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▶ エレメント シックス (ユーケイ) リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】コンポーネント摩耗を推定する方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B23Q17/09 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556986
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022052593
(87)【国際公開番号】W WO2022233461
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】2106562.8
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517007574
【氏名又は名称】エレメント シックス (ユーケイ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ウィクラマーラッチ チャンデュラ タマリ
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029DD08
3C029DD16
(57)【要約】
本開示は、コンポーネント摩耗を推定するコンピュータ実行式方法に関する。少なくとも1つのクラスタ化分析をコンポーネント使用中に取られた測定値に適用してクラスタを識別し、警告を出すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポーネントの摩耗を推定するコンピュータ実行式方法であって、
第1のクラスタ化分析を第1の複数の測定値に対して実行して、前記第1の測定値中の1つ以上のクラスタを識別するステップを含み、前記第1の測定値は、前記コンポーネントの使用中に取られた前記コンポーネントのパラメータの測定値を含み、
新たなクラスタが前記第1の測定値中に識別された場合に警告を出すステップを含む、方法。
【請求項2】
第2のクラスタ化分析を第2の複数の測定値に対して実行し、前記第2の測定値中の1つ以上のクラスタを識別するステップを含み、前記第2の測定値は、警告が生成された後、前記コンポーネントのさらなる使用中に取られた前記コンポーネントのパラメータの測定値を含み、
新たなクラスタが前記第2の測定値中に識別された場合に警告を出すステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の測定値に対する前記第1のクラスタ化分析を続行し、そして前記第2の測定値を前記第1のクラスタ化分析に導入して、組み合わされた前記第1の測定値と前記第2の測定値中の1つ以上のクラスタを識別するステップと、
新たなクラスタが前記組み合わされた前記第1の測定値と前記第2の測定値中で識別された場合に警告を出するステップとをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1および/または第2のクラスタ化分析は、教師なし機械学習アルゴリズムによって実行される、請求項1~3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記教師なし機械学習アルゴリズムは、前記分析中に決定するクラスタの数を既定しない、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記教師なし機械学習アルゴリズムは、ディリクレ(Dirichlet)過程混合モデルである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記警告は、コンポーネント検査を実行するための推奨である、請求項1~6のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
前記コンポーネントの前記パラメータは、前記コンポーネントの温度、前記コンポーネントに加わる力、および前記コンポーネントからのアコースティックエミッションのうちの1つ以上である、請求項1~7のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記パラメータは、前記コンポーネントからのアコースティックエミッションであり、前記第1および/または前記第2のクラスタ化分析は、候補特徴として複数の隣り合う周波数範囲を用いる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記コンポーネントは、機械加工工具である、請求項1~9のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項11】
各周波数範囲は、前記工具中のチップ形成の所定の調波に対応し、オプションとして、各周波数範囲は、4kHz間隔である、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
コンポーネントの摩耗を検査する方法であって、
請求項1~11のうちいずれか一に記載の前記コンピュータ実行式方法を実施するステップと、
前記コンピュータ実行式方法からの警告出力に応答して、前記コンポーネントに摩耗があるかどうかについて検査するステップと、を含む、方法。
【請求項13】
データ処理装置であって、請求項1~11のうちいずれか一に記載の方法のステップを実施する手段を有する、装置。
【請求項14】
命令を実装したコンピュータプログラムであって、前記命令がコンピュータによって実行されると、それにより、前記コンピュータは、請求項1~11のうちいずれか一に記載の方法のステップを実施する、コンピュータプログラム。
【請求項15】
命令を実装したコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令がコンピュータによって実行されると、それにより、前記コンピュータは、請求項1~11のうちいずれか一に記載の方法のステップを実施する、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンポーネントの摩耗を推定するコンピュータ実行式方法に関する。少なくとも1つのクラスタ化分析をコンポーネントの使用中に取った測定値に適用して、クラスタを識別し、そして警告を出すことができる。
【背景技術】
【0002】
機械のコンポーネントが用いられると、コンポーネントは部分的に摩耗する。摩耗は、コンポーネントの劣化または形状の変化を伴い、多くの場合、機械の別の部分と接触状態にある表面や、外面と接触状態にある表面に発生する。摩耗が化学的、機械的、またはその両方である場合があり、かかる摩耗は、接触部の周囲の条件、例えば、圧力、温度、および潤滑によって深刻になる場合がある。
【0003】
摩耗により、コンポーネントを検査して交換する必要が生じ、と言うのは、摩耗したコンポーネントを使用し続けると、効率が悪くなり、しかも安全ではない場合があるからである。
【0004】
車両では、例えば、通常交換される部品としては、フロントガラス用ワイパーブレード、フィルタ、ブレーキパッド、タイヤ、ベルト、およびシリンダが挙げられる。これらコンポーネントの全ては、摩擦や熱による摩耗の影響を受けやすい。これらコンポーネントのうちの任意の1つの摩耗により、運転される車両の安全性が低くなり、と言うのは、そのコンポーネントが摩耗時に有効性が低くなるからであり(例えば、摩耗したブレーキパッドは、停止機能を不良にする)、しかもコンポーネントが最終的に破損すると、車両から重要な機能が失われる(例えば、フロントガラス用ワイパーブレードが破損すると、悪天候条件下における運転手の視認性が失われる)からである。
【0005】
摩耗はまた、工具と加工物との相対運動によりネットシェイプを作るために材料を切り屑の形態で除去する機械加工プロセス、例えば、金属切削加工の際に有害である。確かに、最も重要であるが避けられない機械加工上の難題のうちの1つは、工具に対する連続的な摩耗である。この場合、工具摩耗は、工具と加工物との相互作用に起因して切削面から材料が削り取られることである。工具摩耗は、機械加工されたコンポーネントに多くの問題を生じさせることが知られており、かかる問題としては、形状および寸法の不一致、振動、およびがたつき、ならびに不十分な表面仕上げが挙げられる。
【0006】
摩耗したまたは損傷した工具で機械加工すると、コンポーネント上の表面欠陥および経時的なクラック伝搬が生じ、その結果、当該コンポーネントが使えず、または早期に廃棄される。その結果、安全を最重要視すべきコンポーネントを機械加工する際、業界は、時間ベースの保守方式を採用し、そして、摩耗状態のいかんに関わらず、工具を設定された時期に廃棄する。一般的に、工具は、耐用年数の50~80%が残存した状態で破棄される場合がある。
【0007】
使用中にコンポーネント摩耗を評価することは、厄介な場合があり、と言うのは、このコンポーネントは、接近できずかつ/あるいは動いている場合があり、その結果、目視検査が役に立つ結果をもたらすことがないからである。車両を例とすると、ブレーキパッドに生じる摩耗の検査は、車輪の取り外し、すなわち、平均的な車両ユーザが行うことができない場合のある作業を必要とする場合がある。ベルトおよび他の内燃機関コンポーネントは、検査するのがさらに困難な場合がある。
【0008】
接近性はまた、機械加工の際に難題となる。機械加工のために使用されるコンポーネント、例えば工具を検査しようとすることには、検査を行っている間、工具を使用中止にしなければならないという追加の欠点がある。工具の設計および試験段階の間、設計者は、「壊れるまで使う(run-to-failure)」手法においてオフライン摩耗測定を選択する場合がある。このやり方は、切削プロセスを断続的に中断し、そして光学顕微鏡を用いて摩耗測定を完了するために機械からの工具の一時的取り外しを必要とする。これは、時間がかかり、しかも費用が高くつく方法であり、この方法はまた、プロセスへの交絡的な(confounding)影響、例えば、第1の機械加工サイクル中の工具と第2の機械加工サイクル中の工具との位置の差をもたらす。位置の差は、切削条件に影響するため、摩耗の進展は、同一期間の機械加工サイクルで異なる場合がある。
【0009】
図1は、工具の寿命の間における様々な状態において費やされた時間の代表的な内訳を示す図である。この例示の代表的な工具の寿命の半分以下が機械加工に費やされており、工具の寿命の残りは、加工物の測定か工具の測定かのいずれかの実施に起因して無駄になる。
【0010】
