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特表2024-514932リンおよびナトリウムを含有している触媒および水素化脱硫法におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】リンおよびナトリウムを含有している触媒および水素化脱硫法におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/19 20060101AFI20240327BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240327BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B01J27/19 M
B01J35/60 B
C10G45/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564405
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2022060158
(87)【国際公開番号】W WO2022223482
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】2104145
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】フェカン アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジラール エチエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルフレーヴ フィリベール
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA11
4G169AA14
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BB14B
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC57A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC65A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC69A
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169CC02
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EA06
4G169EB18Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
4G169EC03X
4G169EC03Y
4G169EC07X
4G169EC07Y
4G169EC08X
4G169EC08Y
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB57
4G169FC08
4H129CA04
4H129DA16
4H129KA07
4H129KB03
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KD03X
4H129KD03Y
4H129KD13X
4H129KD15X
4H129KD15Y
4H129KD21X
4H129KD22X
4H129KD22Y
4H129KD37X
4H129KD37Y
4H129NA02
(57)【要約】
少なくとも1種のVIB族金属および少なくとも1種のVIII族金属をベースとする活性相と、リンと、ナトリウムと、アルミナをベースとする担体とを含んでいる触媒であって、ナトリウム含有率が前記触媒の全重量に相対してNaOの形態で50~2000重量ppmであり、リン対ナトリウムのモル比は、1.5~30である、触媒。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の第VIB族元素と、少なくとも1種の第VIII族元素と、リンと、ナトリウムと、アルミナを含んでいる担体とを含んでいる触媒であって、ナトリウム含有率は、NaO酸化物の形態で測定されて、前記触媒の全重量に相対して、ナトリウムの重量で50~2000重量ppmであり、リンとナトリウムとの間のモル比は、触媒の全重量に相対した、リン含有率およびナトリウム含有率に基づいて計算されて、1.5~300である、触媒。
【請求項2】
第VIII族元素の全含有率は、触媒の全重量に相対する前記第VIII族元素の酸化物の重量で0.5~10重量%であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
第VIB族元素の含有率は、触媒の全重量に相対する前記第VIB族元素の酸化物の重量で1~30重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
リン含有率は、触媒の全重量に相対するPの重量で0.1~10重量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに触媒。
【請求項5】
第VIII族元素と第VIB族元素との間のモル比は、0.1~0.8であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項6】
第VIII族元素とナトリウムとの間のモル比は、触媒の全重量に相対した、第VIII族元素の含有率およびナトリウム含有率に基づいて計算されて、2~400であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
第VIB族元素とナトリウムとの間のモル比は、触媒の全重量に相対した、第VIB族元素の含有率およびナトリウム含有率に基づいて計算されて、5~500であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
