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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】多部品切削ヘッドを有する切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23P 15/28 20060101AFI20240327BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20240327BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20240327BHJP
   B23B 27/18 20060101ALI20240327BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20240327BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B23P15/28 Z
B23C5/10 Z
B23B51/00 M
B23B27/18
B23B27/20
B23B51/00 S
B24D3/00 320B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564653
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2021060627
(87)【国際公開番号】W WO2022223127
(87)【国際公開日】2022-10-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522058040
【氏名又は名称】ツェハ ハルトメタル-ヴェルクツォイグファブリカツィオン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ZECHA HARTMETALL-WERKZEUGFABRIKATION GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ルック、マルティン
【テーマコード(参考)】
3C022
3C037
3C046
3C063
【Fターム(参考)】
3C022KK00
3C037CC08
3C037FF04
3C046GG00
3C046HH00
3C063AA10
3C063BB02
(57)【要約】
本発明は、例えば、エンドミル、ドリル又は彫刻工具のような切削工具(1)のための工具ブランク(30)であって、加工機械の回転工具ホルダに受け入れられるように構成された工具シャンク(2)と、工具シャンク(2)に固定的に接続された切削ヘッドブランク(3)と、を備える工具ブランク(30)に関する。切削ヘッドブランク(3)は複数の切削ヘッドブランク要素(5)を備え、切削ヘッドブランク要素(5)は、互いに固定的に接続され、好ましくは互いにはんだ付けされ、かつ、特には多結晶ダイヤモンドのような高硬度材料で作製される。さらに、本発明は、例えば、エンドミル、ドリル又は彫刻工具のような切削工具(1)に関し、固定的に相互接続された複数の切削ヘッドブランク要素(5)にわたって延びる少なくとも1つの工具刃先(15)が、本発明による工具ブランク(30)に生成されている。さらに、本発明は、工具ブランクの製造方法、及び切削工具の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
例えば、エンドミル、ドリル又は彫刻工具のような切削工具(1)のための工具ブランク(30)であって、
加工機械の回転工具ホルダに受け入れられるように構成された工具シャンク(2)と、
前記工具シャンク(2)に固定的に接続された切削ヘッドブランク(3)と、を備え、
前記切削ヘッドブランク(3)は複数の切削ヘッドブランク要素(5)を備え、前記切削ヘッドブランク要素(5)は、互いに固定的に接続され、好ましくは互いにはんだ付けされ、かつ、特には多結晶ダイヤモンドのような高硬度材料で作製される、工具ブランク(30)。
【請求項2】
複数の前記切削ヘッドブランク要素(5)は、前記工具ブランク(30)の回転軸(R)の方向に延び、かつ、前記回転軸(R)の周りに配置されている複数のスタックコラム(12)の形態で、互いに積み重ねられている、請求項1に記載の工具ブランク(30)。
【請求項3】
1つのスタックコラム(12a)における第1の切削ヘッドブランク要素(5)は、別のスタックコラム(12b)における隣接する第2の切削ヘッドブランク要素(5)に対して、前記回転軸(R)の方向にオフセットして配置される、請求項2に記載の工具ブランク(30)。
【請求項4】
前記オフセット(V)は、前記第1の切削ヘッドブランク要素(5)又は前記第2の切削ヘッドブランク要素(5)の、前記回転軸の方向に測定される高さの20%~80%の範囲内である、請求項3に記載の工具ブランク(30)。
【請求項5】
任意のスタックコラム(12a)における第3の切削ヘッドブランク要素(5)は、同じスタックコラム(12a)における隣接する第4の切削ヘッドブランク要素(5)に対して、前記回転軸(R)を中心として回転オフセット角度(β)で配置される、請求項2~4のいずれか一項に記載の工具ブランク(30)。
【請求項6】
前記回転オフセット角度(β)は10°~80°の範囲内である、請求項5に記載の工具ブランク(30)。
【請求項7】
前記工具ブランク(30)は2つのスタックコラムを有し、複数の前記切削ヘッドブランク要素(5)は、半円筒形状を有し、前記切削ヘッドブランク(3)が円筒形状をなすように配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載の工具ブランク(30)。
【請求項8】
複数の前記切削ヘッドブランク要素(5)は、単一のスタックコラム(12)の形態で配置されるとともに、円筒形状を有し、
