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特表2024-514941亜鉛-二酸化マンガン電池を製造する方法、及び亜鉛-二酸化マンガン電池を製造するためのセット、並びにそれらによって製造された電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】亜鉛-二酸化マンガン電池を製造する方法、及び亜鉛-二酸化マンガン電池を製造するためのセット、並びにそれらによって製造された電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/06 20060101AFI20240327BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240327BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240327BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20240327BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240327BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20240327BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240327BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240327BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20240327BHJP
   H01M 4/08 20060101ALI20240327BHJP
   H01M 4/12 20060101ALI20240327BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20240327BHJP
【FI】
H01M6/06 Z
H01M4/38 Z
H01M50/414
H01M50/44
H01M50/489
H01M50/491
H01M50/417
H01M4/62 C
H01M4/06 T
H01M4/08 F
H01M4/12 D
H01M4/06 E
H01M4/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564424
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2022060377
(87)【国際公開番号】W WO2022223592
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】21169496.3
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502350250
【氏名又は名称】ヴァルタ マイクロバッテリー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】クレープス マルティン
【テーマコード(参考)】
5H021
5H024
5H050
【Fターム(参考)】
5H021CC02
5H021EE02
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE07
5H021EE08
5H021EE11
5H021HH02
5H021HH03
5H024AA03
5H024AA14
5H024DD09
5H024EE05
5H024EE09
5H024HH01
5H024HH13
5H050AA15
5H050BA04
5H050CA05
5H050CB13
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA16
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】
亜鉛-二酸化マンガン電池を調製するために、第1及び第2の電気導体が電気的非伝導性基材に適用される。層状負極及び層状正極がペーストからこれらの上に形成される。次に、少なくとも1つの電解質層が負極及び/又は正極、及び又は提供された層状セパレータに適用される。次に、連続した負極/セパレータ/正極を有する層スタックが形成される。活物質及び電極バインダに加えて、各電極ペーストは溶剤及び/又は分散剤を含有する。少なくとも1つの電解質層を調製するためのペーストは、少なくとも1種の水溶性で、塩化物を含まない導電性塩に加えて、鉱物粒子、並びに溶剤及び/又は分散剤を含み、ペースト中の鉱物粒子の割合は少なくとも5重量%及び最大でも60重量%である。それは電極ペーストと共にセットで供給され得る。完成した電池において、鉱物粒子は電極とセパレータとの間の接続部分に配置され、電解質に対して透過性の境界層を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛-二酸化マンガン電池を製造する方法であって、
a.第1の電気導体を電気的非伝導性基材に、及び第2の電気導体を電気的非伝導性基材に適用するステップと、
b.層状負極を前記第1の電気導体に直接、及び層状正極を前記第2の電気導体に直接適用するステップと、
c.層状セパレータを提供するステップと、
d.少なくとも1つの電解質層を、前記層状負極に、及び/又は前記層状正極に、及び/又は前記層状セパレータに適用するステップと、
e.前記連続した負極/セパレータ/正極を有する層のスタックを形成するステップと、
を含み、
f.前記負極が、以下の成分、
- 亜鉛粉末(無水銀)
- 電極バインダ
- 溶剤及び/又は分散剤
を含むペーストで調製され、
g.前記正極が、以下の成分、
- 二酸化マンガン
- 電気伝導率を改善するための導電剤
- 電極バインダ
- 溶剤及び/又は分散剤
を含むペーストで調製され、
h.前記少なくとも1つの電解質層が、以下の成分、
- 少なくとも1種の水溶性で、塩化物を含まない導電性塩
- 鉱物粒子
- 溶剤及び/又は分散剤
を含むペーストで調製され、
且つ前記ペースト中の前記鉱物粒子の割合が少なくとも5重量%及び最大でも60重量%である、方法。
【請求項2】
以下の追加の特徴:
a.使用される前記セパレータが多孔質プラスチックフィルム又は多孔質不織布であること、
b.使用される前記セパレータが60~120μmの範囲内の厚さを有すること、
c.使用される前記セパレータが35~60%の範囲内の多孔率(全容積に対する空隙容積の比)を有すること、
d.使用される前記セパレータが、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンから成ること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の追加の特徴:
a.前記鉱物粒子が、セラミック粒子、水にほぼ又は完全に不溶の塩粒子、ガラス粒子、並びに天然鉱物及び玄武岩などの岩石の粒子から成る群から選択されること、
b.CaCO粒子が鉱物粒子として用いられること、
c.前記鉱物粒子が、0.8μm~40μmの範囲内、好ましくは、0.8μm~15μmの範囲内、特に好ましくは、1.0μm~5μmの範囲内のd50値を有すること、
d.前記少なくとも1つの電解質層を調製するための前記ペーストが、>80μm、好ましくは、>60μm、特に好ましくは、>45μmの粒子サイズを有する鉱物粒子を実質的に含まないこと、
e.前記少なくとも1つの電解質層を調製するための前記ペーストが、特にその粘度を調整するための、少なくとも1種の添加剤を、好ましくは、1~8重量%の範囲内の割合で含むこと、
f.粘度を調整するための添加剤として、前記ペーストが、<500nm、好ましくは、<200nmの平均粒子サイズ(d50)を有する鉱物粉末を含むこと、
g.水が溶剤及び/又は分散剤として用いられること、
h.前記ペースト中の前記少なくとも1種の亜鉛塩の量が少なくとも25重量%以上50重量%以下であること、
i.前記少なくとも1つの電解質層を調製するための前記ペーストが以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 前記少なくとも1種の水溶性で、塩化物を含まない導電性塩、特に、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛及び硫酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の塩、30~40重量%
- 粘度調整のための添加剤、2~4重量%
- 鉱物粒子、10~30重量%
- 溶剤及び/又は分散剤、40~55重量%
を含むことであって、前記ペーストの前記成分の前記割合が合計すると100重量%になる、含むこと、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
以下の追加の特徴:
