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特表2024-514824治療用オリゴペプチドおよびペプチド模倣物のシリカベース製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】治療用オリゴペプチドおよびペプチド模倣物のシリカベース製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/07 20060101AFI20240327BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240327BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240327BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240327BHJP
   C07K 5/10 20060101ALI20240327BHJP
   C01B 33/152 20060101ALI20240327BHJP
   C01B 33/141 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61K38/07
A61K9/14
A61K9/06
A61K47/04
A61P27/02
C07K5/10
C01B33/152 A
C01B33/141
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561739
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 US2022023828
(87)【国際公開番号】W WO2022216928
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/171,723
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20215537
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522012798
【氏名又は名称】ステルス バイオセラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】STEALTH BIOTHERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】レッドモン,マーティン ピー
(72)【発明者】
【氏名】フォースバック,アリ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】ミッコラ,ヤーリ
(72)【発明者】
【氏名】スンドクヴィスト,ヨーナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4G072
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA30
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD29
4C076FF31
4C076GG09
4C076GG32
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA16
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA05
4C084MA28
4C084MA43
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA12
4C084ZA331
4C084ZA332
4G072AA28
4G072CC01
4G072CC04
4G072EE01
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH30
4G072JJ14
4G072JJ22
4G072JJ47
4G072KK01
4G072KK03
4G072LL06
4G072MM32
4G072PP01
4G072PP03
4G072RR05
4G072RR15
4G072TT01
4G072UU17
4H045BA13
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、生分解性シリカハイドロゲルコンポジットを含むデポ製剤であって、ハイドロゲルコンポジットは、(i)シリカハイドロゲル;および(ii)シリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子;を含む、デポ製剤を開示する。本明細書に記載のデポ製剤は、活性医薬化合物の持続的な長期放出を提供する。デポ製剤は眼に移植することができ、眼疾患の処置に有用である。シリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子は、連続フロープロセスを用いて調製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性シリカハイドロゲルコンポジットを含むデポ製剤であって、前記ハイドロゲルコンポジットは、
(i)シリカハイドロゲル;および
(ii)シリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子;
を含み、
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物は、1,200amu未満の分子量を有し、
前記ハイドロゲルコンポジットは、静止保管時は非流動性でかつ構造的に安定であり、せん断応力が加えられる場合にはせん断減粘性である、デポ製剤。
【請求項2】
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物は、中性pHの水性緩衝溶液中で正に荷電している(例えば、正味電荷が+2以上である)、請求項1に記載のデポ製剤。
【請求項3】
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物は水溶性である(例えば、25℃で50mg/mL超または100mg/mL超の水溶性を有する)、請求項1または2に記載のデポ製剤。
【請求項4】
前記微粒子は、デポ製剤中に約30~約95重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項5】
前記微粒子は、デポ製剤中に約45~約90重量%、50~約85重量%、または75~90重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項6】
前記微粒子は、デポ製剤中に約80重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項7】
前記微粒子は、デポ製剤中に約30~約70重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項8】
前記微粒子は、デポ製剤中に約40~60重量%の量で存在する、請求項1~4および7のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項9】
前記微粒子は、デポ製剤中に約50重量%の量で存在する、請求項1~4、7および8のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項10】
前記微粒子は、デポ製剤中に約20~約50重量%、または20~約40重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項11】
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣物の遊離塩基等価物は、デポ製剤中に約0.1重量%~約10重量%の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項12】
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣物の遊離塩基等価物は、デポ製剤中に約1重量%~約6重量%の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項13】
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣物の遊離塩基等価物は、デポ製剤中に約1重量%~約3重量%の量で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項14】
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣物の遊離塩基等価物は、デポ製剤中に約2重量%~約5重量%の量で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項15】
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣物の遊離塩基等価物は、デポ製剤中に約0.25重量%~約2.5重量%の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項16】
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣物の遊離塩基等価物は、デポ製剤中に約0.45重量%~約2重量%の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項17】
せん断応力が加えられる場合、前記シリカハイドロゲルコンポジットは自由流動性であり、針が取り付けられたシリンジから注射することができる、請求項1~16のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項18】
前記針の太さは25~30ゲージである、請求項17に記載のデポ製剤。
【請求項19】
せん断応力の印加が終了すると、シリカハイドロゲルコンポジットは、37℃において非流動性でかつ構造的に安定である、請求項1~18のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項20】
製剤のpHは約4.0~約7.5である、請求項1~19のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項21】
製剤のpHは約5.0~約6.0である、請求項1~20のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項22】
製剤のpHは約5.5~約6.5である、請求項1~20のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項23】
デポ製剤の微粒子は、複数のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項24】
前記微粒子は、オリゴペプチドまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項25】
前記オリゴペプチドは、エラミプレチド、化合物II、化合物III、および化合物IV、ならびにそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択され、
エラミプレチドは、以下の構造:
【化1】
を有し、
化合物Iは、以下の構造:
【化2】
を有し、
化合物IIは、以下の構造:
【化3】
を有し、
化合物IIIは、以下の構造:
【化4】
を有する、請求項24に記載のデポ製剤。
【請求項26】
前記オリゴペプチドは、エラミプレチドまたはその薬学的に許容される塩である、請求項25に記載のデポ製剤。
【請求項27】
前記オリゴペプチドは、化合物IIまたはその薬学的に許容される塩である、請求項25に記載のデポ製剤。
【請求項28】
前記オリゴペプチドは、化合物IIIまたはその薬学的に許容される塩である、請求項25に記載のデポ製剤。
【請求項29】
前記オリゴペプチドは、化合物IVまたはその薬学的に許容される塩である、請求項25に記載のデポ製剤。
【請求項30】
前記微粒子は、ペプチド模倣化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項31】
前記ペプチド模倣化合物が、
【化5】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項30に記載のデポ製剤。
【請求項32】
前記オリゴペプチドもしくはペプチド模倣物がミトコンドリアを標的とする、請求項1~31のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項33】
注射可能または移植可能である、請求項1~32のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項34】
非経口投与用である、請求項1~32のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項35】
皮下投与、筋肉内投与、腹膜投与、または眼投与用である、請求項34に記載のデポ製剤。
【請求項36】
硝子体内注射用である、請求項33に記載のデポ製剤。
【請求項37】
局所点眼(topical ocular instillation)用である、請求項33に記載のデポ製剤。
【請求項38】
1週間に1回~1年に1回、1ヶ月に1回~1年に1回、1ヶ月に1回~6ヶ月に1回、1ヶ月に1回~3ヶ月に1回、3ヶ月に1回~6ヶ月に1回、6ヶ月に1回~9ヶ月に1回、または9ヶ月に1回~1年に1回の投与のためのものである、請求項1~37のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項39】
1ヶ月に1回~6ヶ月に1回、または1ヶ月に1回~5ヶ月に1回、2ヶ月に1回~5ヶ月に1回、2ヶ月に1回~4ヶ月に1回、または2ヶ月に1回~3ヶ月に1回、3ヶ月に1回~4ヶ月に1回、または約3ヶ月に1回の投与のためのものである、請求項1~37のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項40】
デポ製剤中のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物の量は、10μg/50μL~100mg/50μL、10μg/50μL~1000μg/50μL、10μg/50μL~500μg/50μL、50μg/50μL~300μg/50μL、または75μg/50μL~275μg/50μLである、請求項1~39のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項41】
デポ製剤中のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物の量は、250μg/50μL~1000μg/50μL、150μg/50μL~450μg/50μL、200μg/50μL~400μg/50μL、250μg/50μL~350μg/50μL、50μg/50μL~250μg/50μL、または約270μg/50μLである、請求項1~39のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項42】
前記製剤が、0.01μg~10μg、0.5μg~5μg、1μg~5μg、または約3μgのオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物である1日用量を送達する、請求項1~41のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項43】
約3ヶ月毎に1回の硝子体内注射用である、請求項1~42のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項44】
滅菌製剤である、請求項1~43のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項45】
前記滅菌製剤はガンマ線滅菌製剤である、請求項44に記載のデポ製剤。
【請求項46】
前記シリカハイドロゲルは、3重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の固形分を有する、請求項1~45のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項47】
前記シリカ粒子は、0.1~70重量%、0.3~50重量%、または1~15重量%のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物を含む、請求項1~45のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項48】
前記シリカ粒子は、0.5μm~300μm、0.5μm~100μm、0.5μm~30μm、または0.5μm~20μmの直径を有する微粒子である、請求項1~45のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項49】
