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特表2024-514852サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240327BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20240327BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08J5/04 CER
C08J5/04 CEZ
D06M15/55
D06M15/59
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562274
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 US2022023982
(87)【国際公開番号】W WO2022217032
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/172,970
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523382111
【氏名又は名称】ゾルテック カンパニーズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】モーリス ゲリ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド マイケル コービン
【テーマコード(参考)】
4F072
4L033
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB10
4F072AC05
4F072AC08
4F072AD04
4F072AD05
4F072AD06
4F072AD08
4F072AD13
4F072AD23
4F072AD38
4F072AD43
4F072AD44
4F072AG06
4F072AH03
4F072AH25
4F072AK06
4F072AK14
4F072AL02
4F072AL07
4F072AL11
4L033AA09
4L033AB01
4L033AB03
4L033AC11
4L033CA49
4L033CA55
(57)【要約】
維強化複合材料に使用するためのサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維トウを製造する方法であって、繊維を提供する工程と、繊維の少なくとも一部をサイジングスラリーと接触させて、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維トウを形成する工程とを含み、サイジングスラリーは、サイジングスラリーの総質量を基準として、溶媒中に0.1~25質量%のサイズ剤及び20~80質量%のマトリックス樹脂粉末を含み、サイジングスラリーのサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量は30質量%超である、方法。この方法は、さらに、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維をマトリックス樹脂粉末の融点未満の温度で乾燥させ、それにより乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を形成すること、及び乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維をスプールに巻き取ることを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合材料に使用するためのサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維トウを製造する方法であって、
a)炭素繊維を提供する工程;
b)前記繊維の少なくとも一部をサイジングスラリーと接触させて、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を形成する工程であって、前記サイジングスラリーのサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量が30質量%超であるように、前記サイジングスラリーは、溶媒中に0.1~25質量%のサイズ剤及び20~80質量%のマトリックス樹脂粉末を含む工程、ここで、質量%での上記量は前記サイジングスラリーの総量を基準とする;
c)前記サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を前記マトリックス樹脂粉末の融点未満の温度で乾燥させ、それにより乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を形成する工程;及び
d)前記乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維をスプールに巻き取る工程。
【請求項2】
前記方法が、前記繊維の少なくとも一部を前記サイジングスラリーと接触させる工程の前に、工程(i)~(iv)をさらに含む連続プロセスである、請求項1に記載の方法:
(i)前駆体繊維を200~300℃の範囲内の温度で安定化させて、安定化前駆体繊維を形成する工程;
(ii)前記安定化前駆体繊維を1000~1500℃の範囲内の温度で炭化させて、炭化繊維を形成する工程;
(iii)前記炭化繊維を2000~3000℃の範囲内の温度で黒鉛化させて、炭素繊維を形成する工程;及び
(iv)任意選択的に、前記炭素繊維の表面の少なくとも一部を処理する工程。
【請求項3】