リンと第VIB族元素との間のモル比は、0.2~0.35であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
リン含有率は、触媒の全重量に相対するPの重量で0.3~5重量%であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
リンとナトリウムとの間のモル比は、触媒の全重量に相対した、リン含有率およびナトリウム含有率に基づいて計算されて、2~100であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項11】
第VIII族元素は、コバルトであり、第VIB族元素は、モリブデンであることを特徴とする請求項1~10のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項12】
前記触媒の比表面積は、50m2/g~200m2/gであることを特徴とする請求項1~11のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項13】
前記触媒の細孔容積は、0.5cm/g~1.3cm/gであることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項14】
硫黄含有オレフィン系ガソリン留分の水素化脱硫のための方法であって、前記ガソリン留分、水素および請求項1~13のいずれか1つによる前記触媒を接触させ、前記水素化脱硫法を行う際の温度は、200℃~400℃であり、全圧は、1~3MPaであり、毎時空間速度は、触媒の容積に相対する供給原料の容積流量であるとして定義されて、1h-1~10h-1であり、水素/ガソリン留分の容積比は、100~600SL/Lである、方法。
【請求項15】
ガソリンは、接触分解ユニットから生じたガソリンである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン留分、とりわけ、流動床接触分解ユニットから生じたガソリン留分の水素化処理の分野に関する。より詳細には、本発明は、触媒および硫黄を含有しているオレフィン系ガソリン留分、例えば、接触分解から生じたガソリンの水素化脱硫のための方法におけるその使用に関し、当該方法について、オレフィン類および芳香族化合物を水素化することなく硫黄所持化合物の含有率を低下させることが求められる。
【背景技術】
【0002】
石油精製、さらに石油化学は、現在、新たな制約にさらされている。これは、全ての国々が厳格な硫黄仕様を徐々に採用しているためであり、その目標は、例えば、欧州および日本において市販ガソリン中硫黄10ppm(重量)を達成することにある。硫黄含有率を低下させる問題は、本質的に、触媒的(FCC;Fluid Catalytic Cracking流動接触分解)であるかまたは非触媒的(コーキング、ビスブレーキング、水蒸気分解)であるかに拘わらず、分解によって得られたガソリン上に焦点が当てられ、ガソリンプール中の硫黄の主要な前駆体である。
【0003】
硫黄含有率を低下させるための当業者に周知である1つの解決策は、炭化水素留分(とりわけ、接触分解ガソリン)の水素化処理(または水素化脱硫)を、水素および不均一系触媒の存在中で行うことからなる。しかしながら、この方法には、使用された触媒が十分に選択的でないならば、非常に著しいオクタン価における低下という大きな欠点がある。このオクタン価における低下は、とりわけ、水素化脱硫と同時に行われるこのタイプのガソリン中に存在するオレフィンの水素化に関連している。他の水素化処理法とは異なり、ガソリンの水素化脱硫は、それ故に、二重の相反する制約:ガソリンの極端な水素化脱硫を提供することおよび存在する不飽和化合物の水素化を制限することに応じていることが可能である必要がある。
【0004】
この二重の問題に対処するための1つの方法は、水素化脱硫に活性でありかつオレフィンの水素化反応に相対して水素化脱硫に非常に選択的でもある水素化脱硫触媒を使用することからなる。
【0005】
それ故に、特許文献1は、従来技術から知られており、硫黄を含有しているオレフィン系ガソリン留分の水素化脱硫のための方法であって、少なくとも1種の第VIB族金属および少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする活性相をアルミナタイプの担体上に含んでいる触媒の存在中で実施され、前記担体は、アルカリ金属を担体に相対して0.2~3重量%の範囲の含有率でさらに含有している、方法を開示する。担体は、ホウ素、リンおよびケイ素から選ばれる別の化合物を含んでもよいが、その含有率は、開示されていない。
【0006】
特許文献2には、少なくとも1種の第VIB族金属および少なくとも1種の第VIII族金属をベースとする活性相と、触媒の全重量に相対して、0.5~50重量%のマグネシウムおよび0.02~10重量%のアルカリ金属を同時に含んでいる担体とを含んでいる触媒の選択的脱硫法における使用が記載されている。しかしながら、この文献には、触媒中のリンの存在は開示されていない。
【0007】
さらに、特許文献3には、コバルト、モリブデン、ニッケルおよびタングステンからの1種または複数種の金属をアルミナベースの酸化物担体上に含有し、アルカリ金属、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、スカンジウムおよびランタニドから選ばれる別の金属をさらに含有している触媒の存在中でガソリン留分を生じさせるための方法が開示されている。アルカリ金属は、好ましくは、カリウムである。しかしながら、この文献には、触媒中のリンの存在は開示されていない。
【0008】
