IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘキサゴン・テクノロジー・エーエスの特許一覧

特表2024-514829複合構造体のモニタリングを行う多素子センサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】複合構造体のモニタリングを行う多素子センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/14 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G01N29/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561750
(86)(22)【出願日】2022-04-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 IB2022053186
(87)【国際公開番号】W WO2022214976
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】17/223,628
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/395,885
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523379915
【氏名又は名称】ヘキサゴン・テクノロジー・エーエス
【氏名又は名称原語表記】HEXAGON TECHNOLOGY AS
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】バークス・ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】プレイザー・ザック
(72)【発明者】
【氏名】アイフゼン・ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン・ジョエル・アール
(72)【発明者】
【氏名】パーキンズ・タイラー
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB05
2G047AC12
2G047BA05
2G047BC02
2G047BC03
2G047BC07
2G047BC18
2G047CA01
2G047GA13
2G047GG28
2G047GG30
2G047GG47
(57)【要約】
【課題】複合構造体のモニタリングを行うセンサ、その製造方法、および複合構造体への取付方法等を提供する。
【解決手段】本発明のシステムは、複合材製ボンベに連結していて該複合材製ボンベに関する変形データを検出するように構成された複数のセンサと、該複数のセンサに通信可能に接続されて前記複合材製ボンベが衝撃損傷を負った際に前記変形データに基づいて損傷値を求めるようにかつ該損傷値が衝撃損傷閾値を超えた場合に通知を行うように構成された制御部と、前記複数のセンサに通信可能に接続されてバルブを制御して前記複合材製ボンベに流体を充填するようにかつ前記複合材製ボンベに前記流体が充填される際に前記複数のセンサからの前記変形データに基づいて前記複合材製ボンベの損傷を検出するようにかつ前記複合材製ボンベの損傷が検出された場合に安全動作を自動的に実行するように構成された充填制御部とを備える。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材製ボンベに連結しており、前記複合材製ボンベに関する変形データを検出するように構成された複数のセンサと、
前記複数のセンサに通信可能に接続された制御部であって、
前記複合材製ボンベが衝撃損傷を負った際に、検出された前記変形データに基づいて損傷値を求めるように、かつ、
前記損傷値が衝撃損傷閾値を超えた場合に、通知を行うように、
構成された制御部と、
前記複数のセンサに通信可能に接続された充填制御部であって、
バルブを制御して前記複合材製ボンベに流体を充填するように、かつ、
前記複合材製ボンベに前記流体が充填される際に、前記複数のセンサからの前記変形データに基づいて、前記複合材製ボンベの損傷を検出するように、かつ、
前記複合材製ボンベの損傷が検出された場合に、安全動作を自動的に実行するように、
構成された充填制御部と、
を備える、モニタリングを行うシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記複合材製ボンベが、複数の層からなる積層構造体であり、前記複数のセンサにより検出された前記変形データが、前記複数の層のうちの1つ以上の層の損傷を示す、システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、前記制御部は、さらに、前記複合材製ボンベが前記衝撃損傷を負った際の、物体からの直接波エネルギーを求めるように構成されており、前記制御部は、求められた前記直接波エネルギーに基づいて前記損傷値を求める、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、前記制御部は、
前記複数のセンサからの前記変形データをデジタル化し、
衝撃位置から前記複数のセンサの各センサへの最低速度波成分の、それぞれの直接到達時間を求めて、
前記複合材製ボンベ上の前記衝撃位置の推定位置を求めて、
各センサへの前記最低速度波成分の前記それぞれの直接到達時間および各センサでの検出電圧に基づいて、前記直接波エネルギーを求める
ことによって、前記直接波エネルギーを求める、システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記充填制御部は、さらに、前記複合材製ボンベに前記流体が充填される際に、アコースティックエミッションのモーダル検査を実施して前記複合材製ボンベの損傷を検出するように構成されている、システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記制御部は、前記通知を車両のECUに対して行って前記複合材製ボンベの検査を示す照明を点灯させて、かつ/あるいは、前記通知を非過渡的なメモリに対して行って前記複合材製ボンベについて記憶された状態を更新するように構成されている、システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記安全動作が、前記バルブを閉じて前記複合材製ボンベに対する充填を阻止すること、および/または、スピーカもしくは表示画面で通知を行うこと、および/または、前記バルブを調節して前記流体をサージタンクに導くことを含む、システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項記載のシステムにおいて、前記充填制御部は、前記複合材製ボンベに前記流体が充填される際に、少なくとも1つの指標が各自の所定の閾値を超えたことに基づいて、前記複合材製ボンベの損傷を検出するように構成されている、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの指標は:検出された繊維トウ破壊事象の定量化および繊維トウ破壊閾値との比較に相当する繊維トウ破壊指標;局所材料体積内の不安定性が不安定性閾値を超えることに相当する不安定性指標;前記複合材製ボンベの1つ以上の層の剥離が剥離閾値を超えることに相当する剥離事象指標;前記局所材料体積に蓄積した損傷メカニズムが損傷メカニズム閾値を超えることに相当する損傷メカニズム指標;ならびにフレッティングエミッションが前記複合材製ボンベの積層組成に基づくフレッティングエミッション閾値を超えることに相当するフレッティングエミッション指標;のうちの1つ以上からなる、システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のシステムにおいて、
前記複数のセンサは、圧電材料に対して複数の方向にダイシングを行うことによって形成された溝をそれぞれ有して前記複合材製ボンベの形状に追従するように構成された圧電センサであり、
前記圧電材料の前記溝には、閾値温度を超える温度になると塑性状態に変わるように構成された樹脂が充填されており、
前記圧電材料が、正極電極と接地電極との間に位置している、システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、各圧電センサが、さらに、前記正極電極の上方に位置した第1のポリイミド膜、および前記接地電極の下方に位置した第2のポリイミド膜を含む、システム。
【請求項12】
複合材製ボンベに連結した複数のセンサにより、前記複合材製ボンベに関する変形データを検出する過程と、
前記複合材製ボンベが衝撃損傷を負った際に、前記複数のセンサに通信可能に接続された制御部によって、検出された前記変形データに基づいて損傷値を求める過程と、
前記損傷値が衝撃損傷閾値を超えた場合に、前記制御部によって通知を行う過程と、
前記複数のセンサに通信可能に接続された充填制御部によって、バルブを制御して前記複合材製ボンベに流体を充填する過程と、
前記複合材製ボンベに前記流体が充填される際に、前記充填制御部によって、前記複数のセンサからの前記変形データに基づいて、前記複合材製ボンベの損傷を検出する過程と、
前記複合材製ボンベの損傷が検出された場合に、安全動作を自動的に実行する過程と、
を備える、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記複合材製ボンベが、複数の層からなる積層構造体であり、前記複数のセンサにより検出された前記変形データが、前記複数の層のうちの1つ以上の層の損傷を示す、方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法において、さらに、
前記制御部によって、前記複合材製ボンベが前記衝撃損傷を負った際の、物体からの直接波エネルギーを求める過程であって、前記制御部は、求められた前記直接波エネルギーに基づいて前記損傷値を求める、過程、
を備える、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記直接波エネルギーを求める過程は、
前記複数のセンサからの前記変形データをデジタル化する副過程、
衝撃位置から前記複数のセンサの各センサへの最低速度波成分の、それぞれの直接到達時間を求める副過程、
前記複合材製ボンベ上の前記衝撃位置の推定位置を求める副過程、ならびに
各センサへの前記最低速度波成分の前記それぞれの直接到達時間および各センサでの検出電圧に基づいて、前記直接波エネルギーを求める副過程
を含む、方法。
【請求項16】
請求項12から15のいずれか一項に記載の方法において、前記複合材製ボンベに前記流体が充填される際に前記複合材製ボンベの損傷を検出する過程が、前記充填制御部により、前記複数のセンサを用いてアコースティックエミッションのモーダル検査を実施する副過程を含む、方法。
【請求項17】
請求項12から16のいずれか一項に記載の方法において、前記損傷値が前記衝撃損傷閾値を超えた場合に前記制御部によって前記通知を行う過程が、前記通知を車両のECUに対して行って前記複合材製ボンベの検査を示す照明を点灯させて、かつ/あるいは、前記通知を非過渡的なメモリに対して行って前記複合材製ボンベについて記憶された状態を更新する副過程を含む、方法。
【請求項18】
請求項12から17のいずれか一項に記載の方法において、前記安全動作が、前記バルブを閉じて前記複合材製ボンベに対するそれ以上の充填を阻止すること、および/または、スピーカもしくは表示画面で通知を行うこと、および/または、前記バルブを調節して前記流体をサージタンクに導くことを含む、方法。
【請求項19】
請求項12から18のいずれか一項に記載の方法において、前記複合材製ボンベに前記流体が充填される際に前記複合材製ボンベの損傷を検出する過程は、少なくとも1つの指標が各自の所定の閾値を超えたか否かを判定する副過程を含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記少なくとも1つの指標は:検出された繊維トウ破壊事象の定量化および繊維トウ破壊閾値との比較に相当する繊維トウ破壊指標;局所材料体積内の不安定性が不安定性閾値を超えることに相当する不安定性指標;前記複合材製ボンベの1つ以上の層の剥離が剥離閾値を超えることに相当する剥離事象指標;前記局所材料体積に蓄積した損傷メカニズムが損傷メカニズム閾値を超えることに相当する損傷メカニズム指標;ならびにフレッティングエミッションが前記複合材製ボンベの積層組成に基づくフレッティングエミッション閾値を超えることに相当するフレッティングエミッション指標;のうちの1つ以上からなる、方法。
【請求項21】
複合構造体のモニタリングを行うセンサであって、
第1のモニタリングタスクに関するデータを検出するように構成された、第1のサイズの第1のセンサ素子と、
第2のモニタリングタスクに関するデータを検出するように構成された、第2のサイズの第2のセンサ素子と、
を備え、前記第1のセンサ素子が第1の正極電極を含み、前記第2のセンサ素子が第2の正極電極を含み、前記第1の正極電極が前記第2の正極電極と同一面上にある、センサ。
【請求項22】
請求項21に記載のセンサにおいて、前記第1の正極電極が前記第1のサイズを有し、前記第2の正極電極が前記第2のサイズを有し、前記第1の正極電極および前記第2の正極電極は、各自の下面が、垂直軸心にのみ電気を伝導するように構成された第1の導電性テープ層を介して、機械的応力下に置かれた際に電流を生成するように構成された前記第1のサイズと前記第2のサイズを合わせたものよりも大きなサイズの活性感知体に接続されている、センサ。
【請求項23】
請求項22に記載のセンサにおいて、前記第1の導電性テープ層のサイズが、前記第1のサイズと前記第2のサイズを合わせたものよりも大きい、センサ。
【請求項24】
請求項22または23に記載のセンサにおいて、前記活性感知体の下面が、第2の導電性テープ層を介して、前記第1のサイズと前記第2のサイズを合わせたものよりも大きなサイズの接地電極の上面に接続されている、センサ。
【請求項25】
請求項24に記載のセンサにおいて、前記第2の導電性テープ層のサイズが、前記第1のサイズと前記第2のサイズを合わせたものよりも大きい、センサ。
【請求項26】
請求項24または25に記載のセンサにおいて、さらに、
前記第1の正極電極及び前記第2の正極電極の上方に位置した第1のポリイミド膜層、ならびに前記接地電極の下方に位置した第2のポリイミド膜層、
を備える、センサ。
【請求項27】
請求項26に記載のセンサにおいて、さらに、
前記第1のポリイミド膜層の上方に位置しており、当該センサに対する電磁干渉を遮断するように構成された銅層、
を備える、センサ。
【請求項28】
請求項26または27に記載のセンサにおいて、前記第1のポリイミド膜層、前記第1の正極電極、前記第2の正極電極、前記第1の導電性テープ層、前記活性感知体、前記第2の導電性テープ層、前記接地電極および前記第2のポリイミド膜層は、それぞれ可撓性を有し、当該センサの連結対象となる面に追従するように構成されている、センサ。
【請求項29】
請求項21から28のいずれか一項に記載のセンサにおいて、前記複合構造体が、流体を貯蔵するように構成された複合材製ボンベであり、前記第1のモニタリングタスクは、前記複合材製ボンベが物体からの衝撃損傷を負った際の、該物体からの直接波エネルギーを検出することであり、前記第2のモニタリングタスクは、前記複合構造体に前記流体が充填される際に、前記複合材製ボンベの損傷を検出することである、センサ。
【請求項30】
請求項29に記載のセンサにおいて、前記第1のセンサ素子が、検出された前記直接波エネルギーに基づいて損傷値を求めるように構成された制御部に電気的に接続されており、前記第2のセンサ素子は、前記複合材製ボンベに前記流体が充填される際にアコースティックエミッションのモーダル検査を実施して前記複合材製ボンベの損傷を検出するように構成された制御部に電気的に接続されている、センサ。
【請求項31】
センサを製造する方法であって、
第1のサイズを有する第1の正極電極および第2のサイズを有する第2の正極電極を作製する工程と、
前記第1のサイズと前記第2のサイズを合わせたものよりも大きなサイズの接地電極を作製する工程と、
前記第1の正極電極及び前記第2の正極電極からなる層と前記接地電極との間に圧電材料を配置する工程と、
を備える、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、さらに、
導電性テープを用いて、前記圧電材料の下面を前記接地電極の上面に接続する工程と、
z軸異方性テープを用いて、前記圧電材料の上面を前記正極電極の両方の下面に接続する工程と、
を備える、方法。
【請求項33】
請求項31または32に記載の方法において、さらに、
前記第1の正極電極及び前記第2の正極電極の上方に第1のポリイミド膜層を接続する工程と、
前記接地電極の下方に第2のポリイミド膜層を接続する工程と、
を備える、方法。
【請求項34】
請求項31から33のいずれか一項に記載の方法において、
前記第1の正極電極を作製する工程は、可撓性の基板材料を用いて、前記第1の正極電極が可撓性を有して前記センサの連結対象となる面に追従する構成となるようにする副工程を含み、
