(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】分散型音響センシング信号からの電柱表現の対照学習
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G01H9/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561702
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 US2022023733
(87)【国際公開番号】W WO2022216872
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 シャオボ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン、 ユエ
(72)【発明者】
【氏名】オズハハー、 サーパー
(72)【発明者】
【氏名】ディン、 ヤンミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 ティン
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC12
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
(57)【要約】
埋め込み空間で調査された複数の電柱のプロファイルを確立するための、データ収集手順および対照学習ベースのアプローチを含む試験手順。複数の電柱の固有の特性は、低次元の特徴ベクトルで保持される。同じ電柱または別の電柱で収集されたサンプルの対間の類似性は、電柱の埋め込み間のユークリッド距離によって反映される。データ収集中に、励起信号の変動、例えば、DFOS/DAS光センサファイバ/ケーブル上の衝撃強度、衝撃位置、衝撃時間の曖昧さ、データ収集位置の曖昧さなどが手動で取り入れられる。このように収集されたデータは、電柱に関する完全な情報を学習したモデル学習を提供し、動作中の制御不能な要因に関してよりロバストである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電柱によって空中に吊り下げられ、DFOSインタロゲータ/アナライザと光通信する光センシングファイバを含む、分散型光ファイバセンシング(DFOS)/分散型音響センシング(DAS)システムを動作させるための方法であって、前記方法は、
1つ以上の電柱を手動で励起しながら前記DFOS/DASシステムを動作させ、励起された電柱の周波数応答を取得することと、
得られた前記周波数応答を用いて畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を対照的に訓練することと、
前記対照的に訓練されたCNNを用いて前記複数の電柱を分類することと、
前記分類された電柱を示す前記励起された電柱のプロファイルマップを生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の電柱の各々の前記手動の励起は、前記空中に吊り下げられた光センシングファイバが配向される方向に平行かつ垂直な3つの異なる電柱高さでの2つの異なる強度の機械的衝撃を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記励起された電柱の前記周波数応答は、結果として得られるスペクトログラムが500Hzまで切り詰められるように、サイズ2048のハン窓を有する短時間フーリエ変換(STFT)を適用することによって時間周波数領域に変換される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
個々の電柱に対して実行される6つの手動励起のうちの4つが、その後の訓練および/または分類のためにランダムにサンプリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の電柱のうちの少なくとも2つの電柱が、訓練およびその後の分析のために機械的に励起される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記機械的衝撃は、衝撃間の時間隔を変化させて行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の電柱のうちの前記機械的に衝撃を受けた電柱の前記分類は、正常、初期腐食、殻腐敗、修復からなる群から選択される電柱の状態を示す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
