(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】軽質芳香族炭化水素の調製方法
(51)【国際特許分類】
C10G 47/18 20060101AFI20240327BHJP
C10G 45/02 20060101ALI20240327BHJP
B01J 23/14 20060101ALI20240327BHJP
B01J 29/62 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C10G47/18
C10G45/02
B01J23/14 M
B01J29/62 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564530
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2022088336
(87)【国際公開番号】W WO2022223012
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】202110440767.6
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】劉▲トン▼
(72)【発明者】
【氏名】王傑廣
(72)【発明者】
【氏名】王嘉欣
(72)【発明者】
【氏名】馬愛増
(72)【発明者】
【氏名】任堅強
(72)【発明者】
【氏名】王春明
(72)【発明者】
【氏名】張新▲クァン▼
(72)【発明者】
【氏名】董晨
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB08A
4G169BC01A
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4G169BC06A
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4G169CC08
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4H129CA04
4H129DA21
4H129KA12
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4H129KC03X
4H129KC13X
4H129KD05X
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4H129KD10X
4H129KD18X
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4H129KD25X
4H129KD26X
4H129KD26Y
4H129KD31Y
4H129NA27
(57)【要約】
C9
+芳香族炭化水素から軽質芳香族炭化水素を調製する方法であって、該方法は、水素の存在下で、C9
+芳香族炭化水素と脱アルキル化触媒とを接触させて脱アルキル化反応を実行し、軽質芳香族炭化水素を得ることを含み、前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの上に担持された白金および改質金属を含み、前記改質金属は、第IIA族金属および希土類金属から選択される。前記方法では、特定の改質金属を含むPt/KL触媒をC9
+芳香族炭化水素の脱アルキル化反応に使用することにより、軽質芳香族炭化水素が調製される。前記方法は、原料の高い転換率、軽質芳香族炭化水素の高い収率、および良好な反応選択性などの特徴を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C
9
+芳香族炭化水素から軽質芳香族炭化水素を調製する方法であって、
水素の存在下で、C
9
+芳香族炭化水素と脱アルキル化触媒とを接触させて脱アルキル化反応を実行し、軽質芳香族炭化水素を得る工程を含み、
前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの上に担持された白金および改質金属を含み、
前記改質金属は、第IIA族金属および希土類金属からなる群から選択される、
方法。
【請求項2】
前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの量に対して、0.1~1.5質量%、好ましくは0.3~1.2質量%の白金、および0.02~4.0質量%、好ましくは0.1~3.0質量%の前記改質金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱アルキル化触媒が、以下の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項1または2に記載の方法:
前記第IIA族金属が、バリウムおよびカルシウムからなる群から選択されること;
前記希土類金属が、La、Ce、Gd、Y、SmおよびYbからなる群から選択されること;および/または、
前記KLゼオライトの平均粒径が、0.1~2μmであること。
【請求項4】
前記脱アルキル化反応の条件が、温度が350~490℃、好ましくは450~480℃であり、圧力が0.1~4.0MPa、好ましくは0.1~2.0MPa、より好ましくは0.1~0.5MPaであり、C
9
+芳香族炭化水素の質量空間速度が1~20h
-1、好ましくは1~10h
-1であり、水素対C
9
+芳香族炭化水素のモル比が0.5~20:1、好ましくは1~10:1であることを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
C
9
+パラフィン炭化水素を含む原料から軽質芳香族炭化水素を調製する方法であって、
1)C
9
+パラフィン炭化水素を含む原料を、反応のために第1の反応領域で、水素の存在下で、脱水素化触媒と接触させて、前記C
9
+パラフィン炭化水素の少なくとも一部を脱水素環化させてC
9
+芳香族炭化水素を得、任意に、得られた生成物を分離させて、C
9
+芳香族炭化水素を含むストリームを得る工程であり、
ここで、前記脱水素化触媒は、アルミナ、ならびに該アルミナの上に担持された第VIII族金属、第IVA族金属、第IA族金属およびハロゲンを含む、工程;
2)工程1)で得られたC
9
+芳香族炭化水素を含むストリームを、第2の反応領域で、水素の存在下で、脱アルキル化触媒と接触させて、前記C
9
+芳香族炭化水素の少なくとも一部を脱アルキル化させて軽質芳香族炭化水素を得る工程であり、
ここで、前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの上に担持された白金および改質金属を含み、前記改質金属は、第IIA族金属および希土類金属からなる群から選択される、工程
を含む、方法。
【請求項6】
工程2)の前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの量に対して、0.1~1.5質量%、好ましくは0.3~1.2質量%の白金、および0.02~4.0質量%、好ましくは0.1~3.0質量%の前記改質金属を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記脱アルキル化触媒が、以下の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項5または6に記載の方法:
前記第IIA族金属が、バリウムおよびカルシウムからなる群から選択されること;
前記希土類金属が、La、Ce、Gd、Y、SmおよびYbからなる群から選択されること;および/または
前記KLゼオライトの平均粒径が、0.1~2μmであること。
【請求項8】
工程1)で使用される脱水素化触媒において、前記第VIII族金属が、白金、パラジウムおよびイリジウムからなる群から選択され、前記第IVA族金属が、スズ、ゲルマニウムおよびケイ素からなる群から選択され、前記第IA族金属が、カリウム、ナトリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択され、前記ハロゲンが、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素からなる群から選択され;
好ましくは、工程1)において使用される前記脱水素化触媒が、アルミナ担体、ならびに該アルミナ担体の量に対して、0.1~2.0質量%、好ましくは0.1~1.0質量%の白金などの第VIII族金属、0.1~2.0質量%、好ましくは0.1~1.0質量%のスズなどの第IVA族金属、0.01~0.2質量%、好ましくは0.02~0.1質量%のカリウムなどの第IA族金属、および0.3~5質量%、好ましくは0.5~1.5質量%の塩素などのハロゲンを含む、
請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルミナ担体が、γ-アルミナ担体であり、好ましくは、アルミナ担体の量に対して、前記脱水素化触媒の白金含有量が0.1~1.0質量%であり、スズ含有量が0.1~1.0質量%であり、カリウム含有量が0.02~0.1質量%であり、塩素含有量が0.5~1.5質量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程1)の反応条件が、反応温度が400~500℃、好ましくは450~480℃であり、反応圧力が0.1~4.0MPa、好ましくは0.1~2.0MPa、より好ましくは0.1~0.5MPaであり、前記C
9
+パラフィン炭化水素を含む原料の質量空間速度が1~50h
-1、好ましくは1~20h
-1、より好ましくは1~10h
-1であり、水素対炭化水素のモル比が0.5~20:1、好ましくは1~10:1であることを含む、請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程2)の反応条件が、温度が350~490℃、好ましくは450~480℃であり、圧力が0.1~4.0MPa、好ましくは0.1~2.0MPa、より好ましくは0.1~0.5MPaであり、前記C
9
+芳香族炭化水素を含むストリームの質量空間速度が1~20h
-1、好ましくは1~10h
-1であり、水素対炭化水素のモル比が0.5~20:1、好ましくは1~10:1であることを含む、請求項5~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程1)で使用される前記脱水素化触媒対工程2)で使用される前記脱アルキル化触媒の質量比が、1:(0.25~5)、好ましくは1:(1.2~3)である、請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記C
