(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】高い比較トラッキング指数を有するポリカーボネート組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240326BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08L69/00
C08G64/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565350
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2022060327
(87)【国際公開番号】W WO2022228952
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/089939
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レン リリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン シゥン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ アーロン
(72)【発明者】
【氏名】グオ ヴィヴィアン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002CG011
4J002CG012
4J002FD01
4J002FD02
4J002FD03
4J002FD09
4J002FD12
4J002FD13
4J002FD16
4J002FD17
4J002FD201
4J002FD202
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
4J002HA09
4J029AA09
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD09
4J029AD10
4J029AE01
4J029AE04
4J029BB12A
4J029BB13A
4J029HA01
4J029HC00
(57)【要約】
本発明は、組成物の総重量に対して、a)60重量%~95重量%のコポリカーボネートと、b)5重量%~40重量%のホモポリカーボネートとを含むポリカーボネート組成物であって、ホモポリカーボネートの重量平均分子量が24000g/mol~28000g/molの範囲内であり、組成物中のホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの総量が組成物の総重量に対して96重量%~100重量%である、ポリカーボネート組成物に関する。本発明はまた、この組成物から作られた成形品に関する。本発明によるポリカーボネート組成物は、高い比較トラッキング指数を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート組成物であって、前記組成物の総重量に対して:
a)60重量%~95重量%のコポリカーボネートであって、
i)42mol%~90mol%の式(1):
【化1】
(式中、
*は、式(1)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、水素又はC
1~C
4アルキルであり、
R
2は、それぞれ独立して、C
1~C
4アルキルであり、
nは、0、1、2、又は3である)の単位と、
ii)10mol%~58mol%の式(2):
【化2】
(式中、
*は、式(2)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
R
3は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキルであり、かつ、
R
4は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキルである)の単位と、
(ここで、mol%は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に計算される)を含む、コポリカーボネートと、
b)5重量%~40重量%の前記定義の式(2)の単位を含むホモポリカーボネートと、
を含み、ここで、
前記ホモポリカーボネートの重量平均分子量は、24000g/mol~28000g/molの範囲内であり、
前記ポリカーボネート組成物中の前記式(1)の単位の重量含有量は、前記組成物の総重量に対して42重量%~80重量%であり、かつ、
前記組成物中の前記ホモポリカーボネート及び前記コポリカーボネートの総量は、前記組成物の総重量に対して96重量%~100重量%である、ポリカーボネート組成物。
【請求項2】
前記コポリカーボネートは、式(1’):
【化3】
(式中、
R
1は、それぞれ独立して、水素又はC
1~C
4-アルキルを表し、
R
2は、それぞれ独立して、C
1~C
4-アルキルを表し、
nは、0、1、2、又は3を表す)のジフェノール及び式(2’):
【化4】
(式中、
R
3は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキルを表し、
R
