(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】抗原に露出されたCD8 T細胞の活性化及び増殖方法、そして、それにより製造された抗ガン活性が強化されたCD8 T細胞及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240327BHJP
C12N 5/16 20060101ALI20240327BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240327BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240327BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240327BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240327BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240327BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240327BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240327BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240327BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240327BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240327BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240327BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240327BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240327BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240327BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20240327BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N5/16
A61P37/02
A61K35/17
A61K48/00
A61P35/00
A61P31/10
A61P31/04
A61P31/12
A61P33/00
A61P35/02
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N15/86 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563002
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 KR2022003482
(87)【国際公開番号】W WO2022220412
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0047002
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523387448
【氏名又は名称】メドジーン セラピューティックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ノ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ナ,ジン ウ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BC01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZB321
4C084ZB322
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZB371
4C084ZB372
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB65
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB32
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZB37
(57)【要約】
本発明は、細胞活性化の方法及びそれにより活性化された細胞及びその用途に関するものであって、より具体的には、個体から分離されたCD8 T細胞、CD8 T細胞を含む細胞集団、またはCD8 T細胞を遺伝的に形質転換したCAR-CD8 T細胞などでKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件での疲弊段階CD8 T細胞の機能向上、回復及び増殖方法、方法によって、Klf4タンパク質が過発現されて抗ガン活性が強化されたCD8 T細胞及びその用途を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)個体から分離されたCD8 T細胞、b)前記CD8 T細胞を含む細胞集団、及びc)前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞で構成される群から選択される細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む、試験管内の条件でのCD8 T細胞の疲弊状態の抑制方法。
【請求項2】
a)個体から分離されたCD8 T細胞、b)前記CD8 T細胞を含む細胞集団、及びc)前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞で構成される群から選択される細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む、試験管内の条件でのCD8 T細胞の増殖方法。
【請求項3】
a)個体から分離されたCD8 T細胞、b)前記CD8 T細胞を含む細胞集団、及びc)前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞で構成される群から選択される細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む、試験管内の条件でのCD8 T細胞の抗ガン免疫反応の強化方法。
【請求項4】
前記Klf4タンパク質の過発現は、Klf4タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターで前記CD8 T細胞を形質感染させるか、Klf4誘導剤を前記CD8 T細胞に処理することで達成される、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記発現ベクターは、ウイルス性ベクターまたは非ウイルス性ベクターである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルス性ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラドボウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非ウイルス性ベクターは、mRNA、DNAベクター、ナノ粒子、カチオン性ポリマー、エクソソーム、細胞外小胞またはリポソームである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記mRNAは、前記Klf4タンパク質を暗号化するmRNA単独または前記mRNA以外の前記非ウイルス性ベクターとの組み合わせで使われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記発現ベクターは、1つまたは2つ以上の免疫増強ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫増強ペプチドは、CD28、ICOS、CTLA4、PD1、BTLA、DR3、4-1BB、CD2、CD40、CD40L、CD30、CD27、SLAM、2B4(CD244)、NKG2D/DAP12、TIM1、TIM2、TIM3、TIGIT、CD226、CD160、LAG3、B7-1、B7-H1、GITR、Flt3リガンド、フラジェリン、HVEMまたはOX40Lの細胞質ドメインまたはこれらのうち、2つ以上の連結体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記Klf4誘導剤は、APTO-253である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
Klf4遺伝子が過発現されたCD8 T細胞を有効成分として含む、癌治療用薬学的組成物。
【請求項13】
前記Klf4遺伝子が過発現されたCD8 T細胞は、治療を必要とする個体から分離された自家由来CD8 T細胞または他人から分離された他家由来CD8 T細胞である、請求項12に記載の癌治療用薬学的組成物。
【請求項14】
前記Klf4遺伝子が過発現されたCD8 T細胞は、CD8 T細胞に対するKlf4遺伝子が含まれた発現ベクターの形質導入及び/または前記CD8 T細胞に対するKlf4誘導剤の処理によって製造される、請求項13に記載の癌治療用薬学的組成物。
【請求項15】
Klf4遺伝子が過発現されるように形質転換された、形質転換CD8 T細胞。
【請求項16】
個体から分離されたCD8 T細胞またはそれを含む細胞集団を宿主細胞として前記宿主細胞にKlf4タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターを形質導入することで製造される、請求項15に記載の形質転換CD8 T細胞。
【請求項17】
前記発現ベクターは、ウイルス性ベクターまたは非ウイルス性ベクターである、請求項15に記載の形質転換CD8 T細胞。
【請求項18】
前記ウイルス性ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラドボウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、請求項17に記載の形質転換CD8 T細胞。
【請求項19】
前記非ウイルス性ベクターは、mRNA、DNAベクター、ナノ粒子、カチオン性ポリマー、エクソソーム、細胞外小胞またはリポソームである、請求項17に記載の形質転換CD8 T細胞。
【請求項20】
前記mRNAは、Klf4タンパク質を暗号化するmRNA単独または前記mRNA以外の前記非ウイルス性ベクターとの組み合わせで使われる、請求項19に記載の形質転換CD8 T細胞。
【請求項21】
外来性Klf4タンパク質及びキメラ抗原受容体(CAR)が発現されるように形質転換された、形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項22】
前記CARは、一本鎖基盤の抗体類似体-細胞膜通過ドメイン-補助刺激因子-細胞内信号伝達ドメインを含む融合タンパク質である、請求項21に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項23】
前記一本鎖基盤の抗体類似体は、癌抗原または病原体由来の抗原に対して特異的に結合する抗体類似体である、請求項22に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項24】
前記癌抗原は、EpCAM、Trop-2、CEACAM5、CEACAM6、癌胚芽性抗原(CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、Her2/neu、MUC-1、BCR/ABL、α-フェトプロテイン(AFP)、LMP2aのようなエプスタイン-バーウイルス(EBV)由来の抗原、B型ヒト肝炎ウイルス(HBV)由来の抗原、C型ヒト肝炎ウイルス(HCV)由来の抗原、Proteinase 3、WT-1、PAP、G250、メラノーマ抗原遺伝子(MAGE)、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、チロシナーゼ、チロシナーゼ-関連タンパク質-1(TRP-1)、TRP-2、gp100、MART-1、Ig Idiotype、CDK4、caspase-8、β-catenin、BCR/ABL、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV E6/E7)、HHV-8、5T4、p53、癌抗原125(CA-125)、癌抗原-72-4(CA-72-4)、癌抗原-15-3(CA-15-3)、または癌抗原-19-9(CA-19-9)である、請求項23に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項25】
