IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-514821重質炭化水素のメソフェーズピッチへの熱変換
<>
  • 特表-重質炭化水素のメソフェーズピッチへの熱変換 図1
  • 特表-重質炭化水素のメソフェーズピッチへの熱変換 図2
  • 特表-重質炭化水素のメソフェーズピッチへの熱変換 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】重質炭化水素のメソフェーズピッチへの熱変換
(51)【国際特許分類】
   C08G 83/00 20060101AFI20240327BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08G83/00
C08L95/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561733
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 US2022023706
(87)【国際公開番号】W WO2022216850
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/172,340
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】リウ イフェイ
(72)【発明者】
【氏名】コーン スティーブン ティー
(72)【発明者】
【氏名】イエ ジェフリー シー
(72)【発明者】
【氏名】シュー テン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
【Fターム(参考)】
4J002AG001
4J031BA01
4J031BA04
4J031BB01
4J031BC03
4J031BC04
4J031BC10
4J031BD05
4J031BD14
4J031BD15
4J031BD18
4J031BD19
(57)【要約】
メソフェーズピッチの製造プロセスであって、T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を準備するステップと、この原料を少なくとも450℃の温度で加熱して、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、この加熱が、1,000秒以上の等価反応時間を有するのに十分な反応条件下で行われるステップと、メソフェーズピッチを回収するステップとを含む、プロセス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソフェーズピッチの製造プロセスであって、
T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を準備するステップと、
前記原料を少なくとも450℃の温度で加熱して、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、前記加熱が、1,000秒以上の等価反応時間を有するのに十分な反応条件下で行われる、ステップと、
前記メソフェーズピッチを回収するステップと
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記温度が600℃未満である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記原料が、5.5~10wt%の水素含量を有する、請求項1~2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記加熱が、前記メソフェーズピッチを生成するために前記原料に適用される加熱ステップのみである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
蒸気を注入するステップをさらに含み、前記蒸気が、反応器に、又は前記原料が反応器に供給される時の前記原料に、又は前記加熱が行われている反応器からの前記メソフェーズピッチアウトプットを含む熱処理生成物に注入される、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記メソフェーズピッチの収率が、1wt%超、好ましくは10wt%~50wt%又は10~60%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応条件が、不活性雰囲気、450℃~520℃の範囲の温度、及び500~1,500psigの範囲の圧力を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
Xが、前記加熱の等価反応時間(ERT)であり、Yが、ASTM D1159に準拠して測定される前記原料の臭素価であり、かつ前記加熱が、関係[X*Y]≧31,000秒を満たすのに十分な反応条件下で行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記加熱ステップの温度を制御して、前記等価反応時間を1,000秒より長くさせるステップをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記原料が、前記原料の質量に基づいて約1wt%~約40wt%に及ぶ、≧1,050°F(566℃)の沸点を有する留分を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記原料が、主カラム残留物(MCB)、水素加工MCB、スチームクラッカータール、水素化スチームクラッカータール、重質コーカーガスオイル、スチームクラッカーガスオイル、減圧残油、脱アスファルト残渣又はロック、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記メソフェーズピッチの回収ステップが、軽質炭化水素から前記メソフェーズピッチを分離するステップを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記加熱が反応器内で行われ、前記プロセスが、前記反応器内の液体線速度を制御して、メソフェーズ前駆体をスラリー形態にさせるステップをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を受け取り、前記原料を少なくとも450℃の温度で加熱して、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物を生成するように構成された反応器であって、この反応器が、1,000秒以上の等価反応時間を有するのに十分な反応条件下で前記原料を加熱するように構成されている、反応器と、
