(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ペレット製造窯での焼成ペレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/14 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
C22B1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023554931
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 BR2022050042
(87)【国際公開番号】W WO2022187919
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】BR102021004299-0
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510277338
【氏名又は名称】ヴァーレ、ソシエダージ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】VALE S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ、デ、アシス、ドゥトラ、マセード
(72)【発明者】
【氏名】クレイトン、ゴンサルベス、ロバティ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ、ボイヤー、フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ヤゴ、モライス、ゾコリ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA05
4K001BA24
4K001CA17
4K001GA10
(57)【要約】
本発明はペレット製造方法に関する。本発明はペレット製造窯(10)での焼成ペレットの製造方法を提供し、この方法は、(i)ペレット製造窯(10)で焼成されるグリーンペレット(20)の層を準備するステップと、(ii)ペレット製造窯(10)でグリーンペレット(20)を焼成する前に燃料ブリケット(30)をグリーンペレット(20)の層に追加するステップと、(iii)ペレット製造窯(10)でグリーンペレット(20)を焼成するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット製造炉(10)における焼成ペレットの製造プロセスであって、
前記ペレット製造炉(10)で焼成されるグリーンペレット(20)の層を準備するステップと、
前記ペレット製造炉(10)で前記グリーンペレット(20)を焼成するステップと、
を含み、
前記プロセスはさらに、
前記ペレット製造炉(10)で前記グリーンペレット(20)を焼成する前に燃料ブリケット(30)を前記グリーンペレット(20)の層に追加するステップ、
を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記燃料ブリケット(30)は前記グリーンペレット(20)の層の上へ追加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
グリーンペレット(20)の層を準備する前記ステップは、少なくとも1つの火格子台車(40)上で行われる、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記燃料ブリケット(30)はバイオマスまたは化石燃料に由来する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
焼成後に前記ペレットをふるい分けするステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記燃料ブリケット(30)の灰含有量は5%から40%まで幅がある、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記燃料ブリケット(30)の大きさは15mmから45mmまで幅がある、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ペレット製造炉(10)はストレートグレート方式炉である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉱石の塊成化プロセスに関連する。より詳細には、本発明はペレット製造(pelletizing)プロセスに関連する。
【背景技術】
【0002】
鉱石の塊成化作業は、基本的に鉄鉱石および融剤(シリカ、アルミナ、石灰など)からなる装入物を高炉または直接還元炉に、高炉または直接還元反応炉の下流経路でこの装入物にガスが浸透するのに適切な形状および適切な機械的強度で供給することを意図している。既知の塊成作業の中では、ブリケット化、焼結、およびペレット製造が際立った存在である。
【0003】
ペレット製造は、およそ8mm~18mmの直径の、ペレットと呼ばれる球状の塊成物を得ることを含むプロセスである。微粒鉄鉱石を回転させて円盤または円筒状として生成されるペレットは、生ペレット、またはグリーンペレットとして知られる。
【0004】
グリーンペレットはペレット製造炉において1200℃を超える温度の熱処理を受ける。これにより、焼成ペレット、焼結ペレット、または単に「ペレット」と言われる最終生成物が得られる。
【0005】
一般的に焼成として知られる熱処理はペレット製造炉で行われ、焼結として知られる現象である鉄鉱石の微細構造の改変によりグリーンペレットの物理的抵抗力を大幅に高めて、焼成ペレットへ変えることを目的としている。
