(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ワイヤー及びケーブル用封止コーティング
(51)【国際特許分類】
C08L 27/16 20060101AFI20240327BHJP
C09D 5/25 20060101ALI20240327BHJP
C09D 127/16 20060101ALI20240327BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240327BHJP
C09D 127/20 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08L27/16
C09D5/25
C09D127/16
C09D7/20
C09D127/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564245
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 US2022023763
(87)【国際公開番号】W WO2022225713
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユチエ・リウ
(72)【発明者】
【氏名】スキップ・エム・スパークス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・ジェイ・ヘンリー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BD141
4J002GH00
4J002GJ00
4J002GQ00
4J002HA05
4J038CD011
4J038CD091
4J038CD111
4J038CD131
4J038JA18
4J038JA33
4J038KA06
4J038MA07
4J038MA09
4J038MA15
4J038NA21
4J038PA06
4J038PA07
4J038PA19
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】
本開示は、接続用組成物及びワイヤー又はケーブル絶縁用封止コーティングである。接続用組成物は、PVDFコポリマーと溶媒とを含む。前記溶媒は、環状ケトンを有し、
前記PVDFコポリマーの重量%は、PVDFコポリマーと溶媒との合計質量に基づき20~40wt.%、好ましくは20~35wt.%である。前記PVDFコポリマーは、1種以上のコモノマーと、少なくとも75wt.%のフッ化ビニリデン単位、好ましくは少なくとも80%のフッ化ビニリデン単位とを有し、且つ230℃及び100s-1において2~12kPoise、好ましくは4~10kPoiseの溶融粘度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVDFコポリマーと溶媒とを含む接続用組成物であって、
前記溶媒は、環状ケトンを有し、
前記PVDFコポリマーの重量%は、PVDFコポリマーと溶媒との合計質量に基づき20~40wt.%、好ましくは20~35wt.%であり、
前記PVDFコポリマーは、1種以上のコモノマーと、少なくとも75wt.%のフッ化ビニリデン単位、好ましくは少なくとも80%のフッ化ビニリデン単位とを有し、且つ230℃及び100s
-1において2~12kPoise、好ましくは4~10kPoiseの溶融粘度を有する、接続用組成物。
【請求項2】
前記PVDFコポリマーは、2~25wt.%のコモノマーを有する、請求項1に記載の接続用組成物。
【請求項3】
前記コモノマーは、フッ化ビニル;トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;1,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;3,3,3-トリフルオロプロピレン;パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)及びパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル類;パーフルオロ(1,3-ジオキソール);パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)、好ましくはHFP、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン、3,3,3-トリフルオロプロピレン、およびTFEの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の接続用組成物。
【請求項4】
前記コモノマーは、HFPを有する、請求項1に記載の接続用組成物。
【請求項5】
前記環状ケトンは、シクロペンタノンを有する、請求項1に記載の接続用組成物。
【請求項6】
前記溶媒は、共溶媒を更に有する、請求項1に記載の接続用組成物。
【請求項7】
前記共溶媒は、アセトン又は炭素数1~6のアルコールを有する、請求項1に記載の接続用組成物。
【請求項8】
前記環状ケトンは、前記全溶媒の20wt.%超えて、好ましくは30wt.%超えて有する、請求項1に記載の接続用組成物。
【請求項9】
ケーブル又はワイヤージョイントをコーティングする方法であって、
前記方法は、
請求項1に記載の接続用組成物を供給する工程と、
第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーを第2のケーブル又はワイヤーに接続するジョイントであって、前記第1のケーブル若しくはワイヤ又はセンサー、又は前記第2のケーブル又はワイヤーの少なくとも一方が、前記第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーが前記第2のケーブル又はワイヤーに接続されるオープン領域を除き、その上にフルオロポリマー絶縁体を有するジョイントを形成する工程と、
前記ジョイントを完全に被覆し且つ前記オープン領域に隣接する前記絶縁被覆の部分に結合するために前記ジョイントについて前記接続用組成物を施して、前記ジョイントに連続フルオロポリマー絶縁被覆を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項10】
ワイヤー又はケーブルのフルオロポリマー絶縁体における破断を修復する方法であって、
前記方法は、
請求項1の接続用組成物を供給する工程と、
前記ワイヤー又はケーブルのフルオロポリマー絶縁体に破断を有する前記ワイヤー又はケーブルを供給する工程と、
前記絶縁体の破断に前記接続用組成物を施す工程と、
