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特表2024-514819中和されたマルチアミン分散剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】中和されたマルチアミン分散剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/52 20220101AFI20240327BHJP
   C09K 23/12 20220101ALI20240327BHJP
   C09K 23/14 20220101ALI20240327BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240327BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20240327BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C09K23/52
C09K23/12
C09K23/14
C09D17/00
C09D11/00
C08G18/50 021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561719
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 US2022023862
(87)【国際公開番号】W WO2022216948
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/172,890
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン, コナー
(72)【発明者】
【氏名】コールベック, エリオット
(72)【発明者】
【氏名】エスクリエット, セジオ
(72)【発明者】
【氏名】コリンジ, マイケル
【テーマコード(参考)】
4D077
4J034
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4D077AA03
4D077AA08
4D077AB03
4D077AC05
4D077BA03
4D077BA07
4D077DC03Y
4D077DC04Y
4D077DC59Y
4D077DC67Y
4D077DD06Y
4D077DD30Y
4D077DD32Y
4D077DD33Y
4D077DE07Y
4D077DE17Y
4J034DA03
4J034DB01
4J034DB04
4J034DG02
4J034DG03
4J034DG04
4J034FA01
4J034FA02
4J034FB01
4J034FC01
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC71
4J034RA07
4J037CB04
4J037CB21
4J037CC25
4J037DD23
4J039AE07
4J039BC07
4J039BC54
4J039BE01
4J039BE12
(57)【要約】
(a)(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基と、を含む、高分子分散剤と、(b)芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含む官能化酸成分と、を含む組成物であって、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、組成物が記載される。これらの組成物を含む顔料分散体及びインク配合物、並びに組成物、顔料分散体、及び/又はインク配合物を作製及び/又は使用する様々な方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a.高分子分散剤であって、
i.1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、前記少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、前記単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、前記少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、前記高分子分散剤の総重量に基づいて、前記高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、
ii.1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、前記少なくとも2つのアミン基が、前記少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含む、高分子分散剤と、
b.芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含む官能化酸成分と、を含み、
前記高分子分散剤中に存在する前記アミン基の少なくとも60パーセントが、前記官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、組成物。
【請求項2】
前記高分子分散剤が、1分子当たり平均して2~200個のポリエーテルペンダント基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリエーテルペンダント基の前記単量体単位の50%から実質的に全てが、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリ(エチレンオキシド)単量体単位の数と、ポリ(プロピレンオキシド)単量体単位の数との比が、0:100~90:10である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエーテルペンダント基が、前記高分子分散剤の総重量に基づいて、前記高分子分散剤の少なくとも65重量パーセントを構成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記高分子分散剤が、1分子当たり平均して2~500個のアミン基を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記官能化酸成分が、芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記官能化酸成分が、ドデシルベンゼンスルホン酸を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記芳香族官能基が、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂肪族官能基が、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記官能化酸成分が、以下の一般式による少なくとも1種の化合物を含み、
【化5】
式中、
が、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基であり、
が、芳香族官能基、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基であり、
Wがリン又は硫黄であり、
mが1又は2であり、Wが硫黄である場合、mが1又は2であり、Wがリンである場合、mが1であり、
nが1又は2であり、Wが硫黄である場合、nが1であり、Wがリンである場合、nが2であり、
sが0又は1であり、
tが0又は1である、
ただし、s及びtの両方が、0になることはできない、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
Wが硫黄である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
sが1であり、tが1である、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
前記高分子分散剤中に存在する前記アミン基の少なくとも約75パーセントが、前記官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記高分子分散剤中に存在する前記アミン基の少なくとも約95パーセントが、前記官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
顔料分散体であって、
a.顔料と
b.前記顔料のための高分子分散剤であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を含む、高分子分散剤と、を含む、顔料分散体。
【請求項17】
インク配合物であって、
a.請求項16に記載の顔料分散体と、
b.溶媒と、
c.結合剤と、
d.少なくとも1種の追加の添加剤と、を含む、インク配合物。
【請求項18】
顔料分散体を生成する方法であって、顔料、前記顔料のための高分子分散剤、及び官能化酸成分を任意の順序で組み合わせる工程と、前記顔料を粉砕する任意選択的な工程と、を含み、
a.前記高分子分散剤が、
