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特表2024-514717感染を検出するためのソルバトクロミック指示薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(54)【発明の名称】感染を検出するためのソルバトクロミック指示薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20240326BHJP
   G01N 33/52 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01N33/50 T
G01N33/52 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506587
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 US2022024272
(87)【国際公開番号】W WO2022221201
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】63/173,611
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523385802
【氏名又は名称】テイラー デイジア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】テイラー デイジア
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA28
2G045CB21
2G045DB03
2G045FA18
(57)【要約】
細菌感染の存在を検出するためのソルバトクロミック指示薬を開示する。サトウダイコン(Beta vulgaris)からなり、かつ任意でウコン(Curcuma longa)、イソプロピルアルコール、およびそれらの任意の組み合わせをさらに含む指示薬は、感染の存在下で検出可能な色変化が起こる。ソルバトクロミック指示薬で処理されたフィラメントをさらに提供し、ここで、指示薬の検出可能な色変化は、細菌感染を有する組織のpHに基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのサトウダイコン(Beta vulgaris)球根由来の抽出物、少なくとも1つのウコン(Curcuma longa)根由来の抽出物、および少なくとも10%のアルコールを含む、組成物。
【請求項2】
フィラメントをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記フィラメントが、縫合糸の形態である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記フィラメントを封入している薄膜コーティングをさらに含む、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
前記薄膜コーティングが、パリレンCを含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
ソルバトクロミック指示薬を含む組成物であって、
該ソルバトクロミック指示薬がpH応答性視覚的指示薬であり、
該組成物が少なくとも1つのウコン根由来の抽出物をさらに含む、
組成物。
【請求項7】
前記ソルバトクロミック指示薬が、ベタインを含む、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記ソルバトクロミック指示薬が、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物を含む、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも7%のアルコールをさらに含む、請求項6記載の組成物。
【請求項10】
フィラメントをさらに含む、請求項6記載の組成物。
【請求項11】
前記フィラメントが、縫合糸、ガーゼ、ガーゼスポンジ、ガーゼ包帯、非接着性パッド、および非接着性創傷ドレッシングからなる群より選択される形態である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記フィラメントを封入している薄膜コーティングをさらに含む、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
前記薄膜コーティングが、パリレンCを含む、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の第1抽出物を調製する工程、
少なくとも1つのウコン根由来の第2抽出物を調製する工程、および
アルコールを含む溶液中で該第1および第2抽出物を組み合わせる工程
を含む、方法。
【請求項15】
フィラメントへの前記溶液の塗布をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記フィラメントを薄膜コーティング中に封入する工程をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記薄膜コーティングが、パリレンCを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記フィラメントが、縫合糸、ガーゼスポンジ、ガーゼ包帯、非接着性パッド、および非接着性創傷ドレッシングからなる群より選択される形態である、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記第1および前記第2抽出物を、超音波処理または同等のプロセスによって調製する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記溶液が、少なくとも7%アルコールの濃度を含む、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年4月12日に出願された米国仮特許出願第63/173,611号の恩典を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ソルバトクロミック指示薬を用いてpHの変化を効率的に検出するための組成物および方法に関する。具体的な態様において、本発明はまた、pH変化の視覚的検出に基づいて、手術部位での感染を効率的に検出することに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
手術部位感染は、病院内感染または院内感染の最も一般的な原因の1つである。これらの感染は、一般に、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)などのグラム陽性細菌種、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および大腸菌(Escherichia coli)などのグラム陰性細菌によって引き起こされる。臨床症状には、限局性発赤、疼痛、創部ドレナージ、治癒の遅れ、腫脹、および発熱が含まれ得る。
【0004】
入院患者病院、外来病院提携病院、または独立型設定で何百万もの外科的処置が行われている。手術部位感染は、これらの外科的処置の最大5%で発生し得、感染はかなりの罹患率および死亡率に関連している。さらに、それはしばしば入院期間の増加および長期の抗生物質療法による追加費用につながる。
【0005】
外科的処置のコアガイドラインは、外科的処置にわたってしばしば一般化されている手術部位感染の予防に関する推奨事項を含むことが多い。これらの推奨事項の中で、皮膚切開前の術前抗菌剤の投与、手術前後の皮膚を清潔に洗浄すること、および創傷モニタリングが、最も一般的に使用される方法である。さらに、世界中の病院は、手術部位感染の可能性を減らそうとして手術プロトコルを調整している。しかし、いったん感染の兆候が発生すると先に進むことは非常に困難であるという事実、したがって、手術部位感染が非常に危険である理由にもかかわらず、感染の明らかな兆候がないか切開部位をチェックするためのプロトコルは変わっていない。手術部位感染が早期に発見されれば、追加の手術の必要とは対照的に、創傷を抗生物質で処置することができる。これらの懸念はあらゆるタイプの創傷部位に広く当てはまり、特に、医療を受けることが困難であり得る発展途上国においてそうである。