塗布された接続用組成物を乾燥させて、断線上に連続フルオロポリマー絶縁被覆を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項11】
前記接続用組成物は、前記ケーブル又はワイヤー上にスプレー又は塗布によって施される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記接続用組成物は、周囲温度で施される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
前記接続用組成物は、20℃から160℃までの温度、好ましくは40から155℃の温度で乾燥される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項14】
前記熱は、前記オープン領域又は前記絶縁の破断を被覆する前記接続用組成物に局所的に加えられる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、前記接続用組成物を2層以上塗布する工程を更に含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項16】
前記フルオロポリマー絶縁体は、100sec
-1及び230℃で測定された溶融粘度が4~10kPのホモポリマー又はコポリマーを有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項17】
前記フルオロポリマー絶縁体は、フッ化ポリビニリデンホモポリマー又はコポリマーを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーを第2のケーブル又はワイヤーに接続されるジョイントであって、
前記ケーブル又はワイヤーの少なくとも1つは、フルオロポリマー絶縁体を有し、
前記ジョイントは、前記ジョイントを被覆し且つ接合部に隣接するフルオロポリマー絶縁体の部分に結合して前記ジョイントを絶縁する封止コーティングを更に有し、
前記シーリングコーティングは、230℃及び100s
-1において2~12、好ましくは4~10kPoiseの溶融粘度のPVDFコポリマーを有する、ジョイント。
【請求項19】
前記PVDFコポリマーは、2~25wt.%のコモノマーを有する、請求項18に記載のジョイント。
【請求項20】
前記コモノマーは、フッ化ビニル;トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;1,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;3,3,3-トリフルオロプロピレン;パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)及びパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)などのパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル類;パーフルオロ(1,3-ジオキソール);パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)、好ましくはHFP、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン、3,3,3-トリフルオロプロピレン、およびTFEの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記コモノマーは、HFPを有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記フルオロポリマー絶縁体は、PVDFホモポリマー又はコポリマーである、請求項18に記載のジョイント。
【請求項23】
前記封止接続用組成物は、フルオロポリマー絶縁体に接着し、防水シールを形成する、請求項18に記載のジョイント。
【請求項24】
前記封止コーティングの1層の厚さは60~200ミクロンである、請求項18に記載のジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤー又はケーブルジョイント用の保護封止接続用コーティングである。
【背景技術】
【0002】
2つ以上のケーブル又はワイヤーを結合する(ジョイントを形成する)ために接合又は接続が必要な場合、コアの周囲の保護絶縁体(一次絶縁)を除去してコア(「オープン領域」)を露出させる必要がある。もし、修復されていない場合、オープンジョイント(又はオープン領域)は、環境への曝露により潜在的な故障点となりうる。また、ジョイントに隣接する絶縁の端部により、流体が絶縁とワイヤー又はケーブルのコアとの間に浸透し、腐食が発生してワイヤー又はケーブルの早期故障につながる可能性もある。
【0003】
ジョイントは、2本以上のワイヤー又はケーブルの端部を切断し、一次絶縁体を剥がし、そこから露出したワイヤー又はケーブルの端部を接合することで形成することができ、又は、1本のワイヤー又はケーブルから一次絶縁体の一部を除去してワイヤー又はケーブルのコアを露出させ、露出したコアに2本目のワイヤー又はケーブルを接続してジョイントを形成することもできる。ジョイントを形成する方法や理由とは無関係に、ジョイントはもはや、各ワイヤー又はケーブルを連続被覆する一次絶縁体の保護を有さない。
【0004】
ワイヤー又はケーブルのジョイントを被覆して保護するために、絶縁材を再適用する手段は数多くある。一般的な手段の1つは、ジョイントの周囲に熱収縮チューブを適用することである。熱収縮チューブは、接合部を熱収縮チューブに通して挿入し、熱収縮チューブに直接熱を加えてチューブを収縮させることによって適用される。熱収縮チューブの融点以上の温度になると、熱収縮チューブは収縮し始める。熱収縮チューブのサイズが小さくなり、ジョイントに接触して絶縁被覆となる。熱収縮チューブと一次絶縁材との間の界面には、接着剤などのマスチックシーラントを使用し、流体の浸入を防ぐシールを形成することができる。この技術の一例として、US3297819Aには、高効率の結合を形成する可溶性材料を使用できる熱収縮チューブ(「熱不安定被覆」と呼ばれる)が記載されている。露出した接合部を保護するその他の一般的な方法としては、電気テープ、シーリング材、およびこれらの方法の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0005】
より過酷な環境で使用される産業用ケーブルでは、ケーブルやワイヤーコアの一次絶縁にフルオロポリマーを使用する必要がある場合が多い。フルオロポリマーは一般に耐薬品性があり、高温耐性があることが知られている。フルオロポリマーの絶縁は、一次絶縁体、保護バリア層、ジャケットのいずれであっても、PVCやオレフィンの一次絶縁を使用する従来のケーブルやワイヤーでは耐えられないような環境でも使用することができる。このような環境には、化学薬品、高温、放射線、長時間の屋外暴露などが含まれる。フルオロポリマー一次絶縁体を使用して製造されたケーブルやワイヤーは、一般的に困難で過酷な環境で使用される。