前記スタックコラム(12)における隣接する前記切削ヘッドブランク要素(5)は、当接面(7)において互いに当接するとともに、前記当接面(7)において互いに接続されている、請求項1に記載の工具ブランク(30)。
【請求項9】
前記回転軸(R)の方向に互いに当接する2つの前記切削ヘッドブランク要素(5)間の少なくとも1つの当接面(7)は、前記回転軸(R)に対して、少なくとも局所的に75°~89°の範囲内の傾斜角度(α)を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の工具ブランク(30)。
【請求項10】
前記工具シャンク(2)は、前記切削ヘッドブランク(3)が取り付けられる端面に突出しているピン(9)を有し、少なくとも1つの前記切削ヘッドブランク要素(5)にはボア(8)又は凹部が形成され、それにより、前記ボア又は凹部を有する少なくとも1つの前記切削ヘッドブランク要素(5)が、前記工具シャンクの前記ピン(9)に形状的に嵌合する態様で取り付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の工具ブランク(30)。
【請求項11】
前記切削ヘッドブランク要素(4)は、0.2mm~2mmの範囲内、特には約0.5mm~1.5mmの範囲内の、前記回転軸の方向に測定される高さ(x1)を有し、
前記切削ヘッドブランク(3)は、0.2mm~15mmの範囲内、特には約2mm~10mmの範囲内の、前記回転軸の方向に測定される長さ(x2)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の工具ブランク(30)。
【請求項12】
例えば、エンドミル、ドリル又は彫刻工具のような切削工具(1)であって、固定的に相互接続された複数の切削ヘッドブランク要素(5)にわたって延びる少なくとも1つの工具刃先(15)が、請求項1~11のいずれか一項に記載の工具ブランク(30)に生成されている、切削工具(1)。
【請求項13】
少なくとも1つの前記工具刃先(15)は、異なるスタックコラム(7)の切削ヘッドブランク要素(5)間の当接面(7)には接触しない、請求項12に記載の切削工具(1)。
【請求項14】
エンドミル、ドリル、又は彫刻工具のような切削工具(1)用の切削ヘッドブランク(30)を製造する方法であって、少なくとも、
特にはPCDブランクのような高硬度材料で作製された複数の組み立て式の切削ヘッドブランク要素(4)を提供するステップと、
相互接続された前記切削ヘッドブランク要素(4)が、工具シャンク(2)に固定的に接続される切削ヘッドブランク(3)を形成するように、複数の前記切削ヘッドブランク要素(5)を互いにかつ前記工具シャンク(2)に固定的に接続する、好ましくははんだ付けするステップと、を含む、方法。
【請求項15】
固定的に接続するステップは、前記切削ヘッドブランク要素(4)を接続して前記切削ヘッドブランク(3)を形成し、次いで、前記切削ヘッドブランク(3)を前記工具シャンク(2)に接続する、ことによって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
固定的に接続するステップは、個々の前記切削ヘッドブランク要素(5)を前記工具シャンク(2)に、又は、前記工具シャンク(2)に既に接続されている切削ヘッドブランク要素(4)に、1つずつ接続することによって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
例えば、エンドミル、ドリル又は彫刻工具のような切削工具(1)を製造する方法であって、少なくとも、
請求項14~16のいずれか一項に記載の切削ヘッドブランク(3)を提供するステップと、
複数の切削ヘッドブランク要素(5)にわたって前記切削ヘッドブランク(3)に少なくとも1つの工具刃先(15)を生成するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ブランクに関し、また、そのような工具ブランクを有する切削工具に関する。更に、本発明は、工具ブランクを製造する方法、及び切削工具を製造する方法に関する。具体的には、本発明は、多部品切削ヘッドを有する切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
切削工具は、鋼又はソリッドカーバイドで作製された工具シャンクで構成される。切削ヘッドは通常、工具シャンク上にはんだ付けされる。具体的にはレーザを使用することによって、切削ヘッド上に1つ以上の工具刃先が生成される。切削工具の使用目的に応じて、切削ヘッドには、異なる切削材料が使用される。
【0003】
高い耐摩耗性、高い加工信頼度、及び長い工具寿命が必要とされる場合に、切削工具における切削材料として高硬度材料が使用される。
高硬度材料とは、カーバイド及び切削セラミックよりも硬度が高い材料である。具体的には、高硬度材料の中でも、多結晶ダイヤモンド(PCD)、CVD厚膜ダイヤモンド(CVD-D)、バインダレスダイヤモンド(UltraDiamond)、多結晶立方晶窒化ホウ素(CBN)、単結晶ダイヤモンド(MKD)及び天然ダイヤモンドである。高硬度材料の硬度HVは、通常、2000~10000kg/mmの範囲内である。
【0004】
高硬度材料は高価な材料である。例えば、多結晶ダイヤモンドは、更なる加工のためにいわゆるブランクの形態で提供され、ブランクは、体積が増加するにつれて不相応に高価になる。このため、大きな切削ヘッドを有する切削工具の使用は、コストの上昇につながる。更に、PCDブランクの強度は、体積が増加するにつれて低下する。
【0005】
特許文献1から、多結晶成形体が既知である。この多結晶成形体は、第1の表面及び第2の表面を有する基板を含む。第1の多結晶層が基板の第1の表面に付着され、第2の多結晶層が基板の第2の表面に付着される。成形体により、工具の有効厚さを増加することが可能となる。成形体は、高圧の高温プロセスを使用して製造される。
