(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】適応多焦点回折眼科レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20240328BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20240328BHJP
G02C 7/06 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
A61F2/16
G02C7/04
G02C7/06
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023550087
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 TR2021050154
(87)【国際公開番号】W WO2022177517
(87)【国際公開日】2022-08-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518090959
【氏名又は名称】ヴェセイェ・ビヨテクノロジ・ヴェ・イラチ・サナイ・アノニム・シルケティ
【氏名又は名称原語表記】VSY BIYOTEKNOLOJI VE ILAC SANAYI ANONIM SIRKETI
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ホルムストレム,スヴェン ターゲ シーグヴァルド
(72)【発明者】
【氏名】タバタバイ モフセニ,アミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,エフェ
【テーマコード(参考)】
2H006
4C097
【Fターム(参考)】
2H006BC03
2H006BD01
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097SA02
(57)【要約】
遠視力、中間視力および近視力を提供する眼科多焦点レンズであって、光軸を備えた光透過性本体、および該レンズ本体の一部に渡って延びる屈折ベースラインを有し、前記レンズ本体の中心領域と一致する第1部分、および同心円状に放射状に延びる多焦点の第2部分をさらに有し、前記第2部分はさらに、前記ベースライン上に重畳され、レンズの一部をカバーする対称多焦点回折格子を含み、その形状および得られる光強度分布が光軸までの距離とともに変化しており、前記第1部分は、実質的に凹状であり、光軸に最も近い前記格子のリッジに接続され、意図した遠視パワーと中間パワーとの間に支配的な光学パワーを提供し、近視力用に意図したエネルギーに対する遠視力用に意図したエネルギー比率が、予め定めたアパーチャについてより低くなるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズであって、
前記レンズは、光軸を備えた光透過性レンズ本体、および該レンズ本体の一部に渡って延びる屈折ベースラインを有し、
前記レンズはさらに、前記光透過性レンズ本体の中心領域と一致し、半径方向に同心円状に延びる第1部分、半径方向に同心円状に多焦点の第2部分を有し、
眼科多焦点レンズの前記第2部分はさらに、前記屈折ベースライン上に重畳され、レンズの一部をカバーする対称多焦点回折格子を含み、その形状および得られる光強度分布が光軸までの距離に関して変化しており、
前記眼科レンズの前記第1部分は、実質的に凹形状が光軸周りに前記屈折ベースライン上に重畳されるように構成され、光軸に最も近い前記対称多焦点回折格子のリッジに接続され、
前記屈折ベースラインは、中間パワーに実質的に一致する焦点を提供し、
前記眼科レンズの前記第1部分は、意図した遠視力パワーと中間視力パワーとの間にある支配的な光学パワーを提供するように構成されることを特徴とする、眼科多焦点レンズ。
【請求項2】
前記眼科多焦点レンズは、5mmのアパーチャでは、近視力のために意図したエネルギーが、中間視力および遠視力のためにそれぞれ意図したエネルギーよりも弱くなるように構成され、
前記眼科多焦点レンズは、3mmのアパーチャでは、中間エネルギーが近視エネルギーおよび遠視エネルギーの両方より弱くなるように構成され、
前記眼用多焦点レンズは、近視力のために意図したエネルギーに対する遠視力のために意図したエネルギーの比率を有し、その比率は、2mmおよび4.5mmのアパーチャでの同比率に比べて、3mmのアパーチャではより低いように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項3】
前記眼科多焦点レンズは、1ミリメートル当たり50ラインで測定して、3mmアパーチャでは、遠視力と近視力との変調伝達関数比が、2mmおよび4.5mmアパーチャのものより低くなるように構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項4】
前記対称多焦点回折格子はさらに、交互配列した山と谷の振幅値とを含む波型回折パターンを含み、
光軸に垂直な方向に沿って測定したとき、前記第1部分は、レンズの光軸と一致する点から、谷の振幅よりも山の振幅値により接近するように構成された点まで、凹状であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項5】
中間視力および遠視力のパワー差は、1.5Dと2.2Dの間であるように構成され、一方、遠視力と近視力のパワー差は、3Dと4.4Dの間であるように構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項6】
前記第1部分は、単焦点のために構成された形状を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項7】
前記対称多焦点回折格子は、3つ、5つ、7つ、9つ(これらに限定されない)の焦点を含むグループから選択される複数の焦点を提供することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項8】
前記第1部分、前記第2部分、または前記部分の両方のうち少なくとも1つは、設計波長について実質的に単焦点である鋸歯状回折格子と組み合わされることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項9】
3.5mmより大きいアパーチャでは、レンズは、非対称回折格子、前記屈折ベースライン以外の屈折パワーを提供する形状、前記対称多焦点回折格子とは異なる奇数個の焦点を備えた対称回折格子(これらに限定されない)を含むグループから少なくとも1つの光学的に活性な機構を備えることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項10】
前記対称多焦点回折格子は、4.5mmアパーチャ内では、前記対称多焦点格子の少なくとも2つの周期を含み、該少なくとも2つの周期は、対応するリニア格子単位セルについて、近視力を担当する次数の回折効率が、光軸からさらに遠くに位置する周期と比べて光軸に最も近くに位置する2つの周期の周期のものより少なくとも10パーセント高い関係を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項11】
前記屈折ベースラインに対する、前記多焦点格子の光軸に最も近い山の最高ポイントは、光軸から0.47mmから0.75mmまでの範囲内の垂直距離に配置されることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項12】
前記多焦点レンズの光軸と一致する前記第1部分のポイントは、前記多焦点レンズの中心3mm内の他の谷よりも前記屈折ベースラインと比べてより低くなるように構成されることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項13】
前記対称多焦点回折格子の最大ピーク間高さは、設計波長では、前記第1部分の谷が省略されるように計算して、完全位相変調の50パーセント未満であることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項14】
前記レンズは、同心1mmアパーチャで測定した場合、意図した遠視パワーと中間パワーとの間で支配的なパワーを有することを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項15】
前記レンズは、同心1mmアパーチャで測定した場合、遠視力について意図したパワーよりも、少なくとも0.2Dでせいぜい1.2Dだけ強い支配的なパワーを有することを特徴とする、請求項1~14のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、眼科レンズに関し、より詳細には、眼科コンタクトおよび眼内多焦点レンズに関し、多焦点性は、様々な瞳サイズに渡って人間の視力に最もよく役立つように構成された回折構造によって提供される。
【背景技術】
【0002】
眼科用途の回折レンズは、屈折本体上に回折パターンが付加されたハイブリッドレンズとして構成される。しばしばレンズの一方の面は純粋に屈折性であり、他方の面は屈折ベースライン上に重畳された回折格子を有する。屈折ベースラインは、球面でもよく、あるいは、ある種の非球面形状でもよい。高次単焦点回折パターンが、純粋な屈折形状としても機能できる。回折部分は、一般に、レンズの2つの面のいずれにも適用できる。回折パターンをある特殊な構造を備えた屈折面と組み合わせる場合、それらが同じ面に追加されても、または一方が第1面に追加され、他方がレンズの第2面に追加されても、一般には問題ではない。同時に、2つの回折パターンが、一方の面に重畳することによって、または、それらを別々の面に重なるように追加することによって組み合わせてもよい。特定の回折次数についてのレンズの光学パワーは、屈折ベースパワーとその回折次数の光学パワーとの加算によって計算できる。
【0003】
眼の解剖学的構造において、光は、瞳と呼ばれる虹彩内の開口を通過し、続いてレンズに到達し、網膜上に合焦される。瞳のサイズは、虹彩の筋肉によって調節されるため、明るい光に露出した場合に瞳を迅速に収縮させ、そして薄暗い光で瞳を拡大(拡張)させる。瞳孔アパーチャはまた、近くの物体に合焦する場合に狭くなり、より遠くの観察のために拡張する。その最大収縮時は、大人の瞳は直径1mm未満でもよく、その最大直径に10倍まで増加することがある。人間の瞳のサイズは、年齢、疾患、外傷、または視覚系内の他の異常(瞳孔運動を制御する経路の機能不全を含む)の結果として変化することがある。
【0004】
眼の網膜での錐体および杆体の特定の応答との組合せの瞳孔応答に基づいて、異なる照度レベル(cd/m2)、即ち、明所(明るい光)、暗所(低光条件)および薄明(中間)の下で3つの主要な眼機能モードが観察される。観察物体の輝度レベル、背景および周囲は、網膜照度レベル(光強度)によって杆体および錐体の活動を決定する。
