレンフィルム。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、分枝アルキルホスホン酸の塩を含有するポリマー組成物、たとえばポリエチレンポリマー組成物、およびそのようなポリマー組成物から作製された物品(たとえば、吹込みフィルム)に関する。分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマーの核形成剤として機能すると考えられる。
【背景】
【0002】
[0002]熱可塑性ポリマー用のいくつかの核形成剤が、当技術分野で公知である。これらの核形成剤は一般に、核を形成する、または熱可塑性ポリマーにおいてそれが溶融状態から固化する際に結晶の形成および/もしくは成長部位をもたらすことによって機能する。核形成剤によってもたらされる核または部位により、冷却ポリマー内で、結晶が新しい非核形成熱可塑性ポリマー中で形成するよりも高い温度および/またはより速い速度で結晶が形成することが可能になる。存在する場合、このような効果により、新しい非核形成熱可塑性ポリマーよりも短いサイクル時間での核形成熱可塑性ポリマー組成物の加工が可能になり得る。あるいは、核形成剤によって誘導される制御された核形成は、ポリマーの純粋に自己核形成された結晶化(すなわち、不均質な核形成剤の非存在下で起こるポリマー結晶化)から生じるものとは異なる結晶構造を有するポリマーをもたらすことができる。このような結晶構造の違いにより、特定の用途により望ましい場合がある異なる物理特性を有するポリマーを得ることができる。
【0003】
[0003]ポリマー核形成剤は類似の方式で機能してもよいが、すべての核形成剤が等しく作られるとは限らない。たとえば、ポリエチレンポリマーのための核形成剤は当技術分野で公知であるが、これらの核形成剤のうち、ポリエチレンポリマーの物理特性を商業的に有意な程度まで改善することが示されているものは比較的少ない。特に、ポリエチレンポリマーから作製された物品のバリア特性を改善(たとえば、水蒸気および/または酸素透過度を減少)することができる核形成剤はほとんどない。
【0004】
[0004]ポリエチレンフィルムは、その優れた貯蔵寿命、製品保護、製品陳列、および低コストのために、食品包装業界において主要な地位を確立している。包装される食品の特性は、包装材料の最適なバリア性能を決定する。一部の食品に最適なバリアは高バリア材料を必要とするが、他のバリアは低バリア材料を必要とする。たとえば、乾燥食品、たとえばシリアル、クラッカー、クッキーおよび粉末製品は、水蒸気または水分に対して高いバリアを有する包装材料を必要とし、一方で家禽製品は、酸素に対して高いバリアを有する包装材料を必要とする。したがって、ポリエチレンベースフィルムのバリア特性を改善するために使用できる添加剤を特定することで、製造者は、様々な包装商品によって課されるバリア要件を満たす様々なポリエチレンフィルムを製造することができる。このような添加剤は、製造者が、望ましい光学特性、たとえば低ヘーズ、高透明度および/または高光沢を有するフィルムを製造することができればさらに望ましい。
【0005】
[0005]さらに、高バリア用途では、ポリエチレンフィルムは、異なる材料(たとえば、エチレンビニルアルコールコポリマーまたはポリアミド)のバリア層を組み込むことが多い。これらのバリア層は、製造操作をさらに複雑にし、フィルムのコストおよび費用を増加させ、フィルムのリサイクル性を損なう。したがって、ポリエチレンのバリアを改善することにより、これらの異なるバリア層を組み込むことなく良好なバリアレベルをもたらす「モノマテリアル」包装が可能になる。
【0006】
[0006]上述の観点から、物理特性のより望ましい組合せ、たとえば水蒸気および/または酸素に対する高いバリア、低ヘーズ、高透明度および/または高光沢を示すポリエチレンポリマー組成物を製造することができる添加剤(たとえば、核形成剤)に対する必要性が残っている。ここに記載される添加剤およびポリマー組成物は、そのような必要性に対処することを意図する。
【発明の簡単な概要】
【0007】
[0007]第1の態様では、本発明は、(a)2以上の溶融緩和指数を有するポリエチレンポリマー組成物;および(b)分枝アルキルホスホン酸の塩を含むポリマー組成物を提供する。
【0008】
[0008]第2の態様では、本発明は、水蒸気および酸素に対する改善されたバリアを有するポリエチレンフィルムを提供する。フィルムは、(i)約930kg/m3~約980kg/m3の密度および2以上の溶融緩和指数を有する高密度ポリエチレンポリマー組成物、ならびに(ii)分枝アルキルホスホン酸の塩を含む。
【0009】
[0009]第3の態様において、本発明は、熱可塑性ポリマー組成物からフィルムを製造するための方法を提供する。方法は、
(a)
(i)チューブを押し出すように適合された環状ダイオリフィスを有するダイ;
(ii)環状ダイオリフィスから出るチューブに加圧流体を吹き込むための手段;および
(iii)チューブを延伸し回収するための手段
を含む装置を準備する工程;
(b)(i)2以上の溶融緩和指数を有するポリエチレンポリマー組成物;および(ii)分枝アルキルホスホン酸の塩を含むポリマー組成物を準備する工程;
(c)ポリマー組成物がダイを通して押し出され得るように、ポリマー組成物を溶融させるのに十分な温度までポリマー組成物を加熱する工程;
(d)溶融ポリマー組成物を環状ダイオリフィスを通して押し出して、環状ダイオリフィスから出るチューブを第1の方向に形成する工程であって、チューブが直径および長さを有する工程;
(e)チューブを膨張させその直径を増加させるのに十分な圧力下で加圧流体をチューブ内に吹き込むと同時に、チューブを第1の方向に延伸してその長さを増加させ、それによりフィルムを製造する工程;
(f)フィルムを、ポリマー組成物が固化する温度まで冷却させる工程;および
(g)フィルムを回収する工程
を含む。
【発明の詳細な説明】
【0010】
[0010]第1の態様では、本発明は、(a)ポリエチレンポリマー組成物;および(b)分枝アルキルホスホン酸の塩を含むポリマー組成物を提供する。ポリエチレンポリマー組成物は、好ましくは2以上の溶融緩和指数を有する。
【0011】
[0011]上述のように、ポリマー組成物はポリエチレンポリマーを含む。ポリマー組成物は、1種のポリエチレンポリマーまたは2種以上の異なるポリエチレンポリマーの混合物を含んでもよく、「ポリエチレンポリマー組成物」という用語は、1種のポリエチレンポリマーまたは2種以上の異なるポリエチレンポリマーの混合物を含有する組成物を広く指すためにここで使用される。好適なポリエチレンポリマーとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の態様では、熱可塑性ポリマーは、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい態様では、熱可塑性ポリマーは高密度ポリエチレンである。
【0012】
[0012]本発明で使用するために好適な高密度ポリエチレンポリマーは、一般に約930kg/m3より大きい(たとえば、約940kg/m3より大きい、約941kg/m3以上、約950kg/m3以上、または約955kg/m3以上)の密度を有する。ポリマーの好適な密度に上限はないが、高密度ポリエチレンポリマーは、典型的に約980kg/m3未満(たとえば、約975kg/m3未満または約970kg/m3未満)の密度を有する。したがって、好ましい態様では、高密度ポリエチレンポリマーは、約930kg/m3~約980kg/m3(たとえば、約940kg/m3~約980kg/m3、約941kg/m3~約980kg/m3、約950kg/m3~約980kg/m3、もしくは約955kg/m3~約980kg/m3)、約930kg/m3~約975kg/m3(たとえば、約940kg/m3~約975kg/m3、約941kg/m3~約975kg/m3、約950kg/m3~約975kg/m3、もしくは約955kg/m3~約975kg/m3)、または約930~約970kg/m3(たとえば、約940kg/m3~約970kg/m3、約941kg/m3~約970kg/m3、約950kg/m3~約970kg/m3、または約955kg/m3~約970kg/m3)の密度を有する。
【0013】
[0013]本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーは、エチレンのホモポリマーまたは1種以上のα-オレフィンとのコポリマーの何れかであり得る。好適なα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンおよび4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。コモノマーは、任意の好適な量、たとえば、約5重量%以下(たとえば、約3モル%以下)の量でコポリマー中に存在し得る。当業者に理解されるであろうように、コポリマーに好適なコモノマーの量は、コポリマーの最終用途およびその最終用途によって示される必要なまたは所望のポリマー特性に大きく左右される。
【0014】
[0014]本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な方法によって製造できる。たとえば、ポリマーは、たとえば、米国特許第2,816,883号(Larcharら)に記載される通り、非常に高い圧力を使用する遊離ラジカル法によって製造できるが、ポリマーは、典型的には、「低圧」触媒法で製造される。この文脈において、「低圧」という用語は、6.9MPa未満(たとえば、1,000psig)、たとえば1.4~6.9MPa(200~1,000psig)の圧力で実施されるプロセスを記述するために使用される。好適な低圧触媒法の例としては、溶液重合法(すなわち、ポリマー用の溶媒を使用して重合が実施される方法)、スラリー重合法(すなわち、ポリマーが溶解または膨張しない炭化水素液を使用して重合が実施される方法)、気相重合法(たとえば、重合が、液体媒体または希釈液を使用せずに実施される方法)または段階式反応器重合法が挙げられるが、これらに限定されない。好適な気相重合法としてはまた、液体炭化水素が流動層に導入されて、重合プロセスの間に生じる熱の吸収を増加させる、いわゆる「凝縮モード」または「超凝縮モード」法が挙げられる。これらの凝縮モードおよび超凝縮モード法において、液体炭化水素は、典型的には、リサイクル流中で凝縮され、反応器で再利用される。段階式反応器法は、直列、平行または直列もしくは平行の組合せで連結されたスラリー法反応器(タンクまたはループ)の組合せを利用でき、その結果、触媒(たとえば、クロム触媒)は2組以上の反応条件に曝露される。段階式反応器法はまた、2つのループを直列で組み合わせる、1つ以上のタンクおよびループを直列で組み合わせる、複数の気相反応器を直列、またはループ気相配置で使用することによって実施できる。触媒を異なる組の反応器条件に曝露するその能力のため、段階式反応器法は、多くの場合、多峰性ポリマー、たとえば以下に議論されるものを製造するために使用される。好適な方法としてはまた、予備重合工程が実施されるものが挙げられる。この予備重合工程において、触媒は、典型的には、より小さい別の反応器中で穏やかな条件下、共触媒およびエチレンに曝露され、触媒が比較的少量(たとえば、総重量の約5%~約30%)の得られた組成物を含むまで、重合反応を進行させる。次いで、この予備重合触媒は、重合が実施されることになる大規模反応器に導入される。
【0015】
[0015]本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な触媒または触媒の組合せを使用して製造できる。好適な触媒としては、遷移金属触媒、たとえば、担持還元モリブデン酸化物、アルミナ担持モリブデン酸コバルト、酸化クロムおよび遷移金属ハロゲン化物が挙げられる。酸化クロム触媒は、典型的には、クロム化合物を、多孔質高表面積酸化物担体、たとえばシリカに含浸し、次いで、それを乾燥空気中500~900℃でか焼することによって製造される。これにより、クロムは、六価表面クロム酸エステルまたは二クロム酸エステルに変換される。酸化クロム触媒は、金属アルキル共触媒、たとえば、アルキルホウ素、アルキルアルミニウム、アルキル亜鉛およびアルキルリチウムと組み合わせて使用できる。酸化クロムの担体としては、シリカ、シリカ-チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナおよびアルミノホスフェートが挙げられる。酸化クロム触媒のさらなる例としては、低原子価有機クロム化合物、たとえば、ビス(アレン)Cr0、アリルCr2+およびCr3+、Cr2+およびCr4+のベータ安定化アルキル、ならびにビス(シクロペンタジエニル)Cr2+を酸化クロム触媒、たとえば上記のものに堆積することによって製造される触媒が挙げられる。好適な遷移金属触媒としてはまた、担持クロム触媒、たとえば、クロモセンまたはシリルクロメート(たとえば、ビ(トリスフェニルシリル)クロメート)ベースのものが挙げられる。これらのクロム触媒は、任意の好適な高表面積担体、たとえば酸化クロム触媒に関して上記のものに担持され得、典型的にはシリカが使用される。担持クロム触媒はまた、共触媒、たとえば、酸化クロム触媒に関して上に列挙した金属アルキル共触媒と組み合わせて使用できる。好適な遷移金属ハロゲン化物触媒としては、チタン(III)ハロゲン化物(たとえば、塩化チタン(III))、チタン(IV)ハロゲン化物(たとえば、塩化チタン(IV))、バナジウムハロゲン化物、ジルコニウムハロゲン化物およびそれらの組合せが挙げられる。これらの遷移金属ハロゲン化物は、多くの場合、高表面積固体、たとえば塩化マグネシウムに担持される。遷移金属ハロゲン化物触媒は、典型的には、アルミニウムアルキル共触媒、たとえば、トリメチルアルミニウム(すなわち、Al(CH3)3)またはトリエチルアルミニウム(すなわち、Al(C2H5)3)と組み合わせて使用される。これらの遷移金属ハロゲン化物はまた、段階式反応器法で使用されてもよい。好適な触媒はまた、メタロセン触媒、たとえば、シクロペンタジエニルチタンハロゲン化物(たとえば、塩化シクロペンタジエニルチタン)、シクロペンタジエニルジルコニウムハロゲン化物(たとえば、塩化シクロペンタジエニルジルコニウム)、シクロペンタジエニルハフニウムハロゲン化物(たとえば、塩化シクロペンタジエニルハフニウム)およびそれらの組合せが挙げられる。インデニルまたはフルオレニルリガンドと錯体形成した遷移金属ベースのメタロセン触媒もまた公知であり、本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーを製造するために使用できる。触媒は、典型的には、複数のリガンドを含有し、リガンドは、種々の基(たとえば、n-ブチル基)で置換されていてもよく、または架橋基、たとえば、-CH2CH2-または>SiPh2と連結していてもよい。メタロセン触媒は、典型的には、共触媒、たとえばメチルアルモキサン(すなわち、(Al(CH3)xOy)nと組み合わせて使用される。他の共触媒としては、米国特許第5,919,983号(Rosenら)、米国特許第6,107,230号(McDanielら)、米国特許第6,632,894号(McDanielら)および米国特許第6,300,271号(McDanielら)に記載のものが挙げられる。高密度ポリエチレンの製造における使用に好適な他の「単一部位」触媒としては、ジイミン錯体、たとえば米国特許第5,891,963号(Brookhartら)に記載のものが挙げられる。
【0016】
[0016]本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な分子量(たとえば、重量平均分子量)を有し得る。たとえば、高密度ポリエチレンの重量平均分子量は、20,000g/mol~約1,000,000g/mol以上であり得る。当業者に理解されるであろうように、高密度ポリエチレンの好適な重量平均分子量は、少なくとも一部は、ポリマーが予定される特定の用途または最終用途に依存することになる。たとえば、吹込み成形用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約100,000g/mol~約1,000,000g/molの重量平均分子量を有し得る。パイプ用途またはフィルム用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約100,000g/mol~約500,000g/molの重量平均分子量を有し得る。射出成形用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約20,000g/mol~約80,000g/molの重量平均分子量を有し得る。電線絶縁用途、ケーブル絶縁用途、テープ用途またはフィラメント用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約80,000g/mol~約400,000g/molの重量平均分子量を有し得る。回転成形用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約50,000g/mol~約150,000g/molの重量平均分子量を有し得る。