9
+パラフィン炭化水素を含む原料はナフサであり、好ましくは、前記ナフサは直留ナフサ、水素化分解重質ナフサ、水素化処理コークス化ガソリン、エチレン熱分解ガソリンのラフィネート、触媒分解ガソリン、およびそれらの混合物からなる群から選択され、さらに好ましくは、前記ナフサは、6~12個の炭素原子を有するナフテン炭化水素、6~12個の炭素原子を有するパラフィン炭化水素および6~12個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を含み、初留点が80~95℃であり、最終留点が135~180℃である、請求項5~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程1)の前に、前記ナフサを水素化精製処理に供して、該ナフサ中に含まれるヒ素、鉛、銅、硫黄および窒素の不純物を除去する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程1)の反応が、前記ナフサ中のナフテン炭化水素の転換率が90質量%以上となり、C
9
+パラフィン炭化水素の転換率が70~95質量%となるように制御される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
工程1)の反応が、前記ナフサ中のナフテン炭化水素の転換率が90質量%以上となり、ここで、C
7ナフテン炭化水素およびC
8ナフテン炭化水素のいずれの転換率も95質量%以上となり、C
6ナフテン炭化水素の転換率が70質量%以上となるように制御される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
工程1)の反応が、前記ナフサ中のパラフィン炭化水素の転換率が60質量%以下となり、ここで、C
6パラフィン炭化水素の転換率が18質量%以下となり、C
7パラフィン炭化水素の転換率が30質量%以下となり、C
8パラフィン炭化水素の転換率が70質量%以下となり、C
9
+パラフィン炭化水素の転換率が70~95質量%となるように制御される、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2021年4月23日に出願された中国特許出願第202110440767.6号(名称「ナフサから軽質芳香族炭化水素を調製する方法」)の優先権を主張するものであり、該出願の内容はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本出願は、芳香族炭化水素の触媒転換の分野に関し、特にC9
+芳香族炭化水素から軽質芳香族炭化水素を調製する方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
ナフサには通常、C6~C12アルカン成分、ナフテン成分および芳香族成分が含まれており、そのプロセスの主なスキームは、触媒改質および他の技術によって、アルカン分子およびナフテン分子を芳香族炭化水素または高オクタン価ガソリン調合成分に転換すると同時に、高付加価値の水素を調製することである。改質反応の液体生成物には、BTXなどの軽質芳香族炭化水素に加えて、未転換の7個以下の炭素原子を有する軽質アルカンまたは9個以上の炭素原子を有する重質芳香族も含まれる。
【0004】
触媒改質反応プロセスで生じる主な反応には、6員のナフテン炭化水素の脱水素化反応、5員のナフテン炭化水素の脱水素異性化反応、パラフィン炭化水素、ナフテン炭化水素および芳香族炭化水素の異性化反応、パラフィンの脱水素環化反応、アルカンの水素添加分解、ならびに水素化分解反応などの6個の主な反応が含まれる。従来の触媒改質反応は、「ある炭素数のナフサ成分を、同じ数の炭素原子を有する生成物に転換する」という原則に従い、生成物の分布は化学熱力学の法則および動力学の法則に従う。そのため、改質触媒およびプロセス技術が決定された後は、芳香族炭化水素の収率および生成物の分布は原料の組成に依存し、生成物中のベンゼン、トルエンおよびキシレン異性体の割合、ならびに重質芳香族炭化水素の割合は、基本的に変わらない。従来の触媒系では、反応条件を変えることによって、各生成物の分布を調整および制御するための余地は非常に限られている。
【0005】
主な改質反応(アルカンの水素添加分解および水素化分解反応を除く)は、反応物と生成物の炭素数が同じという原則に従っているため、改質物中、9個以上の炭素原子を有する重質芳香族の含有量は高く、通常、20質量%に達する。完成したガソリンの最終留点の制限を受けて、重質芳香族をすべてガソリン混合成分として使用することはできない。一部の重質芳香族は精留によって分離されて、製品として販売され得るが、市場規模には限界がある。C6軽質アルカンおよびC7軽質アルカンの脱水素環化反応は比較的遅いため、改質操作の過酷さを上げることにより、それらの転換率を向上させるのが一般的である。しかしながら、過酷さを上げることは、反応の選択性の低下、ならびに水素化分解反応などの促進による液体生成物の収率の低下および水素の消費などの問題を引き起こす。
【0006】
中国特許出願CN102795958Aは、ナフサを原料として使用し、芳香族炭化水素およびエチレンを調製する方法を開示しており、該方法は、ナフサ中のナフテン炭化水素の転換率が85質量%超となり、パラフィン炭化水素の芳香族炭化水素およびC4
-炭化水素への転換率が30質量%未満となるように、圧力0.15~3.0MPa、温度300~540℃、体積空間速度2.1~50h-1を含む条件下で、水素の存在下で、ナフサを改質触媒と接触させ、選択的な触媒改質反応を行う工程;触媒改質によって得られた改質物を芳香族炭化水素分離装置に送り、芳香族炭化水素からアルカンを分離させて、芳香族炭化水素をリッチに含むフラクションと、パラフィン炭化水素をリッチに含むフラクションとを得る工程;アルカンをリッチに含むフラクションを、分解反応のために水蒸気分解装置に送り、エチレンを調製する工程を含む。
【0007】
中国特許出願CN101376823Aは、ナフサ触媒改質方法を開示しており、該方法は、ナフサを従来の触媒改質装置の反応器に導入する工程と、改質物を気液分離に供して気体成分、C8
-軽質成分およびC9
+重質成分を得る工程と、芳香族軽質化触媒の存在下で前記C9
+重質成分に対して軽質化反応を実行する工程とを含む。軽質化反応は、好ましくは、反応温度420~530℃、圧力0.8~1.5MPa、液体供給体積空間速度1~10h-1、および炭化水素に対する水素のモル比0.1~10.0の条件下で実施される。軽質化触媒は、イリジウム、カリウム、および塩素の活性成分、ならびにアルミナ担体を含む。この特許出願の実施例においては、C9
+重質芳香族の転換率は56.90~69.37質量%であり、BTXの収率は43.00~54.61質量%である。
【0008】
中国特許出願CN109401785Aは、ナフサのアップグレーディング方法を開示しており、該方法は、第1の反応領域で脱水素化の条件下で、ナフサを脱水素化触媒と接触させて脱水素化反応を実行して、ナフサ中のナフテン炭化水素の一部を芳香族炭化水素に転換し、ここで、前記脱水素化の条件は、好ましくは、反応温度380~440℃、反応圧力0.3~0.6MPa、供給質量空間速度4~10h-1、および気体/油の体積比200~600を含み;前記脱水素化触媒は、第1の担体、ならびに該第1の担体の上に担持された塩素および第VIII族金属を含む、工程と:第1の反応領域にて得られた反応生成物を第2の反応領域に導入し、改質反応のために改質触媒と接触させ、得られた反応生成物を冷却分離して気体生成物と液体生成物とを得る工程とを含む。この特許出願の実施例においては、液体生成物の収率は79.15~85.95質量%であり、液体生成物中の芳香族含有率は28.02~36.17質量%である。
【0009】
中国特許出願CN110358577Aは、ナフサを高オクタン価ガソリンと芳香族炭化水素とに転換する方法を開示しており、該方法は、ナフサ中のナフテン炭化水素の転換率が85質量%超、C8
+パラフィン炭化水素の転換率が50質量%超、C6パラフィン炭化水素の転換率が5質量%以下となるように、0.2~2.0MPa、350~520℃、体積空間速度1.0~5.0h-1、および水素対炭化水素のモル比0.5~20:1の条件下で水素の存在下で、ナフサを改質触媒と接触させることにより、適度に改質反応を実行する工程;触媒改質反応によって得られた改質物に対して芳香族分離を行い、芳香族炭化水素がリッチな成分とパラフィンがリッチな成分とを得て、前記パラフィンがリッチな成分を精留によりC5~C6フラクションとC7
+フラクションとに分割する工程;異性化反応のためにC5~C6フラクションを異性化触媒と接触させ、得られた異性化生成物をC7
+フラクションと混合し、次いで、芳香族化反応のために芳香族触媒と接触させ、ここで、前記芳香族触媒はKLゼオライト、および該KLゼオライトの上に担持された白金を含み、前記白金はKLゼオライトの量に対して0.1~1.5質量%である工程を含む。
【0010】
中国特許CN1231559Cは、3つの触媒領域を用いて芳香族がリッチな生成物の調製のための触媒改質プロセスを開示しており、該プロセスは、第1の二元機能触媒改質領域と、白金の族の金属および非酸性ゼオライトを含む触媒を含有するゼオライト改質領域と、最終の二元機能触媒改質領域とを含むプロセストレインにおいて、炭化水素原料を触媒改質させる工程を含む。第1の改質領域における条件は、反応圧力100kPa~1MPa、液体時間空間速度0.2~20h-1、C5
+に対する水素のモル比0.1~10、および温度400~560℃を含み;第2の改質領域における条件は、反応圧力100kPa~6MPa、液体時間空間速度1~40h-1、および温度260~560℃を含み;最終の改質領域における条件は、反応圧力100kPa~1MPa、液体時間空間速度0.2~10h-1、C5
+に対する水素のモル比0.1~10、および温度400~560℃を含む。この特許の実施例では、4つの改質反応器において上述の2つの触媒の組み合わせを動力学モデルを用いてシミュレーションしたところ、BTX収率は45.02~49.28%であった。
【0011】
これまでに報告されている重質芳香族軽質化触媒は、主に、ZSM-5、HZSM-5、HY、USY、NaY、βゼオライト、MCM-41、ZSM-12、MOR、NU-87、MFIなどの分子篩のうちの1つ以上を含み、前記分子篩は直接的に使用され得るか、または改質され得、アルミナまたは他の酸化物が担体として使用される。触媒の一部は、白金、パラジウム、イリジウムまたはそれらの化合物とともに添加される。反応原料は、C9
+重質芳香族もしくはC10
