IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンドリッツ ハイドロ ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特表-電気機械のためのロータ 図1
  • 特表-電気機械のためのロータ 図2
  • 特表-電気機械のためのロータ 図3
  • 特表-電気機械のためのロータ 図4
  • 特表-電気機械のためのロータ 図5
  • 特表-電気機械のためのロータ 図6
  • 特表-電気機械のためのロータ 図7
  • 特表-電気機械のためのロータ 図8
  • 特表-電気機械のためのロータ 図9
  • 特表-電気機械のためのロータ 図10
  • 特表-電気機械のためのロータ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】電気機械のためのロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20240328BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K3/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023547079
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 AT2022060037
(87)【国際公開番号】W WO2022226554
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】A50315/2021
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519072903
【氏名又は名称】アンドリッツ ハイドロ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ワインバーガー、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュタドルホーファー、ジークフリート
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H603BB01
5H603BB02
5H603BB08
5H603CA02
5H603CB03
5H603EE11
5H603EE12
5H604AA05
5H604BB01
5H604BB03
5H604BB09
5H604CC02
5H604CC05
5H604QA00
5H604QB14
(57)【要約】
本発明は、電気機械のためのロータであって、下部バー(3)及び上部バー(4)が配置されるスロットを有する積層コア(1)を備え、前記バーは、軸方向(5)において前記積層コア(1)を越えて延在して巻線オーバハングを形成し、ここで、1つのスロットの下部バー(3)は、前記巻線オーバハングにおける別のスロットの上部バー(4)にそれぞれ接続され、平面視において、下部バー(3)及び上部バー(4)は、交差点(8)において前記積層コア(1)の軸方向外側で交差し、ギャップ(9)が前記交差点(8)同士の間で維持され、前記巻線オーバハングの径方向内側に配置された保持本体(10)及び2つの脚部(12)及びクロスピース(13)を有する少なくとも1つのクリップ(11)を有する支持デバイスが提供され、前記クリップ(11)は、前記保持本体(10)によって前記上部バー(4)を径方向に支持するために、前記保持本体(10)及び上部バー(4)の両方に接続される、ロータに関する。前記ギャップ(9)同士の間に小さい間隔のみが存在する場合であっても巻線オーバハングの堅固な安定性を保証することが可能であるために、本発明に従って、前記脚部(12)は、異なる上部バー(4)に隣接している2つのギャップ(9)を通って突出することが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械のためのロータであって、下部バー及び上部バーが配置されるスロットを有する積層コアを備え、前記下部バー及び前記上部バーは、軸方向において前記積層コアを越えて延在して巻線オーバハングを形成し、ここで、1つのスロットの下部バーは、前記巻線オーバハングにおける別のスロットの上部バーにそれぞれ接続され、平面視において、下部バー及び上部バーは、交差点において前記積層コアの軸方向外側で交差し、ギャップが前記交差点同士の間で維持され、前記巻線オーバハングの径方向内側に配置された保持本体及び2つの脚部及びクロスピースを有する少なくとも1つのクリップを有する支持デバイスが提供され、前記クリップは、前記保持本体によって前記上部バーを径方向に支持するために、前記保持本体及び上部バーの両方に接続され、前記保持本体は、前記2つの脚部間で配置され、前記クロスピースは、2つの上部バーにまたがる結果、前記脚部は、異なる上部バーに隣接している2つのギャップを通って突出する、ロータ。
【請求項2】
前記クロスピースは、前記上部バーの径方向外側に配置され、少なくとも2つの上部バーに接続される、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記保持本体は、リング形状であるように具現化され、前記脚部は、前記保持本体の内径まで突出する、請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項4】
前記脚部に解放可能に接続される閉鎖リンクが提供される、請求項1~3のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項5】
前記保持本体は、前記閉鎖リンクを介して前記クリップに接続される、請求項4に記載のロータ。
【請求項6】
前記閉鎖リンクは、前記脚部が突出する際に通る径方向貫通ボアを備え、固定要素、特にナットが、前記閉鎖リンクの後に前記脚部に提供され、前記固定要素は、前記閉鎖リンクを前記脚部上に保持する、請求項4又は5に記載のロータ。
【請求項7】
前記固定要素及び前記閉鎖リンクの間に、ばね要素、特に円板ばねが配置され、前記ばね要素は、好ましくは、事前規定された予張力で予張される、請求項6に記載のロータ。
【請求項8】
前記脚部は、ねじ山を含み、前記ねじ山は、好ましくは、スレッドローリングによって形成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項9】
前記クリップは、オーステナイト系材料から形成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項10】
前記クリップは、冷間加工金属、特に冷間引抜鋼から形成される、請求項1~9のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項11】
前記保持本体は、フェライト材料、特にフェライト鋼を含み、あるいはそのような材料から形成される、請求項1~10のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項12】
前記保持本体は、微粒子鋼を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項13】
前記保持本体は、フェライト内部部分、及び特にアルミニウム、複合繊維材料、又は積層布、例えば、エポキシガラスクロス積層板から構成される非磁性外部部分を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項14】