前記乾燥工程が、前記乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維の総量を基準として21質量%超且つ80質量%未満のサイズ剤及びマトリックス樹脂を有する前記乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を提供する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記接触工程が、1~500μmの範囲内の平均粒径を有する前記マトリックス樹脂粉末を含む前記サイジングスラリーを提供することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接触工程が、エポキシ、フェノキシ、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ビニルエステル、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シラングラフト化ポリビニルアルコール、及びシラングラフト化エチレンビニルアルコールコポリマー、シラングラフト化ポリビニルアルコール、シラングラフト化エチレン/ビニルアルコールコポリマーなどのうちの少なくとも1種を含む前記サイジング剤を含む前記サイジングスラリーを提供することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
接触工程が、熱硬化性(コ)ポリマー、熱可塑性(コ)ポリマー、又はそれらのアロイ及びブレンドである前記マトリックス樹脂粉末を含む前記サイジングスラリーを提供する工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
接触工程が、エポキシ、ビニルエステルポリエステル、ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリウレタン、又はそれらの混合物を含む前記熱硬化性(コ)ポリマーを含む前記サイジングスラリーを提供することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
接触工程が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド-6、ポリアミド-66、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリアミド-46、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテル-ケトン-ケトン、ポリエーテル-エーテル-ケトン、又はそれらの混合物を含む前記熱可塑性(コ)ポリマーを含む前記サイジングスラリーを提供することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維に追加のマトリックス樹脂を含浸せずに、前記乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を成形することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法により製造された繊維強化複合材料。
【請求項11】
サイジングスラリーのサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量が30質量%を超えるように、溶媒中に、0.1~25質量%のサイズ剤及び20~80質量%のマトリックス樹脂粉末(質量%での上記量は前記サイジングスラリーの総量を基準とする)を含むサイジングスラリー。
【請求項12】
以下を含む、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維:
(i)炭素繊維、
(ii)前記繊維の少なくとも一部に配置されたサイズ剤、及び
(iii)前記繊維の少なくとも一部に配置され、前記サイズ剤に付着したマトリックス樹脂、
ここで、前記サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維は、前記サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維の総質量を基準として21質量%超且つ80質量%未満のサイズ剤及びマトリックス樹脂を有する。
【請求項13】
以下の工程を含む、炭素繊維強化複合材料に使用するためのサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維トウを製造する連続方法:
a)ポリアクリロニトリル(PAN)繊維のスプールを巻き戻す工程;
b)前記PAN繊維を200~300℃の範囲内の温度で安定化させて、安定化PAN繊維を形成する工程;
c)前記安定化PAN繊維を1000~1500℃の範囲内の温度で炭化させて、炭化繊維を形成する工程;
d)前記炭化繊維を2000~3000℃の範囲内の温度で黒鉛化させて、炭素繊維を形成する工程;
e)前記炭素繊維の表面の少なくとも一部を処理する工程;
f)前記繊維の少なくとも一部をサイジングスラリーと接触させて、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を形成する工程であって、前記サイジングスラリーのサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量が30質量%超であるように、前記サイジングスラリーは、溶媒中に0.1~25質量%のサイズ剤及び20~80質量%のマトリックス樹脂粉末を含む工程、ここで、質量%での上記量は前記サイジングスラリーの総量を基準とする;
g)前記サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維を、樹脂の融点より低い温度で乾燥させ、それによって乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維を形成する工程;
h)前記乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維をスプールに巻き取る工程。
【請求項14】
前記乾燥工程が、前記乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維の総量を基準として21質量%超且つ80質量%未満のサイズ剤及びマトリックス樹脂を有する乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を提供する、請求項13に記載の連続方法。