前記反応器と流体連通している分離装置であって、この分離装置が、前記反応器から受け取られた流出物からメソフェーズピッチを分離するように構成され、好ましくは前記分離装置は、サイクロン分離装置又は脱アスファルターである、分離装置と
を含むシステム。
【請求項15】
蒸気を前記反応器に、前記流出物に、及び/又は前記原料に注入するように構成されたスチームインジェクターをさらに含む、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照することによりその開示内容を本明細書に援用する2021年4月8日に出願された米国仮出願第63/172340号の利益及び該出願に対する優先権を主張する。
関連出願
本開示は、参照することによりその内容全体を本明細書に援用する2021年1月15日に出願された米国仮出願第63/138,051号と技術的に関連する。
分野
本開示は、通常は炭素繊維の製造に用いるためのメソフェーズピッチの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
等方性ピッチ及びメソフェーズピッチは、石炭若しくは石油原料の加工中又は小芳香族種の酸触媒縮合等の他の方法によって生成される残渣から形成され得る炭素含有原料である。いくつかのグレードの炭素繊維のために、等方性ピッチを初期原料として使用することができる。しかしながら、等方性ピッチから製造される炭素繊維は、一般的にほとんど分子配向を示さず、相対的に不十分な機械特性を示す。等方性ピッチから形成される炭素繊維とは対照的に、メソフェーズピッチから製造される炭素繊維は非常に好ましい分子配向及び相対的に優れた機械特性を示す。
慣例的に、メソフェーズピッチは、中圧~高圧(>400℃及び>300psi)における重質芳香族炭化水素の等方性ピッチへの熱変換後の薄膜(wiped film)エバポレーターを用いた連続的イソピッチ(isopitch)分離によって製造可能である。等方性ピッチは、典型的に真空下バッチモードで>420℃にて長い滞留時間、例えば、>6時間でメソフェーズに変換される。バッチプロセスは、大型オートクレーブにおける温度の不均質性及びコークス形成の高い傾向のためスケールアップするのが困難である。現在の技術水準は、典型的に約100ガル(gal)サイズに限定されている。非効率的なバッチプロセスは、メソフェーズのための高い生産コストをもたらす。
メソフェーズ製造プロセスにおけるイソピッチ形成の目的は、メソフェーズ前駆体の可能性がある炭素質種、すなわちマイクロ残留炭素分(micro carbon residue)(MCR)を発生させ、濃縮することである。メソフェーズ製造のためのオートクレーブプロセスは、典型的に425℃超の温度で長い滞留時間、低い炭化水素分圧及び多くの場合真空中で進む。結果として、メソフェーズの製造コストは非常に高く、必然的に高価なピッチ系炭素繊維をもたらす。
鋼に対してピッチ系炭素繊維の格別に高い性能にもかかわらず、ピッチ系炭素繊維は、例えば人工衛星、スポーツ用品、ロケットエンジンノズル等のニッチ用途に限定されており、これはメソフェーズ製造の高コストが主因である。
【0003】
米国特許第4,208,267号は、メソフェーズピッチの形成方法を記載している。等方性ピッチサンプルが溶媒抽出される。この抽出物は次に230℃~約400℃の範囲の高温にさらされてメソフェーズピッチを形成する。
米国特許第5,032,250号は、メソフェーズピッチの単離プロセスを記載している。メソゲンを含有する等方性ピッチが溶媒と混ぜ合わされ、濃密相又は超臨界条件にさらされて、メソゲンが相分離される。
米国特許第5,259,947号は、(1)炭素質芳香族等方性ピッチを溶媒と組み合わせるステップと、(2)十分な撹拌及び十分な加熱を適用して、前記組み合わせ中の不溶性物質に懸濁液体溶媒和メソフェーズ小滴を形成させるステップと、(3)不溶性物質を固体又は流体溶媒和メソフェーズとして回収するステップとを含む、溶媒和メソフェーズの形成方法を記載している。
米国特許公開第2019/0078023号は、統合プロセスでメソフェーズピッチ及び追加の石油化学製品を製造するための原油及び石油残渣のアップグレーディングを記載している。
興味ある可能性がある他の参考文献としては、米国特許第4,518,483号、米国特許第9,222,027号、米国特許公開第2019/0382665号、及び米国特許公開第2020/0181497号が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】メソフェーズ製造のための典型的なプロセス及びシステムの説明図である。
図2】本発明の技術的進歩の実施形態によって作製された固体生成物の画像である。
図3】本発明の技術的進歩の実施形態によって作製された固体生成物の画像である。
【発明の概要】
【0005】
概要
メソフェーズピッチの製造プロセスであって、T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を準備するステップと、この原料を少なくとも450℃の温度で加熱して、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、この加熱が、1000時間以上の等価反応時間(equivalent reaction time)を有するのに十分な反応条件下で行われるステップと、メソフェーズピッチを回収するステップとを含む、プロセス。
本プロセスでは、温度は600℃未満である。
本プロセスでは、原料は、5.5~10wt%の水素含量を有し得る。
本プロセスでは、加熱は、メソフェーズピッチを生成するために原料に適用される加熱ステップのみである。
