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特表2024-514947吻合を形成するための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】吻合を形成するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A61B17/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564539
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022060343
(87)【国際公開番号】W WO2022223574
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】21315070.9
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21180993.4
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522358102
【氏名又は名称】バリアテク・メディカル
【氏名又は名称原語表記】BARIATEK MEDICAL
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セヨール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ビアディラー,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】ナズ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハインツェ,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ロコシュ,トビアス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC32
(57)【要約】
吻合のための標的部位に送達するための非展開構成(2)、および貫通チャネル(5)を有する一時的なステント吻合(201)を形成するための展開構成から拡張可能なステント(1)を備える装置。貫通チャネル(5)の周りの第1および第2の部分(11,12)の間の磁気吸引は、一時的なステント吻合(201)に生物学的に取って代わる永久的な磁気圧縮吻合(202)の形成を誘導する。装置は、消化器系、任意選択的に消化管での使用に特に適し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の消化器系、任意選択的に消化管の2つの壁部(4)の吻合(201,202)を形成するための装置(101)であって、前記装置が、前記吻合のための標的部位に送達するための非展開構成(2)と、移植のための展開構成(3)とを有し、前記装置が、ステント吻合(201)を形成するために前記非展開構成(2)から前記展開構成に拡張可能なステント(1)を備え、前記ステント(1)が貫通チャネル(5)を含み、前記装置の前記展開構成(3)では、前記装置の第1および第2の部分(11,12)が、環状配置で前記貫通チャネル(5)の外側に横方向に配置され、前記第1および第2の部分が、前記ステント(1)の前記貫通チャネル(5)の周りに圧縮吻合(202)を形成するために互いに磁気的に引き付け合う、装置(101)。
【請求項2】
前記ステント(1)が、前記非展開構成(2)から前記展開構成(3)に自己拡張する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
軸方向および/または横方向の寸法変化に加えて、前記ステント(1)は、前記非展開構成(2)から前記展開構成(3)に拡張するときに形状が変化する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1および第2の部分(11,12)の少なくとも一方、任意選択的に両方は、前記装置が前記非展開構成(2)から前記展開構成(3)に拡張するときに、横方向外側に揺動および/または関節運動および/または曲がることによって移動するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記第1および第2の部分(11,12)の少なくとも一方、任意選択的に両方は、前記装置が前記非展開構成(2)から前記展開構成(3)に拡張するときに、前記ステント(1)のそれぞれの軸端部に隣接する位置から前記軸端部の間の間隔をあけた位置に移動するように構成される、請求項1~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記装置が前記非展開構成(2)から前記展開構成(3)に拡張するときに、前記第1および第2の部分(11,12)の少なくとも一方、任意選択的に両方が、前記第1および第2の部分の他方に近づくように構成される、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記ステント(1)の前記貫通チャネル(5)が、前記ステント(1)の管状壁(8)によって画定され、かつ/または、前記装置が前記非展開構成(2)から前記展開構成(3)に移動するときに、前記ステント(1)の前記貫通チャネル(5)のサイズが横方向に拡張する、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記第1および第2の部分(11,12)の少なくとも一方、任意選択的に両方が、複数の磁石(6)を備える、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記磁石が、前記部分が前記装置の前記非展開構成と前記展開構成との間で変形することを可能にするように配置され、前記磁石(6)が、少なくとも前記展開構成(3)において環状配置に配置される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記磁石(6)の少なくとも一部、任意選択的に全部が、前記装置の前記非展開構成(2)および前記展開構成(3)において前記ステント(1)に固定的に取り付けられ、および/または前記ステント(1)に対して実質的に固定された関係を有する、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1および第2の部分(11,12)の少なくとも一方、任意選択的に両方は、前記第1および第2の部分(11,12)が磁気的に引き付けられたときに前記壁部の組織を圧迫して組織壊死を誘発するための閉ループ形状の圧力要素(7)を備える、請求項8、9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記圧力要素(7)が、可撓性フィラメント、例えばポリマーフィラメントを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記圧力要素が、前記それぞれの部分(11,12)のフレーム要素(7)を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記磁石(6)が、前記装置が前記非展開構成(2)にあるときに前記ステント(1)の円周方向につぶれるように構成されたフレーム要素(7)によって接続される、請求項8~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方が、前記非展開構成にあるときには前記それぞれの部分で長手方向にオフセットした複数の円周方向列に、前記展開構成では実質的に単一の円周方向列に、前記磁石(6)を配置するように構成される、請求項8~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記それぞれの部分が、前記磁石(6)を接続する接続要素(7)を備え、前記複数列の磁石は、前記非展開構成にあるときに前記接続要素(7)のジグザグパターンで接続される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方が、半径方向要素を含む成形構造と、前記成形構造の半径方向要素間を接続する接続要素(7)を備える円周方向ループ構造とを備え、前記磁石(6)が、前記成形構造および前記接続要素(7)によって前記円周方向に交互に支持される、請求項8~16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記第1および第2の部分上の磁石が、少なくとも前記展開構成において、他の部分と実質的に整合する、請求項8~16のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
