(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】音響漏れ検出システムの設置方法
(51)【国際特許分類】
E03B 7/00 20060101AFI20240326BHJP
G01F 1/66 20220101ALN20240326BHJP
【FI】
E03B7/00 A
G01F1/66 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564670
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2022058455
(87)【国際公開番号】W WO2022223254
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521552741
【氏名又は名称】カムストラップ・アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】Kamstrup A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,スーン・ホバーロウスト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアンセン,ラース
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035AA06
(57)【要約】
本発明は、流体分配ネットワークに音響漏れ検出システムを設置する方法に関し、この方法は、流体分配ネットワークに少なくとも1つの第1音響センサ(10)を配置するステップと、流体分配ネットワークにおける少なくとも1つの第1音響センサ(10)から配管(4)に沿って離れた位置に少なくとも1つの音響信号発生器(26)を配置するステップと、音響信号発生器(26)によって音響信号を発生するステップと、発生された音響信号を少なくとも1つの第1音響センサ(10)が検出するかどうかを評価するステップと、発生された音響信号が少なくとも1つの第1音響センサ(10)によって検出されない場合、少なくとも1つの第2音響センサ(24)を、流体分配ネットワーク内における位置であって、前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)よりも前記音響信号発生器(26)の位置から配管(4)に沿って離れていない位置に配置するステップと、によって特徴付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体分配ネットワークに音響漏れ検出システムを設置する方法であって、
前記流体分配ネットワークに少なくとも1つの第1音響センサ(10)を配置するステップと、
前記流体分配ネットワークにおける前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)から配管(4)に沿って離れた位置に少なくとも1つの音響信号発生器(26)を配置するステップと、
前記音響信号発生器(26)によって音響信号を発生するステップと、
発生された音響信号を前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)が検出するかどうかを評価するステップと、
発生された音響信号が前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)によって検出されない場合、少なくとも1つの第2音響センサ(24)を、前記流体分配ネットワークにおける位置であって、配管(4)の長さで測定される前記音響信号発生器(26)の位置からの距離が前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)から前記音響信号発生器(26)までの距離よりも短い位置に配置するステップと、
によって特徴付けられる方法。
【請求項2】
発生された音響信号が前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)によって検出された場合、第2音響センサ(24)は、前記音響信号発生器(26)の位置に配置されないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記音響信号発生器(26)によって音響信号を発生する前に前記流体分配ネットワークに少なくとも1つの第2音響センサ(24)を配置し、