前記病原体由来の抗原は、病原性微生物、ウイルスまたは寄生虫由来の抗原である、請求項23に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項26】
前記病原性微生物は、病原性細菌または病原性真菌である、請求項25に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項27】
前記病原性細菌は、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、ヘリコバクター・ピロリ、肺炎球菌、結核菌、コレラ、ブドウ球菌、赤痢菌、ボレリア菌またはサルモネラ菌である、請求項26に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項28】
前記病原性真菌は、カンジダ菌、トリコフィトン菌、アスペルギルス菌、Fonsecaea sp.、Epidermophyton sp.、Piedraia sp.、Malassezia sp.、Pseudallescheria sp.、Basidiobolus sp.、Conidiobolus sp.、Rhinosporidium sp.、Paracoccidioides sp.、Cryptococcus sp.、Blastomyces sp.、Sporothrix sp.、Mucor sp.、Absidia sp.、Rhizopus sp.、Pneumocystis sp.、Wangiella sp.、Phialophora sp.、Schizophyllum sp.である、請求項26に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項29】
前記ウイルスは、インフルエンザウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、水疱性口内炎ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、A型肝炎ウイルス抗原(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎C(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、G型肝炎ウイルス(HGV)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、ヘルペスシンプレックスウイルス、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)である、請求項25に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項30】
前記一本鎖基盤の抗体類似体は、scFv、sdAb、V
HH、V
NAR、Affibody、Affilin、Affimer、Affitin、Alphabody、Anticalin、Avimer、DARPin、Fynomer、Kunitz domain peptide、monobody、nanoCLAMP、可変リンパ球受容体(VLR)またはrepebodyである、請求項22に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項31】
前記細胞膜通過ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CDl la、CDl lb、CDl lc、CDl ld、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共同刺激子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGBl、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能-関連抗原-1(LFA-1;CDl-la/CD18)、MHC部類1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム化された死滅-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、信号伝達リンパ球性活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Lyl08)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、トールリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、またはVLA-6由来の膜通過ドメインである、請求項22に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項32】
前記補助刺激ドメインは、CD28、ICOS、CTLA4、PD1、BTLA、DR3、4-1BB、CD2、CD40、CD30、CD27、SLAM、2B4(CD244)、NKG2D/DAP12、TIM1、TIM2、TIM3、TIGIT、CD226、CD160、LAG3、B7-1、B7-H1、GITR、HVEMまたはOX40L(CD252)の細胞質ドメインまたはこれらのうち、2つ以上の連結体である、請求項22に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項33】
前記細胞内信号伝達ドメインは、CD3ζ、CD28、CD27、OX40/CD134、4-1BB/CD137、FcεRIγ、ICOS/CD278、IL-2Rβ/CD122、IL-2Rα/CD132、DAP10、DAP12、そして、CD40のうちから1つまたはそれ以上の細胞質内ドメインの一部または全部を含む、請求項22に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞。
【請求項34】
請求項14に記載の形質転換CD8 T細胞または請求項21に記載の形質転換CAR-CD8 T細胞を有効成分として含む、組成物。
【請求項35】
先天性免疫反応が必要な疾患の治療に使われる、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記先天性免疫反応が必要な疾患は、癌、細菌性感染症、真菌性感染症、ウイルス感染症または寄生虫感染症である、請求項35に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、細胞増殖と活性化方法及びそれにより活性化された細胞及びその用途に係り、より具体的には、抗原に慢性的に露出されたCD8 T細胞の活性化と増殖方法及びそれにより製造された抗ガン活性が強化されたCD8 T細胞及びその用途に関する。
[背景技術]
腫瘍組織内に存在するCD8 T細胞は、癌細胞の抗原を認知して活性化された後、グランザイムB(Granzyme B)、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、パーフォリン(Perforin)のような活性サイトカイン(Effector Cytokine)を分泌することにより、癌細胞を除去する機能を有している。したがって、腫瘍組織内のCD8 T細胞の活性を高めれば、効果的に癌を制御することができる。しかし、一般的な免疫反応とは異なって、癌という特殊な環境では、この免疫細胞が癌抗原に持続的に露出されながら、その特性が変化してしまい、これらの活性を制御することは遥かに難しいと知られている。
【0002】
癌環境内では、持続して存在する癌細胞抗原の慢性的な刺激によってCD8 T細胞で疲弊現象(Exhaustion)が起こる。このように疲弊したCD8 T細胞は、正常な活性サイトカイン分泌及び細胞分裂機能が弱化して正常な免疫反応を行うことができず、癌細胞を効率的に除去することができなくなる。特に、このように疲弊したCD8 T細胞は、時間が過ぎても、再び正常な機能を有する細胞に容易に戻ることができない特性を有する。したがって、腫瘍組織内のCD8 T細胞の疲弊現象を防ぎ、疲弊した細胞の機能を活性化させることが、癌を制御するにあたり核心的要素であると言える。最近の研究結果として抗原に持続的に露出されたCD8 T細胞は、数段階の疲弊過程を経るサブセット細胞グループで構成されていることが知られた。慢性前駆細胞サブセット(疲弊前駆細胞1、疲弊前駆細胞2)、慢性エフェクター細胞サブセット(中間疲弊細胞)及び末期疲弊細胞サブセット(末期疲弊細胞)などである。これらのうち、慢性エフェクター細胞は、癌細胞を認識して除去するエフェクター機能を有しているが、末期疲弊細胞は、その機能を相当部分喪失した状態と知られている。一般的に、癌組織に存在するCD8 T細胞は、ほとんど末期疲弊状態において免疫機能が十分に作動しないと知られている。したがって、癌細胞に特異的なCD8 T細胞から慢性エフェクター細胞への発生及び機能を促進させる方法を開発するならば、それを癌細胞制御に効果的に活用することができる。
【0003】
CD8 T細胞を利用した抗ガン治療と関連して、米国特許US8106092は、2次癌を有した個体に局所的及び/または腫瘍内にingenol-3-angelateを投与することにより、癌細胞の一次的壊死を誘導し、CD8 T細胞のような抗ガン-特異的T細胞の生成を促進する2次癌の治療方法が開示されており、米国特許公開公報US20190218515Aは、癌患者から分離されたT細胞を癌細胞とCD123/CD3に対する二重特異性抗体、CD19/CD3に対する二重特異性抗体またはEpCAM/CD3に対する二重特異性抗体と共に反応させて活性化されたT細胞を生産する方法が開示されている。
【0004】
一方、T細胞治療剤は、現在まで3世代まで開発されているが、第1世代T細胞治療剤は、血液または癌組織内に存在するあらゆるT細胞(bulk T cells)を増殖させて患者に投与したために、癌細胞に対する特異性が低くて効力を期待することができず、第2世代T細胞治療剤は、腫瘍抗原特異的T細胞のみ(Ag-specific T cells)を分離/大量培養して癌患者に投与する方法で増進した治療効果を示したが、培養基間が長く、工程が複雑であるという問題が台頭し、第3世代T細胞治療剤は、1)特定の癌抗原を認識するTCR遺伝子をT細胞に直接導入するか、2)特定の抗原を認識する単クローン抗体の抗原認識部位(scFv)にT細胞活性化ドメイン(T cell activation domain)を結合させてT細胞に導入することにより、抗原特異性を高め、製造期間を短縮しただけではなく、その治療効能も非常に優れて、一部の白血病及びリンパ腫で100%に近い治療効果を誘導した。そのうち、二番目の形態の第3世代T細胞治療剤は、いわゆるキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、以下、「CAR」と略称する)を発現するように遺伝子組み換えされたことを特徴としている。
【0005】
前記CAR導入T細胞技術に基づいて最もリードしている企業は、米国のNovartis,Juno Therapeutics社、そして、Kite Pharma社であって、いずれもB細胞特異抗原であるCD19を標的化するCAR導入T細胞を開発し、抵抗性/再発性急性リンパ球性白血病(ALL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)で80~90%に迫る高い治療率を示して、標的指向性免疫細胞治療剤分野の先頭走者として位置づけられて(Hartmann et al.,EMBO Mol.Med.9(9):1183-1197,2017)おり、最近、韓国ノバルティス(株)が許可申請した世界最初キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)治療剤「キムリア(登録商標)(チサゲンレクルーセル)」を「先端再生バイオ法」による第1号先端バイオ医薬品として許可さされている。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
しかし、前記先行技術も、体内でCD8 T細胞が疲弊する現象を考慮せず、これらの特定化された細胞を活用するか、この状態を克服することを目標としていないという限界点を有している。
【0006】
本発明は、前記問題点を含む多様な問題点を解決するためのものであって、CD8 T細胞の生体内の疲弊過程を調節して癌を制御することができる方法及び組成物を提供することを目的とする。しかし、前記目的によって、本発明の範囲が制限されるものではない。
[課題を解決するための手段]
本発明の一観点によれば、a)個体から分離されたCD8 T細胞、b)前記CD8 T細胞を含む細胞集団、及びc)前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞で構成される群から選択される細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件でのCD8 T細胞の疲弊状態の抑制方法が提供される。
【0007】