i.1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、前記少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、前記単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、前記少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、前記高分子分散剤の総重量に基づいて、前記高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、
ii.1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、前記なくとも2つのアミン基が、前記少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含み、
b.前記官能化酸成分が、芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含み、
c.前記高分子分散剤中に存在する前記アミン基の少なくとも60パーセントが、前記官能化酸成分の分子で各々個別に中和され、
d.前記顔料を粉砕する前記任意選択的な工程が、
i.実施されないか、
ii.前記高分子分散剤及び/若しくは前記官能化酸成分の添加前に、前記顔料単独に対して実施されるか、又は
iii.前記顔料と、前記高分子分散剤及び/若しくは前記官能化酸成分との組み合わせに対して実施される、方法。
【請求項19】
前記高分子分散剤と前記官能化酸成分とが、前記顔料の添加前に組み合わされ、前記顔料を粉砕する前記任意選択的な工程は、前記顔料が前記高分子分散剤と前記官能化酸成分との前記組み合わせに添加される前又は後に実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記高分子分散剤と前記顔料とが組み合わされ、前記顔料を粉砕する前記任意選択的な工程が、前記高分子分散剤と前記顔料との前記組み合わせに対して実施され、次いで前記官能化酸成分が前記顔料の組成物に添加される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される技術は、官能化酸成分で少なくとも部分的に中和(例えば、塩基化)される、1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基を有する高分子分散剤を含む組成物に関する。これらの組成物を含む顔料分散体及びインク配合物、並びにこれらの材料を作製及び/又は使用する方法も記載される。
【背景技術】
【0002】
多くの従来の包装用インクは、顔料、結合剤、接着促進剤、及び溶媒の一般的な配合物を中心に製造されている。例示的なインク配合物は、例えば、特開第2017-39896(A)号に記載されている。多くの場合では、結合剤は、分散助剤として作用し、粉砕後の顔料粒子の再凝集を防止する。しかしながら、他の場合では、特注の分散剤の使用によって、安定性、顔料含有量、及び発色などのインク特性が著しく改善される。一般に、高分子分散剤は、酸官能性、アミン官能性、又は非イオン性であり得る。しかしながら、アミン官能性分散剤を配合物中の他の配合成分とともに使用する場合に起こり得る相溶性の問題に起因して、非イオン性又は酸系分散剤がこの用途において使用されてきた。
【0003】
包装用インクにおいて使用される重要な顔料は、顔料イエロー13である。高分子分散剤を使用してイエロー13を分散させるためには、分散剤の官能基がアミン基を含み、顔料表面への分散剤の十分な固着を提供することが非常に好ましいことが観察されている。包装用インクにおいて使用される1種の結合剤は、例えば、出願公開第2018-199802(A)号に見られるようなニトロセルロースであり、アミン官能性分散剤は、この結合剤と不利に相互作用し、経時的にゲル形成をもたらし、完全に配合されたインク組成物にとって壊滅的であることが見出された。同様に、チタネートなどの有機金属性錯体は、例えば、国際公開第2012/028882(A1)号に見られるように、結合剤と組み合わせて使用される場合、ポリエチレン又は配向ポリプロピレンなどの低表面エネルギー基材への接着を提供するために、包装用インクの配合において長い歴史を有する。しかしながら、有機金属性錯体は、アミン官能性分散剤との望ましくない反応を非常に受けやすく、再びゲルを形成し、かつ/又は粘度を増加させる。
【0004】
複数のアミン基を有する高分子分散剤は、例えば、以下の文献:米国特許第7,767,750(B2)号、同第8,859,675(B2)号、同第8,987,374(B2)号、及び同第9,416,280(B2)号に記載されている。これらの文献は、1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基を有する高分子分散剤であって、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和(例えば、塩基化)される、高分子分散剤を開示していない。
したがって、開示される技術は、1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基を有する高分子分散剤であって、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約60パーセントが、本明細書に記載されるように、官能化酸成分の分子で各々個別に中和される、高分子分散剤を含む組成物を提供する。これらの組成物は、スルホン酸対イオン又はリン酸対イオンを使用してアミン塩を形成することによって、アミン官能性分散剤が他の配合成分と有し得る問題のある相互作用を少なくとも部分的に軽減し得、添加剤(例えば、有機金属性錯体)及び/又は結合剤(例えば、ニトロセルロース)などの特定の配合成分との好適な性能をもたらすことが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-39896号公報
【特許文献2】特開2018-199802号公報
【特許文献3】国際公開第2012/028882号
【特許文献4】米国特許第7,767,750号明細書
【特許文献5】米国特許第8,859,675号明細書
【特許文献6】米国特許第8,987,374号明細書
【特許文献7】米国特許第9,416,280号明細書
【発明の概要】
【0006】
本明細書に開示される主題は、組成物であって、(a)高分子分散剤であって、(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、少なくとも2つのアミン基が、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含む、高分子分散剤と、(b)芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含む官能化酸成分と、を含み、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、組成物を提供する。
【0007】
顔料分散体であって、(a)顔料と、(b)顔料のための高分子分散剤であって、(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、少なくとも2つのアミン基が、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含む、顔料のための高分子分散剤と、(c)芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含む官能化酸成分と、を含み、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、顔料分散体も提供される。
【0008】
インク配合物であって、(a)本明細書に記載される顔料分散体と、(b)溶媒と、(c)結合剤と、(d)少なくとも1種の追加の添加剤と、を含む、インク配合物も提供される。
【0009】
顔料分散体を生成する方法であって、顔料、顔料のための高分子分散剤、及び官能化酸成分を任意の順序で組み合わせる工程と、顔料を粉砕する任意選択的な工程と、を含み、(a)高分子分散剤が、(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、少なくとも2つのアミン基が、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含み、(b)官能化酸成分が、芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含み、(c)高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和され、(d)顔料を粉砕する任意選択的な工程が、(i)実施されないか、(ii)高分子分散剤及び/若しくは官能化酸成分の添加前に、顔料単独に対して実施されるか、又は(iii)顔料と、高分子分散剤及び/若しくは官能化酸成分との組み合わせに対して実施される、方法も提供される。
【0010】
インク配合物を製造する方法であって、(a)本明細書に記載される顔料分散体を形成する方法を実施することと、(b)以下の配合成分:(i)溶媒、(ii)結合剤、及び(iii)少なくとも1種の追加の添加剤を、顔料分散体に添加することと、を順に含む、方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本主題の以下の実施形態が企図される。
【0012】
