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特表2024-514703ピペラジン構造を有するPARP阻害剤、その調製方法およびその医薬的使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ピペラジン構造を有するPARP阻害剤、その調製方法およびその医薬的使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20240326BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20240326BHJP
   C07D 498/04 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/5383 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/498 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
C07D471/04 113
C07D471/04 116
C07D498/04 111
A61K31/496
A61P43/00
A61K31/506
A61K31/4985
A61K31/5383
A61K31/498
A61K31/497
A61K31/501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564639
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2022087652
(87)【国際公開番号】W WO2022222921
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】202110439238.4
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519416819
【氏名又は名称】ウィゲン・バイオメディシン・テクノロジー・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WIGEN BIOMEDICINE TECHNOLOGY (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】BUILDING 11, LIBING ROAD 67, ZHANGJIANG HI‐TECH PARK, SHANGHAI 201203, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ヨンツォン
(72)【発明者】
【氏名】チエン,リフゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ホウシン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C065
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC34
4C063DD12
4C063EE01
4C065AA04
4C065BB09
4C065BB10
4C065CC01
4C065DD02
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH02
4C065HH06
4C065JJ01
4C065JJ04
4C065KK02
4C065KK06
4C065LL01
4C065LL04
4C065PP04
4C065PP12
4C065PP14
4C065PP15
4C065QQ01
4C065QQ04
4C072AA01
4C072BB02
4C072CC02
4C072CC11
4C072EE07
4C072FF07
4C072GG07
4C072HH07
4C072HH08
4C072JJ02
4C072JJ03
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC52
4C086CB09
4C086CB22
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明では、ピペラジン構造を含むPARP阻害剤、その調製方法およびその医薬的使用が、開示される。特に、本発明は、一般式(1)、(2)、(3)、(4)および(5)の新規化合物および/またはその医薬的に許容される塩、一般式(1)、(2)、(3)、(4)および(5)の化合物および/またはその医薬的に許容される塩を含む組成物、その調製方法、ならびに抗腫瘍薬の調製におけるPARP阻害剤としてのその使用、に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化1】
(一般式(1)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、Hまたは(C1~C3)アルキルであり、
は、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであり、
nは1または2であり、
およびRは、シクロアルキル環上の2つの置換基を表し、それぞれ独立して、HまたはFであり、
およびXは、それぞれ独立して、CHまたはNである。)
【請求項2】
前記化合物が、以下の構造:
【化2】
のうちの1つを有する、請求項1に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項3】
一般式(2)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化3】
(一般式(2)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、Hまたは(C1~C3)アルキルであり、
およびXの一方はCHであり、他方はNであり、XはCRまたはNであり、かつRは、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであるか、あるいは、XおよびXは両方ともCHであり、かつXはNであり、
は、H、(C1~C4)アルキル、または0~2個のFで置換された(C3~C4)シクロアルキルである。)
【請求項4】
前記化合物が、以下の構造:
【化4】
のうちの1つを有する、請求項3に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項5】
一般式(3)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化5】
(一般式(3)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであり、
は、H、(C1~C4)アルキル、または0~2個のFで置換された(C3~C4)シクロアルキルである。)
【請求項6】
前記化合物が、以下の構造:
【化6】
のうちの1つを有する、請求項5に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項7】
一般式(4)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化7】
(一般式(4)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、Hまたは(C1~C3)アルキルであり、
は、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであり、
は、H、(C1~C4)アルキル、または0~2個のFで置換された(C3~C4)シクロアルキルであり、
およびXは、それぞれ独立して、CHまたはNであるが、XおよびXは、両方同時にNではない。)
【請求項8】
前記化合物が、以下の構造:
【化8】
のうちの1つを有する、請求項7に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項9】
一般式(5)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化9】
(一般式(5)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであり、
は、H、(C1~C4)アルキル、または0~2個のFで置換された(C3~C4)シクロアルキルであり、
は、NR、OまたはCR10であり、Rは、Hまたは(C1~C3)アルキルであり、
