(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】タンパク質発現を増強できるポリヌクレオチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/67 20060101AFI20240327BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20240327BHJP
C12N 15/44 20060101ALI20240327BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240327BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240327BHJP
C12N 15/89 20060101ALI20240327BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240327BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240327BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240327BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C12N15/67 Z ZNA
C12N15/50
C12N15/44
C12N15/11 Z
C12N15/88 Z
C12N15/89
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562896
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 IB2022053578
(87)【国際公開番号】W WO2022219606
(87)【国際公開日】2022-10-20
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564467
【氏名又は名称】バイオーケストラ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ジン-ヒョブ
(72)【発明者】
【氏名】リ, サン ム
(72)【発明者】
【氏名】キム, ウン ハ
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ラク キュン
(72)【発明者】
【氏名】ミン, ヒュン ス
(72)【発明者】
【氏名】リム, ユ ナ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、目的のタンパク質をコードするORF及びUTR(例えば、5’-UTR及び3’-UTR)を含むポリヌクレオチドに関し、UTRは、コードされたタンパク質に対して異種であり、コードされたタンパク質の発現を、UTRを含まない対応するポリヌクレオチドと比較して増加させることができる。本開示はまた、様々な疾患及び障害を治療するためのそのようなポリヌクレオチドの使用にも関する。本開示は、コードされたタンパク質の発現増強を誘導することができる改変ポリヌクレオチド、ならびに様々な疾患及び障害を治療するためのかかるポリヌクレオチドの使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンリーディングフレーム(ORF)と、(i)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の5’-非翻訳領域要素(5’-UTR)、(ii)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の3’-非翻訳領域要素(3’-UTR)、または(i)と(ii)の両方と、を含む単離ポリヌクレオチドであって、前記ORFが、前記5’-UTR、3’-UTR、または5’-UTRと3’-UTRの両方に対して異種であるタンパク質をコードする、前記単離ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記5’-UTR及び前記3’-UTRの両方を含む、請求項1に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記5’-UTRが、配列番号13に記載の核酸配列(AGCAAAAGCAGGGGAAAATAAAAGCAACAAAA)を含む、請求項1または2に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記5’-UTRが、配列番号13に記載の核酸配列(AGCAAAAGCAGGGGAAAATAAAAGCAACAAAA)からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記3’-UTRが、配列番号14に記載の核酸配列(CATTAGGATTTCAGAAGCATGAGAAAAACACCCTTGTTTCTACT)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記3’-UTRが、配列番号14に記載の核酸配列(CATTAGGATTTCAGAAGCATGAGAAAAACACCCTTGTTTCTACT)からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記5’-UTR、前記3’-UTR、または前記5’-UTR及び前記3’-UTRの両方は、細胞にトランスフェクトされた場合、前記ORFによってコードされる前記異種タンパク質の発現を、前記5’-UTR及び前記3’-UTRの両方を含まない参照ポリヌクレオチドをトランスフェクトした細胞における対応する発現と比較して増加させることができる、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項8】
5’キャップ、ポリ(A)テール、少なくとも1つの翻訳エンハンサーエレメント(TEE)、翻訳開始配列、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位またはそのシード、連結ヌクレオシドの3’テーリング領域、AUリッチエレメント(ARE)、転写後制御モジュレーター、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記5’キャップが、m
2
7,2’-OGpp
spGRNA、m
7GpppG、m
7Gppppm
7G、m
2
(7,3’-O)GpppG、m
2
(7,2’-O)GppspG(D1)、m
2
(7,2’-O)GppspG(D2)、m
2
7,3’-OGppp(m
1
2’-O)ApG、(m
7G-3’ mppp-G、これは、同等なものとして、3’O-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gを指定することができる)、N7,2’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン、m
7Gm-ppp-G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-G(5’)ppp(5’)G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-m
3’-OG(5’)ppp(5’)G、7mG(5’)ppp(5’)N、pN2p、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp、7mG(5’)-ppp(5’)NlmpN2 mp、m(7)Gpppm(3)(6,6,2’)Apm(2’)Apm(2’)Cpm(2)(3,2’)Up、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジド-グアノシン、N1-メチルシュードウリジン、m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pG、またはそれらの組み合わせを含む、請求項8に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
連結ヌクレオシドの前記3’テーリング領域が、ポリAテール、ポリA-Gカルテット、またはステムループ配列を含む、請求項8または9に記載の単離ナノ粒子。
【請求項11】
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは非天然ヌクレオチドを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは非天然ヌクレオチドが、6-アザ-シチジン、2-チオ-シチジン、α-チオ-シチジン、シュード-イソ-シチジン、5-アミノアリル-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、α-チオ-ウリジン、4-チオ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン、デオキシ-チミジン、シュード-ウリジン、イノシン、α-チオ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、O6-メチル-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、N1-メチル-アデノシン、2-アミノ-6-クロロ-プリン、N6-メチル-2-アミノ-プリン、6-クロロ-プリン、N6-メチル-アデノシン、α-チオ-アデノシン、8-アジド-アデノシン、7-デアザ-アデノシン、ピロロ-シチジン、5-メチル-シチジン、N4-アセチル-シチジン、5-メチル-ウリジン、5-ヨード-シチジン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記ORFによってコードされる前記異種タンパク質が、コロナウイルスタンパク質を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記コロナウイルスタンパク質が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を含む、請求項13に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記ORFによってコードされる前記異種タンパク質が、インフルエンザタンパク質を含む、請求項3~12のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記インフルエンザタンパク質が、HAタンパク質、ノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、核タンパク質(NP)、マトリックス1(M1)タンパク質、マトリックス2(M2)タンパク質、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質2(NS2)、ポリメラーゼ酸性(PA)タンパク質、ポリメラーゼ塩基性1(PB1)タンパク質、PB1-F2タンパク質、ポリメラーゼ塩基性2(PB2)タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項15に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記ORFによってコードされる前記異種タンパク質が、腫瘍抗原を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記腫瘍抗原が、α-フェトプロテイン(AFP)、B細胞成熟抗原(BCMA)、がん胎児性抗原(CEA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、ムチン1(MUC1)、Tn-MUC1、ムチン16(MUC16)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE、例えばMAGEA3)、腫瘍タンパク質p53(p53)、CD4、CD8、CD45、CD80、CD86、プログラム死リガンド1(PD-L1)、プログラム死リガンド2(PD-L2)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、TAG-72、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、GD2、cMET、EGFR、メソテリン、VEGFR、α-葉酸受容体、CE7R、IL-3、がん-精巣抗原(例えば、ニューヨーク食道扁平上皮癌1(NY-ESO-1))、MART-1 gp100、ROR1、ROR2、グリピカン2、グリピカン3、TNF関連アポトーシス誘導リガンド、またはこれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記ORFによってコードされる前記異種タンパク質が、遺伝子疾患に関連するタンパク質を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項20】
前記遺伝性疾患が、ハンター症候群を含む、請求項19に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項21】
5’~3’の方向に、
(a)配列番号13(AGCAAAAGCAGGGGAAAATAAAAGCAACAAAA)に記載の核酸配列を含む、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の5’-非翻訳領域要素(5’-UTR)と、
(b)オープンリーディングフレーム(ORF)と、
(c)配列番号14(CATTAGGATTTCAGAAGCATGAGAAAAACACCCTTGTTTCTACT)に記載の核酸配列を含む、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の3’-非翻訳領域要素(3’-UTR)と、を含む、単離ポリヌクレオチドであって、
前記ORFが、前記5’-UTR及び前記3’-UTRの両方に対して異種であるタンパク質をコードする、前記単離ポリヌクレオチド。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項23】
請求項1~21のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド、または請求項22に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項24】
(i)請求項1~21のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド、請求項22に記載のベクター、または請求項23に記載の細胞と、(ii)薬学的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項25】
(i)請求項1~21のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド、請求項22に記載のベクター、または請求項23に記載の細胞と、(ii)使用説明書と、を含むキット。
【請求項26】
疾患または障害の治療を必要とする対象の疾患または障害を治療する方法であって、請求項1~21のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチドを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
前記疾患または障害が、ウイルス感染症、がん、遺伝子疾患、またはそれらの組み合わせを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ウイルス感染症が、コロナウイルス感染症、インフルエンザウイルス感染症、またはその両方を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記がんが、乳癌、頭頸部癌、子宮癌、脳腫瘍、皮膚癌、腎癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、甲状腺癌、食道癌、眼癌、胃(stomach)(胃(gastric))癌、消化管癌、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、またはそれらの組み合わせを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記遺伝性疾患が、ハンター症候群を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
免疫応答を誘導する必要のある対象に免疫応答を誘導する方法であって、請求項1~21のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチドを前記対象に投与することを含み、前記投与の後、前記ORFによってコードされる前記異種タンパク質に対する免疫応答が前記対象内に誘導される、前記方法。
【請求項32】
タンパク質の発現を増加させる方法であって、請求項1~21のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチドを細胞と接触させることを含む、前記方法。
【請求項33】
前記接触させることが、インビボで起こる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記接触させることが、エクスビボで起こる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記タンパク質の前記発現が、前記5’-UTR及び前記3’-UTRの両方を含まない参照ポリヌクレオチドと接触させた細胞における前記タンパク質の発現と比較して、少なくとも約0.5倍、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、20倍、約30倍、約40倍、または約50倍増加する、請求項32~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記単離ポリヌクレオチドが、送達剤中で送達される、請求項26~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記送達剤が、ミセル、エクソソーム、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、細胞外小胞、合成小胞、ポリマー化合物、ペプチド、タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、コンジュゲート、ウイルスベクター、またはそれらの組み合わせを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記送達剤が、
[WP]-L1-[CC]-L2-[AM](式I)
または
[WP]-L1-[AM]-L2-[CC](式II)
(式中、
WPは、水溶性バイオポリマー部分であり、
CCは、カチオン性キャリア部分であり、
AMは、アジュバント部分であり、
L1及びL2は、独立して任意選択のリンカーである)を含むカチオン性キャリアユニットを含む、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記カチオン性キャリアユニットと前記単離ポリヌクレオチドとが、互いに混合される際に互いに結合してミセルを形成することができる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記結合が、共有結合によるものである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記結合が、非共有結合によるものである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記非共有結合が、イオン結合を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記水溶性ポリマーが、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項38~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む、請求項38~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記水溶性ポリマーが、下式:
【化18】
(式中、nは、1~1000である)を有する、請求項38~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記nが、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記nが、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、またはあるいは、または約150~約160である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記nが約114である、請求項45~47のいずれか1項に記載の方法。。
【請求項49】
前記水溶性ポリマーが、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である、請求項38~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記カチオン性キャリア部分が、1つ以上の塩基性アミノ酸を含む、請求項38~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記カチオン性キャリア部分が、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、または少なくとも約50個の塩基性アミノ酸を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記カチオン性キャリア部分が、約60個、約70個、約80個、約90、または約100個の塩基性アミノ酸を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記カチオン性キャリア部分が、約80個の塩基性アミノ酸を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記塩基性アミノ酸が、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項50~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記カチオン性キャリア部分が、約80個のリシンモノマーを含む、請求項38~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記アジュバント部分が、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる、請求項38~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記アジュバント部分が、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項38~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記アジュバント部分が、下式:
【化19】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1とG2とはともに芳香環を形成し、nは1~10である)を有する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記アジュバント部分がニトロイミダゾールを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記アジュバント部分が、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記アジュバント部分が、アミノ酸を含む、請求項38~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記アジュバント部分が、下式:
【化20】
(式中、Arは、
【化21】
であり、
Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記アジュバント部分が、ビタミンを含む、請求項38~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記ビタミンが、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記ビタミンが、下式:
【化22】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を有する、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記ビタミンが、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項63~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記ビタミンが、ビタミンB3である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記アジュバント部分が、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個のビタミンB3を含む、請求項66または67に記載の方法。
【請求項69】
前記アジュバント部分が、約5個のビタミンB3を含む、請求項66~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記送達剤が、約120個~約130個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、約80個のリシンを有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約5個のビタミンB3を有するアジュバント部分と、を含む、請求項66~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記送達剤が、
[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I)、
[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II)、
[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III)、
[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV)、
[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V)、または
[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI)、
(式中、
CCは、正に荷電したキャリア部分であり、
CMは、架橋部分であり、
HMは、疎水性部分であり、
L1及びL2は、独立して任意選択のリンカーである)を含むカチオン性キャリアユニットであって、
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して40%未満である、前記カチオン性キャリアユニットを含む、請求項36または37に記載の方法。
【請求項72】
HMの前記数が、[CC]及び[CM]に対して39%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記カチオン性キャリアユニットが、請求項1~21に記載の単離ポリヌクレオチドと相互作用することができる、請求項71または72に記載の方法。
【請求項74】
前記カチオン性キャリア部分が、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、少なくとも約50個、少なくとも約51個、少なくとも約52個、少なくとも約53個、少なくとも約54個、少なくとも約55個、少なくとも約56個、少なくとも約57個、少なくとも約58個、少なくとも約59個、少なくとも約60個、少なくとも約61個、少なくとも約62個、少なくとも約63個、少なくとも約64個、少なくとも約65個、少なくとも約66個、少なくとも約67個、少なくとも約68個、少なくとも約69個、少なくとも約70個、少なくとも約71個、少なくとも約72個、少なくとも約73個、少なくとも約74個、少なくとも約75個、少なくとも約76個、少なくとも約77個、少なくとも約78個、少なくとも約79個、または少なくとも約80個のアミノ酸を含む、請求項71~73に記載の方法。
【請求項75】
前記カチオン性キャリア部分が、約80個のアミノ酸を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記アミノ酸が、リシンを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記疎水性部分が、それぞれがビタミンに連結された少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、または少なくとも約35個のアミノ酸を含む、請求項71~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記疎水性部分が、約2個のビタミンB3、約3個のビタミンB3、約4個のビタミンB3、約5個のビタミンB3、約6個のビタミンB3、約7個のビタミンB3、約8個のビタミンB3、約9個のビタミンB3、約10個のビタミンB3、約11個のビタミンB3、約12個のビタミンB3、約13個のビタミンB3、約14個のビタミンB3、約15個のビタミンB3、約16個のビタミンB3、約17個のビタミンB3、約18個のビタミンB3、約19個のビタミンB3、約20個のビタミンB3、約21個のビタミンB3、約22個のビタミンB3、約23個のビタミンB3、約24個のビタミンB3、約25個のビタミンB3、約26個のビタミンB3、約27個のビタミンB3、約28個のビタミンB3、約29個のビタミンB3、約個のビタミンB3、約31個のビタミンB3、約32個のビタミンB3、約33個のビタミンB3、約34個のビタミンB3、または約35個のビタミンB3を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記カチオン性キャリア部分が、約35個~約45個のリシンを含み、前記架橋部分が約5個~約40個のリシン-チオールを含み、前記疎水性部分が約1個~約10個のリシン-ビタミンB3を含む、請求項71~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記カチオン性キャリア部分が約40個のリシンを含み、前記架橋部分が約35個のリシン-チオールを含み、前記疎水性部分が約5個のリシン-ビタミンB3を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記水溶性バイオポリマー部分が、約120個~約130個のPEG単位を含む、請求項71~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記水溶性バイオポリマー部分が、約114個のPEG単位を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記単離ポリヌクレオチドが、非経口投与、筋肉内投与、皮下投与、点眼、静脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、眼窩内投与、鼻腔内投与、脳内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、脊髄内投与、心室内投与、髄腔内投与、大槽内投与、嚢内投与、腫瘍内投与、局所投与、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、請求項26~81のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本PCT出願は、2021年4月15日出願の米国仮特許出願第63/175,459号の優先権の利益を主張するものであり、その全体を参照によって本明細書に援用するものである。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表の参照
本出願中に提出される電子的に提出される配列表(ファイル名:4366_028PC01_Seqlisting_ST25.txt、サイズ:124,555バイト、作成日:2022年4月15日)の内容の全体を参照によって本明細書に援用するものである。
【0003】
開示の分野
本開示は、コードされたタンパク質の発現増強を誘導することができる改変ポリヌクレオチド、ならびに様々な疾患及び障害を治療するためのかかるポリヌクレオチドの使用を提供する。
【背景技術】
【0004】
開示の背景
ワクチンは世界の健康に多大な影響を与えている。例えば、天然痘は根絶され、ポリオもほぼ撲滅されている。それにもかかわらず、最近のコロナウイルスのパンデミックが証明しているように、まだ封じ込めに成功していないヒトの病原体が数多く存在している。さらに、従来のワクチン接種戦略には一般に、「生」(弱毒化)ワクチンまたは「死滅」ワクチンの投与が含まれる。このようなワクチンは、しばしば、望ましくない副作用及びリスク(例えば、弱毒化生ワクチンは病原体に戻る可能性がある)を伴うか、有効性が限られている。
より最近では、ワクチンプラットフォーム(例えば、DNAワクチン及びmRNAワクチン)としてのポリヌクレオチドの使用に大きな関心が集まっている。従来のワクチンと比較して、ポリヌクレオチドベースのワクチンは一般に安全で製造が容易であり、広範囲の免疫反応を誘導することができる。しかしながら、一般にそのようなワクチンの有効性は、特にヒトにおいては限定的である(Hobernik et al.,Int J Mol Sci 19(11):3605(Nov.2018)を参照)。その結果、現在に至るまで、ヒトでの使用が承認されたDNAワクチンは存在していない。そして、ようやく最近のパンデミックのために、3つのコロナウイルス特異的mRNAワクチンが承認された。したがって、ヒトに使用するためのより大きな効力を有する新たなポリヌクレオチドベースのワクチンが依然求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hobernik et al.,Int J Mol Sci 19(11):3605(Nov.2018)
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、オープンリーディングフレーム(ORF)、及び(i)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の5’-非翻訳領域要素(5’-UTR)、(ii)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の3’-非翻訳領域要素(3’-UTR)、または(i)と(ii)の両方を含む単離ポリヌクレオチドであって、ORFが、5’-UTR、3’-UTR、または5’-UTRと3’-UTRの両方に対して異種であるタンパク質をコードする、単離ポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様では、単離ポリヌクレオチドは、5’-UTR及び3’-UTRの両方を含む。
【0007】
いくつかの態様では、5’-UTRは、配列番号13に記載の核酸配列(AGCAAAAGCAGGGGAAAATAAAAGCAACAAAA)を含む。いくつかの態様では、5’-UTRは、配列番号13(AGCAAAAGCAGGGGAAAATAAAAGCAACAAAA)に記載の核酸配列からなる。いくつかの態様では、3’-UTRは、配列番号14(CATTAGGATTTCAGAAGCATGAGAAAAACACCCTTGTTTCTACT)に記載の核酸配列を含む。いくつかの態様では、3’-UTRは、配列番号14(CATTAGGATTTCAGAAGCATGAGAAAAACACCCTTGTTTCTACT)に記載の核酸配列からなる。
【0008】
いくつかの態様では、5’-UTR、3’-UTR、または5’-UTR及び3’-UTRの両方は、細胞にトランスフェクトされた場合、ORFによってコードされる異種タンパク質の発現を、5’-UTR及び3’-UTRの両方を含まない参照ポリヌクレオチドをトランスフェクトした細胞における対応する発現と比較して増加させることができる。
【0009】
いくつかの態様では、本開示の単離ポリヌクレオチドは、5’キャップ、ポリ(A)テール、少なくとも1つの翻訳エンハンサーエレメント(TEE)、翻訳開始配列、少なくとも1つのマイクロRNA結合部位またはそのシード、連結ヌクレオシドの3’テーリング領域、AUリッチエレメント(ARE)、転写後制御モジュレーター、またはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0010】
いくつかの態様では、5’キャップは、m2
7,2’-OGppspGRNA、m7GpppG、m7Gppppm7G、m2
(7,3’-O)GpppG、m2
(7,2’-O)GppspG(D1)、m2
(7,2’-O)GppspG(D2)、m2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApG、(m7G-3’ mppp-G、これは、同等なものとして、3’O-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gを指定することができる)、N7,2’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン、m7Gm-ppp-G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-G(5’)ppp(5’)G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-m3’-OG(5’)ppp(5’)G、7mG(5’)ppp(5’)N、pN2p、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp、7mG(5’)-ppp(5’)NlmpN2mp、m(7)Gpppm(3)(6,6,2’)Apm(2’)Apm(2’)Cpm(2)(3,2’)Up、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジド-グアノシン、N1-メチルシュードウリジン、m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pG、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、連結ヌクレオシドの3’テーリング領域は、ポリAテール、ポリA-Gカルテット、またはステムループ配列を含む。
【0011】
いくつかの態様では、本開示の単離ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは非天然ヌクレオチドを含む。特定の態様では、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは非天然ヌクレオチドは、6-アザ-シチジン、2-チオ-シチジン、α-チオ-シチジン、シュード-イソ-シチジン、5-アミノアリル-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、α-チオ-ウリジン、4-チオ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン、デオキシ-チミジン、シュード-ウリジン、イノシン、α-チオ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、O6-メチル-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、N1-メチルアデノシン、2-アミノ-6-クロロ-プリン、N6-メチル-2-アミノ-プリン、6-クロロ-プリン、N6-メチル-アデノシン、α-チオ-アデノシン、8-アジド-アデノシン、7-デアザ-アデノシン、ピロロ-シチジン、5-メチル-シチジン、N4-アセチル-シチジン、5-メチル-ウリジン、5-ヨード-シチジン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0012】
いくつかの態様では、本明細書に記載の単離ポリヌクレオチドのORFによってコードされる異種タンパク質は、コロナウイルスタンパク質を含む。いくつかの態様では、コロナウイルスタンパク質は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を含む。
【0013】
いくつかの態様では、本明細書に記載の単離ポリヌクレオチドのORFによってコードされる異種タンパク質は、インフルエンザタンパク質を含む。特定の態様では、インフルエンザタンパク質は、HAタンパク質、ノイラミニダーゼ(NA)タンパク質、核タンパク質(NP)、マトリックス1(M1)タンパク質、マトリックス2(M2)タンパク質、非構造タンパク質1(NS1)、非構造タンパク質2(NS2)、ポリメラーゼ酸性(PA)タンパク質、ポリメラーゼ塩基性1(PB1)タンパク質、PB1-F2タンパク質、ポリメラーゼ塩基性2(PB2)タンパク質、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0014】
いくつかの態様では、ORFによってコードされる異種タンパク質は腫瘍抗原を含む。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、α-フェトプロテイン(AFP)、B細胞成熟抗原(BCMA)、がん胎児性抗原(CEA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、ムチン1(MUC1)、Tn-MUC1、ムチン16(MUC16)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE、例えばMAGEA3)、腫瘍タンパク質p53(p53)、CD4、CD8、CD45、CD80、CD86、プログラム死リガンド1(PD-L1)、プログラム死リガンド2(PD-L2)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、TAG-72、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、GD2、cMET、EGFR、メソテリン、VEGFR、α-葉酸受容体、CE7R、IL-3、がん-精巣抗原(例えば、ニューヨーク食道扁平上皮癌1(NY-ESO-1))、MART-1 gp100、ROR1、ROR2、グリピカン2、グリピカン3、TNF関連アポトーシス誘導リガンド、またはこれらの組み合わせを含む。
【0015】
いくつかの態様では、本明細書に記載の単離ポリヌクレオチドのORFによってコードされる異種タンパク質は、遺伝子疾患に関連したタンパク質を含む。特定の態様では、遺伝子疾患はハンター症候群を含む。
【0016】
また、本明細書では、単離ポリヌクレオチドであって、5’~3’の方向に、(a)配列番号13(AGCAAAAGCAGGGGAAAATAAAAGCAACAAAA)に記載の核酸配列を含む、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の5’非翻訳領域要素(5’-UTR)、(b)オープンリーディングフレーム(ORF)、及び(c)配列番号14(CATTAGGATTTCAGAAGCATGAGAAAAACACCCTTGTTTCTACT)に記載の核酸配列を含む、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の3’非翻訳領域要素(3’-UTR)を含み、ORFが5’-UTR及び3’-UTRの両方に対して異種であるタンパク質をコードする、単離ポリヌクレオチドも提供される。
【0017】
本開示は、本明細書に記載の単離ポリヌクレオチドのいずれかを含むベクターをさらに提供する。本明細書では、本明細書に記載の単離ポリヌクレオチドまたはベクターのいずれかを含む細胞も提供される。
【0018】
本明細書では、(i)本明細書に記載の単離ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞のいずれかと、(ii)薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物が提供される。本明細書では、(i)本明細書に記載される単離ポリヌクレオチド、ベクター、または細胞のいずれかと、(ii)使用説明書と、を含むキットも提供される。
【0019】
本明細書ではまた、疾患または障害の治療を必要とする対象の疾患または障害を治療する方法であって、本明細書に記載の単離ポリヌクレオチドのいずれかを対象に投与することを含む、方法も提供される。いくつかの態様では、治療可能な疾患または障害には、ウイルス感染症、がん、遺伝子疾患、またはそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの態様では、ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症、インフルエンザウイルス感染症、またはその両方を含む。いくつかの態様では、がんは、乳癌、頭頸部癌、子宮癌、脳腫瘍、皮膚癌、腎癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、甲状腺癌、食道癌、眼癌、胃(stomach)(胃(gastric))癌、消化管癌、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、またはそれらの組み合わせを含む。特定の態様では、遺伝子疾患はハンター症候群を含む。
【0020】
また、本明細書では、タンパク質の発現を増加させる方法であって、細胞を本開示の単離ポリヌクレオチドのいずれかと接触させることを含む方法も提供される。いくつかの態様では、接触させることは、インビボで行われる。いくつかの態様では、接触させることは、エクスビボで行われる。いくつかの態様では、タンパク質の発現は、5’-UTR及び3’-UTRの両方を含まない参照ポリヌクレオチドと接触させた細胞におけるタンパク質の発現と比較して、少なくとも約0.5倍、約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約40倍、または約50倍増加する。
【0021】
いくつかの態様では、本明細書で提供される単離ポリヌクレオチドは、例えば送達剤中で対象に送達される。特定の態様では、送達剤は、ミセル、エクソソーム、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、細胞外小胞、合成小胞、ポリマー化合物、ペプチド、タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、コンジュゲート、ウイルスベクター、またはそれらの組み合わせを含む。
【0022】
いくつかの態様では、送達剤は、下式:
[WP]-L1-[CC]-L2-[AM](式I)
または
[WP]-L1-[AM]-L2-[CC](式II)
(式中、
WPは、水溶性バイオポリマー部分であり、
CCは、カチオン性キャリア部分であり、
AMは、アジュバント部分であり、
L1及びL2は、独立して任意選択のリンカーである)を含むカチオン性キャリアユニットを含む。
【0023】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットと単離ポリヌクレオチドとは、互いに混合される際に互いに結合してミセルを形成することができる。いくつかの態様では、結合は、共有結合を介する。他の態様では、結合は、非共有結合を介する。いくつかの態様では、非共有結合はイオン結合を含む。
【0024】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。
【0025】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、下式:
【化1】
(式中、nは、1~1000である)を有する。
【0026】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である。特定の態様では、nは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、または約150~約160である。いくつかの態様では、nは約114である。
【0027】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの水溶性ポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である。
【0028】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、1つ以上の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、または少なくとも約50個の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約60個、約70個、約80個、約90個、または約100個の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約80個の塩基性アミノ酸を含む。
【0029】
いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約80個のリシンモノマーを含む。
【0030】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットのアジュバント部分は、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる。いくつかの態様では、アジュバント部分は、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化2】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1とG2はともに芳香環を形成し、nは1~10である)を有する。
【0031】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ニトロイミダゾールを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0032】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、アミノ酸を含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化3】
(式中、Arは、
【化4】
であり、
Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)を有する。
【0033】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ビタミンを含む。いくつかの態様では、ビタミンは、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む。いくつかの態様では、ビタミンは、下式:
【化5】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を有する。
【0034】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンB3である。いくつかの態様では、アジュバント部分は、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、または少なくとも約50個のビタミンB3を含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約35個のビタミンB3を含む。
【0036】
いくつかの態様では、送達剤は、約120個~約130個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、約80個のリシンを有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約35個のビタミンB3を有するアジュバント部分と、を含む。
【0037】
いくつかの態様では、送達剤は、下式:
[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I)、
[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II)、
[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III)、
[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV)、
[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V)、または
[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI)、
(式中、
CCは、正に荷電したキャリア部分であり、
CMは、架橋部分であり、
HMは、疎水性部分であり、
L1及びL2は、独立して任意選択のリンカーである)を含むカチオン性キャリアユニットであって、
HMの数が、[CC]及び[CM]に対して40%未満である、カチオン性キャリアユニットを含む。
【0038】
いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対して39%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、本明細書に記載の単離ポリヌクレオチドのいずれかと相互作用することができる。
【0039】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、少なくとも約50個、少なくとも約51個、少なくとも約52個、少なくとも約53個、少なくとも約54個、少なくとも約55個、少なくとも約56個、少なくとも約57個、少なくとも約58個、少なくとも約59個、少なくとも約60個、少なくとも約61個、少なくとも約62個、少なくとも約63個、少なくとも約64個、少なくとも約65個、少なくとも約66個、少なくとも約67個、少なくとも約68個、少なくとも約69個、少なくとも約70個、少なくとも約71個、少なくとも約72個、少なくとも約73個、少なくとも約74個、少なくとも約75個、少なくとも約76個、少なくとも約77個、少なくとも約78個、少なくとも約79個、または少なくとも約80個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、80個のアミノ酸を含む。
【0040】
いくつかの態様では、アミノ酸はリシンを含む。
【0041】
いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンに連結された少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、または少なくとも約32個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、約2個のビタミンB3、約3個のビタミンB3、約4個のビタミンB3、約5個のビタミンB3、約6個のビタミンB3、約7個のビタミンB3、約8個のビタミンB3、約9個のビタミンB3、約10個のビタミンB3、約11個のビタミンB3、約12個のビタミンB3、約13個のビタミンB3、約14個のビタミンB3、約15個のビタミンB3、約16個のビタミンB3、約17個のビタミンB3、約18個のビタミンB3、約19個のビタミンB3、約20個のビタミンB3、約21個のビタミンB3、約22個のビタミンB3、約23個のビタミンB3、約24個のビタミンB3、約25個のビタミンB3、約26個のビタミンB3、約27個のビタミンB3、約28個のビタミンB3、約29個のビタミンB3、約個のビタミンB3、約31個のビタミンB3、約32個のビタミンB3、約33個のビタミンB3、約34個のビタミンB3、または約35個のビタミンB3を含む。
【0042】
いくつかの態様では、本明細書に記載の送達剤のカチオン性キャリアユニットは約35個~約45個のリシンを含み、架橋部分は約5個~約40個のリシン-チオールを含み、疎水性部分は約1個~約50個のリシン-ビタミンB3を含む。特定の態様では、カチオン性キャリア部分は約40個のリシンを含み、架橋部分は約5個のリシン-チオールを含み、疎水性部分は約35個のリシン-ビタミンB3を含む。いくつかの態様では、水溶性バイオポリマー部分は、約114個のPEG単位を含む。
【0043】
いくつかの態様では、本明細書に記載の単離ポリヌクレオチドのいずれかは、例えば、非経口投与、筋肉内投与、皮下投与、点眼、静脈内投与、腹腔内投与、皮内投与、眼窩内投与、鼻腔内投与、脳内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、脊髄内投与、心室内投与、髄腔内投与、大槽内投与、嚢内投与、腫瘍内投与、局所投与、またはそれらの任意の組み合わせで対象に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本明細書に記載される例示的なポリヌクレオチドの概略図を示す。図に示されるように、ポリヌクレオチドは(5’~3’の方向に)、(i)5’-キャップ、(ii)HA-5’-UTR(配列番号13)、(iii)目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(「抗原-CDS」)、(iv)HA-3’-UTR(配列番号14)、及び(v)3’-ポリ(A)テールを含む。
【0045】
【
図2】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むHAコードポリヌクレオチド(右のパネル)(「改変mRNA」)、または(ii)UTRを欠く対応するポリヌクレオチド(中央のパネル)(「コントロールmRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるインフルエンザHAタンパク質発現(免疫蛍光アッセイを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロールとして用いた(左のパネル)。
【0046】
【
図3】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むHAコードポリヌクレオチド(最後の列)(「改変mRNA」)、または(ii)UTRを欠く対応するポリヌクレオチド(中央の列)(「コントロールmRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるインフルエンザHAタンパク質発現(ウエスタンブロットを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた(最初の列)。HAタンパク質の発現は、トランスフェクション後6時間及び24時間の両方で測定した。
【0047】
【
図4】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むGFPコードポリヌクレオチド(中央の列)(「改変mRNA」)、または(ii)UTRを欠く対応するポリヌクレオチド(最後の列)(「コントロールmRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるGFP発現(免疫蛍光顕微鏡法を使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた(最初の列)。GFP発現は、トランスフェクション後6時間(上の段)、12時間(中央の段)、及び24時間(下の段)に測定した。
【0048】
【
図5】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むGFPコードポリヌクレオチド(最後の列)(「改変mRNA」)、または(ii)UTRを欠く対応するポリヌクレオチド(中央の列)(「コントロールmRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるGFP発現(ウエスタンブロットを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた(最初の列)。1μgまたは3μgの2つの異なる濃度のポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトした。
【0049】
【
図6】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むGFPコードポリヌクレオチド(右のパネル)(「改変mRNA」)、または(ii)UTRを欠く対応するポリヌクレオチド(中央のパネル)(「コントロールmRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるGFP発現の平均蛍光強度(フローサイトメーターを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた(左のパネル)。
【0050】
【
図7】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むlucコードポリヌクレオチド(最後の列)(「改変mRNA」)、または(ii)UTRを欠く対応するポリヌクレオチド(中央の列)(「コントロールmRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるルシフェラーゼ(luc)発現(IVISイメージングを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた(最初の列)。1μg(上の段)または3μg(下の段)の2つの異なる濃度のポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトした。
【0051】
【
図8】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むlucコードポリヌクレオチド(最後の列)(「改変mRNA」)、または(ii)UTRを欠く対応するポリヌクレオチド(中央の列)(「コントロールmRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるルシフェラーゼ(luc)発現(ウエスタンブロットを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた(最初の列)。Luc発現は、トランスフェクション後6時間及び24時間に測定した。
【0052】
【
図9】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むlucコードポリヌクレオチド(「3」)、または(ii)UTRを欠く対応するポリヌクレオチド(「2」)のいずれかを投与したマウスにおけるルシフェラーゼ(luc)発現の比較を示す。非処理動物をコントロールとして用いた(「1」)。各段は、異なる視点から撮影したマウスの画像を表す。Luc発現は、投与の6時間、1日、2日、3日、4日、5日、及び6日後に測定した。
【0053】
【
図10】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むGFPコードポリヌクレオチド(「改変mRNA」)、または(ii)実施例6に記載のコントロールUTR配列を含む対応するポリヌクレオチド(「コントロール-UTR-mRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるGFP発現(免疫蛍光顕微鏡法を使用して測定した)の比較を示す。0.5μg、1μg、及び3μgの3つの異なる濃度のポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトした。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。GFP発現は、トランスフェクション後6時間(上の段)、12時間(中央の段)、及び24時間(下の段)に測定した。
【0054】
【
図11】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むGFPコードポリヌクレオチド(「改変mRNA」)、または(ii)実施例6に記載のコントロールUTR配列を含む対応するポリヌクレオチド(「コントロール-UTR-mRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるGFP発現(ウエスタンブロットを使用して測定した)の比較を示す。0.5μg、1μg、及び3μgの3つの異なる濃度のポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトした。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。GFP発現は、トランスフェクション後6時間(上の段)、12時間(中央の段)、及び24時間(下の段)に測定した。
【0055】
【
図12】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むSタンパク質コードポリヌクレオチド(「改変mRNA」)、または(ii)UTRを欠く対応するポリヌクレオチド(「コントロールmRNA」)のいずれかをトランスフェクトした細胞におけるコロナウイルスSタンパク質の発現(ウエスタンブロットを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。Sタンパク質の発現は、トランスフェクション後6時間及び24時間で測定した。
【0056】
【
図13】以下の処理、すなわち、(i)非処理(「モック」)、(ii)ヌクレアーゼフリー水のみ(「NFW」)、または(iii)インフルエンザHAタンパク質をコードし、本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むポリヌクレオチド(「mHA」)のうちの1つを投与し、その後インフルエンザ感染によりチャレンジした動物の体重(A)及び生存率(B)をそれぞれ示す。
【0057】
【
図14】本開示のキャリアユニット及びミセルの例示的な構造を示す。例示的なキャリアユニットは、任意選択の組織特異的標的化部分、水溶性ポリマー、及びカチオン性キャリアユニット(それぞれアニオン性ペイロードと相互作用することができる)を含む(A)。いくつかの態様では、カチオン性キャリアとアニオン性ペイロードとは繋留されておらず、静電的に相互作用する。Bは、アニオン性ペイロードの模式図を示す。いくつかの態様では、カチオン性キャリアとアニオン性ペイロードとは繋留されており、静電的に相互作用する。Cは、A及びBのカチオン性キャリアとアニオン性ペイロードを含むミセルの概略図を示す。
【0058】
【
図15】A~Eは、カチオン性キャリアユニットの例示的な組成を示す。Aは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、64個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電した-NH3+を含む)、16個のリシン残基は架橋のために修飾されている(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリシン-チオールに連結されている)。Bは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、40個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン基、例えば、-NH3+を含む)、35個のリシン残基は架橋のために修飾されており(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリシン-チオールに連結されている)、5個のリシン残基は疎水性部分(例えば、ビタミン)を含むように修飾されている。Cは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、38個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン基、例えば、-NH3+を含む)、23個のリシン残基は架橋のために修飾されており(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリシン-チオールに連結されている)、19個のリシン残基は疎水性部分(例えば、ビタミン)を含むように修飾されている。Dは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、32個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン基、例えば、-NH3+を含む)、16個のリシン残基は架橋のために修飾されており(例えば、チオール、アルキルチオール、またはリシン-チオールに連結されている)、32個のリシン残基は疎水性部分(例えば、ビタミン)を含むように修飾されている。Eは、標的化部分と、水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)と、80個のリシン残基を含むカチオン性キャリアユニットとを含むキャリアユニットを示し、ただし、63個のリシン残基は修飾されておらず(例えば、正に荷電したアミン基、例えば、NH3+を含む)、17個のリシン残基は疎水性部分(例えば、ビタミン)を含むように修飾されている。
【0059】
【
図16】A及びBは、(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むGFPコードポリヌクレオチド(「HA-UTR-EGFP」)、または(ii)実施例9に記載のヒトβグロビン(hBg)のUTR配列を含む対応するポリヌクレオチド(「hBg-UTR-EGFP」)のいずれかをトランスフェクトしたHEK293T細胞におけるGFP発現(蛍光顕微鏡法を使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。Aは、トランスフェクション後6時間(「6hpt」、上のパネル)及び24時間(「24hpt」、下のパネル)のタンパク質発現を示す。Bは、トランスフェクション後48時間(「48hpt」、上のパネル)及び72時間(「72hpt」、下のパネル)のタンパク質発現を示す。スケールバー=250μm。
【0060】
【
図17】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むGFPコードポリヌクレオチド(「HA-UTR-EGFP」)、または(ii)実施例9に記載のヒトβグロビン(hBg)のUTR配列を含む対応するポリヌクレオチド(「hBg-UTR-EGFP」)のいずれかをトランスフェクトしたHEK293T細胞におけるGFP発現(ウエスタンブロットを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。タンパク質発現は、トランスフェクション後6時間(「6hpt」)、24時間(「24hpt」)、48時間(「48hpt」)、及び72時間(「72hpt」)に測定した。β-アクチンの発現を内部コントロールとして示している。
【0061】
【
図18】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むGFPコードポリヌクレオチド(「HA-UTR-EGFP」)、または(ii)実施例9に記載のヒトβグロビン(hBg)のUTR配列を含む対応するポリヌクレオチド(「hBg-UTR-EGFP」)のいずれかをトランスフェクトしたHEK293T細胞におけるGFP発現の平均蛍光強度(MFI)(フローサイトメトリーを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。示されたGFPのMFI値は、各群のGFP発現の正のゲート値に対応する。統計分析は、スチューデントのt検定(対応のない両側、***P<0.0001)を使用して行った。
【0062】
【
図19】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むルシフェラーゼコードポリヌクレオチド(「HA-UTR-Fluc」)、または(ii)実施例9に記載のヒトβグロビン(hBg)のUTR配列を含む対応するポリヌクレオチド(「hBg-UTR-Fluc」)のいずれかをトランスフェクトしたHEK293T細胞におけるルシフェラーゼ発現の生物発光イメージング分析を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。タンパク質発現は、トランスフェクション後6時間(「6hpt」)、24時間(「24hpt」)、48時間(「48hpt」)、及び72時間(「72hpt」)に測定した。
【0063】
【
図20】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むGFPコードポリヌクレオチド(「HA-UTR-EGFP」)、または(ii)実施例9に記載のヒトβグロビン(hBg)のUTR配列を含む対応するポリヌクレオチド(「hBg-UTR-EGFP」)のいずれかをトランスフェクトしたHEK293T細胞におけるルシフェラーゼ発現(ウエスタンブロットを使用して測定した)の比較を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。タンパク質発現は、トランスフェクション後6時間(「6hpt」)、24時間(「24hpt」)、48時間(「48hpt」)、及び72時間(「72hpt」)に測定した。β-アクチンの発現を内部コントロールとして示している。
【0064】
【
図21】A及びBは、以下の処理、すなわち、(i)非処理(「モック」、アスタリスク)、(ii)ヌクレアーゼフリー水のみ(「NFW」、三角形)、または(iii)インフルエンザHAタンパク質をコードし、本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むポリヌクレオチド(「IVJ+mHA」、四角形)(2.5μg/マウス)のうちの1つを投与し、その後インフルエンザ感染によりチャレンジした動物の体重A及び生存率Bのさらなる比較をそれぞれ示す。HA-UTR-HAは、実施例8に記載されるようにmRNA送達試薬中に配合した。
【0065】
【
図22】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)(「HA-UTR-H3」)を含むか、または(ii)含まない(「H3-ORF」)、のいずれかであるA/H3N2株のHAタンパク質をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトしたHEK293T細胞におけるインフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質発現のウエスタンブロット分析を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。タンパク質発現は、トランスフェクション後6時間(「6hpt」)、24時間(「24hpt」)、48時間(「48hpt」)、及び72時間(「72hpt」)に測定した。β-アクチンの発現を内部コントロールとして示している。
【0066】
【
図23】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含む(「HA-UTR」)か、または(ii)含まない(「ORF」)、のいずれかであるB/Yamagata株のHAタンパク質をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトしたHEK293T細胞におけるインフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質発現のウエスタンブロット分析を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。タンパク質発現は、トランスフェクション後6時間(「6hpt」)、24時間(「24hpt」)、48時間(「48hpt」)、及び72時間(「72hpt」)に測定した。β-アクチンの発現を内部コントロールとして示している。
【0067】
【
図24】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含む(「HA-UTR-IDS」)か、または(ii)含まない(「IDS-ORF」)、のいずれかであるIDSタンパク質をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトしたHEK293T細胞におけるイズロネート-2-スルファターゼ(IDS)発現(前駆体形態及び成熟形態の両方)のウエスタンブロット分析を示す。1μg(上のパネル)または3μg(下のパネル)の2つの異なる用量のポリヌクレオチドを細胞にトランスフェクトした。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。タンパク質発現は、トランスフェクション後6時間(「6hpt」)、24時間(「24hpt」)、48時間(「48hpt」)、及び72時間(「72hpt」)に測定した。β-アクチンの発現を内部コントロールとして示している。
【0068】
【
図25】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含む(「HA-UTR-NYESO1」)か、または(ii)含まない(「NYESO1」)、のいずれかであるNYESO1タンパク質をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトしたHEK293 T細胞におけるNYESO1タンパク質発現のウエスタンブロット分析を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。GADPHの発現を内部コントロールとして示している。
【0069】
【
図26】(i)本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含む(「HA-UTR-MAGEA3」)か、または(ii)含まない(「MAGEA3」)、のいずれかであるMAGEA3タンパク質をコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトしたHEK293 T細胞におけるMAGEA3タンパク質発現のウエスタンブロット分析を示す。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として用いた。GADPHの発現を内部コントロールとして示している。
【発明を実施するための形態】
【0070】
開示の詳細な説明
本開示は、1つ以上の改善された特性を示すように改変されたポリヌクレオチド(例えば、単離ポリヌクレオチド)に関する。したがって、本開示のポリヌクレオチドは、天然に存在する参照ポリヌクレオチドとは(例えば、構造的及び/または機能的に)異なるものである。例えば、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、(i)目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、及び(ii)コードされたタンパク質の発現を翻訳時に増加させることができる1つ以上の追加の構成要素(例えば、本明細書で提供されるUTR配列)を含む。
【0071】
記載される特定の組成物またはプロセスステップは無論のこと異なりうることから、本開示をより詳細に記載するのに先立って、本開示は特定の組成物またはプロセスステップに限定されない点を理解されたい。本開示を読むことで当業者にとって明らかとなるように、本明細書に記載及び例示される個々の態様の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの態様のいずれかの特徴から容易に分離するかまたはそれらの特徴と組み合わせることができる個別の構成要素及び特徴を有する。記載されるいずれの方法も、記載される事象の順序で、または論理的に可能な他の任意の順序で実施することが可能である。
【0072】
本明細書に示される見出しは本開示の様々な態様を限定するものではなく、本開示の態様は、本明細書の全体を参照することによって定義されうるものである。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるので、本明細書で使用される用語は、あくまで特定の態様を説明することを目的としたものであって、限定することを目的としたものではない点も理解されるべきである。
【0073】
I.用語
本開示をより容易に理解できるように、特定の用語を最初に定義する。本出願で使用する場合、本明細書に別段明記されない限り、以下の用語のそれぞれは、下記に記載する意味を有するものとする。追加の定義は、本出願の全体を通じて記載される。
【0074】
「a」または「an」なる用語で示される実体は、その実体の1つ以上を指し、例えば、「a nucleotide sequence(ヌクレオチド配列)」は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すものとして理解される点に留意されたい。したがって、「a」(または「an」)、ならびに「one or more」(1つ以上の)、及び「at least one」(少なくとも1つの)は、本開示では互換的に用いられる場合がある。各請求項は、あらゆる任意選択的な要素を除外するように起草される場合もある点にも留意されたい。したがって、この記載は、請求項の要素の記載との関連において「~だけの」、「~のみ」などといった除外的な語の使用に対する、または否定による限定の使用に対する先行詞としての役割を有するものとする。
【0075】
さらに、本明細書で使用する場合、「及び/または」とは、他方を伴うかまたは伴わない、2つの特定の特性または要素のそれぞれの具体的な開示として理解されるべきである。したがって、本明細書で「A及び/またはB」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/またはC」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、以下の態様、すなわち、A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)の各々を包含することが意図される。
【0076】
本明細書において「comprising(含む)」なる文言で態様が説明されている場合は常に、「consisting of(からなる)」及び/または「consisting essentially of(から本質的になる)」なる用語で記載される他の類似の態様も提供される点を理解されたい。
【0077】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本開示が関係する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示において使用される用語の多くの一般的辞書を当業者に提供する。
【0078】
単位、接頭辞、及び記号は、それらのSysteme International de Unites(SI)で認められた形態で示される。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含むものとする。数値の範囲が記載されている場合、その範囲の記載された上限と下限との間にあるそれぞれの介在する整数値、及びそのそれぞれの分数もまた、そのような値の間のそれぞれの部分範囲とともに具体的に開示される点は理解されるべきである。任意の範囲の上限値及び下限値は独立してその範囲に含まれる場合も、その範囲から除外される場合もあるが、どちらかの限界値が含まれるか、どちらの限界値も含まれないか、または両方の限界値が含まれるそれぞれの範囲もまた、本開示に包含される。したがって、本明細書に記載される範囲は、記載される端点を含む、その範囲内のすべての値の簡略的な表記であるものとして理解される。例えば、1~10の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むものとして理解される。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ug」及び「uM」という用語は、それぞれ「μg」及び「μΜ」と互換的に使用される。
【0080】
値が明示的に記載されている場合、記載されている値とほぼ同じ数または量である値もまた、本開示の範囲内に含まれる点を理解されたい。ある組み合わせが開示される場合、その組み合わせの要素の部分的な組み合わせのそれぞれも具体的に開示され、本開示の範囲内に含まれる。逆に、異なる要素または要素群が個別に開示される場合、それらの組み合わせも開示される。開示の任意の要素が複数の代替手段を有するものとして開示される場合、各代替手段が単独でまたは他の代替手段との任意の組み合わせで除外されるその開示の例も本明細書により開示される、開示の複数の要素がそのような除外を有し得、そのような除外を有する要素のすべての組み合わせが本明細書により開示される。
【0081】
ヌクレオチドは、それらの一般的に認められている1文字のコードによって表される。特に断らない限り、ヌクレオチド配列は5’~3’の方向に左から右に記載する。本明細書においてヌクレオチドは、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される一般的に公知のヌクレオチドの1文字記号により表記される。したがって、「a」はアデニンを表し、「c」はシトシンを表し、「g」はグアニンを表し、「t」はチミンを表し、「u」はウラシルを表す。
【0082】
アミノ酸配列はアミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に記載する。本明細書では、アミノ酸は、それらの一般的に知られる3文字記号、またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨される1文字記号で呼称する。
【0083】
「約」という用語は、本明細書では、およそ、大体、おおよそ、またはその範囲内の意味で使用される。「約」という用語が数値範囲とともに使用される場合、記載される数値よりも上及び下の境界値を広げることによって、その範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、例えば、上または下に10パーセント(より高いまたはより低い)の変動で、明示される値の上及び下に数値を修正することができる。
【0084】
本明細書で使用する場合、「アデノ随伴ウイルス」(AAV)なる用語には、これらに限定されるものではないが、AAVタイプ1、AAVタイプ2、AAVタイプ3(タイプ3A及び3Bを含む)、AAVタイプ4、AAVタイプ5、AAVタイプ6、AAVタイプ7、AAVタイプ8、AAVタイプ9、AAVタイプ10、AAVタイプ11、AAVタイプ12、AAVタイプ13、AAVrh.74、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、Gao et al.(J.Virol.78:6381(2004))及びMoris et al.(Virol. 33:375(2004))に開示されるAAV血清型及び系統群、ならびに現在知られているかもしくは今後発見される他の任意のAAVが含まれる(例えば、FIELDS et al.VIROLOGY,volume 2,chapter 69(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers)を参照)。いくつかの態様では、「AAV」には、既知のAAVの誘導体が含まれる。いくつかの態様では、「AAV」には、改変された、または人工AAVが含まれる。
【0085】
「投与」、「投与すること」なる用語、及びその文法的変化形は、本開示のポリヌクレオチドなどの組成物を、薬学的に許容される経路により対象に導入することを指す。本開示のポリヌクレオチドを含むミセルなどの組成物の対象への導入は、腫瘍内、経口、肺、鼻腔内、非経口(静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、もしくは皮下)、直腸、リンパ内、髄腔内、眼周または局所を含む任意の好適な経路によるものである。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。適当な投与経路によって、組成物または薬剤はその目的とする機能を実行することができる。例えば、適当な経路が静脈内である場合、組成物は、組成物または薬剤を対象の静脈内に導入することによって投与される。
【0086】
本明細書で使用する場合、対象とする1つ以上の値に適用される「およそ」という用語は、記載される参照値と同様の値を指す。ある特定の態様では、「ほぼ」という用語は、特に明記しない限り、または他のことが文脈から明らかでない限り、明示される参照値の両方向に(数を超えるか、またはそれ未満の)10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下の範囲内の値の範囲を指す(かかる数がとり得る値の100%を超える場合を除く)。
【0087】
本明細書で使用する場合、「保存された」という用語は、比較されている2つ以上の配列の同じ位置において不変に見出されるものである、それぞれポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を指す。相対的に保存されているヌクレオチドまたはアミノ酸は、配列の他の部分で出現するヌクレオチドまたはアミノ酸と比べてより関連する配列の間で保存されているものである。
【0088】
いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに100%同一である場合、「完全に保存されている」または「同一である」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも70%同一であるか、少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一である場合、「高度に保存されている」と言われる。いくつかの態様において、2つ以上の配列は、互いに約70%同一である、約80%同一である、約90%同一である、約95%、約98%、または約99%同一である場合、「高度に保存された」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに少なくとも30%同一であるか、少なくとも40%同一であるか、少なくとも50%同一であるか、少なくとも60%同一であるか、少なくとも70%同一であるか、少なくとも80%同一であるか、少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一である場合、「保存されている」と言われる。いくつかの態様では、2つ以上の配列は、それらが互いに約30%同一であるか、約40%同一であるか、約50%同一であるか、約60%同一であるか、約70%同一であるか、約80%同一であるか、約90%同一であるか、約95%同一であるか、約98%同一であるか、または約99%同一である場合、「保存されている」と言われる。配列の保存は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの全長に適用することができ、または部分、領域、もしくはそれらの特徴に適用することができる。
【0089】
本明細書で使用する場合、「由来する」という用語は、特定の分子もしくは生物または情報(例えば、アミノ酸または核酸の配列)を使用して、特定の分子もしくは生物から単離されるか、製造される構成要素を指す。例えば、第2の核酸配列に由来する核酸配列は、第2の核酸配列のヌクレオチド配列と同一であるか、または実質的に類似するヌクレオチド配列を含み得る。ヌクレオチドまたはポリペプチドの場合、派生した種は、例えば、自然に生じる変異誘発、人為的定方向突然変異誘発、または人為的ランダム変異誘発により得られ得る。ヌクレオチドまたはポリペプチドを派生させるために使用される変異誘発は、意図的に定方向、もしくは意図的にランダムであるか、または各々の組み合わせである。最初のものに由来する異なるヌクレオチドまたはポリペプチドを作製するためのヌクレオチドまたはポリペプチドの変異誘発は、ランダム事象(例えば、ポリメラーゼの不忠実さにより引き起こされる)であり得、派生したヌクレオチドまたはポリペプチドの同定は、例えば、本明細書において述べられる適切なスクリーニング法によりなされ得る。一部の態様では、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に由来するヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対する少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%、少なくとも約60%、少なくとも約61%、少なくとも約62%、少なくとも約63%、少なくとも約64%、少なくとも約65%、少なくとも約66%、少なくとも約67%、少なくとも約68%、少なくとも約69%、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有し、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。
【0090】
本明細書で使用する場合、「コーディング領域」または「コーディング配列」とは、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの部分である(例えば、オープンリーディングフレーム)。「終止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)は通常はアミノ酸に翻訳されないがコーディング領域の一部とみなすことができる。ただし、すべてのフランキング配列、例えば、UTR、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコーディング領域の一部ではない。コーディング領域の境界は、得られるポリヌクレオチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドンと、得られるポリヌクレオチドのカルボキシ末端をコードする3’末端の翻訳終止コドンとによって一般的に決定される。
【0091】
「相補的」及び「相補性」という用語は、ワトソン・クリック型塩基対形成則により互いに関連する2つ以上のオリゴマー(すなわち、それぞれが核酸塩基配列を含む)、またはオリゴマーと標的遺伝子との間を指す。例えば、核酸塩基配列「T-G-A(5’→3’)」は、核酸塩基配列「A-C-T(3’→5’」に相補的である。相補性は「部分的」であってよく、その場合、所与の核酸塩基配列の核酸塩基のすべてより少ないものが塩基対形成則に従って他の核酸塩基配列と一致している。例えば、いくつかの態様では、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間の相補性は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%であり得る。したがって、特定の態様では、「相補性」という用語は、標的核酸配列との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の一致または相補性を指す。または例に続き、「完全な」または「完璧な」(100%)相補性が、所与の核酸塩基配列と他の核酸塩基配列との間に存在し得る。いくつかの態様では、核酸塩基配列間の相補性の程度は、配列間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に顕著な影響を与える。
【0092】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の3’側に存在するヌクレオチド配列を指す。ある特定の態様では、下流ヌクレオチド配列は、転写開始点に続く配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流に存在する。
【0093】