1.組成物であって、(a)高分子分散剤であって、(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、少なくとも2つのアミン基が、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含む、高分子分散剤と、(b)芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含む官能化酸成分と、を含み、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、組成物。
【0013】
2.高分子分散剤が、1分子当たり平均して2~200個のポリエーテルペンダント基を含む、実施形態1に記載の組成物。
【0014】
3.ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%から実質的に全てが、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である、実施形態1又は2に記載の組成物。
【0015】
4.ポリ(エチレンオキシド)単量体単位の数と、ポリ(プロピレンオキシド)単量体単位の数との比が、0:100~90:10である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0016】
5.ポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも65重量パーセントを構成する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【0017】
6.高分子分散剤が、1分子当たり平均して2~500個のアミン基を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【0018】
7.官能化酸成分が、芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0019】
8.官能化酸成分が、ドデシルベンゼンスルホン酸を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【0020】
9.芳香族官能基が、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0021】
10.脂肪族官能基が、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【0022】
11.官能化酸成分が、以下の一般式による少なくとも1種の化合物を含み、
【化1】
式中、Rが、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基であり、Rが、芳香族官能基、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基であり、Wがリン又は硫黄であり、mが1又は2であり、Wが硫黄である場合、mが1又は2であり、Wがリンである場合、mが1であり、nが1又は2であり、Wが硫黄である場合、nが1であり、Wがリンである場合、nが2であり、sが0又は1であり、tが0又は1である、ただし、s及びtの両方が、0になることはできない、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0023】
12.Wが硫黄である、実施形態11に記載の組成物。
【0024】
13.sが1であり、tが1である、実施形態11又は12に記載の組成物。
【0025】
14.高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約75パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
【0026】
15.高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約95パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物。
【0027】
16.顔料分散体であって、(a)顔料と、(b)顔料のための高分子分散剤であって、(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、少なくとも2つのアミン基が、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含む、顔料のための高分子分散剤と、(b)芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含む官能化酸成分と、を含み、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、顔料分散体。
【0028】
17.高分子分散剤が、1分子当たり平均して2~200個のポリエーテルペンダント基を含む、実施形態16に記載の顔料分散体。
【0029】
18.ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%から実質的に全てが、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である、実施形態16又は17に記載の顔料分散体。
【0030】
19.ポリ(エチレンオキシド)単量体単位の数と、ポリ(プロピレンオキシド)単量体単位の数との比が、0:100~90:10である、実施形態16~18のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0031】
20.ポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも65重量パーセントを構成する、実施形態16~19のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0032】
21.高分子分散剤が、1分子当たり平均して2~500個のアミン基を含む、実施形態16~20のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0033】
22.官能化酸成分が、芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸を含む、実施形態16~21のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0034】
23.官能化酸成分が、ドデシルベンゼンスルホン酸を含む、実施形態16~22のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0035】
24.芳香族官能基が、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基である、実施形態16~23のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0036】
25.脂肪族官能基が、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基である、実施形態16~24のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0037】
26.官能化酸成分が、以下の一般式による少なくとも1種の化合物を含み、
【化2】
式中、Rが、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基であり、Rが、芳香族官能基、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基であり、Wがリン又は硫黄であり、mが1又は2であり、Wが硫黄である場合、mが1又は2であり、Wがリンである場合、mが1であり、nが1又は2であり、Wが硫黄である場合、nが1であり、Wがリンである場合、nが2であり、sが0又は1であり、tが0又は1である、ただし、s及びtの両方が、0になることはできない、実施形態16~25のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0038】
27.Wが、硫黄である、実施形態26に記載の顔料分散体。
【0039】
28.sが1であり、tが1である、実施形態26又は27に記載の顔料分散体。
【0040】
29.高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約75パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、実施形態16~28のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0041】
30.高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約95パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、実施形態16~29のいずれか1つに記載の顔料分散体。
【0042】
31.インク配合物であって、(a)実施形態16~30のいずれか1つに記載の顔料分散体と、(b)溶媒と、(c)結合剤と、(d)少なくとも1種の追加の添加剤と、を含む、インク配合物。
【0043】
32.溶媒が、極性溶媒である、実施形態31に記載のインク配合物。
【0044】
33.結合剤が、高分子結合剤である、実施形態31又は32に記載のインク配合物。
【0045】
34.少なくとも1種の追加の添加剤が、1~5種の追加の添加剤を含む、実施形態31~33のいずれか1つに記載のインク配合物。