1μm未満の直径を有するシリカ粒子の体積分率が、3%未満、2%未満、または1%未満である、請求項1~45のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項50】
コンポジット固形分が、10重量%~75重量%、15重量%~60重量%、または25重量%~55重量%である、請求項1~45のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項51】
線形粘弾性領域における小角振動せん断下で測定される複素弾性率が、2400kPa未満、1200kPa未満、または600kPa未満である、請求項1~45のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項52】
損失係数(すなわち、粘性率/弾性率)が、1未満、0.8未満、または0.6未満である、請求項1~45のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項53】
粘度が、10~50秒-1のせん断速度で測定して10~50Pasであり、200~210秒-1のせん断速度で測定して0.4~1.5Pasであり、600~610秒-1のせん断速度で測定して0.1~0.4Pasである、請求項1~45のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項54】
単回使用硝子体内注射用のシリンジおよび針の構成でプレパッケージされる、請求項1~53のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項55】
シリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子が、連続フロープロセスを使用して形成される、請求項1~54のいずれか一項に記載のデポ製剤。
【請求項56】
連続フロープロセスは、シリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子を作製するために噴霧乾燥機の使用をさらに含む、請求項55に記載のデポ製剤。
【請求項57】
連続フロープロセスは、インラインミキサーの使用をさらに含む、請求項55または56に記載のデポ製剤。
【請求項58】
疾患、障害もしくは状態を処置、阻害、改善する、またはそれらの発症を遅延させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項1~57のいずれか一項に記載のデポ製剤を投与することを含む、方法。
【請求項59】
前記疾患、障害もしくは状態が、レーベル遺伝性視神経症である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記疾患、障害もしくは状態が、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、加齢黄斑変性症(AMD)、緑内障、視神経症、網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、網膜毛細血管拡張症、または網膜色素変性症である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記疾患、障害もしくは状態が、新生血管を伴うAMD(滲出型AMD)および網膜地図状萎縮を伴うAMD(萎縮型AMD)を含むAMDである、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
請求項1~57のいずれか一項に記載のデポ製剤を含むプレフィルドシリンジであって、任意選択でガンマ線への曝露によって滅菌されている、プレフィルドシリンジ。
【請求項63】
請求項1~57のいずれか一項に記載のデポ製剤を作製する方法であって、
a)オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含むシリカ粒子であって、任意選択で懸濁液として、1000μm以下の最大直径を有し、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物が1,200amu未満の分子量を有する、シリカ粒子;および
b)シリカハイドロゲル
を組み合わせることを含み、
i)前記シリカハイドロゲルは、50重量%以下の固形分を有し;
ii)前記シリカ粒子は、重合アルコキシシランを含み;
iii)前記デポ製剤は、85重量%までの前記シリカ粒子を含み;
iv)前記ハイドロゲルコンポジットは、静止保管時は非流動性でかつ構造的に安定であり、注射によりせん断応力が加えられる場合にはせん断減粘性である、方法。
【請求項64】
シリカゾルを、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む溶液と組み合わせ、それによって、シリカゾルとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む混合物を作製することをさらに含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、水および塩酸、ならびに任意選択で有機共溶媒(例えば、エタノール)を組み合わせ、それによってシリカゾルを作製することをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を水および任意選択で有機共溶媒(例えば、エタノール)と組み合わせ、それによって、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む溶液を作製することをさらに含む、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
シリカゾルと、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む溶液とを組み合わせることが、連続フロープロセスで行われる、請求項64~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
シリカゾルと、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む溶液とを組み合わせるステップが、インラインミキサーの使用をさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
シリカゾルと、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む溶液とを組み合わせるステップが、ポンプの使用をさらに含む、請求項64~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
シリカゾルとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含む溶液との混合物を噴霧乾燥し、それによってシリカ粒子を形成することをさらに含む、請求項69~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記製剤は、任意選択で針が取り付けられた、シリンジにパッケージされる、請求項63~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
デポ製剤を滅菌することをさらに含む、請求項63~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
デポ製剤を滅菌するステップが、放射線滅菌によって行われる、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
放射線滅菌がガンマ線放射線滅菌を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記オリゴペプチドが、エラミプレチド:
【化6】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項63~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記オリゴペプチドが、化合物II:
【化7】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項63~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記オリゴペプチドが、化合物III:
【化8】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項63~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記オリゴペプチドが、化合物IV:
【化9】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項63~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記ペプチド模倣物が、化合物I:
【化10】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項63~74のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年4月7日に出願された米国特許仮出願第63/171,723号、および2021年5月6日に出願されたフィンランド特許出願第20215537号に対する優先権の利益を主張する;これらの両方は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
オリゴペプチドおよびペプチド模倣化合物は、様々な疾患の処置に有用である。例えば、オリゴペプチドおよびペプチド模倣化合物は、糖尿病、皮膚疾患、心疾患、および肥満を処置するために使用されている。また、オリゴペプチドおよびペプチド模倣化合物は、レーベル遺伝性視神経症(Leber’s Hereditary Optic Neuropathy)およびフックス角膜内皮ジストロフィー(Fuchs’ Corneal Endothelial Dystrophy)などの様々な眼の適応症の処置における有用性も実証されている。しかしながら、これらの化合物を眼に投与する方法は、依然として未解決の課題である。したがって、眼の適応症のためにオリゴペプチドおよびペプチド模倣化合物を投与するための製剤および方法を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本出願は、生分解性シリカハイドロゲルコンポジットを含むデポ製剤であって、ハイドロゲルコンポジットは、シリカハイドロゲル;およびシリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子;を含み、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物(freebase equivalent)(以下に定義される)は1,200amu未満であり、ハイドロゲルコンポジットは、静止保管時は非流動性でかつ構造的に安定であり、せん断応力が加えられる場合にはせん断減粘性(shear-thinning)である、デポ製剤を提供する。デポ製剤は、例えば、ゼロ次放出デポ、一次放出デポ、二次放出デポ、遅延放出デポ、持続放出デポ、即時放出デポ、またはそれらの任意の組み合わせなどの、制御放出デポである。
【0004】
ある特定の実施形態において、シリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子は、連続フロープロセスを使用して形成される。
【0005】
特定の実施形態では、製剤は、単回使用の硝子体内注射用のシリンジおよび針の構成でプレパッケージされる。
【0006】
特定の実施形態において、製剤は、例えばガンマ線照射によって滅菌される。
【0007】
別の態様では、本出願は、疾患、障害もしくは状態を処置、阻害、改善するまたはそれらの発症を遅延させる方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書に開示されるデポ製剤を投与することを含む方法を提供する。
【0008】
ある特定の実施形態では、状態はレーベル遺伝性視神経症である。別の態様では、本出願は、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、加齢黄斑変性症(AMD)、緑内障、視神経障害、網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、網膜毛細血管拡張症(retinal telangiectasia)、または網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)を処置する方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書に開示されるデポ製剤を投与することを含む方法を提供する。加齢黄斑変性症(AMD)は、滲出型AMD(wet AMD)もしくは萎縮型AMD(dry AMD)、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0009】
別の態様では、本出願は、本明細書に開示されるデポ製剤を含むプレフィルドシリンジ(prefilled syringe)を提供する。任意選択で、プレフィルドシリンジは、ガンマ線への曝露によって滅菌される。
【0010】
本出願はまた、本明細書に開示されるデポ製剤を作製する方法であって、
a)オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含むシリカ粒子であって、任意選択で懸濁液として、1000μm以下の最大直径を有し、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物が1,200amu未満の分子量を有する、シリカ粒子;および
b)シリカハイドロゲル
を組み合わせることを含み、
i)シリカハイドロゲルは、50重量%以下の固形分を有し;
ii)シリカ粒子は、重合アルコキシシランを含み;
iii)デポ製剤は、85重量%までの前記シリカ粒子を含み;
iv)前記ハイドロゲルコンポジットは、静止保管時は非流動性でかつ構造的に安定であり、注射によりせん断応力が加えられる場合にはせん断減粘性である、方法を提供する。
【0011】
デポ製剤を作製する方法は、連続フロープロセスで実施される1つまたは複数のステップを含んでもよい。
【0012】
特定の実施形態では、方法は、デポ製剤を滅菌することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】エラミプレチド(elamipretide)のデポ製剤#05Dのシンク条件での累積in vitro溶出を示すグラフである。
図2】エラミプレチドのデポ製剤#08Dのシンク条件での累積in vitro溶出を示すグラフである。
図3】化合物I(以下に定義する)のデポ製剤#05Dのシンク条件での累積in vitro溶出を示すグラフである。
図4】化合物I(以下に定義する)のデポ製剤#08Dのシンク条件での累積in vitro溶出を示すグラフである。
図5】本明細書に開示されるプレフィルドシリンジにパッケージされたデポ製剤の製造のためのフローダイアグラムであり、連続フロープロセスを使用してシリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子を製造する。
図6】加水分解されたシリカの化学重合の図である。
図7】連続フローリアクターシステムの概略図を示す。
図8】シンク条件での0.01%(v/v)のTWEEN(登録商標)80を補足した50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中における異なる第1のR値を有する微粒子製剤#01~#03(2%API搭載(load)、pH5.9)からのシリカマトリックスの累積in vitro溶出(左)および化合物Iの放出(右)の比較を示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図9】シンク条件での0.01%(v/v)TWEEN(登録商標)80を捕足した50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中における異なるpHを有する微粒子製剤#03~#06(R3-100、2%API搭載)からのシリカマトリックスの累積in vitro溶出(左)および化合物Iの放出(右)の比較を示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図10】シンク条件での0.01%(v/v)TWEEN(登録商標)80を捕足した50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中における異なるAPI搭載およびpHを有する微粒子製剤#03、#05、#07および#08(R3-100ベースの製剤)からのシリカマトリックスの累積in vitro溶出(左)および化合物Iの放出(右)の比較を示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図11】シンク条件での0.01%(v/v)TWEEN(登録商標)80を捕足した50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中におけるデポ製剤#05Dからのシリカマトリックスの累積in vitro溶出および化合物Iの放出を示す。対応する微粒子製剤#05(R3-100、2%API搭載)の溶出プロファイルを比較として示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図12】シンク条件での0.01%(v/v)TWEEN(登録商標)80を捕足した50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中のデポ製剤#08Dからのシリカマトリックスの累積in vitro溶出および化合物Iの放出を示す。対応する微粒子製剤#08(R3-100、5%API搭載)の溶出プロファイルを比較として示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図13】デポ製剤#05Dおよび#08Dの貯蔵弾性率(G’)およびtanδ(損失係数)値を示す。測定は、材料の線形粘弾性範囲内の制御された変形(γ<0.002)の下で行った。報告された値は単一の測定を表す。