a.前記負極の調製のための前記ペーストが、前記亜鉛粉末を少なくとも50重量%、及び好ましくは、少なくとも60重量%の割合で含むこと、
b.前記亜鉛粉末が、20μm~40μmの範囲内のd50値、及び好ましくは、5重量%未満の>45μmの粒子の含有量によって特徴付けられること、
c.前記負極を調製するための前記ペーストが、特にその粘度を調整するための、少なくとも1種の添加剤を、好ましくは、1~8重量%の範囲内の割合で含むこと、
d.粘度を調整するための添加剤として、前記ペーストがカルボキシメチルセルロースを含むこと、
e.前記負極を調製するための前記ペーストが、前記電極バインダを、少なくとも1重量%、及び好ましくは最大で10重量%の割合で含むこと、
f.前記負極を調製するための前記ペーストが、弾性特性を有する電極バインダ、特に、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物を含む群からの電極バインダを電極バインダとして含むこと、
g.水が溶剤及び/又は分散剤として用いられること、
h.前記負極を調製するための前記ペーストが、以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 亜鉛粉末(無水銀)、65~79重量%
- 粘度調整のための添加剤、1~5重量%
- バインダ、弾性(例えば、SBR)、5~10重量%
- 溶剤及び/又は分散剤、15~20重量%
を含むことであって、前記ペーストの前記成分の前記割合が合計すると100重量%になる、含むこと、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
以下の追加の特徴:
a.前記正極の調製のための前記ペーストが、前記二酸化マンガンを、少なくとも50重量%、及び好ましくは、少なくとも60重量%の割合で含むこと、
b.前記二酸化マンガンが粒子状の形態で存在し、20μm~50μmの範囲内のd50値によって、及び好ましくは、5重量%未満の>55μmの粒子の割合によって特徴付けられること、
c.前記正極を調製するための前記ペーストが、特にその粘度を調整するための、少なくとも1種の添加剤を、好ましくは、1~10重量%の範囲内の割合で含むこと、
d.粘度を調整するための添加剤として、前記ペーストがカルボキシメチルセルロースを含むこと、
e.前記正極の前記調製のための前記ペーストが、前記電極バインダを、少なくとも5重量%の、及び好ましくは、最大でも15重量%の割合で含むこと、
f.前記正極を調製するための前記ペーストが、弾性特性を有する電極バインダ、特に、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物を含む群からの電極バインダを電極バインダとして含むこと、
g.前記正極を調製するための前記ペーストが前記導電剤を5重量%~35重量%の割合で含むこと、
h.前記正極製作ペーストが、活性炭、活性炭繊維、カーバイド由来炭素、カーボンエアロゲル、黒鉛、グラフェン、及びカーボンナノチューブ(CNT)から成る群から選択される少なくとも1種の導電剤を伝導性材料として含むこと、
i.水が溶剤及び/又は分散剤として用いられること、
j.前記正極を調製するための前記ペーストが、以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 二酸化マンガン、50~70重量%
- 導電剤(例えば黒鉛、カーボンブラック)、3~30重量%
- 粘度調整のための添加剤、2~8重量%
- 電極バインダ、弾性(例えば、SBR)、8~15重量%
- 溶剤及び/又は分散剤、20~30重量%
を含むことであって、前記ペーストの前記成分の前記割合が合計すると100重量%になる、含むこと、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
以下の追加の特徴:
a.前記電極及び前記少なくとも1つの電解質層が、印刷プロセスによって、特に、スクリーン印刷プロセスによって形成されること、
b.前記負極が、30μm~150μmの範囲内の平均厚さで形成されること、
c.前記正極が、13μm~350μmの範囲内の平均厚さで形成されること、
d.前記少なくとも1つの電解質層が、10~100μm、好ましくは、30~70μmの範囲内の平均厚さで形成されること、
e.前記少なくとも1つの電解質層が前記負極及び/又は前記正極に、それが依然として少なくとも湿っている間に適用されること(「ウエットオンウエット適用」)、
f.前記セパレータが、形成された前記電解質層のうちの1つの上に、それが依然として少なくとも湿っている間に配置されること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
亜鉛-二酸化マンガン電池の調製のためのセットであって、以下の構成要素:
a.負極を調製するためのペーストであって、以下の成分:
- 亜鉛粉末(無水銀)
- 電極バインダ
- 溶剤及び/又は分散剤
を含む、ペーストと、
b.正極を調製するためのペーストであって、以下の成分:
- 二酸化マンガン
- 電気伝導率を改善するための導電剤
- 電極バインダ
- 溶剤及び/又は分散剤
を含む、ペーストと、
c.電解質層を調製するためのペーストであって、以下の成分:
- 少なくとも1種の水溶性で、塩化物を含まない導電性塩、特に、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛及び硫酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の塩
- 鉱物粒子
- 溶剤及び/又は分散剤
を含む、ペーストと、
を有する、セット。
【請求項8】
亜鉛-二酸化マンガン電池のためのセパレータをさらなる構成要素として有し、前記セパレータが、以下の特性:
a.使用される前記セパレータが多孔質プラスチックフィルム又は多孔質不織布であること、
b.使用される前記セパレータが60~120μmの範囲内の厚さを有すること、
c.使用される前記セパレータが35~60%の範囲内の多孔率(全容積に対する空隙容積の比)を有すること、
d.使用される前記セパレータが、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンから成ること、
を有する、請求項7に記載のセット。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法に従って調製可能な亜鉛-二酸化マンガン電池であって、以下の特徴:
a.それが、電気的非伝導性基材上の第1の電気導体、及び電気的非伝導性基材上の第2の電気導体を備えること、
b.それが、前記第1の電気導体の直上の層状負極、及び前記第2の電気導体の直上の層状正極を備えること、
c.それが層状セパレータを備えること、
ここで、
d.前記電極及び前記セパレータが、前記負極及び前記セパレータ並びに前記正極及び前記セパレータが各々、接続部分を介して互いに接続されている、前記連続した負極/セパレータ/正極を有する層スタックとして形成されること、
ここで、
e.前記電極及び前記セパレータが、亜鉛塩溶液に含浸させられていること、
及びここで、
f.前記電極と前記セパレータとの間の前記接続部分が、前記電解質に対して透過性の境界層を形成する鉱物粒子によって特徴付けられること、
を有する、亜鉛-二酸化マンガン電池。
【請求項10】
以下の特徴:
a.前記電池の前記負極が、以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 亜鉛粉末(無水銀)、81~93重量%
- 粘度調整のための添加剤、1から7重量%まで
- 電極バインダ、6~13重量%
を含むこと、
b.前記電池の前記正極が、以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 二酸化マンガン、62~82重量%
- 導電剤、5~35重量%
- 粘度調整のための添加剤、2~10%重量%
- 電極バインダ、6~13重量%
を含むこと、
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項9に記載の亜鉛-二酸化マンガン電池。
【請求項11】
以下の特徴:
a.前記鉱物粒子が、セラミック粒子、水にほぼ又は完全に不溶の塩粒子、ガラス粒子、並びに天然鉱物及び玄武岩などの岩石の粒子から成る群から選択されること、
b.CaCO粒子が鉱物粒子として用いられること、
c.前記鉱物粒子が、0.8μm~40μmの範囲内、好ましくは、0.8μm~15μmの範囲内、特に好ましくは、1.0μm~5μmの範囲内のd50値を有すること、
d.前記境界層が、<500nm、好ましくは、<200nmの平均粒子サイズ(d50)を有する鉱物粒子を含むこと、
