(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】遺伝子突然変異を検出する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6813 20180101AFI20240327BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALI20240327BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20240327BHJP
C12Q 1/6816 20180101ALI20240327BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20240327BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20240327BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240327BHJP
C12N 15/60 20060101ALN20240327BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240327BHJP
【FI】
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6827 Z ZNA
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6816 Z
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6886 Z
C12M1/00 A
C12N15/60
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564411
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 IB2021053355
(87)【国際公開番号】W WO2022224021
(87)【国際公開日】2022-10-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515312427
【氏名又は名称】ポステック・リサーチ・アンド・ビジネス・ディベロップメント・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】POSTECH RESEARCH AND BUSINESS DEVELOPMENT FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ,スーラヴ
(72)【発明者】
【氏名】バン,チャンギル
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029CC02
4B029CC03
4B029FA15
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR55
4B063QS39
(57)【要約】
固体基板に付着させたオリゴヌクレオチド二重鎖中のミスマッチ対の存在を、原子間力顕微鏡を用いて検出する方法及び装置が開示される。特に、本発明の方法及び装置は、DNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMカンチレバーを備える原子間力顕微鏡を使用することにより、オリゴヌクレオチド二重鎖のサンプルにおけるミスマッチ対の存在の定性的分析及び定量的分析を可能にする。本発明の方法及び装置は、サンプルの増幅、標識化又は修飾を必要とせずに遺伝子突然変異を検出することができる。かかる装置及び方法は、癌、外傷、敗血症、無菌性炎症、心筋梗塞、脳卒中、移植、糖尿病、鎌状赤血球症及び他の臨床状態に関連するが、これらに限定されないバイオマーカーの検出及び/又は分析を含む多種多様な臨床診断用途に使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基板に付着させたオリゴヌクレオチド二重鎖中のミスマッチの存在を決定する方法であって、
前記固体基板を、DNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMチップを有する原子間力顕微鏡(AFM)で走査して、フォースマップを生成することと、
前記フォースマップを分析して、前記オリゴヌクレオチド二重鎖中のミスマッチの存在を決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記DNAミスマッチ修復タンパク質が原核生物のミスマッチ修復タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記DNAミスマッチ修復タンパク質がMutS又はそのホモログを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記DNAミスマッチ修復タンパク質が真核生物のミスマッチ修復タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒスチジンタグ付きDNAミスマッチ修復タンパク質を含む原子間力顕微鏡(AFM)カンチレバーチップ。
【請求項6】
前記DNAミスマッチ修復タンパク質が原核生物のミスマッチ修復タンパク質である、請求項5に記載のAFMカンチレバーチップ。
【請求項7】
前記DNAミスマッチ修復タンパク質がMutS又はそのホモログを含む、請求項6に記載のAFMカンチレバーチップ。
【請求項8】
前記DNAミスマッチ修復タンパク質が真核生物のミスマッチ修復タンパク質である、請求項5に記載のAFMカンチレバーチップ。
【請求項9】
前記ヒスチジンタグ付きDNAミスマッチ修復タンパク質がリンカーを介して前記AFMカンチレバーチップに付着している、請求項5に記載のAFMカンチレバーチップ。
【請求項10】
前記ヒスチジンタグ付きDNAミスマッチ修復タンパク質が、前記ヒスチジンタグとNi(II)イオンとの錯体形成により前記AFMカンチレバーチップに固定化されている、請求項6に記載のAFMカンチレバーチップ。
【請求項11】
サンプルにおける遺伝子突然変異の存在を検出する方法であって、
前記サンプルとプローブオリゴヌクレオチドを含む固体基板とを、標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖を形成するのに十分な条件下で接触させることと、
なお、前記プローブオリゴヌクレオチドは、野生型遺伝子の相補的オリゴヌクレオチド配列を含む;
前記標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖とDNAミスマッチ修復タンパク質との間の相互作用のレベルを、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することと、
前記相互作用のレベルを分析して、ミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖の存在を決定することと、
を含み、ミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖の存在が、前記サンプルにおける遺伝子突然変異の存在を示す、方法。
【請求項12】
前記プローブオリゴヌクレオチドがRas、EGFR及びPIK3CAからなる群から選択される野生型遺伝子の相補的オリゴヌクレオチドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記Ras遺伝子がKRas、HRas、NRas、R-Ras、M-Ras、E-ras、Di-Ras1、Di-Ras2、NKIRas1、NKIRas2、TC21、Rap1、Rap2、Rit1、Rit2、Rem1、Rem2、Rad、Gem、Rheb1、Rheb2、Noey2、R-Ras、Rerg、RalA、RalB、RasD1、RasD2、RRP22、RasL10B、RasL11A、RasL11B、Ris/RasL12及びFLJ22655からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
KRas遺伝子のコドン12又はコドン13における突然変異を検出する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
KRas遺伝子のコドン12における突然変異を検出する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法の特異度が少なくとも約90%である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記方法の感度が少なくとも約90%である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプル中に0.1%以下で存在する突然変異を検出することが可能である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記サンプルが増幅、標識化又は修飾なしに遺伝子突然変異の存在を検出するために使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
被験体における癌の存在を診断する方法であって、
被験体から得られた流体サンプルとプローブオリゴヌクレオチドを含む固体基板とを、標的オリゴヌクレオチドが前記サンプル中に存在する場合に標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖を形成するのに十分な条件下で接触させることと、
なお、前記プローブオリゴヌクレオチドは、野生型Ras遺伝子の少なくとも一部を含む;
前記標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖を、ミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖の存在について、原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバーに付着させたDNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMで分析することと、
を含み、前記DNAミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖の存在が、前記被験体が癌を有することを示す、方法。
【請求項21】
前記野生型Ras遺伝子が野生型KRas遺伝子を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
KRas遺伝子のコドン12又はコドン13における突然変異の存在を決定するために使用される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
G12D、G12A、G12R、G12C、G12S、G12V、G13D又はそれらの組合せの存在を決定するために使用される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記流体サンプルと前記固体基板とを接触させる工程が、前記流体サンプルとブロッキングプローブとを、前記突然変異Ras遺伝子が前記流体サンプルに存在する場合にブロッキングプローブ-突然変異Ras遺伝子二重鎖及び一本鎖突然変異Ras遺伝子を選択的に形成するのに十分な条件下で接触させる工程を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記ブロッキングプローブがロックド核酸/DNA(「LNA/DNA」)キメラブロッキングプローブを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
LNA/DNAキメラブロッキングプローブ-正常Ras遺伝子二重鎖とLNA/DNAキメラブロッキングプローブ-突然変異Ras遺伝子二重鎖との間の融解温度差が少なくとも10℃である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
被験体における遺伝子突然変異を検出する装置であって、
(i)対象の野生型遺伝子の少なくとも一部を含むプローブオリゴヌクレオチドを含む固体基板と、
(ii)原子間力顕微鏡(「AFM」)のカンチレバーチップに付着させたDNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMと、
を備える、装置。
【請求項28】
