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特表2024-514968プロピレン系共重合体、その製造方法および使用、ならびに該プロピレン系共重合体を含有するポリプロピレン組成物
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  • 特表-プロピレン系共重合体、その製造方法および使用、ならびに該プロピレン系共重合体を含有するポリプロピレン組成物 図1
  • 特表-プロピレン系共重合体、その製造方法および使用、ならびに該プロピレン系共重合体を含有するポリプロピレン組成物 図2
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  • 特表-プロピレン系共重合体、その製造方法および使用、ならびに該プロピレン系共重合体を含有するポリプロピレン組成物 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-03
(54)【発明の名称】プロピレン系共重合体、その製造方法および使用、ならびに該プロピレン系共重合体を含有するポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/06 20060101AFI20240327BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20240327BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240327BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08F210/06
C08F2/06
C08L23/10
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565395
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2022088102
(87)【国際公開番号】W WO2022228260
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】202110448666.3
(32)【優先日】2021-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110449881.5
(32)【優先日】2021-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110449898.0
(32)【優先日】2021-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宋文波
(72)【発明者】
【氏名】方園園
(72)【発明者】
【氏名】韓書亮
(72)【発明者】
【氏名】金▲ザオ▼
(72)【発明者】
【氏名】王路生
(72)【発明者】
【氏名】呂静蘭
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J002BB141
4J002BB142
4J011BA01
4J011HB02
4J011HB04
4J011HB12
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100AA04Q
4J100AA16Q
4J100CA04
4J100DA42
4J100FA10
4J100FA19
4J100GD02
4J128AA01
4J128AC01
4J128AC10
4J128AC20
4J128AC28
4J128AD06
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12A
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB04
4J128EB05
4J128EB07
4J128EB09
4J128EC02
4J128FA01
4J128FA02
4J128FA09
4J128GA05
4J128GA08
4J128GA15
4J128GA18
4J128GA19
4J128GA26
(57)【要約】
本発明はオレフィン重合の分野に属し、プロピレン系共重合体、その製造方法および使用、ならびにポリプロピレン組成物に関する。プロピレン系共重合体は、60~95重量%のプロピレン由来構造単位および5~40重量%のコモノマー由来構造単位を含んでもよく、プロピレン系共重合体において、コモノマー分散度D[PCP]/[C]は50%~70%であり、コモノマー分散度D[PCP]/[C]=[PCP]/[C]×100%である。本発明のプロピレン系共重合体は、ポリプロピレンとブレンドすると、ポリプロピレンとの相溶性に優れ、ポリプロピレンの結晶化を促進することができ、得られるポリプロピレン材料の機械的特性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン由来構造単位およびコモノマー由来構造単位を含むプロピレン系共重合体であって、
好ましくは、前記プロピレン系共重合体は、60~95重量%、好ましくは75~93重量%の前記プロピレン由来構造単位、おすうよび5~40重量%、好ましくは、7~25重量%の前記コモノマー由来構造単位を含み、
前記コモノマーは、エチレンおよびC~C20 α-オレフィンのうちの少なくとも1つであり、
前記プロピレン系共重合体において、コモノマー分散度D[PCP]/[C]は50%~70%であり、コモノマー分散度D[PCP]/[C]=[PCP]/[C]×100%であり、式中、[PCP]は、前記プロピレン系共重合体における単分散のコモノマー構造単位の量であり、前記単分散のコモノマー構造単位は、プロピレンセグメントに挿入された単一コモノマー構造単位の形態で存在するコモノマー構造単位であり、[C]は、前記プロピレン系共重合体におけるコモノマー構造単位の総量であることを特徴とする、プロピレン系共重合体。
【請求項2】
前記プロピレン系共重合体のmmm立体規則性は75%~99%であり、好ましくは、80%~97%であること、
前記プロピレン系共重合体の立体規則性指数m/rは3~15であること、
前記プロピレン系共重合体の密度は、0.84~0.92g/ccであり、好ましくは、0.85~0.89g/ccであること、および
前記プロピレン系共重合体は、2.16kgの荷重下、190℃でのメルトフローレートが100g/10min以下であり、好ましくは、20g/10min以下であること
のうちの少なくとも1つの特徴を有する、請求項1に記載のプロピレン系共重合体。
【請求項3】
前記コモノマーは、エチレン、1-ブテン、および1-ヘキセンのうちの少なくとも1つであり、好ましくは、エチレンである、請求項1~2のいずれか一項に記載のプロピレン系共重合体。
【請求項4】
前記プロピレン系共重合体中の芳香族炭化水素化合物の重量含有量は500ppm未満であり、好ましくは300ppm未満であり、さらに好ましくは200ppm未満または100ppm未満であり、さらに好ましくは50ppm未満であり、最も好ましくは、芳香族炭化水素化合物を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレン系共重合体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のプロピレン系共重合体を含み、
好ましくは、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレン系共重合体と、少なくとも1つの別の重合体とを含む、
重合体組成物。
【請求項6】
前記重合体組成物は、ポリプロピレン組成物であり、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレン系共重合体およびポリプロピレンを含む、請求項5に記載の重合体組成物。
【請求項7】
前記ポリプロピレン組成物は、
(1)30~99.5重量%、好ましくは、50~99重量%、さらに好ましくは、60~95重量%の請求項1~4のいずれか一項に記載のプロピレン系共重合体、および
(2)0.5~70重量%、好ましくは、1~50重量%、さらに好ましくは、5~40重量%の前記ポリプロピレン
を含有し、
前記ポリプロピレンは、95~100重量%のプロピレン由来構造単位および0~5重量%のコモノマー由来構造単位を含み、
前記コモノマーは、エチレンおよびC~C20 α-オレフィンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項6に記載の重合体組成物。
【請求項8】
前記ポリプロピレン組成物は、
前記ポリプロピレン組成物のガラス転移温度は-29℃以下であり、好ましくは、-30℃以下であること、
前記ポリプロピレン組成物のDSC曲線にはただ1つの溶融ピークが存在すること、
前記ポリプロピレン組成物の融点は、100℃より高く、140℃未満であり、好ましくは、130℃未満であり、さらに好ましくは、120℃未満であること、
前記ポリプロピレン組成物の初期溶融温度は80℃以上であり、好ましくは、90℃以上であること、
前記ポリプロピレン組成物の融解エンタルピーは、50J/g未満であり、好ましくは、40J/g未満であること、
前記ポリプロピレン組成物の融解エンタルピーは、0.5~50J/gであり、好ましくは、5~40J/gであり、さらに好ましくは、10~30J/gであり、最も好ましくは、15~25J/gであること、
前記ポリプロピレン組成物の結晶化度は、20%未満であり、好ましくは、15%未満であり、さらに好ましくは、5~12%であること、
前記ポリプロピレン組成物の密度は、0.84~0.92g/ccであり、好ましくは、0.86~0.89g/ccであること、
前記ポリプロピレン組成物は、2.16kgの荷重下、190℃でのメルトフローレートが100g/10min以下であり、好ましくは、20g/10min以下であること
のうちの少なくとも1つの特徴を有する、請求項7に記載の重合体組成物。
【請求項9】
前記ポリプロピレン組成物は、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロピレン系共重合体と、前記ポリプロピレンとを、溶融形態または溶液形態で混合することによって得られる、請求項6~8のいずれか一項に記載の重合体組成物。
【請求項10】
プロピレン系共重合体、好ましくは、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロピレン系共重合体の製造方法であって、
(A)主触媒および助触媒を予備接触させて、重合反応器に接続されたパイプライン中でその場で、溶媒中に均一なイオン型触媒溶液を形成する工程、および
(B)工程(A)で得られた均一なイオン型触媒溶液を、重合反応器に接続されたパイプラインを介して重合反応器に送り、プロピレン単量体、1種類以上のコモノマー、および任意の水素と接触させてオレフィン重合を行い、前記プロピレン系共重合体を生成する工程
を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項11】
前記主触媒は、メタロセン触媒であり、好ましくは、式(I)で表される化合物のうちの少なくとも1つであり、
【化1】

式(I)において、Mは、チタン、ハフニウム、またはジルコニウムから選択される金属であり;
Gは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズまたは鉛であり;
RおよびR’はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルから選択され;各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C20ヒドロカルビル基、C~C20アルコキシ基またはC~C20アリールオキシ基から選択され、これらの基は、直鎖状、分岐状または環状であり、任意にハロゲン原子、C~C10アルキル、C~C10アルコキシ、C~C10アリールまたはC~C10アリールオキシで置換されており;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、C~C20ヒドロカルビル基、C~C20アルコキシ基またはC~C20アリールオキシ基から選択され;