のうちの少なくとも1つを特徴とする、請求項9又は10に記載の亜鉛-二酸化マンガン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に説明される本発明は、亜鉛-二酸化マンガン電池を製造するための方法及び製造するためのセットに関する。さらに、本発明は、本方法に従って生産された電池、及びセットを用いて生産された電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池は正及び負極を必ず備える。電気化学電池が放電される際には、2つの、電気的に結合されているが、空間的に分離された部分反応で構成されたエネルギー産生化学反応が起こる。比較的より低い酸化還元電位で起こる、一方の部分反応は負極において発生し、比較的より高い酸化還元電位で起こる一方は正極において発生する。放電中には、負極において酸化プロセスの結果として電子が放出され、 - 通例、外部負荷を経由した - 正極への電子の流れをもたらし、正極から、対応する量の電子が吸収される。それゆえ、正極では還元プロセスが起こる。同時に、電極反応に対応するイオン電流がバッテリ内で発生する。このイオン電流はイオン伝導性電解質によって確実にされる。二次電気化学電池では、この放電反応は可逆である。すなわち、放電中に発生した、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換を逆転させることが可能である。他方で、一次電池では、放電反応は不可逆であるか、又は電池は他の理由のために再充電することができない。
【0003】
用語「バッテリ」は、元々、直列に接続された、いくつかの電気化学電池を意味した。これは本出願の文脈におけるその使われ方でもある。
【0004】
電気化学電池は、固体の個々の構成要素を組み立てることによって製造することができるだけではない。近年では、少なくとも個々の機能部品、特に、電極及び/又は必要とされる導体トラックが、印刷によって、すなわち、溶剤及び/又は懸濁剤を含有するペーストから調製される電池が重要性を増してきた。このように生産される電池は、例えば、国際公開第2006/105966(A1)号パンフレットから知られている。
【0005】
概して、印刷電気化学電池は多層構造を有する。従来の設計では、印刷電気化学電池は、一般に、積層配置による、2つの集電体層、2つの電極層、及び電解質層を備える。電解質層は2つの電極面の間に配置され、その一方で、集電体は電気化学電池の上部及び下部をそれぞれ形成する。このような構造を有する電気化学電池が、例えば、米国特許第4119770号明細書に記載されている。
【0006】
対照的に、上述の国際公開第2006/105966(A1)号パンフレットは、電極が平坦な電気的非伝導性基材上に互いに隣り合って位置する(共面配置)、はるかに平坦な電気化学電池を記載している。電極は、例えば、ゲル状の塩化亜鉛ペーストであり得る、イオン伝導性電解質によって接続されている。電解質は、概して、不織布又はメッシュ状材料によって補強され、安定化される。
【0007】
国際公開第2006/105966(A1)号パンフレットに記載されているものなどの従来の印刷バッテリは多くの適用物のために適するが、それらは、特にパルス負荷のためには、極めて限られた電流通電能力を有する。例えば、携帯電話チップは、それらのエネルギー消費の観点から、伝統的な印刷バッテリに過度に高い要求を課す。これは、特に、LTE規格(LTE=Long Term Evolution(ロングタームエボリューション))に従って伝送する、より新しい世代の移動無線チップについても言える。選択された無線プロトコルによっては、最大400mAのピーク電流が少なくとも短い時間窓にわたって利用可能でなければならない。汎用性のために、印刷バッテリはできるだけ安価に製造できなければならない。加えて、大量に使用されている全ての製品にとっては、環境適合性及び安全性が重要なパラメータである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、安全であり、低コストで製造することができ、環境適合性を有し、特に、その廃棄に関する問題を生じさせず、また、移動無線チップ、特にLTE規格に従って動作する移動無線チップなどの、エネルギー大量消費適用物の要求も満たすことができるバッテリを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題を解決するために、本発明は、請求項1の特徴を有する亜鉛-二酸化マンガン電池を製造する方法、及び請求項7の特徴を有する亜鉛-二酸化マンガン電池を製造するためのセットを提案する。また、請求項9の特徴を有する電池も本発明の目的である。本発明のさらなる発展が従属項の主題である。
【0010】
本発明に係る方法
本発明に係る方法は次のステップa.~e.を必ず有する:
a.第1の電気導体を電気的非伝導性基材に、及び第2の電気導体を電気的非伝導性基材に適用するステップ、
b.層状負極を第1の電気導体に直接、及び層状正極を第2の電気導体に直接適用するステップ、
c.層状セパレータを提供するステップ、
d.少なくとも1つの電解質層を、層状負極に、及び/又は層状正極に、及び/又はセパレータに適用するステップ、並びに
e.連続した負極/セパレータ/正極を有する層のスタックを形成するステップ。
電極及び少なくとも1つの電解質層を適用するために、以下のように規定されたペーストが用いられる:
f.負極を調製するためのペーストは以下の成分を含む:
- 亜鉛粉末(無水銀)
- 電極バインダ
- 溶剤及び/又は分散剤
g.正極を調製するためのペーストは以下の成分を含む:
- 二酸化マンガン
- 電気伝導率を改善するための導電剤
- 電極バインダ
- 溶剤及び/又は分散剤
h.少なくとも1つの電解質層を調製するためのペーストは以下の成分を含む:
- 少なくとも1種の水溶性で、塩化物を含まない導電性塩(water-soluble, chloride-free conducting salt)
- 鉱物粒子
- 溶剤及び/又は分散剤
【0011】
これに関連して、本発明によれば、ペースト中の鉱物粒子の割合は少なくとも5重量%及び最大でも60重量%であることが特に強調されるべきである。さらに好ましいのは、鉱物粒子の最小割合は少なくとも10重量%、好ましくは、10重量%超であり、最大割合は最大でも50重量%、好ましくは、最大でも40重量%であることである。
【0012】
ここで与えられる百分率は、ペーストの総重量、すなわち、溶剤及び/又は分散剤を含むペーストの全ての成分の重量を参照する。これは、以下において、ペースト成分の質量割合に関連する全ての百分率について適用される。
【0013】
本発明の利点
LTEメッセージを伝送するために、まず、スキャニングが行われる。このプロセスの間に、ラベルはデータ伝送のための可能な周波数を探す。このプロセスは平均2sかかり、50mAを必要とする。周波数が見出されたとき、いわゆる、TXパルスが送信される。このようなパルスは約150ms持続し、約200mAの電流パルスを必要とする。150msの長さを有するパルスは4Hzの周波数におおよそ対応する。したがって、4Hzにおける本発明に係るバッテリのインピーダンスがこのようなパルスの伝送のために重要である。
【0014】
ここで説明される方法に従って生産された電池は、この点で特に良好な結果をもたらす。良好な値を生じさせる機構は、まだ決定的に解明されてはいない。しかし、少なくとも1つの電解質層を調製するために用いられるペースト中の鉱物粒子の割合がここで役割を果たしているのではないかと推測される。後述されるように、これらは電極とセパレータとの間の境界層を形成する。このとき、溶剤及び/又は分散剤中に溶解した少なくとも1種の導電性塩は、セパレータ及び境界層に浸透することができる実際の電解質を構成する。
【0015】
例えば、欧州特許第2561564(B1)号明細書から、鉱物粒子を加えて電解質を印刷することがすでに知られている。しかし、粒子はこれまでセパレータの代用として用いられており、それに対して、この場合には、それらはセパレータに加えて用いられる。境界層は細孔の傾斜(pore gradient)を生み出し、セパレータの細孔は電極ペーストの粒子によって閉鎖されないので、境界層は電解質のためのセパレータの透過性を改善すると考えられている。良好なインピーダンス値の理由は進行中の研究の論題になっている。
【0016】
亜鉛ベースの負極を有する電気化学系の選定は、主として、要求される安全性によるものである。亜鉛ベースの負極を有する系は水性電解質を必要とし、したがって、不燃性である。加えて、亜鉛は環境適合性を有し、安価である。
【0017】
好ましいセパレータ
特に好ましい実施形態では、用いられるセパレータは次の追加の特徴a.~dのうちの少なくとも1つを有する:
a.使用されるセパレータが多孔質プラスチックフィルム又は多孔質不織布であること、
b.使用されるセパレータが60~120μmの範囲内の厚さを有すること。
c.使用されるセパレータが35~60%の範囲内の多孔率(全容積に対する空隙容積の比)を有すること。
d.セパレータが、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンから成ること。
好ましくは、直前の特徴a.~c.は組み合わせて実施される。さらに好ましい実施形態では、特徴a.~d.は組み合わせて実施される。
特に好ましくは、使用されるセパレータは、不織布である。
【0018】
