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特表2024-514716カンナビジオールによる精神障害の治療を最適化するための方法及びカンナビジオールを含む医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】カンナビジオールによる精神障害の治療を最適化するための方法及びカンナビジオールを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20240326BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01N33/50 T
A61P25/18
A61K31/05
A61K9/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505493
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2022059648
(87)【国際公開番号】W WO2022218930
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】21167887.5
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523386119
【氏名又は名称】クランティス・ウーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-マルクス・レヴェケ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA80
2G045FB06
4C076AA53
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB07
4C076BB13
4C076BB21
4C076BB25
4C076BB29
4C076CC01
4C076EE32
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA57
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA76
4C206MA77
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA18
(57)【要約】
カンナビジオールによる精神障害の治療を最適化する方法及びカンナビジオールを含む医薬組成物が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神障害を有する対象のカンナビジオールの投与による治療の有効性を判定するためのインビトロ方法であって、
前記精神障害を有する前記対象からの試料中のカンナビジオールのレベルをインビトロで判定することを含み、
前記治療は、カンナビジオールの前記レベルが少なくとも25μg/lである場合に有効であると考えられる、方法。
【請求項2】
前記カンナビジオールレベルは、少なくとも約30μg/l、少なくとも約35μg/l、少なくとも約40μg/l、少なくとも約45μg/l、少なくとも約50μg/l、少なくとも約60μg/l、少なくとも約70μg/l、少なくとも約75μg/l、少なくとも約80μg/l、少なくとも約85μg/l、又は少なくとも約90μg/lである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記治療の有効性を最適化する及び/又は監視するのに有用である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記精神障害は、精神病性障害である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記精神障害は、統合失調症、妄想性障害、又は分裂情動障害からなる群から選択され、好ましくは精神分裂症である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記カンナビジオールのレベルは、タンデム質量分析と組み合わされた液体クロマトグラフィによって判定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記レベルは、12~48時間毎に判定されるか、又は約24時間毎に判定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記レベルは、カンナビジオールによる治療の開始から少なくとも5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後に初めて判定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記カンナビジオールは、5mg~1200mg/日の用量で前記対象に投与されるか、又は前記カンナビジオールは、体重1kg当たり8~12mg/日の用量で前記対象に投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カンナビジオールの判定されたレベルが請求項1に記載の範囲未満である場合、所定期間内に投与されるカンナビジオールの用量が増加される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記カンナビジオールの判定されたレベルが請求項1に記載の範囲を超える場合、所定期間内に投与されるカンナビジオールの用量が減少される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
