(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞の活性化および増殖のための方法ならびに二重特異性抗体との組合せ
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240327BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240327BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240327BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240327BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240327BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240327BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240327BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240327BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240327BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240327BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240327BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240327BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240327BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240327BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240327BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240327BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240327BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240327BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240327BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240327BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240327BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20240327BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240327BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240327BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240327BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240327BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240327BHJP
C12N 15/26 20060101ALN20240327BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20240327BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10
C07K16/30
C07K16/28
A61K35/17
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K47/20
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/42
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P25/00
A61P1/04
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P37/02
A61P3/10
A61P11/08
A61P29/00
A61P31/00
A61K45/00
A61K45/00 101
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/26
C12N15/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561713
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 US2022023920
(87)【国際公開番号】W WO2022216992
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レズヴァニ、ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】シュポール、エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】マリン コスタ、ダビド
(72)【発明者】
【氏名】バサール、ラフェット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065BB19
4B065BC50
4B065CA24
4B065CA44
4C076BB11
4C076DD38
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4C087AA01
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4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
【課題】本発明の実施形態は、病状に対する免疫療法に関連する方法及び組成物を提供する。
【解決手段】本開示の実施形態は、コンビナトリアル免疫療法の調製および使用に関連する方法および組成物に関する。特定の実施形態において、特定の方法で調製されたNK細胞を含む組成物は、特定の抗体も含む。これらの組成物は、癌治療などの治療に利用される。特定の実施形態において、組成物はNK細胞と抗体の複合体を含み、この複合体において抗体はNK細胞に結合し、癌細胞上などの別の抗原にも結合し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)1つ以上の臍帯血由来ナチュラルキラー(NK)細胞、ならびに
(2)1つ以上の抗体分子であって、
(a)前記抗体は単一特異性であり、前記単一特異性抗体のFc領域が前記NK細胞に結合し、前記単一特異性抗体の抗原結合ドメインが標的抗原に結合することができる、または
(b)前記抗体は多重特異性であり、前記抗体の1つ以上の抗原結合ドメインが標的抗原に結合し、前記抗体の別の1つまたは複数の抗原結合ドメインがNK細胞表面抗原に結合することができる、抗体分子
を含む組成物。
【請求項2】
前記NK細胞が増殖されている、または増殖されていない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記NK細胞が予備活性化されている、または予備活性化されていない、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多重特異性抗体が二重特異性、三重特異性または多重特異性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)において、前記単一特異性抗体のFc領域の前記NK細胞との結合を介した、前記NK細胞と前記単一特異性抗体との複合体としてさらに定義される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記複合体が、その標的抗原に結合した前記単一特異性抗体の前記抗原結合ドメインをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
(b)において、前記NK細胞表面の1または複数の抗原に結合する前記多重特異性抗体の1または複数の前記抗原結合ドメインの結合を介して、前記NK細胞と前記多重特異性抗体との複合体としてさらに定義される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗体の前記1つまたは複数の抗原結合ドメインがその標的抗原に結合される、請求項1~4および7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
前記標的抗原が、幹細胞抗原、自己抗原、またはCD19、CD319(CS1)、ROR1、CD20、CD22、CD70、がん胎児性抗原、アルファフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、上皮増殖因子受容体(EGFR)、上皮腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、変異型p53、変異型ras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD5、CD123、CD23、CD30、CD38、CD56、CD70、CD38、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、κ鎖、λ鎖、CSPG4、ERBB2、WT-1、TRAIL/DR4、VEGFR2、CD33、CD47、CLL-1、U5snRNP200、CD200、BAFF-R、BCMA、CD99、HLA-G、Trop2、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるがん抗原である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記NK細胞表面抗原が、CD16、CS1、CD56、NKG2D、NKG2C、DNAM、2B4、CD2、NCR、またはKIRである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記臍帯血の供給源が、1人のドナーからの臍帯血であるか、または2人またはそれ以上の個体の臍帯血ユニットからプールされる、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記CBが、3、4、5、6、7、または8人の個体の臍帯血ユニットからプールされる、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記NK細胞が、臍帯血単核細胞または臍帯血造血幹細胞に由来する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記NK細胞がCD56+、CD3-、またはその両方である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
新鮮状態で使用されるか、または凍結保存された、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記NK細胞の供給源が新鮮な供給源または凍結保存貯蔵所である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記NK細胞が凍結保存から供給される場合、前記NK細胞が、少なくとも1つの凍結保護剤、少なくとも1つの血清または非血清の血清代替物、ならびに任意選択的に少なくとも1つのサイトカインおよび/または少なくとも1つの成長因子を含む培地中で凍結保存された、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記凍結保護剤が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、グリセロール、ヒドロキシエトールデンプン(hydroxyethol starch)、デキストラントレハロース、またはそれらの組み合わせである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記非血清の代替物が、血小板溶解物および/または血液製剤溶解物またはヒトもしくは動物の血清アルブミンを含む、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1つのサイトカインが、天然タンパク質、組換えタンパク質、合成タンパク質、またはそれらの混合物である、請求項17~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1つのサイトカインが、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、インターフェロン、腫瘍壊死因子、幹細胞因子、FLT3-リガンド、APRIL、トロンボポエチン、エリスロポエチン、またはそれらの組み合わせである、請求項17~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記NK細胞が1つ以上の操作された抗原受容体を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記操作された抗原受容体がキメラ抗原受容体、T細胞受容体、またはその両方である、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
前記NK細胞が異種サイトカインを発現する、請求項1~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記異種サイトカインが、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21またはIL-23である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記NK細胞が、抗体へのそれらの結合を増強するために1つ以上の受容体を発現する、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記受容体がFc受容体である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記受容体がCD16、CD32、CD64、またはそれらの組み合わせである、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記NK細胞が自殺遺伝子を発現する、請求項1~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
1つ以上の凍結保護剤を含む溶液または固体中に含まれる、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
薬学的に許容される担体中に含まれる、請求項1~30のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物を生成する方法であって、
(a)任意選択的に、下記を有効量で含む培養物中でNK細胞を増殖させる工程、
(1)IL-2、IL-15、IL-18、IL-21およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるサイトカイン、および
(2)抗原提示細胞/フィーダーまたはNK活性化ビーズ、ならびに
(b)前記抗体分子を前記NK細胞に提供する工程であって、増殖させる場合は、増殖前および/または増殖後に前記抗体分子を前記NK細胞に提供する工程、
を含む方法。
【請求項33】
前記増殖工程の前および/または後に予備活性化工程を含み、前記NK細胞が、有効濃度のIL-2、IL-12、IL-15およびIL-18のうちの1つ以上を含む培養物中で予備活性化される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記培養物が、有効濃度のIL-2、IL-12、IL-15およびIL-18のうちの2つ以上を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記培養物が、有効濃度のIL-2、IL-12、IL-15およびIL-18のうちの3つ以上を含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記培養物が、有効濃度のIL-12、IL-15およびIL-18を含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記培養物においてIL-15の代わりにIL-12を利用する、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記提供する工程が、前記NK細胞を前記抗体分子と共に特定の期間培養する工程、または注入直前に前記NK細胞と前記抗体分子を組み合わせる工程としてさらに定義される、請求項32~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記期間が約5分~約24時間またはそれ以上である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記培養物が、血漿-Lyte Aおよび/またはヒト血清アルブミンを含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
培養後、前記組成物を最初に洗浄することなくレシピエント対象に注入する、請求項32~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
培養後、前記組成物を1回以上洗浄後にレシピエント対象に注入する、請求項32~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記NK細胞が、CD3+、CD14+および/またはCD19+細胞を枯渇されている、請求項32~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記枯渇工程が、前記予備活性化工程の前に、および/またはフィーダー細胞および/またはNK細胞活性化ビーズと共に増殖させる前に、および/または1つ以上のサイトカインと共に培養する前に、および/または注入の前に行われる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記NK細胞を、臍帯組織を含まない臍帯血から得る工程をさらに含む、請求項32~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記抗原提示細胞が人工(aAPC)である、請求項32~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記aAPCがCD137リガンドを発現する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記aAPCが膜結合サイトカインをさらに発現する、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記膜結合サイトカインが、膜結合IL-21(mIL-21)または膜結合IL-15(mIL-15)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記aAPCが内因性HLAクラスI、IIまたはCD1d分子の発現を本質的に有さない、請求項46~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記aAPCがICAM-1(CD54)および/またはLFA-3(CD58)またはCD48を発現する、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記aAPCが白血病細胞由来aAPCとしてさらに定義される、請求項46~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記白血病細胞由来aAPCが、CD137リガンドおよび/またはmIL-21を発現するように操作されたK562細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記K562細胞が、CD137リガンドおよびmIL-21を発現するように操作されている、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記aAPCがレトロウイルス形質導入によって操作されている、請求項46~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記aAPCが照射される、請求項46~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記予備活性化工程が10~20時間である、請求項32~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記予備活性化工程が14~18時間である、請求項32~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記予備活性化工程が16時間である、請求項32~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記予備活性化工程のための培養物が、IL-18および/またはIL-15を1~1000ng/mLの濃度で含む、請求項32~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記予備活性化工程のための培養物が、IL-18および/またはIL-15を1~1000ng/mLの濃度で含む、請求項32~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記予備活性化工程のための培養物が、IL-18および/またはII-15を1~1000ng/mLの濃度で含む、請求項32~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記予備活性化工程のための培養物が、IL-12を0.1~1000ng/mLの濃度で含む、請求項32~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記予備活性化工程のための培養物が、IL-12を1~1000ng/mLの濃度で含む、請求項32~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記予備活性化工程のための培養物が、IL-12を10ng/mLの濃度で含む、請求項32~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記増殖工程の前および/または後に前記予備活性化NK細胞を洗浄する工程をさらに含む、請求項32~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
NK細胞が、前記増殖工程の間にIL-12、IL-15、IL-18、IL-2またはそれらの任意の組み合わせにより少なくとも2回またはそれ以上活性化される、請求項32~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
洗浄工程が複数回行われる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
増殖工程が5~60日間である、請求項34~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記増殖工程が12~16日間である、請求項32~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記増殖工程が18~24日間である、請求項32~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記予備活性化NK細胞およびaAPCが、3:1~1:3の比で前記増殖培養物中に存在する、請求項32~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記予備活性化NK細胞およびaAPCが、1:2の比で前記増殖培養物中に存在する、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記増殖培養物がIL-2をさらに含む、請求項32~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記IL-2が10~500U/mLの濃度で存在する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記IL-2が100~300U/mLの濃度で存在する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記IL-2が200U/mLの濃度で存在する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記IL-12、IL-18、IL-15および/またはIL-2が組換えである、請求項32~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記IL-2が、2~3日毎に、前記増殖培養物中に補充される、請求項32~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記APCが少なくとも2回目に前記増殖培養物に添加される、請求項32~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記方法の1つ以上の工程が無血清培地において行われる、請求項32~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
対象の疾患または障害を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~31のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与する工程を含む方法。
【請求項83】
前記疾患または障害が、がん、炎症、移植片対宿主病、移植拒絶、自己免疫障害、免疫不全疾患、B細胞悪性腫瘍、または感染症である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記がんが血液がんまたは固形腫瘍である、請求項82または83に記載の方法。
【請求項85】
前記血液がんが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択される白血病である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記NK細胞が、前記対象に対して同種である、請求項82~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記NK細胞が、前記対象に対して自己である、請求項82~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記障害が移植片対宿主病(GVHD)である、請求項82に記載の方法。
【請求項89】
前記障害が、多発性硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、接触過敏症、喘息またはシェーグレン症候群である、請求項82に記載の方法。
【請求項90】
前記対象がヒトである、請求項82~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