【0006】
特許文献2には、耐熱性多結晶ダイヤモンド体が記載されている。耐熱性多結晶ダイヤモンド体は、互いに重なり合った少なくとも2つの異なる均質なダイヤモンド層を備えており、これらのダイヤモンド層は、各ダイヤモンド層の間の金属拡散障壁中間層によって分離されている。
【0007】
特許文献3には、切削用焼結体インサートが記載されている。この焼結体インサートは、超硬合金、鉄系金属及び高融点金属のうちの少なくとも1つで構成される中間層と、立方晶窒化ホウ素又はダイヤモンドを含有する硬質焼結体で構成され、中間層を挟んで上下の対向面にそれぞれ配置されている第1の層及び第2の層と、を備える。第1の層及び第2の層は、焼結によって中間層に接合される。
【0008】
特許文献4から、多結晶ダイヤモンド(PCD)で作製された複数のロッド形状の要素がマトリックス本体内に配置されている、切削工具として使用するためのダイヤモンドインサートが既知である。
【0009】
特許文献5及び特許文献6には、カーバイドキャリアと、その上に焼結されたPCDのような結晶構造とで構成されるインサートを含む切削工具が記載されている。
この背景に対して、本発明の根底にある技術的課題は、高い耐摩耗性を有する、より低コストの切削工具を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2005/025805号
【特許文献2】米国特許第4766040号明細書
【特許文献3】米国特許第5712030号明細書
【特許文献4】米国特許第5205684号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102017107101号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第4341503号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、加工機械の回転工具ホルダに受け入れられるように構成された工具シャンクと、工具シャンクに固定的に接続された切削ヘッドブランクとを備える、例えば、エンドミル、ドリル又は彫刻工具のような切削工具のための工具ブランクを提供することによって、上述の技術的課題が解決される。次に、切削ヘッドブランクは、複数の切削ヘッドブランク要素を備え、これらの切削ヘッドブランク要素は、互いに固定的に接続され、好ましくは互いにはんだ付けされ、かつ、具体的には多結晶ダイヤモンドのような高硬度材料で作製される。
【0012】
本発明の根底にある概念は、最初に、例えば、はんだ付け、接着などによって、高硬度材料で作製された複数の個々に入手可能な低コストの切削ヘッドブランク要素を互いに接続し、次いで、この多部品切削ヘッドブランク上に、既知の方法で、例えばレーザ切削によって、1つ以上の工具刃先を生成することである。換言すれば、本発明によれば、PCDブランクのような複数の個々の高硬度材料ブランクを最初に一緒に接合して、より大きな切削ヘッドを形成する。
【0013】
個々の切削ヘッドブランク要素を一緒に接続することにより、1つの切削ヘッドブランク要素のみで作製された同じサイズの切削ヘッドブランクと比較して、体積が増加するにつれてコストが増加し強度が低下するという上述の欠点を回避する大きな切削ヘッドブランクを製造することができる。更に、切削ヘッドブランク要素を一緒に接続することにより、より長い切削ヘッドブランクを有し、そのことに対応して長い工具刃先を有する切削工具も、高硬度材料から生成することができる。
【0014】
あらゆる任意の切削ジオメトリを有する工具刃先を切削ヘッドブランク上に生成することができる。好ましくは、切削ジオメトリはレーザ加工される。工具刃先は、複数の切削ヘッドブランク要素にわたって延びている、すなわち、具体的には、例えば一緒にはんだ付けされている2つのPCDブランクのような、2つの相互接続された切削ヘッドブランク要素間の接合部にわたって延びている。
【0015】
切削ヘッドブランク要素が、例えばはんだ接続によって一緒に接続される場合、はんだ接続部は、好ましくは、0.01mm~0.02mmの範囲内の厚さを有する。
本開示の意味における高硬度材料は、具体的には、多結晶ダイヤモンド(PCD)、CVD厚膜ダイヤモンド(CVD-D)、バインダレスダイヤモンド(UltraDiamond)、多結晶立方晶窒化ホウ素(CBN)、単結晶ダイヤモンド(MKD)及び天然ダイヤモンドを含む。
【0016】
本開示の意味における切削工具は、例えば、エンドミル、ドリル、旋盤工具、旋回ねじ切りカッター又はスタイラスとして理解されるべきである。更に、研磨工具及び平滑化工具もまた、本開示の意味における切削工具として理解されるべきであり、研磨工具及び平滑化工具においては、通常、工具刃先ではなく外形輪郭について語られるので、外形輪郭は、工具刃先という用語の意味において、本開示に包含されるべきである。
【0017】
例示的な実施形態では、工具ブランクの複数の切削ヘッドブランク要素は、工具ブランクの回転軸の方向に延び、かつ、回転軸の周りに配置されている複数のスタックコラムの形態で、互いに積み重ねられている。
【0018】
スタックコラム内の隣接する切削ヘッドブランク要素は、当接面において互いに当接し、この当接面において互いに接続されている。切削ヘッドブランク要素は、隣接する切削ヘッドブランク要素が、それら切削ヘッドブランク要素の当接面の区域において形状嵌合接続(formschluessige Verbindung)を形成するように、形成することができる。好ましくは、切削ヘッドブランク要素は、はんだ接続を用いて、当接面において互いに接続される。
【0019】
スタックコラム内で、個々の切削ヘッドブランク要素は、互いに対して回転オフセットされ得る。したがって、スタックコラムの切削ヘッドブランク要素は、切削工具の回転軸の周りに異なる角度で回転オフセットして配置され得る。
【0020】