同じ部分に担持された前記磁石の少なくともいくつかが、互いに反発するように構成される、請求項8~17のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記展開構成では、前記第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方が、前記貫通チャネルの周りの凸状に湾曲した部分を含む外形を有し、前記凸状に湾曲した部分の半径方向外側に凹状に湾曲した部分をもたらす、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記凹状に湾曲した部分が、ほぼ平坦な外周部分につながる、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記装置が、移植後の期間に構成を展開後構成に変更するように構成され、前記展開後構成が、身体開口部、例えば、自然身体開口部を通る通過または除去のために、前記展開構成(3)よりも流線形の形状を有する、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記ステント(1)の少なくとも1つの領域が、移植後の一定期間に弱まるおよび/または壊れるように構成され、前記装置が前記展開構成(3)から前記展開後構成(24)に変形することを可能にする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記ステントは、前記ステントが、例えば曲げおよび/または折り曲げによって前記ステントが前記展開後構成(24)に変形することを可能にするための相対的に弱い領域を画定する、1つまたは複数の構造的不連続部および/または構造的間隙を含む、請求項22または23に記載の装置。
【請求項25】
前記ステント(1)が、形状記憶材料、形状記憶合金、ニッケルとチタンとを含む合金、ニチノール、ステンレス鋼、タングステン、生体吸収性材料のうちの1つまたは複数を含むか、またはそれらの1つまたは複数から作製される、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
前記ステント(1)が、自己拡張型構造、モノリシック構造、自己支持構造、多角形構造、フレーム構造、ワイヤメッシュ構造、前記ステント(1)の領域間の1つまたは複数のコネクタ、任意選択的に生体吸収性材料から作製される少なくとも1つのコネクタ、の1つまたは複数を有する、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項27】
(i)前記ステント(1)および/または(ii)前記第1の部分および/または(iii)前記第2の部分を少なくとも部分的に覆う可撓性材料の非外傷性カバーを備える、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
患者の消化器系、任意選択的に消化管の2つの壁部の吻合(201,202)を形成するための装置(101)であって、前記装置が、任意選択的に先行する請求項のいずれかによるものであり、前記装置が、前記吻合のための標的部位に送達するための非展開構成(2)と、移植のための展開構成(3)とを有し、前記装置が、
前記壁部の第1の組織区域を、第1および第2の部分の間の実質的に閉じたループ形状の周りで圧縮し、前記第1の区域内の組織の壊死を引き起こすための、前記第1および第2の部分を含む第1の構造(8,11,12)と、
前記第1の構造よりも小さい圧縮力で、前記第1の組織区域の横方向外側の第2の組織区域内の組織を圧縮するために、前記第1の構造の前記第1および/または第2の部分の横方向(例えば半径方向)外側に配置された第2の構造(26)であって、前記第2の構造が、壊死を引き起こすことなく組織を一緒に押圧するように任意選択的に構成される、第2の構造(26)と
を備える、装置(101)。
【請求項29】
前記第2の構造(26)が、前記第1の部分からの圧縮力を低減された大きさで横方向外側に分散させるための、前記第1の部分に結合された第3の部分(71)、および/または前記第2の部分からの圧縮力を低減された大きさで横方向外側に分散させるための、前記第2の部分に結合された第4の部分(71)を備える、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記第3の部分(71)および/または前記第4の部分(71)が、半剛性および/または半可撓性材料、任意選択的にポリマー材料を含む、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記第1および第2の部分が各々、前記第1および第2の部分を互いに磁気的に引き付けるための少なくとも1つの磁石(61,62)を担持し、前記第3の部分および/または前記第4の部分が磁石を担持しない、請求項29または30に記載の装置。
【請求項32】
患者の消化器系、任意選択的に消化管の2つのセクションの吻合(202)を形成するための方法であって、前記方法が、請求項1~31のいずれかに記載の装置を任意選択的に使用し、
前記装置(101)を患者に、任意選択的に食道を介して消化器系に挿入するステップと、
前記吻合のための標的部位に2つの開口を形成する第1の組織壁(41)部および第2の組織壁(42)部を穿刺および/または切断するステップと、
任意選択的に、前記2つの腸組織壁(4)部を密着させるステップと、
拡張可能なステント(1)を前記標的部位に導入するステップと、
前記壁部間に一時的なステント吻合(201)を形成するように前記ステント(1)を非展開構成(2)から展開構成(3)に拡張するステップであって、前記ステント(1)が、機能的吻合を提供するための貫通チャネル(5)を有する、ステップと、
前記拡張するステップと同時に、または非同時に、前記貫通チャネル(5)の周りの前記壁部の組織に対して前記装置の第1および第2の部分を位置決めするステップであって、前記第1および第2の部分が、磁気圧縮吻合(202)を誘導するために、互いに磁気的に引き付け合う、ステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体管腔間の吻合形成の分野に関する。1つの非限定的な態様では、本発明は、患者の消化器系、好ましくは消化管に吻合を形成することに関する。
【背景技術】
【0002】
吻合は、身体管腔の2つの異なるセクション間の外科的交差接続またはブリッジである。消化管は、食道から肛門までの体内の管腔経路である。消化管に沿ってまたは消化管のどこかに形成される吻合は、糖尿病、肥満、腸疾患および閉塞などの消化関連の問題を治療するために使用される治療の一形態である。吻合は、開復術処置によって形成することができるが、例えば、腹腔鏡、内視鏡、または腔内などの低侵襲処置によって等しく効果的に吻合を達成することには、重大な技術的課題が残っている。例えば、米国特許出願公開第2010/191264号明細書、米国特許出願公開第2013/110141号明細書および米国特許出願公開第2020/323550号明細書で提案されているデバイスを参照することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのような問題に対処し、および/またはそのような問題を軽減し、および/または低侵襲性吻合形成を容易にすることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様は、特許請求の範囲に定義されている。
追加的または代替的に、本発明の一態様は、任意選択的に消化器系、任意選択的に消化管の2つの身体管腔壁部の吻合を形成するための装置を提供する。
【0005】
装置は、吻合のための標的部位に導入するための非展開構成と、移植のための展開構成とを有する。
【0006】
装置は、ステント吻合を形成するために非展開構成から展開構成に拡張可能なステントを備える。展開構成では、ステントは、壁部に対して固定され、および/または、例えば2つの身体管腔セクションの間の体液の連通のための貫通チャネルを提供する。
【0007】
装置の展開構成では、装置の第1および第2の部分は、環状配置で貫通チャネルの横方向外側に配置される。第1および第2の部分は、ステントの貫通チャネルの周りに圧縮吻合を形成するために、互いに磁気的に引き付け合う。
【0008】
上記第1の態様に加えて、またはその代わりに、本発明の第2の態様は、任意選択的に消化器系、任意選択的に消化管の2つの身体管腔壁部の吻合を形成するための装置を提供する。装置は、吻合のための標的部位への導入のための非展開構成から、ステント吻合を形成するための移植のための展開構成に拡張可能なステントを備える。展開状態では、ステントは、壁部に対して固定される、および/または例えば2つの身体管腔セクションの間の体液の連通のための貫通チャネルを提供する。
【0009】
ステントの展開構成において、装置はまた、装置の第1の部分と第2の部分との間の磁気吸引によって圧力を加えて、ステントの貫通チャネルを囲みかつ横方向外側に向かう永久圧縮吻合の形成を誘導するように構成される。例えば、第1および第2の部分は、ステントの貫通チャネルの横方向外側に配置される。第1および第2の部分は、任意選択的に貫通チャネルの対向する端部において、貫通チャネルの周囲を囲んでもよい。
【0010】
上記第1および/または第2の態様に加えて、またはその代わりに、本発明の第3の態様は、任意選択的に消化器系、任意選択的に消化管の2つの身体管腔壁部の吻合を形成するための装置を提供する。装置は、貫通チャネルを有する拡張可能なステントを備える。装置は、標的部位でステント吻合を形成し、ステント吻合の周りの壁組織の磁気圧縮によって圧縮吻合を形成するように構成される。