少なくとも第2の治療剤を前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項82~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記少なくとも第2の治療剤が、治療有効量の1つ以上の抗がん剤、1つ以上の免疫調節剤、および/または1つ以上の免疫抑制剤である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記抗がん剤が、化学療法、放射線療法、遺伝子療法、外科手術、ホルモン療法、抗血管新生療法または免疫療法である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記免疫抑制剤が、カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、抗体、化学療法剤、照射、ケモカイン、インターロイキンまたはケモカインもしくはインターロイキンの阻害剤である、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記組成物および/または前記少なくとも第2の治療剤が、静脈内、腹腔内、気管内、腫瘍内、筋肉内、内視鏡的、病変内、経皮的、皮下、局所的に、または直接注射もしくは灌流によって投与される、請求項91~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記第2の治療剤が抗体である、請求項91~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記抗体がモノクローナル抗体、二重特異性抗体または多重特異性抗体である、請求項96に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年4月8日に出願された米国仮特許出願シリアル番号63/172,402に対する優先権を主張し、また、2021年8月3日に出願された米国仮特許出願シリアル番号63/228,991に対する優先権を主張するものであり、これら両出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、細胞生物学、分子生物学、免疫学、および癌医学を含む医学の分野を少なくとも含む。
【背景技術】
【0003】
治療としてのナチュラルキラー(NK)細胞の分野では、抗癌治療としての効力に影響を及ぼすその不十分な持続性に加えて、数が限られているためにex vivoでの増殖が必要であることを含む、ある種の障壁がその使用を妨げている。サイトカイン刺激は、腫瘍標的細胞に反応するNK細胞の機能的能力を高める重要なシグナルである。さらに、IL-18、IL-15、IL-12の組み合わせで一晩NK細胞を予備活性化すると、再刺激時にサイトカイン産生が増強され、長寿命でメモリー様NK細胞が生成されることが示されている(Leongら、2014)。しかし、末梢血(PB)からあらかじめ活性化されたNK細胞を使用するには、生体外での増殖がないため、臨床で使用するのに十分な量を作製するためには煩雑な手順が必要である。加えて、NK細胞によるがん認識の欠損やNK細胞の活性化不良に関連する障害もある。したがって、治療応用に十分な数で、特にがん抗原ターゲティングに効率的な、高度に機能的な予備活性化NK細胞を作製するための改良された戦略に対する満たされていないニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態は、病状に対する免疫療法に関連する方法及び組成物に関する。免疫療法は、破壊を必要とする細胞の標的化が臨床的に有用であり、抗体および/または細胞が特異的であり得る標的化細胞上の特異的抗原が存在する任意の病状に利用され得る。特定の実施形態において、免疫療法は、養子細胞療法及び細胞に結合するように構成された抗体を含む、とからなる、あるいは本質的にからなる。特定の実施形態において、養子細胞療法はNK細胞からなり、抗体は少なくとも二重特異性を含む多重特異性であってもよい。従って、特定の実施形態では、NK細胞及び抗体の両方に対してコンビナトリアルである組成物が治療に利用され、この組合せは、抗体がNK細胞上の表面抗原と結合することができ、この組合せの複合体が治療的に利用されるように構成され得る。
【0005】
特定の実施形態において、方法及び組成物のためのNK細胞は、抗体との(いかなる種類の)組み合わせの前も含め、使用前に特定の方法で調製することができる。特定の実施形態において、NK細胞は、特定の方法で増殖され、任意選択で特定の方法で予め活性化される。例えば、NK細胞は、特定の培養条件下で特定の抗原提示細胞の存在下で増殖させることができ、さらに、NK細胞は、任意選択で、予備活性化段階として1つ以上のサイトカインに曝露させることができる。
【0006】
特定の実施形態において、NK細胞と抗体との複合体を含む組成物の効力は、それらを別々に使用する場合と比較して増強される。特定の態様において、NK細胞と抗体の効力は、複合体として使用される場合には相乗的であるが、他の態様において、NK細胞と抗体の効力は相加的である。
【0007】
本開示の実施形態は、(1)1つまたは複数の臍帯血由来、幹細胞由来(iPSCを含む)、または末梢血由来のナチュラルキラー(NK)細胞;および(2)1つまたは複数の抗体分子を含む組成物に関するものであり、ここで(a)抗体は単特異的であり、単特異的抗体のFc領域がNK細胞と結合し、単特異的抗体の抗原結合ドメインが標的抗原と結合する;または(b)抗体は多特異的であり、抗体の1つ以上の抗原結合ドメインが標的抗原と結合し、抗体の別の抗原結合ドメインまたはドメインがNK細胞表面抗原と結合する。NK細胞は増殖してもしなくてもよい。NK細胞は予め活性化されていてもいなくてもよい。場合によっては、多重特異性抗体は二重特異性、三重特異性、または多重特異性である。具体的な態様では、(a)において、組成物はさらに、単特異的抗体のFc領域とNK細胞との結合を介した、NK細胞と単特異的抗体との複合体として定義される。具体的な例では、(b)において、組成物はさらに、NK細胞表面抗原または抗原と結合する多特異的抗体の抗原結合ドメインまたはドメインの結合を介した、NK細胞と多特異的抗体との複合体として定義される。標的抗原は、CD19、CD319(CS1)、ROR1、CD20、CD22、CD70、カルチノ胚性抗原、アルファフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、上皮性腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸結合タンパク質HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD5、CD123、CD23、CD30、CD38、CD56、CD70、CD38、c-Met、メソセリン、GD3、HERV-K、IL-11Rα、κ鎖、λ鎖、CSPG4、ERBB2、WT-1、TRAIL/DR4、VEGFR2、CD33、CD47、CLL-1、U5snRNP200、CD200、BAFF-R、BCMA、HLA-G、TROP2、CD99、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるがん抗原、幹細胞抗原、自己抗原であっても良い。または。NK細胞表面抗原は、CD16、CS1、CD56、NKG2D、NKG2C、または任意のc型レクチン、DNAM、2B4、CD2、NCR、またはKIRなどの共刺激分子であってもよい。本組成物の場合、臍帯血の供給源は、1人のドナーからの臍帯血、または2人以上の個々の臍帯血単位からプールされた臍帯血である。CBは、3、4、5、6、7、または8個の臍帯血単位からプールされてもよい。NK細胞(CD56+であってもよい)は、臍帯血単核球由来、臍帯血造血幹細胞由来、iPSC由来、末梢血由来、またはNK細胞株由来であってもよい。本組成物は、新鮮なまま使用してもよいし、凍結保存して使用してもよい。NK細胞の供給源は、新鮮な供給源であってもよいし、凍結保存された貯蔵所であってもよい。場合によっては、NK細胞が凍結保存から供給される場合、NK細胞は、少なくとも1つの凍結保護剤、少なくとも1つの血清又は血清に代わる非血清を含む培地中で凍結保存された。特定の実施形態では、少なくとも1つのサイトカイン及び/又は少なくとも1つの成長因子を凍結保存培地に添加してもよい。凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、グリセロール、ヒドロキシエトールデンプン、デキストラントレハロース、またはそれらの組み合わせであってもよい。非血清代替物は、血小板溶解物および/または血液製剤溶解物、またはヒトもしくは動物血清アルブミンからなり得る。場合によっては、少なくとも1つのサイトカイン(これは、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-22、IL-23、インターフェロン、腫瘍壊死因子、幹細胞因子、FLT3-リガンド、APRIL、トロンボポエチン、エリスロポエチン、またはそれらの組み合わせ)は、天然タンパク質、組換えタンパク質、合成タンパク質、またはそれらの混合物である。NK細胞は、キメラ抗原レセプターやT細胞レセプター、CD16、CD32および/またはCD64レセプターを含む1つまたは複数の人工抗原レセプターを含むなど、1つまたは複数の方法で人の手によって改変されてもよい。NK細胞は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21またはIL-23などの異種サイトカインを発現してもよい。加えて又は代替的に、NK細胞は自殺遺伝子を発現してもよい。組成物は、1種以上の凍結保護剤を含む溶液又は固体で構成することができる。組成物は、薬学的に許容される担体中で構成されてもよい。
【0008】
一実施形態では、本明細書に包含される任意の組成物を製造する方法であって、(a)有効量のNK細胞を含む培養物中で任意にNK細胞を増殖させる工程を含む方法が提供される:(1)IL-2、IL-15、および/またはIL-21からなる群から選択されるサイトカイン;ならびに(2)抗原提示細胞/フィーダーまたはNK活性化ビーズ;ならびに(b)抗体分子をNK細胞に提供するステップであって、増殖させる場合、増殖前および/または増殖後に抗体分子をNK細胞に提供するステップを含む。場合によっては、本方法は、増殖ステップの前及び/又は後に予備活性化ステップを含み、ここで、NK細胞は、IL-2、IL-12、IL-15、及びIL-18のうちの1つ又は2つ又は3つ以上を有効濃度で含む培養物中で予備活性化される。場合によっては、IL-12がIL-15の代わりに培養物中で利用される。提供するステップは、さらに、NK細胞を抗体分子とともに特定の時間(例えば、約5分~約24時間以上)培養すること、または注入直前にNK細胞と抗体分子とを結合させることと定義することができる。培養は、Plasma-Lyte Aおよび/またはヒト血清アルブミンを含んでも含まなくてもよい。培養後、最初に洗浄することなく、組成物をレシピエント被験体に注入してもしなくてもよい。NK細胞は、CD3+、CD14+及び/又はCD19+細胞を枯渇させてもよい。枯渇ステップは、予備活性化ステップの前に、及び/又はフィーダー細胞及び/又はNK細胞活性化ビーズによる拡張の前に、及び/又は1つ以上のサイトカインによる培養の前に、及び/又は点滴の前に行われてもよい。場合によっては、本方法は、臍帯血からNK細胞を得る工程をさらに含み、ここで臍帯血は臍帯組織を含まない。
【0009】
抗原提示細胞は人工細胞(aAPC)であってもよく、CD137リガンドを発現していてもよい。aAPCはさらに、膜結合IL-21(mIL-21)および/または膜結合IL-15(mIL-15)などの1つ以上の膜結合サイトカインを発現していてもよい。aAPCは、内因性のHLAクラスI、II、および/またはCD1d分子を本質的に発現していない場合がある。場合によっては、aAPCはICAM-1(CD54)および/またはLFA-3(CD58)および/またはCD48を発現する。aAPCは、白血病細胞由来aAPCとしてさらに定義されてもよく、白血病細胞由来aAPCは、CD137リガンドおよび/またはmIL-21を発現するように操作されたようなK562細胞であってもよい。いずれにせよ、aAPCは、ウイルス性または非ウイルス性ベクターを含む、レトロウイルス導入を含む、あらゆる種類のベクターによる導入によって操作されている可能性がある。aAPCは照射してもしなくてもよい。予備活性化工程は、10~20時間、14~18時間、または16時間であってもよい。予備活性化ステップのための培養物は、IL-18および/またはIL-15を1~1000ng/mLの濃度で含んでもよい。前活性化ステップのための培養物は、0.1~1000ng/mLの濃度のIL-12を含んでもよい。予備活性化ステップのための培養物は、10ng/mLを含む1~1000ng/mLの濃度のIL-12を含んでもよい。場合によっては、本方法は、増殖ステップの前及び/又は後に、予備活性化NK細胞を洗浄することをさらに含み、洗浄は1回であってもよく、複数回行ってもよい。増殖させる場合、増殖は、12~16日間、例えば18~24日間を含む5~60日間であってよい。いくつかの事項では、予備活性化NK細胞及びaAPCは、3:1~1:3の比(1:2の比を含む)で、増殖培養物中に存在する。増殖培養物は、100~300U/mL、例えば200U/mLを含む、10~500U/mLの濃度のIL-2をさらに含んでも含まなくてもよい。本方法のいずれの態様においても、IL-12、IL-18、IL-15、および/またはIL-2は組換え型であってもなくてもよい。いくつかの態様において、IL-2は2~3日ごとに展開培養物中に補充される。IL-2もしくはIL-15もしくはIL-18またはこれらのサイトカインの任意の組合せを、少なくとも2回目に増殖培養物に添加してもよい。APCは、少なくとも2回目に増殖培養に添加され得る。場合によっては、本方法の1つ以上の工程を無血清培地で実施する。
【0010】
一実施形態では、対象(ヒトなどの哺乳動物を含む)における疾患又は障害を治療する方法であって、本明細書に包含される任意の組成物の治療有効量を投与することを含み、組成物のNK細胞は、対象に関して自家又は同種であってよい。疾患または障害は、癌(血液癌または固形腫瘍)、炎症、移植片対宿主病、移植拒絶反応、自己免疫疾患、免疫不全疾患、B細胞悪性腫瘍、または感染症であり得る。血液癌には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄性白血病(CML)からなる群から選択される白血病が含まれる。障害は、移植片対宿主病(GVHD)、多発性硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、接触過敏症、喘息、および/またはシェーグレン症候群であってもよい。
【0011】
場合によっては、本方法は、被験体に少なくとも第2の治療薬、例えば治療有効量の1つ以上の抗癌剤(化学療法、放射線療法、遺伝子療法、外科手術、ホルモン療法、抗血管新生療法および/または免疫療法、例えば、カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、抗体、化学療法剤照射、ケモカイン、インターロイキン、またはケモカインもしくはインターロイキンの阻害剤のうちの1つ以上など)、1つ以上の免疫調節剤、および/または1つ以上の免疫抑制剤を含む。任意の疾患に対する任意の第2の薬剤は、モノクローナル抗体、二特異性抗体、三特異性抗体、または四特異性抗体を含む抗体であってもよい。
【0012】
任意の方法において、組成物(および/または少なくとも第2の治療薬)は、静脈内、腹腔内、気管内、腫瘍内、筋肉内、内視鏡的、浸潤内、経皮的、皮下、局所的に、または直接注射もしくは灌流もしくは注入によって投与され得る。
【0013】
以上、本開示の特徴および技術的利点を、以下の詳細な説明をよりよく理解できるように、むしろ大まかに概説した。以下、本明細書の特許請求の範囲の主題を形成する追加の特徴および利点を説明する。開示された着想および具体的な実施形態は、本意匠と同じ目的を遂行するための他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者には理解されるべきである。また、そのような等価な構造は、添付の特許請求の範囲に規定された精神および範囲から逸脱しないことも、当業者には理解されるはずである。本明細書に開示された設計の特徴と考えられる新規な特徴は、組織および操作方法の両方に関して、さらなる目的および利点とともに、以下の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、本開示は、例示および説明の目的のみのために提供されるものであり、本開示の限界の定義として意図されるものではないことを明示的に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示をより完全に理解するために、次に、添付の図面と併せて取られる以下の説明を参照する。
【0015】
【
図1】臍帯血由来NK細胞を増殖させ、それらを抗体でプレローディングするための実験計画の一実施形態を詳細に示すシュミレーション図である。
【0016】
【
図2】マルゲツキシマブは、正常な増殖NK細胞と比較して高い親和性でP+E NK細胞に結合する。
【0017】
【
図3】マルゲツキシマブを負荷したNK細胞は、長期のXcelligence殺傷アッセイにおいて、HER2+腫瘍細胞に対する増強された細胞傷害性を示す。
【0018】
【
図4A-C】HER2+卵巣癌のNSGマウスモデル(SKOV3)において、マルゲツキシマブ負荷NK細胞が腫瘍制御を増強する。
【0019】
【
図5】アミバマブは、正常増殖NK細胞と比較して高い親和性でP+E NK細胞に結合する。
【0020】
【
図6】アミバンタマブを負荷したNK細胞は、短期間の51Cr放出殺傷アッセイにおいて、EGFR+/cMET+腫瘍細胞に対して増強された細胞傷害性を示す。
【0021】
【
図7A-C】アミバンタマブを負荷したNK細胞は、長期のXcelligence殺傷アッセイにおいて、EGFR+/cMET+腫瘍細胞に対して増強された細胞傷害性を示す。
【0022】
【
図8A-C】アミバマブ負荷NK細胞は、EGFR+/c-MET+卵巣癌(SKOV3)のNSGマウスモデルにおいて腫瘍制御の強化をもたらす。
【0023】
【
図9】イムガツズマブは、通常の増殖(NE)NK細胞と比較して高い親和性で、予め活性化され、増殖された(PE)NK細胞に結合する。
【0024】
【
図10】イムガツズマブを負荷したNK細胞は、短期間の51Cr放出殺傷アッセイにおいて、EGFR+腫瘍細胞に対する増強された細胞傷害性を示す。
【0025】
【
図11A-C】イムガツズマブを負荷したNK細胞は、長期のXcelligence殺傷アッセイにおいて、EGFR+腫瘍細胞に対して増強された細胞傷害性を示す。
【0026】
【
図12A-C】イムガツズマブ負荷NK細胞は、EGFR+卵巣癌のNSGマウスモデル(SKOV3)において腫瘍制御の増強をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0027】
長年にわたる特許法の慣例に従い、本明細書において、特許請求の範囲を含め、comprisingという単語と協働して使用される場合、“a”および“an”という単語は、“1つ以上”を表す。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つまたは複数の要素、方法ステップ、および/または方法から構成されるか、またはこれらから本質的に構成され得る。本明細書に記載される任意の方法または組成物が、本明細書に記載される任意の他の方法または組成物に関して実施され得、異なる実施形態が組み合わされ得ることが企図される。
【0028】
本明細書全体を通して、文脈上他に必要とされない限り、「含有する」、「包含する」および「含む」という語は、記載されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を含むことを意味するが、他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群を排除することを意味しないと理解される。「からなる」とは、「~からなる」という語句の後に続くものを含むこと、およびそれらに限定されることを意味する。したがって、「~からなる」という表現は、列挙された要素が必須または必須であり、他の要素が存在しない可能性があることを示す。「から本質的になる」とは、その語句の後に列挙された要素を含むことを意味し、列挙された要素について開示で指定された活性または作用を妨げないか、またはそれに寄与しない他の要素に限定される。従って、「本質的にからなる」という語句は、列挙された要素が必須または必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性または作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもしなくてもよいことを示す。
【0029】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加の実施形態」、または「さらなる実施形態」、またはそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な場所に前述の語句が現れるが、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「または」および「および/または」という用語は、複数の構成要素を組み合わせて、または互いに排他的に説明するために利用される。例えば、“x、y、および/またはz”は、“x”単独、“y”単独、“z”単独、“x、y、およびz”、“(xおよびy)またはz”、“xまたは(yおよびz)”、または“xまたはyまたはz”を指すことができる。x、y、またはzが実施形態から特に除外され得ることが特に企図される。
【0031】
本明細書において議論される任意の実施形態が、本発明の任意の方法または組成物に関して実施され得、逆もまた同様であることが企図される。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0032】
本出願を通して、用語「約」は、値を決定するために採用される装置または方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために、細胞および分子生物学の領域におけるその平明かつ通常の意味に従って使用される。
【0033】
本明細書で使用する「操作された」という用語は、細胞、核酸、ポリペプチド、ベクターなどを含む、人の手によって生成された実体を指す。少なくともいくつかの場合において、操作された実体は合成されたものであり、天然には存在しないか、または本開示において利用される方法で構成された要素からなる。具体的な実施形態において、ベクターは組換え核酸技術により操作され、細胞は操作されたベクターのトランスフェクションまたは形質導入により操作される。
【0034】
本明細書で使用される用語「負荷」、「ロード」又は「ローディング」は、細胞の表面で細胞に結合した1つ以上の抗体を有する養子細胞療法細胞を指す。
【0035】
「医薬的又は薬理学的に許容される」という語句は、ヒトなどの動物に投与した場合に、有害反応、アレルギー反応、又は他の有害反応を生じない分子実体及び組成物を適宜指す。抗体または追加の活性成分を含む医薬組成物の調製は、本開示に照らして当業者に公知であろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与のために、調製物は、FDA生物学的標準局(Office of Biological Standards)によって要求される無菌性、発熱原性、一般的安全性、および純度の基準を満たすべきであることが理解されるであろう。
【0036】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、任意のおよびすべての水性溶媒(例えば、水、アルコール/水溶液、生理食塩水、塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなどの非経口ビヒクル)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、およびエチロレエートなどの注射可能な有機エステル)、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガス)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、薬物、薬物安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、体液および栄養補充剤、このような材料およびこれらの組み合わせは、当業者に知られているであろう。医薬組成物中の種々の成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメーターに従って調整される。
【0037】
本明細書で使用する「予備活性化」又は「予備活性化」という用語は、IL-12、IL-15又はIL-2、及び/又はIL-18へのNK細胞の曝露を指し、その結果、NK細胞のエフェクター機能に関連するシグナル伝達経路、例えば、IFN-γ応答、TNFシグナル伝達、IL-2/STAT5シグナル伝達、IL-6/JAK/STAT3シグナル伝達、mTOR経路及び/又は炎症性免疫応答に関連する遺伝子の濃縮が増加する。特定の場合には、TRAIL、NKp44および/またはCD69の発現が増加する。
【0038】
本明細書で使用する「プレロード」、「プレローディング」又は「プレローディング」という用語は、何らかの理由で細胞を使用する前に、細胞表面に1つ以上の抗体が結合した養子細胞療法細胞を指す。
【0039】
本明細書で使用される「予防する」、及び「予防された」、「予防している」等の類似の語は、疾患又は状態、例えば癌の発生又は再発の可能性を予防し、抑制し、又は減少させるためのアプローチを示す。また、疾患または病態の発症または再発を遅延させること、あるいは疾患または病態の症状の発生または再発を遅延させることも指す。本明細書で使用される場合、「予防」および同様の語は、疾患または状態の発症または再発の前に、疾患または状態の強度、影響、症状および/または負担を軽減することも含む。
【0040】
本明細書で使用される「被験体」という用語は、一般に、癌を有する、または癌を有する疑いのある個体を指す。対象は、哺乳動物、例えばヒト、実験動物(例えば、霊長類、ラット、マウス、ウサギ)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、七面鳥、ニワトリ)、家庭用ペット(例えば、イヌ、ネコ、げっ歯類)、ウマ、およびトランスジェニック非ヒト動物を含む、方法または材料の対象である任意の生物または動物対象であり得る。対象は、例えば、良性もしくは悪性の新生物、または癌などの疾患(病状と称される場合がある)を有するか、または有する疑いのある患者であり得る。対象者は、治療中又は治療を受けたことがある。被験者が無症状の場合もある。対象者は、健康な個人であるが、癌の予防を希望している場合もある。「個体」という用語は、少なくとも場合によっては互換的に使用される。本明細書で使用される「対象」または「個人」は、医療施設に収容されていてもいなくてもよく、医療施設の外来患者として治療されていてもよい。個人は、インターネットを介して1つまたは複数の医療用組成物を受けることができる。個体は、ヒトまたは非ヒト動物の任意の年齢を含んでよく、したがって、成人および少年(すなわち、子供)および乳児の両方を含み、胎内の個体も含む。この用語は、医学的治療の必要性を意味するものではな いため、個体は、臨床的であるか基礎科学研究の支援であるかにかかわらず、自発的または非自発的に実験に参加することができる。
【0041】
本明細書で使用される「治療」または「治療する」とは、疾患または病理学的状態の症状または病理学的状態に対するあらゆる有益なまたは望ましい効果を含み、治療される疾患または状態、例えば癌の1つまたは複数の測定可能なマーカーにおける最小限の減少さえも含み得る。治療は、任意に、疾患または病態の1つ以上の症状の軽減もしくは改善、または疾患または病態の進行の遅延のいずれかを含むことができる。「治療」は、必ずしも疾患もしくは状態、またはそれらに関連する症状の完全な根絶または治癒を示すものではない。
I.ナチュラルキラー(NK)細胞および生成方法
【0042】
NK細胞は、悪性血液疾患ならびに固形腫瘍を有する患者のための細胞免疫療法の刺激源として浮上している;しかしながら、養子移入されたNK細胞を使用するほとんどの研究は、注入された細胞の不十分な持続性、不十分なin vivo増殖および期待外れの抗腫瘍活性によって制限されている。したがって、NK免疫療法の分野で克服する障壁は、治療として投与する前の細胞の操作などによって、NK細胞の抗腫瘍機能を高めるための生物学的に駆動されるアプローチの必要性である。したがって、ある実施形態において、本開示は、そのように操作されていないNK細胞と比較して、任意の種類の増強された有効性を有するNK細胞の生成方法を提供する。本開示のいくつかの実施形態は、がん免疫療法用を含む、NK細胞の単離、活性化および増殖に関する。
【0043】
特定の実施形態において、本開示は、がんに対する増強された抗腫瘍機能を示す、本方法によって生成された負荷、予備活性化、(任意選択的に)および増殖(任意選択的に)されたNK細胞を包含する。予備活性化および増殖されたNK細胞はまた、特定の実施形態において、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の増強を示す。