【0006】
この目的のために、臨床環境および非臨床環境の両方において細菌感染を効率的に検出する方法についての必要性が存在する。本開示の組成物、方法、および使用は、医学的、生物医学的、獣医学的、もしくは臨床的環境、または細菌を含まないように維持する必要がある任意の他の環境において、pH変化を効率的に検出することを提供する。pH変化の検出は、手術部位などの創傷部位における感染を視覚的に検出するために適用することができる。本明細書に開示されるのは、任意の環境におけるpH変化、および延いては細菌感染を検出するための新規な方法である。
【0007】
さらに、発展途上国では、感染を診断するための安価で容易にアクセスできるツールについての必要性が存在する。これらの国では、人々は医者に診てもらうことができないかもしれず、また、感染を示すための単純で広く適用可能な組成物の使用は、ある人に対して医学的注意が必要であることを知ることを可能にする。
【発明の概要】
【0008】
ある局面において、本開示は、少なくとも1つのサトウダイコン(Beta vulgaris)球根由来の抽出物、少なくとも1つのウコン(Curcuma longa)根由来の抽出物、および少なくとも10%のアルコールを含む組成物を提供する。
【0009】
ある局面において、本開示は、ソルバトクロミック指示薬を含む組成物であって、ここで、ソルバトクロミック指示薬がpH応答性視覚的指示薬であり、かつ組成物が少なくとも1つのウコン根由来の抽出物をさらに含む、組成物を提供する。
【0010】
ある局面において、本開示は、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の第1抽出物を調製する工程;少なくとも1つのウコン根由来の第2抽出物を調製する工程;および、アルコールを含む溶液中で第1および第2抽出物を組み合わせる工程、を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本特許または出願ファイルは、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公報のコピーは、請求および必要な費用の支払いに応じて、特許庁から提供される。
【0012】
本態様は添付の図面の図によって示され、これは必ずしも正確な縮尺ではない場合があり、ここで同様のリファレンスは類似の要素を示す。
【0013】
図1図1Aは、pH条件の範囲にわたるサトウダイコン抽出物のスケールを示す。図1Bは、サトウダイコン抽出物で処理されたポリエステル綿混紡縫合糸のセットを示す。左から右へ、縫合糸はpH5の溶液、溶液無し対照、およびpH9の溶液へ供される。この画像は、5分間が経過した後の縫合糸を示している。図1Cは、およそ60時間が経過したことを除いて、図1Bに見られるのと同じ3つの縫合糸のセットを示す。サトウダイコン抽出物およびpH9の溶液で処理された縫合糸は、対照およびpH5処理とは視覚的に異なる。
図2図2Aはスワブのセットを描写する。各スワブは1mlのサトウダイコン球根抽出物で処理された。図2Bは、以下の溶液を塗布してから1時間後の同じスワブのセットを描写する;左から右へ:何も添加されていない対照、pH5溶液、pH9溶液、蒸留水、91%アルコール、およびpH9溶液に続いて水1mlの塗布。
図3】サトウダイコン球根由来の抽出物を含む混合物の抗菌特性を実証する。図3Aは、ペトリ皿において37℃で12時間増殖させた場合の大腸菌の正常な増殖を示している。図3Bは、サトウダイコン球根由来の抽出物を含むフィラメントが皿のこの部分に重ねられていることを除いて、図3Aと同じペトリ皿を示し、大腸菌の増殖は見ることができない。図3Cは、フィラメントを除去した後に撮影された写真であり、ここでも、フィラメントが接触した領域またはその周辺に大腸菌の増殖は見ることができない。
図4-1】図4Aは、本発明のソルバトクロミック指示薬と共に薄膜コーティング化合物として用いることができるパリレンCの化学構造の例示的な説明図である。図4Bは、パリレンCについての薄膜コーティングのためのコーティングプロセスにおけるステップの例示的な説明図である。(VSi Parylene “Coating and Deposition Process” https://vsiparylene.com/about-parylene/#deposition-process)。
図4-2】図4-1の説明を参照。
図5図5A~Cは3セットの縫合糸を示し、各セットは、10%アルコール中のサトウダイコン由来の抽出物およびウコン由来の抽出物の混合物を含み、かつパリレンCでコーティングされた、3つの縫合糸を含む。図5D~Fは、図5DがpH5の溶液で処理され、図5FがpH9の溶液で処理されたことを除いて、図5A~Cに示されるのと同じ3セットの縫合糸を示す。図5Eは添加された溶液を有さず、陰性対照を表す。図5G~Iは、上述の溶液の塗布から10分後の図5D~Fと同じ縫合糸のセットを示す。塩基性pH9に応答しての色変化が図5G~Hと比較して明らかである。
図6図6Aは、pH5の溶液(左、標識C5)およびpH9の溶液(右、標識C9)中の、紫キャベツ抽出物、の2本のチューブを示す。図6Bは、pH5の溶液(左、標識BC5)およびpH9の溶液(右、標識BC9)中の、等量の紫キャベツ抽出物およびサトウダイコン抽出物の、2本のチューブを示す。図6Cは、pH5の溶液(右、標識B5)および陽性対照として示されるpH9の溶液(左、標識B9)中の、サトウダイコン抽出物の、2本のチューブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
他に定義されない限り、使用される全ての専門用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。用語が単数形で提供される場合、本発明者らは、その用語の複数形によって記載される本開示の局面も企図する。参照により組み入れられる参考文献において使用される用語および定義に矛盾がある場合、本出願において使用される用語は、本明細書において与えられる定義を有するものとする。使用される他の専門用語は、様々な技術分野特有の辞書、例えば“The American Heritage(登録商標)Science Dictionary” (Editors of the American Heritage Dictionaries, 2011, Houghton Mifflin Harcourt, Boston and New York)、“McGraw-Hill Dictionary of Scientific and Technical Terms” (6th edition, 2002, McGraw-Hill, New York)、または“Oxford Dictionary of Biology” (6th edition, 2008, Oxford University Press, Oxford and New York)によって例示されるような、それらが用いられる技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。
【0015】
例えば、全ての特許、公開特許出願、および非特許刊行物を含む、本明細書で引用した任意の参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0016】
選択肢のグループ化が提示される場合、選択肢のそのグループ化を構成するメンバーのありとあらゆる組み合わせが具体的に想定される。例えば、アイテムがA、B、C、およびDからなる群より選択される場合、本発明者らは、各選択肢を個別に(例えば、A単独、B単独など)、ならびにA、B、およびD;AおよびC;BおよびCなどの組み合わせを具体的に想定する。2つ以上のアイテムのリストで用いられる場合の「および/または」という用語は、リストされたアイテムのいずれか1つを単独で、または他のリストされたアイテムのいずれか1つもしくはそれ以上と組み合わせて意味する。例えば、「Aおよび/またはB」という表現は、AおよびBのいずれかまたは両方、すなわち、A単独、B単独、またはAおよびBの組み合わせを意味することが意図される。「A、Bおよび/またはC」という表現は、A単独、B単独、C単独、AおよびBの組合せ、AおよびCの組合せ、BおよびCの組合せ、またはA、BおよびCの組合せを意味することが意図される。