4は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキルを表す)のジフェノールを除くジフェノールから誘導される単位を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コポリカーボネートは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)及びビスフェノールAを除くジフェノールから誘導される単位を含まない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記コポリカーボネート中の前記式(1)の単位のモル含有量は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に44mol%~86mol%、またより好ましくは44mol%~80mol%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記コポリカーボネートは、ブロックコポリカーボネート及びランダムコポリカーボネートから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記コポリカーボネートは、ポリカーボネート標準を使用して塩化メチレン中で25℃にてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された16000g/mol~40000g/mol、好ましくは17000g/mol~32000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記コポリカーボネートは、前記組成物の総重量に対して、60重量%~95重量%、より好ましくは65重量%~95重量%、更により好ましくは70重量%~95重量%の範囲の量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ホモポリカーボネートは、ビスフェノールAから誘導される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ホモポリカーボネートは、本発明による組成物の総重量に対して、5重量%~40重量%、好ましくは5重量%~35重量%、より好ましくは5重量%~30重量%の範囲の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
充填剤、カーボンブラック、UV安定剤、IR安定剤、熱安定剤、帯電防止剤及び顔料、着色剤、滑沢剤、離型剤(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)、モノステアリン酸グリセリン(GMS))、酸化防止剤、流動性向上剤、並びに防炎剤から選択される1種以上の添加剤を更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、i)ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)及びビスフェノールAから誘導される単位を含むコポリカーボネートと、ii)ビスフェノールAから誘導される単位を含むホモポリカーボネートとからなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物から作られた成形品。
【請求項13】
請求項12に記載の成形品を作製する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリカーボネート組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形、又は熱成形することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート(PC)組成物に関する。特に、本発明は、高い比較トラッキング指数を有するポリカーボネート組成物、及びそれから作られた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、優れた光学的特性、機械的特性、及び耐熱特性、並びにその優れた熱加工能のため、自動車分野、電気分野、及び電子分野等の多岐にわたる用途に広く使用されている。
【0003】
コポリカーボネートは、特別な種類のポリカーボネートとして、電気分野及び電子分野において、照明のハウジング材料として、また特定の熱的特性及び機械的特性が必要とされる用途、例えばヘアドライヤー、自動車分野における用途、プラスチックカバー、拡散スクリーン又は導波エレメント、及びランプカバー又はランプベゼルにおいて広く使用されている。
【0004】
ポリカーボネートの耐熱変形性は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)を基礎とする特定の構成単位をポリカーボネート主鎖に導入することによって改善されることが知られている。これにより得られるコポリカーボネート(いわゆる高Tgポリカーボネート)は高価である。さらに、この種のコポリカーボネートの比較的高いガラス転移温度(Tg)のため、その流動性は高くない。
【0005】
近年、電気的利用及び電子的利用の分野においては、電子デバイス及び電気デバイスを小型化する傾向が見られる。これにより、プラスチック製のハウジング又は部品を含む電気デバイスのより複雑でコンパクトな設計の採用が進められている。したがって、エレクトロニクス及び電気的利用の分野においては、比較トラッキング指数(CTI)等のプラスチック材料の安全性関連特性が必要とされた。
【0006】
例えば、プラスチック材料には、高いCTIランク(例えば、IEC60112:2011に従って決定されたCTI=600V)が必要とされる。しかしながら、標準的なポリカーボネート樹脂についての比較トラッキング指数は、わずか250V付近であるか、又はそれさえも下回ることがよく知られている。種類は少ないが、PC/ABS又はPC/PBTの混和物は、完成した混和物のCTI値を多かれ少なかれ高めることが可能である。例えば、市販のPC/ABSアロイは一般に、標準的なビスフェノールAポリカーボネート(約250VのCTI)よりも少し高い275V~350Vの範囲内のCTIを示す。
【0007】
特許文献1は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、及び難燃剤を含む高いCTIランクを有する組成物を開示している。しかしながら、特許文献1において開示される組成物は光学的品質を落とした。これにより、そのような材料の潜在的な利用が大幅に制限される。
【0008】
したがって、良好な光学的品質、高い耐熱性、及び良好な流動性等のポリカーボネート樹脂の優れた特性を維持しながら、ポリカーボネート組成物のCTIを高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第102070886号