不織布ウェブの不織布は、複数の親水性繊維から作られてもよく、疎水性繊維の割合(例えば50%未満)を含んでもよい。疎水性繊維としては、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維などのポリオレフィン繊維、及び、ポリアミド繊維が挙げられる。ここで使用するのに適した親水性繊維は、以下の繊維タイプから選択することができる:PVA(ビニルエステルの加水分解共重合体、特に酢酸ビニルの加水分解共重合体を含む)、綿、ビスコース ビスコース、キュプラモニウムビスコースなどのセルロース系繊維;及び、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどの熱可塑性プラスチック。好ましいセルロース系繊維は、ステープルファイバーとして市販されているレーヨン及びポリビニルアルコール(PVA)である。好適なレーヨン繊維は、アラバマ州アクシスのCourtaulds Fibers社から18552及びT2222の名称で市販されているビスコースレーヨン・ステープルファイバーである。他の適切なレーヨン繊維は、Courtaulds Fibers社から「リヨセル(Lyocell)」及び「テンセル(Tencel)」の名称で市販されている。
【0019】
可能性のある好ましい更なる展開として、不織布は以下の仕様の繊維からなる:
- 55%PVA(0.3デニール)+バインダ/45%テンセル(1.4dT)
【0020】
特に好ましくは、セパレータは、以下の追加の特徴の少なくとも1つを有する多孔性不織布である:
a. 不織布は、DIN EN 29073-1による単位面積当たりの重量が20g/m±5g/m、特に好ましくは20g/m±2g/mである。
b. 不織布は、DIN EN ISO 534に従って、0.060mm±0.02mm、特に好ましくは0.060mm±0.006mmの厚さを有する。
b. フリースは、VN 075.465(40%KOH、10分間)による≧7mmの吸引高さを有する。
d. 不織布は、>80g/m、好ましくは>100g/mのKOH吸収量を有する(したがって、少なくとも80g、好ましくは少なくとも100gのKOH溶液を吸収し、溶液中のKOH濃度は好ましくは40重量%である)。
好ましくは、直前の特徴a.~c.は組み合わせて実施される。さらに好ましい実施形態では、特徴a.~d.は組み合わせて実施される。
【0021】
少なくとも1つの電解質層の調製のためのペースト
少なくとも1種の水溶性で、塩化物を含まない導電性塩は、特に、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛及び硫酸アンモニウムを含む群からの少なくとも1種の塩である。
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの電解質層を調製するためのペーストは次の追加の特徴a.~iのうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.鉱物粒子が、セラミック粒子、水にほぼ又は完全に不溶の塩粒子、ガラス粒子、並びに天然鉱物、及び玄武岩などの岩石の粒子から成る群から選択されること。
b.CaCO粒子が鉱物粒子として用いられること。
c.鉱物粒子が、0.8μm~40μmの範囲内、好ましくは、0.8μm~15μmの範囲内、特に好ましくは、1.0μm~5μmの範囲内のd50値を有すること。
d.少なくとも1つの電解質層を調製するためのペーストが、>80μm、好ましくは、>60μm、特に好ましくは、>45μmの粒子サイズを有する鉱物粒子を実質的に含まないこと。
e.少なくとも1つの電解質層を生産するためのペーストが、特に、その粘度を調整するための、少なくとも1種の添加剤を、好ましくは、1~8重量%の範囲内の割合で含むこと。
f.粘度を調整するための添加剤として、ペーストが、<500nm、好ましくは、<200nmの平均粒子サイズ(d50)を有する鉱物粉末を含むこと。
g.水が溶剤及び/又は分散剤として用いられること。
h.ペースト中の少なくとも1種の水溶性導電性塩の割合が少なくとも25重量%及び最大でも50重量%であること。
i.少なくとも1つの電解質層を調製するためのペーストが以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 少なくとも1種の水溶性で、塩化物を含まない導電性塩、特に、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛及び硫酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の塩、30~40
重量%
- 粘度調整のための添加剤、2~4重量%
- 鉱物粒子、10~30重量%
- 溶剤及び/又は分散剤、40~55重量%
を含むことであって、ペーストの成分の割合が合計すると100重量%になる、含むこと。
【0022】
好ましくは、直前の特徴a.及びc.及びd.は組み合わせて実施される。さらに好ましい実施形態では、特徴e.及びf.は組み合わせて実施される。特に好ましくは、直前の特徴b.~i.は組み合わせて実施される。
【0023】
用語「セラミック粒子」は、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩材料、粘土鉱物、酸化ケイ素、二酸化チタン、及び酸化アルミニウムなどの酸化物材料、並びに炭化ケイ素又は窒化ケイ素などの非酸化物材料を含む、セラミック製品を製造するために用いることができる全ての粒子を含むことが意図される。
【0024】
本出願に関連して、用語「実質上又は完全に不溶性(virtually or completely insoluble)」は、室温において、対応する溶剤中において、最大でも低い溶解度が存在すること、好ましくは、全く存在しないことを意味する。特に、水に実質上又は完全に不溶である上述された塩の、本発明に従って用いられ得る粒子の溶解度は、理想的には、室温における水への特に好ましい炭酸カルシウムの溶解度を超えてはならない。
【0025】
原理的には、アルカリ性電解質、例えば、水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液も、本発明に係る電池によく適するであろう。しかし、中性領域内のpHを有する水性電解質は、バッテリへの機械的損傷が生じた際の危険度がより低いという利点を有する。しかし、一般的な塩化物系導電性塩にも欠点がある。それらは銀導体構造を攻撃することが判明している。したがって、本発明の文脈において、塩化物を含まない電解質を使用することが好ましい。特に、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛及び硫酸アンモニウムは、塩化物を含まない導電性塩として好適である。
【0026】
驚くべきことに、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛及び硫酸アンモニウムのような、塩化物を含まない導電性塩の使用には、特に他の利点があることが見出された。電極バインダとしてSBRを使用した電極は、塩化物系の電解質と組み合わせると、比較的早く弾性を失い得ることが見出された。この効果は、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛及び硫酸アンモニウムのような、塩化物を含まない導電性塩では観察されなかった。
水性電解質のpHは中性又は弱酸性領域内であることが好ましい。
【0027】
特に好ましくは、鉱物粒子は、1.0μm~5μmの範囲内のd50値を有するCaCO粒子であり、少なくとも1つの電解質層を調製するためのペーストは、>45μmの粒子サイズを有する鉱物粒子を実質的に含まない。本文脈における用語「実質的に含まない(substantially free)」は、さらに、鉱物粒子のうちの5%未満、好ましくは、1%未満が>45μmの粒子サイズを有することを意味することが意図される。
さらに、鉱物粒子は、少なくとも1つの電解質層を調製するためのペースト中に10~20重量%の割合で含有されることが特に好ましい。
【0028】
<500nm、好ましくは、<200nmの平均粒子サイズ(d50)を有する鉱物粉末は、好ましくは、二酸化ケイ素、特に、非晶質二酸化ケイ素である。特に好ましくは、鉱物粉末は、<100nm、さらに好ましくは、<50nmの平均粒子サイズ(d50)を有する非晶質二酸化ケイ素又は別の鉱物の粉末である。カルボキシメチルセルロースなどの結合物質も、粘度を調整するための添加剤として用いることができる。
【0029】
なお、用語、溶剤及び/又は分散剤は、クレームされている発明に係るペーストは水溶性成分及び非水溶性成分を含むか、又は含み得るという事実を指す。このとき、水溶性成分は、溶解した形態で存在し、その一方で、非水溶性成分は、分散した形態で存在する。
【0030】
負極の調製のためのペースト
特に好ましい実施形態では、負極を調製するために用いられるペーストは次の追加の特徴a.~hのうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.負極の調製のためのペーストが、亜鉛粉末を少なくとも50重量%、及び好ましくは、少なくとも60重量%の割合で含むこと。