【0017】
[0017]本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーはまた、ポリマーの重量平均分子量をポリマーの数平均分子量で割ることによって得られる値として定義される、任意の好適な多分散度を有し得る。たとえば、高密度ポリエチレンポリマーは、2超~約100の多分散度を有し得る。当業者によって理解されるように、ポリマーの多分散度は、ポリマーを製造するのに使用される触媒系の影響を大きく受け、メタロセンおよび他の「単一部位」触媒では、一般に、比較的低い多分散度および狭い分子量分布のポリマーが製造され、他の遷移金属触媒(たとえば、クロム触媒)では、より高い多分散度および幅広い分子量分布のポリマーが製造される。本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーはまた、多峰性(たとえば、二峰性)分子量分布を有し得る。たとえば、ポリマーは、比較的低い分子量を有する第1の画分および比較的高い分子量を有する第2の画分を有し得る。ポリマーの画分の重量平均分子量間の差は、任意の好適な量であり得る。実際、重量平均分子量間の差は、2つの別個の分子量部分が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して分解できるほど十分大きい必要はない。しかしながら、ある特定の多峰性ポリマーでは、部分の重量平均分子量間の差は、2つ以上の別個のピークがポリマーのGPC曲線から分解できるほど十分大きい場合がある。この文脈において、「別個の」という用語は、必ずしも各部分に対応するGPC曲線の部分が重ならないことを意味するとは限らず、単に、各部分についての別個のピーク(すなわち、極大)がポリマーのGPC曲線から分解できることを示すことを意味する。本発明における使用に好適な多峰性ポリマーは、任意の好適な方法を使用して製造できる。上述の通り、多峰性ポリマーは、段階式反応器法を使用して製造できる。好適な一例は、一連の撹拌タンクを組み込む段階式溶液法である。あるいは、多峰性ポリマーは、その各々が異なる重量平均分子量を有するポリマーを製造するように設計された触媒の組合せを使用して単一反応器で製造できる。
【0018】
[0018]ポリマーの分子量分布は、異なる条件下でポリマーのメルトフローインデックス(またはメルトフローレート)を測定して比較し、フローレート比(FRR)を得ることによっても特徴付けることができる。この方法は、たとえば、「Standard Test Method for Melt Flow Rates of Thermoplastics by Extrusion Plastometer」と題するASTM規格D1238の手順Dに記載されている。好ましくは、FRRは、規格に規定される21.6kg荷重を使用して測定されたメルトフローインデックス(MFI21.6)、および規格に規定される2.16kg荷重を使用して測定されたメルトフローインデックス(MFI2.16)を使用して計算され、両方のメルトフローインデックスは、規格に規定される190℃の温度で測定される。ポリマー組成物に使用される高密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適なFRRを有することができる。好ましくは、高密度ポリエチレンポリマーは、約65以下のFRR(MFI21.6/MFI2.16)を有する。より好ましくは、高密度ポリエチレンポリマーは約40以下または約20以下のFRR(MFI21.6/MFI2.16)を有する。
【0019】
[0019]本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適なメルトフローインデックスを有し得る。たとえば、高密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分~約50dg/分(たとえば、約0.01dg/分~約40dg/分)のメルトフローインデックスを有し得る。重量平均分子量と同様に、当業者は、高密度ポリエチレンポリマーの好適なメルトフローインデックスが、少なくとも一部は、ポリマーが予定される特定の用途または最終用途に依存することを理解している。したがって、たとえば、吹込み成形用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分~約1dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。吹込みフィルム用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分~約50dg/分のメルトフローインデックスを有し得る(たとえば、約1dg/分~約10dg/分、約1dg/分~約5dg/分、または約0.5dg/分~約3dg/分)。キャストフィルム用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分~約10dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。パイプ用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分~約40dg/分のメルトフローインデックスを有し得る(190℃で21.6kg荷重で測定)。射出成形用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分~約80dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。回転成形用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分~約10dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。テープ用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約0.2dg/分~約4dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。フィラメント用途を目的とする高密度ポリエチレンポリマーは、約1dg/分~約20dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。ポリマーのメルトフローインデックスは、ASTM規格D1238-04cを使用して測定される。
【0020】
[0020]本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーは、一般に、大量の長鎖分枝を含有しない。「長鎖分枝」という用語は、ポリマー鎖に結合した分枝を指すために使用され、ポリマーのレオロジーに影響を及ぼすのに十分な長さ(たとえば、炭素数約130以上の長さの分枝)のものである。ポリマーが使用される用途で所望される場合、高密度ポリエチレンポリマーは、少量の長鎖分枝を含有し得る。しかしながら、本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーは、典型的には、ごくわずかな長鎖分枝(たとえば、10,000個の炭素当たり約1の長鎖分枝、10,000個の炭素当たり約0.5未満の長鎖分枝、10,000個の炭素当たり約0.1未満の長鎖分枝または10,000個の炭素当たり約0.01未満の長鎖分枝)を含有する。
【0021】
[0021]また、ポリマー中の長鎖分枝の程度は、レオロジー的方法を使用して特徴付けることができる(たとえば、R.N.Shroff and H.Mavridis、「Long-Chain-Branching Index for Essentially Linear Polyethylenes」、Macromolecules、Vol.32(25)、pp.8454~8464(1999)を参照されたい)。特に、長鎖分枝指数(LCBI)は、比較的低レベルの長鎖分枝を特徴付けるために使用されるレオロジー指数であり、以下のように定義される:
【0022】
【0023】
式中、η0は190℃での限界ゼロせん断粘度(ポアズで表される)であり、[η]は135℃でのトリクロロベンゼン中の固有粘度(dL/gで表される)である。LCBIは、そうでなければ直鎖状のポリマー中の長鎖分枝のレベルが低い場合、固有粘度[η]が変化することなく溶融粘度η0が大きく増加するという観察に基づく。LCBIが高いほど、ポリマー鎖当たりの長鎖分枝の数が多いことを意味する。好ましくは、ポリマー組成物に使用される高密度ポリエチレンポリマーは、約0.5以下、約0.3以下、または約0.2以下のLCBIを有する。
【0024】
[0022]好ましい一態様では、ポリマー組成物は、2種以上の高密度ポリエチレンポリマー組成物のブレンドを含む。2種の高密度ポリエチレンポリマー組成物を含む好ましい一態様では、第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物は、約950kg/m3~約975kg/m3(好ましくは950kg/分3~960kg/分3)の密度を有し、第2の高密度ポリエチレンポリマー組成物は、約950kg/m3~約970kg/m3(好ましくは955kg/m3~965kg/m3)の密度を有する。第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物のメルトフローインデックス(2.16kg荷重を使用して190℃でASTM D 1238に従って決定される)は、好ましくは5dg/分より大きい(より好ましくは約15dg/分~約30dg/分)。さらに、第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物のメルトフローインデックスは、好ましくは第2の高密度ポリエチレンポリマー組成物のメルトフローインデックスより少なくとも10倍大きい。第2の高密度ポリエチレンポリマー組成物のメルトフローインデックス(2.16kg荷重を使用して190℃でASTM D 1238に従って決定される)は、好ましくは約0.1dg/分~約2dg/分(より好ましくは約0.8dg/分~約2dg/分)である。第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物は、任意の好適な多分散度を有することができるが、多分散度(ASTM D 6474-99に従ってゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される)は、好ましくは約2~約20、より好ましくは約2~約4である。理論に拘束されることを望むものではないが、第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物の低い多分散度(たとえば、2~4)は、ポリマー組成物から調製される吹込みフィルムの核形成速度および全体的なバリア性能を改善し得ると考えられる。第2の高密度ポリエチレンポリマー組成物の多分散度は、望ましい結果を達成するために重要ではないと考えられるが、第2の高密度ポリエチレンポリマーでは、約2~約4の多分散度が好ましい。上述の第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物は、所望の特性をもたらす単一の高密度ポリエチレンポリマーからなってもよいか、または第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物は、所望の特性を有する2種以上の高密度ポリエチレンポリマーのブレンドを含んでもよい。同様に、第2の高密度ポリエチレンポリマー組成物は、単一の高密度ポリエチレンポリマー、または所望の特性を有する2種以上の高密度ポリエチレンポリマーのブレンドからなってもよい。
【0025】
[0023]前段落に記載の態様では、第1および第2の高密度ポリエチレンポリマー組成物は、任意の好適な相対量でポリマー組成物中に存在し得る。好ましくは、第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物は、組成物中に存在する全高密度ポリエチレンポリマーの約5重量%~約60重量%の量で存在する(第2の高密度ポリエチレンポリマー組成物が残余を構成する)。他の好ましい態様では、第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物は、約10重量%~約40重量%または約20重量%~約40重量%の量で存在する。特に好ましい一態様では、ポリマー組成物は、(i)約15~約30dg/分のメルトフローインデックスおよび約950kg/m3~約960kg/m3の密度を有する、約10重量%~約30重量%の第1の高密度ポリエチレンポリマー組成物、および(ii)約0.8~約2dg/分のメルトフローインデックスおよび約955kg/m3~約965kg/m3の密度を有する、約70重量%~約90重量%の第2の高密度ポリエチレンポリマー組成物を含む。上述の高密度ポリエチレンポリマーのブレンドは、任意の好適な処理、たとえば(i)粒子状樹脂の物理的ブレンド;(ii)共通の押出機への異なる高密度ポリエチレン樹脂の共供給;(iii)溶融混合(任意の従来のポリマー混合装置中);(iv)溶液ブレンド;または(v)2つ以上の反応器を用いる重合処理によって作製することができる。高密度ポリエチレンポリマー組成物の非常に好ましいブレンドは、異なる重合条件で作動する2つの反応器を使用する溶液重合処理によって調製される。これにより、第1および第2の高密度ポリエチレンポリマー組成物の均一なin situブレンドが得られる。この処理の例は、公開された米国特許出願公開第2006/0047078A1号(Swabey et al.)に記載されており、その開示は参照によりここに組み込まれる。高密度ポリエチレンポリマー組成物の全体的なブレンドは、好ましくは約3~約20の多分散度を有する。
【0026】
[0024]本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーは、一般に、約926kg/m3~約940kg/m3の密度を有する。「中密度ポリエチレン」という用語は、高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの間の密度を有し、少なくとも高圧でのエチレンの遊離ラジカル重合によって製造される低密度ポリエチレンポリマー中に存在する長い分枝と比較して比較的短い分枝を含有するエチレンのポリマーを指すために使用される。
【0027】
[0025]本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーは、一般に、エチレンおよび少なくとも1種のα-オレフィン、たとえば、1ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンおよび4-メチル-1-ペンテンのコポリマーである。α-オレフィンコモノマーは、任意の好適な量で存在し得るが、典型的には、約8重量%未満(たとえば、約5モル%未満)の量で存在する。当業者に理解されるであろうように、コポリマーに好適なコモノマーの量は、コポリマーの最終用途およびその最終用途によって示される必要なまたは所望のポリマー特性に大きく左右される。
【0028】
[0026]本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な方法によって製造できる。高密度ポリエチレンポリマーと同様に、中密度ポリエチレンポリマーは、典型的には、「低圧」触媒法、たとえば、本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーと関連して上記の方法のうちの任意のもので製造される。好適な方法の例としては、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法および段階式反応器法が挙げられるが、これらに限定されない。好適な段階式反応器法は、上記の気相、溶液およびスラリー重合法の任意の好適な組合せを組み込むことができる。高密度ポリエチレンポリマーと同様に、段階式反応器法は、多くの場合、多峰性ポリマーを製造するために使用される。
【0029】