前記プローブオリゴヌクレオチドがKRas遺伝子のコドン12又はコドン13における突然変異を検出するためのオリゴヌクレオチドを含む、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記プローブオリゴヌクレオチドが約10個~500個のヌクレオチドを含む、請求項27に記載の装置。
【請求項30】
前記プローブオリゴヌクレオチドが約20個~250個のヌクレオチドを含む、請求項29に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体基板に付着させたオリゴヌクレオチド二重鎖中のミスマッチ対の存在を、原子間力顕微鏡を用いて検出する装置及び方法に関する。特に、本発明の方法及び装置は、DNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMカンチレバーを備える原子間力顕微鏡を使用することにより、オリゴヌクレオチド二重鎖のサンプルにおけるミスマッチ対の存在の定性的分析及び定量的分析を可能にする。本発明の方法及び装置は、サンプルの増幅、標識化又は修飾を必要とせずに遺伝子突然変異を検出することができる。かかる装置及び方法は、癌、外傷、敗血症、無菌性炎症、心筋梗塞、脳卒中、移植、糖尿病、鎌状赤血球症及び他の臨床状態に関連するが、これらに限定されないバイオマーカーの検出及び/又は分析を含む多種多様な臨床診断用途に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
循環遊離DNA又はセルフリーDNA(cfDNA)は、血漿に放出される分解DNA断片である。例示的なcfDNAとしては、循環腫瘍DNA(ctDNA)及びセルフリー胎児DNA(cffDNA)が挙げられるが、これらに限定されない。特に注目すべきことに、癌、特にこの疾患の進行期においてcfDNAレベルの上昇が観察されている。cfDNAが老化の開始とともに増加するという証拠もある。
【0003】
cfDNAは、癌、外傷、敗血症、無菌性炎症、心筋梗塞、脳卒中、移植、糖尿病、鎌状赤血球症及び他の臨床状態を含むが、これらに限定されない様々な臨床状態に対して有用なバイオマーカーであることが示されている。他の有用なcfDNAとしては、女性が妊娠しているかを決定するだけでなく、任意の胎児異常の存在を決定するためのcffDNAが挙げられる。cfDNAは主に、小さな断片(70 bp~200 bp)とより大きな断片(21 kb)とからなるDNAの二本鎖細胞外分子である。
【0004】
予想されるように、セルフリー循環腫瘍DNA(ctDNA)分析等のセルフリーDNA分析は、限定されるものではないが、前立腺癌、乳癌、結腸癌及び他の固形腫瘍等の癌の非侵襲的早期評価の非常に大きな機会を与える。ctDNA分析における最近の技術的進歩により、検出限界(LOD)及び感度/特異度を高めたリキッドバイオプシーツールが、腫瘍学の診断的及び予後予測的な側面に大きく貢献し得ることが示されている。
【0005】
現在、PCRベースの方法が、この分野においてトップに立っており、達成される検出限界(「LOD」)は、期待の持てるものである。しかしながら、残念なことに、PCRベースの方法は、増幅工程中にそれ自体の突然変異を導入し、データ分析中に望ましくないアーチファクトを導入するため、感度及び/又は特異度が理想的とは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、PCRベースの方法を用いることなく、cfDNA中の任意の異常の存在を決定する感度及び/又は特異度を改善する必要がある。特に、増幅、標識化又は修飾を必要とせずに遺伝子突然変異を検出する装置及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの態様は、カンチレバーチップがDNAミスマッチ修復タンパク質を含む原子間力顕微鏡(AFM)が、いかなる標識化、増幅(例えばPCRによる)又は修飾もなしに、ミスマッチオリゴヌクレオチド二重鎖の極めて高感度かつ選択的な検出を提供するという本発明者らによる発見に基づく。本発明の方法及び装置は、ミスマッチオリゴヌクレオチド二重鎖の存在を決定するための定量的分析及び定性的分析の両方を可能にする。
【0008】
本発明の或る特定の態様は、固体基板に付着させたオリゴヌクレオチド二重鎖中のミスマッチ対の存在を決定する方法であって、
上記固体基板を、DNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMチップを有する原子間力顕微鏡(AFM)で走査して、フォースマップを生成することと、
上記フォースマップを分析して、上記オリゴヌクレオチド二重鎖中のミスマッチの存在を決定することと、
を含む、方法を提供する。
【0009】
幾つかの実施の形態において、方法は、サンプルにおけるミスマッチオリゴヌクレオチド二重鎖のレベルを決定するために使用される。更に他の実施の形態において、上記DNAミスマッチ修復タンパク質は、原核生物のミスマッチ修復タンパク質である。場合によっては、上記DNAミスマッチ修復タンパク質は、MutS又はそのホモログを含む。
【0010】
更に他の実施の形態において、上記DNAミスマッチ修復タンパク質は、真核生物のミスマッチ修復タンパク質である。場合によっては、上記DNAミスマッチ修復タンパク質は、MSH2、MSH3、MSH4又はMSH6を含む。
【0011】
本発明の別の態様は、ヒスチジンタグ付きDNAミスマッチ修復タンパク質を含む原子間力顕微鏡(AFM)カンチレバーチップを提供する。幾つかの実施の形態において、上記DNAミスマッチ修復タンパク質は、原核生物のミスマッチ修復タンパク質である。或る特定の例において、上記DNAミスマッチ修復タンパク質は、MutS又はそのホモログを含む。
【0012】
更に他の実施の形態において、上記DNAミスマッチ修復タンパク質は、真核生物のミスマッチ修復タンパク質である。或る特定の実施の形態において、上記DNAミスマッチ修復タンパク質は、MSH2、MSH3、MSH4又はMSH6を含む。
【0013】
更に他の実施の形態において、上記ヒスチジンタグ付きDNAミスマッチ修復タンパク質は、リンカーを介して上記AFMカンチレバーチップに付着している。
【0014】
或る実施の形態において、上記ヒスチジンタグ付きDNAミスマッチ修復タンパク質は、上記ヒスチジンタグとNi(II)イオンとの錯体形成により上記AFMカンチレバーチップに固定化されている。
【0015】
本発明の更に別の態様は、サンプルにおける遺伝子突然変異の存在を検出する方法であって、
上記サンプルとプローブオリゴヌクレオチドを含む固体基板とを、標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖を形成するのに十分な条件下で接触させることと、
なお、上記プローブオリゴヌクレオチドは、野生型遺伝子の相補的オリゴヌクレオチド配列を含む;
上記標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖とDNAミスマッチ修復タンパク質との間の相互作用のレベルを、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定することと、
上記相互作用のレベルを分析して、ミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖の存在を決定することと、
を含み、ミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖の存在が、上記サンプルにおける遺伝子突然変異の存在を示す、方法を提供する。
【0016】
幾つかの実施の形態において、上記プローブオリゴヌクレオチドは、Ras、EGFR及びPIK3CAからなる群から選択される野生型遺伝子の相補的オリゴヌクレオチドを含む。幾つかの例において、上記Ras遺伝子は、KRas、HRas、NRas、R-Ras、M-Ras、E-ras、Di-Ras1、Di-Ras2、NKIRas1、NKIRas2、TC21、Rap1、Rap2、Rit1、Rit2、Rem1、Rem2、Rad、Gem、Rheb1、Rheb2、Noey2、R-Ras、Rerg、RalA、RalB、RasD1、RasD2、RRP22、RasL10B、RasL11A、RasL11B、Ris/RasL12及びFLJ22655からなる群から選択される。或る特定の実施の形態において、上記方法は、KRas遺伝子のコドン12又はコドン13における突然変異を検出する。更に別の実施の形態において、上記方法は、KRas遺伝子のコドン12における突然変異を検出する。
【0017】
本明細書に記載されるように、本発明の方法及び装置では、標識化又は増幅なしに被験体から採取したサンプルを利用する。このため、本発明の方法及び装置は、標識化により又は増幅中に導入される可能性がある誤差要因を回避する。幾つかの実施の形態において、上記方法の特異度は、少なくとも約90%、典型的には少なくとも約95%、頻繁には少なくとも約98%、最も頻繁には少なくとも約99%である。更に他の実施の形態において、上記方法の感度は、少なくとも約90%、典型的には少なくとも約95%、頻繁には少なくとも約98%、最も頻繁には少なくとも約99%である。
【0018】
更に他の実施の形態において、本発明の方法は、上記サンプルに0.1%以下、典型的には0.05%以下、頻繁には0.01%以下、最も頻繁には0.001%以下で存在する突然変異を検出することが可能である。
【0019】
更に他の実施の形態において、上記サンプルは、増幅、標識化又は修飾なしに遺伝子突然変異の存在を検出するために使用される。更に他の実施の形態において、上記サンプルは、増幅又は標識化なしに遺伝子突然変異の存在を検出するために使用される。
【0020】
本発明の更に別の態様は、被験体における癌の存在を診断する方法であって、
被験体から得られた流体サンプルとプローブオリゴヌクレオチドを含む固体基板とを、標的オリゴヌクレオチドが上記サンプル中に存在する場合に標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖を形成するのに十分な条件下で接触させることと、
なお、上記プローブオリゴヌクレオチドは、野生型Ras遺伝子の少なくとも一部を含む;
上記標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖を、ミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖の存在について、原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバーに付着させたDNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMで分析することと、
を含み、上記DNAミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖の存在が、上記被験体が癌を有することを示す、方法を提供する。
【0021】
幾つかの実施の形態において、上記野生型Ras遺伝子は、野生型KRas遺伝子を含む。或る特定の実施の形態において、上記方法は、KRas遺伝子のコドン12又はコドン13における突然変異の存在を決定するために使用される。更に別の特定の実施の形態において、上記方法は、G12D、G12A、G12R、G12C、G12S、G12V、G13D又はそれらの組合せの存在を決定するために使用される。
【0022】
更に他の実施の形態において、上記流体サンプルと上記固体基板とを接触させる工程は、上記流体サンプルとブロッキングプローブとを、上記突然変異Ras遺伝子が上記流体サンプルに存在する場合にブロッキングプローブ-突然変異Ras遺伝子二重鎖及び一本鎖突然変異Ras遺伝子を選択的に形成するのに十分な条件下で接触させる工程を更に含む。或る特定の実施の形態において、上記ブロッキングプローブは、ロックド核酸/DNA(「LNA/DNA」)キメラブロッキングプローブを含む。更に別の特定の実施の形態において、LNA/DNAキメラブロッキングプローブ-正常Ras遺伝子二重鎖とLNA/DNAキメラブロッキングプローブ-突然変異Ras遺伝子二重鎖との間の融解温度差は、少なくとも約5℃、典型的には少なくとも約10℃、頻繁には10℃超である。或る特定の実施の形態において、LNA/DNAキメラブロッキングプローブ-正常Ras遺伝子二重鎖とLNA/DNAキメラブロッキングプローブ-突然変異Ras遺伝子二重鎖との間の融解温度差は、12℃超である。
【0023】
本発明の更なる態様は、被験体における遺伝子突然変異を検出する装置であって、
(i)対象の野生型遺伝子の少なくとも一部を含むプローブオリゴヌクレオチドを含む固体基板と、