「賦形剤」及び「キャリア」という用語は、互換的に使用され、化合物、例えば本開示のmiRNA阻害剤の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。
【0094】
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えばRNAまたはポリペプチド(例えば、治療用タンパク質、例えば、コロナウイルスタンパク質)を生成するプロセスを指す。発現には、マイクロRNA結合部位、小分子ヘアピンRNA(shRNA)、小分子干渉RNA(siRNA)、または他の任意のRNA産物へのポリヌクレオチドの転写が限定されることなく含まれる。発現には、メッセンジャーRNA(mRNA)へのポリヌクレオチドの転写、及びmRNAのポリペプチドへの翻訳が限定されることなく含まれる。発現によって、「遺伝子産物」が生成される。本明細書で使用する場合、遺伝子産物は、例えば遺伝子の転写によって生成されるRNAなどの核酸であってよい。本明細書で使用する場合、遺伝子産物は、核酸、遺伝子の転写によって生成されるRNAもしくはmiRNA、または転写産物から翻訳されたポリペプチドであってよい。本明細書に記載される遺伝子産物には、例えばポリアデニル化またはスプライシングなどの転写後修飾を有する核酸、または、例えばリン酸化、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの結合、またはタンパク質分解切断などの翻訳後修飾を有するポリペプチドがさらに含まれる。
【0095】
いくつかの態様では、ポリマー分子は、分子における少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%のモノマーが同一(厳密に同じモノマー)であるか、または類似する(保存的置換)場合、互いに「相同である」とみなされる。「相同である」という用語は、必然的に少なくとも2つの配列(例えば、ポリヌクレオチド配列)間の比較を指す。
【0096】
本開示との関連で、置換(それらがアミノ酸置換と称される場合でも)は、核酸レベルで行われ、すなわち、アミノ酸残基を代替アミノ酸残基で置換することは、第1のアミノ酸をコードするコドンを第2のアミノ酸をコードするコドンで置換することによって行われる。
【0097】
より大きなポリペプチドまたはポリヌクレオチドの一部であるポリペプチド部分またはポリヌクレオチド部分に関する「異種」とは、それぞれ、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子の残りの部分とは異なるポリペプチドまたはポリヌクレオチドに由来するポリペプチドまたはポリヌクレオチドを表す。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの追加の異種構成要素は、それぞれ本明細書に記載の残りのポリペプチドまたはポリヌクレオチドと同じ生物に由来するものであってよく、または追加の構成要素は異なる生物に由来するものであってもよい。例えば、異種ポリペプチドは、合成であってもよいし、異なる種、個体の異なる細胞タイプ、または異なる個体の同じタイプもしくは異なるタイプの細胞に由来するものであってもよい。本明細書に記載されるように、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFによってコードされるタンパク質(またはポリペプチド)は、ポリヌクレオチドのUTR(例えば、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)に対して異種である。
【0098】
本明細書で使用する場合、「同一性」(例えば、配列同一性)という用語は、ポリマー分子間の、例えば、ポリヌクレオチド分子間の全体的なモノマー保存性を指す。いかなる追加の修飾語もない「同一である」という用語、例えば、「ポリヌクレオチドAはポリヌクレオチドBと同一である」は、ポリヌクレオチド配列同士が100%同一(100%の配列同一性)であることを意味する。例えば、「70%同一である」と2つの配列を表現することは、例えば、「70%配列同一性」を有するとそれらを表現することに等しい。
【0099】
2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の同一率(%)の計算は、例えば、最適な比較のために2つの配列をアラインメントすることにより実行され得る(例えば、最適なアラインメントのために第1及び第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の一方または両方にギャップが導入され得、同一でない配列が比較のために無視され得る)。特定の実施形態では、比較目的のためにアラインメントされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。次いで、対応するアミノ酸位のアミノ酸、またはポリヌクレオチドの場合は塩基が比較される。
【0100】
第1の配列におけるある位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸またはヌクレオチドにより占められる場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一率(%)は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列により共有される同一の位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間の同一率(%)の決定は、数学アルゴリズムを使用して達成され得る。
【0101】
異なる配列同士(例えば、ポリヌクレオチド配列)をアラインするために使用することができる適当なソフトウェアプログラムは様々なソースから入手可能である。配列同一率(%)を決定するための適当なプログラムの1つに、米国政府のNational Center for Biotechnology Information BLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTパッケージプログラムの一部であるbl2seqがある。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して、2個の配列間の比較を行う。BLASTNが核酸配列を比較するために使用されるのに対して、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。他の好適なプログラムは、例えば、EMBOSSバイオインフォマティクスプログラム集の一部であり、またwww.ebi.ac.uk/Tools/psaのEuropean Bioinformatics Institute(EBI)から利用可能である、Needle、Stretcher、Water、またはMatcherである。
【0102】
配列アライメントは、当該技術分野では周知の方法、例えば、MAFFT、Clustal(ClustalW、Clustal X、またはClustal Omega)、MUSCLEなどを使用して実施され得る。
【0103】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、それぞれ、それら自体の配列同一率(%)を有することができる。配列同一率(%)は、10分の1の位に四捨五入される点に留意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、及び80.14は、80.1に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18、及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数である点に留意されたい。
【0104】
ある特定の態様では、同一性パーセンテージ(%ID)または第1のアミノ酸配列(または核酸配列)の第2のアミノ酸配列(または核酸配列)に対する同一性パーセンテージ(%ID)は、%ID=100×(Y/Z)として計算され、式中、Yは、第1及び第2の配列のアラインメント(目視検査または特定の配列アライメントプログラムによりアラインメントされる)において完全な一致と評価されたアミノ酸残基(または核酸塩基)の数であり、Zは、第2の配列における残基の総数である。第1の配列の長さが第2の配列を超える場合、第1の配列の第2の配列に対する同一率(%)は、第2の配列の第1の配列に対する同一率(%)より高くなる。
【0105】
当業者であれば、配列同一率(%)を計算するための配列アラインメントの生成が、一次配列データによってのみ行われるバイナリー配列間比較に限定されない点は理解されよう。配列アライメントは、配列データを異種の供給源由来のデータ、例えば、構造データ(例えば、タンパク質結晶構造)、機能データ(例えば、変異の位置)、または系統学的データと統合することにより生成され得ることも理解されよう。異種のデータを統合して多重配列アラインメントを生成する好適なプログラムは、www.tcoffee.orgで利用可能であり、代替的に例えば、EBIから利用可能なT-Coffeeである。配列同一率(%)を計算するために使用される最終的なアラインメントは、自動または手動のいずれかで管理され得ることも理解されよう。
【0106】
本明細書で使用する場合、「単離された」、「精製された」、「抽出された」という用語、及びそれらの文法的変化形は、互換的に使用され、1つ以上の精製プロセスを受けた本開示の所望の組成物、例えば、本開示のポリヌクレオチドの調製状態を指す。いくつかの態様では、本明細書で使用する場合、単離または精製は、夾雑物を含有する試料から、本開示の組成物、例えば、本開示のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を取り出す、(例えば、画分を)部分的に取り出すプロセスである。
【0107】
いくつかの態様では、単離された組成物は、検出可能な望ましくない活性を有さないか、または代替的に、望ましくない活性のレベルもしくは量が許容可能なレベルまたは量以下である。他の態様では、単離された組成物は、許容可能な量及び/または濃度及び/または活性以上の量及び/または濃度の本開示の所望の組成物を有する。他の態様では、単離された組成物は、組成物が取得される出発物質と比較して濃縮される。この濃縮は、出発物質と比較して少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%、少なくとも約99.99%、少なくとも約99.999%、少なくとも約99.9999%、または99.9999%超であり得る。
【0108】
いくつかの態様では、単離された調製物は、残留する生物学的産物を実質的に含まない。いくつかの態様では、単離された調製物は、任意の混入している生物学的物質を100%、少なくとも約99%、少なくとも約98%、少なくとも約97%、少なくとも約96%、少なくとも約95%、少なくとも約94%、少なくとも約93%、少なくとも約92%、少なくとも約91%、または少なくとも約90%含まない。残留する生物学的産物は、非生物物質(化学物質を含む)または不要な核酸、タンパク質、脂質、もしくは代謝産物を含み得る。
【0109】
本明細書で使用する場合、「連結された」という用語は、共有結合または非共有結合によりそれぞれ第2のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に結合された、第1のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列は、第2のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列に直接的に結合もしくは並列され得るか、または代替的に介在配列が第1の配列から第2の配列までに共有結合により加わり得る。「連結された」という用語は、第1のポリヌクレオチド配列の第2のポリヌクレオチド配列への5’末端または3’末端での融合を意味するだけでなく、第2のポリヌクレオチド配列(または第1のポリヌクレオチド配列)における任意の2つのヌクレオチドへの第1のポリヌクレオチド配列(またはそれぞれ第2のポリヌクレオチド配列)全体の挿入も含む。第1のポリヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーにより第2のポリヌクレオチド配列に連結され得る。リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドであり得る。
【0110】
本明細書で使用する場合、「調節する」、「修飾する」という用語、及びそれらの文法的変化形は、一般に、特定の濃度、レベル、発現、機能、または行動に適用される場合、例えば、アンタゴニストまたはアゴニストとして作用するために、特定の濃度、レベル、発現、機能、または行動を増加または減少させること、例えば、直接または間接的に、促進すること/刺激すること/上方調節することまたはそれらに干渉すること/それらを阻害すること/それらを下方調節することにより変化させる能力を指す。場合によっては、修飾因子は、ある特定の濃度、レベル、活性、または機能を、コントロールと比較して、または一般に予想される活性の平均レベルと比較して、もしくは活性のコントロールレベルと比較して増加及び/または減少させ得る。
【0111】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、及びそれらの文法的変化形は、互換的に使用され、一本鎖形態または二重螺旋のいずれかでのリン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、またはシチジン;「RNA分子」)もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)、またはそれらの任意のホスホエステルアナログ、例えば、ホスホロチオネート及びチオエステルを指す。一本鎖核酸配列は、一本鎖DNA(ssDNA)または一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNA、及びRNA-RNA螺旋が可能である。核酸分子及び特にDNAまたはRNA分子という用語は、分子の一次及び二次構造のみを指し、任意の特定の三次形態に限定されない。したがって、この用語は、とりわけ線形または環状DNA分子(例えば、制限フラグメント)、プラスミド、スーパーコイルDNA、及び染色体に見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造について述べる際、配列は、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿った5’~3’方向での配列のみを提供する通常の慣例に従って本明細書に記載され得る。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAとしては、限定されるものではないが、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、及び半合成DNAが挙げられる。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載されるような1つ以上の核酸を含む。本明細書に記載されるように、本開示のポリヌクレオチドは、DNA、RNA、またはその両方を含む。いくつかの態様では、「ポリヌクレオチド」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含有する)、スプライシングされたまたはスプライシングされていないにかかわらず、tRNA、rRNA、shRNA、siRNA、miRNA及びmRNAを含む、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含有する)、プリンまたはピリミジン塩基のN-またはC-配糖体である任意の他の種類のポリヌクレオチド、ならびに非ヌクレオチド骨格を含有する他のポリマー、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸「PNA」)及びポリモルホリノポリマー、ならびにDNA及びRNAにおいて見出されるような塩基対形成及び塩基スタッキングを可能にする配置で核酸塩基を含有することを条件とする他の配列特異的合成核酸ポリマーを含む。
【0112】
「薬学的に許容されるキャリア」、「薬学的に許容される賦形剤」という用語、及びそれらの文法的変化形は、ヒトを含む動物に使用するための米国連邦政府の規制機関により承認されたか、または米国薬局方に列挙される薬剤のいずれか、ならびに対象への組成物の投与を禁止する程度まで望ましくない生理作用の発生を引き起こさず、投与される化合物の生物活性及び特性を抑制しない任意のキャリアまたは希釈剤を包含する。医薬組成物を調製するのに有用であり、一般に安全で、非毒性であり、望ましい賦形剤及び担体が含まれる。
【0113】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」という用語は、1種以上の他の化学成分、例えば、薬学的に許容されるキャリア及び賦形剤と混合もしくは混ぜ合わされたか、またはそれらの中に懸濁された、例えば、本開示のポリヌクレオチドなどの本明細書に記載される化合物のうちの1種以上を指す。
【0114】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、例えば本明細書に記載のポリヌクレオチドによりコードされた、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指して本明細書において互換的に使用される。ポリマーは、修飾アミノ酸を含み得る。これらの用語は、自然に修飾された、または、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合など、他の任意の操作もしくは改変などの介入により修飾されたアミノ酸ポリマーも包含される。例えば、1つ以上のアミノ酸アナログ(例えば、ホモシステイン、オルニチン、p-アセチルフェニルアラニン、D-アミノ酸、及びクレアチンなどの非天然アミノ酸が挙げられる)、及び当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも定義の範囲内に含まれる。本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、任意のサイズ、構造、または機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。
【0115】
ポリペプチドとしては、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、上述のもののホモログ、オーソログ、パラログ、フラグメント及び他の等価物、バリアント、ならびにアナログが挙げられる。
【0116】
ポリペプチドは、単一のポリペプチドであり得るか、またはダイマー、トリマー、もしくはテトラマーなどの多分子複合体であり得る。それらは、一本鎖または多連鎖ポリペプチドも含み得る。最も一般的に、ジスルフィド結合は、多鎖ポリペプチドに見られる。ポリペプチドという用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的アナログであるようなアミノ酸ポリマーにも適用され得る。いくつかの態様では、「ペプチド」は、アミノ酸約50個以下の長さ、例えば、アミノ酸約5個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、または約50個の長さであり得る。
【0117】
本明細書で使用する場合、「予防する」、「予防すること」という用語、及びそれらの変化形は、疾患、障害、及び/または状態の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、または臨床徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、または徴候の発症を部分的または完全に遅延させること;特定の疾患、障害、及び/または状態の進行を部分的または完全に遅延させること;及び/または疾患、障害、及び/または状態に関連する病理を生じるリスクを減少させることを指す。いくつかの態様では、転帰の予防は、予防的治療によって実現される。
【0118】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」及び「プロモーター配列」という用語は互換可能であり、コーディング配列または機能性RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。一般的に、コーディング配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは、天然遺伝子にその全体が由来してもよく、または自然界にみられる異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成されてもよく、またはさらには、合成DNAセグメントを含んでもよい。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞タイプにおいて、または発生の異なる段階において、または異なる環境的もしくは生理学的条件に応じて、遺伝子の発現を誘導することができる点は、当業者には理解されよう。ほとんどの細胞タイプでほとんどの時間に遺伝子を発現させるプロモーターは一般的に「構成的プロモーター」と呼ばれる。特定の細胞タイプにおいて遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と呼ばれる。発生または細胞分化の特定の段階で遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「発生特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と呼ばれる。プロモーターを誘導する薬剤、生物学的分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の曝露または処理後に誘導されて遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「誘導性プロモーター」または「調節可能なプロモーター」と呼ばれる。多くの場合で調節配列の正確な境界は完全には定義されていないことから、異なる長さのDNAフラグメントが同じプロモーター活性を有し得る点もさらに認識されよう。
【0119】
プロモーター配列の境界はその3’末端では転写開始部位であり、バックグラウンドよりも高い検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小の数の塩基またはエレメントを含むように上流(5’方向)に延びている。プロモーター配列内には、転写開始部位(例えばヌクレアーゼS1によるマッピングによって簡便に定義される)ばかりでなく、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)も見出される。いくつかの態様では、本開示とともに使用することができるプロモーターには、組織特異的プロモーターが含まれる。
【0120】
本明細書で使用する場合、「予防」とは、疾患もしくは状態の発症を予防するために、または疾患もしくは状態に関連する症状を予防または遅延させるために使用される治療的行動または行動方針を指す。
【0121】
本明細書で使用する場合、「予防法」は、健康を維持し、疾患または状態の発症を予防するために、または疾患もしくは状態に関連する症状を予防もしくは遅延させるために取られる手段を指す。
【0122】
本明細書で使用する場合、「遺伝子調節領域」または「調節領域」という用語は、コーディング領域の上流(5’側のノンコーディング配列)、その内部、またはその下流(3’側のノンコーディング配列)に位置して、転写、RNAプロセシング、安定性または関連するコーディング領域の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節領域には、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、またはステムループ構造が含まれ得る。コーディング領域が真核細胞内での発現のためのものである場合、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列がコーディング配列の3’側に通常は配置される。
【0123】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、1つ以上のコーディング領域と機能的に関連付けられたプロモーター及び/または他の発現(例えば、転写)制御エレメント(例えば、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含むことができる。機能的関連付けにおいて、遺伝子産物のコーディング領域は、1つ以上の調節領域と、その遺伝子産物の発現が調節領域(複数可)の影響または制御下に置かれるようにして関連付けられる。例えば、コーディング領域とプロモーターとは、プロモーター機能の誘導が、そのコーディング領域によってコードされた遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらし、かつプロモーターとコーディング領域との連結の性質が、プロモーターが遺伝子産物の発現を誘導する能力を妨げず、またはDNA鋳型が転写される能力も妨げない場合に、「機能的に関連付けられている」。プロモーター以外の他の発現制御エレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルを、遺伝子産物の発現を誘導するようにコーディング領域と機能的に関連付けることもできる。
【0124】
本明細書で使用する場合、「類似性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子間の全体的関連性を指す。ポリマー分子同士の互いに対する類似率(%)の計算は、類似率(%)の計算が当該技術分野で理解されるところの保存的置換を考慮している点を除いて、同一率(%)の計算と同様にして行うことができる。類似率(%)は、用いられる比較尺度、すなわち、核酸同士が、例えばそれらの進化的な近さ、電荷、体積、柔軟性、極性、疎水性、芳香族性、等電点、抗原性、またはそれらの組み合わせのどれにしたがって比較されるかによって左右されることが理解される。
【0125】
「対象」、「患者」、「個体」、及び「宿主」なる用語、及びそれらの変化形は、本明細書において互換的に使用され、限定されるものではないが、ヒト、家庭用動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)、及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモットなど)が挙げられる、診断、処置、または治療が所望される任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。本明細書に記載される方法は、ヒトの治療及び獣医学的用途の両方に適用可能である。
【0126】
本明細書で使用する場合、「その必要がある対象」という表現は、本開示のポリヌクレオチドの投与から恩恵を受ける哺乳動物対象などの対象を含む。
【0127】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」または「有効量」という用語は、所望の治療効果、薬理学的、及び/または生理学的効果をもたらす必要がある対象において所望の治療効果、薬理学的、及び/または生理学的効果をもたらすのに十分な、本開示のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を含む試薬または医薬化合物の量である。治療有効量は、予防が治療とみなされ得る場合、「予防有効量」であり得る。
【0128】
本明細書で使用する場合、「処置する」、「処置」、または「処置すること」という用語は、例えば、疾患または状態の重症度の低減、疾患経過の期間の低減、疾患または状態(例えば、糖尿病)に関連する1つ以上の症状の改善または除去、疾患または状態を必ずしも治療しない、疾患または状態を有する対象に対する有益な効果の提供を指す。この用語には、疾患もしくは状態またはその症状の予防または防止も含まれる。
【0129】
本明細書で使用する場合、「非翻訳領域」または「UTR」という用語は、転写されるが翻訳されない遺伝子の領域を指す。「5’UTR」は転写開始部位で始まり、開始コドンまで続くが、開始コドンは含まれない。一方、「3’UTR」は終止コドンの直後から始まり、転写終結シグナルまで続く。核酸分子の安定性と翻訳の観点から、UTRが果たす調節的役割についての多くの証拠が示されつつある。UTRの調節的機能を本発明に記載のポリヌクレオチドに組み込むことで、分子の安定性を高めることができる。本発明のポリヌクレオチドが望ましくない臓器部位に誤って誘導された場合に備えて、転写物の発現低下の制御を行うための特定の機能を組み込むこともできる。
【0130】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。
【0131】
II.改変ポリヌクレオチド
II.A.非翻訳領域(UTR)
本開示のポリヌクレオチド(例えば、単離ポリヌクレオチド)は、(i)目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、及び(ii)1つ以上の追加の構成要素を含むように改変されており、追加の構成要素は、ポリヌクレオチドの1つ以上の特性を改善することができる。本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、1つ以上の追加の構成要素は、(i)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質(またはその機能的断片)の5’-非翻訳領域要素(5’-UTR)(本明細書では「HA-5’-UTR」とも称する)、(ii)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質(またはその機能的断片)の3’-非翻訳領域要素(3’-UTR)(本明細書では「HA-3’-UTR」とも称する)、または(iii)(i)及び(ii)の両方を含む。
【0132】
したがって、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、単離ポリヌクレオチド)は、(i)目的のタンパク質をコードするORF、及び(ii)HA-5’-UTRを含み、ただし、目的のタンパク質は、HA-5’-UTRと異種である(すなわち、同じインフルエンザHAタンパク質ではない)。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド(例えば、単離ポリヌクレオチド)は、(i)目的のタンパク質をコードするORF、及び(ii)HA-3’-UTRを含み、ただし、目的のタンパク質は、HA-3’-UTRと異種である(すなわち、同じインフルエンザHAタンパク質ではない)。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、(i)目的のタンパク質をコードするORF、(ii)HA-5’-UTR、及び(iii)HA-3’-UTRを含み、ただし、目的のタンパク質は、HA-5’-UTR及び/またはHA-3’-UTRと異種である。
【0133】
いくつかの態様では、HA-5’-UTRは、ORFの5’末端に隣接する(すなわち、隣接する位置にある)。いくつかの態様では、1つ以上の追加の構成要素(例えば、セクションII.Cでさらに説明される)は、HA-5’-UTRとORFの5’末端との間に存在する。いくつかの態様では、HA-3’-UTRは、ORFの3’末端に隣接する。いくつかの態様では、1つ以上の追加の構成要素(例えば、セクションII.Cでさらに説明される)は、ORFの3’末端とHA-3’-UTRとの間に存在する。
【0134】
いくつかの態様では、HA-5’-UTRは、配列番号13(AGCAAAAGCAGGGGAAAATAAAAGCAACAAAA)に記載の核酸配列を含む。特定の態様では、本明細書に記載のHA-5’-UTRは、配列番号13(AGCAAAAGCAGGGGAAAATAAAAGCAACAAAA)に記載の核酸配列からなる。いくつかの態様では、HA-3’-UTRは、配列番号14(CATTAGGATTTCAGAAGCATGAGAAAAACACCCTTGTTTCTACT)に記載の核酸配列を含む。いくつかの態様では、HA-3’-UTRは、配列番号14(CATTAGGATTTCAGAAGCATGAGAAAAACACCCTTGTTTCTACT)に記載の核酸配列からなる。
【0135】
本明細書で示されるように、出願人は、ポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載のものなど)の構築において、本明細書で提供される1つ以上のUTR配列(例えば、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)を含めることで、コードされたタンパク質の発現を翻訳時に増加させることができることを特定した。いくつかの態様では、タンパク質の発現は、参照発現量(例えば、HA-5’-UTR及び/またはHA-3’-UTRを欠くポリヌクレオチドによりコードされたタンパク質の発現量)と比較して、少なくとも約0.5倍、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、または少なくとも約100倍増加する。
【0136】
本明細書にさらに示されるように、いくつかの態様では、本明細書で提供されるUTR配列(例えば、配列番号13または配列番号14)は、当該技術分野で知られるものを含む他のUTR配列と比較してタンパク質の発現をより大きく増加させることができる。例えば、いくつかの態様では、他のUTR配列(例えば、本明細書に参照によりその全容を援用するところの米国特許第10,301,368 B2号に開示される2hBgUTR(配列番号15))と比較して、本明細書に記載のUTR配列(例えば、配列番号13または配列番号14)は、コードされたタンパク質の発現を、少なくとも約0.5倍、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、または少なくとも約100倍以上増加させる。
【0137】
UTRは、例えば、安定性、局在化及び/または翻訳効率の増加または減少といった、調節的役割を与える特性を有することができる。いずれの理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本開示のUTR配列(例えば、配列番号13または配列番号14)は、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの安定性、局在化、及び/または翻訳効率を改善することによって目的のタンパク質の発現を増加させることができる。特定の態様では、本明細書に記載されるUTR配列は、当該技術分野で知られる他のUTR配列(例えば、2hBgUTR、配列番号15)と比較して、ポリヌクレオチドのそのような側面(例えば、安定性、局在化、及び/または翻訳効率)を調節する能力がより高い。
【0138】
本開示から明らかなように、いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、単一のUTR配列を含み、例えば、配列番号13または配列番号14に記載のヌクレオチド配列を含むか、またはそれらからなる。いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、複数(例えば、2つ以上)のUTRを含み、UTRのうちの少なくとも1つは、本開示のHA-5’-UTR及び/またはHA-3’-UTR(例えば、配列番号13または配列番号14)から選択される。特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、複数(例えば、2つ以上)の5’-UTRを含む。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、複数(例えば、2つ以上)の3’-UTRを含む。さらなる態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、複数(例えば、2つ以上)の5’-UTR及び複数(例えば、2つ以上)の3’-UTRを含む。複数のUTRを含むポリヌクレオチドの場合、いくつかの態様では、UTRのそれぞれは同じヌクレオチド配列を有する。いずれの理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、反復UTR配列を含めることは、関連するポリヌクレオチドの安定性及び/または翻訳効率をさらに高めるのに役立ち得る。特定の態様では、複数のUTRのうちの1つ以上のものは、異なるヌクレオチド配列を有する。さらなる態様では、複数のUTRのそれぞれは、異なるヌクレオチド配列を有する。
【0139】
特に断らない限り、本開示のUTR(例えば、配列番号13または配列番号14)は、当該技術分野では周知の任意の適当なUTRと組み合わせて使用することができる。いくつかの態様では、本開示のUTRと組み合わせて使用できる追加のUTRには、特定の細胞、組織、及び/または臓器で多く発現される遺伝子中に存在するUTRが含まれる。このような追加のUTRを含めることによって、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドを、例えば対象に投与される際に、特定の細胞、組織、及び/または臓器で優先的に発現させることができる。例えば、肝臓で発現されるmRNA(例えば、アルブミン、血清アミロイドA、アポリポタンパク質A/B/E、トランスフェリン、アルファフェトプロテイン、エリスロポエチン、または第VIII因子)のUTR(例えば、5-UTR)をさらに導入することで、肝臓及び/または肝細胞株における本明細書に記載のポリヌクレオチドの発現を増加させることができる。このような組織特異的UTRの非限定的な例としては、(a)筋肉:myoD、ミオシン、ミオグロビン、ミオゲニン、及びヘルクリン、(b)内皮細胞:Tie-1及びCD36、(c)骨髄細胞:C/EBP、AML1、G-CSF、GM-CSF、CD11b、MSR、Fr-1、及びi-NOS、(d)白血球:CD45及びCD18、(e)脂肪組織:CD36、GLUT4、ACRP30、及びアディポネクチン、及び(f)肺上皮細胞:SP-A/B/C/Dに由来するものが挙げられる。
【0140】
本開示のUTR(例えば、配列番号13または配列番号14)と組み合わせて使用することができるUTRのさらなる例としては、α-グロビンまたはβ-グロビンなどのグロビン(例えばアフリカツメガエル、マウス、ウサギ、またはヒトグロビン);強力なコザック翻訳開始シグナル;CYBA(例えば、ヒトシトクロムb-245αポリペプチド);アルブミン(例えば、ヒトアルブミン7);HSD17B4(ヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ);ウイルス(例、タバコエッチウイルス(TEV)、ベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEEV)、デング熱ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、CMV即時初期1型(IE1))、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス)、シンドビスウイルス、またはPAVオオムギ黄矮性ウイルス);熱ショックタンパク質(例えば、hsp70);翻訳開始因子(例えば、elF4G);グルコーストランスポーター(例えば、hGLUT1(ヒトグルコーストランスポーター1));アクチン(例えば、ヒトαまたはβアクチン);GAPDH;チューブリン;ヒストン;クエン酸回路酵素;トポイソメラーゼ(例えば、5’TOPモチーフ(オリゴピリミジントラクト)を欠くTOP遺伝子の5’-UTR);リボソームタンパク質ラージ32(L32);リボソームタンパク質(例えば、rps9などのヒトまたはマウスリボソームタンパク質);ATPシンターゼ(例えば、ATP5A1またはミトコンドリアH+-ATPシンターゼのβサブユニット);成長ホルモンe(例えば、ウシ(bGH)またはヒト(hGH));伸長因子(例えば、伸長因子1α1(EEF1A1));マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD);筋細胞エンハンサー因子2A(MEF2A);β-F1-ATPase、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF);コラーゲン(例えば、I型コラーゲン、α2(Col1A2)、I型コラーゲン、α1(Col1A1)、VI型コラーゲン、α2(Col6A2)、VI型コラーゲン、α1(Col6A1));リボホリン(例えば、リボホリンI(RPNI));低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(例えば、LRP1);カルディオトロフィン様サイトカイン因子(例えば、Nnt1);カルレティキュリン(Calr);プロコラーゲン-リシン、2-オキソグルタル酸5-ジオキシゲナーゼ1(Plod1);ヌクレオビンジン(例えば、Nucb1);及びそれらの組み合わせの核酸配列に由来する1つ以上の5’-UTR及び/または3’-UTRが挙げられる。
【0141】
II.B.オープンリーディングフレーム(ORF)
本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、タンパク質をコードするORFと、コードされたタンパク質の発現を増強することができる1つ以上のUTR(例えば、配列番号13または配列番号14)とを含む。本明細書にさらに記載されるように、コードされたタンパク質は、本明細書に記載される1つ以上のUTRに対して異種である。したがって、コードされたタンパク質と本明細書に記載のUTR(例えば、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)とは、自然界では一緒に見出されない(例えば、インフルエンザウイルスの同じ株に由来しない)。そうでない場合、当該技術分野では周知の任意の適当なタンパク質を、本開示のポリヌクレオチドを使用してコードすることができる。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのORFは、治療用タンパク質をコードする。本明細書で使用する「治療用タンパク質」という用語は、治療効果を発揮することができる(例えば、タンパク質またはポリペプチドに対する免疫応答を誘導する)任意のタンパク質またはポリペプチドを指す。本明細書で使用する場合、「治療効果」という用語は、対象に何らかの利益をもたらす効果(例えば、疾患または異常な状態、その症状、及び/またはその副作用の軽減、消失、または予防)を指す。
【0142】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのORFは、ウイルスタンパク質(すなわち、治療用タンパク質)をコードする。いくつかの態様では、ウイルスタンパク質はコロナウイルスに由来する(「コロナウイルスタンパク質」)。特定の態様では、コロナウイルスは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2(COVID-19)、またはその両方を含む。特定の態様では、コロナウイルスは、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV;EMC/2012としても知られる)を含む。したがって、特定の態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、単離ポリヌクレオチド)は、(i)コロナウイルスタンパク質をコードするORF、(ii)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の5’非翻訳領域要素(5’-UTR)(例えば、配列番号13)、及び(iii)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の3’非翻訳領域要素(3’-UTR)(例えば、配列番号14)を含む。本明細書で示されるように、いくつかの態様では、5’-UTR及び/または3’-UTRは、ポリヌクレオチドが翻訳される際に、コードされたコロナウイルスタンパク質の発現を増加させる。
【0143】
コロナウイルスファミリーのすべてのメンバーは、27~33kbのサイズの長い+センスの一本鎖RNAゲノムを有するエンベロープウイルスである。コロナウイルスのゲノムは、すべてのコロナウイルスに共通する、5’側のフレームシフトしたポリタンパク質(ORF1a/ORF1ab)と4つのカノニカルな3’側の構造タンパク質、すなわちスパイク(S)タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質、膜(M)タンパク質、及びヌクレオカプシド(N)タンパク質を含む5つの主要なオープンリーディングフレーム(ORF)をコードしている。ウイルスエンベロープは脂質二重層で構成されており、その中に膜(M)、エンベロープ(E)、及びスパイク(S)構造タンパク質が固定されている(本明細書に参照によりその全容を援用するところのChen et. al.,J Med Virol 92(4):418-423(Apr.2020))。現在知られているヒトコロナウイルス株には、(i)ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、(ii)ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、(iii)重症急性呼吸器症候群コロナウイルス1(SARS-CoV-1)、(iv)ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63、ニューヘブンコロナウイルス)、(v)ヒトコロナウイルスHKU1、(vi)中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV、新型コロナウイルス2012及びHCoV-EMCとしても知られる)、及び(vii)重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)(2019-nCoV、新型コロナウイルス2019、またはCOVID19としても知られる)の7つがある。特に断らない限り、本明細書で使用する「コロナウイルス」という用語は、本明細書に記載のヒトコロナウイルスなどのコロナウイルス科のすべてのコロナウイルスを含み、そのすべての変異体及びバリアントを含む。いくつかの態様では、コロナウイルスは、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマクロナウイルス、デルタコロナウイルス、またはそれらの組み合わせである。このようなコロナウイルスの例示的な説明は、例えば、本明細書に参照によりその全容を援用するところのKrichel et al.,Sci Adv 7(10):eabf1004(Mar.2021)に示されている。特定の態様では、コロナウイルスタンパク質(例えば、スパイクタンパク質)は、本明細書に参照によりその全容を援用するところのTsuda et al.,Arch Virol 157(12):2349-55(Dec.2012)に記載されるようなコウモリコロナウイルス(BtCoV)に由来する。いくつかの態様では、コロナウイルスは人獣共通感染症コロナウイルス(すなわち、動物からヒトに移行したもの)を含む(例えば、本明細書に参照によりその全容を援用するところのCohen et al.,Science 371(6530):735-741(Feb.2021)を参照)。
【0144】