[0027]本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な触媒または触媒の組合せを使用して製造できる。たとえば、ポリマーは、チーグラー触媒、たとえば、遷移金属(たとえば、チタン)ハロゲン化物または有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用されるエステル(たとえば、トリエチルアルミニウム)を使用して製造できる。これらのチーグラー触媒は、たとえば、塩化マグネシウム、シリカ、アルミナまたは酸化マグネシウムに担持され得る。本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーはまた、いわゆる「二重チーグラー触媒」を使用して製造でき、これは、エチレンを1-ブテンに二量体化するための1種の触媒種(たとえば、チタンエステルおよびトリエチルアルミニウムの組合せ)、ならびにエチレンおよび生成された1-ブテンの共重合のための別の触媒(たとえば、塩化マグネシウムに担持された塩化チタン)を含有する。本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーはまた、酸化クロム触媒、たとえば、クロム化合物をシリカ-チタニア担体に堆積し、得られた触媒を酸素および空気の混合物中で酸化し、次いで、触媒を一酸化炭素により還元することによって製造されるものを使用して製造できる。これらの酸化クロム触媒は、典型的には、トリアルキルボロンまたはトリアルキルアルミニウム化合物と組み合わせて使用される。酸化クロム触媒はまた、チーグラー触媒、たとえば、チタンハロゲン化物またはチタンエステルベースの触媒と組み合わせて使用できる。本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーはまた、担持クロム触媒、たとえば、高密度ポリエチレンを作製するのに好適な触媒についての議論で上記のものを使用して製造できる。本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーはまた、メタロセン触媒を使用して製造できる。いくつかの異なる種類のメタロセン触媒を使用できる。たとえば、メタロセン触媒は、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムの2つのシクロペンタジエニル環およびメチルアルミノキサンとのビス(メタロセン)錯体を含有し得る。高密度ポリエチレン製造に使用される触媒と同様に、リガンドは、種々の基(たとえば、n-ブチル基)で置換されていてもよく、または架橋基で連結していてもよい。使用できる別のクラスのメタロセン触媒は、ジルコニウムまたはチタンのビス(メタロセン)錯体および過フッ化ホウ素芳香族化合物のアニオンで構成される。使用できる第3のクラスのメタロセン触媒は拘束幾何触媒と呼ばれ、シクロペンタジエニル環の炭素原子の1つが架橋基によって金属原子に連結しているチタンまたはジルコニウムのモノシクロペンタジエニル誘導体を含有する。これらの錯体は、それらをメチルアルミノキサンと反応させることによって、または非配位アニオン、たとえば、B(C6F5)4-もしくはB(C6F5)3CH3-とのイオン錯体を形成することによって活性化される。使用できる第4のクラスのメタロセン触媒は、1つのシクロペンタジエニルリガンドを別のリガンド、たとえば、ホスフィンイミンまたは-O-SiR3と組み合わせて含有する遷移金属、たとえばチタンのメタロセン系錯体である。このクラスのメタロセン触媒もまた、メチルアルミノキサンまたはホウ素化合物により活性化される。本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンの作製における使用に好適な他の触媒としては、米国特許第6,649,558号に開示の触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
[0028]本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な組成均一性を有し得、これは、ポリマーのコポリマー分子の分枝の均一性を記載するために使用される用語である。多くの市販の中密度ポリエチレンポリマーは、ポリマーの高分子量画分が比較的少量のα-オレフィンコモノマーを含有し、分枝が比較的少ない一方、ポリマーの低分子量画分が比較的大量のα-オレフィンコモノマーを含有し、分枝の量が比較的多い、比較的低い組成均一性を有する。あるいは、別の組の中密度ポリエチレンポリマーは、ポリマーの分子量画分が比較的大量のα-オレフィンコモノマーを含有する一方、ポリマーの低分子量画分が比較的少量のα-オレフィンコモノマーを含有する、比較的低い組成均一性を有する。ポリマーの組成均一性は、任意の好適な方法、たとえば昇温溶出分画を使用して測定できる。
【0031】
[0029]本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な分子量を有し得る。たとえば、ポリマーは、約50,000g/mol~約200,000g/molの重量平均分子量を有し得る。当業者に理解されるであろうように、中密度ポリエチレンの好適な重量平均分子量は、少なくとも一部は、ポリマーが予定される特定の用途または最終用途に依存することになる。
【0032】
[0030]本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーはまた、任意の好適な多分散度を有し得る。多くの市販の中密度ポリエチレンポリマーは、約2~約30の多分散度を有する。本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーはまた、多峰性(たとえば、二峰性)分子量分布を有し得る。たとえば、ポリマーは、比較的低い分子量を有する第1の画分および比較的高い分子量を有する第2の画分を有し得る。本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーと同様に、多峰性中密度ポリエチレンポリマーの画分の重量平均分子量間の差は、任意の好適な量であり得る。実際、重量平均分子量間の差は、2つの別個の分子量画分が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して分解できるほど十分大きい必要はない。しかしながら、ある特定の多峰性ポリマーでは、部分の重量平均分子量間の差は、2つ以上の別個のピークがポリマーのGPC曲線から分解できるほど十分大きい場合がある。この文脈において、「別個の」という用語は、必ずしも各部分に対応するGPC曲線の部分が重ならないことを意味するとは限らず、単に、各部分についての別個のピークがポリマーのGPC曲線から分解できることを示すことを意味する。本発明における使用に好適な多峰性ポリマーは、任意の好適な方法を使用して製造できる。上述の通り、多峰性ポリマーは、段階式反応器法を使用して製造できる。好適な一例は、一連の撹拌タンクを組み込む段階式溶液法である。あるいは、多峰性ポリマーは、その各々が異なる重量平均分子量を有するポリマーを製造するように設計された触媒の組合せを使用して単一反応器で製造できる。
【0033】
[0031]本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適なメルトフローインデックスを有し得る。たとえば、中密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分~約200dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。重量平均分子量と同様に、当業者は、中密度ポリエチレンポリマーの好適なメルトフローインデックスが、少なくとも一部には、ポリマーが予定される特定の用途または最終用途に依存することを理解している。したがって、たとえば、吹込み成形用途またはパイプ用途を目的とする中密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分~約1dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。吹込みフィルム用途を目的とする中密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分~約3dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。キャストフィルム用途を目的とする中密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分~約10dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。射出成形用途を目的とする中密度ポリエチレンポリマーは、約6dg/分~約200dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。回転成形用途を目的とする中密度ポリエチレンポリマーは、約4dg/分~約7dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。電線およびケーブル絶縁用途を目的とする中密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分~約3dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。ポリマーのメルトフローインデックスは、ASTM規格D1238-04cを使用して測定される。
【0034】
[0032]本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーは、一般に、大量の長鎖分枝を含有しない。たとえば、本発明における使用に好適な中密度ポリエチレンポリマーは、一般に、10,000個の炭素原子当たり約0.1未満の長鎖分枝(たとえば、100個のエチレン単位当たり約0.002未満の長鎖分枝)または10,000個の炭素原子当たり約0.01未満の長鎖分枝を含有する。
【0035】
[0033]本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、一般に、925kg/m3以下(たとえば、約910kg/m3~約925kg/m3)の密度を有する。「直鎖状低密度ポリエチレン」という用語は、少なくとも、高圧でのエチレンの遊離ラジカル重合によって製造される低密度ポリエチレン中に存在する長い分枝と比較して、比較的短い分枝を有するエチレンのより低密度のポリマーを指すために使用される。
【0036】
[0034]本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、一般に、エチレンならびに少なくとも1種のα-オレフィン、たとえば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンおよび4-メチル-1-ペンテンのコポリマーである。α-オレフィンコモノマーは任意の好適な量で存在し得るが、典型的には、約6モル%未満の量(たとえば、約2モル%~約5モル%)で存在する。当業者に理解されるであろうように、コポリマーに好適なコモノマーの量は、コポリマーの最終用途およびその最終用途によって示される必要なまたは所望のポリマー特性に大きく左右される。
【0037】
[0035]本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な方法によって製造できる。高密度ポリエチレンポリマーと同様に、直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、典型的には、「低圧」触媒法、たとえば、本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーと関連して上記の方法のうちの任意のもので製造される。好適な方法としては、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法および段階式反応器法が挙げられるが、これらに限定されない。好適な段階式反応器法は、上記の気相、溶液およびスラリー重合法の任意の好適な組合せを組み込むことができる。高密度ポリエチレンポリマーと同様に、段階式反応器法は、多くの場合、多峰性ポリマーを製造するために使用される。
【0038】
[0036]本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な触媒または触媒の組合せを使用して製造できる。たとえば、ポリマーは、チーグラー触媒、たとえば、遷移金属(たとえば、チタン)ハロゲン化物または有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用されるエステル(たとえば、トリエチルアルミニウム)を使用して製造できる。これらのチーグラー触媒は、たとえば、塩化マグネシウム、シリカ、アルミナまたは酸化マグネシウムに担持され得る。本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、いわゆる「二重チーグラー触媒」を使用して製造でき、これは、エチレンを1-ブテンに二量体化するための1種の触媒種(たとえば、チタンエステルおよびトリエチルアルミニウムの組合せ)、ならびにエチレンおよび生成された1-ブテンの共重合のための別の触媒(たとえば、塩化マグネシウムに担持された塩化チタン)を含有する。本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、酸化クロム触媒、たとえば、クロム化合物をシリカ-チタニア担体に堆積し、得られた触媒を酸素および空気の混合物中で酸化し、次いで、触媒を一酸化炭素により還元することによって生成されるものを使用して製造できる。これらの酸化クロム触媒は、典型的には、トリアルキルボロンまたはトリアルキルアルミニウム化合物と組み合わせて使用される。酸化クロム触媒はまた、チーグラー触媒、たとえば、チタンハロゲン化物またはチタンエステルベースの触媒と組み合わせて使用できる。本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、担持クロム触媒、たとえば、高密度ポリエチレンを作製するのに好適な触媒についての議論で上記のものを使用して製造できる。本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンはまた、メタロセン触媒を使用して製造できる。いくつかの異なる種類のメタロセン触媒を使用できる。たとえば、メタロセン触媒は、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムの2つのシクロペンタジエニル環およびメチルアルミノキサンとのビス(メタロセン)錯体を含有し得る。高密度ポリエチレン製造に使用される触媒と同様に、リガンドは、種々の基(たとえば、n-ブチル基)で置換されていてもよく、または架橋基で連結していてもよい。使用できる別のクラスのメタロセン触媒は、ジルコニウムまたはチタンのビス(メタロセン)錯体および過フッ化ホウ素芳香族化合物のアニオンで構成される。使用できる第3のクラスのメタロセン触媒は拘束幾何触媒と呼ばれ、シクロペンタジエニル環の炭素原子の1つが架橋基によって金属原子に連結しているチタンまたはジルコニウムのモノシクロペンタジエニル誘導体を含有する。これらの錯体は、それらをメチルアルミノキサンと反応させることによって、または非配位アニオン、たとえば、B(C6F5)4-もしくはB(C6F5)3CH3-とのイオン錯体を形成することによって活性化される。使用できる第4のクラスのメタロセン触媒は、1つのシクロペンタジエニルリガンドを別のリガンド、たとえば、ホスフィンイミンまたは-O-SiR3と組み合わせて含有する遷移金属、たとえばチタンのメタロセン系錯体である。このクラスのメタロセン触媒はまた、メチルアルミノキサンまたはホウ素化合物により活性化される。本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンの作製における使用に好適な他の触媒としては、米国特許第6,649,558号に開示の触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
[0037]本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な組成均一性を有し得、これは、ポリマーのコポリマー分子の分枝の均一性を記載するために使用される用語である。多くの市販の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、ポリマーの高分子量画分が比較的少量のα-オレフィンコモノマーを含有し、分枝が比較的少ない一方、ポリマーの低分子量画分が比較的大量のα-オレフィンコモノマーを含有し、分枝の量が比較的多い、比較的低い組成均一性を有する。あるいは、別の組の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、ポリマーの分子量画部分が比較的大量のα-オレフィンコモノマーを含有する一方、ポリマーの低分子量画分が比較的少量のα-オレフィンコモノマーを含有する、比較的低い組成均一性を有する。ポリマーの組成均一性は、任意の好適な方法、たとえば昇温溶出分画を使用して測定できる。
【0040】
[0038]本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な分子量を有し得る。たとえば、ポリマーは、約20,000g/mol~約250,000g/molの重量平均分子量を有し得る。当業者に理解されるであろうように、直鎖状低密度ポリエチレンの好適な重量平均分子量は、少なくとも一部は、ポリマーが予定される特定の用途または最終用途に依存することになる。
