(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】土地内の局所的処理に適した量の製剤を準備する方法
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A01M7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561162
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-23
(86)【国際出願番号】 EP2022060604
(87)【国際公開番号】W WO2022223722
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509003265
【氏名又は名称】エクセル インダストリーズ
【氏名又は名称原語表記】EXEL INDUSTRIES
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】シャバリエ・ コリン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンメル・ マシュー
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121CB03
2B121CB47
2B121CB61
2B121CB70
2B121DA63
2B121EA21
2B121FA04
(57)【要約】
本発明は、農業噴霧領域に関し、局所的噴霧システムにより土地を処理するための量の処理製剤を準備する方法(100)である。この方法は、植生予測マップを生成するステップ(120)であって、植生予測マップは以前の植生マップと、前記土地に栽培されている前記植物の前記成長をモデル化した植物成長モデルとから生成されることと、噴霧予測マップを生成するステップ(130)であって、噴霧予測マップは前記植生予測マップから生成され、噴霧予測マップの各領域用の噴霧すべき処理製剤の量を決定することと、処理製剤の総量を決定するステップ(140)であって、前記処理製剤の総量は、異なる前記噴霧領域の噴霧すべき前記処理製剤の量に応じて算出されることとを含む方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業機械により搬送される局所的噴霧システムにより土地を処理するための処理製剤を準備する方法(100)であって、
植生予測マップを生成するステップ(120)であって、植生予測マップは以前の植生マップと、前記土地に栽培されている前記植物の前記成長をモデル化した植物成長モデルとから生成され、前記植生予測マップ及び前記以前の植生マップは、それぞれ予測処理日及び前記予測処理日の前の日付での前記土地のグラフィック表現であり、各マップは前記土地を植生領域のセットに空間的に分割し、各植生領域は該植生領域に存在する栽培植物の状態を表す植生指標に関連付くことと、
噴霧予測マップを生成するステップ(130)であって、噴霧予測マップは前記植生予測マップから生成され、前記噴霧予測マップは前記土地を噴霧領域のセットに空間的に分割した前記土地のグラフィック表現であり、各噴霧領域は1つの植生領域に空間的に対応し、且つ対応する前記植生領域の前記植生指標に応じて噴霧すべき処理製剤の量に関連付くことと、
前記土地を処理するために要する処理製剤の総量を決定するステップ(140)であって、前記処理製剤の総量は、異なる前記噴霧領域の噴霧すべき前記処理製剤の量の関数として算出されることと
を含む、
方法。
【請求項2】
農業機械により搬送される局所的噴霧システムにより土地を処理するための処理製剤を準備する方法(100)であって、
生物的ストレッサ存在予測マップを生成するステップ(100)であって、生物的ストレッサ存在予測マップは前記生物的ストレッサの前記存在を示す以前のマップと、該生物的ストレッサの前記発達をモデル化した発達生物的ストレッサモデルとから生成され、前記生物的ストレッサ存在予測マップ及び前記生物的ストレッサの前記存在を示す前記以前のマップは、それぞれ予測処理日及び前記予測処理日の前の日付での前記土地のグラフィック表現であり、各マップは前記土地を生物的ストレス領域のセットに空間的に分割し、各生物的ストレス領域は該生物的ストレス領域における前記生物的ストレッサの存在率及び/又は成長率を表す生物的ストレス指標に関連付くことと、
噴霧予測マップを生成するステップ(130)であって、噴霧予測マップは前記生物的ストレッサ存在予測マップから生成され、前記噴霧予測マップは前記土地を噴霧領域のセットに空間的に分割した前記土地のグラフィック表現であり、各噴霧領域は1つの生物的ストレス領域に空間的に対応し、且つ対応する前記生物的ストレス領域の前記生物的ストレッサ指標に応じて噴霧すべき処理製剤の量に関連付くことと、
前記土地を処理するために要する処理製剤の総量を決定するステップ(140)であって、前記処理製剤の総量は、異なる前記噴霧領域の噴霧すべき前記処理製剤の量の関数として算出されることと
を含む、
方法。
【請求項3】
前記生物的ストレッサ存在予測マップを生成するステップ(120)の間、前記生物的ストレッサ存在予測マップは、追加的に、1つ以上の周囲の土地における前記生物的ストレッサの存在率及び/又は成長率に関する情報から生成される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物成長モデルは、第2の日付での各植生領域における植生指標を、前記第2の日付より前の第1の日付での該領域における植生指標、及び該植生領域に関する農学的データから決定するために設けられる、
