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特表2024-514780有効性の予測および反応者/非反応者情報に基づくスキンケア治療効果の向上
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  • 特表-有効性の予測および反応者/非反応者情報に基づくスキンケア治療効果の向上 図1
  • 特表-有効性の予測および反応者/非反応者情報に基づくスキンケア治療効果の向上 図2
  • 特表-有効性の予測および反応者/非反応者情報に基づくスキンケア治療効果の向上 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】有効性の予測および反応者/非反応者情報に基づくスキンケア治療効果の向上
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20240327BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G16H20/00
A61B5/00 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560141
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 US2022027110
(87)【国際公開番号】W WO2022232628
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/182,664
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2108018
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FIREWIRE
2.BLUETOOTH
3.JAVASCRIPT
4.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】サンドリーヌ・ガドル
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ラトマン-ジョスラン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・アシュケナージ
(72)【発明者】
【氏名】パナギオティス-アレキサンドロス・ボカリス
(72)【発明者】
【氏名】ヌクエ・カヴソグル
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・ヌーボー
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB13
4C117XD05
5L099AA04
5L099AA22
(57)【要約】
いくつかの実施形態において、治療効果を向上させるための技法が提供される。コンピュータシステムが対象者の少なくとも1つの皮膚状態を測定する。該コンピュータシステムは、該対象者に関する複数のタイプのオミクスデータを受信する。各タイプのオミクスデータに関して、コンピュータシステムは、該タイプのオミクスデータに関連する少なくとも1つの分類器を使用して、対象者が少なくとも1つの反応者カテゴリに入るかどうかを判定する。コンピュータシステムは、少なくとも1つの反応者カテゴリに基づく複数の治療に関して、対象者の少なくとも1つの皮膚状態に関して治療効果を予測する。コンピュータシステムは、該予測治療効果に基づいて、スキンケア療法を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療効果を向上させるコンピュータ実施方法であって、
コンピュータシステムによって、対象者の少なくとも1つの皮膚状態を測定するステップと、
前記コンピュータシステムによって、前記対象者に関する複数のタイプのオミクスデータを受信するステップと、
各タイプのオミクスデータに関して、前記コンピュータシステムによって、前記タイプのオミクスデータに関連する少なくとも1つの分類器を使用して、前記対象者が少なくとも1つの反応者カテゴリに入るかどうかを判定するステップと、
前記コンピュータシステムによって、前記少なくとも1つの反応者カテゴリに基づく複数の治療に関して、前記対象者の前記少なくとも1つの皮膚状態に関する前記治療効果を予測するステップと、
前記コンピュータシステムによって、前記予測治療効果に基づいて、スキンケア療法を決定するステップと
を含む、コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記コンピュータシステムによって、前記スキンケア療法の適用後、前記対象者の前記少なくとも1つの皮膚状態を測定するステップと、
前記コンピュータシステムによって、前記スキンケア療法の適用後、前記対象者の前記少なくとも1つの皮膚状態の前記測定における差に基づいて、前記少なくとも1つの分類器を更新するステップと
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記タイプのオミクスデータは、ゲノムデータ、エクソームデータ、トランスクリプトームデータ、エピゲノムデータ、プロテオームデータ、メタボロームデータ、およびマイクロバイオームデータのうちの2つ以上を含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの反応者カテゴリは、