【0041】
[0039]本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、任意の好適な多分散度を有し得る。多くの市販の直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、比較的狭い分子量分布、したがって、比較的低い多分散度、たとえば、約2~約5(たとえば、約2.5~約4.5または約3.5~約4.5)を有する。本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーはまた、多峰性(たとえば、二峰性)分子量分布を有し得る。たとえば、ポリマーは、比較的低い分子量を有する第1の画分および比較的高い分子量を有する第2の画分を有し得る。本発明における使用に好適な高密度ポリエチレンポリマーと同様に、多峰性低密度ポリエチレンポリマーの部画の重量平均分子量間の差は、任意の好適な量であり得る。実際、重量平均分子量間の差は、2つの別個の分子量画分が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して分解できるほど十分大きい必要はない。しかしながら、ある特定の多峰性ポリマーでは、画分の重量平均分子量間の差は、2つ以上の別個のピークがポリマーのGPC曲線から分解できるのに十分大きい場合がある。この文脈において、「別個の」という用語は、必ずしも各部分に対応するGPC曲線の部分が重ならないことを意味するとは限らず、単に、各画分についての別個のピークがポリマーのGPC曲線から分解できることを示すことを意味する。本発明における使用に好適な多峰性ポリマーは、任意の好適な方法を使用して製造できる。上述の通り、多峰性ポリマーは、段階式反応器法を使用して製造できる。好適な一例は、一連の撹拌タンクを組み込む段階式溶液法である。あるいは、多峰性ポリマーは、その各々が異なる重量平均分子量を有するポリマーを製造するように設計された触媒の組合せを使用して単一反応器で製造できる。
【0042】
[0040]本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適なメルトフローインデックスを有し得る。たとえば、直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分~約200dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。重量平均分子量と同様に、当業者は、直鎖状低密度ポリエチレンポリマーの好適なメルトフローインデックスが、少なくとも一部には、ポリマーが予定される特定の用途または最終用途に依存することを理解している。したがって、たとえば、吹込み成形用途またはパイプ用途を目的とする直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約0.01dg/分~約1dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。吹込みフィルム用途を目的とする直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分~約3dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。キャストフィルム用途を目的とする直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約2dg/分~約10dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。射出成形を目的とする直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約6dg/分~約200dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。回転成形用途を目的とする直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約4dg/分~約7dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。電線およびケーブル絶縁用途を目的とする直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、約0.5dg/分~約3dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。ポリマーのメルトフローインデックスは、ASTM規格D1238-04cを使用して測定される。
【0043】
[0041]本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、一般に、大量の長鎖分枝を含有しない。たとえば、本発明における使用に好適な直鎖状低密度ポリエチレンポリマーは、一般に、10,000個の炭素原子当たり約0.1未満の長鎖分枝(たとえば、100個のエチレン単位当たり約0.002未満の長鎖分枝)または10,000個の炭素原子当たり約0.01未満の長鎖分枝を含有する。
【0044】
[0042]本発明における使用に好適な低密度ポリエチレンポリマーは、一般に、935kg/m3未満の密度を有し、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンとは対照的に、ポリマー中に比較的大量の長鎖分枝を有する。
【0045】
[0043]本発明における使用に好適な低密度ポリエチレンポリマーは、エチレンホモポリマーまたはエチレンおよび極性コモノマーのコポリマーの何れかであり得る。好適な極性コモノマーとしては、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらのコモノマーは、任意の好適な量で存在し得、20重量%の高さのコモノマー含有量がある特定の用途のために使用される。当業者に理解されるであろうように、ポリマーに好適なコモノマーの量は、ポリマーの最終用途およびその最終用途によって示される必要なまたは所望のポリマー特性に大きく左右される。
【0046】
[0044]本発明における使用に好適な低密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な方法を使用して製造できるが、典型的には、ポリマーは、高圧(たとえば、約81~約276MPa)および高温(たとえば、約130~約330℃)におけるエチレンの遊離ラジカルで開始する重合によって製造される。任意の好適な遊離ラジカル開始剤が、そのような方法において使用でき、過酸化物および酸素が最も一般的である。遊離ラジカル重合の機序は、ポリマー中の短鎖分枝およびまた比較的高度の長鎖分枝で生じ、これにより、低密度ポリエチレンを他のエチレンポリマー(たとえば、高密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレン)と区別する。重合反応は、典型的には、オートクレーブ反応器(たとえば、撹拌オートクレーブ反応器)、管形反応器または直列に配置されたそのような反応器の組合せで実施される。
【0047】
[0045]本発明における使用に好適な低密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な分子量を有し得る。たとえば、ポリマーは、約30,000g/mol~約500,000g/molの重量平均分子量を有し得る。当業者に理解されるであろうように、低密度ポリエチレンの好適な重量平均分子量は、少なくとも一部は、ポリマーが予定される特定の用途または最終用途に依存することになる。たとえば、吹込み成形用途を目的とする低密度ポリエチレンポリマーは、約80,000g/mol~約200,000g/molの重量平均分子量を有し得る。パイプ用途を目的とする低密度ポリエチレンポリマーは、約80,000g/mol~約200,000g/molの重量平均分子量を有し得る。射出成形用途を目的とする低密度ポリエチレンポリマーは、約30,000g/mol~約80,000g/molの重量平均分子量を有し得る。フィルム用途を目的とする低密度ポリエチレンポリマーは、約60,000g/mol~約500,000g/molの重量平均分子量を有し得る。
【0048】
[0046]本発明における使用に好適な低密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適なメルトフローインデックスを有し得る。たとえば、低密度ポリエチレンポリマーは約0.2dg/分~約100dg/分のメルトフローインデックスを有し得る。上述のように、ポリマーのメルトフローインデックスは、ASTM規格D1238-04cを使用して測定される。
【0049】
[0047]上述のように、低密度ポリエチレンと他のエチレンポリマーとの間の主な区別のうちの1つは、ポリマー内の比較的高度の長鎖分枝である。本発明における使用に好適な低密度ポリエチレンポリマーは、任意の好適な量の長鎖分枝、たとえば、10,000個の炭素原子当たり約0.01以上の長鎖分枝、10,000個の炭素原子当たり約0.1以上の長鎖分枝、10,000個の炭素原子当たり約0.5以上の長鎖分枝、10,000個の炭素原子当たり約1以上の長鎖分枝、または10,000個の炭素原子当たり約4以上の長鎖分枝を示し得る。本発明における使用に好適な低密度ポリエチレンポリマー中に存在し得る長鎖分枝度の最大に厳密な制限はないが、多くの低密度ポリエチレンポリマー中の長鎖分枝は、10,000個の炭素原子当たり約100未満の長鎖分枝である。
【0050】
[0048]組成物に利用されるポリエチレンポリマー組成物は、任意の好適なポリエチレンポリマーまたはポリエチレンポリマーの混合物を含んでもよい。しかし、より大きな程度の溶融緩和を示すポリエチレンポリマー組成物は、分枝アルキルホスホン酸の塩によってより効果的に核形成されると考えられる。ポリマーの特定の溶融加工(たとえば、吹込みフィルム製造)の間、ポリマー溶融物は、ダイを通して押し出される際に、伸長薄化またはひずみに供される。ポリマー溶融物は、押し出されたポリマー溶融物がさらに加工される、たとえば延伸および/または吹き込まれる際に、さらなる伸長薄化またはひずみに供されてもよい。ポリマー溶融物に加えられるひずみにより、ポリマー溶融物中の伸長ポリマー鎖が流方向に配向する。加工されたポリマー溶融物が冷却するにつれて、これらの方向配向された伸長ポリマー鎖は、ポリマー溶融物の結晶化の前の、あまり秩序化されていない状態に戻ることができる。この過程は、ここで「溶融緩和」と称される。あるいは、方向配向された伸長ポリマー鎖は、溶融物中で配向されたまま結晶化してフィブリルを形成することができる。これらのフィブリルは、ポリマーの自己核形成を開始させることができる部位をもたらす。このようなフィブリルが、ポリマーが溶融物から固化する際にポリマー中に十分に形成されると、結果として生じるひずみ誘導自己核形成が、ポリマーの核形成の支配的な様式となり得る。ポリマーの自己核形成は有益に思われる可能性があるが、そのような自己核形成によって生成されるポリマー構造は、一般に特定の所望の物理特性にとってあまり好ましくない。たとえば、自己核形成ポリエチレンは、一般に、たとえば分枝アルキルホスホン酸の塩で不均質に核形成されたポリエチレンよりも高い水蒸気および酸素透過度を示す。したがって、分枝アルキルホスホン酸の塩によって誘導される核形成の程度を最大にするために、ポリマー組成物は、好ましくはひずみ誘導自己核形成が支配的でないことを確実にするのに十分な溶融緩和を示すポリエチレンポリマー組成物を含有する。
【0051】
[0049]ポリマーによって示される溶融緩和の程度は、容易に直接定量することができない。さらに、溶融緩和は、多くの因子、たとえば分子量、分子量分布の広さ、分子量分布における高分子量画分の相対量、およびポリマー中の分枝または非直鎖状鎖に影響され得ると考えられる。関与する因子の数とそれらの因子の間の複雑な関係から、十分な溶融緩和を示すポリエチレンポリマーを定義するのに十分なそれぞれの値の範囲を特定することは困難である。換言すると、十分な溶融緩和を示すポリマーの分子量分布の定義を試みてもよいが、適切な範囲は、分布の「形状」(すなわち、高分子量画分の相対量)によって変化する可能性がある。したがって、十分な溶融緩和を示すポリエチレンポリマーを特定しようとする場合、これらの因子を考慮することができるが、溶融緩和のより直接的で正確な測定が所望される可能性がある。
【0052】
[0050]粘弾性材料(たとえば、ポリマー溶融物)のせん断貯蔵弾性率(G’)は、貯蔵エネルギー(応力)、たとえば上述の方向配向された伸長ポリマー鎖に貯蔵されるものに関連する。粘弾性材料のせん断損失弾性率(G’’)は、エネルギー損失または散逸、たとえば、ポリマー溶融物中の方向配向された伸長ポリマー鎖の緩和によって放出されるものに関連する。tanδとして定義されるせん断損失弾性率とせん断貯蔵弾性率の比(G’’/G’)は、与えられたひずみ速度におけるエネルギーの損失対貯蔵に比例する。tanδが1未満の材料では、測定されるひずみ速度ではエネルギーの貯蔵が優勢である。tanδが1より大きい材料では、測定されるひずみ速度ではエネルギーの損失(散逸)が優勢である。さらに、異なるひずみ速度で測定されたtanδの比較(たとえば、tanδの比)を使用して、ひずみ速度の変化に伴って材料のエネルギー損失とエネルギー貯蔵の優位性が変化する程度を定量することができる。
【0053】
[0051]せん断貯蔵弾性率およびせん断損失弾性率は、様々な技術によって様々なひずみ速度で測定することができる。しかし、弾性率がポリマーの溶融緩和の正確な測定に使用される場合、両方の弾性率は、ポリマー溶融物が溶融加工中に供されるひずみ速度またはそれに近い速度で測定されるべきである。この目的のために、本発明者らは、約0.1rad/sおよび約10rad/sの角周波数での平行平板レオメーターによるせん断貯蔵弾性率およびせん断損失弾性率の測定が、ポリエチレンポリマー組成物溶融物が加工中に供されるひずみ速度の公正な近似を提供すると考える。先に述べたように、これら2つのひずみ速度におけるtanδ同士の比は、ひずみ速度の変化に伴うエネルギー損失およびエネルギー貯蔵の変化を示すために使用することができる。様々なポリマーおよびポリマー組成物による広範な実験後、ひずみ速度が減少する(すなわち、角周波数が減少する)につれてエネルギー損失が顕著に増加する(すなわち、tanδが顕著に増加する)ポリエチレンポリマーは、分枝アルキルホスホン酸の塩による不均質な核形成に対して十分な溶融緩和を示すと考えられる。特に、約0.1rad/sにおけるtanδと約10rad/sにおけるtanδの比は、望ましいレベルの溶融緩和を示すポリマーを特定するのに特に有用であると考えられる。しかし、十分な溶融緩和が起こるtanδ値の比は、ポリマーの分子量に影響されることも測定されており、より高い分子量を有するポリマーは、十分な溶融緩和を達成するためにより高い比を必要とする。したがって、tanδ値同士の比は、ポリマーの分子量の影響を考慮するための追加の因子を必要とする。ポリマーの分子量は、一般にポリマーのメルトフローインデックスに反比例する。さらに、分子量とメルトフローインデックスの間の関係は線形ではなく、より一般的には本質的に対数的である。したがって、tanδ値同士の比は、比に1とポリマーのメルトフローインデックスの自然対数の和を乗じることにより、分子量の効果を考慮して増大させることができる。以下で「溶融緩和指数」と称される得られたパラメータは、2以上であるべきである。換言すれば、ポリエチレンポリマー組成物は、好ましくは2以上、より好ましくは2.1以上の溶融緩和指数を有する。
【0054】
[0052]上述のように、溶融緩和指数(MRI)は、(i)1とポリマーのメルトフローインデックスの自然対数の和と、(ii)約0.1rad/sにおけるtanδと約10rad/sにおけるtanδの比の積として定義される:
【0055】
【0056】
この定義では、2つの角周波数は、所定の値にほぼ等しいと定義されている。したがって、約0.1rad/sにおけるtanδは、0.095~0.105rad/sの任意の角周波数で測定することができ、約10rad/sにおけるtanδは、9.5rad/s~10.5rad/sの任意の角周波数で測定することができる。MRRの決定に使用される正確な角周波数は上記の範囲内で変化し得るが、2つの角周波数の比は0.01でなければならない(すなわち、2つの角周波数の間に100倍の差がなければならない)。1分当たりのデシグラム(dg/分)または10分当たりのグラム(g/10分)の単位で報告することができるポリマーのメルトフローインデックスは、2.16kgの荷重を使用して、190℃でASTM規格D1238に従って測定される。
【0057】
