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特表2024-514770COVID-19の治療及び予防に使用するための化合物
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  • 特表-COVID-19の治療及び予防に使用するための化合物 図1A
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  • 特表-COVID-19の治療及び予防に使用するための化合物 図8
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  • 特表-COVID-19の治療及び予防に使用するための化合物 図14
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】COVID-19の治療及び予防に使用するための化合物
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/16 20060101AFI20240327BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240327BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240327BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240327BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240327BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240327BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240327BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A01N31/16
A61P31/14 ZNA
A61K31/05
A61K9/70
A61K9/20
A61K9/12
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/22
A61K47/44
A61K47/38
A61K47/46
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/20
A01P1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023558719
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022056429
(87)【国際公開番号】W WO2022200086
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21164852.2
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21164854.8
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523363383
【氏名又は名称】セケレス、トーマス
(71)【出願人】
【識別番号】523363394
【氏名又は名称】イェーガー、ウォルター
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セケレス、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー、ウォルター
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA36
4C076AA89
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB29
4C076CC35
4C076DD09
4C076DD23
4C076DD24
4C076DD27
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD43
4C076DD44
4C076DD49
4C076DD54
4C076DD55
4C076DD59
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE38
4C076EE51
4C076EE57
4C076FF01
4C076FF11
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206CA19
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA55
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA77
4C206MA79
4C206MA80
4C206NA14
4C206ZB33
4H011AA04
4H011BB03
4H011DA13
(57)【要約】
本発明は、ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防において使用するため、特にSARS-CoV-2を阻害するための、一般式Iの化合物を開示する:
【化1】

(式中、R~Rは同一であるか又は同一ではなく、H、OH-、又はORであり、RはC~Cアルキル基又はC~Cアシル基であり、ただし、R~Rのうち少なくとも4個はH以外である)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防において使用するため、特にSARS-CoV-2を阻害するための、一般式Iの化合物:
【化1】

(式中、R~Rは同一であるか又は同一ではなく、H、OH-、又はORであり、RはC~Cアルキル基又はC~Cアシル基であり、ただし、R~Rのうち少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、特に少なくとも6個は、H以外であり;ここで、前記化合物は、3,3’,5,5’-テトラメトキシスチルベン、3,4,4’,5-テトラメトキシスチルベン、3,3’,4,5’-テトラメトキシスチルベン、3,3’,4,5,5’-ペンタメトキシスチルベン、3,3’,5,5’-テトラヒドロキシスチルベン、3,4,4’,5-テトラヒドロキシスチルベン、3,3’,4,5’-テトラヒドロキシスチルベン、3,3’,4,4’,5-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,4,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンからなる群より選択され、好ましくは3,3’,4,5,5’-ペンタメトキシスチルベン、3,3’,4,4’,5-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,4,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンからなる群より選択され、特に3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンである)。
【請求項2】
SARS-CoV-2を阻害することが、SARS-CoV-2の複製を阻害すること、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防すること、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防することである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
活性成分としての請求項1又は請求項2に記載の化合物と医薬的に許容される製剤添加剤(excipient)とを含む、又はそれらからなる、医薬製剤。
【請求項4】
前記製剤が、経口、舌下、筋肉内、皮下、経鼻、口腔粘膜、気管支、肺、皮膚、腹膜又は直腸投与用、好ましくは経口、舌下又は経鼻投与用である、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記製剤が、吸入可能組成物及び/又はエアロゾル組成物として、又は経鼻スプレーもしくは経口スプレーとして、及び/又は舌下フィルムもしくは舌下錠剤として、及び/又はロリポップとして、提供される、請求項3又は請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記医薬的に許容される製剤添加剤が、例えば、水、アセトン、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの希釈剤;例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、及びエリトリトール、例えばデンプン、デキストリン、硫酸カルシウム、ラクトース、マンニトール、スクロース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、カオリン、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムなどの吸収剤などのキャリア;例えば、水、グリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、デンプンシロップ、デキストリン、シロップ、ハチミツ、グルコース溶液、アカシアシロップ、ゼラチンシロップ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、パープルガム、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの湿潤剤及び結合剤;例えば、乾燥デンプン、アルギン酸塩(alginate)、寒天粉末、アルギン酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ラウリルスルホン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの崩壊剤;スクロース、トリステアリン酸グリセリル、カカオバター、水素化油などの崩壊防止剤(disintegration