図14】デポ製剤#05Dおよび#08Dについてのせん断速度の関数としての動的粘度(dynamic viscosity)を示す。報告された値は単一の測定を表す。
図15】シンク条件での0.01%(v/v)TWEEN(登録商標)80を含む50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中における異なる第1のR値を有する微粒子製剤#01~#03(2%API搭載、pH5.9)からのシリカマトリックスの累積in vitro溶出およびエラミプレチドの放出の比較を示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図16】シンク条件での0.01%(v/v)TWEEN(登録商標)80を捕足した50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中における異なるpHを有する微粒子製剤#03~#06(R3-100、2%API搭載)からのシリカマトリックスの累積in vitro溶出およびエラミプレチドの放出の比較を示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図17】シンク条件での0.01%(v/v)のTWEEN(登録商標)80を補足した50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中における異なるAPI搭載およびpHを有する微粒子製剤#03、#05、#07および#08(R3-100ベースの製剤)からのシリカマトリックスの累積in vitro溶出(左)およびエラミプレチドの放出(右)の比較を示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図18】シンク条件での0.01%(v/v)のTWEEN(登録商標)80を補足した50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中におけるデポ製剤#05Dからのシリカマトリックスの累積in vitro溶出およびエラミプレチドの放出を示す。対応する微粒子製剤#05(R3-100、2%API搭載)の溶出プロファイルを比較として示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図19】シンク条件での0.01%(v/v)のTWEEN(登録商標)80を補足した50mMのTRIS緩衝液(pH7.4、37℃)中におけるデポ製剤#08Dからのシリカマトリックスの累積in vitro溶出およびエラミプレチドの放出を示す。対応する微粒子製剤#08(R3-100、5%API搭載)の溶出プロファイルを比較として示す。各時点でのトリプリケート分析の平均値。
図20】デポ製剤#05Dおよび#08Dの貯蔵弾性率(G’)およびtanδ(損失係数)値を示す。測定は、材料の線形粘弾性範囲内の制御された変形(γ<0.002)の下で行った。報告された値は単一の測定を表す。
図21】デポ製剤#05Dおよび#08Dについてのせん断速度の関数としての動的粘度(dynamic viscosity)を示す。報告された値は単一の測定を表す。
図22】製剤#09および#10-5のコンシステンシーバッチの粒径分布のグラフを示す。
図23】エラミプレチド微粒子製剤#09および#10-5のコンシステンシーバッチのシンク条件での累積in vitro溶出のグラフを示す。
図24】製剤#09および#10-5の連続フロー10xバッチの粒径分布のグラフを示す。
図25-1】エラミプレチド微粒子製剤#09および#10-5の連続フロー10xバッチのシンク条件での累積in vitro溶出のグラフを示す。
図25-2】図25-1の続き。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本出願は、生分解性シリカハイドロゲルコンポジットを含むデポ製剤に関する。ハイドロゲルコンポジットは、シリカハイドロゲル、およびシリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子を含み、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物は1,200amu未満の分子量を有する。ハイドロゲルコンポジットは、静止保管時は非流動性でかつ構造的に安定であり、せん断応力が加えられる(例えば、シリンジを介した注射によって力が加えられる)とせん断減粘性である。
【0015】
いくつかの実施形態では、デポ製剤のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物は、中性pHの水性緩衝溶液中で正に荷電している(例えば、正味電荷が+2以上である)。
【0016】
いくつかの実施形態では、デポ製剤のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物は、良好な水溶性を示す(例えば、>50mg/mL、>75mg/mL、>100mg/mL、または>150mg/mLの水溶性を有する)。
【0017】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルコンポジットの複数の微粒子は、様々な量で存在する。いくつかの実施形態では、微粒子は、約30~約95重量%、または約45~約90重量%、または約50~約85重量%、または75~90重量%の量でデポ製剤中に存在する。いくつかの実施形態において、微粒子は、約80重量%の量でデポ製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、微粒子は、デポ製剤中に約30~約70重量%、または約40~約60重量%、または約20~約40重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、微粒子は、デポ製剤中に約50重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、微粒子は、デポ製剤中に約20~約50重量%、または20~約40重量%の量で存在する。
【0018】
デポ製剤はオリゴペプチドを含んでいてよく、それはある範囲の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、デポ製剤中のオリゴペプチドの遊離塩基等価物は、約0.1重量%~約10重量%、または約0.3重量%~約5重量%、または約1重量%~約3重量%、または約2重量%~約4重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、デポ製剤中のオリゴペプチドの遊離塩基等価物は、約2重量%~約5重量%、または約0.25重量%~約2.5重量%、または0.45重量%~2重量%の量で存在する。
【0019】
デポ製剤はペプチド模倣化合物を含んでいてよく、それはある範囲の量で存在し得る。いくつかの実施形態では、デポ製剤中のペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物は、約0.1重量%~約10重量%、または約0.3重量%~約5重量%、または約1重量%~約3重量%、または約2重量%~約4重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、デポ製剤中のペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物は、約2重量%~約5重量%、または約0.25重量%~約2.5重量%、または0.45重量%~2重量%の量で存在する。
【0020】
特定の実施形態では、デポ製剤は、せん断応力が加えられる場合にはせん断減粘性であり、細い針(例えば、18~30ゲージ針、20~30ゲージ針、25~30ゲージ針、または27~30ゲージ針)を通して注射可能であり得る。特定の実施形態において、せん断応力が加えられる場合には、シリカハイドロゲルコンポジットは自由流動性(free flowing)であり、針が取り付けられたシリンジから注射することができる。特定の実施形態において、針の太さは25~30ゲージである。いくつかの実施形態では、針の太さは最大25ゲージである。いくつかの実施形態では、針の太さは最大30ゲージである。いくつかの実施形態では、針の太さは最大35ゲージである。いくつかの実施形態では、針の太さは最大40ゲージである。いくつかの実施形態において、針の太さは最大50ゲージである。
【0021】
注射後(すなわち、せん断応力の印加の終了時)に、シリカハイドロゲルコンポジットは37℃で非流動性かつ構造的に安定である。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるデポ製剤は、ある範囲のpH値を含むことができる。いくつかの実施形態では、デポ製剤は、約5.5~約7.5、または約5.5~約7.0、または約5.5~約6.5のpHを有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、デポ製剤の微粒子は、複数のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、微粒子のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物は、ミトコンドリアを標的とする。
【0024】
いくつかの態様において、微粒子は、オリゴペプチドまたはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの態様において、オリゴペプチドは、エラミプレチド、化合物II、化合物III、および化合物IV、ならびにそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。エラミプレチド、化合物II、化合物III、および化合物IV(遊離塩基等価物の形態)の構造を以下に示す:
【化1】
【0025】
ある特定の実施形態では、オリゴペプチドは、エラミプレチドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0026】
ある特定の実施形態では、オリゴペプチドは、化合物IIまたはその薬学的に許容される塩である。
【0027】
ある特定の実施形態では、オリゴペプチドは、化合物IIIまたはその薬学的に許容される塩である。
【0028】
ある特定の実施形態では、オリゴペプチドは、化合物IVまたはその薬学的に許容される塩である。
【0029】
いくつかの実施形態では、デポ製剤の微粒子は、ペプチド模倣化合物またはその薬学的に許容される塩を含むことができる。化合物Iは、本明細書に開示されるデポ製剤に使用することができる1つのそのようなペプチド模倣化合物(またはその薬学的に許容される塩)の例である:
【化2】
【0030】
本明細書に開示されるデポ製剤は、注射(または注入)、移植、吸入、または他の非経口投与の手段に適するように製剤化され得る。いくつかの態様では、デポ製剤は、皮下、筋肉内、腹膜、または眼への投与に適するように製剤化され得る。いくつかの実施形態では、デポ製剤は、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の硝子体内注射または局所眼送達用に製剤化される。特定の実施形態において、製剤は硝子体内注射用である。いくつかの実施形態では、デポ製剤は、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の全身送達のための静脈内または皮下投与用に製剤化される。
【0031】
いくつかの実施形態では、デポ製剤は、1週間に1回~1年に1回、または1ヶ月に1回~1年に1回、または1ヶ月に1回~6ヶ月に1回、または1週間に1回~1ヶ月に1回、または1ヶ月に1回~3ヶ月に1回、3ヶ月に1回~6ヶ月に1回、6ヶ月に1回~9ヶ月に1回、または9ヶ月に1回~1年に1回の投与のためのものである。あるいは、デポ製剤は、1ヶ月に1回~6ヶ月に1回、または1ヶ月に1回~5ヶ月に1回、2ヶ月に1回~5ヶ月に1回、2ヶ月に1回~4ヶ月に1回、または2ヶ月に1回~3ヶ月に1回、3ヶ月に1回~4ヶ月に1回、または約3ヶ月に1回の投与のためのものであってもよい。
【0032】
経時的に薬物を放出するデポ製剤は、「制御放出」デポ製剤と呼ばれる。制御放出用に製剤化されたこのようなデポ製剤は、患者によっては、薬物を毎日摂取するよりも長期間に1回注射するほうが容易であるため、患者のコンプライアンスを助けることができる。さらなる実施形態では、デポ製剤は注射部位反応を伴う頻度がより少ないため、制御放出デポ製剤は、例えば、毎日の注射(例えば、毎日の皮下注射)と比較して、患者によってより良好に耐容され得る。
【0033】
幾つかの実施形態において、製剤は、0.01μg~10μg、0.1μg~5μg、1μg~5μg、または約3μgのオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の1日用量を送達し、ここで、記載される量は、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物の質量(オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基または塩形態のいずれが製剤の調製に使用されるかにかかわらず)に基づいて計算される。
【0034】
いくつかの実施形態では、デポ製剤中のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物の量は、10μg/50μL~100mg/50μL、10μg/50μL~1000μg/50μL、10μg/50μL~500μg/50μL、50μg/50μL~300μg/50μL、または75μg/50μL~275μg/50μLであり、ここで、記載される量は、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物の質量に基づいて計算される。あるいは、デポ製剤中のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物の量は、100μg/50μL~500μg/50μL、150μg/50μL~450μg/50μL、200μg/50μL~400μg/50μL、250μg/50μL~350μg/50μL、または約270μg/50μLである。
【0035】
特定の実施形態では、デポ製剤は、約3ヶ月毎の硝子体内注射用である。
【0036】
特定の実施形態において、デポ製剤は、例えばガンマ線滅菌によって、滅菌される。
【0037】
本出願のデポ製剤は、ある範囲の固形分を有するシリカハイドロゲルを含むことができる。いくつかの実施形態において、シリカハイドロゲルは、3重量%以下、2重量%または1重量%以下の固形分を有する。いくつかの実施形態では、シリカ粒子は、0.1~70重量%、0.3~50重量%、または1~15重量%のオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物を含む。
【0038】
デポ製剤のいくつかの実施形態では、複数の微粒子は、ある範囲の直径を有するシリカ粒子を含む。いくつかの実施形態では、シリカ粒子は、0.5μm~300μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、シリカ粒子は、0.5μm~100μm、0.5μm~30μm、または0.5μm~20μmの直径を有する。
【0039】
本出願のデポ製剤は、ある体積分率のある範囲の直径のシリカ粒子を有し得る。いくつかの実施形態では、1μm未満の直径を有するシリカ粒子の体積分率は、3%未満、2%未満、または1%未満である。
【0040】
いくつかの実施形態では、デポ製剤は、10重量%~75重量%、15重量%~60重量%、または25重量%~55重量%のコンポジット固形分を含むことができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、デポ製剤は、線形粘弾性領域において小角振動せん断(small angle oscillatory shear)下で測定されるある範囲の複素弾性率(complex modulus)を含む。いくつかの実施形態では、複素弾性率は、2400kPa未満、1200kPa未満または600kPa未満である。
【0042】