TCMは、無駄を減らすために、当業界の焦点を予防的アプローチから予測的保守ストラテジーに移すことを目的としている。プロセス効率を高めるため、TCMシステムは、理想的には、測定の際に費やされる時間の減少を助けて機械加工時間を増大させるべきである。
【0011】
教師あり(指導付き)機械学習を用いると、TCM技術を支援することができる。任意の教師あり学習技術の場合と同様、多数の以前に使用された工具に関連したデータを用いてモデルを構築するのがよく、モデルは、以前に使用された工具の測定された劣化と工具の特性との関係を規定しようとする。例えば、教師あり学習技術により作成される単純なモデルは、破損に至るまでの機械加工時間と、工具直径、加工物硬度、および1分間当たりの工具回転数(rpm)との関係を見出してこれを定めることができる。かかるTCM技術は、この場合、新品工具に関し、工具直径、加工物硬度、および1分間当たりの工具回転数(rpm)を機械学習モデルへの入力パラメータとして用いて、破損に至るまでの時間を予測することができる。これは、TCMが機械加工の複雑な性情、様々な動作条件、および摩耗状態の記述的ラベルの利用可能性に起因して、不正確な場合があるということが依然として言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
コンポーネントの停止時間を短縮するとともに安全性をたかめるために、コンポーネントの摩耗の評価の改良が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、添付の独立形式の請求項によって定められる。本発明の実施形態は、従属形式の請求項に記載されている。
【0014】
第1の観点では、コンポーネントの摩耗を推定するコンピュータ実行式方法であって、第1のクラスタ化分析を第1の複数の測定値に対して実行して、第1の測定値中の1つ以上のクラスタを識別するステップを含み、第1の測定値は、コンポーネントの使用中に取られたコンポーネントのパラメータの測定値を含み、新たなクラスタが第1の測定値中に識別された場合に警告を出すステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0015】
このように、本方法は、識別される新たなクラスタを保証するのに値するほど十分な変化が測定パラメータにあった時点を強調することによってコンポーネント摩耗の推定を提供する。
【0016】
本方法は、関連コンポーネントの使用中に取られた測定値を用い、それにより試験コンポーネントの使用または使用中以外のコンポーネントに関連したデータの利用と関連した有害な作用を回避する。したがって、本方法は、より正確であり、と言うのは、本方法は、摩耗モデルを構築しまたは訓練するために用いられるやり方、例えば訓練済み分類器と類似したやり方で使用中のコンポーネントが摩耗するという仮定に立脚していないからである。コンポーネントの摩耗の進展は、コンポーネントのカテゴリーおよびその使用時点での状態に応じて、しかしながら、コンポーネントのランダムな性情、例えば混入や微細構造に起因して容易には測定できずまたは正確には予測できない性質に応じて、広くばらつきがあることがある。したがって、一様な工具特性という仮定を利用することにより、摩耗の推定精度が低下する場合がある。これとは対照的に、本発明の方法は、摩耗を推定する必要がある特定の工具から測定された現時点におけるデータを用いる。コンポーネントの摩耗についてのより正確な推定値を用いると、不必要な検査を回避することによってコンポーネントの停止時間を短縮することができ、他の推定値がそのように指示することができない場合に検査が必要であることを指示することによって安全性を高めることができ、そして工具を破棄する時点で工具について残っているのに無駄になる寿命を短縮することができる。
【0017】
工具の使用中に実施され、新たな測定値を取っているときにアップデートされるクラスタ化分析が有利であり、と言うのは、コンポーネントは、多くの場合、ある特定の摩耗レベルに達したときにこれらコンポーネントの挙動において著しい変化を示すからである。例えば、亀裂が機械加工工具に現れることにより、またはほつれが駆動ベルトに始まることにより、コンポーネントからのアコースティックエミッションが変化し、コンポーネントの周りの力が変化し、あるいは、コンポーネントに接触している摩擦ゾーンのところに生じる温度の変化が生じる場合がある。クラスタ化分析により、測定値のかかる変化を識別することができる。さらに、クラスタ化分析は、警告を出すことができる単純なしきい測定値の実現と比較して有利であり、と言うのは、しきい値に基づく警告は、異常値によるトリガの影響を受けやすいからである。例えば、駆動ベルトとスプロケットとの間の温度の極めて短時間のスパイク(例えば、単一の測定値)がベルトの摩耗に関連していない要因(例えば、デブリが摩擦ゾーンに入ったり素早くこれから出たりすること)によって引き起こされる場合がある。クラスタ化分析は、この異常値を新たなクラスタの開始であるとはみなすことはなく、かくして、不必要な検査、保守、またはコンポーネント廃棄をもたらす警告を出すことはない。
【0018】
警告を出すということは、検査の準備としてまたは安全措置として動作を終わらせるためのコンポーネントおよび/または関連機械のコントローラに対する警告である場合がある。警告を出すことは、オペレータに対する聴覚または視覚信号、または通知として外部装置に送られる警告の発生をさらに含む場合がある。
【0019】
本方法は、第2のクラスタ化分析を第2の複数の測定値に対して実行し、第2の測定値中の1つ以上のクラスタを識別するステップを含み、第2の測定値は、警告が生成された後、コンポーネントのさらなる使用中に取られたコンポーネントのパラメータの測定値を含み、本方法は、新たなクラスタが第2の測定値中に識別された場合に警告を出すステップをさらに含むのがよい。
【0020】
警告を出してコンポーネントを最初に検査した後、コンポーネントは、さらなる使用に適したものとみなされて、その関連の機械に戻される場合がある。さらなる使用中、第2のクラスタ化分析を第1のクラスタ化分析と同様な仕方で実施し、同様な仕方で警告が出される。第2のクラスタ化分析は、第1のクラスタ化分析と同一の利点からの恩恵を受ける。
【0021】
本方法は、第1の測定値に対する第1のクラスタ化分析を続行し、そして第2の測定値を第1のクラスタ化分析に導入して、組み合わされた第1の測定値と第2の測定値中の1つ以上のクラスタを識別するステップと、新たなクラスタが組み合わされた第1の測定値と第2の測定値中で識別された場合に警告を出するステップとをさらに含むのがよい。
【0022】
クラスタ化分析について言えば、コンポーネントの寿命全体を通じて行う場合(グローバル分析)と、例えば検査の際、関連の機械からの直近のコンポーネント取り外し以後の測定値だけを用いる場合(ローカル分析)の両方に利点がある。グローバル分析における技術的動向は、全体的なコンポーネントの摩耗、すなわちコンポーネントの残りの寿命の正確な推定値を提供することができる。これは、新品時や長期間を含む様々な条件下においてコンポーネントの測定値にアクセスできるクラスタ化分析に起因している。しかしながらグローバル分析では、局所的スケールでは重大であり、恐らくは、検査を保証するに足るほど重要であるが、コンポーネントの寿命全体との関係ではそれほど重要とは言えないコンポーネントの挙動の変化の影響を受けにくいと言える。特に、検査後における位置の差により、検査後に取られた測定値が検査前に取られた測定値と非常に離れる場合、グローバル分析は、特に、測定値に現れる摩耗特性の重要な変化の影響を受けない。
【0023】
グローバル分析とローカル分析を並行して行うことで、新たなクラスタの兆候に警告を出すことができ、したがって、コンポーネントの摩耗をより正確に推定することができる。第1および第2のクラスタ化分析により生じる警告は、これら警告がコントローラかオペレータかのいずれかによって識別できるので、互いに区別することができる。例えば、ローカル分析を用いて検査がいつ必要であるかについてモニタする場合、警告は、検査を推奨するためのオペレータに対する通知であるのがよい。グローバル分析により生じる警告は、工具が寿命の終わりに近づいているという、オペレータと管理者の両方に対する通知であるのがよい。
【0024】
第1のクラスタ化分析は、本明細書ではグローバルクラスタ化分析と呼ばれる場合があり、第2のクラスタ化分析は、本明細書ではローカルクラスタ化分析と呼ばれる場合がある。理解されるように、2つの並行に行われる分析だけを説明するが(一方は、寿命測定値を含み、他方は、最後の検査以降の測定値を含む)、任意の数の並行分析を本発明の実施形態に従って実施することができる。例えば、コンポーネントの2回目の検査と5回目の検査との間の測定値に基づくクラスタ化分析を行うことができる。
【0025】
第1および/または第2のクラスタ化分析は、教師なし機械学習アルゴリズムによって実施されるのがよく、第1および/または第2のクラスタ化分析は、分析中に決定するべきクラスタの数を既定することはできない。
【0026】
このように、工具摩耗の推定は、この場合もまた、正確に行われ、と言うのは、この方法は、クラスタの手動で選択された数を利用していないからであり、かかる数は、使用中におけるコンポーネントの挙動を反映していない。クラスタの既定の数は、クラスタ化分析がデータ点(この場合、測定値)を配置しなければならないクラスタがどれくらいの数であるかをクラスタ化分析に指示する。この数は、以前に使用された同様のコンポーネントについての効果的かつ正確な推定を導いたクラスタの数に基づいて決定できる。しかしながら、これには、先の知識に基づく予想精度を制限する場合のあるコンポーネント相互間の差、場合によっては知覚不能な差に関して、上述したのと同一の問題がある。
【0027】
教師なし機械学習アルゴリズムは、ディリクレ(Dirichlet)過程混合モデル(Dirichlet process mixture model:DPMM)である。DPMMの性質は、特にグローバルおよびローカルDPMMが並行して実施される場合、コンポーネントの摩耗の推定に特に適していることが判明した。
【0028】
警告は、コンポーネント検査の推奨であるのがよい。
【0029】
コンポーネントのパラメータは、コンポーネントの温度、コンポーネントに加わる力、およびコンポーネントからのアコースティックエミッションのうちの1つ以上であるのがよい。このように、すなわち、摩耗それ自体の直接的な測定値以外のパラメータの測定値を取ることによって、測定は、コンポーネントの使用中に実施できる。かくして、コンポーネントのその関連の機械からの取り外しを回避することができ、それによりコンポーネントに関する無駄(あそび)時間を短縮し、そして再配置ミスの可能性をなくすことができる。
【0030】
パラメータは、コンポーネントからのアコースティックエミッションであるのがよく、第1および/または第2のクラスタ化分析は、候補特徴として複数の隣り合う周波数範囲を用いるのがよい。
