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特表2024-514841マルチマテリアル電気接点のコールドスプレーアディティブマニュファクチャリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】マルチマテリアル電気接点のコールドスプレーアディティブマニュファクチャリング
(51)【国際特許分類】
   C23C 24/04 20060101AFI20240327BHJP
   H01R 43/16 20060101ALI20240327BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C23C24/04
H01R43/16
H01R13/03 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561775
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 IB2022054570
(87)【国際公開番号】W WO2022215061
(87)【国際公開日】2022-10-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
【住所又は居所原語表記】30 Pembroke Road, Dublin 4 D04 Y0C2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キリアン、マイケル リー
(72)【発明者】
【氏名】カリヴァヤリル、ジェイコブ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】モール、ダロン ロバート
【テーマコード(参考)】
4K044
5E063
【Fターム(参考)】
4K044AA06
4K044AB10
4K044BA02
4K044BA06
4K044BA08
4K044BA12
4K044BA13
4K044BA18
4K044CA23
4K044CA27
4K044CA29
5E063GA09
(57)【要約】
本開示の主題は、マルチマテリアル電気接点、及びマルチマテリアル電気接点を作製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接点を形成する方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの材料供給装置を動作させて、第1の金属及び第2の金属の供給物を放出することであって、前記第1の金属及び前記第2の金属はそれぞれ、固体状態かつ粉末形態である、ことと、
前記第1の金属及び前記第2の金属に圧縮ガスを適用して、前記第1の金属及び前記第2の金属を基板に向かって噴射させることによって、前記第1の金属及び前記第2の金属を前記基板上に堆積させることと、を含み、
前記堆積させることは、前記第1の金属と前記第2の金属との間に固相結合を形成して、材料柱を得るのに十分な圧力下で実行され、一方で、前記材料柱を、前記第1の金属及び前記第2の金属の両方の溶融温度より低い温度に維持し、それにより前記第1の金属及び前記第2の金属を固体状態に維持し、それによって電気接点を得る、方法。
【請求項2】
前記堆積させることは、前記堆積された金属が前記材料柱上に蓄積するにつれて前記第1の金属及び前記第2の金属の相対量を変化させて、前記材料柱を傾斜機能材料柱にすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の金属及び前記第2の金属を混合によって組み合わせることと、
前記組み合わされた金属を同じ材料供給装置に入れることと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの材料供給装置は、第1の材料供給装置及び第2の材料供給装置を含み、
前記第1の材料供給装置を動作させて、前記第1の金属の前記供給物を放出し、前記第2の材料供給装置を動作させて、前記第2の金属の前記供給物を放出し、
前記圧縮ガスを適用することによって前記金属が噴射されたときに、前記第1の金属と前記第2の金属が混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記圧縮ガスは、ヘリウム、窒素、圧縮空気、水素、又はこれらの組合せからなる群から選択される一次ガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、コールドスプレーアディティブマニュファクチャリング装置において実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記放出された金属は、コールドスプレーシステムノズルを通って前記基板に向かって噴射される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの材料供給装置は、前記コールドスプレーシステムノズルの上流に位置している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの材料供給装置は、前記第1の金属又は前記第2の金属の少なくとも一方を前記コールドスプレーシステムノズル内に放出する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記放出された第1の金属及び第2の金属が前記基板に向かって噴射される圧力は、前記コールドスプレーアディティブマニュファクチャリング装置における前記少なくとも1つの材料供給装置の位置によって制御される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の金属及び前記第2の金属はそれぞれ、5マイクロメートル~120マイクロメートルの粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の金属及び前記第2の金属は、75°~105°の角度で前記基板上に噴射される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の金属の体積若しくは重量に対する前記第1の金属の体積若しくは重量の比、
前記第2の金属の平均粒径に対する前記第1の金属の平均粒径の比、又は
前記第1の金属若しくは前記第2の金属の種類のうちの少なくとも1つが、前記方法の間に少なくとも1回変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記材料供給装置の少なくとも1つの中の前記金属の組成は、前記方法の間に少なくとも1回変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの材料供給装置内の前記金属の組成は、コンピュータプログラムによって制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記電気接点は、2分~25分の時間内に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の金属は、少なくとも25ミリジーメンス毎メートルの導電率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の金属は、銅、銀、アルミニウム、金、白金、又はこれらの組合せからなる群から選択される軟質金属を含み、
前記第2の金属は、アーク抵抗粒子である成分を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の金属は、クロム、炭化クロム、タングステン、炭化タングステン、モリブデン、炭化モリブデン、バナジウム、炭化バナジウム、酸化アルミニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される硬質金属を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の金属及び前記第2の金属は、少なくとも1400°Fだけ異なる溶融温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
