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  • 特表-硫化物電解質を含む組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】硫化物電解質を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/10 20060101AFI20240328BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240328BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240328BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240328BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240328BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240328BHJP
   H01M 50/423 20210101ALN20240328BHJP
   H01M 50/42 20210101ALN20240328BHJP
   H01M 50/426 20210101ALN20240328BHJP
   H01M 50/417 20210101ALN20240328BHJP
【FI】
H01B1/10
H01B1/06 A
H01M10/0562
H01M4/62 Z
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/423
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/417
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545883
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2022051936
(87)【国際公開番号】W WO2022162085
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】21305113.9
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21315145.9
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ゴンザレス, ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】ル メルシェ, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ダレンコン, ローリアーヌ
(72)【発明者】
【氏名】バートリー, ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】フィンシー, フィンセント
【テーマコード(参考)】
5G301
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA05
5G301CA16
5G301CD01
5H021BB01
5H021BB02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE10
5H021EE15
5H021EE16
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029HJ00
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ14
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB08
5H050CB12
5H050DA13
5H050EA01
5H050EA23
5H050GA02
5H050GA03
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、式(I):LiPS(I)
(式中、
- Xは少なくとも1つのハロゲン元素を表し;
- aは2.0~7.0の数を表し;
- bは3.5~6.0の数を表し;及び
- cは0~3.0の数を表す)
に従う生成物を含むか又はから本質的になる組成物であって、サイズが、組成物の10重量%未満が200μmの篩を通過するようなものである粒子又は物品の形態の組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
LiPS(I)
(式中、
- Xは少なくとも1つのハロゲン元素を表し;
- aは2.0~7.0の数を表し;
- bは3.5~6.0の数を表し;及び
- cは0~3.0の数を表す)に従う生成物を含む組成物であって、
サイズが、前記組成物の10.0重量%未満が200μmの篩を通過するようなものである粒子又は物品の形態の組成物。
【請求項2】
前記生成物が式(II):
Li7-xPS6-x(II)
(式中、
- xは0.5~2.0の正数であり;
- Xは、Cl、Br及びI又はそれらの組合せの群から選択されるハロゲンである)に従う、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)又は(II)に従う前記生成物から本質的になる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記生成物がLiPSCl、Li、LiPS、Li11又はLiPSである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
- LiPS又はLi7-xPS6-xの非晶相;及び/又は
- LiX;及び/又は
- LiS;及び/又は
- Li1516Cl;及び/又は
- LiPOを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
- 上に開示された式(I)又は式(II)の前記生成物;
- LiX;及び/又は
- LiS;及び/又は
- Li1516Cl;及び/又は
- LiPOからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記粒子のサイズが、前記組成物の10.0重量%未満が400μmの篩を通過するようなものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
3つの直交した方向に寸法を有しそれぞれの寸法が2mmを超える3次元物品の形態の、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の式(I)又は(II)の前記生成物の比率が80.0重量%より大きく、有利には90.0重量%より大きく、有利には95.0重量%より大きい、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物1g当たり70mL未満のHSの放出rを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物であって、rは、35%の相対湿度を有する湿り助剤から構成される雰囲気に前記組成物を暴露することによって及び前記組成物が前記雰囲気と接触している(温度は23℃に設定されている)最初の50分の間に放出されるHSの量を測定するときに決定される、組成物。
【請求項11】
前記組成物の前記粒子又は前記物品が、1~20μmの間、より詳しくは2~15μmの間のd50を示す凝集した粒子から構成され、d50が、前記粒子の(数で)50%がd50以下であるサイズを示すような粒子サイズを表す、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物の前記粒子又は前記物品が形状において回転楕円体であり且つ0.8~1.0の間の球形度比SRを示し、
SRが、次式:
SR=4πA/P