【発明の概要】
【0010】
したがって、本出願の1つの目的は、比較トラッキング指数、光学的品質、耐熱性、及び流動性の良好な組合せを有するポリカーボネート組成物を提供することである。
【0011】
本出願のもう1つの目的は、比較トラッキング指数、光学的品質、及び耐熱性の良好な組合せを有する物品を提供することである。
【0012】
第1の態様において、本発明は、ポリカーボネート組成物であって、組成物の総重量に対して:
a)60重量%~95重量%のコポリカーボネートであって、
i)42mol%~90mol%の式(1):
【化1】
(式中、
*は、式(1)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、水素又はC
1~C
4アルキルであり、
R
2は、それぞれ独立して、C
1~C
4アルキルであり、
nは、0、1、2、又は3である)の単位と、
ii)10mol%~58mol%の式(2):
【化2】
(式中、
*は、式(2)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
R
3は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキルであり、かつ、
R
4は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキルである)の単位と、
(ここで、mol%は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に計算される)を含む、コポリカーボネートと、
b)5重量%~40重量%の上記定義の式(2)の単位を含むホモポリカーボネートと、
を含み、ここで、
ホモポリカーボネートの重量平均分子量は、24000g/mol~28000g/molの範囲内であり、
ポリカーボネート組成物中の式(1)の単位の重量含有量は、組成物の総重量に対して42重量%~80重量%であり、かつ、
組成物中のホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの総量は、組成物の総重量に対して96重量%~100重量%である、ポリカーボネート組成物を提供する。
【0013】
本明細書において使用される場合、ポリカーボネート組成物中の式(1)の単位の重量含有量(C1/C/W)は、以下のように計算される:
C1/C/W=(C1/CO/M×Mw1)×Cco/c/w/(C1/CO/M×Mw1’+C2/CO/M×Mw2)
(式中、
C1/C/Wは、ポリカーボネート組成物中の式(1)の単位の重量含有量を表し、
C1/CO/Mは、コポリカーボネート中の式(1)の単位のモル含有量を表し、
Mw1は、式(1)の単位の分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、
Mw1’は、式(1)の単位及び-C=O-の総分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、
C2/CO/Mは、コポリカーボネート中の式(2)の単位のモル含有量を表し、
Mw2は、式(2)の単位の分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、かつ、
Cco/c/wは、ポリカーボネート組成物中のコポリカーボネートの重量含有量を表す)。
【0014】
本発明者らは、予想外にも、本発明による組成物が、IEC60112:2011に従って決定された最大600Vの比較トラッキング指数を有し、3mmの厚さを有する上記組成物から作製されたシートに対してASTM D1003:(2013)に従って決定された390nm~780nmの波長を有する可視光に対する86%を上回る透過率、ISO 1133:2011に従って330℃、1.2kgで決定された9cm3/10分を上回るMVR、及びISO 306:(2013)に従って決定された175℃を上回るビカット軟化温度を示すことを見出した。
【0015】
比較トラッキング指数(CTI)は、IEC60112:2011に従って決定される、5個の試験片が50滴滴下の試験期間にトラッキング破壊及び持続炎を発生することなく耐える最高電圧の数値を意味する。
【0016】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様によるポリカーボネート組成物から作られた成形品を提供する。
【0017】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様によるポリカーボネート組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形、又は熱成形することを含む、上述の成形品を作製する方法を提供する。
【0018】
以下の詳細な説明及び実施例を読めば、本発明の他の主題、並びに特質、態様、及び利点が更により明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
以下では、別段の指示がない限り、値の範囲、特に「…から…の間」及び「…~…」という表現において、その境界はこの範囲内に含まれる。
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書における用語の定義が、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解される意味と対立する場合、本明細書において記載される定義が適用されるものとする。
【0021】
本出願全体を通して、「含む(comprising)」という用語は、全ての具体的に述べられた特徴だけでなく、任意の、追加の、未特定の特徴も包含すると解釈されるべきである。本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」という用語の使用は、具体的に述べられた特徴以外の特徴が存在しない実施形態(すなわち、「からなる(consisting of)」)も表す。
【0022】