特許文献4には、不飽和化合物を含有している液体フラクションを触媒の存在中で水素化するための方法であって、当該触媒は、第VIII族金属と、任意選択的に第VIB族金属とをアルミナタイプまたはシリカ-アルミナタイプの担体上に堆積されて含んでおり、アルカリ金属によって促進され、当該アルカリ金属が有する含有率は、0.1~5重量%、好ましくは0.4~2.5重量%である、方法が開示されている。しかしながら、この文献には、触媒中のリンの存在は開示されていない。
【0009】
最後に、特許文献5には、ナフサ留分を触媒の存在中で水素化脱硫するための方法であって、当該触媒は、第VIB族金属、好ましくはモリブデンをベースとし、第VIII族金属、好ましくはコバルトをベースとし、および第IA族または第IIA族の金属、好ましくは、カルシウムまたはナトリウム、より優先的にはカルシウムを触媒の全重量に相対して0.01~2重量%の含有率でベースとする活性相と、アルミナベースの担体とを含んでいる、方法が開示されている。しかしながら、この文献には、触媒中のリンの存在は開示されていない。
【0010】
それ故に、現在、精製業者の間で依然として強い関心が存在するのは、水素化脱硫触媒、とりわけ、ガソリン留分の水素化脱硫、とりわけ、水素化脱硫における触媒活性および/または選択性に関して改善された触媒性能を有するもの、それ故に、一旦使用されたところで、オクタン価における深刻な低減なく低硫黄ガソリンを生じさせることが可能である水素化脱硫についてである。
【0011】
この関連において、本発明の目的の1つは、硫黄を含有しているオレフィン系ガソリン留分の水素化脱硫のための触媒およびそのための方法におけるその使用を提供することにあり、従来技術から知られている触媒と少なくとも同等に良好な、さらにはより良好な活性および選択性の性能レベルを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0736589号明細書(特開平8-277395号公報)
【特許文献2】米国特許第5266188号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/219102号明細書
【特許文献4】米国特許第3494857号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/213814号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の主題)
本発明の主題は、少なくとも1種の第VIB族元素と、少なくとも1種の第VIII族元素と、リンと、ナトリウと、アルミナを含んでいる担体とを含んでおり、ナトリウム含有率は、前記触媒の全重量に相対して、NaOの形態にある重量で50~2000重量ppmであり、リンとナトリウムとの間のモル比は、1.5~300である、触媒である。
【0014】
本出願人は、驚くべきことに、少なくとも1種の第VIB族元素と、少なくとも1種の第VIII族元素と、リンと、ナトリウムと、アルミナを含んでいる担体とを含んでおり、特定のナトリウム含有率およびナトリウムとリンとの間の特定のモル比を有する触媒の使用により、相乗効果によって、硫黄を含有しているオレフィン系ガソリン留分の水素化脱硫のための方法における性能、より特定的には、選択性に関する性能を改善することが可能となることを発見した。実際に、いかなる理論にも束縛されることなく、触媒内のナトリウムとリンとの間の特定の相対組成に加えられた十分に決定された量におけるナトリウムの存在により、アルミナ担体の表面と触媒の活性相との間の相互作用の改変が誘導され、それ故に、ガソリンの水素化脱硫法における性能を、とりわけ、選択性および活性に関して改善することが可能となる。
【0015】
1つまたは複数の実施形態によると、第VIII族元素の全含有率は、触媒の全重量に相対する前記第VIII族元素の酸化物の重量で0.5~10重量%である。
【0016】
1つまたは複数の実施形態によると、第VIB族元素の含有率は、触媒の全重量に相対する前記第VIB族元素の酸化物の重量で1~30重量%である。
【0017】
1つまたは複数の実施形態によると、リン含有率は、触媒の全重量に相対するPの重量で0.1~10重量%である。
【0018】
1つまたは複数の実施形態によると、第VIII族元素と第VIB族元素との間のモル比は、0.1~0.8である。
【0019】
1つまたは複数の実施形態によると、第VIII族元素とナトリウムとの間のモル比は、触媒の全重量に相対した、第VIII族元素の含有率およびナトリウム含有率に基づいて計算されて、2~400である。
【0020】
1つまたは複数の実施形態によると、第VIB族元素とナトリウムとの間のモル比は、触媒の全重量に相対した、第VIB族元素の含有率およびナトリウム含有率に基づいて計算されて、5~500である。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、リンと第VIB族元素との間のモル比は、0.2~0.35である。
【0022】
1つまたは複数の実施形態によると、リン含有率は、触媒の全重量に相対するPの重量で0.3~5重量%である。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によると、リンとナトリウムとの間のモル比は、触媒の全重量に相対した、リン元素の含有率およびナトリウム元素の含有率に基づいて計算されて、2~100である。
【0024】
1つまたは複数の実施形態において、第VIII族元素は、コバルトであり、第VIB族元素は、モリブデンである。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、前記触媒の比表面積は、50~200m2/gである。
【0026】
1つまたは複数の実施形態によると、前記触媒の細孔容積は、0.5cm/g~1.3cm/gである。
【0027】
本発明による別の主題は、硫黄含有オレフィン系ガソリン留分の水素化脱硫のための方法に関し、前記ガソリン留分、水素および本発明による前記触媒は接触させられ、前記水素化脱硫法が行われる際の温度は、200℃~400℃であり、全圧は、1~3MPaであり、毎時空間速度は、触媒の容積に相対する供給原料の容積流量であるとして定義されて、1h-1~10h-1であり、水素/ガソリン留分の容積比は、100~600SL/Lである。
