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特表2024-514905機械工具及び機械工具を動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】機械工具及び機械工具を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240327BHJP
   H02K 7/10 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B25F5/00 G
H02K7/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563836
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2022064018
(87)【国際公開番号】W WO2022258362
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178467.3
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100,9494 Schaan,Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーラー, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】グート, マニュエル
【テーマコード(参考)】
3C064
5H607
【Fターム(参考)】
3C064AA01
3C064AA03
3C064AA04
3C064AA05
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC01
3C064BA01
3C064BA02
3C064BA12
3C064BA20
3C064BA31
3C064BA33
3C064BB01
3C064BB21
3C064BB25
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA74
3C064CA75
3C064CA78
3C064CB05
3C064CB85
5H607BB01
5H607EE21
(57)【要約】
本発明は、機械工具のモータが、2,000~30,000rpmの速度範囲で動作され、モータの慣性が、20・10-6~750・10-6kg・mの範囲にある、工具とモータとを有する機械工具に関する。第2の態様では、本発明は、この機械工具を動作させる方法に関する。機械工具のモータの特性を表す一連のパラメータを選択して指定することにより、機械式スリップクラッチを使用しないように機械工具を設計して動作させることができる。特に、モータのパラメータである「速度」及び「慣性」は、特に、動力工具のギア機構における最大トルクが常に所定の上限値未満になるように選択される。加えて、本発明が、動力工具を用いた特に生産性の高い作業を可能にし、機械式スリップクラッチを省略することによって、サービス間隔を有利に延長できることが、試験により示されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具(11)とモータ(12)とを有する動力工具(10)であって、
前記モータ(12)が、2,000~30,000rpmの速度範囲(1)で動作され得、前記モータ(12)の慣性が、20・10-6~750・10-6kg・mの範囲にある、ことを特徴とする、動力工具(10)。
【請求項2】
前記動力工具(10)が、機械式スリップクラッチを有しない、ことを特徴とする、請求項1に記載の動力工具(10)。
【請求項3】
前記動力工具(10)の前記モータ(12)のトルク(3)が、上限値(5)を超えない、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の動力工具(10)。
【請求項4】
前記トルク(3)の前記上限値(5)が、500~1,500Nmの範囲にあり、好ましくは700~1,200Nmの範囲にあり、特に好ましくは850~950Nmの範囲にあり、最も好ましくは900Nmである、ことを特徴とする、請求項3に記載の動力工具(10)。
【請求項5】
前記動力工具(10)が、変速比を有する変速機(13)を有する、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の動力工具(10)。
【請求項6】
