(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】医療用注射装置のための針カバー
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A61M5/32 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564399
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022060107
(87)【国際公開番号】W WO2022223462
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ズッケッリ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック リヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066MM04
4C066NN04
4C066QQ82
4C066QQ84
(57)【要約】
医療用注射装置の先端部に取り付けられた針を保護するための針カバーであって、前記先端部は、前記医療用注射装置の遠位端から延在し、前記針カバーは、長手方向軸に沿って延在する内側シールドと、前記内側シールドを少なくとも部分的に取り囲み、当該内側シールドに動作可能に結合された外側シールドとを備え、前記針カバーが前記医療用注射装置の先端部に配置される際に、前記内側シールドの近位面は、前記医療用注射装置の先端部の遠位端に接触する、針カバー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用注射装置の先端部に取り付けられた針を保護するための針カバーであって、前記先端部は、前記医療用注射装置の遠位端から延在し、前記針カバーは、
長手方向軸に沿って延在する内側シールドと、
前記内側シールドを少なくとも部分的に取り囲み、当該内側シールドに動作可能に結合された外側シールドと
を備え、
前記針カバーは、前記針カバーが前記医療用注射装置の先端部から取り外されたかどうかを識別する不正痕跡リングをさらに備えることを特徴とする、針カバー。
【請求項2】
前記不正痕跡リングは、ブルートゥースタグ、無線周波数識別(RFID)タグ、超広帯域リアルタイムロケーションシステム(RTLS)、Wi―Fi RTLS、及び赤外線RTLSのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の針カバー。
【請求項3】
前記RFIDタグは、前記不正痕跡リングにオーバーモールドされる、請求項2に記載の針カバー。
【請求項4】
前記不正痕跡リングは、下部及び上部を含み、前記下部及び上部のそれぞれは、アンテナの部分を含む、請求項1から3のいずれかに記載の針カバー。
【請求項5】
前記不正痕跡リングの下部と上部とのアンテナ部分の間には、導電性ブリッジが設置される、請求項4に記載の針カバー。
【請求項6】
前記不正痕跡リングは、前記不正痕跡リングと前記医療用注射装置との間に破断可能な結合を確立するブリッジをさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の針カバー。
【請求項7】
近位面から遠位面まで延在するバレルを備えた医療用注射装置であって、先端部が前記バレルの遠位面に設けられており、
前記医療用注射装置は、前記医療用注射装置の先端部に取り付けられた針を保護するための針カバーを備え、前記針カバーは、
長手方向軸に沿って延在する内側シールドと、
前記内側シールドを少なくとも部分的に取り囲み、当該内側シールドに動作可能に結合された外側シールドと
を備え、
前記針カバーは、前記針カバーが前記医療用注射装置の先端部から取り外されたかどうかを識別する不正痕跡リングをさらに備えることを特徴とする、医療用注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2021年4月21日に出願された”Needle Cover for Medical Injection Device”と題する欧州出願第21305525.4号の優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に援用される。