別段の特定がない限り、詳細な説明及び特許請求の範囲において使用される成分の量等を表す全ての数値は、「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。
【0023】
成分A
第1の態様によれば、本発明によるポリカーボネート組成物はコポリカーボネートを含む。
【0024】
本出願において、コポリカーボネートは、
i)42mol%~90mol%の式(1):
【化3】
(式中、
*は、式(1)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
R
1は、それぞれ独立して、水素又はC
1~C
4アルキルであり、
R
2は、それぞれ独立して、C
1~C
4アルキルであり、
nは、0、1、2、又は3である)の単位と、
ii)10mol%~58mol%の式(2):
【化4】
(式中、
*は、式(2)がポリマー鎖に接続される位置を示し、
R
3は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキル、好ましくはH、直鎖状又は分岐状のC
1~C
4アルキルであり、かつ、
R
4は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキル、好ましくは直鎖状又は分岐状のC
1~C
4アルキルである)の単位と、
(ここで、mol%は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に計算される)を含むポリカーボネートを指す。
【0025】
式(1)の単位は、式(1’):
【化5】
(式中、
R
1は、それぞれ独立して、水素又はC
1~C
4-アルキルを表し、
R
2は、それぞれ独立して、C
1~C
4-アルキルを表し、
nは、0、1、2、又は3を表す)のジフェノールから誘導され得る。
【0026】
好ましくは、式(1)の単位は、以下の式(1a):
【化6】
(式中、
*は、式(1a)がポリマー鎖に接続される位置を示す)を有する、すなわち、式(1)の単位は、式(1’a):
【化7】
を有するビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)から誘導される。
【0027】
式(2)の単位は、式(2’):
【化8】
(式中、
R
3は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキルを表し、
R
4は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキルを表す)のジフェノールから誘導され得る。
【0028】
好ましくは、式(2)の単位は、以下の式(2a):
【化9】
(式中、
*は、式(2a)がポリマー鎖に接続される位置を示す)を有する、すなわち、式(2)の単位は、ビスフェノールA、すなわち、式(2’a):
【化10】
のジフェノールから誘導される。
【0029】
好ましくは、コポリカーボネートは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)及びビスフェノールAから誘導される単位を含む。
【0030】
好ましくは、コポリカーボネートは、式(1’)のジフェノール及び式(2’)のジフェノールを除くジフェノールから誘導される繰返単位を含まない。
【0031】
好ましくは、コポリカーボネートは、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)及びビスフェノールAを除くジフェノールから誘導される繰返単位を含まない。
【0032】
式(1’)及び式(2’)のジフェノールは既知であり、文献(例えば、H. J. Buysch et al., Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, VCH, New York 1991, 5th Ed., Vol. 19, p. 348)から知られる方法によって作製され得る。
【0033】
コポリカーボネート中の式(1)の単位のモル含有量は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に42mol%~90mol%、より好ましくは44mol%~86mol%、またより好ましくは44mol%~80mol%である。
【0034】
コポリカーボネート中の式(2)の単位のモル含有量は、式(1)及び式(2)の単位の総モル数を基準に10mol%~58mol%、より好ましくは14mol%~56mol%、またより好ましくは20mol%~56mol%である。
【0035】
本発明による組成物において使用されるコポリカーボネートは市販されているか、又は当該技術分野において知られる方法によって製造され得る。
【0036】
例えば、本発明による組成物において使用されるコポリカーボネートは、界面法によって製造され得る。特に、式(1)及び(2)のジフェノール並びに任意の分岐剤をアルカリ水溶液中に溶解し、アルカリ水溶液、有機溶剤、及び触媒、好ましくはアミン化合物を含む2相混合物中で、任意に溶剤中に溶解されたホスゲン等のカーボネート供給源と反応させる。反応手順を多段階法において行うこともできる。
【0037】
このようなコポリカーボネートの作製方法は、原則的に、例えばH. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, Vol. 9, Interscience Publishers, New York 1964, page 33 et seq.、並びにPolymer Reviews, Vol. 10, "Condensation Polymers by Interfacial and Solution Methods", Paul W. Morgan, Interscience Publishers, New York 1965, Chapter VIII, page 325において2相界面法として知られているため、基礎となる条件は当業者によく知られている。
【0038】