又は、
前記生物的ストレッサ発達モデルは、第2の日付での各生物的ストレス領域における生物的ストレス指標を、前記第2の日付の前の第1の日付での本領域における生物的ストレス指標、及び該生物ストレス領域に関する農学的データから決定するために設けられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記農学的データは、該以前の日付と該予測処理日との間の期間をカバーする気象データ、以前の耕作の日付、土壌の物理化学的パラメータ、前記栽培植物の播種の日付、以前の処理製剤の適用に関するデータ、及び/又は、前記土地で以前に栽培されていた作物に関するデータを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
植生予測マップを生成するステップ(120)の間、前記植生予測マップは、複数の以前の植生マップと、前記植物成長モデルとから生成され、前記以前の植生マップは、前記予測処理日の前の異なる別個の日付での前記土地のグラフィック表現である、
又は、
前記生物的ストレッサ存在予測マップを生成するステップの間、前記生物的ストレッサ存在予測マップは、前記生物的ストレッサの前記存在を示す複数の以前のマップと、前記生物的ストレッサの前記発達をモデル化した前記発達モデルとから生成され、前記生物的ストレッサの前記存在を示す前記以前のマップは、前記予測処理日の前の異なる別個の日付での前記土地のグラフィック表現である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
各以前の植生マップ又は前記生物的ストレッサの前記存在を示す各以前のマップは、少なくとも1つの衛星画像、及び/又は、対象となる前記以前の日付に撮像システムが前記土地を通過する間に取得された画像から生成される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記処理製剤の総量を決定するステップ(140)は、
推定誤差の幅を決定するサブステップ(143)であって、推定誤差の幅は、前記植物成長モデル又は前記生物的ストレッサ発達モデルに関連付く信頼性指標に応じて決定されることと、
前記処理製剤の総量を算出するサブステップ(144)であって、前記処理製剤の総量は、異なる前記噴霧領域の噴霧すべき処理製剤の量及び前記推定誤差の幅に応じて算出されることと
を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理製剤の総量を決定するステップ(140)は、
機能安全幅を決定するサブステップ(142)であって、機能安全幅は、前記局所的噴霧システムのパラメータ、及び/又は前記予測処理日での気象データに基づき決定されることと、
前記処理製剤の総量を算出するサブステップ(144)であって、前記処理製剤の総量は、異なる前記噴霧領域の噴霧すべき処理製剤の量及び前記機能安全幅に応じて算出されることと
を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記局所的噴霧システムの前記パラメータは、隣接する噴霧ノズル間の距離、各噴霧ノズルによりカバーされる地面幅に対応する噴霧幅、前記農業機械の移動速度、前記移動速度の信頼性指標、及び/又は各噴霧ノズルを通る公称流量を確立するまでの遅延を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記局所的噴霧システムのタンクを前記処理製剤の総量で充填するステップ(150)
を更に含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理製剤は、生物活性化製剤又は生物防除製剤である、
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータにより実行されたとき、コンピュータに請求項1~12のいずれか1項に記載の前記方法を実装させる命令を含む、
コンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータにより実行されたとき、コンピュータに請求項1~12のいずれか1項に記載の前記方法を実装させる命令を含む、
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項15】
処理製剤を収容するリザーバを局所的噴霧システムのタンクに着脱可能に接続するよう設計された液圧回路と、
前記タンクに注入された処理製剤の量を測定するために設けられた測定手段と、
請求項1~12のいずれか1項に記載の前記方法を実装するよう構成されたデータ処理装置と
を含む、
農業機器により搬送される局所的噴霧システムのタンクを充填するための充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業用噴霧の分野であり、具体的には、リアルタイムで取得したデータに基づく局所的噴霧である。農業機械により搬送される局所的噴霧システムを用いて土地を処理するために要する処理製剤の量を準備するための方法に関するものである。本発明は、本方法の実装につながる命令を含むコンピュータプログラム及び記憶媒体にも関係する。最後に、処理製剤を準備するための方法を実装するよう構成されたデータ処理装置を含む、局所的噴霧システムのタンクを充填するためのシステムに関係する。
【背景技術】
【0002】
農業用噴霧の目的は、作物の成長、収穫、及び/又は品質を上げるという一般的な目的で作物に様々な処理製剤を適用することである。具体的には、処理製剤は、除草や、病気、昆虫、又は寄生虫の侵入を制御し、作物の良好な成長に必要な栄養素を提供するために使用することができる。