いくつかの態様では、コロナウイルスタンパク質は、スパイクタンパク質(またはその断片)を含む。例えば、特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、本開示の1つ以上のUTRを含む)のORFは、S1スパイクタンパク質(またはその断片)をコードする。いくつかの態様では、ORFは、S1スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)をコードする。特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFは、S2スパイクタンパク質(またはその断片)をコードする。特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFは、コロナウイルスのS2’スパイクタンパク質(またはその断片)をコードする。いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドのORFは、コロナウイルスのエンベロープ(E)タンパク質(またはその断片)をコードする。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFは、コロナウイルスの膜(M)タンパク質(またはその断片)をコードする。
【0145】
いくつかの態様では、ウイルスタンパク質はインフルエンザウイルス(「インフルエンザタンパク質」)に由来し、インフルエンザウイルスは本明細書に記載される1つ以上のUTRに対して異種である。例えば、本明細書に記載されるように(例えば、実施例1を参照)、配列番号13及び14にそれぞれ記載のHA-5’-UTR及びHA-3’-UTRは、それぞれ、2009年パンデミックインフルエンザウイルス(H1N1pdm09_A/Korea/01/09)のHAタンパク質に由来するものとした。したがって、本明細書に記載のポリヌクレオチドが配列番号13及び14に記載されるHA-5’-UTR及びHA-3’-UTRを含む場合、ポリヌクレオチドのORFは、H1N1pdm09_A/Korea/01/09由来のHAタンパク質をコードしない。代わりに、いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドが、配列番号13及び14に記載されるHA-5’-UTR及びHA-3’-UTRを含む場合、ORFはH1N1pdm09_A/Korea/01/09由来の非HAインフルエンザタンパク質(例えば、本明細書に記載されるものなど)をコードする。特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドが、配列番号13及び14に記載されるHA-5’-UTR及びHA-3’-UTRを含む場合、ORFは、異なるインフルエンザ株に由来するタンパク質をコードする。このようなインフルエンザ株の非限定的な例は、当該技術分野では周知のものである(例えば、本明細書にそれぞれ参照によりその全容を援用するところの米国特許出願公開第2007/0141078A1号;及びKrammer et al.,Nat Rev Dis Primers 4(1):3(Jun.2018)を参照)。
【0146】
インフルエンザウイルスは、セグメント化された-センスの一本鎖RNAゲノムを含むエンベロープウイルスである。インフルエンザウイルスには、(1)A型インフルエンザウイルス(IAV)、(2)B型インフルエンザウイルス(IBV)、(3)C型インフルエンザウイルス(ICV)、及び(4)D型インフルエンザウイルス(IDV)の4つの種がある。IAVとIBVには、10種類の主要なタンパク質をコードする8つのゲノムセグメントがある。ICVとIDVには、9種類の主要なタンパク質をコードする7つのゲノムセグメントがある。3つのセグメントは、転写酵素であるPB1、5’キャップを認識するPB2、及びエンドヌクレアーゼであるPA(ICV及びIDVではP3)のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)複合体の3つのサブユニットをコードしている。マトリックスタンパク質(M1)と膜タンパク質(M2)は、非構造タンパク質(NS1)と核輸送タンパク質(NEP)と同様にセグメントを共有している。IAVとIBVでは、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)がそれぞれ1つのセグメントにコードされているのに対して、ICVとIDVでは、HAとNAの機能を融合したヘマグルチニン-エステラーゼ融合(HEF)タンパク質が1つのセグメントにコードされている。最後のゲノムセグメントはウイルス核タンパク質(NP)をコードしている。インフルエンザウイルスは、PB1-F2及びPA-Xなどの様々なアクセサリータンパク質もコードしており、これらは別のオープンリーディングフレームから発現され、宿主防御の抑制、毒性、及び病原性に重要である。
【0147】
インフルエンザウイルス株は、起源の宿主種、単離された地理的場所及び年、シリアル番号に従って分類され、A型インフルエンザウイルス(IAV)ではHA及びNAのサブタイプの血清学的特性によって分類される。IAVでは、少なくとも16のHAサブタイプ(H1~H16)と9つのNAサブタイプ(N1~N9)が確認されている。例えば、本明細書にそれぞれ参照によりその全容を援用するところの米国特許出願公開第2007/0141078A1号;及びKrammer et al.,Nat Rev Dis Primers 4(1):3(Jun.2018)を参照)。そうでない旨が示されない限り、本明細書で使用する「インフルエンザ」という用語は、インフルエンザウイルスのすべての種、サブタイプ、及び/または株を含む。
【0148】
本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのORFは、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質をコードし、HAタンパク質は、H1N1pdm09_A/Korea/01/09に由来しない。いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのORFは、インフルエンザノイラミニダーゼ(NA)タンパク質をコードする。いくつかの態様では、ORFはインフルエンザ核タンパク質(NP)をコードする。いくつかの態様では、ORFはインフルエンザマトリックス1(M1)タンパク質をコードする。いくつかの態様では、ORFはインフルエンザマトリックス2(M2)タンパク質をコードする。いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのORFは、インフルエンザ非構造タンパク質1(NS1)タンパク質をコードする。いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのORFは、インフルエンザ非構造タンパク質2(NS2)タンパク質をコードする。特定の態様では、ORFはインフルエンザポリメラーゼ酸性(PA)タンパク質をコードする。いくつかの態様では、ORFはインフルエンザポリメラーゼ塩基性1(PB1)タンパク質をコードする。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFは、インフルエンザPB1-F2タンパク質をコードする。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドのORFはインフルエンザポリメラーゼ塩基性2(PB2)タンパク質をコードする。
【0149】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFは、腫瘍抗原をコードする。したがって、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、単離ポリヌクレオチド)は、(i)腫瘍抗原をコードするORF、(ii)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の5’非翻訳領域要素(5’-UTR)(例えば、配列番号13)、及び(iii)インフルエンザヘマグルチニン(HA)タンパク質の3’非翻訳領域要素(3’-UTR)(例えば、配列番号14)を含む。本開示から明らかなように、当該技術分野では周知の任意の腫瘍抗原を、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFを使用してコードすることができる。そのような腫瘍抗原の非限定的な例としては、α-フェトプロテイン(AFP)、B細胞成熟抗原(BCMA)、がん胎児性抗原(CEA)、上皮腫瘍抗原(ETA)、ムチン1(MUC1)、Tn-MUC1、ムチン16(MUC16)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE、例えばMAGEA3)、腫瘍タンパク質p53(p53)、CD4、CD8、CD45、CD80、CD86、プログラム死リガンド1(PD-L1)、プログラム死リガンド2(PD-L2)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、TAG-72、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)、GD2、cMET、EGFR、メソテリン、VEGFR、α-葉酸受容体、CE7R、IL-3、がん-精巣抗原(例えば、ニューヨーク食道扁平上皮癌1(NY-ESO-1))、MART-1 gp100、ROR1、ROR2、グリピカン2、グリピカン3、TNF関連アポトーシス誘導リガンド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの態様では、腫瘍抗原はBCMAである。いくつかの態様では、腫瘍抗原はNY-ESO-1である。いくつかの態様では、腫瘍抗原はMAGEA3である。
【0150】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFは、遺伝子疾患に関連したタンパク質をコードする。いずれの理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、ORFは、遺伝子疾患を有する対象における機能不全のタンパク質をコードすることができ、それにより、ORFを含むポリヌクレオチドが対象に投与される際、コードされたタンパク質が機能不全のタンパク質に関連する機能の回復を助けることができ、それによって遺伝子疾患に関連する1つ以上の症状を治療及び/または軽減することができる。例えば、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドを使用して治療することができる遺伝子疾患には、ハンター症候群が含まれる。
【0151】
本明細書で使用する場合、「ハンター症候群」とは、グリコサミノグリカン(またはGAGまたはムコ多糖)と呼ばれる大きな糖分子が様々な身体組織に蓄積する稀な遺伝子疾患を指す。GAGの蓄積は、これらに限定されるものではないが、顔面異常(例えば、唇の肥厚、広い鼻と広がった鼻孔、舌の突出)、拡大した頭部;低くてかすれた声;異常な骨の大きさまたは形状ならびにその他の骨格の不規則性;臓器の肥大による腹部の膨張;慢性下痢;小石に似た白色皮膚増殖;関節の剛直;攻撃的な行動;成長の鈍化;発達の遅れ(歩行または発話の遅れなど);難聴;心臓弁関連疾患;閉塞性呼吸器疾患;睡眠時無呼吸;及びそれらの組み合わせを含む広範な症状を引き起こす可能性がある。ハンター症候群は、リソソーム酵素であるイズロネート-2-スルファターゼ(I2S)の欠損によって引き起こされる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFは、I2S酵素をコードする。
【0152】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、目的のタンパク質をコードする単一のORFを含む。特定の態様では、記載されるポリヌクレオチドは、複数のORFを含む(すなわち、ポリシストロン性ポリヌクレオチド)。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれよりも多いORFを含む。特定の態様では、複数のORFのうちの1つ以上のものは、異なる目的のタンパク質をコードする。
【0153】
II.C.他の構成要素
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)は、コードされたタンパク質の発現をさらに増加させるのに役立つ1つ以上の追加の構成要素をさらに含む。そのような構成要素の非限定的な例を以下に記載する。
【0154】
II.C.1.キャップ
例えば、特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは5’キャップを含む。したがって、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは(5’~3’の方向に)、(i)5’キャップ、(ii)HA-5’-UTR(例えば、配列番号13)、(iii)目的のタンパク質をコードするORF、及び(iv)HA-3’-UTR(例えば、配列番号14)を含む。
【0155】
本明細書で使用される場合、「5’キャップ」という用語は、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)の5’末端に付加され得る修飾ヌクレオチド(例えば、グアニン)を指す。5’キャップ構造は、ポリヌクレオチドの核輸送(例えば、翻訳が行われる細胞質への)においての役割を果たすことができ、かつ/またはポリヌクレオチドの安定性を促進することができる。いくつかの態様では、5’キャップは、5’-5’-三リン酸結合を介して本明細書に記載のポリヌクレオチドの5’末端に連結することができる。特定の態様では、5’キャップはメチル化することができる(例えば、m7GpppN、ここで、Nはポリヌクレオチドの末端5’ヌクレオチドである)。当該技術分野では周知の任意の適当な5’キャップを、本開示とともに使用することができる。本開示とともに使用することができる5’キャップの非限定的な例としては、m2
7,2’-OGppspGRNA、m7GpppG、m7Gppppm7G、m2
(7,3’-O)GpppG、m2
(7,2’-O)GppspG(D1)、m2
(7,2’-O)GppspG(D2)、m2
7,3’-OGppp(m1
2’-O)ApG、(m7G-3’mppp-G、これは、同等なものとして、3’O-Me-m7G(5’)ppp(5’)Gを指定することができる)、N7,2’-O-ジメチル-グアノシン-5’-三リン酸-5’-グアノシン、m7Gm-ppp-G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-G(5’)ppp(5’)G、N7-(4-クロロフェノキシエチル)-m3’-OG(5’)ppp(5’)G、7mG(5’)ppp(5’)N、pN2p、7mG(5’)ppp(5’)NlmpNp、7mG(5’)-ppp(5’)NlmpN2 mp、m(7)Gpppm(3)(6,6,2’)Apm(2’)Apm(2’)Cpm(2)(3,2’)Up、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、2-アジド-グアノシン、N1-メチルシュードウリジン、m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pG、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0156】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドとともに使用することができる5’キャップは、キャップアナログ(「合成キャップアナログ」、「化学キャップ」、「化学キャップアナログ」、または「構造的または機能的キャップアナログ」としても知られる)を含む。「キャップアナログ」は、キャップ機能を保持する一方で、それらの化学構造において天然(すなわち、内因性、野生型、または生理学的)5’キャップとは異なる。キャップアナログの非限定的な例は、本明細書にそれぞれ参照によりその全容を援用するところのUS8,519,110及びKore et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry 21:4570-4574(2013)に記載されている。
【0157】
いくつかの態様では、5’キャップは修飾される。5’キャップの修飾により、ポリヌクレオチドの安定性、半減期、及び/または翻訳効率をさらに高めることができる。いくつかの態様では、修飾5’キャップは、以下の修飾、すなわち、キャップされたグアノシン三リン酸(GTP)の2’及び/または3’位の修飾、(炭素環式環を形成する)糖環の酸素のメチレン部分(CH2)による置換、キャップ構造の三リン酸架橋部分の修飾、または核酸塩基(G)部分の修飾のうちの1つ以上のものを含む。例えば、本明細書に参照によりその全容を援用するところのUS2014/0147454及びWO2018/160540を参照されたい。
【0158】
II.C.2.ポリ(A)テール
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)は、ポリヌクレオチドの3’末端にアデニンヌクレオチドの長鎖(本明細書では「ポリ(A)テール」と呼ぶ)をさらに含む。特定の態様では、ポリ(A)テールは、単独で、または本明細書に記載の他の構成要素(例えば、5’キャップ)と組み合わせて存在する。したがって、いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは(5’~3’の方向に)、(i)5’キャップ、(ii)HA-5’-UTR(例えば、配列番号13)、(iii)目的のタンパク質をコードするORF、(iv)HA-3’-UTR(例えば、配列番号14)、及び(v)3’ポリ(A)テールを含む。
【0159】
いくつかの態様では、ポリ(A)テールの長さは、約30ヌクレオチド長よりも長い。特定の態様では、ポリ(A)テールの長さは、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約100ヌクレオチド、少なくとも約110ヌクレオチド、少なくとも約120ヌクレオチド、少なくとも約130ヌクレオチド、少なくとも約140ヌクレオチド、少なくとも約150ヌクレオチド、少なくとも約160ヌクレオチド、少なくとも約170ヌクレオチド、少なくとも約180ヌクレオチド、少なくとも約190ヌクレオチド、少なくとも約200ヌクレオチド、少なくとも約250ヌクレオチド、少なくとも約300ヌクレオチド、少なくとも約350ヌクレオチド、少なくとも約400ヌクレオチド、少なくとも約450ヌクレオチド、または少なくとも約500ヌクレオチドまたはそれよりも大きい長さである。
【0160】
当該技術分野では周知の任意の適当なポリ(A)テールを、本開示とともに使用することができる。本開示とともに使用することができるポリ(A)テールの非限定的な例としては、SV40ポリ(A)、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)、ポリ(A)-Gカルテット、またはその組み合わせが挙げられる。
【0161】
II.C.3.エンハンサー
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)によってコードされるタンパク質の発現は、1つ以上のエンハンサー配列(本明細書では「翻訳エンハンサーエレメント」または「TEE」とも呼ばれる)を使用してさらに増加させることができる。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも9個、少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、または少なくとも約50個またはそれよりも多くのエンハンサー配列を含む。ポリヌクレオチドが複数のエンハンサーを含む場合、特定の態様では、各エンハンサーは同じである。いくつかの態様では、1つ以上のエンハンサーが異なる。いくつかの態様では、1つ以上のエンハンサーはスペーサーによって分離される。
【0162】
当該技術分野では周知の任意のエンハンサーを本開示のポリヌクレオチドとともに使用することができる(例えば、本明細書にそれぞれ参照によりその全容を援用するところのWO1999024595、WO2012009644、WO2009075886及びWO2007025008、欧州特許公開第EP2610341A1及びEP2610340A1、米国特許第6,310,197号、米国特許第6,849,405号、米国特許第7,456,273号、米国特許第7,183,395号を参照されたい)。いくつかの態様では、本開示で有用なエンハンサーは、組織特異エンハンサーである。特定の態様では、本開示とともに使用できるエンハンサーは、ヒト骨格アクチン遺伝子エレメント、心臓アクチン遺伝子エレメント、筋細胞特異的エンハンサー結合因子MEF(例えばMEF2)、MyoDエンハンサーエレメント、心臓エンハンサー因子(CEF)部位、マウスクレアチンキナーゼエンハンサーエレメント、骨格速筋型トロポニンC遺伝子エレメント、遅筋型心筋トロポニンC遺伝子エレメント、遅筋型トロポニンI遺伝子エレメント、低酸素誘導性核因子、ステロイド誘導性エレメント、グルココルチコイド応答エレメント(GRE)、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0163】
II.C.4.マイクロRNA結合部位
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)中に存在し得る1つ以上の追加の構成要素は、マイクロRNA(miRNA)結合部位を含む。
【0164】
miRNAは、ポリヌクレオチドの3’-UTRに結合する非コード配列であり、ポリヌクレオチドの安定性を低下させるかまたは翻訳を阻害することによって遺伝子発現を減少させることができる。いずれの理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、miRNA結合部位を本明細書に記載のポリヌクレオチドに組み込むことによって、コードされたタンパク質の発現をさらに調節することができる。例えば、本明細書に記載のポリヌクレオチドが肝臓を標的とすることを意図していない場合、肝臓に豊富に存在するmiRNA(例えば、miR-122)に対する結合部位を含むようにポリヌクレオチドを改変することによって、対象に投与される際にコードされたタンパク質が肝臓で発現されないようにすることができる。異なる組織で豊富に発現されるmiRNAの非限定的な例としては、肝臓(miR-122)、筋肉(miR-133、miR-206、miR-208)、内皮細胞(miR-17-92、miR-126)、骨髄細胞(miR-142-3p、miR-142-5p、miR-16、miR-21、miR-223、miR-24、miR-27)、脂肪組織(let-7、miR-30c)、心臓(miR-1d、miR-149)、腎臓(miR-192、miR-194、miR-204)、及び肺上皮細胞(let-7、miR-133、miR-126)が挙げられる。
【0165】
miRNAは免疫細胞内で差次的に発現されることも知られている。本明細書で使用する場合、「免疫細胞」には、これらに限定されるものではないが、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞及びマクロファージ)、単球、Bリンパ球、Tリンパ球、顆粒球、及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。いくつかの態様では、特定の免疫細胞で豊富に発現されるmiRNAに対する結合部位を導入することによって、本開示のポリヌクレオチドを、特定の免疫細胞にターゲティングすることができ、それにより宿主免疫応答を調節することができる(例えば、骨髄樹状細胞で豊富に発現されるmiR-142及び/またはmiR-146に対する結合部位を導入することにより、そのような細胞を標的化することを回避するように本開示のポリヌクレオチドを操作することができる)。
【0166】
同様に、特定の罹患細胞/組織(例えば、腫瘍細胞または病原体に感染した細胞)は、健康な細胞/組織と比較して異なるmiRNA発現プロファイルを有する(例えば、あるものは過剰発現され、他のものは過小発現される)。例えば、本明細書にそれぞれ参照によりその全容を援用するところのUS2013/0053264(前立腺癌)、US2011/0171646(膵臓癌)、US8,415,096(喘息及び炎症)、US2012/0329672(肝臓癌)、及びUS2013/0053263(肺疾患)を参照されたい。したがって、特定のmiRNAに対する結合部位を導入することによって、本開示のポリヌクレオチドは、特定の罹患細胞/組織を特異的に標的とするように操作することもできる。
【0167】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、少なくとも1つのmiRNA結合部位を含む。特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、複数のmiRNA結合部位を含む。例えば、いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、または少なくとも約10個またはそれよりも多くのmiRNA結合部位を含む。ポリヌクレオチドが複数のmiRNA結合部位を含む場合、いくつかの態様では、複数のmiRNA結合部位は同じである。特定の態様では、複数のmiRNA結合部位のうちの1つ以上のものは異なる(例えば、複数のmiRNA結合部位のそれぞれは、異なるmiRNAに特異的である)。
【0168】
II.C.5.IRES配列
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)は、内部リボソーム進入部位(IRES)をコードするヌクレオチド配列をさらに含むことができる。IRESは、5’キャップ構造の非存在下でタンパク質合成を開始する際に重要な役割を果たす。IRESは、唯一のリボソーム結合部位として機能することもでき、ポリヌクレオチドの複数のリボソーム結合部位のうちの1つとして機能することもできる。複数の機能的リボソーム結合部位を含むポリヌクレオチドは、リボソームによって独立して翻訳されるいくつかのペプチドまたはポリペプチドをコードすることができる(「ポリシストロン性ポリヌクレオチド」)。したがって、本明細書に記載のポリヌクレオチドがIRESをコードする配列を含む場合、特定の態様では、ポリヌクレオチドは複数(例えば、少なくとも2つ)の翻訳可能領域を含むことができる。
【0169】
当該技術分野では周知の任意のIRES配列を本開示とともに使用することができる。本開示で使用することができるIRES配列の非限定的な例としては、ピコルナウイルス(例えば、FMDV)、ペストウイルス(CFFV)、ポリオウイルス(PV)、脳心筋炎ウイルス(ECMV)、口蹄疫ウイルス(FMDV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、豚コレラウイルス(CSFV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、コオロギ麻痺ウイルス(CrPV)、またはそれらの組み合わせに由来する配列が挙げられる。
【0170】
II.C.6.転写後調節エレメント
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)とともに使用することができる追加の構成要素は、転写後調節エレメントを含む。いくつかの態様では、転写後調節エレメントは、本明細書に記載されるポリヌクレオチド中に本明細書に記載される1つ以上の他の構成要素(例えば、5’キャップ、3’ポリ(A)テール、エンハンサー配列、miRNA結合部位、IRES配列、またはそれらの組み合わせ)と組み合わせて存在することができる。特定の態様では、翻訳後調節エレメントは、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFの3’側に位置する。本開示で有用な転写後調節エレメントの非限定的な例としては、変異型ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、マイクロRNA結合部位、DNA核標的化配列、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0171】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)中に存在し得る1つ以上の追加の構成要素は、プロモーターを含む。特定の態様では、ポリヌクレオチドは単一のプロモーターを含むことができる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリヌクレオチドのORFと機能的に連結された複数のプロモーター(例えば、2、3、4、または5個以上)を含むことができる。ポリヌクレオチドが複数のプロモーターを含む場合、いくつかの態様では、複数のプロモーターのそれぞれは同じである。特定の態様では、複数のプロモーターのうちの1つ以上は異なる。
【0172】
いくつかの態様では、本開示で有用なプロモーターは、哺乳動物プロモーター、ウイルスプロモーター、またはその両方を含む。特定の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドとともに使用できるプロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、またはその両方を含む。
【0173】
構成的哺乳動物プロモーターとしては、これらに限定されるものではないが、以下の遺伝子のプロモーターが挙げられる:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、β-アクチンプロモーター、及びその他の構成的プロモーター。真核細胞において構成的に機能するウイルスプロモーターの例としては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長い末端反復配列(LTR)、及びその他のレトロウイルス由来のプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、本開示とともに使用することができるプロモーターとしては、誘導性プロモーターがある。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下で誘導されて転写及び翻訳を促進する。いくつかの態様では、使用することができるプロモーターはT7プロモーターを含む。
【0174】
II.D.修飾ヌクレオシド/ヌクレオチド
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)は、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシド及び/またはヌクレオチドを含む。本開示のポリヌクレオチドが化学修飾されている場合、ポリヌクレオチドは、「修飾されたポリヌクレオチド」と称され得る。
【0175】
「ヌクレオシド」は、糖分子(例えば、ペントースまたはリボース)またはその誘導体を、有機塩基(例えば、プリンまたはピリミジン)またはその誘導体(本明細書において「核酸塩基」とも称される)とともに含有する化合物を指す。「ヌクレオチド」は、リン酸基を含むヌクレオシドを指す。修飾されたヌクレオチドは、1つ以上の修飾されたまたは非天然ヌクレオシドを含むように、任意の有用な方法により、例えば、化学的に、酵素的に、または組換えにより合成され得る。
【0176】
ポリヌクレオチドは、連結されたヌクレオシドの領域または複数の領域を含み得る。かかる領域は、可変的な骨格結合を有し得る。結合は、標準的なホスホジエステル結合であってよく、その場合、ポリヌクレオチドはヌクレオチドの領域を含む。
【0177】
本明細書のポリヌクレオチドは、様々な異なる修飾を含むことができる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、1個、2個、またはそれ以上(任意選択的に異なる)のヌクレオシドまたはヌクレオチド修飾を有することができる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、1つ以上の所望の特性、例えば、未修飾ポリヌクレオチドと比較して改善された熱または化学安定性、低減された免疫原性、低減された分解、標的マイクロRNAに対する結合の増加、他のマイクロRNAまたは他の分子に対する低減された非特異的結合を示し得る。
【0178】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、化学修飾されている。本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドに関して、「化学修飾」または必要に応じて「化学修飾された」という用語は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、ウリジン(U)、チミジン(T)、またはシチジン(C)リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドに対する、限定されるものではないが、それらの核酸塩基、糖、骨格、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるそれらの位置、パターン、パーセント、または集団のうちの1つ以上における修飾を指す。
【0179】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかの均一な化学修飾、または同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかにおける同じ出発修飾の下方滴定(downward titration)によって生成される修飾の群、またはランダムな組み込みを伴うことを除いて同じヌクレオシド種類のすべてもしくはいずれかの測定されたパーセントの化学修飾を有し得る。さらなる態様では、本開示のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド全体にわたって同じヌクレオシド種類のうちの2つ、3つ、または4つの均一な化学修飾を有し得る(例えば、すべてのウリジン及び/またはすべてのシトシンなどが、同じように修飾される)。
【0180】
修飾されたヌクレオチドの塩基対形成は、標準的なアデニン-チミン、アデニン-ウラシル、またはグアニン-シトシン塩基対だけでなく、ヌクレオチド及び/または非標準的もしくは修飾塩基を含む修飾ヌクレオチドの間で形成される塩基対も包含し、ここで、水素結合ドナー及び水素結合アクセプターの配置が、非標準的塩基と標準的塩基との間、または2つの相補的な非標準的塩基構造間の水素結合を可能にする。かかる非標準的塩基対形成の1つの例は、修飾された核酸塩基イノシンとアデニン、シトシン、またはウラシルとの間の塩基対形成である。塩基/糖またはリンカーの任意の組み合わせが、本開示のポリヌクレオチドに組み込まれ得る。
【0181】
当業者は、特に注記される場合を除き、本出願に記載されるポリヌクレオチド配列は、代表的なDNA配列において「T」を列挙するが、配列がRNAを表す場合、「T」は「U」と置換されることを理解するであろう。例えば、本開示のTDは、RNAとして、DNAとして、またはRNA及びDNA単位の両方を含むハイブリッド分子として投与することができる。
【0182】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、8つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、18、20以上)の修飾された核酸塩基の組み合わせを含む。
【0183】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチド内の核酸塩基、糖、骨格結合、またはそれらの任意の組み合わせは、少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%修飾される。
【0184】
II.D.1.塩基修飾
特定の態様では、化学修飾は、本開示のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)中の核酸塩基に行われる。いくつかの態様では、少なくとも1つの化学修飾ヌクレオシドは、修飾されたウリジン(例えば、シュードウリジン(ψ)、2-チオウリジン(s2U)、1-メチル-シュードウリジン(m1ψ)、1-エチル-シュードウリジン(e1ψ)、または5-メトキシ-ウリジン(mo5U))、修飾されたシトシン(例えば、5-メチルシチジン(m5C))、修飾されたアデノシン(例えば、1-メチル-アデノシン(m1A)、N6-メチル-アデノシン(m6A)、または2-メチルアデニン(m2A))、修飾されたグアノシン(例えば、7-メチルグアノシン(m7G)または1-メチルグアノシン(m1G))、またはそれらの組み合わせである。
【0185】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、特定の修飾について均一に修飾される(例えば、完全に修飾される、配列全体にわたって修飾されるなど)。例えば、ポリヌクレオチドは、同じ種類の塩基修飾、例えば、5-メチルシチジン(m5C)により均一に修飾され得、これは、ポリヌクレオチド配列におけるすべてのシトシン残基が、5-メチルシチジン(m5C)と置き換えられることを意味する。同様に、ポリヌクレオチドは、配列に存在する任意の種類のヌクレオシド残基について、修飾されたヌクレオシド、例えば、上記に記載されるもののいずれかとの置換により均一に修飾され得る。
【0186】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の修飾された核酸塩基の組み合わせを含む。いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド中の1種類の核酸塩基の少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%が、修飾された核酸塩基である。
【0187】
II.D.2.骨格修飾
いくつかの態様では、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、ヌクレオシド間の任意の有用な結合を含むことができる。本開示の組成物において有用な、骨格修飾を含むそのような結合としては、これらに限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:3’-アルキレンホスホネート、3’-アミノホスホロアミダート、アルケン含有骨格、アミノアルキルホスホロアミダート、アミノアルキルホスホトリエステル、ボラノホスフェート、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、-CH2-NH-CH2-、キラルホスホネート、キラルホスホロチオネート、ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレン(メチルイミノ)、メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格、モルホリノ結合、-N(CH3)-CH2-CH2-、ヘテロ原子ヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオシド、ホスフィナート、ホスホロアミダート、ホスホロジチオエート、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、ホスホロチオネート、ホスホトリエステル、PNA、シロキサン骨格、スルファメート骨格、スルフィド、スルホキシド、及びスルホン骨格、スルホネート及びスルホンアミド骨格、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびにチオノホスホロアミダート。
【0188】
いくつかの態様では、上記に開示される骨格結合の存在は、本開示のポリヌクレオチドの安定性及び分解に対する耐性を増加させる。いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド中の少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%の骨格結合が修飾される(例えば、それらのすべてがホスホロチオエートである)。
【0189】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドに含めることができる骨格修飾は、ホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー(PMO)及び/またはホスホロチオエート(PS)修飾を含む。
【0190】
II.D.3.糖修飾
本開示のポリヌクレオチドに組み込まれ得る修飾されたヌクレオシド及びヌクレオチドは、核酸の糖に対して修飾され得る。LNAまたは2’-置換糖などの親和性改善ヌクレオチドアナログを組み込むことによって、ポリヌクレオチドの長さ及び/またはサイズを変える(例えば、減少させる)ことができる。
【0191】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド中の少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のヌクレオチドが糖修飾(例えば、LNA)を有する。
【0192】
本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)であってよい。一般に、RNAは、酸素を有する五員環である糖基リボースを含む。非限定的な例示的修飾ヌクレオチドとしては、リボースにおける酸素の(例えば、S、Se、またはアルキレン、例えば、メチレンまたはエチレンとの)置換;二重結合の付加(例えば、リボースのシクロペンテニルまたはシクロヘキセニルとの置換);リボースの環縮小(例えば、シクロブタンまたはオキセタンの四員環の形成);リボースの環拡大(例えば、追加の炭素またはヘテロ原子を有する六または七員環の形成、例えば、アンヒドロヘキシトール、アルトリトール、マンニトール、シクロヘキサニル、シクロヘキセニル、及びホスホロアミダート骨格も有するモルホリノ);多環式形態(例えば、トリシクロ、及び「アンロックド」形態、例えば、グリコール核酸(GNA)(例えば、R-GNAまたはS-GNA、ここで、リボースは、ホスホジエステル結合に結合されたグリコールユニットと置き換えられる)、トレオース核酸(TNA、ここで、リボースは、α-L-トレオフラノシル-(3’→2’)と置き換えられる)、及びペプチド核酸(PNA、ここで、2-アミノ-エチル-グリシン結合が、リボース及びホスホジエステル骨格と置き換わる)が挙げられる。糖基は、リボースにおける対応する炭素と反対の立体化学配置を有する1つ以上の炭素も含有し得る。したがって、ポリヌクレオチド分子は、糖として、例えば、アラビノースを含有するヌクレオチドを含み得る。
【0193】
リボースの2’ヒドロキシル基(OH)は、いくつかの異なる置換基で修飾または置換され得る。2’-位での例示的な置換としては、限定されるものではないが、H、ハロ、任意選択的に置換されたC1~6アルキル;任意選択的に置換されたC1~6アルコキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリールオキシ;任意選択的に置換されたC3~8シクロアルキル;任意選択的に置換されたC3~8シクロアルコキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリールオキシ;任意選択的に置換されたC6~10アリール-C1~6アルコキシ、任意選択的に置換されたC1~12(ヘテロシクリル)オキシ;糖(例えば、リボース、ペントース、または本明細書に記載されるいずれか);ポリエチレングリコール(PEG)、-O(CH2CH2O)nCH2CH2OR(ここで、Rは、Hまたは任意選択的に置換されたアルキルであり、nは、0~20(例えば、0~4、0~8、0~10、0~16、1~4、1~8、1~10、1~16、1~20、2~4、2~8、2~10、2~16、2~20、4~8、4~10、4~16、及び4~20)の整数である);「ロックド」核酸(LNA)(2’-ヒドロキシが、C1~6アルキレンまたはC1~6ヘテロアルキレン架橋により、同じリボース糖の4’-炭素に連結されており、ここで、例示的な架橋としては、メチレン、プロピレン、エーテル、アミノ架橋、アミノアルキル、アミノアルコキシ、アミノ、及びアミノ酸が挙げられる)が挙げられる。
【0194】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド中に存在するヌクレオチドアナログは、例えば、2’-O-アルキル-RNAユニット、2’-OMe-RNAユニット、2’-O-アルキル-SNA、2’-アミノ-DNAユニット、2’-フルオロ-DNAユニット、LNAユニット、アラビノ核酸(ANA)ユニット、2’-フルオロ-ANAユニット、HNAユニット、INA(インターカレーティング核酸)ユニット、2’MOEユニット、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、LNAは、例えば、オキシLNA(例えば、β-D-オキシ-LNAまたはα-L-オキシ-LNA)、アミノLNA(例えば、β-D-アミノ-LNAまたはα-L-アミノ-LNA)、チオLNA(例えば、β-D-チオ0-LNAまたはα-L-チオ-LNA)、ENA(例えば、β-D-ENAまたはα-L-ENA)、またはそれらの任意の組み合わせである。さらなる態様では、本開示のポリヌクレオチドに含めることができるヌクレオチドアナログは、ロック核酸(LNA)、アンロック核酸(UNA)、アラビノ核酸(ABA)、架橋核酸(BNA)、及び/またはペプチド核酸(PNA)を含む。
【0195】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、修飾されたRNAヌクレオチドアナログ(例えば、LNA)及びDNA単位の両方を含み得る。いくつかの態様では、miR-485阻害剤はギャップマーである。例えば、米国特許第8,404,649号、同第8,580,756号、同第8,163,708号、同第9,034,837号(これらのいずれも本明細書に参照によりその全容を援用する)を参照されたい。いくつかの態様では、
【0196】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼによる速やかな分解を防止するための修飾を含むことができる。修飾としては、これらに限定されるものではないが、例えば、(a)末端修飾、例えば、5’末端修飾(リン酸化、脱リン酸化、共役化、反転結合など)、3’末端修飾(共役化、DNAヌクレオチド、反転結合など)、(b)塩基修飾、例えば、修飾塩基、安定化塩基、不安定化塩基、または広範なパートナーと塩基対合する塩基、または共役化塩基による置換、(c)糖修飾(例えば、2’位または4’位における)または糖の置換、ならびに(d)ホスホジエステル結合の修飾または置換を含む、ヌクレオシド間結合の修飾が挙げられる。
【0197】
III.ベクター
いくつかの態様では、本明細書では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を含むベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。本明細書に記載されるように、かかるベクターは、宿主細胞及び治療的介入の標的とされる細胞における組換え発現に有用である。「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子、または別の核酸を輸送することができるそのような核酸分子を含む存在を指すことが意図される。いくつかの態様では、ベクターは、「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。いくつかの態様では、ベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムにライゲートすることができる。特定のベクターまたはベクターの一部であるポリヌクレオチドは、それらが導入される宿主細胞において自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれることが可能で、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが機能可能に連結された遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書では、「組み換え発現ベクター」(または、単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組み換えDNA技法において利用される発現ベクターは、プラスミドの形態である場合が多い。プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形態であることから、本開示では「プラスミド」と「ベクター」とは、文脈に応じて互換的に使用される場合があり得る。しかしながら、本開示では、同等の機能を有するウイルスベクター(例えば、レンチウイルス、複製不能レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなど)などの他の形態の発現ベクターも開示される。