【0031】
アコースティックエミッションは、クラスタ化分析を用いた測定データの分析の際に測定すべき特に効果的なパラメータであることが判明した。教師なしクラスタ化分析は、有利には、訓練データに基づいて訓練されたモデルを利用しておらず、オプションとして、既定の数のクラスタを有していないが、アルゴリズムのための候補特徴に関連した何らかのガイダンスを提供することが有利な場合がある。候補特徴は、アルゴリズムに関心のある変数であり、したがって、教師なしクラスタ化アルゴリズムの場合、候補特徴は、クラスタ化されるデータ点が関連した変数である。周波数ビンは、問題の変数がコンポーネントのアコースティックエミッションである場合、有効な候補特徴である。
【0032】
コンポーネントは、機械加工工具であるのがよい。理解されるように、好ましい実施形態では、コンポーネントが機械加工工具であり、本明細書において説明するコンポーネントの摩耗を推定する方法は、機械の任意のコンポーネント、特に、使用の際に、間接的な測定に適したパラメータを生じさせる機械の任意コンポーネントにとって適しておりかつ有利であり、かかるパラメータとしては、温度、音、力、圧力、光の任意の波長などが挙げられるが、これらには限定されない。車両構成部品に関連した例もまた与えられるが、これまた本発明を限定するものではない。
【0033】
したがって、本明細書において言及する関連機械は、加工物、ロボット制御構成部品、モータなど、すなわち、加工物を機械加工するために用いられる工具それ自体以外のコンポーネントを含む場合がある。先の車両の例では、コンポーネントが駆動ベルトである場合、関連機械は、被動コンポーネント、例えばオルタネータまたはポンプ、ベルトを取り付けるスプロケットなどを含むのがよい。
【0034】
各周波数範囲は、工具中のチップ形成の所定の調波に対応するのがよく、オプションとして、各周波数範囲は、4kHz間隔であるのがよい。チップの形成は、問題のコンポーネントが機械加工工具である場合には特に関連のある要因であり、と言うのは、機械加工工具の長い摺動距離および高いrpmは、チップまたは亀裂形成の影響を特に受けやすくするからである。チップ調波に基づく周波数範囲を用いることによって、新たなクラスタは、チップ形成の新たな調波に達したとき、すなわち、チップが生じるということがますます起こりそうになったときに識別される可能性が高くなる。
【0035】
第2の観点では、コンポーネントの摩耗を検査する方法であって、第1の観点によるコンピュータ実行式方法を実施するステップと、コンピュータ実行式方法からの警告出力に応答して、コンポーネントに摩耗があるかどうかについて検査するステップとを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0036】
第3の観点では、データ処理装置であって、第1の観点のステップを実施する手段を有することを特徴とするデータ処理装置が提供される。データ処理装置は、本明細書において説明する方法のステップを実施することができまたはそのように構成される任意の処理手段であってよい。データ処理装置は、単一の処理ユニット、ワイヤード接続方式の分散システム、またはワイヤレス接続方式の分散システムであるのがよい。変形例として、データ処理装置は、分析が行われるクラウドサーバのホストとして働いてもよい。
【0037】
第4の観点では、命令を実装したコンピュータプログラムであって、命令がコンピュータによって実行されると、それにより、コンピュータは、第1の観点のステップを実施することを特徴とするコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、例えば、モバイルデバイス上で動作するよう構成されたモバイルアプリケーションであるのがよい。
【0038】
第5の観点では、命令を実装したコンピュータ可読記憶媒体であって、命令がコンピュータによって実行されると、それにより、コンピュータは、第1の観点のステップを実施することを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0039】
本発明は、添付の図面と関連して考慮されると、より完全に理解でき、図面において、同一の参照符号は、幾つかの図全体を通じて同一または類似のコンポーネントを示している。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】代表的な工具摩耗試験セットアップで費やされた時間の内訳を示す図である。
図2】ギブスサンプル採取プロセスを示す図である。
図3】本発明の一実施形態としての機械加工セットアップを示す図である。
図4】特定の切削条件でのPcBN工具のスペクトログラムを示す図である。
図5】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A1に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図6】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A2に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図7】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A3に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図8】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A4に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図9】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具B1に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図10】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具B2に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図11】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具B3に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図12】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具B4に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図13】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A5に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図14】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A5に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図15】2つの例示の工具(右‐A4および左‐B3)についてのα値の範囲に関して形成されたクラスタの数を示す図である。
図16】本発明の一実施形態としてのシステム100を示す図である。
図17】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A1に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図18】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A2に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図19】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A3に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図20】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A4に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図21】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具B1に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図22】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具B2に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図23】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具B3に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図24】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具B4に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図25】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A5に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
図26】AEからのチップ生成周波数の調波を入力特徴として用いた試験工具A5に関するDPMMクラスタ化結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施形態を実証するとともに説明するため、機械加工分野における詳細な実施例が提供されている。この実施例では、コンポーネントは、機械加工工具であり、測定パラメータは、アコースティックエミッションである。理解されるように、これは例示に過ぎず、本発明の実施形態としての方法およびシステムは、コンポーネントが使用、曝露、または任意他の手段によって摩耗する任意の数の技術分野に適用できる。同様に、コンポーネントの使用中、好ましくは使用を中断しないよう間接的に測定されるアコースティックエミッション以外のパラメータを説明するクラスタ化アルゴリズムのための入力データとして用いることができる。
【0042】