【請求項15】
前記乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維に追加のマトリックス樹脂を含浸せずに、前記乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を成形することをさらに含む、請求項13に記載の連続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年4月9日に出願された米国仮出願第63/172,970号の優先権を主張し、その開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全内容が本明細書に援用される。
発明の分野
【0002】
本開示は、概して、繊維強化複合材料に使用するためのサイジング(糊付け)され且つ樹脂で被覆された繊維、及びかかる繊維トウの製造方法に関する。本開示は、概して、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維の製造に使用するためのサイジング組成物にも関する。
【背景技術】
【0003】
繊維強化複合材料は、過去数十年にわたって開発され、強化繊維と熱可塑性又は熱硬化性ポリマーとを組み合わせることによって、質量を維持又は低減しつつ機械的特性を最大限に高めるために多くの産業で使用されている。
【0004】
しかしながら、製造の全コストを減らすために、より少ない工程で製造する方法が求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様には、繊維強化複合材料に使用するためのサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維トウを製造する方法がある。この方法は、炭素繊維を提供する工程と、繊維の少なくとも一部をサイジングスラリーと接触させて、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を形成する工程とを含み、サイジングスラリーのサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量が30質量%超であるように、サイジングスラリーは、溶媒中に0.1~25質量%のサイズ剤及び20~80質量%のマトリックス樹脂粉末を含む。ここで、質量%での上記量はサイジングスラリーの総量を基準とする。本方法は、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維をマトリックス樹脂粉末の融点未満の温度で乾燥させ、それにより乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を形成すること、及び乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維をスプールに巻き取ることも含む。
【0006】
一態様において、この方法は、繊維の少なくとも一部をサイジングスラリーと接触させる工程の前に、工程(i)~(iv)をさらに含む連続プロセスである:
(i)前駆体繊維を200~300℃の範囲内の温度で安定化させて、安定化前駆体繊維を形成する工程;
(ii)安定化前駆体繊維を1000~1500℃の範囲内の温度で炭化させて、炭化繊維を形成する;
(iii)炭化繊維を2000~3000℃の範囲内の温度で黒鉛化させて、炭素繊維を形成する工程;及び
(iv)任意選択的に、炭素繊維の表面の少なくとも一部を処理する工程。
【0007】
一実施形態において、乾燥工程は、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維の総量を基準として21質量%超且つ80質量%未満のサイズ剤及びマトリックス樹脂を有する、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を提供する。
【0008】
別の実施形態では、接触工程は、1~500μmの範囲内の平均粒径を有するマトリックス樹脂粉末を含むサイジングスラリーを提供することを含む。別の実施形態では、接触工程は、エポキシ、フェノキシ、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ビニルエステル、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シラングラフト化ポリビニルアルコール及びシラングラフト化エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シラングラフト化ポリビニルアルコール、シラングラフト化エチレン/ビニルアルコールコポリマーなどのうちの少なくとも1種を含むサイズ剤を含むサイジングスラリーを提供することを含む。
【0009】
一態様において、接触工程は、熱硬化性(コ)ポリマー、熱可塑性(コ)ポリマー、又はそれらの合金及びブレンドであるマトリックス樹脂粉末を含むサイジングスラリーを提供することを含む。一実施形態では、接触工程は、エポキシ、ビニルエステルポリエステル、ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリウレタン、又はこれらの混合物を含む熱硬化性(コ)ポリマーを含むサイジングスラリーを提供することを含む。別の実施形態では、接触工程は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド-6、ポリアミド-66、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリアミド-46、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテル-ケトン-ケトン、ポリエーテル-エーテル-ケトン、又はこれらの混合物を含む熱可塑性(コ)ポリマーを含むサイジングスラリーを提供することを含む。