b.亜鉛粉末が、20μm~40μmの範囲内のd50値、及び好ましくは、5重量%未満の>45μmの粒子含有量によって特徴付けられること。
c.負極を調製するためのペーストが、特に、その粘度を調整するための、少なくとも1種の添加剤を、好ましくは、1~8重量%の範囲内の割合で含むこと。
d.粘度を調整するための添加剤として、ペーストがカルボキシメチルセルロースを含むこと。
e.負極を調製するためのペーストが、電極バインダを、少なくとも1重量%、及び好ましくは、最大でも10重量%の割合で含むこと。
f.負極を調製するためのペーストが、弾性特性を有する電極バインダ、特に、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物を含む群からの電極バインダを電極バインダとして含むこと。
g.水が溶剤及び/又は分散剤として用いられること。
h.負極を調製するためのペーストが、以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 亜鉛粉末(無水銀)、65~79重量%
- 粘度調整のための添加剤、1~5重量%
- バインダ、弾性(例えば、SBR)、5~10重量%
- 溶剤及び/又は分散剤、15~20重量%
を含むことであって、ペーストの成分の割合が合計すると100重量%になる、含むこと。
【0031】
好ましくは、直前の特徴a.~c.及びe.~g.は組み合わせて実施される。さらに好ましい実施形態では、特徴c.及びd.は組み合わせて実施される。特に好ましくは、直前の特徴a.~h.は組み合わせて実施される。特に好ましくは、負極中の電極バインダはSBRである。
【0032】
好ましく用いられるカルボキシメチルセルロースの代用として、以上において電解質ペーストに関して説明された、<500nm、好ましくは、<200nmの平均粒子サイズ(d50)を有する鉱物粉末、特に、上述された非晶質二酸化ケイ素を、負極のためのペーストの粘度を調整するための添加剤として用いることもできるであろう。
【0033】
正極の調製のためのペースト
特に好ましい実施形態では、正極を生産するために用いられるペーストは次の追加の特徴a.~jのうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.正極の調製のためのペーストが、二酸化マンガンを、少なくとも50重量%、及び好ましくは、少なくとも60重量%の割合で含むこと。
b.二酸化マンガンが粒子状の形態で存在し、20μm~50μmの範囲内のd50値によって、及び好ましくは、5重量%未満の>55μmの粒子の割合によって特徴付けられること。
c.正極を調製するためのペーストが、特に、その粘度を調整するための、少なくとも1種の添加剤を、好ましくは、1~10重量%の範囲内の割合で含むこと、
d.粘度を調整するための添加剤として、ペーストがカルボキシメチルセルロースを含むこと。
e.正極の調製のためのペーストが、電極バインダを、少なくとも5重量%の、及び好ましくは、最大でも15重量%の割合で含むこと。
f.正極を調製するためのペーストが、弾性特性を有する電極バインダ、特に、ポリアクリレート(PA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及び上述の材料の混合物を含む群からの電極バインダを電極バインダとして含むこと。
g.正極を調製するためのペーストが導電剤を3重量%~10重量%の量で含むこと。
h.正極製作ペーストが、活性炭、活性炭繊維、カーバイド由来炭素、カーボンエアロゲル、黒鉛、グラフェン、及びカーボンナノチューブ(CNT(carbon nanotube))から成る群から選択される少なくとも1種の伝導性材料を導電剤として含むこと。
i.水が溶剤及び/又は分散剤として用いられること。
j.正極を調製するためのペーストが、以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 二酸化マンガン、50~70重量%
- 導電剤(例えば黒鉛、カーボンブラック)、3~30重量%
- 粘度調整のための添加剤、2~8重量%
- バインダ、弾性(例えば、SBR)、8~15重量%
- 溶剤及び/又は分散剤、20~30重量%
を含むことであって、ペーストの成分の割合が合計すると100重量%になる、含むこと。
【0034】
好ましくは、直前の特徴a.~c.及びe.~g.は組み合わせて実施される。さらに好ましい実施形態では、特徴g.及びh.は組み合わせて実施される。特に好ましくは、直前の特徴a.~j.は組み合わせて実施される。
【0035】
弾性電極バインダは、正極中に含有される金属酸化物粒子を互いに対して固定すると同時に正極にいくらかの柔軟性を与えるべきである。しかし、弾性電極バインダの割合は、上述された最大割合を超えてはならない。なぜなら、さもなければ、金属酸化物粒子は、少なくとも部分的に、もはや互いに接触しなくなるリスクがあるからである。これを防止するために、導電剤が添加される。
【0036】
正極中の金属酸化物の高い割合は電池の能力を増大させる。しかし、電流通電能力のためには、導電剤の割合が金属酸化物の全割合よりも重要性が高い。特に好ましくは、負極中の電極バインダはSBRである。
【0037】
導電剤は、負極を調製するためのペースト中に、特に好ましくは、5~8重量%の割合で含有される。
【0038】
好ましく用いられるカルボキシメチルセルロースの代用として、以上において電解質ペーストに関して説明された、<500nm、好ましくは、<200nmの平均粒子サイズ(d50)を有する鉱物粉末、特に、上述された非晶質二酸化ケイ素も、正極のためのペーストの場合の粘度を調整するための添加剤として適する。
【0039】
プロセスの変形例
第1の特に好ましい実施形態では、本発明に係る方法は次のステップa.~d.を特徴とする:
a.電解質ペーストの第1の層が負極又は正極のどちらかに、特に好ましくは、30~70μmの厚さを有するように、適用される、特に、負極又は正極のどちらかの上に印刷される。
b.セパレータが電解質ペーストの第1の層に適用される。
c.電解質ペーストの第2の層がセパレータに、特に好ましくは、30~70μmの厚さを有するように、適用される、特に、セパレータの上に印刷される。
d.層スタックが形成され、ステップa.において考慮されなかった電極が電解質ペーストの第2の層と接触させられる。
第2の特に好ましい実施形態では、本方法は以下のステップa.~c.を特徴とする:
a.電解質ペーストの層が、負極及び正極の各々に、特に好ましくは、30~70μmの厚さを有するように、適用される、特に、負極及び正極の各々の上に印刷される、
b.セパレータが電解質ペーストの層のうちの一方に適用され、セパレータの一方の側がこの電解質ペーストの層と接触する。
c.層のスタックが形成され、セパレータの他方の側が電解質ペーストの層のうちの他方と接触する。
このように生産された層スタック内では、電解質ペーストの層のうちの一方が電極とセパレータとの間に必ず配置される。すなわち、換言すれば、このように生産された層スタックのセパレータは両側に鉱物粒子の境界層を含む。
【0040】
特に好ましい実施形態では、本発明に係る方法は次の追加の特徴a.~f.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.電極及び少なくとも1つの電解質層が、印刷プロセスによって、特に、スクリーン印刷プロセスによって形成されること。
b.負極が、30μm~150μmの範囲内の平均厚さで形成されること。
c.正極が、13μm~350μmの範囲内の平均厚さで形成されること。
d.少なくとも1つの電解質層が、10~100μm、好ましくは、30~70μmの範囲内の平均厚さで形成されること。
e.少なくとも1つの電解質層が負及び/又は正極に、それが依然として少なくとも湿っている間に適用されること(「ウエットオンウエット適用(wet-on-wet application)」)。
f.セパレータが、形成された電解質層のうちの1つの上に、それが依然として湿っている間に配置されること。
【0041】
好ましくは、直前の特徴a.~d.は組み合わせて実施される。さらに好ましい実施形態では、特徴e.及びf.は組み合わせて実施される。特に好ましくは、直前の特徴a.~f.は組み合わせて実施される。
【0042】
したがって、各場合において、ペーストは印刷されることが好ましい。印刷中の問題を回避するために、特に好ましい実施形態では、印刷ペーストは全て、50μm以下の粒子サイズを有する粒子状成分を含有する。
【0043】
上述されたように、電気導体は、好ましくは、導体を電解質との直接接触から保護するために、電極が適用される前に炭素の電気的伝導層でコーティングされる。炭素の層も上に印刷(printed on)することができる。
【0044】