好ましくは、RおよびR’はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20アルキルから選択され;各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C12アルキル基、C~C12アルコキシ基またはC~C12アリールオキシ基から選択され、これらの基は、直鎖状、分岐状又は環状であり、任意にハロゲン原子、C~C10アルキル、C~C10アルコキシ、C~C10アリールまたはC~C10アリールオキシでさらに置換されており;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、C~C12アルキル基、C~C12アルコキシ基またはC~C12アリールオキシ基から選択され;
さらに好ましくは、RおよびR’はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C12アルキルから選択され;各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基またはC~C12アリールオキシ基から選択され、これらの基は、直鎖状、分岐状又は環状であり、任意にハロゲン原子、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~C10アリールまたはC~C10アリールオキシでさらに置換されており;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基またはC~C12アリールオキシ基から選択され;
より好ましくは、RおよびR’はそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルから選択され;各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基またはC~Cアリールオキシ基から選択され、これらの基は、直鎖状、分岐状又は環状であり、任意にハロゲン原子、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CアリールまたはC~Cアリールオキシでさらに置換されており;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基またまたはC~Cアリールオキシ基から選択され;
最も好ましくは、RおよびR’はそれぞれ独立して、メチル、イソプロピルまたはtert-ブチルから選択され;各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル、エチルまたはプロピルから選択され;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、メチル、エチルまたはプロピルから選択され、および/または
前記助触媒は、ホウ素含有化合物型助触媒および/またはアルミノキサン型助触媒を含む、請求項10に記載のプロピレン系共重合体の製造方法。
【請求項12】
前記予備接触の開始から前記重合反応器に入るまで、前記主触媒および前記助触媒が通過した前記パイプラインの長さLは、以下の式:
30×W/d≦L≦1000×W/d
(式中、Lの単位はmであり、Wは前記主触媒、前記助触媒および前記溶媒の総流量であり、Wの単位はkg/hであり、dは前記パイプラインの内径であり、dの単位はmmである)を満たし、
好ましくは、Lは以下の式:40×W/d≦L≦900×W/dを満たし、
さらに好ましくは、Lは以下の式:50×W/d≦L≦800×W/dを満たす、請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記主触媒と前記助触媒との前記予備接触では、主触媒混合液と助触媒混合液とが混合され、
前記主触媒混合液は、前記主触媒と溶媒との混合物であり、
前記助触媒混合液は、前記助触媒と溶媒との混合物である、請求項10~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ホウ素含有化合物型助触媒は、式(II)で表される構造を含み、
(Z) (II)
式(II)中、Zは任意に置換されたフェニル誘導体であり、任意の置換基はC~Cハロアルキルまたはハロゲン基であり、
好ましくは、前記ホウ素含有化合物型助触媒は、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルフェニルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
前記溶媒は、C~C20直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素のうちの少なくとも1つであり、好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり、より好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり、さらに好ましくは、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つである、請求項10~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記助触媒と前記主触媒中の中心金属原子Mとのモル比は、0.5:1~5:1であり、好ましくは、1:1~2:1である、請求項10~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記予備接触の開始後、オレフィン重合系にアルキルアルミニウムを添加し、ここで、アルキルアルミニウムは、前記パイプラインに添加されるかまたは前記重合反応器に添加され、好ましくは、前記パイプラインに添加され、
好ましくは、アルキルアルミニウムは式(III)で表される構造を有し、
AlR (III)
式(III)中、Rは、C~C12ヒドロカルビルであり、好ましくは、C~C12アルキルであり、より好ましくは、C~Cアルキルであり;好ましくは、アルキルアルミニウムは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリイソオクチルアルミニウムのうちの少なくとも1つであり、
好ましくは、アルキルアルミニウムは、アルキルアルミニウム溶液の形態で添加され、アルキルアルミニウム溶液の溶媒はC~C20直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素であり、好ましくは前記予備接触に使用される溶媒と同一である、請求項10~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記オレフィン重合は、バルク均一重合、超臨界重合、溶液重合または近臨界分散重合であり、好ましくは、溶液重合であり、
さらに好ましくは、溶液重合のための溶媒がC~C20直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素のうちの少なくとも1つであり、好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり、より好ましくは、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり、さらに好ましくは、イソペンタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり、さらに好ましくは、溶液重合のための溶媒が前記予備接触に使用される溶媒と同一である、請求項10~17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記オレフィン重合の重合温度が60~150℃であり、重合圧力が0.1~10MPaである、請求項10~18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
ポリプロピレン組成物を製造するための、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレン系共重合体の使用であって、
前記ポリプロピレン組成物がポリプロピレンおよび前記プロピレン系共重合体を含み、好ましくは、前記プロピレン系共重合体がポリプロピレン結晶化促進剤として、またはポリプロピレン材料のための改質剤として、好ましくは、ポリプロピレン材料の機械的特性のための改質剤として使用される、プロピレン系共重合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、オレフィン重合の分野に属する。具体的には、本発明は、プロピレン系共重合体、プロピレン系共重合体の製造方法、プロピレン系共重合体の使用、およびプロピレン系共重合体を含有するポリプロピレン組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
プロピレン系共重合体は、極めて広く使用されているポリオレフィン材料である。高いコモノマー含有量を有するプロピレン-α-オレフィン共重合体は、高い弾性を有するという特性を有し、ポリプロピレン材料の耐衝撃性改質のための熱可塑性エラストマーとして使用することができる。しかしながら、コモノマー含有量が増加することにつれて、特にコモノマー含有量が10重量%以上に達すると、プロピレン系共重合体とポリプロピレンとの相溶性が低下する。プロピレン系共重合体の組み込みは、ポリプロピレン材料の結晶化を妨げ、材料の機械的特性に影響を及ぼす。したがって、ポリプロピレン中に組み込まれてブレンド材料を形成するときにポリプロピレンの結晶化を促進することができる、高いコモノマー含有量を有するプロピレン-α-オレフィン共重合体を得ることが望ましい。プロピレン-α-オレフィン共重合体の結晶化は、通常、プロピレンセグメント中のコモノマーの分散度に関連する。
【0003】
高いコモノマー含有量を有するプロピレン-α-オレフィン共重合体は高い弾性および低いガラス転移温度を有し、低温環境で使用することができる。しかしながら、結晶化が遅く粘着性が高いため、貯蔵および輸送中のペレットが接着し凝集するおそれがある。高いコモノマー含有量を有するプロピレン共重合体は通常、初期溶融温度が低いため、高温地域、特に夏に、貯蔵および輸送中の接着および凝集の問題が顕著になる。したがって、貯蔵および輸送中の接着および凝集の問題を解決するために、高いコモノマー含有量および高い初期溶融温度を有するプロピレン系重合体を開発することが、この分野において緊急を要する。
【0004】
キラルビス-インデニルメタロセン触媒を使用して、高結晶性アイソタクチックポリプロピレンおよびその共重合体を製造することができることは周知である。WO2002/01745、US2002/0004575A1、WO2002/083753A1、およびUS6525157は、キラルメタロセンrac-MeSi(1-インデニル)HfMeを使用して、プロピレン配列内に立体規則性を有するプロピレン/エチレン共重合体を製造する方法を開示している。US6057408は、キラルビス-インデニルメタロセンを用いて、プロピレン配列中に高い結晶性を有する高分子量プロピレン/エチレン共重合体を製造する方法を開示している。
【0005】
US5767208およびEP0612768は架橋ビス-シクロペンタジエニルハフニウムに基づくイオン型触媒系を挙げており、これは高温溶液重合において高分子量エチレン-α-オレフィン共重合体を製造するために使用することができる。他の有用な参考文献としては、CN101124235B、US5455365、US6084115、CN110272515A、およびOrganometallics 1992,11,2115が挙げられる。
【0006】
しかしながら、先行技術により製造された高いコモノマー含有量を有するプロピレン-α-オレフィン共重合体はまだ、上述の欠点を有する。したがって、本分野では、上記欠点のうちの1つ以上を排除することができるプロピレン系共重合体を提供することが望ましい。
【0007】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、プロピレン系共重合体、その製造方法および使用、並びに該プロピレン系共重合体を含有するポリプロピレン組成物を提供することである。
【0008】
本発明の第1の態様は、プロピレン系共重合体を提供し、該プロピレン系共重合体は、プロピレン由来構造単位およびコモノマー由来構造単位を含有し、好ましくは、60~95重量%の前記プロピレン由来構造単位、および5~40重量%の前記コモノマー由来構造単位を含有し;前記コモノマーは、エチレンおよびC~C20 α-オレフィンのうちの少なくとも1つであり;前記プロピレン系共重合体において、コモノマー分散度D[PCP]/[C]は50%~70%であり、コモノマー分散度D[PCP]/[C]=[PCP]/[C]×100%であり、ここで、[PCP]は、前記プロピレン系共重合体における単分散のコモノマー構造単位の量であり、前記単分散のコモノマー構造単位は、プロピレンセグメントに挿入された単一コモノマー構造単位の形態で存在するコモノマー構造単位であり、[C]は、前記プロピレン系共重合体におけるコモノマー構造単位の総量である。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記プロピレン系共重合体の製造方法を提供し、該方法は、
