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特表2024-514886肝疾患患者における疲労感又は認知障害の処置に使用するためのゴレキサノロン
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  • 特表-肝疾患患者における疲労感又は認知障害の処置に使用するためのゴレキサノロン 図1
  • 特表-肝疾患患者における疲労感又は認知障害の処置に使用するためのゴレキサノロン 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】肝疾患患者における疲労感又は認知障害の処置に使用するためのゴレキサノロン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/568 20060101AFI20240327BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240327BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61K31/568
A61P25/28
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562924
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022060260
(87)【国際公開番号】W WO2022223526
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】21169388.2
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520184251
【氏名又は名称】ウメクリン コグニチオン アーべー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ドベルスコグ, マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, マヤ
(72)【発明者】
【氏名】オーマン, ラーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA75
4C086ZC54
(57)【要約】
本発明は、慢性肝疾患のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害、又はそれらの組合わせの処置に使用するための化合物ゴレキサノロン又はその薬学的に許容できる塩を対象とし、ここで、非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性肝疾患のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための、
式(I)
【化1】

の化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)又はその薬学的に許容できる塩であって、
前記患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する、
化合物ゴレキサノロン。
【請求項2】
前記慢性肝疾患が胆管症である、請求項1に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項3】
前記胆管症が原発性胆汁性胆管炎(PBC)である、請求項2に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項4】
前記PBC患者が掻痒にさらに悩まされている、請求項3に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項5】
前記PBC患者が社会的問題にさらに悩まされている、請求項3又は4に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項6】
前記PBC患者が情緒的問題にさらに悩まされている、請求項3~5のいずれか一項に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項7】
前記患者が日中の過度な眠気(EDS)にさらに悩まされている、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項8】
前記患者が15以上(中程度)である;又は15~21の範囲にある;又は21以上(重度)であるPBC-40認知領域を有する、
請求項3~7のいずれか一項に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項9】
前記患者が28以上(中程度)である;又は28~39の範囲にある;又は39以上(重度)であるPBC-40疲労感領域を有する、
請求項3~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項10】
前記胆管症が原発性硬化性胆管炎(PSC)である、請求項2に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項11】
前記慢性肝疾患が慢性B型肝炎(CHB)又は慢性C型肝炎(CHC)である、請求項1に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項12】
前記慢性肝疾患が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)である、請求項1に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項13】
前記慢性肝疾患が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項1に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項14】
慢性肝疾患の処置において有用な少なくとももう1つの化合物との組み合わせで使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項15】
前記少なくとももう1つの化合物が、経口抗酸化剤、フルボキサミン、フルオキセチン、オンダンセトロン、コルヒチン、UDCA(ウルソデオキシコール酸)、OCA(オベチコール酸)、シクロスポリン、ナルメフェン、モダフィニル、リツキシマブ、ラクツロース、リファキシミン、プロプラノロール、フロセミド、メトトレキセート若しくはフィブレート(例えばベザフィブレート及びフェノフィブレート)のいずれか1つ;又はそれらの任意の組合わせから選択される、
請求項14に記載の使用のための化合物ゴレキサノロン。
【請求項16】
慢性肝疾患のある非肝硬変患者における、
疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置のための方法であって、
前記患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有し、
式(I)
【化2】

の化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)又はその薬学的に許容できる塩が、慢性肝疾患のある前記患者に投与される、
方法。
【請求項17】
慢性肝疾患のある非肝硬変患者における疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための医薬の製造のための式(I)
【化3】

の化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)又はその薬学的に許容できる塩の使用であって、
前記患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する、
使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、慢性肝疾患に罹患している非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための、化合物ゴレキサノロン(化学名3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシムを有する)又はその薬学的に許容できる塩を対象とし、ここで、非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0002】
[発明の背景]
肝線維症、肝硬変及び/又は肝細胞癌を不可避的にもたらす慢性肝疾患は、世界中で病気及び死亡の主原因となってきた。中でも、胆管症又は胆汁うっ滞性肝疾患は、傷害が胆管系に主に集中する大きなグループの状態を構成する。これらには、先天性疾患(例えば胆道閉鎖症及び嚢胞性線維症)、後天性疾患(例えば原発性硬化性胆管炎及び原発性胆汁性胆管炎)、並びに、閉塞、胆管炎又は虚血による胆樹への二次的損傷に起因する疾患が含まれる。こういった状態は、胆管周囲線維症並びに、最終的には胆汁性肝硬変及び肝不全の発生を駆動する、損傷した胆管に集中する特定のパターンの慢性肝傷害と関連する。ほとんどの場合、確立された医学的療法はなく、したがって、これらの疾患は肝移植の最も重要な適応症のうちの1つのままである。肝硬変は、世界中で増大しつつある大きな疾患負担の主な原因である(G Rajapakshaら;World J Gastrointest Pathophysiol 2019;1月5日;10(1):1~10頁)。
【0003】
胆管疾患又は胆管症は、末期肝不全にいたるおそれのある胆汁うっ滞及び進行性胆管線維症によって特徴付けられる一群の慢性肝疾患である。これらの疾患には多数の病因がある。普通の胆管症のうちの2つは、免疫障害、原発性胆汁性胆管炎(PBC)及び原発性硬化性胆管炎(PSC)である。PBCを含めて、多くの胆管症は、胆管に主として影響を与える。胆汁の流れが損なわれると、胆汁が肝臓に蓄積して、胆管上皮への、最終的には肝実質への一次損傷を引き起こす。胆管症の大多数は、肝線維症/肝硬変をもたらす門脈周囲の炎症を含めて、類似の特性を有する。胆管症の進行性の性質を考慮すると、ほとんどの胆管症は、相当の罹患率及び患者における死亡率を招き、胆管症は肝移植の主たる適応症である。
【0004】
原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、以前は原発性胆汁性肝硬変として知られていた、肝臓の自己免疫慢性疾患である。原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、肝臓の小胆管と中胆管の緩徐な、進行性の破壊の結果として生じ、胆汁及びその他の毒素が肝臓内に蓄積することを引き起こし、胆汁うっ滞と呼ばれる状態であり、その結果、門脈周囲炎症、線維症及び胆汁性肝硬変を一般に招く。PBCは主に女性に影響を及ぼす。特徴的な症状には、かゆみ、疲労感及びますます認識されるようになってきた軽度認知障害が含まれる。しかし、認知症状は肝疾患の重症度とは無関係でPBCによく見られ、PBC関連の認知障害は肝性脳症とは無関係であると考えられている(J.L.Newtonら;Hepatology、48巻、2号 2008 541~549頁)。
【0005】
原発性硬化性胆管炎(PSC)は、通常は胆汁を胆嚢から排出させる胆管の炎症及び瘢痕化によって特徴付けられる肝臓及び胆嚢の長期の進行性疾患である。PSCで発生する胆管瘢痕化により、胆樹の管が狭まり、腸への胆汁の流れが妨げられる。最終的に、PSCは肝臓の硬変及び肝不全を招くおそれがある。PSCによって、肝臓がん、胆嚢癌、結腸直腸がん、及び胆管癌を始めとする種々のがんのリスクが増大する。PSCの根本原因は不明であり、利用可能な承認された療法はない。
【0006】
疲労感は、医療において極めて重要な問題と考慮されている最も普通の非特異的症状のうちの1つであり、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、並びに慢性ウイルス性肝疾患及び胆汁うっ滞性肝疾患を始めとするいくつかの慢性疾患状態と関連付けられてきた。原発性胆汁性胆管炎(PBC;86%)及び慢性C型肝炎(CHC;69%)のある患者における疲労感に関し特に高い有病率が報告されてきた。肝疾患に関連付けられる疲労感の原因は十分に理解されておらず、本症状について調査した研究は少ない(S.Ahbouchaら:Neurogastroenterol Motil(2008);20、671~679頁)。Abouchaは、原発性胆汁性胆管炎(PBC)及び慢性C型肝炎(CHC)のある肝硬変患者において、神経ステロイドであるアロプレグナノロンの循環レベルが有意に上昇していることを報告している。
【0007】
加えて、睡眠異常が、過度の日中の傾眠という形態で相当の割合のPBC患者に存在するが、この場合、日中の傾眠の程度は疲労感の程度と強く相関する(Newton J.L.ら、Hepatology、44巻、1号 2006 91~98頁)。
【0008】
疲労感はPBCの最も普通の症状のうちの1つである。疲労感は、患者の最大85%に生じる(Huet PM、ら Am J Gastroenterol.2000;95(3):760~767頁)、特に衰弱性の症状であり、生活の質に影響を及ぼし且つ社会的孤立をもたらす。この症状を緩和する上で効果的であると示された医学的処置はない。現在、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)又はその他のタイプの胆管症などの慢性肝疾患に罹患している患者の疲労感に対して広く受け入れられている又は効果的な処置はない。モダフィニル、フルオキセチン及びリツキシマブなどの薬物が、PBC関連の疲労感に悩まされている患者に試みられてきたが、いずれも有益であるとは証明されてこなかった。
【0009】
化合物ゴレキサノロンは、化学名3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシムを有する、肝性脳症(HE)の処置のために目下のところ臨床第II相にある化合物である。本化合物は、種々のCNS障害に使用するために国際公開第2008/063128号に開示されている。国際公開第2015/114308号には、肝性脳症(HE)の処置のための化合物3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシムの使用が開示されている。米国特許出願公開第2017/0348323号として公開された米国特許出願には、化合物3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシムを投与することによる傾眠過剰の処置のための方法が開示されている。R.F.Butterworthらが報告するところは、DHEAS(硫酸デヒドロエピアンドロステロン)の効果が、胆管結紮(BDL)の後のラットの全身疲労感に対してポジティブな効果を有したことである(R.F.Butterworthら;Neurogastroenterol Motil(2009)21、1319~1325頁)。DHEASは、GABA受容体、NMDA受容体、シグマ-1受容体及び代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR)などのいくつかの受容体上で活性であるステロイドホルモンであり、コリン作動性、GABA作動性、ドーパミン作動性及びグルタミン酸作動性の各システムを含めて、さまざまな神経伝達物質系もモジュレートする(Y.Dongら:Journal of Neuroendocrinology 2011;24、215~224頁)。