本開示は、一般に、流体又は液体薬剤を送達するための医療用注射装置に関する。より具体的には、本開示は、医療用注射装置に取り付けた針を覆うための、医療用注射装置の先端部に取り付けられるように適合された針カバーに関する。本開示はまた、医療用注射装置と、医療用注射装置の針を封入する針カバーとを備える医療用アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
注射器等の医療用注射装置は当技術分野でよく知られている。これらの装置は、典型的には、液体薬剤等の医療用組成物を収容するための容器を備える。当該容器は、通常、医療用溶液が放出される流体経路を画定する長手方向に先端部の形態を有する末端部を含む。患者の皮膚を刺し、医療用組成物の注射を行うために、先端部には針が取り付けられ得る。
【0003】
使用前の無菌状態を維持し、偶発的な針刺しのリスクを軽減するためには、針の保護が重要となる。そのため、針を囲むように、針カバーがバレルの先端部に取り付けられ得る。これにより、装置の周囲にいる人は、針に物理的にアクセスできなくなる。針カバーは、エラストマー特性を有する材料からなる内側シールドを備え、さらに、内側シールドを囲む硬質プラスチックからなる外側シールドを備え得る。いくつかの例では、内側シールドは、ゴム材料からなり得る。内側シールドは、医療用注射装置の封止を確実にするものである。そのため、内側シールドは、注射器の先端部の外面と密封接触する封止部を備え、密封性を提供する。内側シールドは、外部環境からの医療用組成物の汚染を防止し、それにより容器の完全な密閉性を保証する。さらに内側シールドは、組成物が針の出口から外部環境へ漏出することを防止する。そのため、針は内側シールド内に刺入されることが好ましい。硬質な外側シールドは、内側シールドを取り囲む硬質材料又は半硬質材料からなり得る。
【0004】
内側シールドは、医療用注射装置の先端部と干渉力を生じさせ、医療用注射装置内の液体を完全に密閉させる。いくつかの例では、医療用注射装置の開口部の完全な密封性は、医療用注射装置の先端部における内側シールドの径方向の圧縮によって与えられる。医療用注射装置の先端部における径方向の圧縮は、硬質な外側シールドの使用により医療用注射装置の先端部の下方で増加し、針カバーが医療用注射装置から意図せず外れることを防止する。針カバーのこれらの特徴の多くは、医療用注射装置から針カバーを取り外すために必要な力の大きさにも影響する。
【0005】
針カバーを設計する際には、針カバーの性能レベルに影響を与えるいくつかの特徴を考慮する必要がある。特に、これらの特徴の中には、医療用注射装置の先端部における容器の完全な密封性、医療用注射装置からの針カバーの意図しない外れ、及び、適度な力によって医療用注射装置から針カバーを引き抜く能力がある。針カバーのこれらの特徴は、針カバーの3つの異なる特性を左右することが多いため、個々の特徴の性能レベルを、残りの特徴の性能レベルに影響を与えることなく、調整することが困難になることが多い。
【発明の概要】
【0006】
上記の問題点に鑑み、現在、医療用注射装置の先端部における容器の完全な密封性を向上させ、医療用注射装置から針カバーが意図せずに外れてしまう可能性を低減させ、医療用注射装置から針カバーを取り外すために必要な力の大きさを低減させる針カバーが必要とされている。また、医療装置の製造又は組立段階から最終的な使用まで、針カバーが装着された医療装置の追跡を可能にする針カバーも必要とされている。それにまた、医療用注射装置の個体識別を可能にする装置や針カバーを提供することも必要性とされている。さらに、医療用注射装置においては、望む医薬組成物が含まれていること、及び、本来の医薬組成物とは別の医薬組成物が充填されていないことを確認する必要がある。また、医療用注射装置を使用する際には、事前に開封されていないことを確認する必要がある。従って、このような医療用注射装置に不正痕跡手段を設けることが望ましい。
【0007】
本開示の一例は、医療用注射装置の先端部に取り付けられた針を保護するための針カバーであって、前記先端部は、前記医療用注射装置の遠位端から延在し、前記針カバーは、長手方向軸に沿って延在する内側シールドと、前記内側シールドを少なくとも部分的に取り囲み、当該内側シールドに動作可能に結合された外側シールドとを備え、前記針カバーが前記医療用注射装置の先端部に配置される際に、前記内側シールドの近位面は、前記医療用注射装置の先端部の遠位端に接触し、前記医療用注射装置の先端部の遠位端において長手方向に軸方向の圧縮を生じさせ得ることを特徴とする、針カバーである。
【0008】