(ii)原子間力顕微鏡(「AFM」)のカンチレバーチップに付着させたDNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMと、
を備える、装置を提供する。
【0024】
幾つかの実施の形態において、上記プローブオリゴヌクレオチドは、KRas遺伝子のコドン12又はコドン13における突然変異を検出するためのオリゴヌクレオチドを含む。更に他の実施の形態において、上記プローブオリゴヌクレオチドは、約10個~約500個のヌクレオチド、典型的には約20個~約250個のヌクレオチド、頻繁には約20個~約200個のヌクレオチド、最も頻繁には約25個~約100のヌクレオチドを含む。或る特定の実施の形態において、上記プローブオリゴヌクレオチドは、約20個~250個のヌクレオチドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】MutSテザーAFMチップの単一分子接着事象を追跡することによるKRAS突然変異検出の概略図である。サンプル溶液からの標的分子を表面固定化捕捉プローブにハイブリダイズした。野生型(WT)標的分子は、ハイブリダイゼーションにより完全にマッチした二重鎖を形成したが、突然変異標的分子は、捕捉プローブへの結合により単一ミスマッチ二重鎖を形成した。MutSはミスマッチ二重鎖にのみ結合することができ、解離(unbinding)により特異的な力-距離曲線を生成したが、完全にマッチした二重鎖は、MutSに対して無反応のままであった。
【
図2】A~C 高分解能QIマッピングによる表面捕捉された個々の突然変異KRAS G12D遺伝子の局在化を示す図である。
図2Aは、表面捕捉されたミスマッチDNA二重鎖へのMutS結合の検出によるクラスター半径の測定の概略図である。MutS修飾AFMチップにより、5 nmのピクセルサイズで表面を走査し、特定のピクセルのクラスターを観察した。
図2Bは、特定のFD曲線から測定された接着力値(上)及び伸張距離(下)のヒストグラムである。
図2Cは、代表的なクラスターの接着力マップ(上)及び対応する楕円フィッティング画像(下)を示す。
【
図3】A 特定の位置での最終的なオーバーレイマップを作成するために連続した特異的接着マップを重ね合わせる概略図である。 B サンプル量1.0 μL、5コピー(300×300ピクセル、3.0×3.0 μm
2)のcfDNAサンプルにおいて0.1%アレル頻度でKRAS G12D突然変異DNAの定量化の際に得られた代表的なオーバーレイ接着力マップを示す図である。 C サンプル量0.6 μL、3コピー(200×200ピクセル、2.0×2.0 μm
2)のcfDNAサンプルにおいて0.1%アレル頻度でKRAS G12D突然変異DNAの定量化の際に得られた代表的なオーバーレイ接着力マップを示す図である。破線の白丸は、形態マップに対応するそれぞれの捕捉プローブスポットの境界を示す。適格なクラスターを実線の白丸で示す。
【
図4】アニーリング(工程A~工程C)中のLNA/DNAキメラブロッキングプローブを用いた効果的なブロッキングによる一本鎖形態の所望の標的分子の生成を示す概略図である。ブロッキングプローブの関与により形成された二重鎖の融解温度は95.2℃であったが、156マーDNA二重鎖の融解温度は85.5℃であった。
【
図5】Ni-NTA修飾AFMチップへのhisタグ付きMutSタンパク質の固定化の概略図である。
【
図6】A~D MutS-タンパク質修飾AFMチップと(
図6A)3塩基ミスマッチ及び(
図6B)3塩基欠失を含むDNA二重鎖との間の相互作用に対する最も可能性の高い解離力のヒストグラムである。ヒストグラムは、特異的な力-距離曲線から構築した。(
図6C)5塩基ミスマッチ及び(
図6D)5塩基欠失については、特異的接着事象は観察されなかった。
【
図7】(パネルA~パネルC)MutS-タンパク質修飾AFMチップと表面上の単一ミスマッチDNA二重鎖との間の相互作用の信頼性を評定するための対照実験の結果を示す図である。表面上のミスマッチDNA二重鎖は、KRAS G12D突然変異標的DNAと表面固定化捕捉DNAプローブとのハイブリダイゼーションによって生成した。(パネルA)WT KRAS DNAとのハイブリダイゼーション(900 zM、40 μL)後に得られたオーバーレイ接着マップ(200×200ピクセル、2.0×2.0 μm
2)。(パネルB)LNA/DNAブロッキングプローブのハイブリダイゼーション(900 zM、40 μL)によって得られたオーバーレイ接着マップ(200×200ピクセル、2.0×2.0 μm
2)。(パネルC)標的ハイブリダイゼーションなしのDNA捕捉プローブスポット(200×200ピクセル、2.0×2.0 μm
2)についてのオーバーレイ接着マップ。全ての場合において陽性クラスターは観察されなかった。
【
図8】A cfDNAサンプルにおける任意のKRAS突然変異型の存在を確認する方法の概略図である。 B KRAS突然変異型を特定する方法の概略図である。
【
図9】サンプル溶液(40 μL)に存在するKRAS G12D突然変異体の数と、観察された陽性クラスターの数との間の相関を示すプロットである。データを用いて線形フィッティングを行い、傾きは0.63、調整R
2値は0.995であった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の方法及び装置は、癌、外傷、敗血症、無菌性炎症、心筋梗塞、脳卒中、移植、糖尿病、鎌状赤血球症、妊娠、胎児遺伝子異常判定、及びオリゴヌクレオチドバイオマーカーを被験体の生体サンプル(又は単に「サンプル」)から得ることができる他の臨床状態に関連するバイオマーカーの検出及び/又は分析を含むが、これらに限定されない多種多様な臨床診断用途に使用することができる。本発明の方法及び装置に使用され得る例示的な生体サンプルとしては、血液、血漿、唾液、粘液、糞便、尿、涙液、細胞、組織、腹水、胸水、痰、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、及びオリゴヌクレオチド若しくはDNA、又はそれらの断片を含有する、被験体から得られる任意の他の物質が挙げられる。
【0027】
臨床診断においては、疾患の早期検出が介入及び治療に最も効果的である。これは特に癌治療に当てはまる。多くの療法が様々な癌の治療に利用可能であるが、腫瘍学においては、依然として早期検出及び介入が癌の死亡率を低下させるのに最も効果的な解決策であるであると考えられている。したがって、早期段階での多数の臨床状態について関連バイオマーカーの高感度かつ特異的な検出/定量化の役割は、生存率だけでなく治療の成功という点で重要である。これは特に、初期症状が明らかでないか、又はマンモグラフィー等の比較的単純かつ非侵襲的な手法が適用可能でない癌に当てはまる。cfDNAは、癌、胎児医学、外傷、敗血症、無菌性炎症、心筋梗塞、脳卒中、移植、糖尿病、鎌状赤血球症、並びにcfDNA及び/又は遺伝子突然変異の存在に関連する他の臨床状態を含むが、これらに限定されない、多数の臨床状態に有用なバイオマーカーであることが示されている。
【0028】
明瞭さ、簡潔さ、便宜及び説明のために、本発明をここで癌の診断に関して説明する。しかしながら、本発明が全体としてそのように限定されることは意図されず、本発明の概念が他の臨床診断、特定の治療の治療効果のモニタリング、及び/又は特定の臨床状態に対する治療プロトコルの決定に適用可能であることが当業者には容易に認識されることを理解されたい。これらの他の臨床状態、治療及び診断としては、胎児医学、外傷、敗血症、無菌性炎症、心筋梗塞、脳卒中、移植、糖尿病、鎌状赤血球症、並びにcfDNA及び/又は遺伝子突然変異の存在に関連する他の臨床状態が挙げられる。これら及び本発明への使用に適した他の臨床状態は、当業者には容易に明らかである。
【0029】
ras遺伝子(H-ras、N-ras及びK-ras)の突然変異は、一般に多くの腫瘍型に関連し、癌の発生に関与している。この点で、膵癌の90%及び結腸癌の30%~60%で観察されることが研究により示されていることから、KRAS突然変異が特に重要である。KRAS突然変異は、エクソン2のコドン12又はコドン13に位置し、しばしばヒト癌において最も頻繁に検出される活性化突然変異と考えられている。加えて、KRAS突然変異は、膵癌及び大腸癌の早期段階で観察されている。現在までに知られている具体的なKRAS突然変異の幾つかとして、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
【0031】
現在、組織生検は、KRAS突然変異の診断のゴールドスタンダードである。しかしながら、標準的な生検法には或る特定の欠点がある。腫瘍及び転移が必ずしも生検にとってアクセスしやすいとは限らないため、サンプル採取にはしばしば侵襲的手順が必要とされ、腫瘍内不均一性は十分に理解されていない。「リキッドバイオプシー」と呼ばれる代替的な手法が、これらの制限の一部を克服するために導入されている。この手法では、固形癌性腫瘍におけるゲノム変化(体細胞突然変異)は血液、又は唾液、尿、腹水及び胸水等の他の体液中の循環セルフリー腫瘍DNA(ctDNA)の存在を分析することによって特徴付けられる。
【0032】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、ctDNAは一般にネクローシス、オートファジー、アポトーシス、及び例えば微小環境ストレスによって誘導される他の生理学的事象により血流中に放出されると考えられる。様々な悪性腫瘍について、原発腫瘍とそれぞれのctDNAとの間に一貫した相関関係が確立されている。したがって、ctDNA分析は癌の早期診断、残存疾患のモニタリング、及び用いられる療法に対する個々の応答の追跡に有用であり得る。さらに、ctDNA濃度の上昇がしばしば腫瘍の進行及び生存性の低下に関連していることから、ctDNA濃度は、予後の洞察を与える可能性がある。ARMSプライマーを用いた定量的リアルタイムPCR(qPCR)、突然変異体濃縮PCR、COLD-PCR、デジタルPCR、サンガーシークエンシング及び次世代シークエンシング(NGS)等のKRAS突然変異に関するctDNAを検出及び定量化する幾つかの方法が報告されている。しかしながら、殆どの早期固形腫瘍が非常に低レベルのctDNAを示すことから、これらの手法の検出限界(LOD)及び感度/特異度は十分ではない。標準的なシークエンシング法のLODは、およそ20%の突然変異アレルであることが示されているが、NGSについては、およそ2%~6%にまで低くなり得ることが示されている。ARMS-PCR法については、およそ1%のLODが観察されているが、突然変異体濃縮PCR及びCOLD-PCRは、KRAS突然変異の検出感度がより高く、LODはおよそ0.1%である。近年、チップベースのdPCR及び液滴ベースのdPCRについて、KRAS突然変異に対し、それぞれ0.05%及び0.01%のLODが報告されている。
【0033】
しかしながら、測定の特異度を損なうことなく、より高い感度を達成することは、依然としてPCRベースの方法の課題である。「感度」及び「特異度」という用語は、本明細書において当業者に従来よく認識されている意味で使用される。簡潔に述べると、これらの用語は、実際の陽性(「感度」)及び実際の陰性(「特異度」)を正確に特定する統計的尺度に関する。このため、一般に、100%の感度の試験又は診断法は、全ての陽性を正確に特定し、100%の特異度の試験又は診断法は、全ての陰性を正確に特定する。プライマーの配列及び純度、鋳型DNAの純度、アニーリング温度、Mg2+イオン濃度、並びにPCR混合物に一般に含まれる他の添加剤、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリン、ベタイン及びホルムアミド等の多くの因子がPCRの特異度に影響を及ぼし得る。特に、鋳型DNA濃度が非常に低いサンプルでは、PCRの特異度が大きく影響を受ける。したがって、PCRを含むいずれの方法も本質的に感度及び/又は特異度を低下させる。
【0034】
一態様において、本発明の方法は、サンプルのいかなる増幅、標識化又は修飾も必要としない直接定量化を含み、それにより感度及び/又は特異度を大幅に増加させる。本明細書において使用される場合、サンプル調製に言及する場合の「修飾」という用語は、サンプルに存在する自然状態とは異なる生成物を生成するための合成化学反応によるサンプルの変化を意味する。このため、幾つかの態様において、殆どの従来の診断試験とは異なり、本発明の方法は、試験用に分子を異なる生成物に変化させるためにサンプルを化学反応に供することを必要とせず、又は含まない。しかしながら、一本鎖オリゴヌクレオチドをアニーリングして二本鎖オリゴヌクレオチドを形成するか、又は二本鎖オリゴヌクレオチドを変性させて一本鎖オリゴヌクレオチドを形成することは、これらのプロセスがアミノ酸のいずれも変化させないことから、「修飾」の定義には含まれないことが理解されるべきである。アニーリング及び変性は単に、それぞれ同じ化学的実体の複合体又は一本鎖形態を形成することを含む。