およびR10は、それぞれ独立して、H、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)フルオロアルキル、または(C3~C4)シクロアルキルである。)
【請求項10】
前記化合物が、以下の構造:
【化10】
のうちの1つを有する、請求項9に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項11】
医薬的に許容される賦形剤または担体と、有効成分として請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物と、を含有する医薬組成物。
【請求項12】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼに関連する疾患を処置するための医薬の調製における、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、または請求項11に記載の医薬組成物、の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書中で援用される、2021年4月22日に出願された中国出願第202110439238.4号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、製薬化学の分野に関し、特に、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)に対する阻害作用を有する新規化合物、その調製方法、および抗腫瘍薬の調製におけるかかる化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、ほとんどの真核細胞で発現し、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を基質として、ADP-リボース単位またはその重合体(PAR)を、自身または他のタンパク質の特定のアミノ酸残基上に形成する触媒反応を行い、タンパク質のPARを改変し、タンパク質の分解および機能をさらに制御する。PARPファミリーは、PARP-1、PARP-2、PARP-3、PARP-4(Vault-PARP)、PARP-5(TANK-1、TANK-2、およびTANK-3)などのタンキラーゼ、PARP-7、PARP-10を含む7つのアイソザイムから構成されている[de la Lastra CA.et al.,Curr Pharm Des.,13(9),933-962,2007]。PARPファミリーの酵素は多様であるが、PARP-1は細胞内のADPリボシル化(PAR)の90%超を担っている。PARPは、染色体構造の調節、遺伝子の転写、DNA複製と組み換え、DNA修復などの事象において重要な役割を果たしている。その中でもPARP-1は、ADPリボシル化と重合を促進し、DNA修復を開始し、DNA修復中のDNA修復タンパク質の補充とレベルを制御する。
【0004】
腫瘍細胞のDNAが化学療法薬や電離放射線などで傷つけられると、PARP-1が速やかに活性化され、NAD+が基質として取り込まれ、DNA損傷部分で大量のPARが合成されてヒストンを改変する。次いで、DNA修復タンパク質が補充され、DNA修復を開始する。PARP-1は主に一本鎖DNA切断(SSB)の修復に関与する。PARP-1がPARP阻害剤によって阻害されると、SSBは修復できなくなり、S期DNA複製の間に、SSBは二本鎖DNA切断(DSB)に変換され、それによってPARP-1の機能が阻害され、細胞内にDSBが蓄積する。生体によるDSBの修復は、主に相同組換え(HR)と非相同DNA末端接合(NHEJ)の2つの方法で達成されるが、相同組換えによる修復はS期DSB修復の主要な方法であり、修復の信頼性は高い。BRCAlおよびBRCA2は相同組換えによる修復に重要な役割を果たしている。BRCA1およびBRAC2が欠損すると、DSB修復が制限される。研究によると、BRCA1/2変異は卵巣がん、乳がん、前立腺がんで見られ、BRCA1およびBRCA2欠損のあるがん細胞はPARP阻害剤に特に感受性が高い。これは、PAPR阻害剤によってPARP-1が阻害され、DSBが誘導され、BRCA1/2欠損により修復が阻害され、細胞死が誘導されることに起因すると考えられる。したがって、PARP阻害剤は、BRCA1/2欠損腫瘍の臨床治療に良好な効果をもたらす。PARP阻害剤は単独で使用することも、化学療法薬や放射線治療薬と組み合わせて使用することもでき、それによって、より低用量でより高い効果を得ることができる。オラパリブ(Olaparib)は販売承認を受けた最初のPARP阻害剤である。PARP阻害剤の適応拡大に伴い、PARP阻害剤は癌領域だけでなく、脳卒中、心筋虚血、炎症、糖尿病などにも一定の効果があり、幅広く使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
癌やその他の疾患の治療のためにPARP阻害剤を開発する努力が続けられているが、このような阻害剤はPAPRファミリータンパク質に対する特定の特異性を欠き、無視できない毒性や副作用があり、薬物耐性が生じやすい。従って、特異的で活性の高いPARP-1阻害剤の開発は重要な臨床的価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
本発明は、一般式(1)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する。
【化1】
(一般式(1)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、Hまたは(C1~C3)アルキルであり、
は、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであり、
nは1または2であり、
およびRは、シクロアルキル環上の2つの置換基を表し、それぞれ独立して、HまたはFであり、
およびXは、それぞれ独立して、CHまたはNである。)
【0007】
本発明の別の特定の実施形態では、一般式(1)の化合物は、以下の構造:
【化2】
のうちの1つを有する。
【0008】
本発明は、一般式(2)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する。
【化3】

(一般式(2)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、Hまたは(C1~C3)アルキルであり、
およびXの一方はCHであり、他方はNであり、XはCRまたはNであり、かつRは、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであるか、あるいは、XおよびXは両方ともCHであり、かつXはNであり、
は、H、(C1~C4)アルキル、または0~2個のFで置換された(C3~C4)シクロアルキルである。)
【0009】
本発明の別の特定の実施形態では、一般式(2)の化合物は、以下の構造:
【化4】
のうちの1つを有する。
【0010】
本発明は、一般式(3)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する。
【化5】
(一般式(3)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであり、
は、H、(C1~C4)アルキル、または0~2個のFで置換された(C3~C4)シクロアルキルである。)
【0011】
本発明の別の特定の実施形態では、一般式(3)の化合物は、以下の構造:
【化6】
のうちの1つを有する。
【0012】
本発明は、一般式(4)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する。
【化7】
(一般式(4)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、Hまたは(C1~C3)アルキルであり、
は、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであり、
は、H、(C1~C4)アルキル、または0~2個のFで置換された(C3~C4)シクロアルキルであり、
およびXは、それぞれ独立して、CHまたはNであるが、XおよびXは、両方同時にNではない。)
【0013】
本発明の別の特定の実施形態では、一般式(4)の化合物は、以下の構造:
【化8】
のうちの1つを有する。
【0014】
本発明は、一般式(5)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する。
【化9】
(一般式(5)中、
は、(C1~C4)アルキル、(C1~C4)フルオロアルキル、または(C3~C5)シクロアルキルであり、