別の例示的な実施形態では、1つのスタックコラムの第1の切削ヘッドブランク要素は、別のスタックコラムの隣接する第2の切削ヘッドブランク要素から回転軸に沿ってオフセットして配置される。
【0021】
切削ヘッドブランク要素をオフセットして配置することによって、切削ヘッドブランク内の連続的な接合部を回避することができる。切削ヘッドブランク全体を通して任意の平坦な境界面に沿って延びる接合部は、連続的な接合部として理解される。このような連続的な接合部は、切削ヘッドブランクの脆弱点を構成する。切削ヘッドブランク要素をオフセットして配置することによって、そのような連続的な接合部、したがって脆弱点を回避することができる。
【0022】
回転軸に沿って2つの平行なスタックコラムを有する切削ヘッドブランクのスタック構造において、オフセットは、切削ヘッドブランク要素の厚さを回転軸の方向に変化させることによって、単純な方法で達成され得る。
【0023】
このようにして切削ヘッドブランク要素を配置することによって、第1の切削ヘッドブランク要素と、第1の切削ヘッドブランク要素に隣接する第1のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素との間の当接面は、第2の切削ヘッドブランク要素と、第2の切削ヘッドブランク要素に隣接する第2のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素との間の当接面に対してオフセットVだけ離間している。
【0024】
工具ブランクの別の例示的な実施形態では、オフセットは、第1の切削ヘッドブランク要素又は第2の切削ヘッドブランク要素の、回転軸の方向に測定される高さの20%~80%の範囲内である。
【0025】
この大きさのオフセットにより、連続的な接合面が確実に回避される。
別の例示的な実施形態によれば、スタックコラム内の第3の切削ヘッドブランク要素は、同じスタックコラムの隣接する第4の切削ヘッドブランク要素に対して、回転軸を中心として回転オフセット角度で配置される。
【0026】
そのような回転オフセットにより、第3の切削ヘッドブランク要素と、第3の切削ヘッドブランク要素に隣接する別のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素との間の当接面は、第4の切削ヘッドブランク要素と、第4の切削ヘッドブランク要素に隣接する別のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素との間の当接面に対して回転オフセット角度で回転オフセットされている。
【0027】
回転軸の周りの切削ヘッドブランク要素の回転オフセットにより、切削ヘッドの円周方向にオフセットが生成される。したがって、切削ヘッドブランク内の連続的な接合部を回避することができる。
【0028】
工具ブランクの別の例示的な実施形態では、回転オフセット角度は10°~80°の範囲内である。
この大きさのオフセットにより、連続的な接合面が確実に回避される。
【0029】
別の例示的な実施形態では、工具ブランクは、第1のスタックコラムと第2のスタックコラムとを有する。切削ヘッドブランク要素は、半円筒形状を有し、切削ヘッドブランクが円筒形状を有するように配置される。
【0030】
これは単純で良好なスタック構造である。
別の例示的な実施形態では、切削ヘッドブランクの複数の切削ヘッドブランク要素は、単一のスタックコラムの形態で配置され、円筒形状を有する。スタックコラムの隣接する切削ヘッドブランク要素は、当接面において互いに当接し、この当接面において互いに接続されている。
【0031】
好ましくは、切削ヘッドブランク要素は、はんだ接続を用いて、当接面において一緒に接続される。
この実施形態は、切削ヘッドブランクが円筒形の切削ヘッドブランク要素のみを備える単純な構造を構成する。複数の円筒体を互いの上に積み重ねて、大きな円筒体を形成し、円筒体は、外周面上に少なくとも1つの工具刃先を機械加工することができるように形成される。例えば、複数の切削ヘッドブランク要素は、PCDブランク又は切削されたPCDブランクである。
【0032】
別の例示的な実施形態では、回転軸の方向に互いに当接する2つの切削ヘッドブランク要素間の当接面の、回転軸に対する傾斜角度は、少なくとも局所的には75°~89°の範囲内である。
【0033】
傾斜角度を使用することにより、連続的な接合面が回転軸に対して垂直になることが回避される。傾斜角度により、工具刃先における接合部に、回転軸に対して垂直な円周に沿って他の工具刃先が重なる。接合部は、回転軸に沿って測定される、切削ヘッドブランクの異なる高さに配置される。したがって、工具刃先上の切削ヘッドブランク要素の接合部は、全てが回転軸に対して垂直な共通平面内にあるわけではない。
【0034】
当接面は、回転軸に対して連続的な傾斜角度を有することができる。更に、当接面はまた、回転軸に対して異なる傾斜角度の区域を有することができる。例えば、当接面は、嵌め合い形状として形成されている隣接する切削ヘッドブランク要素の円錐状陥没部内に形状的に一致する態様で係合する円錐状隆起部が形成されるように形成することができる。隣接する切削ヘッドブランク要素間の形状嵌合部を製造するために、任意の形状を使用することができる。
【0035】
別の例示的な実施形態では、工具シャンクは、切削ヘッドブランクが取り付けられる端面に突出しているピンを有する。少なくとも1つの切削ヘッドブランク要素内にボア又は凹部が形成され、少なくとも1つの切削ヘッドブランク要素は、工具シャンクのピン上のボア又は凹部に形状的に嵌合する態様で取り付けられる。
【0036】