【0017】
数値の範囲が本明細書に提供される場合、その範囲は、範囲の端部、ならびに範囲の定義された端部間の任意の数値を含むと理解される。例えば、「1から10の間」は、1から10の間の任意の数値、ならびに数値1および数値10を含む。
【0018】
用語「約」が数値に関して使用される場合、プラスまたはマイナス10%を意味すると理解される。例えば、「約100」は90から110を含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の参照物を含む。例えば、「化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの混合物を含む、複数の化合物を含み得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、無水ベタインまたはトリメチルグリシンとしても公知のベタインは、正に荷電したカチオン性官能基を有する中性化合物である。ベタインは人体で自然に発生し、ビートおよびホウレンソウなどの食品中に見られ得る。ある態様において、ベタインは少なくとも1つのビート(サトウダイコン)から得られる。さらなる態様において、ベタインは、サトウダイコン以外の供給源から得られる。さらなる態様において、ベタインは、細菌感染を診断するための、創傷部位または手術部位でのソルバトクロミック指示薬として使用される。
【0021】
本明細書で使用される場合、pHは、溶液の酸性度およびアルカリ性度の尺度として定義され、それは、値7が中性を表し、より低い数値が酸性度の増加を示し、より高い数値がアルカリ性度の増加を示すスケール上の数値であり、変化の各単位が酸性度またはアルカリ性度の10倍または対数の変化を表す。pHは、溶液1リットル当たりのグラム当量での有効水素イオン濃度または水素イオン活性の負の対数として定義することもできる。7未満のpH値は酸性pHスコアとしても公知であり、7を超えるpH値は塩基性pHスコアとしても公知である。
【0022】
健康なヒトの皮膚は、天然に酸性であり、典型的にはpH5を有する。創傷部位および手術部位は微生物または細菌に感染する可能性があり、これらの感染は患者において病気または死を潜在的に引き起こす。感染した創傷は9以上のpHを有する。本発明は、色変化指示薬と組み合わせた医療デバイスを用いて手術部位における感染を検出するための装置および方法を提供する。
【0023】
本明細書で使用される場合、ソルバトクロミック指示薬は、限定されることなく、UV、可視、または近赤外分光測定によって溶媒の極性にアクセスするために使用することができる化合物を指す。例えば、Reichardt, Chem. Rev., 1994, 2319-2358頁を参照のこと。ある態様において、ソルバトクロミック指示薬は、ソルバトクロミック指示薬の以前の環境と比べて塩基性pHを有する材料へ曝露された場合の、pHの変化の視覚的指示を提供する。さらなる態様において、pHの変化の視覚的指示は、ソルバトクロミック指示薬を含む組成物の色の変化である。別の態様において、ソルバトクロミック指示薬は、細菌感染を伴う創傷部位に適用された場合にpHの変化の視覚的指示を示す。さらなる態様において、ベタインを含むソルバトクロミック指示薬は、塩基性pHへ曝露されると、細菌感染を伴う部位に指示薬が適用されたときに生じる中性pHと比較して暗くなる。さらなる態様において、サトウダイコン球根の抽出物を含むソルバトクロミック指示薬は、塩基性pHへ曝露されると、細菌感染を伴う部位に指示薬が適用されたときに生じる中性pHと比較して暗くなる。さらなる態様において、サトウダイコン球根の抽出物を含むソルバトクロミック指示薬は、細菌感染を伴う部位に指示薬が適用されたときに生じる中性または酸性pHと比較して、塩基性pHへ曝露されると赤から紫に変化する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「抽出物」は、細胞壁および細胞膜の破壊から得られる組成物、固体、液体、または両方の組み合わせを指す。細胞壁および細胞膜内の分子は、当技術分野において一般的に知られている任意の手段によって抽出することができる。ある態様において、抽出物は、ブレンドする、粉砕する、破砕する、叩く、擦る、またはそれらの任意の組み合わせなどの日常的なプロセスによって調製され、抽出されることが望まれる分子を含む材料である。ある態様において、抽出物は、超音波処理などの当技術分野において一般的に実施される技術を介して調製される。当技術分野において公知の任意の同等の方法を用いて、開示される方法および組成物において使用するための抽出物を調製することができることが想定される。任意のタイプのサイズ排除法を含むがこれらに限定されない、不純物を除去するための抽出物のさらなる処理も想定される。
【0025】
ある局面において、サトウダイコン植物の球根由来の抽出物を含むソルバトクロミックpH指示薬は、縫合糸または創傷被覆材を染めるために使用される。サトウダイコンを含むソルバトクロミックpH指示薬を含む縫合糸または創傷被覆材は、塩基性pHの存在下で色が変化する。さらなる局面において、ソルバトクロミックpH指示薬は、紫色を介して塩基性pH環境をマークする。細菌感染は、感染した創傷部位に塩基性pH条件を作り出すことが公知である。このようにして、サトウダイコンを含むソルバトクロミックpH指示薬を含む本明細書に開示される組成物は、創傷部位での細菌感染を検出するための新規な方法を提供する。
【0026】
サトウダイコン植物の球根は、ソルバトクロミック指示薬である化学物質ベタインを含有する。ベタインを含有するソルバトクロミック指示薬の1つの例は、ライハルト色素である。ある局面において、本発明の指示薬は、pHがより塩基性になると目に見える色変化が起こり、これは、細菌が存在しかつ活発に代謝するときに生じる。さらなる局面において、色変化は、塩基性pH環境における紫色への変化である。別の局面において、本発明のソルバトクロミック指示薬は、植物の根から得られる抽出物の形態でウコン(ターメリック)を含有することができる。さらなる局面において、ウコン抽出物は、ソルバトクロミック指示薬を含む溶液中へ混合される。別の局面において、サトウダイコンは、イソプロピルまたは任意の他のアルコールを含む溶液中で混合される。さらなる局面において、ソルバトクロミック指示薬を含有する溶液は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む。さらなる局面において、ソルバトクロミック指示薬を含有する溶液は少なくとも13パーセントのアルコールを含む。さらなる局面において、ソルバトクロミック指示薬を含有する溶液は少なくとも15パーセントのアルコールを含む。さらなる局面において、ソルバトクロミック指示薬を含有する溶液は少なくとも20パーセントのアルコールを含む。さらなる局面において、ソルバトクロミック指示薬を含有する溶液は少なくとも7パーセントのアルコールを含む。さらなる局面において、ソルバトクロミック指示薬を含有する溶液は少なくとも5パーセントのアルコールを含む。さらなる局面において、ソルバトクロミック指示薬を含有する溶液は少なくとも3パーセントのアルコールを含む。別の局面において、アルコールは最終溶液において水に希釈される。
【0027】