【0005】
さらに、視覚系は、瞳の周囲から入射する光よりも眼の瞳の中心を通って入射する光に対してより敏感である。これは、第一種スタイルズ・クローフォード効果(SCE-I)と呼ばれ、「網膜の方向性感度」としても知られており、網膜感度の角度依存性を記述する。その中心付近の瞳に入射する軸線光線は、網膜受容体に平行であり、その縁付近の瞳に入射する軸外斜め光線よりも有効である。従って、瞳の周囲を通過する光は、瞳の中心付近を通過する光よりも視覚刺激の点であまり効率的でなく(即ち、軸線光は、軸外光よりも鮮鋭な像を形成する)、焦点深度を増加させる(文献(W. Fink and D. Micol, “computer-based simulation of visual perception under various eye defects using Zernike polynomials,” J. Biomed. Opt., vol. 11, no. 5, p. 054011, 2006)参照)。SCEは、デフォーカス画質およびデフォーカス視力(特に、視覚位相知覚を必要とするタスクについて)を著しく改善できる(文献(X. Zhang, M. Ye, A. Bradley, and L. Thibos, “Apodization by the Stiles-Crawford effect moderates the visual impact of retinal image defocus,” J. Opt. Soc. Am. A, vol. 16, no. 4, p. 812, 1999)参照)。
【0006】
レンズとして機能する回折格子が、絶対的に半径とともに変化するピッチを有することに留意する。ピッチは、屈折率、設計波長および第1回折次数の光学パワーに依存する。ピッチは、レンズを通って第1回折次数の焦点までの光路差(OPD)が、周期当たり正確に1つの波長の差を有するように決定される。回折格子の周期性を示すために、回折レンズプロファイルを半径の2乗に対してプロットすることが多い。このようにプロットした場合、周期(格子ピッチ)は等距離になり、r2空間における周期ピッチは、2λ/Dである。ここで、λは設計波長、Dは第1次数の光学回折パワー(ジオプタ)である。これは、良好に形成された位相整合回折レンズの基礎を形成する。
【0007】
用語「回折レンズ」は、周知のフレネルレンズについて時々使用される。フレネルレンズは、ゾーン接合部において垂直な段差を備えた同心円ゾーンからなる。フレネルレンズ内のゾーンは、しばしば等しい幅であり、各ゾーンの光学特性は、屈折理論を用いて解析できる。しかしながら、ここで説明する回折レンズは、回折解析を必要とするレンズである。
【0008】
最も良く研究されたタイプの回折レンズは、1995年の研究(Rossi et al., "Refractive and diffractive properties of planar micro-optical elements")によって教示された単焦点位相整合フレネルレンズである。このタイプのレンズは、正確に2πの位相変調に対応する鋸歯状回折単位セルおよび段差高さを使用する。
【0009】
2つ以上の焦点を提供することがしばしば要望される。眼科レンズでは、例えば、遠視力および近視力を同時に提供することが好都合になる。2つの焦点を提供するために可能性のある最も光効率の高いレンズは、上述した位相整合フレネルに類似した鋸歯状プロファイルを使用するが、減少した高さを備える。こうしたレンズの可能性のある最も高い回折効率は、81%に近い。3つ以上の焦点に最適化された回折レンズでは、後述するように、鋸歯状パターンは最も効率的ではなく、より高い回折効率が可能である。
【0010】
近年、3つの別個の焦点、多くは遠視力、中間視力および近視力を提供するレンズがますます一般的になってきている。
【0011】
PCT/EP2019/080758は、遠視力だけを提供する単焦点中央ゾーンと、対称多焦点格子を組合せた多焦点レンズを構成する方法を記載している。この文献は、可能な限り高い光効率を達成するために、単焦点中央ゾーンと対称回折格子をどのように組み合わせるかを詳細に検討している。また、1つのアパーチャについて所望の強度分布をどのように達成するかについて説明している。しかしながら、純粋な単焦点中央ゾーンの追加は、レンズ表面全体の高効率な格子を備えたレンズと比較して全体光効率を減少させる。
【0012】
WO2020053864A1は、技術的に5つの焦点を備えた対称回折格子を利用する多焦点レンズを開示する。近視力は、約2mm以下のアパーチャで支配的である。さらに、回折格子のピーク間(peak-to-peak)高さは、望ましいものよりも高い。2mmのアパーチャで測定すると、レンズは、提示されるように、2つのかなり広いピークを備えた二重焦点レンズとして振る舞い、3mmでは、実質的に三重焦点レンズとして振る舞う。
【0013】
眼科回折三重焦点レンズの大部分は、鋸歯状プロファイルを使用する。三重焦点性を達成するために、2つの二重焦点回折レンズの鋸歯状プロファイルを組み合わせることは、この分野で知られている。これにより、0次数を基準として非対称に配置された使用可能な次数を備えた回折レンズが得られ、例えば、三重焦点レンズが、0次数、+1次数、+2次数または0次数、+2次数、+3次数の次数を使用している。US9320594では、回折三重焦点レンズが開示されており、表面プロファイルの光学的厚さが各ゾーン内の半径とともに単調に変化するとともに、隣接ゾーン間の接合部における光学的厚さの異なる段差が段差高さを定義する。個々のゾーンの段差高さは、1つのゾーンから他のゾーンへ周期的に相違してもよく、これにより光学素子の回折次数効率を調整し、段差高さは2つの値の間で交互に配列する。EP2377493では、多焦点効果をより確実に確保でき、アパーチャ変化およびレンズ偏心の影響を低減できる無水晶体眼内レンズの製造方法が提案される。EP2503962は、前面および後面を含み、実質的に前後の光軸を有する眼内レンズを開示しており、これらの前面および後面の一方は、前記光軸上に+1次数の少なくとも1つの第1回折焦点を形成する第1回折プロファイルと、+1次数の第2回折焦点を形成する第2回折プロファイルとを含み、前記2つの回折焦点は別個であり、前記第2回折プロファイルの少なくとも1つの部分は、第1回折プロファイルの少なくとも1つの部分に重畳される。さらに、それは、鋸歯状回折格子のいわゆるアポダイゼーションをどのように使用して、アパーチャの増加とともに、遠視力の相対強度を増加させるかを説明する。回折レンズに関してアポダイゼーションを議論する場合、アパーチャの増加とともに減少する回折パターン深さを参照することが理解される。WO2019130030A1は、アポダイゼーション、そして鋸歯式回折レンズの逆アポダイゼーションも説明しており、アパーチャの増加ともに増加するプロファイル高さを参照して、遠視力への相対強度を減少させ増加させる。これらの2つの概念の組合せは、クロスアポダイゼーションと呼ばれる。US9223148は、3つ以上のパワーを備えたレンズを提案しており、そのうちの一方は屈折であり、もう一方が少なくとも回折である。US50117000は、式r(k)=sqrt(定数x,k)(ここで、r(k)はゾーン半径、kはゾーンである)に従って間隔をあけた複数の環状同心円ゾーンを有する多焦点プロファイル位相板を提案しており、繰り返し段差がプロファイルに組み込まれ、1/2波長より大きいまたは小さい光路長を有する。
【0014】
本発明の技術分野における先行技術文献の1つは、EP3435143を参照でき、近視力、中間視力および遠視力のための焦点を含む眼科多焦点回折レンズを教示する。レンズは、屈折焦点を提供する光透過性レンズ本体と、レンズ本体の表面の少なくとも一部に渡って同心円状に延びて、回折焦点セットを提供する周期的な光透過性回折格子とを備える。回折格子は、光波スプリッタとして動作するように設計され、屈折焦点は、中間視力のための焦点を提供し、回折焦点は、近視力および遠視力のための焦点を提供する。回折格子は、レンズ本体での入射光の位相を変化させ、屈折焦点および回折焦点における光分布の全体効率を最適化するために配置された位相プロファイルを有する。このレンズの次数は、0次数の周りに対称に配置され、少なくとも-1次数、0次数、+1次数で動作する。
【0015】
回折プロファイルに急峻な遷移を備えた回折レンズ、例えば、鋸歯状プロファイルまたはバイナリプロファイルを備えたレンズは、加工の困難性を生じさせ、完成したレンズでは、光の散乱を生じさせ、迷光やグレアなどの幾つかの望ましくない光学現象の発生の増加、直接または反射した太陽光などの明るい光、または、夜間の自動車ヘッドランプなどの人工光の存在で観察する困難さ、ハロー効果、即ち、薄暗い光、即ち、薄明条件下で見える白色光または着色光のリングまたはスポットを生じさせる。急峻な遷移なしの回折レンズは、これらの問題に対してより良好に動作し、少なくとも奇数の焦点を備えた多焦点レンズについて、より高い潜在能力の回折効率を有する。また、正弦波状または滑らかな回折プロファイルは、文献(Osipov et al. "Application of nanoimprinting technique for fabrication of trifocal diffractive lens with sine-like radial profile" as published in Journal of biomedical optics 20, no. 2 (2015): 025008)の説明のように、デブリ析出効果の減少のため、鋸歯状プロファイルと比較して生体適合性がより高いことも示唆されている。
【0016】
WO2019020435の教示によれば、連続周期位相プロファイル関数を有する回折格子を含む眼科レンズの焦点における光分布および、0次数の周りに対称に配置され使用可能な次数は、位相プロファイル関数の引数および振幅の一方または両方を、レンズ本体の光軸に対する半径または半径方向距離の関数として変調することによって、比較的大きな強度範囲に渡って調整可能であることが知られている。-1次数、0次数、+1次数で動作する三重焦点レンズを含むEP20170183354および前述のWO2019020435の教示に関して、この分野で知られている三重焦点レンズが過去数年前に提案されている。レンズを構成する一般的な手法は、US5017000の教示からも知られている。得られる回折レンズは、0次数、+1次数、+2次数で動作する回折レンズである。
【0017】
WO2019020435の教示によれば、三重焦点レンズが、回折効率および使用可能な回折次数間で均等な光分布のために最適化されたリニア位相格子から出発することによって構築できる。リニア位相格子は、ビームスプリッタを作成する意図で研究、開発されている。リニア位相格子の最適化の一般理論は、文献(Romero and Dickey, "Theory of optimal beam splitting by phase gratings. I. One-dimensional gratings" in Journal of the Optical Society of America Vol. 24, No. 8 (2007) p. 2280-2295)によって教示される。回折位相格子に関する既存の文献が、最適解を見つけることに着目しており、特定の数の次数間で均等な強度分布の場合には、最大回折効率を意味する。