【0011】
例えば、ステントは、吻合のための標的部位に導入するための非展開構成、およびステント吻合を形成するための展開構成から拡張可能である。展開構成では、装置は、ステント吻合の周りで、装置の第1の部分と第2の部分との間の磁気吸引を介して、圧縮吻合を誘導するようにさらに構成される。
【0012】
上記第1および/または第2および/または第3の態様に加えて、またはその代わりに、本発明の第4の態様は、任意選択的に消化器系、任意選択的に消化管の2つの身体管腔壁部の磁気圧縮吻合を形成するための装置を提供する。装置は、第1の部分と、壁部の領域において圧縮吻合を誘導するために第1の部分に磁気的に引き付けられる第2の部分とを備える。装置は、圧縮吻合の完了までの一時的な貫通チャネルを画定するために、壁部の前記領域内にステント吻合を提供するための拡張可能なステントを備えるか、またはさらに備える。
【0013】
上記の各態様または任意の態様では、使用時に、磁気吸引によって引き起こされる(例えば、永久)圧縮吻合は、ステント吻合に生物学的に取って代わることができる。
【0014】
装置は、拡張可能なステントによって、移植直後に作動する吻合を提供することができ、さらに、永久圧縮吻合の本体における形成を誘導することができるという利点を有する。ステントは、初期または一時的吻合を提供すると見なされ得る。移植時に、医療施術者は、ステント吻合の正しい配置および機能を検証することができる。ステント吻合はまた、治療される医学的状態の即時緩和および/または治療を提供することができる。ステント自体が、組織の成長および吻合周囲の治癒による狭窄のリスクに影響されない、明確に規定された自己支持型貫通チャネルを提供することができる。圧縮吻合が典型的には数週間または数ヶ月(例えば、典型的には3~4週間)の期間内にステントの周りに形成されるので、ステントは耐久性のある吻合を提供する必要はない。ステントが高度に耐久性であることを必要としないことにより、かなりの設計の自由度および費用の利益がもたらされる。圧縮吻合は、磁気吸引によって一緒に押圧された2つの壁部の圧縮された組織の壊死、および壊死組織の周りの組織治癒によって形成され、一体的および/または永久的な接合をもたらす。
【0015】
治癒が適切な段階に達すると、壊死組織は周囲の組織壁から剥離することができる。いくつかの実施形態では、壊死組織および取り付けられたステントは、例えば自然に、または装置を取り外しおよび/または抜き取りおよび/または回収するための後続の処置によって補助されて離れることができる。いくつかの実施形態では、ステントは、例えば、壊死組織と共に、壁に閉じ込められたままであるように構成することができる。
【0016】
例として、吻合のための標的部位は、十二指腸および場合により空腸の一部をバイパスする胃空腸吻合を形成するための、胃の壁部と空腸の壁部との間であり得る。代替的な標的部位の例は、回腸-空腸吻合を形成するための、回腸の壁部と空腸の壁部との間である。
【0017】
拡張可能な装置および/または拡張可能なステントを使用することにより、設置手順を低侵襲的に、任意選択的に腹腔鏡的におよび/または内視鏡的におよび/または腔内に行うことが可能になる。
【0018】
ステントは、非展開構成から展開構成に自己拡張してもよく、かつ/または(例えば、拡張バルーン、またはステントに展開力を加える他の展開デバイスによって)強制的に拡張されてもよい。自己拡張型ステントは、例えば、形状記憶材料、例えば、形状記憶金属合金および/または形状記憶プラスチックから作製されるか、またはそれを含み得る。適切な合金は、場合によりコバルト(例えばNiTiCo)と組み合わせて、ニッケルおよびチタン(例えば、NiTi合金および/またはニチノール)を含んでもよい。材料が何であれ、展開構成において、ステントは好ましくは自己支持構造を提供し、任意選択的に、フレーム状および/または格子状および/またはメッシュ状構造を提供する。ステントは、モノリシックであってもよく、あるいは、直接的に(例えば、少なくとも1つのコネクタまたは固定具によって)または間接的に(例えば、編組または製織によって)共に結合される1つまたは複数の要素から作製されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方は、装置が非展開構成から展開構成に拡張するときに、横方向外側に揺動および/または関節運動および/または曲がることによって移動するように構成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方は、装置が非展開構成から展開構成に拡張するときに、ステントのそれぞれの軸端部に隣接する位置から軸端部の間の間隔をあけた位置に移動するように構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、装置が非展開構成から展開構成に拡張するときに、第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方が、第1および第2の部分の他方に近づくように構成される。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方が、複数の磁石を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方は、第1および第2の部分が磁気的に引き付けられたときに壁部の組織を圧迫して組織壊死を誘発するための閉ループ形状の圧力要素を備える。圧力要素は、可撓性フィラメント、例えばポリマーフィラメントを含むことができる。あるいは、圧力要素は、それぞれの部分のフレーム要素を備えることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、磁石は、装置が非展開構成にあるときにステントの円周方向につぶれるように構成されたフレーム要素によって接続される。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方は、非展開構成にあるときにはそれぞれの部分で長手方向にオフセットした複数の円周方向列に、展開構成では実質的に単一の円周方向列に、磁石を配置するように構成される。それぞれの部分は、磁石を接続する接続要素を任意選択的に備えてもよく、複数列の磁石は、非展開構成にあるときに接続要素のジグザグパターンで接続される。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方は、半径方向要素を含む成形構造と、成形構造の半径方向要素間を接続する接続要素を備える円周方向ループ構造とを含む。磁石は、成形構造および接続要素によって円周方向に交互に支持されてもよい。
【0027】
上記のいずれかに加えて、またはその代わりに、第1および第2の部分の磁石は、少なくとも展開構成において、他の部分と実質的に整合してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、同じ部分に担持された磁石の少なくともいくつかは、互いに反発するように構成される。
【0029】
いくつかの実施形態では、展開構成では、第1および第2の部分の少なくとも一方、任意選択的に両方が、貫通チャネルの周りの凸状に湾曲した部分を含む外形を有し、凸状に湾曲した部分の半径方向外側に凹状に湾曲した部分をもたらす。任意選択的に、凹状に湾曲した部分は、ほぼ平坦な外周部分につながる。
【0030】
ステントの少なくとも一部(例えば、コネクタ)は、ステントの少なくとも一部が強度を失うように、経時的に弱くなる材料、例えば生体吸収性材料で作られてもよい。追加的または代替的に、ステントは、展開構成から展開後構成に構成を変更するように構成されてもよい。例えば、ステントの一部が弱まると、ステント自体または装置の別の部材(弾性カバーなど)が、ステントを展開後構成に変形させ得る。展開後構成では、装置は、例えば排出されるべき腸を通る装置の通過を容易にするために、少なくとも部分的に、より流線形の形状を有してもよい。例えば、展開後構成は、細長い形、または楕円形もしくは菱形であってもよい。
【0031】
展開後構成は、他の技術によって実施されてもよい。例えば、ステントは、第1および第2のセグメントにセグメント化されてもよく、これらは、デバイスが組織壁部から分離した後、少なくとも部分的に変形してもよい(例えば、曲がる、および/または少なくとも部分的に折れ曲がる)。セグメントは、構造的不連続部および/または構造的間隙によって少なくとも部分的に画定されてもよい。
【0032】
どのようにしても、ステントが構成され、展開後構成への変形は、例えば、腸または肛門を通過するときなどの外部の影響によって、および/または場合によりデバイス自体の影響下で達成され得る。そのような影響は、例えば、磁石間の磁気吸引力、および/または移植後の構成にそれ自体を再成形する傾向があるステント、および/またはステントを変形させる傾向がある力を及ぼすステントの弾性カバー(図示せず)から生じ得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、ステントが展開構成にあるときの貫通チャネルの(例えば最小)横方向寸法(例えば直径)は、非展開構成にあるときのステントおよび/または装置の横方向寸法(例えば直径)よりも大きい。