本プロセスは、加熱が行われている反応器に蒸気を注入するステップをさらに含むことができる。
本プロセスは、原料が反応器に供給される時の原料に蒸気を注入するステップをさらに含むことができる。
本プロセスは、加熱が行われている反応器からのメソフェーズピッチアウトプットを含む熱処理生成物に蒸気を注入するステップをさらに含むことができる。
本プロセスでは、メソフェーズピッチの収率は、1wt%超であり得る。
本プロセスでは、メソフェーズピッチの収率は、10wt%~50wt%の範囲であり得る。
本プロセスでは、メソフェーズピッチの収率は、10wt%~60wt%の範囲であり得る。
本プロセスでは、反応条件は、不活性雰囲気、450℃~520℃の範囲の温度、及び500~1,500psigの範囲の圧力を含み得る。
【0006】
本プロセスでは、Xが、加熱の等価反応時間(ERT)であり、Yが、ASTM D1159に準拠して測定される原料の臭素価であり、かつ加熱は、関係[X*Y]≧31,000秒を満たすのに十分な条件下で行われる。
本プロセスは、加熱ステップの温度を制御して、等価反応時間を1,000秒より長くさせるステップをさらに含むことができる。
本プロセスは、原料の質量に基づいて約1wt%~約40wt%に及ぶ、≧1,050°F(566°C)の沸点を有する留分を含む原料を含め得る。
本プロセスでは、原料は、主カラム残留物(main column bottoms)(MCB)、水素加工MCB、スチームクラッカータール、水素処理スチームクラッカータール、重質コーカーガスオイル(heavy coker gas oil)、スチームクラッカーガスオイル、減圧残油(vacuum resid)、脱アスファルト残渣又はロック、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含むことができる。
本プロセスでは、メソフェーズピッチを回収するステップは、軽質炭化水素からメソフェーズピッチを分離するステップを含むことができる。
本プロセスでは、加熱を反応器内で行うことができ、かつ本プロセスは、反応器内の液体線速度(liquid linear velocity)を制御して、メソフェーズ前駆体をスラリー形態にさせるステップをさらに含む。
本プロセスでは、制御ステップは、蒸気の注入を含むこができる。
【0007】
T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を受け取り、この原料を少なくとも450℃の温度で加熱して、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物を生成するように構成された反応器であって、この反応器が、1,000秒以上の等価反応時間を有するのに十分な反応条件下で原料を加熱するように構成されている反応器と、この反応器と流体連通している分離装置であって、この分離装置が、反応器から受け取られた流出物からメソフェーズピッチを分離するように構成されている、分離装置とを含むシステム。
本システムは、蒸気を反応器、流出物、及び/又は原料に注入するように構成されたスチームインジェクターをさらに含むことができる。
本システムでは、分離装置はサイクロン分離装置であり得る。
本システムでは、分離装置は脱アスファルター(deasphalter)であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
予想外に、スラリーオイルから単一の熱的ステップでメソフェーズピッチを製造できることが判明した。この予想外の結果は、図1に示すようにメソフェーズピッチへの連続的なワンステップ熱的プロセスの可能性を開く。本発明の技術的進歩の実施形態は、400psig(反応器入口で測定される)超の操作温度で連続流管型反応器を用いる単一の熱的ステップを利用することができる。従来のプロセスと比較すると、この管型反応器は、より高い温度で動作するが、コーキングを軽減するためにより短い滞留時間で、連続運転の苛酷度と調和しながら動作する。例えば、500℃にて15分の滞留時間で動作する連続管型反応器は、4,000等価秒苛酷度(equivalent sec severity)に相当する。反応器のインプット前又は、又は反応器のアウトプット後に、管型反応器への蒸気の同時供給を利用することができる。分離装置、例えば、重力分離によるサイクロン又は溶解性によるDAU(脱アスファルトユニット)が、軽質炭化水素及び蒸気からメソフェーズを分離することができる。
【0009】
背景セクションで述べたツーステッププロセスとは異なるワンステップ熱的プロセスによってメソフェーズを作ることができる。イソピッチ(すなわち、5~6wt%)より相対的に高いH含量(すなわち、5.5wt%~10wt%、好ましくは7~8wt%)を有する原料、例えば主カラム残留物(MCB)を高温で直接メソフェーズに変換することができる。本発明の技術的進歩の例示実施形態は、下記を含む:(1)典型的なビスブレーキング(visbreakering)条件より高い苛酷度条件で原料を熱処理するステップ;(2)反応容器からの軽質留分のストリッピングを誘導する反応中に圧力が一定(又は滞留時間にわたって+/-10%を超えない変動で実質的に一定)状態である;(3)長い滞留時間が、異方性形態であり、かつその固有の複屈折のため偏光顕微鏡によって評価可能な規則正しいメソフェーズを形成するのに十分な芳香族重合を可能にする;及び(4)例えばサイクロン又はバッチプロセスの場合は液体生成物を単にデカントすることによって、軽質炭化水素からメソフェーズを分離することによってメソフェーズを回収する。
本明細書に記載の種々の実施形態は、T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する重質原料からのメソフェーズピッチの製造プロセスを提供する。しかしながら、本発明の技術的進歩によりMCBからの他の原料を使用することができる。
一般的に、重質原料の単一熱処理は、約450℃~約520℃の範囲の温度及び5分~8時間、さらに好ましくは約3分~約6時間、さらに好ましくは5分~1時間、例えば約10分~約60分(又は1時間)、最も好ましくは5分~30分の滞留時間で行われる。
【0010】