発生された音響信号が前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)または前記少なくとも1つの第2音響センサ(24)によって検出されない場合、少なくとも1つのさらなる第2音響センサ(24)を、前記流体分配ネットワークにおける位置であって、前記音響信号発生器(26)の位置からの配管(4)に沿った距離が前記流体分配ネットワークに先に配置された前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)および前記少なくとも1つの第2音響センサ(24)よりも短い位置に配置する、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2音響センサ(24)または前記少なくとも1つのさらなる第2音響センサ(24)は、前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)によって受信される音響信号の振幅が、予め定められた最小値を上回り、好ましくは最大値を有する前記配管に沿った位置に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)および/または前記音響信号発生器(26)が流量計(10)に組み込まれ、または、前記流体分配ネットワーク内の少なくとも1つの超音波流量計が第1音響センサ(10)としておよび/または前記音響信号発生器(26)として用いられており、前記流量計は、好ましくは、前記流体分配ネットワークの枝管(4)内に配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2音響センサ(24)は、流量計(10)から独立した音響センサであり、好ましくは、マイクロホンおよび/または加速度計を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第2音響センサ(24)は、前記流体分配ネットワークの分配管(6)に配置され、前記分配管(6)は、好ましくは金属製であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)および前記少なくとも1つの第2音響センサ(24)は、好ましくは無線信号接続(14)を介して評価システム(16)に接続されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記評価システムは、評価結果を視覚化するモバイルデバイス(30)を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの音響信号発生器(26)は、評価システム(16)に接続され、および評価システム(16)によって制御されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの音響信号発生器(26)は、例えば所定のサウンドパターンによって前記少なくとも1つの音響信号発生器(26)を識別する音響信号を発生することを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの音響信号発生器(26)は、第2音響センサ(24)を配置する必要性を評価した後に前記流体分配ネットワークから取り外されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの音響信号発生器(26)は、前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)および前記少なくとも1つの第2音響センサ(24)によって検出可能な周波数範囲の音響信号を発生することを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの音響信号発生器(26)は、ホワイトノイズ信号を発生し、および/または10Hzから2kHzまでの周波数範囲の信号を発生することを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記音響信号は、前記少なくとも1つの音響信号発生器(26)によって30秒から1分間発生されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの第1音響センサ(10)、前記少なくとも1つの第2音響センサ(24)、および/または前記少なくとも1つの音響信号発生器(26)は、バッテリ駆動であることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体分配ネットワーク、特に、液体分配ネットワークに音響漏れ検出システム(acoustic leak detection system)を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音響漏れ検出システムとして液体分配ネットワークに音響センサを配置することが知られている。特に、発生するノイズに基づいて液体分配ネットワークの配管における漏れを検出するために、液体分配ネットワークの主分配管に音響センサを配置することが知られている。