を用いて測定された外周P及び粒子の投影の面積Aから計算され、及びSRが、とりわけISO 13322-2(2006)に準拠してDynamic Image Analysis(DIA)によって決定される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物の前記物品が円形断面を有する円柱の形状である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
以下の工程:
- 工程a):硫化リチウム(LiS)、五硫化二リン(P)、塩化リチウム(LiCl)、及び臭化リチウム(LiBr)が混合される工程;
- 工程b):工程a)の混合物が300℃~600℃の間、好ましくは350℃~500℃の間の温度の回転炉内で仮焼される工程;
- 工程c):工程b)からの粒子が篩分けされて顆粒を得る工程を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項15】
- 式(I)又は(II)に従う前記生成物を含むか又はから本質的になる材料をダイを通して押し出すことによって前記材料を圧縮してロッドを形成する工程と;
- 前記ロッドを切断して前記物品を形成する工程とを含む、請求項13に記載の組成物の調製方法。
【請求項16】
- 式(I)又は(II)に従う前記生成物を含むか又はから本質的になる材料を液体と混合してドウを得る工程と;
- 前記ドウをダイを通して押し出すことによって前記ドウを圧縮してロッドを形成する工程と;
- 前記ロッドを切断して前記物品を形成する工程と;
- 前記物品を乾燥させる工程とを含む、請求項13に記載の組成物の調製方法。
【請求項17】
式(I)又は(II)に従う前記生成物を含むか又はから本質的になる材料を型内で圧縮して前記物品を形成する工程を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項18】
(i)式(I)又は(II)の生成物と(ii)少なくとも1つのポリマー材料(P)とを含む組成物(C)の調製のための請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
電極の調製のための又は電極の電解質層の調製のための請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
セパレータの調製のための請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、欧州で2021年1月28日に出願された欧州特許第21305113.9号及び2021年8月26日に出願された欧州特許第21315145.9号に基づく優先権を主張するものであり、これら出願それぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、硫化物電解質を含む組成物及び電極又は電解質層の調製において使用される組成物(C)の調製のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム電池は、充電時にリチウムが正極からイオンとして溶解され、移動により負極によって吸収され、他方、放電時にリチウムイオンが負極から正極に戻される構造を有する電池である。リチウム二次電池は、大きいエネルギー密度及び長い有効寿命などのその特性のために家庭用電気器具、例えば、ビデオカメラ、携帯電子装置、例えば、ノートブックコンピュータ及び携帯電話、電動工具等の電源として広範囲に使用されており、近年、電気車(EV)、ハイブリッド電気車(HEV)等に搭載される大容量電池に適用されている。したがって、リチウム電池は、それらの高いエネルギー及び電力密度のために携帯エレクトロニクス及び電気車に電力を供給するために使用されている。
【0004】
リチウム電池は、有機溶媒中に溶解されたリチウム塩から構成される液体電解質を利用している。前述のシステムは、有機溶媒が可燃性であるため、安全性の問題を提起する。リチウムデンドライトが生じ、液体電解質媒体を通過すると、短絡を引き起こし、熱を生成し、それは、重傷につながる事故をもたらす。
【0005】
不燃性の無機固体電解質は、安全性の問題に対する解決策を提供する。さらに、その機械的安定性は、リチウムデンドライト形成を抑制し、自己放電及び加熱問題を予防し、且つ電池の寿命を延ばすのに役立つ。
【0006】
式LiPSXの固体硫化物電解質(Xはハロゲンである)は、それらの高いイオン伝導率及び機械的特性のためにリチウム電池用途に有利である(Yosuke UKAWA,et al.,“Preparation procedure of argyrodite-type LiPSX(X=Cl,Br,I)solid electrolytes and their ionic conductivity”,Symposium on Basic Science of Ceramics,January 2015(1G18),the Ceramic Society of Japanを参照のこと)。これらの電解質は、ペレット化し、コールドプレスによって電極材料に取り付けることができ、それは、高温組み立て工程の必要性を排除する。高温焼結工程をなくすことで、リチウム電池でリチウム金属アノードを使用することに対する問題の1つが取り除かれる。
【0007】
技術的問題
固体硫化物電解質が遭遇する問題は、材料が湿気と接触している時に硫化水素(HS)が放出されることである。硫化水素は刺激臭があり、毒性であるので、専門技術者のHSへの暴露を避けるために実験室又は工場で安全対策を講ずる必要がある。したがってより低量のHSを放出する固体硫化物電解質が必要とされている。別の問題は、固体硫化物電解質が空気中に存在している二酸化炭素に暴露される時に炭酸塩化され得、イオン伝導率特性に有害作用をもたらすことである。また、低量の粉塵を含み安全な取扱及び貯蔵を確実にし、輸送を容易にするための易流動性物品の形態の固体硫化物材料が必要とされている。その上、固体硫化物電解質はさらに、電極又は電解質層の調製において使用される組成物を調製するためにポリマーバインダーと容易に混合されて分散される必要がある。
【0008】
本発明はこの技術的問題を解決することを目指す。
【0009】
欧州特許第2504879B1号明細書には、硫化物電解質及びHSの抑制剤をベースとした組成物が開示されている。
【0010】
特開2011165650A2号公報には、硫化物電解質とHSをトラップする塩基とをベースとした組成物が開示されている。
【0011】
欧州特許第2732451B1号明細書には、エーテル化合物を硫化物固体電解質材料の粗粒材料に添加し、この粗粒材料を微粉砕処理によって微粒子状にする工程を含む、硫化物固体電解質材料の製造方法が開示されている。得られた生成物は、本発明の組成物よりもずっと小さいサイズを示す。
【0012】
韓国特許第102003300B1号明細書には、0.1~50μmの範囲の平均サイズを有する硫化物の粒子が開示されている。
【0013】
特開第2019102412A2号公報には、硫化物の粗粒子の粒子サイズの低減方法が開示されている。粗粒子のD50は200μm以下である。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、請求項1~21に記載の組成物に関する。また、本発明は、請求項22に開示される組成物の調製方法及び請求項23又は請求項24に開示されるその使用に関する。これらの目的は以降で更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による組成物の画像を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
組成物は、式(I):
LiPS(I)
(式中、
- Xは少なくとも1つのハロゲン元素を表し;
- aは2.0~7.0の数、例えば3.0~6.0、4.0~6.0又は5.0~6.0を表し;
- bは3.5~5.0の数、例えば3.9~5.0又は4.1~5.0を表し;及び
- cは0~3.0の数、例えば0.9~2.9又は1.0~2.5を表す)に従う生成物を含むか又はから本質的になる。
【0017】
式(I)によると、cはゼロに等しいことができる。この場合、生成物はハロゲン成分を全く含まず、生成物は式(I’):
LiPS(I’)
(式中、
- aは2.0~7.0の数、例えば3.0~7.0を表し;及び