例えば、クラスタ化分析をデスクトップ型コンピュータ(関連機械)内のファン(コンポーネント)の付近で取られる温度測定値に対して実施することができる。本明細書において詳細に説明するクラスタ化アルゴリズムは、温度測定値に適用することができ、そして新たなクラスタが識別されたときには警告を出すことができる。警告は、例えばファンの交換または点検を促すことができる。
【0043】
今、交絡影響を取り扱う一方で、従来見られなかった工具(通常、機械加工のために使用されたことのない新型の工具であるか、工具摩耗の測定値を得るために直接測定されたことのない工具かのいずれかである)に対する推測精度を維持することができるディリクレ過程混合モデル(DPMM)を用いた現実的なTCMシステムについて説明する。したがって、結果として得られるシステムは、従来の試みよりも汎用性が高くなり、当業界への導入が容易になる可能性を秘めている。
【0044】
ディリクレ過程混合モデルを用いた教師なしクラスタ化アプローチにより、切削プロセスの特性変化をオンラインで検出し、診断に利用する。有用な監視ツールを提供するとともに、このアプローチは、予想に必要な関連の網羅的摩耗測定の必要性を軽減する可能性がある。このモデルは、不規則でかつ予測できない性質の工具摩耗進展に好適であり、と言うのは、考えられる損傷状態を求めるのに必要なクラスタの数がアプリオリに設定されていないからである。その結果、本方法は、工具材料組成の均一および不均一なグループにわたる変動を取り扱うよう構成されている。
【0045】
提案するアプローチは、ここでは、新しい工具の摩耗特性評価のためのトライアルに必要な時間を短縮する方法として示される。図示の実施例では、結果の示すところによれば、このアプローチの結果として肌焼鋼の外径旋削中、試験時間のほぼ30%の減少(平均)が得られる。
【0046】
機械加工中の工具の劣化をモニタするとともに予測する機能は、重要な目的であり、と言うのは、摩耗段階は、機械加工されたコンポーネントの表面品質に対して著しい影響を及ぼすからである。しかしながら、診断および予想のための包括的な状態監視システムを構築するため、工具摩耗についての多岐にわたる測定および知識が必要である。この目的のために損傷情報を含むラベル付けされたデータセットを収集することは、費用が高くつくとともに時間がかかる場合がある。
【0047】
この研究の際、DPMMは、オンライン損傷検出のためのデータの特徴的な変化を検出するための教師なし方法として用いられる。本発明者は、DPMMを研削作業中に集められたアコースティックエミッション(AE)データセットに適用している。考えられるクラスタのアプリオリの数を設定する必要なく、データを収集しているときにDPMMはクラスタ化を可能にし、機械加工プロセスについての徹底的な従来の知識の必要性を減少させる。あらかじめラベル付けされた訓練データの必要性もまたなくなり、データ収集に関連するコストが減少する。
【0048】
この研究は、2つのDPMMを並行に用いることにより試用中における作業を変動させることによって導入される交絡影響に関連した問題を解決する。本発明は、この場合、新たなクラスタ開始を用いて、介入、すなわち工具の手作業による検査を促すことにあった。その結果、プロセスの中断回数を減少させるということが期待された。この目的は、機械加工に費やされる時間を増加し、そして工具測定に費やされる時間を減少させることにあった。データの特性を通し時間によって追跡することによって、もう1つの目標は、破損の前に機械加工プロセスを停止させ、そして早期の工具処分の数を減少させることにあった。この研究には含まれないが、損傷ラベルをモデルに追加することによって半教師ありアプローチを採用することが可能な場合があり、それにより誤検出の数を減少させる。
【0049】
ディリクレ過程
【0050】
DPMMは、データをクラスタ化するための多くの研究分野で用いられている。自然言語処理の分野では、翻訳およびテキスト生成の研究により、研究者は、動詞をクラスタ化するためにDPMMを使用している。この技術を利用して単語を整理するとともに予測する。医学研究では、DPMMは、磁気共鳴画像(MRI)スキャンから脳組織を分類するために使用されている。GMMは、明確に規定された組織形式については効果的に働くが、クラスタの数をDPMMではアプリオリに設定する必要がないため、研究者は、異常な脳データを分類することができた。
【0051】
ディリクレ過程混合ガウスモデルの紹介がこの項に与えられ、この場合、ガウス分布が基本的分布として用いられている。
【0052】
DPMMは、ガウス分布データおよび非ガウス分布データをクラスタ化するために使用できる。DPMMは、無限混合ガウスモデル(Infinite Gaussian Mixture Model:IGMM)とみなすことができ、この場合、ガウス分布の混合がデータをクラスタ化するために用いられる。ここでは、採用されるガウス分布の数は、無限大に向かう場合があり、それにより、任意の非ガウス分布データセットのモデル化が可能であり、すなわち、ガウス分布に従わないデータのクラウドを無限の数の小さなクラスタに分割することができ、これらクラスタは、これら自体、ガウス分布である。IGMMはまた、各クラスタに属する各データ点の確率に関する情報を学習するために使用できる。この考えは、データ内のクラスタを見出す一方で、さらに、パラメータ(寸法、形状)およびこれらクラスタのラベル(クラスタ1,……,クラスタn)を見出すことである。ラベルおよびクラスタのパラメータを一ステップで見出すことは可能ではなく、したがって、ギブスサンプリングが結合確率分布を推定するためにこの研究で用いられる。DPMMがアルゴリズムを適用する前にデータ内に存在する場合のあるクラスタの数についての知識を持つことは必要条件ではなく、すなわち、ギブスサンプラは、アルゴリズムによって既に評価されたデータが現在のデータ点とは十分に異なる場合に新たなクラスタを開始することができる。
【0053】
DPMMの生成モデルが式(1a)~(1e)に示されている。混合ガウスモデルでは、各データ点xi(i=1,……N、Nはデータ点の数である)がガウス分布(式(1a))からサンプリングされ、データのクラスタがラベルciを持つと仮定する。
【0054】
各ガウス分布に関し、共役事前分布を用いて(平均上の正規逆ウィシャート(N|W)分布(式(1b))、およびハイパーパラメータ(μ0,Σ0,κ0,ν0)を含む共分散(式(1c))を用いて、事後分布の閉形式解を得る。データは、正規化され、先のクラスタは、この研究では、ゼロ平均および単位分散ガウス分布を有している。
【0055】
クラスタラベルは、多項分布(式(1d))からサンプリングされている。混合確率πは、各クラスタに属するデータの確率である。これらの確率を計算するため、ディリクレ分布が用いられ、と言うのは、これは多項分布(式(1e))の共役事前分布だからである。πは、ディリクレ過程事前分布の強度パラメータαによって制御される(αは、スケーリングまたはスケールパラメータともいう場合がある)。スケーリングパラメータαは、新たなクラスタが識別される確率を決定し、すなわち、新たなデータ点が既存のクラスタに割り当てられるのではなく、新たなデータ点に対して新たなクラスタが識別される確率は、αに比例する。
【0056】
最終的には、このプロセスの目的は、もっともありそうなラベルを選択する元となるクラスタラベルに関して事後分布を見出すことにある。全てのデータが与えられた全てのクラスタラベルの確率(式(2))を見出すことは極めて困難であり、と言うのは、クラスタパラメータ(μci, Σci)を見出す一方で、さらに、全てのクラスタの混合比率を見出すために各クラスタを同時にサンプリングすることは不可能だからである。
p(c | X) (2)
【0057】
崩壊型ギブスサンプラを実行してこの解を求めることができる。崩壊型ギブスサンプラは、ラベルのサンプルに基づくクラスタパラメータの新たなセットおよびパラメータに基づくラベルの新たなセットを順次サンプリングする(式(3))。図2は、ギブスサンプラがたどるステップを示している。これらサンプリングステップの各々は、共役事前分布の選択のために閉形式で実施されるのがよい。換言すると、クラスタラベルに関する分布およびクラスタパラメータに関する分布を順次見出すのは、有効なマルコフ連鎖モンテカルロ法である。崩壊型ギブスサンプラは、データのウィンドウ上で実施され、その長さは、有効計算パワーに従って特定される。
p(ci | xi, X-i, c-i) (3)
【0058】
式(3)は、関心のある第1の確率分布である。これは、モデルが全てのデータX-i、全ての他のクラスタc-i、および新たなデータ点を有すると仮定すると、クラスタラベルciを有するという確率である。この事後確率は、多項分布を有する。この場合、-iは、データ点iを除く全てのデータ点を意味している。
【0059】
これを計算するため、ギブスサンプラは、データをランダムにクラスタに割り当て、そしてデータ点を順次削除してクラスタパラメータをアップデートするとともに、当該データ点に最適なクラスタを見出す。既存のクラスタ(k=1,……,K)からデータを描く事前分布尤度を式(4)に見出すことができ、この場合、N-i,kは、現在のクラスにおけるデータ点の数であり、Nは、検討されている1つがいったん除去されたときのデータ点の総数である。
【0060】
新たなクラスタ(k*)の事前分布は式(5)を用いて計算される。
【0061】
各クラスタに属する点の事後予測尤度は、今や、計算されるべきであり、これは、データの値、データが含まれている現行のクラスタ、当該クラスタ内の既に存在するデータの全て、および幾つかのハイパーパラメータが所与の場合、現行のデータ点をクラスタkに割り当てる確率である。
【0062】
DPMMの尤度を計算するため、式(6)が用いられ、これは、事後予測分布と呼ばれている。これは、データ点がパラメータに関する事後分布によって定められたクラスタによって生じた尤度を意味しており、この場合、Dkは、アルゴリズムが所与のクラスタに見た全てのデータである。DPMMモデルに関し、これは、多変量t分布によって表され、この多変量t分布は、ガウス分布よりも重い裾(tail)を有し、小さなクラスタが新たなデータ点を受け入れやすくする。


【0063】
事後分布は、限界尤度、すなわち、これが有効な確率分布であるようにするため、そして点iのクラスタラベルciに関して多項分布を見出すための計算された事後分布全ての合計によって正規化される。点が新たなクラスタに割り当てられた場合、NIW事前分布がクラスタを初期化するために用いられ、クラスタの数は、1つ増加する。このプロセスは、ウィンドウ内の全てのデータが再び評価されるまで繰り返される。
【0064】