態様において、ソルバトクロミック指示薬は、等量のサトウダイコン抽出物および等量のウコン抽出物を含む。ある態様において、ソルバトクロミック指示薬は、2部のサトウダイコン抽出物および1部のウコン抽出物を含む。ある態様において、ソルバトクロミック指示薬は、1部のサトウダイコン抽出物および2部のウコン抽出物を含む。ある態様において、ソルバトクロミック指示薬は、2部のサトウダイコン抽出物および3部のウコン抽出物を含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、フィラメントは、限定されることなく、ソルバトクロミック指示薬を含む組成物の吸収またはコーティングに適した、天然または合成の、任意の材料を指す。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬はベタインを含む。好ましい態様において、ベタインはサトウダイコン球根由来の抽出物中に存在する。一態様において、フィラメントは多孔性または非多孔性であり得る。さらなる態様において、フィラメントは、医療処置における使用に適している。さらなる態様において、フィラメントは、創傷縫合糸としての使用に適している。別の態様において、フィラメントは、創傷被覆材としての使用に適している。フィラメントの非限定的な例には、ガーゼ、医療用スワブ、綿、プロリーン、絹、ポリエステル、カットグット、ポリグラクチン、ポリグリコール、ポリグレカプロン、ポリジオキサノン、ポリプロピレン、ポリアミド、およびそれらの混合物が含まれる。さらなる態様において、フィラメントは合成繊維から構成される。さらなる態様において、フィラメントは天然繊維から構成される。
【0029】
態様において、縫合糸または創傷被覆材などの、フィラメントは、本発明のソルバトクロミック指示薬で飽和され、注入され、コーティングされ、または別の方法で処理され得る。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬はベタインを含む。好ましい態様において、ベタインはサトウダイコン球根由来の抽出物中に存在する。さらなる局面において、ソルバトクロミック指示薬を含む溶液を、創傷への適用前に縫合糸または創傷被覆材へ添加する方法を提供する。別の局面において、ソルバトクロミック指示薬を含む溶液を、創傷への適用後に縫合糸または創傷被覆材へ添加する方法を提供する。これらの態様の各々において、細菌の存在によって引き起こされるpH変化によりもたらされる色変化は、ヒトの眼だけで検出するのに十分顕著である。
【0030】
本明細書で使用される場合、創傷部位は、皮膚の表面が破壊されたまたは擦り剥かれた、ヒトまたは動物の、身体上の場所である。ある局面において、手術部位は創傷部位である。限定されることなく、創傷は、裂傷、切り傷、深い切り傷、断裂、穴、切開、または病変であり得る。さらなる局面において、創傷部位は、細菌の増殖および/または感染を起こしやすい任意の環境であり得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、手術部位は、手術が行われた、ヒトまたは動物のいずれかの、身体の特定の部分として本開示において定義される。手術部位はまた、裂傷、切り傷、深い切り傷、断裂、穴、切開、または病変などの他の開放創が発生した身体上の部位を含み得る。手術部位感染はこれらの部位のいずれかで発生し得、従来の方法を用いて検出するのに長い時間がかかる場合がある。
【0032】
創傷部位感染にしばしば関連する細菌としては、非限定的な例では、スタフィロコッカス亜種(Staphylococcus subspecies (ssp.))、ストレプトコッカス(Streptococcus)亜種、シュードモナス(Pseudomonas)亜種、エシェリキア(Escherichia)亜種、エンテロコッカス(Enterococcus)亜種、プロテウス(Proteus)亜種、セラチア(Serratia)亜種、エンテロバクター(Enterobacter)亜種、アセチノバクター(Acetinobacter)亜種、およびクレブシエラ(Klebsiella)亜種が挙げられる。創傷部位感染にしばしば関連するさらなる細菌としては、これらに限定されないが、化膿レンサ球菌、緑膿菌、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、エンテロバクター・クロカエ(Enterobacter clocae)、アセチノバクター・アニトラタス(Acetinobacter anitratus)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌、スタフィロッカス・アウレウス(Staphyloccus aureus)、およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が挙げられる。
【0033】
本明細書で使用される場合、縫合糸は、手術後に体組織を一緒に保持することによって、切開、穿刺、裂傷などを閉じるために一般的に使用される医療デバイス(例えば手術部位または創傷部位に存在するものなど)を指す。縫合糸は、典型的に、開いた体組織を通して縫い付けられる、針に接続された糸である。縫合糸は外科結びを用いて固定される。ある態様において、縫合糸は、本開示のソルバトクロミック指示薬で飽和される。別の態様において、縫合糸は、本開示のソルバトクロミック指示薬でコーティングされる。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬はベタインを含む。好ましい態様において、ベタインはサトウダイコン球根由来の抽出物中に存在する。
【0034】
創傷被覆材は、創傷または手術部位を囲むまたは封じ込めるために一般的に使用される。創傷被覆材の非限定的な例には、ガーゼスポンジ、ガーゼ包帯、非接着性パッド、非接着性創傷ドレッシング、フォームドレッシング、アルギン酸カルシウム、ヒドロゲルドレッシング、親水コロイド、アルギン酸塩、コンポジット、および透明ドレッシングが含まれる。一態様において、本開示の任意のソルバトクロミック指示薬は、任意の創傷被覆材と併せて使用することができる。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬はベタインを含む。好ましい態様において、ベタインはサトウダイコン球根由来の抽出物中に存在する。
【0035】
本明細書で使用される場合、薄膜コーティングは、本開示の任意のソルバトクロミック指示薬を含む材料上に物質を堆積させることを指す。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬はベタインを含む。好ましい態様において、ベタインはサトウダイコン球根由来の抽出物中に存在する。さらなる態様において、薄膜コーティングは、外部環境と本開示のソルバトクロミック指示薬との相互作用を可能にする。ある態様において、本発明の薄膜コーティングは、パリレンCまたは類似の特性を有する任意の好適な物質の薄膜コーティングである。薄膜コーティングは、本開示の任意のソルバトクロミック指示薬を含む任意の材料上にコーティングすることができる。薄膜コーティングは、本開示の任意のソルバトクロミック指示薬を含む任意の材料上に堆積させることができる。
【0036】
ある局面において、本開示は、創傷と、少なくとも1つのソルバトクロミック指示薬を含むフィラメントとを接触させる工程;その少なくとも1つのソルバトクロミック指示薬の視覚的変化に基づいて、pHの変化を検出する工程;および、その視覚的変化に基づいて細菌感染を診断する工程、を含む、方法を提供する。さらなる態様において、少なくとも1つのソルバトクロミック指示薬は、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物である。さらなる態様において、溶液は、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む。さらなる態様において、溶液は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む。ある局面において、溶液は少なくとも13パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも15パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも20パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも7パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも5パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも3パーセントのアルコールをさらに含む。別の局面において、アルコールは最終溶液において水に希釈される。別の態様において、ソルバトクロミック指示薬はベタインである。別の態様において、創傷を縫合糸の形態のフィラメントと接触させる。別の態様において、創傷を創傷被覆材の形態のフィラメントと接触させる。さらなる態様において、フィラメントは薄膜コーティングでコーティングされる。