A.NK細胞、概括
【0044】
ある実施形態において、本方法で利用されるNK細胞は、臍帯血(CB)、例えばヒトCBなどの任意の適切な供給源に由来し得る。特定の場合には、NK細胞は臍帯組織(臍帯の血管を取り囲む隔離材料(すなわち、ホウォートンゼリー))に由来しない。代替の実施形態において、NK細胞は、当技術分野で周知の方法により、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)、非刺激白血球アフェレーシス産物(PBSC)、ヒト胚性幹細胞(hESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、および/または骨髄から誘導され、または患者から誘導されるNK-92などのNK細胞株である。特定の実施形態において、NK細胞は、プールされたCBから単離される。CBは、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の単位からプールされ得る。NK細胞は、レシピエント個体に関して自己または同種であり得る。単離されたNK細胞は、細胞療法を投与される対象に対してハプロタイプが一致しても、しなくてもよい。NK細胞は、ヒトのCD16および/またはCD56などの特異的表面マーカーによって検出されても、されなくてもよい。場合によっては、NK細胞は、CD3+、CD14+および/またはCD19+細胞について枯渇しているなど、1つ以上の表面マーカーの存在について枯渇している。特定の実施形態において、NK細胞はCD3-CD56+である。
【0045】
ある態様において、NK細胞は、NK細胞のex vivo増殖の前述の方法(Spanholtz et al.,2011;Shah et al.,2013)によって単離される。この方法では、CB単核細胞をフィコール密度勾配遠心分離によって単離する。細胞培養物は、CD3を発現する任意の細胞を枯渇させることができ、CD56+/CD3-細胞またはNK細胞のパーセンテージを決定することで特徴付けることができる。他の方法では、臍帯血を使用して、CD34+細胞の単離によってNK細胞を誘導する。
B.NK細胞の負荷
【0046】
NK細胞は、特定の実施形態において、使用前に抗体を負荷される。NK細胞は、例えばNK細胞と抗体との複合体を生成するために、培養中または注入直前を含む任意の特定の方法で負荷され得る。条件は、有効量の抗体をNK細胞の表面に結合可能にするのに十分に適したものである。単一特異性抗体を使用する場合、単一特異性抗体のFc領域はNK細胞に結合し、一方、単一特異性抗体の抗原結合ドメインはその標的抗原に自由に結合する。多重特異性抗体を使用する場合、抗体の1つ以上の抗原結合ドメインは、NK細胞の表面上の抗原などを介してNK細胞の表面に結合し、他の抗原結合ドメインはその標的抗原に自由に結合する。
【0047】
NK細胞が負荷される培養条件は、1つ以上の特異的パラメータを有する特定の種類のためのものであっても、そうでなくてもよい。特定の実施形態において、NK細胞の負荷は、37℃などの特定の温度で培養中に起こるが、代替の実施形態において、温度は36℃もしくは38℃、またはそれ以下もしくはそれ以上である。負荷工程の持続時間は、1分~24時間の範囲、またはそれ以上など、任意の適切な時間量であってよい。例えば、範囲は、1分~24時間、1分~18時間、1分~12時間、1分~6時間、1分~1時間、30分~24時間、30分~18時間、30分~12時間、30分~6時間、30分~1時間、1~24時間、1~18時間、1~12時間、1~6時間、6~24時間、6~18時間、6~12時間、12~24時間、12~18時間、または18~24時間の範囲であり得る。特定の実施形態において、細胞培養培地は、基礎培地または複合培地である。場合によっては、培養物は、予備活性化および/または増殖工程中に利用された1つ以上の試薬を含むが、他の場合では培養物はそれらを含まない。特定の実施形態において、培養物は、例えば、IL-12、IL-15、IL-2およびIL-18のうちの1つ以上を含む、1つ以上のサイトカインを含む。いくつかの実施形態において、培養物は、任意の種類のAPCを含む。
【0048】
組成物の抗体は、有効量で本開示のNK細胞の有効量に供され、それによって「キメラ抗原受容体様」である複合体を生成する。特に、抗体の抗原結合ドメインは、細胞表面タンパク質である抗原などを介して、NK細胞に結合する。細胞/抗体の多重複合体が存在するように、複数の抗体を複数のNK細胞に供してもよい。抗体は、単一特異性、二重特異性、または多重特異性を含む任意の時点のものであり得、特定の場合には、抗体は、抗体の抗原結合ドメインを介して、(例えば、異なる抗体の2つの一本鎖可変フラグメント(scFv)からなる融合タンパク質である当技術分野のエンゲージャーにより)NK細胞と標的抗原との両方に係合する。抗体が単一特異性である例では、抗体の抗原結合ドメインはがん抗原などの標的抗原に結合し、抗体のFc領域などの抗体の別の部分はNK細胞に結合する。抗体が多重特異性である場合、抗体の1つ以上の抗原結合ドメインは(例えば、NK細胞表面抗原を介して)NK細胞に結合し、抗体の1つ以上の抗原結合ドメインは1つ以上の標的抗原に結合する。多重特異性抗体は、例えば、二重特異性、三重特異性または四重特異性であり得る。抗体が三重特異性または四重特異性である場合、さらなる抗原結合ドメインは、幹細胞などの他の細胞に結合し得る。
【0049】
特定の実施形態において、抗体は、CD16(CD16aまたはCD16bを含む)、CD56、c型レクチン、例えばNKG2D、NKG2C、共刺激分子、例えばCS1、DNAM、2B4、CD2、NCR、またはKIRなどのNK細胞上の任意のNK細胞表面抗原(受容体であっても、そうでなくてもよい)に結合し、NK細胞を標的に再指向させ、したがって異なる腫瘍に対する応答および特異性を増加させることができる。
【0050】
複合体の生成は、条件が、抗体の適切な領域がNK細胞の適切な表面領域に結合するのに十分であるような、任意の適切な手段によるものであり得る。ある場合には、任意の特定の培地を利用することができる。特定の場合には、血漿-Lyte Aおよび/またはヒト血清アルブミンが利用され、他の場合にはそれらは利用されない。複合体が培養中に形成されると、複合体は、注入などを介した対象への投与前に、洗浄されても、されなくてもよい。代替の実施形態において、NK細胞および抗体は別々に投与され、複合体はin vivoで形成される。
C.予備活性化
【0051】
いくつかの実施形態において、NK細胞は、レシピエント個体への投与前に予備活性化される。予備活性化工程は、任意の増殖工程の前に行われても、行われなくてもよい。特定の実施形態において、NK細胞は、1つ以上のサイトカインで予備活性化され、特定の実施形態においてNK細胞は、IL-12、IL-15、IL-2、およびIL-18のうちの1つ以上の、例えば2つ、3つ、またはそれ以上で予備活性化される。IL-12、IL-15、IL-2およびIL-18の3つ未満が利用される場合、それは、IL-12とIL-15とでありIL-18は利用されず;またはIL-12とIL-18とでありIL-15は利用されず;またはIL-15とIL-18とでありIL-12は利用されない場合がある。IL-2が、IL-15の代わりに用いられても、用いられなくてもよい。
【0052】
特定の実施形態において、予備活性化サイトカインは、IL-12、IL-15およびIL-18であり得る。1つ以上のさらなるサイトカインを、予備活性化工程のために使用することもできる。予備活性化は、5~72時間などの短時間、例えば10~50時間、特に10~20時間、例えば12、13、14、15、16、17、18、19、または20時間であり得、場合によっては特に約16時間であり得る。予備活性化培養物は、IL-18および/またはIL-15を、10~100ng/mLの濃度で、例えば40~60ng/mL、特に45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、または55ng/mL、特に約50ng/mLの濃度で含み得る。場合によっては、予備活性化培養物は、IL-12を、0.1~150ng/mLの濃度で、1~20ng/mLの濃度、例えば10ng/mLの濃度を含む濃度で含む。代替的な実施形態において、NK細胞は、IL-2、または共通のガンマ鎖に結合する他のサイトカイン(例えば、IL-7、IL-21など)で刺激されてもよく、これは、IL-12、IL-15、およびIL-18に加えてであっても、またはそれらの1つ以上の代わりとしてであってもよい。そのような場合、予備活性化培養物は、IL-12を、0.1~150ng/mLの濃度で、例えば0.5~50ng/mL、特に1-20ng/mL、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15ng/mL、特に約10ng/mLの濃度で含み得る。
D.増殖
【0053】
特定の実施形態において、NK細胞は、それを必要とする個体への投与前にその量を増加させるために増殖される。増殖した細胞は、予備活性化工程が増殖工程の前に起こり得るように、予備活性化NK細胞に由来しても、しなくてもよい。NK細胞増殖工程は、NK細胞集団が増殖するような任意の適切なものであり得るが、特定の場合には、増殖工程は、それらの増殖を増強するために、培養中などに特定の1つ以上の試薬を利用する。ある場合には、NK細胞は増殖されなくてもよい。IL-2もしくはIL-15もしくはIL-18またはサイトカインの任意の組み合わせを、増殖前または増殖中に増殖培養物に添加することができる。NK細胞は、特定の実施形態において、フラスコ内で、または培地/添加剤の連続灌流を伴ういくつかの異なるバイオリアクタ構成のうちの1つでex vivoで増殖させることができる。
【0054】
特定の場合には、NK細胞(予備活性化されているか否かに関わらず)は、増殖の前および/または後に、(例えば、PBSもしくはPlasma Lyteもしくはヒト血清アルブミンもしくは培養培地またはそれらの組み合わせを用いて)2、3、4、または5回、特に3回洗浄されてもよい。特定の実施形態において、NK細胞は、人工抗原提示細胞(aAPC)の存在下で増殖される。aAPCは、CD137リガンドおよび/または膜結合サイトカインを発現するように操作されてもよい。膜結合サイトカインは、膜結合IL-21(mIL-21)または膜結合IL-15(mIL-15)であり得る。特定の実施形態において、aAPCは、CD137リガンドおよびmIL-21を発現するように操作される。aAPCは、白血病細胞などのがん細胞に由来し得る。aAPCは、内因性HLAクラスI、IIまたはCD1d分子を発現できない。それらは、ICAM-1(CD54)およびLFA-3(CD58)またはCD48を発現し得る。特に、aAPCはK562細胞であり得、例えば、CD137リガンドおよびmIL-21を発現するように操作されたK562細胞であり得る。操作は、レトロウイルス形質導入などの当技術分野で公知の任意の方法によることができるが、任意のウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを利用してもよい。aAPCは照射されても、されなくてもよい。増殖は特定の期間、例えば約2~30日、例えば3~20日、特に12~16日、例えば12、13、14、15、16、17、18または19日、特に約14日であり得る。予備活性化NK細胞およびaAPCは、約3:1~1:3、例えば2:1、1:1、1:2、特には約1:2の比率で存在し得る。増殖培養物は、IL-2などの、増殖を促進するための1つ以上のサイトカインをさらに含み得る。IL-2は、約10~500U/mL、例えば、100~300U/mL、特に約200U/mLの濃度で存在し得る。IL-2は、ある頻度で、例えば2~3日毎に、増殖培養物中に補充することができる。aAPCは、少なくとも2回目、例えば、増殖の約7日に培養物に添加することができる。予備活性化および/または増殖工程で使用される任意の(1または複数の)サイトカインは、組換えヒトサイトカインであり得る。
【0055】
増殖後、NK細胞は、1つ以上の抗体と複合体化するなど任意の方法で直ちに利用することができ、または凍結保存などによって保存することができる。ある態様において、細胞は、約1、2、3、4、または5日以内にバルク集団としてex vivoで数日、数週間、または数ヶ月間増殖され得る。
【0056】
活性化および/または増殖されたNK細胞は、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子-α、および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などのI型サイトカインを分泌し、自然免疫細胞と適応免疫細胞との両方、および他のサイトカインやケモカインを活性化する。これらのサイトカインの測定は、NK細胞の活性化状態を決定するために使用することができる。さらに、NK細胞活性化を決定するための当技術分野で公知の他の方法を、本開示のNK細胞の特性評価のために使用することができる。
【0057】
したがって、本開示の特定の予備活性化および増殖の態様に関して、特定の実施形態において、IL-12、IL15およびIL-18で予備活性化し、続いてaAPC、例えばmIL-21およびCD137リガンドを発現するK562細胞と共に増殖させたNK細胞は、非常に強力な細胞産物を提供する。したがって、がんを有する患者の免疫療法などの様々な疾患の治療のために、本NK細胞を使用する方法が提供される。例示的な方法では、単離されたNK細胞を、インターロイキン-12(IL-12)、IL-15および/またはIL-18などのサイトカインの組み合わせで短時間、例えば約16時間の予備活性化に供し、その後、人工抗原提示細胞(aAPC)、例えば膜結合IL-21およびCD137リガンドを発現するK562フィーダー細胞、および/または外因性IL-2を使用して増殖させることができる。IL-2もしくはIL-15もしくはIL-18またはサイトカインの任意の組み合わせを、少なくとも2回目に増殖培養物に添加することができる。
E.他の変形例
【0058】
いくつかの実施形態において、NK細胞は、1つ以上の方法で天然NK細胞と比較して改変される。NK細胞は、1つ以上の異種タンパク質を発現するように操作されるように、人の手によって操作され得る。代替的に、または追加として、NK細胞は、1つ以上の内因性遺伝子の発現を低減または阻害するように改変され得る。他の場合では、NK細胞は、1つ以上のサイトカインまたは自殺遺伝子を発現するように改変される。
1.操作された抗原受容体
【0059】
NK細胞は、少なくとも1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)および/または1つ以上のTCRを含む、1つ以上の操作された抗原受容体を発現するように遺伝子改変され得る。特定の実施形態において、操作された抗原受容体は、1つ以上のがん抗原を標的とするように指向し、抗原は、多重特異性抗体(例えば、エンゲージャー)が指向するものと同じ抗原であっても、そうでなくてもよい。
【0060】
NK細胞は、少なくとも1つのCARをコードするように改変されてもよく、CARは、例えば、第1世代、第2世代、または第3世代もしくは後続世代であってもよい。CARは、2つ以上の異なる抗原に対して二重特異性であっても、そうでなくてもよい。CARは、1つ以上の共刺激ドメインを含み得る。NK細胞はまた、抗体へのそれらの結合を増強するための受容体、例えばCD16、CD32および/またはCD64受容体を発現するように改変され得る。各共刺激ドメインは、例えば、TNFRスーパーファミリーのメンバー、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD27、NKG2D、2B4M、CD40またはそれらの組み合わせの任意の1つ以上の共刺激ドメインを含み得る。特定の実施形態において、CARはCD3ゼータを含む。ある実施形態において、CARは、1つ以上の特異的共刺激ドメインを欠く。例えば、CARは4-1BBを欠いていてもよく、および/またはCD28を欠いていてもよい。
【0061】
特定の実施形態において、細胞中のCARポリペプチドは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとを連結する細胞外スペーサードメインを含み、これはヒンジと呼ばれ得る。細胞外スペーサードメインには、限定するものではないが、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体のFcフラグメント、抗体またはそのフラグメントもしくは誘導体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工スペーサー配列またはそれらの組み合わせが含まれ得る。細胞外スペーサードメインの例としては、限定するものではないが、CD8-アルファヒンジ、CD28、Gly3などのポリペプチドで作製された人工スペーサー、またはIgG(ヒトIgG1またはIgG4など)のCH1、CH3ドメインが挙げられる。特定の場合には、細胞外スペーサードメインは、(i)IgG4のヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域、(ii)IgG4のヒンジ領域、(iii)IgG4のヒンジ領域およびCH2、(iv)CD8-アルファまたはCD4のヒンジ領域、(v)IgG1のヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域、(vi)IgG1のヒンジ領域もしくは(vii)IgG1のヒンジ領域およびCH2、(viii)CD28のヒンジ領域、またはそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態において、ヒンジはIgG1由来であり、ある態様において、CARポリペプチドは特定のIgG1ヒンジアミノ酸配列を含むか、または特定のIgG1ヒンジ核酸配列によってコードされる。
【0062】
CAR中の膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、いくつかの態様においてドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域には、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖、CD28、CD3ゼータ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS/CD278、GITR/CD357、NKG2D、およびDAP10またはDAP12などのDAP分子に由来する領域(すなわち、少なくともそれらの(1または複数の)膜貫通領域を含む)が含まれる。代替的に、いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは合成である。いくつかの態様において、合成膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの主に疎水性残基を含む。いくつかの態様において、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットを、合成膜貫通ドメインの両端に見出すことができる。
【0063】
ある実施形態において、腫瘍関連抗原の量が少ない場合、CARを1つ以上のサイトカインと共発現させて持続性を改善することができる。例えば、CARは、IL-7、IL-2、IL-15、IL-12、IL-23、IL-18、IL-21、IL-7、GMCSF、またはそれらの組み合わせなどの1つ以上のサイトカインと共発現され得る。いくつかの実施形態において、CARを発現するNK細胞は、1つ以上の異種サイトカインを発現するように操作され、および/または1つ以上の異種サイトカインの正常発現を上方制御するように操作される。細胞は、1つ以上のサイトカインについて他の遺伝子と同じベクター上に形質導入またはトランスフェクトされても、されなくてもよい。
【0064】
キメラ受容体をコードするオープンリーディングフレームの配列は、ゲノムDNA源、cDNA源から得ることができ、または(例えば、PCRを介して)合成することができ、またはそれらの組み合わせから得ることができる。ゲノムDNAのサイズおよびイントロンの数に応じて、イントロンがmRNAを安定化させることがわかっているため、cDNAまたはそれらの組み合わせを使用することが望ましいと思われる。また、内因性または外因性の非コード領域を使用してmRNAを安定化することがさらに有利であり得る。
【0065】
キメラ構築体は、裸のDNAとして、または適切なベクター中で任意の種類の免疫細胞に導入され得ることが企図される。裸のDNAを使用するエレクトロポレーションによって細胞を安定的にトランスフェクトする方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号明細書を参照されたい。裸のDNAは、一般に、発現のために適切な方向でプラスミド発現ベクターに含有される、キメラ受容体をコードするDNAを指す。
【0066】
または、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレンチウイルスベクター)を使用して、キメラ構築体を免疫細胞に導入することができる。本開示の方法に従って使用するのに適したベクターは、免疫細胞において複製しない。細胞内に維持されるウイルスのコピー数が細胞の生存能力を維持するには十分に低い、ウイルスに基づく多数のベクター、例えば、HIV、SV40、EBV、HSVまたはBPVに基づくベクターが公知である。非ウイルスベクターには、プラスミド、トランスポゾン、ナノ粒子、リポソーム、脂質、金属、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0067】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作された抗原受容体は、組換えTCRおよび/または天然に存在するT細胞からクローン化されたTCRを含む。「T細胞受容体」または「TCR」は、可変のaおよびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても知られる)または可変のγおよびδ鎖(それぞれ、TCRγおよびTCRδとしても知られる)を含む分子を指し、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、TCRはαβ型である。
【0068】
通常、αβおよびγδの型で存在するTCRは一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は異なる解剖学的位置または機能を有し得る。TCRは、細胞の表面に、または可溶性形態で見出すことができる。一般に、TCRはT細胞(またはTリンパ球)の表面に見られ、概して主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識に関与する。いくつかの実施形態において、TCRはまた、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または短い細胞質尾部を含み得る(例えば、Janeway et al,1997を参照されたい)。例えば、いくつかの態様において、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端に短い細胞質尾部を保有することができる。いくつかの実施形態において、TCRは、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体の不変タンパク質と関連している。特に明記しない限り、「TCR」という用語は、その機能的なTCRフラグメントを包含すると理解されるべきである。この用語はまた、αβ型またはγδ型のTCRを含む無傷または完全長のTCRを包含する。
【0069】
したがって、本明細書の目的のために、TCRへの言及は、任意のTCR、またはMHC分子に結合した特異的抗原ペプチド、すなわちMHC-ペプチド複合体に結合するTCRの抗原結合部分などの機能的フラグメントを含む。TCRの「抗原結合部分」または抗原結合フラグメントは互換的に使用することができ、TCRの構造ドメインの一部を含み、それでも完全なTCRが結合する抗原(例えば、MHC-ペプチド複合体)に結合する分子を指す。場合によっては、抗原結合部分は、特異的MHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分な、TCRの可変α鎖および可変β鎖などのTCRの可変ドメインを含み、一般に、各鎖は、3つの相補性決定領域を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、TCR鎖の可変ドメインは、ループまたは免疫グロブリンに類似した相補性決定領域(CDR)の形成に関与し、TCR分子の結合部位を形成することによって抗原認識を付与し、ペプチド特異性を決定し、ペプチド特異性を決定する。通常、免疫グロブリンと同様に、CDRはフレームワーク領域(FR)によって分離される(例えば、Jores et al.,1990;Chothia et al.,1988;Lefranc et al.,2003を参照されたい)。いくつかの実施形態において、CDR3はプロセシングされた抗原の認識に関与する主要なCDRであり、アルファ鎖のCDR1も抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されており、ベータ鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2はMHC分子を認識すると考えられている。いくつかの実施形態において、β鎖の可変領域は、さらなる超可変(HV4)領域を含むことができる。
【0071】
いくつかの実施形態において、TCR鎖は、定常ドメインを含む。例えば、免疫グロブリンと同様に、TCR鎖(例えば、a鎖、β鎖)の細胞外部分は、N末端に2つの免疫グロブリンドメイン、可変ドメイン(例えば、VaまたはVp;典型的には、Kabatの番号付け、Kabat et al.,‘‘Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,Public Health Service National Institutes of Health,1991,5th ed.に基づくアミノ酸1~116)と、細胞膜に隣接して1つの定常ドメイン(例えば、a-鎖定常ドメインまたはCa、典型的にはKabatに基づくアミノ酸117~259、β鎖定常ドメインまたはCp、典型的にはKabatに基づくアミノ酸117~295)とを含み得る。例えば、場合によっては、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメイン、およびCDRを含む2つの膜遠位可変ドメインを含む。TCRドメインの定常ドメインには、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、2つの鎖の間に連結を形成する短い接続配列が含まれている。いくつかの実施形態において、TCRは、TCRが定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含むように、α鎖およびβ鎖のそれぞれに追加のシステイン残基を有し得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは正に帯電している。場合によっては、TCR鎖に細胞質尾部が含まれている。場合によっては、この構造により、TCRがCD3などの他の分子と結合できるようになる。例えば、膜貫通領域を有する定常ドメインを含むTCRは、タンパク質を細胞膜に固定し、CD3シグナル伝達装置または複合体の不変サブユニットと結合させることができる。
【0073】
一般に、CD3は、哺乳類の3つの異なる鎖(γ、δ、およびε)とζ鎖とを有することができる多タンパク質複合体である。例えば、哺乳類では、複合体はCD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖およびCD3ζ鎖のホモ二量体を含むことができる。CD3γ、CD3δおよびCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーと関連性が高い細胞表面タンパク質である。CD3γ、CD3δおよびCD3ε鎖の膜貫通領域は負に帯電しており、このことが、これらの鎖が正に帯電したT細胞受容体鎖と結合可能にする特性である。CD3γ、CD3δおよびCD3ε鎖の細胞内尾部にはそれぞれ、免疫受容体チロシン系活性化モチーフまたはITAMとして知られる単一の保存モチーフが含まれているが、各CD3ζ鎖は3つ有している。一般的に、ITAMはTCR複合体のシグナル伝達能力に関与している。これらのアクセサリー分子は、負に帯電した膜貫通領域を有し、TCRから細胞内にシグナルを伝播する役割を果たす。CD3鎖およびζ鎖はTCRとともに、T細胞受容体複合体として知られているものを形成する。