本願の詳細な説明及び特許請求の範囲内の全ての数値は、「約(about又はapproximately)」で修飾された指示値であり、当業者が予測するであろう実験誤差及び変動を考慮する。別段の指示がない限り、室温は約23℃である。
本明細書で使用する場合、「wt%」は質量百分率を意味し、「vol%」は体積百分率を意味し、「mol%」はモル百分率を意味し、「ppm」は100万分の1を意味し、「ppm wt」及び「wppm」を互換的に用いて、質量ベースの100万分の1を意味する。本明細書で使用する全ての「ppm」は、別段の定めがない限り、質量ppmである。本明細書の全ての濃度は、問題になっている組成物の総量に基づいて表される。本明細書に記載の全ての範囲は、別段の定めがないか又は反対に指示されない限り、2つの具体的実施形態として両端点を含めるべきである。
【0011】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的で、下記用語を定義する。
本明細書で使用する場合、用語「等価反応時間」又は「等価滞留時間」(ERT)は、468℃で操作する反応器内で54kcal/モルの活性化エネルギーを有する反応について滞留時間の秒数として表される操作の苛酷度を指す。操作のERTは以下のように計算される。
【0012】
【数1】
式中、Wは、秒での操作の滞留時間であり;eは2.71828であり;Eaは225,936J/モルであり;Rは8.3145J・モル-1・K-1であり;Trxnは、ケルビンで表される操作温度である。ごく一般的な言い方をすると、温度が12~13℃上昇する毎に反応速度は2倍になる。従って、468℃で60秒の滞留時間は60ERTに等しく、温度を501℃に上げると、苛酷度として操作を5倍、すなわち300ERTにすることになる。別の方法で表現すると、468℃で300秒は、501℃で60秒に等しく、どちらのセットの条件下でも同一生成物の混合物及び分布が得られるはずである。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「ピッチ」は、石油、コールタール、又は他の有機基材の蒸留から得られる粘弾性の炭素質残渣を指す。本明細書で別段の定めがない限り、用語「ピッチ」は石油ピッチ(すなわち、石油の蒸留から得られるピッチ)を指す。
本明細書で使用する場合、用語「等方性ピッチ」は、光学的に規則正しい液晶状態に整列されていない分子を含むピッチを指す。
本明細書で使用する場合、用語「主カラム残留物(MCB)」は、流体接触分解プロセスからの底部留分を指す。より詳細には、MCBは、約200℃~650℃の範囲で沸騰する接触分解プロセスの範囲で沸騰する接触分解プロセスの生成物の留分を指す。しかしながら、沸点範囲は、操作条件に応じて変化する可能性がある。
本明細書で使用する場合、用語「メソフェーズピッチ」又は「メソフェーズ」は、構造的に規則正しい光学的に異方性の液晶であるピッチを指す。メソフェーズ構造については、光複屈折、光散乱、又は他の散乱技術等の種々の技術によって記述し、特徴づけることができる。
【0014】
試験方法
光学顕微鏡法によるメソフェーズピッチ含量
本明細書に特別な定めのない限り、サンプルのメソフェーズピッチ含量は、光学顕微鏡法により下記手順に従って決定する。光学顕微鏡を用いてサンプルのデジタル画像を作製する。次にその高い屈折率に起因するメソフェーズピッチに対応する軽強度領域で、色強度によってデジタル画像の総画素数のヒストグラムを作成する。メソフェーズピッチに相当する特定閾値未満の強度を有するエリアで、閾値処理によって画像をメソフェーズピッチエリアと非メソフェーズピッチエリアに分割する。次に画像の非メソフェーズピッチ面積を減算した後、画像のメソフェーズピッチ面積の総量を画像の総面積で割ることによって面積%でのサンプルのメソフェーズピッチ含量の推定値を得る(その結果は、次にvol%の推定値に対応するように外挿することができる)。
以下に、本発明の特定態様についてさらに詳述する。下記説明は特定の態様に関するものであるが、これらは例示に過ぎず、本発明は他の方法で実施できることが当業者なら分かるだろう。「発明」への言及は、請求項によって定義される発明の1つ又は複数を指し得るが、必ずしも全てではない。表題の使用は、単に便宜のためであり、これらは本発明の範囲を特定の態様に限定するものと解釈すべきでない。
【0015】
重質原料
本開示のプロセスでは、重質原料を沸点範囲を特徴とし得る。沸点範囲を規定するための1つの選択肢は、フィードの初期沸点及び/又はフィードの最終沸点を使用することである。場合によっては、フィードのより代表的な説明を与え得る別の選択肢は、1つ以上の温度で沸騰するフィードの量に基づいてフィードを特徴づけることである。例えば、フィードの「T5」沸点は、フィードの5wt%が沸騰する温度と定義される。同様に、「T95」沸点は、フィードの95wt%が沸騰する温度である。所与の温度で沸騰するフィードの百分率は、例えば、ASTM D2887に規定される方法によって(又はASTM D2887が特定留分に適さない場合はASTM D7169の方法によって)決定可能である。一般に、重質原料はT5≧400°F(204℃)及び≦1,400°F(760℃)のT95を有し得る。該重質原料の例としては、1,050°F+(566℃+)留分を有するものがある。一部の態様では、566℃+留分は、重質原料の1wt%以上(すなわち、566℃以上のT99)、又は2wt%以上(566℃以上のT98)、又は10wt%以上(566℃以上のT90)、又は15wt%以上(566℃以上のT85)、又は30wt%以上(566℃以上のT70)、又は40wt%以上(566℃以上のT60)、例えば約1wt%~約40wt%又は約2wt%~約30wt%に相当し得る。
【0016】
本開示の重質原料は、その臭素価によって測定される反応性を特徴とし得る。本開示の重質原料は、ASTM D1159に準拠して測定される≧3、又は≧5、又は≧10、又は≧30、又は≧40、例えば約3~約50、又は約5~約40、又は約10~約30の臭素価を有し得る。
本開示の重質原料は、芳香族含量を特徴とし得る。本開示の重質原料は、約40モル%以上、又は約50モル%以上、又は約60モル%以上、例えば約75モル%まで若しくはおそらくさらに多くの芳香族炭素を含み得る。重質原料の芳香族炭素含量は、ASTM D5186に従って決定することができる。