本開示の一例では、前記内側シールドの近位面は、前記医療用注射装置の先端部の遠位端の最遠位面に接触し得る。前記内側シールドは、前記医療用注射装置の先端部の遠位端において軸方向の圧縮を生じさせ、前記医療用注射装置の先端部の遠位端において径方向の圧縮を減少させ得る。前記内側シールドの最近位面は、前記医療用注射装置の先端部の遠位端の最遠位面に接触し得る。前記内側シールドは、変形可能な材料からなり得る。前記内側シールドは、前記針の少なくとも一部を受けるように構成され得る。前記外側シールドは、前記針カバーが前記医療用注射装置から取り外される際に、前記医療用注射装置の先端部から前記内側シールドを取り外すことを補助する少なくとも1つのフックを備え得る。前記少なくとも1つのフックは、前記外側シールドに形成された3つ又は4つのフックを含み得る。前記少なくとも1つのフックは、圧力下で前記少なくとも1つのフックが曲がることを可能にする可撓性材料からなり得る。前記少なくとも1つのフックは、前記内側シールドの長手方向軸に対して内側に、且つ、前記医療用注射装置の先端部の近位部分に対して遠位側に傾斜し得る。前記少なくとも1つのフックは、前記針カバーが前記医療用注射装置の先端部に配置される際に、前記医療用注射装置の先端部に画定されたショルダに接触するように構成され得る。前記少なくとも1つのフックは、前記外側シールドの遠位端に配置され得る。前記少なくとも1つのフックは、前記針カバーが前記医療用注射装置の先端部から取り外される際に、前記先端部の外面に沿って摺動して、前記先端部の内側シールドの剥離を補助するように構成され得る。
【0009】
本開示の一例は、医療用注射装置の先端部に取り付けられた針を保護するための針カバーであって、前記先端部は、前記医療用注射装置の遠位端から延在し、前記針カバーは、長手方向軸に沿って延在する内側シールドと、前記内側シールドを少なくとも部分的に取り囲み、当該内側シールドに動作可能に結合された外側シールドとを備え、前記針カバーが前記医療用注射装置の先端部から取り外されたかどうかを識別する不正痕跡リングをさらに備えることを特徴とする、針カバーである。
【0010】
本開示の一例では、前記不正痕跡リングは、ブルートゥースタグ、無線周波数識別(RFID)タグ、超広帯域リアルタイムロケーションシステム(RTLS)、Wi―Fi RTLS、及び赤外線RTLSのうち少なくとも1つを含み得る。前記RFIDタグは、前記不正痕跡リングにオーバーモールドされ得る。前記不正痕跡リングは、下部及び上部を含み、前記下部及び上部のそれぞれは、アンテナの部分を含み得る。前記不正痕跡リングの下部と上部とのアンテナ部分の間には、導電性ブリッジが設置され得る。前記不正痕跡リングは、前記不正痕跡リングと前記医療用注射装置との間に破断可能な結合を確立するブリッジを含み得る。
【0011】
本開示の一例は、近位面から遠位面まで延在するバレルを備えた医療用注射装置であって、先端部が前記バレルの遠位面に設けられており、前記医療用注射装置は、前記医療用注射装置の先端部に取り付けられた針を保護するための針カバーを備え、前記針カバーは、長手方向軸に沿って延在する内側シールドと、前記内側シールドを少なくとも部分的に取り囲み、当該内側シールドに動作可能に結合された外側シールドとを備え、前記針カバーが前記医療用注射装置の先端部に配置される際に、前記内側シールドの近位面は、前記医療用注射装置の先端部の遠位端に接触し、前記医療用注射装置の先端部の遠位端において軸方向の圧縮を生じさせることを特徴とする、医療用注射装置である。
【0012】
本開示の一例は、近位面から遠位面まで延在するバレルを備えた医療用注射装置であって、先端部が前記バレルの遠位面に設けられており、前記医療用注射装置は、前記医療用注射装置の先端部に取り付けられた針を保護するための針カバーを備え、前記針カバーは、長手方向軸に沿って延在する内側シールドと、前記内側シールドを少なくとも部分的に取り囲み、当該内側シールドに動作可能に結合された外側シールドとを備え、前記外側シールドは、前記針カバーが前記医療用注射装置から取り外される際に、前記医療用注射装置の先端部から前記内側シールドを取り外すことを補助する少なくとも1つのフックを備えることを特徴とする、医療用注射装置である。
本開示の一例は、近位面から遠位面まで延在するバレルを備えた医療用注射装置であって、先端部が前記バレルの遠位面に設けられており、前記医療用注射装置は、前記医療用注射装置の先端部に取り付けられた針を保護するための針カバーを備え、前記針カバーは、長手方向軸に沿って延在する内側シールドと、前記内側シールドを少なくとも部分的に取り囲み、当該内側シールドに動作可能に結合された外側シールドとを備え、前記針カバーは、前記針カバーが前記医療用注射装置の先端部から取り外されたかどうかを識別する不正痕跡リングをさらに備えることを特徴とする、医療用注射装置である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1は、本開示の一例に係る医療用注射装置の斜視図である。