【0074】
いくつかの実施形態において、TCRは、2つの鎖αおよびβ(または任意選択でγおよびδ)のヘテロ二量体であっても、または単鎖TCR構築体であってもよい。いくつかの実施形態において、TCRは、例えば、1または複数のジスルフィド結合によって連結された2つの別個の鎖(αおよびβ鎖またはγおよびδ鎖)を含むヘテロ二量体である。いくつかの実施形態において、標的抗原(例えば、がん抗原)に対するTCRが特定され、細胞に導入される。いくつかの実施形態において、TCRをコードする核酸は、公的に入手可能なTCR DNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などによって、さまざまな供給源から得ることができる。いくつかの実施形態において、TCRは、生物学的供給源から、例えば、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマなどの細胞から、または他の公的に入手可能な供給源から得られる。いくつかの実施形態において、T細胞は、in vivoで単離された細胞から得ることができる。いくつかの実施形態において、高親和性T細胞クローンは、患者から単離することができ、TCRが単離される。いくつかの実施形態において、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンであり得る。いくつかの実施形態において、標的抗原に対するTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、すなわちHLA)で操作されたトランスジェニックマウスにおいて生成されている。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurst et al.,2009およびCohen et al.,2005を参照されたい)。いくつかの実施形態において、ファージディスプレイは、標的抗原に対するTCRを単離するために使用される(例えば、Varela-Rohena et al.,2008およびLi,2005を参照されたい)。いくつかの実施形態において、TCRまたはその抗原結合部分は、TCRの配列の知識から合成的に作製することができる。
【0075】
本開示のCARおよびTCRは、1つ以上の特定の抗原を標的とする。遺伝子操作された抗原受容体によって標的とされる抗原の中には、養子細胞療法によって標的とされる疾患、状態、または細胞型に関連して発現されるものある。疾患および状態の中には、増殖性、腫瘍性および悪性の疾患および障害があり、これには、リンパ腫、白血病および/または骨髄腫、例えば、B細胞性、T細胞性および骨髄性の白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫などの血液がん、免疫系のがんを含むがんおよび腫瘍が含まれる。いくつかの実施形態において、抗原は、正常または非標的の細胞もしくは組織と比較して、疾患または病態の細胞、例えば、腫瘍細胞または病原性細胞上で選択的に発現または過剰発現される。他の実施形態において、抗原は、正常細胞上で発現されるか、および/または操作された細胞上で発現される。
【0076】
任意の適切な抗原が本方法において標的とされ得る。抗原は、場合によっては、あるがん細胞に関連し得るが、非がん性細胞には関連し得ない。例示的な抗原には、限定するものではないが、感染性病原体、自己/自己抗原、腫瘍/がん関連抗原、および腫瘍新生抗原由来の抗原分子が含まれる(Linnemann et al.,2015)。特定の態様において、抗原には、CD19、EBNA、CD123、HER2、CA-125、TRAIL/DR4、CD20、CD70、CD38、trop2、HLA-G、CD123、CLL1、がん胎児性抗原、アルファフェトプロテイン、CD56、AKT、Her3、表皮腫瘍抗原、CD319(CS1)、ROR1、葉酸結合タンパク質、HIV-1外被糖タンパク質gp120、HIV-1外被糖タンパク質gp41、CD5、CD23、CD30、HERV-K、IL-11Rα、κ鎖、λ鎖、CSPG4、CD33、CD47、CLL-1、U5snRNP200、CD200、BAFF-R、BCMA、CD99、p53、変異p53、Ras、変異ras、c-Myc、細胞質セリン/スレオニンキナーゼ(例えば、A-Raf、B-RafおよびC-Raf、サイクリン依存性キナーゼ)、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、MART-1、メラノーマ関連抗原、BAGE、DAM-6、-10、GAGE-1、-2、-8、GAGE-3、-4、-5、-6、-7B、NA88-A、MC1R、mda-7、gp75、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、チロシン関連タンパク質、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)、TRK受容体、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、ウィルムス腫瘍抗原(WT1)、AFP、-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HAGE、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、BCR-ABL、インターフェロン調節因子4(IRF4)、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RAR、腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー1(TACSTD1)TACSTD2、受容体チロシンキナーゼ(例えば、表皮成長因子受容体(EGFR)(特に、EGFRvIII)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR))、VEGFR2、細胞質チロシンキナーゼ(例えば、srcファミリー、syk-ZAP70ファミリー)、インテグリン結合キナーゼ(ILK)、シグナル伝達兼転写活性化因子STAT3、STATSおよびSTATE、低酸素誘導因子(例えば、HIF-1およびHIF-2)、核因子-カッパB(NF-B)、Notch受容体(例えば、Notch1~4)、NY ESO1、c-Met、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)、WNT、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)およびそれらの調節サブユニット、PMSA、PR-3、MDM2、メソテリン、腎細胞がん-5T4、SM22-アルファ、炭酸脱水素酵素I(CAI)およびIX(CAIX)(G250としても知られる)、STEAD、TEL/AML1、GD2、プロテイナーゼ3、hTERT、肉腫転座切断点(sarcoma translocation breakpoint)、EphA2、ML-IAP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、GD3、フコシルGM1、メソテリアン、PSCA、sLe、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GLoboH、NY-BR-1、RGsS、SAGE、SART3、STn、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン、TIE2、Page4、MAD-CT-1、FAP、MAD-CT-2、fos関連抗原1、CBX2、CLDN6、SPANX、TPTE、ACTL8、ANKRD30A、CDKN2A、MAD2L1、CTAG1B、SUNC1、およびLRRN1が含まれる。抗原の配列の例は、当技術分野で公知であり、例えば、GenBank(登録商標)データベースでは:CD19(受託番号NG_007275.1)、EBNA(受託番号NG_002392.2)、WT1(受託番号NG_009272.1)、CD123(受託番号NC_000023.11)、NY-ESO(受託番号NC_000023.11)、EGFRvIII(受託番号NG_007726.3)、MUC1(受託番号NG_0029383.1)、HER2(受託番号NG_007503.1)、CA-125(受託番号NG_055257.1)、WT1(受託番号NG_009272.1)、Mage-A3(受託番号NG_013244.1)、Mage-A4(受託番号NG_013245.1)、Mage-A10(受託番号NC_000023.11)、TRAIL/DR4(受託番号NC_000003.12)および/またはCEA(受託番号NC_000019.10)である。
【0077】
腫瘍関連抗原は、例として、前立腺がん、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、腎臓がん、中皮腫、卵巣がん、肝臓がん、脳がん、骨がん、胃がん、脾臓がん、精巣がん、子宮頚がん、肛門がん、胆嚢がん、甲状腺がん、またはメラノーマのがんに由来し得る。例示的な腫瘍関連抗原または腫瘍細胞由来抗原には、MAGE1、3およびMAGE4(または国際特許公開第WO99/40188号に開示されているものなどの他のMAGE抗原);PRAME;BAGE;RAGE、Lage(NY ESO1とも呼ばれる);SAGE;およびHAGEまたはGAGEが含まれる。腫瘍抗原のこれらの非限定的な例は、メラノーマ、肺がん、肉腫、および膀胱がんなどの広範囲の腫瘍型で発現される。例えば、米国特許第6,544,518号明細書を参照されたい。前立腺がん腫瘍関連抗原には、例えば、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺酸性リン酸塩、NKX3.1、および前立腺の6回膜貫通上皮抗原(STEAP)が含まれる。
【0078】
他の腫瘍関連抗原としては、Plu-1、HASH-1、HasH-2、CriptoおよびCriptinが挙げられる。さらに、腫瘍抗原は、多くのがんの治療に有用な、全長ゴナドトロピンホルモン放出ホルモン(GnRH)、短い10アミノ酸長のペプチドなどの自己ペプチドホルモンであり得る。
【0079】
抗原は、テロメラーゼ酵素、サバイビン、メソセリン、変異ras、bcr/abl再配列、Her2/neu、変異型または野生型p53、シトクロムP450 1B1などの腫瘍細胞で変異した遺伝子、または正常細胞と比較して腫瘍細胞で異なるレベルで転写された遺伝子に由来するエピトープ領域またはエピトープペプチド、およびN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-Vなどの異常に発現したイントロン配列;骨髄腫およびB細胞リンパ腫で特有のイディオタイプを生成する免疫グロブリン遺伝子のクローン再配列;ヒトパピローマウイルスタンパク質E6およびE7などの腫瘍ウイルスプロセスに由来するエピトープ領域またはエピトープペプチドを含む腫瘍抗原;エプスタインバーウイルスタンパク質LMP2;がん胎児性抗原およびα-フェトプロテインなどの腫瘍選択的発現を示す非変異がん胎児性タンパク質を含むこともできる。
2.自殺遺伝子
【0080】
特定の実施形態において、自殺遺伝子は、その使用を制御し、所望の事象および/または時間での細胞療法の終了を可能にするために、抗体併用療法と併せて利用される。自殺遺伝子は、必要に応じて形質導入細胞の死を誘発する目的で形質導入細胞に使用される。本開示に包含されるベクターを有するように改変された本開示の細胞は、1つ以上の自殺遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書で使用される「自殺遺伝子」という用語は、プロドラッグまたは他の薬剤の投与時に、その宿主細胞を殺す化合物への遺伝子産物の転移をもたらす遺伝子として定義される。他の実施形態において、自殺遺伝子は、所望の場合、自殺遺伝子産物を標的化する薬剤(抗体など)によって標的化される遺伝子産物をコードする。
【0081】
場合によっては、細胞療法を受けている、および/または細胞療法を受けたことがある個体が、サイトカイン放出症候群、神経毒性、アナフィラキシー/アレルギー、および/またはオンターゲット/オフ腫瘍毒性(例として)などの1つ以上の有害事象の1つ以上の症状を示すか、または差し迫った場合を含む1つ以上の症状を有するリスクがあると考えられる場合、細胞療法は、任意の種類の1つ以上の自殺遺伝子の利用に供され得る。自殺遺伝子の使用は、治療のための計画されたプロトコルの一部であり得るか、またはその使用が必要であると認識された場合にのみ使用され得る。場合によっては、細胞療法はもはや必要とされないということで、自殺遺伝子またはそれからの遺伝子産物を標的とする(1または複数の)薬剤の使用によってその療法は終了する。
【0082】
自殺遺伝子の利用は、個体に対する少なくとも1つの有害事象の発症時に誘発され得、その有害事象は、細胞療法の開始時から継続的であってもなくてもよい日常的なモニタリング時を含む任意の手段によって認識され得る。(1または複数の)有害事象は、検査および/または試験時に検出され得る。個体がサイトカイン放出症候群(サイトカインストームとも称され得る)を有する場合、該個体は、例えば、(1または複数の)炎症性サイトカイン(単に例として:インターフェロン-ガンマ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、IL-10、IL-6およびTNF-アルファ)の上昇;発熱;疲労;低血圧症;低酸素症、頻脈;悪心;毛細血管漏出;心/腎/肝機能障害;またはそれらの組み合わせを有し得る。個体が神経毒性を有する場合、該個体は、錯乱、譫妄状態、形成不全および/または発作を有し得る。場合によっては、個体を、サイトカイン放出症候群の発症および/または重症度に関連するマーカー(例えば、C反応性タンパク質、IL-6、TNF-αおよび/またはフェリチンなど)について試験する。
【0083】
自殺遺伝子の例としては、操作された非分泌性(膜結合型を含む)腫瘍壊死因子(TNF)-アルファ変異体ポリペプチド(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT/US19/62009を参照されたい)が挙げられ、これらは、TNF-アルファ変異体に結合する抗体の送達によって影響を受け得る。使用できる自殺遺伝子/プロドラッグの組み合わせの例は、単純ヘルペスウイルス-チミジンキナーゼ(HSV-tk)とガンシクロビル、アシクロビルまたはFIAU;オキシドレダクターゼとシクロヘキシミド;シトシンデアミナーゼと5-フルオロシトシン;チミジンキナーゼチミジン酸キナーゼ(Tdk::Tmk)とAZT;ならびにデオキシシチジンキナーゼとシトシンアラビノシドである。大腸菌プリンヌクレオシドホスホリラーゼは、プロドラッグである6-メチルプリンデオキシリボシドを毒性プリン6-メチルプリンに変換するいわゆる自殺遺伝子であり、これを利用可能である。他の自殺遺伝子には、例として、CD20、CD52、誘導性カスパーゼ9、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)、シトクロムp450酵素(CYP)、カルボキシペプチダーゼ(CP)、カルボキシルエステラーゼ(CE)、ニトロレダクターゼ(NTR)、グアニンリボシルトランスフェラーゼ(XGRTP)、グリコシダーゼ酵素、メチオニン-α、γ-リアーゼ(MET)、およびチミジンホスホリラーゼ(TP)が含まれる。
【0084】
特定の実施形態において、CARをコードするベクター、または本明細書に包含されるNK細胞中の任意のベクターは、1つ以上の自殺遺伝子を含む。自殺遺伝子は、CARと同じベクター上にあってもなくてもよい。自殺遺伝子がCARと同じベクター上に存在する場合、自殺遺伝子とCARとは、例えば、IRESまたは2Aエレメントによって分離され得る。
3.サイトカイン
【0085】
いくつかの実施形態において、NK細胞を発現する細胞は、1つ以上の異種サイトカインを発現するように操作され、および/または1つ以上の異種サイトカインの正常発現を上方制御するように操作される。細胞は、1つ以上のサイトカインについて他の遺伝子と同じベクター上に形質導入またはトランスフェクトされても、されなくてもよい。
【0086】
1つ以上のサイトカインは、例えば、操作された抗原受容体および/または自殺遺伝子とは別個のポリペプチドとしてベクターから共発現され得る。例えば、インターロイキン-15(IL-15)は組織が制限されており、病理学的条件下でのみ、血清中に任意のレベルで、または全身的に観察される。IL-15は、養子療法に望ましいいくつかの属性を保有する。IL-15は、ナチュラルキラー細胞の発生および細胞増殖を誘導し、腫瘍常在細胞の機能抑制を緩和することで確立された腫瘍の根絶を促進し、活性化誘導細胞死(AICD)を阻害する恒常性サイトカインである。IL-15に加えて、他のサイトカインが想定される。これらには、限定するものではないが、サイトカイン、ケモカイン、およびヒトへの適用に使用される細胞の活性化および増殖に寄与する他の分子が含まれる。IL-15を発現するNK細胞は、注入後の生存に有用な、継続的な支持サイトカインシグナル伝達が可能である。
【0087】
特定の実施形態において、細胞は、1つ以上の外因的に提供されるサイトカインを発現する。一例として、サイトカインは、IL-15、IL-12、IL-2、IL-18、IL-21、IL-23、GMCSF、またはそれらの組み合わせである。サイトカインは、細胞内の発現ベクターから発現されるので、NK細胞に外因的に提供され得る。代替の場合では、細胞中の内因性サイトカインは、サイトカインの(1または複数の)プロモーター部位での遺伝子組換えなどの、内因性サイトカインの発現の調節の操作によって上方制御される。サイトカインが発現構築物において細胞に提供される場合、サイトカインは、自殺遺伝子および/またはCARと同じベクターによりコードされ得る。いくつかの実施形態において、本開示は、CARとIL-15、および任意選択的に自殺遺伝子との共利用に関する。
4.外因性遺伝子のノックアウトまたはノックダウン
【0088】
本開示のNK細胞生成方法は、NK細胞中の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の内因性遺伝子を除去するための、NK細胞の遺伝子編集を含み得る。場合によっては、遺伝子編集は、1つ以上の異種抗原受容体を発現するNK細胞で起こるが、他の場合では、遺伝子編集は、異種抗原受容体を発現しないが、少なくともいくつかの場合で、最終的に1つ以上の異種抗原受容体を発現するNK細胞で起こる。特定の実施形態において、遺伝子編集されたNK細胞は増殖NK細胞である。
【0089】
特定の場合には、NK細胞の1つ以上の内因性遺伝子は改変され、例えば、発現が部分的または完全に低下するように発現が破壊される。特定の場合には、1つ以上の遺伝子は、本開示の方法を使用してノックダウンまたはノックアウトされる。特定の場合には、複数の遺伝子が、本開示の方法と同じ工程でノックダウンまたはノックアウトされる。NK細胞において編集される遺伝子は、いかなる種類のものであってもよいが、特定の実施形態において、その遺伝子は、遺伝子産物がNK細胞の活性および/または増殖を阻害する遺伝子である。特定の場合には、NK細胞において編集される遺伝子は、NK細胞が腫瘍微小環境においてより効果的に機能することを可能にする。特定の場合には、遺伝子は、NKG2A、SIGLEC-7、LAG3、TIM3、CISH、FOXO1、TGFBR2、TIGIT、CD96、ADORA2、NR3C1、PD1、PDL-1、PDL-2、CD47、SIRPA、SHIP1、ADAM17、RPS6、4EBP1、CD25、CD40、IL21R、ICAM1、CD95、CD80、CD86、IL10R、TDAG8、CD5、CD7、SLAMF7、CD38、LAG3、TCR、ベータ2-ミクログロブリン、HLA、CD73およびCD39のうちの1つ以上である。特定の実施形態において、TGFBR2遺伝子は、NK細胞においてノックアウトまたはノックダウンされる。
【0090】
いくつかの実施形態において、遺伝子編集は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)を介した改変など、1つ以上のDNA結合核酸を使用して実施される。例えば、改変は、クラスター化された規則的に間隔を空けた短いパリンドロームリピート(CRISPR)およびCRISPR関連(Cas)タンパク質を使用して実施することができる。一般に、「CRISPRシステム」とは、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現または活性の指向に関与する転写産物および他のエレメントを総称して指し、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性な部分的tracrRNA)、tracr-メイト配列(「ダイレクトリピート」および内因性CRISPRシステムに関連してtracrRNAによりプロセシングされた部分的ダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内因性CRISPRシステムに関連して「スペーサー」とも呼ばれる)、および/またはCRISPR遺伝子座由来の他の配列および転写産物を含む。CRISPRシステムを利用する方法は、当技術分野において周知である。
F.凍結保存
【0091】
特定の場合には、本開示のNK細胞および/または抗体は、少なくとも1つの凍結保護剤、血清(ヒトまたは動物血清)または非血清の血清代替物(ヒト血清または動物血清ではない)、ならびに少なくとも1つのサイトカインおよび/または少なくとも1つの成長因子を含む凍結保存培地組成物中に保存される。場合によっては、凍結保護剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、グリセロール、ヒドロキシエトールデンプン(hydroxyethol starch)、またはそれらの組み合わせである。非血清の代替物は、少なくとも血小板溶解物および/または血液製剤溶解物(例えば、ヒト血清アルブミン)を含む任意の種類のものであり得る。1つ以上(2つまたはそれ以上を含む)のサイトカインが利用される組成物の実施形態において、サイトカインは、天然または組換えまたは合成のタンパク質であり得る。サイトカインの少なくとも1つは、食品医薬品局(FDA)承認のサイトカインであり得る。サイトカインおよび成長因子の例としては、少なくともIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-22、インターフェロン、腫瘍壊死因子、幹細胞因子、FLT3-リガンド、APRIL、トロンボポエチン、エリスロポエチン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。血清の実施形態については、血清は、ヒト血清(ヒトAB血清を含む)またはウシ血清などの動物由来血清であり得る。DMSOおよび他の凍結保護剤が利用される場合、それらは組成物の4~10%、4~6%、4~8%、5~10%、5~8%、6~10%、6~8%、8~10%などを含み得る。血清が用いられる実施形態において、血清は、組成物の5~99%、5~95%、5~90%、5~85%、5~80%、5~75%、5~70%、5~65%、5~60%、5~55%、5~50%、5~45%、5~40%、5~35%、5~30%、5~25%、5~20%、5~15%、5~10%、10~99%、10~95%、10~90%、10~85%、10~80%、10~75%、10~70%、10~65%、10~60%、10~55%、10~50%、10~45%、10~40%、10~35%、10~30%、10~25%、10~20%、10~15%、20~99%、20~95%、20~90%、20~85%、20~80%、20~75%、20~70%、20~65%、20~60%、20~55%、20~50%、20~45%、20~40%、20~35%、20~30%、20~25%、30~99%、30~95%、30~90%、30~85%、30~80%、30~75%、30~70%、30~65%、30~60%、30~55%、30~50%、30~45%、30~40%、30~35%、40~99%、40~95%、40~90%、40~85%、40~80%、40~75%、40~70%、40~65%、40~60%、40~55%、40~50%、40~45%、50~99%、50~95%、50~90%、50~85%、50~80%、50~75%、50~70%、50~65%、50~60%、50~55%、60~99%、60~95%、60~90%、60~85%、60~80%、60~75%、60~70%、60~65%、70~99%、70~95%、70~90%、70~85%、70~80%、70~75%、80~99%、80~95%、80~90%、80~85%、90~99%、90~95%、または95~99%を構成する。組成物は、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%、またはそれ以下の血清を含み得る。特定の実施形態において、組成物は、組成物中任意の濃度であってよい血小板溶解物を含むが、ある実施形態において、血小板溶解物は、組成物の5~99%、5~95%、5~90%、5~85%、5~80%、5~75%、5~70%、5~65%、5~60%、5~55%、5~50%、5~45%、5~40%、5~35%、5~30%、5~25%、5~20%、5~15%、5~10%、10~99%、10~95%、10~90%、10~85%、10~80%、10~75%、10~70%、10~65%、10~60%、10~55%、10~50%、10~45%、10~40%、10~35%、10~30%、10~25%、10~20%、10~15%、20~99%、20~95%、20~90%、20~85%、20~80%、20~75%、20~70%、20~65%、20~60%、20~55%、20~50%、20~45%、20~40%、20~35%、20~30%、20~25%、30~99%、30~95%、30~90%、30~85%、30~80%、30~75%、30~70%、30~65%、30~60%、30~55%、30~50%、30~45%、30~40%、30~35%、40~99%、40~95%、40~90%、40~85%、40~80%、40~75%、40~70%、40~65%、40~60%、40~55%、40~50%、40~45%、50~99%、50~95%、50~90%、50~85%、50~80%、50~75%、50~70%、50~65%、50~60%、50~55%、60~99%、60~95%、60~90%、60~85%、60~80%、60~75%、60~70%、60~65%、70~99%、70~95%、70~90%、70~85%、70~80%、70~75%、80~99%、80~95%、80~90%、80~85%、90~99%、90~95%、または95~99%を構成する。組成物は、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%、またはそれ以下の血小板溶解物を含み得る。
【0092】
組成物は、特定の濃度の、サイトカインおよび/または成長因子を含む成分を有し得る。特定の場合には、例えばIL-2、IL-21および/またはIL-15を含む任意のサイトカインが、特定の濃度で組成物中に存在する。IL-2は、例えば、1~5000、1~1000、1~500、1~100、100~5000、100~500、500~5000、500~1000、または1000~5000U/mLの濃度で存在し得る。特定の場合には、IL-2は、少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900もしくは1000U/mL、またはそれ以下の濃度で組成物中に存在する。特定の実施形態において、IL~21は、10~3000、10~2000、10~1000、10~500、10~100、100~3000、100~2000、100~1000、500~3000、500~2000、500~1000、1000~3000、1000~2000または2000~3000ng/mLの濃度で組成物中に存在する。IL-21は、組成物中少なくとも1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、750、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750または3000ng/mL、またはそれ以下の濃度であり得る。IL~15は、1~2000、1~1000、1~500、1~100、100~2000、100~1000、100~500、500~2000、500~1000、または1000~2000ng/mLの濃度で組成物中に存在し得る。IL-15は、少なくとも10、50、100、500、1000、1500、もしくは2000ng/mL、またはそれ以下の濃度で組成物中に存在し得る。
【0093】