inhibitors);第四級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;タルク、二酸化ケイ素、コーンスターチ、ステアリン酸、ホウ酸、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどの潤滑剤;ポリアクリル樹脂、リポソーム、例えばPEG4000及びPEG6000のような水溶性キャリア、PVP;抗酸化剤;pH緩衝剤及び/又は塩緩衝剤;溶解度調節剤;浸透促進剤;クエン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、リン酸及びその塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩(EDTAカルシウム二ナトリウム、E385)、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化剤;及びこれらの混合物から選択される、請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記製剤が、吸入製剤又はエアロゾル製剤、特に等張吸入溶液若しくは懸濁液又は液体若しくは粉末のエアロゾルである、請求項3~請求項6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記製剤が、約100μg~約10gの量で、好ましくは約1mg~約1gの量で、より好ましくは10mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約20mg~約300mgの量で、前記化合物を含有する、請求項3~請求項7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記製剤が、約10mg~約1000mgの量で、好ましくは約25mg~約750mgの量で、より好ましくは50mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約30mg~約100mgの量で、前記化合物を含有する、請求項3~請求項8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記製剤が、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、又はネブライザーに含まれている、請求項3~請求項9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記製剤が、前記化合物を0.001%~50%w/v、好ましくは0.01%~20%w/v、より好ましくは0.1%~20%w/v、特に1%~20%w/v含有する、請求項3~請求項9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のため、特にSARS-CoV-2の阻害のための請求項3~請求項11のいずれか一項に記載の医薬製剤の製造のための請求項1又は請求項2に記載の化合物の使用。
【請求項13】
SARS-CoV-2の複製を阻害するため、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防するため、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防するための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のため、特にSARS-CoV-2を阻害するための方法であって、SARS-CoV-2に感染しているか又は感染するリスクがある対象に、有効量の請求項1もしくは請求項2に記載の化合物又は請求項3~請求項11のいずれか一項に記載の医薬製剤が投与される方法。
【請求項15】
ヒト対象においてSARS-CoV-2の複製を阻害するため、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防するため、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防するための方法であって、SARS-CoV-2に感染しているか又は感染するリスクがある対象に、有効量の請求項1もしくは請求項2に記載の化合物又は請求項3~請求項11のいずれか一項に記載の医薬製剤が投与される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COVID-19の治療及び予防に関する。
【背景技術】
【0002】
2019年12月の初めに中国の武漢で新規なコロナウイルス(SARS-CoV-2)がパンデミックを引き起こしており、これは、有効かつ安全なワクチンが提供できるようになるか、又は前記疾患の因果的薬物治療(causal drug treatment)が前記疾患の重篤かつ致命的な症例を回避するのに役立ち得るようになるまで続く。今日まで、世界中で数が増加しつつある何百万人もの感染者が、前記の疾患の有効な治療を待っている。
【0003】
現在までのところ、この疾患を制御するための特異的な薬剤は同定されていない新規な治療法の開発には通常時間がかかり、したがって、広域抗ウイルス薬を再利用すること(repurposing)は、一般に、即座に対応するための有効な戦略とみなされていた。したがって、既知の抗ウイルス化合物の効果が大いに調査された。
【0004】
特に、広範な生化学的機構を有する、天然に存在する又は以前に開発された合成抗ウイルス化合物をCOVID-19のために「再利用する」ことは、このパンデミックと戦うための有望な戦略と見なされた。
【0005】
グリフィスシン、ナファモスタット(細胞侵入を標的とする)、ジスルフィラム、ロピナビル/リトナビル、ダノプレビル、ネルフィナビル(SARS-CoV-2プロテアーゼを標的とする)、ファビピラビル、リバビリン、ペンシクロビル、レムデシビル、ガリデシビル(RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を標的とする)などの物質が有望な候補として議論されているが、COVID-19感染を有する患者においてSARS-CoV-2に有効な特別な治癒は提供されていない(Ghanbari et al., Fut. Microbiol. 15 (2020), 1747-1758; Harri-son, Nat. Biotechnol. 38 (2020), 379-381)。
【0006】
フェノール化合物は、世界中のほとんどの植物の科のいずれの組織にも豊富に含まれ、均一に分散されているが、特に植物の一部である果物及び野菜中に含まれる植物化学物質である。フェノール化合物は、その化学構造に基づいて、フェノール酸、フラボノイド、タンニン、クマリン、リグナン、キノン、スチルベン、及びクルクミノイドに分類される。フェノール化合物は、二次代謝産物が環境ストレス条件への植物適応に一般に関与することから、植物におけるシキミ酸経路を介して合成される。フェノール化合物及びフラボノイド化合物は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する芳香環を有する植物の二次代謝産物である。化学的に多様な天然治療薬の中で、フェノール化合物及びフラボノイド化合物はそれらの優れた薬物動態特性のために、SARS-CoV‐2に対して最も有望な活性化合物であると推測された。
【0007】
フェノール系化合物は、抗酸化活性、抗がん活性、抗炎症活性、抗細菌活性、心臓保護活性及び免疫系促進活性などの多数の生物学的活性を有することが報告されている。いくつかの研究は、薬用植物からのフェノール系化合物及びフラボノイド系化合物がヒトの健康を増加させ、ヒトの免疫力を高めることを示している。天然ポリフェノール化合物は、主に植物起源に由来する。これらのフェノール系化合物及びフラボノイド系化合物は、ライノウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、黄熱病、単純ヘルペスウイルス、及びインフルエンザウイルスなどの多くのウイルスに対する抗ウイルス活性を有する。今日、医薬企業は、バイオインフォマティクスのツール及びアプリケーションの助けを借りて、潜在的薬物分子を短期間で製造している。
【0008】
SARS-CoV-2成分に対するそのようなインシリコ予測及び生化学的インビトロ結合アッセイを用いて、他の病原体に対する以前に阻害効果を示したポリフェノールなどの多くの天然化合物が、インシリコスクリーニングにも基づいて、COVID-19患者の治療に使用されうることが示唆された(Rathinavel et al., Bioint. Res. Appl. Chem. 11 (2021), 10161-10173; Mhatre et al., Phytomed. (2020), 153286; Chojnacka et al., J. Funct. Food 73 (2020), 104146; Ghosh et al., J. Biom. St. Dyn. (2020), 1-13-doi.org-10.1080-07391102.2020; Islam et al., Phytother. Res. 3 (2020), 2471-2492; WO 2020/037095 A1)。このような化合物の利点はそれらが「一般的に安全とみなされている」(例えば米国連邦食品・医薬品・化粧品法第201条(s)及び第409条などにおける「GRAS」)であることであり、したがって、前臨床試験なしに(例えば、栄養補助食品としても)投与することができ、COVID-19患者を治療し、重度の疾患から予防させるために即座に使用することができる。
【0009】
Wahediら(J. Biomol. Struct. Dyn. 39 (2021): 3225-3234)は、COVID-19に対する薬物候補として、主にレスベラトロール及び3’,4’,2,4-テトラヒドロキシ(-トランス-)スチルベンも示唆している。Zhangら(Cell Discovery 6 (2020), 80)はヘパラン硫酸がSARS-CoV-2の細胞侵入を補助し、そのようなアプローチの可能な候補としてのミトキサントロン(強力なヘパラン硫酸阻害剤として)及びスニチニブ及びBNTXを用いてインビトロで承認された薬物によって標的化され得ることを報告している。ピセアタンノールがヘパリンに結合することがさらに報告されている。中国特許出願公開第111228343号は「2019-nCoV」による感染に対処するために、ピセアタンノールを含む抽出物を使用できることを開示しているようである。Hanら(J. Med. Virol. 87(2015): 2054-2060)は、3,3’ ,4,4’ ,5,5’-ヘキサヒドロキシ-トランス-スチルベンのHIV阻害活性を報告している。
【0010】
しかしながら、これらの物質のいずれについても、SARS-CoV-2に感染した患者に効率的な治療又は予防の選択肢を提供するのに適切なSARS-CoV-2に対する抗ウイルス活性を有することはまだ示されていない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、COVID-19の予防又は治療のための現実的かつ効果的な再利用代替物を提供することである。これらの代替物は、SARS-CoV-2がヒト患者に対して病原性になることを効果的に防止又は妨害しうる。したがって、前記物質はSARS-CoV-2を阻害することができ、かつ/又はSARS-CoV-2がヒト細胞に侵入するのを少なくともある程度防止又は妨害することができ、患者にCOVID-19を発症するリスクを低下させるか、又はCOVID-19によって重度に罹患するリスクを低下させる、有意な利点を提供しうる。別の目的は、これらの物質が容易に入手可能であり、十分に許容され、侵襲的方法を必要とせずに、好ましくは吸入、エアロゾル送達などによって、ヒトに首尾よく適用されうることである。
【0012】