- bは3.5~5.0の数、例えば3.9~4.9又は4.0~4.5を表す)に従う。
【0018】
式(I)によると、cは0.9~1.1であり得る。この場合、生成物は式(I’’):
LiPSc’(I’’)
(式中、
- c’は0.9~1.1の数を表し、例えば1.0に等しい)に従うことができる。
【0019】
この式(I’’)によると、Xは好ましくはClである。この場合、式(I’’)は以下の通りである:
LiPSClc’(I’’)
【0020】
いくつかの実施形態では、組成物は、式(II):
Li7-xPS6-x(II)
(式中、
- xは0.5~2.0の正数であり;
- Xは、Cl、Br及びI又はそれらの組合せの群から選択されるハロゲンである)に従う生成物を含むか又はから本質的になる。
【0021】
Xはより詳しくは0.8~1.8の間である。xは例えば1.0又は1.5に等しいことができる。xはまた、0.95~1.05の間又は1.45~1.55の間であり得る。Xはより詳しくはCl、Br又はそれらの組合せである。Xはまた、より詳しくはClであり得る。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態では、生成物はLiPSCl、Li、LiPS、Li11又はLiPS、より好ましくはLiPSCl又はLiPSである。
【0023】
式(I)、(I’)、(I”)及び(II)は、公知の分析技術に従って決定することができる。
【0024】
また、組成物はそのサイズによって特性決定される。確かに、組成物の粒子又は物品のサイズは、組成物の10.0重量%未満が200μmの篩を通過するようなものである。より好ましくは、組成物の粒子又は物品のサイズは、組成物の10.0重量%未満が400μmの、より詳しくは800μmの又は更に1000μmの篩を通過するようなものであり得る。組成物は一般的に、2cmの篩を通過する。篩は好ましくはISO3310-1に従う。
【0025】
いくつかの実施形態では、組成物は、3つの直交した方向に寸法を有しそれぞれの寸法が2mmを超える3次元物品の形態である。いくつかの実施形態では、組成物は、3つの直交した方向に寸法を有しそれぞれの寸法が3mmを超える3次元物品の形態である。いくつかの他の実施形態では、組成物は、3つの直交した方向に寸法を有しそれぞれの寸法が5mmを超える3次元物品の形態である。いくつかの他の実施形態では、組成物は、3つの直交した方向に寸法を有しそれらの2つが5mm超であり且つ第3の寸法が10mm超である3次元物品の形態である。組成物は一般的に、3.5cmの篩を通過する。篩は好ましくは、ISO3310-1に従う。
【0026】
組成物の粒子又は物品は凝集した粒子から構成され、最大で50.0μm、例えば最大で40μm、最大で30μm又は最大で20.0μm、より詳しくは0.1~20.0μmの間、より詳しくは0.1~15.0μmの間であるd50を示す。d50は0.5~4.0μmの間であり得る。d50は、粒子の(数で)50%がd50以下であるサイズを示すような粒子サイズを表す。d50の測定は、少なくとも150の多数の粒子について走査電子顕微鏡(SEM)で行われる。
【0027】
d50は、粒子の直径の数の分布の中央値に相当する。分布は、組成物の少なくとも1つのSEM画像で得られる。考慮される直径は、最小包含円の直径である。ソフトウェアlmageJをd50の決定のために使用することができる(このソフトウェアは、NIHによって開発されており、下記で入手できる:http://rsb.info.nih.gov又はhttg://rsb.info.nih.gov/ij/download.html)。
【0028】
組成物の粒子又は物品は一般的に形状が回転楕円体である。回転楕円体形状は、特にそれを押出機内に放出する時に、組成物を容易に取り扱うことを可能にする。
【0029】
組成物の粒子又は物品は一般的に、0.8~1.0の間、より詳しくは0.85~1.0の間、さらにより詳しくは0.90~1.0の間の球形度比SRを示す。SRは好ましくは0.90~1.0の間又は0.95~1.0の間であり得る。粒子の球形度比は、次式:
SR=4πA/P
を用いて、測定された外周P及び粒子の投影の面積Aから計算される。理想的な球について、SRは1.0であり、回転楕円体粒子についてそれは1.0未満である。
【0030】
SRから計算されるSRは通常、Dynamic Image Analysis(DIA)によって決定される。DIAを行なうために使用することができる器具の例は、RetschのCAMSIZER(登録商標)P4又はSympatecのQicPic(登録商標)である。
【0031】
球形度比はより詳しくは、ISO 13322-2(2006)に従って測定することができる。DIAは一般的に、統計学的に意味のある多数の粒子(例えば少なくとも500又は更に少なくとも1000)の分析を必要とする。
【0032】
本発明による組成物の物品は、その調製のために使用される方法に応じて任意の形状であり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、組成物の物品は、上に定義される形状において回転楕円体である。
【0034】
物品が球であるとき、その直径は、3つの直交した方向のその寸法を意味する。
【0035】
いくつかの実施形態では、物品は球であり、及びその直径は2mm超である。さらに、その直径は最大で30mmである。
【0036】
いくつかの実施形態では、物品は、直径2mm超及び最大で20mm、時々3mm超及び最大で15mm、しばしば4mm超及び最大で10mmの直径を有する球である。
【0037】
いくつかの他の実施形態では、組成物の物品は、三角形、四角形、矩形、六角形、楕円形及び円形などの規則的な断面形状である。したがって、物品の規則的な断面形状が円形であるとき、物品の形状は円柱である。物品が円柱であるとき、直径は、2つの直交した方向のその寸法を表し、高さは、第3の直交した方向のその寸法を表す。
【0038】
いくつかの実施形態では、物品は円柱であり、及びその直径は2mm超であり及びその高さは2mm超である。さらに、その直径は最大で20mmであり、及びその高さは最大で30mmである。
いくつかの実施形態では、物品は、直径2mm超及び最大で20mm、時々3mm超及び最大で15mm、しばしば4mm超及び最大で10mm並びに高さ2mm超及び最大で30mm、時々4mm超及び最大で25mm、しばしば6mm超及び最大で20mmの円柱である。
いくつかの好ましい実施形態では、物品は直径4mm超及び最大で10mm並びに高さ6mm超及び最大で20mmの円柱である。
【0039】
いくつかの他の実施形態では、組成物の物品の形状は、楕円形断面を有する円柱である。
【0040】
さらにいくつかの他の実施形態では、組成物の物品は、例えば、三角形、四角形、矩形、六角形、楕円形、円形及び凸状輪郭などの規則的な断面形状の一般的な錠剤又は丸薬形状である。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、組成物の物品の形状は、円形又は楕円形断面及び凸状輪郭を有する円柱である。
【0042】
いくつかのより好ましい実施形態では、組成物の物品の形状は、円形断面並びに凸状輪郭を有する円柱である。
【0043】
組成物はその機械的耐久性によって特性決定される。耐久性は、物品がバイアル内での撹拌によって生じた衝突に機械的に耐える能力を表す。物品が十分に耐性がないとき、物品間の衝突によって細粒が生み出される。分析中に篩い分けによってこれらの細粒を取り除くことは、推定される耐久性の低い値の原因である。%で表される耐久性は、次式に対応する:
耐久性(%)=[1-((初期質量-観察記録後の質量)/初期質量)]*100.
【0044】
少なくとも80%の耐久性が望ましい。
【0045】
また、組成物は与えられた条件におけるHSの低排出によって特性決定される。確かに、組成物が50分間、35%の相対湿度を有する湿り空気から構成される雰囲気に暴露されるとき、HSの放出rは組成物1g当たり70mL未満であり、測定は、23℃の温度で行われる。したがって、rは、組成物を湿り大気に暴露することと組成物が前記雰囲気と接触している最初の50分の間に放出されるHSの量を測定することに存する簡単な試験によって決定される。相対湿度は当業者に公知である。それは、与えられた温度における空気/水大気中の水蒸気の分圧の、平衡水蒸気圧に対する比に相当する。rは、50mL/g未満又は20mL/g未満であり得る。rは一般的に1mL/gより大きい。