【0018】
上述した理由のため、正および負の回折次数の両方を利用した、滑らかな回折格子を利用した多焦点ハイブリッドレンズを使用することはしばしば好都合である。しかしながら、先行技術に存在するこうしたレンズは、いくつかの制限を有する。
【0019】
遠視力、中間視力および近視力を提供する多焦点レンズでしばしば議論され要望される特徴が、薄明条件については比較的均一な強度分布を提供し、一方、暗所条件で利用可能なより大きい瞳については、遠視力のためにはるかにより強い相対強度を提供することである。鋸歯状の多焦点回折レンズでは、これはしばしばアポダイゼーションの支援で提供され、この文脈では、文献(Davison, J. A., & Simpson, M. J. (2006). "History and development of the apodized diffractive intraocular lens". Journal of Cataract & Refractive Surgery, 32(5), 849-858)に教示されているように、半径の増加とともに高さを減少させた回折格子を参照する。一般に、回折多焦点レンズにおいて、回折格子の高さを減少(増加)させて、屈折焦点、即ち、0次数の強度を増加(減少)できる。非対称レンズでは、例えば、前述の文献のように0次数、+1次数、+2次数を使用して、アポダイゼーションは、アパーチャの増加とともに、遠視力に対して増加したエネルギー分布をもたらす。遠視力、近視力および中間視力を提供する対称型回折格子を用いたレンズでは、この簡単な方法がこの目的のために使用できない。対称格子内の屈折焦点は中間視力またはその近傍にあるためである。上述したWO201911300A1は、クロスアポダイゼーションを用いて鋸歯式回折レンズの強度分布を改善する方法を記載している。
【0020】
US8486141B2は、内側ゾーン、中間ゾーンおよび外側ゾーンを含むマルチゾーン単焦点眼科レンズを開示する。内側ゾーンは、第1光学パワーを有する。中間ゾーンは、内側ゾーンを取り囲み、少なくとも約0.75ジオプタ未満の大きさだけ第1パワーとは異なる第2光学パワーを有する。外側ゾーンは、中間ゾーンを取り囲み、第2光学パワーとは異なる第3光学パワーを有する。特定の実施形態では、第3光学パワーは、第1光学パワーに等しい。US9968440B2は、前面、後面、および光軸を有する光学素子を含む眼科レンズを開示する。前面および後面のうちの少なくとも一方は、光軸から第1半径方向境界に延びる第1ゾーンと、第1半径方向境界から光学素子のエッジまで延びる第2ゾーンとを含む。第1ゾーンは、位相シフト機構によって分離された内側領域および外側領域を含み、位相シフトは、内側領域および外側領域から外向きに延びるリッジを含む。US7073906B1は、非対称回折格子を用いたゾーンで同心円に配置された中央非球面単焦点ゾーンを開示する。
【0021】
ユーザが眼鏡に依存しない充分な視力を提供するレンズでは、遠視力、中間視力、近視力を提供する必要がある。明所条件では、小さい瞳孔が存在する場合、特に強い遠視力を備えた完全多焦点視力が望ましい。しかし、極めて狭い遠視力を提供するレンズの中央アパーチャが、ジオプタミスマッチのリスクを増加させる。遠視力の意図したパワーよりもわずかに強いパワーを提供するレンズの中央部分は、このリスクを減少させることになる。これは特に重要であり、遠視力の品質は、実際に白内障手術の臨床的成功を決定するものである。さらに、こうした分布は、以下に示すように、回折格子を用いて光を分割する場合に、より高い全体光効率を提供することも可能である。周知のピンホール効果は、小さい瞳により高い焦点深度を提供させるため、わずかな瞳での小さなパワーシフトは、視覚に対して負の影響を与えない。レンズの極めて小さいアパーチャについて支配的なパワーを正確に選択できることも重要である。様々なオートレフラクトメータ技術が、様々なアパーチャで術後パワーを測定する可能性があり、1mmの支配的パワーだけを変化させて、特定のオートレフラクトメータ技術に適合する必要性を生じさせる可能性がある。
【0022】
わずかに大きい瞳を備えた薄明条件では、ピンホール効果は、遠視力に加えて強い近視力を提供するために眼鏡無依存性を意図した多焦点レンズにとって極めて重要になるという効果ではない。完全な眼鏡無依存性では、中間視力も要望されている。
【0023】
調節反射に起因して、人間の瞳は、暗所環境においても、近くの物体を見たときに収縮する。このため大きい瞳で近視力のために集光された光は、生理学的には使用できない。中間視力は、この問題によってあまり悩まされていないが、バランス上、大きいアパーチャについて近視力に向かう光の減少は、中間視力の減少よりもはるかにより重要である。この原理に従って設計することは、技術的な光効率に加えて、光の生理学的効率を確保する。
【0024】
従って、小さいアパーチャについて支配的な光学パワーの正確な配置を可能にし、そして入射光の生理学的効率も確保するためにアパーチャのある範囲に渡って適切に調整されたエネルギー分布を可能にする方法で、極めて高い光効率を含む、対称回折格子の利点を利用する改善された眼科レンズのニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の最初の目的は、屈折ベースラインおよび光軸を含み、少なくとも3つの焦点を提供し、これらのうちの1つがユーザに遠視力を提供する、眼科多焦点レンズを提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、少なくとも第1部分および第2部分を有し、これらの部分は光軸周りに同心円状に配置され、第1部分は最も内側にある、眼科多焦点レンズを提供することである。
【0027】
本発明の更なる目的は、第2部分と組み合わせた、少なくとも3つの焦点を提供する対称型回折格子を備える眼科多焦点レンズを提供することであり、前記回折格子の0次数は、第2部分の光学パワーに追加し、一方、第1部分は、設計波長について意図した遠視力パワーと中間視力パワーの間にある、得られる支配的なパワーを有する。
【0028】
本発明の更に他の目的は、眼科多焦点レンズを提供することであり、前記レンズは、増加した回折効率と、対称正弦波回折格子を用いた光レンズのより解剖学的に正確な使用とを組み合わせる能力を提供し、エネルギー分布は、各アパーチャについて適切に適合される。
【0029】
本発明の更に他の目的は、保持された効率を備えた第2部分の屈折ベースラインとは異なる屈折パワーを有するレンズ部分において、レンズのインビボ(体内)測定を可能にする眼科多焦点レンズを提供することである。
【0030】
本発明の更に他の目的は、回折効率が大幅に改善される最適化された多焦点性を備えた眼科多焦点レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
第1態様では、遠視力のための焦点を少なくとも含む眼科多焦点レンズが提供される。レンズは、レンズ本体の表面の一部に横断してレンズ本体の光軸から半径方向に同心円状に延びる対称(即ち、光学パワーが0次数の周りに対称に整列している)回折格子を含む光透過性レンズ本体を有する。レンズは、少なくとも屈折ベースラインと、少なくとも第1部分および第2の部分を備え、これらの部分は光軸の周りに同心円状に配置され、第1部分の中央にある凹形状が屈折ベースライン上に重畳され、意図した遠視力パワーと中間視力パワーの間にある光学パワーを提供し、第2部分では、屈折ベースライン上に重畳された対称回折格子が、設計波長について、対称回折格子の0次数が屈折ベースラインのパワーと、レンズの意図した中間パワーと実質的に一致するように構成される。
【0032】
本開示は、対称回折格子を備えた多焦点レンズの中央領域の支配的なパワーを慎重に制御することにより、さらに、前記対称回折格子の各リッジの正確な形状および高さを慎重に制御することによって、近視に提供される相対エネルギーが、2mmおよび4.5mmのアパーチャよりも約3mmのアパーチャについてより高く、5mm以上の相対的近視エネルギーが、中間エネルギーより下方に抑制され、極めて高い回折効率およびより高い生理学的光効率を提供するレンズを製作することが可能である、という洞察に基づいている。
【0033】
上述したように、鋭いエッジのない連続的で滑らかなプロファイルを有する回折レンズは、入射光がレンズを通過する経路の不均一性に起因して、グレアまたは散乱の影響をあまり受けなくなり、また、例えば、鋸歯型やバイナリ型のグレーティングやレリーフと比較して、計算したプロファイルに従って製造するのがより容易でありつつ、ハローをあまり発生しない。いずれの場合でも、より高い回折効率により、少ない迷光になる。ダイヤモンド旋盤または機械加工の類似の形態をベースとした製造技術では、滑らかなプロファイルが、例えば、鋸歯プロファイルやバイナリプロファイルなどの鋭いエッジを持つプロファイルよりも信頼性が高く、製造するのが素早くかつ安価になる。
【0034】
例えば、微細加工やダイヤモンド旋盤による眼用レンズの製造において重要なステップは、切削痕を除去するための機械研磨である。眼内レンズのための品質要件および医療規制に準拠するためには、目に見える全ての切削痕を除去することが必要である。しかしながら、極めて低レベルの切削痕を得るには、高価な機械と低速の切削を必要とする。レンズを切削後に研磨する場合、機械は、高速に作動することが許容できる。回折レンズの高さプロファイルにある鋭い角、コーナーまたはエッジは、機械研磨のプロセスを複雑にする。レンズの高さプロファイルの観点で機械研磨が可能でない場合は、有害な化学薬品を必要とする化学研磨を利用するか、または、研磨を必要としないでレンズを製造する必要がある。後者は、より低い歩留まりおよびより高価な機械の一方または両方のため、製造コストが大幅に増加する。
【0035】
本開示に係る滑らかな回折幾何形状は、研磨を可能にし、従って、これらの高さプロファイルに鋭い遷移を有するレンズと比較して、歩留まりの著しい増加をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0036】
添付図面は、多焦点無水晶体回折多焦点レンズを例示する目的でのみ与えられ、先行技術に対する利点が上記のように概説され、以下に簡単に説明される。
【0037】
図面は、請求項囲で特定された保護の範囲を制限することを意図しておらず、しかも本発明の説明における技術的な開示に頼ることなく、前記請求項で特定される範囲を解釈するために単独で参照されるべきではない。
【0038】
【
図2a】この分野で知られている典型的な眼科多焦点無水晶体眼内レンズの正面図および側面図をそれぞれ示す。
【