【0035】
このため、本発明の或る特定の態様において、増幅を伴わない直接定量化アプローチ/手法を含む方法が提供される。本発明の方法は、高い感度/特異度と組み合わせて単分子検出性を達成し、それによりPCR増幅を伴うもののような従来の診断法に存在する多くの制限を克服することができる。
【0036】
幾つかの態様において、本発明の方法は、原子間力顕微鏡法(AFM)ベースの単一分子力分光法を含む。本発明のAFMベースの方法は、いかなる標識化又は増幅もなしに生理的条件下で高感度な応答により分子内力及び分子間力をプローブすることを可能にする。本発明者らは、AFMの力-体積モードを利用することにより、100万コピーの正常遺伝子の存在下で1コピー~10コピーの転座遺伝子を直接定量化し得ることを以前に示した。
【0037】
本発明の方法及び装置の例示として、力-距離(F-D)曲線ベースのAFMにより、非常に低い突然変異アレル頻度(0.1%)のcfDNAサンプルにおいてKRASG12D突然変異を高い感度/特異度(ほぼ100%)で直接(すなわち、増幅又は標識化なしに)検出することに関して本発明をここで説明する。
【0038】
本発明の幾つかの態様は、完全にマッチしたDNA二重鎖の代わりにミスマッチDNA二重鎖の存在を認識するためのDNAミスマッチ修復タンパク質の使用を含む。文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「オリゴヌクレオチド」及び「DNA」という用語は、分子が比較的少数のヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを指すために本明細書において区別なく使用される。概して、被験体のサンプル中のオリゴヌクレオチド又は本発明の方法及び装置に使用されるオリゴヌクレオチドは、約10個~約500個のヌクレオチド、典型的には約20個~約250個のヌクレオチド、頻繁には約20個~約200個のヌクレオチド、最も頻繁には約25個~約150個のヌクレオチドを含む。或る特定の実施形態において、上記プローブオリゴヌクレオチドは、約20個~250個のヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、天然に存在するものであってもよく(例えばcfDNA)、又は合成的に製造若しくは作製されたものであってもよい(例えばプローブオリゴヌクレオチド)。さらに、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「DNA」という用語は、二重鎖形態又は一本鎖形態(例えば変性後)を指すことがある。DNAミスマッチ修復タンパク質は、当業者によく知られており、原核生物細胞(例えばE.コリ(E. coli)、tag)又は真核生物細胞(例えばhMSH)から得ることができる。本発明の方法及び装置に有用な例示的なDNAミスマッチ修復タンパク質としては、MutSタンパク質複合体(「MutS」)及びMSHタンパク質複合体(「MSH」)(例えば、MSH2-MSH6(MutSα)複合体、MSH2-MSH3(MutSβ)複合体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明の或る特定の実施形態において、完全にマッチしたDNA二重鎖の代わりにミスマッチDNA二重鎖のみに結合するMutSタンパク質を、サンプルにおける突然変異遺伝子の存在を検出するために利用した。或る特定の実施形態において、本発明の方法及び装置に使用されるサンプルには、cfDNAを含み得る被験体から得られた任意の流体サンプルが含まれる。本発明に使用し得る例示的なサンプルとしては、血液及び他の体液、例えば唾液、尿、腹水、胸水、痰、脳脊髄液(CSF)、リンパ液及び糞便が挙げられるが、これらに限定されない。「被験体」という用語は哺乳動物、例えばウマ、ウシ、ネコ、イヌ、イノシシ属、霊長類、ホモ・サピエンス(homo sapiens)等を指す。典型的には、被験体はヒト又は家畜である。
【0040】
本発明の具体的な一態様は、サンプルにおける突然変異遺伝子の存在を検出する方法を提供する。方法は、
標的オリゴヌクレオチドを含むサンプルとプローブオリゴヌクレオチドを付着させた固体基板とを、標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖を形成するのに十分な条件下で接触させることと、
標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖を、ミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド複合体の存在について、DNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMチップを有する原子間力顕微鏡(AFM)を用いて分析することと、
を含む。ミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド二重鎖の存在は、突然変異遺伝子が上記サンプルに存在することを示す。プローブオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子がサンプルに存在する場合に二重鎖が形成され得るように正常遺伝子又は野生型遺伝子の相補的オリゴヌクレオチド配列を含む。文脈上他の意味に解すべき場合を除き、プローブオリゴヌクレオチド、又は標的DNA若しくは標的オリゴヌクレオチドへの任意の言及は、一本鎖オリゴヌクレオチド又はDNAを指す。
【0041】
cfDNA(複数の場合もある)を含む可能性があるサンプルを使用する場合、一本鎖cfDNAが形成されるようにサンプルを変性条件に供してもよいことが理解されるべきである。次いで、一本鎖cfDNAをプローブオリゴヌクレオチドに結合させ、標的-プローブオリゴヌクレオチド複合体を形成する。次いで、この標的-プローブオリゴヌクレオチド複合体(すなわち、二重鎖)が任意のミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド複合体を含むかを決定するためにAFMを使用する。適切なプローブオリゴヌクレオチドを選択することにより、対象の多種多様な遺伝子について突然変異遺伝子の存在を分析し得ることも理解されるべきである。例えば、癌遺伝子(すなわち、癌を引き起こす可能性がある遺伝子)の野生型をプローブオリゴヌクレオチドとして選択することにより、被験体における癌の存在の可能性についてサンプルを分析することができる。「正常」及び「野生型」という用語は、本明細書において区別なく使用され、臨床状態又は疾患を発現していない「生物の自然集団又は生物の株において優勢な表現型、遺伝子型又は遺伝子」を指す。認識されるように、突然変異遺伝子の存在は、被験体が癌(又はプローブオリゴヌクレオチドによって決定される他の臨床状態)を患うことを必ずしも示すわけではない。例えば、BRAC1遺伝子及びBRAC2遺伝子の突然変異体(すなわち、その特定のアレル)の存在は、被験体が乳癌を有することを示すものではなく、単に被験体が野生型のBRAC1遺伝子及び/又はBRAC2遺伝子を有する被験体と比べて乳癌を発症しやすいことを示すものである。
【0042】
癌の存在の可能性の診断については、幾つかの実施形態において、プローブオリゴヌクレオチドは、Ras、EGFR及びPIK3CAからなる群から選択される野生型遺伝子の相補的オリゴヌクレオチドを含む。幾つかの例において、Ras遺伝子は、KRas、HRas、NRas、R-Ras、M-Ras、E-ras、Di-Ras1、Di-Ras2、NKIRas1、NKIRas2、TC21、Rap1、Rap2、Rit1、Rit2、Rem1、Rem2、Rad、Gem、Rheb1、Rheb2、Noey2、R-Ras、Rerg、RalA、RalB、RasD1、RasD2、RRP22、RasL10B、RasL11A、RasL11B、Ris/RasL12及びFLJ22655からなる群から選択される。
【0043】
更に他の実施形態において、本発明の方法は、KRas遺伝子のコドン12又はコドン13における突然変異を検出するために使用される。或る特定の実施形態において、方法は、KRas遺伝子のコドン12における突然変異を検出するために使用される。本発明の具体的な一実施形態は、KRAS G12D突然変異の存在を検出する。
【0044】
更に他の実施形態において、本発明の方法の特異度は少なくとも約90%、典型的には少なくとも約95%、頻繁には少なくとも約97%、またより頻繁には少なくとも約98%、更に頻繁には少なくとも約99%、また更に頻繁には少なくとも約99.5%、最も頻繁には少なくとも約99.8%である。数値に言及する場合、「約」及び「およそ」という用語は、本明細書において区別なく使用され、当業者によって決定される特定の値の許容可能な誤差範囲内であることを指し、これは、値が測定又は決定される方法、例えば測定システムの限界、すなわち、特定の目的に必要とされる精度に部分的に依存する。例えば、「約」という用語は通例、当該技術分野における慣例に従い、1標準偏差以内を意味する。代替的には、「約」という用語は、数値の±20%、典型的には±10%、頻繁には±5%、より頻繁には±1%を意味することがある。しかしながら、一般に、本願及び特許請求の範囲において特定の値を記載する場合、特に明記しない限り、「約」という用語は、特定の値の許容可能な誤差範囲内であることを意味する。
【0045】
更なる実施形態において、本発明の方法の感度は少なくとも約90%、典型的には少なくとも約95%、頻繁には少なくとも約97%、またより頻繁には少なくとも約98%、更に頻繁には少なくとも約99%、また更に頻繁には少なくとも約99.5%、最も頻繁には少なくとも約99.8%である。
【0046】
更に他の実施形態において、本発明の方法は、サンプルに約10%以下、典型的には約5%以下、頻繁には約1%以下、より頻繁には約0.1%以下、最も頻繁には約0.01%以下で存在する突然変異を検出することが可能である。
【0047】
本明細書に記載されるように、本発明の方法及び装置は、サンプルの増幅、標識化又は修飾なしに使用することができる。増幅、標識化又は修飾の必要性を排除することにより、本発明の特異度及び/又は選択性は、任意の従来の方法よりも顕著に高い。さらに、本発明の方法及び装置では、微量のサンプルを分析に利用することができるため、作業時間及びコストも大幅に削減される。幾つかの実施形態において、本発明の方法及び装置に必要とされるサンプルの量は、約10 mL以下、典型的には約1 mL以下、頻繁には約0.5 mL以下、より頻繁には約0.1 mL以下、最も頻繁には約0.05 mL以下である。
【0048】
感度及び/又は選択性は、形成される標的-プローブオリゴヌクレオチド複合体の安定性に依存し得る。概して、ハイブリダイズした塩基対の数が多いほど、より安定した標的-プローブオリゴヌクレオチド複合体が得られる。したがって、幾つかの実施形態において、プローブオリゴヌクレオチドは、対象の正常標的遺伝子に相補的な約10個~約100個、典型的には約15個~約80個、頻繁には約20個~約60個、より頻繁には約25個~約50個、最も頻繁には約30個~約40個のヌクレオチドを含む。プローブオリゴヌクレオチドが、プローブオリゴヌクレオチドを固体基板表面に付着させるためのポリT等の他の非結合部分を含み得ることが理解されるべきである。このため、ヌクレオチドの総数は、比較的多くてもよく、例えば100より多くてもよいが、本明細書において言及されるヌクレオチドの数は、対象の正常標的遺伝子に相補的に結合するように設計されたヌクレオチドに関するものである。
【0049】
循環遊離DNA(cfDNA)は、血漿に放出される分解DNA断片であり、一般にDNAの小さな断片からなる。cfDNAは主に、小さな断片(例えば、約70 bp~約200 bp)及びより大きな断片からなるDNAの二本鎖細胞外分子である。幾つかのctDNAは、結腸癌、前立腺癌及び乳癌等の癌の診断に特に有用かつ正確なマーカーとして認識されている。したがって、本発明の幾つかの実施形態において、方法及び装置は、結腸癌、前立腺癌、乳癌、膵癌、肺癌、黒色腫及び膀胱癌、並びに他の固形腫瘍及び癌の存在を診断するために使用される。
【0050】
更に他の実施形態において、本発明の方法及び装置を用いて、標的遺伝子における突然変異を特定することができる。かかる方法及び装置は、本明細書において論考され、
図8A及び