前記動力工具(10)の慣性が、30,000・10-6~70,000・10-6kg・mの範囲にあり、好ましくは40,000・10-6~60,000・10-6kg・mの範囲にあり、より好ましくは45,000・10-6~55,000・10-6kg・mの範囲にあり、最も好ましくは50,000・10-6kg・mである、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の動力工具(10)。
【請求項7】
前記動力工具(10)が、前記モータ(12)の回転を前記動力工具(10)の前記工具(11)に伝達することができるスピンドル(14)を有し、前記スピンドル(14)の速度が、1,000~1,500rpmの範囲にあり、好ましくは1,250~1,350rpmの範囲にあり、特に好ましくは1,300rpmである、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の動力工具(10)。
【請求項8】
動力工具(10)を動作させる方法であって、
前記動力工具(10)が、工具(11)とモータ(12)とを有し、前記動力工具(10)の前記モータ(12)が、2,000~30,000rpmの速度範囲(1)で動作され、前記モータ(12)の慣性が、20・10-6~750・10-6kg・mの範囲にある、ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力工具のモータが、2,000~30,000rpmの速度範囲で動作され、モータの慣性が、20・10-6~750・10-6kg・mの範囲にある、工具とモータとを有する動力工具に関する。第2の態様では、本発明は、2,000~30,000rpmの速度範囲で動作され、モータの慣性が20・10-6~750・10-6kg・mの範囲にある、動力工具を動作させる方法に関する。動力工具のモータの特性を表す一連のパラメータを選択して指定することにより、機械式スリップクラッチを使用しないように動力工具を設計して動作させることができる。モータのパラメータである「速度」及び「慣性」は、特に、動力工具の変速機における最大トルクが常に所定の上限値未満になるように選択される。加えて、本発明は、動力工具による特に生産性の高い作業を可能にし、機械式スリップクラッチを省略することによって、サービス間隔を有利に延長できることが試験により示されている。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、異なるタイプの作業を行うことができる動力工具が知られている。例えば、ハンマードリル、ノミ、カット若しくはアングルグラインダ、スクリュードライバ、又はコアドリルなどが知られており、これらの工具は各々、モータによって駆動される。電源は、主電源接続を介して、又は電池若しくは蓄電池を用いて供給され得る。
【0003】
従来技術から知られている装置では、装置又はその工具がブロックされると、駆動系における最大トルクを制限しようと試みる場合がある。これは特に、装置のユーザを保護するためであり、工具がブロックされた場合に装置が回転し続けることでユーザの腕、肩、又は手首が負傷することを防止するためである。これまで、そのような最大トルク及び動力工具のたわみの制限をもたらして、動力工具のユーザを過大な負荷から保護するために、機械式スリップクラッチが使用されてきた。しかしながら、そのような機械式スリップクラッチには、コストがかかる。加えて、機械式スリップクラッチには、メンテナンスがかかり、且つ短いサービス間隔を必要とする。更に、いくつかのスリップクラッチでは高いトリップ速度が観測され、これにより、動力工具を用いて作業する際の生産性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
したがって、従来技術では、ユーザを保護するために、特にユーザに対する装置の反動を制限することができる機械的な解決策が提案されてきた。しかしながら、動力工具又はその工具がブロックされたときに駆動系において発生する短期的なピークトルクを制限するための満足のいく解決策は存在しない。その結果、現在市販されている動力工具、特にそれらの機械構成要素は、工具のブロック又はジャムを起こした場合にトルクピークで発生し得る極端な負荷に耐えるために、非常に堅牢に設計されなければならない。したがって、従来技術から知られているような従来の動力工具の機構は、大部分の用途に対してオーバーサイズになる。この種のトルクピークは、特に基材から円筒状のドリルコアを切り出すことができるコアドリルの場合、並外れて高くなる可能性がある。これは特に、コアドリルの工具であるドリルビットのねじれ剛性によるものである。