したがって、本発明は、ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防、特にSARS-CoV-2の阻害における使用のための、一般式Iの化合物を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、R~Rは同一であるか又は同一ではなく、H、OH-、又はORであり、RはC~Cアルキル基又はC~Cアシル基であり、ただし、R~Rのうち少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、特に少なくとも6個は、H以外である。)
【0015】
本発明による化合物は、SARS-CoV-2に対して現実的かつ有効な阻害活性を示すことが本発明の過程で確認された。したがって、本発明による化合物は、SARS-CoV-2がヒト患者に対して病原性になるのを効果的に防止又は妨げることができる。したがって、本発明による化合物はSARS-CoV-2を阻害することができ、及び/又はSARS-CoV-2がヒト細胞に侵入するのを少なくともある程度防止又は妨害することができ、患者にCOVID-19を発症するリスクを低下させるか、又はCOVID-19によって重度に罹患するリスクを低下させる、有意な利点を提供することができる。本発明の化合物は容易に入手可能であり、十分に許容され、侵襲的方法を必要とすることなくヒトに首尾よく適用することができる。さらに、本発明による化合物は「GRAS」とみなされる、すなわち「(米国連邦食品・医薬品・化粧品法第201条(s)及び第409条に基づいて)安全であると一般に認識されている」。
【0016】
好ましくは、本発明による使用のための化合物は、3,3’,5,5’-テトラメトキシスチルベン、3,4,4’,5-テトラメトキシスチルベン、3,3’,4,5’-テトラメトキシスチルベン、3,3’,4,5,5’-ペンタメトキシスチルベン、3,3’,5,5’-テトラヒドロキシスチルベン、3,4,4’,5-テトラヒドロキシスチルベン、3,3’,4,5’-テトラヒドロキシスチルベン、3,3’,4,4’,5-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,4,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンからなる群より選択され、好ましくは3,3’,4,5,5’-ペンタメトキシスチルベン、3,3’,4,4’,5-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,4,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンからなる群より選択され、特に3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンが好ましい。
【0017】
本発明による化合物は驚くべきことに、SARS-CoV-2の阻害において、ウイルス阻害性であることが示唆される同等のポリフェノール系物質よりも有意により活性であることが判明した。(-)エピガロカテキンガレート又は(-)-ガロカテキンガレートも、他のポリフェノール、特に緑茶及び紅茶由来の他の化合物と比較して、SARS-CoV-2に関して有意な阻害効果を示すが、本発明による化合物はこれらの物質よりも有意に増強された阻害効果を有する。
【0018】
本発明による化合物は、好ましくはSARS-CoV-2の複製を阻害すること、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防すること、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防することである。
【0019】
本発明の過程において、9種のポリフェノール系植物成分及びワインの成分であるレスベラトロールの類似体として合成された合成ポリフェノール化合物、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシ-トランス-スチルベンのインビトロ抗ウイルス効果を試験した。先行技術において潜在的な抗ウイルス化合物であると示唆されていた9種類の天然化合物である没食子酸、(-)-カテキン、(-)-カテキンガレート、(-)-エピガロカテキンガレート、(-)-エピカテキン、(-)-エピカテキンガレート、(-)-エピガロカテキン、(-)-ガロカテキンガレート、及びエラグ酸、並びに(合成レスベラトロール(トランス-3,5,4’-トリヒドロキシスチルベン)類似体の代表例として)ヘキサヒドロキシ-トランス-スチルベンを、インビトロでウイルス複製を阻害する能力に関して研究した。
【0020】
本発明によるスチルベン誘導体は、例えば国際公開第02/50007号A2、国際公開第02/057219号A1、国際公開第2005/016860号A1及び国際公開第2007/002973号A2において先に開示されている。
【0021】
これらの(ポリ)ヒドロキシル化フェノールは、ポリヒドロキシル化スチルベン上のパラ位におけるOH基の数の増加に起因して、レスベラトロールと比較して抗がん効果及び抗炎症効果が増加していることが記載されている。ヘキサヒドロキシスチルベンは最も有効なインビトロにおける抗炎症活性及び抗がん活性並びに動物実験における抗がん効果を示し、インビトロで非常に初期の段階でHIV感染を阻害することが示された。これらの物質は、T細胞、好中球、マクロファージ及び対応するサイトカインの調節因子としても開示された。
【0022】
中国特許出願公開第1736986号において、スチルベン誘導体がSARS-CoV-1に対する抗ウイルス物質として提案されているが、ここで抗ウイルス活性を有すると開示された化合物は、ピリジン基含有化合物及び2,2’-OH又はCHO-で置換された化合物並びに3,3’メチル-ブテニル置換化合物であった。さらに、実際の抗SARS活性を有する化合物の性質は開示されなかった。
【0023】
試験した化合物は全て、優れたフリーラジカル捕捉剤であり、DNA合成又は炎症の重要な酵素を阻害するなど、広範囲の生化学的効果を示す。さらに、それらのいくつかは、ウイルス侵入又は複製の非特異的阻害を通じて、異なるウイルス感染を阻害することが示された。前記化合物は、それらの化学構造及び茶又は果実などの天然供給源における利用可能性から選択された。
【0024】
すべての化合物を、インビトロ細胞培養モデルを用いて、ウイルス感染に対するそれらの阻害効果に関して調べた。
【0025】
細胞へのSARS-CoV-2のドッキングのための受容体は、ACE 2受容体である。結合試験は、最も効果的な抗ウイルス効果を示した3つの化合物について行った。
【0026】
緑茶及び紅茶由来のいくつかのポリフェノール系物質が潜在的な抗SARS-CoV-2特性を有することが記載されている先行技術における他の示唆とは対照的に、本発明では、ポリフェノール系物質はSARS-CoV-2に対するそれらの効果が非常に多様であり、これらの物質のうちほんのわずかしか有効でないことが判明した。
【0027】
本発明の過程で行われたこれらの実験では、本発明による合成レスベラトロール類似体、好ましくはそのテトラヒドロキシ形態、ペンタヒドロキシ形態及びヘキサヒドロキシ形態、特にヘキサヒドロキシスチルベンが、SARS-CoV-2に対する阻害活性を示し、これは、(他のウイルスとの類似性又はコンピュータ予測に基づく楽観的予測とは対照的に)SARS-CoV-2に対する現実世界の抗ウイルス活性を有することも判明した少数の天然ポリフェノール化合物である他の天然ポリフェノール化合物よりも、著しく優れていることが示された。
【0028】
本発明の化合物は、原則として医薬物質として知られている。したがって、ヒト対象へのこれらの化合物の送達に有効であることが既に知られており立証されている製剤もまた、本発明に適用可能である。投与経路は、経口、舌下、筋肉内、皮下、経鼻、口腔粘膜、皮膚、腹膜又は直腸などの経腸又は非経口、好ましくは経口、舌下又は経鼻、特に吸入可能組成物及び/又はエアロゾル組成物に分類できる。本発明の化合物又はそれを含有する医薬組成物は、単位剤形で投与することができる。投与のための剤形は、液体剤形又は固体剤形であり得る。例えば、液体剤形は、真の溶液型、コロイド型、微粒子剤形、エマルジョン型、又は懸濁液型であり得る。投与形態の例には、錠剤;カプセル剤(caplets);硬ゼラチンカプセル及び軟質弾性ゼラチンカプセルのようなカプセル剤(capsules);カシェ剤(cachets);トローチ剤;ロゼンジ剤(lozenges);分散剤;坐剤;軟膏;カプラズマ(パッチ剤);ペースト;パウダー;被覆剤(dressings);クリーム剤;プラスター剤;溶液剤;パッチ剤;エアロゾル(例えば、鼻腔スプレー又は吸入製剤);舌下フィルム又は舌下錠剤;ロリポップ剤;ゲル剤;懸濁液(例えば、水性又は非水性の液体懸濁液、水中油型乳濁液又は油中水型乳濁液)、溶液、及びエリキシル剤を含む、患者への経口投与又は粘膜投与に適した液体投与形態が含まれる。本発明の化合物は通常の製剤にすることができ、また、徐放剤、制御放出剤、標的製剤、及び種々の粒子状薬物送達系であってもよい。
【0029】
したがって、本発明は、本発明による化合物を医薬的に許容される製剤添加剤(excipient)と共に含む医薬製剤の使用に関する。医薬的に許容される製剤添加剤は、本発明による化合物に適して使用されることが知られているいかなる製剤添加剤であってよく、特にキャリア(carrier)又は希釈剤であってよい。
【0030】
単位剤形を作製するために、当技術分野で公知の様々なキャリアを広く使用することができる。
【0031】
キャリア又は希釈剤としては例えば、デンプン、デキストリン、硫酸カルシウム、ラクトース、マンニトール、スクロース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、カオリン、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムなどの吸収剤;水、グリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、デンプンシロップ、デキストリン、シロップ、ハチミツ、グルコース溶液、アカシアシロップ、ゼラチンシロップ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、パープルガム、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの湿潤剤及び結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸塩(alginate)、寒天粉末、アルギン酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ラウリルスルホン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの崩壊剤;スクロース、トリステアリン酸グリセリル、カカオバター、水素化油などの崩壊防止剤(disintegration inhibitors);第四級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;タルク、二酸化ケイ素、コーンスターチ、ステアリン酸、ホウ酸、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどの潤滑剤が挙げられる。他のキャリア、例えば、ポリアクリル樹脂、リポソーム、例えばPEG4000及びPEG6000のような水溶性キャリア、PVPなども挙げられる。前記錠剤はまた、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶コーティング錠、又は二層錠剤及び多層錠剤などのコーティング錠剤へと調製されてもよい。例えば、投与ユニットを丸剤にするために、当技術分野で公知の様々なキャリアを広く使用することができる。キャリアとしては、例えば、ブドウ糖、ラクトース、デンプン、カカオバター、水素添加植物油、ポリビニルピロリドン、カオリン、タルク等の希釈剤及び吸収剤;アカシア、トラガント、ゼラチン、エタノール、ハチミツ、液状糖、米ペースト又はバター等の結合剤;寒天粉末、乾燥デンプン、アルギン酸塩、ラウリルスルホン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース等の崩壊剤が挙げられる。例えば、投与ユニットをカプセルにするために、活性成分としての本発明の化合物を上記の種々のキャリアと混合し、得られた混合物を硬質ゼラチンカプセル又は軟質カプセルに入れる。本発明の化合物の活性成分はまた、マイクロカプセルに製造されるか、水性媒体中に懸濁されて懸濁液を形成するか、又は硬カプセルに充填されるか、又は投与のために注射剤、吸入製剤もしくはエアロゾルに調製されてもよい。例えば、本発明の化合物は注射剤、吸入製剤又はエアロゾル製剤、例えば、溶液、懸濁溶液、エマルジョン、凍結乾燥粉末に調製され、この調製物は、水性又は非水性であり得る。
