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特表2024-514700ポリプロピレンポリマー組成物およびそれから作製された物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリプロピレンポリマー組成物およびそれから作製された物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20240326BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20240326BHJP
   C08K 5/5317 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/14
C08K5/5317
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564550
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 US2022025851
(87)【国際公開番号】W WO2022226248
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,238
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドットソン、ダリン
(72)【発明者】
【氏名】シー、シャオヨウ
(72)【発明者】
【氏名】スン、フア
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ、チー-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ、コーリー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB111
4J002BB121
4J002EW126
4J002FD206
4J002GB01
4J002GG02
4J002GN00
(57)【要約】
ポリマー組成物は、ポリプロピレンポリマーおよび分枝アルキルホスホン酸の塩を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレンポリマー;および
(b)分枝アルキルホスホン酸の塩
を含むポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリプロピレンポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンインパクトコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリプロピレンポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が、第1族元素カチオン、第2族元素カチオン、および第12族元素カチオンからなる群から選択される1種以上のカチオンを含む、請求項1~3の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が第2族元素カチオンを含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がカルシウムカチオンを含む、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記分枝アルキルホスホン酸が、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、sec-イソペンチル、ペンタン-3-イル、および2-メチルブチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む、請求項1~6の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記分枝アルキルホスホン酸が第三級アルキル基を含む、請求項1~7の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記分枝アルキルホスホン酸が、tert-ブチル、tert-ペンチルおよびネオペンチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がtert-ブチルホスホン酸の塩である、請求項1~9の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がtert-ブチルホスホン酸のカルシウム塩である、請求項1~10の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が20m/g以上のBET比表面積を有する、請求項1~10の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が30m/g以上のBET比表面積を有する、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて約50百万分率~約5,000百万分率の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1~13の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、分枝アルキルホスホン酸の塩を含有するポリマー組成物、たとえばポリプロピレンポリマー組成物に関する。分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマーの核形成剤として機能する。
【背景】
【0002】
[0002]ポリオレフィンは、特に汎用性の高いポリマー樹脂の群である。ポリオレフィンは半結晶性ポリマーである。比較的ゆっくりと冷却された(たとえば、成形プラスチック部品の製造中に行われる冷却等)ポリオレフィンは、ポリマー鎖がランダムに配置された非晶質領域、およびポリマー鎖が規則正しい構成をとった結晶性領域を含有する。ポリオレフィンのこれらの結晶性領域では、ポリマー鎖は、一般に「結晶性ラメラ」と称されるドメインに整列する。通常の加工条件下では、ポリオレフィンポリマーが溶融状態から冷却するにつれて、結晶性ラメラはあらゆる方向に放射状に成長する。この放射状成長の結果、非晶質領域によって遮断される複数の結晶性ラメラから構成される球状の半結晶性領域である球晶が形成される。球晶のサイズはいくつかのパラメータに影響され、直径数百ナノメートルからミリメートルまでの範囲であり得る。球晶のサイズが可視光の波長より顕著に大きい場合、球晶はポリマーを通過する可視光を散乱する。この可視光の散乱は、一般に「ポリマーヘーズ」または単純に「ヘーズ」と称される霞んだ外観をもたらす。顕著なレベルのポリマーヘーズは、一部の用途では許容可能であってもよいが、消費者が比較的透明なプラスチックを所望し、それによりそれに応じて低いヘーズレベルを必要とする特定の用途(たとえば、貯蔵容器)がある。
【0003】
[0003]熱可塑性ポリマー用のいくつかの核形成剤が、当技術分野で公知である。これらの核形成剤は一般に、核を形成する、または熱可塑性ポリマーにおいてそれが溶融状態から固化する際に結晶の形成および/もしくは成長部位をもたらすことによって機能する。核形成剤によってもたらされる核または部位により、冷却ポリマー内で、結晶が新しい非核形成熱可塑性ポリマー中で形成するよりも高い温度および/またはより速い速度で結晶が形成することが可能になる。このような効果により、新しい非核形成熱可塑性ポリマーよりも短いサイクル時間での核形成熱可塑性ポリマー組成物の加工が可能になり得る。
【0004】
[0004]一部の核形成剤は、ポリマーのヘーズが顕著かつ認識可能に低減する(すなわち、ポリマーを通過する可視光の散乱が低減する)程度まで、特定のポリマー(たとえば、ポリプロピレン)の球晶サイズを低減させることができる。このような核形成剤は、より低いヘーズレベルが必要とされるか、または少なくとも所望される用途でポリマーを使用することを可能にするため、非常に有益である。このような光学特性の改善に加えて、望ましい核形成剤は、ポリマーの他の物理特性、たとえば剛性または耐衝撃性を改善することができる。このような改善はまた、核形成ポリマーが適する用途または最終用途の数を広げる。そして、多くの核形成剤はこれらの物理特性の改善のうちの1つを提供することができるが、2つ以上の物理特性の向上の望ましい組合せを提供することができる核形成剤は比較的少ない。