【0198】
いくつかの態様では、ベクターは、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)及び調節エレメントを含む。例えば、特定の態様では、ベクターは、プロモーターに機能的に連結された本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を含む。いくつかの態様では、ベクターは、第1のORF及び第2のORFを含むことができ、第1のORFは第1のプロモーターの制御下にあり、第2のORFは第2のプロモーターの制御下にある。本明細書に記載のポリヌクレオチドが複数のORF(例えば、2、3、4、または5つ以上)を含む場合、特定の態様では、複数のプロモーターのそれぞれは同じである。いくつかの態様では、複数のプロモーターのうちの1つ以上は異なる。
【0199】
当該技術分野において既知の任意の適したプロモーターを本開示で使用することができる。いくつかの態様では、本開示に有用なプロモーターは、構成的または誘導的プロモーターなどの哺乳動物またはウイルスプロモーターを含む。いくつかの態様では、本開示のためのプロモーターは、少なくとも1つの構成的プロモーター及び少なくとも1つの誘導的プロモーター、例えば、組織特異的なプロモーターを含む。
【0200】
構成的哺乳動物プロモーターとしては、以下の遺伝子に対するプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータ-アクチンプロモーター、及びその他の構成的プロモーター。真核細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの末端反復配列(LTR)、及びその他のレトロウイルス由来のプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。本明細書に記載される通り、いくつかの態様では、本開示で使用され得るプロモーターは、誘導的プロモーターである。誘導的プロモーターは、誘導剤の存在下において発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、特定の金属イオンの存在下において転写及び翻訳を促進するよう誘導される。複数の誘導性プロモーターが存在する場合、それらを同じインデューサー分子または異なるインデューサーによって誘導することができる。いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドとともに使用することができるプロモーターには、T7プロモーターが含まれる。
【0201】
本開示の他の場所にさらに記載されるように、いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を含むベクターは、1つ以上の調節エレメントをさらに含むことができる。調節エレメントの非限定的な例としては、翻訳エンハンサーエレメント(TEE)、翻訳開始配列、マイクロRNA結合部位もしくはそのシード、連結ヌクレオシドの3’テーリング領域、AUリッチエレメント(ARE)、転写後制御モジュレーター、5’UTR、3’UTR、局在化配列(例えば、膜局在化配列、核局在化配列、核排除配列(nuclear exclusion sequence)、もしくはプロテアソーム標的化配列)、翻訳後修飾配列(例えば、ユビキチン化、リン酸化、もしくは脱リン酸化)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0202】
いくつかの態様では、ベクターは、転位因子をさらに含んでもよい。したがって、特定の態様では、ベクターは、少なくとも2つのトランスポゾン特異的な末端逆位反復配列(ITR)が隣接した、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を含む。いくつかの態様では、トランスポゾン特異的ITRは、DNAトランスポゾンによって認識される。いくつかの態様では、トランスポゾン特異的なITRは、レトロトランスポゾンによって認識される。核酸分子を宿主細胞、例えば、免疫細胞のゲノムに導入するために、当該技術分野において既知の任意のトランスポゾン系を使用することができる。いくつかの態様では、トランスポゾンは、hAT様Tol2、Sleeping Beauty(SB)、Frog Prince、piggyBac(PB)、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの態様では、トランスポゾンは、Sleeping Beautyを含む。いくつかの態様では、トランスポゾンは、piggyBacを含む。例えば、Zhao et al., Transl.Lung Cancer Res.5(1):120-25(2016)(本明細書に参照によりその全容を援用する)を参照されたい。
【0203】
いくつかの態様において、ベクターは、トランスファーベクターである。用語「トランスファーベクター」は、単離された核酸(例えば、本開示のポリヌクレオチド)を含み、細胞の内部に単離された核酸を送達するために使用され得る物質の組成物を指す。線状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と関連づけられるポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むが、これらに限定されない多数のベクターが当該技術分野で知られている。したがって、「トランスファーベクター」という用語は、自己複製プラスミドまたはウイルスを含む。その用語はまた、細胞への核酸の移行を容易化する非プラスミド及び非ウイルス性化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム等をさらに含むように解釈されるべきである。ウイルストランスファーベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0204】
いくつかの態様では、ベクターは、発現ベクターである。「発現ベクター」という用語は、発現させられるヌクレオチド配列に機能可能に連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチド(例えば、本開示のポリペプチド)を含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞によってまたはin vitro発現システムにおいて供給され得る。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、むき出しまたはリポソームに含有される)及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含む、当該技術分野で知られているすべてのものが含まれる。
【0205】
いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクター、哺乳動物ベクター、または細菌ベクターである。いくつかの態様では、ベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルス、センダイウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ハイブリッドベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターからなる群から選択される。
【0206】
いくつかの態様では、非ウイルス的方法を、対象の細胞または組織に本開示のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を送達するために使用することができる。いくつかの態様では、非ウイルス的方法には、トランスポゾンの使用が含まれる。いくつかの態様では、非ウイルス的送達方法の使用は、細胞、例えば、T細胞またはNK細胞の再プログラミング、及び対象への細胞の直接的注入を可能とする。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)は、CRISPR/Casシステム及びゲノム編集の代替的手段、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びメガヌクレアーゼ(MN)を使用することによって標的細胞(例えば、T細胞)または宿主細胞(例えば、コードされたタンパク質の組換え発現のための細胞)のゲノムに挿入することができる。
【0207】
IV.送達剤
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドは、送達剤とともに(例えば、それを必要とする対象に)投与することができる。使用することができる送達剤の非限定的な例としては、リピドイド、リポソーム、リポプレックス、脂質ナノ粒子、ポリマー化合物、ペプチド、タンパク質、細胞、ナノ粒子模倣体、ナノチューブ、ミセル、コンジュゲート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0208】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)及び送達剤を含む組成物も提供する。いくつかの態様では、送達剤は、下式:
[WP]-L1-[CC]-L2-[AM](式I)
または
[WP]-L1-[AM]-L2-[CC](式II)
(式中、
WPは、水溶性バイオポリマー部分であり、
CCは、正に荷電したキャリア部分であり、
AMは、アジュバント部分であり、
L1及びL2は、独立して、任意選択のリンカーである)を有するカチオン性キャリアユニットを含み、
カチオン性キャリアユニットは、約1:1のイオン比で核酸と混合される場合にミセルを形成する。
【0209】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む組成物は、イオン結合を介してカチオン性キャリアユニットと相互作用する。
【0210】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、下式:
【化6】
(式中、nは、1~1000である)を有する。
【0211】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、または少なくとも約141である。いくつかの態様では、nは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約140~約150、約150~約160である。特定の態様では、nは約114である。
【0212】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、1つ以上の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、少なくとも約50個、少なくとも約51個、少なくとも約52個、少なくとも約53個、少なくとも約54個、少なくとも約55個、少なくとも約56個、少なくとも約57個、少なくとも約58個、少なくとも約59個、少なくとも約60個、少なくとも約61個、少なくとも約62個、少なくとも約63個、少なくとも約64個、少なくとも約65個、少なくとも約66個、少なくとも約67個、少なくとも約68個、少なくとも約69個、少なくとも約70個、少なくとも約71個、少なくとも約72個、少なくとも約73個、少なくとも約74個、少なくとも約75個、少なくとも約76個、少なくとも約77個、少なくとも約78個、少なくとも約79個、少なくとも約80個、少なくとも約81個、少なくとも約82個、少なくとも約83個、少なくとも約84個、少なくとも約85個、少なくとも約86個、少なくとも約87個、少なくとも約88個、少なくとも約89個、少なくとも約90個、少なくとも約91個、少なくとも約92個、少なくとも約93個、少なくとも約94個、少なくとも約95個、少なくとも約96個、少なくとも約97個、少なくとも約98個、少なくとも約99個、少なくとも約100個、少なくとも約110個、少なくとも約120個、少なくとも約130個、少なくとも約140個の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約30~約50の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約60個、約70個、約80個、約90個、または約100個の塩基性アミノ酸を含む。特定の態様では、カチオン性キャリア部分は、約80個の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約40個のリシンモノマーを含む。
【0213】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、免疫反応、炎症反応、及び/または組織微小環境を調節することができる。いくつかの態様では、アジュバント部分は、イミダゾール誘導体、アミノ酸、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化7】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1とG2はともに芳香環を形成し、nは1~10である)を有する。
【0214】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ニトロイミダゾールを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、アミノ酸を含む。
【0215】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、下式:
【化8】
(式中、Arは、
【化9】
であり、
Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)を有する。
【0216】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、ビタミンを含む。いくつかの態様では、ビタミンは、環式環または環式ヘテロ原子環及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む。いくつかの態様では、ビタミンは、下式:
【化10】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)を有する。
【0217】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンM、ビタミンH、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンB3である。
【0218】
いくつかの態様では、アジュバント部分は、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、または少なくとも約50個のビタミンB3を含む。いくつかの態様では、アジュバント部分は、約35個のビタミンB3を含む。
【0219】
いくつかの態様では、組成物は、約100個~約130個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、約30個~約100個のリシン(例えば、約80個のリシン)を有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約5個~約50個のビタミンB3(例えば、約35個のビタミンB3)を有するアジュバント部分と、を含む。
【0220】
いくつかの態様では、組成物は、(i)約100個~約200個のPEGユニットを有する水溶性バイオポリマー部分と、(ii)アミン基を有する約30個~約100個のリシン(例えば、約40個のリシン)と、(iii)それぞれがチオール基を有する約1個~20個のリシン(例えば、それぞれがチオール基を有する約5個のリシン)と、(iv)ビタミンB3に融合された約5個~50個のリシン(例えば、それぞれがビタミンB3に融合された約35個のリシン)と、を含む。いくつかの態様では、組成物は、水溶性ポリマーに結合された標的化部分、例えばLAT1標的化リガンド、例えばフェニルアラニンをさらに含む。いくつかの態様では、組成物中のチオール基は、ジスルフィド結合を形成する。
【0221】
いくつかの態様では、組成物は、(1)(i)約100個~約200個のPEGユニット(例えば約114個のユニット)と、(ii)アミン基を有する約30個~約100個のリシン(例えば、約40個のリシン)と、(iii)それぞれがチオール基を有する約3個~50個のリシン(例えば、それぞれがチオール基を有する約35個のリシン)と、(iv)ビタミンB3に融合された約2個~20個のリシン(例えば、それぞれがビタミンB3に融合された約5個のリシン)と、を含むミセルと、(2)本明細書に記載の単離ポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)と、を含み、単離ポリヌクレオチドはミセル内に封入される。いくつかの態様では、組成物は、PEGユニットに結合された標的化部分、例えばLAT1標的化リガンド、例えばフェニルアラニンをさらに含む。いくつかの態様では、ミセル中のチオール基は、ジスルフィド結合を形成する。
【0222】
本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を含むミセルであって、ポリヌクレオチドと送達剤とが互いに結合しているミセルも提供する。
【0223】
いくつかの態様では、結合は、共有結合、非共有結合、またはイオン結合である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分の正電荷は、溶液中で本明細書に開示されるポリヌクレオチドと混合される際にミセルを形成するのに十分であり、溶液中のカチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分の正電荷とポリヌクレオチド(またはポリヌクレオチドを含むベクター)の負電荷の全体的イオン比は、約1:1である。
【0224】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、酵素分解から本開示のポリヌクレオチドを保護することができる。本明細書に参照によりその全体を援用するところの2020年12月30日に公開されたPCT公開第WO2020/261227を参照されたい。
【0225】
いくつかの態様では、本明細書に開示されるポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)は、DNA(例えば、DNA分子もしくはその組み合わせ)、RNA(例えば、RNA分子もしくはその組み合わせ)、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、ゲノムもしくはcDNA形態の一本鎖もしくは二本鎖RNAもしくはDNA(例えば、ssDNAもしくはdsDNA)、またはDNA/RNAハイブリッドを含む核酸配列を含み、それぞれが化学的または生化学的に改変された、非天然、または誘導化ヌクレオチド塩基を含んでもよい。本明細書に記載されるように、かかる核酸配列は、これらに限定されるものではないが、ポリA配列、改変コザック配列、ならびにエピトープタグ、搬出シグナル、及び分泌シグナル、核局在化シグナル、及び細胞膜局在化シグナルをコードする配列を含む、コードされたポリペプチドの発現及び/または精製を促進するうえで有用なさらなる配列を含んでもよい。
【0226】
IV.A.キャリアユニット
本開示は、ミセルに自己集合できるかまたはミセルに組み込むことができるキャリアユニットを提供する。いくつかの態様では、本開示のキャリアユニットは、水溶性バイオポリマー部分(例えば、PEG)、荷電したキャリア部分、架橋部分、及び疎水性部分を含む。いくつかの態様では、荷電キャリア部分は、カチオン性(例えば、ポリリシン)である(例えば、
図14Aを参照)。
【0227】
本開示のキャリアユニットは、負に荷電したペイロード(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド)を送達するために使用することができる。いくつかの態様では、ミセルによって送達することができる負に荷電したペイロード(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド)は、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、少なくとも約2000、少なくとも約2100、少なくとも約2200、少なくとも約2300、少なくとも約2400、少なくとも約2500、少なくとも約2600、少なくとも約2700、少なくとも約2800、少なくとも約2900、少なくとも約3000、少なくとも約3100、少なくとも約3200、少なくとも約3300、少なくとも約3400、少なくとも約3500、少なくとも約3600、少なくとも約3700、少なくとも約3800、少なくとも約3900、または少なくとも約4000ヌクレオチドの長さを有する。カチオン性の荷電したキャリア部分を有するキャリアユニットは、アニオン性ペイロード(例えば、ポリヌクレオチド)の送達に使用され得る。アニオン性の荷電したキャリア部分を有するキャリアユニットは、カチオン性ペイロード(例えば、正に荷電したポリヌクレオチド)の送達に使用され得る。いくつかの態様では、カチオン性荷電キャリア部分とアニオン性ペイロードとは、互いに静電的に相互作用することができる。
【0228】
得られるキャリアユニット:ペイロード複合体は、水溶性バイオポリマー部分を含む「頭部」と、ペイロードに静電的に結合したカチオン性キャリア部分を含む「尾部」とを有する。
【0229】
キャリアユニット:ペイロード複合体は、単独で、または他の分子との組み合わせで自己結合することで、アニオン性ペイロード(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド)がミセルのコアに存在し、水溶性バイオポリマー部分が溶媒に面したミセルを与えることができる。「本開示のミセル」という用語は、典型的なミセルだけでなく小粒子、小型ミセル、ミセル、桿状構造、またはポリマソームも包含する。ポリマソームが内腔を含むことを考慮すると、典型的なミセルの「コア」に関連するすべての開示が、本開示のキャリアユニットを含むポリマソームにおける内腔に等しく適用されると理解されたい。
【0230】
本開示のキャリアユニットは、1つ以上の任意選択のリンカーにより水溶性バイオポリマー部分に共有結合された標的化部分(例えば、標的化リガンド)を含み得る。ミセルが形成されると、標的化部分はミセルの表面に位置することができ、特定の標的組織、特定の細胞種にミセルを送達し得、及び/または生理学的バリア(例えば、細胞形質膜)を通した輸送を促進することができる。いくつかの態様では、本開示のミセルは、2種類以上の標的化部分を含み得る。
【0231】
本開示のキャリアユニットは、荷電したカチオンキャリア部分に共有結合された疎水性部分(HM)も含み得る。疎水性部分は、例えば、治療効果、共治療効果を有するか、または標的細胞もしくは標的組織の恒常性にプラスの影響を及ぼすことができる。いくつかの態様では、HMは、1つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、HMは、疎水性分子(例えば、ビタミン)に連結された1つ以上のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、HMは、疎水性分子(例えば、ビタミン)に共有結合された1つ以上のリシン残基を含む。
【0232】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロード(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド)は、キャリアユニットに共有結合によって連結されていない。特定の態様では、アニオン性ペイロード(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド)は、カチオン性キャリアユニット、例えば、切断可能なリンカーなどのリンカーに共有結合によって連結され得る。
【0233】
様々な態様の非限定的な例を本開示に示す。本開示は、特に、例えば、核酸などのアニオン性ペイロードを送達するための、カチオン性キャリアユニットの使用に関する。しかしながら、キャリア部分及びペイロードの電荷を逆転させること(すなわち、カチオン性ペイロードを送達するためにキャリアユニットにアニオン性キャリア部分を使用すること)により、またはアニオン性もしくはカチオン性キャリア部分と静電的相互作用するそれぞれカチオン性もしくはアニオン性アダプターに連結された中性ペイロードを使用することにより、本開示がカチオン性ペイロードの送達または中性ペイロードの送達に同様に適用され得ることが当業者には明らかであろう。
【0234】
したがって、一態様において、本開示は、図式I~図式VI:
[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I)、
[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II)、
[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III)、
[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV)、
[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V)、または
[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI)、
(式中、
CCは、カチオン性キャリア部分、例えば、ポリリシンであり、
CMは、架橋部分であり、
HMは、疎水性部分、例えば、ビタミン、例えば、ビタミンB3であり、
L1及びL2は、独立して任意選択のリンカーである)のカチオン性キャリアユニットを提供する。
【0235】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、水溶性ポリマー(WP)をさらに含む。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]、[HM]、及び/または[CM]に結合される。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]、[HM]、または[CM]のN末端に結合される。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]のN末端に結合される。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]、[HM]、または[CM]のC末端に結合される。いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、[CC]のC末端に結合される。
【0236】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、
[WP]-L3-[CC]-L1-[CM]-L2-[HM](図式I’)、
[WP]-L3-[CC]-L1-[HM]-L2-[CM](図式II’)、
[WP]-L3-[HM]-L1-[CM]-L2-[CC](図式III’)、
[WP]-L3-[HM]-L1-[CC]-L2-[CM](図式IV’)、
[WP]-L3-[CM]-L1-[CC]-L2-[HM](図式V’)、または
[WP]-L3-[CM]-L1-[HM]-L2-[CC](図式VI’)を含む。
【0237】
上記の図式I’~VI’のコンストラクトのいくつかの態様では、[WP]構成要素は、少なくとも1つの標的化部分、すなわち、[T]n-[WP]-…に連結され得、式中、nは整数、例えば、1、2、または3である。
【0238】
図15A~15Eは、本開示のカチオン性キャリアユニットの模式図を示す。簡単のために、
図15A~15Eのユニットは、直線的に示されている。しかしながら、いくつかの態様では、キャリアユニットは、例えば、(i)正に荷電したユニット(例えば、ポリリシン)を含むポリマーCC部分と、(ii)CC部分のN末端またはC末端に結合されたCM(例えば架橋剤に連結されたリシン、例えばリシン-チオール)と、(iii)CM部分のN末端またはC末端に結合されたHM(例えば、疎水性物質に連結されたリシン、例えば、ビタミンB3に連結されたリシン)とを含む、分枝状のスカフォールド配置(
図15A及び
図14Eを参照)として構成されたCC、CM、及びHM部分を含むことができる。
【0239】
いくつかの態様では、キャリアユニットは、例えば、(i)正に荷電したユニット(例えば、ポリリシン)を含むポリマーCC部分と、(ii)CC部分のN末端またはC末端に結合されたCM(例えば架橋剤に連結されたリシン、例えばリシン-チオール)と、(iii)CM部分のN末端またはC末端に結合されたHM(例えば、疎水性物質に連結されたリシン、例えば、ビタミンB3に連結されたリシン)とを含む、分枝状のスカフォールド配置として構成されたCC、CM、及びHM部分を含むことができる。
【0240】
本開示のカチオン性キャリアユニットとアニオン性ペイロード(例えば、核酸)とが約20:約1のイオン比(すなわち、アニオン性ペイロード中の負電荷の数が、カチオン性キャリア部分中の正電荷の数の約20倍大きい場合)~約20:約1のイオン比(すなわち、カチオン性キャリア部分中の正電荷の数が、アニオン性ペイロード中の負電荷の数の約10倍大きい場合)で混合される場合、主として静電的相互作用を介した、カチオン性キャリア部分中の正電荷によるアニオン性ペイロード中の負電荷の中和によって、変化のない親水性部分(WP部分を含む)と、大幅に疎水性が高い部分(カチオン性キャリア部分+疎水性部分及びアニオン性ペイロードとの間の結合に起因する)とを有するカチオン性キャリアユニット:アニオン性ペイロード複合体が形成される。
【0241】
いくつかの態様では、疎水性部分は、それ自身の正電荷を、アニオン性ペイロード(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド)の負電荷と相互作用するカチオン性キャリア部分の正電荷に与えることができる。カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロード(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド)との間の相互作用(例えば、静電的相互作用)への言及は、疎水性部分及びカチオン性キャリア部分の電荷とアニオン性ペイロードの電荷との間の相互作用も包含することを理解されたい。
【0242】
アニオン性ペイロードの負電荷との静電的相互作用による正電荷の中性化に起因するカチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分の疎水性の増加は、両親媒性複合体をもたらす。かかる両親媒性複合体は、単独でまたは他の両親媒性成分との組み合わせでミセルに自己組織化し得る。得られたミセルは、溶媒に面しているWP部分(すなわち、WP部分はミセルの外面に向いている)を含むが、CC及びHM部分ならびに結合したペイロード(例えば、ヌクレオチド配列、例えば、RNA、DNA、またはそれらの任意の組み合わせ)はミセルの中心に存在する。
【0243】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(a)WP部分であって、水溶性バイオポリマーが、式III(下記参照)のポリエチレングリコール(PEG)(ただし、nは約120~約PEG130である)(例えば、PEGは、PEG5000またはPEG6000である)である、WP部分と、
(b)CC部分であって、カチオン性キャリア部分が、例えば、約20個~約100個のリシン(例えば、直鎖状ポリ(L-リシン)n(ここで、nは約30~約40である))、ポリエチレンイミン(PEI)、またはキトサンを含む、CC部分と、
(c)CM部分であって、架橋部分が、それぞれが架橋剤に結合した約10個~約50個のリシン(例えば10個~40個のリシン-チオール)を含む、CM部分と、
(d)HM部分であって、疎水性部分が、それぞれがビタミンB3単位に結合した約1個~約20個のリシンを有する、HM部分と、を含む。
【0244】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(a)WP部分であって、水溶性バイオポリマーが、式III(下記参照)のポリエチレングリコール(PEG)(ただし、nは約120~約PEG130である)(例えば、PEGは、PEG5000またはPEG6000である)である、WP部分と、
(b)CC部分であって、カチオン性キャリア部分が、例えば、約20個~約100個のリシン(例えば、直鎖状ポリ(L-リシン)n(ここで、nは約30~約40である))、ポリエチレンイミン(PEI)、またはキトサンを含む、CC部分と、
(c)CM部分であって、架橋部分が、それぞれが架橋剤に結合した約10個~約50個のリシン(例えば10個~40個のリシン-チオール)を含む、CM部分と、
(d)HM部分であって、疎水性部分が、それぞれがビタミンB3単位に結合した約1個~約10個のリシンを有する、HM部分と、を含む。
【0245】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(a)WP部分であって、水溶性バイオポリマーが、式III(下記参照)のポリエチレングリコール(PEG)(ただし、nは約120~約PEG130である)(例えば、PEGは、PEG5000またはPEG6000である)である、WP部分と、
(b)CC部分であって、カチオン性キャリア部分が、例えば、約20個~約100個のリシン(例えば、直鎖状ポリ(L-リシン)n(ここで、nは約30~約40である))、ポリエチレンイミン(PEI)、またはキトサンを含む、CC部分と、
(c)CM部分であって、架橋部分が、それぞれが架橋剤に結合した約10個~約50個のリシン(例えば10個~40個のリシン-チオール)を含む、CM部分と、
(d)HM部分であって、疎水性部分が、それぞれがビタミンB3単位に結合した約5個~約10個のリシンを有する、HM部分と、を含む。
【0246】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(a)WP部分であって、水溶性バイオポリマーが、式III(下記参照)のポリエチレングリコール(PEG)(ただし、nは約120~約PEG130である)(例えば、PEGは、PEG5000またはPEG6000である)である、WP部分と、
(b)CC部分であって、カチオン性キャリア部分が、例えば、約20個~約100個のリシン(例えば、直鎖状ポリ(L-リシン)n(ここで、nは約30~約40、例えば40である))、ポリエチレンイミン(PEI)、またはキトサンを含む、CC部分と、
(c)CM部分であって、架橋部分が、それぞれが架橋剤に結合した約10個~約50個のリシン(例えば10個~40個のリシン-チオール、例えば35個のリシン-チオール)を含む、CM部分と、
(d)HM部分であって、疎水性部分が、それぞれがビタミンB3単位に結合した約1個~約5個(例えば、約5個)のリシンを有する、HM部分と、を含む。
【0247】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、カチオン性キャリアユニットのWP部分に結合された少なくとも1つの標的化部分をさらに含む。いくつかの態様では、ミセルの表面に提示される標的化部分の数及び/または密度は、標的化部分を有するカチオン性キャリアユニット対標的化部分を有さないカチオン性キャリアユニットの特定の比率を使用することにより調節され得る。いくつかの態様では、標的化部分を有するカチオン性キャリアユニット対標的化部分を有さないカチオン性キャリアユニットの比は、少なくとも約1:5、少なくとも約1:10、少なくとも約1:20、少なくとも約1:30、少なくとも約1:40、少なくとも約1:50、少なくとも約1:60、少なくとも約1:70、少なくとも約1:80、少なくとも約1:90、少なくとも約1:100、少なくとも約1:120、少なくとも約1:140、少なくとも約1:160、少なくとも約1:180、少なくとも約1:200、少なくとも約1:250、少なくとも約1:300、少なくとも約1:350、少なくとも約1:400、少なくとも約1:450、少なくとも約1:500、少なくとも約1:600、少なくとも約1:700、少なくとも約1:800、少なくとも約1:900、または少なくとも約1:1000である。
【0248】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(i)輸送体LAT1を標的とする標的化部分(A)(例えば、フェニルアラニン)と、
(ii)PEGである水溶性ポリマーと、
(iii)リシンであるカチオン性ポリマーブロックを含むカチオン性キャリア部分と、
(iv)架橋部分に連結されたリシンである架橋ポリマーブロックを含む架橋部分と、
(v)ビタミンB3に連結されたリシンである疎水性ポリマーブロックを含む疎水性部分と、を含む。
【0249】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(i)輸送体LAT1を標的とする標的化部分(A)(例えば、フェニルアラニン)と、
(ii)PEGである水溶性ポリマーであって、n=100~200、例えば、100~150、例えば、120~130である、水溶性ポリマーと、
(iii)カチオン性ポリマーブロックを含むカチオン性キャリア部分、例えば、ポリリシンと、
(iv)架橋部分に連結されたリシンである架橋ポリマーブロックを含む架橋部分と、
(iv)ビタミンB3に連結されたリシンである疎水性ポリマーブロックを含む疎水性部分と、を含む。
【0250】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、
(i)輸送体LAT1を標的とする標的化部分(A)(例えば、フェニルアラニン)と、
(ii)PEGである水溶性ポリマーであって、n=100~200、例えば、100~150、例えば、120~130である、水溶性ポリマーと、
(iii)カチオン性ポリマーブロックを含むカチオン性キャリア部分、例えば、10~100個のリシン、例えば、10~50個のリシン、例えば、30~40個のリシンと、
(iv)架橋部分に連結されたリシンである架橋ポリマーブロックを含む架橋部分と、
(iv)ビタミンB3に連結されたリシンである疎水性ポリマーブロックを含む疎水性部分と、を含む。
【0251】
いくつかの態様では、HMの数(割合)は、[CC]及び[CM]に対して39%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%である。いくつかの態様では、HMの数(割合)は、[CC]及び[CM]に対して約35%~約1%、約35%~約5%、約35%~約10%、約35%~約15%、約35%~約20%、約35%~約25%、約35%~約30%、約30%~約1%、約30%~約5%、約30%~約10%、約30%~約15%、約30%~約20%、約30%~約25%、約25%~約1%、約25%~約5%、約25%~約10%、約25%~約15%、約25%~約20%、約20%~約1%、約20%~約5%、約20%~約10%、約20%~約15%、約15%~約1%、約15%~約5%、約15%~約10%、約10%~約1%、または約10%~約5%である。いくつかの態様では、HMの数(割合)は、[CC]及び[CM]に対して約39%~約30%、約30%~約20%、約20%~約10%、約10%~約5%、及び約5%~約1%である。いくつかの態様では、HMの数(割合)は、[CC]及び[CM]に対して約39%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、または約1%である。いくつかの態様では、HMの数は、[CC]及び[CM]に対する[HM]の割合として表される。
【0252】
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、約100~約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードと相互作用する。いくつかの態様では、約100~約4000ヌクレオチドの長さを有するヌクレオチドペイロードは、1つ以上のタンパク質またはその断片、例えば、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2)スパイクタンパク質、またはその任意の断片をコードする。
【0253】
いくつかの態様では、ビタミンB3ユニットは、好適なコンジュゲーション試薬、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の存在下での例えば、リシンのNH2基とビタミンB3のCOOH基との間のカップリング反応によりHM部分の側鎖に導入される。
【0254】
本開示は、本開示のキャリアユニット(例えば、カチオン性キャリアユニット)を含む組成物を提供する。他の態様では、本開示は、ペイロード(例えば、ヌクレオチド配列などのアニオン性ペイロード、例えば、RNA、DNA、またはそれらの任意の組み合わせ)に非共有結合的に結合された、本開示のキャリアユニット(例えば、カチオン性キャリアユニットユニット)を含む複合体を提供し、ここで、キャリアユニットとペイロードとは静電的に相互作用する。他の態様では、本開示は、ペイロード(例えば、ヌクレオチド配列などのアニオン性ペイロード、例えば、RNA、DNA、またはそれらの任意の組み合わせ)に共有結合的に結合された、本開示のキャリアユニット(例えば、カチオン性キャリアユニットユニット)を含む複合体を提供し、ここで、キャリアユニットとペイロードとは静電的に相互作用する。いくつかの態様では、キャリアユニット及びペイロードは、切断可能なリンカーにより連結され得る。いくつかの態様では、キャリアユニット及びペイロードは、静電的相互作用することに加えて、共有結合的に相互作用し得る(例えば、静電的相互作用後、キャリアユニット及びペイロードは、ジスルフィド結合または切断可能な結合により「ロック」され得る)。
【0255】
いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアユニットは、約120~約130個の単位を有するPEGを含む水溶性ポリマーと、約20~約60個のリシン単位(例えば、約40個のリシン)を有するポリリシンを含むカチオン性キャリア部分と、約3~約40個のリシン-チオール単位(例えば、それぞれがチオール基を有する約5個のリシン)を含む架橋部分と、約1~約50個の、ビタミンB3単位に連結されたリシン(例えば、それぞれがビタミンB3に融合された約35個のリシン)を含む疎水性部分と、を含む。
【0256】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つのイオン結合により(すなわち、カチオン性キャリアユニットのカチオン性キャリア部分との静電的相互作用により)カチオン性キャリア部分と相互作用する負に荷電したペイロード(例えば、ヌクレオチド配列、例えば、RNA、DNA、またはそれらの任意の組み合わせ)と結合する。
【0257】
本開示のカチオン性キャリアユニットの具体的な構成要素を、以下に詳細に開示する。
【0258】
IV.A.1.水溶性バイオポリマー
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つの水溶性バイオポリマーを含む。本明細書で使用する場合、「水溶性バイオポリマー」という用語は、生体適合性、生物学的に不活性、非免疫原性、非毒性、かつ親水性のポリマー、例えば、PEGを指す。
【0259】
いくつかの態様では、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリセロール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(「POZ」)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、または樹枝状である。
【0260】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリグリセロール(「PG」)、またはポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。PPGは、PEGより毒性が少ないため、現在多くの生物学的製剤が、PEGの代わりにPPGで製造されている。
【0261】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、式R3-(O-CH2-CH2)n-またはR3-(0-CH2-CH2)n-O-(式中、R3は水素、メチル、またはエチルであり、nは2~200の値を有する)を特徴とするPEGを含む。いくつかの態様では、PEGは、次式を有し、
【化11】
式中、nは、1~1000である。
【0262】
いくつかの態様では、PEGのnは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、189、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、または200の値を有する。
【0263】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、少なくとも約200、少なくとも約210、少なくとも約220、少なくとも約230、少なくとも約240、少なくとも約250、少なくとも約260、少なくとも約270、少なくとも約280、少なくとも約290、少なくとも約300、少なくとも約310、少なくとも約320、少なくとも約330、少なくとも約340、少なくとも約350、少なくとも約360、少なくとも約370、少なくとも約380、少なくとも約390、少なくとも約400、少なくとも約410、少なくとも約420、少なくとも約430、少なくとも約440、少なくとも約450、少なくとも約460、少なくとも約470、少なくとも約480、少なくとも約490、少なくとも約500、少なくとも約510、少なくとも約520、少なくとも約530、少なくとも約540、少なくとも約550、少なくとも約560、少なくとも約670、少なくとも約580、少なくとも約590、少なくとも約600、少なくとも約610、少なくとも約620、少なくとも約630、少なくとも約640、少なくとも約650、少なくとも約660、少なくとも約670、少なくとも約680、少なくとも約690、少なくとも約700、少なくとも約710、少なくとも約720、少なくとも約730、少なくとも約740、少なくとも約750、少なくとも約760、少なくとも約770、少なくとも約780、少なくとも約790、少なくとも約800、少なくとも約810、少なくとも約820、少なくとも約830、少なくとも約840、少なくとも約850、少なくとも約860、少なくとも約870、少なくとも約880、少なくとも約890、少なくとも約900、少なくとも約910、少なくとも約920、少なくとも約930、少なくとも約940、少なくとも約950、少なくとも約960、少なくとも約970、少なくとも約980、少なくとも約990、または約1000である。
【0264】
いくつかの態様では、nは、約50~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約300、約300~約350、約350~約400、約400~約450、約450~約500、約500~約550、約550~約600、約600~約650、約650~約700、約700~約750、約750~約800、約800~約850、約850~約900、約900~約950、または約950~約1000である。
【0265】