電解質ペーストは、好ましくは、60~120μmの範囲内の厚さ、及び35~60%の多孔率を有する微多孔質ポリオレフィンフィルム(例えば、PE)と組み合わせて用いられる。好ましくは、上述の第1又は第2の特に好ましい実施形態によれば、電解質ペーストの層は、特に、指定範囲内の厚さを有するように、特に好ましくは、約50μmの厚さを各々有するように、電極及び/又はセパレータ上に形成される。アノードは、好ましくは、30μm~150μmの厚さを有する、特に、70μmの厚さを有する層として印刷される。正極は、好ましくは、180~350μmの厚さを有する、特に、280μmの厚さを有する層として印刷される。
【0045】
上述されたように、本発明に係る方法では、連続した負極/セパレータ/正極を有する層スタックが形成される。これは、好ましくは、電池の電極を同じ電気的非伝導性基材上に隣同士に、すなわち、共面配置で印刷し、基材を折り重ねるか、又はそれを、電極及び関連セパレータが重ね合わせられるような様態で折り曲げることによって行うことができる。折り重ねた後、基材は、得られた層スタックを少なくとも3つの側面から取り囲む。残りの側面を溶接及び/又は接着することによって、閉鎖されたハウジングを形成することができる。
【0046】
基材はほぼ全ての設計のものであることができる。理想的には、本発明に係る電池の導体が基材上に直接印刷される場合に、短絡又は漏洩電流が不可能にされ得るよう、表面は電気伝導特性を有してはならない。例えば、基材はプラスチックベースのラベルであることができる。例えば、ポリオレフィン又はポリエチレンテレフタレートで作製された箔であって、それが製品に固定され得る接着面を一方の側に有する箔が適するであろう。
【0047】
電気導体
電気導体は、例えば、溶液からの堆積を用いて、(例えば、スパッタリングなどのPVD法による)気相からの堆積を用いて、又は印刷プロセスによって形成された金属構造であることができる。また、マスクされない領域内で金属層が除去されるエッチングプロセスによって、閉鎖された金属層から導体を形成することも可能である。
【0048】
特に好ましい実施形態では、本方法は以下の追加の特徴aを特徴とする:
a.電気導体が、金属粒子、特に、銀粒子又は銀合金粒子で作製された伝導経路であること。
このような伝導経路は印刷プロセスを用いて容易に調製することができる。電気導体を調製するための銀粒子を有する印刷可能な伝導性ペーストは従来技術であり、市場で自由に入手可能である。
【0049】
特に好ましい実施形態では、本発明に係る方法は直下の次の特徴を必ず有する:
a.電気導体が電気伝導性金属層を含むこと。
b.電気導体が、少なくとも一部の区域内において、金属層と電極との間に配置され、金属層と液体電解質との直接接触を困難にするか、又はそれを防止しさえする、炭素の電気伝導層を含むこと。
【0050】
炭素の電気伝導層は、電気導体を保護する役割を果たす。具体的には、導体が銀粒子を含む場合には、銀が電解質中に溶解することになり、伝導経路の弱化、又はさらには、破壊をもたらすというリスクがある。炭素層は、銀で作製された導体を電解質との直接接触から保護することができる。好ましくは、炭素の電気伝導層は、5μm~30μmの範囲内、特に、10μm~20μmの範囲内の厚さを有するように適用される。好ましい実施形態によっては、炭素層は適用後に熱処理を受ける。これはその密度を高めることができる。
【0051】
ペーストセット
本発明に係るセットは、上述された亜鉛-二酸化マンガン電池を製造する方法において用いるために特に適している。それは以下の構成要素を必ず備える:
a.負極を調製するためのペーストであって、以下の成分:
- 亜鉛粉末(無水銀)
- 電極バインダ
- 溶剤及び/又は分散剤
を含む、ペースト、
及び
b.正極を調製するためのペーストであって、以下の成分:
- 二酸化マンガン
- 電気伝導率を改善するための導電剤
- 電極バインダ
- 溶剤及び/又は分散剤
を含む、ペースト、
及び
c.電解質層を調製するためのペーストであって、以下の成分:
- 少なくとも1種の水溶性で、塩化物を含まない導電性塩、特に、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛及び硫酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種の塩
- 鉱物粒子
- 溶剤及び/又は分散剤
を含む、ペースト。
【0052】
3種のペーストの好ましい特性に関しては、本発明に係る方法に関する上述の説明が参照される。特に好ましくは、本発明に係るセットは、亜鉛-二酸化マンガン電池が生産されるためにセパレータをさらなる構成要素として含む。セパレータの好ましい特性に関しては、本発明に係る方法に関する上述の説明が同様に参照される。
【0053】
亜鉛-二酸化マンガン電池及び亜鉛-二酸化マンガンバッテリ
本発明の基礎を成す課題によれば、本発明に係る電池は、好ましくは、ピークにおいて≧400mAの電流を有するパルス電流印加を供給するために用いられる。したがって、それは、とりわけ、LTE規格に従って動作する移動無線チップに電気エネルギーを供給することができる。しかし、原理的には、それは他の適用物にも適する。
【0054】
本発明に係る亜鉛-二酸化マンガン電池は、上述された方法によって製造することができる。それは次の特徴a.~f.を必ず有する:
a.それが、電気的非伝導性基材上の第1の電気導体、及び電気的非伝導性基材上の第2の電気導体を備えること、
b.それが、第1の電気導体の直上の層状負極、及び第2の電気導体の直上の層状正極を備えること、
c.それが層状セパレータを備えること、
ここで、
d.電極及びセパレータが、負極及びセパレータ並びに正極及びセパレータが各々、接続部分を介して互いに接続されている、連続した負極/セパレータ/正極を有する層スタックとして形成されること、
ここで、
e.電極及びセパレータが亜鉛塩溶液に含浸させられていること、
及びここで、
f.電極とセパレータとの間の接続部分が、電解質に対して透過性の境界層をそこに形成する鉱物粒子によって特徴付けられること。
【0055】
境界層は、鉱物充填剤粒子のその含有量のゆえに正極及び負極を互いに電気的に隔離するのを助けるため、それはセパレータの構成要素と見なすこともできる。特に好ましい実施形態では、本発明に係る亜鉛-二酸化マンガン電池の層状セパレータは、2つのこのような境界層を、すなわち、その側面の各々上に1つずつ、含む。
【0056】
特に好ましくは、亜鉛-二酸化マンガン電池は以下の特徴a.及びb.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.電池の負極が、以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 亜鉛粉末(無水銀)、81~93重量%
- 粘度調整のための添加剤、1~7重量%
- 電極バインダ、6~13重量%
を含むこと。
b.電池の正極が、以下の成分を以下の割合で含むこと、すなわち、
- 二酸化マンガン、62~82重量%
- 導電剤、5~35重量%
- 粘度調整のための添加剤、2~10重量%
- 電極バインダ、6~13重量%
を含むこと。
直前の特徴a.及びb.は、好ましくは、組み合わせて実施される。
【0057】
電池の列挙された構成要素、すなわち、例えば、電気導体、又は境界層を形成する鉱物粒子の好ましい特性に関しては、繰り返しを回避するために、本発明に係る方法に関する上述の説明が参照される。
【0058】
本発明に係る電池は次の追加の特徴a.~c.のうちの少なくとも1つを特徴とすることが特に好ましい:
a.電極が長方形であるか、又はストリップの形態のものであること。
b.電極が、
- 1cm~25、好ましくは、5cm~20cmの範囲内の長さ、及び
- 0.5~10cm、好ましくは、1cm~5cmの範囲内の幅、
を有すること。
c.電気的非伝導性基材上の電気導体が、2μm~250μm、好ましくは、2μm~100μm、より好ましくは、2μm~25μm、さらに好ましくは、5μm~10μmの範囲内の厚さを有すること。
好ましくは、直前の特徴a.~c.は互いに組み合わせて実施される。
【0059】
本発明に係る電池の正極及び負極は10μm~250μmの範囲内の特に好ましい厚さを各々有する。正極は、大抵、負極よりもいくらか厚い。なぜなら、後者は、多くの場合、より高いエネルギー密度を有するからである。それゆえ、適用物によっては、負極を、30μm~150μmの厚さを有する層として、正極を、180~350μmの厚さを有する層として形成することが好ましくなり得る。厚さを調整することによって、正極及び負極のキャパシタンスの釣り合いを取ることができる。これに関して、正極は負極に対して大形に作られることが好ましい。
【0060】
本発明はまた、本発明に係る亜鉛-二酸化マンガン電池を2つ以上備えるバッテリを含む。特に好ましくは、バッテリは、本発明に係る2つ、3つ、又は4つの直列接続された亜鉛-二酸化マンガン電池を備える。
【0061】
本発明に係る電池及び本発明に係るバッテリは、好ましくは、次の特徴a.及びb.のうちの少なくとも1つを特徴とする:
a.それが、電池又はバッテリの電極を取り囲むハウジングを備え、第1及び第2の基材がハウジングの部分であること。
b.第1及び第2の基材が、箔、又は箔の構成要素であること。