【0046】
同じ実験条件下で、mL HS/g/h単位で表されるHSの放出速度を決定することも可能である。この速度は84mL HS/g/h未満である。この速度は60mL/g未満又は24mL/g未満であり得る。
【0047】
また、組成物は、空気に暴露される時に水及び二酸化炭素を捕捉するその傾向によって特性決定される。35%に設定された相対湿度の空気に暴露後、組成物の初期重量の百分率として重量増加の測定は、このような挙動を説明する。いかなる理論によっても拘束されずに、水の捕捉はHSの放出を引き起こすが、二酸化炭素は、望ましくない物品の表面上のカーボネートの形成の原因である。
【0048】
物品の表面上のカーボネート基の存在は、拡散反射赤外フーリエ変換(DRIFT)モードの赤外分光分析を用いて実証することができる。具体的には、カーボネート基は、それぞれ1350~1600cm-1及び890~1350cm-1に位置している振動モードν3及びν2を有する。
【0049】
物品の表面上で吸収されるCOの定量化は、熱分析によって例えば熱重量分析を質量分析(MS)と結合することによって、加熱時のCO放出を評価することにより評価することができる。
【0050】
組成物は、空間群F-43mに属する立方晶系結晶構造に相当する結晶相を含む。これは、X線回折法(XRD、Cu放射線源)によって確認することができる。
【0051】
また、組成物は、80.0%より高い純度Pを示すことができ、有利には90.0%より高い、有利には95.0%より高い純度Pを示すことができる。PはXRDによって決定される。実施形態によると、純度は次式:
P=ISE/(ISE+Iimp)×100
(式中、
- ISEは、LiPS又はLi7-xPS6-xの典型的な最も強いピークの積分した面積であり;
- Iimpは、XRDによって検出される組成物中の他の結晶相のそれぞれの最も強いピークの全ての積分した面積の合計である)によって定義される。
【0052】
式(I)又は式(II)の生成物は、組成物の主成分である。この生成物の比率は一般的に80.0重量%より大きく、有利には90.0重量%より大きく、有利には95.0重量%より大きい。
【0053】
本組成物はまた、
- の非晶相LiPS又はLi7-xPS6-x;及び/又は
- LiX;及び/又は
- LiS;及び/又は
- Li1516Cl;及び/又は
- LiPO
を含むことができる。
【0054】
また、組成物は、LiPS又はLiPSClなどの元素Li-P-S又はLi-P-S-Xを含む非晶相を含むことができる。
【0055】
XRDディフラクトグラムは、LiXの存在を示すことができる。例えば、LiClについて34.9°±0.1°におけるピークがXRDディフラクトグラム上に存在することができる。XRDディフラクトグラムは、LiSの存在を示すことができる。例えば、LiSについて27.9°±0.1°におけるピークがXRDディフラクトグラム上に存在することができる。XRDディフラクトグラムは、Li1516Clの存在を示すことができる。例えば、Li1516Clについて29.3°±0.1°におけるピークがXRDディフラクトグラム上に存在することができる。Inorg.Chem.2020,59,226-234を参照のこと。全てのXRD特性はCu Ka波長を用いて与えられ、獲得されることに留意されたい。
【0056】
また、組成物は、33.8°±0.1°におけるピークを示す結晶相及び/又は21.0°±0.1°におけるピークを示す結晶性生成物を含むことができる。
【0057】
したがって本発明はまた、
- 上に開示された式(I)又は式(II)の生成物;
- LiX;及び/又は
- LiS;及び/又は
- Li1516Cl;及び/又は
- LiPO
からなる組成物に関する。
【0058】
本発明はまた、
- 上に開示された式(I)又は式(II)の生成物;
- LiX;及び/又は
- LiS;及び/又は
- Li1516Cl;及び/又は
- 33.8°±0.1°におけるピークを示す結晶相;
- 21.0°±0.1°におけるピークを示す結晶相
からなる組成物に関する。
【0059】
この組成物は一般的に、0.5mS/cmより高い、有利には1.0mS/cmより高い、有利には2.0mS/cmより高い30℃で測定されるイオン伝導率を示す。イオン伝導率は一般的に、10mS/cmより小さく、より詳しくは7mS/cmより小さい。いくつかの実施形態では、インピーダンス分光分析によって加圧(500MPa)ペレット上で測定されるイオン伝導率は、1.5~5.0mS/cmの範囲である。
【0060】
イオン伝導率の測定は、加圧ペレット上で行われる。典型的に、加圧ペレットは、一軸又は平衡圧を用いて製造される。一軸圧力を適用してペレットを形成するとき、圧力100MPa超、有利には300Mpa超の圧力を少なくとも30秒の時間の間適用する。測定は、典型的に2MPa~200MPaの間の一軸圧力下で行われる。
【0061】
組成物の調製
また、本発明は、上記の組成物の調製方法に関する。
【0062】
いくつかの実施形態では、組成物は、以下の工程:
- 工程a):硫化リチウム(LiS)、五硫化二リン(P)、塩化リチウム(LiCl)、及び臭化リチウム(LiBr)が混合される工程;
- 工程b):工程a)の混合物が300℃~600℃の間、好ましくは350℃~500℃の間の温度の回転炉内で仮焼される工程;
- 工程c):工程b)からの粒子が篩分けされて顆粒を得る工程
を含む方法により得られる。
【0063】
工程a)において、LiS、LiCl、LiBr及びPを一緒に混合する。これらの出発原料は一般的に、均質混合物を得るために粉末形態である。目標の化学量論を得るためにこれらの出発原料の量を画定する。さらに、わずかに過剰なLiSを使用して、特に、か焼中のSの潜在的損失を補うことができる。過剰なLiSは、目標の化学量論に対して+10%であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、工程a)の出発原料は、少なくとも硫化リチウム(LiS)及び硫化リン(P)である。
【0065】
いくつかの他の実施形態では、工程a)の出発原料は少なくとも硫化リチウム(LiS)、硫化リン及びLiClである。工程a)は、液体炭化水素中で出発原料を湿式ボールミル粉砕することによって行なうのが便利である。液体炭化水素は好ましくは、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる群から選択される。脂肪族炭化水素は例えばヘキサン、へプタン、オクタン又はノナンである。脂環式炭化水素は例えばシクロヘキサン、シクロペンタン又はシクロヘプタンである。芳香族炭化水素は例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン又は液体ナフテンである。使用することができる便利な液体炭化水素は、キシレンである。
【0066】
炭化水素/混合物の重量比は、0.2~3.0、好ましくは0.4~1.1の間であり得る。
【0067】
ミル粉砕の時間は、1~130時間の間、好ましくは6~70時間の間であり得る。
【0068】
工程b)は有利には、予め乾燥されている混合物を用いて行われる。これは、すでに乾燥された出発原料を使用することによって又は混合物を乾燥させることによって行なうことができる。湿式ボールミル粉砕が使用されるとき、乾燥はまた、液体炭化水素の蒸発によって容易に且つ便利に行なうことができる。液体炭化水素の蒸発は好ましくは、100℃~150℃の間、より詳しくは105℃~135℃の間の温度で行われる。蒸発は真空下で行なうことができる。蒸発の時間は一般的に、1~20時間、より詳しくは2~20時間又は3~7時間である。
【0069】
蒸発の終わりに、混合物は、若干の残留炭化水素を含むことができる。残留炭化水素の量は一般的に、混合物中のC含有量が5.0重量%未満であるようなものである。C含有量は一般的に0.5~3.0重量%の間である。
【0070】