【0010】
胆管症などの慢性肝疾患に罹患している患者の疲労感の療法に有用とすることができる薬物に対する医学的必要性がある。また、胆管症などの慢性肝疾患に罹患している患者の認知障害の療法に有用とすることができる薬物に対する医学的必要性もある。
【0011】
[発明の説明]
本発明の基礎となる一課題は、慢性肝疾患に罹患している非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害、又はそれらの組合わせの処置のために有用とすることができる新規な療法を見出すことである。
【0012】
本発明の一態様は、慢性肝疾患のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための、式(I)
【化1】

の化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)又はその薬学的に許容できる塩であり、前記患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0013】
本発明のさらに一態様では、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)は、慢性肝疾患のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害若しくは日中の過度な眠気(EDS)、又はそれらの任意の組合わせの処置に使用するためのものであり、上記慢性疾患は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)若しくは原発性硬化性胆管炎(PSC)などの胆管症;慢性B型肝炎(CHB);慢性C型肝炎(CHC);非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD);又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)であるが;ここで、上記非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0014】
さらに本発明の一態様は、胆管症のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)であり、ここで、上記非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0015】
さらに本発明の一態様は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)であり、ここで、上記非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0016】
本発明の一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求される原発性胆汁性胆管炎(PBC)のある非肝硬変患者は掻痒にも悩まされている。
【0017】
本発明のさらに一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求される原発性胆汁性胆管炎(PBC)のある非肝硬変患者は社会的問題にも悩まされている。
【0018】
本発明のさらに一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求される原発性胆汁性胆管炎(PBC)のある非肝硬変患者は、情緒的問題にも悩まされている。
【0019】
本発明の一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求されるPBC患者は、15以上(中程度)であるPBC-40認知領域を有する。
【0020】
本発明の一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求されるPBC患者は、15~21の範囲にあるPBC-40認知領域を有する。
【0021】
本発明のさらに一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求されるPBC患者は、21以上(重度)であるPBC-40認知領域を有する。
【0022】
本発明の一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求されるPBC患者は、28以上(中程度)であるPBC-40疲労感領域を有する。
【0023】
本発明のさらに一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求されるPBC患者は、28~39の範囲にあるPBC-40疲労感領域を有する。
【0024】
本発明のさらに一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求されるPBC患者は、39以上(重度)であるPBC-40疲労感領域を有する。
【0025】
本発明のさらに一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求されるPBC患者は、3~15の範囲にあるPBC-40掻痒領域を有する。
【0026】
本発明のさらに一態様では、本明細書で記載される且つ特許請求されるPBC患者は、15以上であるPBC-40掻痒領域を有する。
【0027】
さらに本発明の一態様は、原発性硬化性胆管炎(PSC)のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)であり、ここで、上記非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0028】
さらに本発明の一態様は、慢性C型肝炎(CHC)のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)であり、ここで、上記非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0029】
さらに本発明の一態様は、慢性B型肝炎(CHB)のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)であり、ここで、上記非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0030】
さらに本発明の一態様は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)であり、ここで、上記非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0031】
さらに本発明の一態様は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)であり、ここで、上記非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0032】
本発明の一態様は、既往の肝硬変のある非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)であり、ここで、上記非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0033】
本発明の一態様は、慢性肝疾患のある非肝硬変患者における疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置のための方法であって、非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有し、式(I)
【化2】

の化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)又はその薬学的に許容できる塩が、前記慢性肝疾患に罹患している患者に投与される、方法である。
【0034】
さらに本発明の一態様は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)又は原発性硬化性胆管炎(PSC)などの胆管症に関連する症状の処置に使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)である。
【0035】
さらに本発明の一態様は、慢性B型肝炎(CHB)、慢性C型肝炎(CHC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び既往の肝硬変から選択される慢性肝疾患に関連する症状の処置に使用するための、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)である。
【0036】
さらに本発明の一態様は、本明細書で開示される且つ特許請求される慢性肝疾患に関連する症状に対する療法であり、この療法は治療効果をもたらすことができる。
【0037】
さらに本発明の一態様は、慢性肝疾患のある上記非肝硬変患者における疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置に使用するための医薬の製造のための式(I)
【化3】

の化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)又はその薬学的に許容できる塩の使用であり、ここで、非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する。
【0038】
本発明の一態様では、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)が単剤療法として使用される。
【0039】
本発明のさらに一態様では、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)が、慢性肝疾患に罹患している非肝硬変患者における、疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの処置のために有用な少なくとももう1つの化合物との組み合わせで使用されてもよく、ここで、非肝硬変患者が0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有するが、例えば、慢性肝疾患は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)又は原発性硬化性胆管炎(PSC)などの胆管症、慢性B型肝炎(CHB)、慢性C型肝炎(CHC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び既往の肝硬変から選択される。
【0040】
本発明の一態様では、併用療法はアドオン療法とすることができる。本発明のさらに一態様では、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)は、固定の併用(例えば医薬製剤)として投与されても、連続的に(すなわち互いの後に)投与することによって投与されてもよい。
【0041】
化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)との併用療法において有用とすることができる医薬品は、1つの医薬品若しくはいくつかの医薬品であるか、又は1つの化合物若しくは複数の化合物であり、これらは、慢性肝疾患、例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)若しくは原発性硬化性胆管炎(PSC)などの胆管症、慢性B型肝炎(CHB)、慢性C型肝炎(CHC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、既往の肝硬変又は肝硬変、のある患者の標準治療の処置として使用されるものである。
【0042】
0.03ng/ml以上であるアロプレグナノロンの血清レベルを有する非肝硬変患者におけるPBC関連疲労感若しくは認知障害又はそれらの組合せの、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)との併用療法において有用とすることができる医薬品又は化合物の例は、経口抗酸化剤、フルボキサミン、フルオキセチン、オンダンセトロン、コルヒチン、UDCA(ウルソデオキシコール酸)、OCA(オベチコール酸)、シクロスポリン、ナルメフェン、モダフィニル、リツキシマブ、ラクツロース、リファキシミン、プロプラノロール、フロセミド、フィブレート(例えばベザフィブレート及びフェノフィブレート)、メトトレキセート、又はそれらの任意の組合わせである。ブデソニドはさらに、本明細書で記載される且つ特許請求される化合物ゴレキサノロンとの併用療法において使用することができる化合物の一例である。
【0043】
化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)は、国際公開第2008/063128号に開示されている調製の方法に従って調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】認知症状の重症度とPBC患者の血清中の神経ステロイドアロプレグナノロンのレベルの間の相関性を例示する図である。
図2】疲労症状の重症度とPBC患者の血清中の神経ステロイドアロプレグナノロンのレベルの間の相関性を例示する図である。
【0045】
[定義]
胆管症(単数又は複数)は、胆樹を主に標的とする一群の疾患として定義され、これには、末期肝不全にいたるおそれのある胆汁うっ滞及び進行性胆管線維症によって特徴付けられる一群の慢性肝疾患が含まれる。胆管症(単数又は複数)は、関与する病原機構にしたがっていくつかのカテゴリーに分類することができる。しかし、多くの胆管症では、2つ以上の病原機構が働いている:
(1)免疫媒介性胆管症
(2)感染性胆管症
(3)遺伝性胆管症
(4)虚血性胆管症
(5)薬物又は毒素誘導性の胆管症
最も普通の胆管症のうちの2つが、それぞれ原発性胆汁性胆管炎(PBC)及び原発性硬化性胆管炎(PSC)である。PBCは免疫媒介性胆管症のグループに属する。
【0046】
原発性胆汁性胆管炎とは慢性の、血清陽性の女性優位の炎症性且つ胆汁うっ滞性肝疾患であり、この肝疾患は、胆汁性肝硬変へと向けてさまざまな進行速度を有する。原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、多くの場合、その顕著な特徴である血清学的特性、抗ミトコンドリア抗体及び特異的な胆管病変が理由で、自己免疫疾患のモデルと考えられている。肝硬変及び末期肝疾患への進行のリスクに加えて、PBCは、患者の生活の質にかなりのインパクトを与える認知機能不全及び関連する中枢性疲労感の顕著な症状によって特徴付けられる。
【0047】
PBC患者は、肝疾患進行それ自体に加えて、中枢性疲労感若しくは認知機能不全、又は中枢性疲労感と認知機能不全の組合わせ、及びこれらへの関連する症状の発生で設定される深刻なさらなる問題を経験する。生活の質へのインパクトは多くの場合で深刻であり、障害のレベルに加えて、若年患者では過度に高い。疾患進行とは対照的に、この問題を処理する上で、進捗は全くなされておらず、このことはいまだ満たされていない医療臨床の必要性がある主たる領域である。
【0048】