【0032】
本発明の医薬製剤は、キャリア、希釈剤、結合剤、滑沢剤、保存剤、界面活性剤又は分散剤などの1つ及び/又は複数の薬力学的に許容される製剤添加剤を含有し得る。例えば、希釈剤は、水、エタノール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどから選択することができる。さらに、等張吸入溶液/懸濁液、エアロゾル、注射剤を調製するために、適切な量の塩化ナトリウム、グルコース又はグリセリンを注射剤に添加することができる。さらに、従来の可溶化剤、緩衝剤、pH調整剤などを添加することもできる。これらの補助材料は、この分野で一般的に使用されている。加えて、必要であれば、着色剤、保存剤、香味料、甘味料、又は他の材料を医薬製剤に添加することもできる。
【0033】
薬物療法の目的を達成し、治療効果を高めるために、本発明の薬物又は医薬組成物は、任意の公知の投与方法によって投与することができる。本発明の抽出物又は化合物又は医薬組成物の投与量は、予防又は治療される疾患の性質及び重症度、患者又は動物の性別、年齢、体重、人格及び個々の応答、投与経路、投与回数及び治療目的などの多くの因子に依存し、したがって、本発明の治療用量は、広範囲の変化を有しうる。一般的に言えば、本発明の薬力学的成分の投与量は、当業者に周知である。本発明の化合物組成物の最終製剤に含まれる薬物の実際の量により、治療有効用量の要件を満たすように適切な調整を行うことができ、本発明の化合物の用量、最も好ましくは0.1~20mg/kg体重を満たすことができる。
【0034】
上述の投薬量は単一の投薬形態で投与してもよく、又はいくつかの、例えば、2つ、3つ、又は4つの投薬形態に分割してもよく、これは、投与する医師の臨床経験及び他の治療手段の使用を含む投薬計画によって制限される。
【0035】
好ましい実施形態によれば、本発明によるポリフェノール化合物は、上気道系への送達のために製剤化される。例示的な製剤には、鼻腔用、気管支用、経口用、及び肺用の製剤が含まれる。しかし、本発明による化合物は、液体、ゲル、ワックス、又はペーストを含む局所投与用に製剤化することもできる。本組成物をエアロゾルとして製剤化することが特に好ましい。エアロゾルは、液体エアロゾルであっても又は粉末化エアロゾルであってもよい。いくつかの実施形態では、組成物はグリセロールなどの1つ以上の医薬的に許容される製剤添加剤を含有する。組成物は、0.0l%~20%w/vの本発明による有効成分及び10%~20%グリセロールを含有しうる。
【0036】
本開示の医薬組成物及び単位剤形は、典型的には1つ以上の医薬的に許容される製剤添加剤、特にキャリア又は希釈剤も含む。本開示の特定の化合物によって提供される利点、例えば、増加した溶解性及び/又は増加した流動性、純度、又は安定性(例えば、吸湿性)のような特性は、それらを、従来技術よりも、医薬処方及び/又は患者への投与により適したものにすることができる。
【0037】
適切な製剤添加剤は、薬学又は薬学の当業者に周知である。特定の製剤添加剤が医薬組成物又は形成への組み込みに適しているかどうかは、剤形が患者に投与される方法を含む、当技術分野で周知の様々な因子に依存する。例えば、錠剤又はカプセル剤などの経口剤形は、非経口剤形での使用に適していない製剤添加剤を含有し得る。特定の製剤添加剤の適合性はまた、剤形中の特定の活性成分に依存し得る。例えば、いくつかの活性成分の分解は、ラクトースなどのいくつかの製剤添加剤によって、又は水に曝露されたときに促進され得る。第一級アミン又は第二級アミンを含む活性成分は、そのような加速された分解を特に受けやすい。
【0038】
特に好ましい医薬的に許容される製剤添加剤は、抗酸化剤(還元剤)である。医薬組成物において一般的に使用される抗酸化剤としては、クエン酸及びその塩(E330-E333)、酒石酸及びその塩(E334-E337)、リン酸及びその塩(E338-E343)、並びにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩(EDTAカルシウム二ナトリウム、E385)、ビタミンC、ビタミンEなどが挙げられる。
【0039】
本開示はさらに、活性成分が分解する速度を低下させる1つ以上の化合物を含む医薬組成物及び剤形を包含する。そのような化合物の例は、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤などの安定剤である。加えて、本開示の医薬組成物又は剤形は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム又は有機酸などの1つ又は複数の溶解度調節剤を含有し得る。具体的な溶解度調節剤としては酒石酸がある。
【0040】
製剤添加剤の量及び種類と同様に、剤形中の本発明による化合物の量及び具体的な種類は、それが患者に投与される経路などの因子に依存し得る。本発明の化合物の典型的な剤形は、本発明による有効成分を、約100μg~約10gの量で、好ましくは約1mg~約1gの量で、より好ましくは10mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約20mg~約300mgの量で含有する。好ましい剤形は、約10mg~約1000mgの量で、好ましくは約25mg~約750mgの量で、より好ましくは50mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約30mg~約100mgの量で、本発明の化合物を含有する。
【0041】
好ましくは医薬組成物はまた、キャリア、例えば、限定されるものではないが、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、及びエリトリトールなどの糖アルコールを含んでもよい。特定の実施形態では、糖アルコールはグリセロールである。
【0042】
典型的な局所剤形としては、液体、クリーム、ローション、軟膏、ゲルワックス、ペースト、スプレー、エアロゾル、溶液、エマルジョン、及び当業者に公知の他の形態が挙げられる。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、適切な局所剤形で口腔組織、鼻腔組織、又は気管支組織に送達される。
【0043】
非噴霧性局所剤形では、局所適用に適合し、好ましくは水よりも高い動的粘度を有するキャリア又は1種以上の製剤添加剤を含む、粘性~半固体又は固体の形態が典型的に使用される。適切な製剤としては液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤(ointments)、散剤、ゲル剤、ワックス剤、ペースト剤、リニメント剤、軟膏剤(salves)などが挙げられ、これらは必要に応じて、滅菌されるか、又は例えば浸透圧などの様々な特性に影響を与えるための補助剤(例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤、緩衝剤、又は塩)と混合される。
【0044】
鼻腔用スプレー製剤は、計量された用量の活性成分を含有するスプレーを送達する非加圧ディスペンサー中の製剤添加剤の溶液又は混合物中に溶解又は懸濁された治療活性成分を含有する。前記用量は、スプレーポンプによって計量されてもよく、又は製造中に予め計量されていてもよい。経鼻スプレーユニットは単位投与用に設計されていてもよく、又は薬物を含有する製剤の計量されたスプレーを数百回まで放出しうるものでもよい。鼻腔用スプレーは、局所的及び/又は全身的効果のために鼻腔に適用される。
【0045】
別の好ましい実施形態によれば、本発明による化合物は、吸入溶液及び懸濁製剤として提供される。このような製品は典型的には治療活性成分を含有し、追加の製剤添加剤をも含有しうる、水性製剤である。水性ベースの経口吸入溶液及び懸濁液は、無菌でなければならない。吸入用の溶液及び懸濁液は、局所及び/又は全身作用のための経口吸入による肺への送達が意図され、指定されたネブライザーと共に使用される。吸入スプレー製剤は、製剤と容器施栓系からなる。製剤は典型的には水性ベースであり、無菌でなければならない。吸入スプレーは、局所及び/又は全身作用のための経口吸入による肺への送達を意図している。他の適切な局所剤形としては、噴霧可能なエアロゾル製剤が挙げられ、ここで、活性成分は好ましくは固体又は液体の不活性キャリアと組み合わせて、加圧揮発性物質(例えば、フレオンなどのガス状噴射剤)との混合物中に、又はスクイーズボトル中に包装される。噴霧可能なエアロゾル調製物の例としては、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、及びネブライザーが挙げられる。必要に応じて、保湿剤(moisturizers)又は保湿剤(humectants)を医薬組成物及び剤形に添加することもできる。
【0046】