工程b)において、工程a)の混合物は300℃~600℃の間、好ましくは350℃~500℃の間の温度の回転炉内でか焼される。工程b)は好ましくは、不活性雰囲気、例えばN2又はAr又はH2Sの雰囲気下で行われる。工程b)の時間は1~12時間、より詳しくは3~6時間である。
【0071】
回転炉は、0.5~10.0rpmの回転速度で回転している。顆粒のサイズは速度の変化によって変化し得る。回転速度が大きくなればなるほど、粒子のサイズはそれだけ大きくなる。
【0072】
工程c)において、顆粒を篩分けして特定のサイズの範囲を選択する。この作業は、手動で又は自動的に行われる。実験室で使用される条件において、それは有利には手動で行われる。
【0073】
いくつかの他の実施形態では、本発明による組成物の調製方法は、
- 式(I)又は(II)に従う生成物を含むか又はから本質的になる材料をダイを通して押し出すことによって前記材料を圧縮してロッドを形成する工程と;
- ロッドを切断して物品を形成する工程とを含む。
【0074】
一般的に、材料は、15℃~200℃の範囲、しばしば15℃~150℃の範囲の温度、時々15℃~100℃、まれに15℃~80℃で圧縮される。いくつかの実施形態では材料は23℃の温度で圧縮される。
【0075】
一般的に、材料は、20MPa~1000MPaの範囲、しばしば40MPa~800MPaの範囲の圧力、時々60MPa~600MPa、まれに80MPa~400MPaで圧縮される。いくつかの実施形態では材料は300MPaの圧力で圧縮される。いくつかの他の実施形態では材料は200MPaの圧力で圧縮される。さらにいくつかの他の実施形態では、材料は100MPaの圧力で圧縮される。
【0076】
いくつかの他の実施形態では、本発明による組成物の調製方法は、
- 式(I)又は(II)に従う生成物を含むか又はから本質的になる材料を液体と混合してドウを得る工程と;
- ドウをダイを通して押し出すことによって前記ドウを圧縮してロッドを形成する工程と;
- ロッドを切断して物品を形成する工程と;
- 物品を乾燥させる工程とを含む。
【0077】
ドウは一般的に、50~99重量%の範囲、しばしば70~97重量%の範囲、時々80~95重量%の範囲の全固形分を含む。
【0078】
適した液体は一般的に、液体炭化水素及び液体ケトンからなる群から選択される。
【0079】
適した液体炭化水素は一般的に、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる群から選択される。脂肪族炭化水素は例えばヘキサン、へプタン、オクタン又はノナンである。脂環式炭化水素は、例えばシクロヘキサン、シクロペンタン又はシクロヘプタンである。芳香族炭化水素は例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン又は液体ナフテンである。
【0080】
適した液体ケトンは一般的に、脂肪族ケトン、脂環式ケトン、芳香族ケトン及びそれらの混合物からなる群から選択される。脂肪族ケトンは例えばメチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン又はジイソプロピルケトンである。脂環式ケトンは例えばシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロペンタノン又はシクロヘプタノンである。芳香族ケトンは例えばアセトフェノンである。
【0081】
使用することができる便利な液体はパラ-キシレンである。使用することができる別の便利な液体はメチルイソブチルケトンである。
【0082】
押出は、当業者に公知の装置で行なうことができる。例えば、押出は、ピストン押出機を用いて又は一軸スクリュー若しくは二軸スクリュー押出機のどちらかを用いて行なうことができる。ロッドの切断は適切なナイフを用いて行なうことができる。
【0083】
押出ダイの幾何学的形状に応じて、組成物の物品は、三角形、四角形、矩形、六角形、楕円形及び円形などの規則的な断面形状である。したがって、押出ダイの幾何学的形状が空ディスクであるとき、物品の形状は上記のような特徴を有する円柱である。
【0084】
いくつかの他の実施形態では、本発明による組成物の調製方法は、式(I)又は(II)に従う生成物を含むか又はから本質的になる材料を型内で圧縮して物品を形成する工程を含む。
【0085】
一般的に、材料は、15℃~200℃の範囲、しばしば15℃~150℃の範囲、時々15℃~100℃、まれに15℃~80℃の温度で型内で圧縮される。いくつかの実施形態では材料は23℃の温度で型内で圧縮される。
【0086】
一般的に、材料は、20MPa~1000MPaの範囲、しばしば40MPa~800MPaの範囲、時々60MPa~600MPa、まれに80MPa~400MPaの圧力で型内で圧縮される。いくつかの実施形態では材料は、300MPaの圧力で型内で圧縮される。いくつかの他の実施形態では材料は200MPaの圧力で圧縮される。さらにいくつかの他の実施形態では材料は100MPaの圧力で圧縮される。
【0087】
成形は、当業者に公知の装置で行なうことができる。例として、一軸プレス又は単式打錠機を用いて成形を行なうことができる。
【0088】
本発明による方法のために適した式(I)又は(II)に従う生成物を含むか又はから本質的になる材料は一般的に粉末の形態である。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明による方法のために適した式(I)又は(II)に従う生成物を含むか又はから本質的になる材料は、顆粒の形態である。
【0090】
いくつかの他の実施形態では、式(I)又は(II)に従う生成物を含むか又はから本質的になる材料は、本発明による方法において使用される前に粉末にミル粉砕され得る。
【0091】
式(I):
LiPS(I)
(式中、X、a、b及びcは上記の通りである)に従う生成物を含むか又はから本質的になる任意の材料は、本発明による組成物を調製するために適している。
【0092】
式(II):
Li7-xPS6-x(II)
(式中、x及びXは上記の通りである)に従う生成物を含むか又はから本質的になる任意の材料は、本発明による組成物を調製するために適している。
【0093】
組成物の使用
本発明の組成物は、(i)式(I)又は(II)の生成物と(ii)少なくとも1つのポリマー材料(P)とを含む組成物(C)の調製のために使用され得る。本発明の組成物は、電極の調製のために使用され得る。本発明の組成物はまた、電極の電解質層の調製のためにも使用され得る。
【0094】
組成物(C)はより詳しくは、
(i)式(I)又は(II)に従う固体材料;
(ii)少なくとも1つのポリマー材料(P);
(iii)任意選択的に少なくとも1つの電気活性化合物(EAC);
(iv)任意選択的に、本発明の固体材料以外の少なくとも1つのリチウムイオン伝導性材料(LiCM);
(v)任意選択的に少なくとも1つの導電性材料(ECM);及び
(vi)任意選択的にリチウム塩(LIS)
を含む。
【0095】
組成物(C)は、電極の調製のために使用することができる。また、組成物(C)は、電極の電解質層の調製のために使用することができる。電極は、正極又は負極であり得る。
【0096】
ポリマー材料(P)の機能は、組成物(C)の成分を結び付けることである。ポリマー材料(P)は、通常、不活性である。それはまた、好ましくは、化学的に安定であり、且つ電子的及びイオン的輸送を容易にするべきである。ポリマー材料は当技術分野に公知である。
【0097】