【0046】
35.少なくとも1種の追加の添加剤が、湿潤剤、安定化剤、接着促進剤、ワックス、又は消泡剤のうちの少なくとも1つを含む、実施形態31~34のいずれか1つに記載のインク配合物。
【0047】
36.顔料分散体を生成する方法であって、顔料、顔料のための高分子分散剤、及び官能化酸成分を任意の順序で組み合わせる工程と、顔料を粉砕する任意選択的な工程と、を含み、(a)高分子分散剤が、(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、少なくとも2つのアミン基が、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含み、(b)官能化酸成分が、芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含み、(c)高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和され、(d)顔料を粉砕する任意選択的な工程が、(i)実施されないか、(ii)高分子分散剤及び/若しくは官能化酸成分の添加前に、顔料単独に対して実施されるか、又は(iii)顔料と、高分子分散剤及び/若しくは官能化酸成分との組み合わせに対して実施される、方法。
【0048】
37.高分子分散剤と官能化酸成分とが、顔料の添加前に組み合わされ、顔料を粉砕する任意選択的な工程が、顔料が高分子分散剤と官能化酸成分との組み合わせに添加される前又は後に実施される、実施形態36に記載の方法。
【0049】
38.高分子分散剤と顔料とが組み合わされ、顔料を粉砕する任意選択的な工程が、高分子分散剤と顔料との組み合わせに対して実施され、次いで官能化酸成分が顔料組成物に添加される、実施形態36に記載の方法。
【0050】
39.高分子分散剤が、1分子当たり平均して2~200個のポリエーテルペンダント基を含む、実施形態36~38のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
40.ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%から実質的に全てが、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である、実施形態36~39のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
41.ポリ(エチレンオキシド)単量体単位の数と、ポリ(プロピレンオキシド)単量体単位の数との比が、0:100~90:10である、実施形態36~40のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
42.ポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも65重量パーセントを構成する、実施形態36~41のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
43.高分子分散剤が、1分子当たり平均して2~500個のアミン基を含む、実施形態36~42のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
44.官能化酸成分が、芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸を含む、実施形態36~43のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
45.官能化酸成分が、ドデシルベンゼンスルホン酸を含む、実施形態36~44のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
46.芳香族官能基が、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基である、実施形態36~45のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
47.脂肪族官能基が、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基である、実施形態36~46のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
48.官能化酸成分が、以下の一般式による少なくとも1種の化合物を含み、
【化3】
式中、Rが、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基であり、Rが、芳香族官能基、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基であり、Wがリン又は硫黄であり、mが1又は2であり、Wが硫黄である場合、mが1又は2であり、Wがリンである場合、mが1であり、nが1又は2であり、Wが硫黄である場合、nが1であり、Wがリンである場合、nが2であり、sが0又は1であり、tが0又は1である、ただし、s及びtの両方が、0になることはできない、実施形態36~47のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
49.Wが硫黄である、実施形態48に記載の方法。
【0061】
50.sが1であり、tが1である、実施形態48又は49に記載の方法。
【0062】
51.高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約75パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和される、実施形態36~50のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
52.高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも約95パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和される、実施形態36~59のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
53.インク配合物を製造する方法であって、(a)実施形態36~52のいずれか1つに記載の方法を実施して、顔料分散体を形成することと、(b)以下の配合成分:(i)溶媒、(ii)結合剤、及び(iii)少なくとも1種の追加の添加剤を、顔料分散体に添加することと、を順に含む方法。
【0065】
54.溶媒が、極性溶媒である、実施形態53に記載の方法。
【0066】
55.結合剤が、高分子結合剤である、実施形態53又は54に記載の方法。
【0067】
56.少なくとも1種の追加の添加剤が、1~5種の追加の添加剤を含む、実施形態53~55のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
57.少なくとも1種の追加の添加剤が、湿潤剤、安定化剤、接着促進剤、ワックス、又は消泡剤のうちの少なくとも1つを含む、実施形態53~56のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
本主題の様々な特徴及び実施形態が、非限定的な例示によって、以下で記載される。
【0070】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」/「an」は、1つ又は2つ以上を意味することが意図される。本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」という語句は、以下の用語のうちの1つ又は2つ以上を意味する。したがって、「a」/「an」及び「少なくとも1つ」は、互換的に使用され得る。例えば、「A、B又はCのうちの少なくとも1つ」は、代替的な実施形態では、A、B又はCのうちの1つのみが含まれてもよく、A、B及びCのうちの2つ以上の任意の混合物が含まれてもよいことを意味する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、所与の量の値が、記載された値の±10%以内であることを意味する。他の実施形態では、値は、表示値の±5%以内である。他の実施形態において、値は、表示値の±2.5%以内である。他の実施形態では、値は、記載された値の±1%以内である。
【0072】
本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、成分は、成分が「実質的に含まない」材料の意図的な添加を含まないことを意味する。例えば、成分は、成分が不完全な化学反応及び/又は意図しない/望ましくない(しかし、おそらく避けられない)反応生成物の結果であり得る不純物レベル以下で、「実質的に含まない」材料を含み得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「含む(including)」、「含有する」、又は「を特徴とする」と同義である移行用語「含む(comprising)」は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。しかしながら、本明細書における「含む(comprising)」の各記載において、この用語がまた、代替的な実施形態として、「から本質的になる」及び「からなる」という句を包含することが意図され、ここで、「からなる」は、特定されていない任意の要素又は工程を排除し、「から本質的になる」は、検討中の組成物又は方法の本質的又は基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない追加の記載されていない要素又は工程の含有を許容する。