レチノール反応者カテゴリ、
プロキシレン反応者カテゴリ、
ビタミンC反応者カテゴリ、
ヒアルロン酸反応者カテゴリ、
エンドリシン反応者カテゴリ、および
リポヒドロキシ酸(LHA)反応者カテゴリ
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの反応者カテゴリが前記対象者に関して経時的に変化する、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記対象者に関して経時的に変化する前記少なくとも1つの反応者カテゴリは、前記対象者の生理周期内の日付に基づいて変化する、請求項5に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記対象者の前記生理周期は月経周期である、請求項6に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの皮膚状態は、エイジングの臨床兆候、病状、および肌の色合いのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項9】
コンピュータシステムの1つまたは複数のプロセッサによる実行に応答して、前記コンピュータシステムに、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施させる、記憶されているコンピュータ実行可能命令を有する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項10】
コンピュータシステムであって、
対象者の少なくとも1つの皮膚状態を測定し、
前記対象者に関する複数のタイプのオミクスデータを受信し、
各タイプのオミクスデータに関して、前記タイプのオミクスデータに関連する少なくとも1つの分類器を使用し、前記対象者が少なくとも1つの反応者カテゴリに入るかどうかを判定する
ように構成されている計算回路を含む、反応者エンジンと、
前記少なくとも1つの反応者カテゴリに基づく複数の治療に関して、前記対象者の前記少なくとも1つの皮膚状態に関する治療効果を予測し、
前記予測治療効果に基づいて、スキンケア療法を決定する
ように構成されている計算回路を含む、治療推奨エンジンと
を含む、コンピュータシステム。
【請求項11】
前記反応者ユニットは、
前記スキンケア療法の適用後、前記対象者の前記少なくとも1つの皮膚状態を測定し、
前記スキンケア療法の前記適用後、前記対象者の前記少なくとも1つの皮膚状態の前記測定における差に基づいて、前記少なくとも1つの分類器を更新する
ように構成されている計算回路をさらに含む、請求項10に記載のコンピュータシステム。
【請求項12】
前記タイプのオミクスデータは、ゲノムデータ、エクソームデータ、トランスクリプトームデータ、エピゲノムデータ、プロテオームデータ、メタボロームデータ、およびマイクロバイオームデータのうちの2つ以上を含む、請求項10に記載のコンピュータシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの反応者カテゴリは、
レチノール反応者カテゴリ、
プロキシレン反応者カテゴリ、
ビタミンC反応者カテゴリ、
ヒアルロン酸反応者カテゴリ、
エンドリシン反応者カテゴリ、および
リポヒドロキシ酸(LHA)反応者カテゴリ
のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のコンピュータシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの反応者カテゴリは前記対象者に関して経時的に変化する、請求項10に記載のコンピュータシステム。
【請求項15】
前記対象者に関して経時的に変化する前記少なくとも1つの反応者カテゴリは、前記対象者の生理周期内の日付に基づいて変化する、請求項14に記載のコンピュータシステム。
【請求項16】
前記対象者の前記生理周期は月経周期である、請求項15に記載のコンピュータシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの皮膚状態は、エイジングの臨床兆候、病状、および肌の色合いのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のコンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年4月30日に出願された米国仮出願第63/182664号の利益を主張するものである。また、本願は、2021年7月23日に出願された仏国特許出願第2108018号の優先権を主張するものである。これらの出願の両方の開示全体が、参照によりすべての目的で本明細書に組み込まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】Boroni, M., Zonari, A.、Reis de Oliveira, C.ら、「Highly accurate skin-specific methylome analysis algorithm as a platform to screen and validate therapeutics for healthy aging」、Clin Epigenet 12, 105(2020年); https://doi.org/10.1186/s13148-020-00899-1で入手可能