【0014】
【0015】
【0016】
図4は、本開示の一例に係る針カバーの断面図である。
【0017】
図5は、本開示の一例に係る医療用注射装置の斜視図である。
【0018】
図6は、不正痕跡リングが破断していないときの、
図5の針カバー及び不正痕跡リングの側面図である。
【0019】
図7は、不正痕跡リングが破断したときの、
図5の針カバー及び不正痕跡リングの側面図である。
【0020】
図8は、不正痕跡リングが破断していないときの、
図6の断面図である。
【0021】
図9は、不正痕跡リングが破断したときの、
図7の断面図である。
【発明の詳細な説明】
【0022】
以下、当業者が本発明を実施するために企画された記載の実施形態を作製し、使用できるようにするために説明する。しかしながら、当業者には、様々な修正、均等、変形及び代替が容易に明らかであろう。そのような修正、変形、均等及び代替はすべて、本発明の技術的思想及び範囲内に含まれるものとする。
【0023】
以下の説明において、「上」、「下」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「横」、「縦」及びこれらの派生語は、図面において方向付けられた本発明に関連するものとする。しかしながら、本発明は、明示的に反対の指定が無い限り、様々な代替変形を想定し得ることを理解されたい。また、添付図面に図示され、以下の本明細書に記載される特定の装置は、本発明の例示的な実施形態であることを理解されたい。従って、本明細書に開示された実施形態に関連する特定の寸法及び他の物理的特性は、限定的なものとみなされない。
【0024】
以下の説明において、「遠位」とは、一般に患者の皮膚と接触するように適合された医療用注射装置の端に向かう方向を指し、「近位」とは、遠位とは反対の方向、すなわち、医療用注射装置の前記端から離れる方向を指す。換言すれば、「遠位方向」とは、注射の方向を意味するものと理解される。遠位方向は、注射中のプランジャの移動方向に相当し、バレル内に最初から収容されている医療用組成物がバレルから排出される方向である。「近位方向」とは、当該注射方向とは反対の方向を意味するものと理解される。本開示の目的のため、上記の参照は、本開示に係る医療用注射装置の構成要素の説明において使用される。
【0025】
図1~3を参照すると、医療用注射装置10は、近位面14から遠位面16まで長手方向軸Xに沿って延在し、液体薬剤等の医療用組成物のためのリザーバ18を画定するバレル12を含み得る。また、医療用注射装置10は、ストッパ(図示せず)と、組成物を注射するためにバレル12の内部で近位位置から遠位位置まで並進移動可能なプランジャロッド(図示せず)とを含み得る。
【0026】
医療用注射装置10は、バレル12の遠位面16から長手方向軸線Xに沿って延在する遠位先端部20をさらに含む。遠位先端部20は、バレル12と流体連通する流体経路を形成するように少なくとも部分的に中空であり得る。針22は、医療用注射装置10の遠位先端部20に取り付けられ、流体経路と流体連通され得る。本明細書において、バレル12の遠位面16は、医療用注射装置10のショルダに近接していることに留意されたい。
【0027】
医療用注射装置10は、ガラス製であることが好ましく、ガラス製注射器であることがより好ましい。このようなガラス製注射器は、病院環境で主に使用され、容易に滅菌可能である。本開示の他の例では、医療用注射装置10は、医療グレードのプラスチックからなり得る。医療用注射装置10は、プレフィルド注射器又はプレフィラブル注射器であることが好ましい。医療用注射装置10は、針22を備えた注射器であることがより好ましい。
【0028】
引き続き
図1~3を参照すると、医療用注射装置10は、針カバー100をさらに含み得る。針カバー100は、針22を遮蔽し、覆い得る。針カバー100は、外側シールド102と、針22を覆う内側シールド104とを含み得る。一実施形態では、外側シールド102は、内側シールド104の少なくとも一部を覆う。別の実施形態では、外側シールド102は、内側シールド104全体を覆う。
【0029】