【0010】
本発明の一態様において、この方法は、さらに、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維に追加のマトリックス樹脂を含浸せずに成形することを含む。
【0011】
さらに別の態様には、本明細書に開示したとおりの方法によって製造された繊維強化複合材料がある。
【0012】
一態様において、サイジングスラリーのサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量が30質量%超であるように、溶媒中に0.1~25質量%のサイズ剤と20~80質量%のマトリックス樹脂粉末とを含むサイジングスラリーがある。ここで、質量%での上記量はサイジングスラリーの総量を基準とする。
【0013】
別の態様において、以下を含むサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維がある:
(i)炭素繊維、
(ii)繊維の少なくとも一部に配置されたサイズ剤、及び
(iii)繊維の少なくとも一部に配置され、サイズ剤に付着したマトリックス樹脂、
ここで、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維は、当該サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維の総質量を基準として21質量%超且つ80質量%未満のサイズ剤及びマトリックス樹脂を有する。
【0014】
一態様では、炭素繊維強化複合材料に使用するためのサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維トウを製造する連続方法があり、この方法は以下の工程を含む:
a)ポリアクリロニトリル(PAN)繊維のスプールを巻き戻す工程;
b)PAN繊維を200~300℃の範囲内の温度で安定化させて、安定化PAN繊維を形成する工程;
c)安定化PAN繊維を1000~1500℃の範囲内の温度で炭化させて、炭化繊維を形成する工程;
d)炭化繊維を2000~3000℃の範囲内の温度で黒鉛化させて、炭素繊維を形成する工程;
e)炭素繊維の表面の少なくとも一部を処理する工程;
f)繊維の少なくとも一部をサイジングスラリーと接触させて、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を形成する工程であって、サイジングスラリーのサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量が30質量%超であるように、サイジングスラリーは、溶媒中に0.1~25質量%のサイズ剤及び20~80質量%のマトリックス樹脂粉末を含む工程、ここで、質量%での上記量はサイジングスラリーの総量を基準とする;
g)サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維を、樹脂の融点未満の温度で乾燥させ、それによって乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維を形成する工程;及び
h)乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維をスプールに巻き取る工程。
【0015】
この連続方法の一態様では、乾燥工程は、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維の総量を基準として21質量%超且つ80質量%未満のサイズ剤及びマトリックス樹脂を有する乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維を提供する。
【0016】
別の態様において、上記連続方法は、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維に追加のマトリックス樹脂を含浸せずに、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を成形することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に従う、繊維強化複合材料に使用するためのサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を製造するプロセスを概略的に示す。
【0018】
図2図2は、本発明の実施形態に従う、成形された繊維強化複合材料の製造に使用するための、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維を製造する連続プロセスを概略的に示す。
【0019】
図3図3は、本発明の実施形態に従う、繊維強化複合材料に使用するためのサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維を製造する別の連続プロセスを概略的に示す。
【0020】
図4図4は、本発明の実施形態に従って、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維に追加のマトリックス樹脂を含浸せずに、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維から直接に成形炭素繊維強化複合材料を製造する工程を概略的に示す。
【0021】
図5図5は、本発明の実施形態に従う、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維のスプールの写真を示す。
【0022】
図6図6は、本発明の実施形態に従う、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
炭素繊維は、機械的特性及び軽量化を最大限に高める最良の方法の一つである。炭素繊維は、典型的には、例えば、以下のように、引張弾性率に従って分類される:
- 低弾性率(<200GPa)
- 標準弾性率(~230GPa)
- 中弾性率(~300GPa)
- 高弾性率(>350GPa)
- 超高弾性率(600GPa以上)