この場合も先と同様に、直前の特徴a.及びb.は、好ましくは、互いに組み合わせて実施される。
【0062】
ハウジングを含む、本発明に係るバッテリは、数ミリメートルの範囲内、特に好ましくは、0.5mm~5mmの範囲内、より好ましくは、1mm~3mmの範囲内の最大厚さを有することが好ましい。それの他の寸法は、電気的に相互接続された個々の電池の数、及びそれらの寸法に依存する。例えば、4つの直列に接続された個々の電池を有するバッテリは5~20cmの長さ及び4~18cmの幅を有し得る。
【0063】
特に好ましくは、本発明に係る電池又は本発明に係るバッテリは、プラスチックベースのラベル、特に、プラスチックで作製された粘着ラベル上に配置又は製造することができる。例えば、第1又は第2の基材は、その側面のうちの一方に接着剤層を有する箔であり得る。ラベルは任意の製品又はパッケージに接着させられ得る。必要な場合には、本発明に係る電池又は本発明に係るバッテリによって電気エネルギーを供給される、携帯電話チップなどの電子適用物もラベル上に配置することができる。特にこの適用のためには、電極が高度の柔軟性を有することが必要であり、これは弾性電極バインダの割合によって確実にされ得る。
【0064】
上述されたように、好ましい実施形態では、本発明に係る電池の電極及び少なくとも1つの電解質層は、印刷プロセスによって、特に、スクリーン印刷プロセスによって形成される。特に好ましい実施形態によっては、それゆえ、本発明に係る電池は印刷電池である。
【0065】
これに関連して、印刷電池は、少なくとも、電極及び電解質層、並びに任意選択的に、また、電気導体が、特に、スクリーン印刷プロセスを用いて、上述の印刷ペーストを基材上に印刷することによって形成された電池として理解されるべきである。好ましくは、電極及び電気導体は印刷される。
【0066】
本発明のさらなる特徴、及び本発明からもたらされる利点は、実施形態の以下の例から、及び図面から明らかになるであろう。本発明はそれらの助けを借りて説明されることになる。後述される実施形態は、単に、本発明を説明し、そのより深い理解をもたらす役割を果たすにすぎず、けっして限定として理解されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
本発明のさらなる利点及び態様は、請求項から、及び以下において図を参照して説明される本発明の実施形態の好ましい例の以下の説明から明らかになる。図面では、以下のものを概略的に示す。
図1図1は、本発明に係る合計4つの電池を備え、且つ電気的に相互接続された、本発明に係るバッテリを製造する方法の好ましい実施形態の図である。
図2図2は、図1に示される手順に従って形成されたバッテリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1を参照して、直列に電気接続された4つの個々の電池を有する本発明に係るバッテリ100の好ましい実施形態の製造及び構造の両方を説明することができる。製造方法は以下のステップを含む。
【0069】
(1)担体の役割を果たす、200μmの厚さを有するPETフィルム106上にスクリーン印刷によって電流導体構造を印刷する。PETフィルム106を線109によって2つの領域109a及び109bに分割する。そのうち、領域109aは第1の基材の役割を果たし、領域109bは第2の基材の役割を果たす。電気導体構造は、第1の電気導体101、第2の電気導体102、第3の電気導体103、第4の電気導体104、及び第5の電気導体105を含み、第1及び第3の導体101及び103は第1の基材109a上に印刷される。導体102、104、及び105は第2の基材109b上に印刷される。ここで用いられる印刷ペーストは市販の銀伝導性ペーストである。電気導体101~105の領域内では、PET箔106はいずれの場合にも表面全体にわたってペーストでコーティングされ、これにより、導体は連続的な電気伝導面を各々形成する。全ての電気導体は、好ましくは、10μmμm~100μmの範囲内の厚さを有する層として形成される。図1Aに、本ステップの結果が示されている。ここで、図面に示される全ての層は図面平面と平行に配置されていることに留意されたい。これは、導体上に堆積される炭素、電極、及び電解質層に同様に当てはまる。
【0070】
(2)さらなるステップにおいて、電流導体構造を炭素粒子の薄い層で被覆する。炭素粒子の層は、好ましくは、12μmの厚さを有するように形成される。ここで用いられる印刷ペーストは、電子機器内の電気伝導層及び相互接続を形成するために用いられる種類の典型的な炭素ペーストである。図1Bに、本ステップの結果が示されている。炭素粒子の層による電流伝導構造の被覆を最適化するために、形成された層に熱処理を受けさせることが好ましくなり得る。適用され得る温度は主としてPET箔の熱的安定性に依存し、それに応じて選択されなければならない。
【0071】
(3)次に、負極107a、107b、107c、及び107d、並びに正極108a、108b、108c、及び108dを電流導体構造上に印刷する。この目的のために、第1の電気導体101に区域内で亜鉛ペーストを刷り重ね、負極107bを形成し、区域内で酸化マンガンペーストを刷り重ね、正極108aを形成する。第2の電気導体102に一部の区域内で亜鉛ペーストを刷り重ね、負極107cを形成し、一部の区域内で酸化マンガンペーストを刷り重ね、正極108bを形成する。第3の電気導体103に一部の区域内で亜鉛ペーストを刷り重ね、負極107dを形成し、一部の区域内で酸化マンガンペーストを刷り重ね、正極108cを形成する。第4の電気導体104に区域内で酸化マンガンペーストを刷り重ね、正極108dを形成する。さらに、第5の電気導体105に区域内で亜鉛ペーストを刷り重ね、負極107aを形成する。ペーストは以下の組成を有する:
亜鉛ペースト:
- 亜鉛粒子 70重量%
- CMC 2重量%
- SBR 6重量%
- 溶剤及び/又は分散剤(水) 22重量%
酸化マンガンペースト:
- 酸化マンガン 60重量%
- 黒鉛 6重量%
- 硫酸亜鉛 2重量%
- CMC 2重量%
- SBR 5重量%
- 溶剤及び/又は分散剤(水) 25重量%
図1Cに、本ステップの結果が示されている。
【0072】
負極107a~107d及び正極108a~108dは、11cmの長さ及び2cmの幅を有する長方形ストリップとして各々形成される。負極107a~107dは、好ましくは、ここでは、70μmの厚さを有する層として形成される。正極108a~108dは、好ましくは、280μmの厚さを有する層として形成される。1つを超える印刷プロセスが、正極108a~108dを形成するために必要とされ得る。
【0073】
電極のうちの2つが、第1の導体101、第2の導体102、及び第3の導体103の各々を介して電気接続される。導体101は正極108aを負極107bに接続し、導体102は正極108bを負極107cに接続し、導体103は正極108cを負極107dに接続する。これらの電気接続が4つの個々の電池の所望の直列接続のための基盤である。
【0074】
2つの電極を各々電気接続する導体101、102、及び103は、表面上の電気接続された電極108a及び107b、108b及び107c、並びに108c及び107dによって占有された区域よりも大きいそれぞれの基材109a及び109bの表面上の電気伝導性区域を各々形成する。一態様では、電気伝導性区域は、電極によって被覆された領域を各々含む。第2に、電気接続された電極の各々の間に間隙110を形成し、電極を互いに隔てる。電気伝導性表面はこの間隙110にもまたがって広がり、その結果、電極間の間隙内の導体の断面は減少しない。
【0075】
これは全て、本発明に係るバッテリ100のインピーダンス値への正の効果をすでに有する。電極の大面積接触、及び特に、また、間隙110を介した接続は、電極の最適な電気接続を確実にし、電気抵抗を最小限に抑える。
【0076】
また、電極107a及び108dとのみ電気接触した、第4及び第5の導体104及び105は、表面上のそれぞれの電気接触させられた電極によって占有された区域よりも大きいそれぞれの基材の表面上の電気伝導性区域を形成する。一態様では、電気伝導性区域は、電極によって被覆された領域を各々含む。他方で、電気伝導性表面は、電極材料によって被覆されない領域を各々含む。これらの領域は、その4つの直列に接続された個々の電池の合算された電圧を引き出すためのバッテリ100の端子の役割を果たし得る。
【0077】
(4)さらなる後続のステップにおいて、負極107a~107d及び正極108a~108dに硫酸亜鉛ペーストを印刷する。例えば、およそ50μmの厚さを各々有する、電解質ペースト層111a~111hが形成される。図1Dに、本ステップの結果が示されている。好ましくは、以下の組成を有する電解質ペーストが本ステップにおいて用いられる:
- 硫酸亜鉛 35重量%
- 浮遊剤(floating agent)(二酸化ケイ素) 3重量%
- 鉱物、非水溶性粒子(CaCO) 15重量%
- 溶剤及び/又は分散剤(水) 47重量%
浮遊剤及び非水溶性粒子は電気絶縁効果を有する。
【0078】