本発明の一観点によれば、a)個体から分離されたCD8 T細胞、b)前記CD8 T細胞を含む細胞集団、及びc)前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞で構成される群から選択される細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件でのCD8 T細胞の免疫反応の強化方法が提供される。
【0008】
本発明の一観点によれば、a)個体から分離されたCD8 T細胞、b)前記CD8 T細胞を含む細胞集団、及びc)前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞で構成される群から選択される細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件でのCD8 T細胞の増殖方法が提供される。
【0009】
本発明の他の一観点によれば、Klf4タンパク質が過発現されるように形質転換された形質転換CD8 T細胞またはKlf4タンパク質及びキメラ抗原受容体が過発現されるように形質転換された形質転換CAR-CD8 T細胞を有効成分として含む癌治療用薬学的組成物が提供される。
【0010】
本発明の他の一観点によれば、Klf4タンパク質が過発現されるように形質転換された形質転換CD8 T細胞が提供される。
【0011】
本発明の他の一観点によれば、外来性Klf4タンパク質及びキメラ抗原受容体(CAR)が発現されるように形質転換された形質転換CAR-CD8 T細胞が提供される。
【0012】
本発明の他の一観点によれば、前記形質転換CD8 T細胞または形質転換CAR-CD8 T細胞を含む組成物が提供される。
【0013】
本発明の他の一観点によれば、癌にかかった個体から分離されたCD8 T細胞または前記CD8 T細胞を含む細胞集団でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階;及びKlf4タンパク質が過発現されたCD8 T細胞または前記CD8 T細胞を含む細胞集団を前記個体に投与する段階;を含む前記個体の癌の治療方法が提供される。
[発明の効果]
本発明の一実施例による方法は、免疫細胞の疲弊現象を防止することにより、より効率的な抗ガン細胞治療剤の開発に有用に使われる。
[図面の簡単な説明]
[
図1A]本発明の一実施例によるCD8 T細胞に対する抗原の反復刺激試験の設計を概略的に示す概要図である。
[
図1B]前記
図1Aの実験設計によって行われた実験結果であって、抗原の刺激程度によるCD8 T細胞の疲弊状態に関するマーカーであるTox(左側)及びKlf4(右側)のmRNAレベルでの発現程度を測定した結果を示す一連のグラフである。
[
図1C]マウスにMC38大腸癌細胞を注入して誘発された癌組織及び脾臓に存在する多様な段階のCD8 T細胞サブセットに対するマーカー表現型を示す概要図である。
[
図1D]これらのCD8 T細胞の各サブセットのKlf4タンパク質発現程度をmRNAレベルで測定した結果を示すグラフである。
[
図2Aないし
図2E]本発明の一実施例によって、対照群レトロウイルスベクター(MigRI)に形質転換されたCD8 T細胞またはKlf4遺伝子を含むレトロウイルスベクター(Klf4)に形質転換されたCD8 T細胞の特性を分析したものであって、対照群(MigRI)とKlf4の本発明の一観点によれば、個体から分離されたCD8 T細胞、前記CD8 T細胞を含む細胞集団、または前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件での前記CD8 T細胞の疲弊状態の抑制方法が提供される。
図2Aは、電子によって形質転換されたCD8 T細胞を前述したサブセットのマーカーを用いてFACS分析で分析した結果を示すものであり、
図2Bは、対照群(MigRI)とKlf4遺伝子に形質転換されたCD8 T細胞とターゲット癌細胞とを共に培養した時、死んでいる癌細胞の比率をFACS分析を通じて分析した結果に係わるグラフであり、
図2Cは、対照群(MigRI)とKlf4遺伝子に形質転換されたCD8 T細胞でのKlf4(左側)及びTox(右側)の遺伝子発現レベルをmRNAレベルで測定した結果を示すグラフであり、
図2Dは、対照群(MigRI)及びKlf4遺伝子に形質転換されたCD8 T細胞(Klf4)でのグランザイムBの発現程度をFACS分析で分析して、各細胞(MigRI GFP
-、MigRI GFP
+、Klf4 GFP
-、Klf4 GFP
+)でCD8 T細胞の標的細胞殺害機能に核心的なグランザイムBを発現する細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示し、
図2Eは、対照群(MigRI)及びKlf4遺伝子に形質転換されたCD8 T細胞の機能に核心的なIFN-γの発現程度をFACS分析で分析して、各細胞(MigRI GFP
-、MigRI GFP
+、Klf4 GFP
-、Klf4 GFP
+)でIFN-γを発現する細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示す。
[
図3A]本発明の一実施例によって、Klf4遺伝子が形質導入されたCD8 T細胞を利用した動物実験の投与スケジュールを概略的に示す概要図である。
[
図3B]対照群とKlf4遺伝子が形質導入されたCD8 T細胞のKlf4遺伝子の発現レベルをmRNAレベルで測定した結果を示すグラフである。
[
図3C]対照群(MigRI)及び本発明の一実施例によって、Klf4遺伝子が形質導入されたCD8 T細胞が投与された癌モデル動物での経時的な腫瘍組織の体積の変化を示すグラフである。
[
図3D]前記動物実験後、犠牲になった動物の腫瘍組織から分離されたCD8 T細胞サブセットで細胞分裂程度を示すKi-67発現程度をFACS分析で分析したものであって、分離されたCD8 T細胞のマーカー表現型による全体CD8 T細胞のうち、Ki-67発現細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示す。
[
図3E]前記動物実験後、犠牲になった動物の腫瘍組織から分離されたCD8 T細胞のグランザイムB発現程度をFACS分析で分析して、分離されたCD8 T細胞のマーカー表現型による全体CD8 T細胞のうち、グランザイムB発現細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示す。
[
図3F]前記動物実験後、犠牲になった動物の腫瘍組織から分離されたCD8 T細胞のTNF-α及びINF-γ発現程度をFACS分析で分析して、分離されたCD8 T細胞のマーカー表現型による全体CD8 T細胞のうち、TNF-α及びINF-γ発現細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示す。
[
図4A]本発明の一実施例によって、APTO-253が処理されたCD8 T細胞を利用した動物実験の投与スケジュールを概略的に示す概要図である。
[
図4B]対照群(PBS)とAPTO-253とが処理されたCD8 T細胞を投与した実験動物でKlf4遺伝子の発現レベルをmRNAレベルで測定した結果を示すグラフである。
[
図4C]対照群(PBS)及び本発明の一実施例によって、APTO-253が処理されたCD8 T細胞が投与された癌モデル動物での経時的な腫瘍組織の体積の変化を示すグラフである。
[
図5]本発明の一実施例による多様なCARコンストラクト(EpCAM CAR、Trop-2 CAR、CEACAM6 CAR及びCEACAM5 CAR)の構造を概略的に示す概要図である。
[発明を実施するための形態]
本発明の一観点によれば、a)個体から分離されたCD8 T細胞、b)前記CD8 T細胞を含む細胞集団、及びc)前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞で構成される群から選択される細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件でのCD8 T細胞の疲弊状態の抑制方法が提供される。
【0014】
本発明の一観点によれば、a)個体から分離されたCD8 T細胞、b)前記CD8 T細胞を含む細胞集団、及びc)前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞で構成される群から選択される細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件でのCD8 T細胞の免疫反応の強化方法が提供される。
【0015】
本発明の一観点によれば、a)個体から分離されたCD8 T細胞、b)前記CD8 T細胞を含む細胞集団、及びc)前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞で構成される群から選択される細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件でのCD8 T細胞の増殖方法が提供される。
【0016】
前記方法において、前記Klf4タンパク質の過発現は、Klf4タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターで前記CD8 T細胞を形質感染させるか、前記CD8 T細胞にKlf4タンパク質を発現するmRNAを導入するか、Klf4誘導剤を前記CD8 T細胞に処理することで行われる。前記Klf4タンパク質は、配列番号4または配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含み、前記Klf4タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号6に記載される核酸配列を含みうる。しかし、本発明が、前記特定の配列に限定されるものではなく、他の哺乳動物由来のものであれば、如何なるものでも使われ、望ましくは、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、基本猿、カニクイ猿、赤猿のような霊長類由来のKlf4タンパク質またはそれを暗号化する核酸分子が使われる。
【0017】
前記方法において、前記発現ベクターは、ウイルス性ベクターまたは非ウイルス性ベクターであり、前記ウイルス性ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラドボウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり、前記非ウイルス性ベクターは、DNAベクター、ナノ粒子、カチオン性ポリマー、エクソソーム、細胞外小胞またはリポソームであり、前記DNAベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージミドベクターまたは人工ヒト染色体である。
【0018】
前記発現ベクターは、前記CD8 T細胞内で前記Klf4タンパク質が過発現されるように前記Klf4タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドに連結される適切な調節配列を含み、前記調節配列は、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結され、この場合、調節配列とそれに作動可能に連結されたポリヌクレオチドとを統合して「遺伝子コンストラクト」と称する。前記遺伝子コンストラクトは、発現ベクター内に適切なクローニングのために両末端に切実な制限酵素認識部位を含みうる。
【0019】