前記第2の正極電極を作製する工程は、可撓性の基板材料を用いて、前記第2の正極電極が可撓性を有して前記センサの連結対象となる面に追従する構成となるようにする副工程を含み、
前記接地電極を作製する工程は、可撓性の基板材料を用いて、前記接地電極が可撓性を有して前記センサの連結対象となる面に追従する構成となるようにする副工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2021年8月6日付出願の米国特許出願第17/395,885号「Multi-Element Sensor for Monitoring Composite Structure(複合構造体のモニタリングを行う多素子センサ)」および2021年4月6日付出願の米国特許出願第17/223,628号「Composite Cylinder Monitoring System(複合材製ボンベのモニタリングを行うシステム)」の優先権を主張するものであり、各出願の全開示内容は、参照をもって本明細書に取り入れたものとする。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、複合積層構造体のモニタリングを行うセンサに関する。
【背景技術】
【0003】
車両は、乗員および/または貨物の輸送に利用され得る。貨物の輸送用の車両には、ボンベ(シリンダ)に貯蔵された燃料を動力に用いるものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなボンベは、車両の動作中に損傷する可能性がある。ボンベが損傷した場合には、ボンベの修理を行うことが重要になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願で説明するのは、複合構造体のモニタリングを行うセンサである。本センサは、第1のモニタリングタスクに関するデータを検出するように構成された、第1のサイズの第1のセンサ素子を備える。本センサは、さらに、第2のモニタリングタスクに関するデータを検出するように構成された、第2のサイズの第2のセンサ素子を備える。
【0006】
本願でほかに説明するのは、センサを製造する方法である。本方法は、第1のサイズを有する第1の正極電極および第2のサイズを有する第2の正極電極を作製する工程を備える。本方法は、さらに、前記第1のサイズと前記第2のサイズを合わせたものよりも大きなサイズの接地電極を作製する工程を備える。本方法は、さらに、前記第1の正極電極及び前記第2の正極電極からなる層と前記接地電極との間に圧電材料を配置する工程を備える。
【0007】
本願でほかに説明するのは、複合構造体のモニタリングを行う方法である。本方法は、複数のセンサ素子を有するセンサの複数のモニタリングタスクを決定する過程を備える。本方法は、さらに、前記複数のモニタリングタスクの各々に基づいて、前記複数のセンサ素子の複数のセンサ素子サイズをそれぞれ決定する過程を備える。本方法は、さらに、決定された前記複数のセンサ素子サイズに基づいて前記センサを製造する過程を備える。本方法は、さらに、前記センサを前記複合構造体に連結する過程を備える。
【0008】
当業者であれば、下記の図面および詳細な説明を検討することで、本発明の上記以外のシステム、方法、特徴および利点についても分かるであろう。図面に示された構成部品は、必ずしも縮尺どおりとは限らず、本発明の重要な特徴をより分かり易く説明するために誇張している場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】各実施形態における、車両の動力に用いる燃料を貯蔵した複合材製ボンベを具備した車両を示す図である。
図2A】各実施形態における、複合材製ボンベを示す図である。
図2B】各実施形態における、複合材製ボンベを示す他の図である。
図3A】各実施形態における、本システムの各モニタリング構成要素を示すブロック図である。
図3B】各実施形態における、本システムの各モニタリング構成要素を示す他のブロック図である。
図4】各実施形態における、前記ボンベ、各センサおよび衝撃箇所についてのモデルを示す図である。
図5】各実施形態における、本システムのセンサデータを示す図である。
図6】各実施形態における、本システムのセンサデータを示す他の図である。
図7】各実施形態における、前記ボンベ、各センサおよび衝撃箇所の推定箇所についてのモデルを示す図である。
図8】各実施形態における、本システムのデータを示す図である。
図9】各実施形態における、ボンベの充填を行う各構成要素を示すブロック図である。
図10】各実施形態における、ボンベのモニタリング・充填を行う各構成要素を示すブロック図である。
図11】各実施形態における、前記ボンベの充填中に検出されたデータを示す図である。
図12】各実施形態における、前記ボンベの充填中に検出されたデータを示す他の図である。
図13】各実施形態における、前記ボンベの充填中に検出されたデータを示すさらなる他の図である。
図14】各実施形態における、本システムのブロック図である。
図15A】本発明の各実施形態における、本システムによって実行される各処理のフロー図である。
図15B】本発明の各実施形態における、本システムによって実行される各処理の他のフロー図である。
図16A】本発明の各実施形態における、センサの平面図である。
図16B】本発明の各実施形態における、同センサの側面断面図である。
図16C】本発明の各実施形態における、平坦面上での同センサを示す側面図である。
図16D】本発明の各実施形態における、曲面上での同センサを示す側面図である。
図17】本発明の各実施形態における、異なる3種類のサイズのセンサ素子を有するセンサの平面図である。
図18】本発明の各実施形態における、異なる4種類のサイズのセンサ素子を有するセンサの平面図である。
図19】本発明の各実施形態における、異なる5種類のサイズのセンサ素子を有するセンサの平面図である。
図20】本発明の各実施形態における、前記センサに適用する実験用セットアップの模式図である。
図21A】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示す図である。
図21B】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示す他の図である。
図22】本発明の各実施形態における、コヒーレント状態に時間シフトさせられた検出データおよび時間コヒーレント状態になった信号同士の合計を示す図である。
図23A】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示す図である。
図23B】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示す他の図である。
図24】本発明の各実施形態における、周波数-波長の分散関係を示す図である。
図25】本発明の各実施形態における、前記センサに適用する実験用セットアップの模式図である。
図26】本発明の各実施形態における、異なる直径の感知素子同士の比較図である。
図27】本発明の各実施形態における、センサを製造する方法を示すフロー図である。
図28】本発明の各実施形態における、センサを製造・使用する方法を示すフロー図である。
図29A】本発明の各実施形態における、前記センサに用いられる圧電素子の作製工程を示す図である。
図29B】本発明の各実施形態における、前記センサに用いられる圧電素子の他の作製工程を示す図である。
図29C】本発明の各実施形態における、前記センサに用いられる圧電素子のさらなる他の作製工程を示す図である。
図29D】本発明の各実施形態における、前記センサに用いられる圧電素子のさらなる他の作製工程を示す図である。
図29E】本発明の各実施形態における、前記センサに用いられる圧電素子のさらなる他の作製工程を示す図である。
図29F】本発明の各実施形態における、前記センサに用いられる圧電素子のさらなる他の作製工程を示す図である。
図30A】本発明の各実施形態における、図29A図29Fの圧電素子を有するセンサを示す図である。
図30B】本発明の各実施形態における、図29A図29Fの圧電素子を有するセンサを示す他の図である。
図30C】本発明の各実施形態における、図29A図29Fの圧電素子を有するセンサを示すさらなる他の図である。
図30D】本発明の各実施形態における、図29A図29Fの圧電素子を有するセンサを示すさらなる他の図である。
図31】本発明の各実施形態における、前記センサに適用する実験用セットアップの模式図である。
図32】本発明の各実施形態における、前記センサに適用する実験用セットアップで用いられる発生源についてのグラフである。
図33】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示す図である。
図34A】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示す他の図である。
図34B】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図35】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図36A】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図36B】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図37】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図38A】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図38B】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図39】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図40A】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図40B】本発明の各実施形態における、検出された実験データを示すさらなる他の図である。
図41】本発明の各実施形態における、センサを製造する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、車両の複合材製ボンベのモニタリングを行うシステム、車両および方法について開示する。本明細書で開示するシステム、車両および方法は、前記複合材製ボンベの損傷を自動的に検出し、対応する措置を講じる。本明細書に記載のシステムおよび方法は、前記複合材製ボンベの完全性について利用時から充填時(あるいは、再充填時)にわたって継続的にモニタリングを行うため、前記複合材製ボンベを使用した車両の安全性を向上させる。
【0011】
本明細書の説明では複合材製ボンベを対象とするが、前記システムおよび方法は、風力タービン、機体、翼の前縁といった、衝撃損傷が悪影響となる任意の複合構造体などの、様々な場面に適用され得る。
【0012】
そのほか、前記複合構造体のモニタリングに使用されるセンサについても開示する。本明細書で説明するセンサは、一つのセンサで複数のモニタリングタスクを実施することが可能な多素子センサであり得る。本明細書で説明するセンサは、簡単に調整可能かつ再設計可能であり、低コストで大量に製造することも可能である。従来の圧電センサは、コストがかかるだけでなく、複数のモニタリングタスクに対応していない。
【0013】
本明細書で用いる「運転者」とは、車両が非自律車両の場合に該車両を運転する人間のことを指し得て、かつ/あるいは、本明細書で用いる「ドライバ」とは、車両を自律的または半自律的に走行させるのに使用される1つ以上のコンピュータプロセッサのことを指し得る。「ユーザ」とは、車両が非自律車両の場合に該車両の運転者または乗員のことを指すのに用いられ得る一方で、車両が自律車両または半自律車両の場合には該車両の乗員のことを指すのに用いられ得る。本明細書で用いる「ボンベ」には、貯蔵タンク、圧力容器、およびガスを貯蔵するのに使用されることが可能なその他の容器が含まれ、必ずしも直円筒および/または断面の円形状が一定もしくは変化しない円筒などの、特定の形状に限定されない。本明細書で用いる「燃料」または「ガス」は、ガス燃料や液体燃料といった、車両の動力に用いられるあらゆる流体のことを指す。
【0014】
図1に、車両102を示す。具体的に述べると、車両102は、トレーラ106と連結してトレーラ106を牽引するように構成されたトラクタである。車両102は、複合材製圧力ボンベ(あるいは、「複合材製ボンベ」または「ボンベ」)に貯蔵された燃料を動力に用い得る。例えば、該燃料は、複合材製ボンベに貯蔵された圧縮天然ガスであり得る。
【0015】
前記ボンベは、ガスボンベアセンブリの一部であり得る。該ガスボンベアセンブリは、車両102のエンジンなどの任意の動力発生系統と流体連通して燃料を供給するものである。車両102は、自動車、ワゴン車、バン、バス、多乗員車両、トラック、トレーラ車(tractor trailer truck)、ごみ収集車などの大型車両、またはその他の任意の車両であり得る。一部の実施形態において、ガスボンベアセンブリは、船舶用に構成されたものや、飛行機用に構成されたものや、移動式又は定置式の燃料ステーション用に構成されたものである。
【0016】
前記燃料ボンベは、例えば、車両102の側部の区画もしくはハウジング104A、トレーラ106の一区画もしくはハウジング104B、または車両102の運転室後方の区画もしくはハウジング104Cに格納され得る。一部の実施形態において、前記燃料ボンベは、ルーフトップに格納され得るか又は車両のテールゲートに搭載され得る。
【0017】
複合材製圧力ボンベの使用中の故障は、主に、熱曝露事象、衝撃損傷、および複合積層体で有害となる累積損傷の、3種類の根本原因から生じる。熱曝露は軽減され得る一方で、衝撃損傷(例えば、自動車衝突等)や、適切でない動作状態(例えば、不適切な設置、ボンベと外囲物との間に何か(debris)が引っかかっている等)により蓄積した累積損傷から複合材製圧力ボンベを保護するシステムや方法は(市販されていないなどの理由から)存在していない。これまでの経験から、ボンベが有意なレベルを超える衝撃損傷を受けたり不適切な環境状態(例えば、ボンベと外囲物との間にボルトが引っかかっている等)で潜在的な損傷が蓄積したりして積層体内部の応力状態が臨界レベルを超えることにより、その後の充填サイクルで同ボンベに致命的な故障が発生することが分かっている。
【0018】
図2Aに、圧縮天然ガスや水素などの流体を貯蔵するように構成されたボンベ100を示す。ボンベ100は、鋼、アルミニウムなどの金属、ガラス繊維、炭素繊維、高分子、炭素繊維強化高分子などの複合材料、別の適切な材料、またはこれらの組合せから構成され得る。例えば、ボンベ100は、気密性のポリエチレンプラスチック製のインナライナ上に高圧用の炭素繊維強化プラスチック構造を設けたものであり得る。他の例において、ボンベ100は、金属製ライナを複合材又は繊維樹脂で包み込んだものであり得る。
【0019】
図2Bは、ボンベ100の側面断面図である。ボンベ100は、複数の層からなり得る。例えば、ボンベ100は、内層222および外層220を有し得る。内層222は、金属、プラスチックまたはその他の任意の高剛性材料からなり得る。外層220は、製造工程で内層222の上に配置された複合材または繊維樹脂からなり得る。外層220の外側が、ボンベ100の外面218を形成し得る。ボンベ100の壁が、前記燃料を貯蔵するための内部空間224を画定し得る。図2Bには2つの層(例えば、内層222および外層220)が描かれているが、ボンベ100を構成するのに用いられる層の数はどのような数であってもよい。
【0020】
図2Aを再び参照する。ボンベ100は、中央部216および2つの端部208,210を有する。中央部216は、円筒状であり得るが、その他のどのような形状であってもよい。一部の実施形態において、2つの端部208,210は、それぞれ、図2Aに示すようにドーム状の構造からなる。一部の実施形態において、前記2つの端部は互いに対称である。前記ドーム状の構造は、少なくとも端部が略半球状であり得る。一部の実施形態では、2つの端部208,210が相異なる形状であり、ボンベ100が非対称形状となっている。
【0021】
一部の実施形態において、ボンベ100は、該ボンベ100の内部空間の入口および/または出口となる少なくとも1つの首部212,214(例えば、ボスの長手方向突出部等)を有する。一部の実施形態では、ボンベ100の両端部208,210に首部212,214が形成されている。一部の実施形態では、2つの端部208,210のうちの一方にのみ首部が形成され得る。一部の実施形態において、首部212,214は、ボンベ100の内側にある高圧用の囲繞体(インナライナアセンブリ、あるいは、単にライナと称する場合がある)の一方の端部を貫通するようにして形成された金属製構造物(ボスと称する場合がある)の一部であり得る。
【0022】
首部212,214は、金属などの、任意の数の材料からなり得る。一部の実施形態において、首部212,214は、前記内側にある高圧用の囲繞体に使用されていない1種以上の材料を用いて構成される。一部の実施形態において、首部212,214は、前記内側にある高圧用の囲繞体と同じ材料からなる。