【0028】
1つまたは複数の実施形態によると、ガソリンは、接触分解ユニットから生じたガソリンである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
続いて、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、主席編集者D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列の金属に対応する。
【0030】
BET比表面積は、規格ASTM D3663-03による窒素物理吸着によって測定され、Rouquerol F.、Rouquerol J.およびSingh K.による研究書“Adsorption by Powders & Porous Solids: Principles, Methodology and Applications”, Academic Press, 1999に記載されている方法である。
【0031】
全細孔容積は、規格D4284-92による水銀ポロシメトリによって、濡れ角140°により、例えば、Micromeritics(登録商標)ブランドのAutopore(登録商標)IIIモデルデバイスを用いて測定される。
【0032】
第VIII族、第VIB族および第V族の元素の含有率は、蛍光X線およびナトリウムについての誘導結合プラズマ分光法(inductively coupled plasma:ICP)によって測定される。
【0033】
(2.説明)
(触媒)
本発明による触媒は、少なくとも1種の第VIB族元素と、少なくとも1種の第VIII族元素と、リンと、ナトリウムと、アルミナを含んでいる担体とを含み、ナトリウム含有率は、NaO酸化物の形態で測定されて、前記触媒の全重量に相対して50~2000重量ppmであり、リンとナトリウムとの間のモル比は、触媒の全重量に相対した、リン含有率およびナトリウム含有率に基づいて計算されて、1.5~300である。
【0034】
本発明による触媒は、NaO酸化物の形態で測定されて、触媒の全重量に相対して50~2000重量ppm、好ましくは100~1500重量ppm、一層より優先的には100~1000重量ppm、一層より優先的には150~950重量ppmのナトリウムを含む。
【0035】
第VIB族元素は、優先的には、モリブデンおよびタングステン、より優先的にはモリブデンから選ばれる。第VIII族元素は、優先的には、コバルト、ニッケルおよびこれらの2種の元素の混合物、より優先的にはコバルトから選ばれる。
【0036】
第VIII族元素の全含有率は、触媒の全重量に相対した、第VIII族元素の酸化物の重量で一般に0.5~10重量%、触媒の全重量に相対した、第VIII族元素の酸化物の重量で好ましくは0.8~9重量%、大いに好ましくは0.9~6重量%である。元素がコバルトまたはニッケルである場合、元素含有率は、それぞれに、CoOまたはNiOとして表される。
【0037】
第VIB族元素の含有率は、触媒の全重量に相対する第VIB族元素の酸化物の重量で一般に1~30重量%、触媒の全重量に相対する第VIB族元素の酸化物の重量で好ましくは2~20重量%、大いに好ましくは4~15重量%である。元素がモリブデンまたはタングステンである場合、金属含有率は、それぞれに、MoOまたはWOとして表される。
【0038】
触媒中の第VIB族元素、第VIII族元素、リンおよびナトリウムの含有率は、マッフル炉における2時間にわたる550℃での触媒サンプルの強熱減量についての補正後の酸化物として表される。強熱減量は、水分の喪失に起因する。それは、ASTM D7348に従って決定される。
【0039】
リン含有率は、触媒の全重量に相対するPの重量で好ましくは0.1~10重量%、触媒の全重量に相対するPの重量で好ましくは0.3~5重量%、一層より優先的には0.5~3重量%である。
【0040】
触媒中のリンとナトリウムとの間のモル比は、1.5~300、好ましくは2~100、大いに好ましくは3~80、より優先的には4~60である。
【0041】
触媒中の第VIII族元素とナトリウムとの間のモル比は、有利には2~400、好ましくは2~300、大いに好ましくは3~250である。モル比は、触媒の全重量に相対する第VIII族元素の含有率およびNa含有率に基づいて計算される。
【0042】
触媒中の第VIB族元素とナトリウムとの間のモル比は、有利には5~500、好ましくは5~400、大いに好ましくは5~250である。モル比は、触媒の全重量に相対する第VIB族元素含有率およびNa含有率に基づいて計算される。
【0043】
好ましくは、触媒の第VIII族元素と第VIB族元素との間のモル比は、0.1~0.8、好ましくは0.2~0.6、好ましくは0.3~0.5、一層より好ましくは0.35~0.45である。
【0044】
好ましくは、リンと第VIB族元素との間のモル比は、0.2~0.35、好ましくは0.23~0.35、一層より好ましくは0.25~0.35である。
【0045】
触媒が一般に含む比表面積は、50~200m2/g、好ましくは60~190m2/g、好ましくは60~170m2/gである。
【0046】
触媒の細孔容積は、一般に0.5cm/g~1.3cm/g、好ましくは0.6cm/g~1.1cm/gである。
【0047】
(アルミナ担体)
本発明による触媒の担体は、アルミナを含む。好ましくは、担体は、アルミナからなる。
【0048】
本発明による1つの実施形態において、触媒中のナトリウムの存在は、担体中のナトリウムの存在に起因する。この実施形態において、ナトリウム含有率は、ナトリウムの重量で、それのNaO酸化物の形態で測定されて、担体の全重量に相対して好ましくは50~2500重量ppm、好ましくは50~2000重量ppm、一層より優先的には100~1500重量ppmである。