【0006】
ストレートグレート方式炉(straight-grate furnaces)での焼成または焼結プロセスでは、グリーンペレットは、グリーンペレットを炉の様々な処理領域を通して運ぶ、火格子(グレート)台車(grate car)として知られる容器に収容される。グリーンペレットは火格子台車へ連続的に供給され、ペレット層と呼ばれる全ペレット層が形成される。
【0007】
グリーンペレットの焼成は、炉内のプロセスガスとペレット層の間の熱交換により行われる。バーナ群により化石燃料(通常は燃料油または天然ガス)が消費されることで焼成ガスの温度が制御される。鉄鉱石の粒子間に確立される結合は、温度、装入物がその温度に置かれた時間、および炉の雰囲気の性質の影響を直接受ける。
【0008】
概して、ストレートグレート方式炉のバーナで用いられる化石燃料は高価であり、温室効果ガスの放出を増大させる原因となる。この問題を克服するために、グリーンペレットの内部で固体炭素を追加の熱源として用いることでペレット層の上部と底部の間の温度勾配を小さくすることができて、その結果、バーナの燃料消費を削減することができる。しかし、グリーンペレットの内部で炭素を使用することで焼成ペレットの気孔率が増加し、また特定の段階の後にはペレットの機械的強度が小さくなる。
【0009】
本明細書で提案される発明は、上述した最先端技術の問題を簡易で効率的な方法で解決する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第一の目的は、焼成プロセス中のペレット層内の温度勾配を小さくするペレット製造炉において焼成ペレットを製造するプロセスを提供することである。
【0011】
本発明の第二の目的は、特にバーナにより消費される化石燃料の燃料消費を削減するペレット製造炉において焼成ペレットを製造するプロセスを提供し、温室効果ガス(GHG)の放出を削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の目的を達成するため、本発明はペレット製造炉において焼成ペレットを製造するプロセスを提供し、このプロセスは、(i)ペレット製造炉で焼成されるグリーンペレットの層を準備するステップと、(ii)ペレット製造炉でグリーンペレットを焼成する前に燃料ブリケットをグリーンペレットの層に追加するステップと、(iii)ペレット製造炉でグリーンペレットを焼成するステップと、を含む。
【0013】
以下の詳細な説明では、添付の図、およびそれらの図での各参照番号を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のプロセスが実行されるペレット製造炉の概略断面図を示す。
【
図2】ペレット層が燃料ブリケットと共に置かれている、本発明のプロセスに係る火格子台車を示す。
【
図3】ペレット層と燃料ブリケットが置かれた火格子台車を通るガスの流れを示す。
【
図4A】最先端技術において現在知られている焼成プロセスにおけるペレット層内の温度勾配を示す。
【
図4B】本発明の焼成プロセスにおけるペレット層内の温度勾配を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この後の説明は本発明の好ましい実施形態から始まることをあらかじめ強調しておく。ただし、当業者には明らかであるように、本発明はこの特定の実施形態には限定されない。
【0016】
上述したように、手短に言うと、ペレット製造炉10において焼成ペレットを製造するプロセスは、通常は以下のステップを含む:
(i)ペレット製造炉10で焼成されるグリーンペレット20の層を準備するステップ、
(ii)ペレット製造炉10でグリーンペレット20を焼成するステップ。
【0017】
本発明は、ペレット製造炉10でグリーンペレット20を焼成する前に燃料ブリケット30をグリーンペレット20の層に追加することで、最先端技術の問題を解決する。したがって、焼成プロセス中にグリーンペレット20の層と共に燃料ブリケット30を有することで、ペレット製造炉10内で大量の熱の放出が促進される。このように、燃料ブリケット30は、グリーンペレット20と混合された際に局所的なエネルギーを増大させることで、近くのペレットを減少させて、複数の「ペレットの塊」を生成させる。
【0018】
好ましくは、燃料ブリケット30は
図2および
図3に示されるようにグリーンペレット20の層に追加される。この構成では、燃料ブリケット30を燃やすことで放出されるエネルギーは、ペレット層の上部の層にある燃料ブリケット30の近くのペレットを集中して焼結させることなく、気流によりペレット層全体へ運ばれる(
図3を参照)。
【0019】
図2に示されるように、グリーンペレット20は、グリーンペレット20を特定の速度でペレット製造炉10の様々な処理区域を通して運ぶ、火格子台車40として知られる容器に収容される。好ましくは、焼成ペレットからなる内層50が火格子台車40の表面に置かれて、焼成プロセスの高温から火格子台車40を保護する。したがって、グリーンペレット20は、
図2および
図3に示すように、火格子台車の内層50の上に置かれる。
【0020】
好ましくは、用いられる燃料ブリケット30はバイオマス、特にトウモロコシ由来の炭、サトウキビ由来の炭、ユーカリ由来の炭、もみ殻由来の炭に由来しうる。このように、本発明の手法を実行するのにバイオマス残渣が用いられることで、化石燃料を用いることがなくなり(または、少なくともより少量の化石燃料が用いられて)、温室効果ガスの放出が削減される。あるいは、用いられる燃料ブリケット30は化石燃料、特に無煙炭、石炭鉱物、生石油コークスに少なくとも部分的に由来しうる。各種類の燃料の反応性および発熱量に差異があるため、燃料の量およびペレット炉バーナ10の強度はそれに応じて調整される必要がある。