このモデルを用いた場合の3つ大きな利点がある。第1に、このモデルは、このアルゴリズムを用いる前にクラスタの数(またはこの場合には損傷状態)をオペレータが設定する必要がないため、得ることが困難な場合のあるプロセスの予備知識の必要性がなくなる。第2に、モデル全体は、ハイパーパラメータによって制御されるため、しきい値のチューニング、および較正は不要である。第3に、DPMMにより、共分散関数が入力データとともに変化することができるようにし、その結果、互いに異なる摩耗をする複数の工具に対する損傷を検出するときに有用な場合のある類似していないデータセットを取り扱うことができるモデルが得られる。
【0065】
実験セットアップ
【0066】
DPMMの用途を考察するためにここで用いられる試験セットアップが図3に示されており、ここでは、PcBN工具が突発故障するまで肌焼加工物を機械加工するために用いられる。これらを「寿命の終わり」試験という。工具の摩耗を機械加工中に測定することは可能ではないため、これら試験は、加工物のパスという4回の連続した切削を一度に実施し、次に工具の検査をするよう区分化される。検査は、工具を機械から取り外し、2D光学顕微鏡および3D走査型顕微鏡をそれぞれ用いて、フランクを測定し、そしてクレーター摩耗を測定するステップから成る。平均で、4回のパスおよび関連の工具摩耗測定を完了するには8分以上の時間を要する。工具摩耗試験に費やされる時間の42%超は、これら測定と関連した行為に費やされる。
【0067】
セットアップは、TCM用のモデルを選択する際に検討されなければならない制限を有する。第1に、工具を測定のために取り外すことは、損傷ラベルを収集することが唯一の方法なので避けることができない。工具を取り外すと、これを測定前の正確な位置に戻して固定することができない。その結果、切削深さの値は、次のパスについては不明確である。切削深さは、機械加工の力学に対して極めて重要であり、切削深さを変えることは、力、応力、およびプロセスの動力学的条件に影響を及ぼす場合がある。第2に、上記の4回のパス間隔の際、加工物は新しい加工物と置き換えられる。これは、肌焼は、加工物の外周部の薄い層だけに進入し、そして4回のパス後には機械加工により削り取られる可能性が多分にあるからである。
【0068】
この場合、アコースティックエミッションを測定し、1MHzのサンプリングレートでMistras Micro-30D差分センサが用いられた。この結果、ナイキスト基準を考慮に入れると、周波数範囲は、0~500kHzとなる。オークマ(Okuma)のSpace Turn旋盤LB3000 EXII をこの実験のために用いた。AEの発生の仕組みをさらに探求しようとして、削り屑を収集した。
【0069】
AE信号を互いに異なる形式の工具から収集したが、バリエーションの対象は、材料組成、または材料の「グレード」だけであり、工具のグレードは、その組成内の立方窒化ホウ素(cBN)粒子の割合を特定する。ブレードは、工具の挙動に直接的な影響を及ぼし、機械加工作業の種類に対する適合性を定義する。この研究で用いられる2つのグレードをグレードA(工具A1~A5)およびブレードB(工具B1~B5)という。
【0070】
DPMMに関する特徴選択
【0071】
AE信号がスペクトログラムとして周波数ドメイン内に可視化されるのがよい。図4では、例示の工具に関するスペクトログラムが摺動距離の関数として表示されており、この距離は、工具の移動距離である。図4では、周波数がY軸上にキロヘルツでプロットされ、摺動滑走距離がX軸上にキロメートルでプロットされ、陰影が信号のパワーを1ヘルツ当たりのデシベルで単位帯域幅当たりの平均パワーとしてプロットされている。この場合、重要な周波数範囲が強調されており、かかる周波数では、鋸歯生成がチップ上で起こり(これは、この研究ではチップ生成周波数ともいう)そして場合によってはシステム内の非線形により、これらの周波数の調波で起こると仮定されている。
【0072】
最終的には、DPMMは、オンライン動作時、業界セッティングでは、自動的にデータをクラスタ化する可能性を有する。これを達成するため、入力された特徴は、均質な組をなす工具全体にわたって同様に挙動すべきである。スペクトログラムから明らかなこととして、チップ生成周波数のパワーは、工具摩耗の進展とともに強度が増大する。その結果、チップ生成周波数(工具寿命全体を通じて)の調波を伝える4つの周波数ビン(4kHz間隔)が各工具グレードの特徴候補として選択される。プロセスに関する予備知識が工具寿命の終わりの際に強度が増大するこれらの特徴を識別するために必要とされる。プロセスがオンラインで動作しているとき、この挙動を新たな工具についてアプリオリに識別することができない。ここでは、使用する周波数帯域は、特定の予備知識に関する要件を減らすが、これら帯域の識別は、任意の新たな工具グレードに関する予備試用を用いて達成される。
【0073】
理解されるように、類似の予備的試用を機械の任意のコンポーネントについて実施することができ、その目的は、候補特徴を決定することにある。かかる予備的試用は、アコースティックエミッションに焦点を合わせる必要はなく、むしろ本明細書において説明する任意の測定可能なパラメータに焦点を合わせることができる。さらに、本明細書において説明するクラスタ化アルゴリズムは、予備的試用から決定される候補特徴を用いないで実施できる。例えば、恣意的な範囲をコンポーネントの初期試用の際に用い、そして反復的に改良されるのがよい。一例として挙げるに過ぎないが、温度をコンポーネントの使用中に測定すべきパラメータとして選択した場合、50℃で始まり、そして25℃、50℃、75℃、または100℃という増分で増大する温度範囲を用いることができる。同様に、力、発光波長、および圧力は、予備試験の有無を問わず、候補特徴として、ニュートン、波長、およびパスカルの範囲を用いることができる。
【0074】
並行DPMM
【0075】
DPMM内のクラスタは、入力特徴の平均値および分散の変化に起因して形成される。
【0076】
機械加工中におけるAE生成の際、平均値および分散の変化は、工具摩耗の開始によって引き起こされると仮定される。しかしながら、回避できない交絡影響、例えば指定された間隔での加工物の変化、またはツールポスト測定の位置決めの変化もまた、AE信号にばらつきを生じさせる場合がある。誤検出を回避するためにDPMMを用いた場合にクラスタ生成のこれら2つの原因を区別することが重要である。
【0077】
構造ヘルスモニタリング(structure health monitoring:SHM)では、交絡影響は、短期および長期の動向としてこれら自体現れる場合があり、かかる影響を正確な予測のために損傷から区別しなければならない。とりわけ、主要なコンポーネントの分析はまた、交絡影響を扱う際に一技術としても使用でき、この場合、低い分散を示す主要なコンポーネントは、損傷に敏感な特徴として使用でき、さらに、注目度の高い環境問題によって損なわれることはない。これら技術は、望まない傾向を抑える際に成功しているが、これら技術は、代表的な訓練データのセットをアプリオリに必要とする。
【0078】
この研究では、交絡影響を計算に入れるとともに、さらに考えられる工具損傷に対する感受性を保持することが提案される。ここでは、2つのDPMMを並行に動作させることが提案される。
1.第1のDPMMを各工具試験の開始時に開始し、この第1のDPMMは、工具寿命全体を通じて動作する。このDPMMを以後、グローバルDPMMという。
2.第2のDPMMを各工具試験の開始時に開始し、そして加工物の4回のパスの開始時に、すなわち、加工物が変化し、そして工具位置決めの変更が行われた場所でリセットする。このDPMMをローカルDPMMという。
【0079】
次の項は、上述のデータセットへの並行DPMMの適用を考察する。
【0080】
実験結果
【0081】
各工具に関し、上述の特徴を2つの並行DPMMに入力し、ギブスサンプラのウィンドウ長を200(200秒のデータ)に設定して、標的分布への収斂が可能であるようにする。
【0082】
図5図12は、工具A1~A4、および工具B1~B4の結果を示している。図5図8は、それぞれ、工具A1~A4の並行クラスタ化を示し、図9図12は、それぞれ、工具B1~B4の並行クラスタ化を示している。これら図の各々は、グローバルDPMMからの結果およびローカルDPMMからの結果を含んでいる。全ての場合において、上の4つのプロットは、グローバルDPMMに関し、下の4つのプロットは、ローカルDPMMに関する。アコースティックエミッションからのチップ生成周波数の調波を各場合において、入力特徴F1~F4として用いる。上述したように、特徴F1~F4は、周波数「ビン」であり、この例示の研究では、これらビンは、4kHz間隔であり、工具寿命全体を通じてチップ生成周波数の調波を伝送する。F1は、最も低いHzの周波数ビンであり、F4は、最も高いHz周波数ビンであり、各特徴に関するy軸のスケールは、プロット前に標準化されている。
【0083】
図5図14および図17図26に示す方法では、新たなクラスタをグローバルDPMMとローカルDPMMの両方において識別する。グローバルDPMMにおける新たなクラスタを垂直線で識別するが、ローカルDPMMでは、色の変化で識別する。両方の場合において、新たなクラスタが候補/入力特徴F1~F4のいずれか1つについて識別されると、新たなクラスタを他の全ての候補特徴について開始する。例えば、図10および図22では、関心のある点10.1および22.1は、新たなグローバルクラスタが4番目の周波数ビン(特徴F4)内のデータ点に基づいて識別されることを示している。特徴F1~F3は、この識別に基づいてアップデートされ、そしてこれら特徴は、恐らくはこれらデータ点による新たなクラスタ識別しきい値を満たさないにも関わらず、新たなクラスタ(関心のある点10.2および22.2を参照されたい)中へのデータ点の分類を開始する。
【0084】
ローカルクラスタは、同じ仕方で入力特徴全体にわたって均質化される。しかしながら、グローバルクラスタとは異なり、ローカルクラスタ化分析は、全ての工具検査で新たに始まる。換言すると、ローカルクラスタ化グラフは、多数のローカルクラスタ化分析を含み、各ローカルクラスタ化分析は、垂直破線相互間のデータ点を含むデータセットを用いている。
【0085】
理解されるように、クラスタ識別を1つの特徴に基づいて関連のDPMM内(すなわち、グローバルDPMM内またはローカルDPMM内)の他の全ての特徴に適用するこの方法は、考えられる実施形態の1つであるが、本発明に従って他の方法も可能である。これら特徴は、完全に別々に保たれ、そして、新たな警告が各特徴から個別的に出される。変形例として、警告発生前の新たなクラスタを識別する特徴のしきい値数を実施することができる。同じように、新たなクラスタを全ての特徴について識別したときにのみ警告を出すことができる。本明細書において使用しているように、クラスタ化分析を用いて新たなクラスタを識別することは、かかる全てのオプションを含むことを意図している。
【0086】