【0034】
磁気吸引は、任意選択的にステントによって担持されるかまたはステント内に組み込まれる、1つまたは複数の磁石によって提供されてもよい。ステントを有する1つまたは複数の磁石を提供することにより、例えば、単一の送達デバイスを使用して、磁石およびステントを一緒に導入することが可能になる。磁石は、ステントによって担持される複数の個々の磁石であってもよく、またはステントによって担持される複数の個々の磁石を含んでもよい。磁石は、ステントがその非展開構成に崩壊し、その展開構成に拡張されることを可能にするように設けられ得る。いくつかの実施形態では、磁石は、ステントの周囲に離間していてもよく、例えば、磁石の円周方向(または接線方向)寸法に少なくとも等しい円周方向距離だけ離間していてもよい。他の実施形態では、磁石は、例えば、隣接する磁石間の間隔が磁石の円周方向(または接線方向)寸法よりも小さくなるように、より連続的または実質的に連続的な配置を提供してもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、ステントは、圧力要素、例えば磁石に隣接する可撓性フィラメントを担持する。可撓性フィラメントまたは他の圧力要素は、連続的な閉ループの周りの体組織に圧力が加えられるように、場合により磁石と組み合わせて、または一括して、実質的に閉じたループ形状を提供するように構成されてもよい。フィラメントの可撓性は、ステントが非展開構成に崩壊し、展開構成に拡張されることを可能にする。フィラメントは、ポリマーおよび/または形状記憶材料(例えば、上述のような形状記憶合金)から作製されてもよく、またはそれを含んでもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、ステントおよび/またはステントのカバーは、展開された(および/または展開後の)構成にあるとき、例えば肛門を介して排出されるときに、体外に装置を通過させることを容易にするために、概して非外傷性の外面または形状を提供するように構成される。例えば、装置は、ほぼ丸みを帯びたトロイド形状を有してもよい。装置および/またはステントの任意の急峻な縁部は、構造の内部に面するように構成されてもよい。急峻な外形を有するステントの部分を橋渡しするために、追加の支柱が設けられてもよい。
【0037】
本発明のさらなる態様は、圧縮吻合が形成される生物学的プロセスを補助することに関する。
【0038】
上記のいずれかに加えて、またはその代わりに、本発明のさらなる態様は、患者の消化器系、任意選択的に消化管の2つの壁部の吻合を形成するための装置を提供する。装置は、吻合のための標的部位に送達するための非展開構成と、移植のための展開構成とを有する。装置は、
壁部の第1の組織区域を、第1の部分と第2の部分との間の実質的に閉じたループ形状の周りで圧縮し、第1の区域内の組織の壊死を引き起こすための、第1および第2の部分を含む第1の構造と、
第1の構造よりも小さい圧縮力で、第1の組織区域の横方向外側の第2の組織区域内の組織を圧縮するために、第1の構造の第1および/または第2の部分の横方向(例えば半径方向)外側に配置された第2の構造であって、第2の構造が、壊死を引き起こすことなく組織を一緒に押圧するように任意選択的に構成される、第2の構造と
を備える。
【0039】
追加的または代替的に、本発明のさらなる態様は、患者の消化器系、任意選択的に消化管の2つの壁部の吻合を形成するための装置を提供する。装置は、吻合のための標的部位に送達するための非展開構成と、移植のための展開構成とを有する。装置は、第1の圧縮力を加えて、実質的に閉じたループ形状の周りの壁部の第1の組織区域を圧縮し、第1の区域内の組織の壊死を引き起こし、第2の圧縮力を壁部の第2の組織区域に、第1の区域の横方向(例えば、半径方向)外側に加えるように構成され、第2の圧縮力は、任意選択的に壊死を引き起こすことなく組織を一緒に押圧するために、第1の圧縮力よりも小さい。
【0040】
そのような構成は、吻合形成を支援するように調整される組織壁部に対する圧縮効果を可能にする。圧縮力は、第1の区域に集中させることができ、それによって吻合が形成される組織壊死につながる。第1の区域の横方向外側の第2の区域における、任意選択的に第1の区域を取り囲むより小さい圧縮力は、組織壁を互いに押し付けて、治癒効果の一部として組織の融合を促すが、任意選択的に第2の区域における壊死を伴わない。これは、吻合の周りに接合組織の半径方向に厚いバンドをもたらすことができる。
【0041】
そのような構造は、吻合全体の周りの確実に連続する接合をさらに保証する目的で、組織接合の面積を広げることができる。吻合が形成される組織壊死および治癒のプロセスは、圧縮力によって引き起こされる生物学的プロセスである。異なる患者は、異なる速度の組織壊死、治癒および組織融合を経験する可能性があり、患者ごとに吻合形成にいくらかの変動をもたらす。また、生物学的プロセスは閉ループ形状の周囲で均一であることが期待されるが、場合によってはばらつきが生じ得る。例えば、接合部は、当然ながら、ある領域において他の領域より厚い場合がある。そのような生物学的変動は、糖尿病などの患者の状態によって悪化する可能性がある。より小さい圧縮力で組織壁が一緒に押圧される第2の区域を提供することは、そのような変動を緩和し、堅牢で漏れのない接合を作り出すために、十分なまたは強化された半径方向の厚さで組織を一緒に接合する生物学的プロセスを支援することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、第2の構造は、第1の部分からの圧縮力を低減された大きさで横方向外側に分散させるための、第1の部分に結合された第3の部分、および/または第2の部分からの圧縮力を低減された大きさで横方向外側に分散させるための、第2の部分に結合された第4の部分を備える。
【0043】
第3の部分および/または第4の部分は、半剛性および/または半可撓性材料、任意選択的にポリマー材料を含んでもよい。例えば、第3および/または第4の部分は、それぞれ第1または第2の部分から横方向外側に延びる支柱、花弁、またはフランジを備えてもよい。
【0044】
第1および第2の部分は各々、第1および第2の部分を互いに磁気的に引き付けるための少なくとも1つの磁石を担持してもよい。第3の部分および/または第4の部分は、磁石を担持する必要はない、および/または担持しない。第1の圧縮力を発生させるための他の非磁性構造、例えば、使用される場合、ステントによって作り出される機械的に発生した圧縮力も使用され得る。
【0045】
前述の態様のいずれかにおいて、装置または1つもしくは複数の構成要素は、任意選択的に3D印刷技術を含む任意の適切な技術によって形成されてもよい。
【0046】
本発明のさらなる態様は、任意の態様で上述したような装置を任意選択的に使用して、標的部位に吻合を形成する方法であって、方法は、
拡張可能なステントを標的部位に導入するステップと、
標的部位で組織壁部間に一時的なステント吻合を形成するようにステントを非展開構成から展開構成に拡張するステップであって、ステントが、機能的吻合を提供するための貫通チャネルを有する、ステップと、
拡張するステップと同時にまたは非同時に、装置の第1および第2の部分を貫通チャネルの周囲の壁部の組織に対して位置決めするステップであって、第1および第2の部分が、ステントの貫通チャネルの周囲の磁気圧縮吻合の形成を誘導するために、互いに磁気的に引き付け合う、ステップと
を含む。
【0047】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】磁石を有するステントの側面図であり、ステントは、熱成形前の切断されたままの広げられた形式で示されている。
図2図1の構成におけるステントの断面図である。この構成は、非展開構成がより半径方向に圧縮され得ることを除いて、非展開構成に対応する。図2のより広い図は、装置の特徴を見やすくするために提示されている。
図3】展開構成における図1および図2のステントの断面図である。
図4】消化管の吻合のための標的部位に対する患者への送達デバイスの内視鏡挿入を示す断面図である。
図5】標的部位で消化管の組織壁を穿刺する次のステップを示す、図4と同様の断面図である。
図6】2つの組織壁の開口部に向かって送達デバイスを後退させる次のステップを示す、図5と同様の断面図である。
図7図6に示す送達デバイスの遠位端の拡大図を示す。
図8】最遠位の組織壁開口部の近くに磁石を有するステントを部分的に展開する次のステップを示す、図6と同様の断面図である。
図9図8の送達デバイスの遠位端部および部分的に展開されたステントの拡大図を示す。
図10】磁石を有するステントを展開しながら送達デバイスをさらに後退させる次のステップを示す、図8と同様の断面図である。
図11図10の送達デバイスおよびステントの遠位端部の拡大図を示す。
図12】磁石を有するステントを展開構成に解放して組織壁に磁気圧縮を加えると同時に、作動する貫通チャネルを有する一時的なステント吻合を提供する次のステップを示す、図10と同様の断面図である。
図13】展開構成における図12のステントの拡大図を示す。
図14】ステント吻合の周りに永久的な第2の圧縮吻合が形成される次のステップを示す、図12と同様の断面図である。