認知症状、疲労感、日中の過度な眠気、又はそれらの任意の組合わせは、罹患患者の胆管症の疾患経過全体をとおして存在し、疾患重症度の従来のマーカーとは無関係であり、このことが示唆するところは、それらは肝性脳症及び進行性肝硬変の疾患と無関係であること、である。正式な認知検査でのインペアード・パフォーマンス、MRでの解剖学的及び機能的変化、並びに経頭蓋磁気刺激を使用する神経生理学的評価の観点からの、器質性脳変化に関する証拠もある。
【0049】
日中の過度な眠気(EDS)とは、日中の主な覚醒エピソードの間、意識清明であることができず、その結果、抑えきれない睡眠の必要性又は傾眠状態若しくは睡眠への意図せぬ落ち込みという期間がもたらされること、と定義される。エプワース眠気尺度は、患者の眠気の主観的な測度として睡眠医学の分野で広く使用されている(Johns 1991;Sleep、14(6)、540~545頁)。合計ESSスコアは0~24の範囲とすることができ、この場合、スコアが高いほど眠気度の高まりと相関する。
【0050】
原発性硬化性胆管炎(PSC)とは、通常は胆汁を胆嚢から排出させる胆管の炎症及び瘢痕化によって特徴付けられる肝臓及び胆嚢の長期の進行性疾患である。PSCで発生する胆管瘢痕化により、胆樹の管が狭まり、腸への胆汁の流れが妨げられる。最終的に、PSCは肝臓の硬変及び肝不全を招くおそれがある。
【0051】
慢性肝炎とは、少なくとも6か月間続く肝臓の炎症である。無症状である多数の人もいれば、全身的な病気の感覚、食欲不振、及び疲労感などの漠然とした症状を有する人もいる。慢性肝炎は、門脈圧亢進症及び肝不全を伴う肝硬変をもたらすおそれがある。慢性B型肝炎(CHB)も慢性C型肝炎(CHC)もどちらも、さまざまな程度の炎症及び肝線維症によって特徴付けられるウイルス感染によって引き起こされる。
【0052】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とは、アルコールをほとんど又はまったく飲まない人々を侵すさまざまな肝臓状態の総称である。アルコール摂取以外の原因により、過剰な脂肪が肝臓に蓄積する。NAFLDは肝臓の炎症によって特色づけられ、この炎症は瘢痕化及び回復不能な損傷に進行するおそれがある。この損傷は、アルコールの大量摂取により引き起こされる損傷と似ている。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の最も重度の形態であり、肝臓内の脂肪の異常な蓄積の存在によって特徴付けられ、この存在は一部の個体では肝細胞傷害(肝細胞バルーニング)及び炎症に進行するおそれがある。NASHが進展(evolve)する場合、時間経過とともにNASHは、肝硬変また肝臓がんにつながるおそれのある傷害に対する自然な応答である、肝臓中に過剰な瘢痕化(線維症)をもたらす場合がある。
【0053】
肝硬変は進行性疾患であり、長年にわたり緩徐に発達する。もしこのようなことが続く場合、瘢痕組織の蓄積により最終的には肝機能を停止させるおそれがある。肝硬変が発達するには、肝臓への長期の、継続的な損傷が進行する必要がある。健康な肝臓組織が破壊され、瘢痕組織で置き換わる場合、肝臓を通る血液の流れを遮断し始めることがあるので、状態は深刻になる。
【0054】
慢性肝疾患に罹患している患者はまた、多くの場合、疲労感、認知障害、又は疲労感と認知障害の組合わせなどの症状にも悩まされる。
【0055】
原発性胆汁性胆管炎(PBC)若しくは原発性硬化性胆管炎(PSC)などの胆管症、慢性B型肝炎(CHB)、慢性C型肝炎(CHC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、又は既往の肝硬変を始めとする慢性肝疾患に罹患している患者における疲労感は、それぞれ本発明の範囲内である。
【0056】
PBC又はPSCなどの慢性肝疾患に罹患している、且つ疲労感若しくは認知障害(ブレインフォグ)、又はそれらの組合わせなどの症状に悩まされている患者は、肝性脳症に罹患している患者とは異なる病態生理を有する。
【0057】
PBCの特徴的な症状には、かゆみ、疲労感及び/又はますます認識されるようになってきた軽度認知障害が含まれる。しかし、認知症状は肝疾患の重症度とは無関係でPBCによく見られ、PBC関連の認知障害は肝性脳症とは無関係であると考えられている(J.L.Newtonら;Hepatology、48巻、2号 2008 541~549頁)。
【0058】
PBCに罹患している患者における疲労感は、末梢性疲労感と中枢性疲労感の両成分を有する。中枢性成分(「ブレインフォグ」)は神経生理学的異常によって特徴付けられ、認知症状及び睡眠パターンの混乱に関連する。末梢性成分とは、身体活動を維持することができないこと、エネルギーの喪失又は対象が自分たちは「燃料がなくなっている」と感じていること、を意味する。
【0059】
認知障害(認知能力の低下)は、疲労感にも関連しているが、PBCに罹患している患者における深刻で明確な症状である。
【0060】
明細書及び特許請求の範囲全体をとおして使用される疾患学術用語及び症状学術用語は、本特許出願の優先日に適用される慢性肝疾患の分野における学術用語である。肝疾患の医学分野における学術用語は、将来、PBC、NASH、硬化性胆管炎(PSC)、NAFLD、及びNASHなどの疾患について進展する可能性があるが、その疾患及び症状は依然としてそれら疾患及び症状であるので、学術用語によって、本明細書で記載される且つ特許請求される保護範囲が変更されるものではない。
【0061】
本明細書及び特許請求の範囲全体をとおして使用される「処置又は療法」という言葉遣いは、医学及び薬学の分野内の通常の言葉遣いを取り、本明細書で開示される且つ特許請求される慢性肝疾患を有する(罹患している)と診断された非肝硬変患者における疲労感又若しくは認知障害、又はそれらの組合わせの処置を意味する。
【0062】
本明細書で使用される「単剤療法」という言葉遣いは、本明細書で開示される且つ特許請求される慢性肝疾患と診断されるか又はそれと診断された非肝硬変患者に投与される、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)単独による療法を意味する。
【0063】
本明細書で使用される「併用療法」という言葉遣いは、標準治療の療法として使用される作用剤(薬物)と組み合わせた化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)による処置(療法)を意味する。
【0064】
本発明による標準治療の療法として使用される作用剤(薬物)との併用療法とは、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)が、本明細書で開示される且つ特許請求される慢性肝疾患のための標準治療の療法として使用される作用剤(薬物)の投与前に投与されてもよく、それの投与後(アドオン)投与されてもよく、それと同時に投与されてもよいこと、を意味する。
【0065】
本明細書で使用されるアドオン療法とは、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)が、慢性肝疾患、例えば、原発性胆汁性胆管炎(PBC)又若しくは原発性硬化性胆管炎(PSC)などの胆管症、慢性B型肝炎(CHB)、慢性C型肝炎(CHC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、又は既往の肝硬変のある患者における、疲労感に適応される医薬品ですでに処置されている対象に投与されるような、併用療法として定義される。
【0066】
本明細書で使用される固定された併用とは、一態様では、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)が、原発性胆汁性胆管炎(PBC)又は原発性硬化性胆管炎(PSC)などの胆管症、慢性B型肝炎(CHB)、慢性C型肝炎(CHC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び既往の肝硬変、から選択される慢性肝疾患に罹患している患者における、疲労感の処置に有用な少なくとももう1つの化合物と混和して製剤化されるような、組み合わせとして定義することができる。さらに一態様では、固定された併用は、各活性成分又は製剤が同時に(すなわち並行して、しかし別々の製剤として)又は順々に(連続的に)投与することができるような「併用パーツキット」として定義することができる。
【0067】
本明細書及び特許請求の範囲全体をとおして使用される「疲労感若しくは認知障害、又はそれらの組合わせの処置」という言葉遣いは、本明細書で開示される且つ特許請求される慢性肝疾患に罹患している患者が、疲労感の症状のみに悩まされているか若しくは認知障害の症状のみに悩まされているか、又は疲労感と認知障害の両方の症状に悩まされている場合があること、を意味する。
【0068】
本明細書及び特許請求の範囲全体をとおして使用されるように、化合物ゴレキサノロンは、化学式(I)
【化4】

による化学名3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシムを有する化合物、又はその薬学的に許容できる塩である。
【0069】
「ゴレキサノロン」という言葉遣いは、化合物3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシムの国際一般名(INN)であり、この化合物はCAS no.2089238-18-4を有する。
【0070】
本明細書で使用される「血清」という言葉遣いは、フィブリノーゲンを含まない血漿を意味する。
【0071】
本発明に従って使用される「PBC-40」という言葉遣いは、PBCで使用するために開発された且つ検証済みの、患者由来の疾患特異的な生活の質の測度を意味する(Jacoby A、Rannard A、Buck D、Bhala N、Newton JL、James OFW、Jones DEJ. Development,validation and evaluation of the PBC-40,a disease specific health related quality of life measure for primary biliary cirrhosis.Gut 2005;54:1622~1629頁)。PBC-40に関して6つの領域があり、これらは、疲労感、情緒的、社会的、認知機能、全身症状、及び掻痒に関連する。上記測度はPBCで使用するために十分に検証されており、科学的に妥当であることが示されている。それぞれ且つ本発明に従って使用される「PBC-40疲労感領域」、「PBC-40認知領域」、「PBC-40掻痒領域」、「PBC-40社会的領域」及び「PBC-40情緒的領域」という各言葉遣いは、Jacobyら(Gut 2005;54:1622~1629頁)において開示されるとおりに定義される。
【0072】
本明細書で使用される「ブレインフォグ」という言葉遣いは、情報を処理する、情報に基づいて行動する及び情報を記憶する上での困難性を意味する。
【0073】
医薬製剤及び投与経路
本発明のある特定の態様では、本明細書及び特許請求の範囲全体をとおして使用される化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)は、1つ又は複数の薬学的に許容できるアジュバント、希釈剤及び/又はキャリアと混和した、医薬組成物の形態で投与することができる。本発明に従って使用するための化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)を製剤化する場合に有用なそのような薬学的に許容できる賦形剤、キャリア及び/又は希釈剤の例は、増粘剤、着香料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、キャリア物質、滑沢剤又は結合剤である。通常の医薬キャリアには、それらに限定されないが、結合剤(例えば、アルファー化トウモロコシデンプン);充填剤(例えば、ラクトース、グルコース、スクロース及び他の糖、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート又はリン酸水素カルシウム等);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属ステアリン酸、水素化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等);崩壊剤(例えば、デンプン及びデンプングリコール酸ナトリウム);湿潤剤;希釈剤;着色剤;乳化剤;pH緩衝剤;保存剤;及びそれらの混合物が含まれる。
【0074】
本発明の一態様では、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)は、本明細書で開示される且つ特許請求されるとおりに使用される場合、経腸投与によって投与することができる。経腸投与の例には、食道、胃、並びに小腸及び大腸(すなわち、胃腸管)への投与が関与する。投与の方法には、経口、舌下(舌の下で薬物を溶解)、及び直腸が含まれる。
【0075】
医師は、疲労感、認知障害又はこれら両症状の組合せから選択される慢性肝疾患の症状を処置するために、個々の患者に適切である化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)の実際の投薬量を決定することができることになるが、この投薬量は、投与経路、処置される症状及び患者集団のタイプと重症度、並びに疾患の種、年齢、体重、性別、及び重症度とともに変化してもよい。
【0076】
本発明の一態様では、化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)は、1mg~200mg、10mg~100mg、3mg~30mg、30mg~60mg、50mg~100mg、20mg~160mg、40mg~160mg、又は80mg~160mgの1日用量として投与することができる。
【0077】
「1日用量」という言葉遣いは、1日1回、又は1日2回(B.I.D)での化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)の投与とすることができる。1日2回での投与(B.I.D)とは、1日の総用量を、合計で1日用量を構成する2回の用量に分けることを意味する。例えば、1mg~200mgの1日用量を、1日1回での1~200mgの用量として投与してもよく、1日2回(B.I.D)での0.5~100mgの用量として投与してもよい。
【0078】
本発明の一態様では、本発明に従って有用とすることができる化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)の1日用量は、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、及び160mgのいずれか1つから選択することができる。
【0079】
[生物学的評価]
本発明の発明者らが見出し且つ実証したところは、重度の認知症状のある非肝硬変性PBC患者は、血清中の神経ステロイド化合物アロプレグナノロンの有意な上昇、より詳細には0.03ng/mlを超えるアロプレグナノロンの血清レベルを有すること、である。
【0080】
[背景及び目的]