アルカリ水溶液中のジフェノールの濃度は、2重量%~25重量%、好ましくは2重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~18重量%、更により好ましくは3重量%~15重量%である。アルカリ水溶液は、水にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が溶解されたものからなる。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。
【0039】
アミン化合物の濃度は、使用されるジフェノールのモル量に対して、0.1mol%~10mol%、好ましくは0.2mol%~8mol%、特に好ましくは0.3mol%~6mol%、より特に好ましくは0.4mol%~5mol%である。
【0040】
カーボネート供給源は、ホスゲン、ジホスゲン、又はトリホスゲン、好ましくはホスゲンである。ホスゲンが使用される場合、任意に溶剤を省いてもよく、ホスゲンを反応混合物に直接通過させてもよい。
【0041】
トリエチルアミン又はN-アルキルピペリジン等の第三級アミンを触媒として使用してもよい。適切な触媒は、トリアルキルアミン及び4-(ジメチルアミノ)ピリジンである。トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、及びN-プロピルピペリジンが特に適している。
【0042】
塩化メチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、若しくはそれらの混合物等のハロゲン化炭化水素、又はトルエン若しくはキシレン等の芳香族炭化水素が有機溶剤として適している。反応温度は-5℃~100℃、好ましくは0℃~80℃、特に好ましくは10℃~70℃、非常に特に好ましくは10℃~60℃であり得る。アルカリ金属塩、アンモニウム化合物又はホスホニウム化合物等の触媒の存在下で溶融物において、ジフェノールと、ジアリールカーボネート、一般的にはジフェニルカーボネートとを反応させる溶融エステル交換法によるコポリカーボネートの作製も可能である。
【0043】
溶融エステル交換法は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science, Vol. 10 (1969)、Chemistry and Physics of Polycarbonates, Polymer Reviews, H. Schnell, Vol. 9, John Wiley and Sons, Inc. (1964)、及び独国特許第1031512号において記載されている。
【0044】
エステル交換法においては、相境界法の場合に既に記載した芳香族ジヒドロキシ化合物を、溶融物において適切な触媒及び任意に更なる添加剤を用いて炭酸ジエステルとエステル交換する。
【0045】
芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを反応させてコポリカーボネートを得ることを、例えば撹拌槽、薄膜蒸発器、流下膜式蒸発器、撹拌槽カスケード、押出機、混練機、単純ディスク反応器(simple disc reactors)及び高粘度ディスク反応器(high-viscosity disc reactors)において回分式に又は好ましくは連続式に行うことができる。
【0046】
好ましくは、コポリカーボネートは、ブロックコポリカーボネート及びランダムコポリカーボネートから選択される。より好ましくは、コポリカーボネートはランダムコポリカーボネートから選択される。
【0047】
好ましくは、コポリカーボネートは、ポリカーボネート標準を使用してUV-IR検出器を用いて塩化メチレン中で25℃にてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された16000g/mol~40000g/mol、好ましくは17000g/mol~32000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0048】
本発明による組成物に適したコポリカーボネートの市販製品についての一例としては、塩化カルボニルとビスフェノールA(BPA)及び3,3,5-トリメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPTMC)との共重合から作られるポリカーボネートコポリマーである、Covestro Polymer社(中国)によりAPEC(商標)の名称で販売されている製品を挙げることができる。
【0049】
好ましくは、コポリカーボネートは、本発明による組成物の総重量に対して、60重量%~95重量%、より好ましくは65重量%~95重量%、更により好ましくは70重量%~95重量%の範囲の量で存在する。
【0050】
成分B
第1の態様によれば、本発明によるポリカーボネート組成物は、式(2)の単位を含むホモポリカーボネートを含む。
【0051】
本出願において、ホモポリカーボネートは、上記で定義された式(2)の単位を含むポリカーボネートを指す。
【0052】
ホモポリカーボネートは、式(2’):
【化11】
(式中、
R
3は、それぞれ独立して、H、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキル、好ましくは直鎖状又は分岐状のC
1~C
6アルキル、より好ましくは直鎖状又は分岐状のC
1~C
4アルキル、更により好ましくはH又はメチルを表し、かつ、
R
4は、それぞれ独立して、直鎖状又は分岐状のC
1~C
10アルキル、好ましくは直鎖状又は分岐状のC
1~C
6アルキル、より好ましくは直鎖状又は分岐状のC
1~C
4アルキル、更により好ましくはメチルを表す)のジフェノールから誘導される。
【0053】
好ましくは、ホモポリカーボネートは、式(2’a):
【化12】
のジフェノール、すなわち、ビスフェノールAから誘導される。
【0054】
本発明による組成物において使用されるホモポリカーボネートは市販されているか、又は当該技術分野において知られる方法によって製造され得る。
【0055】