いくつかの態様では、nは、少なくとも約80、少なくとも約81、少なくとも約82、少なくとも約83、少なくとも約84、少なくとも約85、少なくとも約86、少なくとも約87、少なくとも約88、少なくとも約89、少なくとも約90、少なくとも約91、少なくとも約92、少なくとも約93、少なくとも約94、少なくとも約95、少なくとも約96、少なくとも約97、少なくとも約98、少なくとも約99、少なくとも約100、少なくとも約101、少なくとも約102、少なくとも約103、少なくとも約104、少なくとも約105、少なくとも約106、少なくとも約107、少なくとも約108、少なくとも約109、少なくとも110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、少なくとも約141、少なくとも約142、少なくとも約143、少なくとも約144、少なくとも約145、少なくとも約146、少なくとも約147、少なくとも約148、少なくとも約149、少なくとも約150、少なくとも約151、少なくとも約152、少なくとも約153、少なくとも約154、少なくとも約155、少なくとも約156、少なくとも約157、少なくとも約158、少なくとも約159、または少なくとも約160である。
【0266】
いくつかの態様では、nは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約130~約140、約140~約150、約150~約160、約85~約95、約95~約105、約105~約115、約115~約125、約125~約135、約135~約145、約145~約155、約155~約165、約80~約100、約100~約120、約120~約140、約140~約160、約85~約105、約105~約125、約125~約145、または約145~約165である。
【0267】
いくつかの態様では、nは、約100~約150である。いくつかの態様では、nは、約100~約140である。いくつかの態様では、nは、約100~約130である。いくつかの態様では、nは、約110~約150である。いくつかの態様では、nは、約110~約140である。いくつかの態様では、nは、約110~約130である。いくつかの態様では、nは、約110~約120である。いくつかの態様では、nは、約120~約150である。いくつかの態様では、nは、約120~約140である。いくつかの態様では、nは、約120~約130である。いくつかの態様では、nは、約130~約150である。いくつかの態様では、nは、約130~約140である。いくつかの態様では、nは約114である。
【0268】
したがって、いくつかの態様では、PEGは、分枝鎖PEGである。分枝鎖PEGは、中心コア基から延びる3~10本のPEG鎖を有する。ある特定の態様では、PEG部分は、単分散ポリエチレングリコールである。本開示の文脈において、単分散ポリエチレングリコール(mdPEG)は、単一の既定の鎖長及び分子量を有するPEGである。mdPEGは、通常、クロマトグラフィーによる重合混合物からの分離により生成される。ある特定の式において、単分散PEG部分は、略語mdPEGを割り当てられる。
【0269】
いくつかの態様では、PEGは、Star PEGである。Star PEGは、中心コア基から延びる10~100本のPEG鎖を有する。いくつかの態様では、PEGは、Comb PEGである。Comb PEGは、通常、ポリマー主鎖上にグラフトされた複数のPEG鎖を有する。
【0270】
ある特定の態様では、PEGは、約1000g/mol~約2000g/mol、約2000g/mol~約3000g/mol、約3000g/mol~約4000g/mol、約4000g/mol~約5000g/mol、約5000g/mol~約6000g/mol、約6000g/mol~約7000g/mol、または7000g/mol~約8000g/molのモル質量を有する。
【0271】
いくつかの態様では、PEGは、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、PEG700、PEG800、PEG900、PEG1000、PEG1100、PEG1200、PEG1300、PEG1400、PEG1500、PEG1600、PEG1700、PEG1800、PEG1900、PEG2000、PEG2100、PEG2200、PEG2300、PEG2400、PEG2500、PEG1600、PEG1700、PEG1800、PEG1900、PEG2000、PEG2100、PEG2200、PEG2300、PEG2400、PEG2500、PEG2600、PEG2700、PEG2800、PEG2900、PEG3000、PEG3100、PEG3200、PEG3300、PEG3400、PEG3500、PEG3600、PEG3700、PEG3800、PEG3900、PEG4000、PEG4100、PEG4200、PEG4300、PEG4400、PEG4500、PEG4600、PEG4700、PEG4800、PEG4900、PEG5000、PEG5100、PEG5200、PEG5300、PEG5400、PEG5500、PEG5600、PEG5700、PEG5800、PEG5900、PEG6000、PEG6100、PEG6200、PEG6300、PEG6400、PEG6500、PEG6600、PEG6700、PEG6800、PEG6900、PEG7000、PEG7100、PEG7200、PEG7300、PEG7400、PEG7500、PEG7600、PEG7700、PEG7800、PEG7900、またはPEG8000である。いくつかの態様では、PEGは、PEG5000である。いくつかの態様では、PEGは、PEG6000である。いくつかの態様では、PEGは、PEG4000である。
【0272】
いくつかの態様では、PEGは、単分散、例えば、mPEG100、mPEG200、mPEG300、mPEG400、mPEG500、mPEG600、mPEG700、mPEG800、mPEG900、mPEG1000、mPEG1100、mPEG1200、mPEG1300、mPEG1400、mPEG1500、mPEG1600、mPEG1700、mPEG1800、mPEG1900、mPEG2000、mPEG2100、mPEG2200、mPEG2300、mPEG2400、mPEG2500、mPEG1600、mPEG1700、mPEG1800、mPEG1900、mPEG2000、mPEG2100、mPEG2200、mPEG2300、mPEG2400、mPEG2500、mPEG2600、mPEG2700、mPEG2800、mPEG2900、mPEG3000、mPEG3100、mPEG3200、mPEG3300、mPEG3400、mPEG3500、mPEG3600、mPEG3700、mPEG3800、mPEG3900、mPEG4000、mPEG4100、mPEG4200、mPEG4300、mPEG4400、mPEG4500、mPEG4600、mPEG4700、mPEG4800、mPEG4900、mPEG5000、mPEG5100、mPEG5200、mPEG5300、mPEG5400、mPEG5500、mPEG5600、mPEG5700、mPEG5800、mPEG5900、mPEG6000、mPEG6100、mPEG6200、mPEG6300、mPEG6400、mPEG6500、mPEG6600、mPEG6700、mPEG6800、mPEG6900、mPEG7000、mPEG7100、mPEG7200、mPEG7300、mPEG7400、mPEG7500、mPEG7600、mPEG7700、m PEG7800、mPEG7900、またはmPEG8000である。いくつかの態様では、mPEGは、mPEG5000である。いくつかの態様では、mPEGは、mPEG6000である。いくつかの態様では、mPEGは、mPEG4000である。
【0273】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマー部分は、式((R3-O-(CH2-CHOH-CH2O)n-)で表現されるポリグリセロール(PG)であり、R3は、水素、メチル、またはエチルであり、nは3~200の値を有する。いくつかの態様では、水溶性バイオポリマー部分は、式(R3-O-(CH2-CHOR5-CH2-O)n-)で表現され、R5が水素である分枝鎖状ポリグリセロールまたは式(R3-O-(CH2-CHOH-CH2-O)n-)で表現される直鎖状グリセロール鎖であり、R3は、水素、メチル、またはエチルである。いくつかの態様では、水溶性バイオポリマー部分は、式(R3-O-(CH2-CHOR5-CH2-O)n-)で表現され、R5が水素である超分岐ポリグリセロール、または式(R3-O-(CH2-CHOR6-CH2-O)n-)で表現され、R6が水素であるグリセロール鎖、または式(R3-O-(CH2-CHOR7-CH2-O)n-)で表現され、R7水素であるグリセロール鎖、または式(R3-O-(CH2-CHOH-CH2-O)n-)で表現される直鎖状グリセロール鎖であり、R3は、水素、メチル、またはエチルである。超分岐グリセロール及びその合成方法は、Oudshorn et al.(2006)Biomaterials 27:5471-5479;Wilms et al.(20100 Acc.Chem.Res.43,129-41、及びその中で引用される参考文献に記載されている。
【0274】
ある特定の態様では、PGは、約1000g/mol~約2000g/mol、約2000g/mol~約3000g/mol、約3000g/mol~約4000g/mol、約4000g/mol~約5000g/mol、約5000g/mol~約6000g/mol、約6000g/mol~約7000g/mol、または7000g/mol~約8000g/molのモル質量を有する。
【0275】
いくつかの態様では、PGは、PG100、PG200、PG300、PG400、PG500、PG600、PG700、PG800、PG900、PG1000、PG1100、PG1200、PG1300、PG1400、PG1500、PG1600、PG1700、PG1800、PG1900、PG2000、PG2100、PG2200、PG2300、PG2400、PG2500、PG1600、PG1700、PG1800、PG1900、PG2000、PG2100、PG2200、PG2300、PG2400、PG2500、PG2600、PG2700、PG2800、PG2900、PG3000、PG3100、PG3200、PG3300、PG3400、PG3500、PG3600、PG3700、PG3800、PG3900、PG4000、PG4100、PG4200、PG4300、PG4400、PG4500、PG4600、PG4700、PG4800、PG4900、PG5000、PG5100、PG5200、PG5300、PG5400、PG5500、PG5600、PG5700、PG5800、PG5900、PG6000、PG6100、PG6200、PG6300、PG6400、PG6500、PG6600、PG6700、PG6800、PG6900、PG7000、PG7100、PG7200、PG7300、PG7400、PG7500、PG7600、PG7700、PG7800、PG7900、またはPG8000である。いくつかの態様では、PGは、PG5000である。いくつかの態様では、PGは、PG6000である。いくつかの態様では、PGは、PG4000である。
【0276】
いくつかの態様では、PGは、単分散、例えば、mPG100、mPG200、mPG300、mPG400、mPG500、mPG600、mPG700、mPG800、mPG900、mPG1000、mPG1100、mPG1200、mPG1300、mPG1400、mPG1500、mPG1600、mPG1700、mPG1800、mPG1900、mPG2000、mPG2100、mPG2200、mPG2300、mPG2400、mPG2500、mPG1600、mPG1700、mPG1800、mPG1900、mPG2000、mPG2100、mPG2200、mPG2300、mPG2400、mPG2500、mPG2600、mPG2700、mPG2800、mPG2900、mPG3000、mPG3100、mPG3200、mPG3300、mPG3400、mPG3500、mPG3600、mPG3700、mPG3800、mPG3900、mPG4000、mPG4100、mPG4200、mPG4300、mPG4400、mPG4500、mPG4600、mPG4700、mPG4800、mPG4900、mPG5000、mPG5100、mPG5200、mPG5300、mPG5400、mPG5500、mPG5600、mPG5700、mPG5800、mPG5900、mPG6000、mPG6100、mPG6200、mPG6300、mPG6400、mPG6500、mPG6600、mPG6700、mPG6800、mPG6900、mPG7000、mPG7100、mPG7200、mPG7300、mPG7400、mPG7500、mPG7600、mPG7700、m PG7800、mPG7900、またはmPG8000である。
【0277】
いくつかの態様では、水溶性バイオポリマーは、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)を含む。いくつかの態様では、PPGは下式により特徴付けられ、nは1~1000の値を有する:
【化12】
【0278】
いくつかの態様では、PPGのnは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、189、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、または200の値を有する。
【0279】
いくつかの態様では、PPGのnは、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、少なくとも約200、少なくとも約210、少なくとも約220、少なくとも約230、少なくとも約240、少なくとも約250、少なくとも約260、少なくとも約270、少なくとも約280、少なくとも約290、少なくとも約300、少なくとも約310、少なくとも約320、少なくとも約330、少なくとも約340、少なくとも約350、少なくとも約360、少なくとも約370、少なくとも約380、少なくとも約390、少なくとも約400、少なくとも約410、少なくとも約420、少なくとも約430、少なくとも約440、少なくとも約450、少なくとも約460、少なくとも約470、少なくとも約480、少なくとも約490、少なくとも約500、少なくとも約510、少なくとも約520、少なくとも約530、少なくとも約540、少なくとも約550、少なくとも約560、少なくとも約670、少なくとも約580、少なくとも約590、少なくとも約600、少なくとも約610、少なくとも約620、少なくとも約630、少なくとも約640、少なくとも約650、少なくとも約660、少なくとも約670、少なくとも約680、少なくとも約690、少なくとも約700、少なくとも約710、少なくとも約720、少なくとも約730、少なくとも約740、少なくとも約750、少なくとも約760、少なくとも約770、少なくとも約780、少なくとも約790、少なくとも約800、少なくとも約810、少なくとも約820、少なくとも約830、少なくとも約840、少なくとも約850、少なくとも約860、少なくとも約870、少なくとも約880、少なくとも約890、少なくとも約900、少なくとも約910、少なくとも約920、少なくとも約930、少なくとも約940、少なくとも約950、少なくとも約960、少なくとも約970、少なくとも約980、少なくとも約990、または約1000である。
【0280】
いくつかの態様では、PPGのnは、約50~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約300、約300~約350、約350~約400、約400~約450、約450~約500、約500~約550、約550~約600、約600~約650、約650~約700、約700~約750、約750~約800、約800~約850、約850~約900、約900~約950、または約950~約1000である。
【0281】
いくつかの態様では、PPGのnは、少なくとも約80、少なくとも約81、少なくとも約82、少なくとも約83、少なくとも約84、少なくとも約85、少なくとも約86、少なくとも約87、少なくとも約88、少なくとも約89、少なくとも約90、少なくとも約91、少なくとも約92、少なくとも約93、少なくとも約94、少なくとも約95、少なくとも約96、少なくとも約97、少なくとも約98、少なくとも約99、少なくとも約100、少なくとも約101、少なくとも約102、少なくとも約103、少なくとも約104、少なくとも約105、少なくとも約106、少なくとも約107、少なくとも約108、少なくとも約109、少なくとも110、少なくとも約111、少なくとも約112、少なくとも約113、少なくとも約114、少なくとも約115、少なくとも約116、少なくとも約117、少なくとも約118、少なくとも約119、少なくとも約120、少なくとも約121、少なくとも約122、少なくとも約123、少なくとも約124、少なくとも約125、少なくとも約126、少なくとも約127、少なくとも約128、少なくとも約129、少なくとも約130、少なくとも約131、少なくとも約132、少なくとも約133、少なくとも約134、少なくとも約135、少なくとも約136、少なくとも約137、少なくとも約138、少なくとも約139、少なくとも約140、少なくとも約141、少なくとも約142、少なくとも約143、少なくとも約144、少なくとも約145、少なくとも約146、少なくとも約147、少なくとも約148、少なくとも約149、少なくとも約150、少なくとも約151、少なくとも約152、少なくとも約153、少なくとも約154、少なくとも約155、少なくとも約156、少なくとも約157、少なくとも約158、少なくとも約159、または少なくとも約160である。
【0282】
いくつかの態様では、PPGのnは、約80~約90、約90~約100、約100~約110、約110~約120、約120~約130、約130~約140、約140~約150、約150~約160、約85~約95、約95~約105、約105~約115、約115~約125、約125~約135、約135~約145、約145~約155、約155~約165、約80~約100、約100~約120、約120~約140、約140~約160、約85~約105、約105~約125、約125~約145、または約145~約165である。
【0283】
したがって、いくつかの態様では、PPGは、分枝鎖状PPGである。分枝鎖状PPGは、中心コア基から延びる3~10本のPPG鎖を有する。ある特定の態様では、PPG部分は、単分散ポリエチレングリコールである。本開示の文脈において、単分散ポリエチレングリコール(mdPPG)は、単一の既定の鎖長及び分子量を有するPPGである。mdPEGは、通常、クロマトグラフィーによる重合混合物からの分離により生成される。ある特定の式において、単分散PPG部分は、略語mdPPGを割り当てられる。
【0284】
いくつかの態様では、PPGは、Star PPGである。Star PPGは、中心コア基から延びる10~100本のPPG鎖を有する。いくつかの態様では、PPGは、Comb PPGである。Comb PPGは、通常、ポリマー主鎖上にグラフトされた複数のPPG鎖を有する。
【0285】
ある特定の態様では、PPGは、約1000g/mol~約2000g/mol、約2000g/mol~約3000g/mol、約3000g/mol~約4000g/mol、約4000g/mol~約5000g/mol、約5000g/mol~約6000g/mol、約6000g/mol~約7000g/mol、または7000g/mol~約8000g/molのモル質量を有する。
【0286】
いくつかの態様では、PPGは、PPG100、PPG200、PPG300、PPG400、PPG500、PPG600、PPG700、PPG800、PPG900、PPG1000、PPG1100、PPG1200、PPG1300、PPG1400、PPG1500、PPG1600、PPG1700、PPG1800、PPG1900、PPG2000、PPG2100、PPG2200、PPG2300、PPG2400、PPG2500、PPG1600、PPG1700、PPG1800、PPG1900、PPG2000、PPG2100、PPG2200、PPG2300、PPG2400、PPG2500、PPG2600、PPG2700、PPG2800、PPG2900、PPG3000、PPG3100、PPG3200、PPG3300、PPG3400、PPG3500、PPG3600、PPG3700、PPG3800、PPG3900、PPG4000、PPG4100、PPG4200、PPG4300、PPG4400、PPG4500、PPG4600、PPG4700、PPG4800、PPG4900、PPG5000、PPG5100、PPG5200、PPG5300、PPG5400、PPG5500、PPG5600、PPG5700、PPG5800、PPG5900、PPG6000、PPG6100、PPG6200、PPG6300、PPG6400、PPG6500、PPG6600、PPG6700、PPG6800、PPG6900、PPG7000、PPG7100、PPG7200、PPG7300、PPG7400、PPG7500、PPG7600、PPG7700、PPG7800、PPG7900、またはPPG8000である。いくつかの態様では、PPGは、PPG5000である。いくつかの態様では、PPGは、PPG6000である。いくつかの態様では、PPGは、PPG4000である。
【0287】
いくつかの態様では、PPGは、単分散、例えば、mPPG100、mPPG200、mPPG300、mPPG400、mPPG500、mPPG600、mPPG700、mPPG800、mPPG900、mPPG1000、mPPG1100、mPPG1200、mPPG1300、mPPG1400、mPPG1500、mPPG1600、mPPG1700、mPPG1800、mPPG1900、mPPG2000、mPPG2100、mPPG2200、mPPG2300、mPPG2400、mPPG2500、mPPG1600、mPPG1700、mPPG1800、mPPG1900、mPPG2000、mPPG2100、mPPG2200、mPPG2300、mPPG2400、mPPG2500、mPPG2600、mPPG2700、mPPG2800、mPPG2900、mPPG3000、mPPG3100、mPPG3200、mPPG3300、mPPG3400、mPPG3500、mPPG3600、mPPG3700、mPPG3800、mPPG3900、mPPG4000、mPPG4100、mPPG4200、mPPG4300、mPPG4400、mPPG4500、mPPG4600、mPPG4700、mPPG4800、mPPG4900、mPPG5000、mPPG5100、mPPG5200、mPPG5300、mPPG5400、mPPG5500、mPPG5600、mPPG5700、mPPG5800、mPPG5900、mPPG6000、mPPG6100、mPPG6200、mPPG6300、mPPG6400、mPPG6500、mPPG6600、mPPG6700、mPPG6800、mPPG6900、mPPG7000、mPPG7100、mPPG7200、mPPG7300、mPPG7400、mPPG7500、mPPG7600、mPPG7700、m PPG7800、mPPG7900、またはmPPG8000である。いくつかの態様では、mPPGは、mPPG5000である。いくつかの態様では、mPPGは、mPPG6000である。いくつかの態様では、mPPGは、mPPG4000である。
【0288】
IV.A.2.カチオン性キャリア
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つのカチオン性キャリア部分を含む。「カチオン性キャリア」という用語は、アニオン性ペイロード(またはペイロードに結合されたアニオン性キャリア)と静電的相互作用し、結合することができる複数の正電荷を含む、本開示のカチオン性キャリアユニットの部分または一部を指す。いくつかの態様では、カチオン性キャリアの正電荷または正に荷電した基の数は、アニオン性ペイロード(またはペイロードに結合されたアニオン性キャリア)の負電荷または負に荷電した基の数と同程度である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、バイオポリマー、例えば、ペプチド(例えば、ポリリシン)を含む。
【0289】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、1つ以上の塩基性アミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせ)を含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、少なくとも約50個、少なくとも約51個、少なくとも約52個、少なくとも約53個、少なくとも約54個、少なくとも約55個、少なくとも約56個、少なくとも約57個、少なくとも約58個、少なくとも約59個、少なくとも約60個、少なくとも約61個、少なくとも約62個、少なくとも約63個、少なくとも約64個、少なくとも約65個、少なくとも約66個、少なくとも約67個、少なくとも約68個、少なくとも約69個、少なくとも約70個、少なくとも約71個、少なくとも約72個、少なくとも約73個、少なくとも約74個、少なくとも約75個、少なくとも約76個、少なくとも約77個、少なくとも約78個、少なくとも約79個、少なくとも約80個、少なくとも約81個、少なくとも約82個、少なくとも約83個、少なくとも約84個、少なくとも約85個、少なくとも約86個、少なくとも約87個、少なくとも約88個、少なくとも約89個、少なくとも約90個、少なくとも約91個、少なくとも約92個、少なくとも約93個、少なくとも約94個、少なくとも約95個、少なくとも約96個、少なくとも約97個、少なくとも約98個、少なくとも約99個、または少なくとも約100個の塩基性アミノ酸、例えば、リシン、アルギニン、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、約60個、約70個、約80個、約90個、または約100個の塩基性アミノ酸を含む。特定の態様では、カチオン性キャリア部分は、約80個の塩基性アミノ酸を含む。
【0290】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約40個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約45個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約50個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約55個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約60個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約65個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約70個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約75個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、少なくとも約80個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。
【0291】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、約30個~約1000個、約30個~約900個、約30個~約800個、約30個~約700個、約30個~約600個、約30個~約500個、約30個~約400個、約30個~約300個、約30個~約200個、約30個~約100個、約40個~約1000個、約40個~約900個、約40個~約800個、約40個~約700個、約40個~約600個、約40個~約500個、約40個~約400個、約40個~約300個、約40個~約200個、または約40個~約100個の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸、例えばリシンは、-NH3+(例えば、正電荷)を有するように修飾されていない。
【0292】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、約30個~約100個、約30個~約90個、約30個~約80個、約30個~約70個、約30個~約60個、約30個~約50個、約30個~約40個、約40個~約100個、約40個~約90個、約40個~約80個、約40個~約70個、約40個~約60個、約70個~約80個、約75個~約85個、約65個~約75個、約65個~約80個、約60個~約85個、または約40個~約500の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。
【0293】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、約100個~約1000個、約100個~約900個、約100個~約800個、約100個~約700個、約100個~約600個、約100個~約500個、約100個~約400個、約100個~約300個、約100個~約200個、約200個~約1000個、約200個~約900個、約200個~約800個、約200個~約700個、約200個~約600個、約200個~約500個、約200個~約400個、約200個~約300個、約300個~約1000個、約300個~約900個、約300個~約800個、約300個~約700個、約300個~約600個、約300個~約500個、約300個~約400個、約400個~約1000個、約400個~約900個、約400個~約800個、約400個~約700個、約400個~約600個、約400個~約500個、約500個~約1000個、約500個~約900個、約500個~約800個、約500個~約700個、約500個~約600個、約600個~約1000個、約600個~約900個、約600個~約800個、約600個~約700個、約700個~約1000個、約700個~約900個、約700個~約800個、約800個~約1000個、約800個~約900個、または約900個~約1000の塩基性アミノ酸、例えば、リシンを含む。
【0294】
いくつかの態様では、塩基性アミノ酸、例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせの数は、アニオン性ペイロードの長さに基づいて調整され得る。例えば、より長い配列を有するアニオン性ペイロードは、より大きな数の塩基性アミノ酸(例えば、リシン)と対合させることができる。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニット中の塩基性アミノ酸、例えばリシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンとアニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、または少なくとも約20となるように計算することができる。いくつかの態様では、ポリマー中のプロトン化アミンとアニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)は、約1~約20の間、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20である。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P)が、約1~約10、例えば約3~約4、約4~約5、約5~約6、約6~約7、または約7~約8となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約1~約2となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約3~約4となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約2~約3となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約4~約5となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約5~約6となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約6~約7となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約7~約8となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約8~約9となるように計算される。いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットの塩基性アミノ酸、例えば、リシンの数は、ポリマー中のプロトン化アミンと、アニオン性ペイロード、例えばmRNA中のリン酸とのモル比(N/P比)が、約9~約10となるように計算される。
【0295】
当業者は、カチオン性キャリア部分の役割はペイロードの負電荷(例えば、mRNAのリン酸骨格における負電荷)を静電的相互作用により中性化することであるため、いくつかの態様では(例えば、ペイロードがantimiRなどの核酸である場合)、カチオン性キャリアの長さ、カチオン性キャリアの正に荷電した基の数、ならびにカチオン性キャリアに存在する電荷の分布及び配置は、ペイロード分子の長さ及び電荷分布に依存することを理解するであろう。
【0296】
いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、約5個~約10個、約10個~約15個、約15個~約20個、約20個~約25個、約25個~約30個、約30個~約35個、約35個~約40個、約40個~約45個、約45個~約50個、約50個~約55個、約55個~約60個、約60個~約65個、約個~約70個、約70個~約75個、または約75個~約80個の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの特定の態様では、正に荷電したキャリアは、30個~約50個の塩基性アミノ酸を含む。いくつかの特定の態様では、正に荷電したキャリアは、70個~約80個の塩基性アミノ酸を含む。
【0297】
いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、D-アミノ酸である。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、L-アミノ酸である。いくつかの態様では、正に荷電したキャリアは、D-アミノ酸及びL-アミノ酸を含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、少なくとも1つの非天然アミノ酸またはその誘導体を含む。いくつかの態様では、塩基性アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、L-4-アミノメチル-フェニルアラニン、L-4-グアニジン-フェニルアラニン、L-4-アミノメチル-N-イソプロピル-フェニルアラニン、L-3-ピリジル-アラニン、L-trans-4-アミノメチルシクロヘキシル-アラニン、L-4-ピペリジニル-アラニン、L-4-アミノシクヘキシル-アラニン、4-グアニジノ酪酸、L-2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸、DL-5-ヒドロキシリジン、ピロリジン、5-ヒドロキシ-L-リジン、メチルリジン、ヒプシン、またはそれらの任意の組み合わせである。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約40個のリシンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約50個のリシンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約60個のリシンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約70個のリシンを含む。特定の態様では、正に荷電したキャリアは、約80個のリシンを含む。
【0298】
他の態様では、カチオン性キャリアは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、少なくとも20個、少なくとも21個、少なくとも22個、少なくとも23個、少なくとも24個、少なくとも25個、少なくとも26個、少なくとも27個、少なくとも28個、少なくとも29個、少なくとも30個、少なくとも31個、少なくとも32個、少なくとも33個、少なくとも34個、少なくとも35個、少なくとも36個、少なくとも37個、少なくとも38個、少なくとも39個、少なくとも40個、少なくとも41個、少なくとも42個、少なくとも43個、少なくとも44個、少なくとも45個、少なくとも46個、少なくとも47個、少なくとも48個、少なくとも49個、少なくとも50個、少なくとも51個、少なくとも52個、少なくとも53個、少なくとも54個、少なくとも55個、少なくとも56個、少なくとも57個、少なくとも58個、少なくとも59個、少なくとも60個、少なくとも61個、少なくとも62個、少なくとも63個、少なくとも64個、少なくとも65個、少なくとも66個、少なくとも67個、少なくとも68個、少なくとも69個、少なくとも70個、少なくとも71個、少なくとも72個、少なくとも73個、少なくとも74個、少なくとも75個、少なくとも76個、少なくとも77個、少なくとも78個、少なくとも79個、または少なくとも80個のカチオン性基(例えば、アミノ基)を含むポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの態様では、カチオン性キャリアは、約5~約10のカチオン性基、約10~約15のカチオン性基、約15~約20のカチオン性基、約20~約25のカチオン性基、約25~約30のカチオン性基、約30~約35のカチオン性基、約35~約40のカチオン性基、約40~約45のカチオン性基、約45~約50のカチオン性基、約50~約55のカチオン性基、約55~約60のカチオン性基、約60~約65のカチオン性基、約65~約70のカチオン性基、約70~約75のカチオン性基、または約45~約50のカチオン性基(例えば、アミノ基)を含むポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアは、30~約50のカチオン性基(例えば、アミノ基)を含むポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの特定の態様では、カチオン性キャリアは、70~約80のカチオン性基(例えば、アミノ基)を含むポリマーまたはコポリマーを含む。いくつかの態様では、ポリマーまたはコポリマーは、アクリレート、ポリアルコール、または多糖である。
【0299】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、単一のペイロード分子に結合する。他の態様では、カチオン性キャリア部分は、同一であり得るか、または異なり得る複数のペイロード分子に結合し得る。
【0300】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分の正電荷と核酸ペイロードの負電荷とのイオン比は、約20:1、約19:1、約18:1、約17:1、約16:1、約15:1、約14:1、約13:1、約12:1、約11:1、約10:1、約9:1、約8:1 約7:1、約6:1 約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1である。いくつかの態様では、核酸ペイロードの負電荷とカチオン性キャリア部分の正電荷とのイオン比は、約20:1、約19:1、約18:1、約17:1、約16:1、約15:1、約14:1、約13:1、約12:1、約11:1、約10:1、約9:1、約8:1 約7:1、約6:1 約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1である。
【0301】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約10~約1000(例えば、約100~約1000)の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約2~約10、例えば、約2~約9、約2~約8、約2~約7、約2~約6、約2~約5、約2~約4、約2~約3、例えば、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分と、約10~約1000ヌクレオチドの長さのアニオン性ペイロードとのN/P比は、約1~約10、例えば、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10である。
【0302】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約1000~約2000の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3~約12、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、または約12である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約4~約7、例えば、約4、約5、約6、または約7である。
【0303】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約2000~約3000の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3~約16、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約6~約9、例えば、約6、約7、約8、または約9である。
【0304】
いくつかの態様では、アニオン性ペイロードは、約3000~約4000の長さを有するヌクレオチド配列を含み、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約3~約20、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、または約20である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分とアニオン性ペイロードとのN/P比は、約7~約10、例えば、約7、約8、約9、または約10である。
【0305】
いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、自由末端を有し、ここで、末端基は反応性基である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、自由末端(例えば、ポリリシンカチオン性キャリア部分におけるC末端)を有し、ここで、末端基は、アミノ(-NH2)基である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分は、自由末端を有し、ここで、末端基はスルフヒドリル基である。いくつかの態様では、カチオン性キャリア部分の反応性基は、疎水性部分、例えば、ビタミンB3疎水性部分に結合される。
【0306】
IV.A.3.架橋部分
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つの架橋部分を含む。「架橋部分」という用語は、架橋を形成することができる複数の物質を含むポリマーブロックの化学部分または部分を指す。いくつかの態様では、架橋を形成することができるいくつかの物質は、架橋剤の側鎖を有するアミノ酸を含む。いくつかの態様では、CMは、バイオポリマー、例えば、架橋剤に連結されたペプチド(例えば、ポリリシン)を含む。
【0307】
いくつかの態様では、架橋部分は、1つ以上のアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン、またはそれらの組み合わせ)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、少なくとも約40個、少なくとも約41個、少なくとも約42個、少なくとも約43個、少なくとも約44個、少なくとも約45個、少なくとも約46個、少なくとも約47個、少なくとも約48個、少なくとも約49個、または少なくとも約50個のアミノ酸、例えば、リシン、アルギニン、またはそれらの組み合わせを含む。
【0308】
いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約10個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約11個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約12個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約13個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約14個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約15個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約16個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約17個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約18個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約19個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、架橋部分は、それぞれが架橋剤に連結された少なくとも約20個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。
【0309】
いくつかの態様では、架橋剤はチオールである。いくつかの態様では、架橋剤はチオール誘導体である。
【0310】
IV.A.4.疎水性部分
いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、少なくとも1つの疎水性部分を含む。本明細書で使用する場合、「疎水性部分」という用語は、例えば、(i)ペイロードの治療活性もしくは予防活性を補足し得るか、(ii)ペイロードの治療活性もしくは予防活性を調節し得るか、(iii)標的組織もしくは標的細胞において治療薬及び/または予防薬として機能し得るか、(iv)生理学的バリア、例えば、BBB及び/または形質膜を通したカチオン性キャリアユニットの輸送を促進し得るか、(v)標的組織もしくは標的細胞の恒常性を改善し得るか、(vi)正に荷電した基をカチオン性キャリア部分に提供し得るか、または(vii)それらの任意の組み合わせであり得る分子実体を指す。
【0311】
いくつかの態様では、疎水性部分は、例えば、免疫反応、炎症反応、または組織微小環境を調節することができる。
【0312】
いくつかの態様では、免疫反応を調節することができる疎水性部分は、例えば、チロシンまたはドーパミンを含み得る。チロシンは、L-ドーパに変換され得、次いで、2ステップの酵素反応によりドーパミンに変換される。通常、ドーパミンレベルは、パーキンソン病患者において低い。したがって、いくつかの態様では、チロシンは、パーキンソン病の治療に使用されるカチオン性キャリアユニットにおける疎水性部分である。トリプトファンは、食欲、感情、ならびに運動機能、認知機能、及び自律神経機能において役割を果たすと考えられている神経伝達物質であるセロトニンに変換され得る。したがって、いくつかの態様では、低セロトニンレベルに関連する疾患または状態の治療に使用される本開示のカチオン性キャリアユニットは、疎水性部分としてトリプトファンを含む。
【0313】
いくつかの態様では、疎水性部分は、例えば、腫瘍微小環境における低酸素状態を阻害または低減することにより、腫瘍を有する対象における腫瘍微小環境を調節し得る。