いくつかの実施形態では、デポ製剤は、1未満、0.8未満、または0.6未満の損失係数(すなわち、粘性率(viscous modulus)/弾性率(elastic modulus))値を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、デポ製剤は、10~50秒-1のせん断速度で測定した約10~50Pasの粘度、200~210秒-1のせん断速度で測定した約0.4~1.5Pasの粘度、または600~610秒-1のせん断速度で測定した約0.1~0.4Pasの粘度を有する。
【0044】
特定の実施形態では、製剤は、単回使用硝子体内注射用のシリンジおよび針の構成でプレパッケージされる。
【0045】
本出願はまた、本明細書に記載のデポ製剤を含むプレフィルドシリンジを提供する。いくつかの実施形態では、プレフィルドシリンジは、ガンマ線への曝露によって滅菌される。
【0046】
微粒子は、多くの異なる方法によって調製することができる。微粒子(しばしば、必ずではないが、球状粒子、ミクロスフェア)は、典型的には、マイクロメートル範囲(典型的には、1μm~1000μm)の直径を有する小さい粒子である。制御された粒径分布を有する微粒子を調製または製造するために通常使用されるいくつかの直接的な技術、例えば、噴霧乾燥(しばしば、サイクロン中での微粒子の遠心分離が続く)、シングルエマルジョン、ダブルエマルジョン、重合、コアセルベーション相分離および溶媒抽出法がある。これらの技術を使用することによって、小さな体積分率のサブミクロン粒子(通常0.5~1.0μm)が得られる生成物に含まれ得るが、それらの割合は、通常非常に低く、1体積%未満であることが多い。したがって、例えば、制御放出微粒子製剤におけるそれらの影響は小さい。キャスティングによって、または大きな構造を微粒子に破砕することによって、微粒子を調製することも可能であるが、その場合、得られる粒子のサイズおよび形態が多様化する可能性があり、タンブリング(tumbling)および粒子サイジングなどの追加の調製ステップが必要となり得る。
【0047】
ある特定の実施形態において、シリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子は、連続フロープロセスを使用して形成される。
【0048】
特定の実施形態では、連続フロープロセスは、シリカとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む複数の微粒子を作製するために噴霧乾燥機の使用をさらに含む。さらなる実施形態では、連続フロープロセスは、インラインミキサーの使用をさらに含む。
【0049】
シリカ-シリカコンポジットのシリカ微粒子は、薬物の制御放出において役割を果たし、ハイドロゲル構造は、得られるコンポジットの安定性および注射可能性(injectability)の両方を確実にする。例えば、プレフィルドシリンジ中に保存される場合など、静止状態で安定であるが、ハイドロゲルコンポジット構造は非常に緩いため、ハイドロゲルコンポジットがすぐに使えるシリンジから細い針(例えば、20ゲージ、24ゲージ、25ゲージ、28ゲージまたは30ゲージなどの、20~30ゲージ)を通して注射される場合にはせん断減粘性である。この特性の組み合わせは、例えば眼疾患の最小侵襲性の長期的な処置を提供する。
【0050】
本出願はさらに、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、(滲出型または萎縮型)加齢黄斑変性症(AMD)、緑内障、視神経症、網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、網膜毛細血管拡張症、または網膜色素変性症などの他の疾患、障害もしくは状態を処置、阻害、改善するまたはそれらの発症を遅延させる方法を提供する。本方法は、有効量の本明細書に記載のデポ製剤を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、AMDは、新生血管を伴うAMD(滲出型AMD)または網膜地図状萎縮を伴うAMD(萎縮型AMD)である。
【0051】
本出願は、疾患を治療、阻害、改善するまたはその発症を遅延させる方法であって、それを必要とする対象に有効量の本明細書に記載のデポ製剤を投与することを含む方法をさらに提供する。治療される疾患はレーベル遺伝性視神経症であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、疾患はミトコンドリア機能不全に関連し得る。
【0053】
本出願は、本明細書に記載のデポ製剤を作製する方法をさらに提供し、その方法は、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩を含むシリカ粒子であって、任意選択で懸濁液として、1000μm以下の最大直径を有し、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物の遊離塩基等価物が1,200amu未満の分子量を有するシリカ粒子を、シリカハイドロゲルと組み合わせることを含む。いくつかの実施形態において、シリカハイドロゲルは、50重量%以下の固形分を有し;シリカ粒子は、重合アルコキシシラン(polymerized alkoxysilane)を含み;デポ製剤は、85重量%までの前記シリカ粒子を含み;前記ハイドロゲルコンポジットは、静止保管時は非流動性でかつ構造的に安定であり、注射によってせん断応力が加えられる場合にはせん断減粘性である。
【0054】
いくつかの実施形態では、方法は、シリカゾルを、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはその医薬用塩を含む溶液と組み合わせ、それによって、シリカゾルとオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはそれらの薬学的に許容される塩とを含む混合物を作製することをさらに含む。得られた混合物を噴霧乾燥してシリカ粒子を形成することができ、最終的にそれをシリカハイドロゲルと組み合わせる(例えば、図5を参照されたい)。
【0055】
特定のこのような実施形態では、本方法は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、水および塩酸、ならびに任意選択で有機共溶媒(例えば、エタノール)を組み合わせ、それによってシリカゾルを作製することをさらに含む(例えば、図5および6を参照されたい)。
【0056】
さらなるそのような実施形態では、本方法は、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはその医薬用塩を水および任意選択で有機共溶媒(例えばエタノール)と組み合わせ、それによってオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはその医薬用塩を含む溶液(例えば、API溶液、例えば、図7を参照されたい)を作製することを含む。
【0057】
ある特定の実施形態では、シリカゾルと、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物またはその医薬用塩を含む溶液とを合わせるステップは、例えば連続フローリアクターにおいて、連続フロープロセスで行われる。そのようなプロセスは、インラインミキサーおよび/またはポンプの使用を含んでもよい(例えば、図5~7を参照されたい)。
【0058】
連続フロープロセスは、繰り返し可能であり、スケールアップを可能にする。したがって、デポ製剤を作製する方法のいくつかの実施形態では、製剤は、10xスケール、50xスケール、150xスケール、250xスケール、500xスケール、750xスケール、1000xスケール、1500xスケール、2000xスケール、またはそれ以上で作製される。連続フロープロセスは、単一バッチリアクターを使用する製造方法と比較して、より一貫した粒径(およびサイズ分布)ならびにAPI含有量を提供することができる。
【0059】
ある特定の実施形態では、製剤は、任意選択で針が取り付けられた、シリンジにパッケージされる。
【0060】
デポ製剤を作製する方法は、例えば、放射線滅菌によってデポ製剤を滅菌することをさらに含み得る。放射線滅菌は、ガンマ線放射線滅菌を含み得る。
【0061】
ある特定の実施形態では、オリゴペプチドは、エラミプレチドまたはその薬学的に許容される塩である。
【0062】
ある特定の実施形態では、オリゴペプチドは、化合物IIまたはその薬学的に許容される塩である。
【0063】
ある特定の実施形態において、オリゴペプチドは、化合物IIIまたはその薬学的に許容される塩である。
【0064】
ある特定の実施形態において、オリゴペプチドは、化合物IVまたはその薬学的に許容される塩である。
【0065】
ある特定の実施形態では、ペプチド模倣物は、化合物Iまたはその薬学的に許容される塩である。
【0066】
定義
本明細書で使用される場合、疾患、障害もしくは状態(例えば、タウオパチー)を「改善する」または「改善すること」とは、統計学的サンプルまたは特定の対象において、対照サンプルまたは対象と比較して、治療剤を投与されたサンプルまたは対象において、疾患、障害もしくは状態(あるいはその徴候、症状もしくは状態)の発生をより良好にするまたはより耐容性にする結果を指す。
【0067】
生分解という用語は、浸食、すなわち、体内でのマトリックス材料(例えばシリカ)の段階的な分解(gradual degradation)を指す。分解は、好ましくは体液中での溶出によって起こる。
【0068】
本明細書で使用する場合、「遅延させる」または「発症を遅延させる」という語句は、統計学的サンプルにおいて、対照サンプルまたは対象と比較して、治療剤を投与されたサンプルまたは対象において、疾患、障害もしくは状態の発生を延期するか、妨害するか、または疾患、障害もしくは状態の1つもしくは複数の徴候、症状もしくは状態を正常よりもゆっくりと生じさせることを意味する。
【0069】
本出願において言及されるデポ製剤は、活性薬剤が、長期間(すなわち、数日~数ヶ月)にわたって、対象の体内で作用しかつ放出され得るように、徐放および対象による緩やかな吸収を可能にする制御放出薬物(活性薬剤)製剤の投与であると定義される。デポ製剤は、皮下、筋肉内、腹膜または眼への移植または注射のいずれかによって非経口的に投与される。
【0070】
遊離塩基等価物は、その最も単純な最低分子量形態の化合物(例えば、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣物)を指すと理解されるべきである。例えば、塩、または典型的にはその化合物と会合または複合体形成し得る他の原子、分子もしくは薬剤を含まない形態。例えば、エラミプレチドおよび化合物I~IVは、典型的には窒素がプロトン化された場合(したがって、電荷が正になった場合)に負イオンと複合体を形成する3つの塩基性窒素原子を含む。エラミプレチドおよび化合物I~IVの遊離塩基等価物は上に例示されている。
【0071】
ゲルは、本出願の文脈において、少なくとも1つの固相と1つの液相との均質な混合物、すなわちコロイド分散体であり、固相(例えば、シリカそれ自体および/または部分的もしくは完全に加水分解されたもの)は連続相であり、液体(例えば水、エタノールおよびシリカ前駆物質の残留物)が構造中に均質に分散されたものであると理解されるべきである。ゲルは粘弾性であり、弾性特性が支配的であり、これは小角振動せん断下でのレオロジー測定によって示される。損失係数(または損失正接)tanδ=(G”/G’)が1未満である場合、弾性特性が支配的であり、構造は非流動性である。弾性率(elastic modulus)G’と粘性率(viscous modulus)G”との組み合わせ効果は、複素弾性率(または複素せん断弾性率)の形態、G=G’+G”で表すこともできる。
【0072】
ゲル化点(gel point)は、流動性のゾルが粘弾性であるゲルに変わり、弾性特性が支配的になる時点を意味すると理解されるべきであり、これは、弾性率G’が粘性率よりも大きく、損失係数が1未満であるという小角振動せん断下でのレオロジー測定によって示される。粘弾性特性は、通常、レオメーター(変形とせん断応力と時間との間の相関を決定するための測定装置)を用いて、せん断応力が小さい(変形角が小さい)振動せん断によって測定される。小さな振動せん断における全抵抗は、複素弾性率(G)によって記述される。複素弾性率(または複素せん断弾性率)は、2つの成分を含む(G=G’+iG”):1)貯蔵弾性率G’とも呼ばれる弾性率は、材料が固体材料に特徴的ないくつかの弾性特性を有することを記述し、すなわち、ゲル系は、運動がゲル構造を破壊しない限り、振動運動からエネルギーを得る。このエネルギーは試料に蓄積され、弾性率によって記述される;2)損失弾性率とも呼ばれる粘性率G”は、流動特性を記述し、すなわち、系、例えば、振動せん断において、粘性散逸として失われるエネルギーの一部を説明するゾルの成分間の運動を生じさせるシリカゾルを記述する。G=G’である場合、材料は弾性と呼ばれ、G=G”である場合、材料は粘性と呼ばれる。ゲル化点において、弾性率G’は粘性率G”よりも大きくなる。G’>G”である場合、粘弾性材料は半固体と呼ばれ、それに対応してG”>G’である場合、粘弾性材料は半液体と呼ばれる。弾性率および粘性率の大きさはせん断応力に依存し、せん断応力は、加えられるひずみ(小角変形)および(振動せん断の)周波数に依存する。測定は、特定の測定システムに対して適切な信号を確実にすることによって行われ、すなわち、ひずみ掃引は、レオメータシステムのための適切な信号および線形粘弾性領域を見つけるために、通常、一定の周波数で行われ、次いで、実際の測定は、変動する周波数で一定のひずみで行われる。変動する周波数は、変動する弾性率および粘性率を与え、測定は、固相と液相のいずれが支配的であるかを示す。周囲条件が有意に変化しない場合、弾性率がゲル化点後に急速に増加することも典型的であり、例えば、室温付近の酸性ゾルから形成されるゲル、例えば、ゲルになるpH=2のR15ゾル(R=水対アルコキシドのモル比)の場合、ゲル化点から数分以内にG’が100~700倍増加することは典型的なことである。R150およびR400などのより大きいR値については、弾性率G’は、ゲル化点後でさえ低いレベルに留まり、G’の増加は速くなく、これは、細い針で注射可能なままであるゲル構造を有することを可能にする。規定のゲル化点後のゲルの形態では、固体状態が支配的であるが、系は依然として様々な量の液体を含有し、材料は典型的には乾燥前には柔らかく粘弾性であり、十分に乾燥されると硬く脆性になる。ゾルの形態では、液体状態が支配的であるが、系は様々な量の固相を含有し、系は依然として流動性である。ゲル化点前は、動的粘度および弾性率の急激な上昇が観察されることが典型的であり、これは、ゲル化点後も構造が発達するにつれて上昇し続ける。本出願の文脈において、注射可能なゲルを得る前にコンポジットのゲル化点に達している。
【0073】
ハイドロゲルは、液相が水または50重量%(wt%)超の水を含む水系であるゲルであると理解されるべきである。典型的には、ハイドロゲルの液相は、65重量%超、より典型的には90重量%超、最も典型的には95重量%超の水を含む。液相は、他の液体、典型的には有機溶媒(例えばエタノール)をさらに含むことができる。典型的には、このような溶媒、例えばエタノールの濃度は、10重量%未満、より典型的には3重量%未満、最も典型的には1重量%未満である。本出願の文脈において、本明細書に開示されるコンポジットは、ハイドロゲルの基本的基準を満たすので、ハイドロゲルと見なされる。したがって、本明細書に開示されるハイドロゲルコンポジットに言及する場合、この言及は、コンポジットへの言及と等価である。
【0074】
本明細書中で使用される場合、「阻害する」または「阻害すること」は、対照と比較して客観的に測定可能な量または程度の、タウオパチーに関連する疾患、障害もしくは状態に関連する徴候、症状もしくは状態(例えば、リスク因子)の低減を指す。一実施形態では、阻害または阻害とは、対照(または対照対象)と比較して少なくとも統計学的に有意な量の低減を指す。一実施形態では、阻害または阻害することとは、対照(または対照対象)と比較して少なくとも5パーセントの低減を指す。様々な個々の実施形態では、阻害または阻害することとは、対照(または対照対象)と比較して少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75、80、90、95、または99パーセントの低減を指す。
【0075】
注射可能とは、本出願の文脈において、外科的投与装置、例えば、針、カテーテルまたはこれらの組み合わせを介して投与可能であることを意味する。本出願の文脈におけるせん断減粘性は、組成物のレオロジー特性である。そのような組成物のせん断応力またはせん断速度が変化するたびに、組成物はその新しい平衡状態に向かって徐々に移動し、より低いせん断速度では、せん断減粘性組成物は粘性が高くなり、より高いせん断速度では、粘性が低くなる。したがって、せん断減粘性は、流体の粘度、すなわち、流体の流動抵抗の尺度が、せん断速度の増加とともに減少する効果を指す。
【0076】
本出願の文脈における注射可能なゲルまたはハイドロゲルは、組成物のレオロジー特性である。注射前、例えば37℃未満の温度、例えば室温(20~25℃)で、または冷蔵庫温度(3~6℃)で、シリンジ中および/またはアルミニウム箔中に保存した場合、組成物はゲルであり、すなわち、弾性率(小角振動せん断下で測定)G’が粘性率G”よりも大きく、損失係数tanδ=(G”/G’)は1未満である。ハイドロゲルコンポジット構造はゲル様構造であり、コンポジット構造は、静止保管時は安定かつ非流動性のままであるが、ゲル構造は非常に緩く、例えば25G針(0.50mm×25mm)を用いて、例えばシリンジから針を通して注射の形態で、せん断応力が加えられる場合にはせん断減粘性である。
