(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20240327BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240327BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20240327BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20240327BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20240327BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20240327BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20240327BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B1/00 601
C22B1/02
C22B3/04
C22B23/00 102
C22B26/12
C22B47/00
H01M10/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565337
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 CN2022110995
(87)【国際公開番号】W WO2023029898
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111020944.1
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522263633
【氏名又は名称】格林美股▲ブン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GEM CO,. LTD
【住所又は居所原語表記】NUMBER 2008, 20F BLOCK A, MARINA BAY CENTER, SOUTH OF XINGHUA RD., BAO’AN CENTER, SHENZHEN, GUANGDONG 518101, CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】508149663
【氏名又は名称】▲荊▼▲門▼市格林美新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】許 開華
(72)【発明者】
【氏名】蒋 良興
(72)【発明者】
【氏名】楊 健
(72)【発明者】
【氏名】張 坤
(72)【発明者】
【氏名】李 晨威
(72)【発明者】
【氏名】陳 永安
(72)【発明者】
【氏名】頼 延清
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA05
4K001CA09
4K001CA11
4K001DB07
5H031EE01
5H031EE03
5H031HH03
5H031HH06
5H031HH09
5H031RR02
(57)【要約】
本発明は、使用済みリチウムイオン電池の回収技術分野に関し、使用済みリチウムイオン電池に対する短絡放電、解体、粉砕、焙焼、篩分けを行って電極活物質粉末を得るステップと、アルカリ溶液を使用して電極活物質粉末をアルカリ洗浄処理し、濾過して銅とアルミニウムを除去するステップと、アルカリ洗浄処理後の電極活物質粉末を乾燥し、乾燥した電極活物質粉末と澱粉及び濃硫酸を所定の割合で混合し、均一に撹拌して混合材料を得るステップと、混合材料をコランダムるつぼに投入した後、コランダムるつぼを管状焙焼炉に入れ、雰囲気を制御して焙焼を行うステップと、焙焼して得た生成物を、脱イオン水を用いて浸出して有価金属イオンを含む浸出液と浸出残渣を取得し、濾過後に浸出液を取得するステップと、を含む使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法を提供する。本発明により、浸出液中の不純物イオン濃度を低減し、有価金属回収の純度及び総合回収率を向上させ、回収コストを低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法において、
ステップ1:前処理