+重質芳香族であるか、またはC9重質芳香族もしくはC10重質芳香族などのより狭いフラクションである。
【0012】
L型分子篩(国際分子篩協会のコード:LTL)は、1965年にUnion Carbide社によって開発された基本的なマクロ多孔質分子篩のタイプであり、自然界において同等のものはこれまで見つかっていない。Bernard(Proc. 5th Int. Conf. on Zeolites, Wiley, New York, 1980, 68)が、PtKLが従来の二元機能触媒よりも、n-ヘキサンの芳香族化に対してはるかに高い活性と選択性とを有することを発見して以来、白金が担持されたL分子篩は、n-アルカンの脱水素環化触媒として広く注目されるようになった。その後、工業的適用において、Pt/KL分子篩触媒は脱水素化反応および改質反応のために使用されたが、このような触媒を重質芳香族の軽質化反応のために使用した例は報告されていない。
【0013】
中国特許出願CN108236964Aは、LTL分子篩を含むバイメタル触媒改質触媒を開示しており、該触媒は、LTL分子篩および接着剤からなる触媒担体と、第VIIIB族金属、SnまたはRe元素を含む活性成分とを含む。前記LTL分子篩中のカチオンは、ランタン系金属イオンによって、一部または全部が交換および置き換えられる。この出願の実施例では、遼陽石油化学の改質物が原料として使用され、反応温度500℃、圧力0.5MPa、体積空間速度3h-1、および油に対する水素の体積比800を含む条件下で10時間反応させられ、得られた芳香族炭化水素の収率は60~72%であり、C5
+液体の収率は80~92%である。
【0014】
中国特許出願CN106391098Aは、ナフサ改質触媒およびその調製について開示しており、該触媒は、担体、金属および炭素を含む。Pt/KL改質触媒の調製時に特定量の単糖類を添加することにより、金属Ptの分散性が向上し、反応プロセス中の触媒の炭素析出率が低下し、Pt/KL触媒の改質反応性能を向上させることができる。この特許出願の実施例では、フィッシャー・トロプシュ直留ナフサが触媒改質のための原料として使用され、反応温度500℃、圧力0.7~1.0MPa、体積空間速度1.0h-1、および油に対する水素のモル比6を含む条件下で反応が実施され、得られた芳香族炭化水素の収率は49.97~74.33%であり、C5
+液体の収率は71.81~83.04%である。
【0015】
〔発明の開示〕
本出願の目的は、軽質芳香族炭化水素を調製する方法を提供することであり、該方法は、C9
+芳香族またはC9
+パラフィンを出発原料として使用して高効率で軽質芳香族炭化水素を調製するために使用され得る。
【0016】
一態様では、本出願は、C9
+芳香族炭化水素から軽質芳香族炭化水素を調製する方法を提供し、該方法は、水素の存在下で、C9
+芳香族炭化水素と、KLゼオライトならびに該KLゼオライトの上に担持された白金および改質金属を含む脱アルキル化触媒とを接触させて軽質芳香族炭化水素を得る工程を含み、ここで、前記改質金属は、第IIA族金属および希土類金属からなる群から選択される。
【0017】
本出願の方法では、C9
+芳香族炭化水素の脱アルキル化反応において、特定の改質金属を含むPt/KL触媒を使用して、軽質芳香族炭化水素を調製し、該方法は、原料の高い転換率、軽質芳香族炭化水素の高い収率、良好な反応選択性などの利点を有する。
【0018】
一態様では、本出願は、C9
+パラフィンを含む原料から軽質芳香族炭化水素を調製する方法であって、
1)C9
+パラフィン炭化水素を含む原料を、反応のために第1の反応領域で、水素の存在下で、脱水素化触媒と接触させて、前記C9
+パラフィン炭化水素の少なくとも一部を脱水素環化させてC9
+芳香族炭化水素を得、任意に、得られた生成物を分離させて、C9
+芳香族炭化水素を含むストリームを得る工程であり、
ここで、前記脱水素化触媒は、アルミナ、ならびに該アルミナの上に担持された第VIII族金属、第IVA族金属、第IA族金属およびハロゲンを含む、工程;
2)工程1)で得られたC9
+芳香族炭化水素を含むストリームを、第2の反応領域で、水素の存在下で、脱アルキル化触媒と接触させて、前記C9
+芳香族炭化水素の少なくとも一部を脱アルキル化させて軽質芳香族炭化水素を得る工程であり、
ここで、前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの上に担持された白金および改質金属を含み、前記改質金属は、第IIA族金属および希土類金属からなる群から選択される、工程
を含む、方法を提供する。
【0019】
本出願の方法では、C
9
+パラフィンを含む原料中のC
9
+パラフィンに対して、第1の反応領域で指向性脱水素環化反応を実行してC
9
+芳香族炭化水素を得、次いで、第2の反応領域でC
9
+芳香族炭化水素に対して脱アルキル化反応を実行し、それによって、C
9
+パラフィンの利用価値を向上させることによって、C
9
+パラフィンをBTXなどの軽質芳香族炭化水素に高い効率性で転換することができる。
〔図面の簡単な説明〕
本明細書の一部を形成する図面は、本出願の理解を助けるために提供されるのであって、限定するものとしてみなされるべきではない。本出願は、図面と下記の詳細な説明との組み合わせを参照して解釈することができる。図面において:
図1は、本出願の方法の好ましい実施形態の系統図である。
【0020】
〔発明の詳細な説明〕
本出願について、図面と本出願の具体的な実施形態とを参照しながら、以下に詳細にさらに説明する。本出願の具体的な実施形態は、例示して説明する目的のためのみに提供されるのであって、任意の様式で限定することを意図していないことに留意されたい。
【0021】
本出願の文脈において記載される特定の数値(数値範囲の端点を含む)は、その正確な値に限定されるものではなく、該正確な値に近い全ての値(例えば、該正確な値の±5%以内の全ての値)もさらに包含されるとみなされるべきである。さらに、本明細書に記載されるいかなる数値範囲に関して、範囲の端点間、端点と範囲内の任意の特定値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値の間で、任意の組み合わせが作られて、1つ以上の新たな数値範囲が提供され、該新たな数値範囲も、本出願に具体的に説明されているものとみなされるべきである。
【0022】
別段の記載がない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有し;本明細書で用語が定義され、それらの定義が当技術分野で一般的に理解される定義と異なる場合は、本明細書における定義が優先されるものとする。
【0023】
本出願では、用語「C9
+パラフィンまたはC9
+パラフィン炭化水素」は、9個以上の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルカンを指し、n-ノナン、2-メチルオクタン、2,3,5-トリメチルヘキサンなどが含まれるが、これらに限定されず;用語「C9
+芳香族またはC9
+芳香族炭化水素」は、9個以上の炭素原子を有する芳香族炭化水素を指し、n-プロピルベンゼン、m-メチルエチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼンなどが含まれるがこれらに限定されず;用語「C7
-パラフィンまたはC7
-パラフィン炭化水素」は、7個以下の炭素原子を有するパラフィン炭化水素を指し、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、2,3-ジメチルペンタンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本出願の文脈において、用語「軽質芳香族または軽質芳香族炭化水素」は、6~8個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を指し、ベンゼン、トルエン、キシレンの種々の異性体、エチルベンゼン、例えばBTXが含まれる。
【0025】
本出願の文脈において、用語「ナフサ」は、一般に、原油または他の炭化水素質の出発材料の処理によって得られる30℃~220℃の沸点範囲を有する種々の軽質油を指す。例えば、前記ナフサは、直留ナフサ、水素化分解重質ナフサ、水素化処理コークス化ガソリン、エチレン熱分解ガソリンのラフィネート、触媒分解ガソリン、またはそれらの2つ以上の混合物であり得る。好ましくは、前記ナフサは、6~12個の炭素原子を有するナフテン炭化水素、6~12個の炭素原子を有するパラフィン炭化水素、および6~12個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を含み、初留点が80~95℃であり、最終留点が135~180℃である。
【0026】
本出願では、特に断りのない限り、所与の圧力は絶対圧力である。
【0027】
本出願の文脈において、明示的に記載されている事項に加えて、記載されていない事項については、いかなる変更を伴わずに、当該技術分野で公知の事項と同じものとして考えられる。さらに、本明細書に記載された実施形態のいずれかを、本明細書に記載された他の1つ以上の実施形態と自由に組み合わせることができ、それによって得られる技術的解決策またはアイディアは、本出願の当初の開示または当初の説明の一部としてみなされ、当業者にとってそのような組み合わせが明らかに不合理であることが明らかでない限り、本明細書に開示されていない新規事項または予期されていない新規事項のいずれともみなされるべきではない。
【0028】
本明細書で言及されているすべての特許文献および非特許文献(教科書および学術論文を含むがこれらに限定されない)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
従来、L型分子篩は細孔のサイズが比較的小さく、その細孔チャネル内でC8
+芳香族炭化水素の生成または転換のいずれも行うことができないと考えられており、そのため、L型分子篩はC6~C7パラフィンの選択的脱水素環化のための触媒として主に使用されている。しかしながら、本出願の発明者らは、水素、ならびに白金および特定の改質金属を含むKLゼオライトベースの触媒の存在下で、側鎖アルキル基を効率的に除去することによって、C9
+芳香族炭化水素が、BTXなどの軽質芳香族炭化水素に転換され得ることを驚くべきことに見出し、本発明を完成させるに至った。
【0030】
上述したように、第1の態様において、本出願は、C9
+芳香族炭化水素から軽質芳香族炭化水素を調製する方法を提供し、該方法は、水素の存在下で、C9