は、H、F、Cl、(C1~C4)アルキル、または(C1~C4)フルオロアルキルであり、
は、H、(C1~C4)アルキル、または0~2個のFで置換された(C3~C4)シクロアルキルであり、
は、NR、OまたはCR10であり、Rは、Hまたは(C1~C3)アルキルであり、
およびR10は、それぞれ独立して、H、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)フルオロアルキル、または(C3~C4)シクロアルキルである。)
【0015】
本発明の別の特定の実施形態では、一般式(5)の化合物は、以下の構造:
【化10】
のうちの1つを有する。
【0016】
本発明の別の目的は、医薬的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と、有効成分として本発明の一般式(1)~(5)の化合物またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物と、を含有する医薬組成物を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、PARPに関連する疾患を処置、調節または予防するための医薬の調製における、本発明の一般式(1)~(5)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、または上記医薬組成物の使用を提供することを意図している。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、PARPにより介在される関連疾患を処置、調節または予防するための方法であって、前記方法が、治療有効量の、本発明の一般式(1)~(5)の化合物、またはその異性体、結晶体、医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、または上記の医薬組成物を対象に投与すること、を含む方法を提供することである。
【0019】
本発明の前述の一般的説明および以下の詳細な説明は、どちらも例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図するものと理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(化合物の合成)
【0021】
本発明の一般式の化合物の調製方法を以下に具体的に記載するが、これらの具体的な方法は本発明を何ら限定しない。
【0022】
上記の式の化合物は、本明細書に記載の方法と組み合わせた標準的な合成技術、または周知の技術を使用して、合成され得る。さらに、本明細書に記載される溶媒、温度および他の反応条件は異なっていてもよい。化合物の合成のための出発物質は、合成的にまたは商業的に入手することができる。本明細書に記載の化合物および異なる置換基を有する他の関連化合物は、March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY,4th Ed.,(Wiley 1992);CareyおよびSundberg,ADVANCED ORGANICCHEMISTRY,4thEd.,Vols.AおよびB(Plenum 2000、2001)、ならびにGreenおよびWuts、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANICSYNTHESIS,3rdEd.,(Wiley 1999)に見出される方法を含む、周知の技術および出発物質を用いて合成され得る。化合物を調製するための一般的な方法は、本明細書で提供される分子式に様々な基を導入するための適切な試薬および条件を使用することによって、変更され得る。
【0023】
1つの態様において、本明細書に記載された化合物は、当該技術分野で周知の方法に従って調製される。ただし、反応物、溶媒、塩基、使用する化合物の量、反応温度、反応に要する時間などの方法の条件は、以下の記載に限定されない。また、本発明の化合物は、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の種々の合成方法を任意に組み合わせて簡便に調製され得、このような組み合わせは、本発明が関連する当業者によって容易に実施され得る。1つの態様において、本発明は、下記の一般反応スキーム1~5によって調製される、一般式(1)の化合物の調製方法をさらに提供する。
【0024】
一般反応スキーム1
【化11】
【0025】
一般式(1)の化合物の実施形態は、一般反応スキーム1に従って調製され得、式中、R、R、R、R、R、X、Xおよびnは上記で定義した通りである。一般反応スキーム1に示すように、化合物1-1を塩化チオニルと反応させて化合物1-2を生成し、化合物1-2および化合物1-3を置換反応に供して目的化合物1-4を生成する。
【0026】
一般反応スキーム2
【化12】
【0027】
一般式(2)の化合物における実施形態は、一般反応スキーム2に従って調製され得、式中、R、R、R、X、XおよびXは上記で定義した通りである。一般反応スキーム2に示すように、化合物2-1を塩化チオニルと反応させて化合物2-2を生成し、化合物2-2および化合物2-3を置換反応に供して目的化合物2-4を生成する。
【0028】
一般反応スキーム3
【化13】
【0029】
一般式(3)の化合物の実施形態は、一般反応スキーム3に従って調製され得、式中、R、RおよびRは上記で定義した通りである。一般反応スキーム3に示すように、化合物3-1をオキシ塩化リンと反応させて化合物3-2を生成し、化合物3-2をナトリウムメトキシドと反応させて化合物3-3を生成し、化合物3-3を低温でメチルリチウムと反応させて化合物3-4を生成し、化合物3-4を塩酸の作用下に置き化合物3-5を生成し、化合物3-5を還元剤で還元して化合物3-6を生成し、化合物3-6を塩化チオニルと反応させて化合物3-7を生成し、化合物3-7および化合物3-8を置換反応に供して目的化合物3-9を生成する。
【0030】
一般反応スキーム4
【化14】
【0031】
一般式(4)の化合物の実施形態は、一般反応スキーム4に従って調製され得、式中、R、R、R、R、XおよびXは上記で定義した通りである。一般反応スキーム4に示すように、化合物4-1を塩化チオニルと反応させて化合物4-2を生成し、化合物4-2および化合物4-3を置換反応に供して目的化合物4-4を生成する。
【0032】
一般反応スキーム5
【化15】
【0033】
一般式(5)の化合物の実施形態は、一般反応スキーム5に従って調製され得、式中、R、R、RおよびXは上記で定義した通りである。一般反応スキーム5に示すように、化合物5-1を還元剤(例えばトリエチルシラン)の存在下でカルボニル化反応に供して化合物5-2を得、化合物5-2を還元剤で還元して化合物5-3を生成し、化合物5-3を塩化チオニルと反応させて化合物5-4を生成し、化合物5-4および化合物5-5を置換反応に供して目的化合物5-6を生成する。
【0034】
化合物のさらなる形態
【0035】
本明細書において「医薬的に許容される」は、担体や希釈剤など、化合物の生物学的活性または特性の消失を引き起こさない、比較的無毒の物質を意味する。例えば、個体に、ある物質を投与する場合、その物質は、望ましくない生物学的作用、またはその含有成分のいずれかとの有害な相互作用を、引き起こさない。
【0036】
用語「医薬的に許容される塩」は、投与を受ける生物体に著しい刺激を与えず、あるいは化合物の生物学的活性および特性を排除しない化合物の既存の形態を意味する。ある特定の態様において、前記医薬的に許容される塩は、当該一般式の化合物を、酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸などの有機酸、アスパラギン酸、およびグルタミン酸などの酸性アミノ酸、と反応させることによって得られる。
【0037】
医薬的に許容可能な塩は、溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形体を含むことを理解されたい。溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含み、水およびエタノールなどの医薬的に許容可能な溶媒における結晶化の際に選択的に形成される。溶媒が水の場合は水和物が、溶媒がエタノールの場合はアルコラートが形成される。当該一般式の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載の方法に従って好都合に調製または形成される。例えば、当該一般式の化合物の水和物は、水/有機溶媒の混合溶媒における再結晶によって好都合に調製され、使用される有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノールまたはメタノールを含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態または溶媒和形態のいずれかで存在し得る。一般に、溶媒和形態は、本明細書で提供される化合物および方法の目的のためには、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0038】