例えば、ホモポリカーボネートを、成分Aに関して記載された作製方法を参照することによって製造することができる。
【0056】
好ましくは、ホモポリカーボネートは、ポリカーボネート標準を使用してUV-IR検出器を用いて塩化メチレン中で25℃にてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された24000g/mol~28000g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0057】
本発明による組成物において使用するのに適したホモポリカーボネートの市販製品としては、Covestro polymer社(中国)によって販売されるMakrolon(商標)2400及びMakrolon(商標)2600を挙げることができる。
【0058】
好ましくは、ホモポリカーボネートは、本発明による組成物の総重量に対して、5重量%~40重量%、より好ましくは5重量%~35重量%、更により好ましくは5重量%~30重量%の範囲の量で存在する。
【0059】
好ましくは、ポリカーボネート組成物中の式(1a)の単位の重量含有量は、本発明による組成物の総重量に対して42重量%~66重量%である。
【0060】
添加剤
上述の成分A及び成分Bに加えて、本発明によるポリカーボネート組成物は、ポリカーボネート組成物において慣例的に使用される1種以上の添加剤を任意に含み得る。このような添加剤は、例えば、充填剤、カーボンブラック、UV安定剤、IR安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、顔料、着色剤、滑沢剤、離型剤(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)、モノステアリン酸グリセリン(GMS))、酸化防止剤、流動性向上剤、防炎剤等である。
【0061】
このような添加剤は、例えば国際公開第99/55772号の第15頁~第25頁、及び"Plastics Additives", R. Gachter and H. MUller, Hanser Publishers 1983において記載されている。
【0062】
当業者は、本発明によるポリカーボネート組成物の所望の特性に悪影響を及ぼさないように添加剤の種類を選択することができる。
【0063】
添加剤の総量は、好ましくは、ポリカーボネート組成物の総重量に対して、最大4重量%、好ましくは0重量%~3重量%、より好ましくは0重量%~2重量%である。
【0064】
好ましくは、本発明による組成物は、組成物の総重量に対して:
a)60重量%~95重量%のコポリカーボネートであって、
i)42mol%~90mol%の式(1a):
【化13】
の単位と、
ii)10mol%~58mol%の式(2a):
【化14】
の単位と、
(ここで、mol%は、式(1a)及び式(2a)の単位の総モル数を基準に計算される)を含む、コポリカーボネートと、
b)10重量%~40重量%の式(2a)の単位を含むホモポリカーボネートと、
を含み、ここで、
コポリカーボネートの重量平均分子量は、17000g/mol~32000g/molの範囲内であり、
ホモポリカーボネートの重量平均分子量は、24000g/mol~28000g/molの範囲内であり、
ポリカーボネート組成物中の式(1a)の単位の重量含有量は、組成物の総重量に対して42重量%~66重量%であり、かつ、
組成物中のホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの総量は、組成物の総重量に対して96重量%~100重量%である。
【0065】
好ましくは、組成物は、i)ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)及びビスフェノールAから誘導される単位を含むコポリカーボネートと、ii)ビスフェノールAから誘導される単位を含むホモポリカーボネートとからなる。
【0066】
ポリカーボネート組成物の作製
本発明によるポリカーボネート組成物は、例えばペレットの形態であり得る。
【0067】
本発明によるポリカーボネート組成物は、良好な加工挙動を示し、組成物中に所望される材料を緊密に混合することを含む多岐にわたる方法によって作製され得る。
【0068】
例えば、組成物中に所望される材料を最初に高速混合機において混和する。限定されるものではないが、手動混合を含む低剪断プロセスによって、この混和を達成することもできる。次いで、この混和物を、ホッパーを介して二軸スクリュー押出機のスロート部に供給する。代替的には、少なくとも1種の成分をスロート部で押出機に直接的に供給することによって、及び/又は側方ラム押出機(side stuffer)を介して下流に供給することによって、その成分を組成物に組み込むことができる。添加剤を所望のポリマー樹脂とともに配合してマスターバッチを得て、押出機に供給することもできる。押出機は一般に、組成物を流動させるのに必要な温度よりも高い温度で操作される。押出物を水浴中で直ちに急冷し、ペレット化する。ペレットは、記載されるように1/4インチ以下の長さであり得る。そのようなペレットを使用して、引き続き成形(molding)、賦形(shaping)、又はフォーミングすることができる。
【0069】
商用ポリマー加工施設において溶融混和装置が利用可能であるため、溶融混和法が好ましい。
【0070】
このような溶融加工法において使用される装置の例示的な例としては、同方向回転式押出機及び反転式押出機、単軸スクリュー押出機、共混練機、並びに他の様々な種類の押出装置が挙げられる。
【0071】
加工中の溶融物の温度を最小限に抑えて、ポリマーの過剰な分解を避けることが好ましい。溶融樹脂組成物においては、しばしば230℃から350℃の間の溶融温度を維持することが望ましいが、加工装置内での樹脂の滞留時間が短く保たれるのであれば、より高い温度を使用することができる。
【0072】
場合によっては、溶融組成物は、ダイにおける小さな出口孔を通って押出機等の加工装置から出る。得られた溶融樹脂のストランドを、ストランドを水浴に通すことによって冷却する。冷却されたストランドを小さなペレットに切断して、包装及び更なる取り扱いを行うことができる。