ポリマー材料(P)の非限定的な例としては、とりわけ:(1)とりわけコポリマー、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーの形態のVDF又はTFE系ポリマー;(2)ポリイソブチレン(PIB)、ブタジエンスチレンゴム(SBR)、(水素化)アクリロニトリルブタジエンゴム((h)NBR)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)等のとりわけブロックコポリマー及びグラフトポリマーの形態の水素化又は非水素化ジエン系ゴム重合体;(3)ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルアクリレート(BA)、スチレン-ブチルアクリレート(ST-BA)、スチレンメチルアクリレート(ST-MA)、ブチルアクリレート-アクリロニトリル(BA-CN)等のとりわけコポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーの形態の少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含むポリマー;(4)カルボキシメチルセルロース(CMC)、グアル等の多糖系ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマー;(5)ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、アクリロニトリル-メチルアクリレート(PAN-MA)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)等のとりわけコポリマーブロックコポリマー及びグラフトポリマーの形態のアクリロニトリルをベースとしたポリマー;(6)ポリアミドイミド(PAI)ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトポリマーが挙げられる。
【0098】
ポリマー材料(P)は、フッ化ビニリデン(VDF)系(コ)ポリマーからなるリストの中で選択することができる。ポリマー材料(P)はより詳しくは、VDF及びヘキサフロオロプロピレン(HFP)の単位を含むか又はからなるコポリマーであり得る。
【0099】
ポリマー材料(P)は、スチレンをベースとした任意選択的に水素化された熱可塑性エラストマーからなるリストの中で選択することができる。ポリマー材料(P)はより詳しくは、ブタジエンスチレンゴム(SBR)又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)であり得る。
【0100】
ポリマー材料(P)は、アクリロニトリルの単位を含むポリマーからなるリストの中で選択することができる。ポリマー材料(P)はより詳しくは、アクリロニトリル、ブタジエン及び/又はブチルアクリレートのコポリマーであり得る。
【0101】
組成物(C)中の式(I)又は(II)の生成物の比率は通常、組成物の総重量を基準として0.1重量%~99.9重量%の間である。特に、とりわけ組成物(C)が電極の調製のために適しているとき、この比率は、1.0重量%~60.0重量%の間、より詳しくは5.0重量%~30.0重量%の間であり得る。とりわけ組成物(C)がセパレータの調製のために適しているとき、この比率は、90.0重量%~99.9重量%の間、より詳しくは93.0重量%~99.5重量%の間であり得る。
【0102】
電気活性化合物(EAC)は、電気化学デバイスの充電段階及び放電段階中にリチウムイオンをその構造中に組み入れるか又は挿入し、且つ放出することができる化合物を意味する。EACは、リチウムイオンをその構造中に挿入し、且つ脱離することができる化合物であり得る。正極について、EACは、式LiMeQ(式中、
- Meは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、Al及びVからなる群において選択される少なくとも1つの金属であり;
- Qは、O又はSなどのカルコゲンである)
の複合金属カルコゲナイドであり得る。
【0103】
EACは、より具体的には、式LiMeOのものであり得る。EACの好ましい例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiNiCo1-x(0<x<1)、LiNiCoMn(0<x、y、z<1及びx+y+z=1)、例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3、LiNi0.6Mn0.2Co0.2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1、Li(NiCoAl)O(x+y+z=1)並びにスピネル構造化LiMn及びLi(Ni0.5Mn1.5)Oが挙げられる。
【0104】
EACは、式M(JO1-f(式中、
- Mは、Mの20%未満である別のアルカリ金属によって部分的に置換され得るリチウムであり;
- Mは、+1~+5の酸化レベルにおける、且つ0を含めて、M金属の35%未満である1つ以上の追加の金属によって部分的に置換され得る、Fe、Co、Mn、Ni又はそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルでの遷移金属であり;
- JOは、JがP、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せのいずれかである任意のオキシアニオンであり;
- Eは、フッ化物、水酸化物又は塩化物アニオンであり;
- fは、一般的に、0.75~1に含まれるJOオキシアニオンのモル分率である)
のリチウム化又は部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオン系電気活物質でもあり得る。
【0105】
上で定義されたようなM(JO1-f電気活物質は、好ましくは、ホスフェート系である。それは、秩序又は変性カンラン石構造を示し得る。
【0106】
正極について、EACは、硫黄又はLiSであってもよい。
【0107】
正極について、EACはまた、FeS、又はFeF、又はFeFなどの変換型材料であってもよい。
【0108】
負極について、EACは、リチウムを挿入できる黒鉛炭素からなる群において選択され得る。このタイプのEACに関する更なる詳細は、Carbon 2000,38,1031-1041に見出され得る。このタイプのEACは、典型的には、粉末、フレーク、繊維又は球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)の形態で存在する。
【0109】
EACは、リチウム金属;リチウム合金組成物(例えば、米国特許第6,203,944号明細書及び国際公開第00/03444号パンフレットに記載されているもの);一般に、式LiTi12で表されるチタン酸リチウム(これらの化合物は、一般に、可動イオン、すなわちLiを取り込むと低レベルで物理的に膨張する「ゼロ歪み」挿入材料と見なされる);高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般に知られるリチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウム;及び式Li4.4Geの結晶相を含むリチウム-ゲルマニウム合金でもあり得る。EACは、ケイ素及び/又は酸化ケイ素入り炭素質材料、とりわけ黒鉛炭素/ケイ素及び黒鉛/酸化ケイ素に基づく複合材料でもあり得、ここで、黒鉛炭素は、リチウムを挿入できる1つ又は幾つかの炭素から構成されている。
【0110】
ECMは、典型的には、導電性炭素質材料及び金属粉末又は繊維からなる群において選択される。導電性炭素質材料は、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、グラフェン及び黒鉛繊維並びにそれらの組合せからなる群において選択され得る。カーボンブラックの例としては、ケッチェンブラック及びアセチレンブラックが挙げられる。金属粉末又は繊維には、ニッケル及びアルミニウム粉末又は繊維が含まれる。
【0111】
リチウム塩(LIS)は、LiPF、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、LiB(C、LiAsF、LiClO、LiBF、LiAlO、LiNO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiC(SOCF、LiN(SOCF、LiCSO、LiCFSO、LiAlCl、LiSbF、LiF、LiBr、LiCl、LiOH及びリチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾールからなる群において選択され得る。
【0112】
電極は典型的には、
- 金属基材と、