他の特定の実施形態では、一般式の化合物は、非晶質、粉砕、およびナノ粒子形態を含むが、これらに限定されない異なる形態で調製される。さらに、当該一般式の化合物は、結晶形態を含み、多形体であってもよい。多形体は、化合物の同じ元素の異なる格子配置を含む。前記多形体は、一般に、異なるX線回折スペクトル、赤外スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形態、光学的特性、電気的特性、安定性、および溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、および保存温度などの様々な要因により、単一の優勢な結晶系になる場合がある。
【0039】
別の態様では、一般式の化合物は、キラル中心および/または軸不斉を有し得、したがって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー化合物、単一ジアステレオマーおよびシス-トランス異性体の形態で存在し得る。各キラル中心または軸不斉は、独立して2つの光学異性体を生成し、すべての可能な光学異性体、ジアステレオマー混合物および純粋または部分的に純粋な化合物が、本発明の範囲に含まれる。本発明は、これらの化合物のすべてのそのような異性体を含むことを意味する。
【0040】
本発明の化合物は、このような化合物を構成する原子の1つ以上において、不自然な割合の原子同位体を含んでいてもよい。例えば、前記化合物は、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)およびC-14(14C)などの放射性同位体で標識され得る。他の例として、重水素を用いて水素原子を置換して重水素化化合物を形成することができる。重水素と炭素とによって形成される結合は、一般的な水素と炭素とによって形成される結合よりも強い。重水素化されていない医薬と比較して、一般に、重水素化医薬は、副作用の低減、薬剤安定性の向上、有効性の増強、in vivo半減期の延長などの利点を有している。本発明の化合物のすべての同位体バリエーションは、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲に包含される。
【0041】
用語の説明
【0042】
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される用語を含む、本発明において使用される用語は、以下のように定義される。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「1つの(a)」および「1つの(an)」は文脈において特に明記しない限り、複数の意味を含むことに留意されたい。特に明記しない限り、質量分析法、核磁気共鳴分光法、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学のような従来の方法が用いられる。本明細書において使用される「または」または「および」は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。
【0043】
特に指定しない限り、「アルキル」は、1~6個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状の基を含む飽和脂肪族炭化水素基を意味する。メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルなどの、1~4個の炭素原子を有する低級アルキル基が好ましい。本明細書で使用される場合、「アルキル」は、非置換および置換アルキル、特に1つ以上のハロゲンで置換されたアルキルを含む。好ましいアルキルは、CH、CHCH、CF、CHF、CFCH、CF(CH)CH、Pr、Pr、Bu、BuまたはBuから選択される。
【0044】
特に指定しない限り、「シクロアルキル」は、非芳香族炭化水素環系(単環式、二環式、または多環式)を指し、部分的に不飽和のシクロアルキルは、炭素環が少なくとも1つの二重結合を含む場合、「シクロアルケニル」、または炭素環が少なくとも1つの三重結合を含む場合、「シクロアルキニル」と呼ばれることがある。前記シクロアルキルは、単環式基または多環式基、およびスピロ環(例えば、2、3、または4個の縮合環を有する)を含み得る。いくつかの実施形態において、前記シクロアルキルは単環式である。いくつかの実施形態において、前記シクロアルキルは、単環式または二環式である。前記シクロアルキルの環炭素原子は、任意に、酸化されてオキソ基またはスルフィド基を形成し得る。前記シクロアルキルは、シクロアルキレンをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記シクロアルキルは、0、1または2個の二重結合を含む。いくつかの実施形態において、前記シクロアルキルは、1または2個の二重結合を含む(部分不飽和シクロアルキル)。いくつかの実施形態において、前記シクロアルキルは、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルと縮合していてもよい。いくつかの実施形態において、前記シクロアルキルは、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルと縮合していてもよい。いくつかの実施形態において、前記シクロアルキルは、アリールおよびヘテロシクロアルキルと縮合していてもよい。いくつかの実施形態において、前記シクロアルキルは、アリールおよびシクロアルキルと縮合していてもよい。前記シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルカンファニル、ノルピナニル、ノルカルニル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシルなどが挙げられる。
【0045】
特に指定しない限り、「アルコキシ」は、エーテル酸素原子を介して分子の残りの部分に結合するアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシなどの1~6個の炭素原子を有するものである。本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、非置換および置換アルコキシ、特に1つ以上のハロゲンで置換されたアルコキシを含む。好ましいアルコキシは、OCH、OCF、CHFO、CFCHO、i-PrO、n-PrO、i-BuO、n-BuOまたはt-BuOから選択される。
【0046】
特に指定しない限り、「ハロゲン」(またはハロ)は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。基名の前の用語「ハロ」(または「ハロゲン化」)は、その基が部分的または完全にハロゲン化されていること、すなわち、F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはClによって任意の組み合わせで置換されていることを示す。
【0047】
「任意の」または「任意に」は、その後に記載される事象または状況が生じる可能性があるが、必ずしも生じないことを意味し、その記載には、その事象または状況が生じる例およびその事象または状況が生じない例が含まれる。
【0048】
置換基「-O-CH-O-」は、置換基中の2個の酸素原子が、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール中の2個の隣接する炭素原子に結合していることを意味し、例えば、以下のとおりである。
【化16】
【0049】
リンカー基の番号が-(CH-のように0である場合、そのリンカー基が単結合であることを意味する。
【0050】
変数の1つが化学結合から選択される場合、この変数によって連結される2つの基が直接連結されることを意味する。例えば、X-L-YのLが化学結合を表す場合、実際にはX-Yの構造であることを意味する。
【0051】