K個の機械的衝撃(サンプル)がP本の電柱のそれぞれから実行され、同じ電柱からの2つのサンプルと別の電柱からの1つのサンプルが三重項を形成し、その結果、三重項の総数がPK
∧2(P-1)×(K-1)によって表され、三重項損失が
【数1】
に従って行われる、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、分散型光ファイバセンシング(DFOS)システム、方法および構造に関する。より詳細には、本発明は、DFOS/DASシステムの動作中に生成される分散型音響センシング(DAS)信号から電柱表現の対照学習の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者であれば容易に理解できるように、分散型光ファイバセンシングシステムおよび方法は、温度、振動、歪みなどを含む様々な物理的パラメータをセンシングするなど、様々な有用なサービスを提供し、それによって、インフラストラクチャ監視の新しい時代を可能にする。
【0003】
分散型音響センシング技術は、通常、外側の被覆物/被覆材料で保護され固定具構造によって電柱に取り付けられ/吊り下げられている光ファイバのコアの歪み変化(伸張または圧縮)を測定する。このような電柱の保全評価または構造健全性監視は、電柱の手動励起(ハンマーまたは周波数掃引)の応答信号に基づいて行うことができる。しかしながら、電柱近傍で捕捉されたDAS信号には、光センシングファイバが取り付けられ/吊り下げられた電柱の特性の情報だけでなく、主要な励起信号、(変圧器などの)遠くから光センシングファイバに沿って伝播する振動信号、または(風または交通などの)環境ノイズの情報がすべて混合している可能性がある。
【0004】
DAS技術の有用性を考えると、電柱の内因的情報を抽出し、限られた量のデータから外因的要因の影響を除去することが重要である。しかしながら、データ収集中にこれらの要因のグラウンドトゥルースを確認することは困難であり、起こり得る全ての要因の組み合わせを考慮した実験を行うことは一般に法外である。また、DAS波形データが多く、電柱の変動性が高いため、この目標を達成することができる信号フィルタや既知の前処理手順もない。
【発明の概要】
【0005】
当技術分野の進歩は、埋め込み空間において、調査された各電柱のプロファイルを確立するための、データ収集手順と、対照学習ベースのアプローチとを含む方法を対象とする本開示の態様にしたがってなされる。電柱の固有特性は、低次元の特徴ベクトルに保持される。同じ電柱または別の電柱で収集されたサンプル対間の類似性は、電柱の埋め込み間のユークリッド距離によって反映される。
【0006】
本開示の態様によれば、データ収集中に励起信号の変動、例えば、DFOS光センサファイバ/ケーブル上の衝撃強度、衝撃位置、衝撃時間の曖昧さ、データ収集位置の曖昧さが手動で取り入れられる。このように収集されたデータは、電柱についての完全な情報を学習した学習モデルを提供し、動作中の制御不能な要因に関してよりロバストである。
【0007】
本開示のさらなる態様によれば、本発明者らは、電柱の内因的特性(例えば、構造の保全、寸法、構造の多様性)と遠隔の外因的影響(例えば、励起強度、気象条件、道路交通)を、これらの要因のグラウンドトゥルースを知ることなく、効果的に抽出するモデル訓練手順を開発した。必要な識別ラベルは、試験された電柱のIDのみで、これは容易に入手可能である。モデルは適応的に、エンドツーエンドで訓練され、有利には、PyTorchなどの最新の深層学習フレームワーク上で実施するのが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のより完全な理解は、添付図面を参照することによって実現され得る。
【0009】
【
図1】例示的な従来技術の分散型光ファイバセンシングシステムの概略図である。
【0010】
【
図2】本開示の態様による、いくつかの内因的要因および外因的要因によって影響を受ける収集されたDAS信号を示す概略図である。
【0011】
【
図3】本開示の態様による、深層表現学習アプローチのフローチャートを示す概略図である。
【0012】
【
図4】本開示の態様による、例示的な電柱プロファイルマップを示すプロットである。
【0013】
【
図5】本開示の態様による、学習されたプロファイルマップ上の例示的な選択的分類を示す例示的な電柱プロファイルマップを示すプロットである。