図15図14の圧縮吻合の形成の拡大図を示す。
図16】ステント吻合が圧縮吻合に置き換えられる次のステップを示す、図14と同様の断面図である。
図17図16のステント吻合の置換の拡大図を示す。
図18】磁石を有するステントの第2の例の側面図であり、ステントは、非展開構成において切断されたままの広げられた形式で示されている。
図19】展開構成における、切断されたままの広げられた形式で示された図18のステントの側面図である。
図20】展開構成における図18および図19のステントの端面図である。
図21】展開構成における磁石を有するステントのさらなる例の断面図である。
図22】展開構成における磁石を有するステントのさらなる例の断面図である。
図23】展開構成における磁石を有するステントのさらなる例の断面図である。
図24】展開構成における磁石を有するステントの代替実施形態の上面図である。
図25】ステントに対する磁石の変更された取り付けを示す、図13と同様の断面図である。
図26図24と同様であるが、代替的なステント形状を示す端面図である。
図27】略円形の展開構成から略流線形の展開後構成に変化するステントを示す外形図である。
図28図25と同様のステントのさらなる実施形態の上方からの概略斜視図である。
図29図28のステントの概略側面図である。
図30図28および図29のステントの概略上面図である。
図31図28図30のステントを崩壊状態で示す概略斜視図である。
図32】曲がった展開後構成を想定したステントのさらなる実施形態の上方からの概略斜視図である。
図33図32によるステントの概略側面図である。
図34図32および図33のステントの概略上面図である。
図35】斜め横から見た、展開後構成におけるステントのさらなる実施形態の上方からの概略斜視図である。
図36図35のステントの概略端面図である。
図37図35および図36のステントの概略側面図である。
図38】展開構成において楕円形の円板形状をとるステントのさらなる実施形態の概略斜視図である。
図39図38のステントの概略側面図である。
図40図38および図39のステントの上面図である。
図41】半径方向延長部を有する展開構成におけるステントのさらなる実施形態の上方からの概略斜視図である。
図42図41のステントの概略側面図である。
図43】第1の比較例における胃と腸との吻合を形成するためのステントの上面斜視図である。
図44】第2の比較例における吻合を形成するための2つの磁性部材を示す断面図である。
図45】第2の比較例における吻合を形成するための2つの磁性部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下の説明では、明示的に記載されているか否かにかかわらず、対応する特徴を示すために同じ参照番号が使用される。1つの実施形態からの特徴は、明示的に記載されているか否かにかかわらず、別のものと組み合わせて使用することができる。
【0050】
本発明を説明する前に、本発明の利点を理解することができるように、2つの比較例を示す図43図45を参照する。図43は、胃および空腸などの2つの身体管腔の間にステント吻合152を提供するために移植可能な拡張可能ステント150の形態の第1の比較例を示す。組織壁間の接合部は、完全性に関してステント150に永続的に依存しており、したがって、吻合の耐久性は、漏れのない接合部を維持するステント150の能力に依存する。複雑なステント設計であっても、耐久性は制限され得る。例えば、経時的に、ステント150は、消化液の腐食作用、および身体管腔の間の絶え間のない動きに影響を受ける場合がある。漏れは、ステントが外れたり破損したりした場合、または接合部の任意の部分が不完全になった場合に容易に生じる。漏れは、患者にとって生命を脅かす可能性がある。
【0051】
図44および図45は、磁石162を含む2つのリング160によって形成された磁気圧縮吻合の形態の第2の比較例を示す。2つのリング160は、例えば2つの別個の内視鏡(図示せず)を使用して別々に導入され、リング160が磁石162の相互吸引によって保持されるように、リングを組織壁164および166と接触させて位置決めされる。吻合はすぐには形成されない。経時的に、例えば3~4週間、リング160の間に締め付けられた組織の壊死は、周囲の組織を結合させ、永続的な組織-組織接合部を形成させる。壊死組織および取り付けられたリング160は、最終的に緩み、永久吻合を残す。第1の比較例と比較して、このような圧縮吻合は、永久的に漏れがなく、永久的なインプラントに依存しないという潜在的な利点を有する。しかしながら、第1の比較例とは異なり、圧縮吻合は即時ではなく、形成するのに十分な時間を必要とし、これは患者ごとに異なり得る。医療施術者は、吻合が有効であるかどうかを最初は知らないが、これは後で観察することしかできないためであり、リングが緩むことによって吻合が形成されるのに時間がかかると、さらなる調査医療処置を必要とする。即時に作動する吻合が存在しないことは、患者の病状を最初に治療することができないことを意味する。何らかの理由で、リングおよび壊死組織が緩まない場合、吻合は適切に機能することができない。また、2つのリング160を2つの組織壁164および166の両側に導入して位置決めするための手順は、2つの異なる内視鏡を使用しなければならないという点でより複雑であり、内視鏡は、異なる経路を介して案内されて異なる身体管腔に整列する。
【0052】
図1図42は、本発明による装置101の実施形態を示す。図1は、熱成形前の切断されたままの広げられた形態の拡張可能ステント1の実施形態の側面図を示す。ステント1は、中心管領域8と、磁石6(それぞれ61、62)を担持する両端にある第1および第2の部分11および12とを備える。ステントは、吻合のための標的部位に導入するための非展開構成(図2)から、標的部位に移植するための展開構成(図3)に拡張可能である。非展開構成(図2)では、ステント1は、第1の部分11および第2の部分12の末端で半径方向に圧縮される。ステントは、例えば0.3cm~1.5cmの範囲の横方向寸法(例えば直径)B1を有する。展開構成(図3)では、中心管領域8は、B1よりも大きい横方向寸法まで半径方向に拡張し、第1の部分11および第2の部分12は、中心管領域8の周りにクランプ要素を画定するように互いに向かって外向きに曲がる。第1の部分11および第2の部分12は、第1の部分11および第2の部分12(および磁石6)が横方向外側に移動し、および/または軸方向(軸Aの長手方向)に互いに近づくように、中心管領域8の両端から曲がるか、または関節接合し得る。中心管領域8は、横方向寸法(例えば直径)W1を有する、デバイスの一端から他端への貫通チャネルを提供する。例えば、寸法W1は、1.5cm~6cm程度の範囲であってよい。
【0053】
ステント1は、例えばニチノールなどの形状記憶材料から作製されるか、または形状記憶材料を含む、自己拡張型であってもよい。そのようなステント1は、例えば、拘束シースによって非展開構成で保持されなければならず、シースがステントから滑り落ちるとき、および/またはステントが拘束シースから押し出されるとき、一端から徐々に自己拡張する。例えば、最初に第1および第2の部分11、12の一方が自己拡張し、その後に中心管領域8が続き、最後に第1および第2の部分11、12の他方が続いてもよい。ステント1は、拡張を容易にするためにフレーム構造を有していてもよい。ステント1のいくつかの実施形態は、モノリシックであってもよく、例えば、管状ストックからレーザ切断されてもよい。あるいは、ステント1は、メッシュ構造または編組構造であってもよい。
【0054】
磁石6は、第1の部分11と第2の部分12が互いに磁気的に引き付け合うように配置および/または配向される。第1の部分11と第2の部分12との間の距離が縮小されるとき、吸引力は展開構成(図3)において特に強い。任意選択的に、各部分11、12内の磁石6は、互いに反発するように配置および/または配向されてもよく、したがって、それぞれの部分11、12に、非展開構成から横方向および/または円周方向に拡張する追加の傾向を与える。磁石6は、環状配置で配置されている。この実施形態では、各磁石は多角形構造の頂点に取り付けられる。磁石の離散的な性質は、特に展開構成において、円周方向に隣接する磁石の間に空間を残す。図示の形態では、磁石6は単一の列に配置され、第1の部分11の各磁石は、セクション部分12のそれぞれの磁石と概して整合する。互いにオフセットして配置された磁石6、および/または各部分11、12における磁石6のいくつかの列も考えられる。
【0055】
第1および第第2の部分11、12の少なくとも一方、好ましくは両方は、任意選択的に磁石6と集合的に、閉ループ形状を有するかまたは呈する圧力要素7(図1に最もよく見られる)をさらに備える。圧力要素7は、単一の要素であってもよいし、直接的または間接的に互いに結合された複数のセグメントを備えてもよい。圧力要素7(任意選択的に磁石6との組み合わせ)は、個々の磁石が展開構成において円周方向に離間しているか、または不連続であるにもかかわらず、閉ループの周りの壁組織に均一に圧力を加えるための実質的に円周方向に連続した表面を提供するのに役立つ。圧力要素7は、可撓性フィラメント、例えばポリマーフィラメントによって提供されてもよい。図1に示すように、可撓性は、圧力要素7がステント1の非展開構成への圧縮を妨げることを回避する。圧力要素7は、展開構成にあるときに引っ張られてもよい。