本明細書で使われる用語「作動可能に連結された(operably linked to)」とは、目的とする核酸配列(例えば、試験管内の転写/翻訳システムで、または宿主細胞で)が、その発現が行われるようにする方式で前記調節配列に連結されているということを意味する。前記「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー及び他の調節要素(例、ポリアデニル化信号)を含む意味である。調節配列には、多くの宿主細胞で目的とする核酸が恒常的に発現されるように指示すること、特定の組織細胞のみで目的とする核酸が発現されるように指示すること(例、組織特異的調節配列)、そして、特定の信号によって発現が誘導されるように指示すること(例、誘導性調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択及び所望のタンパク質発現のレベルのような因子によって変わるということは、当業者であれば、理解することができる。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入されて前記融合タンパク質を発現することができる。前記真核細胞及び原核細胞での発現を可能にする調節配列は、当業者によく知られている。前述したように、これらは、通常、転写開始を担当する調節配列及び、選択的に転写物の転写終結及び安定化を担当するポリ-A信号を含む。追加的な調節配列は、転写調節因子以外にも翻訳増進因子及び/または天然-組み合わせまたは異種性プロモーター領域を含みうる。例えば、哺乳類宿主細胞で発現を可能にする可能な調節配列は、CMV-HSVチミジンキナーゼプロモーター、SV40、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、ヒト腎臓要素1α-プロモーター、グルココルチコイド-誘導性MMTV-プロモーター(モロニーマウス腫瘍ウイルス)、メタロチオネイン-誘導性またはテトラサイクリン-誘導性プロモーター、または、CMV増幅剤またはSV40-増幅剤のような増幅剤を含む。神経細胞内の発現のために、神経微細繊維-プロモーター(neurofilament-promoter)、PGDF-プロモーター、NSE-プロモーター、PrP-プロモーターまたはthy-1-プロモーターが使われるということが考慮されている。前記プロモーターは、当該分野に知られており、文献(Charron,J.Biol.Chem.270:25739-25745,1995)に記述されている。原核細胞内の発現のために、lac-プロモーター、tac-プロモーターまたはtrpプロモーターを含む多数のプロモーターが開示されている。転写を開始することができる因子の以外に、前記調節配列は、本発明の一実施例によるポリヌクレオチドの下流(downstream)にSV40-ポリ-A部位またはTK-ポリ-A部位のような転写終結信号を含むこともある。本明細書において、適当な発現ベクターは、当該分野に知られており、その例としては、岡山-ベルグ(Okayama-Berg)cDNA発現ベクターpcDV1(Parmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In-vitrogene)、pSPORT1(GIBCO BRL)、pGX27(特許第1442254号)、pX(Pagano(1992)Science 255,1144-1147)、酵母2-ハイブリッド(two-hybrid)ベクター、例えば、pEG202及びdpJG4-5(Gyuris(1995)Cell 75,791-803)または原核発現ベクター、例えば、ラムダgt11またはpGEX(Amersham-Pharmacia)がある。本発明の核酸分子の以外に、ベクターは、分泌信号を暗号化するポリヌクレオチドをさらに含みうる。前記分泌信号は、当業者によく知られている。そして、使われた発現システムによって、融合タンパク質を細胞区画に導くことができるリーダー配列(leader sequence)が、本発明の一実施例によるポリヌクレオチドのコーディング配列に組み合わせられ、望ましくは、解毒されたタンパク質またはそのタンパク質を細胞質周辺または細胞外媒質に直接分泌することができるリーダー配列である。
【0020】
また、本発明で使われる発現ベクターは、例えば、標準組換えDNA技術によって製造可能であり、標準組換えDNA技術には、例えば、平滑末端及び接着末端ライゲーション、適切な末端を提供するための制限酵素処理、不適切な結合を防止するために、アルカリポステイズ処理によるリン酸基の除去及びT4 DNAリガーゼによる酵素的連結などが含まれる。化学的合成または遺伝子組換え技術によって得られた信号ペプチドをコーディングするDNA、本発明の一実施例による融合タンパク質を暗号化するDNAを適切な調節配列が含まれているベクターに組換えることにより、本発明のベクターが製造可能である。前記調節配列が含まれているベクターは、商業的に購入または製造することができる。
【0021】
また、前記方法において、前記遺伝子コンストラクトは、1つまたは2つ以上の免疫増強ペプチドを暗号化するポリヌクレオチドをさらに含み、この場合、前記免疫増強ペプチドは、別途の調節配列に連結された形態、すなわち、bicistron形態に発現ベクトルに含まれるか、1つの調節配列に連結されるが、2つのタンパク質を暗号化するポリヌクレオチドの間にIRES(internal ribosome entry site)が挿入されて1つのmRNAに転写後、それぞれのタンパク質でそれぞれ翻訳される形態に示すことができる。前記免疫増強ペプチドは、CD28、ICOS(inducible costimulator)、CTLA4(cytotoxic T lymphocyte associated protein 4)、PD1(programmed cell death protein 1)、BTLA(B and T lymphocyte associated protein)、DR3(death receptor 3)、4-1BB、CD2、CD40、CD40L、CD30、CD27、SLAM(signaling lymphocyte activation molecule)、2B4(CD244)、NKG2D(natural-killer group 2、member D)/DAP12(DNAX-activating protein 12)、TIM1(T-Cell immunoglobulin and mucin domain containing protein 1)、TIM2、TIM3、TIGIT、CD226、CD160、LAG3(lymphocyte activation gene 3)、B7-1、B7-H1、GITR(glucocorticoid-induced TNFR family related protein)、Flt3リガンド(fms-like tyrosine kinase 3 ligand)、フラジェリン(flagellin)、HVEM(herpesvirus entry mediator)またはOX40L[ligand for CD134(OX40)、CD252]の細胞質ドメインまたはこれらのうち、2つ以上の連結体である。
【0022】
前記方法において、前記Klf4誘導剤は、APTO-253{2-(5-fluoro-2-methyl- 1H-indol-3-yl)-1H-imidazo[4,5-f][1,10]phenanthroline}である。
【0023】
本発明の他の一観点によれば、Klf4遺伝子が過発現されるように形質転換された形質転換CD8 T細胞が提供される。
【0024】
前記形質転換CD8 T細胞は、個体から分離されたCD8 T細胞またはそれを含む細胞集団にKlf4タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターを形質導入することで製造可能である。前記発現ベクターは、ウイルス性ベクターまたは非ウイルス性ベクターであり、前記ウイルス性ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラドボウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ポックスウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり、前記非ウイルス性ベクターは、mRNA、DNAベクター、ナノ粒子、カチオン性ポリマー、エクソソーム、細胞外小胞またはリポソームであり、前記mRNAは、Klf4タンパク質を暗号化するmRNA単独または前記mRNA以外の前記非ウイルス性ベクターとの組み合わせで使われ、前記DNAベクターは、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージミドベクターまたは人工ヒト染色体である。
【0025】
本発明の他の一観点によれば、外来性Klf4タンパク質及びキメラ抗原受容体(CAR)が発現されるように形質転換された形質転換CAR-CD8 T細胞が提供される。
【0026】
前記形質転換CAR-CD8 T細胞は、Klf4タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドを含む遺伝子コンストラクト及び前記CARを暗号化するポリヌクレオチドを含む遺伝子コンストラクトでCD8 T細胞、望ましくは、治療を必要とする患者から単離されたCD8 T細胞または前記CD8 T細胞を含む細胞集団を形質感染させることで製造可能であり、前記2種の遺伝子コンストラクトは、別個のベクターにクローニングされて共形質感染され、それとも1つのベクター内にクローニングされて宿主CD8 T細胞に形質導入される。この場合、それぞれの遺伝子は、別途の調節部位、例えば、プロモーター及び/またはエンハンサーなどと作動可能に連結されて別個のmRNAに発現にもなり、1つの転写調節因子下IRESで連結されて1つのmRNAに発現された後、翻訳及び修飾過程のみ別途に行われることもある。外来遺伝子の形質導入のためのベクター及びプロモーターなど多様な技術については、前述した通りである。
【0027】
本明細書で使われる用語「キメラ抗原受容体」は、抗原認識部位としてscFv、sdAbのような一本鎖基盤の抗体類似体-細胞膜通過ドメイン-補助刺激ドメイン-細胞内信号伝達ドメインで構成された合成タンパク質であって、T細胞など免疫細胞に形質導入されて癌細胞特異的な抗原を認識して、これらの免疫細胞の癌細胞に対する抗ガン活性を向上させるとよく知られている。
【0028】
前記形質転換CAR-CD8 T細胞において、前記CARは、抗体類似体-細胞膜通過ドメイン-補助刺激因子-細胞内信号伝達ドメインを含む融合タンパク質である。前記一本鎖基盤の抗体類似体は、癌抗原または病原体由来の抗原に対して特異的に結合することができるが、前記癌抗原は、EpCAM(epithelial cell adhesion molecule)、Trop-2(trophoblast cell surface antigen 2)、CEACAM5(CEA cell adhesion molecule 5)、CEACAM6(CEA cell adhesion molecule 6)、癌胚芽性抗原(carcinoembryonic antigen、CEA)、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺酸性ホスファターゼ(prostatic acid phosphatase、PAP)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、Her2/neu、MUC-1、BCR/ABL、α-フェトプロテイン(AFP)、LMP2aのようなエプスタイン-バーウイルス(EBV)由来の抗原、B型ヒト肝炎ウイルス(HBV)由来の抗原、C型ヒト肝炎ウイルス(HCV)由来の抗原、Proteinase 3、WT-1、PAP(prostatic acid phosphatase)、G250、メラノーマ抗原遺伝子(MAGE、melanoma antigen gene)、BAGE、GAGE、NY-ESO-1、チロシナーゼ(tyrosinase)、チロシナーゼ-関連タンパク質-1(TRP-1)、TRP-2、gp100、MART-1、Ig Idiotype、CDK4、caspase-8、β-catenin、BCR/ABL、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV E6/E7)、HHV-8、5T4、p53、癌抗原125(CA-125)、癌抗原-72-4(CA-72-4)、癌抗原-15-3(CA-15-3)、または癌抗原-19-9(CA-19-9)である。前記病原体由来の抗原は、病原性微生物(pathogenic microorganism)、ウイルスまたは寄生虫由来の抗原であり、前記病原性微生物は、病原性細菌(pathogenic bacteria)または病原性真菌(pathogenic funji)であり、前記病原性細菌は、百日咳菌(Bordetella pertussis)、破傷風菌(tetanus)、ジフテリア菌(diphtheria)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、肺炎球菌(Pneumococcus sp.)、結核菌(Mycobacterium tuberoculosis)、コレラ(Cholera sp)、ブドウ球菌(Staphylococcus sp.)、赤痢菌(Shigella sp.)、ボレリア菌(Borrelia sp.)またはサルモネラ菌(Salmonella sp.)であり、前記病原性真菌は、カンジダ菌(Candida sp.)、トリコフィトン菌(Trichophyton sp.)、アスペルギルス菌(Aspergillus sp.)、Fonsecaea sp.、Epidermophyton sp.、Piedraia sp.、Malassezia sp.、Pseudallescheria sp.、Basidiobolus sp.、Conidiobolus sp.、Rhinosporidium sp.、Paracoccidioides sp.、Cryptococcus sp.、Blastomyces sp.、Sporothrix sp.、Mucor sp.、Absidia sp.、Rhizopus sp.、Pneumocystis sp.、Wangiella sp.、Phialophora sp.、Schizophyllum sp.である。また、前記ウイルスは、インフルエンザウイルス(influenza virus)、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus、HPV)、水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)、A型肝炎ウイルス抗原(hepatitis A virus、HAV)、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus、HBV)、C型肝炎C(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)及びG型肝炎ウイルス(HGV)、呼吸器多核体ウイルス(respiratory synctytial virus、RSV)、ヘルペスシンプレックスウイルス(herpes simplex virus)抗原またはヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)である。前記寄生虫は、回虫、蟯虫、有鉤条虫、肝吸虫、肺吸虫、住血吸虫、肝ジストマ、肺ジストマ、プラスモジウムファルシパルム(Plasmodium falciparum)、またはトキソプラズマ(Toxoplasma)である。