【0003】
従来の噴霧システムは、おそらく希釈されている処理製剤を収容するよう設けられたタンクと、それぞれ噴霧ノズルを備えた複数の噴霧ストレッチを含む噴霧ブームと、タンクをいくつかの噴霧ストレッチに接続する液圧回路とを含む。噴霧ブームは、一般的に、農業機械が土地を移動する長手方向を横切る軸に沿って延伸する。具体的には、液圧回路は、処理製剤をタンクから吸引して噴霧ブームへと運ぶよう設けられたポンプと、液圧回路における圧力を所定閾値圧力に維持するよう設けられた調圧器とを含んでよい。各噴霧ノズルは、横軸に沿って定義される所定幅の土地に処理製剤を噴霧するよう設けられる。
【0004】
処理製剤の使用を減らす目的で、噴霧システムは土地の局所的処理を可能とするよう適合されている。局所的処理とは、実際に処理を要する土地の領域のみに製剤を噴霧することを意味する。この目的のため、各噴霧ストレッチは、タンクから対応する噴霧ノズルへの製剤の流通が可能な開位置、及び該流通を遮断する閉位置となるよう配置されたディスペンサーも備える。様々なディスペンサーは個別に制御可能である。噴霧システムは、撮像システムと制御ユニットとを更に含む。撮像システムは農業機械に搭載され、噴霧システムが通過する数秒前にその通過する土地の画像を撮像するよう設けられた少なくとも1つのカメラを含む。一般的に、噴霧システムにより処理可能な幅全体をカバーするため、長手方向を横切る第2軸に沿って分配された複数のカメラを含む。制御ユニットは、撮像システムにより取得された画像にリアルタイムで実行される画像処理を用いて処理すべき有効領域を決定し、処理すべき有効領域に応じて各ディスペンサーを個別に制御するよう構成される。
【0005】
処理性剤の必要な注入量を特定するために用いられる画像処理アルゴリズム、及び噴霧システムの精度は向上し続けている。このため、局所的噴霧は、その適用時の実際の必要性に応じた処理製剤の合理的な使用の問題に対する効果的な対処を提供する。ただし、局所的噴霧は処理製剤の管理における新たな問題をもたらす。処理製剤の必要性は適用時又は多くとも数秒前に決定されることから、所与の土地のために要する処理製剤の量を前もって知ることはできない。このため、噴霧システムのタンクを土地を処理するための正しい量で充填することは不可能である。多くの処理製剤は一度噴霧のために準備されると限られた有効期限しか有さないため、この問題はより深刻である。具体的には、処理製剤は濃縮状態で格納され、使用の少し前に希釈される可能性がある。希釈の後、典型的に水である希釈剤の質及び温度によって、処理製剤の使用可能期間は数日又は数時間に限られる。これは、農場経営者が土地の処理のために準備すべき処理製剤の量を知ることができず、処理製剤の過剰使用のリスクが依然として高いことを意味する。
【0006】
土地の局所的処理のために搭載すべき処理製剤の量を正確に決定する1つの解決方法は、先ず撮像システムで土地を走査して処理すべき領域を特定することを含む。その後に必要な処理製剤の量を正確に決定する。ただし、効率及びコスト上の明白な理由から、この解決方法は比較的大きな土地、及び/又は、処理製剤の格納場所から遠い土地に対しては現実的でない。
【0007】
もう1つの解決方法は、予測される土地処理の少し前に取得された衛星画像を用いることである。しかし、この解決方法は、特に雲に覆われた結果として衛星画像の利用可能性が変動することや、特定の処理の種類には解像度が不十分であるため、必ずしも適用できるわけではない。
【0008】
上記を鑑み、本発明の目的は、土地の実際の必要性に合わせた所与の土地のための処理製剤の量を準備するための解決方法を提供することである。本解決方法は、農業機械が土地を通過する前に取得されて比較的容易にアクセスすることのできるデータに基づく。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、領域毎及び処理適用が予測される日付の前の所与の日付の土地の状態を表すマップと、予測処理日での土地の新たな状態を判定可能なモデルの使用とに基づく。予測処理日は、現在の日付又は将来的な日付であってよい。土地内の各領域の状態は、その領域に存在する栽培植物の状態により判定することができる。この場合、土地を表すマップは植生マップであり、後日の土地の新たな状態を推測することのできるモデルは栽培植物の成長のモデルである。土地の異なる領域の状態は、生物的ストレッサの存在を示すこともできる。この場合、土地を表すマップは生物的ストレッサの存在を示すマップであり、後日の土地の新たな状態を推測することのできるモデルは生物的ストレッサの発達をモデル化したモデルである。
【0010】
具体的には、本発明の第1の対象は、農業機械により行われる局所的噴霧システムにより土地を処理するための処理製剤を準備するための方法であり、該方法は下記を含む。
【0011】
植生予測マップを生成するステップであって、植生予測マップは、以前の植生マップと、該土地で栽培されている植物の成長をモデル化した植物成長モデルとから生成され、植生予測マップ及び以前の植生マップは、それぞれ予測処理日及び予測処理日の前の日付での土地のグラフィック表現であり、各マップは土地を植生領域のセットに空間的に分割し、各植生領域は該植生領域に存在する栽培植物の状態を表す植生指標に関連付くこと。
【0012】
噴霧予測マップを生成するステップであって、噴霧予測マップは植生予測マップから生成され、噴霧予測マップは土地を噴霧領域のセットに空間的に分割した該土地のグラフィック表現であり、各噴霧領域は植生領域に空間的に対応し、対応する植生領域の植生指標に応じて噴霧すべき処理製剤の量に関連付くこと。