図8Bに概略的に示されるロックド核酸/DNA(「LNA/DNA」)キメラブロッキングプローブの使用を含み得る。特に、LNA/DNAキメラブロッキングプローブ(複数の場合もある)を使用することで、DNAミスマッチ修復タンパク質によって検出される単一のアレル(すなわち、突然変異遺伝子)に対するミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド複合体を生成することができる。このようにして、サンプルに存在する遺伝子のアレルを容易に特定することができる。
【0051】
DNAミスマッチ修復タンパク質は、当業者に既知の方法のいずれかによりAFMチップに付着させることができる。或る特定の実施形態において、DNAミスマッチ修復タンパク質は、ヒスチジンタグ付きである。これにより、AFMチップに存在又は付着しているNi(ii)イオンと錯体と形成することによって、DNAミスマッチ修復タンパク質を付着させることができる。さらに、Ni(II)イオン錯体を用いてヒスチジンタグ付きDNAをキレート化することにより、DNAミスマッチ修復タンパク質を所望に応じて容易に置き換えることができる。DNAミスマッチ修復タンパク質を付着させる或る特定の実施形態を、Ni(II)イオン錯体及びデンドロンを使用する実施例のセクションに例示する。
【0052】
本開示全体を通して述べるように、幾つかの実施形態において、LNA/DNAキメラブロッキングプローブをサンプルと固体基板との混合物に添加することができる。このようにして、遺伝子の1つ以上の特定のアレルをLNA/DNAキメラブロッキングプローブに結合させ、プローブオリゴヌクレオチドに結合するその/それらの相補的な一本鎖オリゴヌクレオチドの存在を増加させる。
【0053】
標的DNAの1つ以上のアレルの二重鎖安定性及び特異性を増加させるために、LNA/DNAキメラブロッキングプローブをサンプルに導入する。例えば、サンプル中のマイナーアレルと安定な二重鎖を形成することにより、マイナーアレルの一本鎖DNAの相対濃度を増加させることができる。このようにして、マイナーアレルの一本鎖DNAとプローブオリゴヌクレオチドとの間の二重鎖の形成が、野生型又は他のアレルと比べて顕著に増加する。幾つかの実施形態において、使用するLNA/DNAキメラブロッキングプローブオリゴヌクレオチドの量は、検出のためのサンプルに存在する所望のマイナーアレルの理論量に対して約1当量~約100当量、典型的には約2当量~約20当量、より頻繁には約2当量~約10当量の範囲、最も頻繁には約2当量又は3当量である。
【0054】
LNA/DNAキメラブロッキングプローブの長さは、典型的には、検出すべきマイナーDNAアレルの長さの約10%~約100%、頻繁には約20%~約80%、最も頻繁には約30%~約50%の範囲である。代替的には、LNA/DNAキメラブロッキングプローブの長さは、典型的には、検出のための正常標的遺伝子に相補的なプローブオリゴヌクレオチドの長さの約10%~約100%、頻繁には約25%~約100%、より頻繁には約50%~約100%の範囲である。更に代替的には、LNA/DNAキメラブロッキングプローブは、約10個~約100個、典型的には約15個~約80個、頻繁には約20個~約60個、より頻繁には約25個~約50個、最も頻繁には約30個~約40個のヌクレオチドを有する。当業者によく知られているように、使用するロックドリボシドの量は、LNA/DNAキメラブロッキングプローブ-マイナーDNAアレル複合体の安定性に影響を与える。幾つかの実施形態において、LNA/DNAキメラブロッキングプローブのヌクレオチドの少なくとも約20%、典型的には少なくとも約40%、頻繁には少なくとも約60%、より頻繁には少なくとも約80%、最も頻繁には約100%がロックドヌクレオチドである。代替的には、LNA/DNAキメラブロッキングプローブ-マイナーDNAアレル複合体の融解温度は、少なくとも約10℃、典型的には少なくとも約14℃、頻繁には少なくとも約16℃、より頻繁には少なくとも約20℃、最も頻繁には少なくとも23℃上昇する。更に別の実施形態において、LNA/DNAキメラブロッキングプローブ-マイナーアレル遺伝子二重鎖の融解温度は、LNA/DNAキメラブロッキングプローブ-正常遺伝子二重鎖の融解温度よりも少なくとも約10℃、典型的には少なくとも約12℃、頻繁には少なくとも約15℃、最も頻繁には少なくとも約21℃高い。
【0055】
本発明の別の態様は、被験体における遺伝子突然変異を検出するための装置を提供する。装置は、
(i)対象の正常遺伝子のプローブオリゴヌクレオチドを含む固体基板と、
(ii)DNAミスマッチ修復タンパク質を含むAFMチップ(すなわち、カンチレバーチップ)を有する原子間力顕微鏡(「AFM」)と、
を備える。
【0056】
本発明の更に別の態様は、DNAミスマッチ修復タンパク質を含むカンチレバーチップを有する原子間力顕微鏡を提供する。
【0057】
ミスマッチ標的-プローブオリゴヌクレオチド複合体の存在を検出するためのDNAミスマッチ修復タンパク質の使用により、AFMは、突然変異遺伝子又はミスマッチしている任意の標的-プローブオリゴヌクレオチドのみを感知又は検出するとともに定量化することができる。本明細書に記載されるように、幾つかの実施形態において、特異的に設計されたLNA/DNAキメラブロッキングプローブを、変性工程の前にcfDNAを含むサンプルとともに使用し、所望の標的配列を一本鎖形態で捕捉プローブにアクセス可能とする。
【0058】
小型化捕捉プローブスポットを作製することで、捕捉スポット領域の効率的な走査を確実にすることができる。このような規定の捕捉プローブスポットの使用は、従来の方法と比較して顕著に低いLODをもたらす。
【0059】
固体基板及び/又はAFMチップは、更なる感度及び/又は特異度をもたらすためにデンドロンを付加的に含んでいてもよい。幾つかの実施形態において、デンドロンは、本発明の譲受人に譲渡された2017年6月6日発行の米国特許第9,671,396号(引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)に開示されているものである。簡潔に述べると、かかるデンドロン化合物は、
【化1】
(式中、
m、a、b及びcは、各々独立して0又は1であり、
cが0である場合又はcが1である場合にxは1であり、xは、1からQ
4-1の酸化状態までの整数であり、
bが0である場合又はbが1である場合にyは1であり、yは、1からQ
3-1の酸化状態までの整数であり、
aが0である場合又はaが1である場合にzは1であり、zは、1からQ
2-1の酸化状態までの整数であり、
nは、1からQ
1-1の酸化状態までの整数であり、
Q
1は、少なくとも3の酸化状態を有する中心原子であり、
Q
2、Q
3及びQ
4は、各々独立して少なくとも3の酸化状態を有する分岐原子であり、
R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、各々独立してリンカーであり、
Zは、プローブオリゴヌクレオチド(固体基板の場合)又はDNAミスマッチ修復タンパク質(AFMチップの場合)に付着している官能基であり、
Yは各々独立して、上記塩基部分の末端上の官能基であり、ここで、複数のYが上記固体支持体の上記第1の表面に付着するが、
但し、n、x、y及びzの積は、少なくとも3である)のものである。
【0060】
幾つかの実施形態において、n、x、y及びzの積は9又は27である。
【0061】
Zが他のリンカー(複数の場合もある)、例えばポリTオリゴヌクレオチド、ポリエチレングリコール(「PEG」)リンカー等を任意に含み得ることが理解されるべきである。或る特定の実施形態において、AFMチップは、ヒスチジンタグ付きDNAミスマッチ修復タンパク質が付着するようにNi(II)イオンをキレート化するために使用されるキレート基を有するリンカーを含む。更に他の例では、ZはN、O、S、P及びそれらの組合せからなる群から選択されるヘテロ原子を含む。
【0062】
本発明の付加的な目的、利点及び新規の特徴は、限定を意図するものではない以下の実施例を検討することで当業者に明らかとなる。実施例において、建設的に実施化される手順は、現在時制で記載され、実験室において行われた手順は、過去時制で記載される。
【実施例】
【0063】
捕捉プローブの準備:DNA捕捉プローブを、WT KRAS配列(完全に相補的)及びKRAS G12D突然変異配列(単一ミスマッチ)の両方と同等のハイブリダイゼーション率でハイブリダイズするように設計した。96マーカスタム合成(Bioneer,Korea)DNA捕捉プローブを本研究に用いた。96塩基のうち、36塩基が標的ハイブリダイゼーションに利用可能であり(表1)、プローブの残りは、3’末端のT60テールであった。加えて、ガラス基板への固定化のために、捕捉プローブの3’末端にアミン基を導入した。標的DNA(156マー)は、カスタム合成され(Integrated DNA TechnologiesInc.,USA)、それぞれWT KRAS及びKRAS G12D突然変異(コドン12中)の配列からなるものであった。
【0064】
96マーカスタム合成(Integrated DNA Technologies Inc.,USA)DNA捕捉プローブをEGFR L858R突然変異の検出に使用した(表1)。
【0065】
【表2】
表1.本研究に使用した捕捉プローブ、WT配列、KRAS G12D、EGFR L858R及びLNA/DNAキメラブロッカー。下線付きの塩基は、捕捉プローブとハイブリダイズ可能であった。LNA塩基は+A、+T、+G、+Cで示した。
【0066】
LNA/DNAキメラブロッキングプローブの準備:3つの36マーカスタム合成(Exiqon,Denmark)キメラブロッカーをKRAS G12D突然変異及びEGFR L858R突然変異の検出に用いた(表1)。
【0067】
ウェル付きスライドガラスの準備:National Institute for Nanomaterials Technology(NINT,Korea)にてスライドガラスを誘導結合プラズマ(ICP)で処理し、複数のウェルを作製した。深さ200 nmの様々なサイズの正方形のウェルを各スライドに作製した。次いで、NB POSTECH, Inc.により、スライドをデンドロン(27酸デンドロン)でコーティングし、続いて活性化のために炭酸ジスクシンイミジルで処理した。
【0068】
エッチングスライドガラスへの小型化捕捉プローブスポットの作製:300 nmアパーチャーを有するピラミッド型チップを備えるマイクロチャネル付きカンチレバーを予め取り付けたカートリッジキット(Cytosurge AG,Switzerland)を用いて、捕捉プローブDNA溶液をエッチングスライドガラス上に分注した。カンチレバーは長さ200 μmであり、1 μmのマイクロチャネルを有し、典型的なバネ定数は2 N/mであった。20 μM捕捉プローブ溶液を2X SSCバッファー(pH8.5)(Sigma-Aldrich)で調製した。蒸発速度を制御するためにグリセロールを溶液に添加した(12.5% v/v)。次いで、捕捉プローブ溶液(8 μL)をFluidFMのリザーバに入れ、圧力調節器(FluidFMmicrofluidics control system,Cytosurge AG)に接続したAFM(FlexAFM,Nanosurf,Switzerland)にカンチレバーを取り付けた。カンチレバーを表面と接触させ、+1000mbarの過圧を1分間かけ、マイクロチャネル全体を捕捉プローブ溶液で満たした。アプローチ工程においては200 mVの設定値を適用し、加圧力及び接触時間の2つの主要パラメーターを調整することによってスポットサイズを制御した。20×20 μm2のエッチングした正方形のウェルにスポッティングを行い、スポット位置(x座標及びy座標)を記録した。スポッティング後に、スライドを湿度室(湿度80%)に室温で12時間入れた。次に、スライドを、0.2%SDSを含有する2X SSCバッファー(pH7.4)(Sigma-Aldrich)によって40℃で20分間洗浄し、続いてMilli-Q水で洗浄した。次いで、スライドを使用するまで窒素下にて4℃で保管した。
【0069】
KRAS G12D標的DNAとのハイブリダイゼーション:0.2%SDSを含有する2X SSPEバッファー(pH7.4)(Sigma-Aldrich)を用いる段階希釈によって標的溶液(Integrated DNA Technologies Inc.,USA)を調製した。450 zM(450×10-21 M)のサンプル溶液を調製した。サンプル溶液を95℃に3分間加熱し、捕捉プローブをスポッティングしたスライドガラス上で、マイクロアレイハイブリダイゼーションキット(Agilent Technologies)及びハイブリダイゼーションオーブンを用いて40μLの溶液を50℃で24時間インキュベートした。ハイブリダイゼーション後に、0.02%SDS(pH7.4)を含有する0.2X SSPEバッファーによってスライドを60℃で20分間洗浄した。最後に、スライドを0.2X SSCバッファー(pH7.4)によって室温ですすぎ、続いてPBSバッファー(pH7.4)で洗浄した。