使用済みリチウムイオン電池に対する短絡放電、解体、粉砕、焙焼、篩分けを行って電極活物質粉末を得る前処理ステップであって、前記使用済みリチウムイオン電池は、使用済みのリチウムニッケル酸化物リチウムイオン電池、リチウムコバルト酸化物リチウムイオン電池、リチウムマンガン酸化物リチウムイオン電池、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物リチウムイオン電池のうちの1種または複数種であるステップ1と、
ステップ2:アルカリ洗浄と濾過
アルカリ溶液を使用して電極活物質粉末をアルカリ洗浄処理し、濾過して銅とアルミニウムを除去するステップ2と、
ステップ3:乾燥とサイジング剤配合
アルカリ洗浄処理後の電極活物質粉末を乾燥し、乾燥した電極活物質粉末と澱粉及び濃硫酸を所定の割合で混合し、均一に撹拌して混合材料を得るステップ3と、
ステップ4:高温還元
前記混合材料をコランダムるつぼに投入した後、コランダムるつぼを管状焙焼炉に入れ、雰囲気を制御して焙焼を行うステップ4と、
ステップ5:水浸出と濾過
ステップ4で焙焼して得た生成物を取り出し、脱イオン水を用いて浸出して有価金属イオンを含む浸出液と浸出残渣を取得し、濾過後に浸出液を取得するステップ5と、を含むことを特徴とする使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【請求項2】
前記ステップ1では、前記使用済みリチウムイオン電池を、溶質濃度が5~20%である亜硫酸ナトリウム溶液中で終止電圧が1V未満になるまで短絡放電させ、短絡放電後の使用済みリチウムイオン電池を解体してセルを取得し、セルを粉砕して粉砕物を取得し、粉砕物を空気雰囲気下で2~10℃/分の速度で400~600℃まで昇温し、保温・焙焼して接着剤を剥離し、接着剤の剥離中では、濃度50mg/L以上の石灰水を使用して剥離過程中に放出される排ガスを吸収してフッ化カルシウムを取得し、剥離後の生成物を分離してAl、Cu箔及び電極活物質を取得することを特徴とする請求項1に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【請求項3】
前記ステップ2において、前記アルカリ溶液はNaOH、NH
4OH、KOHのうちの1種または複数種であり、前記アルカリ溶液のPH値は10~14であり、アルカリ洗浄時間は10~60分間に制御され、温度は20~50℃に制御されることを特徴とする請求項1に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【請求項4】
前記ステップ2において、前記アルカリ溶液のPH値は10~12であり、アルカリ洗浄時間は10~30分間に制御され、温度は25~35℃に制御されることを特徴とする請求項3に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【請求項5】
前記ステップ3において、サイジング剤配合過程中に、乾燥した電極活物質粉末と澱粉とを混合した後、濃硫酸を固液比50~300g/Lで混合して均一に撹拌し、ここで澱粉の添加量は5~20wt.%に制御されることを特徴とする請求項1に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【請求項6】
前記ステップ3において、澱粉の添加量は5~10wt.%に制御され、固液比は100~150g/Lに制御されることを特徴とする請求項5に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【請求項7】
前記ステップ4において、焙焼温度は300~800℃に制御され、昇温速度は10℃/分であり、焙焼時間は30~180分間であり、前記雰囲気はO
2とN
2の混合物であり、O
2の体積分率は0~50%に制御されることを特徴とする請求項1に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【請求項8】
前記ステップ4において、焙焼温度は500~800℃に制御され、焙焼時間は60~120分間であり、O
2の体積分率は10~20%に制御されることを特徴とする請求項7に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【請求項9】
前記ステップ5において、脱イオン水浸出過程中に、固液比は50~100g/Lに制御され、温度は50~90℃であり、浸出時間は30~180分間であることを特徴とする請求項1に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【請求項10】