前記保持本体は、軸方向において固定方式で前記積層コアに接続される、請求項1~13のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項15】
前記保持本体は、前記保持本体が特に径方向ガイドによって、径方向において移動し得るように前記積層コアに接続される、請求項1~14のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項16】
固定方式で前記積層コアに接続されるコンポーネント、特に圧力プレートは、径方向において延びる第1のガイド手段、特に径方向スロットを含み、前記保持本体は、対応する第2のガイド手段、特にガイドピンを含み、前記第2のガイド手段は、前記第1のガイド手段と係合する結果、相互作用するガイド手段を介して、前記保持本体は、前記保持本体が径方向において移動され得、かつ円周方向において固定されるように、前記積層コアに接続される、請求項1~15のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項17】
軸方向において、複数の、特に3つの保持本体が提供され、前記保持本体は、径方向ガイド手段を介して円周方向において運動学的に結合され、径方向において互いに対して移動され得、前記径方向ガイド手段は、好ましくは、径方向スロット、及び前記径方向スロットと係合する対応するガイドピンによって形成される、請求項16に記載のロータ。
【請求項18】
前記保持本体は、ねじによって前記圧力プレートに軸方向に接続され、前記ねじは、軸方向に最外の保持本体から前記圧力プレートに連続的に延在し、特に規定された予張下にある、請求項17に記載のロータ。
【請求項19】
前記ロータは、円周方向に沿って分散方式で配置されたアーム及び前記アーム間に配置された開口部を有するロータ本体を含み、前記開口部を通して、冷却空気を前記積層コアに供給することができ、前記積層コアは、前記ロータ本体上に締まり嵌めされ、径方向に延在する前記第1のガイド手段は、圧力プレートの領域における前記アームの位置及び/又は前記圧力プレートの前記領域における前記アーム間の中心に置かれる位置に対応する位置において円周方向に沿って配置される、請求項16~18のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項20】
前記クロスピースは、前記軸方向に略平行に配向される、請求項1~19のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項21】
複数のクリップが、円周方向に沿って分散方式で配置される、請求項1~20のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項22】
複数のクリップが、軸方向において提供される、請求項1~21のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項23】
前記保持本体は、ロータ軸を包含し、特に、プレート形状であるように具現化される、請求項1~22のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項24】
前記保持本体及び前記下部バーの間に、スライディングデバイスが配置され、前記スライディングデバイス)は、少なくとも1つの側に、低摩擦係数を有する材料によって、特にテフロンカーボンプレートによって形成される表面を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項25】
前記スライディングデバイスは、固定方式で前記下部バーに、及び軸方向に可動な方式で前記保持本体に接続される、請求項24に記載のロータ。
【請求項26】
前記スライディングデバイスは、低摩擦係数を有する材料から、特にテフロンカーボンプレートによって形成される、1mm~20mm、特に2mm~10mmの径方向高さを有する摩擦防止層を含む、請求項24又は25に記載のロータ。
【請求項27】
前記スライディングデバイスは、常磁性材料によって、特にアルミニウム又はエポキシガラスクロス積層板によって形成される層を含み、軸方向において前記層を通って延びるボアが、好ましくは提供される、請求項24~26のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項28】
前記スライディングデバイスは、固定方式で金属層に接続された絶縁層によって前記下部バーから離隔された前記金属層を含み、前記絶縁層は、特にエポキシガラスクロス積層板を含む、請求項24~27のいずれか1項に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械のためのロータであって、下部バー及び上部バーが配置されるスロットを有する積層コアを備え、当該バーは、軸方向において積層コアを越えて延在して巻線オーバハングを形成し、ここで、1つのスロットの下部バーは、巻線オーバハングにおける別のスロットの上部バーにそれぞれ接続され、平面視において、下部バー及び上部バーは、交差点において積層コアの軸方向外側で交差し、ギャップが交差点同士の間で維持され、巻線オーバハングの径方向内側に配置された保持本体及び2つの脚部及びクロスピースを有する少なくとも1つのクリップを有する支持デバイスが提供され、クリップは、保持本体によって上部バーを径方向に支持するために、保持本体及び上部バーの両方に接続される、ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、冒頭で名付けられたタイプのロータは既知になっており、これらは、例えば、揚水発電所における非同期機において使用される。ここで、非同期機は、モータ及び発電機の両方として使用される。
【0003】
動作中、遠心力が、ロータ軸の周りのロータの回転に起因して、ロータに対して、特に上部バー及び下部バーに対して作用する。上部バー及び下部バーは、典型的には、スロットウェッジによって積層コアの領域において当該遠心力に対して支持される。積層コアの外側で、巻線オーバハングにおいては、これは可能ではない。これは、特に文献US5,606,212Aから、一方では周縁リングディスク上の巻線オーバハングの径方向内側に取り付けられ、及び他方では動作中に作用する遠心力に対して上部バー及び下部バーを支持するために当該上部バー及び下部バーを把持するクリップを含む支持デバイスが知られている理由である。当該クリップの脚部は、それによって、積層ロータコアにおける2つの隣接したギャップを通してガイドされる。その結果、クリップは、ロータ巻線オーバハングの内部からロータ巻線オーバハングの径方向外部に突出する。
【0004】
電気機械のための具体的な要件に依存して、特に、ロータ巻線オーバハングのポール対の数、直径、及び長さ、並びに上部バー及び下部バーの寸法、巻線オーバハングの領域において上部バーが下部バーに対して位置決めされる角度は異なり得る。文献US5,606,212において提案されている設計では、幾つかのロータの場合に、許容不能に高い機械的負荷が保持本体、クリップ、及び/又は下部バーに対して作用することが示されている。特に巻線オーバハングにおけるギャップがともに近接しているロータの場合では、文献US5,606,212から既知の設計は、特に幅狭で、したがって、大きな応力を受けるリングディスクをもたらし、当該リングディスクは、製造公差によって引き起こされるばらつきに起因して、既に許容可能な機械的限界を超過した状態にさらされているおそれがある。