【0014】
【
図6】本開示の態様による、元のKNN分類による混同行列と、規則(10,0)による分類と、規則(2,1)による分類とを含む、学習された埋め込みに基づく選択的分類を示す図である。
【0015】
【
図6】初期腐食の電柱によって最初に囲まれた1つの経路からの7つの「外殻腐敗」電柱の状態の変化を示す例示的な電柱プロファイルマップを示すプロットである。修復後、それらは、本開示の態様に従って、より「正常」であると見なされる。
【0016】
【
図7】本開示の態様による、光ファイバセンサケーブル方向に対して平行および垂直な3つの異なる高さにおける、2つの異なる強度(強いおよび弱い)を有する機械的ノッキングを伴う、例示的な電柱データ収集方式を示すプロットである。
【0017】
【
図8】本開示の態様による、電柱プロファイリングに使用されるニューラルネットワークの例示的なモデルアーキテクチャを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
例示的な実施形態は、図面および詳細な説明によってより完全に説明される。しかしながら、本開示による実施形態は様々な形態で実施することができ、図面および詳細な説明に記載された特定のまたは例示的な実施形態に限定されない。
【0019】
以下は、単に本開示の原理を例示するものである。したがって、当業者は本明細書に明示的に記載または図示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。
【0020】
さらに、本明細書に記載されているすべての実施例および条件付き用語は、本開示の原理および技術を促進するために発明者によって寄与された概念を読者が理解するのを助けるための教育目的のためだけのものであることを意図しており、そのような具体的に列挙された実施例および条件に限定されないと解釈されるべきである。
【0021】
さらに、本開示の原理、態様、および実施形態を記載する本明細書のすべての記述、ならびにその具体例は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物と、将来開発される等価物、すなわち、構造に関係なく同じ機能を実行する開発された要素との両方を含むことが意図されている。
【0022】
したがって、たとえば、本明細書の任意のブロック図が、本開示の原理を実施する例示的な回路の概念図を表すことは、当業者には理解されるであろう。
【0023】
本明細書で特に明記しない限り、図面を構成する図は、縮尺通りに描かれていない。
【0024】
いくつかの追加の背景として、分散型光ファイバセンシングシステムは、光電子インテグレータを光ファイバ(またはケーブル)に相互接続し、ファイバをファイバの長さに沿って分散されたセンサの配列に変換することに留意する。実際には、ファイバはセンサになり、インタロゲータはファイバ内にレーザ光エネルギーを生成/注入し、ファイバ長に沿った事象を感知/検出する。
【0025】
当業者が理解し、認識するように、DFOS技術は、車両の動き、人間の往来、掘削活動、地震活動、温度、構造的保全、液体および気体の漏れ、ならびにその他多くの条件および活動を連続的に監視するために展開することができる。これは、発電所、通信ネットワーク、鉄道、道路、橋、国境、重要なインフラ、地上および海底の電力およびパイプライン、ならびに、石油、ガスおよび強化された地熱発電におけるダウンホール用途を監視するために世界中で使用されている。有利には、分散型光ファイバセンシングは、見通し線(line of sight)または遠隔電力アクセスによって制約されることがなく、システム構成によっては、30マイルを超える連続的な長さで展開することができ、その長さに沿ったすべてのポイントで感知/検出が可能である。したがって、長距離にわたるセンシングポイント当たりのコストは、通常、競合する技術とは比較にならない。
【0026】
光ファイバセンシングは、センシングファイバが振動、歪み、または温度変化の事象に遭遇したときに、光センシングファイバで発生する光の「後方散乱」の変化を測定する。上述のように、センシングファイバは全長にわたってセンサとして機能し、物理的/環境的な周囲の状況、およびファイバの保全/セキュリティに関するリアルタイム情報を提供する。さらに、分散型光ファイバセンシングデータは、センシングファイバまたはその近傍で発生する事象および状態の正確な位置を特定する。
【0027】
従来技術の分散型光ファイバセンシングシステムの一般化された構成および動作を示す概略図を
図1に示す。