+芳香族炭化水素と、KLゼオライトならびに該KLゼオライトの上に担持された白金および改質金属を含む脱アルキル化触媒とを接触させて軽質芳香族炭化水素を得る工程を含み、ここで、前記改質金属は、第IIA族金属および希土類金属からなる群から選択される。
【0031】
好ましい実施形態では、脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの上に担持され、KLゼオライトの量に対して、0.1~1.5質量%、好ましくは0.3~1.2質量%の白金、および0.02~4.0質量%、好ましくは0.1~3.0質量%の改質金属を含み、ここで、白金の含有量および改質金属の含有量は、金属換算される。さらに好ましくは、第IIA族金属は、バリウムおよびカルシウムからなる群から選択され、希土類金属は、La、Ce、Gd、Y、SmおよびYbからなる群から選択される1種以上である。特に好ましくは、KLゼオライトの平均粒径は0.1~2μmである。
【0032】
脱アルキル化触媒は、当該技術分野において慣用の方法によって調製することができる。好ましい実施形態では、脱アルキル化触媒は、KLゼオライトに、白金含有化合物ならびに第IIA族金属および/または希土類金属を含有する化合物の水溶液を含浸する工程と、次いで乾燥および焼成する工程とを含む方法によって調製することができる。白金含有化合物は、好ましくはPtカチオン含有化合物(Pt(NH3)2Cl2など)であり;前記第IIA族金属および/または希土類金属を含有する化合物は、好ましくは対応する金属の可溶性水酸化物、塩素化塩または硝酸塩、例えばBaCl2である。乾燥の温度は好ましくは、90~150℃であり、乾燥の時間は好ましくは、8~24時間であり;焼成の温度は好ましくは、300~400℃であり、焼成の時間は好ましくは、2~8時間である。
【0033】
好ましい実施形態では、脱アルキル化の条件は、温度が350~490℃、好ましくは450~480℃であり、圧力が0.1~4.0MPa、好ましくは0.1~2.0MPa、より好ましくは0.1~0.5MPaであり、C9
+芳香族炭化水素質量空間速度が1~20h-1、好ましくは1~10h-1であり、水素対C9
+芳香族炭化水素のモル比が0.5~20:1、好ましくは1~10:1であることを含む。
【0034】
さらに好ましい実施形態では、脱アルキル化反応は、1つの反応器、または直列につながれた複数(例えば2~3つ)の反応器で行われ得、好ましくは1つの反応器、または直列につながれた2つの反応器で行われ得、C9
+芳香族炭化水素の質量空間速度は1~20h-1、好ましくは1~10h-1、より好ましくは1~5h-1であり、水素対C9
+芳香族炭化水素のモル比は0.5~20:1、好ましくは1~10:1であり、ここで、複数の反応器を用いる場合の質量空間速度は、全ての反応器で使用される触媒の総量に対して算出され、水素対C9
+芳香族炭化水素のモル比は、第1の反応器の入口における水素対C9
+芳香族炭化水素のモル比を指す。
【0035】
本出願の第1の態様に係る方法は、C9
+芳香族炭化水素を含む種々の原料から軽質芳香族炭化水素を調製するのに適しており、例えば、前記原料は、含有量が20質量%以上、50質量%以上、80質量%以上、または90質量%以上のC9
+芳香族を有してもよい。
【0036】
第2の態様において、本出願は、C9
+パラフィン炭化水素を含む原料から軽質芳香族炭化水素を調製する方法であって、
1)C9
+パラフィン炭化水素を含む原料を、反応のために第1の反応領域で、水素の存在下で、脱水素化触媒と接触させて、前記C9
+パラフィン炭化水素の少なくとも一部を脱水素環化させてC9
+芳香族炭化水素を得、任意に、得られた生成物を分離して、C9
+芳香族炭化水素を含むストリームを得る工程であり、
ここで、前記脱水素化触媒は、アルミナ、ならびに該アルミナの上に担持された第VIII族金属、第IVA族金属、第IA族金属およびハロゲンを含む、工程;
2)工程1)で得られたC9
+芳香族炭化水素を含むストリームを、第2の反応領域で、水素の存在下で、脱アルキル化触媒と接触させて、前記C9
+芳香族炭化水素の少なくとも一部を脱アルキル化させて軽質芳香族炭化水素を得る工程であり、
ここで、前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの上に担持された白金および改質金属を含み、前記改質金属は、第IIA族金属および希土類金属からなる群から選択される、工程
を含む、方法を提供する。
【0037】
好ましい実施形態では、工程1)の反応条件は、温度が400~500℃、好ましくは450~480℃であり、圧力が0.1~4.0MPa、好ましくは0.1~2.0MPa、より好ましくは0.1~0.5MPaであり、C9
+パラフィン炭化水素を含む原料の質量空間速度は1~50h-1、好ましくは1~20h-1、より好ましくは1~10h-1であり、水素対炭化水素のモル比が0.5~20:1、好ましくは1~10:1であることを含む。
【0038】
特定の好ましい実施形態では、第1の反応領域は、1つの反応器、または直列につながれた複数(例えば、2~5個)の反応器、好ましくは1つの反応器、または直列につながれた2~4個の反応器を含み、第1の反応領域において、C9
+パラフィン炭化水素を含む原料の質量空間速度は、1~50h-1、好ましくは1~20h-1、より好ましくは1~10h-1であり、水素対炭化水素のモル比は、0.5~20:1、好ましくは1~10:1であり、複数の反応器を用いた場合、質量空間速度は、第1の反応領域内の全ての反応器において使用される触媒の総量に対して算出され、水素対炭化水素のモル比は、第1の反応器の入口における水素対炭化水素のモル比を指す。
【0039】
本出願によれば、工程1)は、原料中のC9
+パラフィン炭化水素を脱水素環化反応させてC9
+芳香族炭化水素を得ることができる。一方、原料中にC6~C8ナフテン炭化水素も存在する場合、工程1)は、ナフテン炭化水素を脱水素化反応させて、同じ数の炭素原子を有する軽質芳香族炭化水素に指向性転換させることができる。好ましくは、工程1)で使用される脱水素化触媒において、第VIII族金属は、白金、パラジウムおよびイリジウムからなる群から選択され、第IVA族金属は、スズ、ゲルマニウムおよびケイ素からなる群から選択され、第IA族金属は、カリウム、ナトリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択され、ハロゲンは、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される。工程1)内の反応を制御するために、酸性度の低い触媒を使用して、原料中に含まれ得るC7
-軽質アルカンの脱水素環化反応および水素化分解反応を抑制することが好ましい。好ましい実施形態では、脱水素化触媒は、アルミナ担体、ならびに該担体の量に対して0.1~2.0質量%の第VIII族金属(好ましくは白金)、0.1~2.0質量%の第IVA族金属(好ましくはスズ)、0.01~0.2質量%の第IA族金属(好ましくはカリウム)、および0.3~5質量%のハロゲン(好ましくは塩素)を含み、ここで、金属の含有量およびハロゲンの含有量は、元素ベースで算出される。
【0040】
さらに好ましい実施形態では、脱水素化触媒は、アルミナ担体の量に対して、0.1~1.0質量%の含有量の白金、0.1~1.0質量%の含有量のスズ、0.02~0.1質量%の含有量のカリウム、および0.5~1.5質量%の含有量の塩素を有する。
【0041】
好ましい実施形態では、アルミナ担体は、比表面積が120~220m2/g、より好ましくは140~190m2/gである。アルミナ担体は、棒状、球状などの種々の形状であってよく、好ましくは球状であり、球状担体の直径は、好ましくは1.5~2.0mmである。前記アルミナは、好ましくはγ-アルミナである。
【0042】
脱水素化触媒は、当該技術分野における従来の方法によって調製することができる。好ましい実施形態では、脱水素化触媒は、第IVA族金属(例えばスズ)を含有するアルミナ担体に、白金化合物および第IA族金属のハロゲン化物(例えば塩化物)を含有する水溶液を含浸させる工程、含浸させた固体を乾燥、水および塩素による活性化、ならびに還元に供して、目的の触媒を得る工程を含む方法によって調製することができる。好ましくは、白金含有化合物はクロロ白金酸である。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、上記の触媒調製方法において、含浸温度は10~50℃であり、乾燥温度は90~150℃であり、乾燥時間は好ましくは8~24時間である。前記水および塩素による活性化は、乾燥させた固体を、水分およびHClを含む空気雰囲気下で処理することにより実施され、温度は好ましくは460~540℃であり、時間は好ましくは2~12時間であり、水/HClのモル比は好ましくは10~100:1である。前記還元は、還元ガス(好ましくは水素)を使用して実施され、還元の温度は好ましくは480~520℃であり、時間は好ましくは2~12時間である。
【0044】
本出願によれば、工程2)では、側鎖アルキル基を除去することにより、工程1)の反応生成物中のC9
+芳香族炭化水素を軽質芳香族炭化水素に転換させることができる。一方、工程1)の反応生成物中にC6~C8パラフィン炭化水素が存在する場合は、工程2)では、C6~C8パラフィン炭化水素を脱水素環化反応させ、同じ数の炭素原子を有する軽質芳香族炭化水素に指向性転換させることもできる。
【0045】
好ましい実施形態では、工程2)の反応条件は、温度が350~490℃、好ましくは450~480℃であり、圧力が0.1~4.0MPa、好ましくは0.1~2.0MPa、より好ましくは0.1~0.5MPaであり、C9
+芳香族炭化水素を含むストリームの質量空間速度が1~20h-1、好ましくは1~10h-1であり、水素対炭化水素のモル比が0.5~20:1、好ましくは1~10:1であることを含む。
【0046】
さらなる好ましい実施形態では、前記第2の反応領域は、1つの反応器、または直列につながれた複数(例えば2~3つ)の反応器、好ましくは1つの反応器または直列につながれた2つの反応器を含み、該第2の反応領域において、C9
+芳香族炭化水素を含むストリームの質量空間速度は、1~20h-1、好ましくは1~10h-1、より好ましくは1~5h-1であり得、水素対炭化水素のモル比は、0.5~20:1、好ましくは1~10:1であり得、複数の反応器を用いた場合、質量空間速度は、第2の反応領域内の全ての反応器で使用される触媒の総量に対して算出され、水素対炭化水素のモル比は、第1の反応器の入口における水素対炭化水素のモル比を指す。
【0047】
好ましい実施形態では、工程2)で使用する脱アルキル化触媒の特徴は、第1の態様で上述した通りであるため、ここでは詳述しない。