【発明の概要】
【0005】
これは、本発明によって対処される。本発明の目的は、特にともに近接している巻線オーバハングにおけるギャップの場合であっても巻線オーバハングの安定化が堅固な方式で可能である、冒頭で名付けられたタイプのロータを指定することである。
【0006】
本発明によれば、この目的は、脚部が、異なる上部バーに隣接している2つのギャップを通って突出する、冒頭で名付けられたタイプのロータによって達成される。
【0007】
本発明者らは、対応する実施形態において、典型的にはより大きい断面を有する周縁リングとして具現化される保持本体を使用することができること、及びそれによって機械的負荷を低減することができることを見出した。従来技術からの装置において、例えば、クリップの脚部が隣接したギャップ間で常に突出しており、これらは、それゆえ同じ上部バーに接する。その結果、クリップは、1つの上部バーを常に把持するのみである。
【0008】
本発明に係るロータの実施形態では、それゆえ、脚部は、典型的には少なくとも1つの他のギャップによって互いから離隔している2つのギャップを通って突出し、したがって、クリップは、通常、少なくとも2つの上部バーを把持する。結果として、脚部同士の間により大きい間隔が得られ、当該脚部は、典型的には、巻線オーバハングの内側で保持本体を把持し、径方向において形状嵌めで当該保持本体に接続される。
【0009】
クリップの脚部は、典型的には、専ら径方向において延在する。好ましくはロータ巻線オーバハングの径方向外側にクリップを接続するクロスピースは、典型的には、軸方向に略平行に、又はロータ軸に平行に延在する。したがって、保持本体、又は保持リングの軸方向の延在部は、典型的には、クロスピースの軸方向の延在部に本質的に対応する。
【0010】
ここで、軸方向、径方向、及び円周方向という用語は、円筒座標系の意味で理解されるべきである。ここで、軸方向は、ロータ軸と一致し、又は、当該ロータ軸に平行であり、意図されるように使用される場合、当該ロータ軸の周りに回転可能に、ロータがステータ内で配置される。
【0011】
この場合、交差点は、上部バー及び下部バーが平面図における巻線オーバハングの領域において、又は径方向に沿った見通し線で、交差する点を示す。ここで、上部バーは、下部バーよりも大きいロータ軸からの径方向距離において配置される。ここで、ギャップは、径方向に沿ってロータ巻線オーバハングの内部からロータ巻線オーバハングの外部までのクリップの妨げられない通路が可能になるように、対応する見通し線で、下部バーも上部バーも配置されない位置を示す。
【0012】
それゆえ、対応する実施形態では、クロスピースは、通常、少なくとも2つの交差点にまたがる。その結果、少なくとも2つの上部バー及び2つの下部バーは、通常、クリップによって径方向において支持デバイスと運動学的に結合され、又は形状嵌め及び/又は力嵌めにおいて接続される。
【0013】
保持本体の対応して拡大される断面の結果として、本発明に係る設計は、ロータ巻線オーバハングにおけるギャップが非常にともに近接しているロータにおいて使用することもできる。例えば、これは、上部バー及び下部バーが非常に幅狭であるように具現化され、及び/又は上部バー及び下部バーがほぼ90度の角度をなして交差するためであり、特にクロスピースの長さ及びそれゆえ保持本体の軸方向の延在部が、2つの隣接したギャップ間の間隔によって規定されず;むしろ、保持本体の軸方向の延在部は、2つの隣接したギャップ間の間隔の複数倍とすることもできるためである。
【0014】
加えて、上部バー及び下部バーの表面圧力が低減する。
【0015】
さらに、低減した数のクリップを有する対応するロータを作成することができる。これは特に、対応する実施形態において、1つのクリップが複数の上部バー及び下部バーを把持及び安定化することができるためである。
【0016】
保持本体は、好ましくは、ロータ巻線オーバハングの2つのギャップ間の間隔の複数倍、特に2倍に対応する軸方向の延在部を有する。当該ギャップは、円周方向に沿った同じ円周位置に配置され、すなわち、互いから軸方向にのみ離隔している。そのようなサイズの保持本体寸法を用いると、製造公差によって引き起こされるばらつきによる、保持本体における機械的応力の影響も少なくなり、それにより、容易な製造可能性が保証される。
【0017】
原理的には、クリップは、保持本体を上部バーに接続するために任意の所望の方式で設置することができる。その結果、巻線オーバハングは、対応する領域においてクリップによって保持本体上で支持され、したがって、径方向に安定化される。それゆえ、クロスピースは、原理的には、ロータ巻線オーバハングにおける径方向内側に配置することもできる。ここで、クロスピースは、保持本体に接続することができる。
【0018】
しかしながら、好ましくは、クロスピースは、上部バーの径方向外側に配置され、少なくとも2つの上部バーに接続されることが提供される。結果として、ロータ巻線オーバハング及びステータ巻線オーバハングの間の領域において、シンプルでかつ同時に堅固な構造が得られる。
【0019】
クロスピースは、当然ながら、2つよりも多くの上部バー、例えば、3つ又は4つの上部バーを把持することもできる。
【0020】
さらに、クリップは、原理的には、任意の所望の方式で、例えば、保持本体にねじ込まれる等の方式で、保持本体に接続することができる。
【0021】
しかしながら、好ましくは、保持本体は、リング形状であるように具現化されること、及び脚部は、特に圧力ピークを低減するために、保持本体の内径まで突出することが提供される。クリップを介して巻線オーバハングの内部に伝達される径方向の力は、その後、好ましくは、保持本体の内径又は内部円筒表面を介して保持本体に適用される。
【0022】
好ましくは、脚部に解放可能に接続された閉鎖リンクが提供される。当該閉鎖リンクを用いると、クリップは、保持本体及び巻線オーバハング上の適所に固定することができる。
【0023】
典型的には、保持本体は、閉鎖リンクを介してクリップに接続される。クリップは、好ましくは、径方向内側の保持本体に対して支持される。その結果、ロータ巻線オーバハングに対して作用し、クリップによって吸収される遠心力であって、クロスピースから脚部に伝達される遠心力は、圧力ピークを回避するために、閉鎖リンクを介して、リング形状であるように具現化される保持本体の内径に伝達され、典型的には面接触を介して伝達される。
【0024】
それゆえ、径方向の力は、通常、上部バーからクロスピースに、クロスピースから脚部に、脚部から閉鎖リンクに、及び最後に、閉鎖リンクから保持本体に、典型的には保持本体の内径において保持本体に伝達される。
【0025】
閉鎖リンクは、脚部が突出する際に通る径方向貫通ボアを備える。ここで、固定要素、特にナットが閉鎖リンクの後に脚部に提供される。固定要素は、閉鎖リンクを脚部上に保持することが有効であることが分かっている。それによって、シンプルなアセンブリが保証される。ナットの事前規定可能な締め付けトルクによって、規定された予張を脚部に導入することができる。その結果、事前規定可能な力により、保持本体に対してロータ巻線オーバハングを押圧することができる。
【0026】