電気接点を形成する方法であって、前記方法は、
摩擦攪拌アディティブ装置における材料供給装置を動作させて、第1の金属及び第2の金属の供給物を、前記金属の各々が固体状態にある間に基板上に放出し、材料柱を得ることを含み、
前記材料供給装置は、回転可能なショルダーによって画定されるレシーバを備え、
前記摩擦攪拌アディティブ装置における前記材料供給装置を動作させて、前記第1の金属及び前記第2の金属の前記供給物を基板上に放出することは、
前記レシーバ内の前記第1の金属及び前記第2の金属に圧力を加えることと、
前記第1の金属及び前記第2の金属の周囲で前記材料供給装置のショルダーを回転させて、
前記第1の金属と前記第2の金属との間に固相結合を形成し、前記第1の金属及び前記第2の金属の両方の溶融温度より低い温度に前記材料柱を維持しながら、前記金属を前記基板上に放出すること、を含み、
それによって電気接点を得る、方法。
【請求項22】
回転可能な前記ショルダーの底面上の摩擦力により、前記ショルダーの遠位端に向かって存在する前記第1の金属及び前記第2の金属の加熱が引き起こされる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の金属及び前記第2の金属はそれぞれ、粉末、チップ、ワイヤ、固体バー、ロッド、金属スクラップ、又は金属ペレットのうちの少なくとも1つの形態である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の金属及び前記第2の金属が前記材料柱上に蓄積するにつれて、前記第1の金属及び前記第2の金属の相対量を変化させて、前記材料柱を傾斜機能材料柱にする、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記材料供給装置内の前記第1の金属、前記第2の金属、又はその両方の組成は、前記方法の間に少なくとも1回変更される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の金属の体積若しくは重量に対する前記第1の金属の体積若しくは重量の比、又は
前記第1の金属若しくは前記第2の金属の種類のうちの少なくとも1つが、前記方法の間に少なくとも1回変更される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
第1の固体金属及び第2の固体金属を含む、傾斜機能性のモノリシック電気接点構造を備えた電気接点であって、前記第1の固体金属の量と比較した前記第2の固体金属の相対量が、前記構造の第1の表面から前記構造の第2の対向する表面に向かう前記構造内の距離とともに増加する組成の変化を特徴とする、電気接点。
【請求項28】
前記第1の固体金属は、銅、銀、アルミニウム、金、白金、又はこれらの組合せの群から選択されるマトリックス金属を含み、
前記第2の固体金属は、クロム、炭化クロム、タングステン、炭化タングステン、モリブデン、炭化モリブデン、バナジウム、炭化バナジウム、酸化アルミニウム、又はこれらの組合せの群から選択される1つ以上の成分を含む、請求項27に記載の電気接点。
【請求項29】
前記第2の固体金属は、クロム、炭化クロム、タングステン、炭化タングステン、モリブデン、炭化モリブデン、バナジウム、炭化バナジウム、酸化アルミニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される硬質金属を含む、請求項28に記載の電気接点。
【請求項30】
前記電気接点構造の高さの少なくとも50%は、
前記固体金属の総重量に基づいて65%~100%の前記第1の固体金属と、
前記固体金属の総重量に基づいて0~35%の前記第2の固体金属と、を含む、請求項27に記載の電気接点。
【請求項31】
前記電気接点は、25~50ミリジーメンス毎メートル(mS/m)の導電率を有する、請求項27に記載の電気接点。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的にはマルチマテリアル電気接点と、電気接点を作製する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
電気接点は、電気スイッチ、リレー、コネクタ、及び回路遮断器に見られる電気回路部品である。電気接点は、導電性材料、典型的には金属から作製される。一対の接点が接触すると、これらの接点は、表面構造、表面の化学的性質、及び接触時間に応じて、一定の接触抵抗を伴って電流を流すことができる。接点が接触する表面は、通常、高い導電性、耐摩耗性、耐酸化性及び他の特性を有する金属から構成されている。
【0003】
電気接点は、1つ又はいくつかの異なる材料から作製することができる。ほとんどの電気接点は、金属粉末の焼結によって製造される。銀又は銅などの高導電性の金属を、通常、厳しい電気的な力及び機械的な力に耐える能力を示す金属と混合する。必要とされる組成物に応じて、3つのプロセスのうちの1つが、電気接点を作製するために一般に使用される。プレス-焼結-浸透(Press-Sinter-Infiltrate、PSI)は、一般的に最も高密度の材料を提供し、一方でプレス-焼結-再プレス(Press-Sinter-Repress、PSR)プロセスは、特定の組成物に必要とされる。場合によっては、プレス-焼結(Press-Sinter、PS)のみのプロセスが適切である。焼結プロセスの前に、ダイ中で金属粉末を圧縮し、圧力を加える。次に、粉末成形体に熱を加えることを含むプロセスである焼結を成形体に施す。焼結は、典型的には、異なる温度ゾーンを有する細長い単一の炉内で行われる。成形体を母材金属の融点未満まで加熱し、焼結温度に保持した後、冷却する。焼結により、粉末粒子間の圧縮された機械的結合が冶金的結合に変化し、接点に強度及び構造的完全性が付与され、浸透又は再プレスすることのできる「耐熱性骨格」が形成される。圧縮された材料中の原子が粒子の境界を横切って拡散し、粒子を互いに融合させて1つの固体片を生成する。焼結により、電気接点の主要な冶金的特性が得られる。焼結後、機械的特性及び寸法精度を向上させるために、二次熱処理が使用される場合が多い。効果的な電気接点を製造するために十分に高い品質及び十分に低い多孔性を有する焼結粉末ディスクを得るためには、不利なことに、時間のかかる真空焼結を3回行う必要がある。更に、特定の構造要件を有する接点を製造するために、焼結された接点に対して、大規模な機械加工を行わなければならない。全体的な金属粉末焼結プロセスは、6日~10日の時間を要し得る。
【0004】
電気接点を作製するための改良されたプロセスを提供することが望まれる。更に、そのようなプロセスは、金属粉末焼結よりも時間がかからないことが望ましい。更に、より経済的な傾斜組成物を製造することができる改良されたプロセスを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、マルチマテリアル電気接点、及びマルチマテリアル電気接点を作製する方法を提供する。
【0006】