音響センサを設置する際、好ましくは、分配ネットワーク全体を監視できるようにセンサの位置を最適化し、必要な音響センサの数を最小限にすることが課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、流体分配ネットワーク、特に、液体分配ネットワークに音響漏れ検出システムを設置する方法を提供することであり、これにより、一方では必要なセンサの数を最小限に抑えることが可能となり、他方では分配ネットワーク全体を確実に監視して漏れの可能性を検出することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載された特徴を有する方法によって達成される。好ましい実施形態は、従属項、以下の説明、および添付の図面に明示される。
【0005】
本発明による方法は、流体分配ネットワーク、特に、配水ネットワークまたは熱分配ネットワークのような液体分配ネットワークに音響漏れ検出システムを設置するために用いられる。分配ネットワークは、流体または液体を分配するために複数の配管によって構成されている。好ましくは、分配ネットワークは、主分配管と、分岐分配管と、戸建て住宅などの単一の消費ポイントに接続する枝管(分岐管ということもある。)と、を含む。
【0006】
本方法によると、少なくとも1つの第1音響センサが分配ネットワークに配置される。音響センサは、特に、音響漏れ検出に適した音響センサであり、漏れによって発生するノイズを検出するために設けられる。特に、かかるセンサは、漏れによって発生するノイズが属することが予想される周波数範囲のノイズを検出することができる。このような第1音響センサは、好ましくは、分配ネットワークの配管にまたは配管に接続された構成要素もしくは装置に直接取り付けられるか、または、そのような構成要素もしくは装置に組み込まれ得る。こうして、好ましくは、少なくとも1つの第1音響センサは、配管の壁を介して伝達されるノイズおよび/または配管を流れる液体の内部で伝達されるノイズが少なくとも1つの第1音響センサによって検出され得るように、配管に接触している。
【0007】
さらに、少なくとも1つの音響信号発生器が、分配ネットワークにおける少なくとも1つの第1音響センサから離れた位置、すなわち、配管の長さに沿って離れた位置に配置される。信号発生器は、信号発生器により発生される音響信号が配管および分配ネットワーク内の液体を介して伝達されるように、配管に配置される。次のステップでは、音響信号発生器によって音響信号が発生され、音響信号は、前記少なくとも1つの第1音響センサによって検出可能な周波数範囲内にあり、すなわち、好ましくは、検出されるべき漏れに特徴的な周波数範囲内にある。音響信号発生器は、好ましくは、増幅器およびラウドスピーカーを有する電気信号発振器を含む。次のステップでは、少なくとも1つの第1音響センサが、そのような発生された音響信号、すなわち、音響信号発生器によって発生された音響信号を検出するかどうかが評価される。音響信号発生器からの上記のような音響信号が少なくとも1つの第1音響センサによって検出できない場合、そのことは、音響信号発生器が、分配ネットワークの配管に沿って測定されたとき、第1音響センサから離れすぎて配置されていることを示している。したがって、音響信号発生器が配置された領域で発生する漏れは、少なくとも1つの第1音響センサによって検出されない。そのため、本発明によれば、少なくとも1つの第2音響センサが、分配ネットワークにおいて、分配ネットワークの配管の長さに沿って測定されたときに、音響信号を受信していない少なくとも1つの第1音響センサと音響信号発生器との間にある位置に配置される。少なくとも1つの第2音響センサは、音響信号発生器の位置からあまり離れないように配置される。これは、分配ネットワークの配管に沿って見たとき、少なくとも1つの第2音響センサが第1音響センサよりも音響信号発生器の近くに配置されることを意味する。少なくとも1つの第2音響センサを分配ネットワークにおける上記のような位置に配置することにより、分配ネットワーク内における音響の死角が減少されまたは回避される。それは、分配ネットワークにおけるどの位置での漏れから発生する音であっても、少なくとも1つの音響センサによって、すなわち、少なくとも第1音響センサおよび/または少なくとも1つの第2音響センサのいずれかによって検出されることが保証されるからである。音響センサは、分配ネットワークに配置された1つまたは複数のセンサによって検出された音またはノイズに基づき分配ネットワークにおける漏れの位置を特定するために、当技術分野で知られている漏れ検出システムまたは漏れ評価システムに接続され得る。このような漏れ検出システムまたは漏れ評価システムは、水道施設のヘッドエンドシステム(HES)内にソフトウェアとして実装されることが好ましい。
【0008】