【0006】
フルオロポリマー一次絶縁材を使用して製造されたケーブル又はワイヤーは、設計及び用途によっては、2本以上のワイヤー又はケーブルを接続したり、別のワイヤー又はケーブルの長さに沿って1本以上のワイヤーを接続したりするために、ジョイントが必要になる場合がある。フルオロポリマー一次絶縁で構成されたケーブル又はワイヤーにジョイントを形成するには、ジョイントが必要な場所でフルオロポリマー一次絶縁を除去する必要がある。保護フルオロポリマー絶縁体が破断し又は剥がれると、ワイヤーは環境条件に曝されることになり、ケーブル又はワイヤーのコアが損傷する可能性がある。ジョイントを適切に補修するためには、液体や過酷な化学物質が絶縁体に浸透し且つケーブル又はワイヤーのコアを攻撃することから防ぐために、保護フルオロポリマー絶縁を連続層にする必要がある。過酷な環境の場合、熱収縮チューブ、シーラント及びテープなど、一般的なジョイントの保護方法では、フルオロポリマー絶縁層が連続しないため、必要な保護が得られず、ケーブル又はワイヤーコアが損傷する可能性がある。過酷な環境条件に耐えるためには、絶縁層をフルオロポリマーで被覆し続ける必要がある。
【0007】
米国特許8,502,074 B2には、PVDF又はポリエチレンのいずれかで構成されたジョイントについて、その場で成形することによって封止装置を導入し、ジョイントを保護する手段が記載されている。接続部が防水性でない場合、接続不良の危険性が高い。そのため、ジョイントを密閉し、周囲から隔離するための様々なアプローチが取られてきた。
【0008】
ケーブル又はワイヤー上のフルオロポリマー保護層が連続し、水又は他の流体に対するバリアシールをもたらすワイヤー又はケーブルのフルオロポリマー絶縁の破断を修復する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の要旨
【0010】
組成物であって、ワイヤー又はケーブル用の「封止コーティング」とも呼ばれる「封止接続用コーティング」を提供するための「接続用組成物」が開示されている。フルオロポリマー絶縁体を有するワイヤー又はケーブル上の接続用コーティングを提供する方法が開示されている。封止接続用コーティングを有するワイヤー又はケーブルジョイントが開示されている。損傷領域に封止接続用コーティングを施す、損傷したワイヤー又はケーブルを修復する方法を開示する。本発明の組成物は、破断又は部分的に開放されたワイヤー又はケーブルのフルオロポリマー絶縁体をコアに再接続する新規かつ新規な方法を提供し、流体(液体又は気体)が浸透してコアに接触しないようなバリアシールを連続的に形成する。これは、本発明の組成物をワイヤー又はケーブルに塗布して、フルオロポリマー絶縁体の破断領域又はオープン領域を被覆し、次いで本発明の組成物を乾燥させてワイヤー又はケーブル上に封止被膜を形成することによって実施することができる。本発明の組成物はフルオロポリマー絶縁体の破断を被覆するように施され、乾燥させることにより、ワイヤー又はケーブル上に封止被覆を構成する連続フルオロポリマー保護層が形成される。
【0011】
本発明の組成物は、バリアシールを形成するために、ガスだけでなく流体に対してもバリアを生成する方法でフルオロポリマー絶縁体に接着する。好ましくは、本発明の組成物は、PVDF樹脂又はPVDFコポリマーからなるフルオロポリマー絶縁体と共に使用される。好ましくは、フルオロポリマー断熱材は一次断熱材である。本発明の組成物は、フルオロポリマー絶縁体に接着することができ、フルオロポリマー絶縁体の下と導体と間に浸透し、一度乾燥した後、組成物を更に固定して閉じ込めた結果、バリアシール性が更に改善し、流体がコアに接触することを防止する。
【0012】
かかるケーブルは、本発明の組成物を使用でき、カソード保護ケーブルと呼ばれる。カソード保護ケーブルは、水又は塩水と直接接触するような過酷な環境で使用され、通常、ポリオレフィン「二次」絶縁層の下にフルオロポリマー絶縁層を備えている。この場合、フルオロポリマー絶縁層は一次絶縁体及びオレフィン層の保護ジャケットと見なされる。
【0013】
フルオロポリマー絶縁被覆を有するカソード保護ケーブルにジョイントが必要な場合、接続を行うためにフルオロポリマー絶縁被覆が破壊される。本明細書で説明する本発明の組成物は、カソード保護ケーブルに使用することで、破断を修復し、連続フルオロポリマーバリア絶縁被覆を形成することができる。また、本発明の組成物は、フルオロポリマー絶縁層を含む任意のケーブルに同様の方法で使用することができる。好ましい実施形態は、フルオロポリマー絶縁体を含むワイヤー又はケーブルに本発明の組成物を施すことであり、より具体的には、フルオロポリマー絶縁体がPVDF一次絶縁体で構成されている場合である。本発明の組成物は、単独で、又はフルオロポリマー絶縁体の露出したジョイント又は破断を被覆及び保護する任意の他の一般的な方法と組み合わせて使用することができる。一例として、接着剤を有する熱収縮チューブ又は電気テープを本発明の組成物の上に使用して、更なる保護を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の態様
【0015】
態様1:PVDFコポリマーと溶媒とを含む接続用組成物であって、前記溶媒が環状ケトンを有し、前記PVDFコポリマーの質量%がPVDFコポリマーと溶媒との合計質量に基づいて20~40wt.%、好ましくは20~35wt.%であり、前記PVDFコポリマーは、1種以上のコモノマーと少なくとも75wt.%のフッ化ビニリデン単位、好ましくは少なくとも80%のフッ化ビニリデン単位を有し、且つ230℃及び100s-1において2~12kPoise、好ましくは4~10kPoiseの溶融粘度を有する、接続用組成物。
【0016】
態様2:前記PVDFコポリマーは、2~25wt.%のコモノマーを有する、態様1の組成物。
【0017】
態様3:前記コモノマーは、フッ化ビニル;トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;1,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;3,3,3-トリフルオロプロピレン;パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)及びパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)等のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル類;パーフルオロ(1,3-ジオキソール);パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)、好ましくはHFP、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン、3,3,3-トリフルオロプロピレン、およびTFEの組み合わせ、からなる群から選択される、態様1又は2の組成物。