【0023】
ボンベ100は、該ボンベ100の本体にわたる外面218を有し得る。一部の実施形態では、首部212,214が外面218に含まれる。他の実施形態では、首部212,214が外面218に含まれない。本明細書で説明するように、ボンベ100には、損傷が生じる場合がある。該損傷は、ボンベ100と石や他車両といった物体とがぶつかることによって発生し得る。該損傷は、ボルトなどの物体がボンベ100とボンベ100の収容部(例えば、ハウジングまたは区画104)との間に挟まり、ボンベ100が圧力や温度の変化に基づいて膨張した際にボンベ100に損傷を与えることで発生し得る。場合によっては、該損傷が目視可能な凹み204になることもあるが、大概の場合は、該損傷が目視可能な凹みにならない場合が多い。ヒトの目で容易に確認できないこの損傷は、目視可能な凹みと同じぐらいボンベ100にとって有害なものになり得る。本明細書に記載のシステムおよび方法は、ヒトの目で容易に確認できない損傷を負ったボンベなどの、損傷付きボンベの再使用を阻止するものである。
【0024】
ボンベ100の様々なセンサ位置206に、複数のセンサ202が取り付けられ得る。センサ202は、ボンベ100への衝撃を検出するように構成されている。センサ202は、複合材製圧力ボンベ(例えば、ボンベ100)の積層体について、その面外方向の変位成分を感知する広帯域圧電センサであり得る。センサ202により、衝撃事象のエネルギーレベルが検出・確定され得る。前記広帯域圧電センサは、圧電材料と複合積層体との間のやり取りによって、衝撃や該積層体内部で進行する損傷の蓄積によって引き起こされる応力波を測定する。一部の実施形態において、本明細書で使用する広帯域圧電センサは、前記圧電材料の応力状態の変化で生じる共振周波数や反共振周波数のシフトの計測によって前記複合積層体の損傷を検出するものとは必ずしも限らない。一部の実施形態において、本明細書で使用する広帯域圧電センサは、前記圧電材料の応力状態の変化で生じる共振周波数や反共振周波数のシフトの測定に頼らずに前記複合積層体の損傷を検出するものである。
【0025】
センサ202は、能動的に波を発生させて別のセンサに検出させるものではないという点で、受動型センサと見なされ得る。むしろ、センサ202は、いつ、前記タンクのどこで、どの程度重大な衝撃事象が発生したのかを判定するほか、前記積層体が外部源から応力を受けた際の該積層体のモニタリングを受動的に実施する。
【0026】
一部の実施形態において、センサ202は、ボンベ100に取外し可能に取り付けられる。他の実施形態において、センサ202は、ボンベ100内に一体的に形成されて埋設されたものとされる。センサ202は、外面218上に配置されてもよいし、ボンベ100の層内(あるいは、層間)に配置されたものであってもよい。一部の実施形態において、センサ202は、ボンベ100の内部空間224内の内面に設けられてもよい。
【0027】
センサ202は、既知のセンサ位置206に設けられ得る。該センサによって検出されたデータは、ボンベ100上のセンサ位置206と共に、検出対象の凹み204などの任意の損傷の位置を求めるのに利用され得る。図面には4つのセンサ202が描かれているが、使用するセンサの数はどのような数であってもよい。大概の場合、使用するセンサ202の数が多ければ多いほど、損傷の位置や損傷の大きさの判断がより正確なものになる。
【0028】
図3Aは、ボンベ100に接続され得る各構成要素のブロック図である。本明細書で説明するように、システム300はボンベ100およびセンサ202を備える。同じく本明細書で説明するように、センサ202はボンベ100に物理的に連結される。
【0029】
センサ202は、制御部302(あるいは、「ボンベ制御部」、「ボンベ側制御部」または「衝撃モニタリング制御部」)に通信可能に接続され得る。センサ202は、ボンベ100が受けた(あるいは、ボンベ100に生じた)衝撃に関する変形データを検出するように構成されたものであり得る。本明細書で「変形データ」は、ボンベ100の変形のことを指す用語として用い得る。これに関連して、「外乱データ」、「衝撃データ」、「ボンベ完全性データ」なども、「変形データ」と同義的に用いる場合がある。
【0030】
制御部302に、前記変形データが供給され得る。制御部302は、コンピュータプロセッサ、マイクロプロセッサまたは制御装置であり得て、あるいは、非過渡的なメモリに記憶された命令を実行するように構成されたどのような装置であってもよい。制御部302は、ボンベ100と物理的に接続された収容部に設けられ得る(例えば、ボンベ100に直接設けられてもよいし、ボンベ100の収容部に設けられてもよいし、ボンベ100と接続された装置に設けられてもよい)。図3Aに示すように、制御部302は、ボンベ100のみをモニタリング対象とするように構成されており、車両102が複数のボンベを使用している場合には、各ボンベ100に一連のセンサ202および制御部302が対応させられる。
【0031】
センサ202と制御部302は、有線で又はそれぞれの送受信部(例えば、各センサ202の送受信部および制御部302の送受信部)を用いた無線で、通信可能に接続され得る。図面にはセンサ202が2つ描かれているが、システム300に含まれるセンサ202の数はどのような数であってもよく、いずれのセンサ202も制御部302に通信可能に接続され得る。
【0032】
制御部302は、センサ202により検出された前記変形データを受信し、ボンベ100に衝撃事象が生じたか否かを検出して該衝撃事象のエネルギーレベルを求め得る。一部の実施形態において、制御部302は、センサ202により検出された前記変形データをデジタル化し、ボンベ100に衝撃事象が生じたか否かを検出して該衝撃事象のエネルギーレベルを求める。
【0033】
図3Bは、各ボンベ100(例えば、ボンベ100Aおよびボンベ100B)に接続され得る各構成要素を示すブロック図である。本明細書で説明するように、システム350は、複数のボンベ100およびセンサ202(例えば、センサ202Aおよびセンサ202B)を備える。同じく本明細書で説明するように、センサ202は、対応するボンベ100に物理的に連結される。
【0034】
センサ202は、制御部302と同様の制御部352に通信可能に接続され得る。センサ202は、ボンベ100が受けた(あるいは、ボンベ100に生じた)衝撃に関する変形データを検出するように構成されたものであり得る。制御部352に、前記変形データが供給され得る。制御部352は、コンピュータプロセッサ、マイクロプロセッサまたは制御装置であり得て、あるいは、非過渡的なメモリに記憶された命令を実行するように構成されたどのような装置であってもよい。制御部352は、ボンベ100と物理的に接続された収容部に設けられ得る(例えば、任意のボンベ100に直接設けられてもよいし、ボンベ100の収容部に設けられてもよいし、ボンベ100と接続された装置に設けられてもよい)。図3Bに示すように、制御部352は、ボンベ100Aおよびボンベ100Bをモニタリング対象とするように構成されており、ボンベ100Aおよびボンベ100Bのどちらが衝撃を被ったとしても、制御部352は該衝撃を検出することができるようになっている。
【0035】
センサ202と制御部352は、有線で又はそれぞれの送受信部(例えば、各センサ202の送受信部および制御部352の送受信部)を用いた無線で、通信可能に接続され得る。図面にはセンサ202とボンベ100のセットが2つ描かれているが、システム350に含まれるセンサ202とボンベ100のセット数はどのような数であってもよく、いずれのセットのセンサ202も制御部302に通信可能に接続され得る。
【0036】
制御部352は、センサ202により検出された前記変形データを受信し、ボンベ100に衝撃事象が生じたか否かを検出して該衝撃事象のエネルギーレベルを求め得る。センサ202から受信するデータは、該データがどのボンベ100に関するものであるのかについての識別情報(identification)を含み得る。例えば、各センサ202には識別子が関連付けられ得て、センサ202により、該識別子が前記変形データと共に制御部352に通信され得る。
【0037】
一部の実施形態において、制御部302,352は、車両102の制御部(例えば、電子制御装置)や車両102の任意の他の副系統の制御部とは別個の制御部とされる。他の実施形態において、制御部302,352は、車両102における1つ以上の他の系統も制御するように構成された、該車両の制御部である。
【0038】
図4に、変形データを検出するように構成されたセンサとボンベについてのモデル401を示す。モデル401は、センサ(例えば、センサ202等)と通信可能に接続された制御部(例えば、制御部302,352等)によって構築され得る。モデル401のボンベ400は、現実のボンベ100と同等である。一部の実施形態では、前記制御部にボンベ100に対応した識別情報が供給されて、ローカルまたは遠隔の非過渡的なメモリからボンベ100に対応した寸法の取出しが行われ得る。一部の実施形態では、ボンベ100の寸法が前記制御部に供給される。
【0039】
モデル401のセンサ402は、現実のセンサ202と同等である。前記制御部は、現実のボンベ100上における現実のセンサ202の位置を与えられて、前記モデルのボンベ400上における前記モデルのセンサ402の対応する位置を決定する。図面には4つのセンサ402が描かれているが、使用するセンサの数はどのような数であってもよい。大概の場合、使用するセンサ402の数が多ければ多いほど、損傷の位置や損傷の大きさの判断がより正確なものになる。
【0040】
本明細書に記載のシステムおよび方法を用いて行った実験では、直径353mm×長さ889mmのタイプ4の複合材製圧力ボンベ(250bar)の表面に広帯域圧電センサを連結したものを、ボンベ400とセンサ402によってモデル化した。
【0041】
次に、計装化したボンベに対し、直径50mmの半球状のTUPを(モデル化した衝突箇所404が示すように)衝突させ(エネルギーレベル:600J)、面外方向に伝播する変位成分の応力波を収集・デジタル化して、位置およびエネルギーの定量化解析を行った。
【0042】
図5は、衝撃事象の一例から収集した波形の各グラフ500を示したものであり、このグラフから、衝撃事象に起因したガイド波である応力波(guided stress wave)の伝播を確認することができる。
【0043】
各グラフの波形(trace)は各センサ202に対応し、各センサにより検出される振幅(すなわち、面外方向の変位)を経時的に表している。これらの波の伝播は、波伝播の導波モードで変わる。伸縮振動モード(extensional mode)Eの後に、より大きな振幅の屈曲振動モード(flexural mode)Fが続く。各モードは、速度が異なり、構成される周波数帯域幅も広い。そのため、各センサチャネルに共通する同じモードの周波数成分を特定し、各センサへのその波の到達時間を求めようとすることが名案(proposition)ではないことは明白である。
【0044】
図6は、閾値非依存の到達時間推定手法を用いて各チャネルでの基本屈曲振動波の25kHz成分の直接到達時間(縦線で表示)が特定された各グラフ600を示したものである。各センサチャネルでの直接到達時間を、曲面の測地線を求める発生源(source)位置特定アルゴリズムに入力する。
【0045】
具体的に述べると、積層体の分散関係についての知識から導き出した基本屈曲振動波モードの25kHz成分の群速度についての知識、ボンベ表面をN点に分ける離散化、ボンベ上のi番目の点からj番目のセンサまでの測地線伝播距離の計算、およびチャネル間の到達時間の計算値の差と到達時間の実測値の差との間の差分による二乗誤差の和の最小化により、ボンベ表面上の発生源位置の最適計算が行われ得る。
【0046】
図7に、図6で確認した衝撃事象の発生源位置について最適推定を行った後の(ボンベ表面上に測地線経路を重ね合わせた)モデルを示す。同位置が判明することで、衝撃位置から各センサへの波の直接到達時間の特定が行われ得る。この直接到達時間は、後述する直接波形エネルギーの測定値を求めるのに利用される。
【0047】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、直接波形エネルギーを定量化して計算する。直接波形エネルギーの測定値(UWAVE)は、収集波形から次式から算出され得る。
【0048】
【数1】

(式中、tDIRECTは、推定された発生源位置から対象のセンサまでの波伝播のうちの最も遅く移動する波成分の直接到達時間を表し、Vは、各センサ(例えば、圧電センサ等)での検出電圧を表す。)
【0049】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、直接エネルギーを用いる。なぜなら、それ以外のエネルギーの定量値には、反射波や、衝撃から(より長距離の)別の到達経路で伝播して他の波との建設的干渉によって増幅した可能性のある波エネルギーも含まれている場合があり、その場合には、検出された衝撃の定量値が不正確になる可能性があるからである。例えば、振幅の評価に着目したエネルギーの定量値は、伝播波同士が建設的干渉または破壊的干渉で合体している可能性があり、波エネルギーの評価が不正確になるので、本明細書に記載のシステムおよび方法ほど正確にならない。対照的に、本明細書に記載のシステムおよび方法は、直接波エネルギーを用いるので、反射波や回り込み波が抑制される。波面が発生源から伝播して幾何学的に広がることによる伝播距離に応じたエネルギー損失については、本明細書で説明する正規化処理によって対処する。
【0050】
図8から、(衝撃事象によって発生する)直接波エネルギーの測定値は、変更を加えた逆2乗の法則に従い、遠方に行くにつれて減衰することが分かる。そのため、波エネルギーの測定値から衝撃エネルギーの大きさを定量的に評価することができる。よって、伝播距離に基づいて衝撃エネルギーを決定し、それを任意のボンベ構造に応じた閾値に照らして評価を行うことが可能である。本明細書に記載のシステムおよび方法は、閾値を超える事象を検出すると共に、実際に起こり得るあらゆる波伝播効果に関しての正規化を実施する。この正規化により、誤トリガの数が減って本システムの信頼性が向上する。本明細書で説明するように、発生源-センサ間の距離での幾何学的な広がりによる振幅及びエネルギーの損失についても、正規化によってその他の減衰効果と共に対処される。
【0051】
衝撃エネルギーの大きさの定量的評価値が衝撃損傷閾値(例えば、所定の積層体衝撃エネルギー閾値)を超えた場合、制御部302,352は、ボンベ100に損傷が生じたことを通知するように構成されている。該通知は、車両102のECU、ローカルの非過渡的なメモリ、遠隔の非過渡的なメモリなどといった任意の数の装置に対して行われ得る。
【0052】
前記通知を車両102のECUに行う際、車両102の該ECUは、車両102のダッシュボード又は車両102の計器パネル上の照明などといった照明、またはその他の通知表示器を点灯させ得る。該照明または他種の通知は、ボンベ100に再充填を行う前にボンベ100を検査させるためのリマインダーの役割を果たし得る。
【0053】
前記通知をローカルの非過渡的なメモリに行う際、制御部302,352は、該ローカルな非過渡的なメモリに対し、車両102の各ボンベ100に対応した状態指標の更新を行い得る。該状態指標は、ボンベが損傷していない状態に対応する第1の状態から、ボンベが損傷している可能性のある状態に対応する第2の状態に変更され得る。ボンベ100を再充填の前に検査すべきか否かを判断するために、別の装置(例えば、充填装置)から前記ローカルの非過渡的なメモリにアクセスが行われる場合がある。該ローカルの非過渡的なメモリでボンベの状態が前記第2の状態であると示されている場合には、前記充填装置(すなわち、別の装置)がその旨の通知を作業者に行い得るか又はボンベ100の充填を自動的に阻止し得る。
【0054】
同様に、前記通知を遠隔の非過渡的なメモリに行う際、制御部302,352は、該遠隔の非過渡的なメモリに対し、車両102の各ボンベ100に対応した状態指標の更新を行い得る。該状態指標は、ボンベが損傷していない状態に対応する第1の状態から、ボンベが損傷している可能性のある状態に対応する第2の状態に変更され得る。ボンベ100を再充填の前に検査すべきか否かを判断するために、別の装置(例えば、充填装置)から前記遠隔の非過渡的なメモリにアクセスが行われる場合がある。該遠隔の非過渡的なメモリでボンベの状態が前記第2の状態であると示されている場合には、前記充填装置(すなわち、別の装置)がその旨の通知を作業者に行い得るか又はボンベ100の充填を自動的に阻止し得る。制御部302,352は、前記遠隔の非過渡的なメモリに対し、各自の送受信部(例えば、制御部302,352に接続された送受信部および前記遠隔の非過渡的メモリに接続された送受信部)を用いてアクセスを行い得る。
【0055】
衝撃を被って強度が低下したボンベ100に対して再充填を行う際には、該衝撃を検出するのに使われたセンサ202により、再充填中の該ボンベの完全性の喪失を検出するためのアコースティックエミッションのモーダル(MAE)検査も実施され得る。
【0056】