【0024】
他の繊維、例えば、玄武岩、石英、アルミナ、炭化ケイ素、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド、アクリルなどの繊維も、そのような能力で使用することができる。例えば、麻、ジュートなどの多くの天然繊維も、「グリーン(環境に優しい)」強化プラスチック複合材料の製造に使用できる。しかしながら、強化材として使用される繊維の種類にかかわらず、製造プロセス中に繊維を保護し、繊維とプラスチックマトリックス樹脂との間の結合を強化するために、繊維上のサイズ剤又はバインダーが一般的に必要とされる。
【0025】
一般的に、繊維強化複合材料の製造プロセスは、サイジングされた繊維を製造するサイジング工程を含む繊維製造、ポリマー製造、サイジングされた繊維のシート又は布に樹脂を含浸させてプリプレグと呼ばれる中間製品を形成することを含む。これらのプリプレグは、その後、さらなる樹脂を加えずに所望の形状に成形される。このプロセスは、塗装、トリミング、機械加工及び結合などの成形後の工程を含んでもよく、これらに限定されない。インフュージョンなどのいくつかのプロセスは、含浸の工程と成形の工程を1つの工程にまとめることができる。
【0026】
繊維は、繊維強化複合材料の製造に使用する前に、一般的に紡糸仕上げ剤、バインダー又はサイズ剤と呼ばれる処理剤をしばしば必要とする。紡織繊維の場合、紡糸仕上げ剤の目的は、表面潤滑性、帯電防止性、色素親和性、湿潤性又は濡れ防止性、及び耐摩耗性を付与することである。紡織繊維がプラスチック強化に使用される場合、紡糸仕上げ剤又はバインダーは、強化されるプラスチックとの相溶性を高めるために樹脂分散体を含むことがある。プラスチック強化に使用される無機繊維の場合、バインダーやサイズ剤は、表面潤滑性、帯電防止性、湿潤性、酸化防止性、耐摩耗性、樹脂結合性、相溶性を提供する。この原則は、植物由来の天然繊維にも適用される。
【0027】
本明細書で使用する場合、「繊維(fiber)」及び「複数の繊維(fibers)」という用語は、複数の連続繊維、ナノチューブ(1又は2以上)、マイクロファイバー(1又は2以上)、及びナノファイバー(1又は2以上)を包含する。
【0028】
本発明によるサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維を形成するために使用することのできる好適な繊維としては、炭素繊維が挙げられるが、これらに限定されない。炭素繊維は、当該技術分野で知られている任意のクラス、タイプ又はグレードのものであることができる。本発明によるサイジングされた補強フィラーを形成するために使用することのできる炭素繊維のグレードの例としては、低弾性率炭素繊維、標準弾性率炭素繊維、中弾性率炭素繊維、高弾性率炭素繊維及び超高弾性率炭素繊維が挙げられるが、これらに限定されない。本発明によるサイジングされた補強フィラーを形成するために使用され得る炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)又はピッチのいずれかから誘導されたものであることができる。
【0029】
本発明の一態様において、本開示は、図1に示すように、繊維強化複合材料に使用するためのサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維トウを製造する方法を提供する。方法100は、繊維110を提供する工程と、繊維110の少なくとも一部をサイジングスラリー120と接触させて、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維130を形成する工程と、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維130をマトリックス樹脂粉末の融点未満の温度で乾燥140させ、それにより乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維150を形成する工程と、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維150をスプール、ボビン、トウ、又はロービングに巻き取る工程とを含む。
【0030】
繊維110の少なくとも一部をサイジングスラリー120と接触させる工程は、サイズ剤及び溶媒を含むサイジング組成物にマトリックス樹脂粉末を加え、マトリックス樹脂粉末を懸濁状態に保ち、マトリックス樹脂粉末の沈降を防止するためにスラリー撹拌機により混合することによって、サイジングスラリー120を現場(in-situ)で形成することを含む。サイジングスラリー120は、サイジングスラリーの総質量を基準として、0.1~25質量%、もしくは0.5~20質量%、又は1~15質量%のサイズ剤と、20~80質量%、もしくは25~75質量%、又は30~70質量%のマトリックス樹脂粉末とを溶媒に含むことができる。サイジングスラリー120のサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量は、サイジングスラリーの総質量を基準として、30質量%超、もしくは35質量%超、もしくは40質量%超、もしくは45質量%超、もしくは50質量%超、又は55質量%超である。一実施形態では、マトリックス樹脂粉末は、サイジングスラリーの総質量を基準として、30~80質量%、もしくは35~70質量%、又は40~60質量%の範囲内の量で存在する。従来、サイズ剤の量はサイジングスラリー中のマトリックス樹脂粉末よりも少なかったが、これは、繊維強化複合材料中の円筒形の炭素繊維フィラメントの間の空隙を満たすために最低30質量%の量のマトリックス樹脂が必要であるためである。任意の適切な溶媒を使用することができる。一実施形態では、溶媒は水を含む。別の実施形態では、溶媒は、水と、例えばエタノールなどの少なくとも1種の水混和性溶媒を含む。一実施形態では、溶媒は、水中10体積%のエタノールからなる。さらに別の実施形態では、溶媒は水からなる。溶媒は、任意の適切な量で、例えば、サイジングスラリーの総質量を基準として、15~70質量%、もしくは19~60質量%、20~55質量%の範囲内などで存在することができる。