【0018】
態様4:前記コモノマーは、HFPを有する、態様1~3のいずれかの組成物。
【0019】
態様5:前記環状ケトンは、シクロペンタノンを有する、態様1~4のいずれかの組成物。
【0020】
態様6:前記溶媒は、共溶媒を更に有する、態様1~5のいずれかの組成物。
【0021】
態様7:前記共溶媒は、アセトン又は炭素数1~6のアルコールを有する、態様1~6のいずれかの組成物。
【0022】
態様8:前記環状ケトンは、前記全溶媒の20wt.%超えて、好ましくは30wt.%超えて有する、態様1~7のいずれかの組成物。
【0023】
態様9:PVDFコポリマーの分子量が、PMMAアクリル標準を用いたGPCによって決定されるように、150~400kg/mol、好ましくは150~300kg/mol、より好ましくは180~220kg/molである、態様1~8のいずれかの組成物。
【0024】
態様10:ケーブル又はワイヤージョイントをコーティングする方法であって、
前記方法は、態様1~9のいずれかの接続用組成物を供給する工程と、第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーを第2のケーブル又はワイヤーに接続するジョイントであって、前記第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサー、又は前記第2のケーブル又はワイヤーの少なくとも一方が、前記第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーが前記第2のケーブル又はワイヤーに接続されるオープン領域を除いて、その上にフルオロポリマー絶縁体を有するジョイントを形成する工程と、前記ジョイントを完全に被覆し且つ前記オープン領域に隣接する前記絶縁被覆の部分に結合するために前記ジョイントについて前記接続用組成物を塗布して、前記ジョイントに連続フルオロポリマー絶縁被覆を形成する工程と、を含む、方法。
【0025】
態様11:ワイヤー又はケーブルのフルオロポリマー絶縁体における破断を修復する方法であって、前記方法は、態様1~9のいずれかの接続用組成物を供給する工程と、前記ワイヤー又はケーブルのフルオロポリマー絶縁体に破断を有する前記ワイヤー又はケーブルを提供する工程と、前記絶縁体の破断上に接続用組成物を塗布する工程と、塗布された接続用組成物を乾燥させて、前記破断上に連続フルオロポリマー絶縁被覆を形成する工程と、を含む、方法。
【0026】
態様12:前記接続用組成物は、前記ケーブル又はワイヤー上にスプレー又は塗布によって施される、態様10又は11の方法。
【0027】
態様13:前記接続用組成物は、周囲温度で施される、態様10~12のいずれかの方法。
【0028】
態様14:前記接続用組成物は、20℃から160℃までの温度、好ましくは40から155℃の温度で乾燥される、態様10又は13のいずれかの方法。
【0029】
態様15:前記熱は、前記開口領域又は前記絶縁体の破断を覆う前記接続用組成物に局所的に加えられる、態様10又は14のいずれかの方法。
【0030】
態様16:前記方法は、前記接続用組成物を2層以上塗布する工程を更に含む、態様10又は15のいずれかの方法。
【0031】
態様17:前記フルオロポリマー絶縁体は、100sec-1及び230℃で測定された溶融粘度が4~40kPのホモポリマー又はコポリマーを有する、態様10又は16のいずれかの方法。
【0032】
態様18:前記フルオロポリマー絶縁体は、ポリビニリデンフルオライドホモポリマー又はコポリマーを有する、態様10~17のいずれかの方法。
【0033】
態様19:第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーを第2のケーブル又はワイヤーに接続されるジョイントであって、前記ケーブル又はワイヤーの少なくとも1つは、フルオロポリマー絶縁体を有し、前記ジョイントは、前記ジョイントを被覆し且つ接合部に隣接するフルオロポリマー絶縁体の部分に結合して接合部を絶縁する封止コーティングを更に有し、前記シーリングコーティングは、230℃及び100s-1において2~12kP、好ましくは4~10kPoiseの溶融粘度のPVDFコポリマーを有する、ジョイント。
【0034】
態様20:前記PVDFコポリマーは、2~25wt.%のコモノマーを有する、態様19のジョイント。
【0035】
態様21:前記コモノマーは、フッ化ビニル;トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;1,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;3,3,3-トリフルオロプロピレン;パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)及びパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)等のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル類;パーフルオロ(1,3-ジオキソール);パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)、好ましくはHFP、2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン、3,3,3-トリフルオロプロピレン、およびTFEの組み合わせ、からなる群から選択される、態様19又は20の組成物。
【0036】
態様22:前記コモノマーは、HFPを有する、態様19又は20の組成物。
【0037】
態様23:前記フルオロポリマー絶縁体は、PVDFホモポリマー又はコポリマーである、態様19~22のいずれかのジョイント。
【0038】
態様24:前記封止接続用組成物は、前記フルオロポリマー絶縁体に接着し、防水シールを形成する、態様19~23のいずれかのジョイント。
【0039】
態様25:前記封止コーティングの1層の厚さは60~200ミクロンである、態様19~24のいずれかのジョイント。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