投与されるカンナビジオールの用量は、静脈内、経口、舌下、経鼻、直腸、局所、若しくは吸入によって投与されるか、又は投与されるカンナビジオールの用量は、カプセルとして投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも99%のカンナビジオールを含み、0.8mm未満の粒径を有する賦形剤が添加されていない医薬組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の医薬組成物を含むカプセル。
【請求項15】
精神障害、好ましくは統合失調症の治療に使用するための、請求項13に記載の医薬組成物又は請求項14に記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビジオールによる精神障害の治療を最適化するためのインビトロ方法、及びカンナビジオールを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
精神障害は、世界人口の大部分に影響を及ぼす。精神障害の一例は、統合失調症である。世界中の人々の約1%が、統合失調症に罹患している。出現の様々な形態のために、統合失調症の診断は容易ではなく、診断基準は繰り返し改訂された。これは、文献における有病率及び発生率の違いをもたらす。罹患した個体は、妄想、幻覚、情動及び発話の障害、非論理的思考、超能力の信仰、意欲喪失、感情的鈍化、発話不足、モチベーションの欠如、身体衛生の悪さ、快感消失を含む陽性及び陰性症状を患う。健常者と比較して、陽性症状は行動パターンの増加を特徴とし、陰性症状は行動パターンの減少を特徴とする。症状の重症度は、例えば、陽性及び陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて測定することができる。
【0003】
更に、統合失調症は、複雑な性質を有する障害である。ドーパミン、グルタミン酸塩、セロトニン、及び内在性カンナビノイドを含むいくつかの神経伝達物質が関与する。承認された抗精神病薬のいずれも、全ての症状を軽減することができない。したがって、薬理学的治療の改善及び副作用の軽減の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、患者の血液中の特定の範囲のカンナビジオール濃度が、精神障害に罹患している患者の症状を改善することが見出された。更に、CBDの特定の調製物は、対象の治療において特に有用であることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、精神障害を有する対象のカンナビジオールの投与による治療の有効性を判定するためのインビトロ方法であって、当該精神障害を有する当該対象由来の試料中のカンナビジオールのレベルをインビトロで判定することを含み、カンナビジオールのレベルが少なくとも約25μg/lである場合に当該治療が有効であると考えられるインビトロ方法に関する。
【0006】
カンナビジオールレベルは、少なくとも約30μg/l、少なくとも約35μg/l、少なくとも約40μg/l、少なくとも約50μg/l、少なくとも約60μg/l、少なくとも約70μg/l、少なくとも約75μg/l、少なくとも約80μg/l、少なくとも約85μg/l、又は少なくとも約90μg/lとすることができる。
【0007】
カンナビジオールレベルは、通常1000μg/lを超えるべきではない。
【0008】
カンナビジオールレベルは、最大1000μg/l、900μg/l、800μg/l、700μg/l、600μg/l、500μg/l、又は400μg/lとすることができる。
【0009】
カンナビジオールレベルは、処置の開始から約3~5週間後又は約4週間後に判定することができる。その場合、カンナビジオールレベルは、約20μg/l~約400μg/l、約25μg/l~約360μg/l、約30μg/l~約200μg/l、約60μg/l~約120μg/l、約70μg/l~約110μg/l、約80μg/l~約100μg/l、約85μg/l~約95μg/l、又は約90μg/lの範囲とすることができる。
【0010】
カンナビジオールレベルは、処置の開始から約1~3週間未満又は約2週間後に判定することができる。その場合、カンナビジオールレベルは、約20μg/l~約60μg/l、約25μg/l~約55μg/l、約30μg/l~約50μg/l、約35μg/l~約50μg/l、又は約45μg/lの範囲とすることができる。
【0011】
本方法は、当該治療の有効性を最適化及び/又は監視するのに有用であり得る。
【0012】
精神障害は、精神病性障害であり得る。
【0013】
精神病性障害は、統合失調症、妄想性障害、又は分裂情動障害からなる群から選択することができ、好ましくは統合失調症である。
【0014】