【0074】
組成物であって、(a)高分子分散剤であって、(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、少なくとも2つのアミン基が、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含む、高分子分散剤と、(b)芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含む官能化酸成分と、を含み、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、組成物が提供される。芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化された酸成分を本明細書に記載する場合、意味することは、酸成分が芳香族官能基又は脂肪族官能基のいずれかで官能化され、任意選択的に、これらの官能基のいずれかが他の種類の官能基によって更に官能化されることである。例えば、酸成分は、芳香族官能基で官能化され得、任意選択的に、芳香族官能基は、脂肪族官能基で更に官能化され得るか、又はその逆であり得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ポリエーテルペンダント基」という用語は、高分子分散剤の骨格に結合しているポリエーテル基を指す。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基は、複数のアルキレンオキシド単量体単位(例えば、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド単量体単位)を、おそらく他の単量体単位と組み合わせて、ポリエーテル基を形成するための既知の方法を介して一緒に接合させ、次いで、ポリエーテル基を既知の方法を介して骨格に結合させることによって作成され得る。高分子分散剤を作成するこの方法は、「ポリエーテルペンダント基」及び「骨格」という用語によって意味されるものの最も単純な概念上の理解を提供する。
【0076】
特定の実施形態では、アルキレンオキシド単量体単位(例えば、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド単量体単位)を骨格に付加し、次いで追加のアルキレンオキシド単量体単位(例えば、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド単量体単位)を第1のものに連続的に付加して、ペンダント基を作成することによって、高分子分散剤の骨格からポリエーテルペンダント基を「成長」させることが可能である。(この方法は、先の段落において記載された方法において作成されるものと同じか又は非常に類似した高分子分散剤をもたらし得る。)この文脈では、「ポリエーテルペンダント基」という用語は、骨格に結合した第1のアルキレンオキシド単量体単位から始まり、第1のアルキレンオキシド単量体単位に結合した追加のアルキレンオキシド単量体単位まで続く高分子分散剤の部分を意味すると理解されるであろう。「骨格」は、ポリエーテルペンダント基ではない高分子分散剤の部分であるとみなされる。
【0077】
先の2つの段落において記載された方法のいずれかの場合では、ポリエーテルペンダント基は、当該技術分野で周知のように、ポリエーテルペンダント基の大部分を構成する単量体単位と比較して、比較的非反応性のままである単量体単位で終結される。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の実質的に全てが、アルキレンオキシド単量体単位(例えば、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド単量体単位)であり得る。「実質的に全て」とは、(i)末端単量体単位以外のポリエーテルペンダント基の単量体単位の全てがアルキレンオキシド単量体単位であること、及び/又は(ii)少数の単量体単位が、ポリエーテルペンダント基を作成するために使用される単量体単位中の意図しない不純物のために、アルキレンオキシド単量体単位以外であり得ることを意味する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「ポリ(アルキレンオキシド)単量体単位」及び「アルキレンオキシド単量体単位」という用語は、互換的に使用される。同様に、「ポリ(エチレンオキシド)単量体単位」及び「エチレンオキシド単量体単位」という用語は、互換的に使用され、「ポリ(プロピレンオキシド)単量体単位」及び「プロピレンオキシド単量体単位」という用語は、互換的に使用される。これらの用語は全て、一緒に(直接的又は間接的に)接合されて、本明細書に記載されるポリエーテルペンダント基を形成する個々の単量体単位を指す。
【0079】
特定の実施形態では、高分子分散剤は、1分子当たり平均して2個(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、又は55個)~200個(例えば、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、95、90、85、80、75、70、65、又は60個)のポリエーテルペンダント基を含む。特定の実施形態では、高分子分散剤は、1分子当たり平均して2個(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100個)~200個(例えば、190、180、170、160、150、140、130、120、又は110個)のポリエーテルペンダント基を含む。
【0080】
特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%から実質的に全ては、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の実質的に全ては、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%)~99%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%)~95%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%)~90%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、又は80%)~85%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%(例えば、55%、60%、65%、70%、又は75%)~80%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%(例えば、55%、60%、65%、又は70%)~75%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%(例えば、55%、60%、又は65%)~70%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%(例えば、55%、又は60%)~65%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%(例えば、55%)~60%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基の単量体単位の50%~55%は、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位である。
【0081】
特定の実施形態では、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位の数と、ポリ(プロピレンオキシド)単量体単位の数との比は、0:100(例えば、10:90、又は20:80)~100:0(例えば、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、又は30:70)である。特定の実施形態では、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位の数と、ポリ(プロピレンオキシド)単量体単位の数との比は、0:100、10:90、17:83、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20、90:10、又は100:0である。
【0082】