音響信号発生器によって発生された音響信号が、分配ネットワークに配置された少なくとも1つの第1音響センサよって検出される場合、第2音響センサが、音響信号発生器の位置や音響信号機の位置に近い領域に配置される必要はない。この場合、音響発生器が配置された領域の漏れから発生する音は、少なくとも1つの第1音響センサによって検出され得る。そのため、この領域や、音響発生器の位置と第1音響センサとの間に第2音響センサを配置する必要はない。この方法により、必要な音響センサの数を減らすことが可能である。
【0009】
本方法のある実施形態によれば、音響信号発生器によって音響信号を発生させる前に分配ネットワークに少なくとも1つの第2音響センサが配置される。音響信号が少なくとも1つの第1音響センサまたは少なくとも1つの第2音響センサによって検出されない場合には、分配ネットワークにおける位置であって、分配ネットワークに配置された少なくとも1つの第1音響センサまでの距離および前記少なくとも1つの第2音響センサまでの距離よりも音響信号発生器の位置から配管に沿った距離が短い位置に、少なくとも1つのさらなる第2音響センサが配置される。これは、分配ネットワークの配管の延びに沿って見たとき、少なくとも1つのさらなる第2音響センサが、他の音響センサの位置の近くに配置されることを意味する。本方法のこの実施形態により、システム内の漏れから発生するノイズが分配ネットワーク内の第1音響センサまたは第2音響センサによって検出されることが保証され得る。さらなる音響センサの配置によって除去することが可能な残りの死角を発見するために、分配ネットワークに既に配置されている第1音響センサおよび第2音響センサの両方が使用され得る。すなわち、音響信号発生器からの音響信号が、分配ネットワークに既に配置されている第1音響センサまたは第2音響センサによって受信されるかどうかが評価される。
【0010】
好ましくは、少なくとも1つの第1音響センサおよび/または少なくとも1つの第2音響センサによって受信される音響信号の振幅が分配ネットワーク内におけるさらなる第2音響センサの最適な位置を決定するために評価される。確実な漏れ検出が保証されるためには、センサによって例えば少なくとも最小振幅が検出される必要がある。好ましくは、少なくとも1つの第2音響センサまたはさらなる第2音響センサは、配管に沿った位置であって、同位置に配置された信号発生器により出力されて少なくとも1つの第1音響センサによって受信される音響信号の振幅が、予め設定された最小値を上回る位置に、好ましくは、最大値に達するかまたは最大値に近くなる位置に配置される。例えば、信号発生器は様々な位置に配置可能であり、それぞれ異なるセンサによって受信される音響信号の振幅が信号発生器の様々な位置について比較される。そして、次のステップにおいては、さらなる第2音響センサが最適な位置に配置され得る。最適な位置は、例えば、1つまたは複数のセンサが予め設定された最小値を上回る信号、さらに好ましくは、最大振幅または最大振幅に近い振幅を検出する信号発生器の位置である。好ましくは、それぞれの位置での漏れを確実に検出するため、少なくとも予め設定された最小振幅がセンサによって検出される必要がある。
【0011】
少なくとも1つの第1音響センサおよび/または音響信号発生器は、流量計に組み込まれてもよいし、あるいは、流体分配ネットワーク内の少なくとも1つの超音波流量計が第1音響センサとしておよび/または音響発生器として使用されてもよく、流量計は、好ましくは、流体分配ネットワークの枝管内に配置される。これは、特に、戸建て住宅のような消費ポイントに接続する枝管であり得る。本方法のこの実施形態によれば、流体消費を検出および計測するために分配ネットワークに配置された流量計が、さらに漏れ検出にも使用され得る。この目的のために、ノイズ検出のための追加の検出素子が流量計に組み込まれ、および/または、流量検出に使用される超音波センサがノイズ検出のためにも使用され得る。分配ネットワークにおける枝管は、プラスチック製のパイプでもよく、第1音響センサは、これらの枝管、特にプラスチック製の枝管を介して伝導されるノイズを検出するように最適化されてもよい。
【0012】
漏れ検出のための好ましい実施形態によれば、流体分配ネットワークに別個に配置された第2音響センサに加えて、流量計内部の上記のセンサが使用される。流体分配ネットワークにおいて、分配ネットワーク内に配置されたすべての流量計がノイズ検出のために、すなわち、第1音響センサとして使用され得る。あるいは、特定の数の流量計のみにそのようなノイズ検出機能が設けられ、当該流量計を上述した第1音響センサとして使用することも可能である。
【0013】