カンナビジオールのレベルは、タンデム型質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィによって判定することができる。
【0015】
このレベルは、12~48時間毎に判定するか、又は約24時間毎に判定することができる。
【0016】
このレベルは、カンナビジオールによる治療の開始から少なくとも5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後に初めて判定することができる。
【0017】
カンナビジオールは、5mg~1200mg/日、6mg~1200mg/日、7mg/日~1200mg/日の用量で対象に投与することができ、又は当該カンナビジオールは、体重1kg当たり8~12mg/日の用量で対象に投与される。
【0018】
カンナビジオールの判定されたレベルが請求項1に記載の範囲未満である場合、所定期間内に投与されるカンナビジオールの用量を増加させることができる。
【0019】
カンナビジオールの判定されたレベルが請求項1に記載の範囲を超える場合、所定期間内に投与されるカンナビジオールの用量を減少させることができる。
【0020】
投与されるべきカンナビジオールの用量は、静脈内、経口、舌下、経鼻、直腸、局所又は吸入によって投与されるべきであるか、又は投与されるカンナビジオールの用量はカプセルとして投与されるべきである。
【0021】
本発明はまた、少なくとも99%のカンナビジオールを含み、いかなる賦形剤も添加されておらず、0.8mm未満の粒径を有する医薬組成物に関する。カンナビジオールは、植物由来であっても合成であってもよい。
【0022】
カプセルは、当該医薬組成物を含むことができる。
【0023】
当該医薬組成物又は当該カプセルは、精神障害、好ましくは統合失調症の治療に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
カンナビジオール(CBD)は、大麻植物カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)由来の高親油性カンナビノイドである。周知の化合物Δ-THCと比較して、それは非精神異常発現性である。本発明の実施において使用されるCBDは、植物由来、すなわち植物源から抽出されたもの、又は合成CBD、すなわち化学合成されたものとすることができる。
【0025】
本発明の文脈において、CBDは優先的に化学合成される。
【0026】
本発明は、精神障害を有する対象のカンナビジオールの投与による治療の有効性を判定するためのインビトロ方法であって、当該精神障害を有する当該対象由来の試料中のカンナビジオールのレベルをインビトロで判定することを含み、カンナビジオールのレベルが少なくとも約25μg/lである場合に当該治療が有効であると考えられるインビトロ方法に関する。この範囲を目標範囲として定義してもよい。
【0027】
試料は、対象の血液試料とすることができる。
【0028】
カンナビジオールレベル(目標)は、少なくとも約35μg/l、少なくとも約30μg/l、少なくとも約35μg/l、少なくとも約40μg/l、少なくとも約50μg/l、少なくとも約60μg/l、少なくとも約70μg/l、少なくとも約75μg/l、少なくとも約80μg/l、少なくとも約85μg/l、又は少なくとも約90μg/lとすることができる。
【0029】
カンナビジオールレベルは、通常1000μg/lを超えるべきではない。
【0030】
カンナビジオールレベルは、最大1000μg/l、900μg/l、800μg/l、700μg/l、600μg/l、500μg/l、又は400μg/lとすることができる。
【0031】
カンナビジオールレベルは、処置の開始から約3~5週間後又は約4週間後に判定することができる。その場合、カンナビジオールレベルは、約30μg/l~約360μg/l、約35μg/l~約200μg/l、約60μg/l~約120μg/l、約70μg/l~約110μg/l、約80μg/l~約100μg/l、約85μg/l~約95μg/l、又は約90μg/lの範囲とすることができる。
【0032】
カンナビジオールレベルは、処置の開始から約1~3週間未満又は約2週間後に判定することができる。その場合、カンナビジオールレベルは、約20μg/l~約60μg/l、約25μg/l~約55μg/l、約30μg/l~約50μg/l、約35μg/l~約50μg/l、又は約45μg/lの範囲とすることができる。
【0033】
本方法は、当該治療の有効性を最適化及び/又は監視するのに有用であり得る。
【0034】
精神障害は、精神病性障害であり得る。
【0035】
精神病性障害は、統合失調症、妄想性障害、又は分裂情動障害からなる群から選択することができる。
【0036】
本方法は、好ましくは、統合失調症に罹患している対象から得られた試料に対して使用することができる。
【0037】
カンナビジオールのレベルは、タンデム型質量分析と組み合わせたガスクロマトグラフィによって判定することができる。しかしながら、対象の試料中のカンナビジオールのレベルを判定するのに適した任意の他の方法を使用することもできる。
【0038】
試料は、CBDの投与後に1回、又は治療中に規定された、例えば規則的な間隔で取得することができる。