【0070】
対照実験及び現在のアプローチの特異度の評定のために、0.2%SDS(pH7.4)を含有する2XSSPEバッファーを用いる段階希釈によってWT KRAS DNA(Integrated DNA Technologies Inc.,USA)の溶液を調製した。さらに、45 aMのWT DNAを含有する溶液を調製した。それぞれの量のWT KRAS DNAを450 zMのKRAS G12D DNAとともに含有する溶液を、上記のプロトコルに従ってハイブリダイゼーションに供した。
【0071】
タンパク質の抽出及び精製:pET15bベクター中のN末端Hisタグを有するクローン化E.コリMutSをE.コリ株BL21(DE3)(Novagene)から過剰発現させた。タンパク質をHi-trap Niカラム(Amersham Pharmacia Biotech)及びMonoQカラム(Amersham Pharmacia Biotech)によって順次精製した。
【0072】
MutSテザリングAFMチップの準備:デンドロン(27酸デンドロン)コーティングAFMチップ(Si3N4,DPN pen-type B,NanoInk Inc.,USA)をNB POSTECH, Incから入手した。AFMチップをビス(NHS)PEG5(Thermo Scientific,USA)(25 mM)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(1.0 mM)のアセトニトリル溶液に室温で3時間入れた。反応後に、チップを撹拌DMF溶液に30分間入れ、非特異的に結合した分子を除去した。次に、チップをメタノールで洗浄し、真空下で30分間乾燥させた。次いで、NHSで活性化したAFMチップを5 mM重炭酸ナトリウム溶液中の10 mMニトリロ三酢酸(NTA)溶液によって室温で15時間処理した。続いて、チップを5 mM重炭酸ナトリウム溶液ですすぎ、過剰な未反応の分子を除去後、塩化ニッケルの50 mM溶液に室温で4時間入れた。チップをブライン溶液ですすぎ、PBS(pH7.4)バッファー中のヒスチジンタグ付きMutSの200 nM溶液において室温で2時間反応させた。最後にチップをPBS、続いてMilli-Q水で洗浄し、使用するまで4℃にてPBS下で保管した。
【0073】
HD780 cfDNA参照標準セットのハイブリダイゼーション:標準参照cfDNAセット(HD780)を使用した(Horizon Discovery,UK)。cfDNAサンプルは、ヒト細胞株に由来し、160 bpの平均サイズに断片化した。標準セットは、8つの突然変異の一塩基バリアント(SNP/SNV)を含んでいた。サンプルセットは、アレル頻度が5%、1.0%、0.1%及び100%の野生型の4つのバイアルを含んでいた。1.0%、0.1%及び100%の野生型アレル頻度のバイアルを使用した。1.0%のアレル頻度については、0.3 μLのサンプル溶液を3.6 μLのLNA/DNAブロッカー(c=10 aM)と混合し、混合物を40 μLに希釈した。0.1%のアレル頻度については、1.0 μL及び0.6 μLのサンプル溶液の両方を3.6 μLのLNA/DNAブロッカー(c=10 aM)と混合し、混合物を40 μLに希釈した。100%の野生型アレル頻度の場合、1.0 μLのサンプル溶液及び上記の量のLNA/DNAブロッカーを40 μLに希釈した。全ての場合について、サンプル溶液を95℃に3分間加熱した後、前述のプロトコルに従って捕捉プローブスポットに配置した。
【0074】
血漿からのcfDNAの抽出:ソウル聖母病院において膵癌と診断され、治療を受けた14人の患者からエチレンジアミン四酢酸(EDTA)含有チューブに末梢血サンプルを採取した。採取後1時間以内に2000×gにて4℃で10分間、続いて16000×gにて4℃で10分間の2回の遠心分離工程によって血漿を分離した。QIAamp CirculatingNucleic Acid kit(Qiagen,Hilden,Germany)をQIAvac 24 Plus system(Qiagen)とともに用い、製造業者の使用説明書に従ってcfDNAを抽出した。次いで、Qubit 3.0 Fluorometer(Thermo FisherScientific,Waltham,MA USA)をQubit DsDNA HS Assay Kit(Qiagen)とともに用いる蛍光透視定量化によってDNA濃度を測定した。研究はヘルシンキ宣言に準拠して行われ、ソウル聖母病院の施設内倫理委員会/倫理委員会によって承認された(IRB番号KC18TESI0701)。
【0075】
BEAMing及びddPCR:Sysmex InosticsBEAMing Digital PCR(Sysmex Inostics GmbH,Hamburg,Germany)をOncoBEAM(商標) RAS CRC kit RUO(ZR150001)、並びにCyFlow Cube 6i装置及びRobby装置とともに製造業者の使用説明書に従って使用した。123 μLの単離cfDNAを用いて前増幅を行った。BEAMingソフトウェア(SysmexInostics GmbH)を用いてデータを分析した。
【0076】
ddPCR(商標) MutationDetection Assays, Validated(#10049550,Bio-Rad,Hercules,CA)を製造業者の使用説明書に従ってKRAS G12D分析に使用した。8 μLのcfDNA希釈液を2 μLのddPCR Mut AssayKRAS G12D及び10 μLのSupermix forProbes(Bio-Rad,#31863024)と混合した。液滴をQX200 ddPCRシステムで生成し、QuantaSoft(Bio-Rad,バージョン1.7.4.0917)で分析した。全ての実験を別個に二連で行った。
【0077】
AFMによる定量イメージング及びデータ分析:全てのフォースマッピング実験をNanoWizard 3 AFM(JPK Instrument,Germany)により定量イメージング(QI)モードで行った。各カンチレバーのバネ定数を熱揺らぎ法によって較正し、バネ定数値は、0.01N/m~0.03 N/mの範囲内であった。z長200 nmの走査においては18 μm/秒のチップ速度を用いた。サンプルの損傷を最小限に抑えるために、チップが80 pNの接触力で表面に接近するようにプログラムした。表面捕捉された個々の標的分子を可視化するために、150×150 nm2又は200×200 nm2の領域において高分解能QIマップを記録した。直径2 μmのスポット全体の走査を200×200ピクセルで行った。スポット領域全体の走査を確実にするために、より大きなスポットについては走査領域を調整した。後者の場合、ピクセルサイズ(10×10 nm2)を一定に保つために、より高いピクセル数を採用した。全てのAFM測定をPBSバッファー(pH7.4)中にて室温で行った。
【0078】
各QIマップ(200×200ピクセル)について記録した合計40000本のF-D曲線をJPKデータ処理プログラムで分析した。初めに、記録したF-D曲線をフィルタリングし、適切な接着力(18 pN以上、40 pN以下)及び伸張距離(5nm~35 nm)を有するもののみを選択した。次に、線形フィッティングスクリプトをJythonに実装し、解離事象の前に適切な非線形伸張を有する特定の力曲線を特定した。次いで、個々の特異的接着力マップを作成し、自社MATLAB(登録商標)プログラムを用いたドリフト補正後に3つの連続マップをオーバーレイした。メディアンフィルタをオーバーレイ接着マップに適用し、散乱ピクセルを減少させることによって陽性クラスターを明確に特定した。加えて、MATLAB(登録商標)スクリプトを用いてクラスター半径を算出し、得られたオーバーレイQIマップから適格なクラスターを特定し、クラスター数を算出した。
【0079】
結果
MutSテザリングAFMチップは、捕捉された突然変異KRAS DNAを特異的に認識する:実験は、MutSテザーAFMチップを用いてKRAS-突然変異DNAを感知するように設計した(
図1)。MutSは、1ヌクレオチド~4ヌクレオチドの誤対合又は不対合の塩基(挿入/欠失)を含むヘテロ二本鎖DNAを認識し、結合するDNAミスマッチ修復タンパク質である。MutSは25℃でpH1.5からpH12まで、中性pHでは80℃まで安定している。MutSは、異なるミスマッチに対して様々な親和性を有し、GTミスマッチ及び単一の不対塩基と最も強い複合体を形成する。テザリングのために、デンドロン(27酸デンドロン)コーティングAFMチップをビス(NHS)PEG
5のアセトニトリル溶液で処理し、デンドロンの頂点にNHS基を生成した。次いで、活性化したAFMチップをキレート剤であるニトリロ酢酸(NTA)で処理し、続いてNi(II)イオン錯体形成してNTA-Ni(II)を形成した。次に、ヒスチジンと錯体Ni(II)イオンとの結合によってヒスチジンタグ付きMutSを固定化した(
図5)。溶液中のKRAS-突然変異DNAを表面上のスポットに捕捉するために、野生型(WT)KRAS配列と完全に相補的なアミン末端捕捉プローブをガラス表面に固定化した。したがって、KRAS-突然変異DNA(KRASG12D)及びWT DNAが捕捉プローブとハイブリダイズした。前者はバルジ二重鎖を生成したが、後者は完全にマッチしたDNA二重鎖を形成した。WT KRAS及びKRAS G12D突然変異のそれぞれと同一の配列を有する156マーカスタムメイドDNAの両方を標的として使用した。捕捉プローブの長さ(36 nt)は、ハイブリダイゼーション時にWT標的と突然変異標的との間の融解温度差が最小限にとどまるように選択した。したがって、ハイブリダイゼーション中の突然変異標的に対するWT標的の競合的選好は、より低いハイブリダイゼーション温度で最小限に抑えることができる。この点において、ハイブリダイゼーション温度(50℃)は、それぞれの融解温度(81.4℃及び80.3℃)よりもおよそ30℃低く、十分なハイブリダイゼーション率が確実であった。MutSタンパク質と表面上のミスマッチDNA二重鎖との間の特異的な接着事象は、AFMによって再現可能に観察された。対照的に、WT DNAと捕捉プローブとのハイブリダイゼーションによって生じた、完全にマッチした二重鎖は、力測定中に無反応のままであった。DNA二重鎖のバルジを認識するMutSタンパク質の特異的な性質は、単一分子レベルで確認され、過剰量の捕捉WT DNAの存在下であっても、表面上に捕捉された突然変異DNAのみを可視化することができた。MutSテザーAFMチップは、単一点突然変異に加えて、4塩基までのミスマッチ/欠失二重鎖を検出することができた。3塩基ミスマッチ/欠失の場合の最も可能性の高い接着力値は、1塩基ミスマッチの場合と同様であったが(
図6A及び
図6B)、5塩基ミスマッチ又は5塩基欠失の場合には、このような特異的な事象は観察されなかった(それぞれ
図6C及び
図6D)。したがって、単一分子レベルでのMutSと対応するDNA二重鎖との間の相互作用は、アンサンブル平均した観察結果と一致する。
【0080】
小型化捕捉プローブスポットをFluidFM技術によって作製した。例えば、Gruter, R. R.; Voros, J.; Zambelli, T. Nanoscale 2013, 5, 1097-1104を参照されたい。300 nmアパーチャーを有するピラミッド型チップを備えるマイクロチャネル付きカンチレバーを用いいて、フォトリソグラフィによりエッチングし、活性化したスライドガラス上に既知の(x,y)座標で捕捉プローブをスポットした。典型的なスポット径は、1.5 μm~2.4 μmの範囲内であり、非常に低い頻度で存在する突然変異アレルの検出のための高分解能での全領域の走査が確実であった。プローブスポット表面全体をMutSテザーAFMチップによりQIモードで走査し、全ピクセルでF-D曲線を収集した。いかなる理論にも束縛されるものではないが、MutSタンパク質が、表面捕捉された分子の流体力学的半径によって特徴付けられる領域内でのみ表面上のミスマッチDNA二重鎖と相互作用することができ、かかる情報が、捕捉された各DNAをマップ中のピクセルのクラスターとする合理的なピクセルサイズをもたらすため、表面捕捉された標的分子の流体力学的半径が重要であると考えられる(