少なくとも1つの第2音響センサは、好ましくは、流量計とは独立した音響センサであり、好ましくは、マイクロホンまたは加速度計を有する。特に、第2音響センサは、ノイズ検出のみを目的として設けられた独立した装置、いわゆる、データロガーであってもよい。好ましくは、このような少なくとも1つの第2音響センサは、分配ネットワークの分配配管の壁、特に分配ネットワークの主分配管の壁に配置されるか、または、壁を通して流体中に挿入される。後者の場合は、ハイドロホン(水管検漏器)が使用され得る。このような分配配管は、例えば金属製であり得る。分配配管は、そこからさらに分岐する配管であってもよい。少なくとも1つの第2音響センサは、好ましくは、バルブなどのさらなる装置が配管に配置される位置で配管に接続される。これにより、少なくとも1つの第2音響センサを分配ネットワークの配管に配置するために、既存のアクセスポイントを使用することが可能になる。
【0014】
少なくとも1つの第1音響センサおよび少なくとも1つの第2音響センサは、好ましくは、無線信号接続を介して分析システムまたは評価システムに接続される。評価システムは、記述された評価を実行する中央計算装置を含んでもよい。評価システムは、さらに、現場でのオペレータによる制御を可能にするモバイルデバイスまたはハンドヘルドデバイスを含んでもよい。このようなモバイルデバイスは、中央評価装置または中央コンピューティング装置に接続されてもよい。あるいは、モバイルデバイスは、音響センサと直接通信して評価を直接実行してもよい。
【0015】
好ましくは、評価システムは、特にディスプレイ上で評価結果を視覚化するモバイルデバイスを含む。このようなモバイルデバイスは現場のオペレータによって使用され得る。好ましくは、ディスプレイ上の視覚化は、分配ネットワーク全体を、例えば、分配ネットワーク内の全てのセンサおよび音響信号発生器の位置を示すマップの形で示す。このような視覚化は、オペレータがシステム内において第2音響センサを配置する最適な位置を見つけて死角を回避するのに役立ち、同時に、必要な第2音響センサの数を最小限に抑えるのに役立つ。
【0016】
ある解決策においては、少なくとも1つの音響信号発生器が、評価システム、特に、中央評価システムに接続され、および制御され得る。このような接続により、評価システムは、音響信号発生器または音響発生器による音響信号の出力をそれぞれ開始することができる。さらに、評価システムまたは評価装置は、システム内に既に配置されている1つまたは複数の第1音響センサおよび/または第2音響センサから直接フィードバックを受信して、音響信号発生器により出力された音響信号をどのセンサが受信できるかを評価することが可能である。そして、その結果がディスプレイ上でオペレータに提示され、および/または、分配ネットワーク全体における音響漏れの検出を可能にするために分配ネットワーク内のどのポイントにさらなる音響センサ、特に第2音響センサが配置されるべきかを示す自動評価が実行され得る。このことは、本実施形態によれば、少なくとも1つの音響信号発生器および音響センサ、特に、システム内に配置された第1音響センサが中央評価システムまたは評価装置によって同期化され得ることを意味する。しかし、別の解決策においては、このような同期化を回避することが可能である。非同期の音響信号発生器を使用する実施形態では、信号発生器または音響発生器は、評価システムまたはオペレータのいずれかによって設置され、および起動され得る。その後、信号発生器は、音響信号または音響を発生させるために、より長い期間、例えば1日または数日間、例えば最大10日間、放置され得る。
【0017】
さらなるある実施形態によれば、少なくとも1つの音響信号発生器は、自身(音響信号発生器)を識別するまたは特徴付ける音響信号、すなわち、音響信号発生器に特有の音響信号を発生してもよい。例えば、信号発生器は、信号発生器に特有であり、音響センサおよび/または音響センサからの信号を評価する評価装置や制御装置によって識別可能な所定のサウンドパターンを生成してもよい。例えば、サウンドパターンは、交互に切り替わる音の発生フェーズと無音フェーズとで構成されてもよい。一例として、所定の継続時間を有する音の発生フェーズとそれに続く所定の無音フェーズなどである。例えば、音響発生器は、6時間ノイズを発生し、その後、3時間の無音になり、再び6時間ノイズを発生させてもよい。このようなサウンドパターンは、信号発生器との同期を必要とすることなく、音響センサによって検出され得る。サウンドパターンは、システム内の通常のノイズと明確に区別され得るように、つまり、適切な評価システムによって識別できるように選択される。パターンの検出または識別は、音響センサ、好ましくは音響センサとして機能する流量計において直接実行され得る。あるいは、またはそれに加えて、音響発生器によって発生された音響信号のサウンドパターンまたは特性は、外部評価システム、特に中央評価システムによって検出されてもよい。音響センサ、特に、流量計によって受信された音響信号または音響信号を表す信号は、それぞれ、例えば評価装置へと転送可能であり、音響発生器に特有の信号の検出が評価装置により実行され得る。つまり、それぞれの分析は、ヘッドエンドシステムで行われ得る。この方法によると、センサと信号発生器の同期が不要なため、システムの簡素化が可能である。