【0031】
典型的には、サイズ剤は、化合物、オリゴマー及び/又はポリマーのうちの1つ以上であることができる。一般的に、サイズ剤は、炭素繊維上に皮膜を形成することによって、炭素繊維強化複合材料を形成する際に、炭素繊維の最適な加工/取り扱い性を提供し、マトリックス樹脂との相溶性を高める。一方、本発明のサイジングスラリー中にマトリックス樹脂粉末として使用されるポリマーは、炭素繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として機能することを意図したものである。
【0032】
本発明の一態様において、サイズ剤は、エポキシ、フェノキシ、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ビニルエステル、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シラングラフト化ポリビニルアルコール及びシラングラフト化エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シラングラフト化ポリビニルアルコール、シラングラフト化エチレン/ビニルアルコールコポリマーなどのうちの少なくとも1種を含む。
【0033】
本発明によるマトリックス樹脂粉末は、当該技術分野で知られている任意の適切な熱硬化性(コ)ポリマー及び/又は熱可塑性(コ)ポリマーであることができる。一実施形態では、マトリックス樹脂粉末は、1~500μm、もしくは10~300μm、又は20~250μmの範囲内の平均粒径を有する。
【0034】
かかる熱硬化性(コ)ポリマーの例としては、エポキシ、ビニルエステルポリエステル、ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリウレタン、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。最も一般的に使用される熱硬化性マトリックス樹脂粉末の例としては、不飽和ポリエステル、エポキシ、ビニルエステル、フェノール系樹脂、及び熱硬化性ポリウレタンなどが挙げられるが、これらに限定されない。ポリイミド、ビスマレイミド(BMI)、ベンゾオキサジン、及びシリコーンなどのエキゾチック樹脂(exotic resins)も使用されるが、それらの高いコストのために市場占有率は非常に低い。かかるマトリックス樹脂に対して繊維をサイジングするために一般的に使用されるサイズ剤としては、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル-エチレン、ビニルエステル、エポキシ、フェノキシ、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステル、及びポリウレタンなどが挙げられる。
【0035】
熱可塑性(コ)ポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド-6、ポリアミド-66、ポリアミド-11、ポリアミド-12、ポリアミド-46、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテル-ケトン-ケトン、ポリエーテル-エーテル-ケトン、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本発明によるマトリックス樹脂粉末は、2種以上の熱可塑性(コ)ポリマーの混合物であってもよい。熱可塑性繊維強化複合材料の場合、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP))、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)が、マトリックス樹脂の消費量の大半を占める。繊維強化複合材料の中では、ナイロンの体積百分率が最高であり、熱可塑性ポリエステルの体積百分率が次に高い。ナイロンマトリックス樹脂を強化するために使用される従来のサイズ剤としては、ポリウレタン分散体(PUD)、ポリアミド分散体、エポキシ分散体、アクリル系のもの、無水マレイン酸グラフトエチレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。熱可塑性ポリエステルマトリックス樹脂を強化するために使用される従来のサイズ剤としては、エポキシ分散体、ポリウレタン分散体、及びポリエステル分散体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
サイジングスラリーは、サイズ剤(皮膜形成剤)及びマトリックス樹脂粉末に加えて、カップリング剤及び/又は加工助剤(すなわち、滑剤、湿潤剤、中和剤、帯電防止剤、酸化防止剤、核剤、架橋剤、及びこれらの任意の組み合わせ)を含んでもよい。かかるカップリング剤の例としては、メタクリル酸クロム(III)(Zaclon LLCからVolan(登録商標)として入手可能)、シラン、及びチタネートが挙げられるが、これらに限定されない。かかる加工助剤の例としては、滑剤、湿潤剤、中和剤、帯電防止剤、酸化防止剤、核剤、架橋剤、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本発明によるサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維は、さらに、陽イオン性滑剤及び帯電防止剤を含んでもよい。
【0037】