前記ステップ5において、脱イオン水浸出過程中に、固液比は50~80g/Lに制御され、温度は60~80℃であり、浸出時間は60~90分間であることを特徴とする請求項9に記載の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みリチウムイオン電池の回収技術分野に関し、特に、使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代科学技術の高速発展に伴い、社会のエネルギーと環境生態汚染問題がますます顕著になり、特に各種廃棄電池による環境と生態の汚染問題はすでに社会の注目を集めている。リチウムイオン電池は、高容量、安定したサイクル性能、高い作業プラットフォーム電圧などの特徴により、動力電池やエネルギー貯蔵電池の分野で広く使用されているが、動力及びエネルギー貯蔵電池は一般に通常の小型電池よりも電池材料の需要が多い。そのため、今後3~5年以内に大量のリチウムイオン電池が廃棄されることになり、それを回収することは社会的価値が高い。
【0003】
現在、中国の使用済みリチウムイオン電池の回収技術において、使用済みリチウムイオン電池の電極活物質の主流の処理方法としては、1)酸化・還元浸出により、Li+、Ni2+、Co2+、Mn2+、Al3+、Fe3+等のイオンを含む浸出液を取得し、鉄とアルミニウムを沈殿除去した後、PH値を調整してそれぞれ単一金属の沈殿物を取得し、2)鉄とアルミニウムを沈殿除去した後、ニッケル、コバルト、マンガンを抽出し、酸で逆抽出して、ニッケルまたはコバルトまたはマンガンのみを含む塩溶液を取得する。既存の使用済みリチウムイオン電池の回収技術には依然として一定の欠陥がある。例えば、中国特許出願公開CN104538695Aで開示された「ニッケルコバルトマンガン酸リチウム電池から有価金属を回収し、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムを製造する方法」では、酸浸出法によりニッケルコバルトマンガン酸リチウムの使用済み電池における有価金属を回収し、まず、電極活物質を無機酸で浸出して浸出液を取得し、鉄とアルミニウムを沈殿除去した後、アルカリを加えて異なるPH値に制御して単一金属の対応する沈殿物を取得し、最後にリチウムの回収を行っている。この方法は、使用済み三元系リチウムイオン電池の回収を実現したが、製品の純度が高くないという問題があり、酸浸出過程では分解されにくい無機酸廃水が生成して二次汚染の原因となる。また、中国特許出願公開CN102162034Aで開示された「廃リチウム電池から有価金属を回収するプロセス」のように、前処理、浸出プロセス、化学的不純物除去、抽出・分離等のプロセスステップを利用して、コバルト、銅、ニッケル、アルミニウムなどの有価金属の回収を実現したが、抽出・分離過程には高価な抽出剤が使用され、操作が煩雑である。このプロセスは工業生産で使用される回収プロセスに近いが、いずれも回収コストが高いという欠点がある。上記のプロセスは、すべて酸性浸出から始まり、不純物を除去してニッケル、コバルト、マンガンなどの金属を回収し、最後にリチウムを回収し、ただ単純な使用済みリチウムイオン電池の処理方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に存在する問題点に鑑みて、本発明は、浸出液中の不純物イオン濃度を低減し、有価金属回収の純度及び総合回収率を向上させ、回収コストを低減することができる使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術手段として、
使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法は、以下のステップ1~5を含むことを特徴とする。
【0006】
ステップ1:前処理
使用済みリチウムイオン電池に対する短絡放電、解体、粉砕、焙焼、篩分けを行って電極活物質粉末を得る前処理ステップであって、前記使用済みリチウムイオン電池は、使用済みのリチウムニッケル酸化物リチウムイオン電池、リチウムコバルト酸化物リチウムイオン電池、リチウムマンガン酸化物リチウムイオン電池、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物リチウムイオン電池のうちの1種または複数種である。
【0007】
ステップ2:アルカリ洗浄と濾過
アルカリ溶液を使用して電極活物質粉末をアルカリ洗浄処理し、濾過して銅とアルミニウムを除去する。