図2b】この分野で知られている典型的な眼科多焦点無水晶体眼内レンズの正面図および側面図をそれぞれ示す。
【
図3】既知の周期性光透過性円板状レンズ体の光学的動作の概略図を示す。
【
図4a】この分野で知られている対称多焦点格子を備えた単焦点中央ゾーンを有するレンズを示す。
【
図4b】この分野で知られている対称多焦点格子を備えた単焦点中央ゾーンを有するレンズを示す。
【
図5a】本発明の一実施形態による眼科多焦点無水晶体眼内レンズの正面図および側面図を示す。
【
図5b】本発明の一実施形態による眼科多焦点無水晶体眼内レンズの正面図および側面図を示す。
【
図6a】本発明の一実施形態による、調整されたパワーを備えた回折格子および負パワー中央ゾーンを有するレンズプロファイルを示す。
【
図6b】本発明の一実施形態による、調整されたパワーを備えた回折格子および負パワー中央ゾーンを有するレンズプロファイルを示す。
【
図7a】本発明の一実施形態による、調整されたパワーを備えた回折格子および中央ゾーンを有するレンズプロファイルを示す。
【
図7b】は、本発明の一実施形態による、調整されたパワーを備えた回折格子および中央ゾーンを有するレンズプロファイルを示す。
【
図7c】本発明の一実施形態による、調整されたパワーを備えた回折格子および中央ゾーンを有するレンズプロファイルを示す。
【
図8】眼内の杆体および錐体の個々の活性化特性を示す。
【
図9】異なる眼および条件についての点像強度分布関数(PSF)を示す。
【
図10a】開示した本発明の一実施形態による、実質的に凹状で、遠視力を極めて強く促進する中央ゾーンを使用するレンズを示す。
【
図10b】開示した本発明の一実施形態による、実質的に凹状で、遠視力を極めて強く促進する中央ゾーンを使用するレンズを示す。
【
図10c】開示した本発明の一実施形態による、基礎となるリニア格子回折単位セルおよびそれらの個々の回折効率の例を示す。
【
図10d】開示した本発明の一実施形態による、基礎となるリニア格子回折単位セルおよびそれらの個々の回折効率の例を示す。
【
図10e】開示した本発明の一実施形態による、基礎となるリニア格子回折単位セルおよびそれらの個々の回折効率の例を示す。
【
図11a】開示した本発明の一実施形態によるレンズを示す。
【
図11b】開示した本発明の一実施形態によるレンズを示す。
【
図12a】開示した本発明の一実施形態によるレンズを示す。
【
図12b】開示した本発明の一実施形態によるレンズを示す。
【
図13a】本発明の一実施形態に従って製作されたレンズについてのエネルギー分布の可能性のある設計目標を示す。
【
図13b】本発明の一実施形態に従って製作されたレンズのシミュレーションしたエネルギー分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
10 眼
11 角膜
12 瞳孔
13 天然水晶体
14 網膜
15 後部空洞
16 前眼房と後眼房
17 遠視力
18 中間視力
19 近視力
20 光軸
29 光軸
30 眼科レンズ
31 レンズ本体
32 ハプティック
33 中心部分
34 前面
35 後面
36 回折格子
37 光学直径
38 外径
39 中心厚
40 レンズ
41 レンズ本体
42 回折格子
43 DOE
44 受光面
45 中心部分
46 一次光線
47 二次光線
48 光軸
50 多焦点無水晶体眼内レンズ
51 中央レンズ部分
52 対称多焦点格子
53 周辺レンズ部分
54 前面
55 後面
56 レンズ本体
150 レンズ本体表面
151 対称多焦点回折格子
152 単焦点中央ゾーン
153 遷移ポイント
154 中間視力焦点
155 遠視力焦点
156 近視力焦点
【0040】
眼科回折三重焦点レンズの大部分は、鋸歯状プロファイルを使用する。三重焦点を達成するために2つの二重焦点回折レンズの鋸歯状プロファイルを組み合わせることは、この分野で知られている。この結果、0次数を基準として非対称に配置された使用可能な次数を備えた回折レンズが得られ、例えば、三重焦点レンズは、次数0、+1、+2または0、+2、+3次数を使用することがある。こうした回折格子は、以下では非対称格子として参照される。
【0041】
回折格子の1つの重要な特性は、対称回折格子と非対称回折格子との区別である。対称性または非対称性を多焦点眼科レンズに帰する場合、検討対象は、どの次数を使用するか、または有用にするかである。対称回折レンズは、0次数を中心に対称な方法で次数を利用する。なお、対称回折格子は、これらの次数における光分布の強度ではなく、どの次数を利用するかによって定義される。いくつかの対称回折レンズは、例えば、+1次数と-1次数との間の光強度に著しい差が存在するように、即ち、不均等な光分布を有するように調整されることがある。そのように調整された回折格子は、依然として対称な回折格子と見なされる。この文書で説明している最も対称な格子は、奇数の連続した次数および0次数を使用しており、例えば、次数-1、0、+1を使用する三重焦点レンズのために使用される格子、または、次数-2、-1、0、+1、+2を利用する五重焦点レンズのための格子である。しかしながら、0次数を使用しない格子も対称と考えることができる。詳細には、4つの次数-2、-1、+1、+2を使用する格子の対称的なケースは、ある場合には眼科レンズにとって有用となり得る。
【0042】
三重焦点レンズを含む奇数の焦点を備えた回折多焦点レンズにとって最も有用な強度分布のための可能性のある最高の回折効率は、0次数を中心として対称に配置された使用可能な次数を備えた滑らかな正弦波状表面によって提供される。
【0043】
回折面を比較すると、重要な因子は回折効率である。回折効率は、光学パワーがどれだけ所望の回折次数に向けられるか、または、特に回折レンズについて言うと、光学パワーがどれだけ所望の焦点に向けられるかの尺度である。二重焦点レンズでは、レンズ本体の表面は、2つの異なる距離で可能な限り良好な視力を提供するように最適化されており、可能性の最高の回折効率は、位相整合フレネルレンズの原理を使用することによって到達され、これは、鋸歯状またはギザギザ(jagged)状の回折パターンを使用する。文献("Refractive and diffractive properties of planar micro-optical elements", by M. Rossi et al., in Applied Optics Vol. 34, No. 26 (1995) p. 5996-6007)が参照され、この文献は参照によりここに組み込まれる。
【0044】
この分野は、良好に開発された理論を有し、回折レンズに利用できるため、リニア位相格子を最初に検討することはしばしば好都合である。各次数にとって等しい強度分布を備えた三重焦点リニア格子の特別な場合、最適解は、文献("Analytical derivation of the optimum triplicator", by F. Gori et al., in Optics Communication 157 (1998), p. 13-16)において鋭いエッジ無しの構造であることが詳細に示されており、この文献は参照によりここに組み込まれる。
【0045】
文献("Theory of optimal beam splitting by phase gratings. I. One-dimensional gratings", by L. A. Romero and F. M. Dickey, in Journal of the Optical Society of America Vol. 24, No. 8 (2007) p. 2280-229)は、参照によりここに組み込まれ、これをより一般的に開示しており、奇数の次数への均等分割のための最適な格子が連続プロファイルを有することを少なくとも証明している。この後者の文献は、任意の所定の目標次数セットおよびそれらの目標次数間の任意の所定の強度分布のための最適なリニア位相格子を見つける数学ツールを提供する。最適な格子は、特定の強度分布について最高の回折効率を備えたリニア回折格子として定義される。文献(Gori et al.)および文献(Romero et al.)は、ビームスプリッタを生成する意図だけを備えたリニア位相格子を議論していることに留意する。リニア格子のx軸を回折レンズのr2空間として処理することによって、こうしたリニア位相をレンズに調整できる。文献(Romero, Dickey)による研究からの理論を用いて、対象の次数および個々の次数の相対強度分布を定義し、それらの入力値に対する最適(最も効率的)格子の方程式を見つけることが可能である。さらに、連続的な次数セットを備えた少なくとも対称格子は、比較的均等な強度分布について不連続性なしの最適な格子を有することを示している。不連続的な次数セットを備えたいくつかの対称格子もまた、不連続性なしの格子を有する。文献(Romero, Dickey)の研究では、均等な強度分布を備えた格子だけが示されているが、非均等な分布を備えた、提供された理論格子を使用することも文書化されている。これは、リニア位相格子を最適化する特定の方法であることに留意すべきである。さらに、リニア位相格子の最適化によっては考慮されない、レンズについて特定の効果があるため、本発明に係るレンズを設計する場合、これらの効果を最適化することが好都合である。
【0046】
本発明に係るレンズの設計の1つの重要な部分は、所望の強度分布を提供するために一緒に使用できる不連続性なしの対称回折単位セルのセットを見つけることである。この分野では、対称回折レンズを計算して調整する様々な方法がある。1つの方法は、上述し、そしてPCT/EP2019/080758に記載されるように、回折レンズに変換された最適化リニア格子を使用することである。対称回折格子をベースとしたレンズの1つの早い例は、文献(Golub et al., "Computer generated diffractive multi-focal lens" published in Journal of modern optics 39, no. 6 (1992): 1245-1251)に記載された7焦点レンズである。この続きとして、既に言及した文献Osipov2015研究、そして2012年に刊行された文献(Osipov et al. called “Fabrication of three-focal diffractive lenses by two-photon polymerization technique" published in Applied Physics A 107, no. 3 (2012): 525-529.)における追加の実施形態。これらの文献では、サイン(sinus)格子への変更によって製作された三重焦点対称レンズが開示されている。これらのOsipov2015の研究では、1つの単位セルだけがレンズ毎に使用されるが、我々の知識を用いて、適切な適応レンズのための回折格子が、説明のように製作された変更サイン格子のセットから構築できる。異なる手法が、US5760871AおよびIL104316にも開示され、いわゆる非対称スーパーガウシアン式を使用して、不均一な強度分布を備えた三重焦点格子を設計している。こうした回折単位セルのセットが、適切な遷移ゾーンと共に使用して、この特許に係る適応レンズのための適切な回折格子を形成できる。さらに他の方法は、WO2020053864A1に記載されたものであり、Gerachberg-Saxton反復アルゴリズムを使用して、対称回折格子を備えた五重焦点(5つの焦点を有する)レンズの表面プロファイルを設計している。