【非特許文献2】Lear JTら、「Detoxifying Enzyme Genotypes and Susceptibility to Cutaneous Malignancy」Br J Dermatol. 2000年1月; 142(1):8-15 doi:、10.1046/j.1365-2133.2000.03339.x. PMID: 10651688; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10651688/で入手可能
【非特許文献3】Jiang Sら、「Biomarkers of An Autoimmune Skin Disease--Psoriasis.」Genomics Proteomics Bioinformatics. 2015年;13(4):224~233頁; doi:10.1016/j.gpb.2015.04.002
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の付随する利点の多くは、添付の図面と併用されると、次の詳細な説明を参照することによってより容易に理解されるようになり、同様によりよく理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の様々な態様による治療改善コンピュータシステムの非制限的例示的実施形態の態様を示すブロック図である。
図2】本開示の様々な態様による、エイジング治療効果を向上させる方法の非制限的例示的実施形態を示すフローチャートである。
図3】本開示の実施形態でコンピュータデバイスとして使用するのに適したコンピュータデバイスの非制限的例示的実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示のいくつかの実施形態では、様々なスキンケア治療の有効性を予測して、オミクスデータから判定された反応者/非反応者情報に基づいて治療効果を向上させる、システム、デバイス、および/または方法が提供される。
【0006】
本明細書において開示されている技法は、様々な技術改善をもたらす。1つの非制限的例として、対象者の反応者カテゴリを自動的に判定するために、複数のタイプのオミクスデータ用の分類器を使用することが、該反応者カテゴリの判定の精度を向上させ、それはそれ自体が技術改善であり、また、治療がより正確な情報に基づいていることが可能であるので、対象者の治療効果をさらに向上させる。別の非制限的例として、経時的に変化する反応者カテゴリを考慮することも、反応者カテゴリの判定の精度を向上させ、それは、同じ理由で技術改善である。さらなる非制限的例として、スキンケア療法の適用後、エイジングの臨床兆候を測定すること、および該測定に基づいて、少なくとも1つの分類器を更新することが、少なくとも1つの分類器の実行を改善するのに役立ち、それにより反応者カテゴリのさらに改善された判定を生成することを可能にし、さらに向上した治療効果をもたらす。
【0007】
図1は、本開示の様々な態様による治療改善コンピュータシステムの非制限的例示的実施形態の態様を示すブロック図である。図示の治療改善コンピュータシステム110は、デスクトップコンピュータデバイス、ラップトップコンピュータデバイス、モバイルコンピュータデバイス、サーバコンピュータデバイス、クラウドコンピュータシステムのコンピュータデバイス、および/またはそれらの組合せを含むがそれらに限定されない、任意のコンピュータデバイスまたはコンピュータデバイスの集まりによって実施され得る。治療改善コンピュータシステム110は、エイジングの臨床兆候に対処するために、にきびもしくは湿疹を含むがそれらに限定されない皮膚状態に対処するために、または任意の他のスキンケア目的で、対象者の理想的なスキンケア療法を決定するために、分類器を使用してオミクスデータを処理するように構成されている。
【0008】
図示のように、治療改善コンピュータシステム110は、1つまたは複数のプロセッサ102と、1つまたは複数の通信インターフェース104と、データストア108と、コンピュータ可読媒体106とを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、プロセッサ102は任意の適切なタイプの汎用コンピュータプロセッサを含み得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ102は、グラフィカル処理ユニット(GPU)、映像処理ユニット(VPT)、およびテンソル処理ユニット(TPU)を含むがそれらに限定されない、特定のコンピューティングタスクに関して最適化された1つまたは複数の専用コンピュータプロセッサまたはAIアクセラレータを含み得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、通信インターフェース104は、構成要素間に通信リンクを設けるのに適した1つまたは複数のハードウェアインターフェースおよびまたはソフトウェアインターフェースを含む。該通信インターフェース104は、(イーサネット、FireWire、およびUSBを含むがそれらに限定されない)1つまたは複数の有線通信技術、(Wi-Fi、WiMAX、Bluetooth、2G、3G、4G、5GおよびLTEを含むがそれらに限定されない)1つまたは複数のワイヤレス通信技術、および/またはそれらの組合せをサポートし得る。