【0029】
本明細書で使われる「抗体類似体(antibody mimetic)」は、2本の重鎖及び2本の軽鎖が異種四合体の4次構造を形成して機能を発揮する通常の全長抗体とは異なって、抗体から由来したが、2本の鎖で構成されたものではなく、一本鎖からなる抗原-結合断片または非抗体由来のタンパク質スキャフォールドから製造される抗体と類似した機能、すなわち、抗原結合能を有するタンパク質を意味する。具体的に、このような抗体類似体としては、抗体基盤の一本鎖抗体断片で抗体のVHとVLとをリンカーで連結して製造された一本鎖抗体断片であるscFv(Glockshuber et al.,Biochem.29(6):1362-1367,1990)、抗体の単一可変領域断片で構成された抗体断片であるsdAb(single domain antibody)、軽鎖なしに重鎖のみで構成される抗体であるラクダ科または軟骨魚類由来の抗体の抗原-結合断片(VHH、VNARなど)などが存在し、非抗体由来のタンパク質スキャフォールドから製造される抗体類似タンパク質には、タンパク質AのZ domain由来のAffibody(Nygren,P.A.,FEBS J.275(11):2668-2676,2008)、Gamma-B crystallinまたはUbiquitin由来のAffilin(Ebersbach et al.,J.Mol.Biol.372(1):172-185,2007)、Cystatin由来のAffimer(Johnson et al.,Anal.Chem.84(15):6553-6560,2012)、Sac7d由来のAffitin(Krehenbrink et al.,J.Mol.Biol.383(5):1058-1068,2008)、Triple helix coiled coilタンパク質由来のAlphabody(Desmet et al.,Nat.Commun.5:5237,2014)、lipocalin由来のAnticalin(Skerra et al.,FEBS J.275(11):2677-2683,2008)、多様な膜受容体のドメイン由来のAvimer(Silverman et al.,Nat.Biotechnol.23(12):1556-1561,2005)、Ankyrin repeat motif由来のDARPin(Stumpp et al.,Drug Discov.Today.13(15-16):695-701,2008)、Fynタンパク質のSH3ドメイン由来のFynomer(Grabulovski et al.,J.Biol.Chem.282(5):3196-3204,2007)、多様なタンパク質阻害剤のKunitzドメイン由来のKunitz domain peptide(Nixon and Wood,Curr.Opin.Drug Discov.Dev.9(2):261-268,2006)、フィブロネクチンの10番目の第3型ドメイン由来のmonobody(Koide and Koide,Methods Mol.Biol.352:95-109,2007)、炭水化物結合モジュール32-2由来のnanoCLAMP(Suderman et al.,Protein Exp.Purif.134:114-124,2017)、ヌタウナギ由来の可変リンパ球受容体(variable lymphocyte receptor、VLR)(Boehm et al.,Ann.Rev.Immunol.30:203-220,2012)、及び前記VLRに基づいて抗原親和性を向上させるように操作されたrepebody(Lee et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,109:3299-3304,2012)などが含まれる。
【0030】
本明細書で使われる用語「scFv」は、「single chain variable fragment」の略語であって、実際の抗体の断片ではなく、抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とを約25a.a.サイズのリンカーペプチドで連結して製造した一種の融合タンパク質であって、固有の抗体断片ではないことにも拘らず、抗原結合能を有したと知られている(Glockshuber et al.,Biochem.29(6):1362-1367,1990)。
【0031】
前記形質転換CAR-CD8 T細胞において、前記細胞膜通過ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD3ガンマ、CD3ゼータ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、CD96(Tactile)、CDl la、CDl lb、CDl lc、CDl ld、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcガンマ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICAM-1、Igアルファ(CD79a)、IL-2Rベータ、IL-2Rガンマ、IL-7Rアルファ、誘導性T細胞共同刺激子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGBl、KIRDS2、LAT、LFA-1、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能-関連抗原-1(LFA-1;CDl-la/CD18)、MHC部類1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム化された死滅-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、信号伝達リンパ球性活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Lyl08)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、トールリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、またはVLA-6由来の膜通過ドメインである。
【0032】
本明細書で使われる用語「補助刺激ドメイン(costimulatory domain)」は、T/NK活性化を補助する免疫関連タンパク質である補助刺激因子(costimulatory factor)のT細胞補助刺激の機能を担当する細胞質ドメイン(cytoplasmic domain)を意味する。
【0033】
前記形質転換CAR-CD8 T細胞において、前記補助刺激ドメインは、CD28、ICOS、CTLA4、PD1、BTLA、DR3、4-1BB、CD2、CD40、CD30、CD27、SLAM、2B4(CD244)、NKG2D/DAP12、TIM1、TIM2、TIM3、TIGIT、CD226、CD160、LAG3、B7-1、B7-H1、GITR、HVEMまたはOX40L(CD252)の細胞質ドメインまたはこれらのうち、2つ以上の連結体である。
【0034】
本明細書で使われる用語「細胞内信号伝達ドメイン」は、免疫細胞でリガンドが受容体に結合される時、免疫反応を媒介する細胞内信号を伝達する機能を担当する細胞質内ドメインを意味する。
【0035】
前記形質転換CAR-CD8 T細胞において、前記細胞内信号伝達ドメインは、CD3ζ、CD28、CD27、OX40/CD134、4-1BB/CD137、FcεRIγ、ICOS/CD278、IL-2Rβ/CD122、IL-2Rα/CD132、DAP10、DAP12、そして、CD40のうちから1つまたはそれ以上の細胞質内ドメインの一部または全部を含む。
【0036】
本発明の一実施例による、形質転換CAR-CD8 T細胞は、疲弊現象を最大限抑制し、癌-抗原に対する認識及び認識された癌-抗原に対する免疫反応を増加させることにより、抗ガン治療において、相加または相乗効果を示すことができる。
【0037】
本発明の他の一観点によれば、前記形質転換CD8 T細胞または前記形質転換CAR-CD8 T細胞を含む組成物が提供される。
【0038】
前記組成物において、前記Klf4遺伝子が過発現されたCD8 T細胞は、治療を必要とする個体から分離された自家由来CD8 T細胞または他人から分離された他家由来CD8 T細胞であるが、自家由来CD8 T細胞であることが望ましい。前記Klf4遺伝子が過発現されたCD8 T細胞は、CD8 T細胞にKlf4遺伝子が含まれた発現ベクターの形質導入及び/または前記CD8 T細胞にKlf4誘導剤の処理を通じて製造可能である。
【0039】
前記形質導入とKlf4誘導剤に関する説明は、前述した通りである。
【0040】
前記組成物は、先天性免疫反応が必要な疾患の治療に使われ、前記先天性免疫反応が必要な疾患は、癌、細菌性感染症、真菌性感染症、ウイルス感染症または寄生虫感染症である。
【0041】
本発明の他の観点によれば、前記形質転換CD8 T細胞または前記形質転換CAR-CD8 T細胞を有効成分として含む癌治療用薬学的組成物が提供される。
【0042】
前記組成物は、前記担体以外に薬学的に許容可能な補助剤、賦形剤または希釈剤をさらに含みうる。
【0043】
本明細書で使われる用語「薬学的に許容可能な」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、通常の胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはそれと類似した反応を起こさない組成物を言う。前記担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油が挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含みうる。
【0044】
また、本発明の一実施例による薬学的組成物は、哺乳動物に投与時に、活性成分の迅速な放出、または持続または遅延された放出が可能に当業者に公知の方法を使用して剤形化される。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態を含む。
【0045】
本発明の一実施例による組成物は、多様な経路に投与されるが、一般的な全身性投与または局所性投与、例えば、皮下注射、滑膜腔内注射、腹腔内注射、筋肉内注射または静脈内注射方式で投与されるが、これに制限されるものではない。
【0046】
本発明の一実施例による組成物は、一般的に使われる薬学的に許容可能な担体と共に適した形態に剤形化される。薬学的に許容される担体としては、例えば、水、適したオイル、食塩水、水性グルコース及びグリコールのような非経口投与用担体などがあり、安定化剤及び保存剤をさらに含みうる。適した安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適した保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル-またはプロピル-パラベン及びクロロブタノールがある。また、本発明による組成物は、その投与方法や剤形によって必要な場合、懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、酸化防止剤などを適切に含みうる。前記例示されたものを含めて、本発明に適した薬学的に許容される担体及び製剤は、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences、最新版]に詳しく記載されている。
【0047】
また、本発明の組成物は、治療的に有効な量で投与される。
【0048】
本明細書で使われる用語「治療的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な恵み/危険の比率で疾患の治療に十分な量を意味し、有効容量レベルは、個体の種類及び重症度、年齢、性別、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時使われる薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られた要素によって決定されうる。本発明のワクチン組成物または薬学的組成物は、0.1~1g/kgの容量で投与され、さらに望ましくは、1~500mg/kgの投与量で投与される。一方、前記投与量は、患者の年齢、性別及び状態によって適切に調節される。