【0013】
土地を処理するために要する処理製剤の総量を決定するステップであって、処理製剤の総量は、異なる噴霧領域の噴霧すべき処理製剤の量に応じて算出されること。
【0014】
栽培植物の状態は、具体的には、成長段階、植物の高さ、葉面、又は反射された放射線のスペクトル分布により特定される。
【0015】
本発明の第2の対象は、農業機械により行われる局所的噴霧システムにより土地を処理するための処理製剤を準備するための方法であり、該方法は下記を含む。
【0016】
生物的ストレッサの存在を予測する予測マップを生成するステップであって、生物的ストレッサ予測マップは、生物的ストレッサの存在を示す以前のマップと、該生物的ストレッサの成長をモデル化したモデルとから生成され、生物的ストレッサ予測マップ及び生物的ストレッサの存在を示す以前のマップは、それぞれ予測処理日及び予測処理日の前の日付での土地のグラフィック表現であり、各マップは土地を生物的ストレッサ領域のセットに空間的に分割し、各生物的ストレッサ領域は該生物的ストレッサ領域における生物的ストレッサの存在率及び/又は成長率を表す生物的ストレッサ指標に関連付くこと。
【0017】
噴霧予測マップを生成するステップであって、噴霧予測マップは生物的ストレッサ存在予測マップから生成され、噴霧予測マップは土地を噴霧領域のセットに空間的に分割した該土地のグラフィック表現であり、各噴霧領域は生物的ストレッサ領域に空間的に対応し、且つ対応する生物的ストレッサ領域の生物的ストレッサ指標に応じて噴霧すべき処理製剤の量に関連付くこと。
【0018】
土地を処理するために要する処理製剤の総量を決定するステップであって、処理製剤の総量は、異なる噴霧領域の噴霧すべき処理製剤の量に応じて算出されること。
【0019】
生物的ストレッサは、土地に栽培された植物の成長を害する生物と定義される。生物的ストレッサは、植物病原性物質(例えば、菌類、細菌、又はウイルス)、動物の生物的ストレッサ(例えば、捕食者又は寄生虫)、又は栽培していない植物であってよい。
【0020】
一般的方法において、以前の植生マップ及び生物的ストレッサの存在を示す以前のマップは、予測処理日の1日~60日前の日付で作成可能である。この期間は5日~25日の間であることが好ましい。
【0021】
処理製剤の量は、質量又は体積で表されてよい。
【0022】
1つの特定の実施形態によると、生物的ストレッサの存在を予測する予測マップを生成するステップの間、加えて、1つ以上の周囲の土地における生物的ストレッサの存在率及び/又は成長率に関する情報から生物的ストレッサ存在予測マップが生成される。この情報を考慮し、対象となる土地に生物的ストレッサがほぼ存在しない又は存在しない場合に、生物的ストレッサの存在の到来及び成長を予見することが可能となる。
【0023】
植物成長モデル及び生物的ストレッサの成長をモデル化したモデルは、最低でも、以前のマップが作成された以前の日付と予測処理日との間に経過する時間を考慮することができる。
【0024】
1つの特定の実施形態によると、植生マップ又は生物的ストレッサの存在を示すマップを更新するために用いられるモデルは、土地に関する農学的データを考慮する。具体的には、植物成長モデルは、第1の日付での各植生領域における植生指標と該植生領域に関する農学的データとから、第1の日付よりも後の第2の日付での各植生領域における植生指標を判定するために設けられる。植生予測マップを生成するステップの間、植物成長モデルは以前の植生マップに関連付く日付を第1の日付とし、予測処理日を第2の日付とする。同様に、生物的ストレッサの成長をモデル化したモデルは、第1の日付での各生物的ストレッサ領域における生物的ストレッサ指標と該生物的ストレッサ領域に関する農学的データとから、第1の日付よりも後の第2の日付での各生物的ストレッサ領域における生物的ストレッサ指標を判定するために設けられる。生物的ストレッサ存在予測マップを生成するステップの間、生物的ストレッサの成長をモデル化したモデルは、第1の日付は生物的ストレッサの存在を示す以前のマップに関連付いており、第2の日付は予測処理日である、と見なす。
【0025】
農学的データは、例えば、該以前の日付から該予測処理日までの期間をカバーする気象データ、以前の耕作の日付、土壌の物理化学的パラメータ、栽培植物の播種の日付、以前の処理製剤の適用に関するデータ、及び/又は、その土地で以前に栽培されていた作物に関するデータを含む。具体的には、気象データには、降水量、日照時間、平均気温、温度閾値を超えた日数、及び/又は、空気及び/又は土壌の湿度レベルを含んでよい。植物成長モデルと生物的ストレッサの成長をモデル化したモデルは、農学的データの1つ以上の種類を考慮することができる。
【0026】
植生予測マップを生成するステップの間、植生予測マップは、複数の以前の植生マップと植物成長モデルとから生成されてよい。以前の植生マップは、予測処理日の前の異なる別個の日付での土地のグラフィック表現である。同様に、生物的ストレッサの存在を予測する予測マップを生成するステップの間、生物的ストレッサ存在予測マップは、生物的ストレッサの存在を示す複数の以前のマップと生物的ストレッサの成長をモデル化したモデルとから生成することができる。生物的ストレッサの存在を示す以前のマップは、予測処理日前の異なる別個の日付での土地のグラフィック表現である。
【0027】
各以前の植生マップ又は生物的ストレッサの存在を示す各以前のマップは、少なくとも1つの衛星画像、及び/又は、対象となる以前の日付に撮像システムが土地を通過する間に取得された画像から生成されることができる。各画像は、可視スペクトル、紫外スペクトル、及び/又は赤外スペクトルの1 つ以上の波長帯域の放射強度を判定するために生成することができる。