特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基は、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも65(例えば、70、75、80、85、90、又は95)重量パーセントを構成する。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基は、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の65(例えば、70、75、80、85、又は90)~95重量パーセントを構成する。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基は、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の65(例えば、70、75、80、又は85)~90重量パーセントを構成する。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基は、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の65(例えば、70、75、又は80)~85重量パーセントを構成する。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基は、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の65(例えば、70、又は75)~80重量パーセントを構成する。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基は、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の65(例えば、70)~75重量パーセントを構成する。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基は、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の65~70重量パーセントを構成する。特定の実施形態では、ポリエーテルペンダント基は、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の65(例えば、70、75、80、85、90、又は95)重量パーセントを構成する。
【0083】
特定の実施形態では、高分子分散剤は、1分子当たり平均して2個(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、又は240個)~500個(例えば、490、480、470、460、450、440、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、又は250個)のアミン基を含む。特定の実施形態では、高分子分散剤は、1分子当たり平均して2個(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、又は190個)~500個(例えば、490、480、470、460、450、440、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、又は200個)のアミン基を含む。特定の実施形態では、高分子分散剤は、1分子当たり平均して2個(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、又は290個)~500個(例えば、490、480、470、460、450、440、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、又は300個)のアミン基を含む。
【0084】
特定の実施形態では、官能化酸成分は、芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸を含む。
【0085】
特定の実施形態では、官能化酸成分は、ドデシルベンゼンスルホン酸を含む。例示的な市販のドデシルベンゼンスルホン酸は、BASFから入手可能なMaranil(登録商標)DBS/LCである。
【0086】
特定の実施形態では、芳香族官能基は、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、C~C10芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、置換されたC~C10芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、C~C10芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、置換されたC~C10芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、任意選択的に置換されたC~C芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、C~C芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、置換されたC~C芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、任意選択的に置換されたC芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、C芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、置換されたC芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、任意選択的に置換されたC芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、C芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、置換されたC芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、任意選択的に置換されたC10芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、C10芳香族基である。特定の実施形態では、芳香族官能基は、置換されたC10芳香族基である。
【0087】
特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C20炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C18炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C16炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C14炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C12炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C10炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC10~C22炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC10~C20炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC10~C18炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC10~C16炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC10~C14炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC10~C12炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC10炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC12~C22炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC12~C20炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC12~C18炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC12~C16炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC12~C14炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC12炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC14~C22炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC14~C20炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC14~C18炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC14~C16炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC14炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC16~C22炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC16~C20炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC16~C18炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC16炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC18~C22炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC18~C20炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC18炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC20~C22炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC20炭化水素基である。特定の実施形態では、脂肪族官能基は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC22炭化水素基である。