図1を参照すると、インタロゲータに接続された光センシングファイバを観察することができる。知られているように、現代のインタロゲータは、ファイバへの入力信号を生成し、反射/散乱された後に受信された信号を検出/分析するシステムである。信号が分析され、ファイバの長さに沿って遭遇する環境条件を示す出力が生成される。このように受信された信号は、ラマン後方散乱、レイリー後方散乱、およびブリリオン後方散乱などのファイバ内の反射から生じ得る。また、複数のモードの速度差を利用した順方向の信号であってもよい。一般性を失うことなく、以下の説明では、反射信号を想定しているが、同じアプローチを転送信号にも適用することができる。
【0028】
理解されるように、現代のDFOSシステムは、周期的に光パルス(または任意の符号化信号)を生成し、それらを光ファイバに注入するインタロゲータを含む。注入された光パルス信号は、光ファイバに沿って伝送される。
【0029】
ファイバの長さに沿った位置では、信号のごく一部が散乱/反射され、インタロゲータに戻される。散乱/反射信号は、インタロゲータが検出するために使用する情報、例えば、機械的振動を示す電力レベルの変化を伝送する。
【0030】
反射信号は、電気領域に変換され、インタロゲータの内部で処理される。パルス注入時間と信号が検出された時間とに基づいて、インタロゲータは信号がファイバに沿ったどの位置から来ているかを決定し、したがって、ファイバに沿った各位置の活動を感知することができる。
【0031】
分散型音響センシング(DAS)/分散型振動センシング(DVS)システムは、振動を検出し、光センシングファイバの長さに沿って音響エネルギーを捕捉する。有利には、既存の、トラフィックを運ぶ光ファイバネットワークを利用して、分散型音響センサに変換し、実時間データを捕捉することができる。さらに、分類アルゴリズムを使用して、漏洩、ケーブル障害、侵入活動、または音響および/または振動の両方を含む他の異常な事象などの事象を検出および位置特定することができる。
【0032】
現在、様々なDAS/DVS技術が使用されており、最も一般的なものはコヒーレント光時間領域反射率測定(C-OTDR)に基づくものである。C-OTDRは、レイリー後方散乱を利用し、音響周波数信号を長距離にわたって検出することができる。インタロゲータは、光センサファイバ(ケーブル)の長さに沿ってコヒーレントレーザパルスを送信する。ファイバ内の散乱サイトにより、ファイバはパルス長と同じゲージ長(例えば、10メートル)を有する分散型干渉計として機能する。センサファイバに作用する音響擾乱(Acoustic Disturbance)は、ファイバの微視的な伸び又は圧縮(微小歪み)を発生させ、その結果、ファイバ内を通る光パルスの位相関係及び/又は振幅の変化を引き起こす。
【0033】
次のレーザパルスが送信される前に、前のパルスがセンシングファイバの全長を移動し、その散乱/反射が戻る時間がなければならない。よって、最大パルスレートはファイバの長さによって決定される。したがって、通常はパルスレートの半分であるナイキスト周波数までの周波数で変化する音響信号を測定することができる。より高い周波数は非常に速く減衰するため、事象の検出と分類に関連する周波数のほとんどは、2kHzの範囲の低い範囲にある。
【0034】
前述のように、分散型音響センシング(DAS)技術は、光センサファイバコアの歪み変化(伸張または圧縮)を測定するもので、光センサファイバコアは、通常、外部ジャケットによって保護され、固定具構造によって電柱に取り付けられ/吊り下げられた、より大きなケーブルアセンブリの一部として含まれている。電柱の保全評価または構造健全性監視は、電柱で実行される手動励起(ハンマーまたは周波数掃引)の応答信号に基づいて行うことができる。
【0035】
しかしながら、電柱に近接する場所で捕捉されたDAS信号は、電柱の特性だけでなく、主要な励起信号、比較的遠く離れた地点(変圧器など)からセンサファイバケーブルに沿って伝播する振動信号、または環境ノイズ(風または交通など)からの情報が全て混在している可能性があることに留意されたい。
【0036】
限られた量のデータから、電柱の内因的情報を抽出し、外因的要因の影響を取り除くことは興味深い。しかしながら、データ収集中にこれらの要因のグラウンドトゥルースを知ることは困難であり、考えられる要因の全ての組み合わせをカバーする実験を行うことは一般に法外なことである。さらに、DASの波形データは大量で、配備された電柱で発生する変動性が高いため、この目標を達成することができる手作りの信号フィルタまたは既知の前処理手順は存在しない。ダウンストリームアルゴリズムの性能は、表現の選択に大きく依存する。