【0039】
例えば、このレベルは、約12~48時間毎に判定するか、又は約24時間毎に判定することができる。
【0040】
このレベルは、カンナビジオールによる治療の開始から少なくとも5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後に初めて判定することができる。好ましくは、このレベルは、カンナビジオールによる治療の開始後、7日目~14日目、より好ましくは約7日目又は約14日目に初めて判定される。
【0041】
治療は、5mg~1200mg/日の用量を対象に投与することを含むことができる。例えば、用量は、1日当たり5mg、6mg、7mg、8mg、10mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900、1000、1100mg、若しくは1200mg、又は前述の用量によって定義される任意の範囲の用量とすることができる。好ましくは、用量は、600~1000mg/日、例えば、800mg~1000mg/日とすることができる。
【0042】
代替的に又は追加的に、カンナビジオールは、体重1kg当たり8~12mg/日、例えば体重1kg当たり8、9、10、11、又は12mg/日の用量で対象に投与することができる。
【0043】
投与期間は、少なくとも4~8週間、好ましくは少なくとも6週間とすることができる。
【0044】
CBDは、任意の適切な医薬投与形態で、例えば、錠剤、カプセル、ゲル、注入、又はそれらの組合せとして投与することができる。好ましくは、CBDはカプセルとして投与することができる。
【0045】
医薬投与形態は、約5~約300mg、100~約300mg、約150~約250mg、約175mg~約225mg、又は約200mgのCBDを含むことができる。いくつかの投与形態を組み合わせて、必要な1日用量を提供することができる。例えば、所定の1日用量全体、例えば1000mgよりも少ない所定量のCBD、例えば200mgを含む医薬投与形態、例えばカプセルは、1日に複数回、好ましくは等間隔の時間間隔で、例えば1日に5回投与されてもよい。
【0046】
カンナビジオールの判定されたレベルが標的範囲未満であると判定される場合、所定の期間内に投与されるカンナビジオールの用量を増加させることができる。例えば、1日用量は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、若しくは100%、又は10~100%増加させることができる。
【0047】
所定の期間内に投与されるべきカンナビジオールの用量は、カンナビジオールの判定されたレベルが標的範囲を上回る場合に減少させることができる。例えば、1日用量は、少なくとも1%、2%、3%、5%、10%、20%、30%、40%、若しくは50%、又は1~50%減少させることができる。
【0048】
用量又は1日用量の増加又は減少は、それぞれの剤形のサイズに依存し得る。剤形は、カプセル、錠剤などの、対象に投与される最小の医薬単位である。例えば、1000mg/日が、用量当たり200mgの5つの剤形で投与される場合、1用量の減少又は増加は、200mg、したがって20%とすることができる。したがって、増加又は減少は、使用される剤形に依存する。
【0049】
投与されるべきカンナビジオールの用量は、静脈内、経口、舌下、経鼻、直腸、局所、又は吸入によって、好ましくは経口で投与されるべきである。特に、投与されるカンナビジオールの用量は、カプセルとして投与されることが好ましい。
【0050】
本発明はまた、上記の方法を実施するのに特に有用な医薬組成物に関する。
【0051】
したがって、本発明はまた、いかなる賦形剤も添加されていないカンナビジオールを含み、0.8mm未満の粒径を有する医薬組成物に関する。組成物は、少なくとも約99%、約99%~約99.9%、約99.3%~99.8%のCBDを含むことができる。カンナビジオールは、合成又は植物由来のカンナビジオールとすることができる。
【0052】
賦形剤が添加されないとは、例えば、脂質(例えば、トリグリセリド)又は任意の形態若しくは液体のような賦形剤が組成物に添加されず、したがって組成物中に含まれないことを意味する。
【0053】
好ましい実施形態において、カプセルは、当該医薬組成物を含むことができる。カプセルは、特に、カプセルによって形成される区画内への液体又は脂質の移動を防止するカプセルである。カプセルに好ましい材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。カプセルは、通常、2つのカプセル片からなることができる。
【0054】
医薬組成物又は当該カプセルは、上記のような精神障害、好ましくは統合失調症の治療に使用することができる。
【0055】
医薬組成物は、上記の投与レジメンに従って、1日当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回投与することができる。
【0056】
医薬組成物を製造する方法であって、
a.合成CBDを提供することと、
b.合成CBDを2片カプセルのカプセルの第1の片に移送することと、
並びに
c.カプセルの第1の片をカプセルの第2の片と接触させて、完全な2片カプセルを提供することと、を含む方法が開示される。