【0047】
本発明に係るレンズは、少なくとも屈折ベースラインと、光軸の周りに同心円状に配置された少なくとも第1部分および第2部分とを含む眼科レンズである。そのため第1部分の中心にある凹形状が屈折ベースライン上に重畳され、遠視力と中間視力の意図したパワーの間にある光学パワーを提供し、第2部分では、屈折ベースライン上に重畳された対称回折格子が、設計波長について対称回折格子の0次数が、屈折ベースラインのパワー、そしてレンズの意図した中間パワーと実質的に一致するように構成される。
【0048】
提案している多焦点眼科レンズは、この分野で知られている課題に対処する。即ち、対称な多焦点回折格子が適用される限り、いくつかの課題は、単焦点中央ゾーン(遠視力のみを提供する)と、3mmのアパーチャについて最適化された固定の回折効率を備えた多焦点格子の組み合わせなど、それ自体を提示する傾向があり、この分野で知られているように、アンバランスのレンズをもたらし、近視力は、大きいアパーチャについて特に過度に強いものになる。こうした解決すべき技術的困難性の他の1つは、光学パワーを備えた厳密に単焦点の中心ゾーンが、遠視力を担当する回折焦点と正確に一致する場合は、全体的な効率の減少をもたらすことである。
【0049】
上述した困難さにもかかわらず、強い遠視力が、白内障手術の成功を確認するための典型的な尺度である。これは、強い遠視力が全てのアパーチャについて重要であるためである。
【0050】
このように、開示した本発明は、具体的には、対称多焦点回折格子を含む適応多焦点レンズの作成に関する。ここでは、人間の眼の機能的な光利用の尺度として適応性が定義される。眼は、ピンホール効果に起因して、瞳サイズが小さいほど、大きな被写界深度を有する。瞳サイズは、瞳孔対光反射に依存するだけでなく、調節反射にも依存し、これは、より近接した物体に焦点を合わせつつ、瞳が十分に拡大しないようにする。また、開示した本発明は、この課題に対処するものであり、前記多焦点レンズの中央部分のパワーを調整して、基本的に遠視力を提供する内側1mmアパーチャを維持しつつ、その効率を増加させ、よって白内障手術の成功率を増加させている。これは、以下に詳述する。
【0051】
文献(Kanellopoulos and Asimellis, titled "Clear-cornea cataract surgery: pupil size and shape changes, along with anterior chamber volume and depth changes. A Scheimpflug imaging study." Clinical Ophthalmology (Auckland, NZ) 8 (2014): 2141)によれば、白内障手術は、平均で0.27mmの明所瞳を減少させる。さらに、光学的な検査によって測定できるため、医療文献で報告された瞳サイズはしばしば見かけの瞳孔である。しかしながら、より関連する瞳は、天然レンズのより近くに位置する解剖学的瞳である(有水晶体眼)。文献(Kanellopoulos and Asimellis)の研究から、見かけの瞳は、眼の光学系の入射瞳とみなすことができ、一方、解剖学的瞳はアパーチャ絞りである。上述した研究のモデルによれば、見かけの瞳は、解剖学的瞳より13.1%大きい。このことは、当然、個体間で、そして環境条件間で変化することになる。本明細書で参照されるアパーチャは、眼の物理的アパーチャであり、具体的には、無水晶体および偽水晶体眼のものである。医療文献では、自然に生ずる瞳サイズはしばしば2mm~8mmであるが、IOLsでは、関連するアパーチャサイズは、多くの場合、せいぜい5mm直径であり、多くても6mmである。
【0052】
瞳孔対光反射に加えて、瞳も調節反射に応答する。調節反射は、近くの物体への合焦の応答であり、その効果の1つは、瞳を絞ることである。この後者の効果のため、暗所条件においても瞳があまり大きくならず、近くの物体に焦点を合わせている。このため大きい瞳で眼内レンズによって提供される追加の近視力は、ほとんど無駄になり、理想的には提供されない。
【0053】
小さい瞳サイズでは、ピンホール効果を考慮することが重要である。瞳の収縮は、レンズの焦点深度を増加させ、わずかな瞳では、この効果は、一般には、全ての距離において比較的良好な視覚に単一の焦点のみを提供するレンズを提供する。多くの最新の多焦点で焦点深度拡張型(EDOF)レンズは、レンズによって提供される光が中間視力または近視力によって支配されることによって、この効果を利用する。引数(argument)は、これがレンズの中心に設けられている場合、わずかなアパーチャでは大きな被写界深度のため、明所条件でユーザにとって十分に作動するが、一方、近視力および/または中間視力に提供されるこの強度は、特に、わずかに大きい瞳サイズで薄明条件について使用できる。半径が増加するとパワーが減少する、中央領域でのより高いパワーの非回折の例が、US10028825に開示されており、いわゆる連続パワープログレッシブ眼内レンズが、急激な段差を使用せずに変化するパワーを導入する。これは許容できるが、理想的な解決策ではない。優れた遠視力が、IOLの最も重要なパラメータとみなされており、遠視力の質が実際に白内障手術の臨床的成功を決定するものであるためである。このため、IOLが全てのアパーチャについて強い遠視力を提供することが重要であり、極めてわずかな瞳については可能性のある例外である。さらに、眼科医はしばしば、オートレフラクトメータが術後眼の遠視力を測定することを予測しており、レンズの遠視パワーから過剰に除去された中央パワーは、白内障手術成功の評価において混乱をもたらすことがある。しかしながら、極めて小さいアパーチャでは、より強いジオプタに向かう小さいパワーシフトが、いわゆる着地ゾーンまたはスイートスポットを増加させて、臨床的成功の機会を増加させるために使用できるが、理想的なケースでは、このシフトは、中間加算(約1.5Dから2.2Dの間)までの全ての方法に至るほどは大きくすべきできなく、ほぼ近視加算(約3Dから4.4Dの間)までは大きくすべきでない。中心1mmのアパーチャにおける理想的なシフトは、1.2D未満とすべきであり、いずれの場合も1mmでの支配的な焦点は、意図した中間パワーのもの未満にすべきである。ここで、1mmのアパーチャでは、通常は、開発された多焦点性は存在しないことに留意すべきである。測定された強度またはMTF曲線は、1つの支配的なピークを有することになる。
【0054】
一方、近視パワーおよび中間パワーの加算は、多くの範囲で利用可能な視力を可能にするために、薄明条件について重要である。通常、眼鏡を使用せずに良好な読み取り能力を提供するために、近視力を中間視力よりも強く維持することが望ましい。
【0055】
そして、望ましいものは、多焦点レンズであり、多焦点性は多焦点対称格子によって提供され、そしてわずかな瞳(例えば、1mm)では、支配的焦点は、意図した遠視パワーよりもわずかに強い光学パワー、または、中間視力の意図したパワーよりも少なくとも弱い光学パワーを備えた遠視力に対応すべきであることと要約できる。2mmアパーチャでは、良好に開発された多焦点性(少なくとも3つの焦点)が存在すべきである。約3mmの瞳サイズでは、理想的な回折多焦点レンズは、強い遠視力、強い近視力、および多少の中間視力を提供すべきである。4.5mmより大きい瞳については、近視力に向けられたエネルギーが、眼によって充分に使用できない。このため近視力に向けられた追加エネルギーは、最小化または小さくすべきであり、4.5mm瞳について近視に向かうエネルギーは、中間および近視の両方よりも小さくすべきである。
【0056】
図1は、本開示を説明する目的のため、人間の眼10の生体構造を簡略化した方法で示す。眼10の前部は、角膜11、瞳12を覆う球状の透明組織によって形成される。瞳12は、眼10で受光される光の量を制御する眼10の適応可能な受光部である。瞳12を通過する光線は眼10の内側にある、天然の水晶体13、小さな透明で柔軟性のあるディスクで受光され、眼10の後部にある網膜14上に光線を集光させる。網膜14は、眼10による画像形成に役立つ。後房15、即ち、網膜14とレンズ13との間の空間は硝子体液、透明かつゼリー状の物質で充填される。前後房16、即ち、レンズ13と角膜11との間の空間は、房水、透明で水様性の液体で充填される。参照符号20は、眼10の光軸を示す。
【0057】
眼10による鮮明で明瞭な遠視野では、レンズ13は、比較的平坦になる必要があり、一方、鮮明で明瞭な近視野では、レンズ13は、比較的湾曲している必要がある。レンズ13の曲率は、人間の脳から順に制御される毛様筋(不図示)によって制御される。健康な眼10が、遠視野と近視野との間で角膜11の前方の任意の距離にある画像の明瞭かつ鮮明な視野を提供する方法で、レンズ13を遠近調節し、即ち、制御できる。
【0058】
眼科レンズまたは人工レンズは、レンズ13と組み合わせて眼10による視力を矯正するために装着され、この場合、眼科レンズは、角膜11の前方に位置決めされ、あるいはレンズ13を交換する。後者の場合、無水晶体眼科レンズとしても示される。
【0059】
多焦点眼科レンズは、種々の距離について眼10による視力を強化または矯正するために使用される。例えば、三重焦点眼科レンズの場合、眼科レンズは、
図1中の参照符号17,18,19でそれぞれ示す遠視力、中間視力および近視力をしばしば含むほぼ3つの別々の距離または焦点において鮮明で明瞭な視界のために配置される。遠視力とは、入射光線が平行または平行に近い場合の光学用語である。これらの距離または焦点17,18,19にまたはそれらの近傍に配置された物体から発せられる光線は、網膜14に正しく焦点が合い、即ち、これらの物体の鮮明で明瞭な画像が投影される。焦点17,18,19は、実際には、それぞれ数メートルから数十センチメートルまで、数センチメートルまでの範囲にある焦点距離に対応できる。通常、眼科医は、遠焦点が患者を平行光で合焦可能にするように患者用のレンズを選択すし、普通の光学用語では、遠焦点が無限遠で合焦していることになる。眼科医は、患者を検査する際、通常、眼から40cmの距離で近視力を、66cmの距離で中間視力を測定するが、他の値も使用できる。
【0060】
眼科レンズが提供する補正量は、光学パワーOPと呼ばれ、ジオプタDで表される。光学パワーOPは、メートル単位で測定した焦点距離fの逆数として計算される。即ち、OP=1/f、ここで、fは、レンズから、遠視力17、中間視力18および近視力19についての個々の焦点までの個々の焦点距離である。例えば、複数レンズのカスケード(直列)の光学パワーは、構成レンズの光学パワーを加算することによって求まる。健康な人間のレンズ13の光学パワーは約20Dである。