本開示の第1の態様は、電気接点を形成する方法を提供し、本方法は、少なくとも1つの材料供給装置を動作させて、第1の金属及び第2の金属の供給物を放出することであって、第1の金属及び第2の金属は、それぞれ固体状態かつ粉末形態である、ことと、金属に圧縮ガスを適用して金属を基板に向かって噴射させることによって、第1の金属及び第2の金属を基板上に堆積させることと、を含み、堆積させることは、第1の金属と第2の金属との間の固相結合(solid state bond)を形成して、材料柱を得るのに十分な圧力下で実行され、一方で、材料柱を、第1の金属及び第2の金属の両方の溶融温度より低い温度に維持し、それによって電気接点を得る。いくつかの実施形態では、堆積させることは、堆積された金属が材料柱上に蓄積するにつれて第1及び第2の金属の相対量を変化させて、材料柱を傾斜機能材料柱にすることを更に含む。いくつかの実施形態では、本方法は、混合することによって第1及び第2の金属を組み合わせることと、組み合わされた金属を同じ材料供給装置内に配置することと、を更に含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの材料供給装置は、第1の材料供給装置及び第2の材料供給装置を含み、第1の材料供給装置は、第1の金属の供給物を放出するように動作し、第2の材料供給装置は、第2の金属の供給物を放出するように動作し、第1の金属及び第2の金属は、それぞれが依然として固体状態にある金属が、圧縮ガスを適用することによって噴射されるときに、混合される。いくつかの実施形態では、圧縮ガスは、ヘリウム、窒素、圧縮空気、水素、又はこれらの組合せの群から選択される一次ガスである。いくつかの実施形態では、本方法は、コールドスプレーアディティブマニュファクチャリング装置において実施される。いくつかの実施形態では、放出された金属は、コールドスプレーシステムのノズルを介して基板に向かって噴射される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの材料供給装置は、コールドスプレーシステムのノズルの上流に位置する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの材料供給装置は、第1又は第2の金属の少なくとも一方をコールドスプレーシステムのノズルの中に放出する。いくつかの実施形態では、放出された第1及び第2の金属が基板に向かって噴射される圧力は、コールドスプレーアディティブマニュファクチャリング装置における少なくとも1つの材料供給装置の位置によって制御される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の金属はそれぞれ、5マイクロメートル~120マイクロメートルの粒径を有する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の金属は、75°~105°の角度で基板上に噴射される。いくつかの実施形態では、以下、すなわち、第2の金属の体積若しくは重量に対する第1の金属の体積若しくは重量の比、第2の金属の平均粒径に対する第1の金属の平均粒径の比、又は第1の金属若しくは第2の金属の種類のうちの少なくとも1つが本方法の間に少なくとも1回変更される。いくつかの実施形態では、材料供給装置内の第1の金属、第2の金属、又はその両方の組成は、本方法の間に少なくとも1回変更される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの材料供給装置内の金属の組成は、コンピュータプログラムによって制御される。いくつかの実施形態では、電気接点は、2分~25分の時間内に形成される。いくつかの実施形態では、第1の固体金属は、少なくとも25ミリジーメンス毎メートル(mS/m)の導電率を有する。いくつかの実施形態では、第1の固体金属は、銅、銀、アルミニウム、金、白金、又はこれらの組合せの群から選択されるマトリックス金属を含み、第2の固体金属は、耐アーク性粒子である。いくつかの実施形態では、第2の固体金属は、クロム、炭化クロム、タングステン、炭化タングステン、モリブデン、炭化モリブデン、バナジウム、炭化バナジウム、酸化アルミニウム、又はこれらの組合せの群から選択される1種類以上の成分を含む。いくつかの実施形態では、第1の金属と第2の金属は、少なくとも1400°F異なる溶融温度を有する。
【0007】
本開示の第2の態様は、電気接点を形成する方法を提供し、本方法は、摩擦攪拌アディティブ装置(friction stir additive device)における材料供給装置を動作させて、第1の固体金属及び第2の固体金属の供給物を基板上に放出し、材料柱を得ることを含み、材料供給装置は、回転可能なショルダーによって画定されるレシーバを備え、摩擦攪拌アディティブ装置における材料供給装置を動作させて、第1及び第2の金属の供給物を基板上に放出することは、レシーバ内の第1及び第2の金属に圧力を加えることと、第1及び第2の金属の周囲で材料供給装置のショルダーを回転させて、放出された金属間に固相結合を形成し、第1及び第2の金属の両方の溶融温度より低い温度に材料柱を維持しながら、金属を基板上に放出することを含み、それによって電気接点を得る。いくつかの実施形態では、回転可能なショルダーの底面上の摩擦力によって、ショルダーの遠位端に向かって存在する第1及び第2の金属が加熱される。いくつかの実施形態では、第1の金属及び第2の金属はそれぞれ、粉末、チップ、固体バー、ロッド、金属スクラップ、又は金属ペレットのうちの少なくとも1つの形態である。いくつかの実施形態では、第1及び第2の金属の相対量は、第1及び第2の金属が材料柱上に蓄積するにつれて変化し、材料柱を傾斜機能材料柱にする。いくつかの実施形態では、材料供給装置内の金属の組成は、本方法の間に少なくとも1回変更される。いくつかの実施形態では、第2の金属の体積若しくは重量に対する第1の金属の体積若しくは重量の比、又は第1若しくは第2の金属の種類のうちの少なくとも1つが、本方法の間に少なくとも1回変更される。
【0008】
本開示の第3の態様は、第1の金属及び第2の金属を含む、傾斜機能性のモノリシック電気接点構造であって、第1の金属の量と比較した第2の金属の相対量が、構造の第1の表面から構造の第2の対向する表面に向かって構造中の距離とともに増加する組成の変化によって特徴付けられる、モノリシック電気接点構造を提供する。いくつかの実施形態では、第1の金属は、銅、銀、アルミニウム、金、白金、又はこれらの組合せの群から選択されるマトリックス金属である軟質金属を含み、第2の金属は、クロム、炭化クロム、タングステン、炭化タングステン、モリブデン、炭化モリブデン、バナジウム、炭化バナジウム、酸化アルミニウム、又はこれらの組合せの群から選択される硬質金属を含む。いくつかの実施形態では、電気接点構造の高さの少なくとも50%は、両方の金属の総重量に基づいて65重量%~100重量%の第1の金属と、両方の金属の総重量に基づいて5重量%~65重量%の第2の金属と、を含む。いくつかの実施形態では、電気接点は、25~50MS/mの導電率を有する。
【0009】
上記及び他の実施形態は、以下の詳細な説明において更に詳しく説明されている。本明細書に開示されている主題の目的は、上記に述べられており、本明細書に開示されている主題によって全体的又は部分的に達成され、他の目的は、本明細書で以下に最良に説明される添付図面に関連して解釈されるとき、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】75%の銅及び25%のクロムを含有する金属粉末焼結電気接点の横断面のデジタル顕微鏡カメラ画像(エッチング、100倍)を示している。
図2】コールドスプレーされた75%の銅及び25%のクロムの電気接点の平面図(X,Y;500倍)のデジタル顕微鏡カメラ画像を示している。
図3】銅及びタングステンを含有するコールドスプレーされた電気接点の平面図(X,Y;500倍)のデジタル顕微鏡カメラ画像を示している。
図4】銅及びタングステンを含有する電気接点の微細構造を示す走査型電子顕微鏡画像(500倍)を示している。
図5】銅及びクロムを含有する傾斜機能下部領域と、高仕事関数材料の上部領域とを有する電気接点の斜視図を示している。
図6】高仕事関数材料の層を含む電気接点の斜視図を示している。
図7】第1の固体金属の領域と、第1及び第2の固体金属の両方の領域とを交互に有する電気接点の斜視図を示している。