【0011】
図示のように、コンピュータ可読媒体106は、1つまたは複数のプロセッサ102による実行に応答して、治療改善コンピュータシステム110に、反応者エンジン112と治療推奨エンジン114とを設けさせる論理回路を記憶している。
【0012】
本明細書において用いられている「コンピュータ可読媒体」が、ハードドライブ、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、CD-ROM、DVD、または他ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、および磁気ディスク記憶装置を含むがそれらに限定されない、コンピュータデバイスのプロセッサによって読み取られるように、揮発性または非揮発性の方法で情報を記憶することができる任意の技術を実施する、除去可能なまたは除去不可能なデバイスを指す。
【0013】
いくつかの実施形態では、反応者エンジン112は、所定の対象者に関して得られたオミクスデータに基づいて、所定の対象者が様々な成分に関する反応者カテゴリまたは非反応者カテゴリに入るかどうかを判定するように構成されている。いくつかの実施形態では、治療推奨エンジン114は該反応者エンジン112によって判定された反応者カテゴリに基づいて、所定の対象者のためのスキンケア療法を決定するように構成されている。反応者エンジン112は、データストア108内に記憶されたオミクスデータ、および/またはデータストア108内に記憶された分類器を使用し得る。治療推奨エンジン114は、その処理のためにデータストア108内に記憶された情報も使用し得る。
【0014】
これらの構成要素の各々の構造のさらなる説明を以下に与える。
【0015】
本明細書において用いられている「エンジン」が、ハードウェア命令またはソフトウェア命令に具現化されている論理回路を指し、それは、C、C++、C#、COBOL、JAVA(商標)、PHP、Perl、HTML、CSS、JavaScript、VBScript、ASPX、Go、およびPythonを含むがそれらに限定されない1つまたは複数のプログラミング言語で書かれることが可能である。エンジンが、実行可能なプログラムにコンパイルされてもよく、またはインタープリタ型プログラミング言語で書かれてもよい。ソフトウェアエンジンが、他のエンジンから、またはそれら自体から呼び出し可能であり得る。一般に、本明細書において説明するエンジンは、他のエンジンと結合され得るかまたはサブエンジンに分割され得る論理モジュールを指す。エンジンは、任意のタイプのコンピュータ可読媒体またはコンピュータ記憶装置内に記憶され、かつ1つまたは複数の汎用コンピュータ上に記憶されかつそれらによって実行され、したがってエンジンまたはその機能性を提供するように構成されている専用コンピュータを形成する論理回路によって実行され得る。エンジンは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または別のハードウェアデバイス内にプログラムされた論理回路によって実行され得る。
【0016】
本明細書において用いられている「データストア」は、コンピュータデバイスによるアクセスのためのデータを記憶するように構成されている任意の適切なデバイスを指す。データストアの一例が、1つまたは複数のコンピュータデバイス上で実行し、高速ネットワーク上でアクセス可能な、高信頼性の高速リレーショナルデータベース管理システム(DBMS)である。データストアの別の例がキーバリューストアである。しかしながら、クエリに応答して記憶されたデータを速やかにかつ確実に提供することができる任意の他の適切な記憶技法および/またはデバイスが使用されてもよく、コンピュータデバイスは、ネットワーク上の代わりにローカルにアクセス可能であってもよく、またはクラウドベースのサービスとして提供され得る。データストアは、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、RAM、ROM、または任意の他のタイプのコンピュータ可読記憶媒体などのコンピュータ可読記憶媒体上に系統立てて記憶されたデータも含み得る。本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書において説明されている別々のデータストアが単一のデータストアに組み合わされてもよく、かつ/または本明細書において説明されている単一のデータストアが複数のデータストアに分離されてもよいことを、当業者は認識するであろう。
【0017】
図2は、本開示の様々な態様による、エイジング治療効果を向上させる方法の非制限的例示的実施形態を示すフローチャートである。
【0018】
ブロック202において、コンピュータシステムは、対象者のエイジングの少なくとも1つの臨床兆候を測定する。エイジングの臨床兆候は、テカテカの肌、荒れた肌、不均一な肌の色合い、目尻の皺、紫外線による老化、弾力性の低下、および毛穴の拡張を含むがそれらに限定されない、臨床的に観察される皮膚状態における、任意のタイプの加齢に関連した変化であり得る。コンピュータシステムは、画像のコンピュータビジョン解析または対象者の3次元スキャン、対象者による完了のためのアンケート送付、および対象者を観察する臨床医による完了のためのアンケート送付を含むがそれに限定されない任意の適切な技法を使用して、エイジングの少なくとも1つの臨床兆候を測定し得る。
【0019】