Rice Sらが報告する発見が指示するところは、疲労感、骨痛、並びに記憶力及び集中力の各問題は、患者の健康関連の生活の質(HRQoL)に最大のインパクトを与えているが医療サービスのコストが低いことに結びついていること、である。対照的に、PBC合併症はHRQoLに対してさらなる影響をほとんど与えないが、一方、腹水を除いて医療サービスのコストが相当であることに結びついている。現在の処置について考慮するこれらの有意なHRQoL及びコスト効果が示唆するところは、新規の処置から利益を得る可能性、である(Rice Sら;Clin Gastroenterol Hepatol 2021;19:768~776頁)。
【0081】
神経ステロイドであるアロプレグナノロン(AP)は、GABA受容体の強力な陽性アロステリックモジュレーターである。APは認知及び記憶力に対して悪影響を与える気分障害と関連する。本研究では、PBC患者におけるアロプレグナノロン(AP)と疾患特有の生活の質スコアリングシステム(PBC-40)との関連性について探索した。
【0082】
実施例1
方法
血清APレベルを、160人の対象において質量分析法(検出限界0.002ng/ml、定量限界0.005ng/ml)を使用して測定した:UK-PBC(30人)試験及びBANC(90人)試験からの完全に表現型が特定されたPBCの120人の患者並びに年齢と性別が一致した健康な対照40人。PBC患者全員はリクルート時にPBC-40を完了した。血清APを、PBC-40領域にわたって、無症状又は軽度の症状(一般集団で見られる症状と同等)の患者 対 重度の症状の患者に関して比較した。
【0083】
結果
健康な対照(中央値=0.03ng/ml[IQR=0.025])とPBC(0.031[0.42])の間のAPレベル、p=0.42、又は男性(0.025[0.033])と女性(0.032[0.037])の間のAPレベル、p=0.57に有意差はなかった。若年者は、PBCコホート内ではAPレベルが有意により高いこと(X2(2)=27.7、p<0.001)、健康な対照では有意ではないこと(X2(2)=6.0、p=0.119)を予測するものであった。3つのPBC-40領域内で有意差があった:認知(u=1034、p=0.02)、情緒(u=1374、p=0.004)及び掻痒(u=795、p=0.03)。若年者は重度の認知症状と関連していた:重度(50[12]) 対 無し(60[13];p=0.001)。
【0084】
結論
図1に示すように、アロプレグナノロンのより高い血清レベルを有するPBC患者は、より重度の認知症状を有する。水平の実線はコホート内の正常の平均値であり、水平の点線は正常の上方95%CIである。図1の群「無症状及び軽度の症状」は正常であり、このことはすべてのPBC-40領域に適合し、この場合、「軽度」の症状とは正常集団における周囲(ambient)の症状と同等である。重度は顕著に影響を受けており、中程度は中間である。重度の認知症状は少数(10~15%)でのみ見られるが、とりわけ若年患者では破壊的である。彼らは仕事を維持するのにもがいている人々である。中程度及び重度の認知症状のカットオフによって、生活の質(QoL)障害の程度が十分に予測される(Jacobyら;Gut 2005;54:1622~1629頁)。
【0085】
図2に示すように、アロプレグナノロンのより高い血清レベルを有するPBC患者は、より重度の疲労感症状を有する。図2の群「無症状及び軽度の症状」は正常であり、このことはすべてのPBC-40領域に適合し、この場合、「軽度」の症状とは正常集団における周囲の症状と同等である。重度は顕著に影響を受けており、中程度は中間である。重度の疲労症状は少数(10~15%)でのみ見られるが、とりわけ若年患者では破壊的である。
【0086】
実施例2
胆汁うっ滞の胆管結紮(BDL)モデルにおける疲労感及び認知機能に対する化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)の効果の評価
BDLモデルとは、マウスの疲労感をモデル化するのに以前から使用され、また、認知の低下を誘導するとNewcastleの研究者らによって示されている検証済みのモデルである(Frissenら Hepatology 2020年8月4日;https://doi.org/10.1002/hep.31494)。
【0087】
中程度の線維症のある胆汁うっ滞性肝疾患を、胆管結紮(BDL)モデルを使用してマウスにおいて誘導するが、この場合、胆管を外科的に結紮して胆汁の流れを制限する。動物は、炎症及び胆汁うっ滞を促進する胆管閉塞を発生し、これに、肝細胞の損傷、次いで胆管の増殖が続く。
【0088】
胆汁うっ滞性肝疾患の状況において活動性及び認知機能に対する化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)のインパクトについて評価を行う。
【0089】
動物
平均体重およそ25グラムの10週齢の成体C57BI6雄性マウス(Harlan 英国)を使用する。動物は、食物及び水を自由に与え12:12時間の明暗サイクルで飼育する。
【0090】
BDLの外科手術処置
胆管結紮(BDL)及びシャム外科手術を、外科手術処置室で無菌条件下で実施する。動物をイソフルランで麻酔し、鎮痛剤としてブプレノルフィンを皮下投与する。シャム外科手術処置では、開腹手術を実施し、これに続いて腹筋及び皮膚の閉鎖を行う。BDL手順はシャム外科手術について記載したとおりであるが、開腹手術を行って総胆管の露出と切除を行い、その後に腹部と皮膚の創傷の閉鎖を行う。外科手術直後に、すべての動物を、25℃に維持した加熱層流の換気キャビネットに収容し、そこで動物を注意深く観察する。
【0091】
化合物の適用及び投薬量
ビヒクル又は化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)を、試験の継続期間の間、食餌中に含有させる。
【0092】
試験群
下に示すように、n=6/12匹のマウス(合計n=30)の異なる3群をBDLモデルに含める。
【表1】
【0093】
マウスは、外科手術後温暖キャビネットで飼育し、健康状態について1日2回モニタリングする。外科手術による顕著な体重減少が起こらないことを保証するために、体重をベースライン時及び毎日測定する。
【0094】
標準化行動検査
マウスを、短期記憶力と長期記憶力の両方、並びに外科手術後4、9及び10日目の活動性と探索行動を評価するための2つの標準化行動検査を使用して、特徴付ける。
【0095】
オープンフィールドテスト(MouseTrapp、Neurollytical、米国)を4日目及び9日目に実施する。オープンフィールドテストでは、タッチスクリーン技術を使用して、5分の継続期間にわたる小動物の移動及び行動を自動的に記録し、スコア化する。
【0096】
10日目にY字迷路検査を使用して、認知機能障害を特徴付ける。「新規」アーム 対 慣れ親しんだアームの動物の好み(新規アームにおける比例した時間)を、空間記憶力の測度として使用する。
【0097】
エソビジョンビデオ・トラッキングソフトウェアを使用して、オープンフィールドテスト(不安/活動性検査、主要活動性アウトプット - 歩数、移動距離)及びY字迷路(短期/空間記憶力検査;新規アームにおける時間のパーセンテージ)でマウスの移動を追跡する。
【0098】
臓器回収
必要に応じて、今後の試験のために脳組織を収集する(組織学用に処理し、急速冷凍する)。典型的な組織学的アウトプットには - 神経集団、例えばニューロン、インターニューロン、Sox2陽性前駆細胞、アストロサイト又はミクログリア細胞の免疫蛍光染色が含まれる。
【0099】
必要に応じて、今後の試験のために血液を採取する。典型的なアウトプットは、AST(肝臓損傷マーカー)及びALP(胆管損傷マーカー)である。
【0100】
肥大胆嚢から胆汁を収集し、必要に応じて今後の試験のために急速冷凍する(例えば胆汁酸組成等)。必要に応じて、今後の試験のために肝組織を収集する(組織学用に処理し、急速冷凍する)。典型的な組織学的アウトプットには、線維症及び筋線維芽細胞の活性化又は管増殖のためのケラチン19(K19)を評価するためのピクロシリウスレッド及びα-SMAによる染色が含まれ得る。
【0101】
血液試料を、アロプレグナノロンのレベルの分析用に動物から取る。
【0102】
実施例3
ラットにおける胆汁うっ滞の胆管結紮(BDL)モデル
90年代初頭以来、肝臓学研究の主たるゴールの1つとは、新規な病原概念を明らかにし、その結果として、新規な処置戦略のin vivo有効性を検査するためのさまざまな動物モデルの開発であった。その中で、胆管結紮(BDL)は、胆汁うっ滞の最初で最も広く使用されている実験モデルである。CameronとOakleyによって1932年に最初に開発されたBDLは、げっ歯類で実施され、総胆管の結紮/切除から構成される外科的に創り出された動物モデルである。BDLは当初ラットで記載されたが、それ以来、BDLはマウスにより適切に適合されてきた。BDLは、多くの利点、例えば、容易に再現することができる単純な技術的手順、低コスト、及び迅速な肝臓損傷の発生を有し、これらのことによって、実験プロトコルがより短くなり、したがってより簡便となっている。BDLでは、肝臓の表現型は、胆汁うっ滞損傷の十分に確立された特性、例えば、過増殖性の細胆管反応をもたらす胆管細胞の増殖、門脈の炎症、及び胆管線維症の活発な確立によって特徴付けられる(Mariotti V.ら;BBA - Molecular Basis of Disease 1865 (2019)954~964頁)。
【0103】
胆汁うっ滞の最も頻繁に使用される外科手術誘導性の動物モデルは、総胆管上に結紮を設置するか又はそこで外科手術結紮を実施する、胆管結紮(BDL)に依拠する。この外科手術処置により胆管系の肝外閉塞が創り出され、この肝外閉塞が、胆汁うっ滞及び炎症をもたらす(Gijbels E.ら;Liver International.2021;41:656~682頁)。ラットの胆汁うっ滞の胆管結紮(BDL)モデルにおける疲労感、掻痒、認知機能及び運動機能、肝臓損傷、末梢性炎症並びにアロプレグナノロンレベルに対するゴレキサノロンの効果
胆管結紮(BDL)外科手術を使用してラットにおいて胆汁うっ滞を誘導するが、この場合、胆管を結紮して胆汁の流れを制限する。動物は、炎症及び胆汁うっ滞を促進する胆管閉塞を発生し、これに、肝細胞の損傷が続く。
【0104】
ゴレキサノロンの効果を、BDLラットの疲労感、かきむしり(掻痒)及び認知機能及び運動機能に対して評価する。
【0105】
末梢性炎症に対する効果を、鍵となるインターロイキンを分析することによって評価する。
【0106】
肝臓損傷に対するゴレナキソロンの効果も、以下を分析することによって評価する:
血中の末梢性マーカー:アルカリホスファターゼ、トランスアミナーゼ、ビリルビン、胆汁酸
組織学的解析による肝臓損傷:線維症、炎症
血中のアロプレグナノロンレベル
ラットを試験開始から28日目に殺処分する。
【0107】
各セットで1群当たり6匹のラット(24匹のラット)を含み、2セットの実験を実施する。
【0108】
動物
雄性ウィスターラット(100~150g)(Charles River)を使用する。試験に入る時点では、すべてのラットが非肝硬変性である。動物は、食物及び水を自由に与え12:12時間の明暗サイクルで飼育する。
【0109】
BDLの外科手術処置
胆管結紮(BDL)及びシャム外科手術を、外科手術処置室で無菌条件下で実施する。動物をイソフルランで麻酔し、鎮痛剤としてブプレノルフィンを皮下投与する。
【0110】
BDLの場合、開腹手術を行って、総胆管を露出させ、二重に結紮し、結紮の間で切除する。その後、腹部及び皮膚の創傷の閉鎖を実施する。外科手術直後に、すべての動物を、25℃に維持した加熱層流の換気キャビネットに収容し、そこで動物を注意深く観察する。シャム外科手術処置では、開腹手術を実施し、結紮又は切除を行わずに胆管の確認及び操作を実施し、これに、腹筋及び皮膚の閉鎖が続く。
【0111】
外科手術の5日後、ラットは胆汁うっ滞状態である。外科手術の4週間後、ラットは肝硬変である。
【0112】
ラットを外科手術及び血漿のおよそ30日後に殺処分する。
【0113】
肝機能に対する効果を、病理学的及び生化学的分析によって確認する。
【0114】
化合物の適用及び投薬量
ビヒクル又は化合物ゴレキサノロン(3α-エチニル-3β-ヒドロキシアンドロスタン-17-オンオキシム)を、胃内プローブをとおして1日1回投与する。処置は外科手術の6日後に開始し、試験の継続期間の間維持する。
【0115】
ゴレキサノロンは、カプリン酸/カプリル酸のモノ及びジグリセリドの混合物(カプムル(Capmul)(登録商標)MCM EP/NF;Barentz ApS Odense、デンマーク)中に製剤化したゴレキサノロンを含む医薬製剤としてラットに投与する。
【0116】
(i)ゴレキサノロンを、1.25mL/kgの溶液として50mg/kgの量で投与する(上記のカプリン酸/カプリル酸のモノグリセリド及びジグリセリドの混合物中のゴレキサノロン40mg/mL)。
【0117】
(ii)ビヒクル(プラセボ)は、ゴレキサノロンを含まない、上記のカプリン酸/カプリル酸のモノグリセリド及びジグリセリドの混合物であり、これは1.25mL/kgの体積で投与される。
【0118】
試験群
下に示すように、n=12匹のラットによる異なる4群(合計n=48)を試験に含める。上述のように、本試験は各実験で24匹のラットを使用して2つの連続実験で実施する。
【表2】
【0119】
行動検査
ラットを、空間認識記憶力と非空間認識記憶力の両方の評価のためにさまざまな標準化行動検査を使用して特徴付ける:
下記のように、新規物体位置検査(NOL);新規物体認識検査(NOR);Y字迷路での短期記憶力;掻痒行動(かきむしり);疲労感並びに運動活性(オープンフィールド)及び協調性(モトレーター(Motorater)/キャットウオーク(Catwalk));並びに、不安(オープンフィールド)行動(検査の日は若干変更する場合がある)。
【0120】
1.掻痒の評価を、外科手術後7日目と22日目に実施する。
2.疲労感は外科手術後8日目と23日目に評価する。
3.運動協調性は外科手術後8~11日目で評価する。
4.運動活性及び不安をオープンフィールド検査を用いて外科手術後15~17日目に評価する。
5.認知評価をNOL検査とNOR検査を用いて外科手術後17日目と18日目に実施する。
6.短期空間記憶力検査をY字迷路を用いて外科手術後21日目に実施する。
7.殺処分及び組織の採取を外科手術後のおよそ30日で実施する。
【0121】
1.掻痒を、30~60分間のかきむしり行動のビデオ撮影によって評価する。自発的なかきむしりを、前足又は後足によって行われる体の任意の領域のかきむしり(発作)の数をカウントすることによって定量化することになる。
【0122】
2.疲労感を、それぞれ電力系統を備えた、平行な2つのセクターに分けられた電動式コンベアベルトから構成されるトレッドミルを用いて測定する。足ショック(0.5mV、1mA、0.3Hz)を避けるために、動物はベルトから落ちることなく前方へ歩く必要がある。
【0123】
室温で、ラットを1日間事前に訓練し、最初にスタートせずに3分間探索する。次いで、10cm/秒で5分間、次いで20cm/秒で5分間。検査は翌日に行う。
【0124】
ラットを5°で傾斜している静止ベルト上に置き、ここで、5分間速度を30cm/秒まで徐々に上げ、その速度で別途15分間(合計20分間)続ける。センサーによりベルト上で消費した時間を測定する。各検査の最後の15分の間に記録された値(及びラットがグリッド上に落下する時間)を記録する。Butterworthら、Neurogastroenterology and Motility、2009;12月;21(12):1319~1325頁.doi:10.1111/j.1365-2982.2009.01356.x.