本発明の方法では、グローバルDPMM内の4つの候補特徴のうちの任意の1つを用いて新たなクラスタを識別することができる場合に警告を出す。
【0087】
図17図26は、図5図12の場合と同じ結果を示しているが、色で示されている。色とグレイスケールキーとの対応は、図5および図17のキーから導き出されるのがよい。
【0088】
グローバルDPMMの結果に関し、クラスタは、互いに異なる色で提供され、各クラスタの開始は、クラスタラベルと同一の色で垂直線により示され、この場合、第1のクラスタは、しきい値に従って、第1のデータ点の到着時に開始される。この場合1であるしきい値セットは、所与のクラスタを新たなクラスタとして識別する前に所与のクラスタが備える必要のある数のデータ点を特定する。これは、教師なし方法であって、同様なデータに関する訓練を必要としないので、DPMMは、新たな工具の各々についてクラスタ1から再開される。ローカルDPMMの結果では、加工物の変更は、DPMMが1にリセットされる黒色の破線の垂直線で示されている。クラスタの色は、グローバルDPMMと同一の順序に保たれ、ただし、クラスタ開始線は、図面を分かりやすくするために示されていない。
【0089】
以下の分析は、図17図26に当てはまるように、図5図12の結果にも等しく当てはまる。これら結果は、クラスタ識別を、警告を出すためのトリガとしてどのように使用することができるかを示しており、警告は、コンポーネントの状態に関して有益である。
【0090】
一般に、クラスタ1は通常、最も大きく(交絡影響の効果を差し引いても)、このことは、AE調波のエネルギーが現在のハイパーパラメータ下で新たなクラスタを保証するに足るほど変化していないことを示唆している。物理的には、このことは、工具の初期の摩耗進展がAEの調波にそれほど大きな影響を及ぼさないということを意味している場合がある。大抵の場合、調波のエネルギーは、工具の摩耗に起因して、工具寿命の終わり近くで急激に増大する。工具に作用する大きな力に起因して、工具材料内の結晶粒界におけるわずかな転位および微小クラックが応力波を放出する一方で、工具の摩耗プロフィールを変化させもする。その結果、チップ生成プロセスは、永続的に変化し、その結果、AE信号のエネルギーが増大する。グローバルDPMMでは、これら構造的および条件的差がそれ自体、非ガウス型クラスタとして現れ、それにより、アルゴリズムをこれが小さなガウス分布に分離するよう促し、その結果、工具寿命の終わりの近くでのクラスタの数が増加する。
【0091】
実際には、グローバルクラスタ開始は、今や、オペレータに対する工具劣化の兆候として使用される場合があり、新たなクラスタの出現は、設定摺動距離後の検査ではなく、検査をトリガするために使用できる。したがって、クラスタ開始を、検出しきい値を設定する新規な方法とみなすことができる。工具検査からの観察結果を用いると、工具が所定の公差のしきい値を超えて損傷したかどうかを判定することができる。後者のシナリオでは、新たなクラスタは、損傷を受けていない状態として取り扱い可能であり、かくして、将来、類似の観察結果を同一のクラスタに分類することが可能である。
【0092】
しかしながら、クラスタ開始が加工物の変更および工具測定時点で起こった場合、オペレータは、ローカルクラスタ開始を参照すべきである。工具が加工物との衝撃に起因してパスの開始時に損傷を受けた可能性がある場合、ローカルクラスタは、対応のAEの変動を検出することができる。換言すると、加工物変更の際にクラスタをリセットすることにより、基本的に、相当な変化が各加工物の機械加工中にデータに見られたときにのみローカルDPMMが新たなクラスタをトリガするようになる。したがって、変更は、工具摩耗(および例えば温度および力の増大のような関連の影響)以外の何らかの要因によるものではないという仮定が可能であり、というのは、他の全ての動作の影響が一定に保たれているからである。
【0093】
ハイパーパラメータのチューニングからの結果の知らせるところによれば、このデータセットに関し、わずかなαの値をクラスタが良好に分離されているので使用することができる。この結果は、有益な場合があり、と言うのは、実際には、多くのクラスタがクラスタ開始として形成され、そして工具の点検のための注意喚起である場合に有利である。多くのクラスタが開始された場合、工具点検回数もまた増大し、それにより、DPMMによって達成できる時間の節約度が減少する。
【0094】
幾つかの工具の示すところによれば、新たなクラスタの開始後、データは、先のクラスタにグループ分けされる場合がある。例えば、図11および図23の工具B3の場合には約4kmのところでの第3のクラスタ開始(関心のある点11.1および23.1として表されている)後、幾つかのデータは、依然として、クラスタ1,2に割り当てられる(関心のある点11.2および23.2によって識別されたデータは、大部分がクラスタ1,2に分類されるデータ点を含む)。この挙動の1つの説明としては、切れ刃が変化しているという場合が考えられる。工具が加工物に沿って動いているときに、工具は、切れ刃から材料を常時なくしている。工具から排出される粒子のうちの何割かは他のものよりも大きく、その結果、切れ刃に一時的な穴が生じ、それによりチップ生成特性が瞬間的に変化するということがいえる。本発明の方法は、警告を出す前に短い遅延の実施を行うことができ、データ点の分析は、新たなクラスタの識別に続き、それにより次のデータ点のどのくらいの比率が新たなクラスタに属していると決定されるかを決定する。新たに識別されたクラスタに属するデータ点のしきい値の比率は、警告が出される前に導入されるのがよい。
【0095】
その結果、DPMMは、データを新たなクラスにクラスタ化する。しかしながら、工具がこのイベント後に加工物に沿って動くと、工具は、穴上でスムーズに動き、そして前のクラスタに類似したエッジに戻ることが可能である。この時点で、AEデータは、先のクラスタとほぼ同様に挙動し、その結果、図示の挙動が生じる。
【0096】
上述のクラスタ化についてのもう一つの理由は、切れ刃のところの温度の上昇に起因している場合がある。幾つかの場合、生じたチップは、加工物にそれ自体巻き付いて、切れ刃のところに集まる場合がある。この場合、切れ刃のところの温度は、急激に高くなり、工具の周りのチップを燃やす。その結果、チップ生成特性は、加工物および工具の温度が材料の挙動に影響を及ぼすので変わる場合がある(そして、その結果、生じるAEも変化する)。これは多くの理由のうちの1つの理由であり、温度は、クラスタ識別を用いて警告を出すことができるもとになる測定のもう1つのパラメータである。
【0097】
より前のクラスタへのある特定のデータ点の戻りは、DPMMを用いて上述したように工具を監視するオペレータにとって有用な場合があり、そしてこの情報はまた、研究開発目的に有用な場合がある。これは、特に、工具破損後にクラスタ化されてクラスタ1または2に戻る工具寿命の終わりの近くで当てはまり、このことは、AEが工具寿命の開始と同様に挙動することを示唆している。工具と加工物との接触面積の減少は、この観測の一理由であるといってよい。交絡影響に起因した不必要な検査を回避するため、しきい値を大きくして多数のデータ点が新たなクラスタ開始前に必要であるようにすることが可能である。したがって、工具使用の際の時間を増大させて、工具撤去の際に残っている有用な工具耐用年数を減少させる上で有利であるだけでなく、コンポーネントの摩耗推定に関するさらなる調査を方向付ける上でも有利である。
【0098】
しかしながら、しきい値は、注意深く検討される必要があり、と言うのは、大きな値は、クラスタ開始が工具損傷にあまり敏感ではないことを意味しているからであり、クラスタは、しきい値に達するまで開始されず、工具は、重大損傷を受ける場合がある。この例が図12および図24に見え、この場合、グローバルクラスタ2がおそらくは交絡影響、すなわち、加工物の変化に起因して、開始される(図には、それぞれ関連のある点12.1および24.1としてマーク付けされている)。理解できるように、グローバルクラスタ2は、4つ全ての特徴、すなわちF1~F4について急に始まる。しかしながら、この時点で、ローカルDPMMでは、第2のクラスタもまた、即座に開始され、このことは、データがパス中に影響を受けたことを示唆している(図には、関心のある点12.2および24.2としてマーク付けされている)。このクラスタ開始は、切削状態に入る際の加工物と工具との相互作用に起因している場合があり、この場合、突然の接触は、工具のチップ生成特性に影響を及ぼしている。クラスタ4の開始は、大抵の場合、交絡影響に起因している可能性がある(図には、関心のある点12.3および24.3としてマーク付けされている)。この場合もまた、グローバルクラスタ4では、クラスタの開始を生じさせるアコースティックエミッションの有意かつ瞬間的な変化は、交絡影響を示唆している。ここでは、グローブクラスタ3,5,6を損傷があるかどうかについて点検するためのオペレータへの警告として使用できる。
【0099】
この並行クラスタ化方法は、2クラスアプローチ、例えば、外れ値の分析よりも多くの理由で工具損傷検出問題に対して良好である。外れ値分析を実施する際、データは、ガウス統計学が当てはまるようにするために、ガウス分布からサンプリングされることが前提とされる。
【0100】
ガウス分布からの逸脱があれば、これら逸脱は、異常なデータを示す外れ値として見える。上述したように、DPMMは、大きな非ガウスクラスタを小さなガウスクラスタに自動的に分離することができ、この場合、クラスタの数をアプリオリに設定する必要なく、したがって、異常なデータを繰り返し検出することができる。データを多数のクラスタに割り当てることによって、工具の劣化段階に関して常に学習する一方で、交絡の影響に対してロバストであるようにすることもまた可能である。例えば、工具A2,A3の第2のクラスタ開始および工具B1,B4の第4のクラスタ開始は、先のデータと比較して、AEエネルギーの大きな変動に起因して起こる。工具摩耗検査から明らかなように、これら発生は、損傷によって引き起こされたものではない。並行DPMM法を用いることによって、オペレータの介入をこれらの場合に回避することが可能であるべきであり、これに対し、同じことは、外れ値分析については言えない。
【0101】
連続摩耗測定を行うことができない場合、DPMMが意味のある点でクラスタ化しているということを直接検証することは困難である。DPMMの成功を部分的に評価する手段は、異常または不規則性が注目された試行を考慮することにある。次の項では、これをさらに調査するために異種工具のクラスタ化について検討する。
【0102】
異種工具のクラスタ化
【0103】
データセット内の工具とは異なる工具に関する工具摩耗状態の予測により、正角度が低くなる場合があり、と言うのは、訓練セットは、試験セットを代表していないからである。DPMMが訓練段階を必要とはしないので、他のものと異なって挙動をする工具に関するAEの変化を検出する実行可能性をここで検討する。