ブロック204において、コンピュータシステムは、対象者に関する複数のタイプのオミクスデータを受信する。コンピュータシステムはオミクスデータを自体で収集してもよく、対象者からオミクスデータをサンプリングする別のデバイスからオミクスデータを受信してもよく、または対象者または臨床医からの入力としてオミクスデータを受信してもよい。対象者に関する有用な情報を反映する任意のタイプのオミクスデータが使用されてもよく、その任意のタイプのオミクスデータには、限定はされないが、以下の、:
・ゲノムデータ
○有機体全体としてのゲノム構造の解析
○次世代シーケンシング技術を使用して、集められ得る
・エクソームデータ
○エクソームが遺伝子コードのタンパク質コード内容物であり、ゲノムの一部はエクソンによって形成されている。エクソームはゲノムの1~2%を占める。
○溶液ベース: 溶液ベースでは、全エクソームシーケンシング(WES)、DNAサンプルが砕かれ、ビオチン標識オリゴヌクレオチドプローブ(baits)が、ゲノム内の標的部位に選択的に雑種を作るのに使用される。
○アレイベース: アレイベースの方法が、プローブが高密度マイクロアレイに結合されることを除いて、類似している。
・トランスクリプトームデータ
○転写産物全体の解析が、個体内で任意の1度で生成され、病状または細胞がどの遺伝子がオンまたはオフにされているかを示す。
○cDNAマイクロアレイまたはRNA-seq技術を使用して集められ得る
○様々な転写率で反映される(一時の特定の有機体、組織または細胞タイプにおけるRNA分子の合成)
・エピゲノムデータ
○DNA上の化学マーカ、遺伝子が「活性化される」かまたは「不活性化される」かどうかを調節する
・プロテオームデータ
○特定のゲノムによって作り出されるタンパク質
・メタボロームデータ
○単一の有機体によって作り出される代謝物
○NMR分光法を使用して得られ得る
・マイクロバイオームデータ
○特定の環境(たとえば、消化管、皮膚)内で生息する微生物(およびそれらの遺伝子)
・メタゲノムデータ
○特定の環境内にいる微生物の遺伝子
・ホルモンデータ
○エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、コルチゾール、メラトニン、セロトニン、成長ホルモン、レプチン、グレリン、およびインスリンを含み得る
○血液検査または唾液検査を使用して、測定され得る
○ホルモンレベルが経時的に変化し、月経周期などの生理周期内の時点を示す
が含まれる。
【0020】
ブロック206において、コンピュータシステムは、各タイプのオミクスデータに関して、オミクスデータのタイプに関連する少なくとも1つの分類器を使用して、対象者が少なくとも1つの応答者カテゴリに入るかどうかを判定する。反応者カテゴリが、該反応者カテゴリに関連する特定のスキンケア製品成分に対象者が反応するかどうかを示す。たとえば、反応者カテゴリが、レチノール反応者カテゴリ、プロキシレン反応者カテゴリ、ビタミンC反応者カテゴリ、ヒアルロン酸反応者カテゴリ、エンドリシン反応者カテゴリ、およびリポヒドロキシ酸(LHA)反応者カテゴリを含み得るが、それらに限定されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、別々の分類器が、各タイプのオミクスデータに関してかつ各反応者カテゴリに関して訓練され得る。いくつかの実施形態では、単一の分類器が、複数のタイプのオミクスデータを受信して、単一の反応者カテゴリを判定するように訓練され得る。いくつかの実施形態では、単一の分類器が各タイプのオミクスデータに関して訓練されてもよいが、複数の反応者カテゴリの分類を実現し得る。決定木、naive Bayes分類器、k-近傍分類器、サポートベクタマシン、および人工神経ネットワークを含むがそれらに限定されない、分類器の任意の適切なタイプまたはタイプの組合せが使用され得る。該分類器は、正解反応者カテゴリ情報が既知である対象者を使用する一組のラベル付訓練データを決定すること、および傾斜降下を含むがそれに限定されない技法によって、該ラベル付訓練データを使用して分類器を訓練することを含むがそれらに限定されない、適切な技法を使用して訓練され得る。
【0022】
上記に加えて、他の情報が反応者カテゴリを判定するのに使用され得ると考えられる。たとえば、いくつかの実施形態では、DNAメチル化(DNAm)における時間に依存する修飾の指示が、分子対ヒト細胞の実年齢を推定するのに使用される。(たとえば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Boroni, M., Zonari, A.、Reis de Oliveira, C.ら、「Highly accurate skin-specific methylome analysis algorithm as a platform to screen and validate therapeutics for healthy aging」、Clin Epigenet 12, 105(2020年); https://doi.org/10.1186/s13148-020-00899-1で入手可能、参照) 別の例として、いくつかの実施形態では、紫外線損傷に対する遺伝的感受性の指示が、日焼け防止製品に関する反応者としての個人を分類するのに使用される(たとえば、Lear JTら、「Detoxifying Enzyme Genotypes and Susceptibility to Cutaneous Malignancy」Br J Dermatol. 