【0037】
ある局面において、本開示は、創傷をフィラメントと接触させる工程;少なくとも1つのソルバトクロミック指示薬を含む溶液をそのフィラメントへ塗布する工程;その少なくとも1つのソルバトクロミック指示薬の視覚的変化に基づいてpHの変化を検出する工程;および、その視覚的変化に基づいて細菌感染を診断する工程、を含む、方法を提供する。さらなる態様において、少なくとも1つのソルバトクロミック指示薬は、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物である。さらなる態様において、溶液は、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む。さらなる態様において、溶液は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む。ある局面において、溶液は少なくとも13パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも15パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも20パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも7パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも5パーセントのアルコールをさらに含む。ある局面において、溶液は少なくとも3パーセントのアルコールをさらに含む。別の局面において、アルコールは最終溶液において水に希釈される。別の態様において、ソルバトクロミック指示薬はベタインである。別の態様において、創傷を縫合糸の形態のフィラメントと接触させる。別の態様において、創傷を創傷被覆材の形態のフィラメントと接触させる。さらなる態様において、フィラメントは薄膜コーティングでコーティングされる。
【0038】
ある局面において、本開示は、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の第1抽出物を調製する工程;少なくとも1つのウコン根由来の第2抽出物を調製する工程;および、アルコールを含む溶液中で該第1および第2抽出物を組み合わせる工程、を含む、方法を提供する。ある態様において、溶液は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む。さらなる局面において、溶液は少なくとも13パーセントのアルコールをさらに含む。さらなる局面において、溶液は少なくとも15パーセントのアルコールをさらに含む。さらなる局面において、溶液は少なくとも20パーセントのアルコールをさらに含む。さらなる局面において、溶液は少なくとも7パーセントのアルコールをさらに含む。さらなる局面において、溶液は少なくとも5パーセントのアルコールをさらに含む。さらなる局面において、溶液は少なくとも3パーセントのアルコールをさらに含む。別の局面において、アルコールは最終溶液において水に希釈される。別の態様において、方法は、フィラメントへ溶液を塗布することを含む。さらなる態様において、フィラメントは、縫合糸、スワブ、ガーゼスポンジ、ガーゼ包帯、非接着性パッド、および非接着性創傷ドレッシングからなる群より選択される形態である。別の態様において、方法は、フィラメントを薄膜コーティング中に封入する工程を含む。さらなる態様において、薄膜コーティングはパリレンCのコーティングである。さらなる態様において、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の第1抽出物および少なくとも1つのウコン根由来の第2抽出物を、細胞壁および細胞膜を破裂させるために超音波処理または同等の方法を用いて調製する。
【0039】
ある局面において、本開示は、ソルバトクロミック指示薬を含む、創傷部位での細菌感染の検出における使用のための組成物であって、ここで、該ソルバトクロミック指示薬がpH応答性視覚的指示薬である、組成物を提供する。別の局面において、ソルバトクロミック指示薬は、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物を含む。別の態様において、ソルバトクロミック指示薬は、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む。さらなる態様において、ソルバトクロミック指示薬は、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物および少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む。ある態様において、ソルバトクロミック指示薬は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも13パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも15パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも20パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも7パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも5パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも3パーセントのアルコールを含む。別の局面において、アルコールは最終溶液において水に希釈される。別の局面において、アルコールはイソプロピルアルコールである。
【0040】
ある局面において、本開示は、ソルバトクロミック指示薬を含む、手術部位での細菌感染の検出における使用のための組成物であって、ここで、該ソルバトクロミック指示薬がpH応答性視覚的指示薬である、組成物を提供する。別の局面において、ソルバトクロミック指示薬はベタインを含む。別の態様において、ソルバトクロミック指示薬は、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む。さらなる態様において、ソルバトクロミック指示薬は、ベタインおよび少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む。別の態様において、ソルバトクロミック指示薬は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも13パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも15パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも20パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも7パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも5パーセントのアルコールを含む。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬は少なくとも3パーセントのアルコールを含む。別の局面において、アルコールは最終溶液において水に希釈される。別の局面において、アルコールはイソプロピルアルコールである。
【0041】