用語「員環」は、任意の環状構造を含む。用語「員」は、環を形成する主鎖原子の数を指すことが意図される。例えば、シクロヘキシル、ピリジニル、ピラニルおよびチオピラニルは、6員環であり、シクロペンチル、ピロリル、フラニルおよびチエニルは、5員環である。
【0052】
用語「部分」は、分子の特定の部分または官能基を指す。化学部分は、一般に、分子に含まれる、または分子に結合する化学物質を指すとみなされる。
【0053】
特に記載のない限り、くさび形実線結合
【化17】
およびくさび形破線結合
【化18】
は、立体中心の絶対配置を表し、直線実線結合
【化19】
および直線破線結合
【化20】
は、立体中心の相対配置を表す。
波線
【化21】
は、くさび形実線結合
【化22】
またはくさび形破線結合
【化23】
を表し、あるいは波線
【化24】
は直線実線結合
【化25】
または直線破線結合
【化26】
を表す。
【0054】
特に記載のない限り、単結合または二重結合は、
【化27】
により表される。
【0055】
具体的な医薬品・医療用語
【0056】
本明細書で使用される「許容可能な」という用語は、製剤成分または活性成分が、一般的な治療対象の健康に過度にかつ有害な作用を及ぼさないことを意味する。
【0057】
本明細書で使用される用語「処置」、「処置経過」、および「治療」は、疾患の症状または状態を緩和、阻害、または改善すること、合併症の発生を阻害すること、根底であるメタボリック症候群を改善または予防すること、疾患または状態の発生を阻害すること(例えば、疾患または状態の進行を制御すること)、疾患または症状を緩和すること、疾患または症状を退行させること、および疾患または症状によって引き起こされる合併症を緩和すること、または疾患もしくは症状によって引き起こされる兆候を予防もしくは処置することを含む。本明細書で使用される場合、化合物または医薬組成物は、投与されると、疾患、症状、または状態を改善することができ、特に、疾患の重症度を改善させる、発症を遅らせる、進行を遅らせる、または持続期間を短縮することができる。固定投与もしくは一時投与、または継続投与もしくは間欠投与は、投与に起因するか、または投与に関連し得る。
【0058】
「有効成分」とは、一般式の化合物、および一般式の化合物の医薬的に許容可能な無機塩または有機塩を指す。本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心(キラル中心または軸不斉)を含んでいてもよく、したがって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー化合物、および単一ジアステレオマーの形態で存在し得る。存在し得る不斉中心は、分子上の様々な置換基の特性に依存する。このような不斉中心はそれぞれ独立して2つの光学異性体を生成し、すべての可能な光学異性体、ジアステレオマー混合物および純粋または部分的に純粋な化合物が、本発明の範囲に含まれる。本発明は、これらの化合物のすべてのそのような異性体形態を含むことを意味する。
【0059】
本明細書では、「化合物」、「組成物」、「薬剤」または「医薬または医薬品」などの用語は、互換的に用いられ、いずれも、個体(ヒトまたは動物)に投与されると、局所および/または全身作用により所望の薬理的および/または生理学的反応を誘発することができる化合物または組成物を指す。
【0060】
「投与される、投与する、または投与」という用語は、本明細書では化合物もしくは組成物の直接投与、または活性化合物のプロドラッグ、誘導体、アナログ等の投与を意味する。
【0061】
本発明の広い範囲を定義する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施形態に示される関連する値は、可能な限り正確に本明細書に示されている。しかし、どのような数値も本質的に、ある種の試験方法から必然的に生じる標準偏差を含んでいる。ここで、「約」とは、一般に、実際の値が特定の値または範囲±10%、5%、1%、または0.5%以内であることを意味する。あるいは、「約」という用語は、当業者が考えるように、実際の数値が平均値の許容できる標準誤差の範囲内にあることを示す。実験例を除きまたは特に明記されない限り、本明細書で使用されるすべての範囲、量、値および百分率(例えば、材料の量、時間の長さ、温度、運転条件、量の割合などを記載するために)は、用語「約」によって修正されることが理解される。したがって、特に明記されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、すべて所望により変化し得る近似値である。少なくとも、これらの数値パラメータは、示された有効数字または従来の丸め規則を使用して得られた数値と解釈されるべきである。
【0062】
本明細書で使用される科学技術用語は、本明細書で別途定義されない限り、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書で使用される単数形の名詞は、文脈と矛盾しない限り、それらの複数形を包含し、使用される複数形の名詞は、それらの単数形も包含する。
【0063】
治療用途
【0064】
本発明は、本発明の一般式の化合物または医薬組成物を用いて、PARPが関与する状態(例えば、癌)を含むがこれらに限定されない疾患を治療する方ため方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態において、癌を処置する方法が提供され、該方法は、構造一般式の化合物を含む有効量の任意の前述の医薬組成物を、必要とする個体に投与することを含む。いくつかの実施形態において、前記癌は、PARPによって介在される。他の実施形態では、前記癌は、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、前立腺癌、肝臓癌、卵巣癌、頭頸部癌、胃癌、中皮腫または全ての癌転移を含むがこれらに限定されない、血液癌および固形腫瘍である。
【0066】
投与経路
【0067】
本発明の化合物およびその医薬的に許容可能な塩は、安全かつ有効な量の、本発明の化合物またはその医薬的に許容可能な塩と、医薬的に許容可能な賦形剤または担体とを含む種々の製剤に調製することができ、ここで「安全かつ有効な量」とは、重篤な有害作用を引き起こすことなく状態を有意に改善するのに十分な化合物の量を意味している。化合物の安全かつ有効な量は、処置される対象の年齢、状態、処置の経過、および他の特定の状態に従って決定される。
【0068】
「医薬的に許容可能な賦形剤または担体」とは、ヒトでの使用に適し、かつ、十分な純度を有し、毒性が十分に低くなければならない、1つ以上の適合性のある固体または液体の充填剤またはゲル物質を指す。本明細書において「適合性」とは、組成物の成分が、化合物の医薬的有効性を著しく低下させることなく、本発明の化合物と相互混合することが可能であることを意味する。医薬的に許容可能な賦形剤または担体の例としては、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウムまたは酢酸セルロース)、ゼラチン、タルク、固体滑沢剤(例えば、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば、大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブ油など)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(Tween(登録商標)など)、湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、着色剤、香料、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、パイロジェンフリー水などが挙げられる。
【0069】
本発明の化合物を投与する場合、経口、直腸、非経口(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)または局所的に投与することができる。
【0070】