(A)主触媒および助触媒を予備接触させて、重合反応器に接続されたパイプライン中でその場で、溶媒中に均一なイオン型触媒溶液を形成する工程、および
(B)工程(A)で得られた均一なイオン型触媒溶液を、重合反応器に接続されたパイプラインを介して重合反応器に送り、プロピレン単量体、1種類以上のコモノマー、および任意の水素と接触させてオレフィン重合を行い、前記プロピレン系共重合体を生成する工程を含む。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、主触媒は、メタロセン触媒であり、好ましくは、式(I)で表される化合物のうちの少なくとも1つであり、
【化1】

式(I)において、Mは、チタン、ハフニウム、またはジルコニウムから選択される金属であり、
Gは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズまたは鉛であり、
RおよびR’はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルから選択され、各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C20ヒドロカルビル基、C~C20アルコキシ基またはC~C20アリールオキシ基から選択され、これらの基は直鎖状、分岐状または環状であり、任意にハロゲン原子、C~C10アルキル、C~C10アルコキシ、C~C10アリールまたはC~C10アリールオキシで置換されており、各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、C~C20ヒドロカルビル基、C~C20アルコキシ基またはC~C20アリールオキシ基から選択され、および/または、
助触媒はホウ素含有化合物型助触媒、アルミノキサン型助触媒、またはこれらの組合せである。
【0011】
本発明の第3の態様は本発明のプロピレン系共重合体を含む重合体組成物を提供し、好ましくは重合体組成物が本発明のプロピレン系共重合体および少なくとも1つの別の重合体を含み、より好ましくは重合体組成物がポリプロピレンおよび本発明のプロピレン系共重合体を含み、ポリプロピレンはポリプロピレン単独重合体、本発明のプロピレン系共重合体とは異なるポリプロピレン共重合体、またはこれらの組み合わせを包含する。
【0012】
本発明の第4の態様は、ポリプロピレン組成物の製造のための、本発明のプロピレン系共重合体の使用を提供し、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレンおよびプロピレン系共重合体を含む。
【0013】
本発明のプロピレン系共重合体は比較的高いコモノマー含有量を有し、同時に、特別に選択されたコモノマー分散度を有する。驚くべきことに、本発明者らは特定の範囲のコモノマー分散度を選択することによって、所望の特性を有するプロピレン系共重合体を得ることができることを見出した。本発明のプロピレン系共重合体は、ポリプロピレンとブレンドすると、ポリプロピレンとの相溶性に優れ、ポリプロピレンの結晶化を促進することができ、得られるポリプロピレン材料の機械的特性を向上させることができる。
【0014】
メタロセン触媒は一般に、脂肪族炭化水素への溶解度が低く、溶解後の貯蔵時間が短いことが当該技術分野において知られている。本発明のプロピレン系共重合体の製造方法はパイプライン中でその場で均一なイオン型触媒溶液を形成することができ、触媒系は優れた重合活性(特に高温、例えば80℃以上で)およびコモノマー選択性を有し、その結果、より高いコモノマー含有量、および比較的低くて特に好ましいコモノマー分散度を有するオレフィン重合体を製造することが可能になる。また、連続溶液重合プロセスの場合、本発明では、触媒がパイプライン中でその場で活性中心を形成し、均一な脂肪族溶液の形態で重合反応器中に注入することができる。これは、明らかに操作性に優れる。
【0015】
本明細書において「一実施形態」または「いくつかの実施形態」に言及するときは、実施形態に関連して説明される特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に包含されることを意味する。1つまたは複数の実施形態において、これらの特徴、構造、または特性は任意の適切な様式で組み合わせることができる。
【0016】
本明細書における個々の実施形態は互いに組み合わせることができるが、自然法則に違反する組合せ、および専門知識に基づいて当業者によって除外される組合せは包含されない。
【0017】
様々な種類の範囲が本明細書に開示されている。これらの範囲は、含有量の範囲、数値の範囲、重量比の範囲、モル比の範囲などを包含するが、これらに限定されない。出願人がいずれかの種類の範囲を開示または特許請求する場合、出願人は、範囲の端点、範囲内の点値および任意の下位範囲、ならびにそれらに包含される下位範囲の組合せなど、合理的に含むことができるすべての可能な範囲および値を個別に開示または特許請求することを意図する。また、出願人が任意の種類の範囲を開示または特許請求し、その範囲内の範囲および点値を開示する場合、本出願の範囲は、具体的には所与の範囲の任意の端値と任意の点値とを組み合わせることによって形成される範囲、または任意の2つの点値を組み合わせることによって形成される範囲を包含することができる。
【0018】
「詳細な説明」節の最後に提供される実施例を除いて、本明細書(添付の特許請求の範囲を包含する)における数値(量または条件など)は、数値の前に実際に「約」が現れるかどうかにかかわらず、すべての場合において「約」という用語で修飾されると理解されるべきである。「約」は、ある程度の数値のわずかな不正確さが許容されることを意図する。「約」によって提供される不正確さが、本分野におけるこの通常の意味で理解されない場合、本明細書で使用される「約」は少なくとも、パラメータを測定および使用する通常の方法から生じ得る変動を指す。例えば、「約」は、5%以下、必要に応じて4%以下、必要に応じて3%以下、必要に応じて2%以下、必要に応じて1%以下、必要に応じて0.5%以下、必要に応じて0.1%以下の変動を包含することができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、文脈が明らかに記載されていない限り、単数形「1つ」、「1種類」、および「該」は複数形も包含することが意図される。用語「含む」、「包含する」、「含有する」、および「有する」は包括的であり、記載された特徴、要素、組成物、工程、整数、動作、および/または構成要素の存在を述べるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素および/またはその集合を排除するものではない。開放的な用語「含む」は本明細書に記載される様々な実施形態を説明して特許請求するための非限定的な用語として理解されるべきであるが、特定の態様ではこの用語が逆に、「からなる」または「から本質的になる」などの限定的かつ制限的な用語であると理解されるべきである。
【0020】
本発明の他の特徴および利点は、以下の「詳細な説明」において詳細に説明される。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
図A1は、本発明の実施例A4のプロピレン系共重合体が組み込まれた前後のポリプロピレン材料の動的機械分析曲線を示す。
【0023】
図A2は、本発明の実施例A6のプロピレン系共重合体が組み込まれた前後のポリプロピレン材料の動的機械分析曲線を示す。
【0024】
図A3は、異なるエチレン含有量を有する実施例A1~A4のプロピレン系共重合体、ならびに比較例B2およびB3のプロピレン系共重合体が組み込まれたポリプロピレン組成物の結晶化温度(DSC試験によって測定)を示す。
【0025】
図C1図C3は、実施例C1~C3で製造したポリプロピレン組成物のDSC曲線をそれぞれ示す。
【0026】
図Dは、比較例B1のプロピレン系共重合体が組み込まれた前後の単独重合ポリプロピレン材料の動的機械分析曲線を示す。
【0027】
〔詳細な説明〕
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。本明細書に記載される実施形態は、本発明を例示および説明するために使用されるに過ぎず、本発明を限定することが意図されないことが理解されるべきである。
【0028】
(プロピレン系共重合体)
本発明はプロピレン系共重合体を提供し、該プロピレン系共重合体は、プロピレン由来構造単位およびコモノマー由来構造単位を含み、好ましくは、60~95重量%のプロピレン由来構造単位、および5~40重量%のコモノマー由来構造単位を含み、より好ましくは、75~93重量%のプロピレン由来構造単位、および7~25重量%のコモノマー由来構造単位を含み、コモノマーは、エチレンおよびC~C20 α-オレフィンのうちの少なくとも1つであり、プロピレン系共重合体において、コモノマー分散度D[PCP]/[C]は50%~70%であり、好ましくは60%~70%であり、例えば、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%である。コモノマー分散度D[PCP]/[C]=[PCP]/[C]×100%である(式中、[PCP]はプロピレン系共重合体における単分散のコモノマー構造単位の量であり、単分散のコモノマー構造単位は、プロピレンセグメントに挿入された単一コモノマー構造単位の形態で存在するコモノマー構造単位であり、[C]は、プロピレン系共重合体におけるコモノマー構造単位の総量である)。
【0029】
本発明において、プロピレン系共重合体におけるプロピレン由来構造単位とコモノマー由来構造単位との重量%は、プロピレン系共重合体の総重量に基づくものである。
【0030】
本発明によれば、「コモノマー分散度」は、プロピレンセグメントにおけるコモノマーの分散度を表す。PCPは単分散のコモノマー構造単位を表し、プロピレン単量体構造単位(P)‐単一コモノマー構造単位(C)‐プロピレン単量体構造単位(P)の形態で存在するコモノマー構造単位を表し、[PCP]はこのような構造単位の量を表し、[PCP]とコモノマー構造単位の総量との比はコモノマー分散度D[PCP]/[C]である。13C NMRによって、コモノマー構造単位の総量[C]および単分散のコモノマー構造単位の量[PCP]が得られる。ここで、[PCP]および[C]の「数値」は同じ単位で計量すればよく、例えば、いずれもモル(モル含有量)または重量(重量含有量)である。
【0031】
コモノマーの分散度D[PCP]/[C]は、13C NMRによって測定することができる。13C NMR分光法は、重合体に組み込まれるコモノマーの量、ならびに重合体鎖に組み込まれるコモノマー構造単位の連結方法を測定するための本分野における公知の方法である。例えば、Journal of Macromolecular Science,Reviews in Macromolecular Chemistry and Physics,C29(2&3),201-317(1989)を参照されたい。オレフィン共重合体におけるコモノマーの含有量を測定するための基本的な方法は、試料中の異なる炭素に対応するピークの強さが、試料中の寄与核の総量に直接正比例するような条件下で、13C NMRスペクトルを得ることを含む。この比例性を確実にするための方法は、本分野において公知であり、パルス化後に十分な緩和時間を可能にすること、ゲートデカップリング技術を使用すること、緩和剤を使用することなどを包含する。13C NMRスペクトルを得て、ピークを積分した後に、単量体構造単位に関連するピークを割り当てる。このような割り当ては、本分野において公知であり、例えば、公知のスペクトルまたは文献を参照したり、モデル化合物を合成・分析したり、または同位体標識された単量体を用いたりすることによって実施することができる。単分散のコモノマー構造単位に対応するピーク積分値と、共重合体中のすべてのコモノマー構造単位に対応するピーク積分値との比率によって、コモノマー分散度を決定することができる。
【0032】
2つ以上のコモノマーの場合、前記式D[PCP]/[C]=[PCP]/[C]×100%において、[PCP]はプロピレン系共重合体における単分散のコモノマー構造単位の総量であり、[C]は、プロピレン系共重合体におけるすべての単分散のコモノマー構造単位の総量である。
【0033】