【0049】
本発明の他の一観点によれば、癌にかかった個体から分離されたCD8 T細胞または前記CD8 T細胞を含む細胞集団でKlf4遺伝子の過発現を誘導する段階;及びKlf4遺伝子が過発現されたCD8 T細胞または前記CD8 T細胞を含む細胞集団を前記個体に投与する段階;を含む前記個体の癌の治療方法が提供される。
【0050】
前記癌の治療方法において、前記CD8 T細胞または前記CD8 T細胞を含む細胞集団は、さらに癌抗原を標的としたキメラ抗原受容体を暗号化するポリヌクレオチドに形質導入される。
【0051】
以下、実施例及び実験例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。しかし、本発明は、以下で開示される実施例及び実験例に限定されるものではなく、互い異になる多様な形態として具現可能なものであって、以下の実施例及び実験例は、本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。
【0052】
実施例
一般的方法
Klf4遺伝子形質導入のためのレトロウイルスの製作
プラチナE細胞株(platinum E cell line、platE、CELL BIOLABS、USA)を10% FBS(Gibco、USA)、抗生剤であるストレプトマイシン&ペニシリン(100U/ml、WELGENE)、ブラストマイシン(10μg/ml、Gibco)、ピューロマイシン(1μg/ml、Gibco)が補充されたDMEM培地(WELGENE)で細胞飽和度に注意して過成長しないように37℃ 5% CO2細胞培養器で培養した。細胞飽和度が90%程度に至れば、培地を除去した後、PBS(Sigma)を5ml加えて洗浄した後、除去し、このような洗浄過程をもう一回繰り返した。引き続き、トリプシン-EDTA溶液(WELGENE)2~3mlを滴加した後、37℃細胞培養器で3分間反応させた。以後、DMEM培地10mlに分離された細胞をよくピペッティングした後、15mlチューブに移した後、4℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した。上澄み液を除去し、ペレットを10% FBSのみ添加されたDMEM培地(無抗生剤培地)で再懸濁した後、細胞を計数した。60mmの培養皿に2.5x106個のplatE細胞を3mlの抗生剤が添加されていないDMEM培地で再懸濁した後、均一に播種し、6~8時間37℃ 5% CO2細胞培養器で培養した。6~8時間が経過した後、カルシウム形質感染のために、2X HBS、2M CaCl2、3次蒸留水、そして、MigRIベクター(Addgene、USA)にマウスklf4遺伝子のCDS配列(配列番号1)を挿入することにより、MigRI-Klf4ベクターを製造した。この際、マウスklf42遺伝子のクローニングは、MigIベクターへのクローニングのための制限酵素(BglII及びEcoRI)認識部位を付加したプライマーセット(配列番号2及び配列番号3)を使用したPCR増幅を通じて行われたが、フォワードプライマーには、BglII認識部位と開始コドン(ATG)との間には、コザック配列(Kozak sequence)でACCを挿入した。その後、X HBSを一側の1.5mlの遠心分離チューブに312.5μl分注した後、他側の遠心分離チューブには、2M CaCl2 38.75μl、DNAベクター10μgに該当する体積を添加し、残部は、3次蒸留水を用いて312.5μlを合わせた。その後、2X HBSが分注されている遠心分離チューブを低い強度でボルテックシングし、DNAベクターが分注されている遠心分離チューブの溶液をピペットを用いて滴加方式で2X HBSが分注されている遠心分離チューブに移し、30分間常温で反応させた。引き続き、混合溶液をピペットを用いてあらかじめ播種して準備しておいたplatE培養皿に滴加方式で加えた。その後、37℃ 5% CO2細胞培養器で16時間程度培養した。培養を終えた後、培養培地を除去し、暖かいPBSを用いて二回洗浄した後、抗生剤が添加されていないDMEM培地を60mmの培養皿当たり3mlずつ分注した後、37℃ 5% CO2細胞培養器で追加的に48時間培養した。培養が終了した後、培養上澄み液のみ移して入れた後、0.45μmフィルター(ADVANTEC)を用いて濾過した。濾過が完了したウイルスが含まれた上澄み液は、直ちに実験に使用するか、液体窒素を用いて急速冷凍させた後、超低温冷凍庫(deep freezer)で-80℃の温度条件で保管した。
【0053】
未接触CD8 T細胞の分離及び活性化
マウスを犠牲にして脾臓を摘出した。その後、PBSに入れられた脾臓を細かく粉砕した後、メッシュで濾過して15mlの遠心分離チューブに移した後、4℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した。上澄み液は除去し、ペレットは、Ack溶解緩衝液1mlに再懸濁して常温で3分間反応させた。引き続き、PBS 10mlを追加し、4℃ 1500rpmの条件で5分間遠心分離した。蛍光標識された抗CD8抗体、抗CD44抗体をPBSに100:1の体積比で混合して抗体混合物を製造した後、遠心分離されて沈んだ細胞ペレットに加えた後、再懸濁し、4℃で30分間反応させた。その後、PBS 10mlを追加した後、4℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した。上澄み液を除去し、ペレットをPBS 1mlに再懸濁した後、細胞濾過器(cell strainer)で濾過し、適量のPBSあるいはRPMI培地(WELGENE)を添加して細胞密度を調節した。引き続き、細胞分離器(SH800、Sony Biotechnology、USA)を用いてCD8+CD44low細胞(未接触CD8 T細胞)を分離した。
【0054】
48ウェルプレート(SPL Life Sciences)に分離が完了する1時間30分~2時間前に抗CD3抗体をコーティングするが、具体的に、抗CD3抗体(Biolegend)が5μg/mlの濃度になるようにPBSを用いて希釈した後、48ウェルプレートの各ウェルに150μlずつ分注した。以後、37℃細胞培養器で1時間30分~2時間程度反応させることにより、抗体をコーティングした。抗体コーティングが完了したプレートの各ウェルから抗体混合物を除去し、PBS 150μlを用いて洗浄し、同一洗浄過程をもう一回繰り返した。分離が完了した未接触CD8 T細胞を4℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、ペレットを10% FBS、ストレプトマイシン&ペニシリン(100U/ml)、2-メルカプトエタノール(Gibco)が添加されたRPMI培地を用いて再懸濁した。準備された抗CD3抗体がコーティングされたプレートの一ウェル当たり1.5x106個の細胞を添加した。この際、さらに抗CD28抗体(2μg/ml、BD Pharmigen)、mIL-2(100U/ml、R&D Systems)を処理した。その後、37℃ 5% CO2細胞培養器で18~24時間培養した。
【0055】
活性化されたCD8細胞の増殖及びレトロウイルスを利用したKlf4遺伝子形質導入
高効率のレトロウイルス形質導入の効率を得るために、活性化されたCD8 T細胞の増殖過程を先に行った。前記で18~24時間活性化処理された細胞を15mlの遠心分離チューブによく移して入れた後、25℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した。引き続き、100%パーコール(percoll)、RPMI培地、そして、PBSを用いてそれぞれ30%及び60%に希釈されたパーコール溶液を製造した。遠心分離されたペレットを30%パーコール溶液4mlに再懸濁した後、60%パーコール溶液3mlを気をつけて下階に配置した。その後、25℃ 2,000rpmの条件で20分間遠心分離した。この際、加速と減速は、最小に設定した。遠心分離後、上層の3mlは除去し、界面に位置した細胞を新たな15mlの遠心分離チューブに移動させた。引き続き、PBS 10mlを追加して洗浄した後、25℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した。遠心分離後、ペレットをPBS 10mlでもう一回洗浄した後、25℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離し、細胞ペレットをRPMI培地に再懸濁させた後、細胞を計数した。引き続き、12ウェル非コーティングプレート(SPL Life Sciences)にウェル当たり5x105個ずつ細胞を分注した。
【0056】
前記から準備されたレトロウイルス上澄み液(MigRI-Klf4及びMigRI)1~2mlを各ウェルに添加した後、mIL-2(100U/ml)、ポリブレン(8μg/ml、Sigma)を追加した。引き続き、パラフィルムで隙間を密封し、25℃ 1,800xgの条件で1時間遠心分離した。この際も、同様に加速及び減速は、最小に設定した。遠心分離が終われば、パラフィルムを除去し、37℃ 5% CO2細胞培養器で30分間培養した。以後、細胞を15mlの遠心分離チューブに移し、RPMI培地10mlを追加して洗浄した後、25℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した。遠心分離後、細胞ペレットをRPMI培地10mlに再懸濁し、もう一回洗浄した後、25℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した。遠心分離後、細胞ペレットをPBSで再懸濁し、それを直ちにマウスに静脈内注射することにより、免疫細胞移植(adoptive cell transfer)を行うか、追加的な培養を通じて細胞実験に使用した。
【0057】
APTO-253を利用したKlf4の過発現誘導
本発明者らは、レトロウイルスを利用したKlf4遺伝子形質導入以外にも転写因子であるKlf4の上位信号伝達経路を調節することにより、未接触CD8 T細胞の内在的なKlf4遺伝子の過発現が可能であると予想した。これにより、Klf4発現誘導剤として知られているAPO-253(Cercek et al.,Invest.New.Drug.33(5):1086-1092,2015)を未接触CD8細胞に処理してKlf4遺伝子を過発現させる場合にも、レトロウイルスベクターを利用した形質導入と類似した効果を示すと推定した。
【0058】
これにより、前記の方法と同様に未接触CD8 T細胞を分離した後、抗CD3抗体がコーティングされたプレートに未接触CD8 T細胞を入れ、活性化させる過程で、抗CD28抗体(2μg/ml)及びmIL-2(100U/ml)を処理する時、3μMのAPTO-253(MedChemExpress、LLC)を処理した。引き続き、37℃ 5% CO2細胞培養器で72時間培養した。培養が終了した後、細胞を15mlの遠心分離チューブに移した後、RPMI培地を追加して体積を3mlに調整した。その後、下階にHistopaque(Sigma)3mlを気をつけて配置した。引き続き、25℃ 2,000rpmの条件で30分間遠心分離させ、この際、加速と減速は、最小に設定した。遠心分離後、上層部の培養液を除去した後、界面に存在する細胞を回収して15mlの遠心分離チューブに移してPBS 10mlに再懸濁した後、4℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液を除去し、細胞ペレットをPBS 10mlでもう一回洗浄し、4℃ 1,500rpmの条件で5分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液を除去し、細胞ペレットを適量のPBSに再懸濁した後、細胞を計数した。最終的に、5x105個の細胞を200μlのPBSに希釈して1mlの注射器に積載した後、マウスに静脈内注射して免疫細胞移植を行った。
【0059】
実施例1:CD8 T細胞の疲弊現象の機転研究
前述したように、CD8 T細胞が癌抗原などに慢性的に露出されれば、疲弊現象が起こり、このように疲弊したCD8 T細胞は、正常な活性サイトカイン分泌及び細胞分裂を行うことができず、まともな免疫反応を行うことができないだけではなく、時間が過ぎても、再び正常な機能を有する細胞に回復しない。
【0060】
これにより、本発明者らは、CD8 T細胞が活性化されてから経時的に疲弊する現象の原因を究明するために、試験管内の条件で疲弊状況を模倣するための実験を行った。
【0061】
1-1:疲弊模倣の試験管内試験