本開示の重質原料は、平均炭素数を特徴とし得る。本開示の重質原料は、約33~約45(例えば、約35~約40、又は約37~約42、又は約40~約45)の平均炭素数を有する炭化水素で構成され得る。
本開示の重質原料は、ASTM D4530-15より測定されるマイクロカーボン残留物(MCR)を特徴とし得る。本開示の重質原料は、約5wt%以上(例えば、約5wt%~約45wt%、又は約10wt%~約45wt%)のMCRを有し得る。
本開示の重質原料は、水素含量を特徴とし得る。本開示の重質原料は、一般的に、約6wt%~約11wt%、例えば約6wt%~約10wt%、又は約7wt%~約8wt%の水素含量を有する。
本開示の重質原料は、多核芳香族炭化水素(PNA)と多環芳香族炭化水素(PAH)の累積濃度を特徴とし得る。本開示の重質原料は、部分的に水素化されたPNAと部分的に水素化されたPAHの約20wt%以上(例えば、約50wt%~約90wt%)の累積濃度を有し得る。
【0017】
一部の態様では、適切な重質原料は、約50wppm~約10,000wppm又はそれより多くの元素窒素(すなわち、原料内の種々の窒素含有化合物中の窒素の質量)を含み得る。さらに又はこれとは別に、重質原料は、約100wppm~約20,000wppmの元素硫黄、好ましくは約100wppm~約5,000wppmの元素硫黄を含み得る。硫黄は、通常は有機的に結合した硫黄として存在するだろう。該硫黄化合物の例としては、ヘテロ環式硫黄化合物の分類、例えばチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ベンゾチオフェン等並びにそれらの高級同族体及び類似体が挙げられる。他の有機的に結合した硫黄化合物としては、脂肪族、ナフテン系、及び芳香族メルカプタン、スルフィド、並びにジスルフィド及びポリスルフィドがある。
適切な重質原料の例としては、限定するものではないが、主カラム残留物(MCB)、スチームクラッカータール、重質コーカーガスオイル、スチームクラッカーガスオイル、減圧残油、脱アスファルト残渣又はロック、前述のいずれかの水素加工形又は水素処理形、及び前述のいずれかの組み合わせが挙げられる。好ましい重質原料は、水素加工MCBであり得る。重質原料の別の好ましい例は、水素処理スチームクラッカータールである。スチームクラッカータール及びその後の水素処理は、例えば、その内容全体を参照することによりここに援用する米国特許第8,105,479号に開示されているように、いずれの適切な方法によっても製造/実施するこができる。
【0018】
熱処理
本開示のプロセスでは、重質原料は、一般的に熱処理ステップを受けて、重質原料を脱アルキル化及び/又は脱水素化し、等方性ピッチ及びメソフェーズピッチを生成する。有利なことに、かつ予想外に、単一加熱ステップでより高い温度を用いることによってメソフェーズピッチの収量を増加させ得ることが判明した。より詳細には、一般的に、熱処理を約450℃~約550℃、好ましくは約480℃~約510℃の範囲の温度及び約5分~8時間、さらに好ましくは約5分~約1時間、最も好ましくは約5分~約30分、例えば約10分~約30分の範囲の滞留時間で行ってよい。典型的に、熱処理条件の必要な苛酷度は、重質原料の臭素価が減少するにつれて増加する。一般的に、熱処理は、関係[X*Y]≧31,000秒(例えば、≧40,000秒、又は≧50,000秒、又は≧60,000秒又は≧100,000秒、又は≧200,000秒、又は≧500,000秒)(Xは、加熱の等価反応時間であり、Yは、原料の臭素価である)を満たすのに十分な条件下で行われる。例えば、[X*Y]は、約31,000~約1,000,000秒、例えば約40,000秒~約700,000秒、又は約50,000秒~約500,000秒、又は約50,000秒~約100,000秒の範囲であってよい。例えば、重質原料が臭素価≧10を有する実施形態では、熱処理ステップの最小ERTは、約2,000秒以下、例えば500秒の最小ERTであり得る。重質原料が臭素価<10を有する実施形態では、熱処理ステップの最小ERTは、約2,000秒超、例えば、10,000秒の最小ERT、或いは、8,000秒の最小ERTであり得る。
【0019】
熱処理ステップの適切な圧力は、反応器入口で測定して、約200psig(1,380kPa-g)~約2,000psig(13,800kPa-g)、例えば約400psig(2,760kPa-g)~約1,800psig(12,400kPa-g)の範囲、最も好ましくは約1,000psig(6,894kPa-g)であり得る。熱処理は、いずれの容器でも、例えばタンク、パイプ、管型反応器、又は蒸留塔で行ってよい。熱処理を行なうために利用してよい適切な反応器構成の例は、参照することによりその内容全体をここに援用する米国特許第9,222,027号に記載されている。
【0020】
メソフェーズピッチ
熱処理(及び任意的なその後の分離ステップ)から得られる結果としてのメソフェーズピッチは、ASTM D4530-15に準拠して測定されるマイクロ残留炭素分(MCR)を特徴とし得る。一般的に、本開示のメソフェーズピッチは、30wt%以上(例えば、好ましくは約50wt%以上、さらに好ましくは約60wt%以上)のMCRを有し得る。軟化点のいずれの特徴づけをもASTM D3104-14に準拠して評価した。
メソフェーズピッチ含量は、ASTM D4616-95(2018)に準拠して測定した。
【0021】
炭素繊維
本明細書に記載のプロセスから得られるメソフェーズピッチを用いて、例えば通常の溶融紡糸プロセスを利用することによって炭素繊維を形成することができる。炭素繊維の形成のための溶融紡糸は既知技術である。例えば、書籍“Carbon-Carbon Materials and Composites”は、表題“Carbon Fiber Manufacturing”のD.D. Edie及びR.J. Diefendorfによる章を含む。別の例は、論文“Melt Spinning Pitch-Based Carbon Fibers”, Carbon, v.27(5), p 647, (1989)である。
【0022】
プロセスの概要