【0005】
[0005]上記の観点から、たとえば、低いヘーズと高い剛性の望ましい組合せを提供する、熱可塑性ポリマー、たとえばポリプロピレンのための核形成剤に対する必要性が残っている。ここに記載される添加剤およびポリマー組成物は、そのような必要性に対処することを意図する。
【発明の簡単な概要】
【0006】
[0006]第1の態様では、本発明は、(a)ポリプロピレンポリマー;および(b)分枝アルキルホスホン酸の塩を含むポリマー組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0007】
[0007]第1の態様では、本発明は、(a)ポリプロピレンポリマー;および(b)分枝アルキルホスホン酸の塩を含むポリマー組成物を提供する。
【0008】
[0008]ポリマー組成物は、任意の好適なポリプロピレンポリマーを含み得る。好ましい態様では、ポリプロピレンポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー(たとえば、アタクチックポリプロピレンホモポリマー、アイソタクチックポリプロピレンホモポリマー、およびシンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー)、ポリプロピレンコポリマー(たとえば、ポリプロピレンランダムコポリマー)、ポリプロピレンインパクトコポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好適なポリプロピレンコポリマーとしては、エチレン、ブタ-1-エン(すなわち、1-ブテン)、およびヘキサ-1-エン(すなわち、1-ヘキセン)からなる群から選択され、エチレンが特に好ましいコモノマーの存在下、プロピレンの重合から作製されたランダムコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなポリプロピレンランダムコポリマーにおいて、コモノマーは任意の好適な量で存在し得るが、典型的には約10重量%未満(たとえば、約0.5重量%~約10重量%、または約1重量%~約7重量%)の量で存在する。好適なポリプロピレンインパクトコポリマーとしては、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、ポリエチレンおよびプラストマーからなる群から選択されるコポリマーのポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンランダムコポリマーへの付加によって製造されるものが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなポリプロピレンインパクトコポリマーにおいて、コポリマーは、任意の好適な量で存在し得るが、典型的には約5~約25重量%の量で存在する。好適なポリプロピレンインパクトコポリマーとしては、1種以上のZeigler Natta触媒を使用したプロピレンとエチレンの重合によって作製されるコポリマーも挙げられるが、これらに限定されない。このようなポリプロピレンインパクトコポリマーは、一般に半結晶性ポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマーマトリックス中に非晶質エチレン-プロピレンコポリマーが分散された異相構造を有する。上記のポリプロピレンポリマーは、分枝または架橋、たとえば、ポリマーの溶融強度を増加する添加剤の添加からもたらされる分枝または架橋であってもよい。
【0009】
[0009]上述のように、ポリマー組成物はまた、分枝アルキルホスホン酸の塩を含む。ここで利用する場合、「分枝アルキルホスホン酸」という用語は、以下の式(C)のホスホン酸を指す。
【0010】
【化1】
【0011】
式(C)中、R101は分枝アルキル基である。分枝アルキルホスホン酸の塩は、任意の好適なカチオンを含むことができる。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、第1族元素カチオン、第2族元素カチオン、および第12族元素カチオンからなる群から選択される1種以上のカチオンを含む。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、第1族元素カチオン、好ましくは2つのナトリウムカチオンを含む。別の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、第2族元素カチオンを含む。特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、カルシウムカチオンを含む。
【0012】
[0010]分枝アルキルホスホン酸は、任意の好適な分枝アルキル基を含むことができる(すなわち、R101は任意の好適な分枝アルキル基であり得る)。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、sec-イソペンチル、ペンタン-3-イル、および2-メチルブチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む。別の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、リン原子に対してアルファ-炭素またはベータ-炭素に位置する分枝点を有するアルキル基を含み、アルファ-炭素における分枝点が特に好ましい。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、第三級アルキル基(すなわち、4個の非水素置換基、たとえば3個のアルキル基およびリン原子に結合した少なくとも1個の炭素原子を含むアルキル基)を含む。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、tert-ブチル、tert-ペンチル、およびネオペンチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む。特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸は、tert-ブチル基を含む(すなわち、R101はtert-ブチルである)。したがって、特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、tert-ブチルホスホン酸のカルシウム塩(すなわち、t-ブチルホスホン酸カルシウムまたはt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)である。
【0013】
[0011]分枝アルキルホスホン酸の塩は、任意の好適な比表面積(たとえば、BET比表面積)を有することができる。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、約20m/g以上のBET比表面積を有する。別の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、約30m/g以上のBET比表面積を有する。分枝アルキルホスホン酸の塩のBET比表面積は、任意の好適な技術によって測定することができる。好ましくは、分枝アルキルホスホン酸の塩のBET比表面積は、吸着ガスとして窒素を使用して、「Determination of the Specific Surface Area of Solids by Gas Adsorption - BET method」と題されたISO規格9277:2010に従って測定される。ここで開示される分枝アルキルホスホン酸の塩は、一般に、当技術分野で公知の技術を使用して剥離可能な層状構造を有する。このような層状構造の剥離は、分枝アルキルホスホン酸の塩のBET比表面積を増加させ、それにより分散を助ける。分枝アルキルホスホン酸の塩のBET比表面積を増加させる物理的方法としては、エアジェットミリング、ピンミリング、ハンマーミリング、粉砕ミルなどが挙げられる。改善された分散および表面積は、より厳密な混合および押出方法、たとえば高強度混合および二軸押出によっても達成することができる。したがって、所望のBET比表面積を有さない分枝アルキルホスホン酸の塩は、所望のBET比表面積が達成されるまで、これらおよび他の公知の技術を使用して剥離することができる。
【0014】