ある局面において、本開示は、ソルバトクロミック指示薬およびフィラメントを含む組成物を提供する。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬はベタインを含む。好ましい態様において、ベタインはサトウダイコン球根由来の抽出物中に存在する。ある態様において、フィラメントは、綿、プロリーン、絹、ポリエステル、カットグット、ポリグラクチン、ポリグリコール、ポリグレカプロン、ポリジオキサノン、ポリプロピレン、およびポリアミドからなる群より選択される。別の態様において、フィラメントは薄膜コーティングを含む。さらなる態様において、薄膜コーティングはパリレンCを含む。
【0042】
ある局面において、本開示は、創傷部位でのまたは上での使用のためのソルバトクロミック指示薬を含む組成物を提供する。ある局面において、ソルバトクロミック指示薬はベタインを含む。好ましい態様において、ベタインはサトウダイコン球根由来の抽出物中に存在する。ある態様において、創傷部位は人体上にある。別の態様において、創傷部位は、動物体上にある。さらなる態様において、動物は、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、ブタ、ウマ、およびロバからなる群より選択される。
【0043】
本明細書に提供される組成物および方法が、本明細書に開示されていないが、細菌増殖の検出が既知の必要性である任意の分野に関連する用途に適用できることは、当業者によって理解される。例えば、本明細書に提供される組成物および方法は、食品産業における食品表面または調製表面上の細菌増殖の検出における使用に適合させることができる。ある局面において、食品産業における使用は、非限定的な様式で、プロ用厨房、産業用厨房、個人用厨房、食品貯蔵施設、食品貯蔵冷蔵庫、食品貯蔵冷凍庫などにおいて想定される。細菌増殖の検出についての既知の必要性がある生物医学産業においても、さらなる用途が想定される。例えば、カテーテルの使用は、多くの医療分野、すなわち腎臓学において一般的であり、細菌の検出のための組成物および方法についての必要性がある。開示される組成物を組み込んだカテーテルは、これらの必要性を満たすことができる。さらに、多孔性ではない、あるいはその逆で追加の薬剤なしでは開示のソルバトクロミック指示薬の不十分な取り込みを示す材料へ結合親和性を提供する追加の薬剤が、本出願の組成物へ添加され得ることが想定される。このようにして、pH変化によって示される細菌増殖の検出に使用するために、固体表面をソルバトクロミック指示薬で処理し、薄膜コーティングでコーティングすることができる。
【0044】
以下の例示的で非限定的な態様が想定される。
【0045】
態様1:
少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物、および少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む、組成物。
【0046】
態様2:
フィラメントをさらに含む、態様1記載の組成物。
【0047】
態様3:
フィラメントが、縫合糸の形態である、態様1または2記載の組成物。
【0048】
態様4:
前記フィラメントを封入している薄膜コーティングをさらに含む、態様1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0049】
態様5:
薄膜コーティングが、パリレンCを含む、態様1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【0050】
態様6:
ソルバトクロミック指示薬を含む、創傷部位での細菌感染の検出における使用のための組成物であって、
ソルバトクロミック指示薬が、pH応答性視覚的指示薬であり、
組成物が、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物をさらに含む、
組成物。
【0051】
態様7:
ソルバトクロミック指示薬が、ベタインを含む、態様6記載の組成物。
【0052】
態様8:
ソルバトクロミック指示薬が、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物を含む、態様6または7記載の組成物。
【0053】
態様9:
少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールをさらに含む、態様6~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0054】
態様10:
フィラメントをさらに含む、態様6~9のいずれか1つに記載の組成物。
【0055】
態様11:
フィラメントが、縫合糸、ガーゼ、ガーゼスポンジ、ガーゼ包帯、非接着性パッド、および非接着性創傷ドレッシングからなる群より選択される形態である、態様6~10のいずれか1つに記載の組成物。
【0056】
態様12:
前記フィラメントを封入している薄膜コーティングをさらに含む、態様6~11のいずれか1つに記載の組成物。
【0057】
態様13:
薄膜コーティングが、パリレンCを含む、態様6~12のいずれか1つに記載の組成物。
【0058】
態様14:
少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の第1抽出物を調製する工程、
少なくとも1つのウコン根由来の第2抽出物を調製する工程、および
アルコールを含む溶液中に該第1および第2抽出物を組み合わせる工程
を含む、方法。
【0059】
態様15:
フィラメントへの溶液の塗布をさらに含む、態様14記載の方法。
【0060】
態様16:
フィラメントを薄膜コーティング中に封入する工程をさらに含む、態様14または15記載の方法。
【0061】
態様17:
薄膜コーティングが、パリレンCを含む、態様14~16のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
態様18:
フィラメントが、縫合糸、ガーゼスポンジ、ガーゼ包帯、非接着性パッド、および非接着性創傷ドレッシングからなる群より選択される形態である、態様14~17のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
態様19:
第1および第2抽出物を、超音波処理または同等のプロセスによって調製する、態様14~18のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
態様20:
溶液が、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールの濃度を含む、態様14~19のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
態様21:
ソルバトクロミック指示薬を含む、創傷部位での細菌感染の検出における使用のための組成物であって、
ソルバトクロミック指示薬が、pH応答性視覚的指示薬を含む、
組成物。
【0066】
態様22:
少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物を含む、創傷部位での細菌感染の検出における使用のための組成物。
【0067】
態様23:
少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物および少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む、創傷部位でのpH変化の検出における使用のための組成物。
【0068】
態様24:
少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物、およびイソプロピルアルコールを含む、創傷部位でのpH変化の検出における使用のための組成物。
【0069】
態様25:
少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物、および少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む、創傷部位でのpH変化の検出における使用のための組成物。
【0070】
態様26:
フィラメント、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物、および少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む、創傷部位でのpH変化の検出における使用のための組成物。