本明細書で開示するプロセスは連続又は半連続プロセスであってよいが、好ましくは連続プロセスである。図1は本開示の非限定プロセス例100の概要を示す。重質原料102が、容器(好ましくは管型反応器)104内で、関係[X*Y]≧31,000秒(Xは、加熱の等価反応時間であり、Yは、原料102の臭素価である)(別の可能性、苛酷度が、加熱が規則正しい液晶メソフェーズを作り出すようようなものである)を満たすのに十分な条件下で熱処理ステップを受ける。容器104内で行われる熱処理ステップが、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物又は流出物106の形成をもたらす。場合によっては、熱処理生成物106が分離装置108内で分離ステップを受けて、軽質炭化水素及び蒸気留分110及びメソフェーズピッチ112を形成することができる。任意的なスチームインジェクター114が蒸気116を容器104の前で原料102に、又は容器104に、又は容器104の後の流出物106に注入することができる。
【0023】
以下に図4の方法をどのようにして実行できるかに関して例となる詳細を提供する。重質炭化水素フィード、例えば、MCBを、500~1,500psigの圧力及び十分高い苛酷度、例えば、>1,000等価秒、好ましくは>2,000等価秒で動作する管型反応器に供給して、メソフェーズ前駆体を作製することができる。管型反応器内の温度は、450℃~600℃、さらに好ましくは450℃~520℃の範囲であり得る。反応器の閉塞を防止するために、形成されたメソフェーズ前駆体を管型反応器内でスラリー形態で維持することができる。これは、管型反応器内の液体線速度を例えば、>1ft/秒、好ましくは>4フィート/秒まで上昇させることによって遂行可能である。場合によっては反応器管の周囲又は反応器管の出口に蒸気を注入して、線速度を増加させ得る。分離装置、例えば、大気圧~50psigで動作するサイクロンに流出物を送って、メソフェーズから軽質炭化水素(及び蒸気)を分離することができる。メソフェーズの収率は、苛酷度に応じて(苛酷度が高いほど、メソフェーズ収率が高い)10~60%、好ましくは13~50%の範囲であり得る。通常の蒸留によって軽質炭化水素及び蒸気をさらに分離して、軽質炭化水素を回収することができる。場合により軽質炭化水素を管型反応器の入口に再循環させることができる。
【0024】
米国特許4,518,483は、まず最初に重質炭化水素原料(MCB等)のアスファルテン留分(ヘプタン不溶性)を抽出し、その後にバッチモードのヒートソーキング(heat soaking)ユニット内でアスファルテンをメソフェーズに変換することをクレームした。その後に減圧蒸留又はスチームストリッピングが続いて軽質物を除去することによってメソフェーズを濃縮した。MCBに比べて相対的に高いその軟化点を考慮すると、アスファルテンをフィードとして移送及び加工することは非常に難しいだろう。対照的に、本発明の技術的進歩の連続プロセスは、重質原料を全体として変換するように設計される。さらに、メソフェーズを濃縮するためにストリッピングの助けを借りずにメソフェーズが生成される。苛酷度条件は、米国特許4,518,483と異なり、代わりにサイクロンを用いて重力によってメソフェーズを分離することができる。
下記例は、本発明を例証する。数字の修正及び変更が可能であり、本発明は、添付の特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に記載した以外の方法で実施し得ることを理解すべきである。
【実施例
【0025】

例1:重質炭化水素原料の高苛酷度熱変換
精油所から得た主カラム残留物(MCB)を用いて単一熱反応を介してメソフェーズを作製した(すなわち、唯一の加熱ステップをMCB原料に適用してメソフェーズを生成する)。この例で用いたMCB原料は、566℃+留分(567℃のT94.5)に約6%ある。表1は、3つのメソフェーズピッチ調製プロセスの苛酷度条件及びそれらの対応する等価反応時間(ERT)を示す。等価反応時間(ERT)を用いて、数値が高いほど高い苛酷度の程度を数量化する。ERTは、468℃で54kcal/モルの活性化エネルギーを有する典型的なビスブレーキング条件に対する指定プロセス条件での相対的な滞留時間を指す。ビスブレーカーは、典型的に300~1,000ERTで操作される。不活性環境下、高圧で原料を熱処理するオートクレーブ内でメソフェーズ生成プロセスを行った。MCBは、熱的脱アルキル化及び脱水素化を受けて、重合して縮合芳香環構造を形成しながら軽質物を除去する。この生成物を高温で二相に分離することができ、生成物の一部が総液体生成物(total liquid product)(TLP)であり、他の部分が固体として残る。TLPは、典型的に100℃未満の軟化点を有し、固体は250℃超の軟化点を有する。表1に示すように、MCB変換の苛酷度が増すにつれて、固体の収率が増加し、一方でTLPの収率が減少する。460℃では、図2に示すように固体生成物はメソフェーズの特徴を示し、メソフェーズ含量が80%を超える。H含量は4.81wt%であり、それは、4.5~5wt%であるメソフェーズに典型的なH範囲に入る。同様に、470℃及び480℃で回収された固体も顕微鏡下でメソフェーズの光学的特徴を示し、固体の収率は480℃で46%に到達することができ、メソフェーズ含量は75~85%である。
表1のデータは、メソフェーズの収率が10~50wt%、好ましくは13~46wt%の範囲であり、1wt%超、13wt%超、又は22wt%超であり得ることを示す。表1のデータはバッチモードのオートクレーブから作成されたが、キネティクスは、本発明の技術的進歩が連続プロセスにおいて同一滞留時間下で同様の量のメソフェーズを生成することを証明する。
【0026】
表1. 選択した等方性ピッチ生成のプロセス条件及びERT
【表1】
【0027】
例2:重質炭化水素原料の低苛酷度熱変換
この例に用いた原料は例1と同じ原料である。MCBを440℃にて1,000psiのN2下で1時間熱処理した。対応するERTはおよそ850であり、これは典型的なビスブレーキング条件に相当する。表1の実験番号4に示すように、低苛酷度のためメソフェーズ様物質は回収されず、ガス及び軽質蒸留物として残ることでTLP収率は81.5%に達した。例1と例2の比較は、温度が、本発明の技術的進歩を利用するワンステップ熱変換によるメソフェーズ収率の増大に有効な変量であるという重要な結果を示唆する。