【0056】
磁石6(61,62)は、磁石6を担持するステント1の部分とほぼ同一平面上にあってもよく(図13に概略的に示すように)、または、磁石6は、展開構成において、ステント1のその部分よりも組織に近接して存在してもよく(図3に概略的に示すように)、または、磁石6は、展開構成において、ステント1のその部分よりも組織から遠くに存在してもよい(図25に概略的に示すように)。後者の場合、磁石は、組織に接触するステント支柱が閉ループ形状の周りに圧縮力を分配するための圧力要素としても作用することができるように、組織に対してステントのそれぞれの部分を圧縮する傾向があり得る。
【0057】
装置101および/またはステント1は、第1の領域11の表面を少なくとも部分的に、および/または中心管領域8の表面を少なくとも部分的に、および/または第2の領域12の表面を少なくとも部分的に覆う可撓性カバー(図示せず)をさらに備えることができる。カバーは、任意選択的に、吻合のために身体管腔を通過する材料に対して一般に不透過性であってもよい。カバーは、内部および/または外部カバーであってもよい。カバーは、例えば、織布または不織布の合成布であってもよく、またはそれを含んでもよい。カバーは、ステントが展開されるときの漏れのリスクを低減するために、組織壁に対するおよび/または貫通チャネルに対するステントの密封を助けるように機能し得る。追加的または代替的に、カバーは、特に展開構成にあるときに、装置の非外傷性の外部を提供するのに役立ち得る。
【0058】
図4図17は、管腔内および/または内視鏡器具10を使用して図1図3の装置101を移植するための手順を示す。図4は、吻合のための標的部位への患者の消化管内への器具10の導入を示す。例えば、標的部位は、十二指腸および場合により空腸の一部をバイパスする胃空腸吻合を形成するために、胃の壁部と空腸の壁部との間であってもよい。代替的な標的部位の例は、回腸-空腸吻合を形成するための、回腸の壁部と空腸の壁部との間である。
【0059】
管腔内および/または内視鏡器具10は、患者の食道を通して挿入可能である。器具10は、消化管、特に胃および腸の組織壁4(それぞれ41、42)を穿刺することを可能にする切断および/または穿刺要素12を備える。穿刺および/または切断要素12は、好ましくは、器具10が組織壁41、42を貫通することを可能にする器具10の遠位領域上に配置されるか、または遠位領域に前進可能である(図5)。
【0060】
図6および図7は、遠位端が組織壁4に形成された開口部の近くに配置されるように、穿刺および/または切断要素12の後退、および任意選択的に器具10の部分的な後退を示す。管腔内および/または内視鏡器具10は、任意選択的に、2つの組織壁41、42を密着させるための1つまたは複数の要素を含む。組織壁41、42を密着させるための要素として、部分的に展開されたステント(次のステップに示す)を使用することもできる。
【0061】
図8および図9は、吻合を確立するための装置/ステント1の展開の第1のステップを示す。第1のステップにおいて、ステント1は、第1の部分および第2の部分のうちの一方、例えば第1の部分11を被覆除去することによって部分的に展開され、それぞれの部分が自己拡張することを可能にする。ステント1は、拘束シースを漸進的に後退させることによって、またはシースの開放端部を通ってステント1を漸進的に前進させることによって、被覆除去されてもよい。第1の部分11は、展開構成のその横方向延伸位置に向かって曲がるか移動することによって展開し始める。
【0062】
図10および図11は、中心管領域8を被覆除去する次のステップを示す。図11に示すように、中心管領域8は、ステントが全体として無拘束になるまで圧縮されたままであってもよい。ステント1は、増大した最大横方向外形によって、組織壁41、42の開口部を通って後退することが防止される。
【0063】
図12および図13は、ステント1の完全な被覆除去を示し、第2の部分12を解放し、ステント1がその展開構成まで自己拡張することを可能にする。第1の部分11の磁石と第2の部分12の磁石との間の磁気吸引は、組織壁41、42を互いにしっかりと締め付ける。第1および第2の部分11、12はまた、ステント1を、組織壁41、42の開口部を橋渡しするその位置に固定するように機能する。中心管部分8は、その全幅W1まで拡張し、組織壁の一方の側から他方の側への貫通チャネル5を提供する。したがって、ステント1は、装置の移植直後に機能的貫通チャネル5を有するステント吻合201を提供する。任意選択的に可撓性カバー(上述)によって補助される、中央管状部分8によって組織壁の縁部に及ぼされる横方向の力は、ステント吻合201からの胃および/または腸内容物の漏れを防止するためのシールを提供する。
【0064】
したがって、機能的貫通チャネル5は、ステント吻合が機能し、移植直後に患者の病状の治療または療法を提供することを可能にすることができる。医療施術者は、ステント吻合の機能および位置決めを観察して、正しい配置を確認することができる。ステント1が配置されると、器具10は引き抜かれ、任意選択的に身体から除去され得る。
【0065】
図14および図15を参照すると、貫通チャネルの周りに配置された第1の部分11と第2の部分12との間の磁気吸引は、磁気圧縮吻合の形成を誘導する。磁気吸引は、組織壁41、42に圧力を加え、組織壁の締め付けられた領域における血液灌流を制限する。経時的に、典型的には約3~4週間で、締め付けられた組織は壊死し(17で示す)、壊死組織が自然に分離または破壊される永続的な組織-組織接合として周囲組織が治癒するように誘導する。
【0066】
図16および図17を参照すると、ステント1および/または装置101は、壊死組織17にのみ取り付けられる。壊死組織17の分離により、ステント1は、組織壁41、42から離れるように移動し、ステント吻合201のチャネルの幅W1よりもわずかに広い幅W2を有する永久的な圧縮吻合202を残す。例えば、永久吻合の幅W2は、約2cm~約6cmであってもよい。装置101は、依然として壊死組織に取り付けられており、消化管を通過し、身体から排出されることができる。
【0067】
したがって、装置101は、即時機能を可能にする一時的なステント吻合201の形成、およびその後、ステント吻合201に生物学的に取って代わる永久圧縮吻合202を可能にする。装置101は、単一の低侵襲外科的処置、典型的には内視鏡処置を使用して移植することができるが、任意選択的に腹腔鏡処置も使用することができる。
【0068】
任意選択的に、ステント1は、破断点および/または生体吸収性材料を含むことができ、それにより、寸法は、ステント1が別個のセグメント(図17には示されていない)に分離することによって減少し得る。ステント1の1つの実装例は、ステント1がより容易に排出され得るようにステント1をセグメントに分割する生体吸収性コネクタまたはヒンジを含む。破断点を含むステント1の代替的な実施形態は、永久吻合202の形成に成功した後に磁石6が密着すると破断すると考えることができる。さらなる実施形態は、移植後構成(図27)に形状が変換されてもよい。例えば、ステントの1つまたは複数の構造的支持部分が弱くなり、任意選択的に破損し、装置の別の部分によって加えられる力がステントをその移植後位置に変形させることを可能にしてもよい。例えば、力は、ステント自体から、または弾性カバーから生じてもよい。展開後構成では、装置の形状は、腸および肛門の通過を容易にするために、展開構成よりも流線形、例えばわずかに細長くてもよい。例えば、図27は、ステント1が略円形の展開構成から略細長(例えば、卵形、または楕円形もしくは菱形)の展開後構成または外形21に変形されることを示している。
【0069】
図18は、装置101の非展開構成2における磁石6を有するステント1の変更された実施形態の側面図を示す。ステント1は、成形構造22を備える中央管状部分8を画定するモノリシックフレーム構造を備える。成形構造22は、安定化要素13のあらゆる交差において物質的に接続されたポリゴンメッシュを備える。しかしながら、互いに対して移動可能な安定化要素13も考えられる。磁石6は、ステント1の遠位領域11および近位領域12においてステント1に接続されている。磁石6は、接続要素7を介して接続されている。磁石6は、ステント1の長手方向にオフセットされたいくつかの列で非展開構成2においてステント1上に配置されている。磁石6の列は、遠位領域11および近位領域12上で接続要素7のジグザグパターンで接続されている。磁石6のいくつかの列は、距離の増加に起因して、隣接する磁石6の引力を減少させることを可能にする。ステント1はまた、不透過性構造(図18には示されていない)を含むことができる。非展開構成2におけるステント1の横方向外形幅B1は、装置101のカテーテル(図18には示されていない)の横幅よりも小さい。
【0070】