【0028】
例えば、各以前の植生マップ又は生物的ストレッサの存在を示す各以前のマップは、下記を含むシステムにより生成されることができる。
【0029】
カメラと光源とを含む光学ヘッドであって、カメラは所定の取得期間により組に分割された取得時点での土地の一連の画像を取得するために設けられ、光源は様々な光強度で土地の方向に光線を放射するために設けられ、下記であることが好ましい。
【0030】
光源により放射される光線の光度を決定するために設けられた調光ユニット。
【0031】
具体的には、調光ユニットは複数の調光サブユニットを含んでよい。各調光サブユニットは光学ヘッドに統合され、それぞれの光学ヘッドのカメラにより生成される少なくとも1つの画像に応じて、それぞれの光学ヘッドの光源により放射される光線の光度を決定するために設けられる。
【0032】
具体的には、そのようなシステムは、ある領域が処理製剤の適用を要するか判定することを可能とする画像処理アルゴリズムを実装してよい。
【0033】
もう1つの例によると、各以前の植生マップ又は生物的ストレッサの存在を示す各以前のマップは、下記を含む方法により生成されてよい。噴霧システムに結合されていない1つ以上の撮像装置から土地の地理参照画像データを受け取ることであって、地理参照画像データは、複数の画素と、各画素に関連付く測位データとを含むこと。必要な場合に、現地での処理製剤の適用を要する生物的ストレッサに対応する画素を分類するため、画素のスペクトル情報を分析すること。必要な場合に、生物的ストレッサに対応すると分類された画素に関連付く地理参照画像データに基づいて、現地での生物的ストレッサの位置を判定すること。現地での生物的ストレッサの位置を含む地図データを判定することであって、必要な場合に、以前の植生マップ又は生物的ストレッサの存在を示す以前のマップを取得することを可能とすること。具体的には、撮像装置は噴霧システムに結合されておらず、生物的ストレッサを判定するための機構は噴霧システムに物理的に結合されない。この方法は様々な方式で実装することができる。具体的には、撮像装置は、空中ドローン、有人飛行機、又は地球を周回する1つ以上の衛星に搭載することができる。
【0034】
1つの特定の実施形態によると、噴霧予測マップを生成するステップの間、噴霧予測マップは、植生予測マップと1つ以上の所定状態閾値とから生成される。各噴霧領域は、対応する植生領域の植生指標及び所定状態閾値又は複数閾値に応じて噴霧すべき製剤の量と関連付く。具体的には、各噴霧領域は、対応する植生領域の植生指標が所定状態閾値よりも低い場合に噴霧すべき製剤の第1の量に、対応する植生領域の植生指標が所定状態閾値以上である場合に噴霧すべき製剤の第2の量に関連付く。噴霧すべき製剤の第1の量又は噴霧すべき製剤の第2の量はゼロである可能性がある。
【0035】
続いて1つの特定の実施形態によると、噴霧予測マップを生成するステップの間、噴霧予測マップは、生物的ストレッサ存在予測マップと1つ以上の所定存在閾値とから生成される。各噴霧領域は、対応する生物的ストレッサ領域のための生物的ストレッサ指標及び所定存在閾値又は複数閾値に応じて噴霧すべき製剤の量に関連付く。具体的には、各噴霧領域は、対応する生物的ストレッサ領域の生物的ストレッサ指標が所定存在閾値よりも低い場合に噴霧すべき製剤の第1の量に、対応する生物的ストレッサ領域の生物的ストレッサ指標が所定存在閾値以上である場合に噴霧すべき製剤の第2の量に関連付く。噴霧すべき製剤の第1の量又は噴霧すべき製剤の第2の量はゼロである可能性がある。
【0036】
更にもう1つの特定の実施形態によると、処理製剤の総量を決定するステップは下記を含む。
【0037】
推定誤差の幅を決定するサブステップであって、推定誤差の幅は、植物成長モデル又は生物的ストレッサの成長をモデル化したモデルに関連付く信頼性指標に応じて決定されること。
【0038】
処理製剤の総量を算出するサブステップであって、処理製剤の総量は、異なる噴霧領域の幅の噴霧すべき処理製剤の量及び推定誤差に応じて算出されること。
【0039】
植物成長モデル又は生物的ストレッサの成長をモデル化したモデルに関連付く信頼性指標は、具体的には、モデルにより考慮される農学的データ、及び/又は、以前の植生マップ又は生物的ストレッサの存在を示す以前のマップが作成された日付と予測処理日との間の時間に依存する。処理製剤の総量を算出するサブステップの間、予測誤差の幅に対応する処理製剤の量が算出され、異なる噴霧領域の噴霧すべき処理製剤の量に加えられることができる。
【0040】
もう1つの特定の実施形態によると、処理製剤の総量を決定するステップは下記を含む。
【0041】
機能安全幅を決定するサブステップであって、機能安全幅は、局所的噴霧システムのパラメータ、及び/又は、予測処理日の気象データに基づいて決定されること。
【0042】
処理製剤の総量を算出するサブステップであって、処理製剤の総量は、異なる噴霧領域の噴霧すべき処理製剤の量及び機能安全幅に応じて算出されること。
【0043】
気象データは対象となる土地に特定されたものが好ましい。具体的には、機能安全幅は風の条件に依存してよい。処理製剤の総量を算出するサブステップの間、機能安全幅に対応する処理製剤の量が算出されて、異なる噴霧領域の噴霧すべき処理製剤の量に加えられることができる。
【0044】