【0028】
例3:メソフェーズ製造への対費用効果の高い連続ワンステップ熱プロセス
現在の商慣行は、バッチモードで長い滞留時間、中温~高温及びおそらく真空下でイソピッチからメソフェーズを製造する。バッチプロセスは、過剰なコーキングに起因する顕著なファウリング問題をもたらす可能性がある。このプロセスにおけるメソフェーズの取り扱いは、メソフェーズが反応容器内で固体化する前に高温でメソフェーズを採取する必要があるので労働集約的である。まとめると、商業的バッチプロセスは、メソフェーズへの高コスト生産につながる。対照的に、連続流管型反応器及び分離装置を使用できる本発明の技術的進歩のワンステップ熱プロセスは、MCBの中間生成物であるイソピッチの代わりにMCBから直接メソフェーズを作り出す。管型反応器は、>400psigで、高温であるが短い滞留時間で動作して、表1に示すように実験の苛酷度と調和しながらコーキングを軽減することができる。例えば、500℃にて15分の滞留時間で動作する連続管型反応器は、表1の実験2に類似する4,000等価秒の苛酷度に等しい。管型反応器への蒸気の同時供給は、コークスの形成をさらに軽減することができた。サイクロンは、重力分離によって軽質炭化水素及び蒸気からメソフェーズを分離することができる。この連続的構成は、メソフェーズを製造するための対費用効果の高い選択肢を可能にし、実質的にコストを削減する。
【0029】
本明細書に記載の全ての文書は、いずれの優先権書類及び/又は試験手順をも含め、それらが本テキストと矛盾しない程度まで、参照することにより本明細書に組み込まれる。前述の一般的な記述及び具体的な実施形態から明らかなように、本発明の形態を説明及び記述したが、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく種々の修正を行うことができる。従って、本開示をそれらによって限定する意図でない。同様に、用語「含む(comprising)」は、米国法の目的の用語「含む(including)」と同義とみなす。同様に組成物、要素、要素群に移行句「含む(comprising)」が先行するときはいつでも、組成物、要素、要素群の記述に先行する移行句「から本質的に成る」、「から成る」、「から成る群より選択される」、又は「である」を伴う同一の組成物又は要素群をも企図し、逆もまた同様であるという共通認識がある。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-11-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソフェーズピッチの製造プロセスであって、
T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を準備するステップと、
前記原料を少なくとも450℃の温度で加熱して、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、前記加熱が、1,000秒以上の等価反応時間を有するのに十分な反応条件下で行われる、ステップと、
前記メソフェーズピッチを回収するステップと
を含む、前記プロセス。
【請求項2】
前記温度が600℃未満であり、前記原料が、5.5~10wt%の水素含量を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記加熱が、前記メソフェーズピッチを生成するために前記原料に適用される加熱ステップのみであり、前記メソフェーズピッチの収率が、1wt%超であり、前記反応条件が、不活性雰囲気、450℃~520℃の範囲の温度、及び500~1,500psigの範囲の圧力を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
蒸気を注入するステップをさらに含み、前記蒸気が、反応器に、又は前記原料が反応器に供給される時の前記原料に、又は前記加熱が行われている反応器からの前記メソフェーズピッチアウトプットを含む熱処理生成物に注入される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
Xが、前記加熱の等価反応時間(ERT)であり、Yが、ASTM D1159に準拠して測定される前記原料の臭素価であり、かつ前記加熱が、関係[X*Y]≧31,000秒を満たすのに十分な反応条件下で行われ、前記プロセスが、前記加熱ステップの温度を制御して、前記等価反応時間を1,000秒より長くさせるステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記原料が、前記原料の質量に基づいて約1wt%~約40wt%に及ぶ、≧1,050°F(566℃)の沸点を有する留分を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記原料が、主カラム残留物(MCB)、水素加工MCB、スチームクラッカータール、水素化スチームクラッカータール、重質コーカーガスオイル、スチームクラッカーガスオイル、減圧残油、脱アスファルト残渣又はロック、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記メソフェーズピッチの回収ステップが、軽質炭化水素から前記メソフェーズピッチを分離するステップを含み、前記加熱が反応器内で行われ、前記プロセスが、前記反応器内の液体線速度を制御して、メソフェーズ前駆体をスラリー形態にさせるステップをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を受け取り、前記原料を少なくとも450℃の温度で加熱して、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物を生成するように構成された反応器であって、この反応器が、1,000秒以上の等価反応時間を有するのに十分な反応条件下で前記原料を加熱するように構成されている、反応器と、
前記反応器と流体連通している分離装置であって、この分離装置が、前記反応器から受け取られた流出物からメソフェーズピッチを分離するように構成され、分離装置と