【0077】
静止保管時は非流動性でかつ構造的に安定であるとは、シリカハイドロゲル中のシリカ粒子から構成される安定なコンポジットハイドロゲル構造を指す。安定性は、粘性率より大きい弾性率G’および1未満の損失係数によって、小角振動せん断下でのレオロジー測定によって示される。弾性率が粘性率よりも大きく、損失係数が1未満である場合、構造は非流動性である。非流動性構造は、シリカ粒子の相分離を防ぐことによってコンポジットハイドロゲル構造の安定性を確実にする。言い換えれば、シリカ粒子はシリカハイドロゲル中に埋め込まれ、それらは、例えば、ハイドロゲルコンポジットが典型的には25℃以下の温度で保存された際に、容器、例えばシリンジの底部に沈殿または分離しない。コンポジットハイドロゲル構造は、静止状態で、例えば、プレフィルドのすぐに使えるシリンジに保存された状態では非流動性であるが、その構造は非常に緩く、注射によってハイドロゲルコンポジットにせん断応力が加えられた場合、せん断減粘性であり、したがって細い針を通して注射可能である。
【0078】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、化合物/医薬品/組成物(医薬を含む)がそれと共に投与されるかまたは投与用に製剤化される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このような薬学的に許容される担体の非限定的な例としては、水、生理食塩水、油などの液体、およびアラビアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、シリカ粒子(ナノ粒子または微粒子)尿素などの固体が挙げられる。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤、香味剤、および着色剤を使用してもよい。適切な医薬担体の他の例は、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されており、それは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な塩」は、本明細書中に記載される化合物上に見出される特定の置換基に依存して、比較的非毒性の酸または塩基を用いて調製され得る治療的に活性な化合物の塩を指す。化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、塩基付加塩は、そのような化合物の中性形態を、溶媒なしで(neat)または適切な不活性溶媒中において、十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノもしくはマグネシウム塩、または類似の塩が挙げられる。化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態を、溶媒なしでまたは適切な不活性溶媒中において、十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容される無機塩基に由来する塩としては、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、三価マンガン、二価マンガン、カリウム、ナトリウム、および亜鉛の塩などが挙げられる。薬学的に許容される有機塩基に由来する塩には、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン(NEt)、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの、置換アミン、環状アミン、天然アミンなどを含む第一級、第二級および第三級アミンの塩が含まれ、例えば、塩が有機塩基のプロトン化形態(例えば、[HNEt)を含む場合などである。薬学的に許容される無機酸に由来する塩としては、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸の塩が挙げられる。薬学的に許容される有機酸に由来する塩としては、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p-クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチジン酸、馬尿酸、およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、l-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸、および3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、ムチン酸、ニコチン酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸(edisylic acid)、エタンスルホン酸、イソチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(PTSA))、キシナホ酸等の塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される対イオンは、酢酸、安息香酸、ベシル酸、臭化物、カンファースルホン酸、塩化物、クロロテオフィリネート(chlorotheophyllinate)、クエン酸、エタンジスルホン酸、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、ヨウ化物、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸、マレイン酸、メシル酸、メチル硫酸、ナフトエ酸、ナプシル酸(sapsylate)、硝酸、オクタデカン酸、オレイン酸、シュウ酸、パモ酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、コハク酸、硫酸、スルホサリチル酸、酒石酸、トシル酸、およびトリフルオロ酢酸からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、塩は、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、マレイン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、塩酸塩、またはトシル酸塩である。アルギン酸塩などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al, Journal of Pharmaceutical Science 66: 1-19 (1977)を参照されたい)。本出願のある特定の化合物は塩基性官能性および酸性官能性の両方を含むことができ、それにより、化合物が塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換されるかまたは双性イオン形態で存在することが可能となる。これらの塩は、当業者に公知の方法によって調製することができる。当業者に公知の他の薬学的に許容される担体も本技術に適している。
【0080】
シリカという用語は、ゾル-ゲル法によって調製することができる非晶質SiOを指す。ゾル-ゲル由来シリカは、ゾル-ゲル法によって調製されたシリカを指し、シリカは、アルコキシド、アルキルアルコキシド、アミノアルコキシドまたは無機ケイ酸塩溶液などの液相前駆物質から調製され、加水分解および縮合反応によってゾルを形成し、それがゲルに変わるかまたは安定なゾルを形成する。安定なシリカゾル中の液体を蒸発させることができ、その結果、典型的にはコロイド状シリカ粒子からなる粉末が形成される。得られたゲル/粒子は、任意選択でエージング、乾燥、および熱処理することができ、熱処理する場合は、好ましくは700℃未満の温度とする。700℃未満で調製されたゾル-ゲル由来シリカは、通常、非晶質である。ゲルが生物学的に活性な薬剤、例えば薬物および医薬品有効成分(例えば、本明細書に記載されるオリゴペプチドもしくはペプチド模倣物)を含む場合、熱処理は典型的にはスキップされる。次いで、形成されたゲルは、典型的には、エージング(典型的には40℃以下で)および乾燥(典型的には40℃以下で)されるだけである。ゾルは、形状付与のために型内でゲル化させることができる。ゾル-ゲル由来シリカはまた、同時のゲル化、エージング、乾燥および形状付与によって、異なるモルフォロジーに加工して調製することもでき、例えば、噴霧乾燥によって微粒子に、ディップ/ドレイン/スピンコーティングによってフィルムに、押出しによってモノリス構造に、または紡糸によって繊維にすることができる。
【0081】
シリカゾルという用語は、懸濁液、すなわち、液体(連続相)と固相(分散相)との混合物を指し、固相は、シリカ粒子および/または凝集シリカ粒子からなり、シリカ粒子および/または凝集体の粒径は典型的には1μm未満であり、すなわち、シリカ粒子および/または粒子凝集体はコロイド状である。シリカゾルは、通常、加水分解を介して、部分的に加水分解されたシリカ種または完全に加水分解されたケイ酸のいずれかを形成するアルコキシドまたは無機ケイ酸塩から調製される。液相は、典型的には、水、ならびにエタノールなどの加水分解物および縮合生成物から構成される。SiOH含有種のその後の縮合反応は、増加する量のシロキサン結合を有するより大きなシリカ種の形成をもたらす。これらの種は、ナノサイズのコロイド粒子および/または粒子凝集体を形成する。条件に応じて、シリカゾルは安定なコロイド懸濁液として残るかまたはゲルになる。
【0082】
ゾルは、少なくとも1つの液相と1つの固相との均質な混合物、すなわちコロイド分散体であると理解されるべきであり、液相(例えば水、エタノール、およびシリカ前駆物質の残留物)は連続相であり、固相(例えば、シリカのコロイド粒子および/または部分的もしくは完全に加水分解されたシリカおよび/または前記粒子の凝集体)が、前記液相中に均質に分散され、ゾルは、明らかな流動特性を有し、液相が支配的であることを特徴とする。また、懸濁液も、固体粒子がコロイド状であり、直径が1μmより小さい場合に、特別にゾルと呼ぶことができる。しかしながら、本出願の文脈において、ゾルという用語は、固体粒子が<50nmであるコロイド分散体を指し、懸濁液という用語は、固体粒子が>50nmである分散体を指す。
【0083】
本明細書中で使用される場合、用語「対象」、「個体」または「患者」は、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物またはヒトであり得る。対象には、ヒト対象における試験の前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ、霊長類などが含まれるが、これらに限定されない。対象はヒトであり得る。
【0084】
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」または「処置」は、治療処置を指し、ここで、その目的は、既存の疾患、障害もしくは状態またはその関連する徴候、症状もしくは状態を軽減させる、緩和させる、もしくは減速させる(減らす)ことである。限定ではなく例として、有効量の化合物/組成物/医薬品またはその薬学的に許容される塩を投与した後に、対象が疾患、障害もしくは状態に関連する1つまたは複数の徴候、症状もしくは状態の観察可能なおよび/または測定可能な軽減または不在を示す場合、対象は疾患について首尾よく「処置」される。
【0085】
医薬組成物
特定の実施形態では、本出願は、医薬組成物を対象とする。特定の実施形態において、医薬組成物は、本明細書に開示されるデポ製剤を含む。いくつかの実施形態では、デポ製剤は、追加の治療化合物(すなわち、薬剤)および薬学的に許容される担体をさらに含む。少なくとも1つの追加の治療剤は、レーベル遺伝性視神経症などの疾患の処置に有用な薬剤を指すことができる。医薬組成物は医薬品であり得る。
【0086】
医薬組成物は、化合物、例えばオリゴペプチドもしくはペプチド模倣化合物を、薬学的に許容される担体および任意選択で1つまたは複数の追加の治療剤と組み合わせることによって調製することができる。
【0087】
「有効量」は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な任意の量(例えば、疾患、障害もしくは状態、または疾患もしくは障害の生理学的徴候、症状もしくは状態を処置する、阻害する、改善する、またはそれらの発症を遅延させる量)を指す。本明細書に提供される教示と組み合わせて、種々の活性化合物の中から選択し、効力、相対的バイオアベイラビリティ、対象の体重、有害な副作用の重症度、および投与様式等の因子に重み付けすることによって、実質的な望ましくない毒性を引き起こさないで、特定の対象の状態、障害または疾患を治療するのに有効である有効な予防的(すなわち、防御的)または治療的処置レジメンを計画することができる。任意の特定の適応症に対する有効量は、処置される疾患、障害もしくは状態、投与される本出願の特定の化合物、対象のサイズ、または疾患、障害もしくは状態の重症度などの因子に応じて変動し得る。有効量は、前臨床試験および臨床試験中に、医師および臨床医によく知られている方法によって決定され得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、本出願の特定の化合物および/または他の治療剤の有効量を経験的に決定することができる。最大用量、すなわち、いくつかの医学的判断に従って最大安全用量が使用され得る。適切な全身レベルは、例えば、薬物の対象におけるピークまたは持続血漿レベルの測定によって決定することができる。局所的に送達される用量は、例えば、眼の硝子体液などの身体の特定のコンパートメントにおけるレベルによって決定され得る。「用量(dose)」および「投与量(dosage)」は、本明細書において互換的に使用される。用量は、自分自身によって、他者によって、またはデバイス(例えば、ポンプもしくはシリンジ)によって投与され得る。化合物/組成物/医薬品は、1つまたは複数の追加の治療化合物/薬剤と組み合わせて投与してもよい(例えば、追加の治療剤が、同時に、逐次的に、または別々の投与によって投与され得るいわゆる「共投与(co-administration)」)。
【0088】
治療または予防において使用するための化合物は、適切な動物モデル系において試験され得る。同様に、in vivo試験のために、当技術分野で公知の動物モデル系のいずれかが、ヒト対象への投与前に使用され得る。適切な動物モデル系には、ヒト対象における試験の前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
治療化合物および任意選択で他の治療剤は、遊離塩基等価形態または薬学的に許容される塩の形態で投与され得る。医薬において使用される場合、塩は薬学的に許容されるものであるべきであるが、薬学的に許容される塩を調製するために薬学的に許容されない塩が好都合に使用され得る。薬学的に許容される塩形態は、塩を含む分子の比が1:1ではない形態を含むことができる。例えば、塩は、化合物の分子あたり2つの塩酸分子などの、塩基の分子あたり1つより多い無機または有機酸分子を含んでもよい。別の例として、塩は、酒石酸の分子あたり2つの化合物分子など、塩基の分子あたり1つ未満の無機または有機酸分子を含んでいてもよい。
【0090】
本出願の医薬組成物は、有効量の本明細書に記載の治療化合物(例えば、エラミプレチド、化合物I、化合物II、化合物IIIまたは化合物IV)を含有し、任意選択で、薬学的に許容される担体中に分配され得る。医薬組成物の成分はまた、所望の薬学的効率を実質的に損なう相互作用がないような様式で、本出願の化合物と、および互いと混ぜ合わせることができる。
【0091】
任意の治療化合物、組成物(例えば、製剤もしくは医薬品)、他の治療剤、またはそれらの混合物の投与量、毒性、および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が有利である。
【0092】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量の範囲を処方する際に使用することができる。そのような化合物の投与量は、毒性をほとんどまたは全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内であり得る。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。用量は、IC50(すなわち、症状の半数(50%)阻害を達成する試験化合物の濃度である)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて処方することができる。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量を正確に決定することができる。動物またはヒトの血漿中の活性医薬成分/治療化合物(例えば、オリゴペプチドもしくはペプチド模倣物)のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0093】