【0057】
好ましくは、移送することは粉末ピペットを用いて達成される。好ましくは、CBDは、工程a.の後かつ工程b.の前に篩にかけられる。好ましくは、篩い分けに使用される篩は、0.8mm、0.7mm、0.5mm以下の孔径を有する。したがって、篩にかけられたCBDは、0.8mm未満、0.7mm未満、0.5mm未満、又はそれ未満の粒径を有することができる。
【0058】
実施例
実施例1:CBDカプセルの製造
合成CBDは、THC Pharm GmbH(The Health Concept、ドイツ、フランクフルト・アム・マイン)によって製造された。
【0059】
得られたCBDの純度は、少なくとも99%(99.35%)であると判定された。
【0060】
合成CBDは、非常に不均一なサイズ分布を有するフレーク又は/及び粒子の形態で生成されることが見出された。この形態では、カプセル剤などの医薬製剤を効率的に調製することができなかった。したがって、合成CBDを篩いプロセスにかけた。
【0061】
CBDの粒径は、固体の粒径を減少させるための任意の既知の装置を用いて減少させることができる。例えば、CBは、粉砕装置又はせん断装置によってサイズを小さくすることができる。
【0062】
CBDを孔径0.77mmの篩で篩い分けした。この孔径は、CBDの医薬調製物、特にCPC調製物を含むカプセルの調製において非常に有用であると思われる。
【0063】
篩にかけられたCBDは、カプセルの製造において添加剤なしで使用した。
【0064】
特に、篩にかけたCBDを粉末ピペットで吸引し、次いで粉末ピペットを使用して2片カプセルの第1の片に移送し、CBD内容物を粉末ピペットから排出した。続いて、カプセルの半分を2片カプセルの第2の片で閉鎖した。
【0065】
いずれの工程においても、更なる液体(特に親油性液体)を添加しなかった。
【0066】
カプセル当たりのCBD用量は200mgであった。
【0067】
カプセルの材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)とした。
【0068】
実施例2:治験及びその評価
データ
この調査課題のために使用されるデータは、治験、CBD-CT1(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00628290)及びCBD-PT(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00309413)から得られ、これらは全て同じ治験責任医師(PI)によって監督された。含まれる3つの治験についての更なる情報を、以下のセクションに示す。
【0069】
適正製造規範(Good Manufacturing Practice:GMP)ガイドラインに従って治験薬を製造するために使用される医薬品有効成分(API)グレードのCBDは、THC Pharm GmbH(ドイツ、フランクフルト・アム・マイン)から購入した。CBD-CT1及びCBD-PTに関しては、ケルン大学病院(ドイツ、ケルン)の薬剤部が、ドイツ医事法(German Medicines Law:AMG)に準拠した治験薬の製造者であった。
【0070】
治験CBD-CT1
「急性統合失調症におけるカンナビジオールの抗精神病効力の評価」は、並行群設計による二重盲検、対照、無作為化、第II相試験であり、2001年3月から2004年11月まで実施された(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00628290)。ケルン大学医学部の倫理委員会は、2000年6月8日に出願番号00-074で治験を承認した。
【0071】
統合失調症精神病を有する計画数42人の患者を2つの治療群に無作為化し、CBD(n=21)又はアミスルプリド(標準療法、n=21)のいずれかで4週間治療した。全ての無作為化された患者は、以下の全ての組み入れ基準及び除外基準に従った:年齢18~50歳、男性及び女性、入院患者での入院の持続、特定のDSM-IV診断、初期簡易精神医学的評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale)(BPRS)スコア≧36、試験目的及び試験過程の理解、法的行為能力、妊娠又は授乳期なし、信頼できる避妊法。
【0072】
CBDは、カプセル製剤経口用量として投与した。用量を第1週の間に200mg/日から800mg/日(4×200mg)に増加させ、試験期間の残りの間、このレベルで維持した。重篤な望ましくない影響がある場合には、用量を15日目から600mg/日に不可逆的に減少させることができた。CBDトラフ血漿濃度を定量するための血液試料の収集及びPANSSの完了は、ベースライン、14日目、及び28日目に行った。用量適用、血液サンプリング、及びPANSSの評価は、以下に示す時間スケジュールに従った。全試験期間中、1日当たり7.5mgのロラゼパムによる追加の治療が許可された。
【0073】
CBDで処置されたn=21人の患者のうち4人が分析から除外された。3人の患者は、任意の時点で測定されたCBD血漿濃度を有さず、1人の患者は、有効性が疑わしい14日目に顕著に高いCBD血漿濃度を有する。別の3人の患者が14日後に脱落し、更なるCBD血漿濃度及びPANSSスコアは入手できなかった。14日目までのドロップアウト患者からのデータは、分析に含まれる。合計17人の患者が分析に含まれる。