を含むシステム。
【請求項10】
蒸気を前記反応器に、前記流出物に、及び/又は前記原料に注入するように構成されたスチームインジェクターをさらに含む、請求項9に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
本明細書に記載の全ての文書は、いずれの優先権書類及び/又は試験手順をも含め、それらが本テキストと矛盾しない程度まで、参照することにより本明細書に組み込まれる。前述の一般的な記述及び具体的な実施形態から明らかなように、本発明の形態を説明及び記述したが、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく種々の修正を行うことができる。従って、本開示をそれらによって限定する意図でない。同様に、用語「含む(comprising)」は、米国法の目的の用語「含む(including)」と同義とみなす。同様に組成物、要素、要素群に移行句「含む(comprising)」が先行するときはいつでも、組成物、要素、要素群の記述に先行する移行句「から本質的に成る」、「から成る」、「から成る群より選択される」、又は「である」を伴う同一の組成物又は要素群をも企図し、逆もまた同様であるという共通認識がある。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕メソフェーズピッチの製造プロセスであって、
T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を準備するステップと、
前記原料を少なくとも450℃の温度で加熱して、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物を生成するステップであって、前記加熱が、1,000秒以上の等価反応時間を有するのに十分な反応条件下で行われる、ステップと、
前記メソフェーズピッチを回収するステップと
を含む、前記プロセス。
〔2〕前記温度が600℃未満である、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔3〕前記原料が、5.5~10wt%の水素含量を有する、前記〔1〕~〔2〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔4〕前記加熱が、前記メソフェーズピッチを生成するために前記原料に適用される加熱ステップのみである、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔5〕蒸気を注入するステップをさらに含み、前記蒸気が、反応器に、又は前記原料が反応器に供給される時の前記原料に、又は前記加熱が行われている反応器からの前記メソフェーズピッチアウトプットを含む熱処理生成物に注入される、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔6〕前記メソフェーズピッチの収率が、1wt%超、好ましくは10wt%~50wt%又は10~60%である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔7〕前記反応条件が、不活性雰囲気、450℃~520℃の範囲の温度、及び500~1,500psigの範囲の圧力を含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔8〕Xが、前記加熱の等価反応時間(ERT)であり、Yが、ASTM D1159に準拠して測定される前記原料の臭素価であり、かつ前記加熱が、関係[X*Y]≧31,000秒を満たすのに十分な反応条件下で行われる、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔9〕前記加熱ステップの温度を制御して、前記等価反応時間を1,000秒より長くさせるステップをさらに含む、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔10〕前記原料が、前記原料の質量に基づいて約1wt%~約40wt%に及ぶ、≧1,050°F(566℃)の沸点を有する留分を含む、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔11〕前記原料が、主カラム残留物(MCB)、水素加工MCB、スチームクラッカータール、水素化スチームクラッカータール、重質コーカーガスオイル、スチームクラッカーガスオイル、減圧残油、脱アスファルト残渣又はロック、及びこれらの混合物又は組み合わせから成る群より選択される少なくとも1つのメンバーを含む、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔12〕前記メソフェーズピッチの回収ステップが、軽質炭化水素から前記メソフェーズピッチを分離するステップを含む、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔13〕前記加熱が反応器内で行われ、前記プロセスが、前記反応器内の液体線速度を制御して、メソフェーズ前駆体をスラリー形態にさせるステップをさらに含む、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載のプロセス。
〔14〕T5≧400°F(204℃)及びT95≦1,400°F(760℃)を有する原料を受け取り、前記原料を少なくとも450℃の温度で加熱して、メソフェーズピッチを含む熱処理生成物を生成するように構成された反応器であって、この反応器が、1,000秒以上の等価反応時間を有するのに十分な反応条件下で前記原料を加熱するように構成されている、反応器と、
前記反応器と流体連通している分離装置であって、この分離装置が、前記反応器から受け取られた流出物からメソフェーズピッチを分離するように構成され、好ましくは前記分離装置は、サイクロン分離装置又は脱アスファルターである、分離装置と
を含むシステム。
〔15〕蒸気を前記反応器に、前記流出物に、及び/又は前記原料に注入するように構成されたスチームインジェクターをさらに含む、前記〔14〕に記載のシステム。
【国際調査報告】