【0048】
好ましい実施形態では、工程1)で使用する脱水素化触媒対工程2)で使用する脱アルキル化触媒の質量比は、1:(0.25~5)、好ましくは1:(1.2~3)である。
【0049】
本出願の方法において、工程1)および工程2)の上述の反応において、炭化水素が芳香族炭化水素に転換する反応は、吸熱反応であり、反応に必要な温度を維持するために、第1の反応領域と第2の反応領域との間、および、それぞれの反応領域内で直列につながれた反応器間に、中間加熱器を設けることが好ましい。本出願に係る方法の工程1)および2)に好適な反応器は、固定床反応器または移動床反応器であってよく、好ましくは固定床反応器である。
【0050】
本出願の方法のいくつかの好ましい実施形態では、工程1)で使用するC9
+パラフィン炭化水素を含む原料は、ナフサであり、該ナフサは例えば、直留ナフサ、水素化分解重質ナフサ、水素化処理コークス化ガソリン、エチレン熱分解ガソリンのラフィネート、触媒分解ガソリン、またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。さらに好ましい実施形態では、前記ナフサは、6~12個の炭素原子を有するナフテン炭化水素、6~12個の炭素原子を有するパラフィン炭化水素および6~12個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を含み、初留点が80~95℃であり、最終留点が135~180℃である。精留分離の精度により、前記ナフサは、通常0.5質量%以下の量で、少量のC5炭化水素を含んでいてもよい。反応生成物の最終留点がガソリン調合の要件を満たすことを確実にするためには、ナフサ中、11個超の炭素原子(C11
+)を有する炭化水素の量は、通常1質量%以下である。
【0051】
このような好ましい実施形態では、ナフサを第1の反応領域に入れ、工程1)において適度に脱水素転換反応が行われるように反応条件を制御し、そこに存在するナフテン炭化水素を脱水素化反応させて同じ数の炭素原子を有する芳香族炭化水素が生成され、およびC9
+パラフィン炭化水素を脱水素環化反応させて同じ数の炭素原子を有する芳香族炭化水素に転換させ、一方でC7
-パラフィン炭化水素は可能な限り脱水素環化または分解反応のいずれもされないようにし;その後、第1の反応領域における反応生成物を、分離することなく、直接、第2の反応領域に供給し、工程2)において、反応生成物中のC9
+芳香族炭化水素を側鎖アルキル基の除去に供して、BTXなどの軽質芳香族炭化水素に転換させ、その間に、そこに存在する未反応のC6~C8パラフィン炭化水素を脱水素環化反応させて、対応する数の炭素原子を有する芳香族炭化水素が生成される。このような好ましい実施形態の方法では、指向性反応により、ナフサ中のパラフィン炭化水素を、より効率的に芳香族炭化水素に転換させ、およびC9
+芳香族炭化水素を脱アルキル化させてBTXなどの軽質芳香族炭化水素が生成され、それによって軽質芳香族炭化水素の収率を高めることができる。
【0052】
このような好ましい実施形態では、工程1)は主に、脱水素転換プロセス中で、ナフサ中のより反応性があるナフテン炭化水素を脱水素化させることにより、ナフサの脱水素転換を行って、芳香族炭化水素を形成させ、かつ、パラフィン炭化水素の転換を制御することによって、比較的より反応性があるC9
+パラフィン炭化水素を脱水素環化反応させ、一方でC7
-パラフィン炭化水素は可能な限り転換されないようにするために使用される。工程1)の脱水素転換プロセス中、C7
-パラフィン炭化水素の転換を制御し、さらに軽質炭化水素の分解反応も制御することにより、C6~C8パラフィンの含有量が維持されて、最終反応生成物中の軽質芳香族炭化水素の含有量が増加する。
【0053】
いくつかのさらに好ましい実施形態では、第1の反応領域に送られる前に、ナフサを水素化精製処理に供して、ヒ素、鉛、銅、硫黄および窒素などの不純物を該ナフサから除去し、水素化処理後のナフサは、通常、オレフィンを含まない。
【0054】
いくつかのさらに好ましい実施形態では、工程1)において、ナフサ中のナフテン炭化水素の転換率は90質量%以上、ナフサ中のC9
+パラフィ炭化水素の転換率は70~95質量%以上となるように制御される。好ましくは、このような制御は、反応温度もしくはナフサの供給質量空間速度などを調整する等、適切な反応条件を選択すること、または脱水素化触媒中のカリウムなどの第IA族金属の含有量を変更して、脱水素化触媒の反応選択性を調整することなどにより、達成することができる。
【0055】
さらなる好ましい実施形態では、工程1)において、ナフサ中のナフテン炭化水素の転換率は90質量%以上となるように制御され、ここで、C7ナフテン炭化水素の転換率およびC8ナフテン炭化水素の転換率の両方は95質量%以上であり、C6ナフテン炭化水素の転換率は70質量%以上である。好ましくは、前記制御は、適切な反応温度または適切なナフサの供給空間速度などを選択することによって達成することができる。
【0056】
さらなる好ましい実施形態では、工程1)において、ナフサ中のパラフィン炭化水素の転換率は60質量%以下となるように制御され、ここで、C6パラフィン炭化水素の転換率は18質量%以下であり、C7パラフィン炭化水素の転換率は30質量%以下であり、C8パラフィン炭化水素の転換率は70質量%以下であり、C9
+パラフィン炭化水素の転換率は70~95質量%である。好ましくは、前記制御は、脱水素化触媒中の第IA族金属(カリウムなど)の含有量を変更して、脱水素環化反応選択性を調整することなどにより、達成することができる。
【0057】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態についてさらに説明する。
【0058】
図1は、本出願の方法の好ましい実施形態の系統図である。
図1に示すように、予備水素化精製されたナフサは、パイプライン102から導入された水素(循環式水素圧縮機により加圧されている)と、パイプライン101を介して混合され、次いで、供給熱交換器103に移され、ここでは、パイプライン112を介して第2の反応領域から送られた反応生成物との熱交換が行われ、さらに、パイプライン104を介して、供給加熱器105に移され;加熱された後、混合物は、脱水素化触媒の存在下における反応のためにパイプライン106を通して第1の反応領域107に移され、ここでは、ナフサ中のナフテン炭化水素が脱水素化されて芳香族炭化水素に転換され、C
9
+パラフィン炭化水素が脱水素環化されてC
9
+芳香族炭化水素が生成される。第1の反応領域107の反応生成物は、パイプライン108を通して中間加熱器109に移され、加熱され、次いで、脱アルキル基触媒の存在下での反応のためにパイプライン100を通して第2の反応領域111に送られ、ここでは、C
9
+芳香族炭化水素の側鎖アルキル基が除去されて軽質芳香族炭化水素(BTXなど)が生成され、C
6~C
8パラフィン炭化水素が脱水素環化されて軽質芳香族炭化水素が生成される。第2の反応領域の反応生成物は、パイプライン112を通して、供給熱交換器103に移され、ナフサと熱交換することによって冷却され、次いで、パイプライン113を通って気液分離器114に移され、気液分離される。分離された液相は、パイプライン117から排出され、生成物再接触分離部に移されて、軽質芳香族生成物が生成され;分離された気相は、2つの部分に分けられ、一方はパイプライン115を通して循環式水素圧縮機の入口へ送られ、加圧された後、パイプライン102を通してパイプライン101からのナフサ原料と混合させられ、他方はパイプライン116から排出され、圧縮機により加圧された後、再接触タンク(図示せず)へ移され、パイプライン117からの液相と混合および冷却され、気液平衡フラッシュ蒸発による分離に再び供され、気相中の炭化水素の大部分は液相に凝縮され、次いで、気相は水素生成物として系から排出される。
【0059】
簡略化のために、本出願の方法の上述の好ましい実施形態において使用される他の装置(ナフサ供給ポンプ、反応生成物のための空気冷却器、気液分離器のボトムポンプなど)は、
図1に示されていない。
【0060】
いくつかの好ましい実施形態では、本出願は以下の技術的解決策を提供する:
1.ナフサから軽質芳香族炭化水素を調製する方法であって、
(1)ナフサを第1の反応領域に供給し、脱水素化触媒と接触させて脱水素転換反応を行い、ナフサ中のナフテン炭化水素の転換率が90質量%以上、C9
+パラフィン炭化水素の転換率が70~95質量%となるようにする工程、
(2)第1の反応領域の反応生成物を第2の反応領域に供給し、脱アルキル化触媒と接触させて、C9
+芳香族炭化水素を脱アルキル化反応させ、C6~C8パラフィンを脱水素環化反応させて、軽質芳香族炭化水素を得る工程
を含む、方法。
【0061】
2.工程(1)において、ナフサ中に存在するナフテン炭化水素の脱水素化反応における転換率が90質量%以上であり、ここで、脱水素化反応におけるC7ナフテン炭化水素の転換率およびC8ナフテン炭化水素の転換率の両方が95質量%以上であり、脱水素化反応におけるC6ナフテン炭化水素の転換率が70質量%以上である、項目1に記載の方法。
【0062】
3.工程(1)において、脱水素環化反応におけるパラフィン炭化水素の転換率が60質量%以下であり、ここで、C6パラフィン炭化水素の転換率が18質量%以下であり、C7パラフィン炭化水素の転換率が30質量%以下であり、C8パラフィン炭化水素の転換率が70質量%以下である、項目1に記載の方法。
【0063】
4.工程(1)で使用される脱水素化触媒が、アルミナ担体、ならびに該担体の量に対して、0.1~2.0質量%の白金、0.1~2.0質量%のスズ、0.01~0.2質量%の第IA族金属、および0.3~5質量%の塩素を含む、項目1に記載の方法。
【0064】
5.前記アルミナがγ-アルミナであり、前記第IA族金属がカリウムである、項目4に記載の方法。
【0065】
6.工程(1)の脱水素転換反応が400~500℃の温度、および0.1~4.0MPaの圧力で実施される、項目1に記載の方法。
【0066】
7.工程(1)に関与する脱水素転換反応領域が、直列につながれた1~5個の反応器を含み、脱水素転換反応領域に供給されるナフサの質量空間速度が1~50h-1であり、脱水素転換反応領域における水素対炭化水素のモル比が0.5~20:1である、項目1または6に記載の方法。
【0067】
8.工程(2)で使用される脱アルキル化触媒が、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの上に担持され、KLゼオライトの量に対して、0.1~1.5質量%の白金、および0.02~4.0質量%の第IIA族金属を含む、項目1に記載の方法。