少なくとも1つの凍結保護剤、血清または非血清の血清代替物、および少なくとも1つのサイトカインおよび/または少なくとも1つの成長因子を含む本明細書に包含される組成物は、それぞれ任意の種類の複数の免疫細胞および/または幹細胞をさらに含み得る。特定の実施形態において、細胞は、NK細胞、T細胞、B細胞、成熟骨髄または末梢血細胞に由来するNKT細胞、腫瘍細胞株(例えば、NK92または他のNK株)などの細胞株、造血幹細胞、人工多能性幹細胞、骨髄、末梢血、皮膚、脂肪組織もしくはそれらの組み合わせに由来し得るMSC(文献では代替的に「間葉系幹細胞」および「間葉系間質細胞」と呼ばれる細胞の集団)、またはそれらの混合物である。NK細胞が利用される実施形態において、NK細胞は、増殖したNK細胞であっても、そうでなくてもよい。本開示の実施形態はまた、本開示の任意の組成物および適切な薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を包含する。
【0094】
特定の実施形態において、任意の工程の本開示の細胞は、凍結保存培地用の以下の特定の製剤中に保存される:
【表1】
【0095】
特定の濃度の特定の製剤の例は、以下のように利用することができる:
【表2】
II.使用方法
【0096】
本開示の実施形態は、医学的疾患または障害を治療または予防するための、本明細書で提供されるNK細胞と抗体とを含む組成物の使用方法に関する。この方法は、治療有効量の、負荷され、任意選択的に予備活性化され、任意選択的に増殖されたNK細胞と抗体とを対象に投与すること、ならびにそれにより、疾患のリスクを低下させること、疾患の重症度を低下させること、および/または疾患の発症を遅延させることを含む、対象における疾患を治療または予防することを含む。本開示のある実施形態において、がんまたは感染症は、免疫応答を誘発するNK細胞集団と抗体とを含む組成物の移入によって治療される。少なくともいくつかの場合では、炎症促進性サイトカインの放出のために、NK細胞は、抗炎症性腫瘍微小環境を逆転させ、アクセサリー免疫細胞の分化、活性化、および/または悪性腫瘍部位への動員を促進することによって適応免疫応答を増加させ得る。
【0097】
本治療法が有用であるがんとしては、任意の悪性細胞型、例えば、固形腫瘍または血液腫瘍に見られるものなどが挙げられる。例示的な固形腫瘍としては、限定するものではないが、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、メラノーマ、前立腺および乳房からなる群から選択される器官の腫瘍を挙げることができる。例示的な血液腫瘍には、骨髄、T細胞またはB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、骨髄腫などの腫瘍が含まれる。本明細書で提供される方法を使用して治療することができるがんのさらなる例には、限定するものではないが、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、および肺の扁平上皮がんを含む)、腹膜がん、胃がん(gastricまたはstomach cancer)(胃腸がんおよび胃腸間質がんを含む)、膵臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾液腺がん、腎臓がんまたは腎がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、さまざまな種類の頭頸部がんおよびメラノーマが含まれる。
【0098】
がんは、これらに限定するものではないが、具体的には以下の組織型であり得る:新生物、悪性;がん腫;がん腫、未分化;巨細胞がんおよび紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;毛母がん(pilomatrix carcinoma);移行上皮がん;乳頭状移行上皮がん;腺がん;ガストリノーマ、悪性;胆管がん;肝細胞がん;肝細胞がんと胆管がんの混合型;索状腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫性ポリープの腺がん;腺がん、家族性大腸ポリポーシス;固形がん;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺がん(branchiolo-alveolar adenocarcinoma);乳頭状腺がん;色素嫌性がん;好酸性がん;好酸性腺がん;塩基好性がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞腺がん;乳頭状・濾胞腺がん;非被包性硬化性がん;副腎皮質がん;類内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液嚢胞腺がん;粘液性嚢胞腺がん;粘液性腺がん;印環細胞がん;浸潤性乳管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;パジェット病、乳房;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生随伴腺がん(adenocarcinoma w/squamous metaplasia);(胸腺腫、悪性);卵巣間質腫、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;男性ホルモン産生細胞腫、悪性;セルトリ細胞がん;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性メラノーマ;無色素性メラノーマ;表在増殖型メラノーマ;悪性黒子メラノーマ;末端黒子型メラノーマ;結節性メラノーマ;巨大色素性母斑の悪性メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣性横紋筋肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;がん肉腫;間葉細胞腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性がん腫;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛がん;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポシ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽腫;神経芽腫;網膜芽細胞腫;嗅神経腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫濾胞性;菌状息肉腫;他の指定された非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫;低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽細胞性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ワンデルシュトレームマクログロブリン血症;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;有毛細胞白血病;慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);および慢性骨髄芽球性白血病。
【0099】
特定の実施形態は、白血病の治療方法に関する。白血病は血液または骨髄のがんであり、血球、通常は白血球細胞(white blood cell)(白血球(leukocyte))の異常な増殖(倍加による産生)を特徴とする。これは、血液新生物と呼ばれる幅広い疾患グループの一部である。白血病は、広範囲の疾患を網羅する広義の用語である。白血病は、臨床的および病理学的に急性型と慢性型に分けられる。
【0100】
急性白血病は、未熟な血球の急速な増殖を特徴とする。この密集は、骨髄が健康な血球を産生できなくする。白血病の急性型は、小児および若年成人に起こり得る。実際、米国では、白血病は、他の種類の悪性疾患より一般的な小児の死因である。急性白血病では、悪性細胞の急速な進行および蓄積のために即時治療が必要であり、悪性細胞はその後、血流中にこぼれ、身体の他の器官に広がる。中枢神経系(CNS)の関与はまれであるが、この疾患は時として脳神経麻痺を引き起こし得る。慢性白血病は、比較的成熟しているが依然として異常な血球の過剰な増大によって区別される。典型的には、進行に数ヶ月から数年を要し、細胞は正常細胞よりもはるかに高速で産生され、血液中に多くの異常な白血球をもたらす。慢性白血病は主に高齢者に発生するが、理論的にはどの年齢層でも発生し得る。急性白血病は直ちに治療しなければならないが、慢性型は治療の最大有効性を確実にするために治療前にしばらく監視されることがある。
【0101】
さらに、この疾患は、正常にはリンパ球を形成するように進むタイプの骨髄細胞においてがん性変化が起こったことを示すリンパ球性またはリンパ芽球性と、正常には赤血球、一部のタイプの白血球および血小板を形成するように進むタイプの骨髄細胞においてがん性変化が起こったことを示す骨髄性または骨髄球性とに分類される(リンパ系細胞対骨髄系細胞を参照されたい)。
【0102】
急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病またはALLとしても知られている)は、小児における最も一般的なタイプの白血病である。この疾患はまた、成人、特に65歳以上の成人にも影響を及ぼす。慢性リンパ性白血病(CLL)は、55歳以上の成人が最も頻繁に罹患する。これは若年成人に発生することもあるが、小児に影響を及ぼすことはほとんどない。急性骨髄性白血病(急性骨髄球性白血病またはAMLとしても知られている)は、小児よりも成人に多く発症する。このタイプの白血病は、以前は「急性非リンパ性白血病」と呼ばれていた。慢性骨髄性白血病(CML)は主に成人に発症する。非常に少数の小児もこの疾患を発症する。
【0103】
リンパ腫は、リンパ球(脊椎動物の免疫系における白血球の一種)に源を発するがんの一種である。リンパ腫には多くの種類がある。米国国立衛生研究所によると、リンパ腫は米国におけるがんの全症例の約5%を占め、特にホジキンリンパ腫は米国におけるがんの全症例の1%未満を占める。リンパ系は身体の免疫系の一部であるため、HIV感染症または特定の薬物もしくは薬品などにより免疫系が弱まった患者もリンパ腫の罹病率が高い。
【0104】
本開示のある実施形態において、NK細胞と抗体とを含む組成物は、がんまたは感染症を有する個体など、それを必要とする個体に送達される。少なくともいくつかの症例では、細胞は個体の免疫系を強化して、それぞれのがんまたは病原性細胞を攻撃することができる。場合によっては、個体には、NK細胞と抗体とを含む組成物の1つ以上の用量が提供される。個体にNK細胞/抗体の2つ以上の用量が提供される場合、投与間の期間は、個体における増殖のための時間を与えるのに十分でなければならず、特定の実施形態において、用量間の期間は1、2、3、4、5、6、7日、またはそれ以上である。
【0105】
予備活性化され(任意選択的)、増殖されたNK細胞の供給源は、任意の種類のものであり得るが、特定の実施形態において、細胞は、例えば、臍帯血、末梢血、ヒト胚性幹細胞または人工多能性幹細胞のバンクから得られる。治療効果に適した用量は、例えば、好ましくは一連の投与サイクルにおいて、用量あたり少なくとも105個または約105~約1012個の細胞であり得る。例示的な投薬レジメンは、0日目に少なくとも約105細胞から開始し、例えば、患者内用量漸増スキームを開始してから数週間以内に約1012細胞の目標用量まで漸増的に増加させる、漸増用量の4回の1週間の投薬サイクルからなる。適切な投与様式には、静脈内、皮下、腔内(例えばリザーバアクセスデバイスによる)、腹腔内、および腫瘍塊への直接注射が含まれる。
【0106】
本発明の方法に従って生成されたNK細胞と抗体とを含む組成物は、実験的および治療的使用を含む多くの潜在的使用を有する。特に、そのような細胞集団は、望ましくないまたは不適切な免疫応答を抑制するのに有用であることが想定される。そのような方法では、少数のNK細胞を患者から取り出し、次いでex vivoで操作および増殖させ、その後それらを患者に再注入する。このようにして治療され得る疾患の例は、例えば同種移植寛容のために、免疫活性の抑制が望ましい自己免疫疾患および状態である。治療方法は、哺乳動物からNK細胞を得ること、本明細書に記載の本方法の方法に従ってNK細胞をex vivoで増殖させること、十分な条件下でNK細胞を抗体に曝露すること、ならびに増殖したNK細胞/抗体を含む組成物を治療される哺乳動物に投与すること、を含む。
【0107】
本開示の医薬組成物は、単独で、またはがんの治療に有用な他の十分に確立された薬剤と組み合わせて使用することができる。単独で送達されるか、または他の薬剤と組み合わせて送達されるかにかかわらず、本開示の医薬組成物は、特定の効果を達成するために、様々な経路を介して哺乳動物、特にヒトの体内の様々な部位に送達され得る。当業者は、投与のために2つ以上の経路を使用することができるが、特定の経路が別の経路よりも迅速かつ効果的な反応を提供できることを認識すると思われる。例えば、皮内送達は、メラノーマの治療のためには吸入よりも有利に使用され得る。局所送達または全身送達は、製剤の体腔への適用または点滴注入、エアロゾルの吸入または吹送を含む投与によって、または筋肉内、静脈内、門脈内、肝内、腹膜、皮下もしくは皮内投与を含む非経口導入によって達成することができる。
【0108】
一実施形態において、対象は自己免疫疾患を有する。自己免疫疾患の非限定的な例には、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アディソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、腹腔多発皮膚炎(celiac spate-dermatitis)、慢性疲労免疫機能不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素疾患、クローン病、円板状狼瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレイブス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、若年性関節炎、扁平苔癬、エリテマトーデス(lupus erthematosus)、メニエール病、混合性結合組織疾患、多発性硬化症、1型または免疫介在性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群(微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症または膜性腎症(mebranous nephropathy)など)、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性軟骨炎、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛、多発筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフ・マン症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、潰瘍性大腸群、ぶどう膜炎、脈管炎(結節性多発動脈炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞動脈炎またはヘルペス状皮膚炎脈管炎など)、白斑およびウェゲナー肉芽腫症が含まれる。したがって、本明細書に開示される方法を使用して治療することができる自己免疫疾患のいくつかの例には、限定するものではないが、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、脈管炎、または乾癬が含まれる。対象はまた、喘息などのアレルギー性障害を有し得る。
【0109】
さらに別の実施形態において、対象は、移植された臓器または幹細胞のレシピエントであり、本開示の増殖されたNK細胞/抗体は、拒絶を予防および/または治療するために使用される。特定の実施形態において、対象は、移植片対宿主病を有するか、または発症するリスクがある。GVHDは、血縁または非血縁いずれかのドナー由来の幹細胞を使用する、または含む任意の移植の可能性のある合併症である。GVHDには、急性と慢性の2種類がある。急性GVHDは、移植後最初の3ヶ月以内に現れる。急性GVHDの兆候には、手足の赤みがかった皮膚の発疹が含まれ、この発疹は、皮膚の剥離や水疱を伴って広がり、より重症になる可能性がある。急性GVHDは胃や腸にも影響を与える可能性があり、その場合、けいれん、吐き気、下痢が見られる。皮膚と眼の黄変(黄疸)は、急性GVHDが肝臓に影響を及ぼしていることを示す。慢性GVHDは、その重症度に基づいてランク付けされ、ステージ/グレード1は軽症であり、ステージ/グレード4は重症である。慢性GVHDは、移植後3ヶ月以降に発症する。慢性GVHDの症状は、急性GVHDの症状と似ているが、さらに、慢性GVHDは、目の粘液腺、口の唾液腺、胃の内壁や腸を滑らかにする腺にも影響を与える可能性がある。本明細書に開示のNK細胞の集団のいずれかを利用することができる。移植された臓器の例には、腎臓、肝臓、皮膚、膵臓、肺および/または心臓などの固形臓器移植物、または膵島、肝細胞、筋芽細胞、骨髄、または造血幹細胞もしくは他の幹細胞などの細胞移植物が含まれる。移植物は、顔の組織などの複合移植物の可能性もある。免疫抑制性CD19+細胞などのNK細胞は、移植前、移植と同時に、および/または移植後に抗体と共に投与することができる。いくつかの実施形態において、NK細胞と抗体とを含む組成物は、移植前、例えば、移植の少なくとも1時間、少なくとも12時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、または少なくとも1ヶ月前に投与される。1つの特定の非限定的な例では、治療有効量のNK細胞と抗体とを含む組成物の投与は、移植の3~5日前に行われる。
【0110】
移植を受けている患者に投与されるNK細胞/抗体は、移植された材料に特異的な抗原で投与前に感作され得る。この実施形態によれば、移植レシピエントは、移植された材料に対する免疫/炎症応答が低下し、したがって、移植された組織の拒絶の可能性が最小限に抑えられる。同様に、移植片対宿主病の治療に関して、NK細胞を宿主に特異的な抗原で感作することができる。この実施形態によれば、レシピエントは、自己抗原に対する免疫/炎症応答が低下すると思われる。
【0111】
さらなる実施形態において、NK細胞と抗体とを含む治療有効量の組成物の対象への投与は、対象の炎症を治療または阻害する。したがって、本方法は、NK細胞と抗体とを含む治療有効量の組成物を対象に投与して、炎症過程を阻害することを含む。炎症性障害の例には、限定するものではないが、喘息、脳炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性障害、敗血症性ショック、肺線維症、未分化脊椎関節症、未分化関節症、関節炎、炎症性骨溶解、および慢性ウイルスまたは細菌感染に起因する慢性炎症が含まれる。本明細書に開示の方法はまた、アレルギー性障害を治療するために使用することができる。
【0112】
NK細胞と抗体とを含む組成物の投与は、免疫抑制または炎症の阻害が望まれるときはいつでも、例えば、疾患または炎症の最初の徴候または症状において利用することができる。これらは、疼痛、浮腫、高熱などの一般的なものであってもよく、または(1または複数の)罹患器官の機能障害に関連する特異的な徴候または症状であってもよい。例えば、腎移植拒絶では、血清クレアチニンレベルの上昇があり得るが、GVHDでは、発疹があり得、喘息では、息切れおよび喘鳴があり得る。
【0113】
NK細胞と抗体とを含む組成物の投与はまた、目的の対象における免疫媒介疾患を予防するために利用することができる。例えば、NK細胞と抗体とを含む組成物は、移植レシピエントとなる対象に移植前に投与することができる。別の例では、NK細胞と抗体とを含む組成物は、T細胞枯渇なしに同種骨髄移植を受けている対象に投与される。さらなる例では、NK細胞と抗体とを含む組成物は、糖尿病の家族歴を有する対象に投与することができる。他の例では、NK細胞と抗体とを含む組成物は、喘息発作を予防するために、喘息を有する対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、NK細胞と抗体とを含む治療有効量の組成物は、症状に先立って対象に投与される。NK細胞と抗体とを含む組成物の投与は、NK細胞と抗体とを含む組成物を含まない他の治療を受けた患者と比較して、その後の免疫学的事象または症状(喘息発作など)の罹病率または重症度の低下、または患者の生存の改善をもたらす。
【0114】
ある実施形態において、NK細胞と抗体とを含む組成物は、第2の治療剤と組み合わせて投与される。例えば、第2の治療剤は、T細胞、免疫調節剤、モノクローナル抗体、化学療法剤、(1または複数の)ホルモン、任意の種類の薬物、手術、放射線などを含み得る。非限定的な例では、免疫調節剤はレナリドミドであり、モノクローナル抗体はリツキシマブ、オファツムマブ、またはルミリキシマブであり、化学療法剤はフルダラビンまたはシクロホスファミドである。
【0115】
本開示の組成物は単位剤形で提供することができ、各投与単位、例えば注射は、所定量の組成物を単独でまたは他の活性薬剤と適切に組み合わせて含有する。本明細書で使用される単位剤形という用語は、ヒトおよび動物対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の効果を生じるのに十分な量で計算された所定量の本開示の組成物を単独でまたは他の活性剤と組み合わせて、必要に応じて薬学的に許容される希釈剤、担体またはビヒクルと併せて含有する。本開示の単位剤形の仕様は、特定の対象における医薬組成物に関連する特定の薬力学に依存する。
【0116】
望ましくは、有効量または十分な数の単離された形質導入NK細胞が組成物中に存在し、腫瘍のサイズを減少させるために、または腫瘍の成長もしくはそうでなければそのような治療の非存在をもたらす再成長を排除するために、長期の特異的な抗腫瘍応答が確立されるように対象に導入される。望ましくは、対象に再導入されたNK細胞の量は、NK細胞が存在しない他の同じ条件と比較した場合、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または100%の腫瘍サイズ減少を引き起こす。
【0117】
したがって、投与されるNK細胞と抗体とを含む組成物の量は、投与経路を考慮に入れるべきであり、所望の治療応答を達成するために、NK細胞と抗体とを含む組成物が十分な数で導入されるような量であるべきである。さらに、本明細書に記載の組成物に含まれる各活性薬剤の量(例えば、接触される各細胞あたりの量または特定の体重あたりの量)は、用途の違いによって変動し得る。一般に、NK細胞の濃度は、望ましくは、治療されている対象において、少なくとも約1×106~約1×1012個のNK細胞、さらにより望ましくは約1×107~約5×1010個のNK細胞を提供するのに十分であるべきであるが、任意の適切な量、上は例えば5×108個を超える細胞、または下は例えば1×107個未満の細胞のいずれかを利用することができる。投与スケジュールは、十分に確立された細胞ベースの治療(例えば、米国特許第4,690,915号明細書を参照されたい)に基づくことができ、または代替の連続注入戦略を採用することができる。
【0118】
これらの値は、本方法の実施のために本開示の方法を最適化する際に施術者によって利用される、NK細胞と抗体とを含む組成物の範囲の一般的な指針を提供する。本明細書におけるそのような範囲の列挙は、より多いまたはより少ない量の成分の使用を排除するものでは決してなく、それは特定の用途において是認され得る。例えば、実際の用量およびスケジュールは、組成物が他の医薬組成物と組み合わせて投与されるかどうかに応じて、または薬物動態、薬物消長および代謝の個体差に応じて変動し得る。当業者は、特定の状況の緊急性に従って任意の必要な調整を容易に行うことができる。
III.抗体
【0119】
本開示の態様は、一定のNK細胞も含む組成物における抗体またはその機能的フラグメントの使用に関する。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプのインタクトな免疫グロブリン、または抗原結合ドメインなどを介した標的抗原への特異的結合についてインタクトな抗体と競合することができるそのフラグメントを指し、キメラ、ヒト化、完全ヒト、単一特異性、および多重特異性(少なくとも二重特異性および三重特異性、またはそれ以上)の抗体を含む。本明細書で使用される場合、「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は互換的に使用され、IgG、IgD、IgE、IgA、IgM、および関連タンパク質、ならびに抗原結合活性を保持する抗体CDRドメインを含むポリペプチドを含む、動物の免疫応答の一部として機能するいくつかのクラスの構造的に関連するタンパク質のいずれかを指す。特定の実施形態において、抗体はscFvを含む。
【0120】
「抗原」という用語は、抗体などの選択的結合剤によって結合され得る分子または分子の一部を指す。抗原は、異なる抗体と相互作用することができる1つ以上のエピトープを保有し得る。
【0121】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に結合することによって免疫応答を誘発することができる分子の任意の領域または部分を含む。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニル基などの化学的に活性な表面基を含むことができ、特異的な三次元構造特性および/または特異的な電荷特性を有し得る。概して、特定の標的抗原に特異的な抗体は、複合混合物内の標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。
【0122】
所与のポリペプチドのエピトープ領域は、X線結晶学、核磁気共鳴分光法、部位特異的突然変異誘発マッピング、タンパク質ディスプレイアレイを含む、当技術分野で周知の多くの異なるエピトープマッピング技術を使用して同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols,(Johan Rockberg and Johan Nilvebrant,Ed.,2018)Humana Press,New York,N.Y.を参照されたい。そのような技術は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,708,871号明細書;Geysen et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998-4002(1984);Geysen et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:178-182(1985);Geysen et al.Molec.Immunol.23:709-715(1986)に記載されており、例えば、Epitope Mapping Protocols、上記を参照されたい。さらに、タンパク質の抗原性領域は、標準的な抗原性および疎水性プロットを使用して予測および同定することもできる。
【0123】
インタクトな抗体は、一般に、2つの完全長重鎖および2つの完全長軽鎖から構成されるが、いくつかの例では、より少ない鎖、例えば重鎖のみを含み得るラクダ科動物に天然に存在する抗体を含み得る。本明細書に開示される抗体は、単一の供給源のみに由来してもよく、または「キメラ」であってもよく、すなわち、抗体の異なる部分が2つの異なる抗体に由来してもよい。例えば、可変領域またはCDR領域は、ラットまたはマウス源に由来し得るが、定常領域は、ヒトなどの異なる動物源に由来する。抗体または結合フラグメントは、ハイブリドーマ中で、組換えDNA技術によって、またはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断によって生成され得る。別段示されない限り、「抗体」という用語は、その誘導体、変異体、フラグメントおよびムテインを含み、その例は以下に記載される(Sela-Culang et al.Front Immunol.2013;4:302;2013)。
【0124】
「軽鎖」という用語は、完全長軽鎖、および結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメントを含む。完全長軽鎖は、約25,000ダルトンの分子量を有し、可変領域ドメイン(本明細書ではVLと略記)および定常領域ドメイン(本明細書ではCLと略記)を含む。軽鎖には、カッパ(κ)およびラムダ(λ)として同定される2つの分類がある。「VLフラグメント」という用語は、CDRを含む軽鎖可変領域の全部または一部を含む、モノクローナル抗体の軽鎖のフラグメントを意味する。VLフラグメントは、軽鎖定常領域配列をさらに含むことができる。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。