【0041】
本出願で引用した文献は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0042】
明細書で使用するパーセンテージは、特に断らない限り、重量%(wt.%)であり、分子量は、特に断らない限り、重量平均分子量(Mw)である。分子量は、PMMA(ポリメチルメタクリレート)標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。溶融粘度(MV)は230℃及び100sec-1で測定される。
【0043】
「コポリマー」とは、2つ以上の異なるモノマー単位を有するポリマーを意味する。「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマーの両方を意味するために使用される。「PVDF」は、「ポリフッ化ビニリデン」を意味する。例えば、本明細書において「PVDF」及び「ポリフッ化ビニリデン」は、特に断りのない限り、ホモポリマー及びコポリマーの両方を意味するために使用される。ポリマーは、均一、不均一、又はランダムであってもよく、コモノマー単位の勾配分布を有してもよい。
【0044】
「ジョイント」とは、ワイヤー又はケーブルに沿って、2本以上のワイヤーが接続される箇所のことである。ジョイントは、2本以上のワイヤー又はケーブルが接続される「スプライス」のようなワイヤー接続とすることができる。ジョイントを作成するには、保護絶縁コーティングを除去してコアを露出させ、2つの異なるワイヤー又はケーブルのコアを接続する。
【0045】
ワイヤー又はケーブルの「一次絶縁体」は、ワイヤー又はケーブルのコアに直接接触するポリマー層である。「ジャケット」又は「二次絶縁体」は、すでに一次絶縁体を含む1本以上のワイヤー又はケーブルの上に塗布される絶縁層である。「絶縁被覆」という用語は、本明細書ではより一般的に、中心コアの上のあらゆる絶縁を記述するために使用され、一次絶縁体、二次絶縁体及び他のコーティング層を含むことができる。「コア」とは、ケーブルの中心に存在するものである。コアは多くの場合、1つ以上の導体である。「封止接続用コーティング」は、「封止コーティング」とも呼ばれ、本発明の組成物によって形成されるコーティングである。フルオロポリマー絶縁体は、ジョイントを形成するために損傷又は開放される前のワイヤー又はケーブル上に存在する絶縁体である。フルオロポリマーバリア絶縁被覆は、封止コーティングとフルオロポリマー絶縁体とを含む。
【0046】
本発明は、溶媒中のPVDFコポリマーを含む組成物に関する。本発明は、ワイヤー及びケーブル用途で使用される組成物から形成された封止コーティングに関する。また、本発明は絶縁被覆が不連続(絶縁の切れ目)であるジョイント又は箇所で本発明の組成物をワイヤー又はケーブルに施すことにより、ワイヤー又はケーブル上に封止コーティングを形成する方法に関する。また、本発明は、封止コーティングを含むワイヤー又はケーブルに関する。
【0047】
接続用組成物
【0048】
本発明は、ワイヤー又はケーブルの絶縁体内のジョイント又は他の破断をシールするための接続用組成物を提供する。本発明で使用される接続用組成物は、PVDFコポリマーと溶媒とを含み、その溶媒は環状ケトンを有する。PVDFの重量パーセントは、接続用組成物中のPVDFコポリマーおよび溶媒の総重量に基づいて、20~40wt.%、好ましくは22~35wt.%、より好ましくは25~35wt.%である。固形分が20wt.%未満では、粘度が低すぎて十分な材料が施されない。固形分が40wt.%を超えると、粘度が高すぎて乾燥中に均一なコーティングが形成されない。PVDFコポリマーは、好ましくはVDF/HFPコポリマーである。
【0049】
充填剤、繊維、顔料、粘度調整剤等の他の添加剤を連結組成物に含めることができる。
【0050】
本発明の組成物中のPVDFコポリマー及び封止接続用コーティング。
【0051】
PVDFコポリマーという用語は、1種以上の他のフッ素化コモノマーを含むフッ化ビニリデン(VDF)のコポリマーを示す。本発明のPVDFコポリマーは、フッ化ビニリデン単位がポリマー中の全モノマー単位の60wt.%を超え、より好ましくは70wt.%を超え、最も好ましくは75wt.%を超えて有する。フッ素化コモノマーは、40wt.%未満、好ましくは30wt.%未満、より好ましくは25wt.%未満のフッ素化コモノマーを有する。好ましくは、フッ素化コモノマーはポリマー中に25~2wt.%存在する。
【0052】
フッ素化コモノマーは、重合されるために開口可能なビニル基を含有し、このビニル基に直接結合して、PVDFコポリマー中に既に存在するVDFを除いて、少なくとも1個のフッ素原子、少なくとも1個のフルオロアルキル基又は少なくとも1個のフルオロアルコキシ基を有する化合物から選択される。フッ素化コモノマーの例としては、フッ化ビニル;トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2-ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);2,3,3,3-テトラフルオロプロピレン;1,3,3,3-テトラフルオロプロピレン; 3,3,3-トリフルオロプロピレン;パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)及びパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)等のパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル;パーフルオロ(1,3-ジオキソール);パーフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)(PDD)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なPVDFコポリマーは、VDFとHFPとのコポリマー、VDFと2,3,3,3-テトラフルオロプロピレンとのコポリマー、VDFと3,3,3-トリフルオロプロピレン、VDF、HFP及びTFE(「THV」)のターポリマーとのコポリマーを有する。
【0053】
好ましくは、接続用組成物及び封止コーティングとして使用されるPVDFコポリマーは、VDF及びHFPのコポリマーを有する。一実施形態では、PVDFコポリマーは、少なくとも70wt%のVDF単位及び30wt%以下のHFP単位、好ましくは75wt%のVDF単位及び25wt%以下のHFP単位、好ましくは2~25wt.%のヘキサフルオロプロペン(HFP)単位を有する。
【0054】