本発明のプロピレン系重合体は、高いコモノマー含有量を有する。ここでいう「高いコモノマー含有量」は、プロピレン系共重合体の総重量に基づいて、コモノマー含有量が5重量%以上であることを意味する。本発明において、コモノマー含有量は、5重量%~40重量%、好ましくは7重量%~25重量%、より好ましくは10重量%~25重量%であってもよい。本発明において、コモノマー含有量は例えば、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、または40重量%であってもよい。
【0034】
コモノマー含有量はPerkin Elmer PE1760などの赤外分光光度計で以下のように測定することができる:プロピレン系共重合体を、約150℃以上の温度で薄く均一なフィルムにプレスし、その後赤外分光光度計に固定する。600cm-1から4000cm-1までの試料のすべてのスペクトルを記録し、コモノマーの重量%を次式に従って算出することができる:コモノマー重量%=82.585-111.987x+30.045x、ここでxは、1155cm-1でのピーク高さと、722cm-1または732cm-1(どちらか高い方)でのピーク高さとの比率である。
【0035】
コモノマーは、好ましくはエチレン、1-ブテン、および/または1-ヘキセンである。最も好ましい実施形態では、コモノマーはエチレンである。
【0036】
コモノマーがエチレンである実施形態では、本発明のプロピレン系共重合体はプロピレン-エチレン共重合体である。プロピレン-エチレン共重合体において、エチレン単量体分散度D[PEP]/[E]は50%~70%、好ましくは60%~70%であり、例えば、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、または70%である。エチレン単量体分散度D[PEP]/[E]=[PEP]/[E]×100%(式中、[PEP]はプロピレン-エチレン共重合体における単分散のエチレン単量体構造単位の量であり、単分散のエチレン単量体構造単位は、プロピレンセグメントに挿入された単一エチレン単量体構造単位の形態で存在するエチレン単量体構造単位であり、[E]は、プロピレン-エチレン共重合体におけるエチレン単量体構造単位の総量である)。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、本発明のプロピレン-エチレン共重合体において、3連子のエチレン単量体ユニットの割合[EEE]/[E]は3.5~5%であり、および/または2連子のエチレン単量体ユニットの割合[EE]/[E]は15~20%である。
【0038】
いくつかの実施形態では、プロピレン系共重合体は、プロピレン単量体構造単位およびエチレン単量体構造単位から本質的になるか、またはプロピレン単量体構造単位およびエチレン単量体構造単位からなる。
【0039】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、エチレンがコモノマーとして使用されるが、これらの実施形態は、コモノマーとして他のα-オレフィンが使用されるプロピレン系共重合体に等しく適用可能である。
【0040】
本発明のプロピレン系共重合体の3連子の立体規則性(mmm立体規則性)は、Bruker-300などの核磁気共鳴装置で、重水素化クロロホルムを溶媒とし、110℃で、13C‐NMRによって測定し、詳しくは米国特許US7232871を参照することができる。本発明のプロピレン系共重合体のmmm立体規則性は、好ましくは75%~99%、より好ましくは80%~97%である。
【0041】
本発明のプロピレン系共重合体の立体規則性指数m/rは、H.N.ChengがMacromolecules,Vol.17,pp.1950-1955(1984)に記載したように、13C NMRによって測定される。隣接する一対のプロピレン単量体構造単位の立体化学はmおよびrによって記述され、ここで、mはメソを表し、rはラセミを表す。m/rが1の場合は一般にシンジオタクチック重合体を表し、m/rが2の場合はアタクチック材料を表す。本発明のプロピレン系共重合体のm/rは、好ましくは3~15である。
【0042】
本発明のプロピレン系共重合体の密度は、好ましくは0.84~0.92g/cc、より好ましくは0.85~0.89g/ccである。密度は、ASTM D-1505の試験方法により室温で測定する。
【0043】
本明細書では、「室温」は約25℃を指す。
【0044】
本発明のプロピレン系共重合体は、2.16kgの荷重下、190℃でのメルトフローレート(MFR)が100g/10min以下、好ましくは20g/10min以下、0.5g/10min以上であり、ASTM D-1238の試験方法により測定することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明のプロピレン系共重合体は、0.5~50g/10min(190℃、2.16kg)のメルトインデックスを有する。
【0046】
本発明のプロピレン系共重合体とポリプロピレンとのブレンドは、ポリプロピレンの結晶化を促進する。ポリプロピレンは、ポリプロピレン単独重合体、本発明のプロピレン系共重合体とは異なるポリプロピレン共重合体、またはこれらの組み合わせを包含する。本発明のプロピレン系共重合体とは異なるポリプロピレン共重合体は、95~100重量%のプロピレン由来構造単位と、0~5重量%のコモノマー由来構造単位とを含み、任意のコモノマーは、それぞれ独立して、エチレンおよびC~C20 α-オレフィンから選択される少なくとも1つである。
【0047】
したがって、ポリプロピレンと本発明のプロピレン系共重合体とを含むポリプロピレン組成物において、プロピレン系共重合体は、ポリプロピレン結晶化促進剤としての役割を果たすことができる。本発明のプロピレン系共重合体は、ポリプロピレン材料の機械的特性を向上させることができるため、ポリプロピレン材料の改質剤として、例えば、ポリプロピレン材料の機械的特性の改質剤として使用することもできる。
【0048】
本発明のプロピレン系共重合体は、ポリプロピレン材料との相溶性が良好である。本発明のプロピレン系共重合体をポリプロピレン材料とブレンドして得られる材料は、1つのガラス転移温度しか有さず、ブレンドして得られる材料の結晶化温度Tc(DSC試験により測定)が高くなり、本発明のプロピレン系共重合体を組み込むことにより、ポリプロピレンの結晶化を促進することができることを示す。
【0049】
(プロピレン系共重合体の製造方法)
本発明は、プロピレン系共重合体、好ましくは本発明のプロピレン系共重合体の製造方法を提供し、該方法は、
(A)主触媒および助触媒を予備接触させて、重合反応器に接続されたパイプライン中でその場で、溶媒中に均一なイオン型触媒溶液を形成する工程、および
(B)工程(A)で得られた均一なイオン型触媒溶液を、重合反応器に接続されたパイプラインを介して重合反応器に送り、プロピレン単量体、1種類以上のコモノマー、および任意の水素と接触させてオレフィン重合を行い、プロピレン系共重合体を生成する工程を含む。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の方法で使用される主触媒は、メタロセン触媒である。メタロセン触媒は、当該技術分野において周知である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、主触媒は、式(I)で表される化合物のうちの少なくとも1つであり、
【化2】

式(I)において、Mは、チタン、ハフニウム、またはジルコニウムから選択される金属であり;Gは、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、または鉛であり;RおよびR’はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20ヒドロカルビルから選択され;各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C20ヒドロカルビル基、C~C20アルコキシ基、またはC~C20アリールオキシ基から選択され、これらの基は直鎖状、分岐または環状であり、任意にハロゲン原子、C~C10アルキル、C~C10アルコキシ、C~C10アリール、またはC~C10アリールオキシで置換されており;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、C~C20ヒドロカルビル基、C~C20アルコキシ基、またはC~C20アリールオキシ基から選択され;
好ましくは、RおよびR’はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C20アルキルから選択され;各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~C12アルキル基、C~C12アルコキシ基またはC~C12アリールオキシ基から選択され、これらの基は、直鎖状、分岐状又は環状であり、任意にハロゲン原子、C~C10アルキル、C~C10アルコキシ、C~C10アリールまたはC~C10アリールオキシでさらに置換されており;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、C~C12アルキル基、C~C12アルコキシ基またはC~C12アリールオキシ基から選択され;
さらに好ましくは、RおよびR’はそれぞれ独立して、水素、および置換または非置換のC~C12アルキルから選択され;各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基またはC~C12アリールオキシ基から選択され、これらの基は、直鎖状、分岐状又は環状であり、任意にハロゲン原子、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~C10アリールまたはC~C10アリールオキシでさらに置換されており;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基またはC~C12アリールオキシ基から選択され;
より好ましくは、RおよびR’はそれぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルから選択され;各R’’はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基またはC~Cアリールオキシ基から選択され、これらの基は、直鎖状、分岐状又は環状であり、任意にハロゲン原子、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CアリールまたはC~Cアリールオキシでさらに置換されており;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基またはC~Cアリールオキシ基から選択され;
さらにより好ましくは、RおよびR’はそれぞれ独立して、メチル、イソプロピル、またはtert-ブチルから選択され;各R’’は独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル、エチルまたはプロピルから選択され;各R’’'はそれぞれ独立して、水素原子、メチル、エチルまたはプロピルから選択される。
【0052】
式(I)において、前記Mは、好ましくはハフニウムおよびジルコニウムからなる群から選択される金属である。
【0053】
式(I)において、前記Gは、好ましくはケイ素である。
【0054】
式(I)において、ハロゲン原子は、好ましくはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、又はこれらの組み合わせから選択され、より好ましくは塩素である。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、助触媒は、ホウ素含有化合物型助触媒またはアルミノキサン型助触媒である。好ましくは、助触媒は、ホウ素含有化合物型助触媒である。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ホウ素含有化合物型助触媒は、式(II)で表される構造を含み、
(Z) (II)
式(II)中、Zは任意に置換されたフェニル誘導体であり、任意の置換基はC~Cハロアルキルまたはハロゲン基である。式(II)で表される構造を含むホウ素含有化合物型助触媒は、当該技術分野において公知である。好ましくは、ホウ素含有化合物型助触媒は、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルフェニルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、助触媒はアルミノキサン型助触媒、例えば、メチルアルミノキサンなどのアルキルアルミノキサン型助触媒であってもよい。アルミノキサン型助触媒は好ましくは、アルカン系溶媒に溶解可能な変性アルキルアルミノキサン型助触媒、例えば、変性メチルアルミノキサン(Nouryon MMAO-3AおよびMMAO-7など、またはヘキサンおよびヘプタンなどのアルカン溶媒に溶解可能な特注品)である。