図9に、充填装置に連結されたボンベ100を含めてなるシステム900を示す。該充填装置は、バルブ902および供給タンク904を具備し得る。バルブ902は、供給タンク904に貯蔵されたガスによるボンベ100の充填を制御するように制御部によって自動的に制御され得る。ボンベ100は、車両102に取り付けられたまま充填が行われる場合もある。
【0057】
ボンベ100の充填時には、ボンベ100の中身によってボンベの外殻部に対して内部から外向きの圧力が加わり、ボンベ100の複合積層体内部に機械的応力が発生する。本明細書で説明するように、損傷によって前記複合積層体が材質的に劣化すると、複合材製圧力ボンベにまつわる数多くの損傷メカニズム(例えば、繊維部分の破壊、マトリクス部分の亀裂、界面破壊等)を経て影響箇所の材料体積の不良化が生じる。該損傷メカニズムの発生に伴い、損傷メカニズム部位の原点からボンベ100の壁へと応力波が伝播する。センサ(例えば、広帯域圧電センサ)202は、応力波を解析用に電圧変換・デジタル収集することで、それらの損傷メカニズムに関連した変形データを検出する。
【0058】
充填時に損傷が検出された場合には、破損したボンベによる悪影響を抑制するための1つ以上の対策が講じられ得る。照明やメッセージ表示のような視覚的警告が作動させられ得る。サイレン音や警報のような可聴的警告が作動させられてもよい。バルブ902を自動的に閉じて、ボンベに対するガスのそれ以上の充填を阻止するようにしてもよい。
【0059】
一部の実施形態では、供給タンク904-ボンベ100-サージタンク906間の1つ以上のポートを選択的に開閉することにより、供給タンク904および/またはボンベ100からのガスがサージタンク906に転送され得る。例えば、バルブ902は、供給タンク904に接続されたポート、ボンベ100に接続されたポート、およびサージタンク906に接続されたポートを開閉可能であり得る。ポート同士は、あらゆる組合せで選択的に開閉され得る。例えば、充填時には、供給タンク904のポートとボンベ100のポートが開かれ得ると共に、サージタンク906のポートが閉じられ得る。他の例では、ボンベ100の破損が検出された場合に、ボンベ100のポートとサージタンク906のポートが開かれ得ると共に、供給タンク904のポートが閉じられ得る。
【0060】
一部の実施形態において、サージタンク906は、ボンベ100よりも圧力が低く設定されている。これにより、サージタンク906とボンベ100との間のポートが開かれた場合に、ガスはサージタンク906へと強制的に移動し得る。一部の実施形態では、ガスをボンベ100からサージタンク906へと強制的に移動させるために減圧(suction)又は圧力が該ガスに適用され得る。また、ガスの移動を促すようにベントスタックが存在していてもよい。
【0061】
デジタル収集した波形の、アコースティックエミッションのモーダル解析アルゴリズムは:指定の閾値を超える繊維トウ破壊の検出および定量化;局所材料体積内の不安定性についての指定の閾値を超える不安定性の測定;局所材料体積に蓄積した損傷メカニズムについての指定の閾値を超える損傷メカニズム;ならびにボンベ積層体に応じた指定の閾値を超えるフレッティングエミッションの検出;のうちの1つ以上に着目し得る。
【0062】
上記を複数組み合わせて充填時のボンベの欠陥の有無を検出する場合には、該ボンベおよび該ボンベの寸法や構造を含めた燃料系統の各種特性に基づいて係数の重み付けが行われ得る。例えば、フレッティングエミッションと局所的な損傷成長との組合せで特定のボンベの充填時の欠陥の有無を判断する際には、フレッティングエミッションの重み付けが局所的な損傷成長の重み付けよりも高く設定され得る。
【0063】
図10は、システム1000のブロック図である。本明細書で説明するように、システム1000は、ボンベ100、センサ202および制御部302を備える。
【0064】
制御部302は、充填制御部1002(あるいは、「充填装置制御部」または「充填側制御部」)に通信可能に接続され得る。制御部302は、有線で又は無線で充填制御部1002に通信可能に接続され得る。また、充填制御部1002は、ボンベ100の再充填時の燃料の流れの制御を行うバルブ902に通信可能に接続され得る。
【0065】
本明細書で説明するように、充填制御部1002は、制御部302および/または車両102のECUおよび/またはローカルの非過渡的なメモリおよび/または遠隔の非過渡的なメモリからボンベ100の状態を取得し得る。
【0066】
また、充填制御部1002は、ディスプレイ1004及びスピーカ1006に通信可能に接続され得る。充填制御部1002は、ディスプレイ1004にグラフィカルユーザインターフェースを表示するように構成され得る。該グラフィカルユーザインターフェースには、充填前にボンベ100を検査すべきか否かについての通知が含まれ得る。ディスプレイ1004は、該通知の表示を行い得る。また、充填制御部1002は、充填前にボンベ100を検査すべきか否かについての通知を、スピーカ1006を用いて行うように構成され得る。スピーカ1006は、音、警報、話し言葉(例えば、「充填前にボンベを検査して下さい」等)などの通知を発し得る。
【0067】
一部の実施形態において、充填制御部1002は、ボンベ100の状態を認識しないまま、ボンベ100の最新の状態に関係なく、本明細書で説明する機能を実行するものであり得る。
【0068】
ボンベ100に燃料が充填される際に、センサ202が変形データを検出し、検出された該変形データを充填制御部1002に供給し得る。一部の実施形態において、センサ202は、制御部302を介して充填制御部1002に通信可能に接続されている。一部の実施形態において、センサ202と充填制御部1002は、有線で又は各自の送受信部を用いて直接通信可能に接続されている。
【0069】
充填制御部1002は、前記検出された変形データを受信し、ボンベ100の充填によって該ボンベ100に生じる損傷を検出する。充填制御部1002は、検出された損傷が閾値を超えた場合、バルブ902を自動的に閉じてボンベ100のそれ以上の充填を阻止し得る。一部の実施形態において、充填制御部1002は、ボンベ100の完全性の損害を検出するための該ボンベ100のモニタリングを、充填中センサ202を用いて常に行う。一部の実施形態において、充填制御部1002は、センサ202を用いたボンベ100の充填中のモニタリングを、制御部302,352が衝撃の直接エネルギーの定量値を基に衝撃損傷閾値を超える損傷を検出した場合にのみ行う。
【0070】
充填制御部1002が前記検出された変形データを受信してボンベ100の充填によって該ボンベ100に生じる損傷を検出した場合、本明細書で説明するように、サージタンク(例えば、サージタンク906)による燃料の受入れが実施され得る。
【0071】
制御部302,352および充填制御部1002は同じセンサ202を利用するが、制御部302,352はボンベ100の外力で生じる衝撃を検出するように構成されているのに対し、充填制御部1002は、充填中のボンベ100の膨張によって生じる、事前に弱化した又は変形した部分(例えば、衝撃が生じた部分)に起因して破裂する可能性のあるボンベ100の損傷を検出するように構成されている。
【0072】
本明細書に記載したシステムおよび方法を用いて行った実験では、直径353mm×長さ889mmのタイプ4の複合材製圧力ボンベ(250bar)の表面に広帯域圧電センサを連結したものを、図4のボンベ400とセンサ402によってモデル化した。同じセンサにより、劣化したボンベのMAE検査を実証する充填シミュレーションも実施した。
【0073】
図11は、第1の閾値を上回ったチャネルによる累積事象検出のプロット1100(縦軸:圧力、横軸:試験時間)を示したものである。つまり、プロット1100は、ボンベの充填シミュレーション中の、第1の検出チャネルによる累積事象数を表したものである。図中の線(dashed line)は、2回の充填サイクル中のボンベ内の圧力に相当する。
【0074】
図12は、充填シミュレーション中の、ボンベの局所不安定性のプロットを示したものである。実線は、ボンベ内の圧力を表している。破線は、不安定性を示す背景エネルギー(background energy)であり、ボンベの所定体積内の局所不安定性を表している。背景エネルギー曲線が、所定のボンベ構造に応じた指定の閾値を超える回数の振動を生じた場合、これは不安定性を示唆している。不安定性解析を実施したところ、チャネル1のボンベは、同ボンベの構造に応じて定められた閾値レベルを上回る、充填処理の停止を引き起こすような局所不安定性を示した。
【0075】
本明細書で説明するように、図12に示す不安定性解析は、ボンベ100の充填中の損傷を特定するのに用いられる複数のファクタのうちの一つであり得る。このほかに、周波数・エネルギーの定量化アルゴリズムにより、繊維破壊の大きさの度合いを定量的に評価し、指定の閾値に照らして評価するという手法もあり得る。
【0076】
図13は、衝撃を被ったボンベの充填シミュレーション中に検出された、衝撃損傷が生じた材料体積で発生する衝撃繊維トウ破壊事象についての、時間領域および時間-周波数領域のプロットを示したものである。
【0077】
図14に、本発明の各実施形態における、システム1400の一例を示す。システム1400は、本明細書で各自説明するようなボンベ100、センサ202および制御部302を備える。本明細書で説明するように、センサ202は、ボンベ100の変形データを検出して該変形データを制御部302に通信するように構成されている。センサ202は、圧電センサ(例えば、ファイバーブラッググレーティング、非接触レーザ等)であり得て、あるいは、ボンベ100の変形を検出するように構成された他のどのようなセンサであってもよい。同じく本明細書で説明するように、制御部302は、前記変形データに基づいてボンベ100の損傷を検出し、該損傷が衝撃閾値を超えるか否かを判定するように構成されている。該損傷は、ボンベ100に接した物体の衝撃による直接エネルギーに基づいて求められた定量値であり得る。
【0078】
システム1400は、さらに、制御部302に接続されたメモリ1402を備える。メモリ1402は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどのコンピュータプロセッサであり得る制御部302によって実行される命令を記憶するように構成された非過渡的なメモリであり得る。また、メモリ1402は、例えば、センサ202によって検出された変形データ、ボンベ100の状態などのデータを記憶し得る。ボンベ100の該状態は、単語(例えば、「正常」、「要検査」、「損傷有」等)または数字(例えば、1、2、3、4等)がそれぞれ対応付けられた複数の段階(例えば、2段階、3段階、4段階等)で表現され得る。
【0079】
システム1400は、さらに、制御部302に接続された送受信部1404を備える。制御部302は、送受信部1404により、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、セルラーネットワーク、デジタル短距離通信(DSRC)、インターネットなどのネットワーク、またはこれらの組合せと接続し得る。
【0080】
送受信部1404は、通信ポートまたは通信チャネルを具備し得て、例えば、Wi-Fiユニット、Bluetooth(登録商標)ユニット、無線周波数識別(RFID)タグまたはリーダ、DSRCユニット、または(3G、4G、5Gなどの)セルラーネットワークにアクセスするセルラーネットワークユニットのうちの1つ以上からなる。送受信部1404は、制御部302に直接接続されていない装置やシステムとの間でデータを送受信し得る。例えば、制御部302は、遠隔のデータサーバ1408および/または充填装置1416と通信し得る。また、送受信部1404は、遠隔のデータサーバ1408や充填装置1416が接続されたネットワークにアクセスし得る。
【0081】
また、制御部302は、ボンベ100を動力に用いる車両(例えば、車両102)の1つ以上のコンピュータまたは電子制御装置(ECU)と通信するように構成され得る。本明細書で説明するように、同車両のECUは、制御部302がボンベ100の損傷を検出した際に、表示灯、表示画面、スピーカ、その他の通知装置などといった該車両の1つ以上の構成(aspect)を制御して運転者、すなわち、ユーザに警告を行い得る。制御部302は、有線で又は送受信部1404を介して、それ自体の送受信部と接続してなる前記車両の同ECUとの間で通信を行い得る。また、これに関連して、同ECUは、メモリ1402と同等のそれ自体の非過渡的なメモリと接続したものであり得る。
【0082】
ボンベ100、センサ202、制御部302、メモリ1402および送受信部1404をまとめて、ボンベモニタリング装置1406と称する場合がある。ボンベモニタリング装置1406は、車両(例えば、車両102)に物理的に設置され得る。一部の実施形態において、「ボンベモニタリング装置」は、センサ202および/または制御部302および/またはメモリ1402および/または送受信部1404のことを差し、ボンベ100は該ボンベモニタリング装置に含まれない場合がある。図14では制御部302に各構成要素が接続されている様子が描かれているが、ボンベモニタリング装置1406の各構成要素は、通信バスによって互いに接続されていてもよい。
【0083】
制御部302は、センサ202からの変形データおよび/またはボンベ100の状態の更新情報を遠隔のデータサーバ1408に通信し得る。遠隔のデータサーバ1408は、プロセッサ1410、メモリ1412および送受信部1414を含み得る。プロセッサ1410は、非過渡的なメモリに記憶された命令を実行するように構成された任意のコンピューティング装置であり得る。メモリ1412は、メモリ1402と同様のものであり、プロセッサ1410によって実行される命令、さらには、例えばセンサ202により検出された変形データ、ボンベ100の状態等を記憶するように構成され得る。
【0084】
送受信部1414は、送受信部1404と同様のものであり、ボンベモニタリング装置1406、充填装置1416などの1つ以上の他の装置との間のデータの送受信を行うように構成されている。
【0085】
一部の実施形態では、制御部302がセンサ202からの変形データに基づいて判定を行う構成に代えて、プロセッサ1410が該変形データを受信して本明細書で説明する制御部302の1つ以上の役割を担うようにしてもよい。同実施形態では、制御部302に処理を実行させるよりも、センサ202により検出された変形データを遠隔のデータサーバ1408に(各自の送受信部1404,1414を介して)通信してプロセッサ1410に処理させたほうが計算上効率的となり得る。
【0086】
図面では遠隔のデータサーバ1408が一つしか描かれていないが、計算負荷を分散させて計算効率を向上するように構成された複数の遠隔のデータサーバ1408が存在していてもよい。一部の実施形態において、遠隔のデータサーバ1408は、ボンベモニタリング装置1406と通信することが可能で且つコンピュータ処理を実施することが可能な任意の装置であり得て、例えば、車両のECU、モバイルデバイス(例えば、スマートフォン、ラップトップ、タブレット等)等である。
【0087】
また、制御部302は、センサ202からの変形データおよび/またはボンベ100の状態の更新情報を充填装置1416に通信し得る。充填装置1416は、本明細書で説明する充填制御部1002を含む。充填制御部1002は、ボンベ100を充填するバルブ(例えば、バルブ902)を制御するように構成されている。充填制御部1002は、送受信部1404や送受信部1414と同様の送受信部1418を介して、制御部302からデータを受信し得る。充填制御部1002は、メモリ1422(例えば、非過渡的なメモリ等)と接続されたものであり得る。メモリ1422は、メモリ1402やメモリ1412と同様のものであり、充填制御部1002によって実行される命令、さらには、例えばセンサ202により検出された変形データ、ボンベ100の状態等を記憶するように構成され得る。
【0088】
本明細書で用いる「ユニット」とは、非過渡的なメモリに記憶された命令を実行するように構成された、例えば、1つ以上のコンピュータプロセッサ、制御部またはコンピューティングデバイスのようなハードウェアコンポーネントのことを指し得る。
【0089】
図15Aは、本明細書に記載のシステムによって実行される方法1500を示すフロー図である。
【0090】
複数のセンサ(例えば、センサ202)が、複合材製ボンベ(例えば、ボンベ100)に関する変形データを検出する(ステップ1502)。該複合材製ボンベは、複数の層からなる積層構造体であり、前記複数のセンサにより検出された前記変形データが、前記複数の層のうちの1つ以上の層の損傷を示し得る。各センサは、前記複合材製ボンベ上の様々な位置に設けられた圧電センサであり得る。
【0091】
制御部(例えば、制御部302)は、前記複合材製ボンベが衝撃損傷を負った際に、検出された前記変形データに基づいて損傷値を求める(ステップ1504)。各センサは、有線で又は無線で前記制御部に接続されたものであり得る。前記損傷値は、本明細書で図15Bとの関連で詳述する直接波エネルギーの測定に基づいて求められ得る。
【0092】
続いて、図15Aの方法1500において、前記制御部は、前記損傷値が衝撃損傷閾値を超えた場合に通知を行う(ステップ1506)。前記衝撃損傷閾値は、予め決定されてメモリ(例えば、メモリ1402)に記憶されたものであり得る。前記衝撃損傷閾値は、それぞれ構造、寸法及び材料組成が異なる各複合材製ボンベモデル間で異なり得る。