経皮剤形及び粘膜剤形、例えば、点眼液、パッチ、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、坐剤、軟膏、ゲル、溶液、乳濁液、懸濁液、又は当業者に公知の他の形態で本発明による医薬組成物を提供することも有利であり得る。口腔内の粘膜組織を治療するのに適した剤形は、マウスウォッシュとして、口腔用ゲルとして、又は口腔用パッチとして製剤化することができる。さらなる経皮剤形としはリザーバー型又はマトリックス型パッチが挙げられ、これは、皮膚に適用され、所望の量の活性成分の浸透を可能にするために特定の期間にわたって装用され得る。経皮剤形及び粘膜剤形を提供するために使用することができる適切な製剤添加剤(例えば、キャリア及び希釈剤)及び他の材料は医薬分野の当業者に周知であり、所与の医薬組成物又は形成が適用される特定の組織又は器官に依存する。その事実を考慮すると、非毒性であり、医薬的に許容される剤形を形成するための典型的な製剤添加剤としては、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、及びそれらの混合物が挙げられる。本発明による化合物による治療の前、治療と併せて、又は治療の後に、治療される具体的な組織に応じて追加的成分を使用することができる。例えば、浸透促進剤を使用して、活性成分を組織に又は組織を横切って送達するのを助けることができる。適切な浸透促進剤としては、アセトン;エタノール、オレイル、テトラヒドロフリルなどの様々なアルコール;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;コリドングレード(Povidone、Polyvidone);尿素;並びにTWEEN80(ポリソルベート80)及びSPAN60(モノステアリン酸ソルビタン)などの様々な水溶性又は不溶性の糖エステルが挙げられる。
【0047】
薬学的組成物もしくは剤形のpH又は薬学的組成物もしくは剤形が適用される組織のpHもまた、活性成分の送達を改善するために調整され得る。同様に、送達を改善するために、溶媒キャリアの極性、そのイオン強度、又は張度も調整され得る。ステアリン酸塩(stearates)などの化合物を医薬組成物又は剤形に添加して、送達を改善するように活性成分の親水性又は親油性を有利に変化させることもできる。これに関して、ステアリン酸塩は、製剤のための脂質ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達増強剤又は浸透増強剤としての役割を果たすことができる。
【0048】
本発明の化合物は、徐放性又は遅延放出性の製剤として製剤化することもできる。例えばカプセル化によるものなど、様々な活性成分のための持続放出及び遅延放出製剤が、当技術分野で公知である。
【0049】
本発明の化合物は、医薬組成物中に約0.001%~約50%w/v、典型的には約0.01%~約0.1%w/v、より典型的には約1%~約20%w/vで存在する。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、約0.01%~約20%w/vで存在する。医薬的に許容される製剤添加剤及び薬学的組成物中に存在する他の化合物又は薬剤は、最終的に合計で100%になるまで追加される。
【0050】
本発明の化合物及び組成物は、SARS-CoV-2によるウイルス感染の1つ又は複数の症状の治療に有用である。好ましくは、本発明による医薬組成物は、点鼻剤、アプリケーター、又はスプレーなどの経鼻適用又は経口適用のために製剤化される。一実施形態は、SARS-CoV-2に感染しているか、又は感染するリスクがある患者を予防的又は治療的に処置するための、特に、空中伝達経路を介したウイルス感染を予防するための使用のための、本発明による組成物を提供する。
【0051】
さらなる態様によれば、本発明は、ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のための、特にSARS-CoV-2を阻害するための、本発明による医薬製剤の製造のための本発明による化合物の使用に関する。好ましくは、前記使用は、SARS-CoV-2の複製を阻害するため、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を防止するため、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を防止するためである。
【0052】
別の態様によれば、本発明は、ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のための、特にSARS-CoV-2を阻害するための方法であって、SARS-CoV-2に感染しているか、又は感染するリスクがある対象に、有効量の本発明による化合物又は本発明による医薬製剤を投与する方法に関する。この方法は特に、ヒト対象において、SARS-CoV-2の複製を阻害するために、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防するために、及び/又は空中伝達経路を通したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防するために、適している。
【0053】
本発明を、以下の実施例及び図面によってさらに説明するが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1A図1は、試験された化合物及びその化学構造を示す。化合物I:没食子酸、化合物II:(-)-カテキン、化合物III:(-)-カテキンガレート、化合物IV:(-)エピガロカテキンガレート、化合物V:(-)-エピカテキン、化合物VI:(-)-エピカテキンガレート、化合物VII:(-)-エピガロカテキン、化合物VIII:(-)-ガロカテキンガレート、化合物IX:エラグ酸、及び化合物X:ヘキサヒドロキシ-トランス-スチルベン。
図1B】同上。
図2図2は、SARS-CoV-2のTCID50に対する、表示された物質とのプレインキュベーションの効果を示す。
図3図3、4及び5は、SARS-CoV-2感染細胞を用いたVero細胞培養アッセイにおける化合物IV、VIII及びXの性能を示す。ここでは、細胞をインキュベートし、次いで感染させ、異なる濃度の化合物を用いた48時間のインキュベーション後にウイルス負荷を決定した。上清中のRT PCRアッセイを用いてウイルス感染を定量した。
図4】同上。
図5】同上。
図6図6及び図7は、化合物I~X(「s1」~「s10」)及びレムデシビルのウイルス感染を定量するための上清中のRT PCRアッセイを示す。
図7】同上。
図8図8は、ウイルス阻害の2連の実験(two runs)を示す。
図9図9は、レスベラトロール、ピセアタンノール、ヘキサヒドロキシスチルベン(化合物X)の構造を示す。
図10図10は、異なる濃度の化合物におけるウイルスコピー数を示す(丸点:レスベラトロール、四角:ピセアタンノール、三角上:ヘキサヒドロキシスチルベン(化合物X);三角下:陽性対照)。
図11図11は、異なる濃度の化合物におけるウイルスコピー数を示す。ウイルス感染は上清中のRTPCRアッセイを用いて定量された。右側のカラムは陽性対照:(A)レスベラトロール、(B)ピセアタンノール、(C)ヘキサヒドロキシスチルベン(化合物X)である。
図12図12図14は、SARS-CoV-2感染細胞を用いたVero細胞培養アッセイにおけるヘキサヒドロキシスチルベン(化合物X)、レスベラトロール、及びピセアタンノールの性能を示し、細胞をインキュベートし、次いで感染させ、異なる濃度の化合物を用いた48時間のインキュベーション後にウイルス負荷を決定した。
図13】同上。
図14】同上。
【実施例
【0055】
本実施例では、SARS-CoV-2のTCID50及びSARS-CoV-2感染細胞を用いたVero細胞培養アッセイを含む、化合物I~XのSARS-CoV-2阻害効果を調べた。
【0056】
材料及び方法
細胞を感染させ、異なる濃度の全ての化合物と共にインキュベートした。
【0057】
組織培養感染量(TCID50)アッセイの中央値
Vero細胞を、増殖培地(10%FCS、100μM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、及びペニシリン/ストレプトマイシンを含む、DMEM)中で96ウェルプレートに1.5~2×10/ウェルの密度で播種した。翌朝、増殖培地を除去し、95%コンフルエントのVero細胞をDMSO又は用量50μMの物質I、IV、VII、VIII及びXのいずれかと共に45分間プレインキュベートし、100μLのSARS-CoV-2ウイルスストックの連続希釈液で感染させた。プレインキュベーション及びウイルス感染は10%FCSに代えて2%FCSのみを含む培地中で行った。5~7日間後、全てのウェルの生存率をチェックし、リード・アンド・マンチ方法(Reed et al., Am. J. Epidemiol. 27 (1938), 493- 497)を用いて、表示物質の存在下又は非存在下でのTCID50量を計算した。生存細胞及び感染細胞を有するウェルを、Vero細胞(生存細胞)の良好に可視かつ無傷である単層を示す逆光学顕微鏡、又は大量の死細胞及び単層の非存在(感染)を特徴とする大量のCPE(細胞変性効果)を有するウェルのいずれかを用いて同定した。
【0058】
5~7日間後、全てのウェルを細胞変性作用(CPE)について確認し、表示された物質の存在下又は非存在下でのTCID50量を前記リードらの方法を用いて計算した。
【0059】
細胞培養
アフリカミドリザル腎臓上皮細胞であるVeroE6細胞(Biomedicaから入手)を、5%FCS及び1%PenStrepを含むアール塩(Earle’s Salts)及びL-グルタミンを補充したGibco最小必須培地(Gibco11095~080、500mL)(以下、MEM5%と称する)中で維持した。特に記載のない限り、37℃、5%COで培養する。
【0060】
ウイルス:ストック調製及び力価測定
ウイルスSARS-CoV-2株:ヒト2019-nCoV単離株
製品説明
参照SKU:026V-03883 ヒト2019-nCoVの感染性細胞培養上清
製品リスクグループ:RG3 ICTV
分類:ssRNA(+)/ニドウイルス目 (Nidovirales)/コロナウイルス科/コロナウイルス科/ベータコロナウイルス属
ウイルス名:ヒト2019-nCoV ex China
系統:BavPat1/2020
単離:ドイツ、中国由来(Germany ex China)
2.2E+06PFU/mLのヒト2019-nCoV単離物であるこのストック溶液を基として、ウイルス通常在庫ストック(VPN3)をEMEM(Gibco)+10%FCS中で培養した。前記通常在庫ストックについては、TCID50及びプラークアッセイによる力価測定を並行して行ったところ、1μLストックあたり1.30E+06ウイルスRNAコピーの濃度があった。アリコートを-80℃で保存した。感染アッセイのために、前記通常在庫ストックを解凍し、MEM2%中で0,002のMOIに希釈した。
【0061】
欧州委員会では、SARS-CoV-2をリスクグループ3の病原体として分類している。活性ウイルス及び高濃度ウイルスストックを用いた実験は、バイオセーフティレベル3条件(BSL-3)下での作業を必要とする。グラーツ医科大学病理学研究所では、エアロゾルを介したウイルスの伝播を避けるために、活性ウイルスを用いたすべての作業ステップを、BSL-3条件下で、安全性を高めた個人用装置を用いて行った。
【0062】
物質(Substances)
物質をDMSO(Sigma)に溶解して、それぞれ5mM又は1mMの物質ストック濃度にした。さらに、特定の物質から2.5mM及び0.5mMのストックを得るために1:2希釈を行った。最終アッセイ濃度のために、1ウェル当たりMEM2%中の物質ストックの1:100希釈を行った。物質ストックは、各アッセイの前に新たに調製した。
【0063】
細胞毒性アッセイ
細胞毒性アッセイのために、物質処理の24時間前に、96ウェルプレートに、VeroE6細胞を、2%FCSを補充したMEMを使用して1ウェル当たり8500~10000個の細胞を播種した。37℃、5%COで培養した。