【0125】
「重鎖」という用語は、完全長重鎖、および結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメントを含む。完全長重鎖は、約50,000ダルトンの分子量を有し、可変領域ドメイン(本明細書ではVHと略記)および3つの定常領域ドメイン(本明細書ではCH1、CH2、およびCH3と略記)を含む。「VHフラグメント」という用語は、CDRを含む重鎖可変領域の全部または一部を含む、モノクローナル抗体の重鎖のフラグメントを意味する。VHフラグメントは、重鎖定常領域配列をさらに含むことができる。重鎖定常領域ドメインの数は、アイソタイプに依存する。VHドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、CHドメインはカルボキシ末端にあり、CH3は-COOH末端に最も近い。抗体のアイソタイプは、IgM、IgD、IgG、IgA、またはIgEであり得、存在する5つの分類の重鎖:それぞれミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、またはイプシロン(ε)鎖によって定義される。IgGは、限定するものではないが、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むいくつかのサブタイプを有する。IgMサブタイプには、IgM1およびIgM2が含まれる。IgAサブタイプには、IgA1およびIgA2が含まれる。
【0126】
抗体は、任意のアイソタイプもしくは分類の全免疫グロブリン、キメラ抗体、または2つ以上の抗原に対する特異性を有するハイブリッド抗体であり得る。それらはまた、ハイブリッドフラグメントを含むフラグメント(例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fvなど)であり得る。免疫グロブリンはまた、天然、合成、または特異的抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する遺伝子操作されたタンパク質を含む。抗体という用語は、以下のような免疫グロブリンの遺伝子操作されたまたは他の方法で改変された形態を含む:
【0127】
「単量体」という用語は、ただ1つのIg単位を含む抗体を意味する。単量体は、抗体の基本的な機能単位である。「二量体」という用語は、抗体重鎖の定常ドメイン(Fcまたは結晶化可能なフラグメント領域)を介して互いに結合した2つのIg単位を含む抗体を意味する。複合体は、連結(J)鎖タンパク質によって安定化され得る。「多量体」という用語は、抗体重鎖の定常ドメイン(Fc領域)を介して互いに結合した2つ以上のIg単位を含む抗体を意味する。複合体は、連結(J)鎖タンパク質によって安定化され得る。
【0128】
「二価抗体」という用語は、2つの抗原結合部位を含む抗体を意味する。2つの結合部位は同じ抗原特異性を有し得るか、または2つの抗原結合部位が異なる抗原特異性を有することを意味する二重特異性であり得る。
【0129】
二重特異性抗体は、2つ以上の異なるエピトープに対する異なる結合部位を有する2つのパラトープを有する抗体のクラスである。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、バイパラトピックであり得、二重特異性抗体は、同じ抗原からの異なるエピトープを特異的に認識し得る。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、「ナノボディ」と呼ばれる一対の異なる単一ドメイン抗体から構築することができる。単一ドメイン抗体は、軟骨魚類およびラクダ科動物から供給され、改変される。ナノボディは、当業者に典型的な技術を使用してリンカーによって一緒に接合することができる。ナノボディの選択および接合のためのそのような方法は、PCT公開番号第2015044386A1号、第2010037838A2号、およびand Bever et al.,Anal Chem.86:7875-7882(2014)に記載されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0130】
二重特異性抗体は、全IgG、Fab’2、Fab’PEG、ダイアボディとして、または代替的にscFvとして構築することができる。ダイアボディおよびscFvは、可変ドメインのみを使用してFc領域なしで構築することができ、抗イディオタイプ反応の影響を潜在的に低減する。二重特異性抗体は、限定するものではないが、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの連結を含む様々な方法によって産生され得る。例えば、Songsivilai and Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315-321(1990);Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547-1553(1992)に記載されており、これらはそれぞれ、その全体が参照により具体的に組み込まれる。
【0131】
ある態様において、抗原結合ドメインは、異なる抗原に結合するVHおよびVL領域対との多量体化によって多重特異性または異種特異性であり得る。例えば、抗体は、(a)細胞表面抗原、(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体、または(c)少なくとも1つの他の成分と結合または相互作用し得る。したがって、態様には、限定するものではないが、二重特異性、三重特異性、四重特異性および他の多重特異性の抗体、またはエピトープおよび他の標的、例えばエフェクター細胞上のFc受容体に指向されるその抗原結合フラグメントが含まれ得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、多重特異性抗体を使用し、当技術分野で公知の日常的な方法を使用して、短い柔軟なポリペプチド鎖を介して直接連結することができる。そのような例の1つは、VHおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現され、同一鎖上のドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを利用し、それによってドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させて2つの抗原結合部位を作り出す二価二重特異性抗体であるダイアボディである。リンカー官能性は、トリアボディ、テトラボディおよび高次抗体多量体の実施形態に適用可能である。(例えば、Hollinger et al.,Proc Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993);Polijak et al.,Structure 2:1121-1123(1994);Todorovska et al.,J.Immunol.Methods 248:47-66(2001)を参照されたい)。
【0133】
二重特異性全抗体とは対照的に、二重特異性ダイアボディはまた、それらを大腸菌において容易に構築および発現させることができるため、有利であり得る適切な結合特異性のダイアボディ(および抗体フラグメントなどの他のポリペプチド)は、ファージディスプレイ(国際公開第94/13804号)を使用してライブラリーから容易に選択することができる。ダイアボディの一方のアームが、例えば、あるタンパク質に対する特異性を伴って一定に保たれるならば、他方のアームが変化させられ、適切な特異性の抗体が選択されるライブラリーが作製され得る。二重特異性全抗体は、Ridgeway et al.,(Protein Eng.,9:616-621,1996)およびKrah et al.,(N Biotechnol.39:167-173,2017)に記載されているような代替操作方法によって作製することもでき、これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0134】
ヘテロコンジュゲート抗体は、異なる特異性を有する2つの共有結合したモノクローナル抗体から構成される。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,010,902号明細書を参照されたい。
【0135】
抗原のエピトープに高い特異性で結合する抗体分子のFvフラグメントの一部は、本明細書では「パラトープ」と呼ばれる。パラトープは、抗原認識を容易にするために抗原のエピトープと接触するアミノ酸残基からなる。抗体の2つのFvフラグメントの各々は、2つの可変ドメインVHおよびVLから二量体構成で構成される。各可変ドメインの一次構造は、フレームワーク領域(FR)によって分離され、隣接される3つの超可変ループを含む。超可変ループは、任意の哺乳動物由来の抗体分子の中で最も高い一次配列可変性の領域である。超可変ループという用語は、「相補性決定領域(CDR)」という用語と互換的に使用されることがある。超可変ループ(またはCDR)の長さは抗体分子間で異なる。所与の哺乳動物由来のすべての抗体分子のフレームワーク領域は、高い一次配列類似性/コンセンサスを有する。フレームワーク領域のコンセンサスは、フレームワーク領域およびフレームワーク領域の間に散在する超可変ループ(またはCDR)の両方を同定するために当業者によって使用され得る。超可変ループには、ポリペプチド内のそれらの位置およびそれらが存在するドメインを区別する識別名が与えられる。VLドメイン中のCDRは、L1、L2、およびL3として同定され、L1は最も遠位端に生じ、L3はCLドメインに最も近くに生じる。CDRには、CDR-1、CDR-2、およびCDR-3という名前を付けることもできる。L3(CDR-3)は、一般に、所与の生物によって産生されるすべての抗体分子の中で最も高い可変性の領域である。CDRは、一次構造内に直線的に配置され、フレームワーク領域によって互いに分離されたポリペプチド鎖の領域である。VL鎖のアミノ末端(N末端)末端はFR1と命名される。FR2として識別される領域は、L1超可変ループとL2超可変ループとの間に生じる。FR3はL2超可変ループとL3超可変ループとの間に生じ、FR4領域はCLドメインに最も近い。この構造および命名法は、H1、H2およびH3として同定される3つのCDRを含むVH鎖についても繰り返される。可変ドメイン中のアミノ酸残基の大部分、またはFvフラグメント(VHおよびVL)は、フレームワーク領域の一部(約85%)である。抗体分子の三次元構造または三次構造は、フレームワーク領域が分子のより内部にあり、構造の大部分に分子の外面(extrenal surface)上でCDRを提供している。
【0136】
これらの領域の各々を構成する正確なアミノ酸を同定するためのいくつかの方法が開発されており、当業者が使用することができる。これは、いくつかの複数の配列アラインメント方法およびアルゴリズムのいずれかを使用して行うことができ、それにより、フレームワーク領域を構成する保存されたアミノ酸残基が同定され、したがって、長さが異なり得るがフレームワーク領域間に位置するCDRが同定される。抗体のCDRを同定するために、3つの一般的に使用される方法が開発されている:Kabat(T.T.Wu and E.A.Kabat,“AN ANALYSIS OF THE SEQUENCES OF THE VARIABLE REGIONS OF BENCE JONES PROTEINS AND MYELOMA LIGHT CHAINS AND THEIR IMPLICATIONS FOR ANTIBODY COMPLEMENTARITY,” J Exp Med,vol.132,no.2,pp.211-250,Aug.1970)に記載);Chothia(C.Chothia et al.,“Conformations of immunoglobulin hypervariable regions,” Nature,vol.342,no.6252,pp.877-883,Dec.1989に記載);ならびにIMGT(M.-P.Lefranc et al.,“IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Developmental&Comparative Immunology,vol.27,no.1,pp.55-77,Jan.2003に記載)。これらの方法はそれぞれ、可変領域を構成するアミノ酸残基を同定するための独自の番号付けシステムを含む。ほとんどの抗体分子では、抗原のエピトープと実際に接触するアミノ酸残基はCDRに存在するが、場合によってはフレームワーク領域内の残基が抗原結合に寄与する。
【0137】
当業者は、抗体のパラトープを決定するためにいくつかの方法のいずれかを使用することができる。これらの方法には、1)抗体可変領域のアミノ酸配列の化学的性質およびエピトープの組成に基づく抗体/エピトープ結合相互作用の三次構造のコンピュータによる予測;2)水素-重水素交換および質量分析;3)ポリペプチドの全長から複数の重複するペプチドフラグメントを生成し、エピトープに対するこれらのペプチドの結合親和性を評価する、ポリペプチドフラグメント化およびペプチドマッピングアプローチ;4)哺乳動物の遺伝子をコードする抗体Fabフラグメントがファージのコートに組み込まれるようにバクテリオファージによって発現される、抗体ファージディスプレイライブラリー分析、が含まれる。次いで、Fab発現ファージのこの集団を、固定化されているか、または異なる外因性発現系によって発現され得る抗原と相互作用させる。非結合Fabフラグメントを洗い流し、それにより、抗原に結合した特異的結合Fabフラグメントのみを残す。結合Fabフラグメントを容易に単離し、それらをコードする遺伝子を決定することができる。このアプローチは、Fvフラグメントまたは特異的VHおよびVLドメインを適宜含む、Fabフラグメントのより小さな領域にも使用することができる。
【0138】
ある態様において、親和性成熟抗体は、それらの(1または複数の)変更を有さない親抗体と比較して、標的抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす、その1つ以上のCDRにおける1つ以上の改変によって増強される。ある親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の手順によって産生され、例えば、Marks et al.,Bio/Technology 10:779(1992)には、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を記載しており、ファージディスプレイに使用されるCDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発が、Rajpal et al.,PNAS.24:8466-8471(2005)and Thie et al.,Methods Mol Biol.525:309-22(2009)によって、Tiller et al.,Front.Immunol.8:986(2017)で実証されているような計算方法と併せて記載されている。
【0139】
キメラ免疫グロブリンは、異なる種に由来する融合遺伝子の産物であり;「ヒト化」キメラは、一般に、ヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域(FR)を有し、1つ以上のCDRは非ヒト源由来である。
【0140】
ある態様において、重鎖および/または軽鎖の一部は、別の特定の種からの対応する配列、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する対応する配列と同一または相同であり、(1または複数の)鎖の残りは、別の種に由来する抗体、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびに所望の生物学的活性を示す限りそのような抗体のフラグメントの対応する配列と同一または相同である。米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851(1984)。キメラ抗体に関連する方法については、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1985)を参照されたい。これらの各々は、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる。CDRグラフト化は、例えば、米国特許第6,180,370号明細書、同5,693,762号明細書、同5,693,761号明細書、同5,585,089号明細書、および同5,530,101号明細書に記載されており、これらはすべて、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0141】
いくつかの実施形態において、非ヒト種からの抗体ポリペプチド配列を最小化することにより、キメラ抗体の機能が最適化され、免疫原性が低下する。非ヒト抗体の非抗原認識領域由来の特定のアミノ酸残基は、ヒト抗体またはアイソタイプ中の対応する残基と相同になるように改変される。一例としては、「CDRグラフト」抗体であり、抗体は、特定の種からの、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する1つ以上のCDRを含み、(1または複数の)抗体鎖の残りは、別の種に由来する、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である。ヒトにおける使用のために、非ヒト免疫グロブリン由来の軽鎖および重鎖の両方の分散領域に関するCDR1、CDR2および部分CDR3から構成されるV領域をヒト抗体フレームワーク領域にグラフトし、ヒト抗体の天然に存在する抗原受容体を非ヒトCDRで置き換える。いくつかの例において、対応する非ヒト残基は、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域残基を置き換える。さらに、ヒト化抗体は、性能をさらに改良するために、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含み得る。例えば、Jones et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593(1992);Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma and Immunol.1:105(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23;1035(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428(1994);Verhoeyen et al.,Science 239:1534-36(1988)を参照されたい。
【0142】
イントラボディは、細胞外空間で抗原に結合する分泌抗体とは対照的に、細胞内抗原に結合する細胞内局在免疫グロブリンである。
【0143】
ポリクローナル抗体調製物は、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む。ポリクローナル抗体を産生するために、宿主(例えば、ウサギまたはヤギ)を、抗原または抗原フラグメントで、一般的にはアジュバントを用い、必要に応じて担体に結合させて免疫化する。続いて、抗原に対する抗体を宿主の血清から回収する。ポリクローナル抗体は、抗体に単一特異性を付与する抗原に対して親和性精製することができる。
【0144】
モノクローナル抗体または「mAb」は、排他的な親細胞からの均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、該集団は、少量存在し得る天然に存在する突然変異を除いて同一である。各モノクローナル抗体は、単一の抗原決定基に指向するものである。
【0145】
機能的抗体フラグメントおよび抗原結合フラグメントを利用してもよい。ある態様は、炎症性メディエーターに結合するおよび/または炎症性メディエーターを中和する抗体フラグメントなどの抗体フラグメントに関する。機能的抗体フラグメントという用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体の抗原結合フラグメントを含む。これらのフラグメントは、重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)の様々な配列から構成され、いくつかの実施形態において、重鎖定常領域1(CH1)および軽鎖定常領域(CL)を含む。いくつかの実施形態において、これらは、重鎖2(CH2)および3(CH3)ドメインから構成されるFc領域を欠いている。抗原結合フラグメントおよびその改変の実施形態は以下を含み得る:(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインで構成されるFabフラグメントタイプ;(ii)VHおよびCH1ドメインで構成されるFdフラグメントタイプ;(iii)VHおよびVLドメインで構成されるFvフラグメントタイプ;(iv)単一のVHまたはVLドメインで構成される単一ドメインフラグメントタイプdAb(Ward,1989;McCafferty et al.,1990;Holt et al.,2003);(v)単離された相補性決定領域(CDR)領域。このような用語は、例えば以下に記載されている:Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,NY(1989);Molec.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers,R.A.(ed.),New York:VCH Publisher,Inc.);Huston et al.,Cell Biophysics,22:189-224(1993);Pluckthun and Skerra,Meth.Enzymol.,178:497-515(1989)およびDay,E.D.,Advanced Immunochemistry,2d ed.,Wiley-Liss,Inc.New York,N.Y.(1990);Antibodies,4:259-277(2015)。この段落の引用はすべて参照により組み込まれる。
【0146】
抗原結合フラグメントはまた、軽鎖可変領域由来の正確に、少なくとも、または多くとも1、2、または3個の相補性決定領域(CDR)を保持する抗体のフラグメントを含む。Fc領域(またはそのCH2もしくはCH3領域)へのCDR含有配列の融合は、この定義の範囲内に含まれ、例えば、Fc領域に直接的または間接的に融合されたscFvが本明細書に含まれる。
【0147】
Fabフラグメントという用語は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインを含有する、抗体の一価抗原結合フラグメントを意味する。Fab’フラグメントという用語は、Fabフラグメントよりも大きい、モノクローナル抗体の一価抗原結合フラグメントを意味する。例えば、Fab’フラグメントは、VL、VH、CLおよびCH1ドメインならびにヒンジ領域の全部または一部を含む。F(ab’)2フラグメントという用語は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab’フラグメントを含む、モノクローナル抗体の二価抗原結合フラグメントを意味する。F(ab’)2フラグメントは、例えば、2つのVHおよびVLドメインの全部または一部を含み、2つのCLおよびCH1ドメインの全部または一部をさらに含み得る。
【0148】
「Fdフラグメント」という用語は、CDRを含むVHの全部または一部を含む、モノクローナル抗体の重鎖のフラグメントを意味する。Fdフラグメントは、CH1領域配列をさらに含むことができる。
【0149】
Fvフラグメントという用語は、VLおよびVHの全部または一部を含み、CLおよびCH1ドメインが非存在の、モノクローナル抗体の一価抗原結合フラグメントを意味する。VLおよびVHは、例えばCDRを含む。一本鎖抗体(sFvまたはscFv)は、VLおよびVH領域が柔軟なリンカーによって連結されて、抗原結合フラグメントを形成する単一のポリペプチド鎖を形成しているFv分子である。一本鎖抗体は、国際特許出願公開第WO88/01649号および米国特許第4,946,778号明細書および米国特許第5,260,203号明細書において詳細に考察されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。(scFv)2という用語は、C末端に、ヒンジ領域によってsFvから分離されたオリゴマー化ドメインを含む、二価または二重特異性sFvポリペプチド鎖を意味する(Pack et al.1992)。オリゴマー化ドメインは、自己会合aヘリックス、例えばロイシンジッパーを含み、これはさらなるジスルフィド結合によってさらに安定化され得る。(scFv)2フラグメントは、「ミニ抗体」または「ミニボディ」としても公知である。
【0150】
単一ドメイン抗体は、VHまたはVLドメインのみを含む抗原結合フラグメントである。いくつかの例では、2つ以上のVH領域をペプチドリンカーと共有結合させて、二価ドメイン抗体が作製される。二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同じ抗原または異なる抗原を標的とし得る。
【0151】
場合によっては、フラグメント結晶化可能領域Fcが利用される。Fc領域は、抗体のCH2およびCH3ドメインを含む2つの重鎖フラグメントを含む。2つの重鎖フラグメントは、2つ以上のジスルフィド結合によって、およびCH3ドメインの疎水性相互作用によって一緒に保持される。本明細書で使用される「Fcポリペプチド」という用語は、抗体のFc領域に由来するポリペプチドの天然およびムテイン形態を含む。二量体化を促進するヒンジ領域を含むそのようなポリペプチドの切断形態が含まれる。いくつかの実施形態において、サイトカイン(本明細書で言及されるものを含む)を組み込んだ抗体を(例えば、TRIKEと共に)利用することができる。
IV.医薬組成物
【0152】
本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に分散された、有効量のNK細胞と抗体とを含む組成物を含む。「薬学的または薬理学的に許容される」という句は、必要に応じて、例えばヒトなどの動物に投与されたときに副作用、アレルギー反応、または他の有害な反応を生じない分子実体および組成物を指す。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.Lippincott Williams and Wilkins,2005によって例示されるように、本組成物を含む医薬組成物の調製は、本開示に照らして当業者に公知であり、当該文献は参照により本明細書に組み込まれる。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調製物が、FDA生物学的基準局が要求する無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の基準を満たす必要があることは理解されよう。
【0153】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料などの材料およびそれらの組み合わせが含まれ、このことは当業者に公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329、を参照されたい)。任意の従来の担体が活性成分と適合しない場合を除き、医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0154】
医薬組成物は、固体、液体またはエアロゾル形態で投与されるべきかどうか、および注射のような投与経路のために無菌である必要があるかどうかに応じて、異なるタイプの担体を含み得る。本開示の組成物は、静脈内投与、皮内投与、経皮投与、髄腔内投与、動脈内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、膣内投与、直腸内投与、局所投与、筋肉内投与、皮下投与、粘膜投与、経口投与、局所投与(topically)、局所投与(locally)、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、持続注入、局所灌流浴標的細胞を直接、カテーテルを介して、洗浄液を介して、クリーム中、脂質組成物(例えば、リポソーム)中での投与、または当業者に公知の他の方法もしくは前述の任意の組み合わせによって投与することができる(例えば、参照により本明細書に組込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990を参照されたい)によって投与することができる。