具体的には、クリップの領域におけるへたり及び/又はクリープの効果を均等化するために、好ましくは、固定要素及び閉鎖リンクの間に、好ましくは事前規定された予張力で予張されるばね要素、特に円板ばね又は螺旋円板ばねが配置されることが提供される。それゆえ、長期間にわたる動作中に生じるへたり効果は、容易に補償することができる。その結果、事前規定された予張も長時間にわたって維持することができる。したがって、試運転フェーズの後の手作業によるナットの再度の引っ張りはもはや必要とされない。それと同時に、試運転フェーズ中の脚部における望ましくない高い予張は回避される。
【0027】
ばね要素は、個々のばね、特に個々の円板ばねの直列及び/又は並列の組み合わせによって形成することができる。
【0028】
さらに、ばね要素は、互いにねじ込まれる平坦ワイヤから作製される螺旋ばねとして具現化することもできる。これらは、螺旋円板ばねと称される。それによって、円板ばねスタックと比較して、より長い耐用寿命が達成される。円板ばねスタックと比較して、簡略化されたアセンブリももたらされる。これは、特に、複数の円板ばね又は円板ばねスタックに対応する特性を、適切な長さを有する螺旋円板ばねの使用を通して取得することができ、その結果、コンポーネントの数が低減するためである。
【0029】
典型的には、動作中のばね要素の対応する緩和を介したへたり効果を補償することが可能であるために、ばね要素には、アセンブリ中に事前規定された予張がもたらされる。規定された予張は、例えば、円板ばねスタックに平行に、又は螺旋円板ばねにおいて配置され、特に、円板ばねスタック又は螺旋円板ばねにおいて配置され、ナットのための停止部として機能するスリーブ又は鋼スリーブによって達成することができ、当該ナットを用いて円板ばね又は螺旋円板ばねが予張される。それゆえ、ナットは、停止部の位置又はスリーブの長さによって規定された位置までのみ締め付けることができる。これによって、ばね要素の最大変形、したがって予張を明確に規定することができる。
【0030】
それゆえ、規定された予張は、特に、そのための十分な空間も多くの場合に利用可能ではない油圧クランプシリンダを使用することなく取得することができる。
【0031】
ロータ巻線オーバハング、すなわち、上部バー及び下部バーが定格速度を超えた際にのみ保持本体からリフトオフするように、予張が選択される場合が特に好ましい。それゆえ、相対的に多数の開始/停止サイクルの場合であっても、クリップのねじ山の領域における小さい張力の大きさが達成され、当該ねじ山を介して、ナットがクリップに接続される。故障時、機械は、定格速度を超えて負荷制限速度又は無拘束速度に切り替えることができる。これらの場合では、停止部は、ばねのための過負荷保護として機能する。
【0032】
加えて、それゆえ、特に高い速度の場合の巻線オーバハングの許容不能に大きい変形を、停止部を使用して防止することができる。
【0033】
クリップの脚部は、典型的には、高い機械的負荷にさらされる。これは、特に、ロータ巻線オーバハングの遠心力がそれに対して作用するためである。したがって、脚部は、ねじ山を含み、当該ねじ山は、好ましくは、スレッドローリングによって形成されることが有効であることが分かっている。結果として、特にナットとして具現化することができる固定要素を、堅固な方式でクリップ上に配置することができる。
【0034】
クリップは、オーステナイト系材料から、特にオーステナイト鋼から形成されることが有効であることが分かっている。一方では、これは、ロータ巻線オーバハングにおいて広がる磁場に起因して有益である。他方では、オーステナイト系材料は、対応する用途のための機械的特性に関して非常に有利であることも分かっている。
【0035】
高速においてでさえロータ巻線オーバハングの堅固な支持を保証することを可能とするために、クリップは、冷間加工金属、特に冷間引抜鋼から形成されたものが提供されることが好ましい。
【0036】
有利には、保持本体は、フェライト材料、特にフェライト鋼を含み、又はそのような材料から形成されたものが提供される。結果として、特に信頼性の高い方式で、機械的要件を満たすことができる。
【0037】
この目的で、保持本体は、特にS460における微粒子鋼、又は特にS550Qにおける焼入焼戻微粒子鋼を含むものが提供される場合に特に好ましい。
【0038】
巻線オーバハング領域において特に磁気損失が低いことを確実にするために、保持本体は、フェライト内部部分、及び特にアルミニウム、複合繊維材料、又は積層布、例えば、エポキシガラスクロス積層板(EPGC)から構成される非磁性外部部分を含むものが提供されることが好ましい。保持本体は、例えば、フェライト内側リング、及び、例えば、アルミニウム、複合繊維材料、又は積層布、例えば、EPGCから構成することができる非磁性外側リングを含む。内側リング及び外側リングは、互いに対して可動とすることもできる。この場合、外側リングは、軸方向において下部バーと結合することができ、内側リングは、軸方向において固定方式で積層コアと結合することができる。それによって、内側リング及び外側リングの間の接触表面は、摩耗を最小化するために、特に低い摩擦係数を有する材料から形成されることも提供され得る。
【0039】
保持本体が軸方向において固定方式で積層コアに接続される場合、特に堅固な設計が達成される。この目的で、保持本体は、ねじによって圧力プレートに接続することができる。例えば、当該圧力プレートは、次に、固定方式で積層コアに接続される。
【0040】
巻線オーバハングに対して作用する遠心力が積層コアの追加の機械的負荷をもたらすことを防止するために、好ましくは、保持本体は、それが径方向において、特に径方向ガイドによって、移動し得るように積層コアに接続されることが提供される。それゆえ、巻線オーバハング領域における遠心力は、巻線オーバハング及び保持本体の変形のみをもたらすが、積層コアの径方向変形をもたらさないことが保証される。これは、特に、保持本体はその後径方向において積層コアから分離されるためである。ガイドは、例えば、保持本体又は圧力プレートにおけるスロット、及び圧力プレート又は保持本体における対応するガイドピンを含む。
【0041】
好ましくは、固定方式で積層ロータコアに接続されるコンポーネント、特に圧力プレートは、径方向において延びる第1のガイド手段、特に径方向スロットを含み、保持本体は、対応する第2のガイド手段、特にガイドピンを含み、当該第2のガイド手段は、第1のガイド手段と係合する。その結果、保持本体は、相互作用するガイド手段を介して、保持本体が径方向において移動され得、且つ円周方向において固定されるように、積層コアに接続されることが提供される。
【0042】
ロータ巻線オーバハングの寸法に依存して、単一の、通常周縁の、保持本体で原理的には既に十分とすることができ、当該保持本体は、典型的には、円周にわたって分散方式で配置されたクリップを介して径方向においてロータ巻線オーバハングと結合される。好ましくは、特に非常に大きい巻線オーバハングの場合、軸方向において、複数の、特に3つの、保持本体が提供される。当該保持本体は、径方向ガイド手段を介して円周方向において運動学的に結合され、径方向において互いに対して移動され得、径方向ガイド手段は、好ましくは、径方向スロット、及び径方向スロットと係合する対応するガイドピンによって形成されることが提供される。それゆえ、個々の保持本体は、軸方向において及び円周方向において、互いの上で、及び積層ロータコア上で支持することができる。個々の保持本体は、依然として径方向において互いに対して移動し得る。これは、特にロータ巻線オーバハングが積層コアに近接した領域においてよりも軸方向端部において大きい径方向変形を有し得るので、有利である。
【0043】