[0053]溶融緩和指数は、任意の好適な技術によって測定することができる。好ましくは、せん断損失弾性率(G’’)、せん断貯蔵弾性率(G’)およびtanδは、1.1mmギャップに設定された25mmの平行プレートを備えた回転レオメーターを使用して、190℃の温度で平行平板レオメトリーによって決定される。測定に使用されるポリマーサンプルは、圧縮成形ディスクの形態で提供される。測定中、角距離またはひずみは、好ましくは非ヒステリシス領域に留まるように低く保たれ、約1パーセントの公称ひずみが好ましい。これらのパラメータはポリマー溶融物から決定されるため、核形成剤の存在は、ポリエチレンポリマー組成物から測定されるせん断損失弾性率(G’’)、せん断貯蔵弾性率(G’)、tanδ、またはメルトフローインデックスに顕著な影響を及ぼさない。したがって、これらのパラメータ(および溶融緩和指数)は、分枝アルキルホスホン酸の塩と組み合わされる前のポリエチレンポリマー組成物から測定することができるか、またはパラメータは、ポリエチレンポリマー組成物および分枝アルキルホスホン酸の塩を含むポリマー組成物から測定することができる。
【0058】
[0054]上述したように、ポリエチレンポリマー組成物は、所望の溶融緩和指数を示す任意の好適なポリエチレンポリマーまたはポリエチレンポリマーの混合物を含むことができる。したがって、ポリエチレンポリマー組成物は、所望の溶融緩和指数を示す単一のポリエチレンポリマーを含むことができる。あるいは、ポリエチレンポリマー組成物は、混合物が所望の溶融緩和指数を示す2種以上のポリエチレンポリマーの混合物を含むことができる。このような混合物において、各ポリエチレンポリマーは、所望の範囲内に入る溶融緩和指数を示すことができるが、これは必須ではない。たとえば、比較的低い溶融緩和指数(たとえば、2未満)を示すポリエチレンポリマーを、適切な量のより高い溶融緩和指数(たとえば、2.1以上)を有する別のポリエチレンポリマーと混合して、所望の溶融緩和指数を示すポリエチレンポリマー組成物を得ることができる。
【0059】
[0055]上述のように、ポリマー組成物はまた、分枝アルキルホスホン酸の塩を含む。ここで利用する場合、「分枝アルキルホスホン酸」という用語は、以下の式(C)のホスホン酸を指す。
【0060】
【0061】
式(C)中、R101は分枝アルキル基である。分枝アルキルホスホン酸の塩は、任意の好適なカチオンを含むことができる。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、第1族元素カチオン、第2族元素カチオン、および第12族元素カチオンからなる群から選択される1種以上のカチオンを含む。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、第1族元素カチオン、好ましくは2つのナトリウムカチオンを含む。別の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、第2族元素カチオンを含む。特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、カルシウムカチオンを含む。
【0062】
[0056]分枝アルキルホスホン酸は、任意の好適な分枝アルキル基を含むことができる(すなわち、R101は任意の好適な分枝アルキル基であり得る)。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、sec-イソペンチル、ペンタン-3-イル、および2-メチルブチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む。別の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、リン原子に対してアルファ-炭素またはベータ-炭素に位置する分枝点を有するアルキル基を含み、アルファ-炭素における分枝点が特に好ましい。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、第三級アルキル基(すなわち、4個の非水素置換基、たとえば3個のアルキル基およびリン原子に結合した少なくとも1個の炭素原子を含むアルキル基)を含む。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、tert-ブチル、tert-ペンチル、およびネオペンチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む。特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、tert-ブチル基を含む(すなわち、R101はtert-ブチルである)。したがって、好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、tert-ブチルホスホン酸の二ナトリウム塩、tert-ブチルホスホン酸のカルシウム塩(すなわち、t-ブチルホスホン酸カルシウムまたはt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。別の特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、tert-ブチルホスホン酸のカルシウム塩(すなわち、t-ブチルホスホン酸カルシウムまたはt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)である。
【0063】
[0057]分枝アルキルホスホン酸の塩は、任意の好適な比表面積(たとえば、BET比表面積)を有することができる。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、約20m2/g以上のBET比表面積を有する。別の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、約30m2/g以上のBET比表面積を有する。分枝アルキルホスホン酸の塩のBET比表面積は、任意の好適な技術によって測定することができる。好ましくは、分枝アルキルホスホン酸の塩のBET比表面積は、吸着ガスとして窒素を使用して、「Determination of the Specific Surface Area of Solids by Gas Adsorption-BET method」と題されたISO規格9277:2010に従って測定される。ここで開示される分枝アルキルホスホン酸の塩は、一般に、当技術分野で公知の技術を使用して剥離可能な層状構造を有する。このような層状構造の剥離は、分枝アルキルホスホン酸の塩のBET比表面積を増加させ、それにより分散を助ける。分枝アルキルホスホン酸の塩のBET比表面積を増加させる物理的方法としては、エアジェットミリング、ピンミリング、ハンマーミリング、粉砕ミルなどが挙げられる。改善された分散および表面積は、より厳密な混合および押出方法、たとえば高強度混合および二軸押出によっても達成することができる。したがって、所望のBET比表面積を有さない分枝アルキルホスホン酸の塩は、所望のBET比表面積が達成されるまで、これらおよび他の公知の技術を使用して剥離することができる。
【0064】
[0058]ポリマー組成物は、任意の好適な量の分枝アルキルホスホン酸の塩を含有することができる。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマー組成物の総重量に基づいて約50百万分率(ppm)以上の量でポリマー組成物中に存在する。別の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマー組成物の総重量に基づいて約75ppm以上、約100ppm以上、約150ppm以上、約200ppm以上、または約250ppm以上の量でポリマー組成物中に存在する。分枝アルキルホスホン酸の塩は、好ましくはポリマー組成物の総重量に基づいて約5,000ppm以下の量でポリマー組成物中に存在する。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、好ましくはポリマー組成物の総重量に基づいて約4,000ppm以下、約3,000ppm以下、約2,000ppm以下、約1,500ppm以下、約1,250ppm以下、または約1,000ppm以下の量でポリマー組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマー組成物の総重量に基づいて約50ppm~約5,000ppm(たとえば、約50ppm~約4,000ppm、約50ppm~約3,000ppm、約50ppm~約2,000ppm、約50ppm~約1,500ppm、約50ppm~約1,250ppm、または約50ppm~約1,000ppm)、約75ppm~約5,000ppm(たとえば、約75ppm~約4,000ppm、約75ppm~約3,000ppm、約75ppm~約2,000ppm、約75ppm~約1,500ppm、約75ppm~約1,250ppm、または約75ppm~約1,000ppm)、約100ppm~約5,000ppm(たとえば、約100ppm~約4,000ppm、約100ppm~約3,000ppm、約100ppm~約2,000ppm、約100ppm~約1,500ppm、約100ppm~約1,250ppm、または約100ppm~約1,000ppm)、約150ppm~約5,000ppm(たとえば、約150ppm~約4,000ppm、約150ppm~約3,000ppm、約150ppm~約2,000ppm、約150ppm~約1,500ppm、約150ppm~約1,250ppm、または約150ppm~約1,000ppm)、約200ppm~約5,000ppm(たとえば、約200ppm~約4,000ppm、約200ppm~約3,000ppm、約200ppm~約2,000ppm、約200ppm~約1,500ppm、約200ppm~約1,250ppm、または約200ppm~約1,000ppm)、約250ppm~約5,000ppm(たとえば、約250ppm~約4,000ppm、約250ppm~約3,000ppm、約250ppm~約2,000ppm、約250ppm~約1,500ppm、約250ppm~約1,250ppm、または約250ppm~約1,000ppm)の量でポリマー組成物中に存在する。ポリマー組成物が1種より多くの分枝アルキルホスホン酸の塩を含む場合、分枝アルキルホスホン酸の各塩は、上述の量の1つでポリマー組成物中に存在し得るか、またはポリマー組成物中に存在する分枝アルキルホスホン酸のすべての塩の合計量は、上述の範囲の1つに入り得る。好ましくは、ポリマー組成物が分枝アルキルホスホン酸の1種より多くの塩を含む場合、ポリマー組成物中に存在する分枝アルキルホスホン酸のすべての塩の合計量は、上述の範囲の1つに入る。
【0065】
[0059]本発明の組成物で使用するために好適な分枝アルキルホスホン酸の塩は、任意の好適な処理によって作製することができる。たとえば、塩は、分枝アルキルホスホン酸と金属塩基、たとえば金属水酸化物(たとえば、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム)または金属酸化物(たとえば、酸化カルシウムまたは酸化亜鉛)を水性媒体中で反応させることによって作製することができる。このような処理によって作製される分枝アルキルホスホン酸の塩は、水和物(たとえば、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)であり得る。このような水和物塩は、塩を十分に高温に加熱することによって脱水させることができるが、このような脱水塩(たとえば、t-ブチルホスホン酸カルシウム)の多くは、大気中の水分に曝露されると再水和するほど十分に不安定である。
【0066】
[0060]本発明のポリマー組成物は、前述の分枝アルキルホスホン酸の塩に加えて、他のポリマー添加剤を含有することができる。好適な追加のポリマー添加剤としては、酸化防止剤(たとえば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、およびそれらの組合せ)、ブロッキング防止剤(たとえば、非晶質シリカおよび珪藻土)、顔料(たとえば、有機顔料および無機顔料)ならびに他の着色剤(たとえば、染料および高分子着色剤)、充填剤および補強剤(たとえば、ガラス、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、およびオキシ硫酸マグネシウムウィスカー)、核形成剤、透明化剤、酸捕捉剤(たとえば、脂肪酸の金属塩、たとえばステアリン酸の金属塩、およびハイドロタルサイト様材料)、ポリマー加工添加剤(たとえば、フルオロポリマー加工添加剤)、ポリマー架橋剤、スリップ剤(たとえば、脂肪酸と、アンモニアまたはアミン含有化合物との反応から得られる脂肪酸アミド化合物)、脂肪酸エステル化合物(たとえば、脂肪酸と、ヒドロキシル含有化合物、たとえばグリセロール、ジグリセロールおよびそれらの組合せとの反応から得られる脂肪酸エステル化合物)、ポリマー改質剤(たとえば、炭化水素樹脂改質剤、たとえばExxon Mobil CorporationによってOppera(商標)の商品名で販売されているもの)、および前述のものの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
[0061]好ましい態様では、ポリマー組成物は、1種以上の酸捕捉剤をさらに含む。上述したように、好適な酸捕捉剤としては、脂肪酸の金属塩およびハイドロタルサイト様材料(たとえば、合成ハイドロタルサイト)が挙げられる。脂肪酸の好適な金属塩としては、C12~C22脂肪酸(たとえば、飽和C12~C22脂肪酸)、たとえばステアリン酸の金属塩が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様では、酸捕捉剤は、ステアリン酸の亜鉛、カリウムおよびランタン塩からなる群から選択され、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。酸捕捉剤として使用するのに好適なハイドロタルサイト様材料としては、「DHT-4A」および「DHT-4V」の商品名でKisuma Chemicalsによって販売されている合成ハイドロタルサイト材料(CAS No.11097-59-9)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
[0062]分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、任意の好適な相対量でポリマー組成物中に存在し得る。たとえば、分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、ポリマー組成物中の分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤の重量に基づいて約10:1~約1:10の比(分枝アルキルホスホン酸の塩対酸捕捉剤)でポリマー組成物中に存在し得る。より好ましくは、分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、ポリマー組成物中の分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤の重量に基づいて約4:1~約1:4、約3:1~約1:3(たとえば、約3:1~約1:1または約3:1~約2:1)、約1:1~約1:4、または約1:1~約1:3の比でポリマー組成物中に存在する。特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、ポリマー組成物中の分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤の重量に基づいて約2:1の比でポリマー組成物中に存在する(たとえば、1重量部のステアリン酸亜鉛に対して約2重量部のt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)。別の特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、ポリマー組成物中の分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤の重量に基づいて約3:1の比でポリマー組成物中に存在する(たとえば、1重量部のステアリン酸亜鉛に対して約3重量部のt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)。
【0069】