このために、具体的に、本発明者らは、OVA(ovalbumin)-ペプチド特異的なT細胞受容体(TCR)を有するOT-I形質転換マウスのCD8 T細胞を分離して5日間繰り返してOVAペプチドを処理する実験を行った。あらゆる実験セットでは、CD8 T細胞の生存度を高めるために、IL-15(5ng/ml)及びIL-7(5ng/ml)を処理した。OVAペプチド(10ng/ml)を処理し、その翌日、洗浄後、再びサイトカイン及びOVAペプチドを同一組成で処理する方式で5日間繰り返して刺激を加えた(反復的刺激処理群)。この際、対照群としてOVAペプチドを処理せず、サイトカインのみ処理したグループとOVAペプチド(10ng/ml)を2日間処理し、洗浄した後、サイトカインのみ処理して休止させる単一刺激処理群を追加した。また、CD8 T細胞の活性化を助ける因子として知られたIL-21を処理したセットも追加した(反復刺激+IL-21処理群)(
図1A)。5日が過ぎた時点で生きているCD8 T細胞を細胞分離器(cell sorter)を用いて分離した後、RNAを抽出し、cDNAに逆転写した後、多様な遺伝子の発現レベルをqRT-PCRを通じて確認した。その結果、疲弊状態を模倣した反復刺激処理群で疲弊現象の代表的マーカーであるTox遺伝子の発現が増加し、IL-21を処理した反復刺激+IL-21処理群では、Tox遺伝子の発現が再び減少することを確認した。このような状況でKlf4の発現態様を確認した結果、反復刺激処理群でKlf4遺伝子の発現が増加し、Toxとは異なって、反復刺激+IL-21処理群では、むしろKlf4遺伝子の発現がさらに増加することを確認することができた(
図1B)。これは、活性化因子であるIL-21にCD8 T細胞が反応してKlf4遺伝子の発現がさらに高くなったものであって、Klf4が疲弊状態でCD8 T細胞の活性化と関連した要素であるということを推測可能にする。
【0062】
1-2:疲弊模倣の生体内実験
前記実施例1-1の細胞実験での結果が動物実験でも再現されるかを確認するために、本発明者らは、疲弊模倣を実験動物を用いて生体内条件で行った。
【0063】
具体的に、C57BL/6マウスにMC38癌細胞(3x10
5)を接種した後、18日目に脾臓及び腫瘍組織を摘出した。一方、前記動物実験は、大韓民国のソウル大学動物実験倫理委員会の規定によって行われた。脾臓では、CD44の発現が低いCD44
low未接触(Na△ve)CD8 T細胞と抗原刺激を受けてCD44の発現が高いCD44
highエフェクター(effector)CD8 T細胞とを細胞分離器を用いて分離した。腫瘍組織では、既存の研究から知られた情報に基づいて、慢性線条細胞(chronic progenitor cell)として知られたLy108
+CD8 T細胞、慢性エフェクター細胞(chronic effector cell)として知られたLy108
-CD69
-Tim3
+CD8 T細胞、そして、最終疲弊状態のCD8 T細胞として知られたLy108
-CD69
+Tim3
+CD8 T細胞を細胞分離器を用いて分離した(
図1C)。このように分離された5グループの細胞のRNAを抽出し、cDNAに逆転写した後、多様な遺伝子の発現レベルをqRT-PCRを通じて確認した。
【0064】
その結果、Klf4の場合、腫瘍組織に存在する疲弊状態のCD8 T細胞(慢性前駆細胞、慢性エフェクター細胞及び最終疲弊状態細胞)で未接触CD8 T細胞に比べて、全般的にいずれも発現量が高いことを確認することができたが、特に、慢性エフェクター細胞として知られたLy108
-CD69
-Tim3
+CD8 T細胞でKlf4遺伝子の発現が最も高いということを確認することができた(
図1D)。以上を通じて、試験管内の条件だけではなく、生体内条件いずれもで疲弊状態で活性度が高いCD8 T細胞がさらに高いKlf4遺伝子発現レベルを示すことを確認することができた。
【0065】
実施例2:遺伝子形質導入を通じたKlf4過発現CD8 T細胞の製造
本発明者らは、前記実施例1の結果から疲弊状態でKlf4の遺伝子発現が高くなるが、疲弊状態でそれさえも抗ガン活性を保持しているエフェクター細胞でKlf4の発現がさらに高いという点に着眼して、Klf4がエフェクター細胞の発生及び機能を促進させることができるという仮説を樹立した。
【0066】
これにより、本発明者らは、前記仮説が正しいかを確認するために、CD8 T細胞でKlf4の発現を人為的に増加させる場合、エフェクター細胞の発生が促進されるかの有無、及び抗原に対する慢性刺激によって発生する疲弊現象が抑制され、エフェクター細胞としての機能が促進されるかの有無を確認しようとした。
【0067】
このために、まず、本発明者らは、分離されたCD8 T細胞にKlf4遺伝子を形質導入させてKlf4遺伝子を過発現させる実験を行った。
【0068】
具体的に、CD8 T細胞に24時間抗CD3抗体、抗CD28抗体及びmIL-2を処理した後、CD8 T細胞にレトロウイルスを用いて対照群であるMigRIベクター、実験群としては、MigRIベクターにKlf4が挿入されたベクター(以下、「Klf4」と略称する)を過発現させた。レトロウイルスを利用した形質導入は、前述した一般的方法を用いて行った。以後、3日間mIL-7及びmIL-15を処理して休止状態のCD8 T細胞を誘導し、MigRIベクターでは、基本的にGFPを発現するために、過発現された細胞は、GFP
+であることを用いてFACS分析を行った。形質転換されていない対照群であるMigRI GFP
-、MigRI GFP
+、Klf4 GFP
-のKlf4が過発現されていない細胞に比べて、Klf4 GFP
+CD8 T細胞の場合、前述した慢性エフェクター細胞(Ly108-CD69-)サブセットが大きく増加することを確認することができた(
図2A)。これを通じて、Klf4の過発現が慢性エフェクター細胞セブンセットの発生に重要な要素であるということが分かった。
【0069】
次いで、Klf4過発現がエフェクター細胞の機能を促進させるかを確認するために、gp100抗原を特異的に認識するT細胞受容体を有するPmelIマウス由来のCD8 T細胞を分離し、前記の方法で対照群(MigRI)及びKlf4遺伝子を過発現させた後、gp100抗原を過発現している標的癌細胞(MC38-gp100)と6時間共に培養して死んだ標的癌細胞の比率を測定した。その結果、対照群(MigRI)に比べてKlf4遺伝子を過発現させたPmelI由来CD8 T細胞と共に培養した場合、死んだターゲット癌細胞の比率が増加することを通じて、Klf4過発現CD8 T細胞がさらに効果的に癌細胞を殺害することができるということが分かった(
図2B)。
【0070】
それだけではなく、直接的な疲弊状態でKlf4過発現が慢性エフェクター細胞の機能を促進させるかを確認するために、実施例1-1で行った試験管内疲弊モデルを応用した。OVAペプチドを処理し、24時間が経過した時点でCD8 T細胞にレトロウイルスを用いて対照群であるMigRIベクター、Klf4ベクターを過発現させた。以後、残りの4日間繰り返してOVAペプチドを処理してin vitro疲弊状態を誘導し、MigRI GFP
+及びKlf4 GFP
+CD8 T細胞を細胞分離器を用いて分離した後、遺伝子発現を表1に記載されたプライマー対を利用したqRT-PCRを通じて分析した。その結果、Klf4過発現CD8 T細胞は、Klf4遺伝子発現がMigRIベクター対照群に比べて非常に高いことを確認し、同時に疲弊状態のマーカーであるTox遺伝子発現は、逆に非常に減少したことを確認することができた(
図2C)。また、FACS分析を通じて、これらのCD8 T細胞から分泌されるグランザイムB及びインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)の量を測定したが、Klf4が過発現されたCD8 T細胞で有意味にサイトカイン分泌量が増加したことを確認することができた(
図2D及び
図2E)。以上を通じて、さらに高いKlf4遺伝子の発現レベルが慢性エフェクター細胞(Ly108-CD69-)の形成を促進し,ターゲット癌細胞を殺害する能力を促進させ、疲弊状態のCD8 T細胞でこれ以上の疲弊現象を抑制し,活性サイトカインのさらに多くの分泌を促進するということを確認することができた。
【0071】
【0072】
実施例3:動物実験を通じた疲弊状態の抑制分析
3-1:Klf4遺伝子形質導入を通じた動物実験
前記結果から、本発明者らは、in vivo状況でもCD8 T細胞でのKlf4過発現が細胞活性を増加させて、癌の発生を抑制することができるかをマウス腫瘍モデルを使用して確認した。このために、具体的に、T細胞が存在しないRag2 KOマウスにgp100を発現するMC38癌細胞(MC38-gp100)を3x10
5個接種し、一日後、MigRI及びgp100-特異的TCRを発現するように形質転換されたPmelI形質転換マウス(Jackson Laboratory、国立癌センターから分譲を受ける)由来のCD8 T細胞を前記発現ベクターに形質転換させて、Klf4が過発現されるように形質転換されたCD8 T細胞1x10
6個を静脈内注射を通じて投与した。癌細胞を接種し、15日目になる日まで腫瘍体積をチェックし、15日目のマウスを犠牲にさせて実験に利用した(
図3A)。マウスの分析に先立って、MigRI及びKlf4を過発現させたCD8 T細胞でKlf4遺伝子の発現レベルを確認した結果、Klf4遺伝子が成功的に過発現されたということを確認することができた(
図3B)。Klf4を過発現させたCD8 T細胞が投与されたマウスの場合、MigRIのみ利用した対照群に比べて癌の発生が著しく減ることを確認することができた(
図3C)。また、腫瘍組織内に存在する浸潤性CD8 T細胞サブセットで細胞分裂の尺度で表われるKi-67の発現程度をFACSで分析した結果、対照群(MigRI)に比べてKlf4が過発現されたCD8 T細胞サブセット、特に、慢性エフェクター細胞での増殖が効率的に行われているということが分かった(
図3D)。それだけではなく、グランザイムB、IFN-γ、TNF-αのような活性サイトカインがいずれも増加していることを確認することができた(
図3E及び
図3F)。以上を通じて、Klf4を過発現させたCD8 T細胞が遥かに優れた抗ガン免疫反応を示すということを確認することができた。
【0073】
3-2:Klf4誘導剤を利用した疲弊状態の抑制分析
前記実施例3-1の結果から、本発明者らは、Klf4遺伝子形質導入の代わりに、Klf4を過発現させることができる薬物を利用するならば、前述したように、Klf4遺伝子発現の増加による抗ガン効果を確認することができると思い、既存の研究を通じてKlf4の誘導剤として知られたAPTO-253を用いて動物実験を行った。このために、具体的に、リンパ球が欠けているRag2 KOマウスにMC38癌細胞3x10
5個を注入し、その翌日、PBSあるいはAPTO-253が3日間処理されたCD8 T細胞5x10
5個を静脈内注射を通じて投与した。癌細胞を接種し、15日目になる日まで腫瘍体積をチェックし、15日目のマウスを犠牲にさせて実験に利用した(
図4A)。マウスの分析に先立って、APTO-253を3日間処理したCD8 T細胞でKlf4遺伝子発現レベルを確認した結果、APTO-253を処理したCD8 T細胞の場合、PBSを処理したCD8 T細胞に比べて、Klf4遺伝子発現レベルが増加したことを確認することができた(
図4B)。また、APTO-253を処理したCD8 T細胞を投与したマウスの場合、PBSを処理したCD8 T細胞を導入したマウスに比べて、癌の成長が抑制されることを確認することができた(
図4C)。以上を通じて、Klf4遺伝子形質導入以外にもKlf4誘導剤であるAPTO-253を通じたCD8 T細胞のKlf4遺伝子発現の増加も、CD8 T細胞の抗ガン免疫反応を強化させるということを確認することができた。
【0074】
これは、本発明の一実施例によって、遺伝子形質導入または薬物処理によってKlf4遺伝子が過発現されたCD8 T細胞が体内で反復的な抗原刺激によって誘発される免疫疲弊効果を抑制することにより、先天性免疫反応を通じて癌細胞を効果的に死滅させることができるということを立証する結果である。
【0075】
実施例4:発現が誘導されたCAR-CD8 T細胞の製造
4-1:EpCAM-結合CARコンストラクトの構築
例示的なCAR構築物を示す概要図が
図5に提供される。CARコンストラクトは、下記のような方法を通じて生成される。抗EpCAM scFv(配列番号:11)、CD8αヒンジ(配列番号:12)、CD28 TM(配列番号:13)、CD28 ICD(配列番号:14)及びCD3ζ ICD(配列番号:15)を順次に含むCARコンストラクト(EpCAM-CD28-CD3ζ、
図5)のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を暗号化するcDNAに対する核酸配列は、標準技術によって合成され、PCRで増幅され、pRRL-SIN-CMV-eGFP-WPRE(Dull et al.,J.Virol.72:8463-8471,1998)またはpELNS(Carpenito et al.,Proc.Natl..Acad.Sci.USA 106:3360-3365,2009)に基づいた3世代自己不活性化レンチウイルスベクターである、pCLPS(Parry et al.,J.Imuunol.,171:166-174,2003)に連結される。但し、本発明で使われたベクターは、外来遺伝子発現のためのプロモーターであって、CMVをEF-1αに置き換えた点でpCLPSと異なる。暗号化されたCARは、EpCAM(配列番号:11)に結合するためのscFvを含む。