図8】コールドスプレープロセスによって作製された傾斜機能電気接点の斜視図を示している。
図9】コールドスプレー法によって作製され、銅及びクロムを含有する上部領域と、銅を含有する下部領域とを有する電気接点の斜視図を示している。
図10】電気接点を作製するための高圧コールドスプレーシステムの概略図を示している。
図11】電気接点を作製するための低圧コールドスプレーシステムの概略図を示している。
図12】電気接点を作製するための摩擦攪拌アディティブシステムの斜視図を示している。
図13】摩擦攪拌アディティブプロセスによって作製され、銅及びクロムを含有する電気接点ディスクの横断面の走査型電子顕微鏡画像(100倍)を示している。
図14】コールドスプレープロセスによって形成された未完成の電気接点の斜視図を示している。
図15】摩擦攪拌プロセスによって形成された未完成の電気接点の斜視図を示している。
図16】フック状の十字パターンに切断された電気接点の斜視図を示している。
図17】円形ディスク形状にウォータージェット切断された銅-クロム電気接点の斜視図を示している。
図18】接点内にクロスハッチパターンに配置された第2の固体金属を有する電気接点の斜視図を示している。
図19】接点内に螺旋状に配置された第2の固体金属を有する電気接点の斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで開示される主題は、以下に更に完全に説明され、異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるようには解釈されるべきではない。以下の詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、本開示の範囲、適用性、又は構成をいかようにも限定することを意図するものではない。むしろ、以下の説明は、本開示の例を実施するためのいくつかの実際的な例示を提供する。構造、材料、寸法、及び製造プロセスの例は、選択された要素について提供され、他のすべての要素は、本開示の分野における通常の技能を有する者に公知であるものを採用する。本開示の主題は、異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。当業者であれば、記載された例の多くが様々な適切な代替例を有することを認識するであろう。
【0012】
本明細書で開示する電気接点は、電気回路の部品として使用するのに適している。このような回路は、例えば、電気スイッチ、リレー、コネクタ、回路遮断器などの様々な装置に使用することができる。電気接点は、そのような使用に適した導電性を有する。いくつかの実施形態では、電気接点は、25~50ミリジーメンス毎メートル(mS/m)の導電率を有する。
【0013】
電気接点は、それぞれが固体状態で存在する第1の金属及び第2の金属から作製されている。第1の金属は、電気接点に導電性及び熱伝導性を提供する導電性金属であり、導電性及び熱伝導性の両方は、接点を通る電流の最適な流れのために必要である。いくつかの実施形態では、第1の金属は、例えば、銅、銀、アルミニウム、金、白金、又はこれらの組合せなどのマトリックス金属である。本明細書において、マトリックス金属は、少なくとも36~65MS/mの導電率を有する。電気接点はまた、第2の金属を含む。第2の金属は、耐アーク性粒子であると考えられ得る1種類以上の成分を含む。好適な粒子の例としては、酸化アルミニウム、クロム、タングステン、モリブデン、バナジウム、例えば炭化クロム、炭化モリブデン、炭化タングステン、炭化バナジウムなどの炭化物、又はこれらの組合せが挙げられる。スイッチ接点が電流を遮断すると、電気接点にかなりの負荷をかけるアークが発生する。不利なことに、軟質の第1の金属は、耐アーク腐食性及び機械的強度に欠け、溶接抵抗も低い。硬質の第2の金属は、電気接点に耐熱性を提供し、接点の耐アーク腐食性を高める。更に、硬質の第2の金属は溶接傾向が低いため、軟質の第1の金属部品が互いに溶接されるのを防ぐ。いくつかの実施形態では、第1の金属は、銅、銀、アルミニウム、金、白金、又はこれらの組合せの群から選択されるマトリックス金属を含み、第2の金属は、クロム、炭化クロム、タングステン、炭化タングステン、モリブデン、炭化モリブデン、バナジウム、炭化バナジウム、酸化アルミニウム、又はこれらの組合せの群から選択される耐アーク性材料を含む。いくつかの実施形態では、第1の金属及び第2の金属は、実質的に異なる溶融温度を有する。「実質的に異なる」とは、軟質金属と硬質金属の溶融温度が少なくとも1400°F異なることを意味する。一例として、限定するものではないが、第1の金属を含むマトリックス材料は、1221°F~3218°Fの範囲の融点を有することができ、第2の金属の硬質粒子は、3380°F~6152°Fの範囲の融点を有することができる。本開示の方法に従って作製された電気接点の微細構造は、金属粉末焼結銅-クロムの微細構造と類似している。例えば、図1は、75%の銅21及び25%のクロム22を含有する金属粉末焼結電気接点の横断面のデジタル顕微鏡カメラ画像(エッチング、100倍)を示している。図2は、本開示の方法に従ってコールドスプレープロセスによって作製された、図17の75%銅21及び25%クロム22電気接点(75Cu/25Cr)の平面図(X,Y;500倍)のデジタル顕微鏡カメラ画像を示している。クロム21の粒子は、幅が約30~70マイクロメートルであるように見える。図3は、銅21及びタングステン23を含有するコールドスプレーされた電気接点の平面図(X,Y;500倍)のデジタル顕微鏡カメラ画像を示している。
【0014】
本開示の電気接点は、高い機械的強度、低いガス含有量、耐アーク腐食性、短絡電流の散逸、及び電気接点への低い溶接傾向のうちの少なくとも1つを提供する。電子放出は、アークを維持するために必要である。いくつかの実施形態では、第2の固体金属は、高仕事関数材料である。「高仕事関数材料」とは、材料の固体表面から電子を除去するエネルギーが大きい材料を意味する。高仕事関数材料は、有利なことにアーク放電を困難にする。いくつかの実施形態では、高仕事関数材料は、4~5.5電子ボルト(eV)の仕事関数を与える。高仕事関数材料は融点が高いことが望ましい。適切な高仕事関数材料の例としては、ニッケル(5.04~5.35eVの仕事関数を与え、2347°Fの溶融温度を有する)、タングステン(4.22~5.32eVの仕事関数を与え、6150°Fの溶融温度を有する)、モリブデン(4.36~4.85eVの仕事関数を与え、4750°Fの溶融温度を有する)、又はこれらの組合せ、が挙げられる。図4は、銅21及び高仕事関数材料のタングステン23を含有する電気接点の微細構造を示した走査型電子顕微鏡像(500倍)を示している。タングステン23の粒子は、20~40マイクロメートルの粒径を有する。いくつかの実施形態では、高仕事関数材料は、電気接点の高さの上部30%~80%においてのみ使用される。図5は、傾斜機能であり、銅及びクロムを含む下部領域25と、高仕事関数材料27の層である上部領域26とを有する、一実施形態に係る電気接点24の図を示している。図6に示したように、いくつかの実施形態では、電気接点は、電気接点の上部領域26と下部領域25との間に位置する高仕事関数材料27の層を含み、高仕事関数材料層27は、溶融及び電気接点24へのアークの侵入を防止又は減少させるアーク腐食バリアを形成する。高仕事関数材料層27は、第1の金属のマトリックス中に高濃度の高仕事関数材料を有する。いくつかの実施形態では、高仕事関数材料層27は、約0.5mm~約1.0mmの厚さを有する。
【0015】