【0037】
このような背景を踏まえて、本発明の方法は、埋め込み空間で調査された各電柱のプロファイルを確立するために、データ収集手順と、対照学習ベースのアプローチとの両方を含むことに留意されたい。個々の電柱の固有の特性は、低次元の特徴ベクトルに保持される。同じ電柱または別の電柱で収集されたサンプルの対間の類似性は、電柱の埋め込み間のユークリッド距離によって反映される。
【0038】
本発明者らのデータ収集手順では、例えば、光センサケーブル上の衝撃強度、衝撃位置、衝撃時間の曖昧さ、データ収集位置の曖昧さなど、励起信号の変動を手動で取り入れる。このデータ設計により、学習したモデルには電柱に関するより完全な情報が含まれるようになり、制御不能な要因に対してよりロバストなデータが得られる。
【0039】
本発明のモデル訓練手順は、これらの要因のグラウンドトゥルースを知ることなく、電柱の内因的特性(例えば、構造の保全、寸法、構造の多様性)と遠隔の外因的影響(例えば、励起強度、気象条件、道路交通)を効果的に抽出する。必要な唯一の識別ラベルは、任意の検査済の電柱のIDであり、IDは容易に入手可能である。次いで、モデルは、適応的かつエンドツーエンドで訓練される。有利なことに、本発明のアプローチは、PyTorchなどの最新の深層学習フレームワークに簡単に実装できる。
【0040】
これから図示して説明するように、本発明のアプローチは、DAS信号から電柱の特性に関する固有の特徴を学習する。これにより、人間の契約者ラベルに基づく電柱の保全の分類、腐食した電柱が修理/交換された後の修復品質評価、および異常気象、地震、または他の事象後の状態の変化の検出を含む下流タスクが容易になる。
【0041】
本発明のアプローチは、DASによって記録され、機械学習によって得られる衝撃力に対する周波数応答に基づいて、デジタル電柱プロファイルを確立する。本発明のアプローチは、複数の手動励起が電柱上の異なる位置に課され、複数回繰り返されるとき、各電柱の完全な情報プロファイルを有利に取得する。
【0042】
さらに説明するように、本発明のアプローチは、深層距離学習アプローチを使用しており、これは、同じ電柱から収集されたサンプル対の埋め込みが、別の電柱から収集されたサンプル対よりも近いものとする教師あり学習信号を用いて訓練される。この選択により、訓練データのサイズがO(NK)からO(N∧2K∧3)に増加する。ここで、Kは電柱ごとのサンプル数、Nは電柱の数である。三重項損失の変形は、学習段階でハードペアを自動的にマイニングし、学習プラトーを回避するために使用される。有利なことに、本発明のアプローチは、元の高次元データ空間から低次元の埋め込み空間にマッピングしながら、近傍構造を保持する。
【0043】
動作上、学習された電柱の埋め込みは、下流の保全分類タスクのために使用される。特に、学習された近傍構造を使用して選択的分類を実行する。つまり、モデルは、十分に高い信頼度が存在するサンプルに対してのみ分類を実行し、一方、信頼度の低いサンプルは受け付けない。これは、高い安全性と信頼性の基準を満たす必要がある用途において、極めて重要である。
【0044】
重大な事象(異常気象、地震、または修復など)の前後で、同じ電柱の埋め込み間で位置がずれた場合、電柱の状態またはそのケーブルとの結合の状態が変化する可能性があることを示唆する。変化の方向(悪化または改善)は、最近傍を調べることで解釈することができる。この機能は、予防メンテナンスのスクリーニング(例えば、より包括的な検査のためにどの経路を優先するかを示唆する)および修復品質の客観的な評価に有用な情報を提供する。
【0045】
図2は、本開示の態様による、いくつかの内因的要因および外因的要因によって影響を受ける収集されたDAS信号を示す概略図である。
【0046】
この図を参照すると、本発明の目的では、個々の電柱は、電柱のシステムと見なされ、このシステムでは、音響事象または直接的な機械的衝撃などの衝撃によって、影響を受けた電柱に振動が生じることに留意されたい。このような振動衝撃は、DASシステムによって検出される可能性のある周波数応答をもたらす。
【0047】
収集されたDAS信号は、いくつかの内因的要因および外因的要因の影響を受ける。内因的要因は電柱の保全、電柱の寸法、電柱の材料などの項目を含むことができ、一方、外因的要因は、電柱の位置、励起位置、風、天候などの環境要因、または変圧器または他の機器(そこから吊り下げられた電気および/または他のケーブル/ワイヤを含む)の有無、ならびに交通または他の振動発生活動への近接度、ならびに土壌組成などの地質学的要因などの項目を含むことができる。これらの周波数応答から、各電柱に固有の内因的特性を抽出するための表現が必要である。