図19は、展開構成3における図18による磁石6を有するステント1の実施形態を示す。展開構成3では、非展開構成で別々の列に配置された磁石6は、接続要素7によって互いに等距離に隔てられた閉ループ上に配置される。ステント1に外力が作用することなく、その横方向外形を増大させる半径方向の力を生み出し、一時的なチャネルを拡張することによって、ステント1はその展開構成3をとる(図19には示されていない)。展開構成3におけるステント1の横方向外形幅B2は、装置101のカテーテル(図18には示されていない)の幅よりも大きい。横方向外形幅B2はまた、装置101の挿入による組織壁の切開開口部よりも大きい。
【0071】
図20は、図19による展開構成3における磁石6を有するステント1の上面図を示す。接続要素7および磁石6は、一時的なチャネル5の横方向外側に配置された多角形構造を備える閉ループ18を形成する。ステント1の遠位領域および近位領域における閉ループ18は、装置101の第1の部分と第2の部分との間に圧力を加えることができる(図24には示されていない)。閉ループ18の形状は、永久圧縮吻合に対応する。磁石は、ステント1の最大横方向距離に配置される。ステント1の成形構造22は、横方向外側に圧力を加え、ステント1の固定に寄与する。
【0072】
図21は、図3による磁石6を有するステント1の実施形態を示す。前述の特徴を参照する参考符号については、図3を参照されたい。図21のステント1は、ステント1を非外傷性にする保護カバー19を備える。装置101はまた、ステントが消化管に沿って非外傷的に誘導され、詰まってしまわないように、滑らかなカバーで部分的にまたは完全に覆うことができる。破線の楕円は、一時的なチャネル5を概略的に示している。
【0073】
図22は、展開構成3で一時的なチャネル5を形成する断面図における、磁石6を有するステント1の一実施形態の断面図を示す。図22の実施形態におけるステント1の曲がった構造は、ステント1が融合した組織壁から外れるときに詰まったり引っ掛かったりすることを防止する。展開構成3におけるステント1の成形構造22の大部分は、ステント1の遠位領域に配置される。破線の楕円は、一時的なチャネル5の直径を概略的に示している。
【0074】
図23は、図21とは対照的に、ステント1を非外傷性にするためにその遠位側に取り付けるだけでよい、単一の保護カバー19を備える図22によるステント1を示す。
【0075】
図24は、装置101の磁石6を有するステント1の図20に対する代替実施形態の上面図を示す。同じ主題に関する参照番号については、図20を参照されたい。磁石6および接続要素7を含み、閉ループ18を構成する横方向外形は、多角形とは対照的に円形状を有する。
【0076】
図26は、さらなる実施形態を示し、図24と同様であるが、ステント1は、長い方の横方向寸法B2を有する、略卵形または略楕円形などの真円でない形状を有する。そのようなステントは、吻合の非円形形状を誘導するために有用であり得る。また、非円形形状は、円形よりも流線形であり得、ステント吻合が組織壁部から分離した後にステント1を身体から排出することをさらに容易にする。
【0077】
図28図31は、図1図17および図25に示すものと同様のさらなる実施形態を示す。ステント1は、接続要素7によって他の近位磁石61および遠位磁石62にそれぞれ接続された近位磁石61および遠位磁石62を担持し、それにより、磁気吸引に起因して間にある組織壁部に圧力を加えるための近位閉ループ181および遠位閉ループ182を形成する。展開構成3におけるステント1の成形構造22は、ステントの近位側および遠位側において横方向外側に曲げられる。横方向外側に曲げられた成形構造22は、管状壁8を形成し、貫通チャネル5を形成する。図29に見られるように、ステント1の近位閉ループ181と遠位閉ループ182との間の中間空間は、管状壁8によってのみ接続されている。ステントの展開構成3における近位閉ループ181および遠位閉ループ182は、ステントが展開構成に変換されるときに組織壁によって分離される、および/または離されて保持される。接続構造の支柱は、例えば、半径方向外形(例えば、図29)においてほぼ対称的な涙滴またはキーホール構成を画定し得る。
【0078】
図30を参照すると、展開状態では、閉ループ18は本質的に多角形の形状をとる。接続要素7は、この例では、ステントが非展開構成に崩壊するとき、およびステントが非展開構成から展開構成に拡張するときに良好な関節接合を容易にするためにs字形である。図30に見られるように、各閉ループ18内で、磁石6は、成形構造および接続要素7によって円周方向に交互に支持されている。すなわち、交互の磁石6は、接続要素7によってのみ介在位置に支持される。ステントが展開構成(図30)と非展開構成(図31)との間を移動するとき、接続支柱7によってのみ支持される介在磁石6は、成形構造によって直接支持される他の磁石に対して軸方向および半径方向の両方に移動する。非展開構成では、接続支柱7および磁石6は、ほぼ接続要素7の長さだけ互いに軸方向に離間した複数の円周方向列に配置される。そのような配置は、吻合の標的部位への導入のためにステントを小さい直径に崩壊させることを可能にするが、最適な磁気圧縮効果のために各端部に比較的多数の磁石を依然として担持する。
【0079】
図28図31におけるステントは、円周方向にほぼ均一なまたは均一に繰り返される形状を有してもよいが、図32図43は、ステントが円周方向によりセグメント化された構造を有するさらなる実施形態を示す。特に、ステント1は、1つまたは複数の構造的不連続部または間隙23によって分離された第1および第2のセグメントに分割される。図示された形態では、間隙23は、接続構造の内側部分に画定され、第1および第2のセグメントは、ステント1の各端部および/またはクランプ部分の外周においてのみ結合される。間隙23は、均一な構造と比較して、より大きな移動の自由度および/または適合性を第1および第2のセグメントに提供する。第1および第2のセグメントは、低減された数の支柱を介して、管状セクション8の外側でのみ結合される。間隙23は、ステント1が、移植後に、任意選択的に例えば腸または肛門を通過するときに外部の影響下で、および/または任意選択的にデバイス自体の影響下で、より容易に変形または圧縮された形態をとることを可能にすることができる。そのような影響は、例えば、磁石6間の磁気吸引力、および/または移植後の構成にそれ自体を再成形する傾向があるステント、および/またはステントを変形させる傾向がある力を及ぼすステントの弾性カバー(図示せず)から生じ得る。
【0080】
図32図34を参照すると、構造のセグメント化された設計とは無関係に、ステント1は、上述の図22と同様の形態を有してもよい。ステント1は、近位磁石61および遠位磁石62と共に近位閉ループ181および遠位閉ループ182を形成するほぼ平らな横方向外形を形成する。例えば、ステント1は、半径方向外形において概して非対称な涙滴形状を有してもよい(例えば、図33)。非対称形状は、身体管腔内の特定の吻合位置に特に適し得る。非対称形状はまた、ステント吻合が組織壁部から分離した後の身体管腔内の排出の容易さに関して利点を提供し得る。
【0081】
図34を参照すると、半径方向外形における非対称形状に加えて、または、その代わりに、ステント1はまた、先に図29について論じた外形と同様の、細長い外形もしくは楕円形の外形、または、他の真円でない外形を有してもよい。そのようなステントは、吻合の非円形形状を誘導するために有用であり得る。また、非円形形状は、円形よりも流線形であり得、ステント吻合が組織壁部から分離した後にステント1を身体から排出することをさらに容易にする。ステント1の成形構造22は、ステント1が楕円形の外形をとるように異なる長さの安定化要素13を備える。しかしながら、成形構造22の管状壁8セクションによって形成された貫通チャネル5は、図示のように略円形の横方向外形を有してもよく、または必要に応じて非円形形状を有してもよい。
【0082】
図35図40は、展開構成とは異なる展開後構成の例を示す。ステントは展開後構成で事前成形されてもよく、または上述したように、展開後構成は、任意選択的に、例えば腸または肛門を通過するときに外部の影響を受けて、および/または任意選択的に、磁石6間の磁気吸引力の影響を受けて、および/またはステントを変形させる傾向のある力を及ぼすステントの弾性カバー(図示せず)の結果であってもよい。
【0083】
図35図37の例では、展開後構成において、閉ループ(181および182)は、ある角度で折り曲げられることによって曲がった横方向外形円弧を形成する。ステント1は、形状記憶合金によっておよび/または近位磁石61と遠位磁石62との間の距離が減少することに起因して、曲がった円板形状をとるように構成される。距離が小さくなると、磁力が強くなる。加えて、この実施形態において、構造的間隙23は、ステント1の両側の側方に配置され、それにより、曲げが成形構造22によって支持される一方で、貫通チャネル5のための管状壁8を維持する。構造的間隙23は、好ましくは、貫通チャネル5の可変横幅を可能にする。ステント1が展開構成3をとるとき、間隙23の幅が増大し、それにより、成形構造22の管状壁8セクションによって形成される貫通チャネル5の横方向外形が増大すると考えることができる。ステント1によって囲まれた組織壁は、好ましくは、圧縮吻合がまだ完了していない間にステント1が展開後構成をとることを妨げる。磁気圧縮吻合の完了後にステントが組織壁から分離した時点で、展開後構成をとることができる。