【0008】
ステップ3:乾燥とサイジング剤配合
アルカリ洗浄処理後の電極活物質粉末を乾燥し、乾燥した電極活物質粉末と澱粉及び濃硫酸を所定の割合で混合し、均一に撹拌して混合材料を得る。
【0009】
ステップ4:高温還元
前記混合材料をコランダムるつぼに投入した後、コランダムるつぼを管状焙焼炉に入れ、雰囲気を制御して焙焼を行う。
【0010】
ステップ5:水浸出と濾過
ステップ4で焙焼して得た生成物を取り出し、脱イオン水を用いて浸出して有価金属イオンを含む浸出液と浸出残渣を取得し、濾過後に浸出液を取得する。
【0011】
さらに、前記ステップ1では、前記使用済みリチウムイオン電池を、溶質濃度が5~20%である亜硫酸ナトリウム溶液中で終止電圧が1V未満になるまで短絡放電させ、短絡放電後の使用済みリチウムイオン電池を解体してセルを取得し、セルを粉砕して粉砕物を取得し、粉砕物を空気雰囲気下で2~10℃/分の速度で400~600℃まで昇温し、保温・焙焼して接着剤を剥離し、接着剤の剥離中では、濃度50mg/L以上の石灰水を使用して剥離過程中に放出される排ガスを吸収してフッ化カルシウムを取得し、剥離後の生成物を分離してAl、Cu箔及び電極活物質を取得する。
【0012】
さらに、前記ステップ2において、前記アルカリ溶液はNaOH、NH4OH、KOHのうちの1種または複数種であり、前記アルカリ溶液のPH値は10~14であり、アルカリ洗浄時間は10~60分間に制御され、温度は20~50℃に制御される。
【0013】
さらに、前記ステップ2において、前記アルカリ溶液のPH値は10~12であり、アルカリ洗浄時間は10~30分間に制御され、温度は25~35℃に制御される。
【0014】
さらに、前記ステップ3において、サイジング剤配合過程中に、乾燥した電極活物質粉末と澱粉とを混合した後、濃硫酸を固液比50~300g/Lで混合して均一に撹拌し、ここで澱粉の添加量は5~20wt.%に制御される。
【0015】
さらに、前記ステップ3において、澱粉の添加量は5~10wt.%に制御され、固液比は100~150g/Lに制御される。
【0016】
さらに、前記ステップ4において、焙焼温度は300~800℃に制御され、昇温速度は10℃/分であり、焙焼時間は30~180分間であり、前記雰囲気はO2とN2の混合物であり、O2の体積分率は0~50%に制御される。
【0017】
さらに、前記ステップ4において、焙焼温度は500~800℃に制御され、焙焼時間は60~120分間であり、O2の体積分率は10~20%に制御される。
【0018】
さらに、前記ステップ5において、脱イオン水浸出過程中に、固液比は50~100g/Lに制御され、温度は50~90℃であり、浸出時間は30~180分間である。
【0019】
さらに、前記ステップ5において、脱イオン水浸出過程中に、固液比は50~80g/Lに制御され、温度は60~80℃であり、浸出時間は60~90分間である。
【発明の効果】
【0020】
(1)本発明は、予め電極活物質をアルカリ洗浄して銅とアルミニウムを除去した後、高温還元と水浸出による回収方式を採用して、従来の使用済みリチウムイオン電池から有価金属を回収する方法を打ち破った。一方、本発明は電極活物質を予めアルカリ洗浄して不純物を除去することで、浸出液中の不純物イオン濃度を大幅に低減し、既存の使用済みリチウムイオン電池の回収技術に存在する、製品純度が高くないという問題を解決し、従来の回収プロセスの不純物除去工程における同伴による有価金属の損失を回避し、有価金属の総合回収率を効果的に向上させる。他方、本発明は、高温還元-沈殿の総合方法を採用して有価金属を回収することにより、単一沈殿法による回収製品の品質が高くなく、処理規模が小さく、プロセスが複雑であるという問題を解決し、Cu、Ni、Coなどの有価金属を個別に回収する際に高価な抽出剤を使用する必要がなく、回収コストを大幅に削減することができる。
【0021】
(2)本発明は、様々な使用済みリチウムイオン電池を同時に処理することができ、別々に回収する必要がなく、閉回路フローの形成に適しており、二次汚染が発生せず、環境保護と経済的利益を両立し、操作条件の変動可能範囲が大きく、操作が簡単で再現性に優れており、ほとんど実験室にのみ適用される従来の方法とは異なり、本発明は工業的な拡大生産に特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】特定の実施形態における本発明の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図面及び特定の実施形態を組み合わせてさらに詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の使用済みリチウムイオン電池からの有価金属の回収方法は、以下のステップ1~5を含む。