【0125】
3.運動協調性を、モトレーターシステム及びキャットウオークシステムを用いて評価する。
【0126】
モトレーター:自発運動パフォーマンスの運動学的解析を、モトレーター装置(TSE Systems、ドイツ)を使用して実施する。ラットを、照らされたガラス壁の廊下を渡って最終的には暗い逃避箱に到達するように訓練する。24時間後、ラットをはしごを渡るように試験する。パフォーマンスを、モバイル高速カメラによって毎秒200フレームで底から記録する(Zornerら Nat.Methods、2010;7(9):701~708頁)。キャットウオーク(CatWalk)(商標)システムは、自発運動パターンの種々の側面を測定する。各足跡の位置、圧力、表面積に基づいて、多重のパラメータが計算される。動物が停止したか又は方向を変えたトライアルは、その後の解析から除外する。中断のない3つのトライアルを実施する。足跡の指定を割り当て、キャットウオーク解析ソフトウェア(v7.1)を使用してデータを解析する(Lucasら、Front.Cell Neurosci、2015.8:441頁)。
【0127】
4.オープンフィールドテストを使用して、活動性及び不安を評価する。5分の継続期間にわたるラットの移動及び行動の自動記録及びスコア化を、黒塗装の木でできているオープンフィールドアリーナ(70×70×40cm)で実施する。
【0128】
5.認知機能を、新規物体認識(NOR)及び新規物体位置(NOL)の記憶力検査を用いて評価する。これらの検査を、Taoro-Gonzalezら、FASEB J、2019;33(9):9913~9928頁におけるのと同様に、壁に視覚空間キューを備える黒塗装の木でできているオープンフィールドアリーナ(70×70×40cm)で実施する。続いて行う検査での不安行動を避けるために、毎日5分間、空のフィールドアリーナをラットに自由に探索させることによって、5日の間ラットを慣らす。NOL検査は6日目に実施する。
【0129】
NOR検査は7日目に実施する。NORの見本期では、同一の2つの物体をアリーナに配置し、3分間自由に探索した後、ラットをケージに6時間入れる。その後、試験期を実施し、物体のうちの1つを未探索の物体と交換し、ラットを再び3分間自由に探索させる。
【0130】
6.短期空間記憶力検査を、黒色メタクリレートY字迷路を使用して実施する。ラットを迷路のアームのうちの1つ(開始アーム)に配置し、1分のトライアル間の間隔をもって2度の間、アームのうちの1つを2分間閉じた状態で当該迷路を探索させる(訓練トライアル)。次いで、ラットを迷路の3つのアームすべてを2分間自由に探索させる(検査トライアル)。各アームへのエントリ数と各アームでの消費時間を登録し、分別率[(新規アームでの消費時間-慣れ親しんだアームでの消費時間)/2つのアームでの合計経過時間]を算出する。
【0131】
エニイメイズ(Anymaze)ビデオ追跡システム及びソフトウェアを使用して、以下において並びに以下について、ラットの移動を追跡する:オープンフィールドテスト(不安/活動性検査;主な活動性アウトプット - 歩数、移動距離)において;Y字迷路(短期/空間記憶力検査;新規アームでの時間のパーセンテージ)において;並びにNOR検査及びNOL試験について。
【0132】
収集する試料
脳組織を収集することになる。一部のラットに固定剤を灌流し、神経炎症の可能性のある今後の免疫組織化学的試験のために脳を保持することになる。他のラットの脳領域を、神経炎症及び神経伝達の変化に関する可能性のある今後の試験のために凍結することになる。
【0133】
血液も採取されることになる。血漿/血清を、アロプレグナノロン(LC-MS)、トランスアミナーゼ、(ELISA及びウェスタンブロットによる)ビリルビン及び炎症マーカーのレベルの分析用に収集することになる。
【0134】
組織学による肝臓損傷の解析用に肝臓組織も収集することになる。
【0135】
実施例4-臨床試験
安定した背景の標準治療(SoC)PBC医薬品上で、臨床的に重大な疲労感及び認知症状を伴う非肝硬変性又はチャイルド・ピュー分類A肝硬変性原発性胆汁性胆管炎(PBC)の病歴のある対象の内で、ゴレキサノロン 対 プラセボの無作為化二重盲検プラセボ対照2パート第1b相/第2相試験を実施することになる。この患者集団におけるゴレキサノロンの薬物動態(PK)、安全性及び忍容性、並びに予備的な有効性を評価することになる。
【0136】
試験は2つの別々の2つのパートから構成される:
パートA:安全性及びPKの評価のための、ゴレキサノロン40mg/プラセボの5日の1日2回(BID)経口投与。
【0137】
パートB:安全性及び予備的な有効性のための、2つの用量レベルのゴレキサノロン/プラセボによる28日のBID経口投与。
【0138】
治験薬(複数可)、投薬量及び投与のモード
治験薬(ゴレキサノロンの臨床製剤)は、経口投与用にゼラチンカプセルに充填された脂質半固形として供給される。本試験の場合、各カプセルはゴレキサノロン10mgを含有する。賦形剤は、カプリン酸/カプリル酸のモノグリセリドとジグリセリドの混合物(インビトール(Imwitor)(登録商標)742)であり、これは薬局方品質である。
【0139】
プラセボカプセルは脂質賦形剤を含有し、ゴレキサノロンカプセルと同一の外観である。投与されるプラセボカプセルの数を、各用量レベルで投与されるゴレキサノロンカプセルの数に一致するように調整する。臨床製剤を下の表に記載する:
【表3】
【0140】
本臨床試験で使用されるゴレキサノロンの治験薬製剤の製造は、出願人の公開出願の国際公開第2019102040号の実施例10に記載されているように調製することができる。
【0141】
試験計画
対象を、治験薬の第1の投与前に、試験特異的選択/除外基準に従って適格性についてスクリーニングする(来院1;スクリーニング来院)。
【0142】
パートA:8人の評価可能対象が必要であろう。スクリーニング脱落率50%を仮定すると、約16人の対象をスクリーニングすることになると見積もられる。AE(有害事象)以外の理由で中止の処置対象者は、内部安全性審査委員会(iSRC)によって推奨される場合、置き換えられる可能性がある。
【0143】
パートB:約84人の評価可能対象が必要であろう。ドロップアウト率10%を仮定すると、最大93人の対象を無作為化することになる。スクリーニング脱落率50%を仮定すると、約186人の対象をスクリーニングすることになると見積もられる。
【0144】
パートBからの約60人の対象が28日目に完了した場合(すなわち、処置アーム毎に20人の対象)、試料サイズの再評価のために、中間解析を実施することになる。再推定の結果に応じて、最大126人の評価可能対象を含めることができる。ドロップアウト率10%を仮定すると、最大139人の対象を無作為化することができる。
【0145】
両方の試験パート(AとB)をプラセボ対照とし、無作為化することになる。潜在的なバイアス又はプラセボ効果を最小限に抑えるために、スポンサー、CRO及び治験責任医師を含めて、試験担当者全員を盲検化することになる。
【0146】
パートA+Bに参加する対象は、33日の期間(パートAでは1~5日目及びパートBでは1~28日目)IMPを受けることになる。パートAのみに参加する対象は、合計連続5日間IMPを受けることになる。パートBのみに参加する対象は、合計連続28日間IMPを受けることになる。
【0147】
来院計画を容易にするため、28日目に対して±2日の逸脱は許容されることになる。
【0148】
試験パートA
適格性の8人の男性及び女性の対象を、40mgBIDのゴレキサノロン(6人の対象)又はプラセボBID(2人の対象)のいずれかの5日の毎日投与に、1日目(来院2)に無作為化することになる。PK試料採取を、1日目の第1の用量の後の12時間の間に頻繁に、2日目から5日目までの朝の用量の前に毎日、そして5日目の第2の用量(夕方の用量)後の48時間の間に頻繁に行うことになる。対象は1日目~7日目、試験実施施設に居住することになる。安全パラメータについて、事前に指定した時点でモニタリングすることになる。
【0149】
フォローアップ来院(来院3)を、21日目(±3日)、すなわち最終IMP(治験薬)投与の約2週間後に実施することになる。
【0150】
主要目的 パートA
臨床的に重大な疲労感及び認知症状のある非肝硬変性の又はチャイルド・ピュー分類A肝硬変性のPBC対象における40mgゴレキサノロンBIDの5日間による処置の安全性及び忍容性を評価すること。
【0151】
試験パートB
パートAからの安全性データ及びPKデータが順調であると判断されると仮定すると、パートBが開始され、ドロップアウト率10%を仮定して、約93人の対象を、予測される用量レベルのゴレキサノロン40mg若しくは80mgのBID又はプラセボBIDの連続28日間投与に対して1日目(来院2)に、無作為化することになる(1:1:1)(すなわち、同数の患者をプラセボ:用量群1:用量群2へと無作為化することになる)。
【0152】
投薬量は以下のとおりとなる:
1.標準治療の療法と組み合わせた40mgのゴレキサノロンBID(すなわち、1日あたり80mg);又は
2.標準治療の療法と組み合わせた80mgのゴレキサノロンBID(すなわち、1日あたり160mg);又は
3.標準治療の療法と組み合わせたプラセボBID。
【0153】
標準治療の療法は、経口抗酸化剤、フルボキサミン、フルオキセチン、オンダンセトロン、コルヒチン、UDCA(ウルソデオキシコール酸)、OCA(オベチコール酸)、シクロスポリン、ナルメフェン、モダフィニル、リツキシマブ、ラクツロース、リファキシミン、プロプラノロール、フロセミド、メトトレキサートのいずれか1つ;又はそれらの任意の組合わせ、とすることができる。
【0154】
これらの事前定義された用量レベルの調整がパートAの曝露に基づいて必要になる可能性がある。しかし、最大1日用量は80mgBIDを超えることはない。パートAの最終用量とパートBの第1の用量の間には、少なくとも1か月の間隔があることになる。
【0155】
IMPは、IMP(朝の用量)が管理下で投与される診療所に来院する試験日(1日目、7日目、14日目、及び28日目)を除いて、パートBの間、自宅で対象によって自己投与されることになる。電話による安全性のフォローアップを21日目に実施することになる。
【0156】
試験薬の摂取、併用薬の変更、及び来院と来院の間に発生する医療事象を、対象によって電子日記に毎日記載することになる。フォローアップ来院を、42日目(±3日)、すなわち最終IMP投与の約2週間後に実施することになる。
【0157】
パートBからの約60人の対象が28日目に完了した場合(すなわち、処置アーム毎に20人の対象)、PBC-40認知領域に対する試験薬の効果に基づいて試料サイズの再評価のために、中間解析を実施することになる。
【0158】
血液試料を、アロプレグナノロンの血清レベル用に取る。
【0159】
評価項目
1.AE(有害事象)の頻度、強度、及び重篤度、臨床検査パラメータ及び臨床安全性パラメータのベースラインから28日目までの変化。
【0160】
2.以下のHRQoL(健康関連の生活の質)測度のベースラインから28日目までの変化:
i.各領域(認知、掻痒、疲労感、社会的、情緒的、及び全身症状)のPBC-40スコア。
ii.EQ-5D-3Lツール(下記)。
【0161】
3.下記の、エプワース眠気尺度(ESS)を使用する、日中の眠気関連症状のベースラインから28日目までの変化。
【0162】
4.以下を含めて、一連の認知検査のベースラインから28日目までの変化:
I.門脈大循環性肝性脳症スコア(PHES)の合計スコア(下記):
II.レイ聴覚言語学習検査(RAVLT)(下記)。
III.デリス及びカプラン実施機能システム(D-KEFS)の文字流暢性及びカテゴリー流暢性サブテスト(下記)。
【0163】
5.変化の臨床全般印象、PBCバージョン(CGI-C-PBC)(下記)。
【0164】
6.次の用量前の最低血漿濃度(トラフ濃度)を、用量前1、7、14、及び28日目に評価することになる。
【0165】
探索的評価項目
1.アロプレグナノロンの血漿中濃度
2.炎症促進性バイオマーカーの血漿濃度のベースラインから28日目までの変化
【0166】
臨床有効性評価
目的
1.疲労感を含めて、健康関連の生活の質(HRQoL)に対するゴレキサノロンの効果を評価すること。
2.日中の眠気に対するゴレキサノロンの効果を評価すること。
3.認知機能に対するゴレキサノロンの効果を評価すること。
4.処置効果に関する治験責任医師の全般印象を評価すること。
5.28日間処置を受けた標的集団における2つの用量レベルのゴレキサノロンの曝露を評価すること。
【0167】
評価項目
1.以下のHRQoL測度のベースラインから28日目までの変化。
各領域(認知、掻痒、疲労感、社会的、情緒的、及び全身症状)のPBC-40スコア。