例示的な処置レジメンは、週1回~1ヶ月に1回、または1ヶ月に1回~1年に1回、または1ヶ月に1回~6ヶ月に1回、または1ヶ月に1回~3ヶ月に1回、3ヶ月に1回~6ヶ月に1回、6ヶ月に1回~9ヶ月に1回、または9ヶ月に1回~1年に1回の投与を伴い得る。いくつかの実施形態では、処置レジメンは、約3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、9ヶ月に1回、または約1年に1回のデポ製剤の硝子体内注射である。治療的適用では、疾患、障害もしくは状態の進行が軽減もしくは終了するまで、または対象が疾患、障害もしくは状態の症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投与量が時々必要とされる。その後、対象に予防的レジメンが投与され得る。
【0094】
治療における使用のために、有効量の本明細書に開示される製剤(例えば、デポ製剤)は、化合物を所望の表面に送達する任意の様式によって対象に投与され得る。医薬組成物の投与は、当業者に公知の任意の手段によって達成することができる。投与経路には、経口、局所、鼻腔内、全身、皮下、腹腔内、皮内、眼内、眼、経粘膜、硝子体内、または筋肉内投与が含まれるが、これらに限定されない。投与には、自己投与、他者による投与およびデバイスによる投与が含まれる。
【0095】
眼または眼内適応症のために、眼または眼の近くの領域に治療化合物または医薬組成物を送達する任意の適切な様式を使用することができる。眼科用製剤については、概して、Mitra (ed.),Ophthalmic Drug Delivery Systems, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y. (1993)、およびHavener, W. H.,Ocular Pharmacology, C.V. Mosby Co., St. Louis (1983)を参照されたい。眼内またはその付近への投与に適した医薬組成物の非限定的な例としては、眼科用インサート(Ocular insert)、ミニタブレット、デポ製剤、ならびに点眼剤、軟膏、およびin situゲルなどの局所製剤が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、本明細書に開示される治療化合物を含む医薬組成物でコンタクトレンズをコーティングする。
【0096】
局所眼投与の場合、治療化合物または医薬組成物は、当技術分野で周知のように、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化され得る。眼用ゲルは、シリカを含んでいてよく、ゾルゲルまたはハイドロゲルであり得る。軟膏剤は、眼または皮膚への局所使用などの外用用の半固体剤形である。いくつかの実施形態では、軟膏は、ヒトの中心温度に近い融点または軟化点の固体または半固体炭化水素基剤を含む。いくつかの実施形態では、眼に適用された軟膏は小滴に分解し、それは結膜嚢内に長期間留まるため、バイオアベイラビリティを高める。
【0097】
眼科用インサートは、従来の眼科用薬物形態の欠点を伴わない固体または半固体剤形である。それらは、鼻涙管を介した流出のような防御機構の影響を受けにくく、結膜嚢内に長期間留まる能力を示し、従来の剤形よりも安定である。それらはまた、1つまたは複数の治療化合物の正確な投薬、一定の速度での1つまたは複数の治療化合物の徐放、および1つまたは複数の治療化合物の全身吸収の制限などの利点を提供する。いくつかの実施形態では、眼科用インサートは、本明細書に開示される1つまたは複数の治療化合物および1つまたは複数のポリマー材料を含む。ポリマー材料としては、メチルセルロースおよびその誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVPK-90)、ポリビニルアルコール、キトサン、カルボキシメチルキトサン、ゼラチン、および前述のポリマーの様々な混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。眼科用インサートはシリカを含むことができ、ゾルゲルまたはハイドロゲルの形態を含む。
【0098】
眼科用または眼内用製剤および医薬は、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、メチルおよびプロピルパラベン、臭化ベンジルドデシニウム、ベンジルアルコール、またはフェニルエタノールなどの使用に際して無害である抗菌成分;塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、またはグルコン酸緩衝液などの緩衝成分;および例えば、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、エチレンジアミン四酢酸などの他の従来の成分;などの非毒性補助物質を含有してもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、角膜との接触および眼におけるバイオアベイラビリティを改善するために、1つまたは複数の治療化合物を含む眼用製剤の粘度を高める。粘度は、生体膜を通して拡散せず水中で三次元ネットワークを形成する高分子量の親水性ポリマーの添加によって高めることができる。このようなポリマーの非限定的な例としては、ポリビニルアルコール、ポロキサマー、ヒアルロン酸、カルボマー、および多糖類、セルロース誘導体、ゲランガム、およびキサンタンガムが挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、眼用製剤は、例えばゾルゲルとして、眼に注射することができる。いくつかの実施形態では、眼用製剤は、制御放出製剤などのデポ製剤である。このような制御放出製剤は、微粒子またはナノ粒子などの粒子を含み得る。
【0101】
治療化合物もしくは他の治療剤またはそれらの混合物は、担体系中に製剤化することができる。担体はコロイド系であり得る。コロイド系は、ゾルゲルまたはハイドロゲルであり得る。一実施形態では、治療化合物もしくは他の治療剤またはそれらの混合物は、治療化合物もしくは他の治療剤またはそれらの混合物の完全性を維持しながら、ゾルゲルまたはハイドロゲルに封入することができる。
【0102】
担体またはコロイド系は、治療剤を含むかまたは封入するシリカナノ粒子または微粒子を含むゾルゲルであり得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、治療化合物もしくは他の治療剤またはそれらの混合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などのように、身体からの急速な排出に対して治療化合物、他の治療剤またはそれらの混合物を保護する担体を用いて調製される。
【0104】
治療化合物は、制御放出システムに含まれ得る。用語「制御放出」は、製剤からの薬物放出の様式およびプロファイルが制御される任意の薬物含有製剤を指すことが意図される。これは、即放性製剤および非即放性製剤を指し、非即放性製剤には、持続放出製剤および遅延放出製剤が含まれるが、これらに限定されない。「持続放出」(「徐放」とも呼ばれる)という用語は、その従来の意味で、長期間にわたって薬物の段階的な放出をもたらし、好ましくは、必ずではないが、長期間にわたって薬物の実質的に一定の血中レベルをもたらす薬物製剤を指すために使用される。用語「遅延放出」は、製剤の投与と薬物の放出との間に時間遅延がある薬物製剤を指すために従来の意味で使用される。「遅延放出」は、長期間にわたって薬物を徐々に放出することを含んでも含まなくてもよく、したがって「持続放出」であってもなくてもよい。
【0105】
長期持続放出インプラントまたはデポ製剤の使用は、慢性状態の処置に特に適している可能性がある。用語「インプラント」および「デポ製剤」は、単一の組成物(メッシュなど)、または複数の成分を含む組成物(例えば、メッシュ材料のいくつかの個々のピースから構築された繊維メッシュ)、または複数の個々の組成物(例えば、微粒子またはナノ粒子)(ここで、複数の組成物は局在化したままであり、複数の組成物の凝集体から生じる長期持続放出を提供する)を含むことが意図される。本明細書で使用される「長期」放出とは、インプラントまたはデポ製剤が、少なくとも2日間、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を送達するように構築および配置されることを意味する。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を少なくとも7日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を少なくとも14日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を少なくとも30日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を少なくとも60日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を少なくとも90日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を少なくとも180日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を少なくとも1年間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を15~30日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を30~60日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を60~90日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を90~120日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、インプラントまたはデポ製剤は、治療レベルまたは予防レベルの活性成分を120~180日間送達するように構築および配置される。いくつかの実施形態では、長期持続放出インプラントまたはデポ製剤は当業者に周知であり、上記の放出システムのいくつかを含む。いくつかの実施形態において、このようなインプラントまたはデポ製剤は、外科的に投与され得る。いくつかの実施形態において、このようなインプラントまたはデポ製剤は、局所的にまたは注射によって投与され得る。
【0106】
滅菌手順
特定の実施形態において、デポ製剤は滅菌製剤である。
【0107】
特定の実施形態では、デポ製剤を作製する方法は、デポ製剤を滅菌するステップをさらに含む。滅菌ステップは本明細書に記載される手順のいずれかに従って行うことができ、放射線滅菌(例えば、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線、中性子線、電子ビーム、またはX線による滅菌)、化学的滅菌(例えば、エチレンオキシドまたは過酸化水素を用いる)、または物理的滅菌(例えば、加熱、濾過、またはレトルト缶詰などを用いる)などが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、デポ製剤を作製する方法は、γ線照射で製剤を滅菌するステップをさらに含む。
【0108】
特定の実施形態では、デポ製剤を作製する方法は最終滅菌ステップを含み、デポ製剤は、任意選択で容器(シリンジなど)に密封され、次いで滅菌ステップを受ける。好ましくは、滅菌は照射、例えばガンマ線照射による。
【0109】
本発明のデポ製剤などの化学組成物を滅菌するための様々な手順が当技術分野において公知である。滅菌は、化学的、物理的、または照射技術によって達成され得る。化学的方法の例としては、エチレンオキシドまたは過酸化水素蒸気への曝露が挙げられる。
【0110】
物理的方法の例としては、加熱(乾式または湿式)による滅菌、レトルト缶詰、および濾過が挙げられる。英国薬局方は、効果的な滅菌のために、最低160℃で2時間以上、最低170℃で1時間以上、最低180℃で30分以上の加熱を推奨している。加熱滅菌の例については、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,136,326を参照されたい。化学組成物を膜に通すことを使用して、組成物を滅菌することができる。例えば、組成物は、濾過される組成物に対して不活性な材料を含む0.22ミクロンフィルターなどの小孔フィルターを通して濾過される。特定の例において、濾過は、クラス100,000以上のクリーンルームで行われる。
【0111】
照射方法としては、アルファ線、ベータ線、ガンマ線照射、中性子線照射、電子ビーム(または電子線)照射、マイクロ波照射、可視光を使用する照射が挙げられる。1つの好ましい方法は、ガンマ線(γ線)照射である。
【0112】
電子ビーム照射のためのいくつかの供給源がある。電子ビーム加速器の2つの主な群は以下の通りである:(1)絶縁コア変圧器を使用するダイナミトロン、および(2)無線周波数(RF)線形加速器(リニアック)。ダイナミトロンは、電子にエネルギーを与えるように設計された粒子加速器(4.5MeV)である。ガラス絶縁ビーム管(加速管)の長さ内に配置された加速器電極の静電場によって高エネルギー電子が生成および加速される。排気ビーム管およびビーム輸送(ドリフトパイプ)の延長部を通って移動するこれらの電子は、ビーム窓を通って真空容器を出る前に、「スキャンされた」ビームを生成するために、磁石偏向システムに供される。線量は、パーセントスキャン、ビーム電流、およびコンベヤ速度の制御によって調節することができる。特定の例において、用いられる電子ビーム放射線は、少なくとも約2マイクロキュリー(μCi)/cm、少なくとも約5μCi/cm、少なくとも約8μCi/cm、または少なくとも約10μCi/cmの初期フルエンスで維持され得る。特定の例において、用いられる電子ビーム放射線は、約2~約25μCi/cmの初期フルエンスを有する。特定の例において、電子ビーム線量は、約5~50キログレイ(kGray)、または約15~約20kGrayであり、特定の線量は、電子ビーム放射線に曝される材料の密度ならびにその中にあると推定されるバイオバーデンの量に対して選択される。このような因子は当業者の技術範囲内である。
【0113】
可視光を使用する滅菌手順は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,579,916に記載されている。滅菌のための可視光は、滅菌をもたらすのに十分な出力および波長幅の任意の従来の発生器を使用して発生させることができる。発生器は、商品名PureBright(登録商標)インライン滅菌システム(PurePulse Technologies,Inc.4241 Ponderosa Ave,San Diego,Calif.92123,USA)で市販されている。PureBright(登録商標)インライン滅菌システムは、可視光を使用して、表面太陽光より約90000倍大きい強度で透明な液体を滅菌する。UV光の透過量が懸念される場合、従来のUV吸収材を使用してUV光をフィルタリングすることができる。
【0114】
本明細書に提供される製剤を滅菌する1つの方法は、放射線滅菌によるものである。このような放射線としては、α線、β線、γ線、中性子線、電子ビーム、およびX線が挙げられる。特定の好ましい実施形態では、放射線はガンマ線(γ線)滅菌である。例示的な放射線量としては、以下のものが挙げられる:約0.5~10MRad(5~100kGy)、約1.5~5.0MRad(10~50kGy)または約2~4MRad(20~40kGy)の放射線。例えば、γ線滅菌は、以下の線量(kGY)のうちの1つのあたりで実施され得る:10、15、20、25、30、35、40、45または50。一般に、電子ビームまたはガンマ線の線量は、約10~50kGyまたは20~40kGyの範囲である。
【0115】
放射線の線量は、滅菌前の組成物のバイオバーデンレベル(初期汚染)に基づいて決定され得る。暴露時間は、他の変数の中でも特に、組成物の性質、ビームの強度、およびコンベヤ速度に依存し、典型的には1分未満である;一般に、1/10秒~数秒の範囲である。線量計を使用して、照射されている特定の試料または組成物の最適な曝露時間を決定してもよい。
【0116】
滅菌手順の温度は、約2℃~50℃、または約15℃~40℃、または約20℃~30℃の範囲であり得る。典型的には、照射は周囲条件下で行われる。
【0117】
特定の実施形態では、デポ製剤を滅菌して、少なくとも10-3、または少なくとも10-4、またはさらには少なくとも10-5の無菌性保証レベル(SAL)を提供する。無菌性保証レベルの測定規格は、例えば、ISO/CD 14937に記載されており、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの例において、本明細書に提供される滅菌組成物は、少なくとも10-6(100万分の1より大きい非滅菌単位(nonsterile unit)の確率)である無菌性保証レベルを有し得る。
【0118】