【0025】
ステップ1:前処理
使用済みリチウムイオン電池を短絡放電、解体、粉砕、焙焼、篩分けして電極活物質粉末を取得する。
【0026】
本発明では、使用済みリチウムイオン電池を短絡放電させ、放電後の使用済みリチウムイオン電池を解体し、解体後に得られたセルを粉砕し、接着剤を剥離し、分離して電極活性成分を得る等の操作はいずれも当該技術分野で周知の操作を使用することができる。好ましくは、本発明は、前記使用済みリチウムイオン電池を、溶質濃度が5~20%である亜硫酸ナトリウム溶液中で終止電圧が1V未満になるまで短絡放電させ、短絡放電後の使用済みリチウムイオン電池を解体してセルを取得し、セルを粉砕して粉砕物を取得し、粉砕物を空気雰囲気下で2~10℃/分の速度で400~600℃まで昇温し、保温・焙焼して接着剤を剥離し、接着剤の剥離中では、濃度50mg/L以上の石灰水を使用して剥離過程中に放出される排ガスを吸収してフッ化カルシウムを取得し、剥離後の生成物を分離してAl、Cu箔及び電極活物質を取得する。
【0027】
前記使用済みリチウムイオン電池は、使用済みのリチウムニッケル酸化物リチウムイオン電池、リチウムコバルト酸化物リチウムイオン電池、リチウムマンガン酸化物リチウムイオン電池、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物リチウムイオン電池のうちの1種または複数種である。本発明は、様々な使用済みリチウムイオン電池を同時に処理することができ、別々に回収する必要がなく、閉回路フローの形成に適しており、二次汚染が発生せず、環境保護と経済的利益を両立し、操作条件の変動可能範囲が大きく、操作が簡単で再現性に優れており、ほとんど実験室にのみ適用される従来の方法とは異なり、本発明は工業的な拡大生産に特に適している。
【0028】
ステップ2:アルカリ洗浄と濾過
アルカリ溶液を使用して電極活物質粉末をアルカリ洗浄処理し、濾過して銅とアルミニウムを除去する。
【0029】
前記アルカリ溶液はNaOH、NH4OH、KOHのうちの1種または複数種であり、前記アルカリ溶液のPH値は10~14であり、アルカリ洗浄時間は10~60分間に制御され、温度は20~50℃に制御される。さらに、前記アルカリ溶液のPH値は10~12であり、アルカリ洗浄時間は10~30分間に制御され、温度は25~35℃に制御される。
【0030】
本発明では、電極活物質を予めアルカリ洗浄して不純物を除去することで、不純物金属であるアルミニウムは基本的に除去でき、銅の大部分も除去でき、浸出液中の不純物イオン濃度を大幅に低減し、不純物イオン濃度が低く、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンなどの有価金属イオンを豊富に含む浸出液を得ることができ、既存の使用済みリチウムイオン電池の回収技術に存在する、製品純度が高くないという問題を解決し、従来の回収プロセスの不純物除去工程における同伴による有価金属の損失を回避し、有価金属の総合回収率を効果的に向上させる。
【0031】
ステップ3:乾燥とサイジング剤配合
アルカリ洗浄処理後の電極活物質粉末を乾燥し、乾燥した電極活物質粉末と澱粉及び濃硫酸を所定の割合で混合し、均一に撹拌して混合材料を得る。
【0032】
サイジング剤配合過程中に、乾燥した電極活物質粉末と澱粉とを混合した後、濃硫酸を固液比50~300g/Lで混合して均一に撹拌し、ここで澱粉の添加量は5~20wt.%に制御される。さらに、澱粉の添加量は5~10wt.%に制御され、固液比は100~150g/Lに制御される。
【0033】
ステップ4:高温還元
前記混合材料をコランダムるつぼに投入した後、コランダムるつぼを管状焙焼炉に入れ、雰囲気を制御して焙焼を行う。
【0034】
高温還元過程において、焙焼温度は300~800℃に制御され、昇温速度は10℃/分であり、焙焼時間は30~180分間であり、前記雰囲気はO2とN2の混合物であり、O2の体積分率は0~50%に制御される。さらに、焙焼温度は500~800℃に制御され、焙焼時間は60~120分間であり、O2の体積分率は10~20%に制御される。
【0035】
ステップ5:水浸出と濾過
ステップ4で焙焼して得た生成物を取り出し、脱イオン水を用いて浸出して有価金属イオンを含む浸出液と浸出残渣を取得し、濾過後に浸出液を取得する。