【0104】
図13および図14は、図25および図26の場合と同様に、工具A5およびB5に関するそれぞれのグローバルDPMMおよびローカルDPMMの結果を示している。比較のため、同一の特徴およびハイパーパラメータがこれら工具ならびに各グレード内の他の全てのツールについて用いられている。両方の場合において、AE特徴は、データセットの他の特徴とは異なって挙動することは明らかである。理解されるように、グローバルDPMMは、クラスタ3を工具A5および工具B5に関してそれぞれ約1.6kmおよび約3kmで、AEエネルギーがこれらの指定された周波数で高くなるようにする未知の挙動に起因して検出する。工具寿命の半ばでのエネルギーのこの増大に起因して、グローバルDPMMは、信号のエネルギーが工具寿命の開始時と比較して増大している場合であっても、新たなクラスタを約2.7km(A5)および5.2km(B5)付近で検出しない。しかしながら、この時点で、ローカルクラスタ化は、第2のクラスタを作ってこのエネルギーの増大分を反映しており、このクラスタは、介入のために使用でき、そして工具が破損した状態での機械加工を回避することができる。DPMMが訓練のために他の工具からのデータを利用しないので、互いに異なるデータを、破損した工具での機械加工を回避できる仕方でクラスタ化することができる。明らかなように、DPMMは、広い工具挙動範囲に対してロバストであり、その適切さを示唆している。
【0105】
工具の破損を回避するための並行DPMMの指針
【0106】
工具が破損寸前の時点を正確に識別するとともに、誤検出を回避するため、並行DPMMの指針が次のように示唆される。
・グローバルクラスタ化は、グローバルクラスタが加工物変更時点で初期化されない限り、ローカルクラスタ化よりも優先されるべきである。これは、グローバルクラスタ化がデータセット全体を考慮に入れるため、その結果、グローバルクラスタ化がデータセットの大幅な変化の影響を受けやすいからである。加工物の変更により新たなクラスタが作られる可能性があるため、加工物変更の際のクラスタは、注意深く取り扱われるべきである。
・グローバルクラスタが加工物変更時点で開始され、そしてローカルクラスタがその加工物中に開始状態になっている場合、当該ローカルクラスタの開始は、警告として用いられるべきである。
・グローバルクラスタが加工物変更時点で開始されているが、ローカルクラスタが加工物中に開始されなかった場合、グローバルクラスタの開始は、警告として無視されるべきである。
【0107】
工具類に適用されるようなDPMM方法の設計変更
【0108】
多くの設計変更を上述の詳細な実施形態に対して行うことができる。上述したように、この方法は、摩耗の影響を受けやすい機械の任意のコンポーネントについて使用でき、そして任意のパラメータを測定して分析することができる。さらに、この方法はそれ自体、以下に詳細に説明するステップのうちの任意のものに従って設計変更可能である。
【0109】
DPMMが損傷ラベルの学習に依存しないので、データセットは、任意のサイズのものであってよい。データセットが大きいほど情報量が多いため、AEデータの平均を頻繁に取得することで、クラスタ化のためにデータが到達する頻度を増やすことができる。上述の詳細な例では、データ点は、100万個の生のAEデータ点から構成されるデータの1秒分を表している。しかしながら、変形実施形態では、各秒のデータを非常に多くのデータ点によって表すことができ(すなわち、1つのデータ点が1秒の1/10を表し、DPMM中に入力される情報量を10倍に増大させている)、したがって、クラスタ化のためのデータのより有益な傾向またはクラウドを生じさせる。より多くのデータが利用可能になると、DPMMは、現在よりも早期にクラスタを開始することができる場合があり、と言うのは、クラウドは、より高い解像度で良好に定義できるからであり、工具試験に要する時間が短縮される。上述したデータ点の具体的な表現は、本発明を限定するものではなく、入力データ点は、任意数の生パラメータ測定データ点を含む任意秒数の測定データを表す場合があり、適当な秒数および適当数の生パラメータ測定データ点は、分析されるべきコンポーネントおよびパラメータに応じる。かかる適当な秒数または適当数のデータ点の選択は、当業者によって行われるのがよく、そして予備試験および/またはライブ結果を用いて設計変更可能である。
【0110】
周波数ビンの数を増大させることができる。そのようにすることによって、より高い周波数解像度を達成することができ、それにより、おそらくは、より多くの特徴が工具損傷の近くで強度が増大する特徴をより多く導き出すことができる。4つのパラメータビン(ここでは、周波数)が詳細な実施形態において、入力または候補特徴として提案されるが、入力特徴の数は、1~100、2~50、3~25であるのがよく、好ましくは4である。
【0111】
この場合、DPMMは、データが標的値を必要としないでクラスタ化された教師なし技術として使用されている。将来において、DPMMもまた、損傷ラベルが変更の検出時にモデル内に含まれる場合のある半教師あり学習技術として使用できる。
【0112】
この研究において興味深いこととして、破損前の最終のクラスタ開始を招くAEエネルギー(調波)の増大は、通常、加工物の最後の4つのパスの間に起こる。この情報をさらに調べると、予測が可能なシステムを構築することができ、重大損傷前の最終のクラスタ開始の性状を研究することによって工具の残りの耐用年数を予測することが可能な場合がある。
【0113】
転移学習をこのデータセットに適用することができ、転移学習クラスタ(既知のラベルと一緒に)は、まだラベル付けされていないクラスタをすでに含む空間に投影される。こうした考え方は、クラスタ平均相互間の距離を最小限に抑えることにある。ここで収集したデータセットに関して、帰納転移学習を適用することができ、この場合、アルゴリズムは、現在のクラスタに関する情報を有しており、そして類似性に関する判断を行うために新たなクラスタからわずかな量のデータを必要とする。しかしながら、この方法が工具破損または工具摩耗に対してロバストであるかどうかは明らかではない。
【0114】
本発明の方法は、工具をホルダに装着したまま3D画像を撮影できる専用顕微鏡に対応しており、工具を取り外す必要がない。このようにすることによって、現在のデータセット中の交絡影響として作用する位置の変化をなくすことが可能である。したがって、並行DPMMの相対的重要性および必要性が減じられ、単一のDPMMを正確に採用することができる。
【0115】
さらに、例えばこのようなセットアップは、工具にクラスタ開始時に接近するよう使用できる工具摩耗許容範囲およびしきい値を備えるようプログラミングが可能であり、それにより、オペレータによる介入の必要がなくなり、その結果、完全にオンラインの工具摩耗試験が行われる。
【0116】
結論
【0117】
この研究は、モニタリングデータの変更を、訓練段階を必要としないで、不完全な損傷ラベルセットで検出することができる教師なし学習の考え方を考察する。DPMMおよびギブスサンプリングは、旋削プロセス中に集められたAEデータをクラスタ化するようこの研究で用いられた。この方法は、無限ガウス混合モデルとみなすことができるのでクラスタの数は、アプリオリに設定する必要はなく、その結果、アルゴリズムの完全なオンライン実施が行われる。教師なしクラスタ開始を、工具の状態調査を行うためにオペレータに対する警告/促しとして用いることによって、DPMMを首尾よく用いると、工具を測定するために費やされる時間を短縮して、工具を破棄することができる時点を提供することができる。クラスタ開始を検出しきい値として用いるこの方法は、過去の文献では見られない。
【0118】
モデルのための入力特徴は、アコースティックエミッション信号の周波数ドメインから取られたものであるが、かかるアコースティックエミッション信号は、工具の寿命全体にわたって測定されたものである。チップ生成周波数エネルギーの調波は、一般に工具が破損に近づくにつれて強度が増大することが判明しているため、入力特徴として用いられた。
【0119】
本明細書において説明した詳細な実施形態全体を通じて、用いたクラスタ化分析は、DPMMであるが、理解されるように、別のクラスタ化分析を採用することができ、その目的は、類似の有用な結果を達成することにある。コンポーネントの摩耗状態に関連したデータ中のクラスタを識別することができる別のクラスタ化アルゴリズムとしては、アフィニティプロパゲーション(affinity propagation)、k平均法クラスタ化、平均シフト、凝集クラスタリング(クラスタ化)、およびスペクトラルクラスタリングが挙げられるがこれらには限定されない。
【0120】
並行DPMMによる時間の節約
【0121】
このデータセットに影響を及ぼす交絡影響に起因して、グローバルDPMMとローカルDPMMの並行に動作する組み合わせを本文献では最初にここで実施したが、グローバルDPMMは、工具の寿命中に収集されたデータセット全体からサンプリングし、他方、ローカルDPMMは、各加工物中(プロセスの構造が変化した時点)収集されたデータからのみサンプリングしている。これら並行DPMMを用いることによって、破損した工具での機械加工を回避する一方で、工具測定に費やされる時間を短縮することが可能である。時間節約の完全なリストが表1に記載されている。有望な初期結果の示すところによれば、工具測定時間をこの方法を用いた場合の平均試験時間の42%から13.2%まで著しく減少させることができた。この場合、結果はまた、予防的保守ストラテジーと比較され、予防的保守ストラテジーでは、オペレータは、工具が既定のしきい値(機械加工作業に応じて決定される)に達したときに機械加工を停止する。
【0122】
この研究で提供された結果は、多くの理由で工業用途に有益であると考えられる。第1に、この方法は、未知の工具に対して安全に予測する全ての作業条件を含まなければならない訓練データを必要としない。第2に、この方法では、現在行われている定期的な工具摩耗測定の回数を減らし、アルゴリズムによって促されたときにのみ損傷ラベルを収集することができる。DPMMを並行に動作させることによって、交絡影響からの作用効果を回避することができる。この方法はまた、予備処理、例えば次元削減を必要としないで、オンラインで使用できるAE特徴で働く。さらに、DPMMは、特徴の変化に応じてクラスタ化するため、様々な材料組成を含む工具およびさらに他の工具とは異なる挙動をする工具の損傷を検出することも可能である。結論として、この方法は、工具の破損に近づいたときに入力特徴の度合いが強くなる限り、任意の工具に適用できる。事実、この方法は、機械の任意のコンポーネントおよびコンポーネントが使用されて摩耗するにつれて変化する任意の入力特徴(すなわち、測定可能なパラメータ)に適用できる。