電気接点に硬質金属を使用することは有利であるが、このタイプの金属は望ましくないほど高価である傾向がある。硬質金属が電気接点に所望の特性を付与するためには、硬質金属が接点の本体全体に均一に分散している必要はない。例えば、場合によっては、硬質金属は、接点の高さの4分の1から3分の1にのみ必要とされることがある。したがって、接点全体にわたり硬質金属を組み込んだ電気接点は、不必要に過剰な硬質金属を含むことになり、費用と材料の浪費である。いくつかの実施形態では、開示された電気接点は、電気接点の高さの範囲内で組成が変化し、これは、上述した費用及び材料の浪費を有利に克服する。したがって、電気接点中の第1及び第2の金属の相対量は、電気接点内の異なる高さにおいて変化する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の金属の相対量は、電気接点の高さ内で徐々に変化する。いくつかの実施形態では、電気接点は、少なくとも2つの層を含み、層のうちの少なくとも2つは、第1及び第2の金属の異なる相対量を有し、少なくとも1つの第2の層は、少なくとも1つの第1の層の上に配置される。いくつかの実施形態では、電気接点は複数の層を含み、層のうちの少なくとも2つは、異なる相対量の第1及び第2の金属を含有する。各層中の第1又は第2の金属の量は、電気接点の総重量に基づいて、0~100重量%の範囲で変化し得る。図7は、第1の金属28と、第1及び第2の金属29の両方の交互の層を有する、一実施形態に係る電気接点24の図を示している。
【0016】
いくつかの実施形態では、電気接点中の第2の金属の量は、接点の一方の表面に向かって、接点の対向する表面に向かうより増大する。例えば、いくつかの実施形態では、電気接点は、傾斜機能モノリシック構造である。「傾斜機能」とは、電気接点が、接点の高さの範囲内で徐々に組成が変化することを特徴とし、その結果、異なる接点の高さにおける特性が対応して変化することを意味する。「モノリシック」とは、単一のユニットを構成することを意味する。第1の金属の量と比較しての硬質の第2の金属の相対量は、構造の第1の表面から構造の第2の対向する表面に向かって構造内の距離とともに増加する。例えば、図8は、コールドスプレープロセスによって、本開示の一実施形態の方法に従って作製された傾斜機能電気接点24の図を示している。電気接点は銅及びクロムの両方を含有しており、電気接点24の下部領域25のクロム含有量は低い。クロム含有量は、電気接点24の高さ全体にわたって連続的又は段階的に増加し、したがって電気接点24の上部領域26は、下部領域25よりも高いクロム含有量を有する。いくつかの実施形態では、電気接点構造の高さの少なくとも50%は、固体金属の総重量に基づいて65%~100%の第1の金属と、両方の固体金属の総重量に基づいて0%~35%の第2の金属とを含有する。いくつかの実施形態では、電気接点構造の高さの少なくとも33%は、両方の金属の総重量に基づいて65%~100%の第1の金属と、両方の金属の総重量に基づいて0%~35%の第2の金属とを含有する。いくつかの実施形態では、電気接点構造の高さの少なくとも25%は、両方の金属の総重量に基づいて65%~100%の第1の金属と、両方の金属の総重量に基づいて0%~35%の第2の金属とを含有する。
【0017】
本開示の電気接点は、任意の適切な方法で作製することができる。開示された電気接点を作製するために、アディティブマニュファクチャリングを使用できることが予想外に発見された。アディティブマニュファクチャリング法は、マルチマテリアル電気接点内の第1及び第2の固体金属の分布を制御することができる。アディティブマニュファクチャリング法は、コストの削減、耐アーク腐食性の向上、又は導電性の向上のうちの少なくとも1つを含む、従来の金属粉末焼結方法を上回る少なくとも1つの利点を提供する。更に、アディティブマニュファクチャリング法は、電気接点の設計の柔軟性を提供し、例えば、傾斜設計、積層組成物、及び多層設計を可能にする。アディティブマニュファクチャリングの更なる利点として、いくつかの実施形態では、特定のゾーン内、又は接点の高さ全体、又はその両方において、第1及び第2の金属、又は他の粒子を幾何学的パターンに堆積させることが可能である。
【0018】
いくつかの実施形態では、電気接点は、少なくとも1つの材料供給装置を動作させて、粉末形態の第1の固体金属と、同様に粉末形態の第2の固体金属の供給物を放出することによって、作製される。第1及び第2の金属粉末は、金属に圧縮ガスを適用することによって基板上に堆積される。これにより、金属粉末が基板に向かって噴射され、金属間に結合が形成されるのに十分な圧力下で基板上に堆積される。堆積された金属は基板上に蓄積し、第1及び第2の金属の両方の溶融温度より低い温度に維持される材料柱が得られる。十分な金属が基板上に堆積されると、堆積は中断され、電気接点が得られる。
【0019】
いくつかの実施形態では、電気接点は、コールドスプレーアディティブマニュファクチャリングプロセスによって作製される。コールドスプレープロセスは、基板に対して粉末粒子の流れを駆動することによって行われる。例えば金属基板など、任意の適切な基板を使用することができる。高温高圧ガスによって駆動されると、粉末粒子は非常に高い速度を得る。粉末粒子の温度は、粉末粒子の溶融温度未満のままである。基板に衝突すると、粉末粒子は変形し、粒子間に結合が形成される。固体金属粒子は基板上に蓄積し、材料柱を形成する。所望の接点高さ及び形状が得られると、堆積は中断され、電気接点が得られる。
【0020】
コールドスプレー製造装置は、少なくとも1つの材料供給装置を含む。材料供給装置は、任意の適切なサイズ又は構造を有することができる。いくつかの実施形態では、コールドスプレー装置は、単一の材料供給装置を含む。材料供給装置は、粉末形態の第1の金属、第2の金属、又はその両方を収容する。第1の金属及び第2の金属は、任意の適切なサイズを有することができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の金属は、5マイクロメートル~120マイクロメートルの粒径を有する。材料供給装置は、第1の金属又は第2の固体金属の少なくとも一方の供給物を放出するように動作させることができる。放出された金属に圧縮ガスが適用され、金属は基板に向かって高速で噴射され、基板上に堆積する。第1及び第2の金属は、任意の適切な角度で基板上に噴射させることができる。堆積角度が大きすぎると、非結合欠陥(disband defect)の数が増加するため望ましくない。いくつかの実施形態では、第1及び第2の金属は、75°~105°の角度で基板上に噴射させることができる。任意の適切な圧縮ガスを使用することができる。いくつかの実施形態では、圧縮ガスは、例えば、ヘリウム、窒素、圧縮空気、水素、又はこれらの組合せなどの一次ガスである。圧縮ガスの力は、堆積する金属粉末粒子間に結合が形成されるのに十分に高い圧力下で金属を堆積させる。金属が基板上に堆積し続けるにつれて、金属が蓄積し始め、材料柱が得られる。堆積中、材料柱内の金属は、第1及び第2の金属の両方の溶融温度より低い温度において固体状態のままである。堆積は、材料柱が所望の高さに達するまで続けられ、電気接点が得られる。
【0021】
いくつかの実施形態では、コールドスプレー製造装置を使用して、傾斜機能柱である材料柱を作成する。傾斜機能は、基板上に堆積される第1及び第2の固体金属の相対量を経時的に変化させることによって作成される。この結果、柱の高さの範囲内で徐々に又は段階的に組成が変化することを特徴とする材料柱が形成され、柱の異なる高さにおける特性が対応して変化する。例えば、75%の第1の金属/25%の第2の金属(例えば75Cu/25Cr)のいくつかの層を基板上に堆積させることができ、その後、組成比をより高い第1の金属含有量、例えば95%の第1の金属/5%の第2の金属(例えば95Cu/5Cr)に切り替えることができる。材料柱が所望の電気接点高さに近づくにつれて、組成を、75%の第1の金属/25%の第2の金属(例えば75Cu/25Cr)に戻すことができる。これにより、高い導電性及び耐アーク腐食性、並びに耐溶着性を提供する外側部分と、高い導電性を提供する中間部分とを有する、傾斜機能性の電気接点が得られる。図8は、コールドスプレープロセスによって作製され、銅及びクロムの両方を含む、傾斜機能性の電気接点24の図を示しており、電気接点24の下部領域25におけるクロム含有量は低い。クロム含有量は、電気接点24の高さ全体にわたって連続的又は段階的に増加し、したがって電気接点24の上部領域26は、下部領域25よりも高いクロム含有量を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、傾斜機能性の電気接点は、例えば伸銅コア(wrought copper core)などの金属コアの表面上に第1及び第2の金属を堆積させることによって提供することができる。