【0036】
脱イオン水浸出過程中に、固液比は50~100g/Lに制御され、温度は50~90℃であり、浸出時間は30~180分間である。さらに、脱イオン水浸出過程中に、固液比は50~80g/Lに制御され、温度は60~80℃であり、浸出時間は60~90分間である。
【0037】
本発明は、高温還元-沈殿の総合方法を採用して有価金属を回収することにより、単一沈殿法による回収製品の品質が高くなく、処理規模が小さく、プロセスが複雑であるという問題を解決し、Cu、Ni、Coなどの有価金属を個別に回収する際に高価な抽出剤を使用する必要がなく、回収コストを大幅に削減することができる。
【0038】
本発明における各プロセスの協調制御により、有価金属の総合回収率は95%以上に達することができる。
【0039】
<実施例1>
使用済みのLiNiO2、LiCoO2、LiMnO2、LiNixCoyMn1-x-yO2が混合されたリチウムイオン電池、すなわち使用済み混合リチウムイオン電池を5%亜硫酸ナトリウム溶液に浸漬し、使用済み混合リチウムイオン電池が1V(終止電圧)になるまで放電させ、放電後の使用済みリチウムイオン電池を解体してセルを取得し、セルを機械的な力で一体的に粉砕して粉砕物を取得し、粒径0.1mm未満の粉砕物を篩分けて焙焼工程に送り、粉砕物を空気雰囲気中で2℃/分の速度で400℃まで昇温させ、1時間保温・焙焼して接着剤を剥離し、焙焼排ガスを50mg/Lの石灰水で吸収し、剥離後の生成物を分離してAl、Cu箔及び電極活物質を取得した。焙焼により生成した電極活物質粉末をアルカリ洗浄し、アルカリ洗浄パラメーターとして、NH4OH溶液はPH=10、アルカリ洗浄時間は10分間、アルカリ洗浄温度は20℃であり、濾過、分離、乾燥してアルカリ洗浄・精製された電極活物質を得た。そして、乾燥させた電極活物質粉末と澱粉及び濃硫酸を混合してサイジング剤配合し、サイジング剤配合パラメーターとして、澱粉質量比は5%、濃硫酸の固液比は50g/Lであり、サイジング剤配合して混合材料を得た。次に、混合材料を高温還元工程に送り、 高温還元パラメーターとして、雰囲気は酸素5%と窒素95%の混合ガスであり、焙焼温度は300℃、焙焼時間は30分間である。最後に、高温還元した生成物を脱イオン水で浸出し、濾過して浸出液と濾過残渣を取得し、脱イオン水浸出パラメーターとして、固液比は50g/L、温度は50℃、浸出時間は30分間である。
【0040】
浸出液中の不純物イオンである銅、鉄、アルミニウムイオンの濃度はいずれも0.5g/L以下であり、有価金属イオンであるリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンイオンの濃度はいずれも5g/L以上であり、浸出率はいずれも85%以上である。
【0041】
<実施例2>
使用済み混合リチウムイオン電池を10%亜硫酸ナトリウム溶液に浸漬し、使用済み混合リチウムイオン電池が0.8V(終止電圧)になるまで放電させ、放電後の使用済みリチウムイオン電池を解体してセルを取得し、セルを機械的な力で一体的に粉砕して粉砕物を取得し、粒径0.1mm未満の粉砕物を篩分けて焙焼工程に送り、粉砕物を空気雰囲気中で5℃/分の速度で450℃まで昇温させ、1時間保温・焙焼して接着剤を剥離し、焙焼排ガスを50mg/Lの石灰水で吸収し、剥離後の生成物を分離してAl、Cu箔及び電極活物質を取得した。焙焼により生成した電極活物質粉末をアルカリ洗浄し、アルカリ洗浄パラメーターとして、NH4OH溶液はPH=10.5、アルカリ洗浄時間は20分間、アルカリ洗浄温度は25℃であり、濾過、分離、乾燥してアルカリ洗浄・精製された電極活物質を得た。そして、乾燥させた電極活物質粉末と澱粉及び濃硫酸を混合してサイジング剤配合し、サイジング剤配合パラメーターとして、澱粉質量比は8%、濃硫酸の固液比は100g/Lであり、サイジング剤配合して混合材料を得た。次に、混合材料を高温還元工程に送り、 高温還元パラメーターとして、雰囲気は酸素10%と窒素90%の混合ガスであり、焙焼温度は500℃、焙焼時間は60分間である。最後に、高温還元した生成物を脱イオン水で浸出し、濾過して浸出液と濾過残渣を取得し、脱イオン水浸出パラメーターとして、固液比は75g/L、温度は60℃、浸出時間は60分間である。
【0042】
浸出液中の不純物イオンである銅、鉄、アルミニウムイオンの濃度はいずれも0.4g/L以下であり、有価金属イオンであるリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンイオンの濃度はいずれも8g/L以上であり、浸出率はいずれも90%以上である。