ピンと切削ヘッドブランク要素内のボア又は凹部とを形状的に一致する態様で互いの上に配置することができるように、ピンと切削ヘッドブランク要素内のボア又は凹部とを互いに整合させることができる。加えて、切削ヘッドブランク要素の位置決めは、ボア及びピンによって単純化される。好ましくは、少なくとも1つの切削ヘッドブランク要素は、はんだ接続を用いてピンに取り付けられる。ピンにより、はんだのための表面積がより大きくなることに起因して強度が増大する。ピンは、記載される実施形態のいずれにおいても追加的に使用することができる。例えば、切削ヘッドブランク要素が形状嵌合接続するように角度を付けて形成されている当接面は、ピンのためのボアを追加的に有することができ、ピンのためのボアによって当接面は、形状的に嵌合する態様でピンに接続可能である。
【0037】
別の例示的な実施形態では、切削ヘッドブランク要素の、回転軸に沿って測定される高さは、0.2mm~2mmの範囲内、具体的には約0.5mm~1.5mmの範囲内である。切削ヘッドブランクの、回転軸の方向に測定される長さは、0.2mm~15mmの範囲内、具体的には約2mm~10mmの範囲内である。
【0038】
本発明の第2の態様によれば、エンドミル、ドリル又は彫刻工具などの切削工具によって、上述の目的が解決される。切削工具では、固定的に相互接続された複数の切削ヘッドブランク要素にわたって延びる少なくとも1つの工具刃先が、本発明の第1の態様による工具ブランク上に生成される。
【0039】
そのような切削工具では、工具刃先は、好ましくは切削ヘッドブランク上にレーザ加工される。本発明による切削ヘッドブランクを使用することによって、長い切削ヘッドブランク、したがって長い工具刃先を実現することができる。当然ながら、このような切削工具は、上述した本発明による工具ブランクの全ての利点を発揮する。
【0040】
本開示の文脈では、切削ヘッドブランク要素という用語は、工具刃先がまだ生成されていない切削ヘッドブランク要素、及び工具刃先が生成された切削ヘッドブランク要素を指すために使用される。工具刃先が生成された切削ヘッドブランクは、切削ヘッドと呼ばれる。
【0041】
切削工具の例示的な実施形態では、少なくとも1つの工具刃先は、第1のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素と第2のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素との間の当接面には接触しない。
【0042】
1つ以上の工具刃先は、工具シャンクに接続されている切削ヘッドの端部から切削ヘッドの終端部まで延びる。第1のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素と第2のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素との間の当接面は、工具刃先がそのような当接面と交差しないように工具刃先の経路と調整される。そのことにより、工具刃先内の脆弱点が回避される。したがって、切削工具の非切削区域に接合部が配置される。
【0043】
好ましくは、工具刃先は、第1のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素と第2のスタックコラムの切削ヘッドブランク要素との間の当接面から、少なくとも0.01mmの距離で離間するように配置される。
【0044】
本発明の第3の態様によれば、エンドミル、ドリル、又は彫刻工具などの切削工具用の切削ヘッドブランクを製造する方法によって、上述の目的が解決される。この方法は、具体的にはPCDブランクのような高硬度材料で作製された複数の切削ヘッドブランク要素を提供するステップと、相互接続された切削ヘッドブランク要素が、工具シャンクに固定的に接続されている切削ヘッドブランクを形成するように、複数の切削ヘッドブランク要素を工具シャンクに固定的に接続するステップ、好ましくははんだ付けするステップと、を含む。
【0045】
切削ヘッドブランク要素は、工具ブランクについて既に記載したような様々なスタック構造で、互いに積み重ねることができる。切削ヘッドブランク要素は、少なくとも1つの工具刃先から機械加工される切削ヘッドブランクを形成する。工具刃先は、好ましくは、レーザによって切削ヘッドブランクへと機械加工される。隣接する切削ヘッドブランク要素が共通の当接面を有する限り、任意の形状をスタック構造で互いに積み重ねることができる。
【0046】
PCDブランクから、例えば、円筒形状又はリング形状を切り出すことができる。リング形状の選択に応じて、大きな円筒から小さな円筒が切り出される。第1の切削工具又は切削ヘッドブランクには、リング形状の切削を使用することができる。より小さい第2の切削工具又は第2の切削ヘッドブランクには、円筒形状の切り出しを使用することができる。
【0047】
切削ヘッドブランクを製造する方法の例示的な実施形態では、固定的に接続するステップは、切削ヘッドブランク要素を接続して切削ヘッドブランクを形成し、次いで、切削ヘッドブランクを工具シャンクに接続することによって行われる。
【0048】
このようなプロセスは、切削ヘッドブランクを工具シャンクから空間的に分離して製造することを可能にする。切削ヘッドブランクが生成されたときにのみ、切削ヘッドブランクは工具シャンクに接続される。
【0049】
切削ヘッドブランクを製造する方法の別の例示的な実施形態では、固定的に接続するステップは、個々の切削ヘッドブランク要素を工具シャンクに、又は、工具シャンクに既に接続されている切削ヘッドブランク要素に、1つずつ接続することによって行われる。
【0050】
この方法は、工具シャンクを取り付けのためのガイド及び補助として使用し、切削ヘッドブランク要素を、例えば工具シャンクのピンに正確に嵌合して個々に接続することを可能にする。
【0051】
本発明の第4の態様によれば、エンドミル、ドリル又は彫刻工具などの切削工具を製造する方法によって、上述の目的が解決される。この方法は、本開示の第3の態様による切削ヘッドブランクを製造するステップを含む。更に、この方法は、複数の切削ヘッドブランク要素にわたって切削ヘッドブランク上に少なくとも1つの工具刃先を生成するステップを含む。
【0052】
本開示による切削ヘッドブランク要素は、以下の市販の円形ブランクから、例えばレーザによって、切削することができる。