- 前記金属基材上に直接接着された、組成物(C)から製造される少なくとも1つの層とを含む。
【0113】
電極の厚さは、特に制限されず、用途において必要とされるエネルギー及び出力に関して調整されるべきである。例えば、電極の厚さは、0.01mm~1,000mmであり得る。
【0114】
また、組成物(C)はセパレータの調製にも使用することができる。セパレータは、電池のアノードとカソードとの間に配置されるイオン透過性の膜である。その機能は、電子を遮断し、電極間の物理的分離を確実にしながら、リチウムイオンを透過させることである。
【0115】
本発明のセパレータは典型的には、
- 式(I)又は(II)に従う固体材料と、
- 上に開示された少なくとも1種のポリマー結合材(P)と、
- 任意選択的に、上に開示された少なくとも1種のリチウム塩(LIS)と、
- 任意選択的に、少なくとも1種の可塑剤と、を含む。
【0116】
電極及びセパレータは、当業者に周知の方法を用いて調製され得る。これは、通常、適切な溶媒中で組成物(C)の成分を混合することと、溶媒を除去することとを必要とする。適切な溶媒は、本発明の組成物に対して不活性であり、そのためこれを溶解しない。例えばキシレンなどの本発明の固体材料の調製に使用される溶媒は、電極又はセパレータ層の作製に使用することができる。
【0117】
例えば、電極は、以下の工程:
- 組成物の成分と少なくとも1種の溶媒とを含むスラリーを金属基材上に塗布する工程;
- 溶媒を除去する工程
を含むプロセスによって調製され得る。
【0118】
当業者に公知の通常の技術は、以下のもの:コーティング及びカレンダー加工、乾式及び湿式押出、3D印刷、多孔質フォームの焼結、引き続く含浸である。電極及びセパレータの通常の調製技術は、Journal of Power Sources,2018 382,160-175に提供されている。他の技術、例えば押出、ペースト押出、(電気)吹付け、混練、その後にカレンダリングを用いてもよい。
【0119】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0120】
XRD分析
粉末のXRDディフラクトグラムは、CuX線管(1.5406ÅのCu Kalpha波長)を用いたBragg BrentanoジオメトリでのXRDゴニオメーターで取得した。セットアップは、異なる光学的配置において、すなわち可変又は固定の発散スリット又はSollerスリットで使用され得る。Panalytical製のモノクロメータ又はBragg Brentano HD光学系のような一次側のフィルタリングデバイスも使用し得る。可変発散スリットが使用される場合、典型的な照射面積は、10mm×10mmである。試料ホルダーをスピナーにロードし;回転速度は、典型的には、取得中、60rpmである。管設定は、可変スリット取得について40kV/30mAで、入射Bragg Brentano HD光学系を用いた固定スリット取得について45kV/40mAで動作していた。取得工程は、1工程当たり0.017°であった。角度範囲は、典型的には、2シータ以上で5°~90°である。総取得時間は、典型的には、30分以上であった。粉末は、空気中水分との反応を防ぐためにカプトンフィルムで覆われている。
【0121】
XRD純度Pは、次式:
P=ISE/(ISE+Iimp)×100
(式中、
- ISEは、LiPS又はLi7-xPS6-xの典型的な最も強いピークの積分した面積であり;
- Iimpは、XRDによって検出される組成物中の他の結晶相のそれぞれの最も強いピークの全ての積分した面積の合計である)によって計算される。
【0122】
S排出の定量
試料の調製は、乾燥Arグローブボックス(水分レベル<5ppm、Oレベル<5ppm)内で行われる。試料(粉末及び圧縮物品それぞれについて350~700mg)を4.02cmの円形表面を有する開放円形ホルダー内に入れる。試料(顆粒について100mg)を開放円形ホルダー内に入れる。次に、ホルダーをジルコニアポット上に置き、ここで、それを雰囲気から単離することができる。ジルコニアポットを乾燥アルゴングローブボックスからHS定量化試験のために使用される室内空気式グローブボックスに移す。相対湿度は室温(23℃)で35%に設定される(6.7℃の露点に相当する)。湿度は、Mitchell Instruments製のデュー・ポイントプローブ(EA2-TX-100)によって測定される。グローブボックス内の湿度は、予備乾燥された圧縮空気の入口によって制御され得る。グローブボックス内の雰囲気は、2つのファンによって均質化される。雰囲気が安定すると、ジルコニアポットが開けられ、制御された湿り大気に試料を暴露する。HSの定量化は、Sensorconセンサー(Industrial Pro - HS Pro)によって行われる。実験は50分間行われ、その終わりにジルコニアポットを再び閉じる。
【0123】
カーボネートの定量
拡散反射赤外フーリエ変換分光分析(DRIFTS)調査によるカーボネートの同定は、Bruker FTIR(MIR)Vertex70分光計で行なうことができる。高温反応器チャンバ及びPraying Mantis拡散反射付属装置(Harrick)を使用して測定が行われる。反応器チャンバは、KBrウインドウを備え、粉末に近い温度を測定するK熱電対で計測する。異なった気体を質量流量調節器(Bronkhorst)によって適量に分けることができる。測定は、分析チャンバを不活性化して試料を外部の水分から保護するために使用される25Nml/分アルゴン流下にて25℃及び大気圧で行われる。全てのスペクトルは、1分の取得時間及び2cm-1スペクトル解像度を用いて記録される。合計250走査が記録され、600~6000cm-1.の間で平均される。考察される基の間の比は、スペクトル領域の最大強度ピークを取ることによって計算される。
【0124】
COの定量化は、C-S装置(Horiba EMIA 320-V2)を用いて元素分析によって行なうことができる。200mgの試料をセラミックるつぼ内に燃焼器アクセラレータ(Lecocel、鉄及びスズ)と一緒に導入する。次に、るつぼを1100℃までの炉内で10分間加熱する。燃焼の主生成物は、CO及びCOであり、非分散型赤外線(NDIR)分析器によって分析される。次に、COの量を測定されたCO及びCOから計算する。
【0125】
また、COの定性的な比較は、発生気体分析に結合された関連熱分析技術を用いて行なうことができる。質量分析計に結合された熱重量分析(Pfeiffer Vacuum製のTGA-MS- TGA/DSC3+LF1600Mettler及びThermostar GSD 350)をこの目的のために使用することができる。40mgの試料をアルミナるつぼ内に入れ、50ml/分N流下にて10℃/分で室温から600℃に加熱する。COの定性的推定は、MSによって検出されるCO及びCOピークを積分することによって行われる。信号は、システムの全圧によって正規化される。
【0126】
導電率測定
インピーダンス分光測定の前に、粉末試料を、Ar充填グローブボックス内で、500MPaでコールドプレスした。導電率は、500MPaで作動する一軸プレスを使用して行われるペレットに関して取得した。ペレット化は、湿気のないアルゴン雰囲気で満たされたグローブボックス内で実験室スケールの一軸プレスを使用して行った。集電体として2枚のカーボン紙箔(MersenのPapyex軟質黒鉛N998 Ref:496300120050000、厚さ0.2mm)を使用した。次に、それらの炭素電極を取り付けたペレットを気密試料ホルダー内に充填し、測定のために40MPaの圧力を試料ホルダー上に適用する。インピーダンススペクトルは、Biologic VMP3デバイスで取得し、温度の制御は、Binder気候チャンバによって確保する。2つの測定間で温度が平衡化できるように、2時間の持続時間を設定する。インピーダンス分光法は、20mVの振幅、1MHz~1kHzの周波数の範囲でPEISモードにおいて取得する(10回ごとに25ポイント、周波数ポイントごとに平均50回の測定)。温度は、10℃間隔で-20℃から60℃に変化させた。
【0127】
圧密率の決定