【0073】
成形品
本発明によるポリカーボネート組成物を使用して、例えば、様々な種類の成形品を製造することができる。
【0074】
第2の態様において、本発明はまた、本発明の第1の態様によるポリカーボネート組成物から作られた成形品を提供する。
【0075】
このような成形品の例としては、例えば、フィルム、異形材、ハウジング部品、例えば、家庭用電化製品用、又はモニター、フラットスクリーン、ノートブック、プリンター、及びコピー機等のオフィス機器用のハウジング部品、シート、チューブ、電線管、建築分野(内装途及び外装用途)向けの窓、ドア、及びその他の異形材、キーパッド、スクリーンディスプレイカバー、スイッチ、プラグ、及びソケット等の電気部品及び電子部品、レンズ、並びに商用車用のボディ部品又は内装トリムを挙げることができる。
【0076】
成形品の作製
本発明によるポリカーボネート組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形、又は熱成形等の多岐にわたる手段によって成形品に加工して、成形品を形成することができる。
【0077】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による組成物から作られた成形品を作製する方法であって、本発明によるポリカーボネート組成物を射出成形、押出成形、ブロー成形、又は熱成形することを含む、方法を提供する。
【実施例】
【0078】
以下の実施例を参照して、本発明を以下で詳細に説明する。実施例は例示を目的とするものにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0079】
使用される材料
成分A
CoPC-1:Covestro polymer社(中国)から市販されており、ISO 1133:2011に従って330℃、1.2kgで測定された7cm3/10分のMVR、及びポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された約30000g/molの重量平均分子量を有する、ビスフェノール単位の総量を基準に70mol%の3,3,5-トリメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールTMC)単位と、30mol%のビスフェノールA単位とを基礎とするコポリカーボネート。
【0080】
CoPC-2:Covestro polymer社(中国)から市販されており、ISO 1133:2011に従って330℃、1.2kgで測定された16cm3/10分のMVR、及びポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された約27000g/molの重量平均分子量を有する、ビスフェノール単位の総量を基準に44mol%の3,3,5-トリメチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールTMC)単位と、56mol%のビスフェノールA単位とを基礎とするコポリカーボネート。
【0081】
成分B
PC-1:Covestro polymer社(中国)から市販されており、ポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された約20000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する、ビスフェノールAを基礎とする線状ポリカーボネート。
【0082】
PC-2:Covestro polymer社(中国)から市販されており、ポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された約24000g/molの重量平均分子量を有する、ビスフェノールAを基礎とする線状ポリカーボネート。
【0083】
PC-3:Covestro polymer社(中国)から市販されており、ポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された約26000g/molの重量平均分子量を有する、ビスフェノールAを基礎とする線状ポリカーボネート。
【0084】
PC-4:Covestro polymer社(中国)から市販されており、ポリカーボネート標準を使用して25℃にて塩化メチレン中でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された約28000g/molの重量平均分子量を有する、ビスフェノールAを基礎とする線状ポリカーボネート。
【0085】
成分C
ABS:INEOS Styrolution GmbHから商品名P60として市販されており、ABSポリマーを基準に42重量%の線状ポリブタジエンゴムの存在下での、ABSポリマーを基準に58重量%の、24重量%のアクリロニトリル及び76重量%のスチレンの混合物の乳化重合によって作製されるコア-シェル型耐衝撃性改良剤。
【0086】
試験方法
実施例における試験片の物理的特性を以下のように試験した。
【0087】
比較トラッキング指数
比較トラッキング指数(CTI)を、IEC60112:2011に従って決定した。
【0088】
透過率
390nm~780nmの波長を有する可視光に対する透過率を、ASTM D1003:(2013)に従って、BYK-Gardner製のHaze-Guard dualにおいて3mmの厚さを有する成形シートで測定した。
【0089】
ビカット軟化温度
ビカット軟化温度(TVicat)を、ISO 306:(2013)に従って、Coesfeld Materialtest製のCoesfeld Eco 2920機器を用いて50Nのラム荷重及び120℃/時の加熱速度で、80mm×10mm×4mmの寸法の試験片において決定した。
【0090】
メルトボリュームフローレート(MVR)
メルトボリュームフローレート(MVR)を、ISO 1133:2011に従って、Roell製のZwick 4106機器を用いて330℃及び1.2kgの荷重で決定した。