2000年1月; 142(1):8-15 doi: 10.1046/j.1365-2133.2000.03339.x.PMID: 10651688; https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10651688/で入手可能(解毒酵素遺伝子内の遺伝子多型が皮膚癌感受性の判定においていかに重要であるかについて説明しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)、参照)。さらに別の例として、いくつかの実施形態では、乾癬に関する1つまたは複数のゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、またはメタボロームの生物指標が、個人をあるスキンケア製品の反応者として分類するのに使用される。(たとえば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Jiang Sら、「Biomarkers of An Autoimmune Skin Disease--Psoriasis.」Genomics Proteomics Bioinformatics. 2015年;13(4):224~233頁; doi:10.1016/j.gpb.2015.04.002、参照)
【0023】
ブロック208において、コンピュータシステムは、少なくとも1つの反応者カテゴリに基づく複数の治療に関して、対象者のエイジングの少なくとも1つの臨床兆候に関する治療効果を予測する。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、様々な反応者カテゴリに関する様々なスキンケア治療の効果に関する情報を有するように構成され得る。たとえば、コンピュータシステムは、所定のスキンケア治療が、所定のスキンケア治療の成分に関する反応者カテゴリに入らない対象者と対比し、該所定のスキンケア治療の該成分に関する該反応者カテゴリ内の対象者のエイジングの所定の臨床兆候に、いかに影響を及ぼすかを知るように構成され得る。
【0024】
ブロック210において、コンピュータシステムは、予測治療効果に基づいて、スキンケア療法を決定する。たとえば、コンピュータシステムは、ブロック208において対象者の治療効果を向上させると判定された成分を有する1つまたは複数の製品を決定する。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、対象者または臨床医に、使用のための製品を推奨する、スキンケア療法の指示を供給し得る。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、治療効果を向上させると判定された成分を含む、カスタマイズされたスキンケア製品を作り上げる、スキンケア療法の指示を、デバイスへ供給する。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、対象者が属する反応者グループの判定および/または対象者の他の特性に基づいて、スキンケア療法の効果を示す可視化を実現し得る。
【0025】
任意のブロック212において、コンピュータシステムは、スキンケア療法の適用後、対象者のエイジングの少なくとも1つの臨床兆候を測定する。コンピュータシステムは、ブロック202において使用されているものと類似の技法を使用して、エイジングの少なくとも1つの臨床兆候を測定する。任意のブロック214において、コンピュータシステムは、スキンケア療法の適用後、対象者のエイジングの少なくとも1つの臨床兆候の測定における差に基づいて、少なくとも1つの分類器を更新する。たとえば、エイジングの少なくとも1つの臨床兆候の測定における差は、対象者がスキンケア療法において使用される成分に関する反応者カテゴリまたは非反応者カテゴリに入っていたかどうかの正解を判定するのに使用され得る(たとえば、向上があった場合、正解は対象者が反応者カテゴリ内に入っていたということと考えられ、向上がないかまたは期待した向上に満たなかった場合、正解は、対象者が非反応者カテゴリ内に入っていたということと考えられる)。この正解は、次いで、対象者のオミクスデータとともに使用されて、適切な分類器を再訓練し得る。いくつかの実施形態において、分類器のこの収集および再訓練が実行されない可能性があるので、任意のブロック212および任意のブロック214は任意として示されている。
【0026】
前段の方法200の検討は、エイジングの臨床兆候に影響を及ぼす治療を主に含み、いくつかの実施形態では、他の状態のための治療が考慮され得る。たとえば、反応者カテゴリは、スキンケア療法を決定して、にきびまたは湿疹を含むがそれらに限定されない病状に対処するのに使用され得る。別の例として、反応者カテゴリは、肌の色合い管理に対処するスキンケア療法を決定するのに使用され得る。
【0027】