経口投与のための固形剤形には、カプセル、錠剤、丸剤、散剤(pulvises)および顆粒が含まれる。これらの固形剤形において、前記活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの従来の不活性賦形剤(または担体)、または以下の成分:(a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤;(b)ヒドロキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアなどの結合剤;(c)グリセロールなどの保湿剤;(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合シリケート、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(e)パラフィンなどの溶液遅延剤;(f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(g)セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(h)カオリンなどの吸着剤;および(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコールおよびラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、またはこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合、前記剤形は、緩衝剤をさらに含んでもよい。
【0071】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒などの固体剤形は、腸溶性コーティングおよび当技術分野で周知の他の材料などのコーティングおよびシェルを用いて、調製され得る。これらは不透明化剤を含んでもよく、そのような組成物中の活性化合物または化合物は、消化管の特定の部分で遅延して放出され得る。使用され得る埋め込み成分の例としては、高分子物質およびワックス系物質が挙げられる。必要に応じて、前記活性化合物は、1つ以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセルを形成し得る。
【0072】
経口投与のための液体剤形には、医薬的に許容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、またはエリキシルなどが含まれる。活性化合物に加えて、前記液体剤形は、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジメチルホルムアミド、および油、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油、またはこれらの物質の混合物などの、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含み得る。
【0073】
このような不活性希釈剤に加えて、前記組成物はさらに、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、および香料などのアジュバントを含み得る。
【0074】
活性化合物に加えて、懸濁液は、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメチラート、ならびに寒天、またはこれらの物質の混合物などの、懸濁剤を含み得る。
【0075】
非経口注射用組成物は、生理学的に許容可能な滅菌水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、および滅菌注射用溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含み得る。適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤には、水、エタノール、ポリオール、およびそれらの適切な混合物が含まれる。
【0076】
本発明の化合物を局所投与するための剤形としては、軟膏、散剤、パッチ、スプレー、および吸入剤などが挙げられる。前記有効成分は、生理学的に許容可能な担体、および必要に応じて要求され得る任意の保存剤、緩衝剤または噴霧剤と無菌条件下で混合される。
【0077】
本発明の化合物は、単独で、または他の医薬的に許容可能な化合物と組み合わせて投与され得る。本発明の医薬組成物が使用される場合、処置対象となる哺乳動物(ヒトなど)に対して、安全かつ有効な量の本発明の化合物が投与され、ここで、投与量は、医薬的に有効な用量である。60kgのヒトの場合、1日の投与量は、通常1~2000mg、好ましくは50~1000mgである。もちろん、具体的な投与量において、投与経路、患者の健康状態等の要因も考慮されるが、これらは当業者には周知である。
【0078】
本発明で述べた特徴、または実施形態において上記した特徴は、任意に組み合わせることができる。本明細書に開示される全ての特徴は、任意の組成物の形態で使用することができ、本明細書に開示される様々な特徴は、同一、同等または類似の目的を提供する任意の代替の特徴で置き換えることができる。従って、特に指定しない限り、本明細書で開示された特徴は、同等または類似の特徴の一般的な例に過ぎない。
【0079】
(詳細な説明)
【0080】
上記の化合物、方法および医薬組成物の様々な特定の態様、特徴および利点は、以下のように詳細に記載され、これにより本発明の内容が非常に明確になるであろう。以下の詳細な説明および実施例は、参考のために特定の実施例を記述していることを理解されたい。本発明の説明を読んだ後、当業者は、本発明に対して様々な変更または修正を加えることができ、そのような均等物も、本明細書で定義される本出願の範囲内に入る。
【0081】
すべての実施例において、H-NMRスペクトルをVarian Mercury400核磁気共鳴装置で記録し、化学シフトをδ(ppm)で表した;分離用シリカゲルは特に指定がなければ200~300メッシュのシリカゲルを使用し、溶離液の比率は体積比であった。
【実施例
【0082】
実施例1:化合物1の合成
【化28】
【0083】
ステップ1:化合物int_1-2の合成:
【化29】
【0084】
ジオキサン(30mL)中の化合物int_1-1(5.00g、23.79mmol)の溶液に二酸化セレン(3.96g、35.68mmol)を室温で加え、反応液を110℃に加熱し、20時間撹拌した。冷却後、反応液を珪藻土で濾過し、濾過ケーキを酢酸エチル(100mL)で洗浄した。濾液を合わせて減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製して中間体int_1-2を得た。
LC-MS(ESI):225[M+H]
【0085】
ステップ2:化合物int_1-3の合成:
【化30】
【0086】
無水テトラヒドロフラン(25mL)中の60%水素化ナトリウム(2.23g、55.76mmol)の溶液に、2-ホスホノ酪酸トリエチル(14.07g、55.76mmol)を0℃で撹拌しながらゆっくりと滴下添加した。滴下添加終了後、混合物を0℃で10分間撹拌し、ゆっくりと室温まで温め、40℃まで加熱し、5分間撹拌した。反応液を-78℃に冷却し、無水テトラヒドロフラン(25mL)中の中間体int_1-2(5.00g、22.30mmol)の溶液を、攪拌しながらゆっくりと滴下した。飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)を加えて混合物をクエンチし、反応液を減圧下濃縮してテトラヒドロフランの大部分を除去し、酢酸エチル(150mL×2)で抽出した。有機相を合わせ、水(50mL)で洗浄し、飽和ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、中間体int_1-3(E/Z配置の混合物)を得た。
LC-MS(ESI):323[M+H]
【0087】
ステップ3:化合物int_1-4の合成:
【化31】
【0088】
中間体int_1-3(3.00g、9.31mmol)およびパラジウム炭素(10%、含水率50%、1.49g)をエタノール(25mL)中で混合し、混合物を水素で2回パージした後、反応混合物を水素雰囲気下(水素バルーン)、室温で一晩撹拌した。混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮し、塩化水素のジオキサン溶液(4M、10mL)を加え、得られた混合物を室温で0.5時間撹拌した。希釈のためにジエチルエーテル(100mL)を加え、混合物を濾過し、濾過ケーキをジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥して中間体int_1-4を得た。
LC-MS(ESI):249[M+H]
【0089】
ステップ4:化合物int_1-5の合成:
【化32】
【0090】