【0093】
本明細書で説明するように、前記損傷値が前記衝撃損傷閾値を超えた場合に前記制御部によって前記通知を行うことは、前記通知を車両(例えば、車両102)の少なくとも一つのECUに対して行って前記複合材製ボンベの検査を示す照明を点灯させて、かつ/あるいは、前記通知を非過渡的なメモリ(例えば、メモリ1402,1412,1422)に対して行って前記複合材製ボンベについて記憶された状態を更新することを含み得る。前記損傷値が衝撃損傷閾値を超えた場合の制御部302による前記通知は、各自の送受信部(例えば、送受信部1404,1414,1418)を用いて行われ得る。
【0094】
前記通知は、再充填の前に前記複合材製ボンベを点検するようにユーザ、作業者または技術者に警告を行うものである。この際に、物体の衝撃で生じた複合材製ボンベの損傷が検知され得る。そして、適宜、該複合材製ボンベは取り外され得て且つ/或いは修理され得る。しかし、物体との衝撃損傷や、適切でない動作状態(例えば、ボンベと収容部との間にボルトが引っかかっている等)により蓄積した未検出損傷があるにもかかわらず、前記複合材製ボンベの再充填が実施されるという状況もあり得る。
【0095】
充填制御部(例えば、充填制御部1002)により、バルブ(例えば、バルブ902)を制御して前記複合材製ボンベに流体(例えば、ガス燃料、液体燃料等)を充填する(ステップ1508)。前記複合材製ボンベに対する前記流体のこの充填(あるいは、再充填)のあいだ、該複合材製ボンベの完全性の監視が前記センサを用いて行われ得る。
【0096】
前記充填制御部は、前記センサから前記変形データを受信し、前記複合材製ボンベに前記流体が充填される際に、該変形データに基づいて前記複合材製ボンベの損傷を検出する(ステップ1510)。前記充填制御部は、前記複数のセンサを用いたアコースティックエミッションのモーダル検査により、前記複合材製ボンベの損傷を検出し得る。
【0097】
前記充填制御部は、前記アコースティックエミッションのモーダル検査により、少なくとも1つの指標が各自の所定の閾値を超えたか否かを判定し、超えた場合には、前記複合材製ボンベの完全性に損害があると判定し得る。
【0098】
前記少なくとも1つの指標は:検出された繊維トウ破壊事象の定量化および繊維トウ破壊閾値との比較に相当する繊維トウ破壊指標;局所材料体積内の不安定性が不安定性閾値を超えることに相当する不安定性指標;指定の局所材料体積内に蓄積した損傷;前記局所材料体積に蓄積した損傷メカニズムが損傷メカニズム閾値を超えることに相当する損傷メカニズム指標;ならびにフレッティングエミッションが前記複合材製ボンベの積層組成に基づくフレッティングエミッション閾値を超えることに相当するフレッティングエミッション指標;のうちの1つ以上からなり得る。
【0099】
前記繊維トウ破壊指標は、前記アコースティックエミッションのモーダル検査時に前記センサにより検出されてセンサデータに反映された波の周波数及びエネルギー量に基づいて特定される。また、前記繊維トウ破壊指標は、前記複数のセンサで求められて正規化された直接エネルギーに基づいて特定されてもよい。
【0100】
前記不安定指標は、前記アコースティックエミッションのモーダル検査時に前記センサにより検出されてセンサデータに反映された振動と背景エネルギーの検出値に基づいて特定される局所不安定指標であり得る。
【0101】
前記剥離事象指標は、前記複数のセンサで求められて正規化された直接エネルギーに基づいて特定され得る。また、前記剥離事象指標は、前記アコースティックエミッションのモーダル検査時に前記センサにより検出されてセンサデータに反映された波の周波数スペクトルの鋭さに基づいて特定されてもよい。
【0102】
前記損傷メカニズム指標は、局所材料体積由来の損傷に関係したものであり得る。損傷メカニズムの位置(クラスタリング)は、前記センサにより検出された、損傷の到達時間の閾値非依存測定と、前記センサにより検出された、損傷の曲線空間上の最短伝播距離とに基づいて特定され得る。
【0103】
上記の指標は、各自単独で検討されてもよいし、複数の組合せで検討されてもよい。組み合わせて検討された場合には、各指標に重みが割り当てられ得る。例えば、前記繊維トウ破壊指標と前記不安定性指標を共に検討する場合には、前記繊維トウ破壊指標の重みが前記不安定性指標の重みよりも低く設定され得て、あるいは、その逆に設定され得る。どの指標を検討するのかは、複合材製ボンベの組成、複合材製ボンベに使用される素材、複合材製ボンベの寸法などといった、複合材製ボンベの任意の特徴に基づいて変わり得る。また、同指標に対する各閾値も、複合材製ボンベの組成、複合材製ボンベに使用される素材、複合材製ボンベの寸法などといった、複合材製ボンベの任意の特徴に基づいて変わり得る。
【0104】
一部の実施形態において、前記充填制御部は、充填時に、上記の指標が一つでも各自の閾値を超えた場合に、前記複合材製ボンベの損傷を検出し得る。例えば、前記繊維トウ破壊指標と前記不安定指標を検討対象とした場合に、充填時に、前記繊維トウ破壊指標がその閾値を超えるか又は前記不安定指標がその閾値を超えることで、前記充填制御部は複合材製ボンベの損傷を検出する。
【0105】
一部の実施形態において、前記充填制御部は、各々の閾値を超えた指標の数に基づく統合損傷指標を求めて、充填時に、各々の閾値を超えた指標の数(あるいは、割合)が閾値を超えた場合に、複合材製ボンベの損傷を検出する。例えば、前記繊維トウ破壊指標、前記フレッティングエミッション指標および前記不安定指標を検討対象としたとする。各々の閾値を超えた指標の数の閾値は、3つのうちの2つとされ得る。つまり、充填時に、前記繊維トウ破壊指標、前記フレッティングエミッション指標および前記不安定指標のうち2つ以上が各々の閾値を超えた場合に、前記充填制御部が複合材製ボンベの損傷を検出する。
【0106】
一部の実施形態において、前記充填制御部は、各々の閾値を超えた指標の数の重み付け値に基づく統合損傷指標を求めて、充填時に、指標の重み付け後の割合が閾値を超えた場合に、前記充填制御部が複合材製ボンベの損傷を検出する。例えば、前記繊維トウ破壊指標、前記フレッティングエミッション指標および前記不安定指標を検討対象としたとする。前記繊維トウ破壊の重み付けは5とし、前記フレッティングエミッション指標の重み付けは1とし(前記繊維トウ破壊が前記フレッティングエミッション指標の5倍重要であることを表す)、前記不安定指標の重み付けは2としたとする。つまり、前記繊維トウ破壊指標、前記フレッティングエミッション指標および前記不安定指標がいずれも各々の閾値を超えた場合、指標の合計ポイントは8種類考えられ得る。各々の閾値を超えた指標の割合の閾値を65%としたとする。よって、充填時に、前記繊維トウ破壊指標がその閾値を超えて(5ポイント)、前記フレッティングエミッション指標がその閾値を超えて(1ポイント)、前記不安定指標がその閾値を超えない場合、6ポイント÷8ポイントが65%を超えるため、前記充填制御部が複合材製ボンベの損傷を検出する。充填時に、前記繊維トウ破壊指標だけが閾値を超えた場合には、5ポイント÷8ポイントが65%を超えないため、前記充填制御部が複合材製ボンベの損傷を検出しない。
【0107】
本明細書で説明する各閾値は、試験に基づいて決定され、複合材製ボンベに応じて校正され得る。各閾値は、非過渡的なメモリ(例えば、メモリ1402,1412,1422)に記憶されて、モニタリング対象の複合材製ボンベに対応付けられた識別子でインデクシングされ得る。これにより、前記充填制御部は、モニタリング対象の複合材製ボンベに基づいて、対応する閾値の参照を行い得る。
【0108】
前記制御部および前記充填制御部は、いずれも、通常の動作で一般的に遭遇する外部ノイズ源(例えば、電磁干渉(EMI)、流動音、機械的な擦れ等)を低減するデジタル信号処理アルゴリズムを実行することにより、誤トリガを回避し得る。該デジタル信号処理アルゴリズムは、前記センサにより検出された変形データに適用され得る。該デジタル信号処理アルゴリズムは:前記センサへの波同士の到達同時性;トリガ前の検出エネルギー;およびトリガ前のエネルギーに対するトリガ後のエネルギーの比;のうちの1つ以上に基づいて誤トリガの判定を行い得る。
【0109】
前記複合材製ボンベに流体が充填される際に前記充填制御部が前記複合材製ボンベの損傷を検出した後、安全動作が自動的に実行され得る(ステップ1512)。該安全動作は、前記充填制御部が前記バルブを閉じて前記複合材製ボンベのそれ以上の充填を阻止することを含み得る。前記安全動作は、損傷の検出についての通知をスピーカまたは表示画面で行うことで、作業者が前記複合材製ボンベの充填を停止できるようすることを含み得る。前記安全動作は、前記充填制御部が前記バルブを調節して前記流体をサージタンクに導くことを含み得る。
【0110】
前記複合材製ボンベの充填中の上記の自動処理は、前記制御部による前記複合材製ボンベの衝撃損傷の検出の有無にかかわらず常時実行されてもよい。他の実施形態において、前記複合材製ボンベの充填中の前記自動処理は、前記制御部が前記複合材製ボンベの衝撃損傷を検出した場合にのみ実行され得る。
【0111】
図15Bは、本明細書に記載のシステムによって実行される前記直接波エネルギーの測定方法1520を示すフロー図である。方法1520は、図15Aの方法1500のステップ1504にて衝撃損傷に関わる前記衝撃値を前記制御部が求める際に用いられる方法であり得る。
【0112】
前記制御部(例えば、制御部302)は、前記センサ(例えば、センサ202)から前記変形データを受信して該変形データをデジタル化する(ステップ1522)。
【0113】
次に、前記制御部は、衝撃位置から前記複数のセンサの各センサへの特定の波成分の、それぞれの直接到達時間を求める(ステップ1524)。つまり、前記複数のセンサの各センサが、前記変形データを検出する(例えば、4つのセンサからの波で表された変形データが図5の4つのチャネルに現れる)。各波に共通する特定の波成分(例えば、図6の4つのセンサからの各波に付された縦線)が特定される。各センサごとに、共通する特定の波の到達時間が求められる。該到達時間は、特定の波成分の前記衝撃位置から各センサまでの移動時間を表す。
【0114】
前記制御部は、前記複合材製ボンベ上の前記衝撃位置の推定位置を求める(ステップ1526)。該推定位置は、求められた前記到達時間、到達時間の推定に用いられた波成分の速度、モニタリング対象であるボンベの幾何形状、および同ボンベ上の各センサの既知の位置に基づいて求められ得る。各種ボンベの幾何形状、分散関係(周波数の関数としての波モード速度)および各センサの既知の位置は、メモリ(例えば、メモリ1402,1412,1422)に記憶されて前記制御部によってアクセスされ得る。前記制御部は、前記複合材製ボンベ上の前記衝撃位置の推定位置を(例えば、図7に示すように)モデル化し得る。
【0115】
前記制御部は、各センサへの特定の波成分のそれぞれの直接到達時間および各センサでの検出電圧に基づいて、前記直接波エネルギーを求める(ステップ1528)。一部の実施形態において、前記制御部は、次の式を用いて前記直接波形エネルギー(UWAVE)を求め得る。
【0116】
【数2】

(式中、tDIRECTは、各センサまでの所定の伝播距離についての対象の最低速度波成分の直接到達時間を表し、Vは、各センサ(例えば、圧電センサ等)での検出電圧を表す。)
【0117】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、比較的多数のセンサ202を用いることで、高い信頼性のカバー範囲(coverage)及びモニタリングを実現し得る。従来のセンサは比較的コストが高いことから、モニタリングを行うロバストなシステムを実現するうえでの課題となり得る。したがって、経済的なコストで(例えば、感度や帯域幅に関して)少なくとも同等の性能を奏する、新規の構造のセンサが必要となる。
【0118】
図16Aは、本明細書に記載のシステムおよび方法、さらには、その他のシステムおよび方法に利用されるように構成されたセンサ1600の平面図である。本明細書で説明するように、センサ1600は、センサ202として使用され得るセンサである。つまり、本明細書でセンサ202が所定の特性や能力を有すると説明している場合、センサ1600も同じ特性や能力を有していることになり得る。本明細書で説明するように、センサ1600は、大量生産が可能であるとともに比較的低コストである。また、センサ1600は、複数の様々な用途のセンシングを実行することが可能である。さらに、センサ1600は、設計の調整及び変更を経済的に行うことも可能である。
【0119】
センサ1600は、複合構造体、例えば、複合材製ボンベ100または本明細書に挙げたその他の任意の複合構造体(例えば、風力タービン、機体、翼の前縁といった、衝撃損傷が悪影響となる任意の複合構造体等)の変形データを検出するように構成された多素子圧電センサである。センサ1600は、該変形データを検出するように構成された複数の感知素子1602を有する。具体的に述べると、センサ1600は、第1の感知素子1602A、第2の感知素子1602B、第3の感知素子1602C、第4の感知素子1602Dおよび第5の感知素子1602Eを有する。
【0120】
センサ1600は、各感知素子1602とコネクタ1610とを接続するように構成された複数のリード1616を有する。具体的に述べると、第1の感知素子1602Aは第1のリード1616Aによってコネクタ1610に接続されており、第2の感知素子1602Bは第2のリード1616Bによってコネクタ1610に接続されており、第3の感知素子1602Cは第3のリード1616Cによってコネクタ1610に接続されており、第4の感知素子1602Dは第4のリード1616Dによってコネクタ1610に接続されており、第5の感知素子1602Eは第5のリード1616Dによってコネクタ1610に接続されている。センサ1600は、コネクタ1610を介して、本システムにおける別の構成要素(例えば、制御部302、制御部352、充填制御部1002等)に接続される。大概の実施形態では、感知素子1602が、該感知素子1602により検出された信号を増幅するように構成されたプリアンプ回路に接続される。該プリアンプ回路は、前記制御部(例えば、制御部302、制御部352、充填制御部1002等)に接続されたものである。
【0121】
図16に示すように、感知素子1602は、同規模の感知領域(あるいは、開口またはサイズ)1612を有する第1の感知素子1602A、第2の感知素子1602B、第3の感知素子1602Cおよび第4の感知素子1602Dが、より大きな感知領域1614を有する第5の感知素子1602Eを取り囲むようにして配置されたものである。第1の感知素子1602A、第2の感知素子1602B、第3の感知素子1602Cおよび第4の感知素子1602Dは、同一の直径1604を有し得る。その結果、同規模の感知領域1612となっている。第5の感知素子1602Eは、より大きな直径1606を有し得る。その結果、より大きな感知領域1614となっている。
【0122】
大径の素子(例えば、感知素子1602E)は、表面積が大きいため、(所定の低周波数範囲において)優れた感度を有するが、いわゆるアパーチャ効果によって発生する位相相殺により、高周波数域では性能が良くない。小径の素子(例えば、感知素子1602A~1602D)は、大径の素子ほど(直径以外の構造内容が全て同じであるとの前提で)感度が高くなり得ないが、アパーチャ効果による位相相殺を受けないことから高周波数応答が優れたものになる。
【0123】
図面では感知素子1602が円状に描かれているが、他の実施形態の感知素子1602は例えば六角形状、五角形状、十角形状等の別の形状とされる。他の実施形態では、各素子が楕円状の幾何形状を有する設計とされて、準楕円波モードを示す異方性構造体上に並べられ得る。
【0124】
また、図16Aでは特定の数および配置構成で感知素子1602が描かれているが、どのような数の感知素子がどのような形態又は配置構成で作製・使用されたものであってもよい。各感知素子の数、各感知領域の大きさ、および各感知素子の配置構成は、いずれも、センサ1600の用途および/またはモニタリング対象の構造体上のセンサ1600の位置および/またはモニタリング対象の構造体の組成に基づいて調整され得る。
【0125】
例えば、複合構造体(例えば、複合材製ボンベ100)のモニタリングを行う本明細書に記載のシステムおよび方法は、定量的衝撃検出を利用した、衝撃損傷または累積損傷による複合構造体の損傷の検出、さらには、MAE検査を利用した、圧縮天然ガス、水素などの流体の該複合構造体への充填時の該複合構造体の損傷の検出を行うものである。本例では、比較的小形の1つ以上の感知素子(例えば、感知素子1602A~1602D)がセンサ1600に含まれており、複合構造体に流体が充填される際の該複合構造体の損傷の検出に利用され得る。ほかにも、比較的大形の1つ以上の感知素子(例えば、感知素子1602E)がセンサ1600に含まれており、衝撃事象の検出に利用され得る。
【0126】
定量的衝撃検出では、比較的高い周波数(すなわち、短い波長)で励起されない事象が対象となるため、高い感度を有する大径の素子のほうが適切である。対照的に、積層体構成の複合構造体のMAE検査を実施する際には、高い周波数を感知素子で検出して損傷メカニズムの区別(例えば、繊維部分の破壊-対-マトリクス部分の亀裂-対-剥離)を行う必要があるため、小径の感知素子のほうが適切である。