局所的噴霧システムのパラメータは、例えば、隣接する噴霧領域間の距離、各噴霧ノズルによりカバーされる地面幅に対応する噴霧幅、農業機械の移動速度、移動速度の信頼性指標、及び/又は、各噴霧ノズルを通る公称流量が確立されるまでの遅延を含む。具体的には、これらパラメータは、処理すべき各局所領域に到達する前に適用される噴霧持続時間及び各領域を離れた後に適用される噴霧持続時間を確立するために用いることができる。これら追加的な噴霧時間は、処理製剤の追加的な消費につながり、このため必要な処理製剤の量を決定するときに考慮される。
【0045】
処理製剤を準備するための方法は、局所的噴霧システムのタンクを処理製剤の総量で充填するステップを更に含む。
【0046】
処理製剤は、例えば肥料又は栽培植物の自然防御を促進することを可能とする製剤といった生物活性化製剤、又は、例えば除草剤、殺虫剤、又は殺菌剤といった生物防除製剤であってよい。
【0047】
本発明は、コンピュータにより実行されたとき、コンピュータに上述した方法を実装させる命令を含むコンピュータプログラムにも関する。
【0048】
本発明は、コンピュータにより実行されたとき、コンピュータに上述した方法を実装させる命令を含むコンピュータ読み取り可能な記憶媒体にも関する。
【0049】
本発明のもう1つの対象は、農業機械により搬送される局所的噴霧システムのタンクを充填するための充填システムである。充填システムは下記を含む。
【0050】
処理製剤を収容するリザーバを局所的噴霧システムのタンクに着脱可能に接続するよう設計された液圧回路。
【0051】
タンクに注入された処理製剤の量を測定するために設けられた測定手段。
【0052】
上述した方法を実装するよう構成されたデータ処理装置。
【0053】
充填システムは、異なる土地の間の農場内又は農場外に設置されることができる。
【0054】
1つの特定の実施形態によると、測定手段は、液圧回路に取り付けられた流量計と、流量計から流量情報を受け取って処理製剤の量を時間積分によって算出する計算ユニットとを含む。
【0055】
更に1つの特定の実施形態によると、充填システムは、液圧回路に取り付けられた制御弁と、制御弁を制御するよう構成された制御装置とを含む。制御弁は、制御装置により送達される制御信号に応じて開位置又は閉位置となるよう構成される。一方、制御装置は、土地の処理のため決定された処理製剤の総量に関する情報と、タンクに注入される処理製剤の量に関する情報を受け取るよう構成される。制御装置はまた、タンクに注入される処理製剤の量が処理製剤の総量に達したときに制御弁の遮断を制御する信号を送達するよう構成される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本発明の他の特長、詳細、および利点は、例示のみとして提供されて添付図面を参照する下記説明から明らかになるであろう。
【0057】
【
図1】本発明による処理製剤を準備するための方法の1つの例を表す。
【0058】
【
図2】
図1の方法において実装される処理製剤の総量を決定するステップの例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の目的は、局所的噴霧システムによる土地の処理に要する処理製剤の量を推定することである。処理製剤は、栽培植物に直接利するか、その環境に影響を与える可能性がある。処理製剤は、例えば肥料又は栽培植物の自然防御を促進することを可能とする製剤といった生物活性化製剤、又は、例えば除草剤、殺虫剤、又は殺菌剤といった生物防除製剤であってよい。局所的噴霧システムは、少なくとも1つの処理製剤を収容するよう設けられたタンクと、複数の噴霧ストレッチを含む噴霧ブームと、タンクをいくつかの噴霧ストレッチに接続する液圧回路とを含む。液圧回路は、タンクから処理製剤を吸引して噴霧ブームへと運ぶポンプを含むことができる。液圧回路は、液圧回路における圧力を所定閾値圧力に維持するよう設けられた調圧装置も含んでよい。
【0060】
局所的噴霧は、土地の各基本領域のために処理製剤の適用を要するか否かを判定する事前診断ステップを含む。この判定は少なくとも定性的であり、定量的であってもよい。一般的に、通常は農業機械の前部に搭載される複数のカメラを含む撮像システムにより取得された画像を分析することにより実行される。カメラは、数メートルにわたって延伸する幅をカバーするため、農業機械が土地を移動する長手方向に対して横へ延伸する傾斜部に搭載されることができる。画像の分析は、様々な画像処理アルゴリズムに基づいてよい。具体的には、植物の形状及びそれらの電磁スペクトルを分析することができる。それぞれが噴霧ノズルとディスペンサーとを含む複数の噴霧ストレッチにより、異なる基本領域に対する処理の差別化された適用を確保する。噴霧ブームも農業機械の移動する長手方向に対して横に延伸する。噴霧ブームは、噴霧ブームが通過する前に画像が処理されることを可能とするよう、カメラを搭載する傾斜部の後方に位置している。画像処理はリアルタイム処理を指す。実際には数秒かかる可能性がある。各噴霧ノズルは、横軸に沿って定義された土地の所定幅に処理製剤を噴霧するよう設けられる。各ディスペンサーは、タンクから対応する噴霧ノズルへの製剤の流通が可能な開位置、及び該流通を遮断する閉位置となるよう設けられる。ディスペンサーは、制御ユニットによって個別に制御される。ディスペンサーは、対応する噴霧ノズルが処理すべき基本領域を通過するとき開位置に、そうでないときは閉位置に制御される。
【0061】
図1は、本発明による処理製剤を準備するための方法の1つの例を表す。方法100は、処理すべき土地に関する農学的データを取得するステップ110と、植生予測マップ及び/又は生物的ストレッサの存在を予測する予測マップを生成するステップ120と、噴霧予測マップを生成するステップ130と、処理性剤の総量を決定するステップ140と、タンクを充填するステップ150とを含む。
【0062】