図2及び3を参照して、本開示の一例に係る外側シールド102について、より詳細に説明する。外側シールド102は、硬質プラスチック等の硬質材料で作られることが好ましい。外側シールド102は、医療グレードのプラスチックからなり得る。硬質材料は、外側シールド102に剛性を付与し、当該外側シールド102は、針カバー100を衝撃からより良好に保護することができる。これにより、針カバー100の構造的一体性が向上する。
【0030】
外側シールド102は、近位端108と遠位端110とを有する胴部106を含む。胴部106は、長手方向軸Yに沿って延在する。長手方向軸Yは、針カバー100が医療用注射装置10の先端部20に取り付けられた際、長手方向軸Xと一致する。
【0031】
一例では、胴部106は、実質的に円筒形の形状であり得る。胴部106は、針カバー100の内側シールド104を少なくとも部分的に受ける内部空洞112を画定し得る。外側シールド102の近位端108上に、襟部114が形成され得る。襟部114は、胴部106の他の部分よりも大きな直径を有し得る。一例では、外側シールド102の胴部106上に、複数のリブ及び溝116が画定され得る。リブ及び溝116は、外側シールド102の遠位端110に隣接して設けられ得る。リブ及び溝116は、使用者が外側シールド102を医療用注射装置10から引き離す際に使用する把持面を提供する。一実施形態では、外側シールド102の遠位端110は、針カバー100に滅菌を施すための少なくとも1つの開口部を含み得る。
【0032】
引き続き
図2及び3を参照して、本開示の一例に係る内側シールド104について説明する。内側シールド104は、長手方向軸Zに沿って延在し得る。長手方向軸Zは、内側シールド104が外側シールド102内に少なくとも部分的に囲まれるとき、長手方向軸Yと一致し得る。内側シールド104は、円筒形状及び円形断面を有することが好ましい。
【0033】
内側シールド104は、エラストマー特性を有する材料で作られることが好ましい。これにより、内側シールド104を医療用注射装置10に結合する際に、内側シールド104の少なくとも一部は、先端部20の形状に適合するように僅かに変形し得る。一方、先端部20、又は針22の遠位部は、内側シールド104の中を通り得る。これにより、針22を介して外部環境に医療用組成物が漏出するリスクがさらに低減される。エラストマー特性を有する材料は、熱可塑性エラストマー、エラストマー、又はゴムが好ましい。エラストマー特性を有する材料は、滅菌可能であることが好ましい。
【0034】
一実施形態では、外側シールド102は、内側シールド104を少なくとも部分的に取り囲む。外側シールド102は、内側シールド104に固定されている。内側シールド104と外側シールド102とは、種々の結合方法の中でも、スナップフィット結合又は摩擦嵌合によって一緒に固定され得る。針カバー100が医療用注射装置10に取り付けられた場合、内側シールド104は、バレル12の先端部20の少なくとも一部を包囲する。これにより、針カバー100は、先端部20に強固に密封結合される。一実施形態では、内側シールド104は、医療用注射装置10の先端部20と十分に密封されたシールを形成することにより、医療用注射装置10の先端部20と内側シールド104との間の無菌性及び流体密なシールを確保する。
【0035】
針カバー100を医療用注射装置10に取り付けるために、まず内側シールド104の上に外側シールド102を配置し、次に針カバー100全体を医療用注射装置10に取り付ける。針カバー100が医療用注射装置10上に配置された後は、針カバー100を遠位方向に移動させて医療用注射装置10から取り外すことができる。使用者によって外側シールド102に引っ張る力が加えられると、外側シールド102は、内側シールド104と共に遠位方向に移動する。外側シールド102が遠位方向に移動すると、外側シールド102の近位端108は、内側シールド104の近位部分120に接触して当接し始める。外側シールド102の近位端108が内側シールド104の近位部分120に接触すると、近位端108は、近位部分120を遠位方向に押し始める。近位部分120が遠位方向に押されると、内側シールド104は、医療用注射装置10から離れる径方向に引っ張られる。
【0036】
引き続き