【0058】
本発明によれば、「主触媒と助触媒とを予備接触させる」ことは、比較的柔軟であり得る。一実施形態によれば、「主触媒と助触媒とを予備接触させる」とは、主触媒と溶媒との混合物である主触媒混合液と、助触媒と溶媒との混合液である助触媒混合液とを混合することである。すなわち、まず、主触媒および助触媒をそれぞれ溶媒と混合し、その後、例えば、予め設定された流量で一緒に混合する。
【0059】
本発明によれば、「重合反応器に接続されたパイプライン中でその場で、均一なイオン型触媒溶液を形成する」という表現は、主触媒混合液と助触媒混合液とをパイプライン中で直接的に組み合わせて、重合反応器に接続されたパイプライン中でイオン型触媒を形成し、その後、重合反応器に入って反応を開始することを意味する。いくつかの実施形態によれば、主触媒混合液および助触媒混合液の一方または両方は、ミキサーを介して混合された後、パイプラインに送られてもよい。本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、主触媒混合液および助触媒混合液は、パイプライン中で直接組み合わされて、重合反応器に接続されたパイプライン中でイオン型触媒を形成し、その後、重合反応器に入って反応を開始する。
【0060】
「パイプライン中でその場で形成された均一なイオン型触媒溶液」とは、肉眼で観察したとき、溶液が明らかな粒子沈殿を伴わずに、または粒子沈殿を伴わずに均一であり、30分間放置した後に固体粒子が沈降しないことを意味する。
【0061】
本発明の好ましい実施形態によれば、本出願のプロピレン系共重合体を得るためには、予備接触の開始から重合反応器に入るまでに主触媒および助触媒が通過するパイプラインの長さLが、30×W/d≦L≦1000×W/d(Lの単位はm(メートル)であり;Wは、主触媒、助触媒および溶剤の総流量(通常、主触媒混合液および助触媒混合液の流量の合計)であり、単位がkg/hであり、dはパイプラインの内径であり、単位がmm(ミリメートル)である)を満たすように制御されるべきである。いくつかの実施形態によれば、好ましくは、Lは、以下の式:30×W/d≦L≦900×W/d;30×W/d≦L≦850×W/d;30×W/d≦L≦800×W/d;30×W/d≦L≦750×W/d;30×W/d≦L≦700×W/d;30×W/d≦L≦650×W/d;30×W/d≦L≦600×W/d;30×W/d≦L≦550×W/d;30×W/d≦L≦500×W/d;30×W/d≦L≦450×W/d;30×W/d≦L≦400×W/d;30×W/d≦L≦350×W/d;30×W/d≦L≦300×W/d;30×W/d≦L≦250×W/d;30×W/d≦L≦200×W/d;または30×W/d≦L≦150×W/dを満たす。いくつかの実施形態によれば、好ましくは、Lは、以下の式:40×W/d≦L≦1000×W/d;40×W/d≦L≦900×W/d;40×W/d≦L≦850×W/d;40×W/d≦L≦800×W/d;40×W/d≦L≦750×W/d;40×W/d≦L≦700×W/d;40×W/d≦L≦650×W/d;40×W/d≦L≦600×W/d;40×W/d≦L≦550×W/d;40×W/d≦L≦500×W/d;40×W/d≦L≦450×W/d;40×W/d≦L≦400×W/d;40×W/d≦L≦350×W/d;40×W/d≦L≦300×W/d;40×W/d≦L≦250×W/d;40×W/d≦L≦200×W/d;または40×W/d≦L≦150×W/dを満たす。いくつかの実施形態によれば、好ましくは、Lは、以下の式:50×W/d≦L≦1000×W/d、50×W/d≦L≦900×W/d、50×W/d≦L≦850×W/d、50×W/d≦L≦800×W/d、50×W/d≦L≦750×W/d、50×W/d≦L≦700×W/d、50×W/d≦L≦650×W/d、50×W/d≦L≦600×W/d、50×W/d≦L≦550×W/d、50×W/d≦L≦500×W/d、50×W/d≦L≦450×W/d、50×W/d≦L≦400×W/d、50×W/d≦L≦350×W/d、50×W/d≦L≦300×W/d、50×W/d≦L≦250×W/d、50×W/d≦L≦200×W/d、または50×W/d≦L≦150×W/dを満たす。より好ましくは、Lは、以下の式:40×W/d≦L≦900×W/dを満たすことができ、より好ましくは、Lは、以下の式:50×W/d≦L≦800×W/dを満たすことができる。具体的には、Lは30×W/d、35×W/d、40×W/d、45×W/d、50×W/d、60×W/d、70×W/d、80×W/d、90×W/d、100×W/d、150×W/d、200×W/d、250×W/d、300×W/d、350×W/d、400×W/d、450×W/d、500×W/d、550×W/d、600×W/d、650×W/d、700×W/d、750×W/d、800×W/d、850×W/d、900×W/d、950×W/dまたは1000×W/dであることができる。または、Lの範囲は、前述の任意の2つの値の間で規定される範囲であり、ここで、Lの単位はmであり、Wは主触媒、助触媒および溶媒の総流量であり、その単位はkg/hであり、dはパイプラインの内径であり、その単位はmmである。驚くべきことに、本出願の発明者らは、上記条件が満たされると、主触媒と助触媒とが良好に予備接触することができ、より優れた触媒性能を有する均一なイオン型触媒溶液を得ることができることを見出した。得られた均一なイオン型触媒溶液を反応器に入れた後、本出願のプロピレン系共重合体、特に本出願で規定される好適な特性(特にコモノマー分散度)を有するプロピレン系共重合体を製造することができる。
【0062】
本発明において、主触媒混合液および助触媒混合液の流量が体積流量で計測する場合、溶媒の密度を用いて体積流量を質量流量に換算することができる。例えば、n-ヘキサンの密度は0.66g/cmである。溶媒としてn-ヘキサンを用いて、主触媒混合液および助触媒混合液を得る場合、n-ヘキサンの密度を用いて体積流量を質量流量に換算して上記式に用いることができる。
【0063】
本発明の実施形態によれば、予備接触のために使用される溶剤は好ましくはC~C20直鎖状、分岐状、または環状の脂肪族炭化水素のうちの少なくとも1つであり、具体的には好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;より好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらに好ましくは、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらにより好ましくはn-ヘキサンである。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本出願における主触媒と溶媒とを混合して、主触媒混合液を得ることができる。前記溶媒はC~C20直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素のうちの少なくとも1つであり、好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;より好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらに好ましくはn-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらにより好ましくはn-ヘキサンである。
【0065】
主触媒混合液の濃度は、当業者が適宜決定することができる。例えば、主触媒混合液の濃度は、0.001μmol/mL~1000μmol/mL、好ましくは0.01μmol/mL~100μmol/mLとすることができる。例えば、主触媒混合液の濃度は、0.1μmol/mLとすることができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本出願における助触媒と溶媒とを混合して、助触媒混合液を得ることができる。前記溶媒はC~C20直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素のうちの少なくとも1つであり、好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;より好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらに好ましくはn-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらにより好ましくはn-ヘキサンである。
【0067】
助触媒混合液の濃度は、当業者が適宜決定することができる。例えば、助触媒混合液の濃度は、0.001μmol/mL~1000μmol/mL、好ましくは0.01μmol/mL~100μmol/mLとすることができる。例えば、助触媒混合液の濃度は、0.15μmol/mLとすることができる。
【0068】
本出願のいくつかの実施形態によれば、主触媒混合液の溶媒は助触媒混合液の溶媒と同一である。好ましくは主触媒混合液の溶媒は助触媒混合液の溶媒と同一であり、前記溶媒はC~C20直鎖状、分岐状または環状の脂肪族炭化水素のうちの少なくとも1つ、好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;より好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらに好ましくはn-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらにより好ましくはn-ヘキサンである。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明のプロピレン系共重合体の製造方法は:
(A)主触媒混合液と助触媒混合液とを、重合反応器に接続されたパイプライン中で予備接触させて、溶媒中に均一なイオン型触媒溶液をその場で形成する工程、および
(B)工程(A)で得られた均一なイオン型触媒溶液を、重合反応器に接続されたパイプラインを介して重合反応器に送り、プロピレン単量体、1種類以上のコモノマー、および任意の水素と接触させてオレフィン重合を行い、プロピレン系共重合体を生成する工程を含む。
【0070】
本発明の製造方法は、工程(A)の前に、主触媒混合液および助触媒混合液を製造する工程をさらに含むことができる。いくつかの実施形態によれば、主触媒混合液を製造することは、主触媒と溶媒とを混合して、必要に応じて撹拌することを包含する。いくつかの実施形態によれば、助触媒混合液を製造することは、助触媒と溶媒とを混合して、必要に応じて撹拌することを包含する。撹拌は、当該技術分野で公知の様々な撹拌装置を用いて行うことができる。
【0071】
従来技術では、触媒、特にビス-インデニル配位子を有するメタロセン触媒の溶解度を改善するために、一般に、トルエンなどの芳香族溶媒を使用する必要がある。しかしながら、芳香族溶媒は沸点が高く、重合体からの除去が困難である。溶液重合プロセスなどの重合プロセス中に芳香族溶媒が導入される場合、得られる重合体は芳香族物質を含有する。重合体中に芳香族物質が存在することは重合体の応用に悪影響を及ぼし、例えば、食品および医療分野で使用することができなくなる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明のプロピレン系共重合体の製造プロセスにおいて、芳香族炭化水素化合物は使用されない。例えば、本発明の方法において脂肪族溶媒を使用することにより、芳香族溶媒を使用せずに済む。したがって、本発明の製造方法によって得られるプロピレン系共重合体、例えば、本発明のプロピレン系共重合体中の芳香族炭化水素化合物の重量含有量は、500ppm未満、好ましくは300ppm未満、より好ましくは200ppm未満または100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは芳香族炭化水素化合物が存在しない。「芳香族炭化水素化合物は使用されない」という表現は、本発明の方法において芳香族炭化水素化合物が意図的に使用されないことを意味する。いくつかの実施形態によれば、芳香族炭化水素化合物は、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、これらのハロゲン化誘導体、およびこれらの混合物などの本分野で公知のものを包含する。
【0073】