elementsix社のPCD円形ブランク、Syndite、R70.0mm/T1.6mm、KT-DP-CMX850、
elementsix社のPCD円形ブランク、Syndite、CTB R743-36007CPL010、180-200-2330-01、及び
elementsix社のCBN円形ブランク、Amborite、DBC50 R574-36008 002、310-200-0353-01。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して以下により詳細に記載され説明される。
図1】本発明による切削工具の側面図を示す。
図2図1に示される断面A-Aに沿った、図1に示される切削工具1の断面図を示す。
図3】第1の実施形態に従った、本発明による工具ブランクの正面図を示す。
図4図3に示される断面B-Bに沿った、図3に示される工具ブランクの断面図を示す。
図5図4に示される断面C-Cに沿った、図3及び図4に示される工具ブランクの断面図を示す。
図6】展開された形態の、図5に描写された4つの工具刃先の概略図を示しており、上下に並べてプロットされている。
図7図3図5に示される工具ブランクの斜め前方から見た斜視図である。
図8】第2の実施形態に従った、本発明による工具ブランクの正面図を示す。
図9図8に示される断面D-Dに沿った、図8に示される工具ブランクの断面図を示す。
図10図9に示される断面E-E及び断面F-Fに沿った、図9に示される工具ブランクの2つの断面図を示す。
図11】回転軸Rに対して垂直な本発明による切削工具の断面図を示す。
図12】第4の実施形態による、本発明による工具ブランクの断面図を示す。
図13】第5の実施形態による、本発明による工具ブランクの断面図を示す。
図14】第6の実施形態に従った、本発明による工具ブランクの断面図を示す。
図15】第7の実施形態による、本発明による工具ブランクの断面図を示す。
図16図14に示される断面G-Gに沿った、図15に示される工具ブランクの断面図を示す。
図17】第8の実施形態に従った、本発明による工具ブランクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、第1の実施形態に従った、本発明による切削工具1の側面図を示す。切削ヘッド6は、シャンク接合部11において工具シャンク2に接続される。使用中、切削工具1は、回転軸Rを中心に回転する。切削ヘッド6は、切削ヘッドブランク3上に工具刃先15を生成することによって製造される。したがって、図1では、もはや切削ヘッドブランク3は見えない。切削ヘッド6へと既に更に加工された切削ヘッドブランク3が示されている。切削ヘッドブランク3は、互いに積み重ねられた複数の切削ヘッドブランク要素5によって形成される。切削ヘッドブランク要素5は、スタック状構造で互いに積み重ねられている。隣接する切削ヘッドブランク要素5は、当接面7において互いに当接する。したがって、切削ヘッドブランク要素5は、図1ではもはや見えない。既に更に加工された切削ヘッドブランク要素5が示されている。本開示において、切削ヘッドブランク要素という用語は、工具刃先が生成された切削ヘッドブランク要素にも使用される。
【0055】
切削ヘッドブランク要素5a、5c、5dが、切削ヘッドブランク要素5について例示的に示されており、当接面7b、7c、7dが、当接面7について例示的に示されている。切削ヘッドブランク要素5aは、当接面7bにおいて切削ヘッドブランク要素5cに当接する。更に、切削ヘッドブランク要素5aは、当接面7cにおいて切削ヘッドブランク要素5dに当接する。切削ヘッドブランク要素5cと切削ヘッドブランク要素5dとは、当接面7dにおいて互いに当接する。
【0056】
複数の切削ヘッドブランク要素5にわたって、複数の工具刃先15が延びる。
互いに固定的に接続されている複数の切削ヘッドブランク要素5は、回転軸Rの方向に、かつ回転軸Rの周りに配置される。
【0057】
当接面7b、7cは、回転軸Rに対して垂直ではなく、回転軸Rに対して角度αで傾斜している。
図2は、断面A-Aに沿った、図1に示される切削工具1の断面図を示す。断平面は、当接面7b及び7cを通って延びている。したがって、断平面は、回転軸Rに対して角度αで配置される。当接面7bと当接面7cとは、当接面7aにおいて互いに当接し、当接面7aで互いに接続される。切削ヘッドブランク要素5aの外周と切削ヘッドブランク要素5bの外周の両方に、2つの工具刃先15が生成される。
【0058】
図3は、第1の実施形態に従った、本発明による工具ブランク30の正面図を示す。
工具刃先15はまだ、切削ヘッドブランク3上に生成されていない。工具シャンク2上にピン9が配置されている。2つの切削ヘッドブランク要素5e、5fは、ピン9上に上下に配置される。切削ヘッドブランク要素5eと切削ヘッドブランク要素5fとは、当接面7e及び7fにおいて当接し、一緒に接続される。加えて、切削ヘッドブランク要素5e、5fは、シャンク接合部11において、工具シャンク2のピン9に接続される。
【0059】
図4は、図3に示される断面B-Bに沿った、図3に示される工具ブランク30の断面図である。合計7個の切削ヘッドブランク要素5e、5f、5g、5h、5i、5j、5kが、工具シャンク2のピン9上に配置される。ピン9の右側に配置されている2つの切削ヘッドブランク要素5e、5fは、図3に示される切削ヘッドブランク要素5e、5fである。
【0060】
切削ヘッドブランク要素5e、5f、5g、5h、5i、5j、5kは、当接面7g、7h、7i、7j、7kにおいて互いに当接し、当接面7g、7h、7i、7j、7kで互いに接続される。切削ヘッドブランク要素5e、5f、5g、5h、5i、5j、5kは、シャンク接合部11において、工具シャンク2に又は工具シャンク2のピン9に接続される。切削ヘッドブランク要素5e、5i、5j、5kは、第1のスタックコラム12aの形態で回転軸Rの方向に互いに積み重ねられ、切削ヘッドブランク要素5f、5g、5hは、第2のスタックコラム12bの形態で回転軸Rの方向に互いに積み重ねられる。第1のスタックコラム12a及び第2のスタックコラム12bは、上下に配置される。第1のスタックコラム12a及び第2のスタックコラム12bは、互いに対して平行に配置される。