【0068】
9.前記第IIA族金属が、バリウムまたはカルシウムである、項目8に記載の方法。
【0069】
10.工程(2)に関与する第2の反応領域において、温度が350~490℃であり、圧力が0.1~4.0MPaである、項目1に記載の方法。
【0070】
11.工程(2)に関与する第2の反応領域が、直列につながれた1~3個の反応器を含み、第1の反応領域から第2の反応領域に入る反応生成物の質量空間速度が1~20h-1であり、第2の反応領域の水素対炭化水素のモル比が0.5~20:1である、項目1または10に記載の方法。
【0071】
12.前記脱水素化触媒対脱アルキル化触媒の質量比が、1:(0.25~5)である、項目1に記載の方法。
【0072】
〔実施例〕
ここで、本出願について、以下の実施例を参照してさらに説明するが、本出願はそれらに限定されるものではない。
【0073】
触媒調製の実施例
実施例I-1
本実施例は、本出願で使用される脱水素化触媒の調製を示す。
【0074】
(1)スズが均一に分布したスズ含有γ-Al2O3ペレットの調製
100gの水酸化アルミニウム粉末(ドイツのSasol社製、商用名SB、アルミナ含有量72質量%)と適量の脱イオン水とを撹拌してスラリー化させ、液体/固体質量比が2.0のスラリーを得た。前記スラリーに、体積比1:1の希硝酸7.5ml、尿素30gおよび事前に決定された量のSnCl2塩酸溶液を添加して、乾燥重量のアルミナに対して溶液中のSnの含有量が0.30質量%となるようにし、1時間攪拌した。ケロセン30gおよび脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテル3gを添加し、得られたものを1時間撹拌し、オイル-アンモニアのカラム中で液滴形成に供した。前記液滴をアンモニア中で1時間硬化させた後、濾過し、脱イオン水で2~3回洗浄し、60℃で6時間乾燥させ、120℃で10時間乾燥させ、空気中で680℃で4時間焼成し(焼成雰囲気中の水分の含有量は15体積%である)、平均直径1.62mm、BET法で測定した比表面積が165m2/gのSn含有γ-Al2O3ペレット担体を得た。
【0075】
(2)ターゲット触媒の調製
クロロ白金酸0.5882g、塩化カリウム0.1526g、濃度37質量%の塩酸5.40g、および脱イオン水175gを用いて、乾燥重量のアルミナ担体に対してHClの含有量が2.0質量%になるように、溶液を調製した。25℃で4時間、液体/固体比1.8mL/gで、工程(1)で得られたSn含有γ-Al2O3ペレット担体に上記で得られた溶液を含浸液として含浸させた。含浸後、ロータリーエバポレーターを用いて含浸系を乾燥のために蒸発させ、得られた固体を120℃で12時間乾燥させ、510℃で4時間、水および塩素を用いて活性化させ(活性化のために使用した空気中、水対HClのモル比は40:1であった)、得られたものを500℃で4時間、水素を用いて還元させ、脱水素化触媒Aを得た。
【0076】
触媒Aは、アルミナ担体の量に対して0.27質量%のPt、0.30質量%のSn、0.08質量%のK、1.0質量%のClを成分として含み、各元素の含有量は、X線蛍光分析法により測定される。
【0077】
実施例I-2
本実施例は、本出願で使用されるPt-Ba/KL脱アルキル化触媒の調製を示す。
【0078】
(1)KLゼオライトの合成のためのテンプレート剤の調製
Al(OH)3(中国アルミニウム株式会社製、商用名H-WF-10、以下同じ)12.08gを、KOH(純度85.7質量%、以下同じ)77.57gを含む溶液264.12mlに加え、混合物を加熱により溶解させてアルミニウムゾルを得た。前記アルミニウムゾルを、撹拌下で、50℃に予熱したシリカゾル(SiO2の含有量30質量%、pH値9、以下同じ)435.6gに添加し、0.5時間撹拌して白色ゲルを形成させ、該白色ゲルを30℃で72時間熟成させて、半透明ゾルをターゲットのテンプレート剤として得、該テンプレート剤の各成分間のモル比はK2O:Al2O3:SiO2:H2O=7.9:1:29:430であった。
【0079】
(2)KLゼオライト担体の調製
107gのAl(OH)3を、210gのKOHを含む溶液1100mLに加え、加熱によって溶解してアルミニウムゾルを得た。得られたアルミニウムゾルと工程(1)で得られたテンプレート剤とを、撹拌下で、シリカゾル1200mLを含む反応器に添加し(テンプレート剤に含有されるAl2O3対テンプレート剤以外の材料に含有されるAl2O3のモル比は、5:95であった)、得られたものを0.5時間撹拌し、白色ゲルの反応混合物を得、該反応混合物のそれらの成分間のモル比はK2O:Al2O3:SiO2:H2O=2.68:1:10:178であった。
【0080】
白色ゲルを撹拌下で150℃まで加熱し、次いで撹拌を停止して、得られたものを72時間静置結晶化に供し、得られた結晶化生成物を40℃まで急冷し、遠心分離によって分離させ、上部液を取出し、液相のpH値が9~10になるまで固体を脱イオン水で洗浄し、得られた固体を120℃で10時間乾燥させてKLゼオライトを得、該KLゼオライトのそれらの成分のモル比はK2O:Al2O3:SiO2=1.2:1:5.6であり、平均粒径は0.3~1.2μmであった。
(3)Pt-Ba/KL触媒の調製
1.54gのPt(NH3)2Cl2および1.52gのBaCl2を150gの脱イオン水に溶解させ、完全かつ均一に撹拌して含浸溶液を得た。上記の含浸溶液を工程(2)で得られたKLゼオライト担体100gに添加し、6時間含浸させた後、乾燥のためにロータリーエバポレートさせ、得られた固体を120℃で12時間乾燥させ、空気中で350℃で4時間焼成して、触媒BとしてPt-Ba/KLゼオライトを得た。触媒Bは、KLゼオライトの量に対して、1.0質量%の含有量のPt、および1.0質量%の含有量のBaを有する。
【0081】
実施例I-3
本実施例は、本出願で使用されるPt-Ca/KL脱アルキル化触媒の調製を示す。
【0082】
1.54gのPt(NH3)2Cl2および2.78gのCaCl2を150gの脱イオン水に溶解させ、完全かつ均一に撹拌して含浸溶液を得た。上記の含浸溶液を、実施例I-2で得られたKLゼオライト担体100gに添加し、6時間含浸させた後、乾燥のためにロータリーエバポレートさせ、得られた固体を120℃で12時間乾燥させ、空気中で350℃で4時間焼成して、触媒B1としてPt-Ca/KLゼオライトを得た。触媒B1は、KLゼオライトの量に対して、1.0質量%の含有量のPt、および1.0質量%の含有量のCaを有する。
【0083】
実施例I-4
本実施例は、本出願で使用されるPt-La/KL脱アルキル化触媒の調製を示す。
【0084】
1.54gのPt(NH3)2Cl2および1.77gのLaCl3を150gの脱イオン水に溶解させ、完全かつ均一に撹拌して含浸溶液を得た。上記の含浸溶液を、実施例I-2で得られたKLゼオライト担体100gに添加し、6時間含浸させた後、乾燥のためにロータリーエバポレートさせ、得られた固体を120℃で12時間乾燥させ、空気中で350℃で4時間焼成して、触媒B2としてPt-La/KLゼオライトを得た。触媒B2は、KLゼオライトの量に対して、1.0質量%の含有量のPt、および1.0質量%の含有量のLaを有する。
【0085】
実施例I-5
本実施例は、本出願で使用されるPt-Ce/KL脱アルキル化触媒の調製を示す。
【0086】
1.54gのPt(NH3)2Cl2および1.76gのCeCl3を150gの脱イオン水に溶解させ、完全かつ均一に撹拌して含浸溶液を得た。上記の含浸溶液を、実施例I-2で得られたKLゼオライト担体100gに添加し、6時間含浸させた後、乾燥のためにロータリーエバポレートさせ、得られた固体を120℃で12時間乾燥させ、空気中で350℃で4時間焼成して、触媒B3としてPt-Ce/KLゼオライトを得た。触媒B3は、KLゼオライトの量に対して、1.0質量%の含有量のPt、および1.0質量%の含有量のCeを有する。
【0087】
実施例I-6
本実施例は、本出願で使用されるPt-Yb/KL脱アルキル化触媒の調製を示す。
【0088】
1.54gのPt(NH3)2Cl2および1.62gのYbCl3を150gの脱イオン水に溶解させ、完全かつ均一に撹拌して含浸溶液を得た。上記の含浸溶液を、実施例I-2で得られたKLゼオライト担体100gに添加し、6時間含浸させた後、乾燥のためにロータリーエバポレートさせ、得られた固体を120℃で12時間乾燥させ、空気中で350℃で4時間焼成し、触媒B4としてPt-Yb/KLゼオライトを得た。触媒B4は、KLゼオライトの量に対して、1.0質量%の含有量のPt、および1.0質量%の含有量のYbを有する。
【0089】
実施例I-7
この実施例は、本出願で使用される別のPt-Ba/KL脱アルキル化触媒の調製を示す。
【0090】
1.26gのPt(NH3)2Cl2および1.52gのBaCl2を150gの脱イオン水に溶解させ、完全かつ均一に撹拌して含浸溶液を得た。上記の含浸溶液を、実施例I-2で得られたKLゼオライト担体100gに添加し、6時間含浸させた後、乾燥のためにロータリーエバポレートさせ、得られた固体を120℃で12時間乾燥させ、空気中で350℃で4時間焼成して、触媒B5としてPt-Ba/KLゼオライトを得た。触媒B5は、KLゼオライトの量に対して、0.82質量%の含有量のPt、および1.0質量%の含有量のBaを有する。
【0091】
実施例I-8
本実施例は、本出願で使用される別のPt-Ba/KL脱アルキル化触媒の調製を示す。
【0092】
0.62gのPt(NH3)2Cl2および0.30gのBaCl2を150gの脱イオン水に溶解させ、完全かつ均一に撹拌して含浸溶液を得た。上記の含浸溶液を、実施例I-2で得られたKLゼオライト担体100gに添加し、6時間含浸させた後、乾燥のためにロータリーエバポレートさせ、得られた固体を120℃で12時間乾燥させ、空気中で350℃で4時間焼成して、触媒B6としてPt-Ba/KLゼオライトを得た。触媒B6は、KLゼオライトの量に対して、0.4質量%の含有量のPt、および0.2質量%の含有量のBaを有する。
【0093】
比較例I-1
本比較例は、本出願で使用されるPt/KLゼオライト触媒とは異なる、Pt/KLゼオライト触媒の調製を示す。
【0094】
実施例I-2の工程(2)で得られたKLゼオライト粉末90gを、非晶質シリカ粉末10gと均一に混合させ、適量の水酸化ナトリウム水溶液をそれに加えて、混錬し、水分含有量が40質量%になるようにし、次いで混合物を押出し機で押出して、400℃で焼成し、成形されたKLゼオライト担体を得た。
【0095】