【0023】
任意の所与の時間に基板上に堆積される第1及び第2の金属の量は、任意の適切な方法によって、例えば、材料供給装置の数、又は少なくとも1つの材料供給装置の内容物を調整することによって、制御することができる。いくつかの実施形態では、コールドスプレー製造装置は、単一の材料供給装置を有する。単一の材料供給装置の内容物は経時的に変化させることができる。いつでも、材料供給装置は、第1の金属のみ、第2の金属のみ、又は第1及び第2の金属の両方を収容することができる。同じ材料供給装置内に配置される組み合わされた第1及び第2の金属の相対量は、一定に保つことができる、又は経時的に変化させることができる。いくつかの実施形態では、コールドスプレーアディティブを使用して、約75重量%の第1の金属と、約25重量%の第2の金属とを含有する電気接点を作製する。例えば、電気接点は、75重量%の銅と、25重量%のクロムとを含有することができる。クロム及び銅は、単一の粉末供給装置を通じて供給される固定組成(75%Cu/25%Cr)混合物として一緒にブレンドすることができる。いくつかの実施形態では、コールドスプレー製造装置は、第1の材料供給装置、第2の材料供給装置、及び任意選択で追加の供給装置を有する。第1の材料供給装置は、第1の金属を収容し、第1の金属の供給物を放出するように動作することができる。第2の材料供給装置は第2の金属を収容し、第2の金属の供給物を放出するように動作することができる。第1及び第2の金属が圧縮ガス中に放出されると、第1及び第2の金属は基板上に噴射される際に混合される。任意の時点で材料供給装置から放出される第1及び第2の金属の相対量は、例えば手動で、又はコンピュータによって、制御することができる。いくつかの実施形態では、コールドスプレー製造装置は少なくとも2つの材料供給装置を有し、材料供給装置のうちの少なくとも1つは、第1及び第2の金属の両方を収容する。複数の材料供給装置を利用するこれらの実施形態では、任意の時点で各材料供給装置から放出される第1及び第2の金属の相対量を、例えば手動で、又はコンピュータプログラムによって、制御することができる。これにより、コールドスプレー法を使用して、コンピュータプログラムを変更するだけで、電気接点のサイズ、設計、組成比、又は成分を迅速に切り替えることができる。例えば、3つ以上のプログラム可能な粉末供給装置を使用して、銅-クロムから銅-炭化クロムへ、銅-タングステンへ、又は他の材料へ、組成を迅速に切り替えることが可能である。図9は、銅及びクロム(例えば75%Cu/25%Cr)からなる上部領域26と、例えばC10100合金などの銅のみからなる下部領域25とを有する、コールドスプレー法によって作製された積層電気接点24の図を示している。
【0024】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの材料供給装置から放出された固体金属は、コールドスプレーシステムノズルを通って基板に向かって噴射される。例えばデラバルノズルなど、任意の適切なノズルを使用することができる。ノズルは、コールドスプレーアディティブマニュファクチャリング装置における任意の適切な位置に配置することができる。ノズルに対する少なくとも1つの材料供給装置の位置は、放出された第1及び第2の金属が基板に向かって噴射される圧力に影響を与える。したがって、放出された第1及び第2の金属が基板に向かって噴射される圧力は、コールドスプレー製造装置における少なくとも1つの材料供給装置の位置の選択によって制御することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの材料供給装置は、ノズルの上流に位置する。一般に、ノズルの上流で金属を放出することにより、コールドスプレーシステムによって達成可能な速度を最大限に利用して、非常に高い速度で金属を噴射させることが可能になる。いくつかの実施形態では、金属は、800~1000m/秒の非常に高い速度で基板上に噴射される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの材料供給装置はノズルに配置されており、したがって材料供給装置の内容物がノズル内に直接放出される。一般に、ノズル内に金属を放出する場合、金属がノズルの上流で放出されるシステムの場合よりも、噴射される金属の速度が低下する。いくつかの実施形態では、金属は、500~800m/秒の高速で基板上に噴射される。いくつかの実施形態では、金属はノズルの下流でコールドスプレーシステム内に放出される。一般に、金属がノズルの下流で放出される場合、金属がノズルの上流で放出されるシステム又はノズル内に直接放出されるシステムよりも、噴射される金属の速度が更に低下する。
【0025】
コールドスプレーノズルは、特定の構造を有する金属接点を製造するように操作することができる。例えば、いくつかの実施形態では、特定のサイズ、寸法、構造、又は設計を有する電気接点を再現可能に構築することができるプログラムされたパターンを通じてノズルを掃引するように、ロボット又はコンピュータ数値制御(Computer Numerical Control、CNC)システムをプログラムすることができる。
【0026】
図10及び図11は、電気接点を作製するコールドスプレーアディティブマニュファクチャリング装置の例示的な実施形態を示している。本開示の主題は、異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。図10に示したように、いくつかの実施形態では、電気接点は、例えばVRC Gen III(商標)High Pressure Cold Spray System(米国SD州Box Elderに所在するVRC Metal Systems,LLC社製)などの高圧システムであるコールドスプレー装置30を使用して作製される。コールドスプレー装置30は、粉末形態の第1及び第2の金属32の混合物を収容する材料供給装置31を有する。材料供給装置31は、第1及び第2の金属32を、デラバル収束発散ノズル34の上流に位置する供給ライン33内に放出するように動作する。圧縮ガス容器35は、供給ライン33に圧縮ガスを放出し、放出された第1及び第2の金属32をノズル34の近位端36に噴射させる。例えばヘリウム又は窒素などの圧縮ガスは、例えば800~1000m/秒などの非常に高い速度で固体金属粉末を放出することができる。圧縮ガス容器35はまた、ガスヒーター42の近位端40に通じる加熱ライン39内に圧縮ガスを放出する。圧縮ガスの温度は、ガスがヒーター42を通過するにつれて上昇する。ガスヒーター42の遠位端41から出るガスは、第1及び第2の金属32の溶融温度より低い温度を有する。加熱された圧縮ガスは、ヒーター42の遠位端41から出て、ノズル34の近位端36に通じる加熱ガス供給ライン43を通る。加熱された圧縮ガスは、ノズル34に入る金属32の温度を、第1及び第2の金属の溶融温度より低い温度まで上昇させる。金属32は、ノズル34のスロート38を通過する際に固体状態のままであり、金属32の流れ44は、基板45の表面上に非常に高速で噴射され、基板45に蓄積し、電気接点となるように成長する材料柱46を形成する。
【0027】