図3は、本開示のコンピュータデバイスとして使用するのに適した例示的コンピュータデバイス300の態様を示すブロック図である。前段で複数の異なるタイプのコンピュータデバイスを検討したが、例示的コンピュータデバイス300は、多くの異なるタイプのコンピュータデバイスに共通する様々な要素を表す。図3についてネットワーク上のデバイスとして実装されたコンピュータデバイスを参照して説明するが、以下の説明は、サーバ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、埋め込み式コンピュータデバイス、および本開示の実施形態の部分を実施するために使用され得る他のデバイスに適用できる。コンピュータデバイスのいくつかの実施形態が、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他のカスタマイズされたデバイスによって実行され得るか、またはそれらを含み得る。その上、コンピュータデバイス300が任意の数の現在利用可能なデバイスまたはまだ開発されていないデバイスのいずれかであり得ることを、当業者などは認識するであろう。
【0028】
その最も基本的な構成において、コンピュータデバイス300は、通信バス308によって接続されている、少なくとも1つのプロセッサ302とシステムメモリ310とを含む。デバイスの厳密な構成およびタイプに応じて、システムメモリ310は、リードオンリメモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、EEPROM、フラッシュメモリ、または類似のメモリ技術などの、揮発性または非揮発性メモリであり得る。システムメモリ310が、通常、プロセッサ302が直ちにアクセス可能でありかつ/もしくは該プロセッサ302によって現在処理されているデータおよび/またはプログラムモジュールを記憶することを、当業者などは認識するであろう。この関連で、プロセッサ302は、命令の実行をサポートすることによって、コンピュータデバイス300の計算センターとしての機能を果たし得る。
【0029】
図3にさらに示されているように、コンピュータデバイス300は、ネットワークを介して他のデバイスと通信するための1つまたは複数の構成要素を含むネットワークインターフェース306を含み得る。本開示の実施形態が、ネットワークインターフェース306を利用して、共通のネットワークプロトコルを使用して通信を実行する基本サービスにアクセスすることができる。ネットワークインターフェース306は、Wi-Fi、2G、3G、LTE、WiMAX、Bluetooth、Bluetooth low energyなどの1つまたは複数のワイヤレス通信プロトコルを介して通信するように構成されているワイヤレスネットワークインターフェースも含み得る。当業者によって理解されるであろうように、図3に示されているネットワークインターフェース306は、コンピュータデバイス300の特定の構成要素に関して前段で説明され、図示されている1つもしくは複数のワイヤレスインターフェースまたは物理通信インターフェースを表し得る。
【0030】
図3に示されている例示的実施形態では、コンピュータデバイス300は記憶媒体304も含む。しかしながら、ローカル記憶媒体へのデータを持続するための手段を含まないコンピュータデバイスを使用して、サービスがアクセスされ得る。したがって、図3に示されている記憶媒体304は、記憶媒体304が任意であることを示すために破線で表されている。いずれにしても、記憶媒体304は揮発性または不揮発性であってもよく、除去可能または除去不可能であってもよく、限定されないが、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、CD ROM、DVD、または他のディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置等の、情報を記憶することができる任意の技術を使用して実装され得る。
【0031】
プロセッサ302と、システムメモリ310と、通信バス308と、記憶媒体304と、ネットワークインターフェース306とを含むコンピュータデバイスの適切な実装形態が公知であり、市販されている。説明しやすいように、かつ特許請求されている主題を理解する上で重要でないので、図3は、多くのコンピュータデバイスの典型的な構成要素のうちのいくつかを示していない。この関連で、コンピュータデバイス300は、キーボード、キーパッド、マウス、マイクロフォン、タッチ入力デバイス、タッチスクリーン、タブレット等の入力デバイスを含み得る。そのような入力デバイスは、RF、赤外線、直列、並列、Bluetooth、Bluetooth low energy、USB、またはワイヤレスもしくは物理接続を使用する他の適切な接続プロトコルを含む有線接続またはワイヤレス接続によってコンピュータデバイス300に連結され得る。同様に、コンピュータデバイス300は、ディスプレイ、スピーカ、プリンタ等の出力デバイスも含み得る。これらのデバイスは当該技術分野において周知されているので、本明細書ではさらに図示または説明をしない。
【0032】
実例となる実施形態を説明し、記載したが、当然のことながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ得ることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0033】
102、302 プロセッサ
104 通信インターフェース
106 コンピュータ可読媒体
108 データストア
110 治療改善コンピュータシステム
112 反応者エンジン
114 治療推奨エンジン
200 方法
202、204、206、208、210、212、214 ブロック
300 例示的コンピュータデバイス
304 記憶媒体
306 ネットワークインターフェース
308 通信バス
310 システムメモリ
図1
図2
図3
【国際調査報告】