[0012]ポリマー組成物は、任意の好適な量の分枝アルキルホスホン酸の塩を含有することができる。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマー組成物の総重量に基づいて約50百万分率(ppm)以上の量でポリマー組成物中に存在する。別の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマー組成物の総重量に基づいて約75ppm以上、約100ppm以上、約150ppm以上、約200ppm以上、または約250ppm以上の量でポリマー組成物中に存在する。分枝アルキルホスホン酸の塩は、好ましくはポリマー組成物の総重量に基づいて約10,000ppm以下の量でポリマー組成物中に存在する。好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、好ましくはポリマー組成物の総重量に基づいて約5,000ppm以下、約4,000ppm以下、約3,000ppm以下、約2,000ppm以下、約1,500ppm以下、約1,250ppm以下、または約1,000ppm以下の量でポリマー組成物中に存在する。したがって、一連の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマー組成物の総重量に基づいて約50ppm~約10,000ppm(たとえば、約50ppm~約5,000ppm、約50ppm~約4,000ppm、約50ppm~約3,000ppm、約50ppm~約2,000ppm、約50ppm~約1,500ppm、約50ppm~約1,250ppm、または約50ppm~約1,000ppm)、約75ppm~約10,000ppm(たとえば、約75ppm~約5,000ppm、約75ppm~約4,000ppm、約75ppm~約3,000ppm、約75ppm~約2,000ppm、約75ppm~約1,500ppm、約75ppm~約1,250ppm、または約75ppm~約1,000ppm)、約100ppm~約10,000ppm(たとえば、約100ppm~約5,000ppm、約100ppm~約4,000ppm、約100ppm~約3,000ppm、約100ppm~約2,000ppm、約100ppm~約1,500ppm、約100ppm~約1,250ppm、または約100ppm~約1,000ppm)、約150ppm~約10,000ppm(たとえば、約150ppm~約5,000ppm、約150ppm~約4,000ppm、約150ppm~約3,000ppm、約150ppm~約2,000ppm、約150ppm~約1,500ppm、約150ppm~約1,250ppm、または約150ppm~約1,000ppm)、約200ppm~約10,000ppm(たとえば、約200ppm~約5,000ppm、約200ppm~約4,000ppm、約200ppm~約3,000ppm、約200ppm~約2,000ppm、約200ppm~約1,500ppm、約200ppm~約1,250ppm、または約200ppm~約1,000ppm)、約250ppm~約10,000ppm(たとえば、約250ppm~約5,000ppm、約250ppm~約4,000ppm、約250ppm~約3,000ppm、約250ppm~約2,000ppm、約250ppm~約1,500ppm、約250ppm~約1,250ppm、または約250ppm~約1,000ppm)の量でポリマー組成物中に存在する。ポリマー組成物が1種より多くの分枝アルキルホスホン酸の塩を含む場合、分枝アルキルホスホン酸の各塩は、上述の量の1つでポリマー組成物中に存在し得るか、またはポリマー組成物中に存在する分枝アルキルホスホン酸のすべての塩の合計量は、上述の範囲の1つに入り得る。好ましくは、ポリマー組成物が分枝アルキルホスホン酸の1種より多くの塩を含む場合、ポリマー組成物中に存在する分枝アルキルホスホン酸のすべての塩の合計量は、上述の範囲の1つに入る。
【0015】
[0013]本発明の組成物で使用するために好適な分枝アルキルホスホン酸の塩は、任意の好適な処理によって作製することができる。たとえば、塩は、分枝アルキルホスホン酸と金属塩基、たとえば金属水酸化物(たとえば、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム)または金属酸化物(たとえば、酸化カルシウムまたは酸化亜鉛)を水性媒体中で反応させることによって作製することができる。このような処理によって作製される分枝アルキルホスホン酸の塩は、水和物(たとえば、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)であり得る。このような水和物塩は、塩を十分に高温に加熱することによって脱水させることができるが、このような脱水塩(たとえば、t-ブチルホスホン酸カルシウム)の多くは、大気中の水分に曝露されると再水和するほど十分に不安定である。
【0016】
[0014]本発明のポリマー組成物は、前述の分枝アルキルホスホン酸の塩に加えて、他のポリマー添加剤を含有することができる。好適な追加のポリマー添加剤としては、酸化防止剤(たとえば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、およびそれらの組合せ)、ブロッキング防止剤(たとえば、非晶質シリカおよび珪藻土)、顔料(たとえば、有機顔料および無機顔料)ならびに他の着色剤(たとえば、染料および高分子着色剤)、充填剤および補強剤(たとえば、ガラス、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、およびオキシ硫酸マグネシウムウィスカー)、核形成剤、透明化剤、酸捕捉剤(たとえば、脂肪酸の金属塩、たとえばステアリン酸の金属塩、およびハイドロタルサイト様材料)、ポリマー加工添加剤(たとえば、フルオロポリマー加工添加剤)、ポリマー架橋剤、スリップ剤(たとえば、脂肪酸と、アンモニアまたはアミン含有化合物との反応から得られる脂肪酸アミド化合物)、脂肪酸エステル化合物(たとえば、脂肪酸と、ヒドロキシル含有化合物、たとえばグリセロール、ジグリセロールおよびそれらの組合せとの反応から得られる脂肪酸エステル化合物)、ポリマー改質剤(たとえば、炭化水素樹脂改質剤、たとえばExxon Mobil CorporationによってOppera(商標)の商品名で販売されているもの)、および前述のものの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
[0015]好ましい態様では、ポリマー組成物は、1種以上の酸捕捉剤をさらに含む。上述したように、好適な酸捕捉剤としては、脂肪酸の金属塩およびハイドロタルサイト様材料(たとえば、合成ハイドロタルサイト)が挙げられる。脂肪酸の好適な金属塩としては、C12~C22脂肪酸(たとえば、飽和C12~C22脂肪酸)、たとえばステアリン酸の金属塩が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様では、酸捕捉剤は、ステアリン酸のカルシウム、亜鉛、カリウムおよびランタン塩からなる群から選択され、ステアリン酸亜鉛が特に好ましい。酸捕捉剤として使用するのに好適なハイドロタルサイト様材料としては、「DHT-4A」および「DHT-4V」の商品名でKisuma Chemicalsによって販売されている合成ハイドロタルサイト材料(CAS No.11097-59-9)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