【0088】
特定の実施形態では、官能化酸成分は、以下の一般式による少なくとも1種の化合物を含み、
【化4】
式中、
は、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のC~C22炭化水素基であり(代替の実施形態では、Rは、先に記載された様々な実施形態のうちの1つの炭化水素基であり得)、
は、芳香族官能基、任意選択的に置換されたC~C10芳香族基であり(代替の実施形態では、Rは、先に記載された様々な実施形態のうちの1つの芳香族基であり得)、
Wはリン又は硫黄であり、
mは1又は2であり、Wが硫黄である場合、mは1又は2であり、Wがリンである場合、mは1であり、
nは1又は2であり、Wが硫黄である場合、nは1であり、Wがリンである場合、nは2であり、
sは0又は1であり、
tは0又は1である、
ただし、s及びtの両方が、0になることはできない。
【0089】
特定の実施形態では、Wは硫黄である。特定の実施形態では、Wはリンである。特定の実施形態では、Wは硫黄であり、mは1であり、nは1である。特定の実施形態では、Wは硫黄であり、mは2であり、nは1である。特定の実施形態では、Wはリンであり、mは1であり、nは2である。
【0090】
特定の実施形態では、sは1であり、tは1である。特定の実施形態では、sは0であり、tは1である。特定の実施形態では、sは1であり、tは0である。
【0091】
特定の実施形態では、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも60(例えば、65、70、75、80、85、90、又は95)パーセントは、官能化酸成分の分子で各々個別に中和される。特定の実施形態では、高分子分散剤中に存在するアミン基の実質的に全ては、官能化酸成分の分子で各々個別に中和される。この文脈では、「実質的に全て」とは、官能化酸成分の分子で中和されたアミン基の数が、環境において物理的/化学的に可能な限り多いことを意味する。
【0092】
高分子分散剤中に存在するように、各アミン基は、独立して、一級、二級、又は三級であり得る。特定の実施形態では、アミン基がポリエーテルペンダント基内に存在することは、ポリエーテルペンダント基が液体媒体中で溶媒和するのではなく顔料表面と会合することを好む原因となり得るか、又はそうでなければ、ポリエーテルペンダント基を、(骨格のアミン基に関連した)顔料を液体媒体中に分散させる目的に適さないものにするので、望ましくない場合がある。
【0093】
本主題による好適な高分子分散剤は、例えば、米国特許第7,767,750(B2)号、同第8,859,675(B2)号、同第8,987,374(B2)号、及び同第9,416,280(B2)号に開示されている。これらの文献は、本主題の最も広い実施形態の範囲外である高分子分散剤を開示し得ることに留意されたい。ただし、これらの文献は、本主題の範囲内に入る好適な高分子分散剤の多くの実施形態を開示しており、したがって、本明細書に記載される高分子分散剤の例示である。
【0094】
特定の実施形態では、先に記載された組成物は、官能化酸成分でのアミン基の中和を妨害する材料を含まない。特定の実施形態では、官能化酸成分でのアミン基の中和を妨害し得る材料は、所望の量の中和が起こるまで、本明細書に記載される組成物には添加されない。
【0095】
顔料分散体であって、(a)顔料と、(b)顔料のための高分子分散剤であって、(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、少なくとも2つのアミン基が、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含む、顔料のための高分子分散剤と、(c)芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含む官能化酸成分と、を含み、高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和されている、顔料分散体も提供される。特定の実施形態では、顔料分散体は、(a)顔料と、(b)本明細書で先に記載された組成物のうちのいずれか1つとを含む。
【0096】
インク配合物であって、(a)本明細書で先に記載された顔料分散体と、(b)溶媒と、(c)結合剤と、(d)少なくとも1種の追加の添加剤と、を含む、インク配合物が更に提供される。
【0097】
特定の実施形態では、溶媒は、極性溶媒である。
【0098】
特定の実施形態では、結合剤は、高分子結合剤である。
【0099】
特定の実施形態では、少なくとも1種の追加の添加剤は、1~5種の追加の添加剤を含む。
【0100】
特定の実施形態では、少なくとも1種の追加の添加剤は、湿潤剤、安定化剤、接着促進剤、ワックス、又は消泡剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0101】
特定の実施形態では、官能化酸成分でのアミン基の中和を妨害し得る材料は、所望の量の中和が起こるまで、本明細書に記載されるインク配合物には添加されない。
【0102】
顔料分散体を生成する方法であって、顔料、顔料のための高分子分散剤、及び官能化酸成分を任意の順序で組み合わせる工程と、顔料を粉砕する任意選択的な工程と、を含み、(a)高分子分散剤が、(i)1分子当たり平均して少なくとも2つのポリエーテルペンダント基であって、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、単量体単位から構成され、単量体単位の少なくとも半分が、ポリ(エチレンオキシド)単量体単位及び/又はポリ(プロピレンオキシド)単量体単位であり、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基が、高分子分散剤の総重量に基づいて、高分子分散剤の少なくとも50重量パーセントを構成する、ポリエーテルペンダント基と、(ii)1分子当たり平均して少なくとも2つのアミン基であって、少なくとも2つのアミン基が、少なくとも2つのポリエーテルペンダント基中に存在しない、アミン基と、を含み、(b)官能化酸成分が、芳香族官能基又は脂肪族官能基のうちの少なくとも1つで官能化されたスルホン酸及び/又はリン酸を含み、(c)高分子分散剤中に存在するアミン基の少なくとも60パーセントが、官能化酸成分の分子で各々個別に中和され、(d)顔料を粉砕する任意選択的な工程が、(i)実施されないか、(ii)高分子分散剤及び/若しくは官能化酸成分の添加前に、顔料単独に対して実施されるか、又は(iii)顔料と、高分子分散剤及び/若しくは官能化酸成分との組み合わせに対して実施される、方法も提供される。
【0103】
特定の実施形態では、高分子分散剤と官能化酸成分とは、顔料の添加前に組み合わされ、顔料を粉砕する任意選択的な工程は、顔料が高分子分散剤と官能化酸成分との組み合わせに添加される前又は後に実施される。特定の実施形態では、高分子分散剤と官能化酸成分とは、顔料の添加前に組み合わされ、顔料を粉砕する工程は、顔料が高分子分散剤と官能化酸成分との組み合わせに添加される前又は後に実施される。特定の実施形態では、高分子分散剤と官能化酸成分とは、顔料の添加前に組み合わされ、顔料を粉砕する工程は、顔料が高分子分散剤と官能化酸成分との組み合わせに添加される前に実施される。特定の実施形態では、高分子分散剤と官能化酸成分とは、顔料の添加前に組み合わされ、顔料を粉砕する工程は、顔料が高分子分散剤と官能化酸成分との組み合わせに添加された後に実施される。
【0104】
特定の実施形態では、高分子分散剤と顔料とが組み合わされ、顔料を粉砕する任意選択的な工程は、高分子分散剤と顔料との組み合わせに対して実施され、次いで官能化酸成分は、顔料組成物に添加される。特定の実施形態では、高分子分散剤と顔料とが組み合わされ、顔料を粉砕する工程は、高分子分散剤と顔料との組み合わせに対して実施され、次いで官能化酸成分は、顔料組成物に添加される。
【0105】
特定の実施形態では、顔料のための高分子分散剤及び官能化酸成分は、一緒に、本明細書で先に記載された組成物のいずれか1つから構成され得る。
【0106】
インク配合物を製造する方法であって、(a)先に記載された顔料分散体を生成する方法を実施して、顔料分散体を形成することと、(b)以下の配合成分:(i)溶媒、(ii)結合剤、及び(iii)少なくとも1種の追加の添加剤を、顔料分散体に添加することと、を順に含む、方法が更に提供される。
【0107】
特定の実施形態では、溶媒は、極性溶媒である。
【0108】
特定の実施形態では、結合剤は、高分子結合剤である。
【0109】
特定の実施形態では、少なくとも1種の追加の添加剤は、1~5種の追加の添加剤を含む。
【0110】