得られた物品の圧密は、高密度化後の物品の体積を測定することによって計算した。物品の直径は、使用された染料(例えば13mm)に相当し、厚さは、デジタルマイクロメーターを使用して測定された。測定された体積の物品を秤量することによって、測定された真密度ρrealが得られる。
【0128】
理論密度は、次式によって結晶格子の密度を考慮に入れることによってXRDによって計算される:
ρtheoretical=(z・M)/(V・N
(式中、zは単位格子当たりの原子数であり、Mは生成物の分子量であり、Vは単位格子当たりの体積(cm/cell)であり、Nはアボガドロ数(6.023・1023)である)。
【0129】
次いで、次式に従って圧密率(%)を計算した:
圧密(%)=(ρreal/ρtheoretical)×100
【0130】
粒子サイズ分布の測定
レーザー回折測定を用いて粉末の粒子サイズ分布(PSD)を評価した。この目的のために、粉末をパラ-キシレン中で撹拌した。溶液を800μm篩で濾過し、Malvern Mastersizer 3000内に導入した。データをフラウンホーファーの光学モデルで処理した。
【0131】
実施例1:x=1の組成物(LiPSCl)(顆粒)の調製
工程a)22.7gのLiCl(Sigma-Aldrich、純度>99%);59.5gのP2S5(Sigma-Aldrich、純度>99%)及び61.5gのLi2S(Lorad、100%、200メッシュ)を連続的に秤量し、ガラス容器内に入れる。粉末は、ゆるやかな手動操作の混合によって均質化される。次に、それらを480gのZrOボール(5mm、Across)を保有する500mLジルコニアボウル(Across)に加えた。次に106.3gのパラ-キシレン(Sigma-Aldrich、純度>99%、乾燥)を添加し、ガラス容器からの粉末をジルコニアボウル内で直接に洗浄するために使用する。ボウルを迅速に封止して一切のパラ-キシレン蒸発を防ぐ。湿式ボールミル粉砕は、Across PQ-N2プラネタリボールミルで行われる。65時間の580rpmでのミル粉砕の後、淡黄色/ベージュ色のペーストが得られる。
【0132】
ペーストを乾燥アルミナるつぼ内に移し、130℃の動的真空下で乾燥させてパラ-キシレンを取り除いた。パラ-キシレンは冷水によって濃縮され、濃縮キシレンの体積が湿式ボールミル粉砕工程において導入される体積に等しくなるまで乾燥が続けられる。5時間の乾燥後、ミリングボールが4mmの篩によって淡いベージュ色の粉末から分離される。
【0133】
工程b)乾燥された混合物を乾燥空気(露点<-15℃)下で石英反応器内に入れる。次に、反応器を回転炉内に入れ、生成物をN流(30L/h)下で9rpmの回転で12時間490℃で(1.5℃/分の加熱上昇で)晶出させる。それを同じN流及び回転下で50℃まで冷却させる。最終生成物は、顆粒の形態にある。顆粒はサイズが多分散性であり、サイズは数百ミクロン~数ミリメートルの範囲である。
【0134】
実施例1A
実施例1の顆粒は、800μmの篩で手動で篩分けされる。微粒子だけをとっておく。それらは再び、400μmの篩で篩分けされる。大きい粒子だけをとっておく(400~800μm部分)。このように得られた顆粒は70mL HS/gを放出する。これは、84mL HS/g/hのH2Sの放出速度に相当する。
【0135】
実施例1B
実施例1の顆粒は、800μmの篩で手動で篩分けされる。大きい粒子だけをとっておく。このように得られた顆粒は45mL HS/gを放出する。これは、54mL HS/g/hのHSの放出速度に相当する。
【0136】
実施例1C
実施例1の顆粒を手動で分離して、直径>4mmの顆粒を単離する。このように得られた顆粒は10mL HS/gを放出する。これは、12mL HS/g/hのHSの放出速度に相当する。
【0137】
比較例1
実施例1の顆粒は、400μmの篩で手動で篩分けされる。微粒子だけをとっておく。それらは再び、200μmの篩で篩分けされる。大きい粒子だけをとっておく(=200~400μm部分)。このように得られた顆粒は80mL HS/gを放出する。
【0138】
比較例2
実施例1の顆粒は、200μmの篩で手動で篩分けされる。微粒子だけをとっておく。このように得られた顆粒は80mL HS/gを放出する。
【0139】
実施例2:x=1の材料(LiPSCl)(粉末)の調製
第1の工程において、22.7gのLiCl(Sigma-Aldrich、純度>99%);59.5gのP(Sigma-Aldrich、20純度>99%)及び61.5gのLiSをジルコニアジャー内にZrOボール(10mm)に添加した。次に130gのパラ-キシレン(Sigma-Aldrich、純度>99%、乾燥)を添加した。気密ジャーを迅速に封止して一切のパラ-キシレン蒸発を防ぐ。湿式ボールミル粉砕はプラネタリボールミルで行われる。200rpmでの7時間のミル粉砕の後、ペーストが得られる。
【0140】
第2の工程において、ペーストを乾燥アルミナるつぼ内に移し、130℃の動的真空下で炉内で乾燥させて溶媒を取り除く。5時間の乾燥後に、ミリングボールを4mmの篩によって乾燥粉末から分離する。
【0141】
第3の工程において、乾燥された混合物を乾燥空気(300ppm未満の水)下でアルミナ反応器内に入れる。次に、反応器を回転炉内に入れ、生成物をN流(20L/h)下で1rpmの回転を用いて5時間の間480℃で晶出させる。次に、反応器を回転なしで冷却する。
【0142】
最終生成物は、異なったサイズの或る凝集塊を有する多分散粉末の形態である。完成生成物は、乾燥均質化によって得られる。上記のように測定された得られた粉末のPSDは次の通りである:
- d10値=9.4μm
- d50値=29.3μm
- d90値=65.6μm7
【0143】
実施例3:組成物の物品の作製
一軸プレス及び直径13mmの円筒形の型を用いて物品を作製した。実施例2の350mgの粉末を型内に導入し、一軸圧力を適用して物品を形成した。圧力を2分間23℃の温度で適用した。高さ2.1mmの円筒形物品が得られた。
【0144】
物品の重量増加は、室温で35%に設定された相対湿度を有する湿り空気に120分間暴露した後に測定され、暴露前の物品の重量の百分率として下記の表1に示される。
【0145】
【表1】
【0146】
適用される圧力を増加させると、得られた物品の圧密の%を増加させ、35%及び23℃に設定された相対湿度を有する湿り空気に暴露される前記物品の重量増加を減少させることが表1から明らかである。
【0147】
これは物品がその圧密が増加するときに水及び二酸化炭素との接触による重量増加をそれほど受けないことを示している。
【0148】
したがって、より高い圧力を適用すると、二酸化炭素との接触により生じる水及びカーボネート基の量が低減された物品をもたらす。
【0149】
【表2】
【0150】
適用される圧力を増加させると、得られた物品の圧密の%を増加させ、35%及び23℃に設定された相対湿度を有する湿り空気に暴露される前記物品のHS放出を減少させることを表2の結果は示す。
【0151】
したがって、より高い圧力を適用すると、低減量のHSが放出される物品をもたらす。
【0152】
物品の再分散
実験2~4の作り出された物品は、ジルコニウム乳鉢及び乳鉢を用いて手動のミル粉砕によって粉末に変えられた。ミル粉砕は、制御された雰囲気(グローブボックス:水分レベル<5ppm、Oレベル<5ppm)中で5分間行われた。
【0153】
本発明によるミル粉砕物品は、その粒子サイズ分布(PSD)がレーザー回折測定を用いて評価された粉末をもたらす。本発明の物品をミル粉砕することによって得られる粉末の適した再分散は、例えば、実施例2に開示される合成の後に得られる粉末のPSDに近いパラ-キシレンのレーザー回折測定によって評価されるPSDを有する粉末をもたらす。
【0154】
次に実験1~4からの粉末試料は、湿気を含まないアルゴン雰囲気で満たされたグローブボックス中で500MPaで運転される一軸プレスを使用してコールドプレスされ、得られたペレットで導電率が獲得された。
【0155】
結果は、実験2~4の物品のミル粉砕から放出される異なった粉末の導電率は、実験1の元の粉末すなわち実施例2で説明されるように合成される粉末の導電率と同様であることを示す。したがって、本発明による物品の作製は、ミル粉砕による物品のサイズの低減後に組成物のイオン伝導率に影響を与えない。
図1
【国際調査報告】