【0314】
いくつかの態様では、疎水性部分は、例えば、イミダゾール誘導体、ビタミン、またはそれらの任意の組み合わせに連結されたアミノ酸を含む。
【0315】
いくつかの態様では、疎水性部分は、下式を含むイミダゾール誘導体に連結されたアミノ酸(例えば、リシン):
【化13】
(式中、G1及びG2のそれぞれは、独立して、H、芳香環、もしくは1~10アルキルであるか、またはG1及びG2は、ともに芳香環を形成し、nは1~10である。)を含む。
【0316】
いくつかの態様では、疎水性部分は、ニトロイミダゾールに連結されたアミノ酸(例えば、リシン)を含む。ニトロイミダゾールは、抗生物質として機能する。ニトロイミダゾールにおけるニトロ複素環は、低酸素細胞において還元的に活性化され得、次いで、酸化還元リサイクルを受け得るか、または細胞毒性産物に分解し得る。還元は、通常、嫌気性細菌または無酸素組織においてのみ起こるため、それらのヒト細胞または好気性細菌に対する影響は比較的小さい。いくつかの態様では、疎水性部分は、メトロニダゾール、チニダゾール、ニモラゾール、ジメトリダゾール、プレトマニド、オルニダゾール、メガゾール、アザニダゾール、ベンズニダゾール、ニトロイミダゾール、またはそれらの任意の組み合わせに連結されたアミノ酸(例えば、リシン)を含む。
【0317】
いくつかの態様では、疎水性部分は、下式を含む:
【化14】
(式中、Arは、
【化15】
であり、
Z1及びZ2のそれぞれは、HまたはOHである)。
【0318】
いくつかの態様では、疎水性部分は、炎症反応を阻害または低減することができる。
【0319】
いくつかの態様では、疎水性部分は、ビタミンに連結されたアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、ビタミンは、環式環(cyclic ring)または環式ヘテロ原子環(cyclic hetero atom ring)及びカルボキシル基またはヒドロキシル基を含む。いくつかの態様では、ビタミンは、下式を含む:
【化16】
(式中、Y1及びY2のそれぞれは、C、N、O、またはSであり、nは1または2である)。
【0320】
いくつかの態様では、ビタミンは、ビタミンA(レチノール)、ビタミンB1(チアミン塩化物)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)、ビタミンB6(ピリドキサール)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(コバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンM、ビタミンH、それらの誘導体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0321】
いくつかの態様では、ビタミンは、以下のビタミンB3(ナイアシンまたはニコチン酸としても公知)である。
【化17】
【0322】
いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された少なくとも1個、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約1個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約2個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約3個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約4個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約5個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約6個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約7個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約8個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約9個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約10個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約11個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約12個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約13個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約14個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約15個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約16個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約17個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約18個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された少なくとも約19個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された少なくとも約20個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。
【0323】
いくつかの態様では、疎水性部分は、それぞれがビタミンB3に連結された約1個~約10個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約5個~約10個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約10個~約15個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約15個~約20個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約1個~約20個のビタミンアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約1個~約15個のビタミンアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約1個~約10個のアミノ酸(例えば、リシン)、それぞれがビタミンB3に結合された約1個~約5個のアミノ酸(例えば、リシン)を含む。
【0324】
ナイアシンは、インビボにおいて補酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)の前駆体である。NADは、酵素NAD+キナーゼの存在下でのリン酸化によりNADPに変換される。NADP及びNADは、多数の水素転移プロセスに関与する多数のデヒドロゲナーゼの補酵素である。NADは、脂肪、炭水化物、タンパク質、及びアルコールの異化、ならびに細胞シグナル伝達及びDNA修復に重要であり、NADPは、主に同化反応、例えば、脂肪酸及びコレステロール合成に重要である。エネルギー必要量が高い(脳)か、または代謝回転速度が速い器官(消化管、皮膚)は、通常、それらの欠乏に最も感受性が高い。
【0325】
ナイアシンは、脳、消化管、皮膚、及び血管組織を含む種々の組織においてNIACR1の活性化により顕著な抗炎症効果をもたらす。ナイアシンは、神経炎症を減弱することが示されており、多発性硬化症及びパーキンソン病などの神経免疫障害の処置における有効性を有し得る。Offermanns & Schwaninger(2015)Trends in Molecular Medicine 21:245-266;Chai et al(2013)Current Atherosclerosis Reports 15:325;Graff et al.(2016)Metabolism 65:102-13;及びWakade & Chong(2014)Journal of the Neurological Sciences 347:34-8(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0326】
IV.A.5.標的化部分
いくつかの態様では、カチオン性キャリアユニットは、任意選択的にリンカーにより水溶性ポリマーに連結されている標的化部分を含む。本明細書で使用する場合、「標的化部分」という用語は、特定の生体物質または部位に結合する生体認識分子を指す。いくつかの態様では、標的化部分は、ある特定の標的分子に対して特異的(例えば、受容体を標的とするリガンドまたは表面タンパク質を標的とする抗体)であるか、組織に対して特異的(例えば、特定の器官または組織、例えば、肝臓、脳、または内皮にミセルを優先的に輸送する分子)であるか、または生理学的バリアを通した輸送を促進する(例えば、血液脳関門または形質膜を通した輸送を促進し得るペプチドまたは他の分子)。
【0327】
ペイロード(例えば、ヌクレオチド分子、例えば、mRNA)を本開示に従って標的化するために、標的化部分は、カチオン性キャリアユニットに連結され得、これによって、ミセルの外面に連結され得る一方で、ミセルは、その核内に封入されたペイロードを有する。
【0328】
いくつかの態様では、標的化部分は、本開示のミセルを組織に標的化することができる標的化部分である。いくつかの態様では、組織は、肝臓、脳、腎臓、肺、卵巣、膵臓、甲状腺、乳房、胃、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、組織は、がん組織、例えば、肝臓癌、脳癌、腎臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、甲状腺癌、乳癌、胃癌、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0329】
特定の態様では、組織は、肝臓である。特定の態様では、肝臓を標的とする標的化部分は、コレステロールである。他の態様では、肝臓を標的とする標的化部分は、アシアロ糖タンパク質受容体標的化部分と結合するリガンドである。いくつかの態様では、アシアロ糖タンパク質受容体標的化部分は、GalNAcクラスターを含む。いくつかの態様では、GalNAcクラスターは、一価、二価、三価、または四価のGalNAcクラスターである。
【0330】
別の態様では、組織は、膵臓である。いくつかの態様では、膵臓を標的とする標的化部分は、膵臓細胞上のαvβ3インテグリン受容体を標的とするリガンドを含む。いくつかの態様では、標的化部分は、アルギニルグリシルアスパラギン酸(RGD)ペプチド配列(L-アルギニル-グリシル-L-アスパラギン酸、Arg-Gly-Asp)を含む。
【0331】
いくつかの態様では、組織は、中枢神経系の組織、例えば、神経組織である。いくつかの態様では、中枢神経系を標的とする標的化部分は、大型中性アミノ酸輸送体1(LAT1)により輸送されることができる。LAT1(SLC7A5)は、大型中性アミノ酸及びいくつかの医薬品の両方の取り込みのための輸送体である。LAT1は、L-ドーパまたはガバペンチンなどの薬物を輸送し得る。
【0332】
いくつかの態様では、標的化部分は、グルコース輸送体1(またはGLUT1)に結合することができ、BBBを通過することができるグルコース、例えば、D-グルコースを含む。溶質輸送体ファミリー2促進性グルコース輸送体メンバー1(SLC2A1)としても公知のGLUT1は、ヒトにおいてSLC2A1遺伝子によりコードされる単輸送体タンパク質である。GLUT1は、哺乳動物細胞の形質膜を通したグルコースの輸送を促進する。この遺伝子は、哺乳動物の血液脳関門における主要なグルコース輸送体をコードする。
【0333】
いくつかの態様では、標的化部分は、GLUT1輸送体に結合することができ、BBBを通過することができるガラクトース(例えば、D-ガラクトース)を含む。いくつかの態様では、標的化部分は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)及び/またはEAAT阻害剤に結合することができ、BBBを通過することができるグルタミン酸を含む。アセチルコリンエステラーゼは、コリンエステラーゼ酵素ファミリーの主要なメンバーである酵素である。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)は、アセチルコリンエステラーゼがアセチルコリンをコリン及び酢酸に分解するのを阻害し、これにより、アセチルコリン受容体が豊富である中枢神経系、自律神経節、及び神経筋接合部における神経伝達物質アセチルコリンのレベル及び作用持続時間の両方を増加させる阻害剤である。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は、2種類のコリンエステラーゼ阻害剤のうちの1つであり、もう一方は、ブチルコリンエステラーゼ阻害剤である。
【0334】
いくつかの態様では、標的化部分により標的とされる組織は、骨格筋である。いくつかの態様では、骨格筋を標的とする標的化部分は、大型中性アミノ酸輸送体1(LAT1)により輸送されることができる。
【0335】
LAT1は、T細胞、がん細胞、及び脳内皮細胞を含む多数の細胞種で発現される。LAT1は、脳微小血管内皮細胞において一貫して高レベルで発現される。溶質輸送体が主にBBBに存在するため、本開示のミセルのLAT1への標的化により、BBBを通した送達を可能となる。いくつかの態様では、本開示のミセルをLAT1輸送体に標的化する標的化部分は、アミノ酸、例えば、分枝鎖または芳香族アミノ酸である。いくつかの態様では、アミノ酸は、バリン、ロイシン、及び/またはイソロイシンである。いくつかの態様では、アミノ酸は、トリプトファン及び/またはチロシンである。いくつかの態様では、アミノ酸は、トリプトファンである。他の態様では、アミノ酸は、チロシンである。
【0336】
いくつかの態様では、標的化部分は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、チロキシン、メルファラン、L-ドーパ、ガバペンチン、3,5-I-ジヨードチロシン、3-ヨード-I-チロシン、フェンクロニン、アシビシン、ロイシン、BCH、メチオニン、ヒスチジン、バリン、またはそれらの任意の組み合わせから選択されるLAT1リガンドである。
【0337】
Singh & Ecker(2018)“Insights into the Structure,Function,and Ligand Discovery of the Large Neutral Amino Acid Transporter 1,LAT1,” Int.J.Mol.Sci.19:1278;Geier et al.(2013)“Structure-based ligand discovery for the Large-neutral Amino Acid Transporter 1,LAT-1,” Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110:5480-85;及びChien et al.(2018)“Reevaluating the Substrate Specificity of the L-type Amino Acid Transporter(LAT1),” J. Med. Chem. 61:7358-73(参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0338】
標的化部分の非限定的な例が、以下に記載される。
【0339】
IV.A.5.a.リガンド
リガンドは、別の物質に対する選択的(または特異的)親和性を有する選択的に結合可能な物質として定義される標的化部分の一種として機能する。リガンドは、必ずしもではないが、通常、より大きな特異的に結合する物体または「結合パートナー」または「受容体」により認識及び結合される。標的化に好適なリガンドの例は、とりわけ、抗原、ハプテン、ビオチン、ビオチン誘導体、レクチン、ガラクトサミン及びフコシルアミン部分、受容体、基質、補酵素、ならびに補因子である。
【0340】
本開示のミセルに適用される場合、リガンドとしては、その対応する抗体もしくはその断片により、またはそれらに結合されることができる抗原またはハプテンが挙げられる。任意のDNA及びRNAウイルス、AIDS、HIV、及び肝炎ウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、アレナウイルス、コロナウイルス、フラビウイルス、ヘルペスウイルス、ミクソウイルス、オンコルナウイルス、パポバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ライノウイルス、トガウイルス、及びウイロイド由来のものを含むウイルス抗原またはヘマグルチニン及びノイラミニダーゼ及びヌクレオカプシド;グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌、Acinetobacter属、Achromobacter属、Bacteroides属、Clostridium属、Chlamydia属、腸内細菌、Haemophilus属、Lactobacillus属、Neisseria属、Staphyloccus属、またはStreptoccocus属のものを含む任意の細菌抗原;Aspergillus属、Candida属、Coccidiodes属、真菌症、藻菌類、及び酵母のものを含む任意の真菌抗原;任意のマイコプラズマ抗原;任意のリケッチア抗原;任意の原生動物抗原;任意の寄生虫抗原;血液細胞、ウイルス感染細胞、遺伝マーカー、心疾患、腫瘍性タンパク質、血漿タンパク質、補体因子、リウマチ因子のものを含む任意のヒト抗原も挙げられる。がん及び腫瘍抗原、例えば、とりわけ、αフェトプロテイン、前立腺特異抗原(PSA)及びCEA、がんマーカー、ならびに腫瘍性タンパク質も挙げられる。
【0341】
本開示のミセルを標的化するためのリガンドとして機能し得る他の物質は、ある特定のビタミン(すなわち、葉酸、B12)、ステロイド、プロスタグランジン、炭水化物、脂質、抗生物質、薬物、ジゴキシン、殺虫剤、麻薬、神経伝達物質、及びリガンドとして機能するように使用または修飾される物質である。
【0342】
いくつかの態様では、標的化部分は、細胞親和性を有するタンパク質またはタンパク質断片(例えば、ホルモン、毒素)及び合成または天然ポリペプチドを含む。リガンドとしては、組換えDNA、遺伝子工学、及び分子工学により作製される、リゲーターに対する選択的親和性を有する様々な物質も挙げられる。特に明示される場合を除き、本開示のリガンドには、米国特許第3,817,837号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)において定義されるリガンドも含まれる。
【0343】
IV.A.5.b.リゲーター
リゲーターは、必ずしもではないが、通常、結合することができるリガンドより大きな特異的に結合する物体または「パートナー」または「受容体」と本開示において定義される標的化部分の一種として機能する。本開示の目的のため、リゲーターは、特異的リガンドとの選択的親和性結合ができる特異的な物質または材料または化学物質または「反応物質」であり得る。リゲーターは、抗体などのタンパク質、タンパク質でない結合する物体、または「特異的反応を示すもの」であり得る。
【0344】
本開示に適用される場合、リゲーターとしては、すべてのクラスの抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab断片、それらの断片及び誘導体を含むと定義される抗体が挙げられる。「抗体」という用語は、天然であるか、または一部もしくは全体が合成により生成されたかどうかにかかわらず、免疫グロブリン及びその断片を包含する。この用語はまた、免疫グロブリン結合ドメインに相同である結合ドメインを有するあらゆるタンパク質を包含する。「抗体」には、抗原を特異的に結合及び認識する、免疫グロブリン遺伝子またはその断片由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドもさらに含まれる。抗体という用語の使用は、全長抗体、ポリクローナル、モノクローナル、及び組換え抗体、それらの断片を含み、一本鎖抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ、マウス/ヒト、マウス/霊長類、霊長類/ヒトモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、抗体断片、例えば、scFv、scFab、(scFab)2、(scFv)2、Fab、Fab’、及び、F(ab’)2、F(ab1)2、Fv、dAb、ならびにFd断片、ダイアボディ、ならびに抗体関連ポリペプチドをさらに含むことを意図する。抗体は、所望の生物学的活性または機能を有するものである限り、二重特異性抗体及び多重特異性抗体を含む。本開示のいくつかの態様では、標的化部分は、抗体または分子であって、その抗原結合断片を含む、抗体または分子である。いくつかの態様では、抗体は、ナノボディである。いくつかの態様では、抗体は、ADCである。「抗体薬物コンジュゲート」及び「ADC」という用語は、互換的に使用され、例えば、共有結合により治療薬(場合により、本明細書において、薬剤、薬物、または活性医薬成分と称される)または薬剤に連結された抗体を指す。本開示のいくつかの態様では、標的化部分は、抗体薬物コンジュゲートである。
【0345】
ある特定の状況では、本開示は、他の物質のリゲーターとしての使用にも適用可能である。例えば、標的化に好適な他のリゲーターとしては、ホルモン、ビタミン、薬物、抗生物質、がんマーカー、遺伝マーカー、ウイルス、及び組織適合性マーカーに特異的に結合する、天然に存在する受容体、任意のヘマグルチニン及び細胞膜及び核の誘導体が挙げられる。別の類のリゲーターとしては、任意のRNA及びDNA結合物質、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)及びポリペプチドまたはタンパク質、例えば、ヒストン及びプロタミンが挙げられる。
【0346】
他のリゲーターとしては、酵素、特にノイラミニダーゼなどの細胞表面酵素、血漿タンパク質、アビジン、ストレプトアビジン、ケイロン、キャビタンド、チログロブリン、内因子、グロブリン、キレート剤、界面活性剤、有機金属物質、ブドウ球菌プロテインA、プロテインG、リボソーム、バクテリオファージ、シトクロム、レクチン、ある特定の樹脂、及び有機ポリマーも挙げられる。
【0347】
標的化部分としては、様々な物質、例えば、組換えDNA、遺伝子工学、及び分子工学により作製される、任意の細胞、組織、または微生物の表面に対する親和性を有する任意のタンパク質、タンパク質断片、またはポリペプチドも挙げられる。したがって、いくつかの態様では、標的化部分は、本開示のミセルを特定の組織(すなわち、肝臓組織または脳組織)、特定の種類の細胞(例えば、ある特定の種類のがん細胞)、または生理学的区画もしくは生理学的バリア(例えば、BBB)に誘導する。
【0348】
IV.A.6リンカー
前述したように、本明細書に開示されるカチオン性キャリアユニットは、1つ以上のリンカーを含み得る。本明細書で使用する場合、「リンカー」という用語は、主な機能が本明細書において開示されるカチオン性キャリアユニットにおける2つの部分を連結することである、ペプチドもしくはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)、または非ペプチドリンカーを指す。いくつかの態様では、本開示のカチオン性キャリアユニットは、組織特異的標的化部分(TM)を水溶性ポリマー(WS)と連結する少なくとも1つのリンカー、水溶性バイオポリマー(WP)をカチオン性キャリア(CC)もしくは疎水性部分(HM)もしくは架橋部分(CM)と連結する少なくとも1つのリンカー、カチオン性キャリア(CC)を疎水性部分(HM)と連結する少なくとも1つのリンカー、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの態様では、2つ以上のリンカーを直列に連結することができる。
【0349】
複数のリンカーが本明細書において開示されるカチオン性キャリアユニットに存在する場合、リンカーの各々は、同一であり得るか、または異なり得る。一般に、リンカーは、カチオン性キャリアユニットに柔軟性を提供する。リンカーは、通常切断されないが、ある特定の態様では、かかる切断が望ましいことがあり得る。したがって、いくつかの態様では、リンカーは、リンカーの配列内に位置するかまたはリンカー配列のいずれかの末端でリンカーに隣接させることができる1つ以上のプロテアーゼ切断部位を含むことができる。
【0350】
一態様では、リンカーは、ペプチドリンカーである。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも約2個、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約10個、少なくとも約15個、少なくとも約20個、少なくとも約25個、少なくとも約30個、少なくとも約35個、少なくとも約40個、少なくとも約45個、少なくとも約50個、少なくとも約55個、少なくとも約60個、少なくとも約65個、少なくとも約70個、少なくとも約75個、少なくとも約80個、少なくとも約85個、少なくとも約90個、少なくとも約95個、または少なくとも約100個のアミノ酸を含むことができる。
【0351】
いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも約110個、少なくとも約120個、少なくとも約130個、少なくとも約140個、少なくとも約150個、少なくとも約160個、少なくとも約170個、少なくとも約180個、少なくとも約190個、または少なくとも約200個のアミノ酸を含むことができる。
【0352】
他の態様では、ペプチドリンカーは、少なくとも約200個、少なくとも約250個、少なくとも約300個、少なくとも約350個、少なくとも約400個、少なくとも約450個、少なくとも約500個、少なくとも550個、少なくとも約600個、少なくとも約650個、少なくとも約700個、少なくとも約750個、少なくとも約800個、少なくとも約850個、少なくとも約900個、少なくとも約950個、または少なくとも約1,000個のアミノ酸を含むことができる。
【0353】
ペプチドリンカーは、1~約5個の個のアミノ酸、1~約10個のアミノ酸、1~約20個のアミノ酸、約10~約50個のアミノ酸、約50~約100個のアミノ酸、約100~約200個のアミノ酸、約200~約300個のアミノ酸、約300~約400個のアミノ酸、約400~約500個のアミノ酸、約500~約600個のアミノ酸、約600~約700個のアミノ酸、約700~約800個のアミノ酸、約800~約900個のアミノ酸、または約900~約1000アミノ酸を含むことができる。
【0354】
ペプチドリンカーの例は、当該技術分野では周知のものである。いくつかの態様では、リンカーはグリシン/セリンリンカーである。いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、式[(Gly)n-Ser]mによるグリシン/セリンリンカーであり、式中、nは、1~100の任意の整数であり、mは、1~100から任意の整数である。他の態様では、グリシン/セリンリンカーは、式[(Gly)x-Sery]z(配列番号1)によるものであり、式中、xは、1~4の整数であり、yは、0または1であり、zは、1~50の整数である。一態様では、ペプチドリンカーは、配列Gnを含み、式中、nは、1~100の整数であり得る。特定の態様では、ペプチドリンカーの配列は、GGGG(配列番号2)である。
【0355】
いくつかの態様では、ペプチドリンカーは、配列(GlyAla)n(配列番号3)を含み得、式中、nは、1~100の整数である。他の態様では、ペプチドリンカーは、配列(GlyGlySer)n(配列番号4)を含み得、式中、nは、1~100の整数である。
【0356】
他の態様では、ペプチドリンカーは、配列(GGGS)n(配列番号5)を含む。さらに他の態様では、ペプチドリンカーは、配列(GGS)n(GGGGS)n(配列番号6)を含む。これらの例において、nは、1~100の整数であり得る。他の例において、nは、1~20の整数、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり得る。
【0357】
リンカーの例としては、限定されるものではないが、GGG、SGGSGGS(配列番号7)、GGSGGSGGSGGSGGG(配列番号8)、GGSGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(配列番号10)、またはGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号11)が挙げられる。他の態様では、リンカーは、ポリG配列(GGGG)n(配列番号12)であり、式中、nは、1~100の整数であり得る。
【0358】
一態様では、ペプチドリンカーは、合成、すなわち、非天然である。一態様では、ペプチドリンカーは、アミノ酸の第1の直線配列を、第1の直線配列が自然には連結されていない、または遺伝子的に融合されていないアミノ酸の第2の直線配列に連結または遺伝子的に融合するアミノ酸配列を含むペプチド(またはポリペプチド)(例えば、天然または非天然ペプチド)を含む。例えば、一態様では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの改変された形態(例えば、付加、置換または欠失などの変異を含む)である非天然のポリペプチドを含むことができる。別の態様では、ペプチドリンカーは、非天然アミノ酸を含み得る。別の態様では、ペプチドリンカーは、自然に生じない直鎖状配列で生じる天然に存在するアミノ酸を含み得る。さらに別の態様では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチド配列を含み得る。
【0359】
いくつかの態様では、リンカーは、非ペプチドリンカーを含む。他の態様では、リンカーは、非ペプチドリンカーからなる。いくつかの態様では、非ペプチドリンカーは、例えば、マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、メトキシルポリエチレングリコール(MPEG)、4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル(SMCC)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、4-(p-マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミジル(SMPB)、(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸N-スクシンイミジル(SIAB)、6-[3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサン酸スクシンイミジル(LC-SPDP)、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、など(米国特許第7,375,078号を参照のこと)であり得る。
【0360】
リンカーは、当該技術分野において公知の技術(例えば、化学的コンジュゲーション、組換え技術、またはペプチド合成)を使用してポリペプチド配列に導入され得る。改変は、DNA配列解析により確認され得る。いくつかの態様では、リンカーは、組換え技術を使用して導入され得る。他の態様では、リンカーは、固相ペプチド合成を使用して導入され得る。ある特定の態様では、本明細書において開示されるカチオン性キャリアユニットは、組換え技術を使用して導入された1つ以上のリンカー、及び固相ペプチド合成または当該技術分野において公知の化学的コンジュゲーションの方法を使用して導入された1つ以上のリンカーを同時に含有し得る。いくつかの態様では、リンカーは切断部位を含む。
【0361】
V.細胞
いくつかの態様では、本明細書では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を含むように改変された細胞が提供される。特定の態様では、細胞は、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、AAVまたはレンチウイルスベクター)を含む。
【0362】
いずれの理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(すなわち、本開示のポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドを含むベクターを含む)は、タンパク質(例えば、本明細書に記載の治療用タンパク質、例えば、コロナウイルスタンパク質)を産生するのに有用である。本明細書に記載されるように、いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)は、細胞内でコードされたタンパク質の発現を増加させることができる。したがって、いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(すなわち、本開示のポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドを含むベクターを含む)は、参照細胞と比較して、コードされたタンパク質のより多くの発現を生じる。特定の態様では、参照細胞は、本明細書に記載のHA-5’-UTR及び/またはHA-3’-UTRを欠くポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞におけるコードされたタンパク質(例えば、本明細書に記載の治療用タンパク質)の発現は、参照細胞における対応する発現と比較して、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約16倍、少なくとも約17倍、少なくとも約18倍、少なくとも約19倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、または少なくとも約100倍以上増加する、
【0363】
いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(すなわち、本開示のポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドを含むベクターを含む)は、コードされたタンパク質をインビトロで産生することができる。特定の態様では、本明細書に記載の細胞(すなわち、本開示のポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドを含むベクターを含む)は、コードされたタンパク質をインビボで産生することができる。例えば、いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドを含むベクターは、エクスビボで(例えば、トランスフェクションにより)細胞に導入し、その後、細胞を対象に投与することができ(例えば、養子細胞療法)、コードされたタンパク質は投与後に対象内で産生される。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドを含むベクターは、例えば、遺伝子治療の一環として対象に投与することができる。いくつかの態様では、本明細書に記載の細胞(すなわち、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドを含むベクターを含む)は、コードされたタンパク質をインビトロ及びインビボの両方で産生することができる。
【0364】
当該技術分野では周知の任意の適当な細胞を、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)またはそのポリヌクレオチドを含むベクターを含むように改変することができる。いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を(例えば、インビボで)産生するために使用することができる細胞は、ヒト細胞を含む。特定の態様では、ヒト細胞は、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはそのポリヌクレオチドを含むベクターを投与しようとする対象の細胞である。特定の態様では、ヒト細胞は、ドナー(例えば、健康なヒト対象)に由来する。
【0365】
いくつかの態様では、本開示のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を(例えば、インビトロで)産生するために使用することができる細胞は、宿主細胞を含む。いくつかの態様では、宿主細胞は、真核細胞である。いくつかの態様では、宿主細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、トランスジェニック哺乳動物細胞、植物細胞、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様では、宿主細胞は、原核細胞である。いくつかの態様では、原核細胞は、細菌細胞である。
【0366】
いくつかの態様では、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。本開示に適した哺乳動物宿主細胞の非限定的な例としては、CHO、VERO、BHK、Hela、MDCK、HEK 293、NIH 3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0(免疫グロブリン鎖を内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3O、COS(例えば、COS1またはCOS)、PER.C6、VERO、HsS78Bst、HEK-293T、HepG2、SP210、R1.1、B-W、L-M、BSC1、BSC40、YB/20、BMT10、HBK、NSO、HT1080、HsS78Bst細胞、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0367】
VI.医薬組成物
本開示から明らかなように、本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質(例えば、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされる治療用タンパク質)、及び細胞(本明細書では「活性化合物」とも呼ばれる)のいずれも、投与に適した医薬組成物に添加することができる。したがって、いくつかの態様では、医薬組成物は、活性化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0368】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される賦形剤」(本明細書では「薬学的に許容される担体」とも呼ばれる)という用語は、医薬投与に適合したあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。医薬活性化合物用のかかる媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野では周知のものである。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性化合物を組成物に添加することもできる。
【0369】
いくつかの態様では、本明細書では、(a)本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)と、(b)薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が開示される。いくつかの態様では、本明細書では、(a)本明細書に記載のベクター(例えば、AAVまたはレンチウイルスベクター)と、(b)薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が開示される。いくつかの態様では、本明細書では、(a)本明細書に記載の細胞(例えば、本開示のポリヌクレオチドを含むように改変されたもの)と、(b)薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が開示される。
【0370】
本開示の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように配合される。いくつかの態様では、本開示とともに使用することができる適当な投与経路は、筋肉内投与を含む。いくつかの態様では、適当な投与経路には、鼻腔内投与が含まれる。適当な投与経路のさらなる非限定的な例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口、経皮(局所)、及び経粘膜、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。別の投与経路としては肺投与が挙げられる。さらに、治療有効量の医薬組成物を治療が必要な領域に局所的に投与することが望ましい場合もある。これは、例えば、手術中の局所的または局部的な注入または灌流、局所塗布、注射、カテーテル、坐剤、またはインプラント(例えば、シアラスティック膜などの膜または繊維を含む多孔質、非多孔質、またはゼラチン状材料で形成されたインプラント)によって行うことができる。いくつかの態様では、治療有効量の医薬組成物は、リポソームなどの小胞中で送達される(例えば、Langer,Science 249:1527-33,1990及びTreat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez Berestein and Fidler(eds.),Liss,N.Y.,pp.353-65,1989を参照)。
【0371】
いくつかの態様では、本明細書に記載の医薬組成物は、制御放出システムで送達することができる。例えば、特定の態様では、ポンプを使用することができる(例えば、Langer,Science 249:1527-33,1990;Sefton,Crit.Rev.Biomed.Eng.14:201-40,1987;Buchwald et al.,Surgery 88:507-16,1980;Saudek et al.,N Engl.J Med.321:574-79,1989を参照)。いくつかの態様では、ポリマー材料を使用することができる(例えば、Levy et al.,Science 228:190-92,1985;During et al.,Ann.Neural.25:351-56,1989;Howard et al.,J Neurosurg.71:105-12,1989を参照)。Langer(Science 249:1527-33,1990)により記載されるような他の放出制御システムも使用することができる。
【0372】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される用量及び濃度で投与対象に非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0373】
非経口製剤中に使用される薬学的に許容できる担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗微生物剤、等張剤、バッファー、酸化防止剤、局所麻酔剤、懸濁剤及び分散剤、乳化剤、封鎖剤またはキレート剤、ならびに他の薬学的に許容できる物質が挙げられる。水性ビヒクルの例には、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸加リンゲル注射液が含まれる。非水性非経口ビヒクルとしては、植物由来の不揮発性油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、及びピーナッツ油が挙げられる。フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp-ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、ベンザルコニウムクロリド、及びベンゼトニウムクロリドを含む複数用量容器に包装される非経口調製物に、静菌性または静真菌性の濃度の抗微生物剤を加えてもよい。等張剤は、塩化ナトリウム及びデキストロースを含む。バッファーは、リン酸塩及びクエン酸塩を含む。抗酸化剤は、重硫酸ナトリウムを含む。局所麻酔剤は、塩酸プロカインを含む。懸濁剤及び分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含む。乳化剤は、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)を含む。金属イオンの封鎖剤またはキレート剤は、EDTAを含む。医薬担体としては、水混和性ビヒクル用のエチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコール、ならびにpH調整用の水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、または乳酸も挙げられる。
【0374】
非経口、皮内、または皮下投与に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分、すなわち、無菌の希釈剤、例えば、注射用の水、生理食塩液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはホスフェート、及び張度の調整のための剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースを含むことができる。pHは、塩酸や水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によって調整することができる。非経口製剤は、ガラスもしくはプラスチックで形成されたアンプル、使い捨て注射器、または複数用量バイアルに封入することができる。
【0375】
注射用途に適した医薬組成物としては、滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液及び滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与の場合、適当な担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELS(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合も、組成物は滅菌状態でなければならず、かつ容易に注射可能な程度の流動性を有さなければならない。組成物は、製造及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)及びそれらの適当な混合物を含む溶媒または分散媒とすることができる。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合の必要な粒径の維持、及び/または界面活性剤の使用によって適切な流動性を維持することができる。微生物の活動の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって実現することができる。多くの場合、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に加えることが好ましい。例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる剤を組成物に加えることによって注射用組成物の吸収を遅延させることができる。
【0376】