特定の実施形態では、少なくとも1種の追加の添加剤は、湿潤剤、安定化剤、接着促進剤、ワックス、又は消泡剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0111】
先に記載された方法の特定の実施形態では、官能化酸成分でのアミン基の中和を妨害し得る材料は、所望の量の中和が起こるまで、本明細書に記載されるインク配合物には添加されない。このような材料は、当業者に明らかであるように、樹脂、結合剤、及び/又は追加の添加剤を含み得る。
【実施例
【0112】
本明細書で開示される主題は、以下の実施例を参照してより良好に理解され得るが、これらの実施例は、本明細書で開示される主題を更に例示するために記載されるにすぎない。例示的な実施例は、いかなる様式でも主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0113】
比較例1:発明者Dean Thetford及び譲受人The Lubrizol Corporationに2010年8月3日に発行された米国特許第7,767,750(B2)号の実施例1、第11欄、35~57行。
【0114】
比較例2:200部のSURFONAMINE(登録商標)B-200ポリエーテルアミン(Huntsman International LLC製)を、11.6部の2-ヒドロキシエチルアクリレート及び0.03部の2,6-ジ-tertブチル-4-メチルフェノールとともに反応容器に充填し、続いて70℃で48時間撹拌することによって、中間体Aを作製した。250部の酢酸エチル及び67.6部のトリレン-2,4-ジイソシアネートを窒素下で別の反応容器に充填し、続いて撹拌し、289.7部の中間体A及び125部の酢酸エチルを10分間かけて充填した。次いで、15.78部の1,1’-((3-(ジメチルアミノ)プロピル)イミノ)ビス(2-プロパノール)及び32.55部の酢酸エチルを10分間かけて容器に充填した。次いで、混合物を65℃に1時間加熱し、続いて95.13部のSURFONAMINE(登録商標)B-200ポリエーテルアミン及び94.7部の酢酸エチルを充填し、続いて65℃で追加の2時間撹拌して、比較例2の分散剤を得た。
【0115】
比較例3:酢酸エチル中の24部のEF60、50部のJeffamine M2005、及び0.93部のDMAPAを使用して、発明者Stuart N.Richards及び譲受人Lubrizol Limitedに2016年8月16日に発行された米国特許第9,416,280(B2)号の実施例7、第11欄、45~53行(第10欄、25~48行の比較例Cを参照)に記載されているプロセスに従って、分散剤を生成した。得られた混合物を、追加の酢酸エチルを添加することによって40.0重量パーセントの固形分に調整した。
【0116】
比較例4:0.25部の酢酸を1.75部の比較例1に添加し、続いて材料が均質に見えるまで約1分間機械的に撹拌し、その後容器を一組のローラー上に置いて、約30分間穏やかな混合を提供することによって、分散剤を生成した。
【0117】
比較例5:0.13部の安息香酸を1.87部の比較例1に添加し、続いて材料が均質に見えるまで約1分間機械的に撹拌し、その後容器を一組のローラー上に置いて、約30分間穏やかな混合を提供することによって、分散剤を生成した。
【0118】
実施例1:225部の比較例1と309.38部のエタノールとの混合物を50℃で1時間撹拌し、続いて84.38部のドデシルベンゼンスルホン酸を添加し、50℃で追加の1時間撹拌して、分散剤を作成した。
【0119】
実施例2:6.15部の比較例2と22.48部のエタノールとの混合物を、材料が均質に見えるまで約1分間機械的に撹拌し、その後容器を一組のローラー上に置いて、約30分間穏やかな混合を提供した。次いで、0.47部のドデシルベンゼンスルホン酸を混合物に添加し、続いて材料が均質に見えるまで約1分間機械的に撹拌し、その後容器を一組のローラー上に置いて、約30分間穏やかな混合を提供して、分散剤を作成した。
【0120】
実施例3:7.14部の比較例3と、19.52部のエタノールと、2.17部の酢酸エチルとの混合物を、材料が均質に見えるまで約1分間機械的に撹拌し、その後容器を一組のローラー上に置いて、約30分間穏やかな混合を提供した。次いで、0.47部のドデシルベンゼンスルホン酸を混合物に添加し、続いて材料が均質に見えるまで約1分間機械的に撹拌し、その後容器を一組のローラー上に置いて、約30分間穏やかな混合を提供して、分散剤を作成した。
【0121】
実施例4:35部の比較例3を反応フラスコに充填し、窒素下で撹拌し、0.21部のベンゼンスルホン酸を0.21部の酢酸エチルとともに反応容器に充填し、次いで、反応混合物をフラスコに取り付けたコンドルを用いて50℃に1時間加熱して、分散剤を作成した。
【0122】
実施例5:35部の比較例3を反応フラスコに充填し、窒素下で撹拌し、0.21部のフェニルホスホン酸を0.21部の酢酸エチルとともに反応容器に充填し、次いで、反応混合物をフラスコに取り付けたコンドルを用いて50℃に1時間加熱して、分散剤を作成した。
【0123】
特定の分散剤がインク(例えば、包装材料の印刷に使用されるインク)における使用に好適であり得るかどうかを判定するために、以下に記載されるように、2つの種類の実験:相溶性試験、並びに分散試験A及び分散試験Bの一方又は両方を実施し得る。特定の分散剤は、相溶性試験及び分散試験A又は分散試験Bのうちの少なくとも1つに合格する場合、(包装)インクにおける使用に好適であるとみなされ得る。
【0124】
先の実施例及び比較例において記載された分散剤の各々を、相溶性試験及び分散試験A又は分散試験Bのうちの1つに従って試験し、結果を以下の表1に報告する。相溶性試験は、分散剤がインク媒体と相溶性であるかどうかの尺度である。分散試験A及び分散試験Bは、分散剤が特定の顔料を分散させることが可能かどうか判定する方法であり、各試験は、他の類似の顔料が同じ試験に合格し得るかどうかを表し得、したがって、分散剤が他の類似の顔料とともに使用するのに好適であることを示し得る。したがって、相溶性試験及び分散試験A又は分散試験Bのうちの少なくとも1つに合格することは、特定の分散剤が少なくとも1つの種類の顔料とともに使用するのに好適であることを示す。
【0125】
相溶性試験(「CT」):4部のニトロセルロースワニス(Nobel NC Co.,Ltd.製のDLX 3-5)を、5部のエタノール及び1部の酢酸エチルに溶解して、ワニス溶液を作製した。別に、2部の分散剤を3部のエタノール溶媒に溶解した。5部のワニス溶液を混合物に添加し、撹拌し、続いて2部の有機チタネート(Dorf Ketal Chemicals India Pvt Ltd製のTYZOR(登録商標)IAM)を添加し、均質になるまで撹拌した。室温で2週間保存した後、混合物を観察し、ゲル形成及び/又は濁りがあれば、相溶性試験の不合格として記録し、流動性の透明な流体は、相溶性試験の合格として記録した。
【0126】
分散試験B(「DTB」):3.39部の分散剤を、22.48部のエタノール及び3.39部の酢酸エチルに溶解した。15.75部の顔料ブルー15:4を添加し、撹拌して、顔料を浸潤させた。125部の3mmガラスビーズを添加し、得られた混合物を、DAS 200分散機(LAU GmbHから入手可能)を使用して1時間分散させて、ミルベースを生成した。ミルベースの粘度を、250μmギャップ、25℃で平行板セットアップを使用するTAレオメーターを使用して測定した。38秒-1のせん断速度で2Pa・s以上の粘度値を分散試験Bの不合格とみなし、一方で38秒-1のせん断速度で2Pa・s未満の値を分散試験Bの合格とみなした。
【表1】
【0127】
実施例を除いて、又は他に明示的に示される場合を除いて、又は文脈により要求される場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを特定する本明細書における全ての数値量は、「約」という語によって修飾されるものとして理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、所与の量の値が、記載された値の±20%以内であることを意味する。他の実施形態では、値は、記載された値の±15%以内である。他の実施形態では、値は、記載された値の±10%以内である。他の実施形態では、値は、表示値の±5%以内である。他の実施形態において、値は、表示値の±2.5%以内である。他の実施形態では、値は、記載された値の±1%以内である。他の実施形態では、値は、本明細書に提供される開示に基づいて、本明細書に記載される文字通りの量を含む組成物と実質的に同様に機能することが当業者によって理解されるであろう、明示的に記載された値の範囲内である。
【0128】
本明細書に記載の量、範囲、並びに比の上限及び下限は、独立して組み合わせることができ、開示された範囲内の任意の量は、代替的な実施形態において、より狭い範囲の最小値又は最大値を提供することが企図されることが理解されるべきである(ただし、当然ながら、範囲の最小量は同じ範囲の最大量よりも低くなければならない)。同様に、本明細書に開示された主題の各要素についての範囲及び量は、他の要素のうちのいずれかについての範囲又は量と一緒に使用することができる。
【0129】
本明細書に開示された主題を例示する目的で、特定の代表的な実施形態及び詳細を示したが、本主題の範囲から逸脱することなく様々な変更及び改良を行うことができることが当業者には明らかであろう。これに関して、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】