図2及び3を参照すると、本開示の一例によれば、内側シールド104は、医療用注射装置10の先端部20に加えられる径方向の圧縮力を低減するように配置され得る。本開示の一例では、内側シールド104は、医療用注射装置10の先端部20の側面を把持する代わりに、医療用注射装置10の先端部20の最遠位面と係合するように配置される。この構成では、針カバー100が医療用注射装置10上に位置されると、内側シールド104の近位端は、医療用注射装置10の先端部20の最遠位面と係合して、流体が医療用注射装置10から漏れることを防止するための流体密なシールを形成する。本開示の一例では、内側シールド104は、医療用注射装置10の先端部20において長手方向に軸方向の圧縮を生じさせる。内側シールド104は、軸方向の圧縮を受けて変形し、シールを形成し得る。本開示の一例では、先端部20から径方向に延在するショルダが、内側シールド104を受けるように形成されることにより、先端部20に軸方向の圧縮が生じ得る。
【0037】
内側シールド104は、医療用注射装置10の先端部20の最遠位面とシールを形成することにより、先端部20の側面と係合せず、医療用注射装置10から針カバー100を引き抜くために必要な力の大きさにばらつきが生じない。内側シールド104が先端部20の側面を把持する場合、内側シールド104を先端部20から引き離すために必要な力の大きさは、先端部20の側面上に生成される径方向の圧縮力ベクトルに基づいて変化し得る。従って、内側シールド104が先端部20の側面を把持することによって生じる径方向の圧縮力を低減又は排除することによって、針カバー100を先端部20から引き離すために必要な力の大きさは、より一貫性があり、予測が容易となる。あるいはまた、針カバー100を医療用注射装置10から引き離すために必要な力の大きさは、外側シールド102の近位端108と医療用注射装置10の先端部20との間に確実な係合を生じさせることによって、より一貫して維持される。本開示の一例では、外側シールド102の近位端108は、少なくとも2つの開口部122を画定する。針カバー100を先端部20上に配置する場合、先端部20上に形成されたショルダ124は、開口部122の壁と係合して、確実なロック係合を形成し得る。針カバー100を先端部20から取り外すためには、先端部20のショルダ124を越えて開口部122を引っ張るために、針カバー100を先端部20から引き離すために十分な引き離し力が必要となる。
【0038】
図4を参照すると、本開示の一例では、針カバー100はまた、医療用注射装置10の先端部20から内側シールド104をより確実に取り外すことを補助するために、硬質な外側シールド102上に少なくとも1つのフック126を含み得る。本開示の一例では、硬質な外側シールド102は、2つのフック126を含み得る。本開示の一例では、硬質な外側シールド102は、4つのフック126を含み得る。また、フック126は、数を増加或いは減少させて、硬質な外側シールド102上に設けられ得ることも企図される。フック126は、医療用注射装置10の長手方向軸Xに対して、医療用注射装置10の先端部20に向かって内側に傾斜し得る。本開示の一例では、フック126は、針カバー100が先端部20上で摺動する際にフック126が外側に曲がることを可能にする材料からなり得る。一実施形態では、フック126は、外側シールド102と同じ材料からなり得る。先端部20のショルダ124は、針カバー100が先端部20上で摺動する際に、フック126を外側に押し得る。フック126がショルダ124を超えて移動すると、フック126は、再び内側にはね返り、ショルダ124の切り下げ部に係合するようになり、針カバー100の先端部20からの外れを防止することができる。針カバー100を先端部20から取り外すためには、先端部20のショルダ124を越えてフック126を引っ張るために、針カバー100を先端部20から引き離すために十分な大きさの力が必要となる。フック126はまた、針カバー100を取り外す際に、内側シールド104の先端部20からの剥離を補助する。フック126が先端部20から離れる遠位方向に移動すると、フック126は、先端部20の外面に沿って遠位方向に向けられる。フック126は、先端部20に保持された内側シールド104と接触し、内側シールド104が先端部20から剥離し始めることで、内側シールド104を医療用注射装置10の先端部20から引き離すために必要な力の大きさを減少させる。
【0039】