【0064】
インキュベーション後、細胞を、MEM+2%FCS中の物質ストックの1:100希釈物(上記の通り)に曝露した。物質及び濃度あたり3組(triplicates)で試験した。物質添加の直後、24時間後及び48時間後に、代謝活性を、レサズリンをベースとするアッセイを用いて測定した。レサズリン(10μM濃度)の添加後、相対蛍光単位(RFU)の増加を3時間測定し、線形回帰分析を行った。物質処理細胞の勾配を未処理細胞の勾配(未処理細胞=細胞+各培地の量)に対して正規化し、相対代謝活性を計算した。
【0065】
感染アッセイ
感染アッセイで使用したVeroE6細胞を、別段の記載がない限り、24時間前に、MEM+2%FCS中で48ウェルプレート(コーニングコースター、細胞培養処理)に1ウェルあたり3.0×10~2.5×10細胞(300μL)の濃度で播種した。
【0066】
感染の日に、播種培地を除去し、細胞を、最終容量198μLの1%DMSO+溶解された物質を含有する培地(MEM2%FCS)で処理した。続いて、SARS-CoV-2(MOI0.002と計算される)を含有する2μLの希釈ウイルスストックを添加した。細胞を5%CO及び37℃で1時間ウイルスに感染させた。インキュベーション工程の後、感染培地を除去し、細胞をFCSを含まないMEMで2回洗浄した。440μlの新鮮なMEM2%FCS(物質を含有するか又は含有しないかのいずれか)を細胞に与えた。10分後、時点0の上清を回収し(140μL)、-80℃で凍結するか、又は560μLのAVL緩衝液で不活性化した。
【0067】
細胞をさらに48時間、5%CO及び37℃でインキュベートし、上清を時点48で回収し、560μlのAVL緩衝液で不活性化した。さらに、細胞内ウイルス検出のために、細胞をウェル中で溶解させるか(Qiagen RNeasy KitからのRTX緩衝液、続いて当該キットのプロトコールに基づきRNA調製)、又はプレートをSARS特異的免疫組織化学染色(IHC)のために4%ホルマリン中で固定した。
【0068】
RNA単離とRT-qPCR
ウイルスを含有する上清サンプルをAVL緩衝液(Qiagen)で不活化した後、CDCによって推奨されている製造業者のプロトコールに従って、QIampウイルスRNAミニキット(QiAmp Viral RNA mini Kit、Qiagen)を用いてウイルスRNAを単離した。40μLの超高純度HO中で溶出し、-80℃で保存した。
【0069】
試料のウイルス量を検出するためのRT-qPCRは、Rotor Gene Qサイクラーを備えたQuantiTect Multiplex RT-PCRキットを用いてCDC推奨に基づいて実施した。
2019-nCoV_N1-F 2019-nCoV_N1フォワードプライマー:
5’-GAC CCC AAA ATC AGC GAA AT-3’
2019-nCoV_N1-R 2019-nCoV_N1フォワードプライマー:
5’-TCT GGT TAC TGC CAG TTG AAT CTG-3’
2019-nCoV_N1-P 2019-nCoV_N1プローブ:
5’-FAM-ACC CCG CAT TAC GTT TGG TGG ACC-BHQ1-3’ FAM、BHQ-1
【0070】
RotorGene
qRT-PCR分析は、Rotorgeneを使用して製造業者のプロトコールに従って実施した。
【0071】
【表1】
【0072】
免疫組織化学
細胞を4%ホルマリンで固定し、PBSで洗浄した後、細胞をPBS中0.1%TritonX100を用いて10分間(ウェル当たり200μl)透過処理し、続いて200μlのPBSで3回洗浄した。内因性ペルオキシダーゼをメタノール中3%Hで30分間ブロックした。この後、200μlのPBSでの3回の洗浄工程に続いて、細胞を1ウェル当たり100μLの一次抗体(SARS-CoV-2ヌクレオカプシド;抗体希釈剤中1:1000希釈)と共に1時間インキュベートした。200μlのPBSでの3回の洗浄工程に続いて、別のインキュベーション工程の間、細胞を二次抗体(EnVision)で少なくとも30分間処理した(光から保護した)。
【0073】
洗浄(PBSで3回)後、基質AECを細胞上に滴下し(2滴)、ウイルス感染細胞が赤色に染色されるまで(顕微鏡下で観察)、ただし3分以内に、インキュベートした。反応をPBS洗浄(3回)で停止した。ウェルは、写真で記録するまでPBS中に保持した。
【0074】
【表2】
【0075】
ACE2受容体結合に対するRBDの阻害を検出するための分子相互作用アッセイ
ACE2受容体結合に対するRBDの阻害を検出するための分子相互作用アッセイを、以下の変更を伴って、記載されているように(Gattinger et al, Allergy, 76 (2021), 878-883)実施した:200ngのHisタグ付きRBDを、様々な用量(100、50、25、12.2、及び6mM)の物質Xと共に、RTで3時間インキュベートし、続いてプレートに結合されたACE2(2μg/ml)上に3時間重層した。次いで、結合したRBDを、マウスモノクローナル抗His抗体、続いてHRP標識抗マウスIgG1抗体で検出し、ABTSで検出した。すべての測定は、変動5%未満で2組で(in duplicates)実施された。
【0076】
結果
第1のセットの試験において、SARS-CoV-2のTCID50を、DMSO又はDMSOに溶解した表示された物質(I~X)とのプレインキュベーション後にVero細胞を用いて分析して決定した。予想通り、DMSOは、SARS-CoV-2のTCID50を1Log分減少させた。細胞を播種し、次いで1時間感染させ、次いで物質を異なる濃度で48時間添加した。物質はいずれも細胞保護作用を示し、TCID50を1Log分以上低下させた。TCID50は50μMの物質IV(99.7倍及び802倍の低減(reduction))、VIII(99.7倍及び5.14倍の低減)及びX(99.7倍及び2107倍の低減)によって有意に低下し、ウイルス複製の抑制を示した(表1及び図2)。
【0077】
【表3】
【0078】
ウイルス増殖のインビトロ阻害を別の実験室で繰り返した。
Vero細胞を、上記の方法のセクションに記載されているように48ウェルプレートに播種し、次いで、細胞を感染させ、異なる濃度の10種の化合物すべてと、48時間インキュベートした。化合物IV、及びVIII、並びにXはウイルス増殖の抑制を示し、これは、第1の組の試験(TCID50アッセイ)で見られた結果と一致する。次いで、SARS-CoV-2のqPCRをRNA単離後の上清中で実施した。化合物IVは、2つの組のうちの1つにおいて、50μMの濃度で30超のct値の増加を引き起こした。30超のct値の増加は50μMの物質VIIIと共にインキュベートした後にも見られた。化合物Xは25μM及び50μMで48時間処理した後、ct値の増加(30超)をもたらし、ウイルス増殖の阻害を示した(図3図4及び図5も参照のこと)。
【0079】
ウイルス増殖の阻害が宿主細胞へのウイルス取り込みの変化によるものであるかどうかを決定するために、細胞を、化合物IV、VIII及びX(以前の実験で有効であることが証明された化合物)と共に1時間さらにインキュベートし、次いで化合物を洗い流した。次いで、細胞上清を、上記のようにqPCRによって試験した。興味深いことに、化合物IV及びVIIIは、未処理の対照と比較して、ウイルス増殖に何ら影響を及ぼさず、一方、化合物Xは1時間という短期間のインキュベーションの後、濃度依存的にウイルス増殖を阻害することができた。結果を図7に示す。ct値は、25μM又は50μMで1時間インキュベートした後に有意に増加した。
【0080】
この結果は、宿主細胞へのウイルス取り込みが化合物Xによって阻害され得ることを示す。そのため、細胞へのウイルスの侵入箇所として作用すると記載されているACE2受容体を化合物Xがブロックすることができるかどうかを調べた。
【0081】
次いで、ACE2受容体に対する化合物IV、VIII及びXの効果を試験した。化合物IV及びVIIIは、この試験においてACE2受容体の結合に対する阻害効果を示さなかった。化合物Xは、濃度依存的にACE2への結合を阻害することができた。化合物Xは100μMでACE2結合を21~31パーセント阻害した(図8参照)。これは化合物Xがごく初期の段階で細胞へのウイルス取り込みを阻害することができることを示し、これは少なくとも部分的には化合物のACE2受容体への結合に起因しうる。
【0082】
トリヒドロキシスチルベン(レスベラトロール)、テトラヒドロキシスチルベン(ピセアタンノール)及びヘキサヒドロキシスチルベン(本発明による化合物X)に関する比較例
レスベラトロール、ピセアタンノール及びヘキサヒドロキシスチルベン、本発明による化合物Xに関する比較試験を、上記に開示したように行った。VeroE6細胞を細胞系として使用した。細胞をウイルスに1時間感染させ、次いで試験化合物を添加した。次いで、洗浄し、試験化合物と共に48時間インキュベートした。結果/読み取りは、上清のqPCR及びIHCによって得た。
【0083】
結果
これらの比較試験の結果を図9図14に示す。ヘキサヒドロキシスチルベンはウイルス複製を完全に阻害することができた(100μM及び80μM)。トリヒドロキシスチルベンが示したウイルス複製の阻害は低度であった(100μM、濃度依存性を示す)。テトラヒドロキシスチルベンはウイルス複製の阻害を示さなかった。
【0084】
本開示及び実施例に鑑み、本明細書では以下の好ましい実施形態を開示する。
1. ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防において使用するため、特にSARS-CoV-2を阻害するための、一般式Iの化合物:
【0085】
【化2】
【0086】
(式中、R~Rは同一であるか又は同一ではなく、H、OH-、又はORであり、RはC~Cアルキル基又はC~Cアシル基であり、ただし、R~Rのうち少なくとも4個は、H以外である)。
2. 前記化合物が、3,5,4’-トリメトキシスチルベン、3,3’,5,5’-テトラメトキシスチルベン、3,4,4’,5-テトラメトキシスチルベン、3,3’,4,5’-テトラメトキシスチルベン、3,3’,4,5,5’-ペンタメトキシスチルベン、3,3’,5,5’-テトラヒドロキシスチルベン、3,4,4’,5-テトラヒドロキシスチルベン、3,3’,4,5’-テトラヒドロキシスチルベン、3,3’,4,4’,5-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,4,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンからなる群より選択され、好ましくは3,3’,4,5,5’-ペンタメトキシスチルベン、3,3’,4,4’,5-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,4,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4’,5,5’-ペンタヒドロキシスチルベン、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンからなる群より選択され、特に3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンである、使用のための態様1の化合物。