1.14gのPt(NH3)2Cl2を150gの脱イオン水に溶解させ、完全かつ均一に撹拌して含浸溶液を得た。上記の含浸溶液を成形されたKLゼオライト担体に添加し、6時間含浸させた後、乾燥のためにロータリーエバポレートさせ、得られた固体を120℃で12時間乾燥させ、空気中で350℃で4時間焼成して、触媒RとしてPt/KLゼオライトを得た。触媒Rは、KLゼオライトの量に対して、0.82質量%の含有量のPtを有する。
【0096】
比較例I-2
本比較例は、本出願で使用されるPt/KLゼオライト触媒とは異なる、Pt/KLゼオライト触媒の調製を示す。
【0097】
工程(3)で使用した含浸溶液がBaCl2を含有していないこと以外、実施例I-2で説明するようにPt/KLゼオライト触媒を調製し、得られたPt/KLゼオライトは触媒R1とした。触媒R1は、KLゼオライトの量に対して、1.0質量%の含有量のPtを有する。
【0098】
比較例I-3
本比較例は、本出願で使用されるPt/KLゼオライト触媒とは異なる、Pt/KLゼオライト触媒の調製を示す。
【0099】
使用した含浸溶液がBaCl2を含有していないこと以外、実施例I-8で説明するようにPt/KLゼオライト触媒を調製し、得られたPt/KLゼオライトは触媒R2とした。触媒R2は、KLゼオライトの量に対して、0.4質量%の含有量のPtを有する。
【0100】
適用実施例
実施例II-1
本実施例は、本出願の第1の態様に係る方法の適用を示す。
【0101】
実施例I-2で得られた触媒B30gを固定床反応器に入れ、C9
+芳香族炭化水素を原料として使用して脱アルキル化反応を行った。使用したC9
+芳香族炭化水素は、従来の改質物を精留することによって得られ、その性質および組成を表II-1およびII-2に示す。本実施例で使用される、反応温度、圧力、質量空間速度、および水素対炭化水素のモル比、ならびに反応結果を表II-3に示す。
【0102】
【0103】
【0104】
実施例II-2
反応器に実施例I-3で得られた触媒B1をチャージしたこと以外、実施例II-1で説明するように実験を実施し、反応条件および結果を表II-3に示す。
【0105】
実施例II-3
反応器に実施例I-4で得られた触媒B2をチャージしたこと以外、実施例II-1で説明するように実験を実施し、反応条件および結果を表II-3に示す。
【0106】
実施例II-4
反応器に実施例I-8で得られた触媒B6をチャージしたこと以外、実施例II-1で説明するように実験を実施し、反応条件および結果を表II-3に示す。
【0107】
比較例II-1
本比較例は、本出願のKLゼオライト触媒以外のKLゼオライト触媒を使用して得られる結果を示す。
【0108】
反応器に比較例I-2で得られた触媒R1をチャージしたこと以外、実施例II-1で説明するように実験を実施し、反応条件および結果を表II-3に示す。
【0109】
比較例II-2
本比較例は、本出願のKLゼオライト触媒以外のKLゼオライト触媒を使用して得られる結果を示す。
【0110】
反応器に比較例I-3で得られた触媒R2をチャージしたこと以外、実施例II-1で説明するように実験を実施し、反応条件および結果を表II-3に示す。
【0111】
【0112】
表II-3に挙げられる結果から分かるように、脱アルキル化反応は、C9
+芳香族炭化水素(原料)と、同じ含有量のPtを有する触媒とを使用する本出願の方法にしたがって実施され、触媒B、B1およびB2を使用した実施例II-1~II-3の全てにおいて、比較例II-1よりも、原料の高い転換率、ならびに軽質芳香族炭化水素の高い収率および選択性が示され、それゆえ、C9
+芳香族炭化水素を軽質芳香族炭化水素に可能な限り転換させるという目的が達成され;触媒B6を使用した実施例II-4においてもまた、比較例II-2よりも、原料の改善された転換率、ならびに軽質芳香族炭化水素の改善された収率および選択性が示された。
【0113】
実施例III-1~III-3
これらの実施例は、本出願の第2の態様に係る方法の工程1)の適用を示す。
【0114】
小型固定床反応器に実施例I-1で得られた触媒Aを15gチャージし、異なる反応条件下でナフサの脱水素転換反応を行った。使用したナフサの性質および組成を表III-1および表III-2に示し、各実施例の反応条件および結果を表III-3に示す。
【0115】
【0116】
【0117】
比較例III-1
本比較例は、従来の連続改質技術の結果を示す。
【0118】
小型固定床反応器に15gの改質触媒C(Hunan Jianchang Petrochemical Co., Ltd製、商用名RC011)をチャージした。表III-1およびIII-2に挙げられている性質および組成を有するナフサを、触媒改質のために反応器に移した。改質触媒Cは、γ-Al2O3ペレットの担体を含み、該担体の量に対して、0.28質量%の含有量のPt、0.31質量%の含有量のSn、および1.10質量%の含有量の塩素を有する。本比較例で使用される反応温度、圧力、質量空間速度、および水素対炭化水素のモル比、ならびに反応結果を表III-3およびIII-4に示す。
【0119】
【0120】
表III-3に挙げられる結果から分かるように、本出願の方法の工程1)においてナフサを脱水素転換反応に供することにより、90質量%超のナフテン炭化水素の合計転換率、70質量%超95質量%未満のC9
+パラフィン炭化水素の転換率、および28質量%未満のC7
-パラフィン炭化水素の転換率が生成物において得られ、このことは、ナフサにおいて、ナフテン炭化水素が実質的に脱水素化され、かつ、C9
+パラフィン炭化水素が脱水素環化されて同じ数の炭素原子を有する芳香族炭化水素に直接的に転換され、一方で、C7
-パラフィン炭化水素の脱水素環化反応および分解反応は防がれることを示している。
【0121】
実施例III-4~III-7
これらの実施例は、本出願の第2の態様に係る方法の適用を示す。
【0122】
図1に示されるスキームに沿って、表III-1および表III-2に示される性質および組成を有するナフサを、反応を実行するための原料として使用した。
【0123】
第1の反応領域107で使用される固定床反応器aに、実施例I-1で得られた触媒Aを15gチャージし、第2の反応領域111で使用される固定床反応器bに、実施例I-2で得られた触媒Bを30gチャージし、ナフサを固定床反応器aに供給して脱水素転換反応を実行し、得られた生成物をさらなる反応のために固定床反応器bに供給した。実施例の反応条件および結果を、表III-4に示す。
【0124】
実施例III-8
本実施例は、本出願の第1の態様に係る方法をナフサの処理に適用した結果を示す。
【0125】
小型固定床反応器に、実施例I-2で得られた触媒Bを30gチャージし、表III-1およびIII-2に示される性質および組成を有するナフサを、反応のために該反応器に供給した。反応条件および結果を表III-4に示す。
【0126】
【0127】
表III-4に挙げられる結果から分かるように、比較例III-1の既存の連続改質プロセスと比較して、本出願の第2の態様に係る方法では、直列につながれた2つの反応領域、すなわち、第1の反応領域および第2の反応領域において、ナフサを転換反応に供することにより、軽質芳香族炭化水素の収率は大幅に増加し、C9
+芳香族炭化水素の収率は大幅に減少し、それによって、ナフサから軽質芳香族炭化水素を可能な限り生成させるという目的が達成され、さらに得られた気体はかなりの量の水素を含む。
【0128】
それと同時に、比較例III-1の既存の連続改質プロセスと比較して、本出願の第1の態様に係る方法を使用した実施例III-8では、軽質芳香族炭化水素の収率は大幅に増加し、C9
+芳香族炭化水素の収率は大幅に減少し、それゆえ、ナフサから軽質芳香族炭化水素を可能な限り生成させるという目的もまた達成され、得られた気体はさらにかなりの量の水素を含む。実施例III-5~III-7の結果と、実施例III-8の結果とを比較することによって、脱アルキル化の工程2)に先立って脱水素化の工程1)を設けることにより、軽質芳香族炭化水素の収率がさらに改善され、C9
+芳香族炭化水素の収率がさらに減少することがわかる。
【0129】
さらに、表III-3の結果とIII-4の結果との比較からわかるように、脱水素化の工程1)の後に脱アルキル化の工程2)を設けることにより、軽質芳香族炭化水素の収率が大幅に改善され、C9
+芳香族炭化水素の収率が大幅に減少され得る。
【0130】
実施例III-9
本実施例は、本出願の第2の態様に係る方法の適用を示す。
【0131】
図1に示されるスキームに沿って、表III-1および表III-2に示される性質および組成を有するナフサを、反応を実行するための原料として使用した。
【0132】
第1の反応領域107で使用される固定床反応器aに、実施例I-1で得られた触媒Aを15gチャージし、第2の反応領域111で使用される固定床反応器bに実施例I-3で得られた触媒B1を30gチャージし、ナフサを固定床反応器aに供給して、実施例III-4の反応条件下で脱水素化反応を実行し、さらなる反応のために得られた生成物を固定床反応器bに供給した。本実施例の反応条件および結果を、表III-5に示す。
【0133】
実施例III-10
実施例I-4で得られた触媒B2を反応器bにチャージしたこと以外、実施例III-9で説明するように実験を実施した。本実施例の反応条件および結果を表III-5に示す。
【0134】
実施例III-11
実施例I-5で得られた触媒B3を反応器bにチャージしたこと以外、実施例III-9で説明するように実験を実施した。本実施例の反応条件および結果を表III-5に示す。
【0135】
実施例III-12
実施例I-6で得られた触媒B4を反応器bにチャージしたこと以外、実施例III-9で説明するように実験を実施した。本実施例の反応条件および結果を表III-5に示す。
【0136】
実施例III-13
実施例I-7で得られた触媒B5を反応器bにチャージしたこと以外、実施例III-9で説明するように実験を実施した。本実施例の反応条件および結果を表III-5に示す。
【0137】
比較例III-2
本比較例は、本出願のKLゼオライト触媒以外のKLゼオライト触媒を使用して得られた結果を示す。
【0138】
比較例I-1で得られた触媒Rを反応器bにチャージしたこと以外、実施例III-9で説明するように実験を実施した。本比較例の反応条件および結果を表III-5に示す。
【0139】
【0140】