中間体int_1-4(2.00g、8.06mmol)を室温でジオキサン(35mL)溶液に溶解し、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノベンゾキノン(2.01g、8.86mmol)を加え、反応混合物を還流まで3時間加熱した。反応混合物を減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)を加え、混合物を1時間撹拌した後、濾過し、濾過ケーキを水およびジエチルエーテルで順次洗浄した。濾過ケーキを減圧下で乾燥し、中間体int_1-5を得た。
LC-MS(ESI):247[M+H]
【0091】
ステップ5:化合物int_1-6の合成:
【化33】
【0092】
水素化アルミニウムリチウム(16.24mL、16.24mmol、THF中1M)を、氷水浴中、窒素雰囲気下、テトラヒドロフラン(40mL)中の中間体int_1-5(2.00g、8.12mmol)の溶液に加え、反応混合物を0℃で1時間撹拌した。反応液に、水(1mL)、15%水酸化ナトリウム水溶液(2mL)、水(3mL)を、攪拌しながら順次加えた。15分間撹拌後、反応液を濾過し、濾液を酢酸エチル(30mL×4)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって分離精製し、中間体int_1-6を得た。
LC-MS(ESI):205[M+H]
【0093】
ステップ6:化合物int_1-7の合成:
【化34】
【0094】
ジクロロメタン中の中間体int_1-6(2.00g、9.79mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(71.58mg、0.979mmol)の溶液に、塩化チオニル(4.26mL、58.76mmol)を、0℃で撹拌しながら滴下した。混合物を室温で5時間撹拌し、反応液を減圧下で濃縮して粗中間体int_1-7を得、これを精製せずに直接次のステップに用いた。
【0095】
ステップ7:化合物1の合成:
【化35】
【0096】
中間体int_1-7(粗生成物、2.00g)、中間体int_1-8(2.21g、8.98 mmol)、ヨウ化カリウム(298mg、1.80mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.80g、44.91mmol)をアセトニトリル(25mL)中、室温で混合し、混合物を80℃に加熱し、2時間撹拌した。反応液を冷却した後、減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、水(100mL)を加え、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で塩基性にした。混合物を酢酸エチル(30mL×4)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、化合物1を得た。
LC-MS(ESI):433[M+H]
H NMR(400MHz,DMSO-d) δ 11.84(s,1H),8.40(d,J=1.5Hz,1H),8.33(d,J=4.9Hz,1H),8.23(d,J=2.6Hz,1H),7.82(d,J=8.8Hz,1H),7.75(s,1H),7.62(s,1H),7.48-7.39(m,1H),3.65(s,2H),3.32-3.28(m,2H),2.90-2.79(m,1H),2.59-2.52(m,8H),1.20-1.12(m,3H),0.72-0.56(m,4H)。
【0097】
実施例2:化合物2の合成
【化36】
【0098】
中間体int_1-7(2.00g)、中間体int_2-1(2.50g、11.30mmol)、ヨウ化カリウム(298mg、1.80mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.80g、44.91mmol)をアセトニトリル(25mL)中、室温で混合し、混合物を80℃に加熱し、2時間撹拌した。反応液を冷却した後、減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、水(100mL)を加え、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で塩基性にした。混合物を酢酸エチル(30mL×4)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、化合物2を得た。
LC-MS(ESI):408[M+H]
【0099】
実施例3:化合物3の合成
【化37】
【0100】
ステップ1:化合物int_3-1の合成:
【化38】
【0101】
中間体int_1-5(3.00g、12.18mmol)とオキシ塩化リン(37.36 g、243.64mmol)との混合物を100℃に加熱し、3時間撹拌した。反応液を冷却後、減圧下濃縮してオキシ塩化リンを除去し、残渣を水(200mL)に注ぎ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で塩基性にした。混合物をジクロロメタン(60mL×4)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、中間体int_3-1を得た。
LC-MS(ESI):265[M+H]
【0102】
ステップ2:化合物int_3-2の合成
【化39】
【0103】
中間体int_3-1(2.00g、7.56mmol)およびナトリウムメトキシド(816 mg、15.11mmol)を室温でメチルベンゼン(30mL)中に混合し、混合物を50℃に加熱して5時間撹拌した。冷却後、反応液を水(150mL)に注ぎ、酢酸エチル(50mL×4)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、中間体int_3-2を得た。
LC-MS(ESI):261[M+H]
【0104】
ステップ3:化合物int_3-3の合成
【化40】
【0105】
テトラヒドロフラン(30mL)中の中間体int_3-2(2.00g、7.68mmol)の溶液に、メチルリチウム(THF中1.5M、7.68mL、11.53mmol)を、窒素雰囲気下-78℃で冷却しながら加え、反応混合物を-78℃で1時間撹拌した。反応液を0℃に温め、攪拌しながら飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)を滴下してクエンチし、続いて水(50mL)を加えた。混合物を酢酸エチル(50mL×4)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、中間体int_3-3を得た。
LC-MS(ESI):231[M+H]
【0106】
ステップ4:化合物int_3-4の合成
【化41】
【0107】
中間体int_3-3(1.50g、6.94mmol)と6N塩酸(15mL)との混合物を、100℃に加熱し、2時間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、15%水酸化ナトリウム水溶液でpH=6~7まで撹拌しながら塩基化した。混合物を、酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、中間体int_3-4を得た。
LC-MS(ESI):217[M+H]
【0108】
ステップ5:化合物int_3-5の合成:
【化42】
【0109】
水素化ホウ素ナトリウム(350mg、9.25mmol)をメタノール(25mL)中の中間体int_3-4(1.00g、4.62mmol)の溶液に氷水浴中でゆっくりと加え、反応混合物を0℃で0.5時間撹拌し、次いで室温に温め、2時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、水(100mL)を加え、混合物を酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、中間体int_3-5を得た。
LC-MS(ESI):219[M+H]
【0110】
ステップ6:化合物int_3-6の合成:
【化43】
【0111】
ジクロロメタン(20mL)中の中間体int_3-5(1.00g、4.58mmol)とN,N-ジメチルホルムアミド(33mg、0.458mmol)との溶液に、塩化チオニル(3.27g、27.49mmol)を、0℃で撹拌しながら滴下した。混合物を室温で5時間撹拌し、反応液を減圧下で濃縮して粗中間体int_3-6を得、これを精製せずに次のステップで直接使用した。
【0112】
ステップ7:化合物3の合成
【化44】
【0113】