【0005】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上述の欠陥及び欠点を克服し、且つ工具がブロック又はジャムを起こした場合にトルクピークを制限することが可能な、改良された動力工具、及び動力工具を動作させる方法を提供することである。本発明の更なる関心事は、動力工具が機械式スリップクラッチなしで管理されるべきであり、且つ動力工具のユーザを保護するという点で妥協がなされるべきではないということである。加えて、便利な取り扱いを可能にし、特にメンテナンスの少ない、コンパクトで軽量な動力工具を利用可能にすることである。
【0006】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明による主題の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、この目的は、モータが、2,000~30,000rpmの速度範囲で動作され得、モータの慣性が、20・10-6~750・10-6kg・mの範囲にある、工具とモータとを有する動力工具によって達成される。略語rpmは、回転/分の単位、すなわち、回転数/分を表す。発明者らは、動力工具の工具がジャム又はブロックを起こした場合に発生するトルクピークのレベルが、動力工具内の慣性条件に依存することを認識した。本発明は、最大トルクが所定の上限値を超えないようにモータパラメータを巧みに選択することによって、最大トルクのレベルを設定して、制限することができるというアイデアに基づいている。本発明の意味では、好ましくは、上限値は、動力工具又はそのモータによって達成され得るトルクの最大値を表す。この場合、動力工具の駆動系における最大トルクには、特に、動力工具の工具がジャム又はブロックを起こしたときに到達する。そのとき発生する高いトルク値は、本発明の意味では、好ましくは、「トルクピーク」と呼ばれる。特に、発明者らは、最大トルクが、動力工具とそのモータとの間の慣性比、並びに工具のブロック速度、及び動力工具の駆動系における剛性に依存することを認識した。動力工具が2,000~30,000rpmのモータ速度の範囲で動作され、且つ動力工具のモータの慣性が20・10-6~750・10-6kg・mの範囲にある場合、発生する最大トルクを制限して上限値未満に保つことができるというのが、本発明の基本的なアイデアである。
【0008】
本発明は、特に、動力工具のモータの最大トルクが常に所定の上限値未満になるように、モータ速度及びモータ慣性の定められたパラメータ範囲を指定することを含む。これにより、動力工具のユーザは、特に安全な方法で動力工具を動作させることが可能になる。動力工具のジャム又はブロックを起こした工具が休止してしまう時間は、通常、非常に短い。対応する期間は、例えば、5ミリ秒(ms)の範囲にあり得る。ブロックイベント後、動力工具は、好ましくは、所定の初期速度で回転し続ける。この動作は、動力工具のユーザには、動力工具のたわみとして知覚される。試験によれば、従来では多くの場合、ユーザの腕、肩、及び手の領域の怪我につながった動力工具のこのたわみが、本発明を用いて著しく低減され得ることが示されている。
【0009】
提案された動力工具は、特にコアドリルであり得る。動力工具の工具は次いで、好ましくは、ドリルビットとして設計される。ドリルビットは、固体基材から円筒状のドリルコアを切り出すために使用される。しかしながら、提案された動力工具はまた、例えば、ハンマードリル又はドリルドライバであり得る。
【0010】
特に、本発明の文脈では、同様に指定された速度範囲において動力工具のスリップクラッチフリー動作を可能にするモータ慣性の範囲が記載されている。したがって、本発明のおかげで、機械式スリップクラッチを省くことができ、その結果、動力工具を、よりコスト効率よく製造し、且つよりコンパクトに設計することができる。これは、有利には、動力工具の取り扱いが特に便利で、且つ簡素化されることにつながる。特に、2,000~30,000rpmのモータ速度で、及び20・10-6~750・10-6kg・mの範囲の慣性で、動力工具を動作させることにより、生産性が向上した、メンテナンスが容易な、サービス間隔がより長い動力工具を提供することができる。
【0011】
本発明の意味では、モータ慣性という用語は、モータの質量慣性モーメントとして、特に、モータシャフトの回転軸を中心とするモータの回転構成要素の質量慣性モーメントとして理解されることが好ましい。好ましくはモータシャフトの回転軸を中心に回転する、モータの回転構成要素は、好ましくはモータのロータである。同様に、本発明の意味では、「動力工具の慣性」という用語は、好ましくは動力工具の質量慣性モーメントとして理解され、動力工具の回転構成要素は、好ましくは工具の回転軸を中心に回転する。
【0012】