EQ-5D-3Lツール。
【0168】
2.エプワース眠気尺度(ESS)を使用する、日中の眠気関連症状のベースラインから28日目までの変化。
【0169】
3.以下を含めて、一連の認知検査のベースラインから28日目までの変化:
門脈大循環性肝性脳症スコア(PHES)の合計スコア。
レイ聴覚言語学習検査(RAVLT)。
デリス及びカプラン実施機能システム(D-KEFS)の文字流暢性及びカテゴリー流暢性サブテスト。
【0170】
4.変化の臨床全般印象、PBCバージョン(CGI-C-PBC)。
【0171】
5.次の用量前の最低血漿濃度(トラフ濃度)を、用量前1、7、14、及び28日目に評価することになる。
【0172】
探索的目的
アロプレグナノロン及び炎症促進性バイオマーカーの血漿レベルを評価すること。
【0173】
PBC-40
PBC-40とは、PBCで使用するために開発された且つ検証済みの、患者由来の疾患特異的HRQoL測度である。PBC-40質問票は、それぞれ認知機能及び疲労感の特定の領域を備える疾患特異的PBC-40尺度を使用して、PBCにおける疲労感症状及び認知症状を評価する上で使用される。PBC-40質問票は、掻痒、社会的、情緒的、及びPBC関連の全身症状を含む場合もある。
【0174】
質問票は6つのいわゆる領域から構成され、そのうち、認知機能及び疲労感が2つのそのような領域である(その他の4つの領域は情緒的、社会的、掻痒及び全身症状に関連する)。PBC-40質問票は検証されており、PBCの医療分野内の当業者によってよく使用され、理解されている(Jacobyら;Gut2005;54:1622~1629頁)。この測度の特徴は詳細に記載されており、その特徴は実際に広く適用されてきた(例えば、Newton JLら;J Hepatol 2006;44:776~782頁を参照されたい)。
【0175】
質問票は、患者による自己記入のために設計されており、記入するのに約5分を要する。
【0176】
質問紙は40の質問から構成され、各質問は6つの領域(認知、掻痒、疲労感、社会的、情緒的、及び全身の各症状)にグループ化され、1~5の尺度でスコア化される(ここで、l=最小のインパクト、5=最大のインパクト)。各領域について、スコア化には、6~30の範囲で、個別の質問回答スコアを合計することが伴う。スコアが高いほど、生活の質がより低いことを指示する。
【0177】
スクリーニング時に、4週間の想起期間を含むPBC-40のオリジナルバージョンを使用することになる。毎週の想起期間へのPBC-40の適用は、その後の試験来院時に使用されることになる。
【0178】
対象に以下の指示が与えられる:
それぞれの記述について、あなたがどう感じるかに最も近い回答をご記入ください。記述のいずれもがあなたに該当しない場合は「該当しない」とご記入ください。
【0179】
EQ-5D-3Lツール
EQ-5Dツールとは、臨床及び経済評価のための健康に関する単純で一般的な測度を提供するためにEuroQol Groupによって開発された健康状態の標準化測度である(Rabin Rら:Ann Med.2001年7月;33(5):337~343頁)。
【0180】
EQ-5Dのスリーレベルバージョン(EQ-5D-3L)は、本質的に2ページ:EQ-5D記述システム及びEQ-5Dビジュアルアナログ尺度(EQ VAS)から構成される:
EQ-5D-3L記述システムは以下の5つの観点を含み、それぞれが健康の異なる側面について記述する:可動性、セルフケア、通常の活動性、痛み/不快感、及び不安/鬱。各観点は3つのレベルを有する:問題なし、ある程度の問題、極度の問題(1~3とラベル付け)。回答者は、5つの観点のそれぞれで最も適当な記述に対してボックスをチェックすることによって自分の健康状態を明記するように求められる。
EQ VASは、回答者の自己評価の健康をバーチカルVASに記録するが、この場合、評価項目は、あなたが想像することのできる最高の健康及びあなたが想像することのできる最悪の健康とラベルされる。こういった情報は、個々の回答者によって判断される健康の転帰の定量的測度として使用することができる。
【0181】
質問票の記述部分とVASの両方について、対象は今日の健康を評価するよう求められる。
【0182】
EQ-5D要約インデックスを、本質的に各観点の各レベルに値(重み)をもたせる式を適用することによって導出する。紙面バージョンを使用することになる。
【0183】
エプワース眠気尺度(ESS)
ESSとは、日中の傾眠過剰の評価のための検証済みの自己管理質問票である(Johns M.;Sleep 1994;17:703~710頁)。回答者は、異なる8つの活動(すなわち8つの質問)に関与するが、うとうとすること又は居眠りすることに関する回答者の通常の可能性を4段階尺度(0~3)で評価するように求められる。ESSスコア(8項目スコア0~3の合計)は0~24の範囲とすることができる。ESSスコアが高いほど、当該者の日常生活における平均睡眠傾向、すなわち当該者の「日中の眠気」が高いことになる。
【0184】
紙面バージョンの質問票を使用することになる。質問票は回答するのに2~3分以下を要する。
【0185】
スコアの解釈:
【表4】
【0186】
門脈大循環性肝性脳症スコア(PHES)
PHESは、不顕性肝性脳症(CHE)の評価のための一連の筆記検査である(Weissenborn K、Diagnosis of encephalopathy.Digestion.1998年7月;59 別冊2:pp.22~24頁;Weissenborn K、ら;J Hepatol.2001;5月:34(5):768~773頁;Weissenborn K. PHES:J Hepatol.2008年9月;49(3):308~312頁)。
【0187】
PHESは、肝臓の適応症について検証済みである唯一の一連の認知検査である。しかし、認知検査のパフォーマンスは通常、PBCにおけるよりも不顕性HEにおいていっそう損なわれているので、本試験では、PHESは記憶力及び言語流暢性のさらなる測度で補助されることになる(レイ聴覚言語学習検査及びデリス及びカプラン実施機能システムの文字流暢性及びカテゴリー流暢性のサブテストについては下の検査を参照されたい)。
【0188】
PHESは、番号接続検査A(NCT-A)、番号接続検査B(NCT-B)、シリアルドット検査(SDT)、ライントレース検査(LTT)、及び数字符号検査(DST)の5つのサブテストから構成される。PHESにより、運動速度、運動精度、集中力、注意力、視覚知覚、視空間定位、視覚構造、及び記憶力が評価されるが、これらは、CHEにおけるほとんどの神経心理学的障害に関連する。
【0189】
対象には5つのサブテストのそれぞれに対する短い標準化された指示が与えられ、管理の下で1度に1つずつ5つのサブテストを完了する。対象者が正しく理解したことを確実にするために、NCT-A、SDT、LTT及びDSTの各検査についてトレーニング検査を完了する。
【0190】
PHESのスコア化:各検査に費やした時間(秒)を記録し、年齢調整の正常値で記入されるスコアに変換する。+/-1の標準偏差(SD)以内のサブテストのパフォーマンスにはスコア0が与えられる。最大スコアは+1であるが、一方、可能な最低スコアは-3(-3SD)である。LTTには2つのスコア:時間スコア及びエラースコアが割り当てられることに留意されたい。6つのサブスコアの合計がPHESであり、-4を下回る場合に異常である。PHES範囲は-18~6である。検査及びスコア化には約15分を要する。
【0191】
レイ聴覚言語学習検査(RAVLT)
RAVLTとは、15単語から構成される検証済みの単語リスト学習タスクであり、15の単語は、1単語/1秒の速度で対象へと読み上げられ、その後、対象は可能な限り多くの単語を想起するように求められる。この手順を5回繰り返す。これら5回のトライアルにわたり想起された単語の合計が、即時想起スコアを構成する。これは、言語的エピソード記憶力の測定のための一般的な検査パラダイムである。RAVLTは広く使用される検査であり、元々は1959年にフランス語から適用されたものである(Schmidtら Rey Auditory Verbal Learning Test:A Handbook(Western Psychological Servicesにより出版))。
【0192】
RAVLTをPHESの前に(学習の測度として)与えることになる。PHESの完了後、RAVLT遅延想起検査を与えることになるが、この検査では、対象は遅延後に可能な限りリストから多くの単語を想起することが求められる。
【0193】
反復実施のための形式間での交替を可能にする同等のいくつかの形式がある。来院2(ベースライン)で使用される形式は、来院6(処置終了)で使用される形式と同じである必要がある。
【0194】
即時形式と遅延形式の両方の実施時間は8~10分である。
【0195】
デリス及びカプラン実施機能システム(D-KEFS)の文字流暢性及びカテゴリー流暢性のサブテスト
D-KEFSからのカテゴリー流暢性検査及び文字流暢性検査は、検証済み観念的な流暢性タスクであり、この場合、対象は、1分間で可能な限り、特定のルールに従う、多くの単語を言うように求められる。
【0196】
カテゴリー流暢性タスクの場合、まず対象は1分間で可能な限り多くの動物の名前をあげるよう求められる。次いで、第2のカテゴリー(男の子の名前)を与える。スコアは、2つのカテゴリーで提供された単語数の合計である。2つの異なる且つ同等のカテゴリーを使用する交互のバージョンを来院2回で1回与えることになる。
【0197】
文字流暢性では、1分間で目標文字で始まる可能な限り多くの単語を言うことが対象に求められる。異なる3文字を用いる3回のトライアルで生成された単語の数を合計する。制約が与えられ(例えば固有名詞なし、数字なし)、そういったルール内の単語のみを妥当としてカウントする。
【0198】
これらの検査を合わせて、実施するのに6~7分、スコア化にさらに3分を要する。文字とカテゴリーの流暢さタスクの両方の場合、交互に使用することができる同等の2つの形式がある。来院2(ベースライン)時に使用される形式は、来院6(処置終了)時に使用される形式と同じである必要がある。代替形式は、スクリーニング時及び来院4時に使用することができる。
【0199】
重症度及び変化の臨床全般印象 - PBCバージョン
臨床全般印象(CGI)尺度は、2つの臨床医評価手段、CGI-S-PBC及びCGI-C-PBCから構成され、それぞれ全体的な疾患の重症度及び変化を評価する。PBC特異的バージョンは、十分に検証されたPBC-40を支持するJacoby 2005(Gut 2005;54:1622~1629頁)のPBCにおける広範な定性的作業に基づいて開発されており、固定された臨床医評価を備える半構造化臨床面接フォーマットにおいてPBC-40の領域及び質問を採用している。CGI-S及びCGI-CのこのようなPBC特異的バージョンについては検証中であるが、下で詳細に説明する。
【0200】
CGIの最初の公開以来、CGIは精神医学における最も広く使用される評価ツールのうちの1つになった。例えば、CGI、とりわけCGI変化尺度(CGI-C)は、さまざまな精神障害(例えば、うつ病、統合失調症)の臨床薬トライアルにおける有効性測度として広く利用されてきた。CGIの評判は主に、CGIの簡潔さと、症状が不均一である疾患状態でも十分な情報に基づいた全般臨床印象を捉えるCGI能力とに基づいている。
【0201】
精神科適応症では、症状及びその重症度を探索するためのいくつかの標準化した半構造化面接手段を完了した後にCGIを実施し、したがって、CGI評価が評価者、試験実施施設、及び来院にわたる対象の均一な診察に基づくこと、が保証される。疾患特異的構造をもたらすことによって、先行する臨床評価尺度無しで、CGIを信頼性高く使用することができる(Kolevzon Aら;J Neurodev Disord.2021年1月4日;13(1):3頁)。
【0202】
ベースライン時の臨床状態の比較をサポートするため、CGI-S-PBCには、ベースライン時に実施されることになり且つPBCにとって臨床的に意味があると前もって特定された領域をカバーする、対象者との半構造化面接が伴う。CGI-S-PBCからの広範な観察メモ及びサブ領域評価が、評価者によって再検討され、その後に、CGI-C-PBCの面接が実行され、その結果、変化の評価に対して、処置前に観察された重症度及び症状プロファイルの程度によって十分な情報が与えられることになる。
【0203】
探索的有効性評価
アロプレグナノロン及び炎症促進性バイオマーカーの血漿レベル
アロプレグナノロン及び炎症促進性バイオマーカーの血漿レベルの分析用の血液試料を、試験パートBで収集することになる。試料を、現地法によって必要とされる場合、組織バンクに登録し、試験終了後に分析されるまで-70℃で保管することになる。