PVDFコポリマーの溶融粘度は、230℃及び100sec-1で測定されるASTM法D-3835に従って、2.0キロポアズ(kP)を超え、好ましくは4kPを超え、より好ましくは6kPを超え12kPまで、又は10kPまでである。好適な範囲は4kP~10kPである。PVDFコポリマーの融点は、好ましくは100℃~150℃、好ましくは110℃~130℃である。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明の封止コーティングに使用するためのPVDFコポリマーの重量平均分子量は、コポリマーであり、PMMAを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって決定される150~400、好ましくは150~350、より好ましくは150~310kg/mol、さらに好ましくは150~250kg/molである。
【0056】
本発明において、封止コーティングに使用されるPVDFコポリマーは、一般に、水性フリーラジカル乳化重合を使用する当該技術分野で公知の手段によって調製されるが、懸濁重合、溶液重合及び超臨界CO2重合プロセスを使用することもできる。
【0057】
一般的な乳化重合プロセスでは、反応器に脱イオン水、重合中に反応物の塊を乳化できる水溶性界面活性剤、及び任意にパラフィンワックス防汚剤を装入する。混合物を撹拌し、脱酸素する。任意で、次いで所定量の連鎖移動剤(CTA)を反応器に導入し、反応器の温度を所望のレベルまで上昇させ、フッ化ビニリデンおよび1種以上のコモノマーを反応器に供給する。フッ化ビニリデン及びコモノマーの初期チャージが導入され、反応器内の圧力が所望のレベルに達したら、重合開始剤エマルジョン又は溶液を導入して重合反応を開始する。反応の温度は、使用する開始剤の特性によって変化させることができ、当業者であればその方法が公知である。典型的には、温度は約30℃から150℃、好ましくは約60°から120℃である。反応器内で所望のポリマー量に達したら、モノマー供給は停止するが、開始剤供給は任意に継続して残留モノマーを消費する。残留ガス(未反応モノマーを含む)は抜け、ラテックスは反応器から回収される。
【0058】
重合において使用される界面活性剤は、PVDFエマルジョン重合において有用であることが当業者に知られている任意の界面活性剤であることができ、これには、パーフルオロ、部分フッ素化、及び非フッ素化界面活性剤が含まれる。好ましくは、本発明のPVDFコポリマーエマルションはフッ素系界面活性剤を含まず、重合のどの部分にもフッ素系界面活性剤は使用されない。PVDF重合に有用な非フッ素系界面活性剤としてはイオン性および非イオン性の両方があり得るが、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、及びそれらの塩、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコール、並びにそれらのブロックコポリマー、アルキルホスホン酸塩、およびシロキサン系界面活性剤が挙げられ、これらに限定されない。
【0059】
PVDF共重合により、一般的に、10~60重量%、好ましくは10~50wt.%の固形分レベルを有し、500nm未満、好ましくは400nm未満、より好ましくは300nm未満のラテックス重量平均粒径を有するラテックスが得られる。離散重量(体積ともいう)平均粒径は一般に少なくとも20nm、好ましくは少なくとも50nmである。ラテックスを乾燥させると、ラテックスの離散粒子は凝固してより大きなサイズの粉末粒子を形成する。
【0060】
凍結融解安定性を向上させるために、エチレングリコール等の1種以上の他の水混和性溶媒をPVDFラテックスに少量(好ましくは10wt.%未満、より好ましくは5wt.%未満)混合してもよい。
【0061】
懸濁重合は一般に、乳化重合で生成されるよりも大きな粒子径を生成する。
【0062】
PVDFコポリマーは、ラテックス又は懸濁液のいずれで製造されたものであっても、噴霧乾燥、凍結乾燥、凝固乾燥、ドラム乾燥等の当該技術分野で公知の手段によって粉末に乾燥されるが、これらに限定されるものではない。乾燥PVDFコポリマー粉末の平均粒径は、好ましくは0.5~200ミクロン、好ましくは1~100ミクロン、より好ましくは2~50ミクロンである。
【0063】
特に有用なVDF/HFPコポリマーとしては、Arkema Inc(米国ペンシルバニア州キングオブプルシア)のKYNAR FLEX(商標登録) PVDF樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
PVDFコポリマーは架橋されておらず、架橋部位を含まない。
【0065】
溶媒
【0066】
本発明において、環状ケトン又は低沸点の共溶媒を有する環状ケトンが好ましい溶媒である。低沸点とは80℃以下を意味する。環状ケトンとしては、例えばシクロプロパノン、シクロヘキサノン、シクロブタノン、シクロペンタノン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの環状ケトンの一般式は、(CH2)nCOであり、ここでnは2~18である。環状ケトンは、シクロペンタノンが好ましい。本発明で使用される溶媒系は、共溶媒を含むことができる。共溶媒は、低沸点を有するPVDFに通常使用される溶媒でもある。共溶媒の例としては、アセトン、ケトン(メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン(MPK)等)、メタノール又はエタノール等の炭素数1~6のアルコール;及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、シクロペンタノンは、溶媒系としてアセトンと共に使用することができる。
【0067】
好ましくは、接続用組成物を調製するためにPVDFコポリマーと溶媒とを合わせ、次いで任意に、溶媒中へのポリマーの溶解を促進するために好ましくは40~60℃の高温に保持することが好ましい。
【0068】
好適な組成物において、溶媒はシクロペンタノンであり、PVDFは2~25wt.%のHFPを含むVDF/HFPコポリマーであり、230℃及び100sec-1で測定されるASTM法D-3835に従って2以上、好ましくは4kpを超え12Kpまで、好ましくは10までの溶融粘度を有する。好適な範囲は4kP~10kPである。
【0069】
ワイヤー又はケーブルへの組成物の使用。
【0070】
本発明は、フルオロポリマー絶縁体が絶縁体の破断を示すフルオロポリマー絶縁体を有する任意のワイヤー又はケーブルに使用される組成物である。絶縁体の破断は、ジョイントの形成の結果であるか、又はフルオロポリマー絶縁体の製造中、設置中、又は使用中に損傷/破断する可能性がある。
【0071】