[0063]上述のように、本発明のポリマー組成物は、上述の分枝アルキルホスホン酸の塩に加えて、他の核形成剤を含有することができる。好適な核形成剤としては、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸塩(たとえば、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸ナトリウムまたはヒドロキシアルミニウムビス(2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸塩(たとえば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二ナトリウムまたはビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸カルシウム)、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸塩(たとえば、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸カルシウム、一塩基性シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸アルミニウム、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸二リチウム、またはシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ストロンチウム)、グリセロール酸塩(たとえば、グリセロール酸亜鉛)、フタル酸塩(たとえば、フタル酸カルシウム)、フェニルホスホン酸塩(たとえば、フェニルホスホン酸カルシウム)、およびそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸塩およびシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸塩の場合、カルボキシレート部分は、シスまたはトランス立体配置の何れかで配置されてもよく、シス立体配置が好ましい。
【0070】
[0064]上述したように、本発明のポリマー組成物は、透明化剤を含有することもできる。好適な透明化剤としては、トリスアミド、および多価アルコールと芳香族アルデヒドとの縮合生成物であるアセタール化合物が挙げられるがこれらに限定されない。好適なトリスアミド透明化剤としては、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸のアミド誘導体、N-(3,5-ビス-ホルミルアミノ-フェニル)-ホルムアミドの誘導体(たとえば、N-[3,5-ビス-(2,2-ジメチル-プロピオニルアミノ)-フェニル]-2,2-ジメチル-プロピオンアミド)、2-カルバモイル-マロンアミドの誘導体(たとえば、N,N’-ビス-(2-メチル-シクロヘキシル)-2-(2-メチル-シクロヘキシルカルバモイル)-マロンアミド)、およびこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。上述したように、透明化剤は、多価アルコールと芳香族アルデヒドの縮合生成物であるアセタール化合物であり得る。好適な多価アルコールとしては、非環式ポリオール、たとえばキシリトールおよびソルビトール、ならびに非環式デオキシポリオール(たとえば、1,2,3-トリデオキシノニトールまたは1,2,3-トリデオキシノン-1-エニトール)が挙げられる。好適な芳香族アルデヒドは、典型的に、芳香環上の残りの位置が非置換または置換の何れかである単一のアルデヒド基を含有する。したがって、好適な芳香族アルデヒドは、ベンズアルデヒドおよび置換ベンズアルデヒド(たとえば、3,4-ジメチル-ベンズアルデヒドまたは4-プロピル-ベンズアルデヒド)を含む。前述の反応によって生成されるアセタール化合物は、モノアセタール、ジアセタール、またはトリアセタール化合物(すなわち、それぞれ1個、2個、または3個のアセタール基を含有する化合物)であってもよく、ジアセタール化合物が好ましい。好適なアセタール系透明化剤としては、米国特許第5,049,605号;同第7,157,510号;および同第7,262,236号に開示されている透明化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
[0065]本発明のポリマー組成物は、任意の好適な方法または処理によって製造することができる。たとえば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の個々の成分(たとえば、ポリマー、分枝アルキルホスホン酸の塩、および存在する場合は他の添加剤)の単純な混合によって製造することができる。ポリマー組成物は、高せん断または高強度混合条件下で個々の成分を混合することによっても製造することができる。本発明のポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー組成物から製造物品を製造するためのさらなる加工に使用するのに好適な任意の形態で提供されてもよい。たとえば、熱可塑性ポリマー組成物は、粉末(たとえば、自由流動性粉末)、フレーク、ペレット、プリル、タブレット、凝集体などの形態で提供されてもよい。
【0072】
[0066]第1の態様の発明のポリマー組成物は、新しいポリマー(たとえば、非核形成高密度ポリエチレンポリマー)への添加または降下のために設計されたマスターバッチ組成物の形態をとることができる。このような態様では、ポリマー組成物は、一般に新しい熱可塑性ポリマーにさらに希釈または添加することなく製造物品の形成に使用することを意図した熱可塑性ポリマー組成物と比較して、より多量の分枝アルキルホスホン酸の塩を含有する。たとえば、分枝アルキルホスホン酸の塩は、約0.5重量%以上(たとえば、約1重量%以上または約2重量%以上)の量でそのようなポリマー組成物中に存在し得る。マスターバッチ中の塩の最大量は、製造および加工の考慮事項によってのみ制限されるが、量は典型的に約50重量%以下である。したがって、一連の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマー組成物の総重量に基づいて約0.5重量%~約50重量%(たとえば、約0.5重量%~約40重量%、約0.5重量%~約30重量%、約0.5重量%~約25重量%、約0.5重量%~約20重量%、約0.5重量%~約15重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、もしくは約0.5重量%~約4重量%)、約1重量%~約50重量%(たとえば、約1重量%~約40重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約25重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、もしくは約1重量%~約4重量%)、または約2重量%~約50重量%(たとえば、約2重量%~約40重量%、約2重量%~約30重量%、約2重量%~約25重量%、約2重量%~約20重量%、約2重量%~約15重量%、約2重量%~約10重量%、約2重量%~約5重量%、もしくは約2重量%~約4重量%)の量でマスターバッチ中に存在することができる。このようなマスターバッチ組成物では、組成物中に含有される追加の添加剤は、同様に、マスターバッチ組成物を新しいポリマー中に降下させる際に所望の濃度をもたらすことを意図したより高い量で存在する。
【0073】
[0067]本発明のポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー製造物品の製造に有用であると考えられる。本発明のポリマー組成物は、任意の好適な技術、たとえば射出成形(たとえば、薄肉射出成形、多成分成形、オーバー成形、または2K成形)、吹込み成形(たとえば、押出吹込み成形、射出吹込み成形、または射出延伸吹込み成形)、押出(たとえば、繊維押出、テープ(たとえば、スリットテープ)押出、シート押出、フィルム押出、キャストフィルム押出、パイプ押出、押出コーティング、または発泡押出)、熱形成、回転成形、フィルム吹込み(吹込みフィルム)、フィルムキャスト(キャストフィルム)、圧縮成形、押出圧縮成形、押出圧縮吹込み成形などによって所望の熱可塑性ポリマー製造物品に形成されてもよい。本発明のポリマー組成物を使用して作製される熱可塑性ポリマー物品は、複数の層からなってもよく(たとえば、多層吹込みもしくはキャストフィルム、または多層射出成形品)、複数の層の1つまたは任意の好適な数が本発明のポリマー組成物を含有する。
【0074】
[0068]本発明のポリマー組成物は、任意の好適な製造物品を製造するために使用することができる。好適な製造物品としては、医療機器(たとえば、レトルト用途のためのプレフィルドシリンジ、静脈内供給容器、および採血装置)、食品包装、液体容器(たとえば、飲料、薬、パーソナルケア組成物、シャンプーなどの容器)、衣装ケース、電子レンジ対応物品、棚、キャビネットドア、機械部品、自動車部品、シート、パイプ、チューブ、回転成形部品、吹込み成形部品、フィルム、繊維などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
[0069]上述の分枝アルキルホスホン酸の塩の1種を含有する特定のポリエチレン物品は、顕著により低い水蒸気および酸素透過度を示すことが観察されている。たとえば、水蒸気および酸素に対するバリアのこうした改善は、上述の分枝アルキルホスホン酸の塩の1種を含有する高密度ポリエチレンフィルムについて観察されている。したがって、第2の態様では、本発明は、水蒸気および酸素に対する改善されたバリアを有するポリエチレンフィルムを提供する。フィルムは、(i)約930kg/m3~約970kg/m3の密度を有する高密度ポリエチレンポリマー、および(ii)分枝アルキルホスホン酸の塩を含む。フィルム中に存在する高密度ポリエチレンポリマーは、本発明のポリマー組成物の態様に関連して上述した高密度ポリエチレンポリマーの何れかであってもよい。好ましい態様では、高密度ポリエチレンポリマーは、2つ以上の極大値を有する多峰性分子量分布を有する。フィルム中に存在する分枝アルキルホスホン酸の塩は、本発明のポリマー組成物の態様に関連して上述した分枝アルキルホスホン酸の塩の何れかであり得る。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、tert-ブチルホスホン酸のカルシウム塩(たとえば、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)である。
【0076】
[0070]上述したように、ポリエチレンフィルムは、顕著に改善された水蒸気および酸素透過度によって実証されるように、水蒸気および酸素に対する改善されたバリアを有する。好ましい態様では、フィルムは、約300cm3・ミル m-2日-1(0.209atm)-1以下、約275cm3・ミル m-2日-1(0.209atm)以下、約250cm3・ミル m-2日-1(0.209気圧)-1以下、約225cm3・ミル m-2日-1(0.209気圧)-1以下、または約200cm3・ミル m-2日-1(0.209気圧)-1以下の正規化酸素透過度(nOTR)を有する。別の好ましい態様では、フィルムは、約3g ミル m-2日-1以下、約2.5g ミル m-2日-1以下、約2g ミル m-2日-1以下、または約1.75g ミル m-2日-1以下の正規化水蒸気透過度(nWVTR)を有する。これらのバリア改善に加えて、ポリエチレンフィルムは、一般に低ヘーズ、高透明度および高光沢の望ましい組合せを有する。たとえば、約3ミルの厚さを有する本発明のポリエチレンフィルムは、約20%以下(たとえば、約15%以下)のヘーズおよび/または約90%以上(たとえば、約95%以上)の透明度を示すことができる。好ましい態様では、ポリエチレンフィルムは、約80%以上(たとえば、約90%以上)の光沢を有する。
【0077】
[0071]本開示の熱可塑性ポリマー組成物は、非核形成ポリマー、および記載された物理特性(たとえば、密度、溶融緩和指数、メルトフローインデックスなど)を示さない核形成ポリマーと比較して、水蒸気および酸素透過度が格別に改善されている(すなわち、より低い)ため、押出吹込み成形およびフィルム吹込み方法での使用に好適であると考えられる。たとえば、本開示の熱可塑性ポリマー組成物から作製された吹込みフィルムは、所望の溶融緩和指数を示さない核形成ポリマーから作製された同様の吹込みフィルムよりも著しく低い水蒸気透過度を示すことが観察されている。上述したように、この結果は、分枝アルキルホスホン酸の塩の核形成効果を最大化するのに十分な溶融緩和を示すポリエチレンポリマー組成物の選択に起因すると考えられる。
【0078】
[0072]したがって、第3の態様において、本発明は、熱可塑性ポリマー組成物からフィルムを製造するための方法を提供する。方法は、
(a)
(i)チューブを押し出すように適合された環状ダイオリフィスを有するダイ;
(ii)環状ダイオリフィスから出るチューブに加圧流体を吹き込むための手段;および
(iii)チューブを延伸し回収するための手段
を含む装置を準備する工程;
(b)(i)2以上の溶融緩和指数を有するポリエチレンポリマー組成物;および(ii)分枝アルキルホスホン酸の塩を含むポリマー組成物を準備する工程;
(c)ポリマー組成物がダイを通して押し出され得るように、ポリマー組成物を溶融させるのに十分な温度までポリマー組成物を加熱する工程;
(d)溶融ポリマー組成物を環状ダイオリフィスを通して押し出して、環状ダイオリフィスから出るチューブを第1の方向に形成する工程であって、チューブが直径および長さを有する工程;
(e)チューブを膨張させその直径を増加させるのに十分な圧力下で加圧流体をチューブ内に吹き込むと同時に、チューブを第1の方向に延伸してその長さを増加させ、それによりフィルムを製造する工程;
(f)フィルムを、ポリマー組成物が固化する温度まで冷却させる工程;および
(g)フィルムを回収する工程
を含む。
【0079】
[0073]この第2の態様の方法で利用されるポリマー組成物は、上記のポリマー組成物の何れかであってもよい。本発明の方法を実施する際に使用される装置は、任意の好適な吹込みフィルム装置であってもよい。たとえば、フィルム吹込み機は、単層フィルムを製造する単一の押出機および環状ダイを備えることができる。あるいは、フィルム吹込み機は、複数の押出機、および溶融物中の複数の、しかし別個の層を組み合わせるように適合された好適な分配ダイを備えることができる。このようなフィルム吹込み機によって製造されるフィルムは、多層フィルムである。多層フィルムが製造される場合、本発明のポリマー組成物を使用して、多層フィルムの任意の1つ以上の層を製造することができる。換言すれば、上述の方法は、フィルムのすべての層が言及されたポリマー組成物を使用して製造される多層フィルムの製造方法だけでなく、言及されたポリマー組成物が多層フィルムの少なくとも1つの層を製造するために使用され、1つ以上の追加のポリマー組成物が多層フィルムの残りの層を製造するために使用される多層フィルムも包含する。
【0080】
[0074]上述の方法において、ポリマー組成物は、ポリマー組成物を溶融し、ダイを通して押し出すことを可能にする任意の好適な温度まで加熱することができる。熱可塑性ポリマー組成物が加熱される温度は、分枝アルキルホスホン酸の塩の核形成性能に顕著な影響を及ぼさないが、より高い温度は、より大きくより速い溶融緩和を促進してもよく、それにより核形成性能をある程度まで改善する可能性がある。しかし、ポリマー組成物が加熱される温度は、溶融ポリマー組成物の粘度を、加圧流体によってチューブが膨張したときにチューブが破裂する点まで低下させる可能性がある過度に高い温度であるべきではない。好ましくは、ポリマー組成物は約150℃~約220℃の温度に加熱される。ポリマー組成物は、最初に押出機のフィードスロートで約150℃~約170℃の温度に加熱され、続いて押出機の最終ゾーンで約180℃~約220℃の温度に加熱されてもよい。一旦所望の温度に加熱されると、溶融ポリマー組成物は、好ましくは環状ダイオリフィスから押し出されるまで所望の温度に維持される。ポリマーの特性に応じて、吹込みフィルム製造の当業者であれば、質量出力、システム背圧、および気泡(チューブ)の安定性の間の適切な妥協点を維持するための温度調整の必要性を認識する。
【0081】
[0075]環状ダイオリフィスから出るポリマーのチューブは、任意の好適な圧力を使用して所望の直径まで膨張させることができる。チューブを膨張させるのに必要な圧力は、いくつかの要因、たとえば環状ダイオリフィスから出る溶融ポリマー組成物の温度、チューブの直径を増加させる程度、および得られるフィルムの所望の厚さに依存する。したがって、実際には、圧力は通常、所望の特性を有するフィルムが得られるまで機械操作者によって調整される。
【0082】
[0076]上記の方法によって製造されたフィルムは、任意の好適な方法で回収することができる。たとえば、膨張されたチューブは、一般に、2つ以上のニップローラによって平坦化された形態に折り畳まれる。折り畳まれたチューブ、またはレイフラット(layflat)は、この平坦化された形態で回収することができるか、またはレイフラットの端部をスリットして2つの別々のフィルムを得ることができ、次いでこの別々のフィルムを回収することができる。
【0083】
[0077]以下の例は、上記の主題をさらに例示するが、当然のことながら、その範囲をどのようにも限定すると解釈されるべきではない。