図5~9を参照すると、本開示の一例では、針カバー200はまた、不正痕跡及び装置識別機能を含み得る。本開示の一例では、針カバー200が医療用注射装置10の先端部20から取り外された場合、針カバー200がそこから取り外されているか否かという医療用注射装置10の現在の状態の表示を設けてもよい。医療用注射装置10の状態の表示は、視覚的インジケータ、聴覚的インジケータ、又は人に現在の状態を示す任意の他の方法であってもよい。針カバー200が医療用注射装置10の先端部20から取り外されていない限り、針カバー200は、検出可能な固有の装置識別子を含み、これにより製造者の施設で医療用注射装置10が製造されてから、医療用注射装置10が二次包装施設に配送され、その後、製薬研究所、病院、治療センター、又は医療用注射装置10が使用される可能性のある他の場所等の最終目的地に配送されるまでの間、針カバー200の追跡を可能にする。
【0040】
本開示の一例では、針カバー200は、硬質な外側シールド202、変形可能な内側シールド204、及びその上に設けられた不正痕跡リング206を含み得る。不正痕跡リング206は、RFID(無線周波数識別)タグ208を含み得る。本開示のいくつかの例では、RFIDタグ208は、超高周波(UHF)RFIDタグであり得る。いくつかの実施形態では、不正痕跡リング206は、超広帯域リアルタイムロケーションシステム(RTLS)、Wi―Fi RTLS、及び/又は赤外線RTLSを含み得る。いくつかの例では、RFIDタグは、湿式はめ込み、乾式はめ込み、又は感圧ラベルの形態であり得る。RFID湿式はめ込み及びRFID乾式はめ込みは、例えば紙又はポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材を含むことができる。RFIDタグは、基材の片面に配置することができる。さらに、RFID湿式はめ込み及びRFID乾式はめ込みは、RFIDタグの上に少なくとも1つの保護層を含むことができる。保護層は、シリコン処理された紙とすることができる。RFID湿式はめ込みは、基材及び例えばシリコンライナー付きの裏紙の反対側に接着剤層を含むため、「湿式」と説明される。RFID乾式はめ込みは、裏面に接着剤がないため、「乾式」と説明される。感圧ラベルは、ハイテクステッカーに類似する。一実施形態では、RFIDタグは、短波無線識別(HF-RFID)タグである。短波数は、通常、約1~15MHzである。本実施形態では、RFIDリーダは、例えば、約1メートルの距離でHF-RFIDタグを読み取ることができる。RFIDタグは、極超短波無線識別(UHF-RFID)タグであることが好ましい。極超短波数は、通常、約400~1000MHzである。本実施形態では、RFIDリーダは、例えば、約15メートルの距離でUHF-RFIDタグを読み取ることができる。
【0041】
RFIDアンテナは、少なくとも1つの脚部を有することが好ましい。RFIDアンテナは、例えば2つ又は4つの脚部を有し得る。RFIDアンテナは、2つの脚部を有し、脚部はそれぞれ先端部を有することがより好ましい。例えば、RFIDアンテナは、複数の固定ステップを有する2つの脚部を有する。本発明によれば、固定ステップとは、RFIDアンテナの2つの脚部が複数の均等なステップを有し得ることを意味する。例えば、固定ステップにより、正方形、長方形、三角形、又は波形が形成される。複数の固定ステップは、同じ幅を有することが好ましい。例えば、RFIDアンテナは、2つの正弦波状の脚部、直線状の脚部、又はコイル状の脚部を有する。RFIDアンテナが2つの正弦波形状の脚部を有する場合、RFIDアンテナの両方の脚部は、複数の正弦波で構成されることが好ましい。例えば、RFIDタグがUHF-RFIDタグである場合、2つの脚部は正弦波形状を有する。例えば、RFIDタグがHF-RFIDタグである場合、2つの脚部はコイル形状を有する。実際には、これらの実施形態において、脚部の形状により、チップ、RFIDタグのアンテナ、及びRFIDリーダの間の通信がさらに改善されると考えられる。
【0042】
RFIDアンテナは、脚部間にループを形成し、RFIDチップは、RFIDアンテナのループと脚部との間に配置されることが好ましい。一実施形態では、RFIDタグは非対称であり、すなわち、RFIDチップは、RFIDアンテナの両端から等距離に配置されていない。RFIDチップは、RFIDアンテナの両端から等距離に配置されることが好ましい。
【0043】