【0061】
第1のスタックコラム12aの切削ヘッドブランク要素5e、5i、5j、5k及び第2のスタックコラム12bの切削ヘッドブランク要素5f、5g、5hは、回転軸Rの方向に互いからオフセットして配置される。したがって、第1のスタックコラム12aの当接面7g、7h、7iと第2のスタックコラム12bの当接面7j、7kとの間には、回転軸Rの方向にオフセットVがある。例えば、図4には、当接面7jと当接面7hとの間のオフセットVが示されている。
【0062】
図5は、図4に示される断面C-Cに沿った、図3及び図4に示される工具ブランク30の断面図である。シャンク接合部11を有する切削ヘッドブランク要素5gは、下方からピン9に取り付けられる。ピン9の上半分では、断面は、切削ヘッドブランク要素5jと切削ヘッドブランク要素5kとの間の当接面7hを、ちょうど通って延びる。したがって、切削ヘッドブランク要素5jの端面が示されている。切削ヘッドブランク要素5jと切削ヘッドブランク要素5gとは、当接面7l、7mにおいて互いに当接し、当接面7l、7mで互いに接続される。更に、4つの工具刃先15c~15fが示されている。工具刃先15c~15fの描写は、工具ブランク上の正面図に対応しており、断面C-Cには沿った断面図に対応していない。工具刃先15c~15fは、単に例として図5に図示されている。また、第1の実施形態を示す図3図4及び図7では、工具刃先15c~15fは図示されていない。
【0063】
図6は、図5に示される4つの工具刃先15の概略図を示す。切削ヘッドブランクの回転軸Rの周りに配置されている4つの工具刃先15c~15fは、図6において、左から右へと展開された形態で示されており、上下に並べてプロットされている。図6に示される工具切削長さLは、それぞれ、工具シャンク2に接続されている切削ヘッド6の端部から切削ヘッド6の終端部までの工具刃先15c~15fの長さである。4つの工具刃先15c~15fの工具切削長さLは等しい長さである。
【0064】
更に、図6は、展開された形態で描写されている4つの工具刃先15c~15fの各々について、工具刃先15c~15fのいかなる長さに当接面7が位置しているか、すなわち、1つの切削ヘッドブランク要素5から別の切削ヘッドブランク要素5にわたって工具刃先がいかなる点/長さまで延びているかを示す。工具刃先15cの当接面5と工具刃先15eの当接面5とは、等しい長さに位置する。工具刃先15dの当接面5と工具刃先15fの当接面5とは、等しい長さに位置する。しかし、工具刃先15c及び15eの当接面5は、工具刃先15d及び15fと比較して、工具刃先に沿って異なる長さに位置する。したがって、工具刃先15c及び15eの当接面5は、工具刃先15d及び15fの当接面5からオフセットして配置される。
【0065】
図7は、図3図5に示される工具ブランク30の斜め前方から見た斜視図である。切削ヘッドブランク要素5e、5i、5j、5kは、第1のスタックコラム12aにおいて、回転軸Rの方向に、切削ヘッドブランク要素5f、5g、5hによって形成されている第2のスタックコラム12bに対して平行に延びる。切削ヘッドブランク要素5e、5f、5g、5h、5i、5j、5kは、スタック構造6の形態で互いに積み重ねられている。それらは、当接面7で互いに当接しており、それらのうち当接面7g、7h、7jが例示的に示されている。更に、回転軸Rに対して垂直な方向で互いに当接する切削ヘッドブランク要素の当接面は、当接面7e、7fとして例示的に示されている。
【0066】
回転軸Rの方向に互いにオフセットして配置されている切削ヘッドブランク要素5e、5f、5g、5h、5i、5j、5kにより、例えば、当接面7jは、当接面7g又は7hに直接接していない。
【0067】
図8は、第2の実施形態に従った、本発明による工具ブランク30の正面図を示す。
工具シャンク2にはピン9が取り付けられている。2つの切削ヘッドブランク要素5l、5mは、ピン9上に上下に配置される。切削ヘッドブランク要素5lと切削ヘッドブランク要素5mとは、当接面7n及び7oにおいて当接し、一緒に接続される。更に、切削ヘッドブランク要素5l及び5mは、シャンク接合部11において、工具シャンク2のピン9に接続される。
【0068】
図9は、図8に示される断面D-Dに沿った、図8に示される工具ブランク30の断面図である。工具シャンク2のピン9は、回転軸Rの方向に、6つの切削ヘッドブランク要素5l、5m、5n、5o、5p、5qを通過するボア8内に延びる。切削ヘッドブランク要素5l、5m、5n、5o、5p、5qは、当接面7において互いに当接し、当接面7のうち当接面7p、7qは、図9に例示的に示されている。シャンク接合部11において、切削ヘッドブランク要素5l、5m、5n、5o、5p、5qは、工具シャンク2に又は工具シャンク2のピン9に接続される。切削ヘッドブランク要素5l、5m、5n、5o、5p、5qは、オフセットVなしで回転軸Rの方向に配置される。
【0069】
図10は、図9に示される断面E-E及び断面F-Fに沿った、図9に示される工具ブランク30の2つの断面図を示す。断面E-Eは、切削ヘッドブランク要素5o、5pの端面を示す。断面E-Eは、切削ヘッドブランク要素5n、5qの端面を示す。
【0070】
左側に示される断面E-Eでは、2つの切削ヘッドブランク要素5oと切削ヘッドブランク要素5pとの間の当接面7r及び7sを見ることができる。更に、2つの切削ヘッドブランク要素5nと切削ヘッドブランク要素5qとの間の当接面7t及び7uは、右側に示される断面F-Fに示されるように、破線で示される。逆に、右側に示されている断面F-Fでは、断面E-Eに示されている当接面7r及び7sが破線で示される。当接面7r及び7sは、当接面7t及び7uに対して回転オフセット角度βで配置されている。