図2)。したがって、走査に最適なピクセルサイズを決定するために、表面捕捉された標的分子の流体力学的半径を理解することが望まれる。過度に大きなピクセルサイズは、標的を見逃す傾向があるが、ピクセルサイズが小さすぎると全領域を調べる時間が長くなる。さらに、F-D曲線が特定の事象のF-D曲線と非常に類似している偽ピクセルを回避することは困難である。ランダム性の性質上、かかるピクセルは、走査領域内に散乱し、クラスターを形成しない。
【0081】
流体力学的半径のおよそ1/2のピクセルサイズは、およそ10個の陽性ピクセルのクラスターをもたらしたが、この分解能は、個々の真の標的DNAを明確に位置付けるのに十分である。かかる分解能では、クラスターサイズが適格性を判断する上で重要な要素の1つである。156マーカスタムメイドKRASG12D突然変異DNAを標的プローブとして使用し、これは捕捉プローブとのハイブリダイゼーション時に単一ミスマッチDNA二重鎖を形成した(表1)。MutSテザリングAFMチップが表面に接近すると、MutSタンパク質がミスマッチ二重鎖と非共有結合複合体を形成し、チップを後退させると、複合体の解離が生じた。流体力学的半径を決定するために、高分解能接着力マップを5 nm毎にQIモードで収集した。解離前に非線形伸張プロファイルを有する特定のF-D曲線を統計分析のために収集し、最も可能性の高い接着力及び伸張距離を得た。最も可能性の高い接着力及び伸張距離の値を3つの異なる位置から得て、平均値は、それぞれ26.2±4.4 pN及び14.4±5.3 nmであった(事例については
図2Bを参照されたい)。接着力は、タンパク質-リガンド対について報告されている範囲に十分含まれ、バックグラウンドノイズから区別可能なほど十分に大きかった。His
6とNi(II)との間の解離力が525±41 pNであることから、観察された接着力は、MutSタンパク質と表面捕捉されたミスマッチDNA二重鎖との複合体の解離に起因し得る。クラスターの円形状及びサイズは、二次元空間におけるテザーDNAの運動を反映する。特異的事象の頻度が低く、完全にマッチした表面捕捉DNA二重鎖、LNA-DNA二重鎖及びssDNA捕捉プローブにそのような適格なクラスターが存在しないことから、MutSタンパク質の特異度を更に確認した(
図7)。
【0082】
適格な陽性クラスターの発見:初めに、表面捕捉された標的分子の流体力学的半径を楕円フィッティングによって推定した。3つの異なる領域を高分解能(ピクセルサイズ5 nm、QIモード)で走査し、各位置で3つ~6つのマップを収集した。次いで、ドリフト補正後に3つの連続マップを重ね合わせ、各位置について1つ又は2つのオーバーレイマップを生成した(
図3A)。平均クラスター半径は、40.3 nmと推定され、表面捕捉された標的分子の幾何学的配置と一致した。
【0083】
所与のクラスター半径を用い、プローブスポット領域全体を走査して個々の表面捕捉された標的分子を可視化するのに最適なピクセルサイズを決定した。直径2 μmのスポットを10 nm毎に走査すると、1つのマップの完成に16分必要である。典型的には、スポット全体の走査を確実にするために、スポットサイズよりも僅かに大きな領域を調べた。したがって、表面上の全ての標的DNA及び捕捉された個々の標的DNAを可視化するために、3つの連続マップの作成に合計48分かかった。
【0084】
QI中にトポグラフィー、傾き及び接着マップを同時に記録した。F-D曲線をスクリーニングし、適切な接着力(18 pN以上、40 pN以下)及び伸張距離(5 nm~35 nm)を有するもののみを選択した。次いで、このような特定のF-D曲線に起因する陽性ピクセルを示す2D画像を生成した。自社MATLAB(登録商標)プログラムにより横方向のドリフトを補正した後、3つの連続した特異的接着マップをオーバーレイした。オーバーレイ特異的接着マップにおいては、単一の特異的接着事象が検出されたピクセルを緑色で着色し、2つ又は3つの特異的接着事象を有するピクセルを赤色で着色する。このアプローチが臨床サンプルに有効であるかを確認するために、10コピーのKRAS G12D突然変異DNAの適格なクラスターを、様々な量のWT DNAの存在下で計数した。WT DNAの非存在下で3.7個のクラスターが観察されたのに対し、1000コピーのWT DNAの存在下では4.3個のクラスターが観察された(表2)。10000コピー超のWT DNAの存在下では、クラスター数は減少した。それにもかかわらず、100000コピーのWT DNAの存在下で2個以上のクラスターを検出することが可能であった。さらに、WT DNAと捕捉プローブとの競合的結合は、これらが二本鎖形態であるため、臨床サンプルにおいてはあまり見られない(下記参照)。WT DNAを用いて行った複数回の対照実験から、赤色のピクセルの出現が稀であり、全ての場合で観察された最大のクラスターが小さすぎて適格でないことが見出された(
図7A)。これらの結果に基づいて、表面捕捉されたKRAS-突然変異DNAを真に反映する適格なクラスターを割り当てるための基準を規定した。第一に、クラスター半径が30 nmを超える必要がある。第二に、適格なクラスターは、特異的事象が繰り返し観察された少なくとも1つのピクセルを含む必要がある。カットオフクラスター半径は、5 nmの分解能で測定された流体力学的半径よりも小さかったが、上記の選択基準は、検出に分解能10 nmのマップが使用されたため、本研究全体を通して一貫して準拠された。
【0085】
【表3】
表2.様々な量のWT KRAS遺伝子の存在下でのKRAS G12Dの検出
【0086】
LNA/DNAキメラブロッキングプローブの使用:概説した方法は、サンプル溶液中の一本鎖標的に適用可能であるため、このアプローチを臨床サンプルに実行可能とするためには付加的な尺度が必要となる可能性がある。表面固定化捕捉プローブの存在下でDNA二重鎖を加熱しても(95℃)、いかなる検出可能なハイブリダイゼーションも起こらなかった。これはおそらく、得られる一本鎖標的が捕捉プローブに結合する前にその相補的な対応物に再結合したためである。したがって、ブロッカー(又はブロッキングプローブ)を使用して再結合を阻害した。ブロッキングプローブは、非常に低い突然変異アレル頻度で存在する突然変異遺伝子を捕捉するために高度に特異的かつ効果的でなくてはならない。さらに、ブロッキングプローブは、結合により標的DNAが遊離するように、アニーリング工程中に相補鎖との結合を支持する必要がある。さらに、ブロッキングプローブは、WT DNAではなく突然変異遺伝子に相補的な上記の鎖に選択的に結合する必要がある。かかる選択性により、少量のブロッキングプローブの使用が可能となる。プローブの長さ及び配列に応じて、二重鎖の熱安定性をLNAモノマーの置換により+2℃~+8℃高めることができるため、これらの目的を達成するためにロックド核酸(LNA)を選択した。
【0087】
36マーLNA/DNAキメラブロッキングプローブを、新たに形成された二重鎖(
図4、工程B)とネイティブ標的二重鎖(KRASG12D、
図4、工程A)との間の融解温度差を増加させるように設計した(表1)。オリゴヌクレオチドの塩基の約40%をLNAで置換し、5つ以上の連続したLNA塩基のランを回避した。36マーLNA/DNAキメラブロッキングプローブを用いて新たに形成された二重鎖の融解温度は、95.2℃と推定されたが(融解温度予測ツール、Exiqon)、156マーKRAS G12D遺伝子の元の状態の二重鎖の融解温度は、85.5℃と推定された(IDT olio analyzer tool、298 mM(Na
+))。変性工程(95℃で3分間)の前に約900 zM(40 μL、約20コピー)のブロッキングプローブをサンプル溶液に添加した。アニーリング中に、LNA/DNAキメラブロッキングプローブと標的に相補的なDNAとの間の安定した二重鎖の形成により、一本鎖突然変異標的が捕捉プローブと自由に結合するようになり、得られる二重鎖が最終的にMutSによって認識された(
図4、工程C)。単一ミスマッチ二重鎖の形成は、それぞれの二重鎖の融解温度よりも30℃低い50℃で24時間のハイブリダイゼーションによって確実となった。LNA/DNAキメラブロッキングプローブとWT dsDNAの変性によって生じる一本鎖DNAとの結合の可能性は、これが単一のミスマッチをもたらし、LNAがSNPに関して高い識別能力を有するため低かった。12マーLNAプローブについては、完全にマッチした二重鎖と単一ミスマッチ二重鎖との間の融解温度差(ΔT
m)は、21.5℃である。臨床サンプル中の多数のWT DNAにより、幾つかの遊離一本鎖WT DNAが生成する可能性があるが、捕捉プローブにより表面上に形成される二重鎖は、MutSタンパク質によって認識されない。加えて、未反応のブロッキングプローブは、捕捉プローブとハイブリダイズすることができるが、MutSは、合成LNA部分の関与のためにミスマッチ二重鎖を認識することができない。
【0088】
cfDNA参照標準セットにおけるKRAS G12D突然変異DNAの検出:アプローチの有効性は、HorizonのHD780 cfDNA参照標準セットを用いて試験した。cfDNA産物は、ヒト細胞株に由来し、ヒト血漿から抽出されたcfDNAに近い160 bpの平均サイズに断片化した。このセットは、5.0%、1.0%及び0.1%のアレル頻度で8つの突然変異を有する複数の改変一塩基バリアント(SNV/SNP)を含む。今回のアプローチの感度を推定するためにサンプルを1.0%及び0.1%のアレル頻度で調べ、特異度を調べるために100%WT cfDNAのサンプルを調査した(表3)。1.0%のアレル頻度のサンプルについては、0.30 μLのサンプル溶液(約10コピー)をLNA/DNAキメラブロッカー(20コピー)と混合し、40 μLの最終容量に希釈した。次いで、溶液を95℃で3分間変性させ、続いて50℃で24時間の捕捉プローブとのハイブリダイゼーションを行った。0.1%のアレル頻度のサンプル溶液(約5コピー及び約3コピー)をそれぞれ1.0μL及び0.6 μL、並びに100%WT cfDNAのサンプル溶液を1.0 μL、いずれの場合もブロッカー(20コピー)の存在下で40 μLに希釈することによって同一の実験工程に従った。
【0089】
【表4】
表3.様々なアレル頻度について各捕捉プローブスポットから観察されたクラスターの数。全ての場合について、900 zMのLNA/DNAキメラブロッキングプローブを変性前にサンプル溶液に添加した。
*実験を10回繰り返し、各ランについて同じ結果が得られた。
【0090】
アレル頻度が1.0%及び0.1%のサンプルについては、それぞれの場合に3回の反復試験を行い、100% WT多重のサンプルについては、実験を10回繰り返した(表3)。1.0%及び0.1%のアレル頻度のサンプルについては、全ての反復実験において常に適格なクラスターが観察され(
図3B、
図3C及び表3)、平均クラスター数は、それぞれ5.66及び2.00であった。さらに、0.1%アレル頻度のサンプル量を減少させた実験(0.6 μL)では、適格なクラスターが検出された(
図3C)(平均クラスター数=1.0)。アレル頻度1.0%及び0.1%の全ての場合についての適格なクラスターの存在は、高い感度を示す。さらに、100% WT cfDNAを用いた10回全てのランについて適格なクラスターが存在しなかったことから、アプローチの高い特異度が確認された。
【0091】
cfDNA参照標準セットにおけるEGFR L858R突然変異DNAの検出:他の突然変異型への適用性を評定するために、cfDNAサンプルにおけるEGFR L858R突然変異DNAの検出を、これが非小細胞肺癌(NSCLC)において最も一般的に考慮されるEGFR突然変異の1つであることから試験した。cfDNA参照標準セット、対応する捕捉プローブ及び関連ブロッカーを用いた(表1)。全てのサンプルについて、LNA/DNAキメラブロッカー(20コピー)を添加した後に、サンプル溶液(1.0 μL)を40 μLの最終容量に希釈した。次に、サンプル溶液を95℃で3分間変性させ、表面固定化捕捉プローブへのハイブリダイゼーションを50℃で24時間追跡した。各サンプルについて、実験を3回繰り返した(表4)。アレル頻度が5.0%、1.0%及び0.1%のサンプルについては、全てのランで常に適格なクラスターが検出され、クラスターの平均数は、それぞれ13.33、10.66及び1.66であった。アレル頻度が5.0%及び1.0%のサンプルについては、全ての実験に一定量のブロッカー(20コピー)を添加したことから、観察されたクラスターの数が飽和していたことに言及する価値がある。WT cfDNAサンプルについては、全ての反復ランでクラスターは観察されず、アプローチの高い特異度が実証された。加えて、0.1%アレル頻度のサンプルを用いて得られた結果から特性が再確認された。参照標準セットにおいては、1.0 μLに4コピーのEGFR突然変異体が存在していたのに対し、共存する変異体(L858R、T790M、delE746-A750及びV769-D770insASV)の数は、それぞれ4、3、2及び2であった。L858R突然変異に対して設計された上記の捕捉プローブ及びブロッカーを用いることで、適格なクラスター数が平均1.7であることが観察された。2に近い数値から、このアプローチが高度に特異的であり、他の突然変異体を効果的に識別し得ることが実証される。