図11に示したように、いくつかの実施形態では、電気接点は、例えばCenterline SST(商標)マシン(カナダ、オンタリオ州に所在するCenterline LTD社製)などの低圧コールドスプレーシステムであるコールドスプレー装置30を使用して作製される。コールドスプレーシステム30は、第1及び第2の金属32の混合物である粉末を収容する材料供給装置31を有する。材料供給装置31は、第1及び第2の金属32を、デラバル収束発散ノズル34内、ノズルスロートの下流に放出するように動作する。コンプレッサー47は、例えば圧縮空気などの圧縮ガスを、ガスヒーター42の近位端40に通じる加熱ライン39内に放出する。圧縮ガスの温度は、ガスがヒーター42を通過するにつれて上昇する。ガスヒーター42の遠位端41から出るガスは、第1及び第2の固体金属32の溶融温度より低い温度を有する。加熱された圧縮ガスは、ヒーター42の遠位端41から出て、ノズル34の近位端36に通じる加熱ガス供給ライン43を通る。加熱されたガスは、ノズル34のスロート38を通過し、放出された金属32に遭遇し、ノズル34内の金属32の温度を、第1及び第2の固体金属の溶融温度より低い温度まで上昇させ、したがって固体状態のままにする。加熱されたガスにより、固体金属32の流れ44が、ノズル34の遠位端37から、500~800メートル/秒の高速で基板45の表面上に噴射され、表面に固体金属が蓄積し、成長して電気接点になる材料柱46を形成する。固体金属32の放出位置がノズルスロート38の下流にあるため、固体金属32はコールドスプレーシステム30の最大速度能力に達しない。したがって、この実施形態では、噴射される金属32の速度は、金属がノズル34の上流に供給される場合に達成可能な速度よりも低い。
【0028】
場合によっては、第2の金属などの非常に硬い材料をコールドスプレーすることは、硬い粒子が基板から跳ね返る傾向があるため、材料柱内での硬質粒子の保持が不十分であるという欠点がある。不十分な保持を補うために、いくつかの実施形態では、基板上に堆積される第2の金属の量を増やして、電気接点における所望の最終的な割合を得る。例えば、75/25の銅-クロムの混合物では、堆積物中に25%のクロムを得るために、クロムの堆積量を例えば40%に増加させることができる。単一の材料供給装置を使用できる場合、材料柱の中の第2の金属の所望の含有量を達成するために、出発混合物の組成は、より高い第2の金属の含有量を有することができる。2つ以上の材料供給装置が使用される場合、材料柱の中の第2の金属の所望の含有量を得るために、第1及び第2の金属の供給比を調整するように材料供給装置をプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、第2の金属の保持の問題は、軟質外側金属で被覆又は電気めっきされた第2の固体金属粒子を使用することによって対処することができる。例えば、銅被覆タングステン粉末を使用することができる。
【0029】
有利なことに、コールドスプレー法を使用して電気接点を作製するのに必要な時間は、従来の金属粉末焼結法に必要な時間よりも大幅に短い。いくつかの実施形態では、電気接点は、2分~25分の時間内にコールドスプレーアディティブマニュファクチャリングによって形成される。
【0030】
マルチマテリアル・アディティブマニュファクチャリングにおけるコールドスプレーの更なる大きな利点は、粉末粒子又は基板の溶融がないことである。コールドスプレーされた材料の接合は固体状態で達成され、粉末粒子は基板との衝突時に固相結合を形成する。第1の金属及び第2の金属(例えば銅及びクロム)のような2材料系が選択され、これら2つの材料がほとんど非混和性である場合、これらの材料の融接は極めて困難である。材料は、溶融した溶接溜まり(molten weld puddle)において分離する。これはしばしば亀裂をもたらす。2つの材料の溶融温度の違いも、溶接プロセスを困難にする。したがって、直接エネルギー堆積法(Direct Energy Deposition、DED)レーザークラッディング及びレーザー粉末床溶融結合法(Laser Powder Bed Fusion)は、溶融温度が大きく異なる非混和性材料には適切な選択肢ではない。一方、コールドスプレーは、非常に異なる材料を堆積する際に良好に機能する。
【0031】
いくつかの実施形態では、電気接点は、摩擦攪拌アディティブマニュファクチャリングプロセスによって作製される。摩擦攪拌プロセスは、回転ツールによって引き起こされる摩擦力を利用して金属を軟化させ、溶融することなく強力な固相結合によって金属を互いに接合する。回転ツールは、接合された金属を基板上に堆積させる。例えば金属基板など、任意の適切な基板を使用することができる。
【0032】
図12は、摩擦攪拌アディティブ装置によって形成される電気接点の例示的な実施形態を示している。本開示の主題は、異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。図12に示したように、この実施形態では、摩擦攪拌アディティブ装置50は、近位端49に入口48を有し、遠位端52に出口51を有する材料供給装置31を含む回転ツールである。材料供給装置31は、第1及び第2の金属32を受け入れるように構成されたレシーバ54を画定する中空の回転可能なショルダー53を含む。材料供給装置31は、固体状態の第1及び第2の金属32の供給物55を、材料供給装置31の出口51から基板45の表面上に放出するように動作する。材料供給装置31の動作は、材料供給装置31の近位端49において、レシーバ54内に存在する第1及び第2の材料32に圧力を加えることを含み、一方、レシーバ54内の第1及び第2の固体金属32の周りを回転しているショルダー53は、基板45の表面に押し付けられ、基板45をその鍛造温度まで摩擦加熱させる。加熱された基板45は、材料供給装置31の遠位端52の近傍に位置する第1及び第2の固体金属32を熱的に軟化させるが、金属32は、第1及び第2の金属それぞれの溶融温度より低い温度を維持し、したがって固体状態のままである。材料供給装置31は、熱的に軟化した固体金属32内に軽く押し込まれ、経路に沿って前進し、軟化した固体金属32の層56を堆積させる。材料供給装置31を経路に沿って複数回通過させ、軟化した固体金属32の追加の層56を堆積させ、材料柱46を形成させる。このプロセスにより、放出された金属32間に固相結合が形成される。材料柱46の溶融温度は、金属32の溶融温度より低く維持される。堆積は、材料柱46の所望の高さに達するまで継続され、電気接点が得られる。したがって、摩擦攪拌アディティブプロセスは、溶融することなく金属を接合することを可能にする。溶融しないことは、第1及び第2の金属が溶液になり、その後再沈殿する機会があるため有利である。レーザークラッディングのような従来の方法では、不利なことに溶融を使用するため、粒子径、気孔率、クラックが劇的に変化しやすい。摩擦攪拌アディティブマニュファクチャリングは、これらの問題の少なくとも1つが解消する電気接点の製造を可能にする。
【0033】
第1及び第2の金属は、摩擦攪拌アディティブ装置のレシーバに適合することができる任意の適切な形態とすることができる。いくつかの実施形態では、第1又は第2の金属の少なくとも一方は、粉末、チップ、ワイヤ、固形バー、ロッド、金属スクラップ、又は金属ペレットの形態である。第1の固体金属及び第2の固体金属は、同じ形態又は異なる形態であってよい。いくつかの実施形態では、第1の金属又は第2の金属のいずれかは、粉末の形態である。いくつかの実施形態では、溶加材が、第1及び第2の金属とともに摩擦攪拌アディティブ装置のレシーバに供給される。酸化アルミニウム、クロム、タングステン、モリブデン、バナジウム、例えば炭化クロム、炭化モリブデン、炭化タングステン、炭化バナジウムなどの炭化物、又はこれらの組合せなど、任意の適切な溶加材を使用することができる。
【0034】