【0204】
変化の臨床全般印象 - 原発性胆汁性胆管炎(CGI-C-PBC)
CGI-C-PBCは、処置の開始(ベースライン)からの変化の大きさに関する評価者の臨床印象を捉えるために、本特許出願人によって設計された臨床評価尺度である。CGI-C-PBC評価の範囲は1(非常に改善)~7(非常に悪化)に範囲するが、この場合、中間点評価4はベースラインからの変化がないことを反映する。CGI-C-PBCはフォローアップ来院の間に完了するが、ベースライン時では完了しない。以前の4週間のウィンドウを想起に使用することになる。
【0205】
信頼性の高いCGI--PBC評価(Cは変化を表す)を与えるため、ベースラインCGI--PBC(Sは開始を表す)の治験責任医師メモの徹底的な再検討を必要とする。したがって、最適なCGI-C-PBC評価は、各症状領域における以前の4週間にわたる症状及び徴候、その重症度、頻度並びに機能上の帰結を詳細に説明する徹底的なベースラインの治験責任医師のメモに依拠する。
【0206】
1.評価者は、各領域のCGI--PBC(下記)の治験責任医師のメモをガイドとして念入りに参照し、以前の4週間の間の観察に注目し、CGI-S-PBCの治験責任医師メモのセクションに記載されたそれらの症状及び兆候の重症度、頻度、機能上の帰結の変化を捉えることに特に注目して、試験参加者(及び適当であれば追加の任意の情報提供者)に面接する必要がある。
【0207】
2.評価者は、領域毎の試験参加者の彼ら自身の客観的な観察を含めて、あらゆるソースからの情報を考慮する必要がある。
【0208】
3.ベースラインからのすべての変化を、CGI-C-PBCの治験責任医師メモフォームに詳細に記載する必要がある。このフォームに関する試験参加者との会話は、本試験の重要な評価項目であるCGI-C-PBC評価の重要な正当性を構成する。したがって、変化に関する徹底的な試験参加者との会話の記載(ベースライン時に提供された記載と比べて、正確に今回は何が異なるのか)が必要である。
【0209】
4.各領域試験参加者との会話が記入されたら、評価者は当該領域にCGI-C-PBCスコアを割り当てる必要がある。
【0210】
5.最終的に、評価者は全体的なCGI-C-PBCスコアを用意する必要がある。本評価を与える上で、評価者は、すべての領域にわたり、ベースラインからの変化の量、一貫性及び全体的な臨床的意義を考慮する必要がある。全体的なCGI-C-PBCスコアは、個々の領域スコアからのアルゴリズム計算ではないことに留意されたい。CGI-C-PBCスコアは総計での臨床判断である。すなわち、一領域での劇的な変化は、所与の患者にとって臨床的意義が大きいとすることができる。
【0211】
CGI-C-PBC評価ガイドは以下のとおりである:
臨床医は各PBC-40領域要素を次のように評価することになる:
1.掻痒(睡眠を妨げる掻痒、皮膚がすりむけるまでかきむしる、困惑)
2.疲労感(無理にベッドから出る、昼寝、疲労感、疲労困憊、無理に物事を行う、早くベッドに行く、疲労感の突然開始、エネルギーの枯渇、物事を行うのに長時間を要する、忙しい1日の後は回復するのに1日を要する、ペース調整する必要がある)。
3.認知症状(短い集中力持続時間、日毎の物事の記憶力、会話を続けるのが面倒、集中するのが困難、あなたがしたかったことを記憶していますか?)。
4.心理社会的帰結(家族無視、罪悪感、性生活、外出不能、PBCを胸に秘める、休暇の計画不能、普通の生活を必要としないことがある、生活の質の低下)。
5.情緒的苦痛(以前よりも物事についてストレスを感じる、PBCが気を滅入らせる、PBCの将来を心配する)。
6.PBCに典型的な身体症状(食することができる、飲酒時の膨満感、アルコールによる問題、身体的不快感、右側、口渇、腕/脚の長骨の疼痛)。
【0212】
1=非常に改善した
頻度及び重症度の顕著な改善、非常に顕著な機能の改善。
診療所でも注目に値する可能性がある改善。
2=かなり改善した
頻度と重症度の両方において中程度の改善。
改善は明らかな機能上の帰結を有する。
3=僅かに改善した
頻度、重症度のいずれか又はその両方に対して軽度又は中程度の改善。
改善度は臨床的に意味のあるものでなければならない。
改善は偶然の変化を超えるものを表す。
4=変化なし
症状、機能、又は臨床症状に変化がない。
いずれかの方向での、偶然による可能性がある大きさの、わずかな変動。
ゆらぎ又は日毎の変化。
存在する可能性はあるが、確かではない変化。
5=わずかに悪化した
頻度若しくは重症度のいずれか又はその両方に対して一部が悪化する。
悪化度は臨床的に意味のあるものでなければならない。
悪化は偶然を超えるものを意味する。
6=かなり悪化した
頻度及び重症度の両方に関与する中程度の悪化。
悪化度は明らかな機能上の帰結を有する。
7=非常に悪化した
頻度と重症度の両方において顕著な悪化、非常に顕著な機能悪化。
診療所でも注目に値する可能性がある悪化。
【0213】
臨床医は最終的に、各PBC-40領域要素の評価に基づいて合計スコアを合計することになる。
【0214】
臨床全般印象-重症度 - 原発性胆汁性胆管炎(CGI-S-PBC):
症状の重症度に関する臨床全般印象は、当該症状の処置に対する応答を評価する上での鍵となるステップであるとともに新規な処置の規制当局の承認のための必要なステップである。本ツール、CGI-S-PBCは、原発性胆汁性胆管炎(PBC)におけるそのような評価を可能にするために、本特許出願人によって設計された。
【0215】
完成したCGI-S-PBCは、試験参加者のために、過去1か月にわたる原発性胆汁性胆管炎(PBC)の症状の全体的な程度、重症度及び機能的インパクトに関する臨床医の見解を反映する必要がある。CGI-S-PBCは、7点尺度での単一値を使用して記録され、ここで、1は正常性(正常集団の典型)を指示し、7は、臨床医が診療所で診たことがあるPBC患者のうちで最高の重度を指示する。
【0216】
本ガイダンスセクションによれば、臨床医の評価者が、各参加者に対して、PBCで臨床的に意味があると判断された各領域がどのように影響を受けるかについて系統的に再検討するのを助ける、半構造化面接及び評価ガイドが提供される。これらの各領域内の重症度「アンカー」も、臨床医の評価をガイドするために且つ患者と、臨床医と試験実施施設との間での評価レベルの一貫したキャリブレーションを保証するために、提供される。
【0217】
評価者は、下に概説する相対的な重症度の区別を判断するのにPBC患者に十分精通している臨床医であることが必要である。評価者はまた、本尺度の使用においても長けている必要もある。
【0218】
尺度の信頼性の高い使用のため、以下のステップが必要である。
【0219】
1.下のCGI-S-PBC治験責任医師メモフォームに列記されている各症状領域について、評価者は、提供される7つの評価レベルのうちの1つをサポートすることができる臨床上の記載に到達する目標をもって、患者を面接する必要がある。提案プロンプティング質問が各領域ごとに提供されており、ガイドとして使用する必要がある。
【0220】
2.各領域の評価を割り当てる場合、評価者は、試験参加者の面接を主に始めとして利用可能なあらゆるソースからの情報を考慮する必要がある。
【0221】
3.比較の基準(すなわち、評価1)とは、PBCがなく且つ全体的に健康である、(年齢及び性別の点で)同等の個人である。
【0222】
4.来診前の4週間のウィンドウを想起期間として使用する必要がある。
【0223】
5.CGI-S-PBCの治験責任医師メモセクションは、各領域がどのように発現したのか、試験チームが再構築できるように、何が起こったか、いつ起こったか、何が典型的であるか、何が時折発生するか、以前の4週間にわたりまれではあるが何が起こったか、十分な臨床上の詳細を徹底的に捉える必要がある。このようなことは、変化スコアに関して続いて行われる評価のための処置前のベースラインを確立するので、極めて重要である。
【0224】
6.評価者は、各領域の彼らのメモの記録を終了した場合、アンカー内の記載に基づいて領域重症度スコアを入力する必要がある。アンカーは各領域の重症度の特性評価の例を含有するが、臨床上適当であると考えられる場合、それらのそれぞれの領域の他の例が含められ且つ提供されるメモセクションに記載される必要がある。
【0225】
7.PBC特異的アンカー内の特性評価は、所与の任意の対象を正確に記載していない可能性がある。評価は、各症状群内で全体的に意識された重症度を反映し、その結果、臨床上それほど意味がないとしてもよい軽微な症状又はまれに発生する症状の過度な重み付けを回避する必要がある。
【0226】
8.最終的に、評価者は彼らの臨床判断に基づいて、利用可能なすべてのインプットを使用してCGI-S-PBC全体スコアを与える必要がある。CGI-S-PBC症状の全体スコア評価は臨床判断を反映し、症状領域スコアから導出されるアルゴリズム計算(すなわち、平均値又は最頻値)ではないことに留意されたい。最終的には、CGI-S-PBC症状の全体スコアは、その時点での全体的な重症度の評価者の推定を反映する臨床印象である必要がある。
【0227】
CGI-S-PBC評価ガイドは以下のとおりである:
臨床医は各PBC-40領域要素を次のように評価することになる:
1.掻痒(睡眠を妨げる掻痒、皮膚がすりむけるまでかきむしる、困惑)
2.疲労感(無理にベッドから出る、昼寝、疲労感、疲労困憊、無理に物事を行う、早くベッドに行く、疲労感の突然開始、エネルギーの枯渇、物事を行うのに長時間を要する、忙しい1日の後は回復するのに1日を要する、自己をペース調整する必要がある)。
3.認知症状(短い集中力持続時間、日毎の物事の記憶力、会話を続けるのが面倒、集中するのが困難、あなたがしたかったことを記憶していますか?)。
4.心理社会的帰結(家族無視、罪悪感、性生活、外出不能、PBCを胸に秘める、休暇の計画不能、普通の生活を必要としないことがある、生活の質の低下)。
5.情緒的苦痛(以前よりも物事についてストレスを感じる、PBCが気を滅入らせる、PBCの将来を心配する)。
6.PBCに典型的な身体症状(食することができる、飲酒時の膨満感、アルコールによる問題、身体的不快感、右側、口渇、腕/脚の長骨の疼痛)。
【0228】
下の各PBC症状に関連するプロンプティング質問を使用した後、過去1か月の間のエピソードの数、重症度及び帰結に基づいて、臨床医は各PBC症状を評価することになる。
1.PBCに典型的な掻痒
掻痒の提案プロンプティング質問:
掻痒はどの程度問題ですか?
掻痒により睡眠が妨げられたことがありますか?どの程度の頻度ですか?どの程度の重度ですか?(少なくともある程度は睡眠はとれていますか?)
皮膚がすりむけるくらい掻きむしっていませんか?
掻きむしる衝動は困惑をもたらしますか?
重症度=1:正常、まったく傷害性無し:標準。
重症度=2:ボーダーライン、わずかに苦痛:日常の機能を妨げる場合がある。
重症度=3:軽度に苦痛/傷害性:軽度に苦痛の掻痒。幾分か又は時折、日常の機能を妨害する。
重症度=4:中程度の苦痛/傷害性:中程度に苦痛の重症度。明らかな機能上の帰結による中断(すなわち、自己掻痒/かきむしりの結果として、数日は計画されていたイベントを予定変更することを必要とした)。
重症度=5:顕著に苦痛/傷害性:顕著に苦痛。不快感が、日常生活の機能を顕著な程度まで妨げることがよくある(すなわち、計画をキャンセルし、自己掻痒/掻きむしりの結果として、働くこと又は生産活動を行うことが不能)。
重症度=6:重度に傷害性:ほとんどの日で掻痒の重度の苦痛。機能を妨げる(すなわち、自己掻痒/掻きむしりの結果として、計画を立てること又は生産的であることを期待することがもはやない)。
重症度=7:最も重度に傷害性の中に含まれる:最重度の容赦ない掻痒により、通常の日常機能が不可能。自己掻痒/掻きむしりの結果として、本質的に身体障害。
【0229】
2.疲労感
疲労感の提案プロンプティング質問:
どの程度の頻度で(何日くらい)無理にベッドから出なければなりませんか?
日中に睡眠/昼寝をする必要がありますか?
どの程度の頻度で疲労感により日課が妨げられましたか?どのように?例を挙げて下さいますか?
どの程度の頻度で疲労困憊を感じますか?説明してください。
行う必要がある物事を無理にしなければならないほど、疲れを感じますか?
通常よりも早くベッドに行かねばならなかったほど、疲れを感じたことがありますか?
疲労感が突然やってくる場合がありますか?
PBCによりエネルギーを消耗したように感じる場合がありますか?過去1か月から例を挙げてください?
物事を行うのに長時間を要すると感じますか?例を挙げてください。どのぐらい長いですか?毎日ですか?
忙しい1日の後、回復するには少なくとももう1日必要とすることが起こりますか?どの程度の頻度ですか?最近の例を挙げて下さいますか?