【0061】
図2aは、典型的な眼科多焦点無水晶体眼内レンズ30の上面図を示し、
図2bは、レンズ30の側面図を示す。レンズ30は、光透過性の円形ディスク状レンズ本体31と、レンズ30を人間の眼内に支持するためにレンズ本体31から外向きに延びる一対のハプティック(haptic)32とを備える。これは、ハプティックの一例であり、多くの既知のハプティック設計が存在することに留意する。レンズ本体31は、中心部33と、フロント面または前面34と、リア面または後面35とを含む両凸形状を有する。レンズ本体31はさらに、前面34および後面35を横切って中心部33の中心を通って延びる光軸29を含む。当業者は、レンズ30の光学特性を参照する目的のために光軸29が仮想軸であることを理解されよう。凸レンズ本体31は、実際の実施形態では約20Dの屈折光学パワーを提供する。
【0062】
図示した実施形態において、レンズ本体31の前面34には、レンズ本体31の前面34の少なくとも一部に渡って、中心部33を通る光軸29に対して同心円状に延びるリングまたはゾーンからなる周期的な光透過性回折格子またはレリーフ36が配置される。回折格子またはレリーフ36は、回折焦点のセットを提供する。図示していないが、回折格子またはレリーフ36は、レンズ本体31の後面35または両方の面34,35に配置されてもよい。実際、回折格子36は、同心円状または環状リング状のゾーンに限定されないが、同心の楕円形状または長円形状のゾーン、たとえば、より一般的には任意のタイプの同心回転ゾーン形状を含む。
【0063】
実際、レンズ本体31の光学直径37は、約5~7mmであり、ハプティック31を含むレンズ30の総外径38は約12~14mmである。レンズ30は、約1mmの中心厚39を有してもよい。眼科多焦点コンタクトレンズおよび眼鏡または眼鏡レンズの場合、レンズ本体31でのハプティック32は設けられないが、レンズ本体31は、平凸形状、両凹形状または平凹形状、または凸形状と凹形状の組合せを有してもよい。レンズ本体は、疎水性アクリル、親水性アクリル、シリコーン材料、または無水晶体眼科レンズの場合に人間の眼に使用するための他の適切な光透過性材料のいずれかを含んでもよい。
【0064】
図3は、両凸光透過円形ディスク状レンズ本体41を含むレンズ40の既知の周期的光透過回折格子またはレリーフ42の光学的動作を概略的に示す。このタイプのレンズは、屈折パワーと回折パワーの組み合わせもハイブリッドレンズとも呼ばれる。レンズ40は、レンズ本体の半径方向での断面図で示される。回折格子またはレリーフ42は、複数の繰り返しの隣接配置されたプリズム状の透明な回折光学素子DOE43を含む。DOE43は、レンズ本体41の中心部45の周りの同心円ゾーンで、
図2aに示す格子またはレリーフ36のリングまたはゾーンに類似した方法で延びている。説明目的のために、回折格子42のDOE43は、直線的または湾曲した傾斜受光面44などの連続的な傾斜受光面44を含む、周知のギザギザ(jagged)型または鋸歯型エレメントとして示される。DOE43が2つの高さの間で交互に行き来し、レンズ本体41の半径方向に離隔している格子またはレリーフは、バイナリ型のレリーフ(不図示)と呼ばれる。DOE43の繰り返し周期またはピッチは、レンズの中心または光軸から半径方向に単調に減少し、半径距離の2乗で変化する。
【0065】
ピッチは、屈折率、設計波長、および第1回折次数数の光学パワーに依存する。ピッチは、レンズを通って第1回折次数の焦点までの光路差(OPD)が、周期当たり正確に1つの波長の差を有するように決定される。回折格子の周期性を示すために、回折レンズプロファイルを半径の2乗に対してプロットすることが多い。このようにプロットした場合、周期(格子ピッチ)は等距離になり、r2空間における周期ピッチは、|2λf|である。ここで、λは設計波長、fは第1回折次数の光学パワーの逆数である。
【0066】
この分野では、レンズの一方の面は純粋に屈折性であり、他方の面は屈折ベースライン上に重畳された回折格子を有する。屈折ベースラインは、例えば、球面であってもよく、あるいは、ある種の非球面形状を有していてもよい。回折パターンは、屈折ベースライン上に追加され、一般にレンズの2つの面のいずれかに適用してもよい。従って、回折パターンをある特殊な特徴を備えた屈折面と組み合わせる場合、それらが同じ面に追加されても、または一方が第1面に追加され、他方がレンズの第2面に追加されても、一般にはあまり重要ではない。同時に、2つの回折パターンが、一方の面に重畳するすることによって、または、それらを別々の面に重なるように追加することによって組み合わせてもよい。 本発明に関する開示では、2つのレンズ構造を組み合わせることは、両方の可能性を可能にするものと常に理解されるべきである。特定の回折次数のレンズの光学パワーは、屈折ベースパワーとその回折次数の光学パワーとの加算によって計算できる。
【0067】
格子42およびレンズ本体41を通過する入射光線または一次光線46は、それぞれ回折および屈折され、出力光線または二次光線47を生じさせる。屈折し回折した光線47、即ち、二次光線は、光波47の建設的干渉に起因して、レンズ40の光軸48において複数の焦点を形成する。特定の焦点においてレンズ本体41から到達する光波47の間の光路差がその波長の整数倍である場合、建設的干渉が生じ、即ち、光波は同相であり、その振幅は増強するように加算する。レンズ本体41からの光波47を干渉させることによって進行する光路長の差が波長の半分の奇数倍である場合、ある波の山が他の波の谷に出会って、光波47は互いに部分的または完全に消滅し、即ち、光波は位相がずれており、レンズ本体41の光軸48に焦点を生じさせない。
【0068】
レンズ本体41から種々の距離にある建設的干渉のポイントは、一般に回折次数と呼ばれる。レンズ40の曲率の屈折動作に起因する焦点に対応する焦点は、次数ゼロ、0で示される。他の焦点は、個々の焦点が、図面の紙面内で見たときにゼロ次数の左側、即ち、レンズ本体41に向かう方向のある距離で発生した場合、次数+mおよび-m(mは正の整数値)、即ち、m=+1、+2、+3などと呼ばれ、そして、個々の焦点が、図面の紙面内で見たときにゼロ次数の右側、即ち、レンズ本体41から遠ざかる方向のある距離で発生した場合、次数m=-1、-2、-3などと呼ばれる。例えば、
図3に示すように。
【0069】
いくつかの刊行物およびハンドブックにおける正および負の回折次数の上記割り当ては、0次に対して相対的であるその位置に関して逆でもよいことに留意されたい。これは、例えば、刊行物Romero et alにおける理論を直接に適用した場合もここではそうなる。別段に示していなければ、本明細書は
図3に示すような慣例に従う。
【0070】
回折レリーフ42は、レンズ本体41から様々な距離に焦点を提供するように設計できる。DOE43の周期的な間隔またはピッチは、破壊的および建設的干渉のポイントがレンズの光軸48で生じる場所、即ち、光軸48での回折次数の位置を実質的に決定する。DOE43の形状および高さにより、建設的干渉のポイント、即ち、特定の回折次数で提供される入射光の量が制御される。
【0071】
ゼロ次数の両側で規則的に離隔した回折次数を提供する回折格子またはレリーフ42の場合、格子またはレリーフは対称光波スプリッタまたは回折格子と呼ばれ、入射光線46は、ゼロ次数に対して対称に配置された次数に回折または分割される。+1,+2,-3,-5など、回折次数の不規則な間隔を生成する格子またはレリーフは、非対称回折格子と呼ばれる。0次数および+1次数または、0次数、+1次数および+2次数で使用可能な次数を生成する回折格子の普通の場合もまた非対称回折格子である。
【0072】
人間の眼10の網膜14での画像形成に寄与しない焦点または次数で集光または回折される光波(二次光線47)の光エネルギーは失われ、レンズ40の全体効率を減少させ、そしてこうしたレンズを用いて人間が認識する画像の品質を減少させる。実際、レンズを最適に設計するために、例えば、
図1に示すように、人間の眼に近視力、中間視力および遠視力を提供または矯正するための焦点が事前に設定可能であれば好都合である。これらの予め設定された焦点において入射光線46から受ける光エネルギーの全体効率を最大化する回折格子42が設けられる。
【0073】
科学文献において、予め設定されまたは目標の回折次数での光分布の全体効率を最適化する回折格子が、これら全ての目標次数の正規化した光エネルギーの合計として定義される全体効率ηまたは性能指数が最大となる目標回折次数を発生する、リニア位相のみの関数または位相プロファイルを決定することから見つかる。そして、これらの回折格子は、r2空間において等距離の周期を有するように引数を調整することによって、レンズに整形できる。
【0074】
当業者は、レンズ本体41が、平凸、両凹または平凹形状、ならびに凸状および凹状の形状または曲率の組合せ(不図示)を含んでもよいことを理解するであろう。
【0075】
図4aと
図4bは、単焦点中央ゾーンと対称多焦点格子とを組み合わせることによって、PCT/EP2019/080758に係るレンズおよび前記レンズの機能性を示す。
図4aは、一例として、本開示に係る三重焦点眼科レンズの他の実施形態の高さプロファイルまたは振幅プロファイルを、単位mmで表される半径方向距離rの関数としてリニアスケールに沿って示す。
図15aに示す眼科レンズの実施形態の振幅プロファイルまたは高さプロファイルは、レンズ本体150の表面を含み、さらに参照符号152および回折格子151で示す単焦点中央ゾーンを含む。レンズ本体の中心を通る光軸は、半径位置r=0にあると想定され、一方、光軸から外向き方向に測定される半径方向距離rは、縦軸に沿って単位mmで表される。符号160は、
図2aと
図2bに示すように、レンズ本体30の前面34の外周を参照する。中央ゾーン152は単焦点であり、この例では、回折格子151の焦点のものと一致するパワーを有するように配置される。
【0076】
遷移ポイント153において、光軸から約0.5mmの距離におけるレンズ本体の半径方向位置において、単焦点中央ゾーンの連続振幅プロファイルh(r)152は終了し、回折格子の対称多焦点回折格子プロファイルH(r)151に連続している。図示した実施形態では、遷移ポイント153は、レンズ本体の表面150にある。
【0077】
この例では、レンズの設計波長λを550nmと仮定し、レンズ本体の屈折率nを1.492に設定し、レンズ本体を囲む媒質の屈折率n_mを1.336と仮定する。
【0078】
図4bは、
図4aのレンズの強度シミュレーションを4つの異なるアパーチャサイズ、1mm、2mm、3mm、および4.5mmについて示す。アパーチャまたは瞳は、レンズのダブル半径に対応するものとする。エネルギーは、縦軸に沿って相対スケールで示され、各アパーチャについて最大数は1に設定される。コンピュータシミュレーションの光強度分布は、
図2aと