【0076】
4-2:抗Trop-2 CARコンストラクトの構築
抗Trop-2 scFv(配列番号:16)、CD8αヒンジ、CD28及びCD3ζ ICDが順次に連結されたCAR(抗Trop-2-CD28-CD3ζ、
図5)を発現するためのレンチウイルスベクターは、anti-EpCAM-scFvをエンコーディングするヌクレオチド配列がanti-Trop-2 scFvの核酸配列に置き換えるという点を除いては、実施例4-1から製造された方法と同様に製造される。
【0077】
4-3:抗CEACAM6 CARコンストラクトの構築
抗CEACAM6 scFv(配列番号:17)、CD8αヒンジ、CD28 TM、及びCD3ζ ICDが順次に連結されたCAR(抗CEACM6-CD28-CD3ζ、
図5)を発現するためのレンチウイルスベクターは、anti-EpCAM-scFvをエンコーディングするヌクレオチド配列がanti-CEACAM6 scFvの核酸配列に置き換えるという点を除いては、実施例4-1から製造された方法と同様に製造される。
【0078】
4-4:抗CEACAM5 CARコンストラクトの構築
抗CEACAM5 scFv(配列番号:18)、CD8αヒンジ、CD28 TM、及びCD3ζ ICDが順次に連結されたCAR(抗CEACAM5-CD28-CD3ζ、
図5)を発現するためのレンチウイルスベクターは、anti-EpCAM-scFvをエンコーディングするヌクレオチド配列がanti-CEACAM5 scFvの核酸配列に置き換えるという点を除いては、実施例4-1から製造された方法と同様に製造される。
【0079】
実施例5:CAR構築物を含むレンチウイルス粒子の生産
前記実施例に記載のように、作製された高力価、複製-欠陥レンチウイルスベクターは、Parryなど(J.Immunol.,171:166-174,2003)に記載の方法によって製造になる。簡単に言えば、HEK 293T細胞(ATCC CRL-3216)は、RPMI 1640、10%熱不活性化FCS、2mM グルタミン、100U/ml ペニシリン及び100μg/mL ストレプトマイシン硫酸塩で培養される。細胞は、7μgのpMDG.1(VSV-G外皮)、18μgのpRSV.rev(HIV-1 Rev暗号化プラスミド)、18μgのpMDLgで形質感染させる24時間前にT 150組織培養フラスコ当たり5x106cellsで播種される。p.RRE(パッケージングプラスミド)及びFugene 6(Roche Molecular Biochemicals)を使用して形質導入されるレンチウイルスベクター15μgを処理する。培地は、形質感染6時間後、置き換えられ、ウイルス上澄み液は、形質感染後、24時間及び48時間に収獲される。ウイルス粒子は、Beckman SW28ローターを使用して28,000rpmで3時間超遠心分離によって10倍濃縮される。
【0080】
実施例6:CARレンチウイルスを使用したT細胞の形質導入
特定の目的のために、正常個体のT細胞は、構成体テスト及び設計のために対象CAR構成体と共に使われる。初度培養ヒトCD4+及びCD8+ T細胞は、RosetteSepキット(Stem Cell Technologies)を使用した陰性選択によって白血球成分の採集後、元気な志願者、寄贈者または癌患者のPBMCから分離される。T細胞は、完全培地(10%熱不活性化FCS、2mM グルタミン、100U/ml ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン硫酸塩及び10mM HEPESが補充されたRPMI 1640)で培養され、単クローン抗CD3及び抗CD28抗体がコーティングされたビーズを12~24時間処理し、MOI(感染多重度)5~10で形質導入対象レンチウイルスベクターに形質導入する。ヒト組換えIL-2を隔日で50U/mLの最終濃度及び0.5~1.0x106cells/mLの細胞密度を保持させる。Klf4コンストラクトを利用した形質導入は、CARコンストラクト内にKlf4を暗号化するポリヌクレオチドが含まれて形質導入されるか、別途のCARコンストラクトの形質導入と共に行われるか、または順次に行われる。
【0081】
実施例7:癌患者からの自家CAR-T細胞の生成及び評価
癌患者から自家CAR-T細胞の生成有無は、Brentjensなど(Sci.Transl.Med.5:177ra38,2013)の方法によって調査される。簡単に言えば、PBMCは、白血球成分採集術によって癌患者から収得され、洗浄され、冷凍保存される。T細胞は、Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28マグネチックビーズ(Invitrogen)に活性化され、対象レンチウイルスベクターに形質導入された解凍された白血球成分採集集団から分離される。形質導入されたT細胞は、要求される形質導入T細胞容量を果たすために、WAVE生物反応器でさらに増殖される。
【0082】
本発明は、前述した実施例を参考にして説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
[産業上の利用可能性]
本発明の一実施例による方法及び物質は、医薬、特に、抗ガン剤の製造に活用される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1A】本発明の一実施例によるCD8 T細胞に対する抗原の反復刺激試験の設計を概略的に示す概要図である。
【
図1B】前記
図1Aの実験設計によって行われた実験結果であって、抗原の刺激程度によるCD8 T細胞の疲弊状態に関するマーカーであるTox(左側)及びKlf4(右側)のmRNAレベルでの発現程度を測定した結果を示す一連のグラフである。
【
図1C】マウスにMC38大腸癌細胞を注入して誘発された癌組織及び脾臓に存在する多様な段階のCD8 T細胞サブセットに対するマーカー表現型を示す概要図である。
【
図1D】これらのCD8 T細胞の各サブセットのKlf4タンパク質発現程度をmRNAレベルで測定した結果を示すグラフである。
【
図2A】本発明の一実施例によって、対照群レトロウイルスベクター(MigRI)に形質転換されたCD8 T細胞またはKlf4遺伝子を含むレトロウイルスベクター(Klf4)に形質転換されたCD8 T細胞の特性を分析したものであって、対照群(MigRI)とKlf4の本発明の一観点によれば、個体から分離されたCD8 T細胞、前記CD8 T細胞を含む細胞集団、または前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件での前記CD8 T細胞の疲弊状態の抑制方法が提供される。
図2Aは、電子によって形質転換されたCD8 T細胞を前述したサブセットのマーカーを用いてFACS分析で分析した結果を示すものである。
【
図2B】本発明の一実施例によって、対照群レトロウイルスベクター(MigRI)に形質転換されたCD8 T細胞またはKlf4遺伝子を含むレトロウイルスベクター(Klf4)に形質転換されたCD8 T細胞の特性を分析したものであって、対照群(MigRI)とKlf4の本発明の一観点によれば、個体から分離されたCD8 T細胞、前記CD8 T細胞を含む細胞集団、または前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件での前記CD8 T細胞の疲弊状態の抑制方法が提供される。
図2Bは、対照群(MigRI)とKlf4遺伝子に形質転換されたCD8 T細胞とターゲット癌細胞とを共に培養した時、死んでいる癌細胞の比率をFACS分析を通じて分析した結果に係わるグラフである。
【
図2C】本発明の一実施例によって、対照群レトロウイルスベクター(MigRI)に形質転換されたCD8 T細胞またはKlf4遺伝子を含むレトロウイルスベクター(Klf4)に形質転換されたCD8 T細胞の特性を分析したものであって、対照群(MigRI)とKlf4の本発明の一観点によれば、個体から分離されたCD8 T細胞、前記CD8 T細胞を含む細胞集団、または前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件での前記CD8 T細胞の疲弊状態の抑制方法が提供される。
図2Cは、対照群(MigRI)とKlf4遺伝子に形質転換されたCD8 T細胞でのKlf4(左側)及びTox(右側)の遺伝子発現レベルをmRNAレベルで測定した結果を示すグラフである。
【
図2D】本発明の一実施例によって、対照群レトロウイルスベクター(MigRI)に形質転換されたCD8 T細胞またはKlf4遺伝子を含むレトロウイルスベクター(Klf4)に形質転換されたCD8 T細胞の特性を分析したものであって、対照群(MigRI)とKlf4の本発明の一観点によれば、個体から分離されたCD8 T細胞、前記CD8 T細胞を含む細胞集団、または前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件での前記CD8 T細胞の疲弊状態の抑制方法が提供される。
図2Dは、対照群(MigRI)及びKlf4遺伝子に形質転換されたCD8 T細胞(Klf4)でのグランザイムBの発現程度をFACS分析で分析して、各細胞(MigRI GFP-、MigRI GFP+、Klf4 GFP-、Klf4 GFP+)でCD8 T細胞の標的細胞殺害機能に核心的なグランザイムBを発現する細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示す。
【
図2E】本発明の一実施例によって、対照群レトロウイルスベクター(MigRI)に形質転換されたCD8 T細胞またはKlf4遺伝子を含むレトロウイルスベクター(Klf4)に形質転換されたCD8 T細胞の特性を分析したものであって、対照群(MigRI)とKlf4の本発明の一観点によれば、個体から分離されたCD8 T細胞、前記CD8 T細胞を含む細胞集団、または前記CD8 T細胞にキメラ抗原受容体(CAR)を暗号化する遺伝子を形質導入したCAR-CD8 T細胞でKlf4タンパク質の過発現を誘導する段階を含む試験管内の条件での前記CD8 T細胞の疲弊状態の抑制方法が提供される。
図2Eは、対照群(MigRI)及びKlf4遺伝子に形質転換されたCD8 T細胞の機能に核心的なIFN-γの発現程度をFACS分析で分析して、各細胞(MigRI GFP
-、MigRI GFP
+、Klf4 GFP
-、Klf4 GFP
+)でIFN-γを発現する細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示す。
【
図3A】本発明の一実施例によって、Klf4遺伝子が形質導入されたCD8 T細胞を利用した動物実験の投与スケジュールを概略的に示す概要図である。
【
図3B】対照群とKlf4遺伝子が形質導入されたCD8 T細胞のKlf4遺伝子の発現レベルをmRNAレベルで測定した結果を示すグラフである。
【
図3C】対照群(MigRI)及び本発明の一実施例によって、Klf4遺伝子が形質導入されたCD8 T細胞が投与された癌モデル動物での経時的な腫瘍組織の体積の変化を示すグラフである。
【
図3D】前記動物実験後、犠牲になった動物の腫瘍組織から分離されたCD8 T細胞サブセットで細胞分裂程度を示すKi-67発現程度をFACS分析で分析したものであって、分離されたCD8 T細胞のマーカー表現型による全体CD8 T細胞のうち、Ki-67発現細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示す。
【
図3E】前記動物実験後、犠牲になった動物の腫瘍組織から分離されたCD8 T細胞のグランザイムB発現程度をFACS分析で分析して、分離されたCD8 T細胞のマーカー表現型による全体CD8 T細胞のうち、グランザイムB発現細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示す。
【
図3F】前記動物実験後、犠牲になった動物の腫瘍組織から分離されたCD8 T細胞のTNF-α及びINF-γ発現程度をFACS分析で分析して、分離されたCD8 T細胞のマーカー表現型による全体CD8 T細胞のうち、TNF-α及びINF-γ発現細胞の比率を測定した結果に係わるグラフ(左側)及び2次元ヒストグラム(右側)を示す。
【
図4A】本発明の一実施例によって、APTO-253が処理されたCD8 T細胞を利用した動物実験の投与スケジュールを概略的に示す概要図である。
【
図4B】対照群(PBS)とAPTO-253とが処理されたCD8 T細胞を投与した実験動物でKlf4遺伝子の発現レベルをmRNAレベルで測定した結果を示すグラフである。
【
図4C】対照群(PBS)及び本発明の一実施例によって、APTO-253が処理されたCD8 T細胞が投与された癌モデル動物での経時的な腫瘍組織の体積の変化を示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施例による多様なCARコンストラクト(EpCAM CAR、Trop-2 CAR、CEACAM6 CAR及びCEACAM5 CAR)の構造を概略的に示す概要図である。
【配列表】
【国際調査報告】