【0018】
分析または評価が分配ネットワークにさらなる第2音響センサを配置する必要があることを示す場合、好ましくは、少なくとも1つの第2音響センサが、分配ネットワークの配管に沿って、この評価ステップに使用された音響信号発生器の位置に対する所定距離または計算された距離内の位置に配置される。さらに好ましくは、少なくとも1つの第2音響センサは、配管に沿って、信号発生器と、音響センサ、特に音響信号発生器によって発生した信号を受信できなかった第1音響センサの位置との間に配置される。
【0019】
必要な音響センサを配置するための分配ネットワークの上記分析後、好ましくは、音響信号発生器は流体分配ネットワークから取り外される。したがって、取り外し可能な音響信号発生器が使用されるのが好ましい。音響信号発生器が、分配ネットワークにおいて使用される別の構成要素に、例えば、流量計に組み込まれている場合には、信号発生器は分配ネットワークに残したままでもよい。信号発生器が取り外された場合、漏れ検出のためのさらなる音響センサの必要性を評価するために、分配ネットワークの異なる位置、または別の分配ネットワークにおいて、取り外された信号発生器が使用されてもよい。
【0020】
音響信号発生器は、好ましくは、少なくとも1つの第1音響センサおよび少なくとも1つの第2音響センサによって検出可能な周波数範囲の音響信号を発生し、さらに好ましくは、音響漏れ検出のために使用される周波数範囲の信号を発生する。したがって、さらなる音響センサの必要性を評価するために、漏れ検出のために検出されなければならないノイズの周波数範囲の音響信号が使用される。好ましくは、信号振幅も漏れノイズの振幅に対応するように選択される。
【0021】
音響信号発生器は、ホワイトノイズ信号および/または10Hzと2kHzの間の周波数範囲の信号を発生してもよい。これは好ましい周波数帯域である。しかし、本発明は、この周波数帯域に限定されない。発生される信号は、単一周波数、例えば、1kHzの信号であってもよい。ただし、予期せぬ共振、カップリング現象、または配管壁による音響減衰によって、このような狭帯域信号が失われる可能性がある。特にプラスチック製のパイプは減衰が大きい。したがって、発生される信号は、好ましくは10Hzから2kHzの間の周波数範囲で選択された複数の周波数成分を含むべきである。
【0022】
少なくとも1つの音響信号発生器は、音響信号を継続的に出力してもよい。しかし、ある実施形態によれば、音響信号は、信号発生器によって、所定の時間、例えば30秒から1分間発生される。信号発生器による信号出力の中断は、音響センサおよび/または接続された評価装置による分析または信号検出をそれぞれ向上させる可能性がある。
【0023】
少なくとも1つの第1音響センサ、少なくとも1つの第2音響センサ、および/または少なくとも1つの音響信号発生器は、バッテリ駆動であってもよい。これにより、外部電源が不要となるため、分配ネットワークへの設置が簡素化される。特に、流量計または流量消費計が音響センサとして使用される場合、これらの流量計はバッテリ駆動であることが好ましい。他方、この場合には消費電力を考慮して方法を最適化する必要がある。この方法は、好ましくは、バッテリの寿命によって流量計の寿命が短くならないように、電力消費を最小限に抑えて実施されるべきである。前述したように、流量計または超音波流量計が音響信号発生器としても機能する特定の場合、例えば、ラウドスピーカーが組み込まれている場合には、バッテリは通常の流量計で使用されるものよりも大型であるもの、例えば、大型のDセルリチウムバッテリである必要がある。好ましくは、分配ネットワークにおいて、10戸から50戸に付き1台の大型バッテリ信号発生流量計で十分であると推定される。
【0024】
さらに好ましい選択肢によれば、さらなる音響センサの必要性の評価または分析の間、他の理由、すなわち、システムにおけるさらなる集合体(アグリゲイト)によってシステムまたは分配ネットワークで発生するノイズの変化を低減または回避するため、配水ネットワークを安定した状態にすることが好ましい。例えば、システム内のポンプやバルブからノイズが発生する場合がある。この場合、このようなポンプやバルブを安定した状態に置くことが好ましい。さらに、追加的または代替的に、分配ネットワーク内のノイズ源が最大ノイズを発生する動作状態になる可能性がある。例えば、ポンプが、高流量ノイズおよび/またはポンプノイズが発生する全負荷モードになった場合である。最大ノイズレベルで追加の音響センサの必要性についてシステムを分析すると、高ノイズでも漏れ検出が可能であることが保証され得る。