本発明の方法において、助触媒および主触媒の使用量は、本分野で従来使用されている量であってもよい。当業者は、助触媒および主触媒の使用量を選択することができる。好ましくは、助触媒と、主触媒中の中心金属原子Mとのモル比が0.5:1~5:1、好ましくは1:1~2:1である。
【0074】
本発明によれば、いくつかの実施形態では、アルキルアルミニウムをオレフィン重合系に添加することができる。アルキルアルミニウムを添加するタイミングは比較的柔軟であってよく、パイプラインに添加するかまたは重合反応器に添加することができ、好ましくは、パイプラインに添加する。いくつかの実施形態によれば、アルミニウムアルキルは、予備接触の開始後に添加される。いくつかの好ましい実施形態によれば、アルキルアルミニウムは予備接触点の下流(すなわち、重合反応器により近い部位)で、重合反応器に接続された予備接触パイプラインに添加される。
【0075】
本発明において使用されるアルキルアルミニウムは、本分野において従来使用されているものであり得る。いくつかの実施形態では、アルキルアルミニウムが式(III)で表される構造を有することができる;
AlR (III)
式(III)において、RはC~C12ヒドロカルビル、好ましくはC~C12アルキル、より好ましくはC~Cアルキルである。
【0076】
より具体的には、アルキルアルミニウムがトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリイソオクチルアルミニウムのうちの少なくとも1つであり得る。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態によれば、アルキルアルミニウムは、アルキルアルミニウム溶液の形態で添加される。いくつかの好ましい実施形態によれば、アルキルアルミニウム溶液の溶媒はC~C20直鎖状、分岐状または環状の脂肪族炭化水素であり、好ましくは、アルキルアルミニウム溶液の溶媒は予備接触に使用される溶媒(すなわち、主触媒混合液および助触媒混合液を製造するために使用される溶媒)と同一である。アルキルアルミニウム溶液の濃度は広い範囲で変動することができ、当業者によって適切に選択することができ、例えば、1~20mol/Lであることができる。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法において、ホウ素含有化合物型助触媒およびアルキルアルミニウムの両方が使用される。
【0079】
本発明におけるオレフィン重合の形態は、バルク均一重合、超臨界重合、溶液重合、または近臨界分散重合であり得る。これらの重合形態は、本分野において公知である。
【0080】
好ましい実施形態によれば、本発明の重合方法は溶液重合である。
【0081】
溶液重合は、少なくとも1種類の重合溶媒の存在下で行う必要がある。いくつかの実施形態によれば、重合溶剤は、C~C10アルカンおよび/または単環式芳香族炭化水素であり、好ましくはC~C10アルカンであり得る。C~C10アルカンは、好ましくは、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;単環式芳香族炭化水素は、好ましくは、トルエンおよび/またはキシレンである。好ましくは、重合溶媒は、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらに好ましくはn-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらにより好ましくはn-ヘキサンである。
【0082】
いくつかの好ましい実施形態によれば、本発明の重合方法は溶液重合であり、溶液重合で使用される溶媒は、主触媒混合液および/または助触媒混合液を製造するために使用される溶媒と同一である。いくつかの好ましい実施形態によれば、溶液重合において使用される溶媒、主触媒混合液を製造するために使用される溶媒、および助触媒混合液を製造するために使用される溶媒はすべて同一であり、好ましくは、前記溶媒はC~C20直鎖状、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素のうちの少なくとも1つであり;好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、イソヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;より好ましくはn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらに好ましくはn-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサンおよびシクロヘキサンのうちの少なくとも1つであり;さらにより好ましくはn-ヘキサンである。
【0083】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明における溶液重合に使用される溶媒は、予備接触に使用される溶媒と同一である。本発明の好ましい実施形態によれば、アルキルアルミニウムが使用される場合、アルキルアルミニウム溶液の溶媒、溶液重合に使用される溶媒、および予備接触に使用される溶媒は全て同一である。
【0084】
本発明の重合は、連続的または半連続的操作またはバッチ操作のいずれかであり得る。これらの操作モードは、本分野で公知である。本発明の重合は、好ましくは連続重合である。
【0085】
本発明のオレフィン重合は、当該技術分野における従来のプロセス条件を使用することができる。当業者は使用される重合プロセスに従って適切な重合条件を選択することができ、これらの重合条件は本分野で公知である。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、本発明におけるオレフィン重合の重合温度は60~150℃であり、重合圧力は0.1~10MPaである。
【0087】
本発明の製造方法では、重合が完了すると、重合を終了させ、後処理して重合体を得ることができる。重合反応の停止および後処理は、本分野で公知である。
【0088】
(プロピレン系共重合体を含有する組成物)
本発明は、本発明のプロピレン系共重合体を含む重合体組成物を提供し、好ましくは、重合体組成物は、本発明のプロピレン系共重合体および少なくとも1つの追加の重合体を含む。追加の重合体は、本発明のプロピレン系共重合体とは異なる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態によれば、重合体組成物は、ポリプロピレン組成物であり、本発明のプロピレン系共重合体およびポリプロピレンを含む。ポリプロピレンは、ポリプロピレン単独重合体、本発明のプロピレン系共重合体とは異なるポリプロピレン共重合体、またはこれらの組み合わせを包含する。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明はポリプロピレン組成物を提供し、ポリプロピレン組成物は:
(1)30~99.5重量%の本発明のプロピレン系共重合体(第1の重合体成分)、および、
(2)0.5~70重量%の第2の重合体成分(ポリプロピレン)であって、95~100重量%のプロピレン由来構造単位および0~5重量%のコモノマー由来構造単位を含む第2の重合体成分を含有し、
第2の重合体成分中の任意のコモノマーは、それぞれ独立して、エチレンおよびC~C20 α-オレフィンのうちの少なくとも1つから選択される。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、ポリプロピレン組成物の初期溶融温度は80℃以上、好ましくは90℃以上であり、融解エンタルピーは、50J/g未満、好ましくは40J/g未満である。
【0092】
初期溶融温度および融解エンタルピーの両方は、DSCによって測定される。
【0093】
本発明において、ポリプロピレン組成物中の本発明のプロピレン系共重合体の含有量および第2の重合体成分の含有量は、ポリプロピレン組成物の総重量に基づいて算出される。
【0094】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ポリプロピレン組成物において、本発明のプロピレン系共重合体の含有量は50~99重量%であり、第2の重合体成分の含有量は1~50重量%であり、好ましくは、本発明のプロピレン系共重合体の含有量は60~95重量%であり、第2の重合体成分の含有量は5~40重量%である。
【0095】
本発明によれば、好ましくは、ポリプロピレン組成物において、第2の重合体成分は一定のコモノマー分散度を満たすことが好ましい。具体的には、第2の重合体成分に含まれるコモノマー由来構造単位のプロピレンセグメントにおける分散度D[PCP]/[C]は、50%~75%であり、例えば、55%、60%、65%、70%であり、分散度D[PCP]/[C]は上述した通りである。本発明において、いくつかの好ましい実施形態によれば、第2の重合体成分は、本発明の重合方法によって製造することができる。
【0096】
本発明によれば、本発明のプロピレン系共重合体および第2の重合体成分の一方または両方は、以下の特徴のうちの少なくとも1つをさらに有する:
mmm立体規則性は、75~99%、好ましくは80%~97%の範囲である;
立体規則性指数m/rは3~20である。
【0097】
本発明のポリプロピレン組成物は、比較的低いガラス転移温度を有する。本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明のポリプロピレン組成物は、-29℃以下、好ましくは-30℃以下のガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、DSCによって測定することができる。
【0098】
本発明のポリプロピレン組成物は前記2つの重合体成分を含有するが、DSC曲線においてただ1つの溶融ピークを有する。本発明のポリプロピレン組成物は、その融点(Tm)によって特徴づけられ得る。融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。
【0099】
DSCの一般的な手順は以下の通りである:10mgの試料をるつぼに入れ、示差走査熱量計(例えば、METTLER DSC1)で測定する。窒素雰囲気下、加熱速度10℃/分で-70℃から200℃に昇温し、1分間維持し、10℃/分の速度で-70℃に減温し、3分間維持した後、10℃/分の速度で200℃に昇温する。2回目の昇温スキャンデータを記録する。本出願の目的のために、最高温度ピークの最大値は、重合体の融点とみなされる。本出願における「ピーク」は、DSC曲線(熱流対温度)の全体的な勾配が正から負に変化し、ベースラインに対してシフトすることなく最大値を形成すると定義され、DSC曲線は、発熱反応の終わりに正のピークを示すようにプロットされる。
【0100】
ポリプロピレン組成物の融点Tm(DSCによって測定される)は、100℃より高く、140℃より低く、好ましくは130℃より低く、より好ましくは120℃より低くなり得る。
【0101】
本発明のポリプロピレン組成物は、その融解エンタルピー(ΔHm)によって特徴づけられ得る。融解エンタルピーは、DSCによって測定することができる。本発明のポリプロピレン組成物は、融解エンタルピーが0.5~50J/g、好ましくは5~40J/g、より好ましくは10~30J/g、最も好ましくは15~25J/gである。
【0102】
本発明のポリプロピレン組成物の結晶化度は、試料のΔHmを100%結晶性重合体のΔHmで割ることによって求めることができる。アイソタクチックポリプロピレンの場合、100%結晶性重合体のΔHmは、189J/gであると仮定される。本発明のポリプロピレン組成物は、結晶化度が20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは5~12%であり得る。
【0103】
本発明のポリプロピレン組成物の密度は、試験方法ASTMD-1505により室温で測定して、好ましくは0.84~0.92g/cc、より好ましくは0.86~0.89g/ccである。
【0104】
本発明のポリプロピレン組成物のメルトフローレート(MFR)は、2.16kgの荷重下、190℃で、100g/10min以下であり、好ましくは20g/10min以下であり、試験方法ASTM D-1238によって測定される。
【0105】
本発明によれば、ポリプロピレン組成物は、本発明のプロピレン系共重合体と第2の重合体成分とを溶融状態又は溶液状態で混合することにより得ることができる。これらの混合モードは本分野において公知であり、当業者によって適切な方法で選択され、使用され得る。
【0106】
本発明のポリプロピレン組成物は高いコモノマー含有量および比較的高い初期溶融温度を有し、したがって、貯蔵および輸送中の接着および凝集の問題を回避することができる。