[0016]分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、任意の好適な相対量でポリマー組成物中に存在し得る。たとえば、分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、ポリマー組成物中の分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤の重量に基づいて約10:1~約1:10の比(分枝アルキルホスホン酸の塩対酸捕捉剤)でポリマー組成物中に存在し得る。より好ましくは、分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、ポリマー組成物中の分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤の重量に基づいて約4:1~約1:4、約3:1~約1:3(たとえば、約3:1~約1:1または約3:1~約2:1)、約1:1~約1:4、または約1:1~約1:3の比でポリマー組成物中に存在する。特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、ポリマー組成物中の分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤の重量に基づいて約2:1の比でポリマー組成物中に存在する(たとえば、1重量部のステアリン酸亜鉛に対して約2重量部のt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)。別の特に好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤は、ポリマー組成物中の分枝アルキルホスホン酸の塩および酸捕捉剤の重量に基づいて約3:1の比でポリマー組成物中に存在する(たとえば、1重量部のステアリン酸亜鉛に対して約3重量部のt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物)。
【0019】
[0017]上述のように、本発明のポリマー組成物は、上述の分枝アルキルホスホン酸の塩に加えて、他の核形成剤を含有することができる。好適な核形成剤としては、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸塩(たとえば、2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)リン酸ナトリウムまたはヒドロキシアルミニウムビス(2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸塩(たとえば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸二ナトリウムまたはビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸カルシウム)、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸塩(たとえば、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸カルシウム、一塩基性シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸アルミニウム、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸二リチウム、またはシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ストロンチウム)、グリセロール酸塩(たとえば、グリセロール酸亜鉛)、フタル酸塩(たとえば、フタル酸カルシウム)、フェニルホスホン酸塩(たとえば、フェニルホスホン酸カルシウム)、およびそれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸塩およびシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸塩の場合、カルボキシレート部分は、シスまたはトランス立体配置のいずれかで配置されてもよく、シス立体配置が好ましい。
【0020】
[0018]上述したように、本発明のポリマー組成物は、透明化剤を含有することもできる。好適な透明化剤としては、トリスアミド、および多価アルコールと芳香族アルデヒドとの縮合生成物であるアセタール化合物が挙げられるがこれらに限定されない。好適なトリスアミド透明化剤としては、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸のアミド誘導体、N-(3,5-ビス-ホルミルアミノ-フェニル)-ホルムアミドの誘導体(たとえば、N-[3,5-ビス-(2,2-ジメチル-プロピオニルアミノ)-フェニル]-2,2-ジメチル-プロピオンアミド)、2-カルバモイル-マロンアミドの誘導体(たとえば、N,N’-ビス-(2-メチル-シクロヘキシル)-2-(2-メチル-シクロヘキシルカルバモイル)-マロンアミド)、およびこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。上述したように、透明化剤は、多価アルコールと芳香族アルデヒドの縮合生成物であるアセタール化合物であり得る。好適な多価アルコールとしては、非環式ポリオール、たとえばキシリトールおよびソルビトール、ならびに非環式デオキシポリオール(たとえば、1,2,3-トリデオキシノニトールまたは1,2,3-トリデオキシノン-1-エニトール)が挙げられる。好適な芳香族アルデヒドは、典型的に、芳香環上の残りの位置が非置換または置換のいずれかである単一のアルデヒド基を含有する。したがって、好適な芳香族アルデヒドは、ベンズアルデヒドおよび置換ベンズアルデヒド(たとえば、3,4-ジメチル-ベンズアルデヒドまたは4-プロピル-ベンズアルデヒド)を含む。前述の反応によって生成されるアセタール化合物は、モノアセタール、ジアセタール、またはトリアセタール化合物(すなわち、それぞれ1個、2個、または3個のアセタール基を含有する化合物)であってもよく、ジアセタール化合物が好ましい。好適なアセタール系透明化剤としては、米国特許第5,049,605号;同第7,157,510号;および同第7,262,236号に開示されている透明化剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
[0019]本発明のポリマー組成物は、任意の好適な方法または処理によって製造することができる。たとえば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の個々の成分(たとえば、ポリマー、分枝アルキルホスホン酸の塩、および存在する場合は他の添加剤)の単純な混合によって製造することができる。ポリマー組成物は、高せん断または高強度混合条件下で個々の成分を混合することによっても製造することができる。本発明のポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー組成物から製造物品を製造するためのさらなる加工に使用するのに好適な任意の形態で提供されてもよい。たとえば、熱可塑性ポリマー組成物は、粉末(たとえば、自由流動性粉末)、フレーク、ペレット、プリル、タブレット、凝集体などの形態で提供されてもよい。
【0022】
[0020]第1の態様の発明のポリマー組成物は、新しいポリマー(たとえば、非核形成ポリプロピレンポリマー)への添加または降下のために設計されたマスターバッチ組成物の形態をとることができる。このような態様では、ポリマー組成物は、一般に新しい熱可塑性ポリマーにさらに希釈または添加することなく製造物品の形成に使用することを意図した熱可塑性ポリマー組成物と比較して、より多量の分枝アルキルホスホン酸の塩を含有する。たとえば、分枝アルキルホスホン酸の塩は、約0.5重量%以上(たとえば、約1重量%以上または約2重量%以上)の量でそのようなポリマー組成物中に存在し得る。マスターバッチ中の塩の最大量は、製造および加工の考慮事項によってのみ制限されるが、量は典型的に約50重量%以下である。したがって、一連の好ましい態様では、分枝アルキルホスホン酸の塩は、ポリマー組成物の総重量に基づいて約0.5重量%~約50重量%(たとえば、約0.5重量%~約40重量%、約0.5重量%~約30重量%、約0.5重量%~約25重量%、約0.5重量%~約20重量%、約0.5重量%~約15重量%、約0.5重量%~約10重量%、約0.5重量%~約5重量%、もしくは約0.5重量%~約4重量%)、約1重量%~約50重量%(たとえば、約1重量%~約40重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約25重量%、約1重量%~約20重量%、約1重量%~約15重量%、約1重量%~約10重量%、約1重量%~約5重量%、もしくは約1重量%~約4重量%)、または約2重量%~約50重量%(たとえば、約2重量%~約40重量%、約2重量%~約30重量%、約2重量%~約25重量%、約2重量%~約20重量%、約2重量%~約15重量%、約2重量%~約10重量%、約2重量%~約5重量%、もしくは約2重量%~約4重量%)の量でマスターバッチ中に存在することができる。このようなマスターバッチ組成物では、組成物中に含有される追加の添加剤は、同様に、マスターバッチ組成物を新しいポリマー中に降下させる際に所望の濃度をもたらすことを意図したより高い量で存在する。