積層ロータコアへの保持本体の堅固な軸方向接続のために、保持本体は、ねじによって圧力プレートに軸方向に接続される。ねじは、軸方向的に最外の保持本体から圧力プレートに連続的に延在し、特に規定された予張下にあることが有効であることが分かっている。それにもかかわらず個々の保持本体間の径方向移動性を保証するために、ねじは、例えば、保持本体におけるボアを通してガイドすることができ、当該ボアは、ねじよりも大きい。
【0044】
積層ロータコアを有する電気機械は、多くの場合、積層ロータコアがロータ本体に締まり嵌めされるように作成される。ここで、内部から軸方向において延在する開口部は、積層ロータコアの通気のためにロータ本体上に提供することができる。それゆえ、積層ロータコアの締まり嵌めは、積層ロータコアの変形をもたらす。これは、積層ロータコアが締まり嵌めされる開口部及びアームに対応する。
【0045】
それにもかかわらず、ロータが締まり嵌めを使用して形成される場合であっても径方向において保持本体の特に信頼性の高いガイダンスを保証するために、かつ円周方向における積層ロータコアに対する保持本体の移動を回避するために、以下の設計が有効であることが分かっている。ロータが、円周方向に沿って分散方式で配置されたアーム及び当該アーム同士の間に配置された開口部を有するロータ本体を含み、当該開口部を通して、冷却空気を積層ロータコアに供給することができ、積層コアは、ロータ本体上に締まり嵌めされ、径方向に延在する第1のガイド手段が、圧力プレートの領域におけるアームの位置及び/又は圧力プレートの領域におけるアーム同士の間の中心に置かれる位置に対応する位置において円周方向に沿って配置されるという設計である。それゆえ、圧力プレート及び同様に積層ロータコアは、締まり嵌め中にこれらの位置において径方向にのみ変形され、領域ごとのねじれは、これらの領域において生じない。これにより、ガイドは屈曲されることになり、その適切な機能はもはや全ての動作条件において保証されないことになる。したがって、アーム上の中心に、かつアーム同士の間の中心に位置づけられるこれらの位置は、ねじれの無い領域として示すこともできる。
【0046】
典型的には、バーは、軸方向に略平行に配向される。さらに、クリップの脚部は、典型的には、略径方向に配向される。結果として、脚部は、本質的に張力のみが負荷され、特に、脚部の屈曲及びねじれ負荷が本質的に回避される。
【0047】
巻線オーバハングのサイズに依存して、複数のクリップは、円周方向に沿って分散方式で配置されることが提供され得る。クリップは、それらが典型的には円周方向において規則的な間隔で分散するようにロータ巻線オーバハングの円周全体にわたって位置決めされる。
【0048】
加えて、巻線オーバハングのサイズに依存して、複数のクリップが軸方向において提供される場合に有益であり得る。それゆえ、クリップは、好ましくは、内部保持本体によって複数の位置においてロータ巻線オーバハングを均一に安定化するために、円周方向及び軸方向の両方においてロータ巻線オーバハングにわたって分散方式で配置される。
【0049】
典型的には、保持本体は、ロータ軸を包含し、特に、プレート形状、好ましくはリング形状であるように、特に好ましくはリングディスクとして、具現化されることが提供される。保持本体に対して作用する遠心力は、その後、特に良好に吸収され得る。その結果、巻線オーバハングの良好な安定化がもたらされる。
【0050】
言及されたように、クリップの脚部は、予張下にある。その結果、保持本体は、ロータ巻線オーバハングの1つ又は複数の下部バーに対して押圧される場合に有益であり得る。動作中、ロータ巻線オーバハングの上部バー及び下部バーは、加熱される。当該バーは、通常、銅から構成されるか、又は銅を含み、したがって、また軸方向において膨張する。保持本体は、言及されたように、特にねじに介して、それが軸方向に固定されるように積層コアに接続することができ、巻線オーバハングとは異なる、特により小さい、軸方向における膨張にさらされ得る。軸方向における保持本体及び下部バーの間の相対移動並びに熱応力の場合に損傷を回避するために、好ましくは、保持本体及び下部バーの間に、少なくとも1つの側で、低摩擦係数を有する材料によって、特にテフロン(登録商標)カーボンプレートによって形成される表面を含むスライディングデバイスが配置されることが提供される。スライディングデバイスは、有利には、ロータ軸を包含するコンポーネントとしても具現化される。
【0051】
有利には、スライディングデバイスは、固定方式で下部バーに、及び軸方向に可動な方式で保持本体に接続される。それゆえ、スライディングデバイスは、通常、低摩擦係数を有する材料によって形成される表面で、保持本体又は保持本体に固定方式で接続されるコンポーネント上でスライドする。
【0052】
スライディングデバイスは、好ましくは、低摩擦係数を有する材料から形成され、特にテフロンカーボンプレートによって形成される摩擦防止層であって、1mm~20mm、特に2mm~10mmの径方向高さを有する摩擦防止層を含む。
【0053】
さらに、スライディングデバイスが、常磁性材料によって形成される層であって、特にアルミニウム又はエポキシガラスクロス積層板によって形成される層を含み、軸方向において層を通って延びるボアが、好ましくは提供される場合に有益であり得る。それゆえ、ボアによって、ロータ巻線オーバハングの通気性もこの領域において改善することができる。層は、典型的には、円周方向においてロータ軸の周りに完全に延在し、それゆえ、保持本体を、円周全体にわたって下部バーから分離する。当該保持本体は、強磁性材料から構成され得るか、又はそのような材料を含むことができる。
【0054】
漏れ電流を回避するために、スライディングデバイスが、固定方式で金属層に接続された絶縁層によって下部バーから離隔された金属層を含む。絶縁層は、特にエポキシガラスクロス積層板を含む場合に有益であり得る。
【0055】
この絶縁層の結果として、スライディングデバイスは、下部バー上に支持することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本発明の追加の特徴、利点、及び効果は、以下で説明される例示的な実施形態から得られる。それによって参照される図面において:
【0057】
図1】本発明に係るロータの詳細を示す図である。
図2】本発明に係るロータの詳細を示す図である。
図3】クリップを示す図である。
図4】ロータの一部分を示す図である。
図5】ロータの更なる詳細を示す図である。
図6】スライディングデバイスの詳細を示す図である。
図7】分解組立図においてロータの更なる詳細を示す図である。
図8】ロータの平面図を示す図である。
図9】更なるロータの詳細を示す図である。
図10】更なるロータの詳細を示す図である。
図11】更なるロータの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1図3は、本発明に係るロータの巻線オーバハングの領域を示す。ここで、積層コア1の一部分も、当該積層コア1の端部に配置された圧力プレート30とともに示されている。見て取ることができるように、ロータは、積層コア1におけるスロット2内に配置されるとともに積層コア1の外側に接続されている上部バー4及び下部バー3を備える。ここで、非同期機として具現化することができるこのタイプの機械に一般的であるように、この場合上部バー4及び下部バー3の軸方向端部に配置されたバーコネクタ29によって、1つのスロット2の下部バー3は、別のスロット2の上部バー4に常に接続されている。
【0059】