ノイズレベルが高いときに音響センサが音響信号発生器から発生した音響信号を検出することができる場合には、それほど多くない流量レベルでもノイズを検出することが可能になる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、音響センサとして機能するように構成された流量計が分配ネットワークに配置される。システム内の全ての流量計に音響ノイズを検出する機能を設けることが可能である。あるいは、音響漏れ検出用の流量計は、システムの重要なポイントにのみ配置される。このような特別な流量計を使用することで、分配ネットワークにおけるさらなる第2音響センサを避け、またはその数を減らすことができる。好ましくは、これらの流量計は、主に、流体分配ネットワークまたは液体分配ネットワークにおける漏れ検出に使用される。したがって、好ましくは、最初に音響漏れ検出特性を有する流量計が分配ネットワーク内に配置され、次に、上記の方法が実行され、音響漏れ検出のために分配ネットワーク全体をカバーするにはさらにどの位置に追加の第2音響センサが必要であるかが評価される。この方法により、必要な追加の第2音響センサの数を最小限に抑えることができ、特別なセンサの代わりに可能な限り音響漏れ検出特性を有する流量計を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による配水ネットワークを示す図である。
【
図2】第1音響センサとして機能する流量計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して例によって本発明を説明する。
図1は、様々な消費ポイント(ここでは住宅2)に配水するための配水ネットワークの一例を示している。住宅2は、主分配管6に繋がる分岐配管または枝管4を介して接続されている。主分配管6内の水、したがって、配水ネットワーク内の水は、ポンプ装置8によって送られる。各消費ポイント、すなわち、各住宅2には、水の消費量を計測するために流量計10が設けられている。流量計10は、超音波センサにより流量を検出する超音波流量計であってもよい。流量計10は、無線通信を装備している。すなわち、流量計10は、無線通信モジュール12を含む。無線通信モジュール12は、通信ネットワーク14を介して、流量計10を制御装置または評価装置16、すなわち、ヘッドエンドシステムに接続する。さらに、流量計は、例えばハンドヘルドデバイスと通信するための近距離無線通信技術(NFC)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、流量計10は、双方向通信が可能であり得る。
【0028】
流量計10は、流量センサを、この例では筐体(ハウジング)20内に超音波流量センサ18を含む。加えてまたはその代わりに、筐体20は、別個のノイズセンサまたは音響センサ22を含んでもよい。超音波センサ18または音響センサ22を使用することにより、流量計10は、枝管4内の音響ノイズを検出する第1音響センサとして機能することができる。検出されたノイズまたは検出されたノイズに由来する信号は、無線通信モジュール12を介して制御装置または評価装置16に送られる。これは、好ましくは、計量結果、すなわち、計量された水の消費量を中央制御装置16に送るために使用されるのと同じ無線通信リンクである。流量計10内のノイズ検出機能は、通常、プラスチック材料で作られることが多い細いパイプである枝管4によって伝達されるノイズを検出するように最適化され得る。第1音響センサとして機能する流量計10は、配水ネットワーク内を聴取して、発生しているノイズに基づいて分配ネットワーク内の、すなわち、住宅2の外の漏れを検出することを可能にする。したがって、ノイズ検出機能を有する流量計10は、分配ネットワークにおける漏れ検出のための別個の音響センサの代わりに使用され、すなわち、漏れ検出のための別個の音響センサの必要数を減少させることが可能である。漏れ検出のために、流体分配ネットワーク全体が流量計10の形態のこれらの第1音響センサによってカバーされ得れば理想的である。しかし、通常、大規模で複雑な流体分配ネットワークにおいてはネットワーク全体をカバーすることは不可能である。すなわち、枝管4の端部、つまり、住宅2内の消費ポイントに配置された流量計10によってノイズが検出できない死角または領域が残ったままになる。
【0029】
これらの領域には、さらなる音響センサが、すなわち、第2音響センサ24が配置される。これらの第2音響センサ24は、ノイズ検出のみを目的として構成され、例えば、マイクロホンを含んでもよい。この例では、ポイントAに第2音響センサ24が配置されている。第2音響センサ24は、無線通信モジュールを備えており、通信ネットワーク14と制御装置または評価装置16とに接続可能である。したがって、第2音響センサ24によって検出されたノイズ信号、より正確には音響信号、またはそれらの信号から得られた情報は、制御装置または評価装置16に送られて、分配ネットワーク内の漏れ検出のために使用される。これらの第2音響センサ24は、ノイズ検出によって分配ネットワーク内部の漏れの位置を特定するために、流量計10のノイズ検出特性と関連して使用される。漏れに基づいて発生する特徴的な音響信号は、配管を介してセンサ10、24に送られ、または導かれ、第1音響センサ(流量計10)および第2音響センサ24によって検出される。どのセンサが漏れに関するそれぞれのノイズ特性を受信または聴取するかを考慮することにより、漏れの位置を特定することが可能である。