必要な量の活性化合物を適当な溶媒中に、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに添加した後、滅菌濾過を行うことによって滅菌注射液を調製することができる。一般的に、分散液は、塩基性分散媒及び上記に列挙したものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに活性化合物を添加することによって調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であってよく、予め滅菌濾過したその溶液から有効成分及び任意の追加的な所望の成分の粉末が得られる。
【0377】
吸入による投与の場合、化合物は、適切な噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧容器またはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。全身投与も、経粘膜的または経皮的手段によって行うことができる。
【0378】
経粘膜または経皮投与を行うには、浸透させるバリアに対して適当な浸透剤が製剤中に用いられる。かかる浸透剤は、当該技術分野では周知のものであり、例えば、経粘膜投与の場合では、洗剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、点鼻薬または坐剤を使用して行うことができる。経皮投与の場合、活性化合物は、当該技術分野で一般的に知られているように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームとして製剤化される。化合物は、直腸投与用の坐剤(例えば、ココアバター及び他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含むもの)または停留浣腸の形態で調製することもできる。
【0379】
いくつかの態様では、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤など、身体からの急速な排出から化合物を保護する担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸のような、生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製方法は当業者には明らかであろう。これらの材料は、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液も、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載されるような、当業者には周知の方法に従って調製することができる。
【0380】
いくつかの態様では、本開示の活性化合物は、投与の容易さ及び投与量の均一性のために単位剤形として製剤化することができる。本明細書で使用する場合、単位剤形とは、治療される対象の単位用量として適当な物理的に個別の単位のことを言い、各単位は、所望の治療効果が得られるように計算された所定量の活性化合物を必要な医薬担体とともに含む。本開示の単位剤形の仕様は、活性化合物の固有の特性及び得ようとする特定の治療効果、ならびに個人の治療用のかかる機能性化合物の調合技術に特有の制限によって規定され、これらに直接依存する。医薬組成物は、投与説明書とともに容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
【0381】
VII.キット
本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、コードされたタンパク質、細胞、及び/または医薬組成物のいずれかと、必要に応じて使用説明書、例えば本明細書に開示される方法に従った使用説明書と、を含むキットまたは製品も提供する。したがって、いくつかの態様では、本明細書では、(i)本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)と、(ii)使用説明書と、を含むキットが開示される。いくつかの態様では、本明細書では、(i)本明細書に記載のベクターと、(ii)使用説明書と、を含むキットが開示される。いくつかの態様では、本明細書では、(i)本明細書に記載の細胞と、(ii)使用説明書と、を含むキットが開示される。いくつかの態様では、本明細書では、(i)本明細書に記載の医薬組成物と、(ii)使用説明書と、を含むキットが開示される。
【0382】
いくつかの態様では、キットまたは製品は、単一の容器中に本明細書に記載されるポリヌクレオチド、ベクター、コードされたタンパク質、細胞、及び/または医薬組成物を含む。特定の態様では、キットまたは製品は、複数(例えば、少なくとも2つ)の容器、1つ以上の容器中に本明細書に記載されるポリヌクレオチド、ベクター、コードされたタンパク質、細胞、及び/または医薬組成物を含む。本明細書のベクター、ポリヌクレオチド、細胞、タンパク質、及び医薬組成物のいずれも、当該技術分野では周知の確立されたキット形式の1つに容易に組み込むことができる点は当業者には容易に認識されよう。
【0383】
VIII.使用及び方法
VIII.A.製造方法
本明細書では、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を作製する方法も開示される。いくつかの態様では、当該技術分野では周知の任意の方法によって本明細書に記載されるポリヌクレオチドを得ることができ、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定することができる。目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質、例えば、コロナウイルスタンパク質)をコードするヌクレオチド配列は、当該技術分野では周知の方法を使用して決定することができる。すなわち、特定のアミノ酸をコードすることが知られているヌクレオチドコドンを、ポリペプチドをコードする核酸を生成するような形で編成する。ポリペプチドをコードするそのようなポリヌクレオチドは、化学的に合成したオリゴヌクレオチドから編成することができ(例えば、Kutmeier G et al.,(1994),BioTechniques 17:242-6に記載されるよう)、簡単に述べると、ポリペプチドをコードする配列の部分を含む重複するオリゴヌクレオチドの合成と、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、その後のPCRによるライゲートされたオリゴヌクレオチドの増幅を行う。
【0384】
特定のポリペプチドをコードする核酸を含むクローンが入手できないが、ポリペプチド分子の配列がわかっている場合、ポリペプチドをコードする核酸は化学的に合成するか、または適当な供給源(例えば、cDNAライブラリー、または目的のタンパク質を発現する任意の組織または細胞、例えば、本明細書に記載のポリペプチドを発現するように選択された細胞などから作製されたcDNAライブラリー、またはそれらから単離された核酸、好ましくはポリA+RNA)から、配列の3’及び5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いたPCR増幅によって、または例えば、ポリペプチドをコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを同定するための特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用したクローニングによって得ることができる。次いで、PCRによって生成された増幅された核酸を、当該技術分野では周知の任意の方法を使用して複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
【0385】
本明細書に記載のポリヌクレオチドを作製するために使用できる例示的な方法のさらなる説明は、例えば、US9,597,380、US2013/0259923、及びUS2013/0115272に示されており、これらはそれぞれ、本明細書に参照によってその全容を援用するものである。
【0386】
本明細書に記載のポリヌクレオチドをコードするDNAは容易に単離することができ、従来の手法を使用して(例えば、本明細書に開示されるポリヌクレオチドをコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列決定することができる。多くの細胞がそのようなDNAの供給源となりうる。DNAは、単離した後、発現ベクターに入れることができ、次いでこれを、発現ベクターがなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しないE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO GS System(商標)(Lonza)からのCHO細胞)、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトすることで、組換え宿主細胞中でポリペプチドの合成が行われる。
【0387】
本明細書では、目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質、例えば、コロナウイルスタンパク質)を生産する方法も提供される。いくつかの態様では、このような方法は、本明細書に記載の細胞を適当な条件下で培養することと、場合により目的のタンパク質を回収することと、を含む。特定の態様では、目的のタンパク質を生産する方法は、コードされたタンパク質が対象内で産生されるように、タンパク質の産生を必要とする対象に本開示のポリヌクレオチドを投与することを含む。タンパク質を産生するそのようなインビボの方法に関するさらなる開示は、本開示の他の箇所で示される(例えば、「治療用途」を参照)。
【0388】
VIII.B.治療用途
本開示から明らかなように、本明細書で提供される組成物(例えば、ポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質、細胞、及び医薬組成物)は、多くのインビトロ及びインビボでの有用性を有する。例えば、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(例えば、ORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)は、培養細胞に、インビトロもしくはエクスビボで、または例えば疾患を治療するためにインビボでヒト対象に投与することができる。
【0389】
したがって、いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質、細胞、及び医薬組成物のいずれかを使用する治療方法に関する。いくつかの態様では、本明細書では、目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質)の発現を必要とする対象において目的のタンパク質を発現させる方法であって、本開示のポリヌクレオチド(例えば、目的のタンパク質をコードするORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を対象に投与することを含み、目的のタンパク質は投与後に対象で発現される、方法が開示される。
【0390】
本明細書に記載されるように、本開示のUTR(例えば、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)は、翻訳される際にポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を増加させることができる。したがって、特定の態様では、本明細書では、タンパク質の発現を増加させる方法であって、細胞を、本明細書に記載のポリヌクレオチド(例えば、タンパク質をコードするORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)またはポリペプチドを含むベクターと接触させることを含む方法が提供される。いくつかの態様では、接触させることは、インビボで行われる(例えば、遺伝子治療)。特定の態様では、接触させることは、エクスビボで行われる。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドと細胞を接触させることにより、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTRを欠く、対応するポリヌクレオチドと細胞を接触させる場合と比較して、タンパク質発現が増加する。特定の態様では、タンパク質の発現は、少なくとも約0.5倍、少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、または少なくとも約100倍以上増加する。
【0391】
いくつかの態様では、本明細書では、疾患または障害の治療を必要とする対象の疾患または障害を治療する方法であって、本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質、細胞及び/または医薬組成物のいずれかを対象に投与することを含む、方法も提供される。本開示から明らかなように、特定の態様では、投与により、コードされたタンパク質が対象で産生される。いずれの理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、コードされたタンパク質は、産生されると、対象の免疫応答(例えば、細胞性免疫応答及び/または抗体媒介性免疫応答)を調節(例えば、誘導または抑制)し、それにより疾患または障害を治療することができる。特定の態様では、コードされたタンパク質は、産生されると、対象内の他の生物学的プロセスを調節することができる。本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされ得るタンパク質(例えば、治療用タンパク質)の非限定的な例は、本開示の他の箇所に示される(セクションII.B.「オープンリーディングフレーム」を参照)。
【0392】
したがって、特定の態様では、本開示は、免疫応答の誘導を必要とする対象に免疫応答を誘導する方法であって、対象に本開示のポリヌクレオチド(例えば、異種タンパク質をコードするORF、HA-5’-UTR、及びHA-3’-UTRを含む)を投与することを含み、投与後に対象に異種タンパク質に対する免疫応答が誘導される、方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、免疫応答の抑制を必要とする対象の免疫応答を抑制する方法であって、本開示のポリヌクレオチドを対象に投与することを含み、コードされるタンパク質が対象の免疫応答を抑制(例えば、抑制性細胞、例えば、制御性T細胞の活性化及び/または増殖を誘導することによって)することができる、方法を提供する。
【0393】
本明細書に示される開示に基づけば、コードされたタンパク質が疾患または障害に対して治療効果を発揮することができるという点に留意すると、本開示によって任意の疾患または障害を治療できることは当業者には明らかであろう。特定の態様では、本開示で治療することができる疾患または障害は、ウイルス感染症(またはウイルス感染症に関連する疾患または障害)を含む。いくつかの態様では、ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症、インフルエンザウイルス感染症、またはその両方を含む。
【0394】
本開示から明らかなように、いくつかの態様では、本開示により治療することができる疾患または障害は、がんを含む。がんの非限定的な例としては、乳癌、頭頸部癌、子宮癌、脳腫瘍、皮膚癌、腎癌、肺癌、結腸直腸癌、前立腺癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、甲状腺癌、食道癌、眼癌、胃(stomach)(胃(gastric)癌、消化管癌、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、骨髄腫、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0395】
いくつかの態様では、本開示により治療することができる疾患または障害は、遺伝子疾患を含む。特定の態様では、遺伝子疾患はハンター症候群を含む。
【0396】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質、細胞、及び医薬組成物は、静脈内、経皮、皮内、皮下、経口、肺、またはそれらの任意の組み合わせで投与することができる。いくつかの態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質、細胞、及び医薬組成物は、局所、上皮粘膜、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、または胸骨内経路を介して投与することができる。いくつかの態様では、本開示の組成物(例えば、ポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質、細胞、及び医薬組成物)のいずれかが対象に筋肉内投与される。いくつかの態様では、本開示の組成物(例えば、ポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質、細胞、及び医薬組成物)が対象に静脈内投与される。いくつかの態様では、本開示の組成物(例えば、ポリヌクレオチド、ベクター、タンパク質、細胞、及び医薬組成物)が対象に皮下投与される。
【0397】
以下の実施例は、例示のために示すものであって、限定のためのものではない。
【実施例】
【0398】
実施例1:改変RNAコンストラクトの構築
本明細書に記載の改変ポリヌクレオチドを構築するため、2009年パンデミックインフルエンザウイルス(H1N1pdm09_A/Korea/01/09)のヘマグルチニン(HA)タンパク質の5’-UTR(配列番号13)及び3’-UTR(配列番号14)配列を使用した。簡単に述べると、mRNA鋳型を生成するため、プラスミドのコード配列をDNAポリメラーゼ(KOD-Plus-Neo、TOYOBO)で増幅した。T7ポリメラーゼ(EZ(商標)MEGA T7転写キット、Enzynomics)を使用して37℃で転写を2時間行い、LiCl沈殿によって精製した。次に、ワクシニアキャッピングシステム(NEB)及びmRNA Cap 2’-O-メチルトランスフェラーゼ(NEB)を使用してRNAをキャッピングし、LiCl沈殿によって精製した。E.coliポリ(A)ポリメラーゼ(NEB)を使用して3’-ポリ(A)テールを付加し、LiCl沈殿によって精製した。
図1は、本明細書に記載される例示的なRNAコンストラクトを示す。
【0399】
実施例2:インフルエンザHAタンパク質発現のインビトロ分析
タンパク質発現を誘導する改変ポリヌクレオチドの能力を評価するため、実施例1に記載の5’-UTR配列及び3’-UTR配列を、インフルエンザHA(2009 pH1N1)タンパク質をコードするmRNAに適用した(「改変mRNAコンストラクト」または「mod-mRNA」)。次に、免疫蛍光アッセイとウエスタンブロットの両方を使用して、HAタンパク質の発現を評価した。
【0400】
免疫蛍光アッセイでは、HEK293T細胞を、24ウェルプレート中のカバースリップ上に、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Welgene Inc.)中、37℃で播種した(7×104細胞/ウェル)。次いで、リポフェクタミン2000(Invitrogen Life Technologies Inc.)を使用して、細胞に改変mRNAコンストラクト(0.5μg)またはコントロールのmRNAコンストラクト(0.5μg)(すなわち、上記の5’-UTR配列及び3’-UTR配列を欠いた、対応するmRNA)のいずれかをトランスフェクトした。非トランスフェクト細胞をコントロールとして用いた。24時間後、細胞を4%ホルムアルデヒドで20分間固定し、次いで2.5%BSAのPBS溶液で室温にて1時間ブロックした。その後、細胞を一次抗HA抗体(Invitrogen Life Technologies Inc.)とともに室温で2時間インキュベートし、次いで二次抗ウサギAlexa 488結合抗体とともに室温で1時間インキュベートした。抗体で染色した後、4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を含む封入剤とともにカバーガラスをスライドガラスに載せ、共焦点顕微鏡(Leica Biosystems)を使用して画像化した。
【0401】
ウエスタンブロットでは、HEK293T細胞を6ウェルプレート中に、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Welgene Inc.)中、37℃で播種した(3.5×105細胞/ウェル)。次いで、リポフェクタミン2000(Invitrogen Life Technologies Inc.)を使用して、細胞に改変mRNAコンストラクト(3μg)またはコントロールのmRNAコンストラクト(3μg)をトランスフェクトした。非トランスフェクト細胞をコントロールとして用いた。トランスフェクションの6時間または24時間後に細胞を回収し、総タンパク質をRIPAバッファー(Sigma-Aldrich)で抽出し、タンパク質BCAアッセイキット(Thermo Scientific)を使用して定量した。次に、タンパク質(50μg)を10%SDS-PAGEゲルメンブレンにロードし、分離されたタンパク質をPVDF(Milipore)に転写し、0.1%(v/v)Tween(登録商標)-20を添加したPBS中の3%(w/v)スキムミルクで4℃にて一晩ブロックした。その後、メンブレンを一次抗HA抗体(Invitrogen Life Technologies Inc.)で室温にて2時間染色した。β-アクチンを正規化コントロールとして使用した(Cell signaling tech.)。次に、メンブレンをPBS/Tで3回洗浄し、抗マウスまたはウサギ結合HRPとともに室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、LAS500システム(GEヘルスケア)を使用した視覚化を行うために、メンブレンをECL溶液(GEヘルスケア)とともにインキュベートした。
【0402】
図2に示すように、改変mRNAコンストラクト(すなわち、本明細書に記載の5’-UTR配列及び3’-UTR配列を含む)をトランスフェクトしたHEK293T細胞は、免疫蛍光アッセイで測定した場合に最大のHAタンパク質発現量を示した。同様の結果がウエスタンブロットを使用して観察された(
図3を参照)。トランスフェクションの6時間後及び24時間後の両方で、改変mRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞は、5’-UTR及び3’-UTR配列を欠くコントロールmRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞と比較して、大幅に多量のHAタンパク質を発現した。
【0403】
上記の結果は、本明細書に記載の5’-UTR配列及び3’-UTR配列を含めることにより、HAタンパク質をコードするmRNAコンストラクトの翻訳効率を高めることができることを実証するものである。
【0404】
実施例3:EGFPタンパク質発現のインビトロ分析
本明細書に記載の5’-UTR配列及び3’-UTR配列が非インフルエンザタンパク質の発現を増加させる能力を評価するため、実施例1に記載の方法を用いて、EGFPをコードする改変mRNAコンストラクトを構築した。
【0405】
簡単に述べると、HEK293T細胞を6ウェルプレート中に、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Welgene Inc.)中、37℃で播種した(3.5×105細胞/ウェル)。次いで、リポフェクタミン2000(Invitrogen Life Technologies Inc.)を使用して、細胞に、改変mRNAコンストラクト(すなわち、実施例1に記載される5’-UTR及び3’-UTR配列を含む)(3μg)またはコントロールmRNAコンストラクト(すなわち、実施例1に記載される5’-UTR及び3’-UTRを含まない、対応するコンストラクト)(3μg)をトランスフェクトした。トランスフェクションの6、12、及び24時間後に、蛍光顕微鏡(Leica Biosystems)を使用してEGFPシグナルを測定した。
【0406】
ウエスタンブロッティングを行うため、リポフェクタミン2000(Invitrogen Life Technologies Inc.)を使用して、HEK293 T細胞に改変mRNAコンストラクトまたはコントロールmRNAコンストラクトを1μg及び3μgの2つの異なる用量でトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に総タンパク質をRIPAバッファー(Sigma-Aldrich)で抽出し、タンパク質BCAアッセイキット(Thermo Scientific)を使用して定量した。次いで、10%SDS-PAGEゲルメンブレンを使用して各タンパク質を分離し、分析した(実施例2を参照)。
【0407】
HAタンパク質で観察された結果と同様に、蛍光顕微鏡及びウエスタンブロット(それぞれ
図4及び
図5を参照)で測定した場合に、EGFPをコードする修飾mRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞は、モックコントロール細胞及び非改変コントロールmRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞の両方と比較して、大幅に高いEGFP発現を示した。
【0408】
次に、本明細書に記載の5’-UTR配列及び3’-UTR配列が個々の細胞レベルでタンパク質の発現を増加させることができるかどうかを評価するため、HEK293T細胞を2%ウシ胎児血清(Welgene Inc.)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Welgene Inc.)中、37℃で6ウェルプレート(3.5×105細胞/ウェル)に播種した。次いで、EGFPをコードする改変mRNA(すなわち、5’-UTR及び3’-UTR配列を含む)、または同じくEGFPをコードするが、実施例1に記載される5’-UTR及び3’-UTR配列は含まないコントロール改変mRNAのいずれかを細胞にトランスフェクトした。非トランスフェクト細胞をコントロール(「モック」)として使用した。トランスフェクションの24時間後、EGFP陽性細胞をフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて分析した。詳細には、各群から20,000個の細胞が収集され、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)チャネルを通じてEGFPシグナルが捕捉された。
【0409】
図6に示されるように、異なる群からのEGFP+細胞間では、細胞に改変mRNAコンストラクトをトランスフェクトした場合、コントロールmRNAコンストラクトと比較して、平均のEGFP発現レベルは大幅に高かった。
【0410】
まとめると、上記の結果は、本明細書で提供される5’-UTR配列及び3’-UTR配列がEGFPの細胞発現を増加させる能力を証明するものである。
【0411】
実施例4:ホタルルシフェラーゼ(Luc)タンパク質発現のインビトロ分析
上記の結果を確認するため、ホタルルシフェラーゼ(Luc)をコードする改変mRNAコンストラクトを実施例1に記載されるようにして構築した。次いで、HEK293T細胞を実施例2及び3に記載されるようにして6ウェルプレートに播種した。次いで、Lucをコードする改変mRNAコンストラクト(すなわち、実施例1に記載の5’-UTR配列及び3’-UTR配列を含む)または5’-UTR配列及び3’-UTR配列を欠くコントロールmRNAコンストラクトを細胞にトランスフェクトした。各mRNAコンストラクトは2つの異なる用量(1μg及び3μg)でトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をD-ルシフェリン(150μg)で処理し、暗所で5分間インキュベートした後、IVISイメージングシステム(PerkinElmer)を使用してルシフェラーゼシグナルを視覚化した。実施例2に示される方法を使用し、ウエスタンブロットを使用してLUCタンパク質の発現も評価した。
【0412】
図7に示されるように、IVISイメージングシステムを使用して測定した場合、改変mRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞(右列)は、コントロールmRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞(中列)と比較して有意に高いルシフェラーゼ発現を発現した。改変mRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞とコントロールmRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞の両方で3μgで大幅に高いルシフェラーゼ発現が観察されたため、ルシフェラーゼ発現量の増加はmRNAコンストラクトの用量に依存しているものと考えられた。同様の結果がウエスタンブロットを使用した場合にも観察された(
図8を参照)。
【0413】
上記の結果は、先に記載されたデータを証明するものであり、本明細書で提供される5’-UTR配列及び3’-UTR配列を使用してインフルエンザタンパク質及び他の異種タンパク質(例えば、EGFP及びLuc)の両方の発現を増加させることができることを証明するものである。
【0414】
実施例5:ホタルルシフェラーゼ(Luc)タンパク質発現のインビボ分析
本開示の5’-UTR配列及び3’-UTR配列が、タンパク質発現をインビボでも増加させることができるかどうかを評価するため、6週齢のBALB/cマウス(雌)を使用した。簡単に述べると、Lucをコードする改変mRNAコンストラクトまたはコントロールmRNAコンストラクトのいずれかでマウスを処理した。各mRNAコンストラクトを動物の両後肢に筋肉内注射した(5μg/肢)。非処理動物をコントロールとして用いた。次に、イメージングの5分前(処置の6時間、1日、2日、3日、4日、5日、及び6日後)、動物にVIVOGLO(商標)ルシフェリン(Promega)(3mg)を(腹腔内)注射し、全身イメージングを用いてルシフェラーゼシグナルを評価した。
【0415】
図9に示されるように、コントロールmRNAコンストラクトを注射した動物(すなわち、第2群)の一部は、トランスフェクションの6時間後に弱いルシフェラーゼシグナルを示し、これはトランスフェクションの約3日後までに消失した。これに対して、改変mRNAコンストラクトで処理した動物(すなわち第3群)のすべては、トランスフェクションの6時間後に注射部位で大幅に高いルシフェラーゼシグナルを示した。発現量の増加は、トランスフェクション後、5日目まで維持された。
【0416】
これらの結果は、5’-UTR及び3’-UTR配列はインビボでもタンパク質(異種タンパク質を含む)の発現を増加させることができることを証明するものである。
【0417】
実施例6:コントロールUTR配列との比較
本明細書で提供される5’-UTR配列及び3’-UTR配列の優位性を実証するため、HEK293T細胞に、実施例3に記載の改変EGFP mRNAコンストラクト、または参照UTR配列(ctcgagagctcgctttcttgctgtccaatttctattaaaggttcctttgttccctaagtccaactactaaactgggggatattatgaagggccttgagcatctggattctgcctaataaaaaacatttattttcattgctgcgtcgagagctcgctttcttgctgtccaatttctattaaaggttcctttgttccctaagtccaactactaaactgggggatattatgaagggccttgagcatctggattctgcctaataaaaaacatttattttcattgctgcgtc)(配列番号15)を含むEGFP mRNAコンストラクトのいずれかをトランスフェクトした(米国特許第10,301,368 B2号を参照)。mRNAコンストラクトは、以下の用量、すなわち、0μg、0.5μg、1μg、及び3μgのうちの1つでトランスフェクトした。次に、トランスフェクション後の様々な時点(6時間、12時間、及び24時間)で、蛍光顕微鏡とウエスタンブロットの両方を使用してEGFP発現を評価した。
【0418】
図10及び11に示されるように、コントロールUTR配列と比較して、本明細書で提供される5’-UTR及び3’-UTR配列は、トランスフェクションの6時間後という早い時点で、より多くのEGFPタンパク質の翻訳を誘導することができた。ルシフェラーゼ発現の増加は、測定したすべての時点で明らかであり、用量依存的であるようであった(例えば、トランスフェクションの12時間後では、0.5μgの改変mRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞と比較して、3μgの改変mRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞でより高いルシフェラーゼ発現が観察された)。
【0419】
上記の結果は、本明細書で提供される5’-UTR配列及び3’-UTR配列を含めることにより、当該技術分野では周知の他のUTR配列と比較して翻訳効率を大幅に増加させることができることを示唆するものである。
【0420】
実施例7:SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードする改変mRNAコンストラクトのタンパク質発現の分析
上記で与えられたデータに加えて、本明細書で提供される5’-UTR及び3’-UTR配列が他のウイルスタンパク質も増加させることができるかどうかを調べるため、SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードし、かつ実施例に記載される5’-UTR及び3’-UTR配列を含むmRNAコンストラクトを、本明細書に示される方法(例えば、実施例1)を用いて構築した。コントロールとして、5’-UTR及び3-UTR配列を欠くSARS-CoV-2スパイクタンパク質mRNAコンストラクトも作製した。次に、HEK293T細胞にmRNAコンストラクト(3μg)をトランスフェクトし、ウエスタンブロットを使用してスパイクタンパク質の発現を評価した。
【0421】
本明細書に記載の結果と同様、改変SAR-CoV-2スパイクタンパク質mRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞は、コントロールmRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞と比較して、有意に大きな量のスパイクタンパク質を発現した(
図12を参照)。ここに示される結果は、本明細書で提供されるUTR配列が広範なタンパク質の発現を増加させる能力をさらに証明するものである。
【0422】
実施例8:改変HA mRNAコンストラクトの治療効果の分析
上述のタンパク質発現の増加が治療効果の改善と相関するかどうかを評価するために、実施例1及び2に記載の改変HA mRNAコンストラクト(すなわち、実施例1に記載の5’-UTR配列及び3’-UTR配列を含む)を6週齢のDBA2/J系雌マウス(OrientBio)に投与した。改変mRNAコンストラクトを両方の後肢に筋肉内注射した(20μg/肢、合計40μg/マウス)。一部の動物では、改変mRNAコンストラクトを送達試薬、すなわちIN VIVO-JETRNA(登録商標)(Polyplus、France)中に配合してから動物に投与した(2.5μg/脚)。コントロール動物は、非処理かつ感染させていないか(「モック」)またはヌクレアーゼフリー水(エンザイノミクス)で処理した。動物は0日目及び28日目の両方で処理した。その後、最初の処理から56日目に、動物をインフルエンザウイルス(A/South Korea/01/2009のMLD50)に感染させた。「モック」コントロール動物は感染させなかった。感染後14日間にわたって動物の体重と生存率の両方を監視した。
【0423】
体重に関しては、改変HA mRNAコンストラクトまたはヌクレアーゼフリー水で処理した動物間で有意差は認められなかった(
図13Aを参照)。しかし、感染後10日目までに、ヌクレアーゼフリー水で処理した動物はすべて感染により死亡した(
図13B及び
図21Bを参照)。これに対して、改変HA mRNAコンストラクトで処理した動物の少なくとも40%は、感染後14日目でもまだ生存していた。送達試薬中に配合した改変HA mRNAで処置した動物では、感染後14日目にすべての動物が生存していた(
図21Bを参照)。いずれの理論にも束縛されるものではないが、いくつかの態様では、送達試薬により、より多くの改変HA mRNAコンストラクトの送達が可能となった可能性がある。
【0424】
ここに示される結果は、本明細書に提供されるUTR配列が治療効果も改善できることを実証するものであり、ワクチンコンストラクトの一部としてそれらが含まれることを示唆している。さらに、ここで観察された効果の向上は、特定の送達剤を使用しなくても実現された。また、上記で実証されたように、適切な送達剤(例えば、本明細書に記載されるもの)の使用は、本開示の改変mRNAコンストラクトの治療効果をさらに改善しうるものである。
【0425】
実施例9:ヒトβグロビンUTR配列との比較
本明細書に記載のUTR配列の能力をさらに実証するため、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードし、かつ(i)実施例1に記載の5’-UTR配列及び3’-UTR配列を含むmRNAコンストラクト(「HA UTRを有するGFP mRNA」)または(ii)ヒトβグロビン(hBg)の5’-UTR配列及び3’-UTR配列を含むmRNAコンストラクト(「hBg UTRを有するGFP mRNA」)(mRNA発現率を高めるために当該技術分野で一般的に使用されているもの)のいずれかをHEK293T細胞にトランスフェクトした。hBg-5’-UTR及びhBg-3’-UTRの配列を表1(下記)に示す。
【表1】
【0426】
簡単に述べると、先の実施例に記載したように、HEK293 T細胞を6ウェルプレート中に、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Welgene Inc.)中、37Cで播種した(4×105細胞/ウェル)。次いで、リポフェクタミン2000(Invitrogen Life Technologies Inc.)を使用して1μgのGFPコードmRNAコンストラクトのいずれかを細胞にトランスフェクトした。非トランスフェクト細胞をコントロールとして用いた。6時間、24時間、48時間、及び72時間の時点で、GFPシグナルを様々な手法(蛍光顕微鏡(Leica Biosystems)、ウエスタンブロット分析、及びフローサイトメトリー)を使用して測定した。
【0427】
図16A及び16Bに示されるように、評価したすべての時点で、HA UTRを有するGFP mRNAをトランスフェクトしたHEK293 T細胞は、hBg UTRを有するGFP mRNAをトランスフェクトした細胞と比較して、一貫してより高いGFP発現を有していた。同様の結果が、ウエスタンブロット分析(
図17を参照)及びフローサイトメトリー(
図18を参照)の両方を使用して観察された。
【0428】
上記の結果がGFPに特異的ではないことを実証するため、(i)本開示のUTR(実施例1に記載のもの)を含むルシフェラーゼコードmRNAコンストラクト(「HA UTRを有するLuc mRNA」)または(ii)ヒトβグロビン(hBg)の5’-UTR配列及び3’-UTR配列を含むルシフェラーゼコードmRNAコンストラクト(「hBg UTRを含むLuc mRNA」)も構築し、HEK293 T細胞にトランスフェクトするために使用した。一般的なトランスフェクション手法は、上記及び先の実施例で使用したものと同様とした(例えば、1μgのmRNAコンストラクトを使用してリポフェクタミン2000でトランスフェクトした)。生物発光分析では、細胞を暗所でD-ルシフェリン(150μg/mL)とともに5分間インキュベートした後、ルシフェラーゼシグナルをIVISイメージングシステム(PerkinElmer)により視覚化した。ウエスタンブロット分析では、一般的な方法は実施例2に記載したものと同様とした。
【0429】
図19及び20に示されるように、ルシフェラーゼ発現も、hBg UTRを有するLuc mRNAをトランスフェクトした細胞と比較して、HA UTRを有するLuc mRNAをトランスフェクトした細胞では有意に増加した。
【0430】
まとめると、上記の結果は、当該技術分野で利用可能な他のUTRと比較して、翻訳効率の向上における本明細書に記載のUTR(すなわち、HA-5’-UTR及びHA-3’-UTR)の優位性をさらに証明するものである。
【0431】
実施例10:インフルエンザHAタンパク質発現のさらなるインビトロ分析
実施例2(上記に示される)に加えて、本明細書に記載のUTR(すなわち、実施例1に記載の5’-UTR及び3’-UTR配列)の、異なるインフルエンザウイルス株のHAタンパク質発現を増強する能力を評価した。簡単に述べると、上記の実施例(例えば、実施例1)に示される方法を使用して、以下のインフルエンザ株、すなわち、(i)A/H3N2、及び(ii)B/Yamagataの1つに由来するHAタンパク質をコードするmRNAコンストラクトを構築した。一部のmRNAコンストラクトは、2009年パンデミックインフルエンザウイルス(H1N1pdm09_A/Korea/01/09)のヘマグルチニン(HA)タンパク質の5’-UTR(配列番号13)及び3’-UTR(配列番号14)配列をさらに含むものとした。次に、実施例1に記載のUTRを含む、または含まないmRNAコンストラクトを使用して、HEK293 T細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション後の様々な時点(6時間、24時間、48時間、及び72時間)でウエスタンブロット分析を行ってトランスフェクトした細胞におけるHAタンパク質の発現を測定した。トランスフェクション及びウエスタンブロット分析に使用した一般的な方法は、先の実施例に記載したものと同じとした(例えば、実施例2を参照)。
【0432】
図22及び23に示されるように、インフルエンザ株に関係なく、本明細書に記載のUTRの使用により、評価したすべての時点でコードされたHAタンパク質の発現が増加した。これらの結果は、本開示のUTR(2009年パンデミックインフルエンザウイルス(H1N1pdm09_A/Korea/01/09)に属する)が、H1N1 HAタンパク質の発現を増加させることができるだけでなく(実施例2を参照)、他のインフルエンザ株に属するHAタンパク質の発現の増加にも有用であることを実証するものである。
【0433】
実施例11:イズロネート-2-スルファターゼ発現のインビトロ分析
イズロネート-2-スルファターゼ(IDS)は、ヘパリン硫酸及びデルマタン硫酸のリソソーム分解に関与する酵素である。異常なIDS活性は酵素欠損を引き起こし、ハンター症候群などの疾患を引き起こす可能性がある。本明細書に記載のUTR(例えば、実施例1に記載の5’-UTR及び3’-UTR配列)がそのような疾患の治療(例えば、遺伝子置換療法の一環として)に有用であるかどうかを評価するため、イズロネート-2-スルファターゼ(IDS)をコードするmRNAコンストラクトを構築した。一部のmRNAコンストラクトは、本明細書に記載の5’-UTR(配列番号13)及び3’-UTR(配列番号14)配列をさらに含むものとした。次に、本明細書に記載のHA-UTRを含む、または含まない、IDSをコードしたmRNAコンストラクトを使用して、HEK293 T細胞をトランスフェクトした(1μgまたは3μg)。トランスフェクション後の様々な時点(6時間、24時間、48時間、及び72時間)でウエスタンブロット分析を行ってトランスフェクトした細胞におけるHAタンパク質の発現を測定した。トランスフェクション及びウエスタンブロット分析に使用した一般的な方法は、先の実施例に記載したものと同じとした(例えば、実施例2を参照)。
【0434】
図24に示されるように(及び先の実施例と一致して)、本明細書に記載のUTRを含めることにより、UTRを含まないIDSをコードしたmRNAをトランスフェクトした細胞と比較して、トランスフェクトされた細胞におけるIDSタンパク質の発現は有意に増加した。本明細書に記載のHA-UTRを含むIDSをコードしたmRNAをより高用量でトランスフェクトした細胞で最も高いタンパク質発現が観察されたことから、発現の増加は用量依存的であるものと考えられた。
【0435】
上記の結果は、本明細書に記載のHA-UTRが、様々な遺伝病に関連するタンパク質を含む異種タンパク質の発現を増加させることができることをさらに実証するものである。いずれの理論にも束縛されるものではないが、上記の結果は、本明細書に記載のHA-UTRが、多くの遺伝子疾患に対する遺伝子置換療法の開発に有用であり得ることも実証するものである。
【0436】
実施例12:腫瘍タンパク質発現のインビトロ分析
本明細書に記載のUTR(例えば、実施例1に記載の5’-UTR及び3’-UTR配列)の治療可能性をさらに評価するため、特定の腫瘍抗原(NYESO1またはMAGEA3)をコードするmRNAコンストラクトを構築した。先の実施例と同様、一部のmRNAコンストラクトは、本明細書に記載の5’-UTR(配列番号13)及び3’-UTR(配列番号14)配列を含むものとした。次いで、本明細書に記載のHA-UTRを含む、及び含まない腫瘍抗原をコードしたmRNAコンストラクトを用いてHEK293 T細胞をトランスフェクトし(1μg)、腫瘍抗原の発現をウエスタンブロットを用いて評価した。トランスフェクション及びウエスタンブロット分析に使用した一般的な方法は、先の実施例に記載したものと同じとした(例えば、実施例2を参照)。
【0437】
図25及び26に示されるように、HA-UTRを欠くmRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞と比較して、本明細書に記載のHA-UTRを含む、腫瘍抗原をコードしたmRNAコンストラクトをトランスフェクトした細胞は、有意に高いレベルの腫瘍抗原発現(NYESO1及びMAGEA3の両方)を示した。
【0438】
上記の結果は、がん免疫療法における本明細書に記載のHA-UTRの利点を示唆するものであり、本明細書に記載のHA-UTRに関連する広範な治療用途を証明するものである。
【0439】
***
特許請求の範囲を解釈するうえで、「発明の概要」及び「要約」のセクションではなく、「発明の詳細な説明」のセクションを用いることが意図されている点は認識されるべきである。発明の概要及び要約セクションは、本発明者(複数可)により意図される1つ以上であるが、すべてではない本開示の例示的態様を示し得、したがって、本開示及び添付の特許請求の範囲を如何様にも限定することを意図しない。
【0440】
本開示は、特定の機能及びそれらの関係の実施を示す機能的構成単位を用いて上記された。これらの機能的要素の境界は、説明の便宜上、本明細書では任意に定義されている。特定の機能及びそれらの関係性が適切に実施されている限り、代替的な境界を定義することもできる。
【0441】
具体的な態様の上記の具体的な説明は本開示の一般的な性質を余すところなく示しているため、他者は、当業者の技能の範囲内の知識を適用することで、不要な実験を行うことなく、本開示の一般的概念から逸脱せずに、かかる具体的な態様を容易に改変し、及び/またはさまざまな用途に適合させることができる。したがって、そのような適合及び改変は、本明細書に示される教示及び助言に基づき、開示される態様の均等物の意味及び範囲内に包含されるものとする。本明細書における語句または用語は、説明を目的としたものであって、限定を目的とするものではなく、本明細書における語句または用語は本明細書の教示及び助言を考慮することで当業者によって理解されるはずである。
【0442】
本開示の幅及び範囲は、上記に記載した例示的な態様のいずれによっても限定されるべきでなく、下記の請求項及びそれらの均等物のみにしたがって定義されるべきものである。
【0443】
本出願全体を通じて引用され得る全ての引用参考文献(参考文献、特許、特許出願、及びウェブサイトを含む)の内容の全体を、あらゆる目的で、参照によって本明細書に明示的に援用し、また、それらに引用される文献も同様に援用する。
【配列表】
【国際調査報告】