上部バー4及び下部バー3は、この場合では積層コア領域内で軸方向5においてのみ延在する一方で、上部バー4及び下部バー3は、積層コア1の軸方向外側で、又は巻線オーバハング領域において、円周方向7において離隔した2つのスロット2の上部バー4及び下部バー3の間の接続を作成するために、円周方向7に沿っても延在する。示されている例示的な実施形態では、上部バー4は、ロータ軸23に対して、又はロータ軸23に平行である軸方向5に対しておよそ45度の角度をなして円周方向7において延在する。一方で、下部バー3は、ロータ軸23に対しておよそ-45度の角度をなして略反対に円周方向7において延在する。
【0060】
したがって、図2において見て取ることができるように、上部バー4は、交差点8においておよそ90度の角度をなして下部バー3と交差する。ギャップ9は、図2において示されている平面図における交差点8同士の間で、又は径方向6における見通し線において、維持される。これらのギャップ9のうちの幾つかを通して、クリップ11の脚部12が突出し、当該クリップ11は、クリップ11の脚部12を接続するクロスピース13が、それぞれ、示されているように2つの上部バー4の外側にまたがり、それゆえ、当該バーを、巻線オーバハングの内側に配置された保持本体10と径方向に結合するという点で、巻線オーバハングを径方向に支持する。図2では、これらのクリップ11のうちの1つは、スペーサピース28とともに隠れている。その結果、個々のクリップ11が各々、2つの上部バー4及び2つの下部バー3、並びに当該バー同士の間に配置されたギャップ9に重なることを見て取ることが可能である。
【0061】
クリップ11の径方向支持のために、巻線オーバハングにおける径方向内側の各クリップ11の脚部12上に閉鎖リンク15が提供され、当該閉鎖リンク15は、脚部12が突出する際に通る2つの貫通ボアを備える。当該閉鎖リンク15は、保持本体10を閉鎖リンク15及びクリップ11を介して上部バー4と機械的に結合するために、この場合リング形状であるように具現化された保持本体10の内径14に対して支持される。閉鎖リンク15は、ナット16によって脚部12上で固定される。
【0062】
クロスピース13は、上部バー4と機械的に結合される。当該クロスピース13は、この場合、上部バー4上での圧力ピークを回避するのに使用されるスペーサピース28を介して間接的にまたがる。結果として、巻線オーバハングの径方向の剛性は、クリップ11によって高められ、当該クリップ11は、リング形状保持本体10を上部バー4に、及び上部バー4を介して下部バー3にも間接的に接続する。これは、この場合にクリップ11が保持本体10とともに巻線オーバハングのための支持デバイスを形成する理由である。
【0063】
示されている例示的な実施形態では、3つの保持本体10が軸方向5において配置され、したがって、軸方向5に沿って3列のクリップ11も提供される。ここで、各列は、円周方向7にわたって分散方式で配置されたクリップ11を含む。ここで、クリップ11のクロスピース13は、軸方向5において延在する。示されているように、クロスピース13は各々、この場合では2つの上部バー4にまたがる。その結果、クリップ11の脚部12は、異なる上部バー4に隣接しているギャップ9において配置される。当然ながら、クリップ11は、2つよりも多くの上部バー4及び1つよりも多くのギャップ9にもまたがり得る。
【0064】
結果として、およそ90度である上部バー4及び下部バー3の交差角度にもかかわらずクリップ11の脚部12同士の間の大きい脚部間隔31が取得される。これにより、この場合に、比較的幅狭の上部バー4及び下部バー3と組み合わせて、ギャップ9の小さい軸方向間隔がもたらされる。それゆえ、当該脚部間隔31は、2つの軸方向に隣接したギャップ9の間隔の少なくとも2倍に対応する。
【0065】
この場合、脚部12は、示されているように、本質的に専ら脚部12の張力による負荷を達成するために、専ら径方向6において延在する。保持本体10は、それぞれ、クリップ11の2つの脚部12間に配置される。これが、対応する力を吸収することができる対応して大きい保持本体10が大きい脚部間隔31によって達成される理由である。
【0066】
異なる軸方向位置に配置された3つの保持本体10は、この場合、周縁リングとして具現化され、それゆえ、クリップ11を介した結合を通じてロータ巻線オーバハングの許容不能の変形を防止することもできるし、又は生じる遠心力を吸収することもできる。この目的で、クリップ11の脚部12は、閉鎖リンク15を介して径方向内側で保持本体10と結合される。
【0067】
ここで、軸方向5、径方向6、及び円周方向7という用語は、円筒座標系の意味で理解されるべきである。ここで、軸方向5は、ロータ軸23と一致し、又は、当該ロータ軸23に平行であり、意図されるように使用される場合、当該ロータ軸23の周りに回転可能にロータがステータ内で配置される。したがって、円周方向7は、意図されるように使用される場合、ロータがステータ内で回転する際に沿う回転方向に対応する。
【0068】
図3は、対応する支持デバイスのクリップ11を詳細に示している。当該クリップ11は、この場合U形状であるように具現化されている。見て取ることができるように、クリップ11は、2つの略平行な脚部12を備える。当該脚部12は、当該脚部12に対して垂直に配向されているクロスピース13によって接続されている。脚部12の端部において、典型的にはねじ山が配置されている。その結果、2つのナット16によって、閉鎖リンク15をクリップ11に取り付けることができる。ねじ山は、好ましくは、ねじ山領域においても高い強度を保証するために、スレッドローリング又はスレッドローラによって作成される。クリップ11は、通常、オーステナイト系冷間引抜鋼によって形成される。これによって、巻線オーバハング領域における適用のための磁気的に好適な特性及び同時に高い強度が取得される。
【0069】
巻線オーバハングの脚部12間で、典型的には好ましくはリング形状であるように具現化される保持本体10は、巻線オーバハングの内側で配置される。これは、例えば保持リングとして具現化され得る図3において示されていない保持本体10の軸方向の延在部又はその断面が脚部間隔31によって規定され得る理由である。対応するロータが本発明に従って具現化される場合、互いに密接に隣接しているギャップ9の場合であっても、比較的大きい脚部間隔31が達成される。これは、特に脚部12が異なる上部バー4及び下部バー3に隣接しているギャップ9を通って突出しており、その結果、脚部12が通って突出するギャップ9間で、クロスピース13がまたがる少なくとも1つの他のギャップ9が通常配置されるためである。
【0070】
図4は、等角図においてロータを示している。見て取ることができるように、ロータは、ロータ軸23に関して分散方式で配置されるアーム21を有するロータ本体を備え、当該アーム21同士の間に開口部22が位置決めされる。これらの開口部22を介して、積層コアを通気又は冷却するために、当該積層コアの内半径に空気を移送することができる。積層コア1は、積層コア1及びロータ本体の間の安定した接続を形成するために、ロータ本体のアーム21に締まり嵌めされる。
【0071】
図5は、更なる図においてロータの詳細を示している。保持本体10は、典型的には、図示されていないねじによって軸方向5において本質的に固定方式で積層ロータコアに接続される。動作中、下部バー3及び上部バー4は、加熱され、したがって、熱膨張にさらされる。これにより、一方では下部バー3及び上部バー4の間での、及び他方では保持本体10の間での軸方向5における相対移動が引き起こされる。この相対移動が、特に下部バー3の絶縁部に対する損傷を引き起こすことを防止するために、スライディングデバイス24が、保持本体10及び下部バー3の間に配置される。