【0049】
担体の細孔容積は、一般に0.5cm/g~1.3cm/g、好ましくは0.65cm/g~1.2cm/gである。
【0050】
担体が一般に含む比表面積は、50~200m2/g、好ましくは60~190m2/gである。
【0051】
担体は、ボール状、任意の幾何学形状の押出物状、粉体状、小板状、ペレット状、圧縮シリンダ状、粉砕固体状または任意の他の形付けの形態であり得る。好ましくは、担体は、径が0.5~6mmであるビーズ状の形態または外接円径が0.8~3mmである円筒形、三葉または四葉の押出物の形態にある。
【0052】
本発明による触媒の担体は、当業者に知られている種々の方法によって合成され得、例えば、三水酸化アルミニウム(Al(OH))タイプの前駆体(ハイドラーギライトまたはギブサイトとしても知られている)の急速脱水によって合成され、この前駆体は、例えば、「ベイヤー」と一般的に呼ばれる方法からのものである。形付けが、次いで、例えば、造粒によって行われ、次いで、水熱処理および最後に焼成が行われ、これによって、アルミナを得るに至る。この方法は、とりわけ、P. Euzen、P. Raybaud、X. Krokidis、H. Toulhoat、J. L. Le Loarer、J. P. JolivetおよびC. Froidefondによる文献Alumina, in Handbook of Porous Solids, edited by F. Schuth, K.S.W. Sing and J. Weitkamp, Wiley-VCH, Weinheim, Germany, 2002, pp. 1591-1677に詳細に記載されている。この方法により、「フラッシュ・アルミナ」と一般的に呼ばれているアルミナを生じさせることが可能となる。
【0053】
アルミナ担体中にナトリウムが存在する場合、ナトリウムは、一般に、アルミナの合成の間またはその後に導入される。より特定的には、担体中に存在するナトリウムは、アルミニウム前駆体中、例えば、水酸化アルミニウムタイプの前駆体中に既に存在してよい。アルミナ担体中に存在するナトリウムはまた、望みの量で担体に、担体の形付けの間に、例えば、フラッシュ・アルミナの合成中の造粒工程の間に、あるいは、アルミニウム前駆体の含浸によって導入され得る。
【0054】
(触媒の調製のための方法)
担体上への活性相の導入は、当業者に知られている調製の任意の方法に従って行われ得る。担体への活性相の添加は、第VIB族元素の少なくとも1種の成分、第VIII族元素の少なくとも1種の成分、リンおよび場合によるナトリウムを担体と接触させることからなり、触媒前駆体を得る。
【0055】
第1の実施の様式によると、第VIB族元素および第VIII族元素の前記成分、リンおよび場合によるナトリウムは、前記担体上に、1回または複数回の共含浸工程によって堆積され、すなわち、第VIB族元素および第VIII族元素の前記成分、リンおよび場合によるナトリウムは、前記担体に同時に導入される。共含浸工程(1回または複数回)は、優先的には、溶液の乾式含浸または過剰含浸によって行われる。この第1の実施形態がいくつかの共含浸工程の実施を含む場合、各共含浸工程の後に、好ましくは、中間乾燥の工程が行われ、これは、一般に200℃未満、有利には50℃~180℃、好ましくは60℃~150℃、大いに好ましくは75℃~140℃の温度で、一般に0.5~24時間、好ましくは0.5~12時間の期間にわたって行われる。
【0056】
共含浸による好適な実施形態によると、含浸溶液は、好ましくは、水溶液である。好ましくは、含浸水溶液がコバルト、モリブデンおよびリンを含有する場合に、含浸水溶液は、溶液中にヘテロポリアニオンの形成を促進するpH条件下に調製される。例えば、このような水溶液のpHは、1~5である。
【0057】
第2の実施形態によると、触媒前駆体は、第VIB族元素の成分、第VIII族元素の成分およびリンおよび場合によるナトリウムの前記担体の上への連続的な堆積を任意の順序で行うことによって調製される。堆積は、乾式含浸、過剰含浸あるいはほかに堆積-沈着によって、当業者に周知な方法に従って行われてよい。この第2の実施形態において、第VIB族および第VIII族の金属の成分およびリンおよび場合によるナトリウムの堆積は、いくつかの含浸によって行われ得、中間乾燥の工程を、2回の連続する含浸の間に、一般に200℃未満、有利には50℃~180℃、好ましくは60℃~150℃、大いに好ましくは75℃~140℃の温度で、一般に0.5~24時間、好ましくは0.5~12時間の期間にわたって行う。
【0058】
用いられる上記元素、リンおよび場合によるナトリウムの堆積の様式がどうであれ、含浸溶液の組成の一部を形成する溶媒は、活性相の金属前駆体を可溶化するように選ばれ、例えば、水または有機溶媒(例えばアルコール)がある。
【0059】
使用がなされてよいのは、例として、モリブデンの供給源の中で、酸化物および水酸化物、モリブデン酸およびその塩、特に、アンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸(HPMo1240)、およびその塩、および場合によってはケイモリブデン酸(HSiMo1240)およびその塩がある。モリブデンの供給源は、任意のヘテロポリ化合物、例えばケギン、欠損ケギン、置換型ケギン、ドーソン、アンダーソンまたはストランドベルグのタイプのものであることもできる。使用が好ましくなされるのは、三酸化モリブデンおよびケギン、欠損ケギン、置換型ケギンおよびストランドベルグのタイプのヘテロポリ化合物である。
【0060】