【0092】
【表5】
表4.様々なアレル頻度のcfDNAサンプルにおけるEGFR L858R突然変異体の検出について各捕捉プローブスポットから観察されたクラスターの数。いずれの場合についても、900 zM(20コピー)のLNA/DNAキメラブロッカーを変性前に添加した。
【0093】
臨床cfDNAサンプルにおけるコドン12でのKRAS突然変異の検出:膵癌患者の末梢血血漿に由来するcfDNAに対してAFMベースのアプローチを適用した。各サンプルに存在するRAS突然変異を検出し、その量を推定するためにBEAMingを行った。前者のアプローチを用いることで、0.006%~6.708%のKRASコドン12突然変異を有する4個のサンプル及び10個のWTサンプルを試験した。KRAS G12D突然変異を調査するddPCRでもサンプルを試験し、結果を表5にまとめた。
【0094】
【表6】
表5.様々なアレル頻度について各捕捉プローブスポットからの臨床サンプルを用いて得られた結果。BEAMingによりKRASコドン12を分析し、ddPCRによりKRAS G12Dを分析した。AFMについては、900 zMのLNA/DNAキメラブロッカー(G12D)を変性前にサンプル溶液に添加した。クラスター数は、独立した二連のランから得た。
1)CMC01サンプル及び参照標準セットを用いることで、CMC04と同じアレル頻度のサンプルを調製し、40 μL(5コピー)について2回のランから一貫して2つのクラスターが観察された。
【0095】
G12Dについては、溶液が20コピー、5.7コピー及び4.8コピーを含むようにCMC01、CMC02及びCMC03のサンプルを0.1 μL、1.0 μL及び1.0 μL採取した場合、それぞれ11.0個、3.5個及び3.0個のクラスターが観察された。5.0 μLのサンプルCMC04(コピー数=0.6)を試験した場合0個のクラスターが観察されたが、これは、コピー数が単一よりはるかに少ないことから妥当である。比較のために、0.015 μLのサンプルCMC01(5コピー)をWT cfDNA標準サンプルと混合し、BEAMingのLODと比較した。2回の反復ランから、それぞれ2つの陽性クラスターが示された。結果から、本発明のLODがBEAMingと同等であることが実証される。加えて、サンプル溶液に存在する突然変異体コピー数(KRAS G12D)と検出されたクラスターとの間に高度の相関(R
2=0.995、線形回帰モデル)が観察された(
図9)。最大100の突然変異体コピーを含むサンプルを、それぞれの場合に一定量のLNA/DNAブロッカー(200コピー)の存在下で試験した。
【0096】
本発明の方法が、ddPCR等のPCRベースの方法において異常なコピー数(又はアレル頻度)をもたらすカットオフ値を設定する必要がないことは注目に値する。前者のアプローチを用いて試験した10個の陰性臨床サンプルについて、クラスター数が常に0となることが示された。本実施例から、本発明の方法の高い特異度及び高い選択性が明らかに実証された。
【0097】
論考
力ベースのAFMにより、cfDNAサンプルにおいて非常に低いアレル頻度で遺伝子突然変異を検出する増幅フリーの直接的方法が、DNAミスマッチ修復タンパク質(例えばMutS)を用いて実証された。幾つかの実施形態において、標的DNA(例えば一本鎖突然変異遺伝子)が表面上の捕捉プローブに対して自由であることを確実にするために、LNA/DNAキメラブロッキングプローブを用いた。DNAミスマッチ修復タンパク質の固有の特異性を単一分子レベルで利用した。ブロッキングプローブによって形成される二重鎖がMutS等のDNAミスマッチ修復タンパク質に関して無反応であることから、LNA/DNAキメラブロッキングプローブの特徴的な融解挙動に加えて、不自然なブロッキングを選択することが有利である。
【0098】
本発明の重要な特徴及び利点の幾つかは、感度/特異度及び対応する検出限界(LOD)である。幾つかの実施形態において、100%に近い感度/特異度(例えば、0/28の偽陰性、0/23の偽陽性)が達成された。かかる向上は、測定の性質(増幅、標識化又は修飾を伴わない直接定量化)及びMutS等の高度に特異的なDNAミスマッチ修復タンパク質によるものであり得る。0.015 μLのサンプルCMC01及び5.0 μLのサンプルCMC03を用いた、0.1%アレル頻度(約3コピー)の0.6μLのサンプルについての突然変異DNAの反復検出から、LODが少なくとも現在の最も高感度の方法と同等であることが示される。現在のAFMアプローチを用いた単一試験については、アレル頻度が0.1%までのサンプルに対して1 mLの血液で十分である必要がある。例えば、0.006%のアレル頻度とするために希釈したサンプルCMC01を用いた試験の成功から、0.5 mLの血液が現在のAFMアプローチでは十分に多いことが示される。本発明の方法は、KRAS G12D突然変異に加えて、好適なブロッカー(複数の場合もある)の使用により、cfDNAサンプルにおいて癌と関連する他の一般的なKRAS-突然変異DNAを検出するために使用することができる(
図8A)。cfDNAサンプルにおける未知のKRAS突然変異型も、各突然変異型に適したブロッカーを用いることで、このアプローチによって解明することができる(
図8B)。同時に、本発明の方法及び装置は、G12D、G12V、G12C、G12A、G12S、G12R及びG13Dに対応するブロッカーの混合物を用いた場合に、任意の突然変異型(コドン12及びコドン13)を検出するために使用することができる。KRAS突然変異とは別に、本発明の方法及び装置は、cfDNAサンプルにおける他の突然変異(例えばEGFR突然変異)の検出についても実証された。したがって、本発明の方法及び装置は、様々な他の遺伝子の点突然変異及びそれらの突然変異型の検出に使用することができる。本発明の方法及び装置は、循環腫瘍DNAを分析する新たな道を提供する。極めて優れたLOD、100%に近い感度及び特異度は、本発明の重要な特徴の一部である。
【0099】
結論。本発明の方法及び装置は、低いアレル頻度で存在する遺伝子突然変異(例えば、KRAS-突然変異DNA)を検出するための直接的なアプローチ(すなわち、サンプルの標識化、増幅又は修飾を必要としない)を提供する。力ベースのAFM及びDNAミスマッチ修復タンパク質(例えばMutS)テザーAFMチップの使用により、極めて優れたLOD及び感度/特異度が達成された。これらの特徴は、AFMの性質、DNAミスマッチ修復タンパク質(MutS等)の固有の性質、及び増幅、標識化又は修飾工程がないことによるものであり得る。突然変異DNAは、臨床cfDNAサンプルにおいて6.7%~0.006%の突然変異アレル頻度で検出され、100コピーまで線形応答が観察された。LNA/DNAキメラブロッカーの使用は、標的DNAが表面上の捕捉プローブと自由に結合することを確実にする上で効果的であることが示された。
【0100】
本発明の上述の考察は、例示及び説明の目的で提示されている。上記は、本明細書に開示されている単数又は複数の形態に本発明を限定する意図はない。本発明の記載は、1つ以上の実施形態並びに或る特定の変形形態及び変更形態の記載を含むが、他の変形形態及び変更形態も本発明の範囲内にある、例えば、本開示を理解した後に当業者の技能及び知識内にある場合がある。許容される範囲まで代替的な実施形態を含む権利を得ることが意図され、これには、特許請求されるものに対して代替の、互換可能な、及び/又は均等の構造、機能、範囲、又は工程が、そのような代替の、互換可能な、及び/又は均等の構造、機能、範囲、又は工程が本明細書に開示されているかにかかわらず、またいずれの特許請求可能な主題にも公然と供する意図はなく含まれる。本明細書に引用される全ての参考文献は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【0101】
図面訳
図1
Target bindingregion (36-mer) 標的結合領域(36マー)
Poly T
60chain ポリT
60鎖
Surface-tetheredcapture probe 表面テザー捕捉プローブ
Hybridization ハイブリダイゼーション
Specificrecognition of the bulge バルジの特異的認識
Force 力
Distance 距離
No specificrecognition event 特異的認識事象なし
図2A
Tethered motionof a surface captured target molecule 表面捕捉された標的分子のテザー運動
図2B
Count カウント
Adhesion force 接着力
Stretchingdistance 伸張距離
図2C
Adhesion forcemap 接着力マップ
Ellipsoidfitted result 楕円フィッティング結果
図3A
Scanning theprobe spot プローブスポットの走査
The pixelscorresponding to specific adhesion events for each individual map 個々のマップのそれぞれについての特異的接着事象に対応するピクセル
Map マップ
Overlay オーバーレイ
Adhesionfrequency 接着頻度
図4
cfDNA sample cfDNAサンプル
LNA/DNAchimeric blocking probe LNA/DNAキメラブロッキングプローブ
Denaturation at95℃ 95℃での変性
Hybridizationto the immobilized capture probe 固定化捕捉プローブへのハイブリダイゼーション
Recognition ofsurface-captured mismatched DNA duplex by MutS-modifiedAFM tip via QI mapping QIマッピングを介したMutS修飾AFMチップによる表面捕捉されたミスマッチDNA二重鎖の認識
図5
Amine group of dendron(27-acid) デンドロン(27酸)のアミン基
BS(PEG)
5-linker BS(PEG)
5リンカー
10 mM NTAsolution in 5 mM NaHCO
3 solution for 15 h 5 mM NaHCO
3溶液中の10 mM NTA溶液に15時間
50 mM NiCl
2solution for 4 h 50 mM NiCl
2溶液に4時間
200 nM his-tag Muts for 2 h 200 nM hisタグMutSに2時間
(his-tagged) MutS (hisタグ付き)MutS
図6A
Count カウント
Unbinding force 解離力
図6B
Count カウント
Unbinding force 解離力
図6C
Force 力
Distance 距離
図6D
Force 力
Distance 距離
図8A
cfDNA sample cfDNAサンプル
A mixture of LNA/DNAhybrid blocking probes specific to KRAS mutations KRAS突然変異に特異的なLNA/DNAハイブリッドブロッキングプローブの混合物
Denaturation at95℃followed by annealing 95℃での変性に続くアニーリング
A correspondingblocker binds to a specific mutated KRAS 対応するブロッカーが特定の突然変異KRASに結合
Hybridizationto the capture probe 捕捉プローブとのハイブリダイゼーション
Data analysis データ分析
Any positivecluster indicates the presence of KRAS mutation 任意の陽性クラスターがKRAS突然変異の存在を示す
図8B
cfDNA sample cfDNAサンプル
G12D specificblocker G12D特異的ブロッカー
Yes, G12Dmutation あり、G12D突然変異
図9
Number ofclusters クラスター数
KRAS G12D mutantcopies in sample solution サンプル溶液中のKRAS G12D突然変異体コピー
【配列表】
【国際調査報告】