物事を成し遂げることができるようにあなた自身をペース調整する必要がありますか?
重症度=1:正常、まったく傷害性無し:正常;標準。
重症度=2:ボーダーライン、わずかに苦痛:日常の機能を妨げる場合がある。
重症度=3:軽度に苦痛/傷害性:全体的に軽度の重症度又は中程度の重症度の1つの疲労感症状又は時折重度。日常の機能を軽度に妨げる。
重症度=4:中程度の苦痛/傷害性:2つ以上の症状に対する中程度に苦痛の疲労感重症度。明らかな機能上の帰結(すなわち、数日は計画されていたイベントを予定変更することを必要とした)。
重症度=5:顕著に苦痛/傷害性:様々な形で反映された顕著に苦痛である疲労感症状。不快感が、日常生活の機能を顕著な程度まで妨げることがよくある(すなわち、計画をキャンセルし、働くこと又は生産活動を行うことが不能)。
重症度=6:重度に傷害性:ほとんどの日に広く反映された重度の疲労感。ほとんどの日、日常の機能を妨げる(すなわち、結果として、計画を立てること又は生産的であることを期待することがもはやない)。
重症度=7:最も重度に傷害性の中に含まれる:最重度の疲労感、易疲労性、エネルギー不足により大半の通常の日常機能が不可能。易疲労性及びその帰結の結果として、本質的に身体障害。
【0230】
3.認知症状
認知症状の提案プロンプティング質問:
PBCが理由で集中力の持続時間が短いと感じたことはありますか。例を挙げて説明してください。それは毎日ですか?
日毎に物事を記憶するのが困難であったことがありますか?記憶することができませんか又はなんらかの努力で対処することができますか?どの程度の努力ですか?
会話についていくことが困難であると認識したことはありますか?これは会話に問題があるからですか?説明いただけますか?
集中することが困難であると認識しますか?
したかったことを思い出すことが困難であると認識することが多いですか?
重症度=1:正常、まったく傷害性無し:正常;標準。
重症度=2:ボーダーライン、わずかに苦痛:日常の機能を妨げる場合がある。機能することには努力が必要である場合がある。
重症度=3:軽度に苦痛/傷害性:記憶力及び/又は集中力の問題は、ほとんどの時間軽度であるが、断続的に中程度に重度である。機能することには努力が必要であることが多い。週に約1回、日常の機能を妨げる。
重症度=4:中程度の苦痛/傷害性:中程度に重度の記憶力及び/又は集中力の問題。明らかな機能上の帰結(すなわち、数日は計画されていたイベントを予定変更することを必要とした)。
重症度=5:顕著に苦痛/傷害性:顕著に重度の記憶力及び/又は集中力の問題。多くの場合、日常生活の機能を顕著な程度まで妨げる(すなわち、計画をキャンセルし、働くことが幾日も不能又は生産活動を行うことが幾日も不能)。
重症度=6:重度に傷害性:ほとんどの日に極度に重度の記憶力及び/又は集中力の問題が感じられる。ほとんどの日、日常機能を妨げる。(すなわち、結果として、計画を立てること又は生産的であることを期待することがもはやない)。
重症度=7:最も重度に傷害性の中に含まれる:集中力及び記憶力に影響を与える最重度の主観的認知機能傷害により、大半の通常の日常機能が不可能。認知機能傷害及びその帰結の結果として、本質的に身体障害。
【0231】
4.心理社会的帰結
心理社会的帰結の提案プロンプティング質問:
PBCを有することが理由で家族を無視していると感じたことはありますか?最近のいくつかの例は何ですか?
PBCを有することが理由で、かつては行っていた物事を行うことができないことに罪悪感を感じる場合がありますか?過去1か月でできなかったことで、罪悪感を感じさせたいくつかの物事は何ですか?
過去1か月の間、PBCを有することによって性生活が悪影響を受けたことがありますか?
過去1か月の間、PBCを有するために外出し楽しむことができないことに欲求不満を感じたことがありますか?例を1つか2つ挙げて下さい?
PBCを有するという事実を胸に秘める傾向がありますか?もしそうなら、なぜですか?
PBCを有することが休暇の計画を立てることをできなくしたと感じますか?このようなことが、過去1か月にわたり、あなたの社会生活にどのように影響しましたか?過去1か月にわたりPBCにより影響を受けないままであった、あなたの生活に関し何らかの部分がありますか?
まだ普通の生活を送ることができますか?PBCはあなたの人生の質を低下させたことがありますか?どのように?過去1か月からいくつかの例を挙げて下さいますか?
重症度=1:正常、まったく傷害性無し:正常;標準。
重症度=2:ボーダーライン、わずかに苦痛:日常の機能を妨げる場合がある。
重症度=3:軽度に苦痛/傷害性:PBCを伴う心理的又は社会的帰結に関し、全体的に軽度の重症度又は断続的に中程度の重症度、又は時折非常に重度。
重症度=4:中程度の苦痛/傷害性:中程度に重度の心理社会的帰結。苦痛又は孤立により、機能上の帰結が時折もたらされる(すなわち、当月数日は、通常に社会的に相互作用的であることが不能)。
重症度=5:顕著に苦痛/傷害性:顕著に重度の心理社会的帰結。苦痛又は孤立が日常生活の機能を顕著な程度まで妨げることがよくある(すなわち、計画をキャンセルし、多くの場合、通常に社会的に相互作用的であることが不能)。
重症度=6:重度に傷害性:ほとんどの日に重度の心理社会的帰結が感じられる。苦痛又は孤立のレベルが、ほとんどの日、日常機能を妨げる。(すなわち、結果として、計画を立てること又は通常に社会的に相互作用することを期待することがもはやない)。
重症度=7:最も重度に傷害性の中に含まれる:ほとんどの日で苦痛及び/又は孤立を引き起こす最重度の心理社会的帰結により、通常の社会的関係が不可能。重度の心理社会的苦痛及び/又は孤立の結果として、本質的に身体障害。
【0232】
5.情緒的苦痛
情緒的苦痛の提案プロンプティング質問:
PBCが理由で、以前受けていたよりも物事についていっそうストレスを受けるようになりましたか?過去1か月からいくつかの例を挙げて下さいますか?
PBCを有することで精神的に落ち込みますか?これについて説明いただけますか?
PBCが将来どうなるか心配しますか?PBCはどのように影響を及ぼすことになりますか?どの程度の頻度でこのことについて心配しますか?
重症度=1:正常、まったく傷害性無し:正常;標準。
重症度=2:ボーダーライン、わずかに苦痛:時折の苦痛。日常の機能を妨げる場合がある。
重症度=3:軽度に苦痛/傷害性:軽度の一貫した情緒的苦痛又は中程度に重度の断続的な情緒的苦痛。
重症度=4:中程度の苦痛/傷害性:中程度に重度の情緒的苦痛。苦痛そのものが機能上の帰結を時折もたらす(すなわち、数日は、情緒的苦痛により機能が損なわれる)。
重症度=5:顕著に苦痛/傷害性:週に数回、顕著に重度の情緒的苦痛が感じられ、多くの場合、機能上の帰結をもたらす(すなわち、計画をキャンセルし、多くの場合、通常に社会的に相互作用的であることが不能)。
重症度=6:重度に傷害性:ほとんどの日で、重度の情緒的苦痛が感じられる。悲しみ、情緒的ストレス、将来についての心配のレベルが、ほとんどの日で日常機能を妨げる。
重症度=7:最も重度に傷害性の中に含まれる:事実上継続的な、最重度の情緒的苦痛。悲しみ、情緒的ストレス、将来についての心配のレベルが、ほぼ完全な障害性の原因である。
【0233】
6.PBCの典型的な身体症状
身体症状の提案プロンプティング質問:
どの程度まで好きなものを食することができたか?
僅かな量を飲む場合に膨満感を感じますか?説明いただけますか?(どの程度飲み、どの程度膨満し、どの程度の頻度ですか?)
アルコールによりどのような気分になりますか?過去1か月にアルコールを飲んだことがありますか?なぜ飲んだのですか/なぜ飲まなかったのですか?「はい」の場合、どのような気分になりましたか?
身体的不快感を有したことがありますか?(右側により多いですか?)重度及び頻度について説明いただけますか。
ドライアイを有したことがありますか?(「はい」の場合は、説明いただけますか。重度及び頻度も含めてください)。
口が乾いたことがありますか?(「はい」の場合は、説明いただけますか。重度及び頻度も含めてください)。
腕及び脚の長骨に疼痛を有したことがありますか?(「はい」の場合は、説明いただけますか。重度及び頻度も含めてください)。
重症度=1:正常、まったく傷害性無し:正常;標準。
重症度=2:ボーダーライン、わずかに苦痛:日常の機能を妨げる場合がある。
重症度=3:軽度に苦痛/傷害性:1つの症状に関して、軽度に苦痛な症状、又は中程度に苦痛。日常の機能を軽度に妨げる。
重症度=4:中程度の苦痛/傷害性:2つ以上の症状で中程度に苦痛の重症度。明らかな機能上の帰結(すなわち、数日は計画されていたイベントを予定変更することを必要とした)。
重症度=5:顕著に苦痛/傷害性:2つ以上の症状で顕著な苦痛。痛み又は不快感が日常生活の機能を顕著な程度まで妨げることがよくある(すなわち、計画をキャンセルし、働くこと又は生産活動を行うことが不能)。
重症度=6:重度に傷害性:ほとんどの日で、2つ以上の症状での重度の苦痛。ほとんどの日で、日常機能を妨げる。ほとんどの日で、機能は顕著に影響を受ける(すなわち、結果として、計画を立てること又は生産的であることを期待することがもはやない)。
重症度=7:最も重度に傷害性の中に含まれる:最重度の痛み、不快感又は身体症状により、通常の日常機能が不可能。身体症状の結果として、本質的に身体障害。
【0234】
臨床医は最終的に、各PBC-40領域要素の評価に基づいて合計スコアを合計することになる。
【0235】
選択基準
1.3つの鍵となる疾患特徴のうちの2つの存在に基づいたPBCの確定診断:
1.1/40以上の力価にてのAMA(抗ミトコンドリア抗体)又はPBC特異的ANA(抗核抗体);
2.アルカリホスファターゼの上昇(関連検査室の正常値の上限(uln)を超える);
3.適合性肝生検又は診断用肝生検。
2.臨床的に重大な認知症状のセッティング(PBC-40認知領域≧15)における臨床的に重大な疲労感(本試験の目的では、スクリーニング時の≧28のPBC-40疲労感領域スコアと定義);
3.3か月間安定したUDCA用量(13~15mg/Kgのいずれか)、又は不耐容の場合はUDCAはない;
4.妊娠の可能性のある女性の場合:処置期間の全継続期間にわたって妊娠を避けるために、有効性の高い避妊法を使用すること又は性的禁欲を実践することを望む場合。
5.年齢は≧18歳及び≦75歳(男性と女性の両方)。
【0236】
除外基準
1.肝硬変チャイルド・ピューB又はC症;
2.代償不全の臨床的証拠(肝性脳症又は静脈瘤出血);
3.肝細胞癌の病歴;
4.ビリルビン>1.5×ULN;
5.胆管閉塞の証拠;
6.慢性疲労感によって特徴付けられる合併症;
7.疲労感又は認知機能傷害を引き起こすことが知られている処方薬又は市販薬の定期的な使用(これには、それらに限定されないが、ベンゾジアゼピン、リン酸コデイン以外のアヘン剤、睡眠薬、定期的な(毎日の)抗ヒスタミン薬の使用(過去4週間における定期的な毎日の抗ヒスタミン薬の使用)、抗精神病剤又は嗜好用薬物の使用が含まれる);
8.治験の継続期間内にPBC医薬品の予測される変化;
9.推奨安全性限界値(1週間あたり14ユニット)を超える定期的(1か月あたり2週間以上)のアルコール消費;
10.別の介入治験への積極的な参加、又は半減期の5倍以内に別の実験薬への曝露;
11.妊娠又は妊娠を計画している;
12.AIH重複の臨床診断;
13.別の病因の併発肝疾患;
14.治験責任医師の見解で患者の安全性及び/又は試験結果の解釈を損なう可能性がある併発の病気。
図1
図2
【国際調査報告】