デポ製剤は、ガラス、プラスチック、箔およびフィルム形成パッケージを含むがこれらに限定されない任意のタイプの少なくとも部分的に電子ビームまたはガンマ線透過性の容器に含まれ得る。容器は密封されてよく、あるいは開口部を有していてもよい。ガラスおよび場合によってはプラスチック容器の例として、アンプル、バイアル、シリンジ(シングル、デュアルまたはマルチプルレット)、ピペット、アプリケーター、チューブなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
例えば、容器は、シリンジ、または任意選択で通気性のあるシリンジキャップを含むシリンジであってもよい。通気性のあるシリンジキャップの例としては、Vented FLLキャップ3ミクロンフィルター(Qosina、P/N 12089)、Female Luerキャップ通気式ヘックスルアーフィット(Qosina、P/N 6570)、およびLuerチップシリンジキャップ(Value Plastics(Fort Collins,Colo.)、P/N VPM0480201N)が挙げられる。
【0120】
上記のものなどであるがこれらに限定されない容器は、例えば、密封ホイルパウチなどのパウチ内にさらにパッケージおよび密封されてもよい。製薬業界および医療業界で使用するためのパッケージング材料は周知である。本明細書に提供されるタイプの組成物に適用可能として、“Pharmaceutical Packaging Technology”, Dean, D. A., et al., Ed., Taylor & Francis, Inc., 2000に記載されている容器が、本方法における使用のために、ならびに本明細書に提供される組成物およびキットのために企図される。
【0121】
電子ビームまたはガンマ線照射の浸透は、一般に、選択されるパッケージング材料の関数である。特定の実施形態では、静止した電子ビームまたはガンマ線の側面からの浸透が不十分であると判断される場合、適切な浸透を達成するために容器を反転または回転させることができる。あるいは、電子ビームまたはガンマ線源を、静止したパッケージまたは容器の周りを移動させてもよい。プロダクトロードにおいて線量分布および線量浸透を決定するために、線量マップを実施することができる。線量マップは、特定の製品、パッケージまたは容器の最小および最大線量ゾーンを特定するために使用することができる。特定の実施形態では、デポ製剤を含む容器を、例えば電子ビームまたはガンマ線照射で滅菌した後、容器をさらに滅菌してもよい。例えば、滅菌を必要とし得る他の構成要素と共に容器をキットに入れる。このプロセスでは、キット全体が滅菌され得る。例えば、キット全体を、化学的(例えば、エチレンオキシドまたは過酸化水素蒸気を用いる)、物理的(例えば、乾式加熱)、またはマイクロ波照射、電子ビーム照射もしくはガンマ線照射などの他の技術によってさらに滅菌してもよい。
【0122】
ここで本発明を一般的に説明してきたが、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるであろうが、これらの実施例は、単に本発明の特定の態様および実施形態の例示を目的として含まれており、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0123】
以下の実施例1および2における製剤を調製するための方法は、本質的にWO2014/207304およびWO2017/068245(それぞれ、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように実施したが、以下の各実施例に具体的に記載されるように修正した。
【0124】
実施例1:製造されたエラミプレチドを含むシリカ-API-シリカハイドロゲルコンポジット(デポ)の製剤
製剤仕様:
・総薬物用量:50μLの注射中270μgのAPIの用量
・1日の薬物用量:3μg
・in vivo放出プロファイル:3ヶ月間の持続放出
・投与経路:硝子体内注射
・注射体積:50μL以下
・針のサイズ:30ゲージ
・注射頻度:3ヶ月に1回反復
【0125】
表1中の情報は、調製した製剤の詳細およびその分析を提供する。
1)注射可能なハイドロゲルコンポジットを製造するために使用される微粒子製剤
2)ハイドロゲル前駆物質(R400)1mL当たりの微粒子の質量(g)
3)デポ中の微粒子の重量%(デポ1グラム当たり500mgの微粒子)
4)最終デポ製剤中のAPIの測定量、デポの密度は1.2g/mLであると推定された
5)最終デポ製剤のpH
6)(プライミング後)100μLの注射で手動注射可能性試験(Manual injectability testing)を行った。
【0126】
表1に記載のコンポジットのシンク条件でのin vitro溶出データを図1および図2に示す。
【0127】
ディスカッション:
図1は、製剤#05Dが約8~9日間にわたってAPI(すなわち、エラミプレチド)を放出することを示し、それはin vivoで約9ヶ月に相当するはずである。
【0128】
図2は、製剤#08Dが約4~5日間にわたってAPI(すなわち、エラミプレチド)を放出することを示し、それはin vivoで約5ヶ月に相当するはずである。
【0129】
この実施例1ならびに図1および2におけるデータは、粒子が形成される条件(例えば、形成pH)を調節することにより、APIの放出速度を所望の放出基準に調整できることを実証する。
【0130】
実施例2:製造された化合物Iを含むシリカ-API-シリカハイドロゲルコンポジット(デポ)の製剤
1)注射可能なハイドロゲルコンポジットを製造するために使用される微粒子製剤
2)ハイドロゲル前駆物質(R400)1mL当たりの微粒子の質量(g)
3)デポ中の微粒子の重量%(デポ1グラム当たり500mgの微粒子)
4)最終デポ製剤中のAPIの測定量、デポの密度は1.2g/mLであると推定された
5)最終デポ製剤のpH
6)(プライミング後)100μLの注射で手動注射可能性試験を行った。
【0131】
表2に記載のコンポジットのシンク条件でのin vitro溶出データを図3および図4に示す。
【0132】
結果の要約
・ハイドロゲル成分は、製剤#05DのシリカおよびAPIの両方の放出速度を低下させる。
・ハイドロゲル成分は、#05Dと比較して、製剤#08Dの放出速度に有意な効果を有さなかった。
・デポ製剤はすべて、25ゲージまたは27ゲージサイズの針のいずれかを通して注射された。
・ハイドロゲルコンポジットの製造は容易であった。
・微粒子の湿潤は速く、懸濁液の作業性は良好であった。
・化合物Iの製剤#05Dおよび#08Dについてのデータは、特に、エラミプレチドについて観察されたものと同様であった:
図3は、製剤#05Dが約9~10日間にわたってAPI(すなわち、化合物I)を放出することを示し、それはin vivoで約10ヶ月に相当するはずである。
図4は、製剤#08Dが約4~5日間にわたってAPI(すなわち、化合物I)を放出することを示し、それはin vivoで約5ヶ月に相当するはずである。
・この実施例2のデータは、粒子が形成される条件(例えば、形成pH)を調節することによって、APIの放出速度を所望の放出基準に調整できることを実証する。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
実施例3:重フッ化アンモニウム中における化合物Iおよびエラミプレチドの放出:
・0.1MのNHHFをシリカ微粒子に1mg/mLの粒子濃度まで添加する(すなわち、10mLの溶液に対して10mgの粒子)。
・シリカ-プラセボ微粒子を用いAPIを16μg/mLまたは40μg/mLの濃度に添加(spiked)する。
・シリカ微粒子を室温で溶解させる。
・過剰のシリカ-プラセボ微粒子を不活性な非反応NHHFに加える(16mg)。
・ブランク試料→APIを含まない同じ製剤。
・1.5mLの試料溶液を14000rpmで10分間遠心分離する。
・上清を安定性指示RP-HPLC法(stability-indicating RP-HPLC method)で分析する。
・対照/標準→水中の15μg/mLまたは40μg/mLのAPI。
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
【0138】
結論:
・新鮮なAPI試料中および微粒子製剤から放出されたAPIを有する試料中の不純物の相対量は同じレベルであった。
・エラミプレチドおよび化合物Iの両方とも、製剤化プロセスによって有意に修飾されることはなく、試験したAPIの制御放出のためのこれら製剤の開発に不適切であるとして、製剤がプロセスに悪影響を及ぼすことはなかった。
【0139】
実施例5:微粒子用ゾルの調製および微粒子の調製
シリカ-API微粒子-シリカハイドロゲルデポの製造プロセスの概要を図5に示す。
【0140】
噴霧乾燥微粒子を製造するためのシリカゾルは、pH2で塩酸(HCl)を触媒として使用して水中でオルトケイ酸テトラエチル(tetraethyl orthosilicate)(TEOS)を加水分解することによって作製することができる。水:TEOSのモル比は、微粒子製剤の第1のR値(第1のR)を決定する。医薬有効成分(または活性医薬成分)(API)を希釈剤(エタノールもしくは水、またはそれらの混合物)に溶解し、次いでこの溶液をゾルと組み合わせる。その結果、形成された溶液中のTEOSはさらに希釈され、これは第2のR値(第2のR)として示され、その場合に希釈剤はあたかも水であるかのように計算される。噴霧乾燥の前に、ゾルのpHを調整し、その後ゾルを噴霧乾燥して微粒子を形成することができる。これら微粒子は主に製剤の特性を決定する。具体的な実験手順を以下に記載する。
【0141】
微粒子を作製するためのシリカゾルは、以下のように、水中でのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の加水分解によって生成された:まず、TEOSを水と混合した;TEOSに対する水の初期モル比(=製剤レシピを記載するために使用される標準命名法における第1のR、例えば、R10-100)は、3~10で変化した。TEOSは水に非混和性であるため、加水分解前は二相系であった。次いで、水-TEOS混合物を0.1MのHClでpH2に調整すると、均質な水溶液になった。HCl中の水の量は、R値を計算する際に考慮される。発熱加水分解反応後、シリカゾルを氷浴中で冷却した。分子重合を示すスキームを図6に示す。
【0142】
その後、冷シリカゾルをAPI-水溶液に添加し、希釈係数R、すなわち希釈後のTEOSに対する水のモル比(=製剤レシピを記載するために使用される標準命名法における第2のR、例えば、R10-100)として示した。第2のR値は、製造された全ての微粒子で100であった。
【0143】
API搭載%(API load-%)の影響も調査し、API搭載%は、ゾル中のシリカ含有量に対して2%~5%で変化させた。最後に、0.1MのNaOH溶液でゾルを最終pHに調整し、噴霧乾燥前にpHを4.0~5.9で変化させた。一般に、噴霧乾燥前のゾルのpHは、シリカの縮合度(condensation degree)、ひいては微粒子の溶出速度に影響を及ぼす。
【0144】
最後に、APIを含有するゾルを、濾過された周囲空気で噴霧乾燥することによって、シリカ-API微粒子を調製した。噴霧乾燥パラメータを以下に示す。
【表5】
【0145】
実施例6:シリカ-API微粒子シリカハイドロゲルデポ製剤の調製
注射可能なデポ剤を調製するために、高含水率を有するシリカゾル(R400ゾル、含水率98~99%)も、pH2でHClを触媒として使用して水中でTEOSを加水分解することによって作製する。第1および第2のR値を有する噴霧乾燥シリカ-API微粒子をR400ゾルと混合する。このシリカ微粒子-シリカハイドロゲル懸濁液を使用してシリンジに充填する。シリンジは、ゲルが形成されるまで回転ミキサーで回転させることによって均質に保たれ得る。具体的な実験手順を以下に記載する。
【0146】
高含水率を有するシリカゾル(R400、含水率98~99%)を、触媒として0.1MのHClを使用して、TEOSおよび脱イオン水の加水分解によって作製した。加水分解後、ゾル(すなわち、ハイドロゲルのためのゾル)のpHを0.1MのNaOH溶液で約pH6に調整した。
【0147】
実施例5からの噴霧乾燥シリカ-API微粒子を、手動でR400ゾルと1:1の比(w:v)で混合した。シリカゾルの懸濁液および微粒子を、懸濁液を上下にピペッティングすることによって混合し、バッチサイズは約1~3mlであった。シリンジ(針なし)で懸濁液を直接引き込むことによって懸濁液をプラスチックシリンジ(1mlの使い捨てBDシリンジ)に移し、シリンジを軽くたたくことによって潜在的な気泡を除去した。次いで、粒子の沈降が生じるのを防ぐために、キャップしたシリンジをチューブローター内で穏やかに混合することによって、シリカ-API微粒子-シリカハイドロゲル懸濁液を均質に保ちながら、懸濁液を周囲温度で1~2日間ゲル化させた。
【0148】
実施例7:in vitro溶出試験
製剤の特性は、主に微粒子によって決定される。第1のR値はシリカの溶出速度(dissolution rate)を決定する。一般に、第1のRが小さいほど、シリカマトリックスは水に速く溶解する。他方、第2のR値は、封入(encapsulation)効率に影響を与える。報告されたpHは、噴霧乾燥前のゾルのpHである。pHは、シリカの縮合度、ひいては溶出速度に影響を及ぼすが、その影響は製剤およびAPIに依存する。API搭載%は、シリカ含有量に対する製剤中のAPIの量を示す。API搭載率はシリカの構造と溶出速度に影響を及ぼす。希釈剤は、ゾル中にAPIを添加する前にAPIを溶解させるために使用される溶媒/希釈剤である。希釈剤はAPIの溶解性を改善し、例えば噴霧乾燥におけるAPIの沈殿を防止し得る。噴霧乾燥における入口温度(IT)は、溶媒の蒸発速度を制御することにより粒子形成において役割を果たす。
【0149】
シリカのin vitro溶出およびAPIの放出は、37℃で、pH7.4の0.01%(v/v)TWEEN(登録商標)80を含む50mM TRIS中において測定した(社内でTWと称する)。分析した微粒子またはハイドロゲル試料のサイズは約10~30mgであり、振盪水浴中(60ストローク/分)で168時間(7日間)まで溶出試験を行った。シリカおよびAPIの濃度は、溶出媒体(dissolution medium)中においてシンク条件(SiOマトリックスの自由溶解、すなわちシリカは飽和濃度の20%未満に保たれる)に維持された。シリカ濃度を30ppm未満に保つため、すなわちシンク条件を確実に維持するため、溶出媒体を各時点で新鮮な媒体に交換した。1時間目のサンプリング時点およびその後24時間毎に、溶出媒体を交換する前に試料を遠心分離した。各時点で3つの反復試験試料を採取し、平均値を結果に示す
【0150】
試料(10~25mg)を0.5M NaOH溶液に溶解させることによって試料の総シリカ含有量を別個に測定し、溶出したシリカの累積量が総シリカ含有量と等しくなるまで溶出を続けた。試料(10mgの微粒子または20mgのデポ製剤)を0.1Mの重フッ化アンモニウム(ammonium bifluoride)に溶解させることにより、化合物Iの総含有量を測定し、一方でエラミプレチド(10mgの微粒子または20mgのデポ製剤)は0.01%(v/v)のTWEEN(登録商標)80を補足した150mlの50mMグリシン緩衝液(pH9.4)(社内でGWと称される)に溶解させた。さらに、168時間の時点後に試料のどれだけが残ったかを評価するために、それらの最終サンプリング時点後にシンク条件溶出試料について0.5M NaOH溶液中で完全溶解(total dissolution)を行った。
【0151】
微粒子製剤の封入効率は、非封入APIを考慮した後に算出されたシリカに対するAPIの質量比として定義され、エタノール中で測定された。分析した試料の質量は約20~30mgであり、エタノール中の微粒子の最終質量濃度が1mg/mlとなるようにエタノール溶液を添加した。エタノール溶出試験は室温で24時間まで行った。本明細書における理論的根拠は、シリカ-API微粒子のシリカマトリックスがエタノールに不溶性であるということである。したがって、非封入APIのみがこの条件で溶解する。
【0152】
シンク条件での溶出試験は加速溶出試験法であり、APIおよびシリカの溶出プロファイルは、適切なin vitro-in vivo相関(IVIVC)因子(factor)がなければ、in vivoでの溶出特性と対応しないことに留意されたい。硝子体内注射の場合、30のIVIVC因子を使用して、シンク条件でのin vitro溶出データからシリカマトリックスのin vivo溶出速度を推定することができることが過去に示されている。シリカマトリックスの溶出速度が、シンク試験条件と比較してin vivoで30倍遅いことを意味する。
【0153】
実施例8:化合物Iを含む製剤
I.化合物Iを含むシリカ-API微粒子製剤
本研究において製造されたシリカ-API微粒子製剤の組成を以下の表に示し、微粒子製剤についてシンク条件でのin vitroでの累積的な化合物Iの放出およびシリカマトリックスの溶出を図8~10に示す。図面は、製剤の放出プロファイルに対する研究されたプロセスパラメータの影響を示す。
【0154】
【表6】
【0155】
II.化合物Iを含むシリカ-API微粒子製剤のシンク条件でのin vitro溶出
in vitro溶出試験は、シンク条件で168時間(7日間)まで実施した。試験した全ての製剤(#01~#08)は、低いバースト放出(総含有量の5%未満)を有し、これはAPIの良好な封入を示す。これは、API含有量が24時間の溶出後に定量限界を下回ることを示したエタノール溶出試験によっても確認された。