【0074】
この試験においてCBD血漿濃度を測定するために使用した方法は、Schreiber D.Auswirkungen von Cannabiskonsum auf das endogene Cannabinoidsystem:Entwicklung einer LC-MS/MS-Analytik zur Messung von Endocannabinoiden im Serum。Bonn:Rheinische Friedrich-Wilhelms-Universitat Bonn,Bonn;2007に記載されている。
【0075】
治験CBD-PT
これは、カンナビジオールの抗精神病特性に関する第II相プラセボ対照無作為化クロスオーバー治験である(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT00309413)。2005年7月28日に、出願番号04-153のこの治験は、ケルン大学医学部倫理委員会によって承認された。
【0076】
統合失調症又は統合失調症型障害と診断された18人の患者が、プロトコル毎にこの試験に含まれるべきである。脱落者は、新たな患者によって置き換えられなければならなかったので、総数29人の患者を2006年2月から2008年6月まで無作為化した。全ての無作為化された患者は、以下の全ての組み入れ及び除外基準に従った:年齢18~65歳、男性及び女性、特異的DSM-IV診断、初期BPRSスコア≧36、妊娠していない又は授乳期でない、信頼できる避妊法、説明責任が欠如していない、他の関連する干渉がない、過去3ヶ月間のデポー抗精神病薬による治療を受けていない、重篤な内部又は神経学的疾患がない、QTc延長がない、急性自殺念慮及び患者による他者への危険がない。10人の患者が最初にCBD治療を開始し、19人の患者がプラセボを受けた。処置を4週間続けた。2週間のCBD又はプラセボ処置による第1の期間の後に、それぞれ2週間のプラセボ又はCBD処置による第2の期間が続いた。2つの処置の間にウォッシュアウト期間はなかった。600mg/日(3×200mg)のCBDをカプセル製剤で経口用量として与えた。重篤な望ましくない影響がある場合には、用量を不可逆的に400mg/日に減少させることができた。CBD血漿濃度の定量化のための血液試料を、ベースライン及び7、14、21、28日目に採取した。PANSSは、ベースライン並びに14日目及び28日目に適用した。用量適用、血液サンプリング、及びPANSSの評価は、以下に示す時間スケジュールに従った。全試験期間中、1日当たり5.0mgのロラゼパムによる追加の治療が許可された。
【0077】
合計n=11人の患者が、試験期間中に脱落した。7人の患者が、プラセボ処置の最初の期間に脱落した。彼らはCBDで処置されなかったので、本研究プロジェクトの分析から除外した。1人の患者が、CBD処置による第2の期間において脱落したが、任意のCBD血漿濃度が測定される前であり、したがって、分析からも除外した。別の3人の患者は脱落したが、少なくとも1つ又は2つのCBD血漿濃度測定値を有しており、分析に含めることができる。全部で21人の患者からのデータが分析に含まれる。
【0078】
この試験においてCBD血漿濃度を測定するために使用した方法をC.Schaefer:Exploration der Endocannabinoide und verwandter Fettsaureethanolamide im Serum von Patienten mit einer Borderline Personlichkeitsstorung und/oder Posttraumatischen Belastungsstorung:Validierung einer LC-MS/MS-Methode.ケルン:ケルン大学;2015に記載する。
【0079】
データ抽出及び準備
治験、CBD-CT1、及びCBD-PTは、CBDの抗精神病効果に焦点を当てており、PK特性には焦点を当てていない。したがって、CBDが投与された時点及び血液試料が採取された時点の文書化は限られており、電子データに含まれていなかった。例えば、有害事象に起因する可能性のある用量減少に関する情報も、電子データにおいて欠落していた。PIと協力して、病棟の標準ルーチンに基づいて時点を入力した。治験薬の適用を午前9:00、午後12:30、午後6:30、及び午後10:00に設定し、採血を午前8:45にスケジュールした。PANSSの評価も午前8:45に合わせた。時間を標準化することによる精度の損失は、投与と血液サンプリングとの間の時間間隔が長く、したがって小さな偏差は大きな影響を及ぼさないため、許容可能であると考えられた。実際に適用された用量又は減少した用量に関する情報は、PIの研究グループのメンバーと協力して更新した。アーカイブされた患者のケースレポートファイル及び他の紙ベースの文書における注釈に基づいて、電子データを調整した。
【0080】