任意の所与の時間に基板上に堆積される第1及び第2の金属の量は、任意の適切な方法、例えば、材料供給装置の内容物を調整することによって、又は複数の材料供給装置を使用することによって、制御することができる。いくつかの実施形態では、摩擦攪拌アディティブ装置は単一の供給装置を有する。単一の材料供給装置の内容物は経時的に変化させることができる。いつでも、材料供給装置は、第1の金属のみ、第2の金属のみ、又は第1及び第2の金属の両方を収容することができる。同じ材料供給装置内に配置される組み合わされた第1及び第2の金属の相対量は、一定に維持することができる、又は経時的に変化させることができる。いくつかの実施形態では、摩擦攪拌アディティブ装置を使用して、約75重量%の第1の金属及び約25重量%の第2の金属を含有する電気接点を作製する。例えば、電気接点は、75重量%の銅及び25重量%のクロムを含有することができる。クロム及び銅は、材料供給装置を通して供給される固定組成(75%Cu/25%Cr)混合物として一緒にブレンドすることができる。いくつかの実施形態では、コールドスプレー製造装置は、第1の材料供給装置、第2の材料供給装置、及び任意選択で追加の供給装置を有する。第1の材料供給装置は、第1の金属を収容し、第1の金属の供給物を放出するように動作することができる。第2の材料供給装置は第2の金属を収容し、第2の金属の供給物を放出するように動作することができる。任意の時点で材料供給装置から放出される第1及び第2の金属の相対量は、例えば手動で、又はコンピュータによって、制御することができる。いくつかの実施形態では、摩擦攪拌アディティブ装置は少なくとも2つの材料供給装置を有し、材料供給装置の少なくとも1つは第1及び第2の金属の両方を収容する。複数の材料供給装置を利用するこれらの実施形態では、任意の時点で各材料供給装置から放出される第1及び第2の金属の相対量を、例えば手動で、又はコンピュータプログラムによって、制御することができる。これにより、コンピュータプログラムを変更するだけで、摩擦攪拌法を使用して電気接点のサイズ、設計、組成比、又は成分を迅速に切り替えることができる。例えば、3つ以上のプログラム可能な粉末供給装置を使用して、例えば銅-クロムから銅-炭化クロムへ、銅-タングステンへ、又は他の材料へ、組成を迅速に切り替えることが可能である。図13は、摩擦攪拌アディティブプロセスによって作製された、銅21及びクロム22を含有する電気接点ディスクの横断面の走査型電子顕微鏡画像(100倍)を示している。
【0035】
いくつかの実施形態では、摩擦攪拌アディティブ装置を使用して、傾斜機能性の柱である材料柱を作製する。傾斜機能は、基板上に堆積される第1及び第2の固体金属の相対量を経時的に変化させることによって作成される。この結果、柱の高さの範囲内で徐々に又は段階的に組成が変化することを特徴とする材料柱が形成され、柱の異なる高さにおける特性が対応して変化する。例えば、75%の第1の固体金属/25%の第2の固体金属(例えば75%Cu/25%Cr)のいくつかの層を基板上に堆積させることができ、その後、組成比を、より高い第1の固体金属含有量、例えば95%の第1の固体金属/5%の第2の固体金属(例えば95%Cu/5%Cr)に切り替えることができる。材料柱が所望の電気接点高さに近づくにつれて、組成を、75%の第1の固体金属/25%の第2の固体金属(例えば75%Cu/25%Cr)に戻すことができる。これにより、高い導電性及び耐アーク腐食性、並びに耐溶着性を提供する外側部分と、高い導電性を提供する中間部分とを有する、傾斜機能性の電気接点が得られる。
【0036】
有利なことに、摩擦攪拌法を使用して電気接点を作製するのに必要な時間は、従来の金属粉末焼結法の場合に必要な時間よりも著しく短い。いくつかの実施形態では、電気接点は、摩擦攪拌アディティブマニュファクチャリングによって1時間未満の時間内に形成される。
【0037】
摩擦攪拌アディティブ法は、特定の構造を有する電気接点を製造するために使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、特定のサイズ、寸法、構造、又は設計を有する電気接点を再現可能に構築することができるプログラムされたパターンを通じて材料供給装置を掃引するように、ロボット又はコンピュータ数値制御(CNC)システムをプログラムすることができる。
【0038】
開示された方法は、電気接点を作製する方法の間にいつでも様々な調整を行うことができ、所望の組成、特性、又は形状のうちの少なくとも1つを有する接点を作成することを可能にするため、同じ又は異なる特性を有する複数の電気接点の再現可能な製造を可能にする。したがって、特定の特性を有するカスタム電気接点に容易かつ迅速に対応することができる。本開示の方法によって作製した後、電気接点を様々な形状又はデザインに仕上げる、又は形成することができる。例えば図14は、コールドスプレー法によって形成された未完成の電気接点24を示しており、図15は、摩擦攪拌法によって形成された未完成の電気接点24を示している。図16は、図14又は図15の電気接点から、フック状の十字パターンに切断された完成した接点24を示している。デザインは、例えば、ウォータージェット切断、レーザー、機械加工、又はプレスなどの任意の適切な方法によって電気接点に切断することができる。図17は、アルミニウム基板上に窒素ガスを使用して矩形形状に堆積させた後、円形ディスク形状にウォータージェット切断した銅-クロム電気接点24を示している。電気接点はアルミニウム基板45上に載っている。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態では、第2の固体金属は、例えば幾何学的パターンなどのパターンにおいて電気接点内に分布させることができる。パターンは、電気接点の特定の領域内に、又は接点の厚さ全体にわたって、又はその両方で発生することができる。例えば、図18及び図19は、電気接点24において、第1の固体金属57のマトリックス中にそれぞれクロスハッチパターン及び螺旋パターンにおいて配置された第2の固体金属58の図を示している。第2の固体金属58の経路は、特定の電気接点24の設計によって決定される。例えば、図16は、開示された方法によって作製された、L字型スロット59を有するフック状の十字パターンの接点24を示している。この設計では、円弧が回転し、スロットの方向に半径方向外向きに押し出される。
【0040】
特定の比率の固体金属を電気接点の特定の領域に堆積させることができる。いくつかの実施形態では、以下、すなわち、第2の固体金属の体積又は重量に対する第1の固体金属の体積又は重量の比、第2の固体金属の平均粒径に対する第1の固体金属の平均粒径の比、又は、第1の固体金属の種類又は第2の固体状態の金属の種類のうちの少なくとも1つが、本方法の間に少なくとも1回変更される。いくつかの実施形態では、材料供給装置のうちの少なくとも1つの中の固体金属の組成が、本方法の間に少なくとも1回変更される。これらのパラメータは、任意の適切な方法によって、例えば手動で、又はコンピュータプログラムによって、制御することができる。
【0041】
電気接点、及び電気接点を作製する方法の異なる実施形態が記載されているが、当業者は、1つの実施形態の特徴のいずれも別の実施形態に組み込むことができることを理解するであろう。実施形態のいずれかに記載された特徴又はステップの任意の組合せは、電気接点及び電気接点を作製する方法に含まれることができ、本発明の範囲内である。
【0042】
本開示の主題の様々な詳細は、本開示の主題の範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されるであろう。更に、前述の説明は、例示のみを目的とするものであり、限定を目的とするものではない。
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【国際調査報告】