本発明の一態様には、成形炭素繊維強化複合材料を製造するための連続プロセスがある。図2は、炭素繊維250を製造するプロセス255と、炭素繊維250を成形炭素繊維強化複合材料270に直接成形するプロセス265との2つのサブプロセスを組み合わせたプロセスの概要を示す。一実施形態では、2つのプロセス255及び265は別々であり、2つの異なる製造場所で行われる。別の実施形態では、2つのプロセス255及び265は1つのプロセスの部分であり、1つの製造場所で行われる。本発明の一態様では、図2に示すように、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維トウを製造する方法は連続プロセス200である。連続プロセス200は、繊維の少なくとも一部をサイジングスラリーと接触させる工程の前に、炭素繊維を製造するための工程を含む。連続プロセス200は、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維201のスプールを巻き戻し、前駆体繊維201を酸化202して安定化前駆体繊維を形成することを含む。プロセス200は、さらに、炭素繊維を形成するための炭化工程204と、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維250を形成するための処理/サイジング工程209を含む。この炭化工程は黒鉛化を含んでいてもよい。図2に示すように、このプロセスは、さらに、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維250に追加のマトリックス樹脂を含浸せずに、スプールからサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維260を直接成形して、成形繊維強化複合材料製品270を形成することを含んでいてもよい。
【0038】
本発明の一態様では、繊維を提供する工程は、例えばPANなどの前駆体繊維から炭素繊維を製造することを含む。図3は、本発明の別の実施形態である、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維トウを製造する連続プロセス300を示す。連続プロセス300は、繊維の少なくとも一部をサイジングスラリーと接触させる工程の前に、炭素繊維を製造する工程を含む。連続プロセス300は、前駆体繊維301、例えばポリアクリロニトリル(PAN)繊維などのスプールを巻き戻し、前駆体繊維301を200~300℃の範囲内の温度で安定化302して安定化前駆体繊維303を形成することを含む。このプロセスは、さらに、安定化前駆体繊維303を1000~1500℃の範囲内の温度で炭化304して炭化繊維305を形成すること、炭化繊維305を2000~3000℃の範囲内の温度で黒鉛化306して炭素繊維310を形成するこちょ、任意選択的に、炭素繊維310の表面の少なくとも一部を前処理308することを含む。
【0039】
炭化後、繊維は、複合材料に使用されるエポキシや他の材料とうまく結合しない表面を有する。そのため、より良好な結合特性を得るために、繊維の少なくとも一部が、その表面をわずかに酸化させることによって処理される。表面への酸素原子の付加は、良好な化学的結合特性をもたらし、また、良好な機械的結合特性を得るために表面をエッチングし、粗くする。酸化は、繊維を、様々なガス、例えば、空気、二酸化炭素、又はオゾンなど、あるいは、様々な液体、例えば、次亜塩素酸ナトリウムや硝酸などの中に浸すことによって達成することができる。様々な導電性材料で満たされた浴中で繊維を正端子にすることによって、繊維を電解的にコーティングすることもできる。表面処理プロセスは、繊維の不具合の原因となりうる微小な表面欠陥、例えばピットなどが形成されないよう、注意深く制御される必要がある。
【0040】
プロセス300は、繊維310の少なくとも一部をサイジングスラリー320と接触させて、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維350を形成する工程を含む処理/サイジング工程をさらに含む。この接触させる工程は、サイズ剤及び溶媒を含むサイジング組成物にマトリックス樹脂粉末を加え、マトリックス樹脂粉末を懸濁状態に保つため、及びマトリックス樹脂粉末が沈降するのを防止するために、スラリー撹拌機により混合することによって、サイジングスラリー320を現場(in-situ)で形成することをさらに含む。サイジングスラリーのサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量が30質量%超であるように、サイジングスラリー320は、0.1~25質量%、もしくは0.5~20質量%、又は1~15質量%のサイズ剤と、20~80質量%、もしくは25~75質量%、又は30~70質量%のマトリックス樹脂粉末を溶媒中に含み、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維350が形成される。ここで、質量%の上記量はサイジングスラリーの総量を基準とする。
【0041】
プロセス300は、サイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維330をマトリックス樹脂の融点未満の温度で乾燥させ、それによって、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維350を形成する乾燥工程340をさらに含む。一実施形態において、乾燥工程340は、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維の総量を基準として、21質量%超且つ80質量%未満、もしくは25質量%超且つ75質量%未満、又は30質量%超且つ70質量%未満のサイズ剤及びマトリックス樹脂を有する、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維350を提供する。
【0042】
本発明の一態様において、本方法は、図4に示すように、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された炭素繊維に追加のマトリックス樹脂を含浸させずに、乾燥されたサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維をスプールから直接成形することをさらに含むことができる。
【0043】
別の態様には、本開示で上記したとおりの方法によって製造された繊維強化複合材料がある。
【0044】