表III-5の結果と表III-4の結果との比較により、実施例III-9~III-13の軽質芳香族炭化水素の収率は、比較例III-1の既存の連続改質プロセスよりも有意に高く、それゆえ、ナフサから可能な限り軽質芳香族炭化水素を生成させるという目的が達成されていることがわかる。実施例III-5と比較して、実施例III-9~III-12では、脱アルキル化触媒(触媒B)中のBaを、Ca、La、CeおよびYbに置き換えること(それぞれ、触媒B1、B2、B3およびB4に相当)により、生成物中に同等の軽質芳香族炭化水素の収率および芳香族炭化水素の合計収率が提供され;実施例III-13において、脱アルキル化触媒中のPtの含有量を1.0質量%(触媒B)から0.82質量%(触媒B5)に調整することは、軽質芳香族炭化水素の収率、および芳香族炭化水素の合計収率を減少させるが、該軽質芳香族炭化水素の収率、および該芳香族炭化水素の合計収率は、0.82質量%の含有量のPtを有し、改質金属を添加することなく、ケイ素を用いた結合によって形成された、KLゼオライト触媒(触媒R)を使用した比較例III-2において得られる軽質芳香族炭化水素の収率、および芳香族炭化水素の合計収率よりも依然として高い。
【0141】
本出願について、好ましい実施形態を参照しながら、上記で詳細に説明したが、それらの実施形態に限定されることを意図していない。本出願の発明思想に沿って種々の変更を実行することができ、これらの変更は、本出願の範囲内とされるべきである。
【0142】
また、上記の実施形態にて説明された種々の技術的特徴は、矛盾することなく任意の適切な方法で組み合わされ得、不要な繰り返しを避けるために、種々の可能な組み合わせについて本出願では説明されていないが、そのような組み合わせもまた本出願の範囲内であるべきことに留意されたい。
【0143】
さらに、本出願の種々の実施形態は、組み合わせることで本出願の思想から逸脱しない限りは、任意に組み合わせることができ、そのような組み合わされた実施形態は、本出願に開示されているものとしてみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【
図1】
図1は、本出願の方法の好ましい実施形態の系統図である。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C
9
+芳香族炭化水素から軽質芳香族炭化水素を調製する方法であって、
水素の存在下で、C
9
+芳香族炭化水素と脱アルキル化触媒とを接触させて脱アルキル化反応を実行し、軽質芳香族炭化水素を得る工程を含み、
前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの上に担持された白金および改質金属を含み、
前記改質金属は、第IIA族金属および希土類金属からなる群から選択される、
方法。
【請求項2】
前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの量に対して、0.1~1.5質量%、好ましくは0.3~1.2質量%の白金、および0.02~4.0質量%、好ましくは0.1~3.0質量%の前記改質金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱アルキル化触媒が、以下の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項1または2に記載の方法:
前記第IIA族金属が、バリウムおよびカルシウムからなる群から選択されること;
前記希土類金属が、La、Ce、Gd、Y、SmおよびYbからなる群から選択されること;および/または、
前記KLゼオライトの平均粒径が、0.1~2μmであること。
【請求項4】
前記脱アルキル化反応の条件が、温度が350~490℃、好ましくは450~480℃であり、圧力が0.1~4.0MPa、好ましくは0.1~2.0MPa、より好ましくは0.1~0.5MPaであり、C
9
+芳香族炭化水素の質量空間速度が1~20h
-1、好ましくは1~10h
-1であり、水素対C
9
+芳香族炭化水素のモル比が0.5~20:1、好ましくは1~10:1であることを含む、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項5】
C
9
+パラフィン炭化水素を含む原料から軽質芳香族炭化水素を調製する方法であって、
1)C
9
+パラフィン炭化水素を含む原料を、反応のために第1の反応領域で、水素の存在下で、脱水素化触媒と接触させて、前記C
9
+パラフィン炭化水素の少なくとも一部を脱水素環化させてC
9
+芳香族炭化水素を得、任意に、得られた生成物を分離させて、C
9
+芳香族炭化水素を含むストリームを得る工程であり、
ここで、前記脱水素化触媒は、アルミナ、ならびに該アルミナの上に担持された第VIII族金属、第IVA族金属、第IA族金属およびハロゲンを含む、工程;
2)工程1)で得られたC
9
+芳香族炭化水素を含むストリームを、第2の反応領域で、水素の存在下で、脱アルキル化触媒と接触させて、前記C
9
+芳香族炭化水素の少なくとも一部を脱アルキル化させて軽質芳香族炭化水素を得る工程であり、
ここで、前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの上に担持された白金および改質金属を含み、前記改質金属は、第IIA族金属および希土類金属からなる群から選択される、工程
を含む、方法。
【請求項6】
工程2)の前記脱アルキル化触媒は、KLゼオライト、ならびに該KLゼオライトの量に対して、0.1~1.5質量%、好ましくは0.3~1.2質量%の白金、および0.02~4.0質量%、好ましくは0.1~3.0質量%の前記改質金属を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記脱アルキル化触媒が、以下の特徴のうちの1つ以上を有する、請求項5または6に記載の方法:
前記第IIA族金属が、バリウムおよびカルシウムからなる群から選択されること;
前記希土類金属が、La、Ce、Gd、Y、SmおよびYbからなる群から選択されること;および/または
前記KLゼオライトの平均粒径が、0.1~2μmであること。
【請求項8】
工程1)で使用される脱水素化触媒において、前記第VIII族金属が、白金、パラジウムおよびイリジウムからなる群から選択され、前記第IVA族金属が、スズ、ゲルマニウムおよびケイ素からなる群から選択され、前記第IA族金属が、カリウム、ナトリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選択され、前記ハロゲンが、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素からなる群から選択され;
好ましくは、工程1)において使用される前記脱水素化触媒が、アルミナ担体、ならびに該アルミナ担体の量に対して、0.1~2.0質量%、好ましくは0.1~1.0質量%の白金などの第VIII族金属、0.1~2.0質量%、好ましくは0.1~1.0質量%のスズなどの第IVA族金属、0.01~0.2質量%、好ましくは0.02~0.1質量%のカリウムなどの第IA族金属、および0.3~5質量%、好ましくは0.5~1.5質量%の塩素などのハロゲンを含む、
請求項
5または6に記載の方法。
【請求項9】
前記アルミナ担体が、γ-アルミナ担体であり、好ましくは、アルミナ担体の量に対して、前記脱水素化触媒の白金含有量が0.1~1.0質量%であり、スズ含有量が0.1~1.0質量%であり、カリウム含有量が0.02~0.1質量%であり、塩素含有量が0.5~1.5質量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程1)の反応条件が、反応温度が400~500℃、好ましくは450~480℃であり、反応圧力が0.1~4.0MPa、好ましくは0.1~2.0MPa、より好ましくは0.1~0.5MPaであり、前記C
9
+パラフィン炭化水素を含む原料の質量空間速度が1~50h
-1、好ましくは1~20h
-1、より好ましくは1~10h
-1であり、水素対炭化水素のモル比が0.5~20:1、好ましくは1~10:1であることを含む、請求項
5または6に記載の方法。
【請求項11】
工程2)の反応条件が、温度が350~490℃、好ましくは450~480℃であり、圧力が0.1~4.0MPa、好ましくは0.1~2.0MPa、より好ましくは0.1~0.5MPaであり、前記C
9
+芳香族炭化水素を含むストリームの質量空間速度が1~20h
-1、好ましくは1~10h
-1であり、水素対炭化水素のモル比が0.5~20:1、好ましくは1~10:1であることを含む、請求項
5または6に記載の方法。
【請求項12】
工程1)で使用される前記脱水素化触媒対工程2)で使用される前記脱アルキル化触媒の質量比が、1:(0.25~5)、好ましくは1:(1.2~3)である、請求項
5または6に記載の方法。
【請求項13】
前記C
9
+パラフィン炭化水素を含む原料はナフサであり、好ましくは、前記ナフサは直留ナフサ、水素化分解重質ナフサ、水素化処理コークス化ガソリン、エチレン熱分解ガソリンのラフィネート、触媒分解ガソリン、およびそれらの混合物からなる群から選択され、さらに好ましくは、前記ナフサは、6~12個の炭素原子を有するナフテン炭化水素、6~12個の炭素原子を有するパラフィン炭化水素および6~12個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を含み、初留点が80~95℃であり、最終留点が135~180℃である、請求項
5または6に記載の方法。
【請求項14】
工程1)の前に、前記ナフサを水素化精製処理に供して、該ナフサ中に含まれるヒ素、鉛、銅、硫黄および窒素の不純物を除去する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程1)の反応が、前記ナフサ中のナフテン炭化水素の転換率が90質量%以上となり、C
9
+パラフィン炭化水素の転換率が70~95質量%となるように制御される、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
工程1)の反応が、前記ナフサ中のナフテン炭化水素の転換率が90質量%以上となり、ここで、C
7ナフテン炭化水素およびC
8ナフテン炭化水素のいずれの転換率も95質量%以上となり、C
6ナフテン炭化水素の転換率が70質量%以上となるように制御される、請求項
13に記載の方法。
【請求項17】
工程1)の反応が、前記ナフサ中のパラフィン炭化水素の転換率が60質量%以下となり、ここで、C
6パラフィン炭化水素の転換率が18質量%以下となり、C
7パラフィン炭化水素の転換率が30質量%以下となり、C
8パラフィン炭化水素の転換率が70質量%以下となり、C
9
+パラフィン炭化水素の転換率が70~95質量%となるように制御される、請求項
13に記載の方法。
【国際調査報告】