本発明による方法は、植生マップ又は生物的ストレッサの存在を示すマップに基づく。植生マップは、土地を「植生領域」と呼ばれる領域のセットに空間的に分割し、各領域は該植生領域における栽培植物の状態を表す植生指標に関連付く。栽培植物の状態は、具体的には、成長段階、植物の高さ、葉面、又は反射された放射線のスペクトル分布により特定することができる。このため、植生マップは土地上の植物の状態の空間的分布に関係する。データは、典型的に、衛星画像、又は撮像システムにより以前に土地を通過した間に取得された画像から取得される。この通過は、処理日の数日前又は数週間前に実行されてよい。そして、植生マップは「以前の植生マップ」と呼ばれ、画像が取得された日付は「以前の日付」と呼ばれる。
【0063】
同様に、生物的ストレッサの存在を示すマップは、土地を「生物的ストレッサ領域」と呼ばれる領域のセットに空間的に分割し、各領域は該生物的ストレッサ領域における生物的ストレッサの存在率及び/又は成長率を表す生物的ストレッサ指標に関連付く。このデータは、一般的に撮像システムにより以前に土地を通過した間に取得された画像から取得される。この通過は、処理日の数日前又は数週間前に実行されてよい。そして、生物的ストレッサの存在を示すマップは「以前の生物的ストレッサの存在を示すマップ」と呼ばれ、画像が取得された日付は「以前の日付」と呼ばれる。
【0064】
処理すべき土地に関する農学的データを取得するステップ110は、栽培植物の成長、又は生物的ストレッサの成長に影響する可能性の高い1つ以上のパラメータに関する情報を収集することを含む。農学的データは、以前の日付と、「予測処理日」と呼ばれる処理の適用が予測される日付との間の期間に関係することが好都合である。この情報は、土地のセットに対して包括的であるか、局所的、即ち土地内の領域によって変化することができる。包括的農学的データは、以前の土地の耕作の日付、栽培植物の播種日、以前の処理製剤の適用に関するデータ、土地で以前に栽培された作物に関するデータ、及び/又は気象データを含んでよい。気象データは、例えば、降水量、日照時間、平均気温、温度閾値を超えた日数、及び/又は、空気及び/又は土壌の湿度レベルを含む。局所的農学的データは、例えば、土壌の物理化学的パラメータ、即ち土壌の組成に関する。
【0065】
植生予測マップ又は生物的ストレッサの存在を予測する予測マップを生成するステップ120は、以前の植生マップ又は生物的ストレッサの存在を示す以前のマップを、植物成長モデル又は生物的ストレッサの発達をモデル化したモデルと、ステップ110にて取得された農学的データのそれぞれに応じて更新することを含む。マップは、予測処理日での土地の状態を反映するため更新される。これは、「植生予測マップ」又は「生物的ストレッサ存在予測マップ」と呼ばれる。植生予測マップを生成するステップの間、各植生領域について、以前の日付での植生指標と農学的データが植物成長モデルに供給され、これは予測処理日での出力植生指標を生成する。同様に、生物的ストレッサ存在予測マップを生成するステップの間、各生物的ストレッサ領域について、以前の日付での生物的ストレス指標と農学的データとが生物的ストレッサの発達をモデル化した発達モデルに注入され、これは予測処理日での出力生物的ストレッサ指標を生成する。植物成長モデルと生物的ストレッサの発達モデルは、単一種類の農学的データ又はいくつかの種類の農学的データを考慮することができる。
【0066】
噴霧予測マップを生成するステップ130は、植生予測マップから、又は生物的ストレッサ存在予測マップから、噴霧予測マップを生成することを含む。噴霧予測マップは、対象となる土地のグラフィック表現であり、土地を「噴霧領域」と呼ばれる異なる領域に空間的に分割する。各噴霧領域は植生領域又は生物的ストレッサ領域に空間的に対応し、噴霧すべき処理製剤の量に関連付く。該量は、各領域について、対応する植生領域、又は対応する生物的ストレッサ領域の生物的ストレッサ指標に応じて決定される。
【0067】
1つの特定の実施形態によると、噴霧予測マップは、植生予測マップと所定の状態閾値とから生成される。植生領域において、植生指標が所定の状態閾値よりも低い値を有する場合、対応する噴霧領域は噴霧すべき製剤の第1の量に関連付くことができる。一方、植生領域において、植生指標が所定の状態閾値よりも大きい値を有する場合、対応する噴霧領域は噴霧すべき製剤の第2の量に関連付くことができる。例えば、植生指標が成長の比較的早期段階を表す場合、処理製剤の製造元の推奨に基づく製剤の量が対応する噴霧領域に関連付いてよく、植生指標が成長の比較的後期段階を表す場合、製剤の量ゼロが対応する噴霧領域に関連付いてよい。
【0068】
もう1つの特定の実施形態によると、噴霧予測マップは、生物的ストレッサ存在予測マップと所定の存在閾値とから生成される。生物的ストレッサ領域において、生物的ストレッサ指標が所定の存在閾値よりも低い値を有する場合、対応する噴霧領域は噴霧すべき製剤の第1の量に関連付くことができる。一方、生物的ストレッサ領域において、生物的ストレッサ指標が所定の存在閾値よりも大きい値を有する場合、対応する噴霧領域は噴霧すべき製剤の第2の量に関連付くことができる。例えば、生物的ストレッサ指標が昆虫生物的ストレッサの比較的低い存在を表す場合、製剤の量ゼロが対応する噴霧領域に関連付いてよい。生物的ストレッサ指標が昆虫生物的ストレッサの比較的高い存在を表す場合、処理製剤の製造元の推奨に基づく製剤の量が対応する噴霧領域に関連付いてよい。
【0069】
処理製剤の総量を決定するステップ140は、土地の局所的処理に必要な処理製剤の総量を、噴霧予測マップの異なる噴霧領域の処理製剤の量に応じて決定することを含む。1つの特定の実施形態において、処理製剤の総量は、噴霧予測マップ上の噴霧領域のセットのための処理製剤の量の合計として決定される。