別の態様には、(i)サイジングスラリーのサイズ剤及びマトリックス樹脂粉末を含む総固形分含量が30質量%超であり、(ii)マトリックス樹脂粉末の量がサイズ剤の量より多いように、溶媒中に、0.1~25質量%、もしくは0.5~20質量%、又は1~15質量%のサイズ剤と、20~80質量%、もしくは25~75質量%、又は30~70質量%のマトリックス樹脂粉末とを含むサイジングスラリーがある。ここで、質量%での上記量はサイジングスラリーの総量に基づく。
【0045】
さらに別の態様には、炭素繊維と、繊維の少なくとも一部に配置されたサイズ剤と、繊維の少なくとも一部に配置され、サイズ剤に付着したマトリックス樹脂とを含む、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維であって、サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維が、当該サイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維の総質量を基準として、21質量%超且つ80質量%未満、もしくは25質量%超且つ75質量%未満、又は30質量%超且つ70質量%未満のサイズ剤及びマトリックス樹脂を有するサイジングされ且つ樹脂で被覆された繊維がある。
【0046】
本発明のさらに別の態様において、本開示は、本発明による繊維強化複合材料から形成された物品、例えば成形コンポーネントや、かかる物品を含む製品を提供する。かかる物品としては、一方向強化熱可塑性プラスチックテープ、ランダム化連続マット(randomized continuous mats)、長尺チョップドマット、ペレット化長尺コンパウンド(pelletized long compounds)、及び押出成形された長尺ログ(extruded long logs)が挙げられる。一実施形態では、本開示で上記したとおりの物品を含むコンポーネントがあり、このコンポーネントは、自動車、家電製品、及び電子機器組立品のうちの1つ又は複数で使用するように構成されている。かかる物品の例としては、自動車ドアライナー、フロントエンドモジュール、エアインテークマニホールド、バンパービーム、モーターバイクブーツ、自動車冷却ファンブレード、エアコンディショナーファンブレード、ポンプハウジング、自動車ボディパネル、ダッシュボードキャリア、多翼インペラ、リフトゲート、トラックライナー、自動車垂直パネル、インストルメントパネルキャリア、ドアパネル構造体、座席構造体、アンダーフードコンポーネント、ガソリンドア、ミラーハウジング、フロントエンドキャリア、ダッシュボードキャリア、ドアベースプレート、アンダーボディカバー、フロントアンダートレイ、洗濯機タブ、エアバッグハウジング、事務機器、エレクトロニクスパッケージング、ハードディスクドライブが挙げられるが、これらに限定されない。もちろん、他の多くの種類の製品を形成することもできる。
【0047】
以下の実施例は、好ましい実施形態を示すために含めたものである。当業者であれば、以下に続く実施例において開示される技術は、本開示に記載の製品、組成物及び方法の実施において良好に機能するように本発明者によって発見された技術を表すものであり、したがって、本発明の実施のための好ましい態様を構成すると理解するであろう。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において多くの変更を加えることができ、それでもなお、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、同様又は類似の結果を得ることができることを理解するであろう。
【実施例
【0048】
使用した材料
【0049】
ポリアミド6(PA6)球状樹脂粉末(ORGASOL(登録商標) 2001)は、ペンシルベニア州キングオブプルシア所在のArkemaから入手した。炭素繊維トウZOLTEK PX35は、ミズーリー州ブリッジトン所在のZoltek Corporationから入手した。Hydrosize U6-01は、オハイオ州シンシナティのMichelmanから入手した。
【0050】
実施例1:サイジングスラリーの製造方法
【0051】
サイズ剤として5%のHydrosize U6-01と、60%の蒸留水とを含む溶液に、35質量%のPA6 Orgasol(登録商標) 2001を加えることによって、サイジングスラリーを製造した。混合物を約15分間撹拌してサイジングスラリーを形成した。
【0052】
実施例2:サイジングされ且つPA6樹脂で被覆された炭素繊維の製造方法
【0053】
炭素繊維トウPX35を実施例1のサイジングスラリーによりサイジングし、150℃で約5~7分間乾燥させて、サイジングされ且つPA6樹脂で被覆された炭素繊維を形成した。乾燥後、サイジングされ且つPA6樹脂で被覆された炭素繊維は、PA6樹脂、炭素繊維及びサイジング添加剤の総質量を基準として50045質量%のPA6樹脂を有していた。図4は、サイジングされ且つPA6樹脂で被覆された炭素繊維のスプールの写真である。図5は、サイジングされ且つPA6樹脂で被覆された炭素繊維の顕微鏡写真である。
【0054】
実施例3:炭素繊維強化複合材料の製造方法
【0055】
製造したままのサイジングされ且つPA6で被覆された炭素繊維を、追加のPA6樹脂又は他の樹脂を加えずに、試験パネル(厚さ2mm、幅200mm、長さ300mm)に250℃で60分間成形した。
【0056】
この炭素繊維強化複合材料試験パネルを、ISO 14130方法によって層間せん断強さ(ILSS)について試験すると、このパネルは、最先端技術に並ぶ60MPaの最大せん断強さを示した。
【0057】
本発明の実施において、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、様々な修正及び変形が可能であることは、当業者に明らかであろう。本発明の他の実施形態は、明細書及び本発明の実施の考察から当業者に明らかであろう。明細書及び実施例は、例示的なものとしてのみ考慮されることが意図され、本発明の真の範囲及び精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】