本発明の意味では、トルクの上限が、500~1,500Nmの範囲にあり、好ましくは700~1,200Nmの範囲にあり、特に好ましくは850~950Nmの範囲にあり、最も好ましくは900Nmである、ことが好ましい。本発明の意味では、許容される最大トルク値のレベルは、動力工具の伝達の堅牢性に基づくことが好ましい。発明者らは、動力工具の側部ハンドルの加速度の接線方向成分も、最大トルクにおいて役割を果たすことを認識した。本発明の文脈では、加速度のこの接線方向成分は、いわゆる「痛みのレベル」(LOP)と呼ばれる。本発明の意味では、この加速度成分が、動力工具の工具がブロックされた場合の、動力工具の動作の快適性の尺度として使用されることが好ましい。発明者らは、痛みのレベルが最大トルク又はそのトルクピークに関係することを認識した。この関係性は、特に動力工具の慣性から生じる。したがって、動力工具内の最大許容速度とトルクピークの間には関係性が存在する。それゆえ、トルクを上限値未満の値に制限することにより、有利には、痛みのレベルも制限し、従来技術から知られているような従来の動力工具と比較して、動力工具を動作させるときの快適性を向上させる。
【0013】
本発明の意味では、動力工具が、変速比を有する変速機を有することが好ましい。変速比は、好ましくは、モータ特性、すなわち、動力工具のモータの特性から生じる。本発明の意味では、モータ特性は、動力工具のモータが必要な動力を提供することができる最低の速度値を記述することが好ましい。変速比はまた、特に、動力工具の工具がジャム又はブロックした場合に、工具の休止と動力工具のモータの休止との間のタイムラグに反映される。例えば、工具の休止期間は、5msの範囲にあるが、動力工具のモータの休止期間は、50msの範囲にあり得る。本発明の主題は、特に、動力工具の工具がジャムを起こした後の定められた期間中の処理である。これらの期間は、図1では、第2及び第3の期間と呼ばれる。
【0014】
本発明の文脈では、痛みのレベル、動作の快適性、及び最大トルクは、モータのパラメータ速度、ロータ慣性、及び/又はピークトルクに依存し得ることが、特に認識された。
【0015】
本発明の意味では、動力工具の慣性が、30,000・10-6~70,000・10-6kg・mの範囲にあり、好ましくは40,000・10-6~60,000・10-6kg・mの範囲にあり、より好ましくは45,000・10-6~55,000・10-6kg・mの範囲にあり、最も好ましくは50,000・10-6kg・mである、ことが好ましい。動力工具の慣性に対して言及した値は、好ましくは、モータパラメータ速度及びモータ慣性を決定するための入力変数として使用される。
【0016】
加えて、動力工具は、スピンドルを有することができ、このスピンドルにより、モータの回転が動力工具の工具に伝達される。スピンドルの速度は、1,000~1,500rpmの範囲にあり、好ましくは1,250~1,350rpmの範囲にあり、特に好ましくは1,300rpmであり得る。
【0017】
本発明の意味では、スピンドルの速度が、提案された動力工具の、工具の速度に対応することが好ましい。これは、動力工具の工具が、好ましくは1,000~1,500rpmの範囲の速度、好ましくは1,250~1,350rpmの範囲の速度、特に好ましくは約1,300rpmの速度で回転することを意味する。動力工具のスピンドルの速度又は工具の速度は、変速機における変速比を介してモータの速度に結合され、変速比は、有効慣性モーメントに対して重要な役割を果たす。
【0018】
第2の態様では、本発明は、動力工具を動作させる方法に関する。動力工具は、動力工具のモータが、2,000~30,000rpmの速度範囲で動作され、モータの慣性が、20・10-6~750・10-6kg・mの範囲にある、工具とモータとを有する。提案された動力工具について説明した定義、技術的効果、利点は、提案された動作させる方法に対しても同様に適用される。
【0019】
更なる利点は、以下の図の説明から明らかとなるであろう。図には、本発明の様々な例示的な実施形態が示されている。図、説明及び特許請求の範囲は、多数の特徴を組み合わせて含む。当業者はまた、有用な更なる組み合わせを生成するために、適宜、特徴を個別に検討し、それらを組み合わせるであろう。
【0020】
図では、同一及び類似の構成要素は、同じ参照符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】時間tに対する、モータの速度、工具の速度、装置のトルク及び速度の例示的な曲線を示す図である。