【0107】
本発明のプロピレン組成物は、ポリプロピレンとブレンドすると、ポリプロピレンの結晶化を促進する。したがって、ポリプロピレンとポリプロピレン組成物とを含むポリプロピレン材料において、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン結晶化促進剤としての役割を果たすことができる。さらに、ポリプロピレン材料の機械的特性を改善することができるため、ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレン材料の改質剤として、具体的にはポリプロピレン材料の機械的特性の改質剤としても使用することができる。
【0108】
本発明はまた、ポリプロピレン材料を製造するための、ポリプロピレン組成物の使用を提供し、ポリプロピレン材料は、ポリプロピレンおよびポリプロピレン組成物を含む。
【0109】
本発明はまた、ポリプロピレンと上記ポリプロピレン組成物とを含むポリプロピレン材料を提供する。
【0110】
本発明のポリプロピレン組成物および/またはポリプロピレン材料は、充填剤、酸化防止剤、界面活性剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、加工助剤、UV安定剤、滑剤、ワックス、核剤などの本分野で公知の添加剤を含有することができる。添加剤は、本分野で公知の典型的な有効量、例えば0.001重量%~10重量%などで存在することができる。当業者はこれらの添加剤を適切な方法で選択して使用することができる。
【0111】
〔実施例〕
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
以下の実施例において、評価および試験方法は以下の通りである:
1.メルトフローレート(190℃/2.16kg)は、ASTM-D 1238の方法に従って測定した。
【0113】
2.プロピレン系共重合体におけるエチレン単量体構造単位含有量:赤外分光光度計Perkin Elmer PE1760で、以下の通り測定した:プロピレン系共重合体を約150℃以上の温度で薄く均一なフィルムにプレスした後、赤外分光光度計に固定した。600cm-1から4000cm-1までの試料のすべてのスペクトルを記録し、エチレン単量体構造単位の重量%を以下の式に従って算出した:エチレン重量%=82.585-111.987x+30.045x、ここでxは、1155cm-1でのピーク高さと、722cm-1または732cm-1(どちらか高い方)でのピーク高さとの比率である。
【0114】
3.エチレン分散度:D[PEP]/[E]=[PEP]/[E]×100%(式中、[PEP]は、プロピレン-エチレン共重合体における単分散のエチレン単量体構造単位の量であり、単分散のエチレン単量体構造単位は、プロピレンセグメントに挿入された単一エチレン単量体構造単位の形態で存在するエチレン単量体構造単位であり、[E]はプロピレン系共重合体におけるエチレン単量体構造単位の総量であり、エチレン単量体構造単位の総量[E]および単分散のエチレン単量体構造単位の量[PEP]は13C NMRにより測定した。
【0115】
4.密度は、ASTM-D792の方法に従って室温で測定した。
【0116】
5.核磁気水素スペクトルおよび核磁気炭素スペクトルは、Bruker-300核磁気共鳴装置で、重水素化クロロホルムを溶媒として使用して、110℃で測定した。
【0117】
6.mmm立体規則性は、13C NMRによって測定した;米国特許US7232871に開示された方法を参照されたい。
【0118】
7.立体規則性指数m/rは、13C NMRによって測定した;詳細な方法は、H.N.Cheng,Macromolecules,Vol.17,pp.1950-1955(1984)の説明を参照されたい。
【0119】
8.融点は示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。DSCの一般的な方法は以下の通りである:10mgの試料をるつぼに入れ、示差走査熱量計METTLER DSC1で測定した。窒素雰囲気下、加熱速度10℃/分で、-70℃から200℃に昇温し、1分間維持し、10℃/分で-70℃に減温し、3分間維持した後、10℃/分で200℃に昇温した。2回目の昇温スキャンデータを記録した。最高温度ピークの最大値を、重合体の融点とみなした。
【0120】
9.重合活性:重合により得られた重合体を乾燥した後、重量を秤量し、重合時の触媒添加量で除して触媒活性を得た。
【0121】
10.融解エンタルピーは、上記のようにDSCによって測定した。
【0122】
〔実施例A1~A4〕
重合反応は1.8Lの重合釜中で連続的に行った。重合釜は、機械的撹拌機を備えていた。重合釜の温度は、油浴を介してジャケット温度を制御することによって調整することができる。反応器内の温度は90℃に設定した。重合釜を、プロピレンパイプライン、エチレンパイプライン、n-ヘキサンパイプラインおよび触媒注入パイプラインと接続した。反応器に入る溶媒および単量体供給物を質量流量制御器によって測定した。水素供給物は、質量流量制御器を通過した後、エチレンパイプラインに組み込まれた。材料の流量および圧力は、可変速度ダイアフラムポンプで制御した。
【0123】
ジメチルシリルビス(5,6,7,8-テトラヒドロ-2,5,5,8,8-ペンタメチルベンズインデニル)ジメチルハフニウムを主触媒として使用した。その合成方法は、米国特許60/586465を参照されたい。主触媒をn-ヘキサン溶媒と混合し、得られた主触媒混合液の濃度は0.1μmol/mLであった。ホウ素含有化合物は市販化合物のトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであり、このホウ素含有化合物をn-ヘキサン溶媒と混合した。得られたホウ素含有化合物混合液の濃度は0.15μmol/mLであった。主触媒混合液、ホウ素含有化合物混合液およびトリイソブチルアルミニウム溶液(濃度1mmol/mLのn-ヘキサン溶液)を、ポンプおよび質量流量計を用いて計量した。主触媒混合液とホウ素含有化合物混合液とをパイプライン中で混合した後、長さ0.2m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に投入した。続いて、トリイソブチルアルミニウム溶液を、反応器から0.1mの距離でパイプラインに添加した。
【0124】
反応器は、撹拌しながら30バールで操作した。重合釜の底部に排出パイプラインを有する。水を安定剤トリ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトと共に排出パイプラインに添加して、重合反応を停止させた。その後、生成物を熱交換器で加熱し、脱揮装置に投入した。押出機および水中ペレタイザーを用いて重合体ペレットを得た。
【0125】
具体的なプロセス条件および結果を表A1に示した。
【表1】
【0126】
〔実施例A5~A6〕
ポンプおよび質量流量計を用いて、主触媒混合液と助触媒混合液を計量し、パイプライン中で混合した後、長さ2m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に投入した以外は、実施例A1の重合手順を用いた。
【0127】
具体的なプロセス条件および結果を表A2に示した。
【表2】
【0128】
〔実施例A7~A9〕
主触媒がジメチルシリルビス(5,6,7,8-テトラヒドロ-2,5,5,8,8-ペンタメチルベンズインデニル)ジルコニウムジクロリドであること以外は、実施例A1の重合手順を用いた。その合成方法は米国特許US60/586465を参照されたい。助触媒はNouryon Companyから購入したMMAO-3Aであった。主触媒混合液および助触媒混合液は、ポンプおよび質量流量計を用いて計量され、パイプライン中で混合された後、長さ0.5m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に導入された。
【0129】
具体的なプロセス条件および結果を表A3に示した。
【表3】
【0130】
〔試験例A〕
実施例A1~A9のプロピレン系共重合体を単独重合ポリプロピレン(PP;シノペック(Sinopec)のPPH-M16)に組み込んでブレンド試験を行った。プロピレン系共重合体とPPとの重量比は13:87であった。RSA III DMA動的熱機械分析器を用いて、ブレンド物の動的機械分析曲線(DMA曲線)を測定した。ブレンド物のガラス転移温度(Tg)は、tan deltaピークの温度である。液体窒素環境中でねじりクランプを用いて動的モードで固体試験を行った。加熱速度3℃/min、周波数1rad/sec、初期歪0.1%を用いた。平均試料サイズは45.0mm×12.6mm×3.2mmであった。プロピレン系共重合体とPP材料との相溶性は、DMA曲線におけるTgピークによって反映され得る。ブレンド後に得られた各材料は、DMA曲線において1つのガラス転移温度ピークのみを有し、PP材料の結晶化温度Tc(DSC試験によって得られた)が高くなった。これは、本発明のプロピレン系共重合体の組込みがPPの結晶化を促進することができることを示している。
【0131】
図A1は、本発明の実施例A4のプロピレン系共重合体が組み込まれた前後のポリプロピレン材料の動的機械分析曲線を示し、より低いピーク温度を有する曲線は、実施例A4の試料が組み込まれた後のポリプロピレン材料を表している。図A1から、本発明のプロピレン系共重合体をPPとブレンドした後に得られた材料は、1つのガラス転移温度ピークのみを有していたことが分かる。
【0132】
図A2は、本発明の実施例A6のプロピレン系共重合体が組み込まれた前後のポリプロピレン材料の動的機械分析曲線を示し、より低いピーク温度を有する曲線は、実施例A6の試料が組み込まれた後のポリプロピレン材料を表している。図A2から、本発明のプロピレン系共重合体をPPとブレンドした後に得られた材料は、1つのガラス転移温度ピークのみを有していたことが分かる。
【0133】
図A3は、実施例A1~A4のプロピレン系共重合体、ならびに比較例B2およびB3のプロピレン系共重合体が組み込まれたポリプロピレン組成物の結晶化温度を示し、プロピレン系共重合体とポリプロピレンとの重量比は13:87であった。図A3は、本発明のプロピレン系共重合体の組込み後、ポリプロピレン組成物の結晶化温度Tc(DSC試験によって得られた)が高くなり、これは、本発明のプロピレン系共重合体の組込みがポリプロピレンの結晶化を促進することができることを示している。比較例B2およびB3について、13:87の重量比でポリプロピレンとブレンドした後、ポリプロピレン組成物の結晶化温度は117.9℃および117.8℃であった。
【0134】
〔実施例B1~B4〕
(重合手順)
連続重合反応は1.8Lの重合釜中で実施した。重合釜は、機械的撹拌機を備えていた。重合釜の温度は、油浴を介してジャケット温度を制御することによって調整することができる。重合釜を、プロピレンパイプライン、エチレンパイプライン、n-ヘキサンパイプラインおよび触媒注入パイプラインと接続した。反応器に入る溶媒および単量体供給物を質量流量制御器によって測定した。材料の流量および圧力は、可変速度ダイアフラムポンプで制御した。水素供給物は、質量流量制御器を通過した後、エチレンパイプラインに組み込まれた。
【0135】
主触媒はジメチルシリルビス(5,6,7,8-テトラヒドロ-2,5,5,8,8-ペンタメチルベンズインデニル)ジメチルハフニウムであった。その合成方法は、米国特許US60/586465を参照されたい。主触媒をn-ヘキサン溶媒と混合し、得られた主触媒混合液の濃度は0.1μmol/mLであった。ホウ素含有化合物は市販化合物のトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであり、このホウ素含有化合物をn-ヘキサン溶媒と混合した。得られたホウ素含有化合物混合液の濃度は0.15μmol/mLであった。主触媒混合液、ホウ素含有化合物混合液およびトリイソブチルアルミニウム溶液(濃度1mmol/mLのn-ヘキサン溶液)を、ポンプおよび質量流量計を用いて計量した。主触媒混合液とホウ素含有化合物混合液とをパイプライン中で混合した後、長さ0.2m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して重合釜に投入した。続いて、トリイソブチルアルミニウム溶液を添加した。反応器を撹拌下で操作した。重合釜の底部に排出パイプラインを有する。水をトリ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトと共に排出パイプラインに添加して、重合反応を停止させた。その後、生成物を熱交換器で加熱し、脱揮装置に投入した。押出機および水中ペレタイザーを用いて重合体ペレットを得た。