3. SARS-CoV-2を阻害することが、SARS-CoV-2の複製を阻害すること、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防すること、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防することである、使用のための態様1~態様3のいずれか一つの化合物。
4. 活性成分としての使用のための態様1~態様3のいずれか一つの化合物と医薬的に許容される製剤添加剤(excipient)とを含む、又はそれらからなる、医薬製剤。
5. 前記製剤が、経口、舌下、筋肉内、皮下、経鼻、口腔粘膜、気管支、肺、皮膚、腹膜又は直腸投与用、好ましくは経口、舌下又は経鼻投与用であり、特に、前記製剤が、吸入可能組成物及び/又はエアロゾル組成物として、又は経鼻スプレーもしくは経口スプレーとして、及び/又は舌下フィルムもしくは舌下錠剤として、及び/又はロリポップとして、提供される、使用のための態様4の医薬製剤。
6. 前記医薬的に許容される製剤添加剤が、例えば、水、アセトン、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの希釈剤;例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、及びエリトリトール、例えばデンプン、デキストリン、硫酸カルシウム、ラクトース、マンニトール、スクロース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、カオリン、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムなどの吸収剤などのキャリア;例えば、水、グリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、デンプンシロップ、デキストリン、シロップ、ハチミツ、グルコース溶液、アカシアシロップ、ゼラチンシロップ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、パープルガム、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの湿潤剤及び結合剤;例えば、乾燥デンプン、アルギン酸塩(alginate)、寒天粉末、アルギン酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ラウリルスルホン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの崩壊剤;スクロース、トリステアリン酸グリセリル、カカオバター、水素化油などの崩壊防止剤(disintegration inhibitors);第四級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;タルク、二酸化ケイ素、コーンスターチ、ステアリン酸、ホウ酸、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどの潤滑剤;ポリアクリル樹脂、リポソーム、例えばPEG4000及びPEG6000のような水溶性キャリア、PVP;抗酸化剤;pH緩衝剤及び/又は塩緩衝剤;溶解度調節剤;浸透促進剤;クエン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、リン酸及びその塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩(EDTAカルシウム二ナトリウム、E385)、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化剤;及びこれらの混合物から選択される、使用のための態様4又は態様5の医薬製剤。
7. 前記製剤が、吸入製剤又はエアロゾル製剤、特に等張吸入溶液若しくは懸濁液又は液体若しくは粉末のエアロゾルである、使用のための態様4~態様6のいずれか一つの医薬製剤。
8. 前記製剤が、約100μg~約10gの量で、好ましくは約1mg~約1gの量で、より好ましくは10mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約20mg~約300mgの量で、前記化合物を含有する、使用のための態様4~態様7のいずれか一つの医薬製剤。
9. 前記製剤が、約10mg~約1000mgの量で、好ましくは約25mg~約750mgの量で、より好ましくは50mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約30mg~約100mgの量で、前記化合物を含有する、使用のための態様4~態様8のいずれか一つの医薬製剤。
10. 前記製剤が、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、又はネブライザーに含まれている、使用のための態様4~態様9のいずれか一つの医薬製剤。
11. 前記製剤が、前記化合物を0.001%~50%w/v、好ましくは0.01%~20%w/v、より好ましくは0.1%~20%w/v、特に1%~20%w/v含有する、使用のための態様4~態様9のいずれか一つの医薬製剤。
12. ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のため、特にSARS-CoV-2の阻害のための態様4~態様11のいずれか一つの医薬製剤の製造のための態様1~態様3のいずれか一つの化合物の使用。
13. SARS-CoV-2の複製を阻害するため、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防するため、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防するための、態様12の使用。
14. ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のため、特にSARS-CoV-2を阻害するための方法であって、SARS-CoV-2に感染しているか又は感染するリスクがある対象に、有効量の態様1もしくは態様2の化合物又は態様4~態様11のいずれか一つの医薬製剤が投与される方法。
15. ヒト対象において、SARS-CoV-2の複製を阻害するため、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防するため、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防するための方法であって、SARS-CoV-2に感染しているか又は感染するリスクがある対象に、有効量の態様1もしくは態様2の化合物又は態様4~態様11のいずれか一つの医薬製剤が投与される方法。
【0087】
1. ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のため、特にSARS-CoV-2を阻害するための、(-)-エピガロカテキンガレート、(-)-ガロカテキンガレート、又はそれらの混合物から選択される化合物であって、好ましくは(-)-ガロカテキンガレート又はそれらの混合物から選択される化合物。
2. (-)-ガロカテキンガレート(物質VIII)である、態様1の化合物。
3. SARS-CoV-2を阻害することが、SARS-CoV-2の複製を阻害すること、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防すること、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防することである、態様1又は態様2の化合物。
4. 活性成分としての態様1~態様3のいずれか一つの化合物と医薬的に許容される製剤添加剤(excipient)とを含む、又はそれらからなる、医薬製剤。
5. 前記製剤が、経口、舌下、筋肉内、皮下、経鼻、口腔粘膜、気管支、肺、皮膚、腹膜又は直腸投与用、好ましくは経口、舌下又は経鼻投与用であり、特に、前記製剤が、吸入可能組成物及び/又はエアロゾル組成物として、又は経鼻スプレーもしくは経口スプレーとして、及び/又は舌下フィルムもしくは舌下錠剤として、及び/又はロリポップとして、提供される、使用のための態様4の医薬製剤。
6. 前記医薬的に許容される製剤添加剤が、例えば、水、アセトン、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの希釈剤;例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、及び、エリトリトール、例えばデンプン、デキストリン、硫酸カルシウム、ラクトース、マンニトール、スクロース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、カオリン、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムなどの吸収剤などのキャリア;例えば、水、グリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、デンプンシロップ、デキストリン、シロップ、ハチミツ、グルコース溶液、アカシアシロップ、ゼラチンシロップ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、パープルガム、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの湿潤剤及び結合剤;例えば、乾燥デンプン、アルギン酸塩(alginate)、寒天粉末、アルギン酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ラウリルスルホン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの崩壊剤;スクロース、トリステアリン酸グリセリル、カカオバター、水素化油などの崩壊防止剤(disintegration inhibitors);第四級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;タルク、二酸化ケイ素、コーンスターチ、ステアリン酸、ホウ酸、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどの潤滑剤;ポリアクリル樹脂、リポソーム、例えばPEG4000及びPEG6000のような水溶性キャリア、PVP;抗酸化剤;pH緩衝剤及び/又は塩緩衝剤;溶解度調節剤;浸透促進剤;クエン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、リン酸及びその塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩(EDTAカルシウム二ナトリウム、E385)、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化剤;及びこれらの混合物から選択される、使用のための態様4又は態様5の医薬製剤。
7. 前記製剤が、吸入製剤又はエアロゾル製剤、特に等張吸入溶液若しくは懸濁液又は液体若しくは粉末のエアロゾルである、使用のための態様4~態様6のいずれか一つの医薬製剤。