図2】動力工具、特にコアドリルの好ましい実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、時間tに対する、モータの速度(1)、工具の速度(2)、動力工具(10)のトルク(3)及び速度(4)の例示的な曲線を示している。モータの速度(1)、工具の速度(2)、動力工具(10)のトルク(3)及び速度(4)は、y軸上に上部から下部にプロットされており、時間tは、x軸上にプロットされている。概観では、ローマ数字I.、II.、III.で示された、3つの時間範囲に分割されている。第1の期間I.は、動力工具(10)の通常動作に関するものであり、その間に動力工具(10)を用いて作業が行われる。この第1の期間I.では、図1に示される値(1~4)は実質的に一定であり、値(1~4)のそのようなほぼ一定のプロファイルは、平均値の周りの変動及び偏差を排除しない。
【0023】
動力工具(10)の詳細を、図2の例によって図示している。動力工具(10)がコアドリルである場合、例えば円筒状のドリルコアを、ドリルビット(11)を用いて固体基材から切り出すことができる。動力工具(10)の工具(11)としてのドリルビットは、動力工具(10)のモータ(12)によって駆動される。モータ(12)から工具(11)への動作は、スピンドル(14)によって伝達され得る。動力工具(10)はまた、変速機(13)を備えることができる。図2に示される本発明の例示的な実施形態では、コアドリル(10)は、ドリルスタンドに固定されているが、本発明は、特に手持ち式動力工具にも使用することができる。
【0024】
第2の期間II.は、動力工具(10)の工具(11)のブロックから始まる。動力工具(10)の工具(11)のブロックの開始は、図1では、第1の破線の垂直直線で示されている。この第2の期間II.では、モータの速度(1)及び工具の速度(2)が低下する一方で、トルク(3)が急激に上昇する。第2の期間II.は、例えば5ms続く。第2の期間II.の終了は、動力工具(10)の工具(11)が休止してしまうことによって決定される。動力工具(10)のモータ(12)は、完全に制動されるまでに更に時間を必要とし、動力工具(10)のモータ(12)の休止が、第3の期間III.の終了を決定する。工具(11)の休止とモータ(12)の休止との間のタイムラグは、動力工具(10)の変速機(13)の変速比によって決定される。全体として、本発明の文脈では、動力工具(10)の工具(11)から動力工具(10)自体へのインパルスシフトが発生し、インパルスシフト及び動力工具(10)のたわみが、動力工具(10)のユーザに対する危険がそこから生じないように制限されることが、本発明の関心事である。
【0025】
第2の期間II.のほぼ中央では、トルク(3)は、その最高値(5)をとり、これは同時に、トルク(3)の上限値(5)を表す。このトルク(3)の上限値(5)は、図1では、図1内の右上で上向きに指し示すブロック矢印によって示されている。動力工具(10)自体の移動又はたわみ(4)は、第2の期間IIの中央においても発生し得る。過去において、このたわみは、動力工具(10)のユーザの腕、肩、又は手首の負傷につながっており、それゆえ、このたわみ(4)を最小化することが本発明の関心事である。本発明の意味では、動力工具(10)の工具(11)から動力工具(10)自体へのインパルスシフトが発生することが好ましく、インパルスシフト及び動力工具(10)の関連するたわみが、動力工具(10)のユーザに対する危険がそこから生じないように制限されることが、本発明の関心事である。本発明の別の関心事は、トルク(3)がトルク(3)の上限値(5)を常に下回ることである。本発明によれば、これは、動力工具(10)のモータ(12)が、2,000~30,000rpmの速度範囲(1)で動作され、動力工具(10)のモータ(12)の慣性が、20・10-6~750・10-6kg・mの範囲にあることで達成される。
【0026】
第2の期間II.と第3の期間III.との間の遷移において、動力工具(10)又はその駆動装置は、制動し始める。その結果、トルク(3)は、第3の期間III.において著しく減少する。第2の期間II.と第3の期間III.との間の遷移は、図1では、第2の破線の垂直直線で示されている。動力工具(10)のモータ(12)の速度(1)も、第3の期間III.において減少し、モータ速度(1)の減少は、第3の期間III.の終了時にモータ(12)が完全に休止してしまうまでほぼ直線的に発生する。動力工具(10)のたわみ(4)も、第3の期間IIIにおいて停止される。第3の期間III.は、例えば50ms続くことができる。
【符号の説明】
【0027】
1 モータの速度
2 工具の速度
3 トルク又は負荷
4 動力工具の速度
5 トルクの上限
10 動力工具
11 工具
12 モータ
13 変速機
14 スピンドル
I. 動力工具の動作
II. ブロックの場合に工具が休止してしまう期間
III. ブロックの場合にモータが休止してしまう時間
図1
図2
【国際調査報告】