【0136】
具体的なプロセス条件および結果を表B1に示した。
【表4】
【0137】
〔実施例B5~B7〕
ポンプおよび質量流量計を用いて、主触媒混合液と助触媒混合液とを計量し、これらをパイプライン中で混合した後、長さ1m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に投入した以外は実施例B1の重合手順を用いた。
【0138】
具体的なプロセス条件および結果を表B2に示した。
【表5】
【0139】
〔実施例B8~B10〕
ポンプおよび質量流量計を用いて、主触媒混合液と助触媒混合液とを計量し、これらをパイプライン中で混合した後、長さ2m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に投入した以外は実施例B1の重合手順を用いた。
【0140】
具体的なプロセス条件および結果を表B3に示した。
【表6】
【0141】
〔実施例B11~B13〕
主触媒がジメチルシリルビス(5,6,7,8-テトラヒドロ-2,5,5,8,8-ペンタメチルベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド(その合成方法は、米国特許US60/586465を参照されたい)であった以外は実施例B1の重合手順を用いた。助触媒は、Nouryon Companyから購入した製品MMAO-3Aであった。主触媒混合液および助触媒混合液を、ポンプおよび質量流量計を用いて計量し、これらをパイプライン中で混合した後、長さ0.5m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に導入した。
【0142】
具体的なプロセス条件および結果を表B4に示した。
【表7】
【0143】
〔比較例B1~B4〕
比較例B1~B4では、主触媒、助触媒、およびアルキルアルミニウムを反応器に直接供給した。
【表8】
【0144】
〔実施例C1~C3〕
本発明のポリプロピレン組成物中の第1の重合体成分(すなわち、本発明のプロピレン系共重合体)および第2の重合体成分は、それぞれ、1.8Lの重合釜中での連続重合によって製造された。重合釜は、機械的撹拌機を備えていた。重合釜の温度は、油浴を介してジャケット温度を制御することによって調整することができる。反応器内の温度は90℃に設定した。重合釜を、プロピレンパイプライン、エチレンパイプライン、n-ヘキサンパイプラインおよび触媒注入パイプラインと接続した。反応器に入る溶媒および単量体供給物を質量流量制御器によって測定した。材料の流量および圧力は、可変速度ダイアフラムポンプで制御した。第1の重合体成分の製造において、プロピレンの流量は400g/hであり、エチレンの流量は70g/hであり、n-ヘキサンの流量は600g/hであった。第2の重合体成分の製造において、プロピレンの流量は390g/hであり、エチレンの流量は12g/hであり、n-ヘキサンの流量は600g/hであった。
【0145】
2つの重合体成分を、主触媒、助触媒、およびトリイソブチルアルミニウムから同じ条件下で調製した。主触媒はジメチルシリルビス(5,6,7,8-テトラヒドロ-2,5,5,8,8-ペンタメチルベンズインデニル)ジメチルハフニウムであった。その合成方法は、米国特許US60/586465を参照されたい。主触媒をn-ヘキサン溶媒と混合し、得られた主触媒混合液の濃度は0.1μmol/mLであった。ホウ素含有化合物は市販化合物のトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであり、このホウ素含有化合物をn-ヘキサン溶媒と混合した。得られたホウ素含有化合物混合液の濃度は0.15μmol/mLであった。主触媒混合液、ホウ素含有化合物混合液およびトリイソブチルアルミニウム溶液(濃度1mmol/mLのn-ヘキサン溶液)を、ポンプおよび質量流量計を用いて計量した。主触媒混合液の流量は60mL/hであり、助触媒混合液の流量は50mL/hであった。主触媒混合液とホウ素含有化合物混合液とをパイプライン中で混合した後、長さ0.2m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に投入した。続いて、トリイソブチルアルミニウム溶液(流量:50mL/h)をパイプラインに加えた。
【0146】
反応器は、撹拌しながら30バールで操作した。重合釜の底部に排出パイプラインを有する。水をトリ(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトと共に排出パイプラインに添加して、重合反応を停止させた。
【0147】
重合釜内で得られた第1の重合体成分溶液と第2の重合体成分溶液とを撹拌槽内で混合した後、ブレンド材料を熱交換器で加熱し、脱揮装置に投入した。押出機および水中ペレタイザーを用いて重合体ペレットを得た。
【0148】
具体的なプロセス条件および結果を表C1に示した。実施例C1~C3で製造したポリプロピレン組成物のDSC曲線を、それぞれ図C1~C3に示した。これらは1つの融解ピークのみを有していた。
【表9】
【0149】
〔実施例C4~C6〕
ポンプおよび質量流量計を用いて、主触媒混合液および助触媒混合液を計量し、これらをパイプライン中で混合した後、長さ2m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に投入した以外、第1の重合体成分は実施例C1の重合手順を用いて製造した。
【0150】
主触媒がジメチルシリルビスインデニルジルコニウムジクロリドであり、助触媒がNouryon Companyから購入したMMAO-3Aであったこと以外、第2の重合体成分も第1の重合体成分と同じ重合手順を用いて製造した。さらに、主触媒および助触媒を、パイプライン中で予備混合せず、それぞれのパイプラインを通して重合釜中に直接入れた。
【0151】
具体的なプロセス条件および結果を表C2に示した。
【表10】
【0152】
〔実施例C7~C9〕
第1の重合体成分は、実施例C1の重合手順を用いて製造した。
【0153】
主触媒がジメチルシリルビスインデニルジルコニウムジクロリドであり、助触媒がNouryon Companyから購入したMMAO-3Aであったこと以外、第2の重合体成分も第1の重合体成分と同じ重合手順を用いて製造した。さらに、主触媒および助触媒を、パイプライン中で予備混合せず、それぞれのパイプラインを通して重合釜中に直接入れた。さらに、コモノマーを添加せず、プロピレン単独重合であった。
【0154】
具体的なプロセス条件および結果を表C3に示した。
【表11】
【0155】
〔比較例D〕
〔比較例D1~D3〕
主触媒がシノペックによって製造されたBCNX触媒であり、助触媒がジシクロペンチルジメトキシシランであったこと以外、実施例B1の重合手順を用いた。主触媒混合液および助触媒混合液を、ポンプおよび質量流量計を用いて計量し、これらをパイプライン中で混合した後、長さ0.5m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に導入した。
【0156】
具体的なプロセス条件および結果を表D1に示した。
【表12】
【0157】
〔比較例D4~D6〕
以下の比較例において、助触媒はNouryon CompanyのMAO(トルエン溶液であり、活性化アルミニウム含有量は1.5mmol/mL)であった。主触媒がジメチルシリルビス(5,6,7,8-テトラヒドロ-2,5,5,8,8-ペンタメチルベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド(その合成方法は、米国特許US60/586465を参照されたい)であったこと以外、実施例B1の重合手順を用いた。助触媒はメチルアルミノキサンのトルエン溶液であった。主触媒混合液および助触媒混合液を、ポンプおよび質量流量計を用いて計量し、これらをパイプライン中で混合した後、長さ0.5m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に導入した。
【0158】
具体的なプロセス条件および結果を表D2に示した。
【0159】
表D2のデータから、重合活性が著しく低下し、エチレン分散度が>75%であったことが分かる。
【表13】
【0160】
〔比較例D7~D9〕
比較例D7およびD8の主触媒混合液および助触媒混合液をポンプおよび質量流量計を用いて計量し、これらをパイプライン中で混合した後、長さ3m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に投入した以外、実施例B1の重合手順を用いた。比較例D9では、撹拌機付き1.2Lガラス容器内で、主触媒混合液500mLと助触媒混合液300mLとを30分間予備混合した後、ポンプによって反応器内に注入した。
【0161】
具体的なプロセス条件および結果を表D3に示した。
【表14】
【0162】
比較例D7~D9では、重合反応の活性が極めて低いことが分かった。
【0163】
〔比較例D10~D12〕
比較例D10~D12の主触媒混合液および助触媒混合液をポンプおよび質量流量計を用いて計量し、これらをパイプライン中で混合した後、長さ5m、内径(直径)4.5mmのパイプラインを介して反応器に投入した以外、実施例B1の重合手順を用いた。
【0164】
具体的なプロセス条件および結果を表D4に示した。
【表15】
【0165】
比較例D10~D12では、重合反応がほとんど不活性であったことが分かった。
【0166】
〔比較例D13~D15〕
主触媒がジメチルシリルビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(Infinity Scientific(Panjin)Co.,Ltd.から購入)であったこと以外、実施例B1の重合手順を用いた。助触媒はNouryon CompanyのMAO(トルエン溶液であり、活性化アルミニウム含有量は1.5mmol/mL)であった。主触媒混合液および助触媒混合液を、ポンプおよび質量流量計を用いて計量し、これらをパイプライン中で混合した後、長さ0.5m、内径4.5mmのパイプラインを介して反応器に導入した。
【0167】
具体的なプロセス条件および結果を表D5に示した。
【表16】
【0168】
〔実施例E:芳香族炭化水素化合物含有量の試験〕
分析前に、試料を室温(最高25℃)で7日間被覆せずに放置した。試験はドイツ自動車工業会の規格VDA278に従って実施し、Gerstel社のTDSAを使用して熱脱着を行い、ガスクロマトグラフはAgilent社のHP6890を使用して、キャリアガスはヘリウムであり、分離カラムは5%フェニルメチルシロキサンであった。試験結果は以下の通りであった。
【表17】
【0169】
以上、本発明の実施例について説明した。上記の説明は例示的なものであり、網羅的なものではなく、本出願は、開示された実施例に限定されない。各実施例の範囲および精神から逸脱しない限り、多くの修正および変形が当業者には明らかであろう。
【0170】
本明細書に開示される範囲の端点および任意の値は正確な範囲または値に限定されず、これらの範囲または値に近い値を包含すると理解されるべきである。数値範囲については、各範囲の端点値を互いに、各範囲の端点値と個別の点値とを、または、個別の点値を互いに組み合わせて、1つまたは複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの新しい数値範囲は本明細書に具体的に開示されていると解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図1図A1は、本発明の実施例A4のプロピレン系共重合体が組み込まれた前後のポリプロピレン材料の動的機械分析曲線を示す。
図2図A2は、本発明の実施例A6のプロピレン系共重合体が組み込まれた前後のポリプロピレン材料の動的機械分析曲線を示す。
図3図A3は、異なるエチレン含有量を有する実施例A1~A4のプロピレン系共重合体、ならびに比較例B2およびB3のプロピレン系共重合体が組み込まれたポリプロピレン組成物の結晶化温度(DSC試験によって測定)を示す。
図4図C1~C3は、実施例C1~C3で製造したポリプロピレン組成物のDSC曲線をそれぞれ示す。
図5図C1~C3は、実施例C1~C3で製造したポリプロピレン組成物のDSC曲線をそれぞれ示す。
図6図C1~C3は、実施例C1~C3で製造したポリプロピレン組成物のDSC曲線をそれぞれ示す。
図7図Dは、比較例B1のプロピレン系共重合体が組み込まれた前後の単独重合ポリプロピレン材料の動的機械分析曲線を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】