本開示のいくつかの例では、不正痕跡リング206は、ポリエチレンテレフタレート、又は不正痕跡リング206への付着を可能にする任意の他の材料からなり得る。不正痕跡リング206は、例えば下部に、RFIDタグ208及びアンテナの第1部210を含み得る。不正痕跡リング206の上部には、例えば、アンテナの第2部212が不正痕跡リング206内に配置され得る。不正痕跡リング206の中間部分には、例えば、電気ブリッジ214が、アンテナの第1部210とアンテナの第2部212とを結合するように配置され得る。本開示の一例では、RFIDタグ208及びアンテナ210、212は、不正痕跡リング206の製造中に、不正痕跡リング206にオーバーモールド又は接着され得る。本開示のいくつかの例では、RFIDタグ208への損傷を避けるために、RFIDタグ208は、静電機構の代わりに、不正痕跡リング206内の真空によって維持され得る。複数の角度からのRFIDタグ208の読み取り性を向上させるために、RFIDタグ208は、不正痕跡リング206の表面の少なくとも半分、例えば180度、に沿って、不正痕跡リング206の周囲に延在し得る。
【0044】
本開示の一例では、不正痕跡リング206は、針カバー200の固有の装置識別(UDI)タグを書き込むための記憶スペースを含み得る。記憶スペースは、パスワードで保護されているため、許可された人のみがUDIタグを設定し得る。本開示の一例では、不正痕跡リング206の上部は、不正痕跡リング206の周囲に延在するブリッジ216を介して、不正痕跡リング206の下部に連結され得る。不正痕跡リング206は、十分な力が加わると、ブリッジ216が破断して、不正痕跡リング206の上部と下部が分離するように構成される。本開示の一例では、不正痕跡リング206の下部は、医療用注射装置10に動作可能に結合され得る一方、不正痕跡リング206の上部は、針カバー200に動作可能に結合され得る。不正痕跡リング206の各部分は、医療用注射装置10及び針カバー200に、溶接、接着剤、クリップ、又は不正痕跡リング206をこれらの装置に固定する任意の他の結合方法を介して、動作可能に結合され得る。不正痕跡リング206は、加圧下でブリッジ216が破断することによって、針カバー200が医療用注射装置10から取り外されたことを示すように構成される。針カバー200が医療用注射装置10から引き抜かれると、ブリッジ216が破断するように構成されており、それによってアンテナ210、212が切断され、RFIDタグ208が非活性化される。従って、針カバー200が医療用注射装置10から取り外されたことを示す表示が人に通知され、医療用注射装置10を検出したい使用者がそれを検出できなくなる可能性がある。そして、外側シールド202の近位端218が、不正痕跡リング206の遠位端222から内側に延在するショルダ220と接触し、不正痕跡リング206の上部210は、針カバー200と共に医療用注射装置10の先端部20から引き離れる。外側シールド202の近位端218と不正痕跡リング206のショルダ220との間に牽引力が生じ、不正痕跡リング206は、針カバー200と共に取り外される。
【0045】
本開示の一例では、針カバー200を医療用注射装置10から初めて取り外す前の状態では、RFIDタグ208は無傷のままであり、RFIDリーダによって読み取られることで、針カバー200の製造から針カバー200が医療用注射装置10から取り外されるまでの間、固有の装置識別情報を識別することができる。針カバー200が医療用注射装置10から取り外された後は、RFIDタグ208は信号を送信しなくなる。従って、人がRFIDリーダを使用し、RFIDタグ208から信号を拾う場合、これは、針カバー200がまだ医療用注射装置10から取り外されていないことを人に示すものである。人がRFIDリーダを使用し、RFIDタグ208から信号を拾わない場合、これは、針カバー200が医療用注射装置10から取り外されたことを人に示すものである。RFIDリーダを使用することにより、人は、複数の医療用注射装置10について、針カバー200が取り外されているかどうかを迅速に判断することができる。また、この構成により、人は、製品の包装を開封することなく、針カバー200が医療用注射装置10上で無傷であることを確認することもできる。針カバー200と医療用注射装置10との間の結合を判断するために、目視による確認を必要としない。
【0046】
医療用注射装置10の構成要素はすべて、任意の既知の材料で構成することができ、医療グレードのポリマーで構成することが望ましい。
【0047】
本開示は例示的なデザインを有するものとして説明されてきたが、本開示は、本開示の技術的思想及び範囲内でさらに変更することができる。従って、本出願は、その一般原則を用いた本開示のあらゆる変形、使用、又は適応を包含することを意図している。さらに本出願は、本開示が関連する技術分野における既知又は慣例の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲の限定事項内に収まるような、本開示からの逸脱を包含することを意図している。
【国際調査報告】