【0084】
図36を参照すると、近位閉ループ181および遠位閉ループ182は、展開後構成において、ある角度で曲げられ、好ましくは、2つの等しいサイズの半分を折り曲げ軸の周りで同じ長手方向に曲げることによって、ステントの横方向外形を有する円弧を形成する。ステント1の大部分は、閉ループ(181,182)の近位または遠位の長手方向の片側に配置される。この実施形態において、成形構造22の管状壁8によって形成される貫通チャネル6は、ステントの閉ループ(181,182)からステント1の片側に完全に位置する。この配置および/または構造的間隙23の配置は、ステント1が、成形構造22の展開後の構成に対する構造的制限なしに崩壊することを可能にする。
【0085】
図38図40の例は、最終的な展開後構成への図35図37の曲げ変形のさらなる続きであってもよいし、図35図37から独立していてもよい。図38図40を参照すると、展開後構成24は、好ましくは、組織壁の圧縮吻合が完了した後に想定される。展開後構成24に至る磁気力および/または構造力は、好ましくは、圧縮吻合が完了すると、閉ループ内の壊死組織を剥離するのに十分強い。ステント1の好ましい実施形態において、ステント成形構造22は、脆く、かつ/または弱く、かつ/または可撓性であり得る。ステントに作用する力の大部分は、磁石6によって誘導される。磁石6は、所望の量の力を及ぼすように構成され、一方、成形構造22は、展開後構成24からステント1を変換するために磁力を方向付けるだけである。ステント1の横方向外形は、ステント1が折り曲げ軸の周りで外側に折れ曲がることに起因して、大幅に低減される。圧縮吻合が確立されると、ステント1は、完全に湾曲した横方向外形、または少なくとも、少なくとも45°の角度で、好ましくは完全に曲がった横方向外形をとる。ステント1は、展開後構成に自己転換可能であってもよい。ステント1は、折り曲げられた横方向外形が整列し、かつ/または磁石6が磁石スタック25を形成することができるように、ほぼ鏡面対称に折り曲げられてもよい。しかしながら、ステント1の寸法を小さくするために、非対称な折り曲げ配置が想像され得る。この実施形態では、遠位陥凹磁石および近位陥凹磁石63は、ステント1の以前の横方向平面内に本質的に残る。他の磁石6は、以前の近位磁石、遠位磁石、遠位磁石、および近位磁石の順序で磁石スタック25を形成する。湾曲した横方向外形を採用することにより、ステント1はより流線形であり、また、少なくとも1つの寸法においてより小さい横幅を有する。展開後構成24は、ステントが胃腸管をより容易に通過することができるように、ステント1のより流線形の外形を可能にする。以前の管状壁8は、ステントの長手方向に沿って整列する2つのセクションに分割される。
【0086】
図39を参照すると、成形構造22および接続要素7は、一般に、ステント1の以前の側面から離れて配置される。磁石スタック25は、遠位磁石62と近位磁石61とからなり、これらは、ステントの以前の横方向外形に対してほぼ垂直に、および/またはステント1の折り曲げ軸にほぼ沿って整列している。好ましい実施形態では、展開後構成24におけるステント1の横方向外形は、一般に、折り曲げ軸に沿って、特に陥凹磁石63から始まって、ステント1の位置、好ましくはステント1の中心における最大横方向外形まで増加する。その位置から、ステントの横方向外形は、好ましくは折り曲げ軸に沿って鏡面対称に減少する。ステント1は、胃腸管を通過することをさらに支援するために、展開後構成24において指向性の非鏡面対称の外形をとると考えることもできる。
【0087】
図40を参照すると、以前の最大横幅は、ステント1の展開後構成24において半分だけ低減されることが理解され得る。展開後構成24におけるステント1は、ステント1が胃腸管内で容易に詰まらないように伸長され、患者の肛門を通してより容易に排出され得る。
【0088】
図41および図42は、展開構成3におけるデバイスまたはステント1のさらなる実施形態を示す。ステント1は、第1の圧縮力を加えて、実質的に閉じたループ形状の周りの壁部の第1の組織区域84を圧縮し、第1の区域内の組織の壊死を引き起こし、第2の圧縮力を壁部の第2の組織区域86に、第1の区域の横方向(例えば、半径方向)外側に加えるように構成され、第2の圧縮力は、任意選択的に壊死を引き起こすことなく組織を一緒に押圧するために、第1の圧縮力よりも小さい。
【0089】
ステント1またはデバイス全体は、壁部の第1の組織区域84を、第1の部分と第2の部分との間の実質的に閉じたループ形状の周りで圧縮し、第1の区域内の組織の壊死を引き起こすための、第1および第2の部分7を含む第1の構造と、第1の構造よりも小さい圧縮力で、第1の組織区域84の横方向外側の第2の組織区域86内の組織を圧縮するために、第1の構造の第1および/または第2の部分7の横方向(例えば半径方向)外側に配置された第2の構造26であって、第2の構造が、壊死を引き起こすことなく組織を一緒に押圧するように任意選択的に構成される、第2の構造とを備える。第1の構造は、任意選択的に、先の実施形態のいずれかによる、任意選択的に磁石を有するステント構造であってもよく、またはステント構造を含んでもよい。
【0090】
第2の構造は、二次接続要素71によって形成された半径方向延長部26を備える。二次接続要素71は、ステント1の一部を形成してもよく、および/または、ステントおよび/または磁石に結合される構造によって設けられてもよい。そのような追加の構造は、ステントとは異なる材料、例えばポリマー材料から作製されてもよい。
【0091】
図41および図42は、組織壁に隣接して位置する、近位閉ループ181を形成するステントの近位セクションを示す。ステント1の二次接続要素71は、本質的に星形の外形を形成するように円弧状に半径方向外側に延びる。しかしながら、ステント1の半径方向における組織壁41、42との接触面積を増大させる他の星形および/または非星形の外形が想定される。特に、半円形の楕円および多角形の形状も想定される。また、材料のほぼ連続したバンドが使用されてもよい。二次接続要素71によって形成された半径方向延長部26の遠位セクションはまた、接触面積がさらに最大化されるように接続されてもよい(図41および図42には示されていない)。したがって、磁石6の間のステント1の部分は、圧縮圧力を閉ループ181に沿ってより小さい圧縮力で分配できるように調整することができる。二次接続要素71はまた、ヒンジ、形状記憶合金および/またはばね要素の構造によって、より大きな面積に圧縮力を加えることができる。磁気要素の磁気吸引および/または組織壁への接触から生じる力は、環状線に沿ったより高い圧縮力に加えて、閉ループ(181,182)の間の環状バンドに沿って半径方向延長部26を介して、より大きな表面積にわたって、低減された力で延長することができる。図42に示すように、磁気要素6は、貫通チャネル5がステント付き一時的吻合を形成することができるように剛性接続要素7に接続される。
【0092】
半径方向延長部26の上記の配置は、ステント1の1つの実施形態が、組織壁41、42に調整された圧縮力を加えることを可能にし、圧縮力は、第1の区域、例えば、半径方向内側の環状区域84に集中し、第1の区域を取り囲む第2の区域、例えば、半径方向外側の環状区域86においてより小さい。必要に応じて、追加または補助磁石(図示せず)を延長部26によって担持することもできるが、磁石26よりも弱い圧縮力を提供する。例えば、追加または補助磁石は、磁石26よりも小さくてもよい。
【0093】
加えて、半径方向延長部26の上記の配置は、ステント1の固定をさらに増大させるのに役立つ。必要に応じて、延長部26は、壊死した組織が組織壁41および42から分離した後であってもステント1を吻合に拘束して維持するのに十分に剛性であってもよい。あるいは、延長部26は、吻合の形成後にステント1の組織壁41および42からの実質的な分離を妨げないように、十分に可撓性であってもよい。
【0094】
図示されている実施形態では、磁石は、拡張可能ステントによって担持され、および/または拡張可能ステントに永久的に取り付けられる。これにより、装置全体を単一のステップで導入することができ、身体を通る単一の経路を介して標的部位に接近し、2つの異なるアクセス経路を介して2つの異なるデバイスを使用して標的部位の両側に独立してアクセスする必要がない。しかしながら、磁石6が取り付けられていないステント1も考えられ得る。磁石6は、体内に導入する前にステント1に組み付けることができる。あるいは、ステント移植の前または後に、別個の磁気要素、例えば磁気リングをそれぞれの組織壁上に互いに整合して移植することができ、磁気要素は、組み合わされた装置としてステントと機能的に協働する。
【0095】
上記の説明は、本発明を理解するのに有用な非限定的な例の単なる例示である。本発明の原理から逸脱することなく、多くの修正および均等物を使用することができる。特定の特徴および着想が上記および添付の特許請求の範囲において強調されているが、強調が加えられているか否かにかかわらず、本明細書に記載および/または図面に示されている任意の新規な特徴および/または着想に対する保護が主張される。
図1
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【国際調査報告】