【0048】
図3は、本開示の態様による、本発明の深層表現学習アプローチのフローチャートを示す概略図である。この図を参照すると、本開示の態様による本発明の方法の全体的な動作フローを観察することができる。
【0049】
動作上、フローチャートに示される本発明の手順は、少なくとも3つのDAS信号を受信することから始まり、3つのうちの2つは、複数の電柱のうちの同じ電柱から生じる。DAS信号は前処理され、時間領域から周波数領域への変換が行われる。この変換(converted)/変形(transformed)されたDASデータを用いて、深層表現学習プロセスが進められ、埋め込みを決定/計算する順方向パスが実行され、次いで、距離損失が決定され、その後、ニューラルネットワークが更新されるバックプロパゲーションが続く。この深層表現学習は、十分な収束が実現されるまで進行し、その結果、下流のタスクのための低次元の埋め込みベクトルの集合が得られる。
【0050】
図4は、本開示の態様による、例示的な電柱プロファイルマップを示すプロットである。この例示的な電柱プロファイルマップは70本の電柱のものであり、本発明者らの電柱プロファイルによってマップ上にプロットされている。このマップでは、44本の電柱の訓練セットと26本の電柱の試験セットを使用した。ランダムなデータ点が与えられると、本発明のAIモデルは、93%の精度でデータ点がどの電柱のものかを判断することができる。
【0051】
信頼性に基づく電柱の保全の選択的評価の適用例。電柱の保全ラベルは、学習された電柱の埋め込みに基づいて予測することができる。本発明のシステムは、電柱の保全のための事前スクリーニングツールとして使用することができる。訓練サイズが限られているため、訓練分類器は完全ではないが、誤差コストおよび精度の利点は異なる。
【0052】
「良好」と認識された良好な電柱は、手動検査を必要とせず/受けず、高い信頼性を必要とし、最終的には、本発明のモデルによって節約されるコストに大きく貢献する電柱である。「不良」と認識された不良電柱は、手動検査によって確認される電柱である。「良好」と認識された不良電柱は、警報を見逃しており、潜在的な危険性がある可能性があり、最小限に抑える必要がある。「不良」と認識された良好な電柱は、誤警報であり、これは、手動検査を受けることとなり、節約されないコストの原因となる。この用途では、誤警報は見逃した警報ほど重大ではない。
【0053】
プロファイルマップで学習された近傍構造に基づいて、(k,k’)最近傍分類規則と除去オプションを使用して不確定なサンプルをフィルタで排除する。このモデルは、k個の最近傍を考慮し、これらのうちk’個未満が同じクラスからのものである場合は、近傍を除去する。
【0054】
図5は、電柱の同一性の例を示す、本開示の態様による学習されたプロファイルマップ上の例示的な選択的分類を示すプロットである。プロットで描かれているように、黒丸は不良電柱として分類され、黒四角は良好な電柱として分類される。反対に、プロットで描かれた十字は、モデルによって除去される。
【0055】
図6は、本開示の態様による、学習された埋め込みに基づく選択的分類を示す概略図である。図に示されるように、学習された埋め込みに基づく選択的分類である。元のKNN分類による混同行列が上部に示され、一方、規則(10,9)による分類が左側に示され、規則(2,1)による分類が右に示されている。
【0056】
適用例(修復後の電柱の状態の変化)
【0057】
本発明の方法を評価するために、修復前後の7つの「不良」の電柱(外殻腐敗)からハンマーノックデータを収集し、他の電柱(正常、初期腐食)から収集したデータと共にデータを可視化した。学習された潜在空間では、元の位置から「シフト」する新しいサンプルが発見される。より具体的には、そのようなサンプルは「正常」の電柱によりよく似ている。有利には、本開示の態様によるプロファイルマップを使用して電柱の修復が有効であるかどうかを評価することができる。
【0058】
図7は、本開示の態様による、修復後の7つの「外殻腐敗(shell rot external)」の電柱の状態の変化を示すプロットである。7つの電柱は、最初は「初期腐食」の電柱に囲まれている。修復後、それらは「決定境界を越えて移動し」、「正常」の電柱により厳密に似たものになる。「正常」の電柱と「初期腐食、外殻腐敗」の電柱との間の決定境界は、典型的なプロットでは、異なる円の濃淡で示される。