【0091】
本発明の実施例(IE)1~実施例8及び比較例(CE)1~比較例8
表1に列挙される材料を、二軸スクリュー押出機(ZSK-26)(Coperion, Werner and Pfleiderer製)において、225rpmの回転速度、20kg/時の処理量、及び300℃~330℃の機械温度で配合し、造粒した。
【0092】
造粒物を、射出成形機(Arburg製)において330℃の溶融温度及び60℃の金型温度で対応する試験片へと加工した。
【0093】
得られた組成物の物理的特性(比較トラッキング指数(CTI)、メルトボリュームフローレート(MVR)、透過率、及びビカット軟化温度(TVicat)を含む)を試験し、結果を表1にまとめた。
【0094】
【0095】
本明細書において使用される場合、ポリカーボネート組成物中のBPTMC単位の重量含有量(CBPTMC/C/W)は、以下のように計算される:
CBPTMC/C/W=(CBPTMC/CO/M×MwBPTMC)×Cco/c/w/(CBPTMC/CO/M×MwBPTMC’+CBPA/CO/M×MwBPA)
(式中、
CBPTMC/C/Wは、ポリカーボネート組成物中のBPTMC単位の重量含有量を表し、
CBPTMC/CO/Mは、コポリカーボネート中のBPTMC単位のモル含有量を表し、
MwBPTMCは、BPTMC単位の分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、
MwBPTMC’は、BPTMC単位及び-C=O-の総分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、
CBPA/CO/Mは、コポリカーボネート中のBPA単位のモル含有量を表し、
MwBPAは、BPA単位の分子量を表し、これは1モル当たりのグラム数で表され、かつ、
Cco/c/wは、ポリカーボネート組成物中のコポリカーボネートの重量含有量を表す)。
【0096】
本発明の実施例1を例に挙げると、CoPC-1中のBPTMC単位のモル含有量は70mol%であり、BPA単位のモル含有量は30mol%であり、BPTMC単位の分子量は308g/molであり、BPTMC単位及び-C=O-の総分子量は336g/molであり、BPA単位(-C=O-を含む)の分子量は254g/molであり、CoPC-1はポリカーボネート組成物中に95重量%の量で存在するため、本発明の実施例1におけるBPTMC単位の重量含有量は、
(70mol%×308g/mol)×95重量%/(70mol%×336g/mol+30mol%×254g/mol)=66重量%
である。
【0097】
比較例1~比較例7及び本発明の実施例1~実施例8において、70mol%のBPTMC単位を含むコポリカーボネート1(CoPC-1)を、様々な重量比でBPAを基礎とするポリカーボネートと混和した。
【0098】
表1から、CoPC-1及びホモポリカーボネートを含む組成物(IE1~IE8)は、各組成物中のCoPC-1とホモポリカーボネートとの重量比が60以上:40であり、ホモポリカーボネートの重量平均分子量が24000g/mol~28000g/molの範囲内であり、かつ各組成物中のBPTMC含有量が42重量%~80重量%の範囲内である場合、600V以上のCTIを有することが分かる。
【0099】
また、表1から、CoPC-1及びホモポリカーボネートを含む組成物(CE1~CE7)は、組成物中のCoPC-1とホモポリカーボネートとの重量比が60未満:40であるか、又はホモポリカーボネートの重量平均分子量が24000g/mol未満である場合、250V以下のCTIを有することが分かる。
【0100】
比較例8において示されるように、純粋なCoPC-1樹脂は600VのCTI値を有し、非常に悪い流動挙動を有するため、不十分な加工性を有する。
【0101】
さらに、本発明の実施例1~実施例8の組成物(IE1~IE8)から作られた全ての成形部品は、3mmの厚さでの高い透過率(86%超)及び高いビカット温度(180℃超)を示す。
【0102】
さらに、本発明の実施例1~実施例8の全ての組成物(IE1~IE8)は、比較例8のCoPC-1樹脂(CE8)と比較して、より良好なメルトフロー挙動(MVR)を示す。
【0103】
本発明の実施例(IE)9~実施例11及び比較例(CE)9~比較例14
同様に、表2に列挙される材料を配合し、得られた組成物の物理的特性を試験し、結果を表2にまとめた。
【0104】
【0105】
比較例10~比較例14及び本発明の実施例9~実施例11において、47mol%のBPTMC単位を含むコポリカーボネート2(CoPC-2)を、様々な重量比でBPAを基礎とするホモポリカーボネートと混和した。
【0106】
表2から、本発明の実施例9~実施例11におけるCoPC-2及びホモポリカーボネートを含む組成物(IE9~IE11)は、組成物中のCoPC-2とホモポリカーボネートとの重量比が60以上:40であり、ホモポリカーボネートの重量平均分子量が24000g/mol~28000g/molの範囲内であり、かつ各組成物中のBPTMC含有量が42重量%~80重量%の範囲内である場合、600V以上のCTIを有することが分かる。
【0107】
また、表2から、比較例10~比較例14におけるCoPC-2及びホモポリカーボネートを含む組成物(CE10~CE14)は、ホモポリカーボネートの重量平均分子量が24000g/mol未満であるか、又は各組成物中のBPTMC含有量が42重量%未満である場合、225V~325Vの範囲内のCTIを有することが分かる。
【0108】
さらに、本発明の実施例1~実施例8の組成物(IE1~IE8)から作られた全ての成形部品は、3mmの厚さでの高い透過率(86%超)及び高いビカット温度(180℃超)を示す。
【0109】
さらに、本発明の実施例1~実施例8の全ての組成物(IE1~IE8)は、CoPC-1樹脂と比較して、より良好なメルトフロー挙動(MVR)を示す。
【0110】
比較例9において示されるように、純粋なCoPC-2は600VのCTI値を有し、非常に悪い流動挙動を有するため、不十分な加工性を有する。
【国際調査報告】