図2bに示すタイプの眼科レンズの両凸レンズ本体を想定する。それぞれ0次数焦点を20ジオプタDとし、近視力および遠視力用の焦点を21.675Dおよび18.325Dとすることをそれぞれ目標とし、0次数に対して対称的に位置決めされるように設計されている。参照符号154は、中間視力の焦点を提供する回折次数0を参照し、参照符号155は、18.325Dでの遠視力の焦点を参照し、参照符号156は、21.675Dでの近視力の焦点を参照する。これらのピークの正確な位置がアパーチャとともに少し変化することがグラフで見ることができ、別の所で議論したように、この効果はレンズ設計において意図的に使用できる。
【0079】
このように構成されたレンズが、非常に小さな瞳でも良好な遠視力を提供する。このような設計では、2つの主要な欠点がある。第1に、単焦点中央ゾーンを回折格子に挿入することにより、回折効率を減少させる。第2に、このアーキテクチャを使用して完全視力(遠視力、中間視力および近視力を含む)を提供する場合、例えば、強度分布をバランスさせて、明所条件、例えば、3mmのアパーチャ直径のための所望の強度分布を提供することが必要である。三重焦点レンズでは、これは、通常、他の距離と比較してより強い遠視力を提供することを含むが、比較的強い近視力およびいくらかの中間視力を提供する。中心において強い遠視力を構成するために回折格子で必要とされる近視力に向かうスキュー(skew)のため、こうした設計は、より大きなアパーチャでは強すぎる相対近視エネルギーを導く。
【0080】
図5aは、本発明に従って作動する、眼科多焦点無水晶体眼内レンズ50の上面図を示し、
図5bは、レンズ50の側面図を示す。
図2に例示される先行技術との相違は、レンズの光学系である。レンズ本体56は、フロント面または前面54と、リア面または後面55とを含む両凸形状を有する。当業者は、いくつかの実施形態では、特定の用途に必要とされる屈折ベースラインに応じて、前面54および後面55の一方または両方が凹形状または平面状でもよいことを承知しているであろう。本発明の本願において、本開示に係るレンズ本体は、周辺レンズ部分53と、対称多焦点回折格子52と組み合わせた中央レンズ部分51とを含む。レンズは、設計波長において、対称多焦点回折格子52の回折次数のうちの1つがレンズの遠視力に寄与し、対称多焦点回折格子の0次はレンズの中間視力に寄与し、さらに他の回折次数は近視力に寄与するように構成される。いくつかの実施形態では、対称多焦点格子は3個の焦点を有し、他の実施形態では、焦点の数はより大きい奇数、例えば、5個、7個、または9個などである。中央レンズ部分51は、中間視力のパワーの遠視力のパワーとの間のどこかにある支配的な主要光学パワーを有する。
図5aと
図5bは、レンズの一方の側が純粋に屈折であり、他方の側が屈折ベースラインに重畳された回折格子を有するレンズを示す。
図3に関連して上述したように、これは、1つの可能な構成に過ぎない。例えば、回折格子を両側に分布させることが可能であり、または、回折格子を平凸レンズまたは平凹レンズの片側に重畳させることが可能である。回折パターンが屈折面との組合せとされている場合、それは、これらの意味のいずれかを有することができる。
【0081】
レンズのいずれの部分のための屈折ベースラインの形状または高さプロファイルは、球面などの単焦点レンズから知られている複数の連続屈折プロファイルの中から選択してもよく、あるいは、単焦点回折表面または非球面に基づいて選択してもよく、これらは、この分野で既知である単焦点レンズの最も一般的な既知の形状の間にある。単焦点回折表面とは、上述した位相整合フレネルレンズを指す。位相整合数を調整することによって、任意に広い切れ目なしの単焦点ゾーンが回折光学素子により生成できる。1つのレンズにおいて、異なるタイプの屈折表面を組み合わせることが可能であり、その結果、中央部分と周辺部分は、異なるタイプの屈折表面で構成される。屈折表面、回折表面の製造は、レーザ微細加工、ダイヤモンド旋盤、3D印刷のいずれか、あるいは、例えば、他の機械加工またはリソグラフィ表面加工技術によって実行できる。
【0082】
本発明は、
図4aの先行技術レンズの利点を維持し、回折効率を増加させ、人間の眼にとって使用可能な光量を著しく増加させるレンズを作成する方法を説明する。
【0083】
これは、レンズの2つの部分、レンズの中央部分、ほぼ1mmのアパーチャ内、および対称多焦点回折格子に対する変化を含む。同時にこれら2つの構造を変化させることによって、所望の特性に到達できる。
図6は、レンズプロファイルの中央部分に対するこうした可能性のある変化を説明する。
【0084】
多焦点レンズの1つの極めて重要な特性が、例えば、1mmアパーチャで測定したとき、極めて小さいアパーチャについての支配的な光学パワーの正確な配置であることが判る。
図4aは、中央ゾーンの光学パワーが対称多焦点回折格子の非ゼロ次数のうちの1つと完全に位置合わせするレンズプロファイルを示し、一方、
図6aでの中央ゾーンは、中間視力に使用される0次数に向かって僅かに調整される単焦点中央ゾーンを備えたレンズのプロファイルを示す。正確には
図4aのように、そしてPCT/EP2019/080758と同様に、いわゆる遷移ポイントが、図中の垂直破線で示すように、光軸(光軸は、この像をプロットしたレンズプロファイルの中心を垂直に通過する)に最も近いピーク付近にある。
【0085】
単焦点中央ゾーンが、屈折ベースラインに対してレンズの中心に局所的な負の光学パワーを追加する。先行技術では、このパワーは、遠視力を担当する回折次数の絶対パワーと同じにすべきことが禁止されていた。しかしながら、単焦点中央ゾーンにおける僅かなパワーのシフトを使用して、より良好な光分布を達成できる。中央ゾーンのパワーの小さな減少が、いくつかの好ましい効果を有することが判明した。(1)それは、正確に選択した場合、全体的な回折効率を、眼にとって使用可能な光の全ての部分に渡って増加させる。(2)それは、意図した遠視力よりも低いパワーを有する使用不可能な光の強度を減少させる。(3)視力のピークを広げることによって、それは、ランディングゾーンを広げ、例えば、1mmアパーチャにおいてパワーを選択する方法である。いくつかの構成では、それは、遠視力を提供する焦点のための非対称ピークを生成できる。特に、極めて小さいアパーチャについてより強いジオプタに向かう僅かなパワーシフトによるランディングゾーン(スイートスポット)の広がりは、臨床上の成功の機会を増加させるために重要となり得る。
【0086】
ここで提示する具体的な例に関して、
図6bは、4つの異なるアパーチャについてのシミュレーションした相対強度ピークを示す。パワーシフトは、望ましくないピーク(ここでは17D付近に存在する)を減少させ、その光の一部を0次(中間視)に方向転換する。遠視力を担当するピークは、18.35D付近に見られる。これらの特徴は、
図4bと比較でき、最も影響力のある変化は、
図6中の17D付近にある望ましくないピークの減退であり、このことは、より多くの光が眼にとって有用になることを意味する。
【0087】
図6aのレンズプロファイルは、
図4aのレンズのものと同じ回折格子を使用しているが、
図6aでは、中央ゾーンは、絶対的には0.275D小さい負のパワーを有する。
対称回折格子は、1.675Dの次数分離を提供するように構成される。一方、単焦点中央ゾーンは、1.4Dであるレンズの屈折ベースラインに対して負のパワーを追加するように配置された曲率を有する。
図6bにおいてシミュレーションしたように、小さい1mmアパーチャについての支配的なピークは、遠視力と一致する回折次数の公称パワーの1.675Dではなく、意図した中間ピークの下方の1.2Dである。これは、全体的な効率を増加させ、遠視力のために僅かにピークをブロードにする。それは、正しい方法で使用した場合、極めて重要であり、極めて有用なツールである。
【0088】
純粋に単焦点の形状が、これらのレンズの中央部分について選択されている。理由は、小さいアパーチャでは極めて支配的な遠視力を有し、全てのより大きいアパーチャでは他のものより少なくともより強い遠視力を有することが好都合であるためである。しかしながら、これを達成するために純粋に単焦点のゾーンを使用する必要はない。
図7a、
図7bおよび
図7cは、中央ゾーンの異なる選択を例示する。中央部分と、回折格子の第1ピークのピークの近くに位置する回折格子との間の遷移ゾーンを使用することは好都合である。
図7aは、こうしたレンズプロファイルを示す。
図7a中の垂直破線は、遷移ゾーンの中心に対応する遷移ポイントを指している。プロファイル中の急激な変化を回避するために、遠視力をまさに対象とする中央部分と、完全に三重焦点であり、近視力に僅かに有利になるように配置される対称回折格子の第1リッジとの間で滑らかな遷移が存在している。この具体例は、2つの高さの間に遷移を追加するのではなく、2つのゾーンの間にある滑らかな遷移がパラメータ空間で行われるようにしている。
【0089】
こうした中央部分は、純粋に単焦点ではなく、非球面レンズセグメントとして、変更された球面セグメントとして、または一緒に縫合されたいくつかの球面セグメントとして構築できる。さらに、それは、多焦点対称回折格子のための回折単位セルを計算するために使用される同じ手段により計算できる。こうした単位セルを作成するためのいくつかの異なる方法が、この文書においてより早期に論じている。後者の方法を使用する場合、遠視力を担当する回折焦点を強く促進し、そしてその単位セルの一部だけを使用する単位セルを作成するのがしばしば好都合である。遠視力に向けて斜め(skew)になるほど、純粋に単焦点のレンズ部分にますます似ているように製作できる。レンズの中心に最も近い山(crest)の正しい位置の近くにおいて、それは、実質的に異なる光分布を備えた回折格子に遷移される。この例のように、1.675Dの公称次数分離を備えたこのようなレンズでは、レンズ中心から数えて第1格子周期は、1.62mmのアパーチャ(中心から0.81mmの距離)で終わることに留意できる。これは、レンズの大きい部分であり、注意深く構成する必要があり、所望の光分布を達成するために1つ以上の特徴を必要とすることを示している。この場合、遷移ポイントが1.25mmのアパーチャにあり、
図7cに示すもののような単位セルを中央ゾーンについて使用した。この形状は、問題になっている単位セルの効率分布のプロットに見られるように、遠視力を極めて強く対象としている(ここでは単位セルの+1次と一致するように配置される)。しかしながら、2つの垂直破線間の部分は使用しなかった。代わりに、レンズの光軸は、単位セルの画像の右側の破線とほぼ一致している。そして、レンズの中央部分は、2つの垂直破線の間に示されていない単位セルのほぼ一部からなる。左側の垂直線付近では(単位セルの左肩に近い)、レンズデータは、パラメータ空間内の遷移によって作成される。当然、中央ゾーンと多焦点回折格子との間に急激な遷移を製作することも可能である。例えば、
図7aに例示されるように、中央ゾーンが本質的には単焦点であるが、回折格子により類似した形状を備え、これは、レンズの全体効率を増加させる。これにより、1mmアパーチャにおけるピークの全体効率および正確なパワーを調整する機会をさらに提供する。