【0059】
図8は、ケーブル方向に対して平行および垂直な3つの異なる高さで、2つの異なる強度(強いおよび弱い)を有するノッキングを含む典型的な電柱の集合で実行される例示的なデータ収集方式を示す概略図である。
【0060】
ここで、
図3のフロー図で概説された本開示の態様による本発明の方法に関連する工程を説明する。
【0061】
本方法のステップ1は、ハンマーノックオン(正常、初期腐食、外殻腐敗)の電柱と各電柱の周りの5~11個のケーブル点から得られるDASデータのデータ収集を含む。例示的なノッキング位置を
図7に示す。メトロノームタイマーを使用して、隣接するノックが重ならないように各ノックのタイミングを較正する。ピーク検出アルゴリズムでは、各サンプルが8kHzで約6.9秒のDASデータを含む生の波形から抽出される(ノックの約0.4秒前およびノックの約6.5秒後)。フロー図に示されるように、本発明の深層表現方法論では、3つの別個のDAS信号が含まれており、そのうちの2つは、励起された共通の電柱から発信される必要がある。
【0062】
本方法のステップ2は、サイズ2048のハン窓を用いた短時間フーリエ変換(STFT)を適用することにより、波形データを時間周波数領域表現に変換する前処理ステップである。結果として得られるスペクトログラムは、最大500Hzまで切り詰められる。
【0063】
本方法のステップ3は、データ増強ステップであり、過剰適合や局所最適に陥ることを防ぐために、訓練の各エポック中に、5つのケーブル位置のうちの3つ、同じ位置での4つのノックの2つの複製、および電柱上の6つのノック位置のうちの4つがランダムにサンプリングされる。
【0064】
本方法のステップ4は、対照訓練ステップである。P本の電柱のそれぞれからK個のサンプルが収集されると仮定する。同じ電柱からの2つのサンプルと別の電柱からの1つのサンプルは、三重項(アンカー、ポジティブ、およびネガティブを有する)を形成する。三重項の総数は、PK
∧2(P-1)×(K-1)であり、それらの大部分は冗長であり、最初の数エポック後にはほとんど使用されない。以下の「バッチハード」三重項損失を適用して、次式で表される学習を容易にする。
【数1】
【0065】
深層距離学習の後、時間周波数スペクトルデータは低次元の埋め込み空間に投影され、各電柱の固有の特性、すなわち、同じ電柱から収集されたサンプルが互いに近くなるという特性を保持することができる。
【0066】
本発明の方法のステップ5は、二次的なタスクを含むことができる。このような二次的な機械学習タスクは、ニーズに基づいて実行することができ、学習された埋め込みに基づいてKNN分類器を訓練して電柱の保全を評価することと、埋め込みを低次元の特徴として記憶し、その後、プロファイルマップ上で可視化することと、埋め込み空間の近傍構造に基づいて不確定なサンプルを除去することと、および同じ電柱から収集された履歴データに対するクエリ電柱の類似性に基づいて状態の変化を示す電柱を識別または追跡することとを含む。
【0067】
図9は、本開示の態様に従って使用されるニューラルネットワークの例示的なモデルアーキテクチャを示す概略図である。
【0068】
この時点で、いくつかの具体例を使用して本開示を提示したが、当業者は本教示がそのように限定されないことを認識するのであろう。したがって、本開示は、本明細書に添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
【
図7】初期腐食の電柱によって最初に囲まれた1つの経路からの7つの「外殻腐敗」電柱の状態の変化を示す例示的な電柱プロファイルマップを示すプロットである。修復後、それらは、本開示の態様に従って、より「正常」であると見なされる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
【
図8】本開示の態様による、光ファイバセンサケーブル方向に対して平行および垂直な3つの異なる高さにおける、2つの異なる強度(強いおよび弱い)を有する機械的ノッキングを伴う、例示的な電柱データ収集方式を示すプロットである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
【
図9】本開示の態様による、電柱プロファイリングに使用されるニューラルネットワークの例示的なモデルアーキテクチャを示す図である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】