【0084】
例1
[0078]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物から作製されたキャストフィルムによって示される改善された特性を実証する。
【0085】
[0079]キャストフィルムは、高密度ポリエチレンポリマー(HDPE)、具体的にはNova Chemicals製Sclair2908を使用して作製した。ポリマーは、密度961kg/m3およびメルトフローインデックス7.0dg/分を有すると報告されている。顆粒状樹脂を粉砕して粉末にし、その後以下に記載する添加剤と配合した。
【0086】
[0080]サンプルは、粉砕したHDPE樹脂と、638ppmの指定されたホスホン酸塩、319ppmのステアリン酸亜鉛、300ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤、および600ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤を混合することによって作製した。対照サンプルは、粉砕したHDPE樹脂と300ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤、および600ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤を混合することによって作製した。組み合わせた成分を、10LのHenschel高強度ミキサーで2,000rpmで約2.5分間混合した。
【0087】
[0081]得られた各混合物を、Maddock混合部を有する、L/D30の直径1インチのスクリューを備えたDeltaplast一軸押出機を通して配合した。前部から末端までの4つのバレルゾーンの温度プロファイルは、160℃、175℃、190℃および190℃であった。温度が190℃に設定された短い円筒形ストランドダイを端部に接続した。ポリマーストランドを水冷し、標準的なペレタイザーで顆粒サイズに切断した。押出機に、各サンプルの間にHDPE樹脂をパージした。
【0088】
[0082]フィルムを作製する前に、各配合サンプルを6重量%の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂と袋混合した。使用したLLDPE樹脂は、報告された密度919kg/m3およびメルトフローインデックス6.0dg/分を有するDowlex2035であった。LLDPE樹脂を添加して、フィルムの押出時に一定の供給速度を促進した。
【0089】
[0083]フィルムをKillionラボシステムで押し出した。システムは、Egan混合部を有するスクリュー直径1インチおよびL/D24の一軸押出機を備えていた。加工中、押出機の最初のゾーンを180℃に設定し、残りのゾーンおよび移送ラインを205℃に設定した。押出機からのポリマーメルトを、0.5mm間隔に設定された調整可能なダイリップ、およびT字型コートハンガー展延形状を有する205℃の150mmフィルムダイを通して12インチの実験室スケールのチルロールに展延し、その後引張巻取り引取システムが続いた。チルロール温度は、冷却剤により85℃に維持した。押出機のスクリュー速度は、3.6kg/時間のライン出力が得られるように60rpmに設定した。チルロール表面圧延速度は19フィート/分で設定した。前述の設定により、約3ミルの目標フィルム厚が得られた。
【0090】
[0084]得られたフィルムのヘーズおよび透明度は、BYKヘーズガードTransparency Transmissionヘーズメーターを使用してASTM D1003に従って測定した。光沢は、裏面反射を避けるためにフィルムを艶消し仕上げ真空テーブル上に置き、BYK単角45°マイクロ光沢計を使用して測定した。フィルムの結晶化温度は、Mettler Toledo示差走査熱量測定(DSC)ユニットを使用して、60~200℃の温度範囲で20℃/分の加熱/冷却速度で測定した。
【0091】
[0085]押出しフィルムの酸素透過度(OTR)は、Moconフィルム浸透セル(表面積50cm2;フィルムのセンサー側のセル体積12.0cm3)と共にMOCON OpTech(登録商標)-O2 Model Pユニットを用いてASTM F3136に従って測定した。ユニット(センサーおよびセル)は、温度および湿度が制御された実験室(ASTM D618-08に従い23℃および相対湿度50%)に配置した。セルのセンサー側(フィルムの下)は、乾燥した低酸素窒素で10分間事前掃引し、一方でフィルムの上または「曝露(insult)」側は、低露点所内(house)圧縮空気で掃引し、0.209気圧の酸素曝露をもたらした。わずかなフィルム厚さの変動を考慮するために、より直接的な比較のために結果を1.0ミルの厚さに正規化した。結果は、単位cm3・ミル・m-2-日-1・(0.209atm)-1を有する正規化酸素透過度(nOTR)である。
【0092】
【0093】
[0086]表1のデータから分かるように、分枝アルキルホスホン酸の塩を用いて作製したフィルムは、望ましく低いnOTR(600cm3・ミル・m-2・日-1・(0.209atm)-1未満)を示し、一部のフィルムは低いヘーズおよび高い光沢も示した。これらのデータは、このような塩がポリエチレンポリマーの効果的な核形成剤であることを示唆している。これらの塩の中でも、データは、t-ブチルホスホン酸カルシウム(具体的には、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)がフィルムの物理特性を改善するのに特に効果的であることを示す。実際、t-ブチルホスホン酸カルシウムを用いて作製したフィルムは、対照フィルムのnOTRより約68%低いnOTRを示す。このような劇的に低いnOTRにより、このようなフィルムは、酸素から保護されなければならない商品、たとえば食肉の包装に特に有用になる。さらに、このnOTRの劇的な増加は、対照フィルムと比較してヘーズの顕著な減少(約75%)および光沢の増加を伴っていた。したがって、t-ブチルホスホン酸カルシウムを用いて作製されたフィルムは、非常に望ましいバリア特性を示すだけでなく、商品の包装に魅力的な選択肢となる光学特性も示す。
【0094】
例2
[0087]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物から作製された吹込みフィルムによって示される改善された特性を実証する。
【0095】
[0088]吹込みフィルムを、高分子量HDPEと低分子量HDPEのブレンドを使用して作製した。特に、Sclair19C(Nova Chemicals製)は、高分子量HDPEとして機能した。このHDPE樹脂は、密度958kg/m3およびメルトフローインデックス0.95dg/分を有すると報告されている。低分子量樹脂は、密度965kg/m3およびメルトフローインデックス8.3dg/分を有すると報告されているDMDA8007(DowChemical製)であった。2種のHDPE樹脂を、7.5重量部のSclair19C対2.5重量部のDMDA8007の比でブレンドした。具体的には、75kgの19Cペレットおよび25kgの8007ペレットを別々に秤量して組み合わせ、Munsonミキサーで均一に混合した。得られた樹脂ブレンドをMPM一軸押出機を使用して配合した。ゾーン1からゾーン3までの温度設定は、162℃、176℃および190℃であり、ダイの温度は190℃であった。最初の1kgの材料を押し出した後、ダイから出たポリマーストランドを水浴に移した。ポリマーストランドを標準的なペレタイザーで顆粒サイズに切断した。配合されたHDPEブレンドをMunsonミキサーに再度通し、均一な分布を確保した。顆粒状の配合されたHDPE樹脂ブレンドを、以下に記載される後続の使用前に粉砕して粉末にした。この粉砕された配合HDPE樹脂ブレンドを、以下「HDPE樹脂ブレンド1」と称する。
【0096】
[0089]吹込みフィルムの作製に使用されたサンプルは、HDPE樹脂ブレンド1と600ppmの指定されたホスホン酸塩、300ppmのステアリン酸亜鉛、300ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤、および600ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤を混合することによって作製した。対照サンプルは、HDPE樹脂ブレンド1と300ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤および600ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤を混合することによって作製した。組み合わせた成分を、10LのHenschel高強度ミキサーで2,000rpmで約2.5分間混合した。
【0097】
[0090]混合後、HDPEと添加剤の各ブレンドを、Prism二軸押出機を使用して一緒に配合した。前部から端部までのゾーン1からゾーン4の温度プロファイルは、170℃、175℃、185℃および190℃であり;ダイの温度は160℃であった。押出機のスクリュー速度は400rpmに設定した。最初の200gの材料を押し出した後、ポリマーストランドを水浴に移した。冷却したポリマーストランドを、標準的なペレタイザーで顆粒サイズに切断した。
【0098】
[0091]フィルムの作製に先立ち、各サンプルを、2dg/分のMFIを有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)担体樹脂中に3.0%の活性フッ化樹脂ポリマー加工助剤を含有する、Colortech,Inc.によって提供されるマスターバッチである3重量%の加工剤10476-11と袋混合した。
【0099】
[0092]フィルムは、Maddock混合部およびパイナップルチップを有する25mmバレル押出機(L/D30)を備え、40mmダイリップ設定、ダイギャップ1.2mmの単層スパイラルマンドレルダイ、デュアルリップエアリング、ガイドケージ、案内板、およびフィルムロールを巻き取るための引取システムに連結されたLabtech Engineering単層吹込みフィルムラインに押し出した。供給スロートゾーンは180℃であり、他のすべての押出機およびダイゾーンは210℃であった。スクリュー速度は110rpmであり、5.0kg/時間の供給速度をもたらした。引取およびエアリングブロワーの速度は、フロストライン高さ13cmで約2.0ミルでフィルムを作製するように調整した。
【0100】
[0093]フィルムの光学特性、結晶化温度およびnOTRを上述のように測定した。選択したフィルムの水蒸気透過度(WVTR)を、ASTM F1249(100°F、90%RH)に従い、Illinois Instruments Model7011水蒸気浸透分析装置を使用して測定した。結果は、わずかな厚さの変動を考慮し、直接比較しやすいように1.0ミルに正規化し、g・ミル・m-2・日-1の単位を得た。
【0101】
【0102】
[0094]表2のデータから分かるように、分枝アルキルホスホン酸の塩を用いて作製された吹込みフィルムは、望ましく低いnOTR(600cm3・ミル・m-2・日-1・(0.209atm)-1未満)を示し、一部のフィルムは低いヘーズおよび高い透明度も示した。これらのデータは、このような塩がポリエチレンポリマーの効果的な核形成剤であることを示唆している。これらの塩の中でも、データは、t-ブチルホスホン酸カルシウム(具体的には、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)がフィルムの物理特性を改善するのに特に効果的であることを示す。実際、t-ブチルホスホン酸カルシウムを用いて作製されたフィルムは、対照フィルムのnOTRより約72%低いnOTRを示す。さらに、t-ブチルホスホン酸カルシウムを用いて作製されたフィルムは、対照フィルムのnWVTRより約66%低いnWVTRを有していた。こうしたバリア特性の改善は、対照フィルムと比較してヘーズの大幅な減少(約66%)を伴っていた。したがって、t-ブチルホスホン酸カルシウムを用いて作製されたフィルムは、非常に望ましいバリア特性をもたらすだけでなく、商品の包装に魅力的な選択肢となる光学特性も示す。
【0103】
例3
[0095]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物から作製された射出成形品によって示される改善された特性を実証する。
【0104】
[0096]射出成形品は、Nova Chemicals製Sclair2908 HDPEを使用して作製した。ポリマーは、密度961kg/m3およびメルトフローインデックス7.0dg/分を有すると報告されている。顆粒状樹脂は、後述の添加剤と配合する前に粉砕して粉末にした。
【0105】
[0097]サンプルは、粉砕したHDPE樹脂と600ppmの指定されたホスホン酸塩、300ppmのステアリン酸亜鉛、300ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤、および600ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤を混合することによって作製した。対照サンプルは、粉砕HDPE樹脂と300ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤および600ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤を混合することによって作製した。組み合わせた成分を30LのHenschel高強度ミキサーで2000rpmで約3分間混合した。
【0106】
[0098]得られた各混合物を、Leistritz ZSE-18二軸押出機を使用して配合した。各サンプルの前に、押出機にSclair2908 HDPE樹脂をパージした。すべてのゾーンの温度プロファイルを155℃~165℃に設定し;ダイの温度は155℃であった。スクリュー速度は500rpmに設定し、供給速度は3.5kg/時間であった。最初の200gの材料を押し出した後、ポリマーストランドを水浴に移した。冷却したポリマーストランドを標準的なペレタイザーで顆粒サイズに切断した。
【0107】
[0099]各配合サンプルを、55トンArburg射出成形機を使用してISO294に従ってISO収縮プラークに成形した。金型はデュアルキャビティを有し、プラークの寸法は長さ60.0mm、幅60.0mm、高さ2.0mmであった。スロートの温度は40℃であった。バレルの最初の4つのゾーンは210℃に設定し、最後のゾーンは230℃に設定した。金型温度は40℃に設定した。全サイクル時間は40~45秒であった。得られたISO収縮プラークを、機械方向(MD)および横方向(TD)の結晶化温度およびプラーク収縮の測定に供した。
【0108】
[0100]さらに、各配合サンプルを、OTRおよびWVTR測定に使用されるプラークに成形した。具体的には、各配合サンプルを、長さ4.0インチ、幅4.0インチ、高さ1.0mmの寸法を有する特注のエンドゲート角金型と接続されたHusly90トン射出成形機を使用してプラークに成形した。前部から端部までの押出機のゾーン1からゾーン3までの温度プロファイルは、230℃、230℃および230℃に設定した。ノズルは250℃に設定し、金型は35℃に設定した。サイクル時間は22.3秒であり、冷却時間は10秒であった。最大射出圧力は1,140psiであった。得られた正方形のプラークは、酸素浸透分析装置および水蒸気透過分析装置に直接取り付けることができ、ここで「バリアプラーク」と称する。バリアプラークを、上述の通りの、かつ同じ装置およびISOまたはASTM方法を使用した光学特性、OTRおよびWVTRの測定に供した。
【0109】
【0110】
【0111】
[0101]表3および4のデータから分かるように、分枝アルキルホスホン酸の塩(具体的には、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)は、HDPE樹脂に対して特に効果的な核形成剤である。ISO収縮プラークの分析から、t-ブチルホスホン酸カルシウムによるHDPEの核形成を示すポリマーの結晶化温度の上昇が示される。さらに、t-ブチルホスホン酸カルシウムにより、プラークの横方向収縮が劇的に低下した。この極めて低いTD収縮は、プラークの横方向での非常に強いラメラ成長を示している。このような面内ラメラ成長は、結晶性ラメラがその成長方向に垂直なより曲がりくねった経路を作るため、プラークの浸透性の低下につながると考えられる。実際、この浸透性の低下は、バリアプラークで観察されたnOTRおよびnWVTRの差によって裏付けられた。t-ブチルホスホン酸カルシウムによって核形成されたHDPE樹脂を用いて作製されたプラークは、対照フィルムよりもそれぞれ約53%および59%低いnOTRおよびnWVTRを示した。バリアの劇的な低下は、ここでもヘーズの顕著な低減および透明度の増加を伴う。バリアの向上と光学特性の改善のこうした組合せにより、分枝アルキルホスホン酸の塩によって核形成されたポリマーは、包装材料として特に魅力的なものになる。