【0156】
シリカ-API微粒子製剤#01~#03からのin vitroでのシリカの累積溶出およびAPIの累積放出の要約を図8に示す。これらの微粒子製剤中のAPI搭載は2%であり、pHは5.9で一定に保たれた。微粒子製剤の第1のR値は、シリカ溶出およびAPI放出のプロファイルに有意な影響を及ぼした。第1のR値の低下は、より多くのヒドロキシル基がシリカマトリックス中に残るので、シリカマトリックスのより速い溶出速度をもたらした。7日以内に、最遅製剤(#01)からシリカマトリックスの約5%が溶出し、最速製剤(#03)から約84%が溶出した。API放出プロファイルはシリカ溶出プロファイルと相関し、総API含有量の12~87%が7日以内に放出された。
【0157】
様々なpHでのシリカ-API微粒子製剤#03~#06からのin vitroでのシリカの累積溶出およびAPIの累積放出の要約を図9に示す。これらの微粒子製剤中のAPI搭載は2%であり、第1のR値は3で一定に保たれ、第2のR値は100で一定に保たれた。
【0158】
この研究では、製剤#03と#04との間で、APIの放出速度およびシリカマトリックスの溶出に有意差が見られるが、#05と#06との間では見られない(図9)。7日以内に、最遅製剤(#04)から約47%のシリカマトリックスが溶出し、最速製剤(#05および#06)から100%が溶出した。API放出プロファイルはシリカ溶出プロファイルと相関し、総API含有量の48~100%が7日以内に放出された。製剤#03のシンク条件でのin vitro溶出プロファイルは、最も高いpH(より縮合されたシリカマトリックス)により最遅製剤であるはずのため、特殊である。API放出は、全ての研究された微粒子製剤でシリカの溶出と相関する。
【0159】
API搭載%を2%から5%に増加させることについてR3-100ベースの製剤で調べた(図10)。製剤#05および#08はより速い製剤であって互いに同一であり、一方製剤#03および#07はより遅い製剤である。溶出結果は、API搭載を2%から5%に増加させることが溶出速度に有意な影響を与えないことを示す。対照的に、pHは溶出プロファイルに対してより有意な効果を有する。
【0160】
III.粒径分布
開発されたシリカ-化合物I微粒子製剤の粒径分布を以下に要約する。
【表7】
【0161】
D値は、分析した試料の累積質量の10%、50%、90%の切片(intercept)である。例えば、D10値は、試料の質量の10%がこの値以下の直径を有する粒子で構成される直径である。ここで、D50値は10μm未満であるため(#06を除く)、全ての微粒子製剤の粒径は明らかに小さい。シリカ-API微粒子製剤#05および#08は、シリカ溶出、API放出および粒径分布に関して最も望ましい特徴を示したので、それらをデポ製剤開発において使用されるリード製剤として選択した。
【0162】
IV.シリカ-API微粒子-シリカハイドロゲルデポ製剤
シリカ-化合物I微粒子-シリカハイドロゲル(HG)製剤(すなわち、シリカ-化合物Iデポ製剤)の組成を以下に示す。
【表8】
【0163】
デポ製剤からのシリカマトリックスのシンク条件での累積溶出およびAPIの放出速度を図11および12に示す。対応する微粒子製剤の放出速度も前記図に示し、微粒子製剤の溶出速度に対するHG成分の影響を示す。微粒子がシリカ-HG成分に組み込まれている場合、最初の24時間以内に(微粒子)製剤#05から放出されるAPIの累積量は約44%から5%に減少し、(微粒子)製剤#08では34%から10%に減少する。デポ製剤中のAPIの78%(#05D)および96%(#08D)が168時間で放出されるのに対して、それら両方の微粒子製剤は120時間でAPIの96%超を放出したことから、総放出時間は増加する。この現象は、シリカ微粒子を取り囲むシリカハイドロゲルがバリアとして機能し、微粒子を固定化(locks-in-place)することから予想される。したがって、デポ製剤は、微粒子を溶出緩衝液中に分散させるのではなく、単一の固体として溶解する。これにより、製剤の反応性表面積が減少し、溶出速度も低下する。
【0164】
図11および12から、HG成分が微粒子製剤の溶出速度を少なくともある程度低下させることが明らかである。両方のデポ製剤でのシリカの溶出およびAPIの放出において24時間の時点までの短いラグタイムが観察される。
【0165】
V.レオロジー測定および注射可能性
プレフィルドシリンジに充填されたデポ製剤内の三次元ゲル構造の存在を示すために、振動測定(oscillatory measurement)を行った。粘弾性材料に関して、損失係数(tanδ=G”/G’)が1より大きい場合、材料はより液体のように挙動する。他方、損失係数が1未満である場合、材料は半固体、例えばゲルのように挙動する。
【0166】
デポ製剤#05Dおよび#08Dについて、損失係数は、図13に示される全周波数範囲において1未満である。したがって、三次元ゲル構造が形成され、静止時、すなわち貯蔵中のシリンジ内での粒子沈降を防止する。さらに、デポ製剤試料は、デポ製剤の良好な機械的強度を示す、周波数に依存しない適切な貯蔵弾性率(G’)値を誘発する。
【0167】
デポ製剤は、せん断速度の増加の関数として粘度が減少するので、せん断減粘特性を誘発する(図14)。材料は静止時に固体であるため、粘度は低いせん断速度で高い。せん断速度が増加するにつれて、材料は流動し始める。このせん断減粘特性は、材料が、細い針を通してプレフィルドシリンジから注射され得ることを示す。注射処置の間、材料は、10 000 1/s~100 000 1/sの範囲のせん断速度を受ける。本質的に、デポ製剤は、静止時に安定な固体様材料であり、応力を受けると液体として流動し始める。
【0168】
さらに、図14に示されるせん断減粘現象がデポ製剤の良好な注射可能性と類似していることを示すために、細い皮下注射針を通した手動注射可能性試験(manual injectability test)を行った。注射可能性試験の結果を以下に示す。
【表9】
【0169】
実施例9:エラミプレチドを含む製剤
I.エラミプレチドを含むシリカ-API微粒子製剤
この研究で製造されたシリカ-エラミプレチド微粒子の組成を以下に示し、微粒子製剤のAPIのシンク条件での累積放出を図15~17に示す。これらの図は、研究されたプロセスパラメータが製剤の放出プロファイルに及ぼす影響を示す。
【0170】
【表10】
【0171】
II.エラミプレチドを含むシリカ-API微粒子製剤のシンク条件でのin vitro溶出
in vitro溶出試験は、シンク条件で168時間(7日間)まで実施した。試験した全ての製剤(#01~#08)は、低いバースト放出(総API含有量の5%未満)を有し、これはAPIの良好な封入を示す。これは、API含有量が24時間の溶出後に検出限界を下回ることを示したエタノール溶出試験によっても確認された。
【0172】
シリカ-API微粒子製剤#01~#03からのin vitroでのシリカの累積溶出およびAPIの累積放出の要約を図15に示す。これらの微粒子製剤中のAPI搭載は2%であり、pHは5.9で一定に保たれた。微粒子製剤の第1のR値は、シリカ溶出およびAPI放出のプロファイルに影響を及ぼした。第1のR値の低下は、より多くのヒドロキシル基がシリカマトリックス中に残るので、シリカマトリックスのより速い溶出速度をもたらした。7日以内に、最遅製剤(#01および#02)から約10%のシリカマトリックスが溶出し、最速製剤(#03)から約61%が溶出した。API放出プロファイルはシリカ溶出プロファイルと相関し、総API含有量の15~75%が7日以内に放出された。
【0173】
様々なpHでのシリカ-API微粒子製剤#03~#06からのin vitroでのシリカの累積溶出およびAPIの累積放出の要約を図16に示す。この研究では、製剤#03と#06との間でAPIの放出速度およびシリカマトリックス溶出に有意差が見られる。7日以内に、製剤#03から約61%のシリカマトリックスが溶出したのに対し、製剤#06から約100%が溶出した。API放出は、全ての研究された製剤でシリカの溶出と相関する。
【0174】
API搭載%を2%から5%に増加させることについてR3-100ベースの製剤で調べた(図17)。製剤#05および#08はより速い製剤であり、それらの溶出プロファイルは類似しているようであるが、製剤#03と#07の間の差は有意である。溶出結果は、API搭載を2%から5%に増加させることが、噴霧乾燥前のゾルのpHがより高い(pH=5.9)場合、溶出速度に有意な影響を及ぼすことを示す。対照的に、より低いpHのゾルでは、API搭載率は溶出プロファイルに有意な影響を及ぼさない。
【0175】
III.粒径分布
開発されたシリカ-エラミプレチド微粒子製剤の粒径分布を以下に要約する。
【表11】
【0176】
D50値は10μm未満であるため(#06を除く)、全ての微粒子製剤の粒径は小さい。シリカ-API微粒子製剤#05および#08は、シリカ溶出、API放出および粒径分布に関して最も望ましい特徴を示したので、それらをデポ製剤開発において使用されるリード製剤として選択した。
【0177】
IV.シリカ-API微粒子-シリカハイドロゲルデポ製剤
シリカ-エラミプレチド微粒子-シリカハイドロゲル(HG)製剤(すなわち、シリカ-エラミプレチドデポ製剤)の組成を以下に示す。
【表12】
【0178】
デポ製剤からのシリカマトリックスのシンク条件での累積溶出およびAPI放出速度を図18および19に示す。対応する微粒子製剤の放出速度も前記図に示し、微粒子製剤の溶出速度に対するHG成分の影響を示す。微粒子がシリカHG成分に組み込まれている場合、最初の24時間以内に微粒子製剤#05から放出されるAPIの累積量は約47%から14%に減少し、微粒子製剤#08では34%から14%に減少する。デポ製剤中のAPIの89%が168時間で放出されるのに対し、微粒子製剤は120時間でAPIの96%超を放出することから、製剤#05Dの総放出時間は増加する。この現象は、シリカ微粒子を取り囲むシリカハイドロゲルがバリアとして機能し、微粒子を固定化(locks-in-place)することから予想される。したがって、デポ製剤は、微粒子を溶出緩衝液中に分散させるのではなく、単一の固体として溶解する。これにより、製剤の反応性表面積が減少し、溶出速度も低下する。
【0179】
図18および19から、HG成分が微粒子製剤の溶出速度を少なくともある程度低下させることが明らかである。両方のデポ製剤でのシリカ溶出およびAPI放出において24時間の時点までの短いラグタイムが観察される。
【0180】
V.レオロジー測定および注射可能性
プレフィルドシリンジに充填されたデポ製剤内の三次元ゲル構造の存在を示すために、振動測定を行った。粘弾性材料に関して、損失係数(tanδ=G”/G’)が1より大きい場合、材料はより液体のように挙動する。他方、損失係数が1未満である場合、材料は半固体、例えばゲルのように挙動する。
【0181】
デポ製剤#5Dおよび#8Dについて、損失係数は、図20に示される全周波数範囲において1未満である。したがって、三次元ゲル構造が形成され、静止時、すなわち貯蔵中のシリンジ内での粒子沈降を防止する。さらに、デポ製剤試料は、デポ製剤の良好な機械的強度を示す、周波数に依存しない適切な貯蔵弾性率(G’)値を誘発する。
【0182】
デポ製剤は、せん断速度の増加の関数として粘度が減少するので、せん断減粘特性を誘発する(図21)。材料は静止時に固体であるため、粘度は低いせん断速度で高い。せん断速度が増加するにつれて、材料は流動し始める。このせん断減粘特性は、材料が、細い針を通してプレフィルドシリンジから注射され得ることを示す。注射処置の間、材料は、10000 1/s~100000 1/sの範囲のせん断速度を受ける。本質的に、デポ製剤は、静止時に安定な固体様材料であり、応力を受けると液体として流動し始める。
【0183】
さらに、図21に示されるせん断減粘現象がデポ製剤の良好な注射可能性と類似していることを示すために、細い皮下注射針を通した手動注射可能性試験を行った。注射可能性試験の結果を以下に示す。
【表13】
【0184】
実施例10:連続フローリアクターシステムを用いた製造
連続フローリアクターシステムを利用して、2%および5%のAPI搭載を用いて、エラミプレチドを含むシリカ-API-シリカハイドロゲルコンポジット(デポ)の製造をスケールアップした。図7に概略図を示す。
【0185】
連続フロープロセスにおいて、シリカおよびAPIのpHおよび濃度は、製造プロセスを通して一貫したままであった。
【0186】
【表14】
・製造された製剤#09のコンシステンシーバッチの粒径分布は類似しており、製剤#10-5のコンシステンシーバッチは同じ粒径分布を有する。
・連続フロープロセスは、より狭い粒径分布につながる反応時間のより良好な制御を可能にする。
・粒子のサイズ分布をSympatec HELOSレーザー回折装置で測定した。
・一般に、本発明者らのシステムで製造されたシリカ微粒子の平均サイズは5±2μmである(D50、例えば粒子の50%が示されたサイズ以下である)。
図22は、コンシステンシーバッチからの粒径分布のグラフを示す。
図23は、エラミプレチド微粒子製剤#09(2%API搭載)および#10-5(5%API搭載)のシンク条件でのin vitro累積溶出を示す。
・連続フローリアクターシステムの製造プロセスはスケーラブルであり、図24および25に示すように、10倍(10x)までスケールアップして実証された。
・プロセスは、2%および5%APIペイロード材料を用いてバッチから連続フロープロセスへと首尾よく変更された。
・pHならびにシリカおよびAPIの濃度は、2%および5%のAPIペイロード材料について、製造プロセスを通して一貫したままであった。
・製造された全ての微粒子製剤#09および#10-5のバッチは、ほぼ同一のPSDプロファイル(第1の製造バッチの右側の肩のサイズのわずかな変動を除く)を有する。
・バッチサイズは、(実施可能性試験(feasibility study)のバッチサイズと比較して)10倍(10x)まで首尾よく増加され、製造された製剤の溶出プロファイルは、2%API製剤のコンシステンシーバッチと同じままであった。5%API製剤については、10xバッチはわずかに低い溶出プロファイルを有した。
・収集容器の温度制御は、5%ペイロード材料で見られた溶出の変化を防止した
・連続フロープロセスは、2%および5%のAPIペイロードを含むシリカ-API微粒子を製造する反復可能なプロセスである
【0187】
実施例11:中等度加齢黄斑変性および高リスクドルーゼンにおけるエラミプレチドの第1相臨床試験データ
中等度加齢黄斑変性(AMD)および高リスクドルーゼン(HRD)を有する患者におけるエラミプレチドの皮下投与の安全性、忍容性(tolerability)および実施可能性(feasibility)を評価するために、第1相試験を実施した。ReCLAIMと題された本試験の結果は、Ophthalmology Science (M. J. Allingham, P.S. Mettu, and S. W. Cousins; Ophthalmology Science, Vol. 2, Issue 1, March 2022, 100095; https://doi.org/10.1016/j.xops.2021.100095; その全体が参照により本明細書に組み込まれる)において公開された。
【0188】
ReCLAIM試験は、エラミプレチドが、AMDおよびHRDの処置において安全でかつ忍容性が良好であることを実証した。
【0189】
実施例12:エラミプレチド処置は、加齢に伴う視覚低下を遅らせるかまたは逆転させることができる。
エラミプレチドは、N.M. Alam, R. M. Douglas, and G. T. Prusky, Disease Models & Mechanisms (2021) 14, dmm048256. doi:10.1242/dmm.048256(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において詳述されているように、加齢性視覚障害を処置するその能力について研究されている。
【0190】
著者らは、エラミプレチドが、明所視の加齢に伴う空間視力喪失(photopic age-related loss of spatial vision)を処置し、すなわち予防ならびに回復させ、明所視時間情報を処理する視覚系の能力を改善するの有効であることを決定した。実際、本研究は、エラミプレチド処置が、むしろ選択的に明所視機能の加齢に伴う喪失を改善するという行動証拠を明らかにした。
【0191】
参照による組み入れ
本明細書で引用される米国特許ならびに米国およびPCT公開特許出願の全てが、参照により本明細書に組み込まれる。
【0192】
均等物
前記の明細書は、当業者が本発明を実施するのに十分であると考えられる。実施例は、本発明の一態様の単なる例示として意図されており、他の機能的に等価な実施形態は本発明の範囲内にあるので、本発明は、提供される実施例によって範囲を限定されるものではない。本明細書に示されおよび記載されるものに加えて、本発明の様々な改変は、前述の説明から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲内に含まれる。本発明の利点および目的は、必ずしも本発明の各実施形態によって包含されるわけではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25-1】
図25-2】
【国際調査報告】