用いられ得るタングステン前駆体も当業者に周知である。例えば、使用がなされてよいのは、タングステンの供給源の中で、酸化物および水酸化物、タングステン酸およびその塩、特に、アンモニウム塩、例えば、タングステン酸アンモニウムまたはメタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸およびそれらの塩、および場合によっては、タングストケイ酸(HSiW1240)およびその塩がある。タングステンの供給源は、任意のヘテロポリ化合物、例えば、ケギン、欠損ケギン、置換型ケギンまたはドーソンのタイプのものであることもできる。使用が好ましくなされるのは、酸化物およびアンモニウム塩、例えば、メタタングステン酸アンモニウム、またはケギン、欠損ケギンまたは置換型ケギンのタイプのヘテロポリアニオンである。
【0061】
用いられ得るコバルト前駆体は、例えば、酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩および硝酸塩から有利に選ばれる。使用が好ましくなされるのは、水酸化コバルトおよび炭酸コバルトである。
【0062】
用いられ得るニッケル前駆体は、例えば、酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩および硝酸塩から有利に選ばれる。使用が好ましくなされるのは、水酸化ニッケルおよびヒドロキシ炭酸ニッケルである。
【0063】
リンは、有利には、その調製の種々の工程において種々の方法で触媒に導入され得る。リンは、前記アルミナ担体の形付けの間に、または、好ましくは、この形付けの後に導入され得る。それは、有利には、単独でまたは第VIB族および第VIII族の金属の少なくとも1種との混合物として導入され得る。リンは、好ましくは、第VIB族および第VIII族からの金属の前駆体との混合物として、完全にまたは部分的に、形付け済みのアルミナ担体上に、前記アルミナ担体の乾式含浸によって、金属の前駆体およびリンの前駆体を含有している溶液を用いて導入される。リンの好適な供給源は、オルトリン酸HPOであるが、その塩およびエステル、例えば、リン酸アンモニウムまたはその混合物も適している。リンはまた、第VIB族からの元素(1種または複数種)と同じタイミングで、例えば、ケギン、欠損ケギン、置換型ケギンまたはストランドベルグのタイプのヘテロポリアニオンの形態で導入され得る。
【0064】
本発明による変形実施形態において、ここでは、担体上への活性相の導入の間にナトリウムが加えられ、ナトリウムは、有利には、その調製の種々の段階において種々の方法で触媒に導入され得る。それは、有利には、単独でまたは第VIB族および第VIII族の元素の少なくとも1種およびリンとの混合物として導入され得る。当業者に知られているナトリウムの任意の供給源が用いられ得る。好ましくは、ナトリウムの供給源は、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、さらには硫酸ナトリウムである。
【0065】
第VIII族および第VIB族の元素、リンおよび場合によるナトリウムを担体と接触させる1回または複数回の工程の終わりに、触媒の前駆体は、乾燥工程に供され、これは、当業者に知られている任意の技術によって行われる。それは、有利には、大気圧または減圧で行われる。好ましくは、この工程は、大気圧で行われる。この工程が行われる際の温度は、200℃未満、好ましくは50℃~180℃、好ましくは60℃~150℃、大いに好ましくは75℃~140℃である。
【0066】
乾燥工程は、有利には、横断床(traversed bed)において高温空気または任意の他の高温ガスを用いて行われる。好ましくは、横断床において乾燥が行われる場合、用いられるガスは、空気または不活性ガス、例えば、アルゴンまたは窒素いずれかである。大いに好ましくは、乾燥は、横断床において空気の存在中で行われる。
【0067】
好ましくは、この乾燥工程が有する継続期間は、30分~24時間、好ましくは1時間~12時間である。
【0068】
乾燥工程の終結の際に、乾燥済み触媒が得られ、これは、活性化段階(硫化工程)の後に水素化処理触媒として用いられ得る。
【0069】
代わりの形態によると、乾燥済み触媒は、続く焼成工程に供され得、例えば、空気下、200℃以上の温度で行われる。焼成が一般に行われる際の温度は、600℃以下、好ましくは200℃~600℃、特に好ましくは250℃~500℃である。焼成時間は、一般に0.5時間~16時間、好ましくは1時間~6時間である。それは、一般に、空気下に行われる。焼成により、第VIB族および第VIII族の元素の前駆体を酸化物に変換することがとりわけ可能となる。
【0070】
水素化処理触媒としてのそれの使用の前に、乾燥済みまたは場合による焼成済みの触媒を硫化工程(活性化段階)に供することが有利である。この活性化段階は、当業者に周知な方法によって、有利には、水素および硫化水素の存在中でのスルホ還元雰囲気下に行われる。硫化水素は、直接的に用いられ得るか、または、硫化剤(例えば、ジメチルジスルフィド)によって生じさせられ得る。
【0071】
(ガソリンの水素化脱硫のための方法)
本水素化処理法は、硫黄含有オレフィン系ガソリン留分を、上記の触媒および水素と、以下の条件下に接触させることからなる:
- 温度は、200℃~400℃、好ましくは230℃~330℃である;
- その際の全圧は、1~3MPa、好ましくは1.5~2.5MPaである;
- 毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、触媒の容積に相対する供給原料の容積流量であるとして定義されて、1~10h-1、好ましくは2~6h-1である;
- 水素/ガソリン供給原料の容積比は、100~600SL/L、好ましくは200~400SL/Lである。
【0072】
それ故に、本発明による方法により、任意のタイプの硫黄含有オレフィン系ガソリン留分、例えば、コーキング、ビスブレーキング、水蒸気分解または接触分解(FCC:Fluid Catalytic Cracking流動接触分解)のユニットから生じた留分等を処理することが可能となる。このガソリンは、場合によっては、相当な割合の、他の製造方法、例えば、常圧蒸留(直接蒸留から生じたガソリン(または直留ガソリン))、または転化方法(コーキングまたは水蒸気分解のガソリン)に由来するガソリンから構成され得る。前記供給原料は、好ましくは、接触分解ユニットから生じたガソリン留分からなる。