【0112】
例4
[0102]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物から作製された吹込みフィルムによって示される改善された特性を実証する。
【0113】
[0103]48.0gのt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」)、24.0gのステアリン酸亜鉛、8.0gのDHT-4V、0.60gのIrganox(登録商標)1010一次酸化防止剤、1.4gのIrgafos(登録商標)168二次酸化防止剤、およびポリマー担体として1918gの顆粒状Sclair2908 HDPE(密度961kg/m3およびMFI7.0dg/分)を組み合わせることによってマスターバッチ組成物を作製した。上記の成分を組み合わせ、10リットルのHenschelミキサーで2,000rpmで2.5分間高強度混合した。次いで、混合物を、ストランドペレタイザーを備えたLeistritz18mm共回転二軸押出機で二軸配合した。バレル温度ゾーンは145~155℃に設定し、スクリュー速度は500rpmであり、供給速度は3.0kg/時間であった。得られたマスターバッチは、2.4重量パーセントのt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物を含有し、「CaTBPマスターバッチ」と称される。
【0114】
[0104]炭化水素樹脂マスターバッチ組成物を、2400gのOPPERA PR100A炭化水素樹脂、1.2gのDHT-4V、1.2gのIrganox(登録商標)1010一次酸化防止剤、3.6gのIrgafos(登録商標)168二次酸化防止剤、およびポリマー担体として3,594gの顆粒状Nova Sclair2908 HDPEを組み合わせることによって作製した。成分を配合し、30リットルのHenschelミキサーで1,200rpmで2.0分間高強度混合した。次に、混合物を、ストランドペレタイザーを備えたLeistritz27mm共回転二軸押出機で二軸配合した。バレル温度ゾーンは140~150℃に設定し、スクリュー速度は400rpmであり、供給速度は15.0kg/時間であった。得られたマスターバッチは、40.0重量パーセントのPR100Aを含有し、以下「PR100Aマスターバッチ」と称される。PR100A炭化水素樹脂の技術データシートには、軟化点が137.7℃と記載されている。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定によって約85℃と決定された。
【0115】
[0105]単層吹込みフィルムを、Nova Sclair19C(密度958kg/m3およびMFI0.95dg/分を有する)、Sclair2908、上述の加工助剤10476-11(「PPA MB」)、および以下の表5に示される他の成分を乾燥ブレンドすることによって作製した。乾燥ブレンドを、上記例2に記載されるLabtech Engineering単層吹込みフィルムラインのホッパーに直接供給した。押出機ゾーンを200℃に昇温させ、移送ゾーンおよびダイゾーンは同じ温度であった。フィルムは、公称2ミルの厚さで、供給速度5.0kg/時間、およびフロストライン高さ13cmで作製した。
【0116】
[0106]得られたフィルムのWVTRおよびOTRを、例1および2で上述されるように測定した。これらの結果は、わずかな厚さの変動を考慮し、より直接的な比較を可能にするために、測定されたフィルム厚さに対してここでも正規化した。
【0117】
【0118】
【0119】
[0107]表5および6のデータから分かるように、600ppmのt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(CaTBP)の添加により、対照フィルムと比較して、nWVTRおよびnOTRの両方で56%の減少を示すフィルムが得られた。上述したように、nWVTRおよびnOTRのこの低減は顕著である。しかし、データは、炭化水素樹脂の添加によってnWVTRおよびnOTRがさらに低減され得ることを示す。実際、炭化水素樹脂の添加によるバリア特性の改善は、酸素透過度に対して特に顕著であり、酸素透過度は、わずか6重量%の炭化水素樹脂を添加するとさらに13%低減した。
【0120】
例5
[0108]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物から作製された吹込みフィルムによって示される改善された特性を実証する。
【0121】
[0109]顆粒状ExxonMobil LL 1002.09LLDPE樹脂(密度918kg/m3およびMI2.0dg/分)中に1.0%のt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物および0.50%のステアリン酸亜鉛を含有する合計2,000グラムの混合物を、10リットルのHenschel高強度ミキサーで2,000rpmで2.5分間混合した。混合物を、バレル温度の設定点が155~165℃である18mm共回転二軸押出機で配合した。次いで、得られた核形成剤マスターバッチを、上述の3.0%の加工助剤10476-11とともに、ExxonMobil LL 1001X31(密度918kg/m3およびMFI1.0dg/分を有するブテンLLDPE)に6.0%で乾燥ブレンドした。この乾燥ブレンドは、マスターバッチと同じ押出機およびプロファイルで配合した。
【0122】
[0110]上記で製造した配合樹脂を、上記例2に記載のLabtech Engineeringラボ単層ユニットを用いて1.9ミルの吹込みフィルムに変換した。押出機ゾーンは200℃に昇温させ、すべての移送ライン/ダイゾーンも200℃であった。ブローアップ比は2.5であり、運転速度は4.1kg/時間であり、フロストライン高さは14cmであった。
【0123】
[0111]「ブランク」マスターバッチ(t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物またはステアリン酸亜鉛を添加しなかった以外はすべて核形成剤マスターバッチと同様)を用いて対照サンプルを生成した。このブランクMBを上述の他のすべての調製に供し、1.9ミルのフィルムも生成した。
【0124】
[0112]得られたフィルムのOTRを、ASTM D 3985(乾燥、23℃)に従い、Systech Illinois Model8001酸素浸透分析装置を用いて100%酸素曝露で測定した。結果は、フィルムのわずかな厚さの差を考慮するために、1.0ミルの厚さに正規化した。したがって、正規化OTR(nOTR)の単位はcm3・ミル m-2日-1(atmO2
-1)である。
【0125】
[0113]「ブランク」マスターバッチ(分枝アルキルホスホン酸の塩を含有しない)を用いて作製したフィルムのnOTRは、8,067cm3・ミル m-2日-1(atmO2)-1であった。分枝アルキルホスホン酸を用いて作製したフィルムのnOTRは、5,025cm3・ミル m-2日-1(atmO2)-1であった。nOTRのこの約38%の低減は顕著であり、分枝アルキルホスホン酸の塩(特にt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)が直鎖状低密度ポリエチレンポリマーも核形成させることを示す。
【0126】
例6
[0114]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物から作製された吹込みフィルムによって示される改善された特性を実証する。具体的には、この例は、分枝アルキルホスホン酸の塩の核形成性能に対するBET比表面積の効果を実証する。
【0127】
[0115]異なるBET比表面積を有するt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物の6つのサンプル(サンプル6-1~6-6)を、HDPE樹脂のブレンドのための核形成剤として評価した。具体的には、各サンプル600ppmを使用して、上記例2に記載したものと同様のSclair19C(Nova Chemicals製)とDMDA 8007(Dow Chemical製)のブレンドを核形成させた。さらに、核形成HDPEブレンドを、上記例2に記載されたものと同様の方法で単層吹込みフィルムに変換した。
【0128】
[0116]核形成剤サンプルのBET比表面積を、吸着ガスとして窒素を使用して、「Determination of the Specific Surface Area of Solids by Gas Adsorption-BET method」と題されたISO規格9277:2010に従って測定した。選択したフィルムのnOTRおよびnWVTRを、例1および2で上述したように測定した。
【0129】
【0130】
[0117]表7のデータから分かるように、分枝アルキルホスホン酸の塩(具体的には、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)を含有するフィルムはすべて、対照HDPEフィルムと比較して劇的に改善されたバリアを示した。データは、これらすべての塩が、HDPE樹脂ブレンドに対する非常に効果的な核形成剤であったことを実証する。しかし、データはまた、塩のBET比表面積が増加するにつれ、塩がHDPE樹脂ブレンドをより良好に核形成させることを示す。これは、塩のBET比表面積と、塩を用いて作製されたフィルムのnOTRとが逆相関であることから明らかである。
【0131】
[0118]本明細書で引用される刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が、参照により組み込まれると個々に具体的に示され、ここでその全体が記載されるのと同程度に、参照によりここで組み込まれる。
【0132】
[0119]本出願の主題を記載する文脈における(とりわけ、以下の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」という用語、ならびに同様の指示語の使用は、ここで別途示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈される。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」および「含有する」という用語は、別段の記述がない限り、オープンエンドな用語として解釈される(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)。ここでの値の範囲の列挙は、別途示されない限り、その範囲内にある各別々の値を個々に参照する略式の方法であることが単に意図され、各別々の値は、それがここで個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。ここで記載のすべての方法は、ここで別途示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。ここで提示される任意かつすべての例または例示の語(たとえば、「たとえば」)の使用は、単に本出願の主題をよりよく明らかにすることを意図され、別途特許請求されない限り、主題の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる語も、任意の特許請求されていない要素がここに記載される主題の実施に必須のものであることを示すと解釈されるべきではない。
【0133】
[0120]特許請求される主題を実施するための本発明者らに公知の最良のモードを含む主題の好ましい態様が、ここで記載されている。好ましい態様の変形は、前述の記載を読むことで当業者に明らかになってもよい。本発明者らは、当業者が、適宜そのような変形を用いることを予想し、本発明者らは、ここで記載される主題が、ここで具体的に記載されるのとは別に実施されることを意図する。したがって、本開示は、準拠法に認められる通り、これに添付の特許請求の範囲に列挙される主題のすべての修正および等価物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組合せは、ここで別途記載されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示に包含される。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2以上の溶融緩和指数を有するポリエチレンポリマー組成物;および
(b)分枝アルキルホスホン酸の塩
を含むポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレンポリマー組成物が約930kg/m
3~約970kg/m
3の密度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレンポリマー組成物が分子量分布を有し、前記分子量分布が2つ以上の極大値を有する、請求項1または請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が、第1族元素カチオン、第2族元素カチオン、および第12族元素カチオンからなる群から選択される1種以上のカチオンを含む、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が第2族元素カチオンを含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がカルシウムカチオンを含む、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記分枝アルキルホスホン酸が、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、sec-イソペンチル、ペンタン-3-イル、および2-メチルブチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記分枝アルキルホスホン酸が第三級アルキル基を含む、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記分枝アルキルホスホン酸が、tert-ブチル、tert-ペンチルおよびネオペンチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がtert-ブチルホスホン酸の塩である、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がtert-ブチルホスホン酸のカルシウム塩である、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が約20m
2/g以上のBET比表面積を有する、請求項
1に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が約30m
2/g以上のBET比表面積を有する、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて約50百万分率~約2,000百万分率の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1~13の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
水蒸気および酸素に対する改善されたバリアを有するポリエチレンフィルムであって、(i)約930kg/m
3~約980kg/m
3の密度および2以上の溶融緩和指数を有する高密度ポリエチレンポリマー組成物、ならびに(ii)分枝アルキルホスホン酸の塩を含むポリエチレンフィルム。
【請求項16】
前記フィルムが約300cm
3・ミル m
-2日
-1(0.209atm)
-1以下の正規化酸素透過度(nOTR)を有する、請求項15に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項17】
前記フィルムが約3g ミル m
-2日
-1以下の正規化水蒸気透過度(nWVTR)を有する、請求項1
5に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項18】
前記フィルムが約3ミルの厚さで約20%以下のヘーズを有する、請求項1
5に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項19】
前記フィルムが約3ミルの厚さで約90%以上の透明度を有する、請求項1
5に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項20】
前記フィルムが約80%以上の光沢を有する、請求項1
5に記載のポリエチレンフィルム。
【請求項21】
前記高密度ポリエチレンポリマー組成物が分子量分布を有し、前記分子量分布が2つ以上の極大値を有する、請求項1
5に記載のポリエチレンフィルム。
【国際調査報告】