【0043】
<実施例3>
使用済み混合リチウムイオン電池を15%亜硫酸ナトリウム溶液に浸漬し、使用済み混合リチウムイオン電池が0.7V(終止電圧)になるまで放電させ、放電後の使用済みリチウムイオン電池を解体してセルを取得し、セルを機械的な力で一体的に粉砕して粉砕物を取得し、粒径0.1mm未満の粉砕物を篩分けて焙焼工程に送り、粉砕物を空気雰囲気中で10℃/分の速度で450℃まで昇温させ、1時間保温・焙焼して接着剤を剥離し、焙焼排ガスを50mg/Lの石灰水で吸収し、剥離後の生成物を分離してAl、Cu箔及び電極活物質を取得した。焙焼により生成した電極活物質粉末をアルカリ洗浄し、アルカリ洗浄パラメーターとして、NH4OH溶液はPH=12、アルカリ洗浄時間は30分間、アルカリ洗浄温度は35℃であり、濾過、分離、乾燥してアルカリ洗浄・精製された電極活物質を得た。そして、乾燥させた電極活物質粉末と澱粉及び濃硫酸を混合してサイジング剤配合し、サイジング剤配合パラメーターとして、澱粉質量比は10%、濃硫酸の固液比は150g/Lであり、サイジング剤配合して混合材料を得た。次に、混合材料を高温還元工程に送り、 高温還元パラメーターとして、雰囲気は酸素20%と窒素80%の混合ガスであり、焙焼温度は700℃、焙焼時間は120分間である。最後に、高温還元した生成物を脱イオン水で浸出し、濾過して浸出液と濾過残渣を取得し、脱イオン水浸出パラメーターとして、固液比は80g/L、温度は80℃、浸出時間は90分間である。
【0044】
浸出液中の不純物イオンである銅、鉄、アルミニウムイオンの濃度はいずれも0.3g/L以下であり、有価金属イオンであるリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンイオンの濃度はいずれも10g/L以上であり、浸出率はいずれも93%以上である。
【0045】
<実施例4>
使用済み混合リチウムイオン電池を20%亜硫酸ナトリウム溶液に浸漬し、使用済み混合リチウムイオン電池が0.5V(終止電圧)になるまで放電させ、放電後の使用済みリチウムイオン電池を解体してセルを取得し、セルを機械的な力で一体的に粉砕して粉砕物を取得し、粒径0.1mm未満の粉砕物を篩分けて焙焼工程に送り、粉砕物を空気雰囲気中で10℃/分の速度で600℃まで昇温させ、1時間保温・焙焼して接着剤を剥離し、焙焼排ガスを50mg/Lの石灰水で吸収し、剥離後の生成物を分離してAl、Cu箔及び電極活物質を取得した。焙焼により生成した電極活物質粉末をアルカリ洗浄し、アルカリ洗浄パラメーターとして、NH4OH溶液はPH=14、アルカリ洗浄時間は60分間、アルカリ洗浄温度は50℃であり、濾過、分離、乾燥してアルカリ洗浄・精製された電極活物質を得た。そして、乾燥させた電極活物質粉末と澱粉及び濃硫酸を混合してサイジング剤配合し、サイジング剤配合パラメーターとして、澱粉質量比は20%、濃硫酸の固液比は300g/Lであり、サイジング剤配合して混合材料を得た。次に、混合材料を高温還元工程に送り、 高温還元パラメーターとして、雰囲気は酸素50%と窒素50%の混合ガスであり、焙焼温度は800℃、焙焼時間は180分間である。最後に、高温還元した生成物を脱イオン水で浸出し、濾過して浸出液と濾過残渣を取得し、脱イオン水浸出パラメーターとして、固液比は100g/L、温度は90℃、浸出時間は180分間である。
【0046】
浸出液中の不純物イオンである銅、鉄、アルミニウムイオンの濃度はいずれも0.3g/L以下であり、有価金属イオンであるリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンイオンの濃度はいずれも15g/L以上であり、浸出率はいずれも95%以上である。
【0047】
また、上記の実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことは言うまでもない。上記の実施例は、ただ本発明を解釈するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。上記の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力なしに得た他の全ての実施例、すなわち、本出願の精神及び原理内で行われるすべての修正、等価置換及び改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
【国際調査報告】