【0073】
供給原料は、有利には、硫黄含有化合物およびオレフィンを含有しているガソリン留分であり、30℃と250℃未満との間、好ましくは35℃~240℃、好適には40℃~220℃の沸点を有している。
【0074】
接触分解(FCC)によって生じたガソリン留分の硫黄含有率は、FCCによって処理される供給原料の硫黄含有率、FCCの供給原料の前処理の存否、並びに留分の終点に依存する。一般に、ガソリン留分、とりわけ、FCCに由来するものの全体の硫黄含有率は、100重量ppm超、ほとんどの場合500重量ppm超である。終点が200℃超であるガソリンについて、硫黄含有率は、しばしば1000重量ppm超である;それらは、場合によっては、4000~5000重量ppmの程度の値に達することさえできる。
【0075】
加えて、接触分解(FCC)ユニットから生じたガソリンは、平均で、0.5重量%~5重量%のジオレフィン、20重量%~50重量%のオレフィンおよび10重量ppm~0.5重量%の硫黄を含有し、硫黄は、一般に300ppm未満のチオールを含んでいる。チオールは、一般に、ガソリンの軽質フラクション中、より具体的には、沸点が120℃未満であるフラクション中に濃縮される。
【0076】
ガソリン中に存在する硫黄化合物は、ヘテロ環硫黄化合物、例えば、チオフェン、アルキルチオフェンまたはベンゾチオフェン等を含むこともできることが留意されるべきである。これらのヘテロ環化合物は、チオールとは異なり、抽出法によって除去され得ない。これらの硫黄化合物は、その結果として、水素化処理によって除去され、これは、それらの炭化水素およびHSへの変換につながる。
【0077】
好ましくは、本発明による方法によって処理されるガソリンは、分解方法から生じたガソリンの広範囲の留分(すなわち、Full Range Cracked Naphthaフルレンジ分解ナフサについてのFRCN)を軽質ガソリン(Light Cracked Naphtha軽質分解ナフサについてのLCN)および重質ガソリン(すなわち、Heavy Cracked Naphtha重質分解ナフサについてのHCN)に分離することを目的とした蒸留工程から生じた重質ガソリンHCNである。軽質ガソリンおよび重質ガソリンのカットポイントは、軽質ガソリンの硫黄含有率を制限するようにかつガソリンプールにおいてそれを用いることを可能にして、好ましくはさらなる後処理がないように決定される。有利には、広範囲の留分FRCNは、蒸留工程の前に下記の選択的水素化工程に供される。
【0078】
(実施例)
(実施例1:触媒A(本発明に合致しない))
Sasol(登録商標)によって販売されているTH200(登録商標)アルミナ100グラムを、固定式横断床中、750℃で4時間にわたって、1L/h/gの空気流下に焼成する。このようにして得られた担体S1が有する比表面積は、90m2/gであり、細孔容積は、水銀ポロシメトリによって測定されて、0.60mL/gであり、強熱減量は、2.6重量%である。
【0079】
次いで、コバルト、モリブデンおよびリンを加える。含浸溶液の調製を、酸化モリブデン(2.25g、純度≧99.5%、Sigma-Aldrich(登録商標))、水酸化コバルト(0.61g、純度99.9%、Alfa Aesar(登録商標))、85重量%リン酸(0.51g、純度99.99%、Sigma-Aldrich(登録商標))の水15.6mL中の90℃での溶解によって行う。担体S1の20gの乾式含浸の後に、含浸済みアルミナを、水飽和雰囲気中、周囲温度で24時間にわたって放置熟成させ、次いで、120℃で16時間にわたって乾燥させる。このようにして得られた乾燥済み触媒をAと表記する。
【0080】
触媒Aの最終の金属組成は、蛍光X線によって決定され、酸化物の形態で表されて、乾燥触媒の重量に相対して、以下の通りである:MoO=10.0±0.2重量%、CoO=2.1±0.1重量%およびP=1.4±0.1重量%である。Co/MoおよびP/Moのモル比は、それぞれに、0.40および0.28である。ナトリウム含有率は、ICPによって決定され、酸化物として表されて、触媒の全重量に相対してNaO=0.002±0.001重量%である。触媒AのP/Naモル比は、306である。Co/NaおよびMo/Naのモル比は、それぞれに、436および1082である。
【0081】
(実施例2:触媒B(本発明に合致しない))
担体S1にナトリウムを加えたものから担体S2を得る。含浸溶液の調製を、硝酸ナトリウム(0.3g)を90℃で水18.6mL中に溶解させることによって行う。担体S1の20グラムの乾式含浸の後に、含浸済みアルミナを、水飽和雰囲気中、24時間にわたって周囲温度で放置熟成させ、次いで、120℃で16時間にわたって乾燥させ、固定式横断床中450℃で4時間にわたって1L/h/gの空気流下に焼成する。このようにして得られた担体S2が有する細孔容積は、水銀ポロシメトリによって測定されて0.60mL/gであり、強熱減量は、1.4重量%である。
【0082】
次いで、コバルト、モリブデンおよびリンを加える。含浸溶液の調製を、酸化モリブデン(2.28g、純度≧99.5%、Sigma-Aldrich(登録商標))、水酸化コバルト(0.62g、純度99.9%、Alfa Aesar(登録商標))、85重量%リン酸(0.52g、純度99.99%、Sigma-Aldrich(登録商標))の水15.6mL中の90℃での溶解によって行う。担体S2の20gの乾式含浸の後に、含浸済みアルミナを、水飽和雰囲気中、周囲温度で24時間にわたって放置熟成させ、次いで、120℃で16時間にわたって乾燥させる。このようにして得られた乾燥済み触媒を、Bと表記する。
【0083】