【0155】
NK細胞と抗体とを含む組成物は、遊離塩基、中性または塩形態の組成物に製剤化され得る。薬学的に許容される塩には、必要に応じて、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基を用いて形成されるもの、または、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸もしくはマンデル酸などの有機酸を用いて形成されるものが含まれる。遊離カルボキシル基で形成された塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインなどの有機塩基から誘導することもできる。製剤化に際して、溶液が、投与製剤と適合する様式で、治療上有効な量で投与される。製剤は、注射用溶液などの非経口投与のために製剤化されたもの、または肺への送達のためのエアロゾル、または薬物放出カプセルなどの消化管性投与のために製剤化されたものなどの様々な剤形で容易に投与される。
【0156】
さらに本開示によれば、投与に適した本開示の組成物は、不活性希釈剤を含むか、または含まない薬学的に許容される担体中で提供される。担体は同化可能である必要があり、液体、半固体、すなわちペースト、または固体担体を含む。任意の従来の媒体、薬剤、希釈剤または担体がレシピエントに対して、またはその中に含有される組成物の治療有効性に対して有害である場合を除いて、本発明の方法を実施する際に使用するための投与可能な組成物におけるその使用は適切である。担体または希釈剤の例としては、脂肪、油、水、生理食塩水、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、増量剤など、またはそれらの組み合わせが挙げられる。組成物はまた、1つ以上の成分の酸化を遅らせるための様々な酸化防止剤を含んでもよい。さらに、微生物の作用の防止は、限定するものではないが、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組み合わせを含む様々な抗菌剤および抗真菌剤などの防腐剤によってもたらされ得る。
【0157】
本開示によれば、組成物は、任意の簡便かつ実用的な方法で、すなわち溶液、懸濁液、乳化、混和、カプセル化、吸収などによって担体と組み合わされる。そのような手順は、当業者にとって日常的である。
【0158】
本開示の特定の実施形態において、組成物は、半固体または固体の担体と完全に組み合わされる、または混合される。混合は、粉砕などの任意の好都合な方法で行うことができる。組成物を治療活性の喪失、すなわち胃における変性から保護するために、安定剤を混合過程において添加することもできる。組成物に使用するための安定剤の例としては、緩衝剤、グリシンおよびリジンなどのアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどの炭水化物が挙げられる。
【0159】
さらなる実施形態において、本開示は、NK細胞および抗体と、任意選択的に水性溶媒とを含む組成物を含む医薬脂質ビヒクル組成物の使用に関する。本明細書で使用される場合、「脂質」という用語は、特徴的に水に不溶性であり、有機溶媒で抽出可能な広範囲の物質のいずれかを含むと定義される。この広範なクラスの化合物は当業者に周知であり、「脂質」という用語が本明細書で使用される場合、それはいかなる特定の構造にも限定されない。例としては、長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体を含有する化合物が挙げられる。脂質は、天然に存在するものであってもよく、または合成のもの(すなわち、人によって設計または製造される)であってもよい。しかしながら、脂質は、通常、生体物質である。生体脂質は当技術分野で周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテルおよびエステル結合脂肪酸を有する脂質ならびに重合性脂質、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。当然のことながら、脂質として当業者によって理解される本明細書に具体的に記載されたもの以外の化合物も、本発明の組成物および方法に包含される。
【0160】
当業者は、ナノ粒子または脂質ビヒクル中に組成物を分散させるために用いることができる技術の範囲に精通していると思われる。例えば、NK細胞と抗体とを含む組成物は、当業者に公知の任意の手段によって、脂質を含有する溶液に分散されてもよく、脂質に溶解されてもよく、脂質と乳化されてもよく、脂質と混合されてもよく、脂質と組み合わされてもよく、脂質に共有結合されてもよく、脂質中に懸濁液として含有されてもよく、ミセルもしくはリポソームに含有もしくは複合体化されてもよく、またはそうでなければ脂質もしくは脂質構造と会合されてもよい。分散は、リポソームの形成をもたらしてもよいし、もたらさなくてもよい。
【0161】
動物患者に投与される本開示の組成物の実際の投与量は、体重、状態の重症度、治療される疾患の種類、以前または同時の治療的介入、患者の特発性疾患および投与経路などの物理的および生理学的要因によって決定することができる。投与量および投与経路に応じて、好ましい投与量および/または有効量の投与回数は、対象の応答に従って変動し得る。投与を担当する医師は、いずれにせよ、組成物中の(1または複数の)活性成分の濃度および個々の対象に対する適切な(1または複数の)用量を決定する。
【0162】
ある実施形態において、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の実施形態において、活性化合物は、単位の重量の約2%~約75%、または例えば約25%~約60%、およびその中から導き出せる任意の範囲を含み得る。必然的に、各治療的に有用な組成物中の(1または複数の)活性化合物の量は、化合物の任意の所与の単位用量で適切な投与量が得られるように調製され得る。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品貯蔵寿命、ならびに他の薬理学的考慮事項などの要因は、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、したがって、様々な投与量および治療レジメンが望ましい場合がある。
【0163】
他の非限定的な例では、用量はまた、投与1回当たり約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から約1000mg/kg/体重またはそれ以上、およびその中から導き出せる任意の範囲を含み得る。本明細書に列挙した数から導き出せる範囲の非限定的な例では、上記の数に基づいて、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重などの範囲を投与することができる。
【0164】
本開示のNK細胞と抗体とを含む治療用組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、埋め込み、吸入、髄腔内、心室内、または鼻腔内投与することができる。いくつかの実施形態において、抗生物質が、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、埋め込み、吸入、髄腔内、心室内、または鼻腔内投与される。適切な投与量は、治療される疾患の種類、疾患の重症度および経過、個体の臨床状態、個体の病歴および治療に対する応答、ならびに主治医の裁量に基づいて決定することができる。
【0165】
治療は、様々な「単位用量」を含み得る。単位用量は、所定量の治療用組成物を含むと定義される。投与される量、ならびに特定の経路および製剤は、臨床分野の当業者の決定技能の範囲内である。単位用量は、単回注射として投与される必要はないが、設定期間にわたる連続注入を含み得る。いくつかの実施形態において、単位用量は、単回投与可能な用量を含む。
【0166】
投与される量は、治療回数および単位用量の両方に応じて、所望の治療効果に依存する。有効用量は、特定の効果を達成するのに必要な量を指すと理解される。実際には、ある実施形態において、10mg/kg~200mg/kgの範囲の用量がこれらの薬剤の防御能力に影響を及ぼし得ることが企図される。したがって、用量は、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、および200、300、400、500、1000μg/kg、mg/kg、μg/日、もしくはmg/日、またはその中から導き出せる任意の範囲の用量を含むと企図される。さらに、そのような用量は、1日、および/または複数日、数週、もしくは数ヶ月の間に複数回投与することができる。
【0167】
ある実施形態において、医薬組成物の有効用量は、約1μM~150μMの血中レベルを提供できるものである。別の実施形態において、有効用量は、約4μM~100μM、または約1μM~100μM;または約1μM~50μM;または約1μM~40μM;または約1μM~30μM;または約1μM~20μM;または約1μM~10μM;または約10μM~150μM;または約10μM~100μM;または約10μM~50μM;または約25μM~150μM;または約25μM~100μM;または約25μM~50μM;または約50μM~150μM;または約50μM~100μM(またはその中から導き出せる任意の範囲)の血中レベルを提供する。他の実施形態において、用量は、対象に投与されている治療剤から生じる薬剤の以下の血中レベルを提供することができる:約、少なくとも約、または多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100μMまたはその中の導き出せる任意の範囲。ある実施形態において、対象に投与される治療剤は、体内で代謝されて代謝された治療剤になり、その場合、血中レベルはその薬剤の量を指し得る。あるいは、治療剤が対象によって代謝されない限りでは、本明細書で論じられる血中レベルは、非代謝治療剤を指し得る。
A.消化管性の組成物および製剤
【0168】
本開示の特定の実施形態において、NK細胞と抗体とを含む組成物は、消化管経路を介して投与されるように製剤化される。消化管経路には、組成物が消化管と直接接触している全ての可能な投与経路が含まれる。具体的には、本明細書に開示される医薬組成物は、経口投与、口腔投与、直腸投与、または舌下投与することができる。したがって、これらの組成物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に製剤化されてもよく、または硬殻もしくは軟殻ゼラチンカプセルに封入されてもよく、または錠剤に圧縮されてもよく、または食事の食物に直接組み込まれてもよい。
【0169】
ある実施形態において、活性化合物は、賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、バッカル錠(buccal tables)、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で使用され得る(Mathiowitz et al.,1997;Hwang et al.,1998;米国特許第5,641,515号明細書;同第5,580,579号明細書および同第5,792,451号明細書、それぞれ参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などはまた、以下を含有し得る:結合剤、例えば、トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンまたはそれらの組み合わせなど;賦形剤、例えば、リン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムまたはそれらの組み合わせなど;崩壊剤、例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸またはそれらの組み合わせなど;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムなど;甘味剤、例えばスクロース、ラクトース、サッカリンまたはそれらの組み合わせなど;香味剤、例えばペパーミント、冬緑油、サクランボ香味剤、オレンジ香味剤など。剤形単位がカプセルである場合、それは、上記の種類の材料に加えて、液体担体を含み得る。様々な他の材料が、コーティングとして、または投与単位の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルは、シェラック、糖、またはその両方でコーティングすることができる。剤形がカプセルである場合、それは、上記の種類の材料に加えて、液体担体などの担体を含有し得る。ゼラチンカプセル、錠剤または丸剤は、経腸的にコーティングされ得る。腸溶コーティングは、pHが酸性である胃または上部腸における組成物の変性を防止する。例えば、米国特許第5,629,001号明細書を参照されたい。小腸に到達すると、その中の塩基性pHはコーティングを溶解し、組成物が放出され、特殊な細胞、例えば上皮腸細胞およびパイエル板M細胞によって吸収可能になる。エリキシルのシロップは、甘味剤としての活性化合物スクロース、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにサクランボまたはオレンジ風味などの香味料を含有し得る。当然のことながら、任意の剤形単位を調製する際に使用される任意の材料は、薬学的に純粋であり、使用される量において実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、持続放出の調製物および製剤に組み込むことができる。
【0170】
経口投与のために、本開示の組成物は、代替的に、マウスウォッシュ、歯磨き剤、バッカル錠、経口スプレー、または舌下経口投与製剤の形態に1つ以上の賦形剤と共に組み込まれてもよい。例えば、マウスウォッシュは、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液(Dobell’s Solution))などの適切な溶媒中に必要量の活性成分を組み込んで調製することができる。代替的には、活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび重炭酸カリウムを含有するものなどの経口溶液に組み込まれてもよく、または歯磨き剤中に分散されてもよく、または水、結合剤、研磨剤、香味剤、発泡剤および湿潤剤を含み得る組成物に治療有効量で添加されてもよい。代替的には、組成物は、舌の下に配置され得るか、そうでなければ口の中で溶解され得る錠剤または溶液形態に形作ることができる。
【0171】
他の様式の消化管投与に適したさらなる製剤には、坐剤が含まれる。坐剤は、直腸に挿入するための、通常は薬用の、様々な重量および形状の固体剤形である。挿入後、坐剤は軟化するか、融解するか、または腔液に溶解する。一般に、坐剤の場合、伝統的な担体としては、例えば、ポリアルキレングリコール、トリグリセリドまたはそれらの組み合わせを挙げることができる。ある実施形態において、坐剤は、例えば、約0.5%~約10%、好ましくは約1%~約2%の範囲の活性成分を含有する混合物から形成され得る。
B.非経口の組成物および製剤
【0172】
さらなる実施形態において、組成物は、非経口経路を介して投与され得る。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、消化管を迂回する経路を含む。具体的には、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、限定するものではないが、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、静脈内、髄腔内、脳室内、腫瘍内、皮下、または腹腔内に投与され得る。米国特許第6,613,308号明細書;同第5,466,468号明細書;5,543,158号明細書;同第5,641,515号明細書;および同第5,399,363号明細書(それぞれ、その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる)。
【0173】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中ならびに油中で調製することもできる。保存および使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含有する。注射用途に適した医薬形態には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる(米国特許第5,466,468号明細書;その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる)。すべての場合において、形態は無菌でなければならず、容易な注射性(injectability)が存在する程度に流動性でなければならない。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および/または植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによってもたらされ得る。
【0174】
水溶液での非経口投与の場合、例えば、溶液は、必要に応じて適切に緩衝化されなければならず、液体希釈剤は、まず十分な生理食塩水またはグルコースで等張性にされなければならない。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知である。例えば、1回の投与量を等張性NaCl溶液に溶解し、皮下注入液に添加するか、または提案された注入部位に注射することができる(例えば、‘‘Remington’s Pharmaceutical Sciences’’15th Edition,pages1035-1038および1570-1580を参照されたい)。治療される対象の状態に応じて、投与量のいくらかの変動が必然的に生じると思われる。いずれにせよ、投与の責任者が、個々の対象に対する適切な用量を決定する。さらに、ヒト投与の場合、調製物は、FDA生物学的基準局が要求する無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の基準を満たすべきである。
【0175】
滅菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙した様々な他の成分と共に適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基礎分散媒および上に列挙したものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分+任意の追加の所望の成分の粉末を、あらかじめ滅菌濾過されたその溶液から得る真空乾燥および凍結乾燥技術である。粉末化された組成物は、液体担体、例えば、水または生理食塩水などと、安定化剤を含めて、または含めずに組み合わされる。
C.種々雑多な医薬組成物および製剤
【0176】
本開示の他の特定の実施形態において、NK細胞と抗体とを含む活性化合物組成物は、様々な種々雑多な経路、例えば局所(すなわち、経皮)投与、粘膜投与(鼻腔内、膣内など)および/または吸入による投与のために製剤化され得る。
【0177】
局所投与のための医薬組成物は、軟膏、ペースト、クリームまたは粉末などの医薬用途のために製剤化された活性化合物を含み得る。軟膏は、局所適用のためのすべての油性、吸着性、エマルジョンおよび水溶性ベースの組成物を含むが、クリームおよびローションは、エマルジョン基剤のみを含む組成物である。局所投与される薬品は、皮膚を通じた活性成分の吸着を促進するための浸透促進剤を含有し得る。適切な浸透促進剤としては、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドンおよびルアロカプラム(luarocapram)が挙げられる。局所適用のための組成物のための可能な基剤としては、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリームおよびワセリン、ならびに任意の他の適切な吸収性、エマルジョンまたは水溶性軟膏基剤が挙げられる。局所調製物また、活性成分を保存し、均質な混合物を提供するために、必要に応じて乳化剤、ゲル化剤、および抗菌防腐剤を含み得る。本発明の経皮投与は、「パッチ」の使用も含み得る。例えば、パッチは、1つ以上の活性物質を所定の速度で一定期間にわたって連続的に供給することができる。
【0178】
ある実施形態において、医薬組成物は、点眼剤、鼻腔内スプレー、吸入、および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達され得る。経鼻エアロゾルスプレーを介して組成物を肺に直接送達する方法は、例えば、米国特許第5,756,353号明細書および同第5,804,212号明細書に記載されている。(各々が参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)。同様に、鼻腔内微粒子樹脂(Takenaga et al.,1998)およびリゾホスファチジル-グリセロール化合物(参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる、米国特許第5,725,871号明細書)を使用する薬物の送達もまた、製薬分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号明細書(その全体が参照により本明細書に具体的に組み込まれる)に記載されている。
【0179】
エアロゾルという用語は、液化または加圧のガス噴射剤中に分散された液体粒子の中の微細に分割された固体のコロイド系を指す。吸入用の本発明の典型的なエアロゾルは、液体噴射剤または液体噴射剤と適切な溶媒との混合物中の活性成分の懸濁液からなる。好適な噴射剤としては、炭化水素および炭化水素エーテルが挙げられる。適切な容器は、噴射剤の圧力要件に応じて変化する。エアロゾルの投与は、対象の年齢、体重、ならびに症状の重症度および応答に応じて変化する。
V.併用療法
【0180】
ある実施形態において、本実施形態の組成物および方法は、NK細胞と抗体とを含む組成物に加えてがん治療を含む。追加の治療法は、放射線療法、外科手術(例えば、乳腺腫瘍摘出術および乳房切除術)、化学療法、遺伝子治療、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、ホルモン療法、または前述の組み合わせであり得る。追加の治療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。
【0181】
いくつかの実施形態において、追加の治療は、(1または複数の)小分子酵素阻害剤または(1または複数の)抗転移剤の投与である。いくつかの実施形態において、追加の治療は、副作用制限剤(例えば、制吐剤などの、治療の副作用の発生および/または重症度を軽減することを意図した薬剤)の投与である。いくつかの実施形態において、追加の治療は放射線療法である。いくつかの実施形態において、追加の治療は外科手術である。いくつかの実施形態において、追加の治療は、放射線療法と外科手術との組み合わせである。いくつかの実施形態において、追加の治療はガンマ線照射である。いくつかの実施形態において、追加の治療は、PBK/AKT/mTOR経路を標的とする治療、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、および/または(1または複数の)化学予防剤である。追加の治療は、当技術分野で公知の1つ以上の化学療法剤であり得る。
【0182】
免疫細胞療法(本開示の組成物への追加として)は、免疫チェックポイント療法などの追加のがん治療に関連して、その前、最中、その後、またはさまざまな組み合わせで投与することができる。投与は、同時から数分から数日から数週間の範囲の間隔であり得る。免疫細胞療法が本開示の(1または複数の)組成物とは別に患者に提供される実施形態において、一般に、2つの化合物が患者に対して有利な併用効果を依然として発揮できるように、それぞれの送達時間の間にかなりの期間が過ぎて効力を失わないことを確実にしなければならない。そのような場合、互いに約12~24または72時間以内に、より具体的には、互いに約6~12時間以内に、免疫療法と本開示の組成物とを患者に提供し得ることが企図される。状況によっては、治療期間を大幅に延長して、それぞれの投与の間を数日間(2、3、4、5、6または7)~数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)経過させることが望ましい場合がある。
【0183】
本実施形態の任意の化合物または治療の患者への投与は、薬剤に毒性がある場合はそれを考慮して、そのような化合物の投与のための一般的なプロトコルに従う。したがって、いくつかの実施形態において、併用療法に起因する毒性をモニターする工程が存在する。
A.化学療法
【0184】
多種多様な化学療法剤を、本実施形態に従って使用することができる。「化学療法」という用語は、がんを治療するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、がんの治療において投与される化合物または組成物の意味を内包して使用される。これらの薬剤または薬物は、細胞周期に影響を与えるかどうか、どの段階で影響を与えるかなど、細胞内のそれらの活性様式によって分類される。または、薬剤は、DNAを直接架橋する、DNAに挿入する、または核酸合成に影響を与えることによって染色体および有糸分裂の異常を誘発するその能力に基づいて特徴付けることができる。
【0185】
化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロスホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボクオン、メチュレドーパ、およびウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチルオロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンとブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミドおよびウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1およびカリケアマイシンオメガI1);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連するクロモプロテインエンジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチンおよびゾルビシン;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、プテロプテリンおよびトリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリンおよびチオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビンおよびフロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタンおよびテストトラクトンなどのアンドロゲン;ミトタンおよびトリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビエン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ(tansferase)阻害剤、トランスプラチナ、および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が含まれる。
B.放射線療法
【0186】
DNA損傷を引き起こし、広く使用されてきた他の因子には、一般に、γ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位元素の直接送達として公知のものが含まれる。マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号明細書および同第4,870,287号明細書)、およびUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も企図されている。これらの因子はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製と修復、および染色体のアセンブリと維持に対する広範囲の損傷に影響を与える可能性が最も高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)の1日線量50~200レントゲンから単一線量2000~6000レントゲンまでの範囲である。放射性同位元素の線量範囲は大きく異なり、該同位元素の半減期、放出される放射線の強度と種類、および腫瘍細胞による取り込みに依存する。