【0127】
各用途に応じたサイズの両素子を同じセンサ1600に統合することにより、該センサ1600は、特定の場面に応じて本システムの各センシング要件に具体的に対処することが可能となる。これにより、2種類の異なるセンシング技術やセンシング用途が適用される場面であっても、同じセンサ1600を使用することが可能となる。センサ素子のサイズとして、第1のサイズは第1の技術または用途に最適化されたものであり得て、第2のサイズは第2の技術または用途に最適化されたものであり得る。このため、センサ1600は、(コネクタ1610で)様々なシステムに接続された場合に、1種のセンサ素子サイズしかない他のセンサよりも優れた融通性を発揮し得る。複数のセンサ素子サイズからなるセンサ1600は、2種類の異なるサイズの別々のセンサを2つ用いるよりも、計算効率、コスト効率の両方の面で高い効率を有する。
【0128】
図16Bは、図16Aの線A-Aに沿った側面断面図である。図16Bには第1の感知素子1602Aおよび第4の感知素子1602Dの側面断面が描かれているが、これら第1の感知素子1602Aおよび第4の感知素子1602Dに関して述べる特徴は、どの感知素子1602にも存在し得る。
【0129】
センサ1600は、第1のポリイミド膜層1624(例えば、DuPont(登録商標)社製のKapton(登録商標)等)を有し得る。第1のポリイミド膜層1624は、前記センサが積層体と一体化させられた場合に接地電極とその構造体との間の誘電体層となるように構成されている。
【0130】
センサ1600は、さらに、各感知素子1602の正極電極1626を有し得る。正極電極1626は、銅などの導電性材料からなり得る。図16Bに示すように、第1の感知素子1602Aに対応する第1の正極電極1626A、および第4の感知素子1602Dに対応する第4の正極電極1626Dが存在する。各正極電極1626の上面が、ポリイミド膜層1624の下面に接触する。図16Bに示すように、各感知素子1602の正極電極1626同士は、前記センサが扁平である場合、互いに同一面上に存在し得る。前記センサが扁平でなくて曲面に巻き付けられるものである場合でも、各感知素子1602の正極電極1626は、前記センサが配された同曲面と平行な曲面で互いに同一面上に存在することになる。
【0131】
正極電極1626は、第1のテープ層1628の上方に位置している。第1のテープ層1628は、正極電極1626を、該第1テープ層1628の下方に位置した活性感知体1630に接続する。第1テープ層1628の上面は正極電極1626の下面に接触し、第1テープ層1628の下面は活性感知体1630の上面に接触する。
【0132】
第1のテープ層1628は、z軸のみにおいて導電性を示す1層以上のz軸異方性テープからなり得る。つまり、第1のテープ層1628は、x軸やy軸に沿って電気を伝導しないものであり得る。さらに、第1のテープ層1628に接触した活性感知体1603の上面には導電層がなく、等電位面にならない。これにより、第1の正極電極1626Aおよび第4の正極電極1626Dを、双方ともに活性感知体1630に電気的に接続しつつ双方間で互いに電気的に絶縁するということが可能となる。図面では第1の正極電極1626Aおよび第4の正極電極1626Dのみが描かれているが、各正極電極はいずれも活性感知体1630に電気的に接続されていると同時にそれらの間で互いに電気的に絶縁されている。
【0133】
活性感知体1630は、PVDF-TrFE(ポリビニルジフルオライドトリフルオロエチレン)などの、広帯域応答に適した本質的に低い品質係数を有する圧電材料であり得る。活性感知体1630は、機械的応力下に置かれた際に電流を生成するように構成されている。つまり、活性感知体1630に(例えば、構造体への衝撃や構造体の材料の破損による過渡的な応力波の伝播等によって)機械的応力が生じると正極電極1626-接地電極1634間に電圧を発生し、該電圧が本システムにより(コネクタ1610と接続している制御部で)本明細書で説明するように検出されることによって構造体の変形の特定に使用される。
【0134】
活性感知体1630は、第2のテープ層1632の上方に位置している。つまり、活性感知体1630の下面が、第2のテープ層1632の上面に接触している。一部の実施形態において、第2のテープ層1632は、第1のテープ層1628と同じく、z軸のみにおいて導電性を示す1層以上のz軸異方性テープからなる。他の実施形態では、第2のテープ層1632が全方向において導電性を示す。活性感知体1630の上面とは対照的に、活性感知体1630のうちの第2のテープ層1632に接触した下面には導電層が設けられていてもよく、その場合、該下面は等電位面となる。
【0135】
図16Bで見て取れるように、第1のテープ層1628、活性感知体1630および第2のテープ層1632の幅(例えば、y軸に沿った水平方向の幅)は、各正極電極(例えば、第1の正極電極1626A、第4の正極電極1626D等)の幅よりも大きく設定され得る。つまり、第1のテープ層1628、活性感知体1630および第2のテープ層1632のサイズおよび形状は、正極電極1602のサイズおよび形状と合致していなくてもよい。これは、第1のテープ層1628がz軸のみにおいて導電性を示すという性質により可能となる。第1のテープ層1628、活性感知体1630および第2のテープ層1632が正極電極1602のサイズおよび形状に合致するように作製される必要がなく、正極電極1602の一部に亘って延在していても全体に亘って延在していてもよいので、第1のテープ層1628、活性感知体1630および第2のテープ層1632がいずれも正極電極に合致させられているセンサに比べて、センサ1600の作製の複雑性が軽減され得る。図16Aの外郭1608から、第1のテープ層1628、活性感知体1630および第2のテープ層1632が複数の素子に亘って広域に延在している様子が見て取れ得る。図16Aでは、さらに、正極電極1626の形状が円状であるという点も分かる。
【0136】
図16Bを再び参照すると、第2のテープ層1632は、接地電極1634の上方に位置している。接地電極1634は、銅などの導電性材料からなり得る。接地電極1634の上面は、第2テープ層1632の下面に接触し得る。
【0137】
接地電極1634は、第2のポリイミド膜層1636(例えば、DuPont(登録商標)社製のKapton(登録商標)等)の上方に位置している。第2のポリイミド膜層1636は、(積層体と一体化させられた場合に)接地電極と構造体との間の誘電体層になるという目的と、複雑な応力状態(例えば、二軸引張等)に曝される構造体との接合に十分適した易変形性の(compliant)基材を成すという目的の二重の目的を果たす。
【0138】
一部の実施形態において、センサ1600の上部には、1つ以上の別の装置による電磁干渉からセンサ1600を保護する電磁干渉(EMI)シールドとなるように、銅層1638が設けられ得る。
【0139】
図16Bには、リード1616Aの断面も描かれている。リード1616は、銅などの導電性材料からなり得る。図16Bには第1のポリイミド層1624および銅層1638がリード1616を覆っている構成が描かれているが、一部の実施形態では、第1のポリイミド層1624および銅層1638がリード1616を覆うように横方向に延出しないものとされる。一部の実施形態では、リード1616下方の領域1640が、該リードを下側の物体から絶縁させるための誘電体物質のみからなる。一部の実施形態では、活性感知体1630を含む一部の構成要素が、リード1616下方に位置するように横方向に延出している。ただし、同実施形態では、活性感知体1630とリード1616との間に、該リードを活性感知体1630から絶縁するように非導電層が設けられる。
【0140】
接地電極層1634、正極電極1626およびリード1616は、いずれも可撓性を示すように、可撓性基板を用いた高い耐久性のフレキシブルプリント回路基板上に作製され得る。これに加えて、活性感知体1630も可撓性を示すものであってもよい。第1のテープ層1628、第2のテープ層1632、第1のポリイミド膜層1624および第2のポリイミド膜層1636も、可撓性を示すものであってもよい。センサ1600の各構成要素が可撓性を示すことで、センサ1600も可撓性を呈して設置面にも追従可能となることができるようになり、剛質のセンサに比べて曲面および/または粗面に対する密着性や音響結合性が向上する。
【0141】
接地電極層1634、正極電極1626およびリード1616は、前記可撓性基板上に対し、例えば熱転写-レジスト現像法、CNC電極成膜法等を含む任意の方法で作製され得る。これらの手法は、高効率な製造コスト・大量生産を促し得る。
【0142】
図16Cは、ボンベ100の外面1656に設置されたセンサ1600の側面断面図である。センサ1600は、外面1654および内面1652を有する。センサ1600の内面1652は、ボンベ100の外面1656に接触している。センサ1600は、接着剤を用いるなどの任意の方法で、ボンベ100の前記外面に取り付けられ得る。
【0143】
図16Dは、ボンベ100の曲面に追従するセンサ1600の側面断面図である。センサ1600は、接着剤またはその他の任意の方法でボンベ100に取り付けられ得る。一部の実施形態において、センサ1600は、ボンベ100と一体的に製造されてもよい。例えば、センサ1600は、ボンベ100上に対して直接作製されてもよいし、ボンベ100が複数の層からなる場合にはボンベ100のそれらの層間に配設されてもよい。
【0144】
一部の実施形態では、ボンベ100の製造時に、外面1656(あるいは、外面1656のうちの、センサ1600が取り付けられる一部)が、該ボンベ100にセンサ1600を密着させ易くするように平滑化処理され得る。例えば、ボンベ100の製造時に、該ボンベの外径に合致した曲率を有する当て板が用いられ得る。該当て板には、離型剤が塗布され得る。未硬化のボンベ100のうちのセンサ取付け位置に、離型剤付きの(mold-released)当て板が配置される。ボンベ100が硬化し、硬化後に前記当て板が取り除かれることで、センサ密着用の平滑面が生じる。これにより、センサ1600のボンドライン性能(すなわち、ボンドラインのサイクル寿命)および音響結合性(優れた応答)が向上する。
【0145】
図16C及び図16Dではセンサ1600がボンベ100に取り付けられている様子が描かれているが、センサ1600は、風力タービン、機体、翼の前縁といった、衝撃損傷が悪影響となるか又は大きな応力に曝される複合構造体のような、あらゆるモニタリング対象の構造体に結合させられてもよい。
【0146】
図17に、センサ1600及びセンサ202と同様であるが3種類の異なるセンサ素子サイズからなるという点で相違するセンサ1700を示す。センサ1700には、センサ1600と同様の符号が振り当てられており、特に断りのない限り、センサ1600と同様の構成を有する。特に、図16Bに示す断面構造は、センサ1700の線A-Aに沿った断面構造と同じである。
【0147】
センサ1700は、複数の感知素子1702を有する。つまり、センサ1700は、第1の感知素子1702A、第2の感知素子1702B、第3の感知素子1702C、第4の感知素子1702Dおよび第5の感知素子1702Eを有する。第1の感知素子1702A、第2の感知素子1702Bおよび第4の感知素子1702Dは、いずれも同一の直径1704を有しており、したがって、同規模の感知領域(あるいは、開口またはサイズ)となっている。
【0148】
センサ1600と同様に、第5の感知素子1702Eは、第1の感知素子1702A、第2の感知素子1702Bおよび第4の感知素子1702Dよりも大きい。第5の感知素子1702Eの直径1706は、前記直径1704よりも大径である。そのため、第5の感知素子1702Eの感知領域は、第1の感知素子1702A、第2の感知素子1702Bおよび第4の感知素子1702Dよりも大きい。
【0149】
センサ1600とは異なり、第3の感知素子1702Cは、第1の感知素子1702A、第2の感知素子1702Bおよび第4の感知素子1702Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1702Eよりも小さい。第3の感知素子1702Dの直径1740は、前記直径1704よりも大径であり、かつ、前記直径1706よりも小径である。そのため、第3の感知素子1702Dの感知領域は、第1の感知素子1702A、第2の感知素子1702Bおよび第4の感知素子1702Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1702Eよりも小さい。
【0150】
センサ1600が2種類のセンサ素子サイズからなるのに対し、センサ1700は3種類のセンサ素子サイズからなる。これにより、3種類の異なるセンシング技術やセンシング用途が適用される場面であっても、センサ1700を使用することが可能となる。センサ素子のサイズとして、第1のサイズは第1の技術または用途に最適化されたものであり得て、第2のサイズは第2の技術または用途に最適化されたものであり得て、第3のサイズは第3の技術または用途に最適化されたものであり得る。このため、センサ1700は、(コネクタ1710で)様々なシステムに接続された場合に、2種以下のセンサ素子サイズしかない他のセンサよりも優れた融通性を発揮し得る。複数のセンサ素子サイズからなるセンサ1700は、異なるサイズの別々のセンサを複数用いるよりも、計算効率、コスト効率の両方の面で高い効率を有する。
【0151】
図18に、センサ1600、センサ1700及びセンサ202と同様であるが4種類の異なるセンサ素子サイズからなるという点で相違するセンサ1800を示す。センサ1800には、センサ1600やセンサ1700と同様の符号が振り当てられており、特に断りのない限り、センサ1600およびセンサ1700と同様の構成を有する。特に、図16Bに示す断面構造は、センサ1800にも当てはまる。図18にも図16Aの線A-Aが存在していたとすると、その側面断面構造は図16Bに示したものと同様になるが、以下で詳述するように、第1の正極電極の水平方向の幅がセンサ1600よりもセンサ1800のほうが広くなる。
【0152】
センサ1800は、複数の感知素子1802を有する。つまり、センサ1800は、第1の感知素子1802A、第2の感知素子1802B、第3の感知素子1802C、第4の感知素子1802Dおよび第5の感知素子1802Eを有する。第2の感知素子1802Bおよび第4の感知素子1802Dは、いずれも同一の直径1804を有しており、したがって、同規模の感知領域(あるいは、開口またはサイズ)となっている。
【0153】
センサ1600やセンサ1700と同様に、第5の感知素子1802Eは、第2の感知素子1802Bおよび第4の感知素子1802Dよりも大きい。第5の感知素子1802Eの直径1806は、直径1804よりも大径である。そのため、第5の感知素子1802Eの感知領域は、第2の感知素子1802Bおよび第4の感知素子1802Dよりも大きい。
【0154】
センサ1600とは異なり(ただしセンサ1700と同様に)、第3の感知素子1802Cは、第2の感知素子1802Bおよび第4の感知素子1802Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1802Eよりも小さい。第3の感知素子1802Dの直径1840は、前記直径1804よりも大径であり、かつ、前記直径1806よりも小径である。そのため、第3の感知素子1802Dの感知領域は、第2の感知素子1802Bおよび第4の感知素子1802Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1802Eよりも小さい。
【0155】
センサ1600やセンサ1700とは異なり、第1の感知素子1802Aは、第2の感知素子1802B、第3の感知素子1802Cおよび第4の感知素子1802Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1802Eよりも小さい。第1の感知素子1802Aの直径1842は、直径1804および直径1840よりも大径であり、かつ、直径1806よりも小径である。そのため、第1の感知素子1802Aの感知領域は、第2の感知素子1802B、第3の感知素子1802Cおよび第4の感知素子1802Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1802Eよりも小さい。
【0156】
センサ1700が3種類のセンサ素子サイズからなるのに対し、センサ1800は4種類のセンサ素子サイズからなる。これにより、4種類の異なるセンシング技術やセンシング用途が適用される場面であっても、センサ1800を使用することが可能となる。センサ素子のサイズとして、第1のサイズは第1の技術または用途に最適化されたものであり得て、第2のサイズは第2の技術または用途に最適化されたものであり得て、第3のサイズは第3の技術または用途に最適化されたものであり得て、第4のサイズは第4の技術または用途に最適化されたものであり得る。このため、センサ1800は、(コネクタ1810で)様々なシステムに接続された場合に、3種以下のセンサ素子サイズしかない他のセンサよりも優れた融通性を発揮し得る。複数のセンサ素子サイズからなるセンサ1800は、異なるサイズの別々のセンサを複数用いるよりも、計算効率、コスト効率の両方の面で高い効率を有する。