【0072】
図6は、このタイプのスライディングデバイス24の詳細を示しており、これは、固定方式で下部バー3に接続され得る。スライディングデバイス24は、径方向内側に、低摩擦係数を有する材料によって、典型的には保持本体10に対して支持されることができるテフロンカーボンプレート25によって形成される表面を備える。それゆえ、このテフロンカーボンプレート25は、スライディングデバイス24が典型的には軸方向5において結合される下部バー3と、対応して隣接している保持本体10との間の低摩擦相対移動を可能にする。
【0073】
保持本体10は、典型的には、磁性材料を含むか、又は、微粒子鋼等から構成され得る。巻線オーバハング領域における磁気損失を最小化するために、好ましくは、スライディングデバイス24は、常磁性材料によって、特にアルミニウム又はエポキシガラスクロス積層板によって、形成される層26を含むことが提供される。それゆえ、この層26を用いて、磁性体の保持本体10、又は保持本体10の磁性体部分及び下部バー3の間の間隔が保証される。漏出電流を回避するために、例えばエポキシガラスクロス積層板から構成され得る絶縁層27は、スライディングデバイス24の外部に配置される。層26が絶縁材料から構成される場合、絶縁層27は、また層26と一体的に具現化され得、例えば、エポキシガラスクロス積層板から構成され得る。
【0074】
それゆえ、微粒子鋼は、保持本体10の内側リングを形成することができる。その一方で、アルミニウムの層26、又はスライディングデバイスは、外側リングを形成することができる。ここで、外側リングは、下部バー3及び内側リングの間の間隔を保証し、同時に、径方向において内側リングを下部バー3に接続する。
【0075】
図7は、3つの保持本体10、及び積層コア1の一部分からの切り欠き図を分解組立図において示している。保持本体10は各々、ガイドピン19及び径方向スロット18を備え、これらは、それぞれ、径方向6に沿って延在する。その結果、径方向ガイドが存在し、個々の保持本体10は、径方向ガイドに起因して互いに対して径方向に移動し得るが、円周方向7において互いに運動学的に結合される。対応する径方向スロット18は、ここでは図示されていない圧力プレート30上にも提供される。その結果、保持本体10は、圧力プレート30に対しても径方向に移動し得るが、円周方向7において形状嵌めで圧力プレート30に接続される。軸方向5において、保持本体10は、言及されたように、図示されていないねじによって固定方式で積層コア1と典型的には結合される。ここで、当該ねじは、圧力プレート30から軸方向に最外の保持本体10まで延在することができる。
【0076】
図8は、ロータの平面図を示している。ここで、ロータのねじれ解放領域20が、径方向ガイドデバイス、典型的には径方向スロット18及び対応するガイドピン19が配置される際に沿う一点鎖線によって概略的に示されている。積層コア1及び圧力プレート30のこれらのねじれ解放領域20は、それによって、ロータ本体のアーム21の中心に及び当該アーム21の間の中心に置かれる位置に配置される。スロット2及び対応するガイドピン19等によって形成され得る径方向ガイドの配置を通じて、動作中の締まり嵌めの部分的開放及び閉鎖におけるガイドのねじれが容易に回避される。これは、特にロータの積層ロータコア及び圧力プレート30がこれらの領域において径方向にのみ変形されるためである。
【0077】
図9は、更なる例示的な実施形態の詳細を示している。ここで、支持デバイスの径方向内側端部が示されている。ここで、閉鎖リンク15がここでもやはりクリップ11の径方向内側に同様に提供され、当該閉鎖リンク15によって、クリップ11が閉鎖され、保持本体10と結合される。ここでも、クリップ11の脚部12は、閉鎖リンク15を通してガイドされる。ナット16は、閉鎖リンク15をクリップ11上の適所に固定するために、脚部12の端部にねじ込まれる。加えて、ここで円板ばね17として具現化されるばね要素が、ナット16及び閉鎖リンク15の間に提供される。ここで、3つの円板ばね17が各々、この場合ナット16及び閉鎖リンク15の間に直列に位置決めされる。それゆえ、脚部12に事前規定された予張を導入することができる。当該予張は、へたりの過程の場合にばね要素を介して維持することもできる。結果として、ロータの試運転後のナット16の再調整を回避することができる。
【0078】
図10及び図11は、更なる例示的な実施形態を詳細に示している。ここで、支持デバイスの径方向内側端部がここでもやはり示されている。ここでも、クリップ11の脚部12は、閉鎖リンク15を通してガイドされる。ナット16が、閉鎖リンク15をクリップ11上の適所に固定するために、脚部12の端部にねじ込まれる。さらに、ここで、クリップ11をナット16を介して閉鎖リンク15に接続するばね要素も提供される。この場合に、ばね要素及びナット16の間に追加の鋼ワッシャ33が配置される。図10は、それによって、等角図において詳細を示しており、その一方、図11は、断面図を示している。
【0079】
図11において見て取ることができるように、ここで螺旋円板ばね34として具現化されるばね要素は、それによって、クリップ11と同心状に配置され、停止部として機能するスリーブ35は、それぞれ、螺旋円板ばね34に平行に、この場合螺旋円板ばね34の内側に配置される。それゆえ、スリーブ35によって、ばね要素は、規定された変形又は規定された予張まで容易に予張することができる。当該螺旋円板ばね34の変形を用いて、鋼ワッシャ33は、それぞれ、スリーブ35に対して支持される。それゆえ、選択される予張は、ばね要素と組み合わせて、スリーブ35の寸法を規定し、例えば、選択される予張は、支持デバイスからの巻線オーバハングのリフトオフが機械の定格速度まで確実に防止されるように選択される。故障時に生じ得る定格速度を超える速度の場合、例えば、スリーブ35は、ばね要素に対する損傷を確実に防止する。これは、特に、停止部として機能するスリーブ35がその場合にばね要素の許容不能なほどに大きい変形を防止するためである。
【0080】
図10及び図11は、ナット16のための緩み防止保護32を更に示している。緩み防止保護32は、動作中のナット16の意図しない緩みを防止するために形状嵌めで両方のナット16に接続される。示されている例示的な実施形態では、緩み防止保護32及び支持デバイスの両方が、EPGCから形成されているが、当然ながら他の材料も可能である。
【0081】
本発明に係るロータは、巻線オーバハング領域におけるギャップ9間の間隔が設計に起因して非常に小さい場合であっても、堅固な方式で対応する機械における巻線オーバハングの強化を可能にする。そのような機械は、特に揚水発電所において使用することができる。
[他の可能な項目]
[項目1]
電気機械のためのロータであって、下部バー(3)及び上部バー(4)が配置されるスロット(2)を有する積層コア(1)を備え、前記バーは、軸方向(5)において前記積層コア(1)を越えて延在して巻線オーバハングを形成し、ここで、1つのスロット(2)の下部バー(3)は、前記巻線オーバハングにおける別のスロット(2)の上部バー(4)にそれぞれ接続され、平面図において、下部バー(3)及び上部バー(4)は、交差点(8)において前記積層コア(1)の軸方向外側で交差し、ギャップ(9)が前記交差点(8)同士の間で維持され、前記巻線オーバハングの径方向内側に配置された保持本体(10)及び2つの脚部(12)及びクロスピース(13)を有する少なくとも1つのクリップ(11)を有する支持デバイスが提供され、前記クリップ(11)は、前記保持本体(10)によって前記上部バー(4)を径方向に支持するために、前記保持本体(10)及び上部バー(4)の両方に接続され、前記脚部(12)は、異なる上部バー(4)に隣接している2つのギャップ(9)を通って突出することを特徴とする、ロータ。