触媒Bの最終の金属組成は、蛍光X線によって決定され、酸化物の形態で表されて、乾燥触媒の重量に相対して、以下の通りである:MoO=10.0±0.2重量%、CoO=2.1±0.1重量%およびP=1.4±0.1重量%。Co/MoおよびP/Moのモル比は、それぞれに、0.40および0.28である。ナトリウム含有率は、ICPによって決定されかつ酸化物として表されて、触媒の全重量に相対してNaO=0.45±0.02重量%である。触媒BのP/Naモル比は、1.4である。Co/NaおよびMo/Naのモル比は、それぞれに、1.9および4.8である。
【0084】
(実施例3:触媒C(本発明に合致しない))
Axens(登録商標)によって供給されるアルミナ担体S3が有する比表面積は、95m2/gであり、細孔容積は、水銀ポロシメトリによって測定されて、0.76mL/gであり、強熱減量は、5.0重量%である。
【0085】
次いで、コバルトおよびモリブデンを加える。含浸溶液の調製を、90℃で、七モリブデン酸アンモニウム四水和物(2.71g、純度99.98%、Sigma-Aldrich(登録商標))および硝酸コバルト六水和物(1.80g、純度98%、Sigma-Aldrich(登録商標))を水15.0mL中に溶解させることによって行う。担体S3の20gの乾式含浸の後に、含浸済みアルミナを、水飽和雰囲気中、周囲温度で24時間にわたって放置熟成させ、次いで、120℃で16時間にわたって乾燥させる。このようにして得られた乾燥済み触媒を、Cと表記する。
【0086】
触媒Cの最終の金属組成は、蛍光X線によって決定され、酸化物の形態で表されて、乾燥触媒の重量に相対して、以下の通りである:MoO=10.0±0.2重量%およびCoO=2.1±0.1重量%。Co/MoおよびP/Moのモル比は、それぞれに、0.40および0である。ナトリウム含有率は、ICPによって決定されかつ酸化物として表されて、触媒の全重量に相対してNaO=0.085±0.005重量%である。触媒のP/Naモル比は、0である。Co/NaおよびMo/Naのモル比は、それぞれに、10および25である。
【0087】
(実施例4:触媒D(本発明に合致する))
触媒担体Dも担体S3である。次いで、コバルト、モリブデンおよびリンを加える。含浸溶液の調製を、酸化モリブデン(2.2g、純度≧99.5%、Sigma-Aldrich(登録商標))、水酸化コバルト(0.60g、純度99.9%、Alfa Aesar(登録商標))、85重量%リン酸(0.48g、純度99.99%、Sigma-Aldrich(登録商標))の水14.9mL中の90℃での溶液によって行う。担体S3の20gの乾式含浸の後に、含浸済みアルミナを、水飽和雰囲気中、周囲温度で24時間にわたって放置熟成させ、次いで、120℃で16時間にわたって乾燥させる。このようにして得られた乾燥済み触媒を、Dと表記する。
【0088】
触媒Dの最終の金属組成は、蛍光X線によって決定され、酸化物の形態で表されて、乾燥触媒の重量に相対して、以下の通りである:MoO=10.0±0.2重量%、CoO=2.1±0.1重量%およびP=1.4±0.1重量%。Co/MoおよびP/Moのモル比は、それぞれに、0.40および0.28である。ナトリウム含有率は、ICPによって決定されかつ酸化物として表されて、触媒の全重量に相対してNaO=0.084±0.005重量%である。触媒のP/Naモル比は、7.3である。Co/NaおよびMo/Naのモル比は、それぞれに、10および26である。
【0089】
(実施例5:水素化脱硫反応器において用いられた触媒A~Dの性能の評価)
この実施例において、触媒A~Dの性能を接触分解ガソリンの水素化脱硫において評価する。
【0090】
接触分解(FCC)ガソリンを代表するモデル供給原料は、2,3-ジメチルブタ-2-エン10重量%および3-メチルチオフェン0.33重量%(すなわち、供給原料中硫黄1000重量ppm)を含有しており、このものを種々の触媒の触媒性能の評価のために用いる。用いられた溶媒は、ヘプタンである。
【0091】
水素化脱硫(hydrodesulfurization:HDS)反応を、固定式横断床反応器において、全圧1.5MPa下に、210℃、HSV=6h-1(HSV=供給原料の容積流量/触媒の容積)およびH/供給原料の容積比300SL/Lで、触媒4mLの存在中で行う。HDS反応の前に、触媒の現場内(in situ)硫化を、350℃で2時間にわたって、15mol%のHSを含有している水素の流れ下に、大気圧で行う。
【0092】
触媒のそれぞれを、前記反応器中に連続的に置く。異なる時間間隔でサンプルを取り、ガスクロマトグラフィーによって分析し、反応物の消失と生成物の形成を観察する。
【0093】
触媒の触媒性能を触媒活性および選択性の観点から評価する。水素化脱硫(HDS)活性を、3-メチルチオフェンのHDS反応についての速度定数(kHDS)を、導入された触媒の容積で標準化したものから表し、硫黄含有化合物に対して一次反応速度論を仮定する。オレフィンの水素化(HydO)活性を、2,3-ジメチルブタ-2-エンの水素化反応についての速度定数を、導入された触媒の容積で標準化したものから表し、オレフィンに対して一次反応速度論を仮定する。
【0094】
触媒の選択性を、速度定数の標準化された比kHDS/kHydOによって表す。kHDS/kHydO比は、触媒がより選択的になるにつれて増大することになる。得られた値を、触媒Aを基準(相対的HDS活性および相対的選択性は100に等しい)として採用することによって標準化する。性能品質は、それ故に、相対的HDS活性および相対的選択性である。結果を下記の表1に列挙する。
【0095】
【表1】
【0096】
したがって、本発明による触媒Dは、活性および選択性の観点から、不適合触媒A、BおよびCと比較してより良好な性能を示すことが明らかとなり、したがって、ガソリン水素化脱硫法において改善された性能を得るために触媒中の調節されたNaO含有率および特定の最適化されたP/Naモル比の重要性が強調される。触媒の選択性におけるこの改善は、オレフィンを含有しているガソリンの水素化脱硫のための方法であって、オレフィンの水素化に起因するオクタンの喪失を可及的に制限することが求められている方法における使用の場合において特に有利である。
【国際調査報告】