【0030】
分配ネットワークに死角ができないように第2音響センサ24を配置すべき位置を見つけるために、音響信号発生器26が使用される。音響信号発生器26は、例えば、オペレータ24によって、オペレータの見解において漏れ検出のために重要である可能性がある位置に配置される。好ましくは、音響信号発生器26は、配管に、この例では主分配管6のアクセス可能な位置、例えば、分配ネットワーク内のバルブの位置に配置される。この例において、音響信号発生器26は、ポイントDに配置されている。音響信号発生器26は、音響漏れ検出のために考慮された周波数範囲の音響信号を出力する。次いで、オペレータ28は、どの第1音響センサ、すなわち、どの流量計10が音響信号発生器26により出力された音響信号を検出するかを分析する。この例におけるオペレータ28は、ハンドヘルドデバイス30、例えば、スマートフォン上のソフトウェアアプリケーションを使用する。ハンドヘルドデバイス30は、無線通信モジュールを有し、流量計10の通信モジュール12、音響信号発生器26との直接無線通信、および/または通信ネットワーク14を介したセンサ制御装置または評価装置16との無線通信が可能である。オペレータ28は、音響信号発生器26との直接通信により、または制御装置16を介して、音響信号発生器26による音響信号の出力を自ら直接的に開始させることができる。この場合、音響信号発生器26は、中央制御装置16との通信を可能にする通信モジュールを含み得る。
【0031】
音響信号発生器26によって生成された音響信号が流量計10のうちの少なくとも1つによって受信可能である場合には、ポイントDにさらなる第2音響センサ24を配置する必要はない。しかし、分配ネットワーク内に既に配置されている流量計10および第2音響センサ24のいずれも、音響信号発生器26によって出力された音響信号を検出できない場合には、オペレータ28は、ポイントDにさらなる第2音響センサ24を配置することを決定できる。この方法は、分配ネットワーク内のさらなるポイント、例えば、
図1に示されるポイントBやポイントCに対して実施され得る。
【0032】
ハンドヘルドデバイス30は、ディスプレイ32を含み、ディスプレイ32は、オペレータ28に対して分配ネットワーク全体を視覚化することが可能であり、特に、すべての音響センサ、すなわち、第1音響センサとして機能する流量計10と、第2音響センサ24とを表示することができる。ディスプレイ32は、どのセンサ10が音響信号発生器26によって発生された音響信号を受信するかを直接視覚化することができる。
【0033】
上記のような手動評価の代わりに、ハンドヘルドデバイス30および/または中央評価装置16内のソフトウェアアプリケーションが、どの位置に第2音響センサ24を配置しなければならないかを評価してもよい。中央制御装置16は、例えば、ハンドヘルドデバイス30を介して、評価プロセスのために音響信号発生器26をどの位置に配置すべきかをオペレータ28に知らせてもよい。
【0034】
評価中の音響漏れ、追加の第2音響センサ24が必要かどうか、どこに追加の第2音響センサ24が必要であるかの検出をさらに向上させるため、好ましくは、ポンプ装置8および場合によってはさらなる装置が、分配ネットワーク内で最大ノイズを発生する動作状態に設定される。これにより、このような動作状態においても音響漏れ検出が確実に行われることが保証される。
【0035】
上記の方法は、主に漏れ検出モジュールを有する流量計10を使用することにより、分配ネットワーク全体における漏れ検出を行うことを可能にし、分配ネットワークにおける必要な位置、すなわち、流量計10が聴取することができない位置または領域には、追加の第2音響センサ24を必要に応じて配置するだけでよい。したがって、必要な第2音響センサ24の数を最小限に抑えることができ、音響漏れ検出の本質的な要素が、消費ポイントで必要とされる流量計10によって提供され得る。
【符号の説明】
【0036】
2 住宅、消費ポイント
4 枝管(分岐管)
6 主分配管
8 ポンプ装置
10 流量計、第1音響センサ
12 無線通信モジュール
14 通信ネットワーク
16 制御装置または評価装置
18 流量センサ
20 ハウジング
22 音響センサ
24 第2音響センサ
26 音響信号発生器
28 オペレータ
30 ハンドヘルドデバイス
32 ディスプレイ
A,B,C,D 流体分配ネットワーク内の位置
【国際調査報告】