【0023】
[0021]本発明のポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー製造物品の製造に有用であると考えられる。本発明のポリマー組成物は、任意の好適な技術、たとえば射出成形(たとえば、薄肉射出成形、多成分成形、オーバー成形、または2K成形)、吹込み成形(たとえば、押出吹込み成形、射出吹込み成形、または射出延伸吹込み成形)、押出(たとえば、繊維押出、テープ(たとえば、スリットテープ)押出、シート押出、フィルム押出、キャストフィルム押出、パイプ押出、押出コーティング、または発泡押出)、熱形成、回転成形、フィルム吹込み(吹込みフィルム)、フィルムキャスト(キャストフィルム)、圧縮成形、押出圧縮成形、押出圧縮吹込み成形などによって所望の熱可塑性ポリマー製造物品に形成されてもよい。本発明のポリマー組成物を使用して作製される熱可塑性ポリマー物品は、複数の層からなってもよく(たとえば、多層吹込みもしくはキャストフィルム、または多層射出成形品)、複数の層の1つまたは任意の好適な数が本発明のポリマー組成物を含有する。
【0024】
[0022]本発明のポリマー組成物は、任意の好適な製造物品を製造するために使用することができる。好適な製造物品としては、医療機器(たとえば、レトルト用途のためのプレフィルドシリンジ、静脈内供給容器、および採血装置)、食品包装、液体容器(たとえば、飲料、薬、パーソナルケア組成物、シャンプーなどの容器)、衣装ケース、電子レンジ対応物品、棚、キャビネットドア、機械部品、自動車部品、シート、パイプ、チューブ、回転成形部品、吹込み成形部品、フィルム、繊維などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
[0023]以下の例は、上記の主題をさらに例示するが、当然のことながら、その範囲をどのようにも限定すると解釈されるべきではない。
【0026】
例1
[0024]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物を用いて作製された薄肉射出成形部品の特定の物理特性を実証する。
【0027】
[0025]異なる市販のポリプロピレン樹脂を使用していくつかのポリマー組成物を作製した。「1A」と標識されたサンプルは、12g/10分のメルトフローレートを有すると報告されているLyondellBasell製Pro-fax6301ポリプロピレンホモポリマーを用いて作製した。「1B」と標識されたサンプルは、60g/10分のメルトフローレートを有すると報告されているLanzhou製HPP SF-40を用いて作製した。「1C」と標識されたサンプルは、80g/10分のメルトフローレートを有すると報告されているLuoyang製HPP Q/SH3210を用いて作製した。「1D」と標識されたサンプルは、70g/10分のメルトフローレートを有すると報告されているSinopec Tianjin製PPH-M70を用いて作製した。すべてのサンプルは、いずれもBASFから入手可能な500ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤および1,000ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤で安定化させた。一部のポリマー組成物は、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」)、ステアリン酸亜鉛(「ZnSt」)、および酸捕捉剤ステアリン酸カルシウム(「CaSt」)、および/またはKisuma Chemicals製DHT-4Vをさらに含んでいた。これらの追加の成分の量は、以下の表に記載される。
【0028】
[0026]ポリマー組成物のそれぞれは、ポリプロピレン樹脂と添加剤を高強度混合し、Deltaplast単軸押出機を使用して混合物を溶融配合することにより調製した。押出機のスクリュー速度は126rpmに設定した。押出機バレルの第1のゾーンは200℃に設定し、押出機バレルの第2のゾーンは215℃に設定し、押出機バレルの第3から第6のゾーンはすべて230℃に設定した。溶融配合後、各押出物をその後の加工のためにペレットに切断した。
【0029】
[0027]次に、各ポリマー組成物の押出ペレットを、Husky射出成形機で、すべてのバレルを220℃に設定し、射出速度140mm/s、背圧50psi(0.14MPa)で、金型冷却水を45℃に設定して16米液量オンス(470mL)のデリカップに射出成形した。デリカップは、直径3.637インチ(92.38mm)の円形底部、縁の内縁が直径4.266インチ(108.4mm)、縁の外縁が直径4.612インチ(117.1mm)である縁を有する円形開口部を上部に有していた。デリカップの肉厚は26ミル(0.66mm)であった。
【0030】
[0028]成形後、デリカップを試験していくつかの物理特性を決定した。圧縮トップロードはASTM D2659に従って測定した。ヘーズはASTM D1003に従って測定した。結晶化挙動、具体的には結晶化半減時間(T1/2)および結晶化温度(T)を示差走査熱量計を使用して測定した。結晶化半減時間は140℃で測定し、結晶化温度は20℃/分の加熱速度で測定した。これらの測定結果を以下の表1~4に報告する。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
[0029]上記表1~4のデータから見ることができるように、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」)は、すべてのポリプロピレンポリマーの核形成に効果的であった。これらの核形成効果は、それぞれの対照ポリマー(すなわち、CaTBPを含有しないポリプロピレン樹脂)と比較して、CaTBPを含有するポリマー組成物のすべてによって示されるより短い結晶化半減時間、より高い結晶化温度、より高い圧縮トップロード、およびより低いヘーズ値から明らかである。さらに、これらの結果は、合成ハイドロタルサイト酸捕捉剤(たとえば、DHT-4V)を含有するポリマー組成物が、酸捕捉剤としてステアリン酸カルシウムを含有するポリマー組成物と比較してわずかにより良好な核形成を示したことを実証する。ここでも、このより良好な核形成は、ステアリン酸カルシウムを含有するポリマー組成物と比較して、DHT-4Vを含有するポリマー組成物によって示されるより短い結晶化半減時間、より高い結晶化温度、より高い圧縮トップロード、およびより低いヘーズ値から明らかである。
【0036】
例2
[0030]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物を用いて作製された熱形成品の特定の物理特性を実証する。
【0037】
[0031]ポリマー組成物は、報告されているメルトフローレートが2.8g/10分であるTotalEnergies製Polypropylene3371樹脂を使用して作製した。特定のポリマー組成物を、酸捕捉剤、たとえばステアリン酸亜鉛(「ZnSt」)およびステアリン酸カルシウム(「CaSt」)と合わせて使用されたt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」)を用いて核形成させた。各ポリマー組成物に使用されたCaTBPおよび酸捕捉剤の量を以下の表に記載する。3371樹脂と添加剤は、以下に記載されるように、溶融配合前にHenschelミキサーを使用して高強度混合した。
【0038】
[0032]ポリマー組成物を、スクリュー直径40mmおよびL/D比37のWerner&Pfleiderer zsk-40二軸押出機で溶融配合した。押出機バレルの第1のゾーンの温度は165℃に設定し、押出機バレルの第2から第6のゾーンおよびダイゾーンの温度は175℃に設定した。押出機の速度は400rpmに設定し、総出力は約55kg/時間であった。押出機のダイを出たポリマーストランドを水浴中で冷却し、ペレタイザーを使用してペレットに切断した。
【0039】