測定に要する時間(分)
表1:他の監視ストラテジーと比較してDPMMを用いた場合の時間の節約の概要
破損に至るまでの動作方法は、工具測定の試験時間の42%を超えるので、DPMMにより、著しい時間の節約が得られる。
【0123】
ハイパーパラメータの効果
【0124】
本明細書において提供する実施例では、ハイパーパラメータαは、20での固定アプリオリであり、αの値が低いと、これにより、開始されるクラスタの数が制限される。ハイパーパラメータαおよびしきい値のチューニングを用いると、各クラスタ中のサンプルの数を変更することができる。一般的なSHMの場合、クラックの存在は、損傷として取り扱われ、交差検証をDPMMの誤判別をチェックするための偽陰性率で使用でき、ハイパーパラメータαのチューニングを助ける。クラスタが十分に分離された場合、生じるクラスタの数は、αパラメータの影響を受けない。
【0125】
DPMMがこの研究で用いられてデータをオンラインでクラスタ化すると、最適な分布を見つけ出すためにαの値をアプリオリに学習することはできない。αパラメータの効果を理解するため、最適な分布を見出すための先験的な学習が必要である。αパラメータの効果を理解するため、工具A4および工具B3(それぞれ図8および図11)に関する結果を得るために使用される特徴をαの値についてアルゴリズムに送り込んだ。各場合、すなわち、各α値に関し、アルゴリズムを100回繰り返して開始されたクラスタの平均数を得た。結果は、図15に箱ひげ図を用いて提供されている。100回の動作に関するクラスタの平均数が赤線で示されており、外れ値は、±2.7σ(ひげによる注が付けられている)を超えて外れた赤の十字で示されている。箱の上および下は、それぞれ、75パーセンタイルおよび25パーセンタイルを表している。
【0126】
図15から明らかなように、クラスタの数は、αが小さい場合にはαの値とは無関係である。このことは、クラスタが十分に分離されていることを意味している。0.1~50のα値を考慮すると、クラスタの平均数の変化は、極めて少ない。したがって、この場合に推奨されることは、1~50のαの任意の値を用いることができ、この場合、クラスタの数の生成にそれほど影響を及ぼさない。
【0127】
ギブスサンプラのウィンドウ長さもまた、DPMMの結果に影響を及ぼす場合がある。ウィンドウの長さは、ハイパーパラメータではないが、これは、クラスタの数およびクラスタ開始時点に影響を及ぼす場合がある値である。これは、ウィンドウ長さがアルゴリズムによって再評価されるデータ点の数を定めるからである。実際には、これは、ギブスサンプラが早期の摺動距離からのデータ点を再評価して、これがその時点において存在するクラスタとは異なるクラスタに再び割り当てる場合にオペレータにとって有益ではない。
【0128】
しかしながら、ウィンドウ長さは、マルコフ連鎖が標的分布に収斂するようにするのに十分に大きいことが必要である。それにもかかわらず、ウィンドウ長さを増大させることにより、計算速度を減少させるので、したがって、この場合もまた、工学的な判断で妥当なウィンドウ長さを見つける必要がある。
【0129】
例示のシステム
【0130】
図16は、本発明の実施形態としてのシステム100を示している。システム100は、関連機械102、コンポーネント104、センサ106、処理装置108、およびモバイルデバイス110を含む。
【0131】
関連機械102は、コンポーネント104およびセンサ106を有するものとして示されているが、これは例示に過ぎない。コンポーネント104は、取り外し可能かつ交換可能であり、これは、摩耗を評価するのに有利である。センサ106は、関連機械102内に設けられてもよく、またはこれに追加されるとともに/あるいは別個であってもよい。幾つかの実施形態では、コンポーネント104は、センサ106を含む。これは、コンポーネント104とセンサ106の物理的接触が、コンポーネント104の使用中(例えば、コンポーネント104によって加えられまたはコンポーネント104に加えられる力が測定される場合)、関連パラメータの測定を助ける場合に有利な場合がある。センサ106は、コンポーネント104の使用中、多種多様なパラメータを測定するよう構成された多目的センサであってもよく、あるいは、単一のパラメータ、例えばアコースティックエミッション専用のセンサであってもよい。センサ106は、間接的に、すなわち、コンポーネント104の使用中、これを妨害しないで、コンポーネント104のパラメータを測定するよう構成されているのがよい。
【0132】
処理装置108は、本明細書において説明した本発明の方法のステップを実施するのに適した任意のコンピュータプロセッサである。処理装置108は、関連機械102内に設けられてもよく、この処理装置にワイヤード接続手段が設けられてもよく、あるいは、この処理装置にワイヤレス接続手段が設けられてもよい。図示の実施形態では、処理装置108は、使用中、センサ106からのワイヤレス接続方式により、コンポーネント104のパラメータの測定値112を受け取る。かかる伝送に適したワイヤレス通信プロトコルは、当業者には明らかであろう。さらに、測定値112は、インターネット経由で処理装置108に送られるのがよい。
【0133】
処理装置108は、本発明の実施形態に従って少なくとも1つのクラスタ化分析を実行する。測定値112は、センサ106から連続的に受け取られてもよく、あるいは、1つ以上のデータパケットで受け取られてもよい。データ処理装置108は、受け取った測定値112を用いて1つ以上のクラスタ化分析を実行し、そして、測定値112中に新たなクラスタを識別すると、警告114を出す。警告114は、データ処理装置108それ自体によって処理されてもよく、この警告114は、動作を終了させるよう関連機械102に送られるコンピュータによる命令、およびユーザによる確認のためのコンポーネント検査または交換の推奨のうちの1つ以上を含むのがよい。データ処理装置108は、代替的にまたは追加的に、ユーザによって確認されるようにするために、警報114を第3のデバイス、例えばモバイルデバイス110に送ることができる。データ処理装置108は、モバイルデバイス110内に設けられてもよく、あるいは、図示のようにこれとは別体であってもよい。処理装置108とモバイルデバイス110との間の通信は、センサ106と処理装置108との間の通信に関連して説明したように、ワイヤードであってもよく、ワイヤレスであってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポーネントの摩耗を推定するコンピュータ実行式方法であって、
第1のクラスタ化分析を第1の複数の測定値に対して実行して、前記第1の測定値中の1つ以上のクラスタを識別するステップを含み、前記第1の測定値は、前記コンポーネントの使用中に取られた前記コンポーネントのパラメータの測定値を含み、
新たなクラスタが前記第1の測定値中に識別された場合に警告を出すステップを含む、方法。
【請求項2】
第2のクラスタ化分析を第2の複数の測定値に対して実行し、前記第2の測定値中の1つ以上のクラスタを識別するステップを含み、前記第2の測定値は、警告が生成された後、前記コンポーネントのさらなる使用中に取られた前記コンポーネントのパラメータの測定値を含み、
新たなクラスタが前記第2の測定値中に識別された場合に警告を出すステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の測定値に対する前記第1のクラスタ化分析を続行し、そして前記第2の測定値を前記第1のクラスタ化分析に導入して、組み合わされた前記第1の測定値と前記第2の測定値中の1つ以上のクラスタを識別するステップと、
新たなクラスタが前記組み合わされた前記第1の測定値と前記第2の測定値中で識別された場合に警告を出するステップとをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1および/または第2のクラスタ化分析は、教師なし機械学習アルゴリズムによって実行される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記教師なし機械学習アルゴリズムは、前記分析中に決定するクラスタの数を既定しない、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記教師なし機械学習アルゴリズムは、ディリクレ(Dirichlet)過程混合モデルである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記警告は、コンポーネント検査を実行するための推奨である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記コンポーネントの前記パラメータは、前記コンポーネントの温度、前記コンポーネントに加わる力、および前記コンポーネントからのアコースティックエミッションのうちの1つ以上である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記パラメータは、前記コンポーネントからのアコースティックエミッションであり、前記第1および/または前記第2のクラスタ化分析は、候補特徴として複数の隣り合う周波数範囲を用いる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記コンポーネントは、機械加工工具である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
各周波数範囲は、前記工具中のチップ形成の所定の調波に対応し、オプションとして、各周波数範囲は、4kHz間隔である、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
コンポーネントの摩耗を検査する方法であって、
請求項1~11のうちいずれか一に記載の前記コンピュータ実行式方法を実施するステップと、
前記コンピュータ実行式方法からの警告出力に応答して、前記コンポーネントに摩耗があるかどうかについて検査するステップと、を含む、方法。
【請求項13】
データ処理装置であって、請求項1記載の方法のステップを実施する手段を有する、装置。
【請求項14】
命令を実装したコンピュータプログラムであって、前記命令がコンピュータによって実行されると、それにより、前記コンピュータは、請求項1記載の方法のステップを実施する、コンピュータプログラム。
【請求項15】
命令を実装したコンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令がコンピュータによって実行されると、それにより、前記コンピュータは、請求項1記載の方法のステップを実施する、コンピュータ可読記憶媒体。
【国際調査報告】