【0071】
図11は、回転軸Rに対して垂直な切削工具の別の例示的な実施形態の断面図である。2つの切削ヘッドブランク要素5は、2つの当接面7v、7wにおいて互いに接続される。更に、切削ヘッドブランク要素5は、ピン接合部11において、工具シャンク2のピン9に接続される。切削ヘッドブランク要素5の各々の外周には2つの工具刃先15が配置され、工具刃先15のうち工具刃先15a及び15bが例示的に示されている。当接面7vは、工具刃先15aと工具刃先15bとの間に延びる。加えて、工具刃先15aと工具刃先15bとの間にあり、工具刃先15a及び15bから離間している区域Bが示されている。この区域は、当接面7vが配置される区域を特定する。同じことが、図11には示されていない他の工具刃先の間にある区域にも当てはまる。したがって、これらの区域における接合部もまた、工具刃先からある距離をおいて配置される。
【0072】
図12図17は、本発明による工具ブランクの更なる例示的な実施形態を示す。
図12は、例示的な第4の実施形態の断面図を示す。図12において、切削ヘッドブランク3は、3個の切削ヘッドブランク要素5のスタック構造によって形成される。切削ヘッドブランク要素5は、回転軸Rの方向に測定される高さx1を有する。切削ヘッドブランク3は、回転軸Rの方向に測定される長さx2を有する。
【0073】
図13は、例示的な第5の実施形態の断面図を示す。図13において、切削ヘッドブランク3は、10個の切削ヘッドブランク要素5のスタック構造によって形成される。9個の切削ヘッドブランク要素5が、工具シャンク2のピン9に上方及び下方からそれぞれ取り付けられており、これらの9個の切削ヘッドブランク要素5の接合部7は、回転軸Rの方向にオフセットVを有する。右端には、切削ヘッドブランク要素5が、ピン9の端面に終端として追加的に取り付けられる。このような実施形態は、具体的には、エンドカット工具及び成形工具に好適である。
【0074】
図14は、例示的な第6の実施形態の断面図を示す。図14において、切削ヘッドブランク3は、6個の切削ヘッドブランク要素5のスタック構造によって形成される。切削ヘッドブランク要素5の間の当接面7は、回転軸Rに対して垂直ではなく、回転軸Rに対して角度αで傾斜して配置されている。
【0075】
図15は、ピン9上に配置された5つの切削ヘッドブランク要素5を有する例示的な第7の実施形態の断面図を示す。切削ヘッドブランク要素5rと切削ヘッドブランク要素5sとの間の当接面7xは、回転軸Rに対して直角ではない。
【0076】
図16は、図15に示される断面G-Gに沿った、図15に示される工具ブランクの断面図を示す。
図17は、第8の実施形態に従った、本発明による工具ブランクの断面図である。図17において、切削ヘッドブランク3は、6個の切削ヘッドブランク要素5のスタック構造によって形成される。切削ヘッドブランク要素5の間の当接面7は、回転軸Rに対して直角ではなく、回転軸に対して斜めに角度αで配置されている。図14に示される実施形態とは対照的に、当接面は、回転軸Rからの断面図に見られるとおり、回転軸Rに対して対称に外向きに延びるように追加的に角度が付けられている。したがって、当接面7は、隣接する切削ヘッドブランク要素5の対向形状の凹部と形状嵌合接続される先端を回転軸Rの領域内に形成する。
【0077】
加えて、図15に示すように、切削ヘッドブランク要素5内にピン及びボアを提供することができる。このようなピン及びボアは、図17には示されていない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明による切削工具により、小さな切削ヘッドブランク要素から、相対的に大きな切削ヘッドブランク、又は長い工具刃先を有する大きな切削ヘッドを生成することが可能になる。このような大きな切削工具は、例えばPCDブランクに関して知られているような、体積に伴う不相応なコストの増加を生じない。このため、高い耐摩耗性、優れた加工信頼度、及び長い工具寿命を有する切削工具、並びに大きな切削ヘッドを有する切削工具を、本発明を使用してより低コストで製造することができる。
【0079】
次に図7及び図1を参照して、切削工具の製造プロセスについて以下に詳細に説明する。
切削ヘッドブランク要素5は、図7に示される工具シャンク2のピン9に次々と取り付けられる。この目的のために、例えば、切削ヘッドブランク要素5iが、シャンク接合部11において工具シャンク2に接続されるように、最初にピン9に取り付けられる。シャンク接合部11は、回転軸に対して垂直に延びる工具シャンク2の断面との接続部と、ピン9との接続部の両方を指す。次々と、他の切削ヘッドブランク要素5がピン9に取り付けられる。切削ヘッドブランク要素5は、例えば、はんだ接続によって、当接面7において互いに接続される。このようにすると、図7に示すように、切削ヘッドブランク3が生成される。切削ヘッドブランクは、合計7個の切削ヘッドブランク要素5で構成される。次いで、この切削ヘッドブランク3上に、少なくとも1つの工具刃先15が生成される。それによって、切削ヘッド6が生成される。例えば、図1に描写するような切削ヘッド6が得られる。工具刃先15は、複数の切削ヘッドブランク要素5にわたって延びる。
【符号の説明】
【0080】
1 切削工具
2 工具シャンク
3 切削ヘッドブランク
5、5a~5q 切削ヘッドブランク要素
6 切削ヘッド
7、7a~7u 当接面
8 ボア、貫通孔
9 ピン
11 シャンク接合部
12、12a、12b スタックコラム
15 工具刃先
30 工具ブランク
R 回転軸
A 傾斜角度
β 回転オフセット角度
V オフセット
x1 切削ヘッドブランクの高さ
x2 切削ヘッドの長さ
L1 要素円筒の高さ、要素半円筒の高さ
L2 ブランク円筒の高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】