[0033]次に、ペレット化ポリマー組成物を、iLLig製RDM54K熱形成機と連結したReifenhaeuser製A-T-20-G1型シートラインを使用してドリンクカップに熱形成した。シートラインの押出機は230℃に設定し、ダイゾーンは250℃に設定し、ダイギャップは1.5mmであった。スクリュー速度は約72rpmであった。ダイを出たシートを、65℃、75℃および65℃に設定された一組の三段重ねのチルロールに移した。チルロールを出たシートは、厚さ1.9mmであった。シートを、次に165℃に設定された熱形成機の加熱部を通して割り出し、ポリマー組成物の溶融温度直下で加熱した。その後、シートを成形部に送り、そこでドリンクカップに熱形成し、これをシートからトリミングして熱形成機から排出した。得られたドリンクカップは、底部直径が約60mm、上縁直径が約94mm、高さが約140mmであった。
【0040】
[0034]以下に記載する光学特性および物理特性試験のために、押出シートおよび熱形成ドリンクカップの試験片を得た。ヘーズおよび透明度は、BYKヘーズガードヘーズメーターを使用してASTM D1003に従って測定した。熱形成ドリンクカップの場合、ヘーズ測定はカップ底部から76.2mm、上縁から25.4mmの領域で行った。光沢は、BYK単角度光沢計、マイクロ光沢20°を使用して測定した。測定は試験片の両側から行い、結果を平均して光沢単位で報告される平均光沢を得た。
【0041】
[0035]試験片の熱特性は、Mettler Toledo示差走査熱量計(DSC)ユニット(DSC3+STARシステム)を使用した示差走査熱量測定によって測定し、Mettler STARe評価ソフトウェアによって分析した。結晶化温度測定のために、試験片を50℃から220℃まで20℃/分の速度で加熱し、熱履歴をすべて除去した。試験片を220℃で2分間保持して平衡化させた後、結晶化挙動を調べるために、試験片を20℃/分の速度で50℃まで冷却した。結晶化温度(T)は、冷却曲線上のピーク値として報告される。結晶化半減時間の測定では、試験片を50℃から220℃まで20℃/分の速度で加熱して熱履歴をすべて除去し、220℃で2分間保持して平衡化した後、300℃/分の速度で135℃まで冷却し、その温度で30分間保持した。結晶化半減時間は、ソフトウェアを使用してDSC曲線から計算した。
【0042】
[0036]曲げ弾性率試験用の試験片は、ASTM D638-10に記載されるタイプ1ドッグボーン切断ダイを使用して押出シートから切断した。試験用の試験片は、機械方向および横方向から得た。その後、試験片を約23℃および相対湿度約50%で少なくとも40時間調整した。曲げ弾性率試験は、3点屈曲曲げセットアップ(モデル642.01A)を備えたMTS製Criterion Model 43電気機械試験システムを使用してASTM D790-10に従って実施した。梁の動きの深さを記録してひずみを計算した。ひずみが1%に達したときの応力とひずみの比に基づいて1%セカント弾性率を計算した。
【0043】
[0037]カップの楕円率は、機械方向(シートがダイを出た方向に平行)および横方向(シートがダイを出た方向に直角)で測定したカップ直径の差を示すパラメータである。熱形成カップは、ノギスを使用して機械方向(DMD)および横方向(DTD)の外縁直径を測定(インチ単位)する前に少なくとも24時間調整した。ミル単位で報告されたカップ楕円率は、以下の式を使用して計算した:
カップ楕円率=(DMD-DTD)×1000
縁収縮は、熱形成されたカップの縁の直径と、カップが作製された金型の対応する部分の直径との差を示すパラメータである。金型の直径は3.7427インチであった。カップの縁の平均直径(Davg)は、スプリングテンションバンドを使用して測定した(インチ単位)。ミル単位で報告されたカップの縁収縮は、以下の式を使用して計算した
縁収縮=(3.7427-Davg)×1000。
【0044】
[0038]プローブを使用して熱形成カップの側壁の圧縮強度を測定して、たわみに対する抵抗力を決定した。MTS Criterion Model 43電気機械式試験システムのプラテンプレートに取り付けたカップ治具を使用して、カップをその側面に水平に配置した。25mm/分の一定垂直速度で移動するプローブを、全壁たわみ距離が10mmになるようにカップの側壁に垂直下向きに押し付けた。所望の全壁たわみ距離に達すると、結果として生じる抵抗力を側壁力として記録した。熱形成カップのトップロード圧縮(ASTM D2659)は、カップを倒立させ、カップの座屈破壊の抵抗が検出されるまで機械的に下方に押し付けることによって測定した。カップは、MTS Criterion Model 43電気機械試験システムの固定基板上に縁を下向きに配置した。ベント付き基板を使用して、カップが圧縮される際にカップ内部から空気が抜けるようにした。50mm/分の一定速度で移動する上部圧縮プレートにより、崩壊が検出されるまでカップを押し下げた。崩壊時に記録されたピーク力をトップロードとして報告した。
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】
[0039]表5~8のデータから見ることができるように、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」)は、100ppmという低い荷重であっても、3371樹脂の核形成に有効であった。核形成樹脂から作製されたドリンクカップのいくつかの物理特性(たとえば、側壁およびトップロード)は、非核形成樹脂と比較してすべての荷重レベルで一貫した改善を示さなかったが、結晶化温度、結晶化半減時間、曲げ弾性率、および光学特性は、CaTBPのすべての荷重においてシートとカップの両方で一貫して改善された。たとえば、わずか100ppmのCaTBPの添加により、押出シートのヘーズは約7ヘーズ単位低下し、透明度はわずか12.6%から95%超まで増加し、平均光沢は13光沢単位増加した。さらに、熱形成ドリンクカップでは、CaTBPの添加により、非核形成樹脂と比較して収縮が減少し(縁収縮が低下した)、発生した収縮は、実質的に低減された楕円率値によって明らかなように、より等方的な性質であった。
【0050】
例3
[0040]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物を用いて作製された熱形成品の特定の物理特性を実証する。
【0051】
[0041]ポリマー組成物は、例2に記載のTotalEnergies製Polypropylene3371樹脂を使用して作製した。特定のポリマー組成物を、酸捕捉剤、たとえばステアリン酸亜鉛(「ZnSt」)およびステアリン酸カルシウム(「CaSt」)と合わせて使用されたt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」)を用いて核形成させた。各ポリマー組成物に使用されたCaTBPおよび酸捕捉剤の量を以下の表に記載する。3371樹脂および添加剤は、例2のポリマー組成物と同じ方法で高強度混合し、溶融配合した。
【0052】
[0042]次いで、ペレット化ポリマー組成物を、例2で使用した装置および同じ(以下に記載する以外は)条件を使用してポーションカップに熱形成した。押出シートを作製するために、シートライン押出機のスクリュー速度を約42~45rpmに設定した。チルロールを出たシートは、厚さ1.2mmであった。熱形成機に異なる金型を取り付け、底部直径78mm、上縁直径94mm、高さ54mmのポーションカップを製造した。
【0053】
[0043]例2に記載した光学特性および物理特性試験のために、押出シートおよび熱形成ポーションカップの試験片を得た。熱形成ポーションカップについては、カップ底部から25.4mm、上縁から19mmの領域でヘーズ測定を行った。
【0054】
【表9】
【0055】
【表10】
【0056】
【表11】
【0057】
【表12】
【0058】
[0044]表9~12のデータは、分枝アルキルホスホン酸の塩(具体的には、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」))が3371樹脂の核形成に有効であったことをさらに確証する。核形成樹脂は、シートと熱形成ポーションカップの両方で光学および物理特性の一貫した改善を示した。
【0059】
例4
[0045]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物から作製された射出成形品によって示される改善された物理特性を実証する。具体的には、この例は、分枝アルキルホスホン酸の塩の核形成性能に対するBET比表面積の効果を実証する。
【0060】