接続用組成物及びその結果得られる封止コーティングは、マルチストランド導体の形態の金属導体を有するPVDF絶縁被覆ワイヤー及びケーブルにおいて最も有用であるが、金属導体がソリッド導体のような他の形態である場合にも使用することができる。
【0072】
接続用組成物をジョイントに使用する場合、ジョイント内のワイヤー又はケーブルの一方はフルオロポリマー絶縁体を有し、好ましくは、フルオロポリマー絶縁体はPVDFを含む一次絶縁体である。
【0073】
2本以上のワイヤー又はケーブルで構成されるジョイントを絶縁及び封止するために供給する方法であり、又はワイヤー又はケーブルのフルオロポリマー絶縁体の破断を封止するために使用する方法である。この方法は、接続用組成物をジョイント又はフルオロポリマー絶縁体の破断に施し、施された接続用組成物を乾燥させて封止用コーティングを形成する工程を含む。本発明は、第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーを第2のケーブル又はワイヤーに接続するジョイントを絶縁及び封止する方法を提供する。接続されたケーブル又はワイヤーの少なくとも一方は、第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーが第2のケーブル又はワイヤーに接続されてジョイントを形成するオープン領域を除き、その上に一次絶縁体を有する。オープン領域とは、センサー、プローブ、ケーブル又はワイヤー上の領域で、一次絶縁体が除去されてワイヤー又はケーブルが露出している領域のことである。該方法は、ジョイントを完全に被覆し、オープン領域を有する連続フルオロポリマー絶縁体に接触し、フルオロポリマー絶縁体、好ましくは一次絶縁体の、オープン領域に隣接する部分に結合するように、ジョイントのその場で接続用組成物を施し、それによってジョイントを絶縁し、接合部への水等の流体の浸入を防止する。
【0074】
ケーブル絶縁体のワイヤー内の破断を修復する方法が提供される。接続用組成物は、フルオロポリマー絶縁体のジョイント又は破断を完全に被覆するように施され、次いで乾燥されることにより、ジョイント又は破断を被覆するケーブル又はワイヤー上に封止被覆が形成される。接続用組成物は、オープン領域を有する連続フルオロポリマー絶縁体に接着し、封止コーティングを含む連続フルオロポリマー絶縁被覆を形成する。封止コーティングはワイヤー又はケーブルを絶縁し、水等の流体がワイヤー又はケーブルに浸入するのを防ぐことができる。接続用組成物は、目標厚さを達成するために、一回又は複数回施される。
【0075】
接続用組成物は、フルオロポリマー絶縁体とコアの間に別の材料がある場合にも機能する。たとえば、内側のオレフィン層と外側のフルオロポリマー層とで構成される二重壁断熱材である。
【0076】
接続用組成物は、室温又はそれ以上の温度でその場で施すことができる。ワイヤー又はケーブルに施された後に接続用組成物を乾燥させるために使用される温度は、175℃未満、好ましくは160℃未満、最も好ましくは30℃~160℃、より好ましくは40℃~160℃の範囲である。いくつかの実施形態において、好ましい温度範囲は100℃~155℃である。
【0077】
封止コーティングは、単層又は複数の層を重ねることができる。乾燥した単層封止コーティングの厚さは20ミクロンから200ミクロンである。
【0078】
封止コーティングの耐久性を向上させる他の方法を導入することができ、封止コーティングの上に別のポリマー層を押し出すか成形する方法、熱収縮チューブ若しくはテープ、マスチック、又は溶融加工可能なポリマーを使用して封止層を成形する方法、又はこれらの任意の組み合わせや他の使用される封止方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
好ましくは、フルオロポリマー断熱材は、230℃及び100sec-1で測定した溶融粘度が4~40kP、好ましくは10~40kPであり、融点が120~173℃、好ましくは135~171℃、より好ましくは140℃~169℃の溶融加工可能なフルオロポリマーである。フルオロポリマー絶縁体は、好ましくは、少なくとも80wt.%のVDFモノマー単位、好ましくは80~98wt.%のVDFを含むPVDFホモポリマー又はコポリマーである。コモノマーはHFPが好ましい。このようなポリマーの例としては、アルケマ社から入手可能なKynar(登録商標) 460 PVDF、Kynar Flex(登録商標) 2850 PVDF類、Kynar Flex(登録商標) 3120 PVDF類、Kynar(登録商標) 700 PVDF類等がある。
【0080】
本発明は、第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーを、封止コーティングを含む第2のケーブル又はワイヤーに接続する絶縁ジョイントを提供する。接続されたケーブル又はワイヤーの少なくとも一方は、第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーが第2のケーブル又はワイヤーに接続されてジョイントを形成するオープン領域を除き、その上に一次絶縁体を有する。ジョイントはさらに、ジョイントを完全に被覆するようにジョイントに施され、ジョイントを絶縁し、ジョイントへの水や他の物質の浸入を防止するために、オープン領域に連続一次絶縁体の部分に接着された、乾燥封止コーティングを含む。また、第1のケーブル若しくはワイヤー又はセンサーは、第2のケーブル又はワイヤーとの接続点を除き、絶縁被覆を備えていることがある。
【0081】
本発明は、水中で使用するためのジョイント(第2のワイヤー若しくはケーブル又はセンサー)を有する連続フルオロポリマー被覆導電性ケーブルを提供することができる。スプライス又はワイヤー接続は、2本以上のワイヤー又はケーブルを結合してジョイントを形成するために使用される。ジョイントは、2本のワイヤー又はケーブルの端部を切断し、一次絶縁体を剥がし、露出した2本のワイヤー又はケーブルの端部を接合することによって形成することもできるし、一次絶縁体の一部を第1のワイヤー又はケーブルから除去してワイヤー又はケーブルのコアを露出させ、第2のワイヤー又はケーブルを第1のワイヤー又はケーブルの露出したコアに取り付けてジョイントを形成することもできる。センサー、プローブ、又はその他のワイヤーは、一次絶縁体が除去されてワイヤー又はケーブルコアが露出したオープン領域で、第2のケーブル又はワイヤーに取り付けることができる。
【0082】
本発明のいくつかの態様では、ワイヤー又はケーブルは、導電性のワイヤー又はケーブルである。
【0083】
シールコーティングは、フルオロポリマー絶縁体に対して、またジョイントを含むワイヤー又はケーブルに対して良好な接着性を有し、それにより、本発明の組成物でコーティングされたジョイント又は接続の周囲に防水シールを形成する。