【0070】
図2は、処理製剤の総量を決定するステップ140のもう1つの特定の実施形態を表す。ステップ140は、局所的噴霧システムのパラメータを取得するサブステップ141と、機能安全幅を決定するサブステップ142と、推定誤差の幅を決定するサブステップ143と、処理製剤の総量を算出するサブステップ144とを含む。
【0071】
局所的噴霧システムのパラメータを取得するサブステップ141は、噴霧システムの配置及び/又は特性に関するパラメータを取得することを含む。これらパラメータは、例えば、噴霧アームの軸に沿った異なる隣接する噴霧ストレッチの噴霧ノズル間の距離、農業機械、ひいては噴霧システムの移動速度、移動速度の信頼性指標、及び/又は各噴霧ノズルを通る公称流量を確立するまでの遅延を含む。
【0072】
機能安全幅を決定するサブステップ142は、噴霧システムの物理的パラメータに関連付く不確定要素、及び/又は処理製剤の噴霧の間の気象条件のために必要となる処理製剤の追加的な量を推定することを含む。具体的には、風がある場合、処理すべき基本領域の上流と下流でより多くの処理製剤を適用することを決定してよい。処理製剤の追加的な量は「機能安全幅」と呼ばれ、例えば、処理すべき基本領域に到達する前に適用される噴霧時間と、各領域を離れた後に適用される噴霧時間とを算出することにより決定される。処理すべき領域の推定数と、各噴霧ノズルの流量とに基づき、機能安全幅を算出することが可能である。
【0073】
推定誤差の幅を決定するサブステップ143は、該方法により推定される処理製剤の総量と土地を処理するために実際に用いられる処理製剤の量との間で見られる可能性が高い最大差を定量化することを意図している。これには、植物成長モデル又は使用される生物的ストレッサの発達モデルに関連付く信頼性指標に基づいて、「推定誤差の幅」と呼ばれる処理製剤の追加的な量を決定することに関係する。この指標は、モデルにより用いられる農学的データ、及び/又は以前の植生マップが作成された以前の日付と予測処理日との間の時間によって変化する。
【0074】
処理製剤の総量を算出するサブステップ144は、処理製剤の総量を、噴霧予測マップの異なる噴霧領域における処理製剤の量、機能安全幅、及び推定誤差幅に応じて算出することを含む。実用において、処理製剤の総量は、噴霧予測マップ中の噴霧領域のセットのための処理製剤の量と、機能安全幅と、推定誤差幅とを加算することにより算出することができる。
【0075】
計算ステップ140は、局所的噴霧システムのパラメータを取得するサブステップ141と機能安全幅を決定するサブステップ142、又は推定誤差の幅を決定するサブステップ143を含まなくてよい。そうすると、処理製剤の総量を算出するサブステップ144は機能安全幅又は推定誤差幅のみを考慮する。推定誤差の幅を決定するサブステップ143は、パラメータ取得サブステップ141と機能安全幅を決定するサブステップ142の前、間、又は後に実行されることができることにも注意されたい。
【0076】
処理製剤が希釈されて適用される場合、処理製剤の総量を決定するステップ140は、処理製剤の総量と共に用いられる希釈剤の量を決定するサブステップも含んでよい。希釈剤の量は、処理製剤の供給元の推奨に基づき決定されることが好ましい。希釈剤は、例えば水である。
【0077】
図1を再び参照し、タンクを充填するステップ150は、局所的噴霧システムのタンクを、ステップ140において決定された処理製剤の総量と、必要であれば希釈剤の量で充填することを含む。後者の場合、充填ステップ150は、処理製剤を希釈剤と混合するサブステップを含んでよい。このサブステップは、局所的噴霧システムのタンクで直接行うか、上流で行ってよい。
【0078】
充填ステップ150は、農業設備の充填システムを用いて行われてよい。充填システムは、1つ以上の格納リザーバと、液圧回路と、測定手段とを含んでよい。各格納リザーバは処理製剤を収容することができ、液圧回路における処理製剤の流れを制御することを可能とする手動弁又は制御弁に関連付く。液圧回路は、各リザーバを噴霧システムのタンクに着脱可能に接続するよう設けられる。測定手段は、タンクに注入された処理製剤の量を測定するために設けられる。具体的には、測定手段は、液圧回路に取り付けられた流量計と、流量計から流量情報を受け取って、時間積分によって吐出される処理製剤の量を算出する計算ユニットとを含んでよい。
【0079】
充填システムは、測定手段により測定された処理製剤の量に関する情報と、ステップ140にて決定された処理製剤の総量に関する情報に応じて制御弁を制御するよう構成された制御装置も含んでよい。この場合、制御装置は、測定された処理製剤の量が処理製剤の総量に達したときに制御弁を遮断するよう構成されることができる。
【0080】
加えて、充填システムは、本発明による方法100の他のステップ110、120、130、140を実装するよう設けられたデータ処理装置も含んでよい。具体的には、該装置は、ステップ110とステップ141に基づいて農学的データと局所的噴霧システムのパラメータを入力することを可能とするユーザインターフェイスを含んでよい。また、植生予測マップ及び/又は生物的ストレッサの存在を予測する予測マップを生成するステップ120、噴霧予測マップを生成するステップ130、及び処理製剤の総量を決定するステップ140を実装するよう設けられたプロセッサも含んでよい。1つの特定の実施形態において、測定手段の演算ユニット及び/又は制御弁に関連付く制御装置は、データ処理装置に統合される。
【国際調査報告】