[0046]ここに記載される射出成形実行のために7種のポリマー組成物を製造した。サンプル4Aは、LyondellBasell製の非核形成Pro-fax6301ポリプロピレンホモポリマーである。サンプル4B~4Gは、Pro-fax6301、1,000ppmのt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」)、500ppmのステアリン酸亜鉛(「ZnSt」)、300ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤、および600ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤の混合物から作製した。サンプル4B~4Gに使用された各CaTBPのBET比表面積を以下の表13に示す。核形成剤サンプルのBET比表面積を、吸着ガスとして窒素を使用して、「Determination of the Specific Surface Area of Solids by Gas Adsorption - BET method」と題されたISO規格9277:2010に従って測定した。サンプル4B~4Gを例1に記載したように別々に混合し、溶融配合し、ペレット化した。
【0061】
[0047]各ポリマー組成物の一部を、40トンのArburg射出成形機を使用してASTM D4101-11に従ってASTM曲げバーに射出成形した。また、各ポリマー組成物の別の一部を、55トンのArburg射出成形機を使用して、ISO294に従ってISO収縮プラークに射出成形した。最後に、各ポリマー組成物の別の一部を、40トンのArburg射出成形機で、長さ77mm、幅50mm、厚さ1.27mm(50ミル)のプラークに射出成形した。
【0062】
[0048]熱たわみ温度(HDT)は、上述の射出成形ASTM曲げバーでASTM D648-07(0.4555MPa応力を使用する)に従って測定した。ノッチ付きアイゾッド衝撃は、ASTM D256-10に従い、ASTM D256-10に規定されているようにトリミングしてノッチを付けた射出成形ASTM曲げバーを使用して、Instron9050振り子式衝撃試験機で測定した。試験片の熱特性は、試験中に試験片を140℃の温度に保持したことを除き、例2に記載したように、Mettler Toledo示差走査熱量計(DSC)ユニット(DSC3+STARシステム)を使用して示差走査熱量測定により測定し、Mettler STARe評価ソフトウェアにより分析した。
【0063】
[0049]曲げ弾性率は、3点屈曲曲げセットアップ(モデル642.01A)を備えたMTS製Criterion Model 43電気機械試験システムを使用してASTM D790-10に従って測定した。曲げバーは、試験前に約23℃および相対湿度約50%で少なくとも40時間調整した。ASTM D790-10に従い、二方向曲げ弾性率(機械方向(MD)と横方向(TD))も測定した。上記のように調整された二方向曲げ弾性率用の試験片を、射出成形されたISO収縮プラークからトリミングした。MD測定では、9.2mmの材料をTD軸からトリミングし(TD方向に50.8mm[2インチ]を残す)、流方向に対して垂直に荷重をかけた。TD測定では、9.2mmの材料をMD軸からトリミングし(MD方向に50.8mm[2インチ]を残す)、流方向に平行に荷重をかけた。
【0064】
[0050]射出成形ISO収縮プラークの収縮は、試験前に約23℃および相対湿度約50%で少なくとも48時間調整されたプラークで、ISO294に従って測定した。機械方向および横方向の収縮は、以下の式を使用して計算した:
【0065】
【数1】
【0066】
式中、MDmоldは機械方向の金型の寸法であり、MDspecimenは機械方向の試験片の寸法であり、TDmоldは横方向の金型の寸法であり、TDspecimenは横方向の試験片の寸法である。部品がどれだけ均一に収縮したかを示す尺度である等方性指数は、機械方向の収縮を横方向の収縮で除すことによって計算した。
【0067】
【数2】
【0068】
[0051]上記の測定結果を以下の表13、14および15に示す。
【0069】
【表13】
【0070】
【表14】
【0071】
【表15】
【0072】
[0052]表14および15のデータは、分枝アルキルホスホン酸の塩(具体的には、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」))が、ポリプロピレンポリマー、具体的には6301樹脂の核形成に有効であったことをさらに確証する。たとえば、すべての核形成サンプルの結晶化温度は、非核形成対照よりも少なくとも7℃高かった。さらに、核形成サンプルの結晶化半減時間はすべて11分未満であり、これは非核形成樹脂よりもはるかに速い。より速い結晶化速度(より低い結晶化半減時間)は、一般に、より低いBET比表面積を有するCaTBPを用いて核形成されたポリマー組成物で観察された。
【0073】
[0053]表14のデータもまた、アルキルホスホン酸の塩(具体的には、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」))を用いた核形成によって達成され得る物理特性の実質的な改善を実証する。核形成サンプルはすべて、非核形成ポリマーと比較して300MPaを超える曲げ弾性率の増加を示した。さらに、核形成樹脂の熱たわみ温度はすべて、非核形成ポリマーの熱たわみ温度よりも少なくとも17℃高かった。核形成ポリマーの衝撃強度は、非核形成ポリマーの衝撃強度よりも少なくとも16J/m高かった。
【0074】
[0054]表15のデータも同じことを説明している。実際、核形成ポリマー組成物で得られた曲げ弾性率の改善は、二方向の剛性を測定した場合にさらに一層明らかであった。これらの測定では、MDおよびTD曲げ弾性率は、いずれも非核形成樹脂で得られた値よりも約400MPa増加した。また、核形成樹脂のMD収縮は、非核形成樹脂のMD収縮よりもわずかに高かったが、各核形成樹脂のMDおよびTD収縮は、非核形成樹脂のMDおよびTD収縮よりも互いに近接していた。これにより、非核形成樹脂の収縮よりもはるかに等方的な(すなわち、等方性指数が1により近い)核形成樹脂の収縮が得られた。等方性指数が1により近い場合、核形成樹脂から作製された物品は、非核形成樹脂から作製された物品と比較してより少ない反り/歪みを示すと予想される。
【0075】
例5
[0055]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物を用いて作製された射出成形部品の特定の物理特性を実証する。
【0076】
[0056]ここに記載された射出成形実行のために2種のポリマー組成物を製造した。サンプル5Aは、Prime Polymer製の非核形成Prime Polypro J707Pポリプロピレンブロックコポリマーである。樹脂の報告されたメルトフローレートは、230℃で30g/10分である。Polypro J707Pは、高い衝撃および堅牢性を示す帯電防止インパクトコポリマーである。サンプル5Bは、Polypro J707P、1,000ppmのt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」)、500ppmのステアリン酸亜鉛(「ZnSt」)、500ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤、および1,000ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤の混合物から作製した。サンプル5Bは、例1に記載したように混合し、溶融配合し、ペレット化した。
【0077】
[0057]サンプル5Aおよび5Bの一部を、例4に記載したようにASTM曲げバーおよびISO収縮プラークに射出成形した。次いで、得られたバーを使用して、例4に記載したように熱特性、曲げ弾性率、二方向曲げ弾性率、熱たわみ温度、ノッチ付きアイゾッド衝撃、収縮および等方性を測定した。これらの測定結果を以下の表16および17に示す。
【0078】
【表16】
【0079】
【表17】
【0080】