中間体int_3-6(1.00g)、中間体int_3-7(931mg、4.22mmol)、ヨウ化カリウム(140mg、0.845mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.73g、21.12mmol)をアセトニトリル(20mL)中、室温で混合し、混合物を80℃に加熱し、2時間撹拌した。反応液を冷却した後、減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、水(100mL)を加え、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で塩基性にした。混合物を酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、化合物3を得た。
LC-MS(ESI):421[M+H]
【0114】
実施例4:化合物4の合成
【化45】
【0115】
ステップ1:化合物int_4-2の合成:
【化46】
【0116】
ジクロロメタン(20mL)中の中間体int_4-1(1.00g、4.87 mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(36mg、0.487mmol)の溶液に、塩化チオニル(3.48g、29.24mmol)を、0℃で撹拌しながら滴下した。混合物を室温で5時間撹拌し、反応液を減圧下濃縮して粗中間体int_4-2を得、これを精製せずに次のステップで直接使用した。
【0117】
ステップ2:化合物4の合成:
【化47】
【0118】
中間体int_4-2(1.00g)、中間体int_3-7(985mg、4.47mmol)、ヨウ化カリウム(148mg、0.894mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.89g、22.36mmol)をアセトニトリル(20mL)中、室温で混合し、混合物を80℃に加熱し、2時間撹拌した。反応液を冷却した後、減圧下濃縮して有機溶媒を除去し、水(100mL)を加え、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で塩基性にした。混合物を酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、化合物4を得た。
LC-MS(ESI):408[M+H]
【0119】
実施例5:化合物5の合成
【化48】
【0120】
ステップ1:化合物int_5-2の合成:
【化49】
【0121】
中間体int_5-1(2.00g、7.78mmol)、トリエチルシラン(1.81g、15.56mmol)、トリエチルアミン(2.36g、23.34mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリドジクロロメタン錯体(635mg、0.778mmol)および無水N,N-ジメチルホルムアミド(38mL)を室温でオートクレーブに加えた。一酸化炭素でパージした後、反応液を一酸化炭素で60psiまで加圧し、110℃まで加熱し、12時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した後、ゆっくりと圧力を抜き、混合物を濾過し、濾液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)を加え、次いでジクロロメタン(60mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、中間体int_5-2を得た。
LC-MS(ESI):207[M+H]
【0122】
ステップ2:化合物int_5-3の合成:
【化50】
【0123】
水素化ホウ素ナトリウム(275mg、7.27mmol)を、中間体int_5-2(1.00g、4.85mmol)のメタノール(20mL)溶液に、氷水浴中でゆっくりと加え、反応混合物を0℃で0.5時間撹拌した後、室温まで温め、2時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、水(100mL)を加え、混合物を酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、中間体int_5-3を得た。
LC-MS(ESI):209[M+H].
【0124】
ステップ3:化合物int_5-4の合成:
【化51】
【0125】
ジクロロメタン(20mL)中の中間体int_5-3(1.00g、4.80mmol)とN,N-ジメチルホルムアミド(35mg、0.480mmol)との溶液に、塩化チオニル(3.43g、28.82mmol)を、0℃で撹拌しながら滴下した。混合物を室温で5時間撹拌し、反応液を減圧下で濃縮して粗中間体int_5-4を得、これを精製せずに次のステップで直接使用した。
【0126】
ステップ4:化合物5の合成:
【化52】
【0127】
中間体int_5-4(1.00g)、中間体int_3-7(972mg、4.41mmol)、ヨウ化カリウム(146mg、0.882mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.85g、22.06mmol)を、アセトニトリル(20mL)中、室温で混合し、混合物を80℃に加熱し、2時間撹拌した。反応液を冷却後、減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、水(100mL)を加え、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で塩基性とした。混合物を酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。有機相を合わせ、飽和ブライン(100mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を減圧下で濃縮して有機溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、化合物5を得た。
LC-MS(ESI):411[M+H]
H NMR400MHz,CDCl) δ 9.43(s,1H),8.20-7.95(m,2H),7.82(s,2H),7.15(d,J=8.8Hz,1H),4.74(t,J=5.8Hz,1H),3.49(s,2H),3.26(s,4H),3.01(d,J=5.1Hz,3H),2.58(s,4H),1.91(s,2H),1.13(t,J=7.4Hz,3H)。
【0128】
実施例6~68:化合物6~68の合成
異なる出発原料を用いて、一般反応スキーム1、2、3、4もしくは5の合成方法、または他のルートにより、表1の目的化合物6~68を、得ることができる。
【0129】
【表1】
【0130】
実施例69:本発明の化合物によるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ[PARP-1酵素]の活性のin vitro阻害に関する実験
ヒストンを384ウェルプレートに4℃で一晩コートし、PBST緩衝液で3回リンスし、室温で1時間ブロッキングした。1時間後、ヒストンをPBST、DMSOまたは段階希釈化合物でさらに3回リンスし、PARP-1酵素とDNAとを含む混合物を添加し、得られた混合物を25℃で10分間インキュベートした。10分後、NADを加えて反応を開始した。室温で60分間反応させた後、反応液をPBSTで3回リンスし、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)を結合させたポリ/モノ-ADPリボース抗体を添加して、ヒストン上のポリ/モノ-ADPリボースのレベルを検出した。室温で1時間インキュベートした後、HRP基質ECLAおよびBを添加し、Envisionで化学発光を定量した。化合物の阻害率およびIC50を、対照群DMSOと比較して算出した。結果を以下の表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
+++は、IC50が10nM以下であることを意味する。
++は、IC50が10nM~50nMであることを意味する。
+は、IC50が50nMより大きいことを意味する。
【0133】
表2のデータからわかるように、本発明の化合物は、PARP-1に対して良好な阻害活性を有する。
【0134】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、これらの実施形態は単なる例示であり、本発明の原理および趣旨から逸脱することなく、これらの実施形態に多くの変更または修正を加えることができることが当業者には理解されよう。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【国際調査報告】