C.免疫療法
【0187】
当業者は、追加の免疫療法(本開示の細胞療法を除く)が、実施形態の方法と組み合わせて、または併せて使用できることを理解すると思われる。がん治療に関連して、免疫療法は、一般に、がん細胞を標的にして破壊するための免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存している。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))はそのような例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体が単独で治療のエフェクターとして機能する場合もあれば、他の細胞を動員して実際に細胞殺滅に影響を与える場合もある。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)とコンジュゲートすることができ、標的化剤として役立つ。または、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を運ぶリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には、TGF-βR2のノックダウンまたはノックアウトを有するもの以外の細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0188】
抗体薬物複合体は、がん治療薬の開発への画期的なアプローチとして登場した。抗体薬物複合体(ADC)は、細胞殺滅薬に共有結合しているモノクローナル抗体(MAb)で構成されている。このアプローチは、抗原標的に対するMAbの高い特異性と非常に強力な細胞障害性薬物とを組み合わせて、抗原レベルの高い腫瘍細胞にペイロード(薬物)を送達する「武装」MAbをもたらす。薬物の標的化送達はまた、正常組織への曝露を最小限に抑え、毒性の低下と治療指数の改善をもたらす。2011年のADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)および2013年のKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシンまたはT-DM1)の2つのADC薬のFDAによる承認により、このアプローチが検証された。現在、がん治療の治験のさまざまな段階で30を超えるADC薬候補がある(Leal et al.,2014)。抗体工学とリンカーペイロードの最適化がますます成熟するにつれて、新しいADCの発見と開発は、このアプローチに適した新しい標的の同定と検証、および標的化MAbの作製にますます依存している。ADC標的の2つの基準は、腫瘍細胞での上方制御された/高レベルの発現と強力な内在化である。
【0189】
免疫療法の一態様において、腫瘍細胞は、標的化に適した、すなわち他の細胞の大部分に存在しない何らかのマーカーを持たなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれも、本実施形態に関連して標的化に適している可能性がある。一般的な腫瘍マーカーには、CD20、がん胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erbBおよびp155が含まれる。免疫療法の代替の態様は、抗がん効果と免疫刺激効果とを組み合わせることである。IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、ガンマ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、およびFLT3リガンドなどの成長因子を含む免疫刺激分子もまた存在する。
【0190】
現在調査中または使用中の免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、牛型結核菌(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼンおよび芳香族化合物(米国特許第5,801,005号明細書および同第5,739,169号明細書;Hui and Hashimoto,1998;Christodoulides et al.,1998);サイトカイン療法、例えば、任意の種類のインターフェロン、IL-1、GM-CSFおよびTNF(Bukowski et al.,1998;Davidson et al.,1998;Hellstrand et al.,1998);遺伝子治療、例えば、TNF、IL-1、IL-2およびp53(Qin et al.,1998;Austin-Ward and Villaseca,1998;米国特許第5,830,880号明細書および同第5,846,945号明細書);ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2および抗p185(Hollander,2012;Hanibuchi et al.,1998;米国特許第5,824,311号明細書)である。1つ以上の抗がん治療を、本明細書に記載の抗体療法とともに使用可能であることが企図される。
【0191】
いくつかの実施形態において、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤であり得る。免疫チェックポイントは、シグナル(例えば、共刺激分子)を上に向けたり、またはシグナルを下に向けたりする。免疫チェックポイント遮断により標的となり得る抑制性免疫チェックポイントには、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276とも呼ばれる)、BおよびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、別名CD152)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)、プログラム死1(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)ならびにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)が含まれる。特に、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1軸および/またはCTLA-4を標的とする。
D.外科手術
【0192】
がんを有する人々の約60%は、予防的、診断的または病期分類的、治癒的、緩和的な外科手術を含む何らかの種類の外科手術を受ける。治癒的外科手術は、がん性組織の全部または一部が物理的に除去、切除、および/または破壊される摘出術を含み、本実施形態の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法などの他の療法と組み合わせて使用することができる。腫瘍摘出術とは、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除去することを指す。腫瘍摘出術に加えて、外科手術による治療には、レーザー外科手術、凍結外科手術、電気外科手術、および顕微鏡制御外科手術(モース術)が含まれる。
【0193】
がん性細胞、組織または腫瘍の一部または全部を切除すると、体内に空洞が形成される場合がある。治療は、灌流、直接注射、または追加の抗がん療法を伴う領域の局所適用によって達成することができる。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6もしくは7日ごと、または1、2、3、4、および5週間ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月ごとに繰り返され得る。これらの治療法は、同様に投与量もさまざまであり得る。
E.その他の薬剤
【0194】
治療の治療有効性を改善するために、他の薬剤を本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用可能であることが企図される。これらの追加の薬剤には、細胞表面受容体およびギャップ結合の上方制御に影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤および分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖細胞の感受性を増加させる薬剤、または他の生物学的薬剤が含まれる。ギャップ結合の数を増やすことによる細胞間シグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増加させる。他の実施形態において、治療の抗過剰増殖有効性を改善するために、細胞増殖抑制剤または分化剤を、本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用することができる。細胞接着の阻害剤は、本実施形態の有効性を改善することが企図されている。細胞接着阻害剤の例は、焦点接着キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。治療有効性を改善するために、抗体c225などの、アポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感受性を増加させる他の薬剤を、本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用可能であることがさらに企図される。
VI.本開示のキット
【0195】
いくつかの実施形態において、例えばNK細胞、任意選択的にNK細胞を産生するための1つ以上の培地および成分、抗体を産生するための1つ以上の抗体または(1または複数の)試薬などを含み得るキットが提供される。いくつかの実施形態において、製剤は因子のカクテルを、例えばNK細胞と組み合わせるのに適した形態で含むことができる。試薬系または任意のキット成分は、必要に応じて、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかで包装されてもよい。キットの容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含み、その中に成分を配置することができ、好ましくは適切に等分することができる。キット中に2つ以上の成分がある場合、キットはまた、一般に、追加の成分を別々に配置することができる第2、第3または他の追加の容器を含む。しかしながら、成分の様々な組み合わせがバイアルに含まれてもよい。キットの成分は、乾燥粉末として提供されてもよい。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末は適切な溶媒の添加によって再構成することができる。溶媒はまた、別の容器手段に提供されてもよいことが想定される。キットはまた、典型的には、市販のために厳重に閉じ込められた(1または複数の)キット成分を収容するための手段を含む。そのような容器としては、所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形プラスチック容器を挙げることができる。キットはまた、印刷または電子形式、例えばデジタル形式などの使用説明書を含むことができる。
【0196】
特定の実施形態において、キットは、本明細書の他の箇所に記載されている特定の濃度を含む、少なくともIL-12、IL-15、IL18および/またはIL-2を含む1つ以上のサイトカインを含み得る。キットは、本明細書の他の箇所に記載されるように、任意の種類の培地、凍結保存培地の任意の成分を含み得る。キットは、臍帯血(プールされた臍帯血を含む)、任意の種類の抗原提示細胞、(本明細書に記載の)特定のNK細胞を枯渇させるためのビーズ、本明細書に記載の1つ以上のタンパク質をコードするベクター、NK細胞、抗体または抗体を生成するための試薬などを含み得る。
【0197】
個々の成分はまた、キットに濃縮量で提供されてもよく、いくつかの実施形態において、成分は、他の成分と共に溶液中に存在するのと同じ濃度で個別に提供される。成分の濃度は、1倍、2倍、5倍、10倍または20倍またはそれ以上として提供され得る。
【実施例】
【0198】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本発明者により本発明の実施において良好に機能することが発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると見なし得ることが当業者により理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、なおかつ本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
(実施例1)
組成物の調製および使用
【0199】
特定のNK細胞と該NK細胞に結合することができる抗体とを含む組成物が調製され、特定の場合には、治療を必要とする個体に有効量で投与される。特定の実施形態において、個体に関して自己または同種のNK細胞が、有効量で個体に投与され、NK細胞は特に臍帯血細胞である。NK細胞は、凍結保存貯蔵所から供給されても、そうでなくてもよく、場合によっては特定の凍結保存培地中で凍結保存された。抗体が適切な抗原を介してNK細胞に結合することを可能にする条件下で、NK細胞を任意選択的に予備活性化し、任意選択的に増殖させ、その後有効量のNK細胞が抗体に曝露させる。これに続いて、有効量の組成物が、それらを必要とする個体に提供される。
(実施例2)
モノクローナル抗体およびNK細胞
【0200】
本実施例は、抗体を予め負荷させたNK細胞の調製および使用を包含する。
図1は、NK細胞増殖および抗体負荷の実験手順の一例を示す。NK細胞は、処理された血液から得られてもよく、特定の実施形態において特定のNK細胞が単離され、例えば、特定の実施形態において、それはCD3-CD56+のものである。任意選択的に、NK細胞は、例えばIL-2およびユニバーサル抗原提示細胞または他のフィーダー細胞の存在下で増殖され、増殖工程は、特定の場合には、最大約14日間などの任意の適切な期間であり得る。別の任意選択の実施形態において、NK細胞は、増殖前に予備活性化される。任意の予備活性化工程を利用してもよいが、特定の実施形態において、予備活性化工程は、1つ以上のサイトカイン、例えばIL-12、IL-15および/またはIL-18のうちの1つ以上への曝露を包含する。予備活性化工程は、任意の適切な期間を要し得るが、特定の実施形態において、最大約16時間である。この工程に続いて、NK細胞は、例えば、ユニバーサル抗原提示細胞およびIL-2の存在下を含めて、任意選択的に増殖され得る。培養細胞は、増殖中にIL2、IL-18もしくはIL-15またはこれらのサイトカインの任意の組み合わせで再び活性化されてもよい。増殖後、抗体が、抗体が指向する特定の抗原を介してNK細胞の外側に結合するのに十分な条件下で、NK細胞を適切な量の抗体に曝露する。特定の場合には、抗体はモノクローナル抗体である。NK細胞上への抗体の負荷のための条件は、特定の温度下で特定の期間、例えば37℃において1時間であり得る。
【0201】
図2は、NK細胞へのマルゲツキシマブ(抗HER2モノクローナル抗体)結合の検証を提供する。NK細胞は臍帯血に由来し、50:50クリック/RPMI培地において照射(100Gy)uAPCフィーダー細胞(フィーダー細胞:NK細胞比2:1)および組換えヒトIL-2(200U/ml)と共に標準的に増殖させた(NE)か、またはIL-12(10ng/ml)、IL-15(50ng/ml)およびIL-18(50ng/ml)で16時間予備活性化し、次いで洗浄し、照射uAPCおよびIL-2(200U/mL)と共に増殖させた(PE)。NK細胞にマルゲツキシマブ1μg/mlを37℃で1時間、クリック/RPMI培地において負荷し、洗浄した後、フローサイトメトリーによりNK細胞へのマルゲツキシマブの結合を検証した。非負荷のNE NK細胞およびPE NK細胞を陰性対照として使用した。Alexa-Fluor647親和性精製F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体を用いたフローサイトメトリー染色によって、マルゲツキシマブ結合を検出した。グラフは、PE NK細胞がNE NK細胞と比較してより高いレベルのマルゲツキシマブ結合を示すことを示す。ヒストグラムは、3つの異なる臍帯血NK細胞ドナーからのデータを提供する。
【0202】
マルゲツキシマブ負荷NK細胞は、HER2+腫瘍細胞に対する増強された細胞傷害性を示す(
図3)。その中には、単独で培養された、またはNK細胞と2:1のエフェクター対標的(E:T)比で培養されたHER2+SKOV3(卵巣がん)の正規化された細胞指数を示すXcelligence細胞傷害性アッセイが提供される。NK細胞は、標準的に増殖させた(NE)か、または予備活性化して増殖させた(P+E)かのいずれかであった。NE NK細胞は、50:50クリック/RPMI培地において照射(100Gy)uAPCフィーダー細胞(フィーダー細胞:NK細胞比2:1)および組換えヒトIL-2(200U/ml)と共に増殖させ、PE細胞は、IL-12(10ng/ml)、IL-15(50ng/ml)およびIL-18(50ng/ml)で16時間予備活性化し、次いで洗浄し、照射uAPCおよびIL-2(200U/mL)と共に増殖させた。NK細胞は、非負荷のままであったか、または1μg/mlのマルゲツキシマブをクリック/RPMI培地において37℃で1時間負荷し、次いでアッセイの前に洗浄した。データは、マルゲツキシマブ負荷が腫瘍細胞に対するNEおよびPE NK細胞の細胞傷害性を増強することを示す。
【0203】
HER2+卵巣がん(SKOV3)のNSGマウスモデルにおいて、マルゲツキシマブ負荷NK細胞は腫瘍制御の増強をもたらす(
図4)。
図4Aにおいて、SKOV3マウスモデルの実験計画のスキーマの一例を示す。
図4Bにおいて、生物発光イメージングは、ホタルルシフェラーゼ(FFluc)を形質導入されたSKOV3を移植し、未処置のままにしたか、またはNK細胞単独、マルゲツキシマブ単独、またはマルゲツキシマブを予備負荷したNK細胞で処置したマウスにおける経時的な腫瘍増殖を示す。
図4Cは、パネル4Aに記載された4群のマウスの経時的な平均放射輝度を示すグラフを提供する。
【0204】
図5において、NK細胞へのアミバンタマブ(EGFR-MET二重特異性抗体)結合の検証が実証されている。NK細胞は臍帯血に由来し、50:50クリック/RPMI培地において照射(100Gy)uAPCフィーダー細胞(フィーダー細胞:NK細胞比2:1)および組換えヒトIL-2(200U/ml)と共に標準的に増殖させた(NE)か、またはIL-12(10ng/ml)、IL-15(50ng/ml)およびIL-18(50ng/ml)で16時間予備活性化し、次いで洗浄し、照射uAPCおよびIL-2(200U/mL)と共に増殖させた(PE)。NK細胞にアミバンタマブ1μg/mlを37℃で1時間、クリック/RPMI培地において負荷し、洗浄した後、フローサイトメトリーによりNK細胞へのアミバンタマブの結合を検証した。非負荷のNE NK細胞およびPE NK細胞を陰性対照として使用した。Alexa-Fluor647親和性精製F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体を用いたフローサイトメトリー染色によって、アミバンタマブ結合を検出した。グラフは、PE NK細胞がNE NK細胞と比較してより高いレベルのアミバンタマブ結合を示すことを示す。ヒストグラムは、3つの異なる臍帯血NK細胞ドナーからのデータ示す。
【0205】
アミバンタマブ負荷NK細胞は、EGFR+/cMET+腫瘍細胞に対する増強された細胞傷害性を示す(
図6)。3つの異なる臍帯血NK細胞(N=3/アッセイ)を様々なエフェクター対標的(E:T)比(20:1、10:1、5:1、1:1)で使用して、3つのEGFR+/c-MET+がん細胞株、SKOV3(卵巣がん)、UMRC3(腎細胞がん)、PATC148(膵管腺がん)の特異的溶解を示すクロム放出アッセイを提供する。NK細胞は、標準的に増殖させた(NE)か、または予備活性化して増殖させた(P+E)かのいずれかであった。NE NK細胞は、50:50クリック/RPMI培地において照射(100Gy)uAPCフィーダー細胞(フィーダー細胞:NK細胞比2:1)および組換えヒトIL-2(200U/ml)と共に増殖させ、PE細胞は、IL-12(10ng/ml)、IL-15(50ng/ml)およびIL-18(50ng/ml)で16時間予備活性化し、次いで洗浄し、照射uAPCおよびIL-2(200U/mL)と共に増殖させた。NK細胞は、非負荷のままであったか、または1μg/mlのアミバンタマブをクリック/RPMI培地において37℃で1時間負荷し、次いでアッセイの前に洗浄した。アミバンタマブ負荷は、腫瘍細胞に対するNEおよびPE NK細胞の細胞傷害性を増強する。
【0206】
図7Aおよび7Bにおいて、アミバンタマブ負荷NK細胞は、EGFR+/cMET+腫瘍細胞に対する増強された細胞傷害性を示す。3つの異なる臍帯血NK細胞(N=3/アッセイ)を2:1のエフェクター対標的(E:T)比で使用して、2つのEGFR+/c-MET+がん細胞株、SKOV3(卵巣がん;
図7A)、PATC148(膵管腺がん;7B)の正規化された細胞指数を示すXcelligence細胞傷害性アッセイ。NK細胞は、標準的に増殖させた(NE)か、または予備活性化して増殖させた(P+E)かのいずれかであった。NE NK細胞は、50:50クリック/RPMI培地において照射(100Gy)uAPCフィーダー細胞(フィーダー細胞:NK細胞比2:1)および組換えヒトIL-2(200U/ml)と共に増殖させ、PE細胞は、IL-12(10ng/ml)、IL-15(50ng/ml)およびIL-18(50ng/ml)で16時間予備活性化し、次いで洗浄し、照射uAPCおよびIL-2(200U/mL)と共に増殖させた。NK細胞は、非負荷のままであったか、または1μg/mlのアミバンタマブをクリック/RPMI培地において37℃で1時間負荷し、次いでアッセイの前に洗浄した。アミバンタマブ負荷は、腫瘍細胞に対するNEおよびPE NK細胞の細胞傷害性を増強する。
【0207】
EGFR+/c-MET+卵巣がん(SKOV3)のNSGマウスモデルにおいて、アミバンタマブ負荷NK細胞は腫瘍制御の増強をもたらす(
図8)。
図12Aにおいて、SKOV3マウスモデルの実験計画のスキーマの一例を提供する。
図8Bにおいて、生物発光イメージングは、ホタルルシフェラーゼ(FFluc)を形質導入されたSKOV3を移植し、未処置のままにしたか、またはNK細胞単独、アミバンタマブ単独、またはアミバンタマブを予備負荷したNK細胞で処置したマウスにおける経時的な腫瘍増殖を示す。
図8Cは、
図8Aに記載された4群のマウスの経時的な平均放射輝度を示すグラフを提供する。
【0208】
NK細胞に、抗体の一例(
図9)であるイムガツズマブ(抗EGFRモノクローナル抗体)を負荷した。NK細胞は臍帯血に由来し、50:50クリック/RPMI培地において照射(100Gy)uAPCフィーダー細胞(フィーダー細胞:NK細胞比2:1)および組換えヒトIL-2(200U/ml)と共に標準的に増殖させた(NE)か、またはIL-12(10ng/ml)、IL-15(50ng/ml)およびIL-18(50ng/ml)で16時間予備活性化し、次いで洗浄し、照射uAPCおよびIL-2(200U/mL)と共に増殖させた(PE)。NK細胞にイムガツズマブ1μg/mlを37℃で1時間、クリック/RPMI培地において負荷し、洗浄した後、フローサイトメトリーによりNK細胞へのイムガツズマブの結合を検証した。非負荷のNE NK細胞およびPE NK細胞を陰性対照として使用した。Alexa-Fluor647親和性精製F(ab’)2フラグメントヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体を用いたフローサイトメトリー染色によって、イムガツズマブ結合を検出した。グラフは、PE NK細胞がNE NK細胞と比較してより高いレベルのイムガツズマブ結合を示すことを示す。ヒストグラムは、3つの異なる臍帯血NK細胞ドナーからのデータ示す。
【0209】
イムガツズマブ負荷NK細胞は、腫瘍細胞に対する増強された細胞傷害性を示す(
図10)。3つの異なる臍帯血NK細胞(N=3/アッセイ)を様々なエフェクター対標的(E:T)比(20:1、10:1、5:1、1:1)で使用して、3つのEGFR+がん細胞株、(SKOV3(卵巣がん)、UMRC3(腎細胞がん)、PATC148(膵管腺がん))の特異的溶解を示すクロム放出アッセイ。NK細胞は、標準的に増殖させた(NE)か、または予備活性化して増殖させた(P+E)かのいずれかであった。NE NK細胞は、50:50クリック/RPMI培地において照射(100Gy)uAPCフィーダー細胞(フィーダー細胞:NK細胞比2:1)および組換えヒトIL-2(200U/ml)と共に増殖させ、PE細胞は、IL-12(10ng/ml)、IL-15(50ng/ml)およびIL-18(50ng/ml)で16時間予備活性化し、次いで洗浄し、照射uAPCおよびIL-2(200U/mL)と共に増殖させた。NK細胞は、非負荷のままであったか、または1μg/mlのイムガツズマブをクリック/RPMI培地において37℃で1時間負荷し、次いでアッセイの前に洗浄した。データは、イムガツズマブ負荷が、腫瘍細胞に対するNEおよびPE NK細胞の細胞傷害性を増強することを示す。
【0210】
図11A~11Cにおいて、イムガツズマブ負荷NK細胞は、EGFR+腫瘍細胞に対する増強された細胞傷害性を示す。これらの図は、3つの異なる臍帯血NK細胞(N=3/アッセイ)を2:1のエフェクター対標的(E:T)比で使用して、3つのEGFR+がん細胞株、SKOV3(卵巣がん;
図11A)、PATC148(膵管腺がん;11B)およびUMRC3(腎細胞がん;
図11C)の正規化された細胞指数を実証するXcelligence細胞傷害性アッセイを示す。NK細胞は、標準的に増殖させた(NE)か、または予備活性化して増殖させた(P+E)かのいずれかであった。NE NK細胞は、50:50クリック/RPMI培地において照射(100Gy)uAPCフィーダー細胞(フィーダー細胞:NK細胞比2:1)および組換えヒトIL-2(200U/ml)と共に増殖させ、PE細胞は、IL-12(10ng/ml)、IL-15(50ng/ml)およびIL-18(50ng/ml)で16時間予備活性化し、次いで洗浄し、照射uAPCおよびIL-2(200U/mL)と共に増殖させた。NK細胞は、非負荷のままであったか、または1μg/mlのイムガツズマブをクリック/RPMI培地において37℃で1時間負荷し、次いでアッセイの前に洗浄した。データは、イムガツズマブ負荷が、腫瘍細胞に対するNEおよびPE NK細胞の細胞傷害性を増強することを示す。
【0211】
EGFR+卵巣がん(SKOV3)のNSGマウスモデルにおいて、イムガツズマブ負荷NK細胞は腫瘍制御の増強をもたらす(
図12)。
図12Aにおいて、SKOV3マウスモデルの実験計画のスキーマの一例がある。
図12Bは、ホタルルシフェラーゼ(FFluc)を形質導入されたSKOV3を移植し、未処置のままにしたか、またはNK細胞単独、イムガツズマブ単独、またはイムガツズマブを予備負荷したNK細胞で処置したマウスにおける経時的な腫瘍増殖を示す生物発光イメージングを提供する。
図12Cにおいて、
図12Aに記載された4群のマウスの経時的な平均放射輝度を示すグラフがある。
【0212】
本開示およびその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される設計の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換および改変を行うことができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載の方法(process)、機械(machine)、製品(manufacture)、組成物(composition of matter)、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されることを意図しない。当業者であれば本開示から容易に理解するように、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか、または今後開発される方法(process)、機械(machine)、製品(manufacture)、組成物(compositions of matter)、手段、方法、または工程が、本開示に従って利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような方法(process)、機械(machine)、製品(manufacture)、組成物(compositions of matter)、手段、方法、または工程をその範囲内に含むことを意図している。
【国際調査報告】