【実施例】
【0084】
実施例
【0085】
i-PVDFは、ケーブル上に使用される典型的な絶縁材であり、100sec-1及び230℃で測定され、10kP~40kPの間の溶融粘度を有する。
【0086】
初期スクリーニング:封止コーティング組成物をi-PVDF押出しドッグボーン引張棒に塗布する。次に、i-PVDF押出し薄膜を封止コーティングの上に接着する。i-PVDF膜が手で簡単に剥がせるようであれば、コーティングは十分に接着しておらず、防水シールは形成されない。
【0087】
サンプルの調製:所望の粘度プロファイルになるように、フルオロポリマーを好ましい固形分含量で溶媒に溶解した。室温でフルオロポリマーが完全に溶解しない場合は、40℃~60℃の昇温を用いてフルオロポリマーの溶解を助けた。昇温は、オーブンでもウォーターバスでも可能である。フルオロポリマーが完全に溶解した後、ブラシ又は舌圧子を使用して、丸形ケーブルを回転させながら溶液をそのケーブルに塗布した。
【0088】
例示した組成物は、オープン領域(オープン領域にはPVDF絶縁コーティングがない)を有するPVDF絶縁コーティングの銅ケーブルに塗布した。例示した組成物は、オープン領域と、オープン領域を有する連続PVDF絶縁コーティングの部分に塗布された。
【0089】
サンプルの乾燥:接着剤コーティングは、室温又は異なる溶媒パッケージを用いて高温のいずれかで行った。高温乾燥は、ヒートガンを使用した。高温での乾燥時間は2分から5分の範囲である。通常、高温になるほど乾燥時間は短くなる。
【0090】
材料
【0091】
PVDF Aは、フッ化ポリビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)コポリマーであり、ポリマー中に約17wt.%のHFPを有する。PVDF Aの重量平均分子量は約205kg/molで、多分散性指数は1.95である。溶融粘度は100s-1及び230℃で8kPである。
【0092】
PVDF Bは、フッ化ポリビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)共重合体である。PVDF-HFPコポリマー中のHFP部分の重量パーセントは、全ポリマーに対して約17wt.%である。重量平均分子量は133kg/molで、多分散指数は1.72である。溶融粘度は100s-1及び230℃で1kPである。
【0093】
PVDF Cは、フッ化ポリビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)共重合体である。PVDF-HFPコポリマー中のHFP部分の質量%は、全ポリマーに対して約18wt.%である。溶融粘度は100s-1及び230℃で13kPである。
【0094】
PVDF Dは、フッ化ポリビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)をシードとして使用したアクリル変性フルオロポリマー組成物である。このラテックスの固形分は約44wt.%である。PVDF-HFPコポリマー中のHFP部分の重量%は約20~22wt.%であり、アクリル部分はポリマー全体に対して約30wt.%である。アクリル部分のガラス転移温度は46℃である。
【0095】
【0096】
実施例1:(シクロペンタノン中のPVDF A)
【0097】
PVDF A粉末をシクロペンタノンに30wt.%溶解した。
実施例1の溶液を、PVDF一次絶縁体で構成され、PVDF絶縁コーティングのないオープン領域を有する銅ケーブルに塗布し、ヒートガンを用いて150℃(302°F)で4分間乾燥させるか、又は60℃で2時間乾燥させた。いずれの場合も、気泡のない均質な封止コーティングが形成された。
【0098】
実施例2:(現場/室温塗布用シクロペンタノン及びアセトン中のPVDF A)
【0099】
PVDF A粉末をシクロペンタノンとアセトンの混合物に30wt.%で溶解した。シクロペンタノンとアセトンの混合比は重量比で1:1である。実施例2の溶液を、PVDF一次絶縁体で構成され、PVDF絶縁コーティングのないオープン領域を有する銅ケーブルに塗布し、室温で少なくとも10分間乾燥させた。気泡のない均質な封止コーティングが形成された。
【0100】
比較例1:(シクロペンタノン中のPVDF B)
【0101】
PVDF B粉末をシクロペンタノンに30wt.%溶解した。比較例1の溶液を、PVDF一次絶縁体で構成され、PVDF絶縁コーティングのないオープン領域を有する銅ケーブルに塗布し、60℃で2時間乾燥した。コーティングは手で容易に剥離除去できた。
【0102】
比較例2:(シクロペンタノン中のPVDF C)
【0103】
PVDF C粉末をシクロペンタノンに30wt.%溶解した。比較例2の溶液を、PVDF一次絶縁体で構成され、PVDF絶縁コーティングのないオープン領域を有する銅ケーブルに塗布し、60℃で2時間乾燥した。コーティングは手で容易に剥離除去できた。
【0104】
比較例3:(シクロペンタノン中のPVDF D)
【0105】
フルオロポリマー-アクリル組成物をシクロペンタノンの溶媒に溶解し、溶液濃度を30wt.%とした。比較例3の溶液を、PVDF一次絶縁体で構成され、PVDF絶縁コーティングのないオープン領域を有する銅ケーブルに塗布し、60℃で2時間乾燥した。コーティングは手で容易に剥離除去できた。
【0106】
比較例4:(高温で乾燥させたシクロペンタノン及びアセトン中のPVDF A)
【0107】
フッ化ポリビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)共重合体粉末を、シクロペンタノンとアセトンの混合溶媒に30wt.%溶解した。シクロペンタノンとアセトンの混合比は重量比で1:1であった。比較例4の溶液を、PVDF一次絶縁体で構成され、PVDF絶縁コーティングのないオープン領域を有する銅ケーブルに塗布した後、ヒートガンにより高温で乾燥させた。昇温温度範囲は175℃~204℃であり、乾燥時間は2分~4分であった。多数の気泡を有する接着コーティングが形成された。
【0108】
理論に束縛されることを望むものではないが、比較例4が不合格であった理由は、高温のために封止コーティングの乾燥が早すぎ、その結果、コーティングの接着が悪くなり、くぼみが生じたためと推論される。
【0109】
比較例5:(アセトン中のPVDF A)
【0110】
PVDF A粉末をアセトンに30wt.%溶解した。比較例5の溶液を、PVDF絶縁コーティングのないオープン領域を有するPVDF一次からなる銅ケーブルに塗布し、室温で乾燥した。不連続なコーティングが形成され、連続封止接続用コーティングを提供することはできなかった。
【0111】
【国際調査報告】