【0071】
態様27:
フィラメント、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物、およびイソプロピルアルコールを含む、創傷部位でのpH変化の検出における使用のための組成物。
【0072】
態様28:
フィラメント、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物、および少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む、創傷部位でのpH変化の検出における使用のための組成物。
【0073】
態様29:
ベタインを含む、創傷部位での細菌感染の検出における使用のための組成物。
【0074】
態様30:
ベタインおよび少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む、創傷部位での細菌感染の検出における使用のための組成物。
【0075】
態様31:
フィラメントおよびベタインを含む、創傷部位でのpH変化の検出における使用のための組成物。
【0076】
態様32:
フィラメント、ベタイン、および少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む、創傷部位でのpH変化の検出における使用のための組成物。
【0077】
態様33:
創傷部位でのpH変化の検出における使用のための、フィラメント、ベタイン、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物、およびイソプロピルアルコールを含む組成物。
【0078】
態様34:
創傷部位でのpH変化の検出における使用のための、フィラメント、ベタイン、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物、および少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む組成物。
【0079】
態様35:
創傷部位でのpH変化の検出における使用のための、フィラメント、ベタイン、および少なくとも1つのウコン根由来の抽出物を含む組成物。
【0080】
態様36:
フィラメントが、綿、プロリーン、絹、ポリエステル、カットグット、ポリグラクチン、ポリグリコール、ポリグレカプロン、ポリジオキサノン、ポリプロピレン、ポリアミドからなる群より選択される、態様21~35のいずれか1つに記載の組成物。
【0081】
態様37:
フィラメントが、薄膜コーティングをさらに含む、態様21~36のいずれか1つに記載の組成物。
【0082】
態様38:
薄膜コーティングが、パリレンCを含む、態様21~37のいずれか1つに記載の組成物。
【0083】
態様39:
少なくとも1つのウコン根由来の抽出物が、組成物の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、または60%を構成する、態様23~28、30、および32~35のいずれか1つに記載の組成物。
【0084】
態様40:
少なくとも1つのサトウダイコン球根の球根由来の抽出物が、組成物の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、または60%を構成する、態様22~28および32~35のいずれか1つに記載の組成物。
【0085】
態様41:
人体上の創傷部位上の細菌感染を検出することができる、態様1~13および21~40のいずれか1つに記載の組成物。
【0086】
態様42:
動物体上の創傷部位上の細菌感染を検出することができる、態様1~13および21~40のいずれか1つに記載の組成物。
【0087】
態様43:
動物が、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、ブタ、ウマ、およびロバからなる群より選択される、態様42に記載の組成物。
【0088】
態様44:
ベタイン、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物、および少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールを含む溶液を含むフィラメントを創傷部位に適用する工程、
変色指示薬の色変化を視覚的に検出する工程、および
感染の有無を診断する工程
を含む方法であって、
変色指示薬が塩基性pHと接触する場合に、色変化が生じる、
方法。
【0089】
態様45:
創傷被覆材を創傷部位に適用する工程、
ベタインを含む溶液を創傷被覆材に適用する工程、
変色指示薬の色変化を視覚的に検出する工程、および
感染の有無を診断する工程
を含む方法であって、
変色指示薬が塩基性pHと接触する場合に、色変化が生じる、
方法。
【0090】
態様46:
溶液が、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物、および少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールをさらに含む、態様29または30記載の方法。
【0091】
態様47:
感染が、スタフィロコッカス亜種、ストレプトコッカス亜種、シュードモナス亜種、エシェリキア亜種、エンテロコッカス亜種、プロテウス亜種、セラチア亜種、エンテロバクター亜種、アセチノバクター亜種、およびクレブシエラ亜種からなる群より選択される、態様27記載の方法。
【0092】
態様48:
動物に対して行われる、態様14~20および44~47のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
態様49:
動物が、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、ブタ、ウマ、およびロバからなる群より選択される、態様48記載の方法。
【0094】
態様50:
外食産業における使用が可能である、態様1~13および21~40のいずれか1つに記載の組成物。
【0095】
態様51:
カテーテルに適用される、態様1~13および21~40のいずれか1つに記載の組成物。
【0096】
態様52:
ソルバトクロミック指示薬を含む組成物であって、
該ソルバトクロミック指示薬がpH応答性視覚的指示薬であり、
該組成物が、少なくとも1つのウコン根由来の抽出物をさらに含む、
組成物。
【0097】
態様53:
前記ソルバトクロミック指示薬が、ベタインである、態様52に記載の組成物。
【0098】
態様54:
前記ソルバトクロミック指示薬が、少なくとも1つのサトウダイコン球根由来の抽出物である、態様52または53に記載の組成物。
【0099】
態様55:
少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または少なくとも20%のアルコールをさらに含む、態様52~54のいずれか1つに記載の組成物。
【0100】
態様56:
フィラメントをさらに含む、態様52~55のいずれか1つに記載の組成物。
【0101】
態様57:
前記フィラメントが、縫合糸、ガーゼ、ガーゼスポンジ、ガーゼ包帯、非接着性パッド、および非接着性創傷ドレッシングからなる群より選択される形態である、態様52~56のいずれか1つに記載の組成物。
【0102】
態様58:
前記フィラメントを封入している薄膜コーティングをさらに含む、態様52~57のいずれか1つに記載の組成物。
【0103】
態様59:
前記薄膜コーティングが、パリレンCを含む、態様52~58のいずれか1つに記載の組成物。
【0104】
以上、本開示を一般的に説明したが、例示として提供され、また、指定されない限り、本開示の限定を意図するものではない、以下の実施例を参照することによって本開示がより容易に理解される。
【実施例
【0105】
実施例1:pHによって色を変える実行可能な材料を決定する