ペーストが個々の電極の周りに印刷される前に、例えば、接着コンパウンドを用いて、電極を取り囲む封止枠112が形成される場合には、それは特に有利である。例えば、市販のソルダレジストが、封止枠112を形成するための出発材料の役割を果たすことができる。電極107a及び108aを取り囲む2つの封止枠112が例として示されている。プロセスが適切に実施される場合には、全ての電極を封止枠で取り囲むことが好都合である。
【0079】
(5)次に、電解質ペースト層111a~111hを複数のセパレータで被覆する。ここで、これは、好ましくは、電解質ペースト層が乾燥し切らないよう、電解質ペースト層を印刷した直後に行われる。次に、PET箔106を線109に沿って折り曲げて折り重ね、これにより、
● 負極107aは、セパレータのうちの1つと、及び正極108aとの第1の層スタックを形成し、
● 負極107bは、セパレータのうちの1つと、及び正極108bとの第2の層スタックを形成し、
● 負極107cは、セパレータのうちの1つと、及び正極108cとの第3の層スタックを形成し、
● 負極107dは、セパレータのうちの1つと、及び正極108dとの第4の層スタックを形成する。
折り重ね並びに最終溶接及び/又は接着によって、層スタックが内部に配置された、閉鎖されたハウジングを形成することができる。図2に、本ステップの結果が示されている。60~120μmの範囲内の厚さ、及び35~60%の多孔率(全容積に対する空隙容積の比)を有する微多孔質ポリオレフィンフィルムがこの目的のためのセパレータとして用いられる。
【0080】
図2に断面で示されるバッテリ100は、層スタックとして形成された、4つの個々の電池113、114、115、及び116を備える。図示のバッテリは、図1に示される手順に従って製造することができ、層として形成された合計4つのセパレータ117a~117dが、個々の電池を形成するために用いられる。セパレータ117a~117dに加えて、層スタック113~116は負極107a~107dのうちの1つ及び正極108a~108dのうちの1つを各々含む。詳細には:
【0081】
層スタック113は電気導体101及び105を含み、電気導体101及び105は、それらを電解質との接触から保護する炭素粒子の層101a及び105aを含む。正極108aは層101a上に直接堆積され、負極107aは層105a上に直接堆積される。電極107a及び108aの間に、電解質ペースト層111a及び111bによって囲まれた、セパレータ117aがある。電解質層111a及び111bは、電気的非伝導性鉱物粒子のそれらの含有量によって、正極108a及び負極107aを互いに電気的に隔離するのを助けるため、それらはセパレータ117aの構成要素と見なすことができる。いずれにせよ、鉱物粒子は、電極とセパレータとの間の、しかし、水に溶解した硫酸亜鉛に対して透過性を有する、境界層を形成する。
【0082】
層スタック114は電気導体101及び102を含み、電気導体101及び102は、それらを電解質との接触から保護する炭素粒子の層101a及び102aを含む。正極108bは層102a上に直接堆積され、負極107bは層101a上に直接堆積される。電極107b及び108bの間に、電解質層111c及び111dによって囲まれた、セパレータ117bがある。電解質層111c及び111dは、電気的非伝導性鉱物成分のそれらの含有量のゆえに、正極108b及び負極107bを互いに電気的に隔離するのを助けるため、それらはセパレータ117bの構成要素と見なすことができる。いずれにせよ、鉱物粒子は、電極とセパレータとの間の、しかし、水に溶解した硫酸亜鉛に対して透過性を有する、境界層を形成する。
【0083】
層スタック115は電気導体102及び103を含み、電気導体102及び103は、それらを電解質との接触から保護する炭素粒子の層102a及び103aを含む。正極108cは層103a上に直接堆積され、負極107cは層102a上に直接堆積される。電極107c及び108cの間に、電解質層111e及び111fによって囲まれた、セパレータ117cがある。電解質層111e及び111fは、電気的非伝導性鉱物成分のそれらの含有量によって、正極108c及び負極107cを互いに電気的に隔離するのを助けるため、それらはセパレータ117cの構成要素と見なすことができる。いずれにせよ、鉱物粒子は、電極とセパレータとの間の、しかし、水に溶解した硫酸亜鉛に対して透過性を有する、境界層を形成する。
【0084】
層スタック116は電気導体103及び104を含み、電気導体103及び104は、それらを電解質との接触から保護する炭素粒子の層103a及び104aを含む。正極108dは層104a上に直接堆積され、負極107dは層103a上に直接堆積される。電極107d及び108dの間に、電解質層111g及び111hによって囲まれた、セパレータ117dがある。電解質層111g及び111hは、電気的非伝導性鉱物成分のそれらの含有量のゆえに、正極108d及び負極107dを互いに電気的に隔離するのを助けるため、それらはセパレータ117dの構成要素と見なすことができる。いずれにせよ、鉱物粒子は、電極とセパレータとの間の、しかし、水に溶解した硫酸亜鉛に対して透過性を有する、境界層を形成する。
【0085】
第1の導体101及び第3の導体103は、第2の基材109bと向かい合った第1の基材109aの表面上に互いに距離を隔てて配置されており、その一方で、第2の導体102、第4の導体104、及び第5の導体105は、第1の基材109aと向かい合った第2の基材109bの表面上に互いに各々に対して距離を隔てて配置されている。
【0086】
4つの個々の電池113、114、115、及び116は、それらの電圧が合算するよう直列に電気接続されている。この目的のために、個々の電池の反対の極性の電極が、第1の導体101、第2の導体102、及び第3の導体103を介して電気接続されている。導体電極は反対の極性を有し、第1の導体は第4の単一の電池の電極と電気的に接触しており、この導体によって電気接続された電極も反対の極性を有する。上述されたように、電極材料によって被覆されていない導体104及び105の領域は、その4つの直列に接続された個々の電池113~116の合算された電圧を引き出すためのバッテリ100の端子の役割を果たし得る。
【0087】
本明細書において説明される個々の電池113~116は電気化学系として亜鉛-二酸化マンガンに基づくため、電池の各々は約1.5ボルトの公称電圧を提供する。したがって、バッテリ100は約6ボルトの公称電圧を提供する能力を有する。
【0088】
上述の折り返し、並びに線117に沿った最終溶接及び/又は接着の結果、本発明に係るバッテリ110は、層スタック113~116が内部に配置された、閉鎖されたハウジング118を有する。電極材料によって被覆されていない導体104及び105の領域は、バッテリ100の電圧を外部から引き出すことができるよう、ハウジングから外へ導くことができる。
本発明に係るバッテリ100のインピーダンス特性にとっては、層スタック内で直接接触した、個々の電池113~116の層状構成要素が、できるだけ大きい面積にわたって互いに接触していることが重要である。これが単一の電池113を参照して説明される。
【0089】
まず、インピーダンスを最適化するために、できるだけ大きい面積にわたって電極107a及び108aと電気導体101及び105との間の接触をもたらすことが必要である。上述されたように、導体101及び105は、図1A及び図1Bに示されるように、基材109a及び109b上に連続した電気伝導性表面をそれぞれ形成する。導体101、及びその上に堆積された電極108aによって形成された電気伝導性表面は、電極108aと垂直な直線が電極及び導体101の両方と交差するオーバレイ領域内において、電極108a及び導体101と垂直な観察方向において、おおよそ重なり合う。特定の場合には、このオーバレイ領域は厳密に電極108aの区域になる。それゆえ、電極108aはその表面全体にわたって電気導体101と接触している。電極107aと導体105との間の接触の場合には、同じことが同様に言える。ここでも、全面接触が存在する。
【0090】
セパレータ117aへの電極107a及び108aの接続も重要である。上述されたように、セパレータ117aは、電解質層111a及び111b、或いは鉱物粒子から形成された境界層を介して電極107a及び108aと接触しており、本例では、電解質或いは境界層111a及び111bはセパレータ117aの部分と見なすことができる。セパレータの一方の側は正極108aへの第1の接触面を有し、それと平行な他方の側は負極107aへの第2の接触面を有する。好ましくは、接触面は、両方の接触面と交差するセパレータと垂直な直線によって規定されるオーバレイ領域内において、セパレータと垂直な観察方向において互いに重なり合う。
【0091】
電極107a及び108aは同一の表面寸法を有し、スタック内で互いにずれていないため、このオーバレイ区域のサイズは電極107a及び108aのサイズに厳密に対応する。それゆえ、電極107a及び108aは、導体101及び105とだけでなく、セパレータ、或いはセパレータの電解質層111a及び111bとも全面接触している。
図1
図2
【国際調査報告】