【0021】
グリーンペレット20の層の上で燃料ブリケット30を用いて行われた工業試験において、製造されたペレットの物理的特性において約5%の改善が観測され、これに加えてペレット層の上部および底部にあるペレットの物理的特性においてより高い均質性が観測された。したがって、本発明のプロセスの高い効率は温度勾配が小さくなることで証明され、温度勾配が小さくなることでペレット層の底部にあるペレットへより大きな熱を伝達することが可能となる。
【0022】
さらに、グリーンペレット20の層の上で燃料ブリケット30を用いることでもたらされた低下した温度勾配によりペレット焼成段階が加速され、ペレット炉10内部の火格子台車の速度を高めることが可能となり、その結果、より高い生産性がもたらされる。
【0023】
図4Aは、先行技術で現在知られている焼成サイクルの最中のペレット層内の温度勾配を示す。
図4Bは、今度は本発明に係るプロセスを用いた焼成サイクルの最中のペレット層内の温度勾配を示す。それゆえ、本発明に係るプロセスを適用した場合に大幅な温度勾配の低下が観測される。
【0024】
燃料ブリケット30の燃焼に由来する灰はペレット層の上部で鉱滓化され、焼成後にペレットのふるい分けをすることで除去することができる。さらに、ふるい分けの後に磁気分離ステップを用いて、副産物をよりうまく活用できるように、燃焼されたブリケットの灰を微粒焼成ペレットから分離することができる。
【0025】
好ましくは、本発明のプロセスで用いられる燃料ブリケット30は異なる構成、特に円筒形、球形、立方体、枕形状とすることができる。さらに、本発明のプロセスで用いられる燃料ブリケット30は、ブリケット化や押し出しなどの任意の燃料塊成プロセスにより製造することができる。
【0026】
好ましくは、本発明で用いられる燃料ブリケット30の灰含有量は、5%~40%である。
【0027】
好ましくは、燃料ブリケット30の大きさは15mm~45mmである。より好ましくは、燃料ブリケット30の大きさは、化石燃料から製造されたものでは15mm~30mmであり、バイオマスから製造されたものでは25mm~45mmである。
【0028】
好ましくは、本発明のプロセスで用いられる投与量は、1トンのグリーンペレット20に対して3kg~15kgの燃料ブリケット30である。より好ましくは、本発明のプロセスで用いられる投与量は、20%~40%の灰含有量を有する燃料ブリケット30では1トンのグリーンペレット20に対して6kg~15kgの燃料ブリケット30であり、5%~20%の灰含有量を有する燃料ブリケット30では1トンのグリーンペレット20に対して3kg~10kgの燃料ブリケット30である。
【0029】
したがって、上で説明したように、本発明は焼成プロセス中のペレット層内の温度勾配を大幅に小さくするペレット製造炉において焼成ペレットを製造するプロセスを提供する。さらに、最先端のペレット製造プロセスと比べて以下の技術的優位性が認められる。
(i)バーナによる燃料消費の削減
(ii)ペレット内部での燃料消費の削減
(iii)ペレット層の通気性の改善
(iv)製造されたペレットの機械的強度の向上
(v)ペレットの特性における均質性の改善、および
(vi)生産性の向上
(vii)バイオマスブリケットを用いた場合の温室効果ガスの放出の削減、これによりペレット製造炉での焼成ペレットの製造プロセスを従来の最先端プロセスよりも大幅に持続可能とする。
【0030】
本願の保護範囲に影響を及ぼす多数の変形が許容される。したがって、本発明は上述した特定の構成/実施形態には限定されないことを指摘しておく必要がある。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット製造炉(10)における焼成ペレットの製造プロセスであって、
前記ペレット製造炉(10)で焼成されるグリーンペレット(20)の層を準備するステップと、
前記ペレット製造炉(10)で前記グリーンペレット(20)を焼成するステップと、
を含み、
前記プロセスはさらに、
前記ペレット製造炉(10)で前記グリーンペレット(20)を焼成する前に燃料ブリケット(30)を前記グリーンペレット(20)の層に追加するステップ、
を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記燃料ブリケット(30)は前記グリーンペレット(20)の層の上へ追加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
グリーンペレット(20)の層を準備する前記ステップは、少なくとも1つの火格子台車(40)上で行われる、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記燃料ブリケット(30)はバイオマス
に、または部分的に化石燃料に由来する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
焼成後に前記ペレットをふるい分けするステップをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記燃料ブリケット(30)の灰含有量は5%から40%まで幅がある、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記燃料ブリケット(30)の大きさは15mmから45mmまで幅がある、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ペレット製造炉(10)はストレートグレート方式炉である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【国際調査報告】