8. 前記製剤が、約100μg~約10gの量で、好ましくは約1mg~約1gの量で、より好ましくは10mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約20mg~約300mgの量で、前記化合物を含有する、使用のための態様4~態様7のいずれか一つの医薬製剤。
9. 前記製剤が、約10mg~約1000mgの量で、好ましくは約25mg~約750mgの量で、より好ましくは50mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約30mg~約100mgの量で、前記化合物を含有する、使用のための態様4~態様8のいずれか一つの医薬製剤。
10. 前記製剤が、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、又はネブライザーに含まれている、使用のための態様4~態様9のいずれか一つの医薬製剤。
11. 前記製剤が、前記化合物を0.001%~50%w/v、好ましくは0.01%~20%w/v、より好ましくは0.1%~20%w/v、特に1%~20%w/v含有する、使用のための態様4~態様9のいずれか一つの医薬製剤。
12. ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のため、特にSARS-CoV-2の阻害のための態様4~態様11のいずれか一つの医薬製剤の製造のための態様1~態様3のいずれか一つの化合物の使用。
13. SARS-CoV-2の複製を阻害するため、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防するため、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防するための、態様12の使用。
【0088】
14. ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のため、特にSARS-CoV-2を阻害するための方法であって、SARS-CoV-2に感染しているか又は感染するリスクがある対象に、有効量の態様1もしくは態様2の化合物又は態様4~態様11のいずれか一つの医薬製剤が投与される方法。
15. ヒト対象において、SARS-CoV-2の複製を阻害するため、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防するため、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防するための方法であって、SARS-CoV-2に感染しているか又は感染するリスクがある対象に、有効量の態様1もしくは態様2の化合物又は態様4~態様11のいずれか一つの医薬製剤が投与される方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2024514770000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防において使用するため、特にSARS-CoV-2を阻害するための、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベン。
【請求項2】
SARS-CoV-2を阻害することが、SARS-CoV-2の複製を阻害すること、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防すること、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防することである、請求項1に記載の3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベン
【請求項3】
活性成分としての請求項1又は請求項2に記載の3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンと医薬的に許容される製剤添加剤(excipient)とを含む、又はそれらからなる、医薬製剤。
【請求項4】
前記製剤が、経口、舌下、筋肉内、皮下、経鼻、口腔粘膜、気管支、肺、皮膚、腹膜又は直腸投与用、好ましくは経口、舌下又は経鼻投与用である、請求項3に記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記製剤が、吸入可能組成物及び/又はエアロゾル組成物として、又は経鼻スプレーもしくは経口スプレーとして、及び/又は舌下フィルムもしくは舌下錠剤として、及び/又はロリポップとして、提供される、請求項3又は請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記医薬的に許容される製剤添加剤が、例えば、水、アセトン、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミネラルオイル、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの希釈剤;例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、及び、エリトリトール、例えばデンプン、デキストリン、硫酸カルシウム、ラクトース、マンニトール、スクロース、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、カオリン、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムなどの吸収剤などのキャリア;例えば、水、グリセリン、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、デンプンシロップ、デキストリン、シロップ、ハチミツ、グルコース溶液、アカシアシロップ、ゼラチンシロップ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、パープルガム、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの湿潤剤及び結合剤;例えば、乾燥デンプン、アルギン酸塩(alginate)、寒天粉末、アルギン酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ラウリルスルホン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロースなどの崩壊剤;スクロース、トリステアリン酸グリセリル、カカオバター、水素化油などの崩壊防止剤(disintegration inhibitors);第四級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;タルク、二酸化ケイ素、コーンスターチ、ステアリン酸、ホウ酸、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどの潤滑剤;ポリアクリル樹脂、リポソーム、例えばPEG4000及びPEG6000のような水溶性キャリア、PVP;抗酸化剤;pH緩衝剤及び/又は塩緩衝剤;溶解度調節剤;浸透促進剤;クエン酸及びその塩、酒石酸及びその塩、リン酸及びその塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその塩(EDTAカルシウム二ナトリウム、E385)、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化剤;及びこれらの混合物から選択される、請求項3~請求項5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記製剤が、吸入製剤又はエアロゾル製剤、特に等張吸入溶液若しくは懸濁液又は液体若しくは粉末のエアロゾルである、請求項3~請求項6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記製剤が、約100μg~約10gの量で、好ましくは約1mg~約1gの量で、より好ましくは10mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約20mg~約300mgの量で、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンを含有する、請求項3~請求項7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記製剤が、約10mg~約1000mgの量で、好ましくは約25mg~約750mgの量で、より好ましくは50mg~500mgの量で、さらにより好ましくは約30mg~約100mgの量で、前記化合物を含有する、請求項3~請求項8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記製剤が、定量吸入器、乾燥粉末吸入器、又はネブライザーに含まれている、請求項3~請求項9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記製剤が、前記化合物を0.001%~50%w/v、好ましくは0.01%~20%w/v、より好ましくは0.1%~20%w/v、特に1%~20%w/v含有する、請求項3~請求項9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のため、特にSARS-CoV-2の阻害のための請求項3~請求項11のいずれか一項に記載の医薬製剤の製造のための請求項1又は請求項2に記載の3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベンの使用。
【請求項13】
SARS-CoV-2の複製を阻害するため、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防するため、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防するための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
ヒト対象におけるCOVID-19の治療及び予防のため、特にSARS-CoV-2を阻害するための方法であって、SARS-CoV-2に感染しているか又は感染するリスクがある対象に、有効量の3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベン又は請求項3~請求項11のいずれか一項に記載の医薬製剤が投与される方法。
【請求項15】
ヒト対象において、SARS-CoV-2の複製を阻害するため、及び/又はSARS-CoV-2の活性ウイルス複製の細胞変性効果を予防するため、及び/又は空中伝達経路を介したSARS-CoV-2によるウイルス感染を予防するための方法であって、SARS-CoV-2に感染しているか又は感染するリスクがある対象に、有効量の3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサヒドロキシスチルベン又は請求項3~請求項11のいずれか一項に記載の医薬製剤が投与される方法。
【国際調査報告】