CBD-CT1及びCBD-PTの2人の患者では、ベースラインCBD濃度が失われており、20人の患者は、定量化の局所下限(0.12μg/l)を超えるベースライン値を有していた。PIと相談した後、陽性薬物スクリーニングを有する全ての患者が試験プロトコルに従って治験から除外されたため、これらの値を0に置き換えた。0を超えるベースライン値は、例えば、血液サンプルが用量適用後に採取されたときに、手順におけるエラーをもたらし得る。したがって、置き換えは、実施されなかった投与前測定の補完と等価であると考えられる。
【0081】
陽性及び陰性症状評価尺度
陽性及び陰性症状評価尺度(PANSS)は、精神病理学的尺度であり、統合失調症患者における症状の重篤度を評価するために開発された。この尺度は、1987年にKayら(Kay SR、Fiszbein A、Opler LA.「The positive and negative syndrome scale(PANSS)for schizophrenia」、Schizophrenia bulletin.1987;13(2):261-276を参照)によって最初に説明され、18項目のBPRSと12項目の精神病理評価スケジュール(PSYRATS)の組合せである30個の質問を含む(Leucht S,Kane JM,Kissling W,Hamann J,Etschel E,Engel RR.「What does the PANSS mean?」Schizophrenia research.2005;79(2-3):231-238)。全ての質問は、1=症状なしから7=非常に明確な症状までの7段階尺度で評価される。したがって、PANSS合計スコア(全30項目の合計スコア)は、30~210の範囲とすることができる。ここでは、PANSSスコアが低いほど、患者は良好/健康であると適用される。
【0082】
CBD-CT1及びCBD-PTにおいて使用されたPANSSについてKayらによって示唆された元の3因子解は、ポジティブ尺度、ネガティブ尺度、及び一般的な精神病理尺度を含む。陽性尺度は、妄想、支離滅裂な思考、幻覚、興奮、誇大的態度、疑い深さ/被害妄想、及び憎悪を含む。感情鈍麻、感情的引きこもり、意思疎通性の乏しさ、受動的/無感情引きこもり状態、抽象的思考の困難さ、固定観念的な、自発性の欠如、及び会話の流れは、陰性尺度の一部である。一般的な精神病理尺度には、身体的懸念、不安、罪悪感、緊張、マンネリ、姿勢異常、抑鬱、運動低下、非協調性、異常な思考内容、見当識障害、注意不良、判断及び洞察の欠如、気力の乱れ、衝動制御不良、先入観、及び能動的社会的回避が含まれる。
【0083】
訓練された面接官が尺度を完成させるのに約50分かかる。
【0084】
結果
治験CBD-CT1及びCBD-PTにおいて、統合失調症患者の精神病理学的状態を、ベースライン並びに14日目及び28日目にPANSSを使用して評価した。
【0085】
合計スコア及び3つのPANSSサブスコアの両方の記述的分析の結果を表1に示す。全ての平均スコアは、標準偏差の増加とともに経時的に減少した。ベースラインからのスコアの変化について同じことが観察され得る(表1を参照)。平均変化及び対応する標準偏差は両方とも、提示された全てのスコアについて経時的に増加し、それにより、集団レベルでの精神病理的改善を示す。
【0086】
観察されたCBD血漿濃度の記述的分析を表2に示す。
【0087】
この改善の印象を検証するために、反復測定分散分析を用いてPANSSを分析した。各時点(ベースライン、14日目、28日目)での正規分布仮定をシャピロ-ウィルク検定でチェックした(Sam S.Shapiro、Martin Bradbury Wilk:「An analysis of variance test for normality(for complete samples)」、Biometrika、52(3/4)、1965年、591-61頁)。4つ全てのPANSSスコアについて、個体内の時間の有意な影響が検出され(p<0.001)、したがって、経時的なPANSSの統計的に有意な変化が確認された。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
また、CBD投与開始後14日目におけるCBD血漿濃度とPANSSスコアの変化との相関を評価した。
【0091】
【表3】
【0092】
一般に、4~6週間の処置後のベースラインスコアに対するPANSSスコアの50%の変化率は、PANSSスコアの有意な改善を示すことが予想される(Correll C.U.「Quantifying clinical relevance in the treatment of schizophrenia,Clinical Therapeutics」、第33巻、12号、2011年、B16-B39参照)。
【0093】
PANSSスコア(複数可)は、先行する7日間に経験又は観察された症状を扱うため、最小必要観察期間は1週間である。初期症状の観察との重複を避けるために、2週間の治療期間が最小の信頼できる期間と考えられる。したがって、本発明者らは、治療の2週間後に治療効果を分析した。分析された短縮治療期間に起因して、ベースラインスコア(複数可)に対するPANSSスコアの25%の変化率は、PANSSスコアの有意な改善を示す。本発明者らは、少なくとも約25μg/lのCBD血漿濃度が、PANSSスコア(複数可)の必要な変化率をもたらすことを見出した。
【国際調査報告】