【0157】
図19に、センサ1600、センサ1700、センサ1800及びセンサ202と同様であるが、5種類の異なるセンサ素子サイズからなるという点で相違するセンサ1900を示す。センサ1900には、センサ1600やセンサ1700やセンサ1800と同様の符号が振り当てられており、特に断りのない限り、センサ1600、センサ1700およびセンサ1800と同様の構成を有する。特に、図16Bに示す断面構造は、センサ1900にも当てはまる。
【0158】
センサ1900は、複数の感知素子1902を有する。つまり、センサ1900は、第1の感知素子1902A、第2の感知素子1902B、第3の感知素子1902C、第4の感知素子1902Dおよび第5の感知素子1902Eを有する。第2の感知素子1902Bは直径1904を有し、それに応じた感知領域(あるいは、開口またはサイズ)を持っている。
【0159】
センサ1600やセンサ1700やセンサ1800とは異なり、第4の感知素子1902Cは、第2の感知素子1902Bよりも大きい。第4の感知素子1902Dの直径1944は、前記直径1904よりも大径である。そのため、第4の感知素子1902Dの感知領域は、第2の感知素子1902Bよりも大きい。
【0160】
センサ1600とは異なり(ただしセンサ1700やセンサ1800と同様に)、第3の感知素子1902Cは、第2の感知素子1902Bおよび第4の感知素子1902Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1902Eよりも小さい。第3の感知素子1902Dの直径1940は、直径1904および直径1944より大径であり、かつ、直径1906より小径である。そのため、第3の感知素子1902Dの感知領域は、第2の感知素子1902Bおよび第4の感知素子1902Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1902Eよりも小さい。
【0161】
センサ1600やセンサ1700とは異なり(ただしセンサ1800と同様に)、第1の感知素子1902Aは、第2の感知素子1902B、第3の感知素子1902Cおよび第4の感知素子1902Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1902Eよりも小さい。第1の感知素子1902Aの直径1942は、直径1904、直径1940および直径1944より大径であり、かつ、直径1906よりも小径である。そのため、第1の感知素子1902Aの感知領域は、第2の感知素子1902B、第3の感知素子1902Cおよび第4の感知素子1902Dよりも大きく、かつ、第5の感知素子1902Eよりも小さい。
【0162】
センサ1600、センサ1700およびセンサ1800と同様に、第5の感知素子1902Eは、他のどのセンサ素子よりも大きい。第5の感知素子1902Eの直径1906は、前記直径1904、直径1940、直径1942および直径1944よりも大径である。そのため、第5の感知素子1902Eの感知領域は、それ以外の感知素子よりも大きい。
【0163】
センサ1800が4種類のセンサ素子サイズからなるのに対し、センサ1900は5種類のセンサ素子サイズからなる。これにより、5種類の異なるセンシング技術やセンシング用途が適用される場面であっても、センサ1900を使用することが可能となる。センサ素子のサイズとして、第1のサイズは第1の技術または用途に最適化されたものであり得て、第2のサイズは第2の技術または用途に最適化されたものであり得て、第3のサイズは第3の技術または用途に最適化されたものであり得て、第4のサイズは第4の技術または用途に最適化されたものであり得て、第5のサイズは第5の技術または用途に最適化されたものであり得る。このため、センサ1900は、(コネクタ1910で)様々なシステムに接続された場合に、4種以下のセンサ素子サイズしかない他のセンサよりも優れた融通性を発揮し得る。複数のセンサ素子サイズからなるセンサ1900は、異なるサイズの別々のセンサを複数用いるよりも、計算効率、コスト効率の両方の面で高い効率を有する。
【0164】
図16A図17図18及び図19では様々なサイズの様々な数のセンサ素子からなるセンサが描かれているが、本明細書で説明するセンサには、どのような数のセンサ素子が含まれていてもよいし、どのような数の種々のサイズが採用されていてもよい。2種類、3種類、4種類または5種類のセンサ素子および/またはセンサ素子サイズの使用はあくまでも例示であり、本発明を限定するものでない。
【0165】
本明細書で説明するように、前記センサ(例えば、センサ1600、センサ1700、センサ1800、センサ1900等)は、能動的に波を発生させて別のセンサに検出させるものではないという点で、受動型センサと見なされ得る。むしろ、前記センサは、いつ、複合構造体のどこで、どの程度重大な衝撃事象が発生したのかを判定するほか、該複合積層体が外部源から応力を受けた際の該複合構造体のモニタリングを受動的に実施する。
【0166】
本明細書で説明する、多目的多素子グレーテッドアレイ(OMEGA)センサとも称され得る各種態様の前記センサの性能を実証するために、センサ1600と同様のOMEGAセンサの実施例から収集したデータについて紹介すると共に、各実施例の構成についても触れる。
【0167】
前記OMEGAセンサの感度を従来の広帯域圧電センサに対して相対的に定量化するために、図16A及び図16Bに示すようなOMEGAセンサと、従来の単一素子からなるB1025センサの両方を、横寸法1200mm×1800mm、厚さ3.1mmの7075アルミニウム板に接合した。図20の左側は、使用した実験用セットアップの関連寸法付き模式図であり、図20の右側は、実際の実験用セットアップを示した図である。
【0168】
B1025センサ(transducer)についての、発生源2(0.5mmの6H鉛筆芯破壊による破損源)からの時間波形および時間-周波数分布を、図21Aに示す。OMEGAセンサの素子1(例えば、第1の素子1602A)についての、発生源2からの時間波形および時間周波数分布を、図21Bに示す。図21A及び図21Bからは、重要な情報が幾つか得られ得る。第一に、OMEGAセンサは、面内方向変形(Sモード)についての感度がB1025センサよりも優位的となる一方、面外方向変形(Aモード)についての感度はB1025センサほどでなかった。第二に、OMEGAセンサの素子1(例えば、第1の素子1602A)のピーク応答は、B1025センサの10dB以下となった。
【0169】
従来の単一素子からなる圧電セラミックスセンサを上回る感度応答を得たい場合、信号同士をコヒーレント状態に時間シフト・合成させる手法が、前記OMEGAセンサに活用され得る。一例として、図22に示すように、図21A及び図21Bの各素子(直径5mm)のデータを素子1の時間基準でコヒーレント状態に時間シフトさせると共に、時間コヒーレント状態の信号同士を合計した。
【0170】
B1025センサについての、発生源2(0.5mmの6H鉛筆芯による破壊破損源)からの時間波形および時間周波数分布を、図23Aに示す。OMEGAセンサでコヒーレント状態に時間シフトさせた信号同士の合計についての、発生源2からの時間波形および時間周波数分布を、図23Bに示す。
【0171】
センサの感知素子の直径は、いわゆるアパーチャ効果により、該センサの感度に大きな影響を及ぼすことが知られている。実際に、伝播波の波長が活性感知体の直径(あるいは、その整数倍)に等しい場合、圧電素子の半分が引張状態になると同時に残りの半分が圧縮状態になり、該波長(周波数)に対する同センサの応答が正味ゼロになる。大概の工学的構造物では、部品の厚みが伝播波長よりも遥かに薄いため、伝播される波の種類は(分散関係で決まる)ガイド波となる。図24は、厚さ3.1mmの7075Al板の周波数-波長(λ)の分散関係を示したものであり、各直径の開口(φ)の斜線領域が、開口歪みの影響を受けない周波数(波長)に該当する。図24から、アパーチャ効果の生じる周波数はモードに依存することが分かる。開口の直径が大きければ大きいほど、対象の全モードで高周波数域の感度が低下することが分かる。
【0172】
取得した信号に対する開口の大きさの影響を説明するために、OMEGAセンサの一代表例を、横寸法1200mm×1800mm、厚さ3.1mmの7075T6Al板に接合させた。同OMEGAセンサは、図16Aに示すような設計とし、素子1~4(例えば、センサ素子1602A~1602D)の直径は5mm、素子5(例えば、センサ素子1602E)の直径は13mmとした。図25は、その実験用セットアップの模式図である。一実施例として、図25では、発生源1(0.5mmの6H鉛筆芯破壊(PLB)による破損)を用いた。図26に、素子1(例えば、センサ素子1602A)(直径5mm)および素子5(例えば、センサ素子1602E)(直径13mm)についての、時間応答(上)および正規化周波数応答(下)を示す。図26から、直径13mmのほうが素子表面積の大きさから振幅応答は遥かに大きい一方で、直径5mmの活性素子のほうが150kHz超では周波数応答が相対的に優れていることが分かる。
【0173】
図26のデータでは、破損源が前記板に対して面外方向の向きであるため、基本屈曲振動モード(F)が優先的に励起される。図26から分かるように、直径13mmの素子では、Fモードの最初のアパーチャ効果が150kHzで発生するのに対し、直径5mmの素子では、Fモードの1回目のアパーチャ効果が550kHzまで発生しないことから、小径の素子のほうが優れた高周波応答を有している。
【0174】
様々な測定場面によって、感度応答、高周波数応答のどちらが望ましいのかが異なり得る。例えば、持続時間がミリ秒台であって約100kHzを超える周波数を励起しないような衝撃事象を受動型センサで監視する場合、高い感度を有する大径の素子を選択することが有利である。逆に、(ナノ秒台ないしマイクロ秒台の)材料破損による最大1MHz又はそれ以上の周波数成分(frequency content)を受動型センサで監視する場合、アパーチャ効果による歪みのない小径の素子が有利な解決策となる。
【0175】
複合材製圧力ボンベの検査では、より優れた定量的評価を行って誤通知を減らすという観点から、各種損傷メカニズムを区別して悪影響を及ぼす損傷メカニズムを定量化できれば有益である。例えば、複合材製圧力容器のアコースティックエミッションのモーダル(MAE)検査では、最大600kHz(またはそれ以上)の周波数成分により、繊維破壊とその他の各種損傷メカニズム(例えば、マトリクス部分の亀裂、繊維部分/マトリックス部分の接着乖離、剥離等)を区別する。アパーチャ効果による歪みを伴わずに周波数成分を検出するには、小径の活性感知体が必然となる。
【0176】
図27は、本明細書で説明するセンサ(例えば、センサ1600、センサ1700、センサ1800、センサ1900等)を製造する方法2700を示すフロー図である。
【0177】
接地電極(例えば、接地電極1634)の作製が行われる(ステップ2702)。該接地電極は、銅などの導電性材料からなり得て、本明細書で説明するように、可撓性を示すように可撓性基板を用いて作製され得る。
【0178】
複数の正極電極(例えば、正極電極1626)および各々のリード(例えば、リード1616)の作製が行われる(ステップ2704)。該正極電極および該リードは、銅などの導電性材料からなり得て、本明細書で説明するように、可撓性を示すように可撓性基板を用いて作製され得る。
【0179】
導電性テープ(例えば、第2テープ層1632)を用いて、圧電材料(例えば、感知素子1630)の下面が前記接地電極の上面に接続される(ステップ2706)。
【0180】
z軸異方性テープ(例えば、第1テープ層1628)を用いて、前記圧電材料の上面が前記正極電極の下面に接続される(ステップ2708)。本明細書で説明するように、前記圧電材料、前記圧電材料を前記接地電極に接続する前記導電性テープ、および前記z軸異方性テープは、前記正極電極の形状やサイズに関係なく形状およびサイズが設定され得る。このことは、各層の形状やサイズが前記正極電極の形状やサイズと合致させられるセンサに比べて製造効率の向上や製造コストの低減に繋がる。
【0181】
一部の実施形態において、前記正極電極はポリイミド膜層(例えば、第1のポリイミド膜層1624)で被覆され、前記接地電極もポリイミド膜層(例えば、第2のポリイミド膜層1636)と接続させられる。一部の実施形態において、前記センサは、該センサのEMIシールドとなるように構成された銅層(例えば、銅層1638)で被覆される。
【0182】
図28は、本明細書で説明するセンサ(例えば、センサ1600、センサ1700、センサ1800、センサ1900等)を製造・使用する方法2800を示すフロー図である。
【0183】
前記センサの複数のモニタリングタスクが決定される(ステップ2802)。該複数のモニタリングタスクは、モニタリング対象の構造体および/またはモニタリング対象の構造体が設置される又は設置された環境に基づいて決定され得る。例えば、車両の燃料を貯蔵するように構成された複合材製ボンベの場合、前記モニタリングタスクは、本明細書で説明するように、該複合材製ボンベの完全性に影響を及ぼす衝撃事象についての監視、さらには、該複合材製ボンベの再充填時の該複合材製ボンベの構造的完全性の喪失についての監視を含み得る。
【0184】
前記複数のモニタリングタスクに基づいて、複数のセンサ素子サイズがそれぞれ決定される(ステップ2804)。一部の実施形態では、コンピューティングデバイスのプロセッサが、前記モニタリングタスクに基づいて、前記センサ素子サイズならびに前記センサ内の各種サイズのセンサ素子の配置構成及びレイアウトを自動的に決定し得る。前記コンピューティングデバイスは、前記プロセッサによって実行される命令を記憶するように構成された非過渡的かつコンピュータ読出し可能なメモリを有する。前記コンピューティングデバイスは、前記複数のモニタリングタスクに加えて、複合構造体の作製に使用された材料に基づいて、該複合構造体上の前記センサ素子の位置および/または前記センサ素子サイズかつ/あるいは前記センサ内の各種サイズのセンサ素子の配置構成及びレイアウトを自動的に決定し得る。センサ素子のサイズは、前記複数のモニタリングタスクの各モニタリングタスクに対して決定される。例えば、前記センサが3種類の異なるモニタリングタスクについての監視を行うように構成されている場合、3つのセンサ素子サイズが決定される。
【0185】
前記コンピューティングデバイスは、モニタリングタスクの数および/またはモニタリングタスクの種類および/またはセンサの位置および/または複合構造体の材料のあらゆる変化に応じて素早く調節を行い、前記センサの各感知素子のレイアウトを再設計し得る。前記正極電極の上下の層はセンサ設計が違っても同じままの可能性があることから、各感知素子のレイアウトとは、前記正極電極のレイアウトのことを指し得る。このように、本明細書で説明するセンサは、センサの全層に対して再設計・調節が行われ得る従来のセンサよりも再設計のコストが低く再設計時間も高速である。
【0186】
前記複数のモニタリングタスクに応じた複数の素子サイズを有するセンサの製造が行われる(ステップ2806)。ステップ2806の製造過程は、本明細書で説明する方法2700と同様のものであり得る。該製造過程は、前記センサの各層(例えば、接地電極層、正極電極層およびリード層)の自動的な作製および/または前記センサの各層の把持・配置によって本明細書で説明する各製造工程を実行するように構成された、1つ以上の機械によって自動化されたものであり得る。各センサ素子の設計は、専用のコンピュータ支援設計ソフトウェアに対応した、コンピュータで理解可能なコンピュータ支援設計データを用いて行われ得る。プリント回路基板を印刷する機械が、そのコンピュータで理解可能なコンピュータ支援設計データを用いて、前記センサの各層を自動的に作製し得る。
【0187】
製造されたセンサが、前記複合構造体に連結される(ステップ2808)。本明細書で説明するように、前記複合構造体の外面は、該複合構造体へと前記センサを密着させ易くするように平滑化処理され得て、音響結合性およびボンドラインの機械的信頼性が向上する。製造されたセンサは、前記複合構造体に対して接着剤の塗布などの任意の方法または手法によって自動的に連結され得る。
【0188】
有利には、本明細書で説明するセンサに使用される圧電素子は、ダイスアンドフィル複合(DFC)法によって作製され得る。本明細書で説明するDFC法によって作製された圧電素子は、DFC圧電素子とも称され得る。
【0189】
図29A図29Fは、DFC圧電素子2900を作製する方法を示す図である。図29Aでは、圧電材料2902が用意される。図29Bでは、圧電材料2902に対して第1の方向2906に(例えば、x軸に沿って)ダイシングが行われ(すなわち、切込みが入れられて)、圧電材料2902の列状体2904が生じる。図29Cでは、圧電材料2902に対して第2の方向2910に(例えば、y軸に沿って)ダイシングが行われ(すなわち、切込みが入れられて)、圧電材料2902の柱状体2908が生じる。
【0190】