[項目2]
前記クロスピース(13)は、前記上部バー(4)の径方向外側に配置され、少なくとも2つの上部バー(4)に接続されることを特徴とする、項目1に記載のロータ。
[項目3]
前記保持本体(10)は、リング形状であるように具現化され、前記脚部(12)は、前記保持本体(10)の内径(14)まで突出することを特徴とする、項目1又は2に記載のロータ。
[項目4]
前記脚部(12)に解放可能に接続される閉鎖リンク(15)が提供されることを特徴とする、項目1~3のうちの1項に記載のロータ。
[項目5]
前記保持本体(10)は、前記閉鎖リンク(15)を介して前記クリップ(11)に接続されることを特徴とする、項目4に記載のロータ。
[項目6]
前記閉鎖リンク(15)は、前記脚部(12)が突出する際に通る径方向貫通ボアを備え、固定要素、特にナット(16)が、前記閉鎖リンク(15)の後に前記脚部(12)に提供され、前記固定要素は、前記閉鎖リンク(15)を前記脚部(12)上に保持することを特徴とする、項目4又は5に記載のロータ。
[項目7]
前記固定要素及び前記閉鎖リンク(15)の間に、ばね要素、特に円板ばね(17)が配置され、前記ばね要素は、好ましくは、事前規定された予張力で予張されることを特徴とする、項目6に記載のロータ。
[項目8]
前記脚部(12)は、ねじ山を含み、前記ねじ山は、好ましくは、スレッドローリングによって形成されることを特徴とする、項目1~7のうちの1項に記載のロータ。
[項目9]
前記クリップ(11)は、オーステナイト系材料から形成されることを特徴とする、項目1~8のうちの1項に記載のロータ。
[項目10]
前記クリップ(11)は、冷間加工金属、特に冷間引抜鋼から形成されることを特徴とする、項目1~9のうちの1項に記載のロータ。
[項目11]
前記保持本体(10)は、フェライト材料、特にフェライト鋼を含み、又はそのような材料から形成されることを特徴とする、項目1~10のうちの1項に記載のロータ。
[項目12]
前記保持本体(10)は、微粒子鋼を含むことを特徴とする、項目1~11のうちの1項に記載のロータ。
[項目13]
前記保持本体(10)は、フェライト内部部分、及び特にアルミニウム、複合繊維材料、又は積層布、例えば、エポキシガラスクロス積層板から構成される非磁性外部部分を含むことを特徴とする、項目1~12のうちの1項に記載のロータ。
[項目14]
前記保持本体(10)は、軸方向(5)において固定方式で前記積層コア(1)に接続されることを特徴とする、項目1~13のうちの1項に記載のロータ。
[項目15]
前記保持本体(10)は、それが特に径方向ガイドによって、径方向(6)において移動し得るように前記積層コア(1)に接続されることを特徴とする、項目1~14のうちの1項に記載のロータ。
[項目16]
前記固定方式で前記積層ロータコアに接続されるコンポーネント、特に圧力プレート(30)は、径方向(6)において延びる第1のガイド手段、特に径方向スロット(18)を含み、前記保持本体(10)は、対応する第2のガイド手段、特にガイドピン(19)を含み、前記第2のガイド手段は、前記第1のガイド手段と係合し、それにより、前記相互作用するガイド手段を介して、前記保持本体(10)は、それが径方向(6)において移動され得、かつ円周方向(7)において固定されるように、前記積層コア(1)に接続されることを特徴とする、項目1~15のうちの1項に記載のロータ。
[項目17]
軸方向(5)において、複数の、特に3つの、保持本体(10)が提供され、前記保持本体(10)は、径方向ガイド手段を介して円周方向(7)において運動学的に結合され、径方向(6)において互いに対して移動され得、前記径方向ガイド手段は、好ましくは、径方向スロット(18)、及び前記径方向スロット(18)と係合する対応するガイドピン(19)によって形成されることを特徴とする、項目16に記載のロータ。
[項目18]
前記保持本体(10)は、ねじによって前記圧力プレート(30)に軸方向に接続され、前記ねじは、軸方向に最外の保持本体(10)から前記圧力プレート(30)に連続的に延在し、特に規定された予張下にあることを特徴とする、項目17に記載のロータ。
[項目19]
前記ロータは、円周方向(7)に沿って分散方式で配置されたアーム(21)及び前記アーム(21)同士の間に配置された開口部(22)を有するロータ本体を含み、前記開口部(22)を通して、冷却空気を前記積層ロータコアに供給することができ、前記積層コア(1)は、前記ロータ本体上に締まり嵌めされ、径方向に延在する前記第1のガイド手段は、圧力プレート(30)の前記領域における前記アーム(21)の位置及び/又は前記圧力プレート(30)の前記領域における前記アーム(21)同士の間の中心に置かれる位置に対応する位置において円周方向(7)に沿って配置されることを特徴とする、項目16~18のうちの1項に記載のロータ。
[項目20]
前記クロスピース(13)は、前記軸方向(5)に略平行に配向されることを特徴とする、項目1~19のうちの1項に記載のロータ。
[項目21]
複数のクリップ(11)が、円周方向(7)に沿って分散方式で配置されることを特徴とする、項目1~20のうちの1項に記載のロータ。
[項目22]
複数のクリップ(11)が、軸方向(5)において提供されることを特徴とする、項目1~21のうちの1項に記載のロータ。
[項目23]
前記保持本体(10)は、ロータ軸(23)を包含し、特に、プレート形状であるように具現化されることを特徴とする、項目1~22のうちの1項に記載のロータ。
[項目24]
前記保持本体(10)及び前記下部バー(3)の間に、スライディングデバイス(24)が配置され、前記スライディングデバイス(24)は、少なくとも1つの側に、低摩擦係数を有する材料によって、特にテフロンカーボンプレート(25)によって、形成される表面を含むことを特徴とする、項目1~23のうちの1項に記載のロータ。
[項目25]
前記スライディングデバイス(24)は、固定方式で前記下部バー(3)に、及び軸方向に可動な方式で前記保持本体(10)に、接続されることを特徴とする、項目24に記載のロータ。
[項目26]
前記スライディングデバイス(24)は、低摩擦係数を有する材料から、特にテフロンカーボンプレート(25)によって、形成される、1mm~20mm、特に2mm~10mmの径方向高さを有する摩擦防止層を含むことを特徴とする、項目24又は25に記載のロータ。
[項目27]
前記スライディングデバイス(24)は、常磁性材料によって、特にアルミニウム又はエポキシガラスクロス積層板によって、形成される層(26)を含み、軸方向(5)において前記層(26)を通って延びるボアが、好ましくは提供されることを特徴とする、項目24~26のうちの1項に記載のロータ。
[項目28]
前記スライディングデバイス(24)は、固定方式で金属層(26)に接続された絶縁層(27)によって前記下部バー(3)から離隔された前記金属層(26)を含み、前記絶縁層(27)は、特にエポキシガラスクロス積層板を含むことを特徴とする、項目24~27のうちの1項に記載のロータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】