少なくとも1つのサトウダイコン(ビート)植物の球根を、およそ200gの小片に切断する。この切断片を、ビーカー中の蒸留水400ミリリットル(ml)へ添加し、400℃で煮沸する。ポリエステル綿混紡のフィラメント材料を2メートルの長さのひもに切断し、沸騰混合物中へ入れて撹拌し、頻繁に撹拌しながら少なくとも30分間煮沸する。沸騰後、フィラメントを取り出し、非吸収性表面上で乾燥させる。このプロセスを、ヤーン、ポリエステル、綿、バイクリル、およびモノクリルを含む様々な種類の材料で繰り返す。
【0106】
乾燥後、フィラメント材料の各々を、pH5、pH7(中性、対照)、またはpH9のいずれかである溶液で処理して、ソルバトクロミック反応中の視覚応答の強度を決定する。溶液はpH5で赤、pH9で紫に見える。図1Aを参照のこと。pH9の溶液で処理された材料は、pH9とpH5を明確に区別する色応答を示した。ポリエステル綿混紡は最も堅牢な色反応を示した。図1BおよびCを参照のこと。ヤーン(75%ビスコースおよび25%ポリエステル)もpH9で堅牢な色変化を示した。抽出物を綿棒へ添加し、水および91%イソプロピルアルコールも添加して、pH5およびpH9の溶液に対して試験することによって、サトウダイコン抽出物の色変化反応をさらに試験する。図2を参照のこと。91%イソプロピルアルコールの添加は、色変化反応に影響を与えず、抽出物含有溶液の溶解性を助ける。余分な水の添加は色変化反応を減らし得る。図2を参照のこと。
【0107】
実施例2:サトウダイコン抽出物の作製
サトウダイコンの抽出物を、250グラムのサトウダイコン球根を小さなキューブに切断することによって作製する。サトウダイコンキューブを600mlの蒸留水へ添加し、400℃で少なくとも45分間煮沸する。混合物を加熱から外し、冷却し、その後、エマージョンブレンダーでブレンドする。あるいは、混合物を超音波処理するか、または同等の処理を施すことができる。次いで混合物を加熱に戻し、少なくとも30分間煮沸する。次いで混合物を加熱から外し、冷却する。100mlの91%イソプロピルアルコールを添加し、混合物をストレーナーに注ぎ、残っている固形材料を除去する。すべての固体材料が除去されるまで、必要に応じて濾過ステップを繰り返すことができる。
【0108】
実施例3:ウコン抽出物の作製
ウコン(ターメリック)の抽出物を、500グラムのターメリック根を小さなキューブに切断することによって作製する。ウコンキューブを1200mlの蒸留水へ添加し、400℃で少なくとも45分間煮沸する。混合物を加熱から外し、冷却し、その後、エマージョンブレンダーでブレンドする。あるいは、混合物を超音波処理するか、または同等の処理を施すことができる。次いで混合物を加熱に戻し、少なくとも30分間煮沸する。次いで混合物を加熱から外し、冷却する。100mlの91%イソプロピルアルコールを添加し、混合物をストレーナーに注ぎ、残っている固形材料を除去する。すべての固体材料が除去されるまで、必要に応じて濾過ステップを繰り返すことができる。
【0109】
実施例4:ソルバトクロミック混合物の作製
サトウダイコンの抽出物およびウコンの抽出物を、それぞれ実施例2および3に記載されるように調製する。およそ10%のイソプロピルアルコールを含むソルバトクロミック混合物を、サトウダイコンの抽出物およびウコンの抽出物を等量混合することによって調製する。ソルバトクロミック混合物は、実施例1に記載されるサトウダイコンの抽出物と同様の方法で使用することができる。
【0110】
実施例5:ソルバトクロミック混合物は抗菌特性を含む
実施例1および2のソルバトクロミック混合物が抗菌特性を有するかどうかを調べるために、サトウダイコン球根の抽出物を培養中の大腸菌へ曝露した。LB寒天培地または同様のものを含有するペトリ皿を、標準的な手順を使用して作製する。標準的な実験室手順を使用して、ペトリ皿に大腸菌を接種する。フィラメント材料を実施例1、2、3、または4のソルバトクロミック混合物で処理し、一緒に煮沸して滅菌する。短い冷却期間の後、フィラメント材料をペトリプレートの半分に配置し、残りの半分は陽性増殖対照である。プレートを37℃で12時間インキュベートする。インキュベーション後、ペトリプレートの陽性増殖対照側は正常な増殖を示すが、ソルバトクロミック混合物で処理された側は増殖を示さず、ソルバトクロミック混合物の抗菌特性が確認される。図3を参照のこと。
【0111】
実施例6:ソルバトクロミック混合物を含む材料の開発
生物医学的環境または外食産業などの、細菌増殖が問題となる任意の他の環境における細菌感染を診断するのに有用なソルバトクロミック指示薬を含む材料を作製するために、任意の形態の滅菌フィラメントを使用することができる。
【0112】
例えば、縫合糸に適した任意の材料を使用して、ソルバトクロミック混合物を含む縫合糸を作製することができる。フィラメント材料を、実施例4のソルバトクロミック混合物35 mlを含むチューブへ添加する。材料をソルバトクロミック混合物中に室温で48時間浸す。48時間後、材料をソルバトクロミック混合物から取り出し、非吸収性表面上で乾燥させる。
【0113】
実施例7:処理フィラメントの薄膜コーティング
実施例5におけるソルバトクロミック混合物を含んで作製された材料は、外部環境との相互作用を可能にしながらソルバトクロミック混合物を閉じ込めるために薄膜コーティングで処理することができる。例えば、パリレンCの薄膜コーティング(図4A)は、本開示のソルバトクロミック混合物と良好に機能し、外部環境におけるpHの検出を可能にするのに十分に透過性でありながらソルバトクロミック混合物を閉じ込めることが示されている。簡単に言えば、任意の堆積プロセスを使用して薄膜コーティングを適用することができる。ここで、ソルバトクロミック混合物で処理された縫合糸は、VSiパリレンC堆積プロセスを用いてコーティングされる(図4B、VSi Parylene, Broomfield Colorado, 80021)。パリレンCは、図4Bに示されるように、液体促進接着プロトコルおよびその後のコーティングを使用して堆積される。
【0114】
パリレンC処理縫合糸を、皮膚を模倣する材料に縫い付ける。3セットの縫合糸を設定し、1つをpH5溶液で処理し、1つをpH9溶液で処理し、1つは対照である。図5A~Cを参照のこと。適切なpHの溶液を時点ゼロとして縫い目に添加し、対照は処理しない。図5D~Fを参照のこと。10分後に、色変化反応がpH9溶液に応答して見られ得、一方、pH5溶液は色変化を引き起こさない(図5Gおよび5Iを比較)。パリレンCは、人工膜の下に拡散したpH9溶液の吸収を依然として可能にすることに注目されたい。これは、薄膜コーティングが縫合糸中への取り込みおよびその後の色変化に影響を与えないことを実証している(対照スティッチの微妙な色の変化、図5Hを参照)。
【0115】
実施例8:細菌感染の診断に有用な追加のソルバトクロミック指示薬の同定
塩基性pH環境に応答して目に見える色変化反応を可能にするソルバトクロミック特性を有する任意の物質を、本明細書に開示される方法において使用するためのソルバトクロミック指示薬を作製するために使用することができる。例えば、赤キャベツまたはブラウクラウトとしても公知の、紫キャベツ(紫または赤の葉を有するブラッシカ・オレラセア(Brassica oleracea))は、好適な特性を有し、pH9環境に応答して強い色変化を引き起こすことが示される。図6Aを参照のこと。
【0116】
250グラムの紫キャベツの葉を小さなストリップに切断し、600mlの400℃蒸留水へ添加し、少なくとも45分間沸騰させる。ストリップを加熱から外し、10分間冷却する。冷却期間の後、エマージョンブレンダーを使用して細胞膜を破壊する。超音波処理または任意の同等の手順もまた、紫色キャベツ葉抽出物を作製するために使用することができる。次いで混合物を加熱に戻し、さらに30分間煮沸する。少なくとも10分間冷却した後、100mlの91%イソプロピルアルコールを溶液へ添加する。混合物をストレーナーに注ぎ、残っている固形材料を除去する。すべての固体材料が除去されるまで、必要に応じて濾過ステップを繰り返すことができる。キャベツ抽出物は、単独でまたはサトウダイコン抽出物と組み合わせて用いることができる。図6Aおよび6Bを参照のこと。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
【国際調査報告】