図29Dでは、ダイシングされた圧電材料2902の上に、エポキシ2912が設けられる。図29Eでは、ダイシングされた圧電材料2902の柱状体2908間の溝2914にエポキシ2912が流れ込むように、これらエポキシ2912およびダイシングされた圧電材料2902が加熱され得て且つ/或いは真空に曝され得る。エポキシ2912は初期段階で液体であってもよく、加熱によって粘度が低下して流動が促進される。前記真空は脱気を促し、ボイドを減少させる。図29Fでは、圧電材料2902に導電体2916が被覆される。例えば、金のスパッタ膜が圧電材料2902に適用される。
【0191】
DFC圧電素子2900は、長さ及び/又は幅に沿って連続的に中実となっている圧電素子に比べて、前記溝にエポキシが充填されていることから取付面に対して容易に追従することが可能である。完成品のDFC圧電素子/DFCセンサ2900は、エポキシ2912を軟化させて自身が曲がるのに十分な温度に加熱されることにより、モニタリング対象の複合構造体の表面に応じた特定の輪郭形状(profile)になるようにされ得る。
【0192】
図面では第1の方向2906は第2の方向2910と直交するように描かれているが、一部の実施形態では、第1の方向2906と第2の方向2910が直交していなくてもよい。例えば、複合構造体の表面が様々な方向の複数の輪郭からなるものである場合、DFC圧電素子2900の前記ダイシングは、該複合構造体の表面に特化したパターンで行われ得る。DFC圧電素子2900の形状が複合構造体の表面に近ければ近いほど、DFC圧電素子2900を用いたセンサと該複合構造体との接触面積を増やすことができる。該センサと該複合構造体との接触面積が増えることで、音響結合性(すなわち、センサ応答)およびボンドラインの完全性が向上する。図29A図29Fに示すように、得られる圧電素子2900は1-3圧電複合体であり、一方向にのみ導電性を示すことを示唆している。
【0193】
図30Aは、DFC圧電素子(例えば、DFC圧電素子2900)を用いて製造されたセンサ3000の平面図である。センサ3000は、感知素子3002およびリード3016を有する。大概の実施形態において、感知素子3002は、該感知素子3002により検出された信号を増幅するように構成されたプリアンプ回路に接続される。該プリアンプ回路は、前記制御部(例えば、制御部302、制御部352、充填制御部1002等)に接続されたものである。
【0194】
図30Bは、図30Aの線A-Aに沿った側面断面図である。センサ3000は単素子センサであるが、この点を除けば、センサ3000の層構造はセンサ1600と同様であり得る。同様の構成要素/層には、同様の番号を付している。
【0195】
センサ3000は、第1のポリイミド膜層3024(例えば、Dupont(登録商標)社製のKapton(登録商標)等)を有し得る。第1のポリイミド膜層3024は、前記センサが積層体と一体化させられた場合に接地電極とその構造体との間の誘電体層となるように構成されている。
【0196】
センサ3000は、さらに、正極電極3026を有し得る。正極電極3026は、銅などの導電性材料からなり得る。正極電極3026の上面は、ポリイミド膜層3024の下面に接触する。
【0197】
正極電極3026は、第1の導電層3028の上方に位置している。第1の導電層3028は、正極電極3026を、第1の導電層3028の下方に位置した活性感知体3030と導電可能に接続する。第1の導電層3028は、隣合う構成要素同士を接続するように構成された例えば導電性テープ、Z軸導電性テープ、半田等の任意の導電性物質からなり得る。第1の導電層3028の上面が正極電極3026の下面に接触し、第1の導電層3028の下面が活性感知体3030の上面に接触する。
【0198】
活性感知体3030は、圧電素子2900などの圧電素子であり得る。活性感知体3030は、機械的応力下に置かれた際に電流を生成するように構成されている。つまり、活性感知体3030に(例えば、構造体への衝撃や構造体の材料の破損による過渡的な応力波の伝播等によって)機械的応力が生じると正極電極3026-接地電極3034間に電圧が発生し、該電圧が本システムにより(リード3016と接続している制御部で)本明細書で説明するように検出されることによって構造体の変形が特定される。
【0199】
活性感知体3030は、第2の導電層3032の上方に位置している。つまり、活性感知体3030の下面が、第2の導電層3032の上面に接触している。第2の導電層3032は、隣合う構成要素同士を接続するように構成された例えば導電性テープ、z軸導電性テープ、半田等の任意の導電性物質からなり得る。第2の導電層3032は、接地電極3034の上方に位置している。接地電極3034は、銅などの導電性材料からなり得る。接地電極3034の上面は、第2の導電層3032の下面に接触し得る。
【0200】
第1の導電層3028および第2の導電層3032が半田である実施形態では、隣合う対応する層間に固形半田が配置されて前記センサがリフロー炉に入れられるという風に製造が自動化され得る。該リフロー炉内では、前記半田が溶けて前記隣合う対応する層同士が導電可能に接続される。
【0201】
接地電極3034は、第2のポリイミド膜層3036(例えば、DuPont(登録商標)社製のKapton(登録商標)等)の上方に位置している。第2のポリイミド膜層3036は、(積層体と一体化させられた場合に)接地電極と構造体との間の誘電体層になるという目的と、複雑な応力状態(例えば、二軸引張等)に曝される構造体との接合に十分適した易変形性の(compliant)基材を成すという目的の二重の目的を果たす。
【0202】
一部の実施形態において、センサ3000の上部には、1つ以上の別の装置による電磁干渉からセンサ3000を保護する電磁干渉(EMI)シールドとなるように、銅層3038が設けられ得る。
【0203】
リード3016は、銅などの導電性材料からなり得る。一部の実施形態では、第1のポリイミド層3024および銅層3038がリード3016を覆っている。他の実施形態では、第1のポリイミド層3024および銅層3038がリード3016を覆うように横方向に延出しないものとされる。一部の実施形態では、リード3016下方の領域が、該リードを下側の物体から絶縁させるための誘電体物質のみからなる。一部の実施形態では、活性感知体3030を含む一部の構成要素が、リード3016下方に位置するように横方向に延出している。ただし、同実施形態では、活性感知体3030とリード3016との間に、該リードを活性感知体3030から絶縁するように非導電層が設けられる。
【0204】
接地電極層3034、正極電極3026およびリード3016は、いずれも可撓性を示すように、可撓性基板を用いた高い耐久性のフレキシブルプリント回路基板上に作製され得る。これに加えて、活性感知体3030も可撓性を示すものであってもよい。第1の導電層3028、第2の導電層3032、第1のポリイミド膜層3024および第2のポリイミド膜層3036も、可撓性を示すものであってもよい。センサ3000の各構成要素が可撓性を示すことで、センサ3000も可撓性を呈して設置面にも追従可能となることができるようになり、剛質のセンサに比べて曲面および/または粗面に対する密着性や音響結合性が向上する。
【0205】
接地電極層3034、正極電極3026およびリード3016は、前記可撓性基板上に対し、例えば熱転写-レジスト現像法、CNC電極成膜法等を含む任意の方法で作製され得る。これらの手法は、高効率の製造コスト・大量生産を促し得る。
【0206】
図30Cは、ボンベ100の外面3056に設置されたセンサ3000の側面断面図である。センサ3000は、外面3054および内面3052を有する。センサ3000の内面3052は、ボンベ100の外面3056に接触している。センサ3000は、接着剤を用いるなどの任意の方法で、ボンベ100の前記外面に取り付けられ得る。
【0207】
図30Dは、ボンベ100の曲面に追従するセンサ3000の側面断面図である。センサ3000は、接着剤またはその他の任意の方法でボンベ100に取り付けられ得る。一部の実施形態において、センサ3000は、ボンベ100と一体的に製造されてもよい。例えば、センサ3000は、ボンベ100上に対して直接作製されてもよいし、ボンベ100が複数の層からなる場合にはボンベ100の層間に配設されてもよい。
【0208】
一部の実施形態では、ボンベ100の製造時に、外面3056(あるいは、外面3056のうちの、センサ3000が取り付けられる一部)が、該ボンベ100にセンサ3000を密着させ易くするように平滑化処理され得る。例えば、ボンベ100の製造時に、該ボンベの外径に合致した曲率を有する当て板が用いられ得る。該当て板には、離型剤が塗布され得る。未硬化のボンベ100のうちのセンサ取付け位置に、離型剤付きの(mold-released)当て板が配置される。ボンベ100が硬化し、硬化後に前記当て板が取り除かれることで、センサ密着用の平滑面が生じる。これにより、センサ3000のボンドライン性能(すなわち、ボンドラインのサイクル寿命)および音響結合性(優れた応答)が向上する。
【0209】
一部の実施形態において、センサ3000は、DFC圧電素子2900の樹脂2912が固体から塑性状態(malleable state)に変わる遷移温度(例えば、ガラス転移温度T)になるまで又はこれ以上の温度にまで加熱される。センサ3000が前記遷移温度以上に加熱されると、DFC圧電素子2900を屈曲・湾曲させてモニタリング対象の複合構造体の表面に追従させ易くなる。所望の遷移温度などの数多くの因子から、樹脂(あるいは、樹脂混合物)の選択が行われ得る。つまり、所望の温度を遷移温度とする目的で、1種または複数種の樹脂が用いられ得る。
【0210】
多素子センサであるセンサ1600に対し、センサ3000は単素子センサである。そのため、センサ3000は、本明細書に記載の複合構造体モニタリングシステムで複数使用される。複数のセンサ3000を使用することになるが、DFC圧電素子2900によって電子部品コストが下がるため、多素子センサ1600などの他の同様のセンサに比べてシステムコストが大幅に安く収まり得る。また、センサ3000は、DFC圧電素子2900により、他の同様のセンサよりも複合構造体の表面に対する追従性が優れたものになり得る。
【0211】
図30C及び図30Dではセンサ3000がボンベ100に取り付けられている様子が描かれているが、センサ3000は、風力タービン、機体、翼の前縁といった、衝撃損傷が悪影響となるか又は大きな応力に曝される複合構造体のような、あらゆるモニタリング対象の構造体に結合させられてもよい。
【0212】
本明細書で説明する、各種態様のDFCセンサの性能を実証するために、センサ3000と同様のセンサの実施例から収集したデータについて紹介すると共に、各実施例の構成についても触れる。
【0213】
DFCセンサの感度を従来の広帯域圧電センサに対して相対的に定量化するために、DFCセンサと、従来の単一素子からなるB1025センサの両方を、横寸法1200mm×1800mm、厚さ3.1mmの7075アルミニウム板に接合した。図31は、使用した実験用セットアップの関連寸法付き模式図である。
【0214】
図32に、発生源(0.5mmの6H鉛筆芯破壊による破損源)を示す。図32に示す発生源のモデルは、余弦型の釣鐘状荷重関数(cosine bell forcing function)(大きさ:1N、立上り時間:1μs)で表される。
【0215】
B1025センサおよびDFCセンサについての、発生源1(0.5mmの6H鉛筆芯破壊による破損源)からの時間波形および周波数波形を、図33に示す。
【0216】
DFCセンサについての、発生源1(0.5mmの6H鉛筆芯破壊による破損源)からの時間周波数分布を、図34Aに示す。B1025センサについての、発生源1からの時間周波数分布を、図34Bに示す。図34A図34Bとの比較から分かるように、DFCセンサは、B1025センサよりも感度が一桁大きい。
【0217】
B1025センサおよびDFCセンサについての、発生源2からの時間波形および周波数波形を、図35に示す。
【0218】
DFCセンサについての、発生源2からの時間周波数分布を、図36Aに示す。B1025センサについての、発生源2からの時間周波数分布を、図36Bに示す。図36A図36Bとの比較から分かるように、DFCセンサは、B1025センサよりも感度が一桁大きい。
【0219】
B1025センサおよびDFCセンサについての、発生源3からの時間波形および周波数波形を、図37に示す。
【0220】
DFCセンサについての、発生源3からの時間周波数分布を、図38Aに示す。B1025センサについての、発生源3からの時間周波数分布を、図38Bに示す。図38A図38Bとの比較から分かるように、DFCセンサは、B1025センサよりも感度が一桁大きい。
【0221】
別の実験では、DFCセンサとB1025センサを、タイプ3の自給式呼吸器(SCBA)ボンベ上で互いに近接状態になるように接合した。発生源1は面外方向破壊とし、発生源2は面内方向破壊とした。次の表に、各発生源と各センサの位置を示す:
【0222】
【表1】
【0223】
B1025センサおよびDFCセンサについての、発生源1(面外方向破壊)からの時間波形および周波数波形を、図39に示す。
【0224】
DFCセンサについての、発生源1(面外方向破壊)からの時間周波数分布を、図40Aに示す。B1025センサについての、発生源1からの時間周波数分布を、図40Bに示す。図40A図40Bとの比較から分かるように、DFCセンサは、B1025センサよりも感度が一桁大きい。
【0225】
図41は、本明細書で説明するセンサ(例えば、センサ3000)を製造・使用する方法4300を示すフロー図である。
【0226】
接地電極(例えば、接地電極3034)の作製が行われる(ステップ4302)。該接地電極は、銅などの導電性材料からなり得て、本明細書で説明するように、可撓性を示すように可撓性基板を用いて作製され得る。
【0227】
正極電極(例えば、正極電極3026)および各々のリード(例えば、リード3016)の作製が行われる(ステップ4304)。該正極電極および該リードは、銅などの導電性材料からなり得て、本明細書で説明するように、可撓性を示すように可撓性基板を用いて作製され得る。
【0228】
DFC圧電素子(例えば、DFC圧電素子2900)の作製が行われる(ステップ4306)。本明細書で説明するように、前記DFC圧電素子は、図29A図29Fに示すとおり圧電材料に対して複数の方向にダイシングを行い、該ダイシングで形成された溝に樹脂を充填することによって作製され得る。
【0229】
前記DFC圧電素子(例えば、感知素子3030)の下面が、前記接地電極の上面に(例えば、第2の導電層3032を用いて)接続される(ステップ4308)。
【0230】
前記DFC圧電素子の上面が、前記正極電極の下面に(例えば、第1の導電層3028を用いて)接続される(ステップ4310)。
【0231】
一部の実施形態において、前記正極電極はポリイミド膜層(例えば、第1のポリイミド膜層3024)で被覆され、前記接地電極もポリイミド膜層(例えば、第2のポリイミド膜層3036)と接続させられる。一部の実施形態において、前記センサは、該センサのEMIシールドとなるように構成された銅層(例えば、銅層3038)で被覆される。
【0232】
製造されたセンサが、複合構造体に連結される(ステップ4312)。本明細書で説明するように、前記複合構造体の外面は、該複合構造体へと前記センサを密着させ易くするように平滑化処理され得て、音響結合性およびボンドラインの機械的信頼性が向上する。同じく本明細書で説明するように、前記センサは、前記DFC圧電素子の前記樹脂(例えば、樹脂2912)が固体から塑性状態に変わる遷移温度(例えば、ガラス転移温度T)になるまで又はこれ以上の温度にまで加熱され得る。前記センサが前記遷移温度以上に加熱されると、前記DFC圧電素子を屈曲・湾曲させてモニタリング対象の前記複合構造体の表面に追従させ易くなる。製造されたセンサは、前記複合構造体に対して接着剤の塗布などの任意の方法または手法によって自動的に連結され得る。
【0233】
本方法/システムの例示的な実施形態について開示したが、あくまでも説明用のものに過ぎない。よって、全体を通して用いた用語は、本発明を限定するかの如く読み取られるべきでない。本明細書の教示内容に対する変更として、軽微なものは当業者であれば分かるであろうが、本明細書に特許が付与された場合に同特許によって外延が規定されることになる範囲内には、当該技術分野に対して同特許が貢献する革新の範疇に含まれると合理的に考えられるあらゆる実施形態が包含され、同範疇は添付の特許請求の範囲および均等物以外の制限を受けないものと理解されたい。本明細書に記載された構成および2つ以上のそのような構成の組合せは、そのような組み合わせに含まれる構成同士が相容れないものでない限り、いずれも本発明の範疇に包含されるものとする。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図24
図25
図26
図27
図28
図29A
図29B
図29C
図29D
図29E
図29F
図30A
図30B
図30C
図30D
図31
図32
図33
図34A
図34B
図35
図36A
図36B
図37
図38A
図38B
図39
図40A
図40B
図41
【国際調査報告】