[0058]表16および17のデータは、分枝アルキルホスホン酸の塩(具体的には、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」))が、ポリプロピレンインパクトコポリマー、たとえばPolypro J707P樹脂を核形成させるのに有効であったことを実証する。これらの核形成効果は、結晶化温度の上昇、結晶化半減時間の劇的な短縮、曲げ弾性率の向上、および熱たわみ温度の上昇から明らかである。核形成ポリマー組成物で得られた曲げ弾性率の改善は、二方向の剛性を測定した場合に、ここでもさらに一層明らかであった。これらの測定では、曲げ弾性率は300~380MPa増加した。また、核形成樹脂の収縮は、非核形成樹脂のものよりもわずかに高かったが、等方性指数はかなり1に近く、これは、非核形成樹脂から作製された物品と比較して、核形成樹脂から作製された物品が反り/歪みを示しにくいことを意味する。
【0081】
例6
[0059]この例は、本発明によるポリマー組成物の製造、およびそのようなポリマー組成物を用いて作製された射出成形部品の特定の物理特性を実証する。
【0082】
[0060]ここに記載される射出成形実行のために、2種のポリマー組成物を製造した。サンプル6Aは、LyondellBasell製SA849Sである。樹脂の報告されたメルトフローレートは、230℃で11g/10分である。SA849Sはポリプロピレンランダムコポリマーである。サンプル6Bは、SA849S、1,000ppmのt-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」)、500ppmのステアリン酸亜鉛(「ZnSt」)、500ppmのIrganox(登録商標)1010酸化防止剤、および1,000ppmのIrgafos(登録商標)168酸化防止剤の混合物から作製した。サンプル6Bは、例1に記載したように混合し、溶融配合し、ペレット化した。
【0083】
[0061]サンプル6Aおよび6Bの一部を、上記の例4に記載したように、1.27mm(50ミル)のプラークに射出成形した。得られたプラークを使用して、例4に記載したように曲げ弾性率を測定した。ヘーズおよび透明度は、前述のように50ミルのプラークで測定した。
【0084】
【表18】
【0085】
[0062]表18のデータは、分枝アルキルホスホン酸の塩(具体的には、t-ブチルホスホン酸カルシウム一水和物(「CaTBP」))が、ポリプロピレンランダムコポリマー、たとえばSA849S樹脂の核形成に有効であったことを実証する。核形成樹脂のヘーズは、非核形成樹脂のヘーズの半分未満であった。また、核形成樹脂の透明度は、非核形成樹脂と比較して増加した。最後に、核形成樹脂の曲げ弾性率は、非核形成樹脂の曲げ弾性率よりも100MPa以上高かった。
【0086】
[0063]本明細書で引用される刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が、参照により組み込まれると個々に具体的に示され、ここでその全体が記載されるのと同程度に、参照によりここで組み込まれる。
【0087】
[0064]本出願の主題を記載する文脈における(とりわけ、以下の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」という用語、ならびに同様の指示語の使用は、ここで別途示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈される。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」および「含有する」という用語は、別段の記述がない限り、オープンエンドな用語として解釈される(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)。ここでの値の範囲の列挙は、別途示されない限り、その範囲内にある各別々の値を個々に参照する略式の方法であることが単に意図され、各別々の値は、それがここで個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。ここで記載のすべての方法は、ここで別途示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。ここで提示される任意かつすべての例または例示の語(たとえば、「たとえば」)の使用は、単に本出願の主題をよりよく明らかにすることを意図され、別途特許請求されない限り、主題の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる語も、任意の特許請求されていない要素がここに記載される主題の実施に必須のものであることを示すと解釈されるべきではない。
【0088】
[0065]特許請求される主題を実施するための本発明者らに公知の最良のモードを含む主題の好ましい態様が、ここで記載されている。好ましい態様の変形は、前述の記載を読むことで当業者に明らかになってもよい。本発明者らは、当業者が、適宜そのような変形を用いることを予想し、本発明者らは、ここで記載される主題が、ここで具体的に記載されるのとは別に実施されることを意図する。したがって、本開示は、準拠法に認められる通り、これに添付の特許請求の範囲に列挙される主題のすべての修正および等価物を含む。さらに、そのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組合せは、ここで別途記載されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示に包含される。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレンポリマー;および
(b)分枝アルキルホスホン酸の塩
を含むポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリプロピレンポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンインパクトコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリプロピレンポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が、第1族元素カチオン、第2族元素カチオン、および第12族元素カチオンからなる群から選択される1種以上のカチオンを含む、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が第2族元素カチオンを含む、請求項4に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がカルシウムカチオンを含む、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記分枝アルキルホスホン酸が、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、sec-イソペンチル、ペンタン-3-イル、および2-メチルブチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記分枝アルキルホスホン酸が第三級アルキル基を含む、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記分枝アルキルホスホン酸が、tert-ブチル、tert-ペンチルおよびネオペンチルからなる群から選択される分枝アルキル基を含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がtert-ブチルホスホン酸の塩である、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩がtert-ブチルホスホン酸のカルシウム塩である、請求項10に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が20m/g以上のBET比表面積を有する、請求項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が30m/g以上のBET比表面積を有する、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記分枝アルキルホスホン酸の前記塩が、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて約50百万分率~約5,000百万分率の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1~13の何れか1項に記載のポリマー組成物。
【国際調査報告】