【0090】
図7bは、4つの異なるアパーチャについてのシミュレーションした相対強度ピークを示す。対称回折格子は、1.675Dの次数分離を提供するように構成される。
図7bでシミュレーションしているように、小さい1mmアパーチャでの支配的なピークは、意図した中間ピークの下方の0.65Dだけである。17Dでの望ましくないピークは、
図4bおよび
図6bの対応するピークよりも明らかに小さく、
図7aのレンズについてより高い効率を示す。このより高い効率は、シミュレーションでも明らかに生じており、実際のレンズからの測定でも生じている。しかしながら、このグラフはまた、
図7aのレンズの主要な欠点、即ち、大きなアパーチャについて近視力に向けられた高いエネルギーを極めて明らかに記述している。4.5mmアパーチャでは、近視エネルギーは、ここでは中間視力のものよりはるかに高く、遠視力のものと強度が類似している。大きいアパーチャからのこの近視光の多くは、眼では使用できない。それで回折効率が高い場合でも、大きいアパーチャについての生理学的な光効率は、理想的なものよりはるかに低い。この問題を解決するためには、必要なものは完全に適応したレンズである。
【0091】
図8は、眼内の杆体(rod)および錐体(cone)の個々の活性化を示す。輝度レベルおよび瞳直径のため、明所条件では錐体が支配的であり、一方、薄明条件および暗所条件では杆体が支配的である。
【0092】
眼の網膜における錐体および杆体の特定の応答に基づいて、様々な照度レベル(cd/m2)、明所(明るい光)、暗所(低い光条件)および薄明(中間)下での主要な3つの眼機能モードが観察される。観察する物体、背景および周辺の輝度レベルは、網膜照度レベル(光強度)によって杆体および錐体の活動を決定する。従って、
図8に示すように、眼のスペクトル応答は、それが露光される照度レベルに直接関係し、影響を受ける。瞳サイズは、明所条件から薄明条件への輝度を適応させるために、大きい視野について計算された等価輝度のログ(log cd/m2)のリニア関数である(追加の情報は、文献(W. Adrian, "Spectral sensitivity of the pupillary system," Clin. Exp. Optom., vol. 86, no. 4, pp. 235-238, 2003)を参照できる)。
【0093】
瞳サイズは、偽水晶体眼における機能的視力レベルを達成する際に重要な役割を果たす。眼は、物体近接に応答して屈折変化を生成できないためである。瞳直径は、網膜ぼやけ領域および被写界深度を決定することによって、増加した偽調節(pseudoaccommodation)および近視力、そして読み取り性能のための主要な予測材料である(文献(E.Fonseca, P. Fiadeiro, R. Gomes, A. S. Trancon, A. Baptista, and P. Serra, "Pupil function in pseudophakia: Proximal miosis behavior and optical influence," Photonics, vol. 6, no. 4, 2019)を参照)。
【0094】
回折は、小さい瞳直径における支配的な制限因子であり、一方、大きなサイズでは、収差は、網膜ぼけにより大きく関与する(文献(A. Roorda and D. R. Williams, "The arrangement of the three cone classes in the living human eye," Nature, vol. 397, no. 6719, pp. 520-522, 1999)を参照)。
図9は、瞳サイズの関数として、眼の典型的な点像強度分布関数(PSF)を示す。研究は、回折(小さい瞳について像をぼかす)と収差(横方向解像度に影響する)との間のバランスは、個体に依存して、2mm~4mmの瞳のどこかにあることを示している(文献(A. Roorda et al., "What can adaptive optics do for a scanning laser ophthalmoscope?", Bull. Soc. Belge Ophtalmol., no. 302, pp. 231-244, 2006)を参照)。大きい瞳についてのより大きい収差は、なぜ近視力に向かう光が生理学的には利用できないかの他の理由でもある。
【0095】
図9は、様々な眼および条件についての点像強度分布関数(SPF)を示す。上の行は、収差のない眼の点像強度分布関数を示す。瞳サイズが増加すると、PSFのサイズが減少し、より高い解像度の可能性を提供する。下の行は、典型的な収差を備えた眼の点像強度分布関数を示す。この場合、特により大きい瞳サイズの場合、PSFをぼかしてしまう。
【0096】
さらに、瞳サイズは、様々な年齢について調節刺激位置の関数である(文献(J. F. Zapata-Diaz, H. Radhakrishnan, W. N. Charman, and N.Lopez-Gil,"Accommodation and age-dependent eye model based on in vivo measurements," J. Optom., vol. 12, no. 1, pp. 3-13, 2019)を参照)。最大瞳サイズと年齢との間の相関が、人生10年当りの距離瞳直径の-0.23mmの減少を表し、そのため50歳代の個体は、5.0mmの平均瞳を示し、80歳代の個体は、4.1mmの平均瞳を示す(文献(E. Fonseca, P. Fiadeiro, R. Gomes, A. S. Trancon, A. Baptista, and P. Serra, "Pupil function in pseudophakia: Proximal miosis behavior and optical influence," Photonics, vol. 6, no. 4, 2019)を参照)。
【0097】
例えば、白内障手術など、眼の外傷的な状況のため、拡張する瞳孔システム能力は減少することがある。従って、偽水晶体眼は、暗所、薄明、明所の静的照度条件下で、正常よりもあまり拡張しない(文献(H. K. Bhatia, S. Sharma, and P. Laxminarayana, "Ophthalmology and Clinical Research Report ClinMed International Library," pp. 2-5, 2015)、文献(A. J. Kanellopoulos, G. Asimellis, and S. Georgiadou, "Digital pupillometry and centroid shift changes after cataract surgery," J. Cataract Refract. Surg., vol. 41, no. 2, pp. 408-414, 2015)を参照)。
【0098】
さらに、測定条件は、網膜照度レベルに影響を及ぼすことがある。最も科学的な研究は、単眼瞳孔測定に基づくものであり、実際は、両眼視でIOL性能を評価すべきである。両眼動的瞳孔測定は、両眼条件下での瞳サイズを正確に決定することが必要である。光刺激は、単眼視よりも、瞳により多くの収縮をもたらすことが知られている。両眼条件の瞳孔システムの間接反射が、単眼刺激のための直接反射に追加されるためである。
【0099】
外科医は、術前瞳サイズを正確かつ再現可能に決定できれば、白内障手術後の屈折転帰および後続の患者満足度に影響を及ぼす術後瞳サイズを予測できる。これは、瞳カスタム白内障手術(PCCS: pupil-customized cataract surgery)の基本であり、これは白内障患者の瞳サイズの術前評価によって、術後視覚性能および後続の患者満足度を予測し最大化することを意味する(文献(Cataract surgery: Maximizing outcomes through research by H. Bissen-Miyajima, M. P. Weikert, and D. D. Koch, published in 2014)を参照)。
【0100】
既述したように、視覚システムは、SCEに起因して瞳の周囲から入射する光よりも、眼の瞳の中心を通って入射する光に対してより敏感である。SCEは、デフォーカス(焦点ぼけ)画質およびデフォーカス視力を、特に適合的位相知覚を必要とするタスクについて、著しく改善できる。
【0101】
これらの知見は、白内障手術後の視覚性能を評価する際に臨床的に使用でき、IOL設計の点で重要性を有する。回折多焦点眼内レンズは、遠視力、中間視力および近視力のための視力を提供する。これらの間の理想的なエネルギー分布は、様々な瞳サイズについて相違する。小さい瞳では、支配的な焦点は、遠視力に比べてわずかに強い光学パワーを備えた遠視力にすべきである。約3mmの瞳サイズでは、理想的な回折多焦点レンズは、強い遠視力、強い近視力およびある程度の中間視力を提供するべきである。近視力に向けられた4.5mmより大きい瞳では、眼は上手く使用できない。このため、可能な限り少ない追加のエネルギーを近視力に向けるべきであり、4.5mmの瞳ついて近視力に行くエネルギーは、中間視力および近視力の両方よりも少なくなければならない。
【0102】
従って、多焦点眼内レンズは、理想的には、薄明照度レベルでは、光エネルギーの約80%が遠視力および近視力に向けられ、一方、暗所照度レベルでは、この約80%の光エネルギーが理想的には遠視力および中間視力に分配されるように、焦点間で光エネルギーを分配すべきである。
【0103】
図10aは、本発明に係るレンズの一例を示す。完全に適応したレンズを得るために、回折格子の強度分布は、光学中心からの距離の関数として変化すべきである。
図10aは、実質的に凹状であり、遠視力を極めて強く促進するが、レンズの多焦点格子とより良く調和するように調整された中央ゾーンを使用するレンズプロファイル(少ない屈折ベースライン)を示す。第1ピーク付近で1.25mmのアパーチャにおける遷移ポイントが、異なって調整された回折単位セルのセットからなる対称多焦点格子の中に導き入る。中央部分の外側にある第1周期は、中間および遠視よりも多く近視力を促進する相対的にバランスした回折格子を構成しており、そして、これは、光学中心からの距離の増加とともに、遠視力を強く促進し、特に遠視力および中間視力の両方に対して近視力を冷遇する回折格子に幾つかのステップに渡って遷移する。当然ながら、中心部分と略3mmアパーチャとの間のレンズの領域において、近視力がわずかに優遇されていても、遠視力を促進する中心部分のため、この範囲では全ての瞳サイズについて遠視力が支配的な強度分担を有する。
【0104】
当然ながら、例えば、
図6aのような完全単焦点中央ゾーンを有する適応レンズを作成することは可能であり、しばしば有用である。こうした構成では、全ての直径について厳密に定義された焦点が、遷移ポイントのものより小さい適応レンズになる。厳密な単焦点中央ゾーンを使用する適応レンズは、
図10に記載したレンズのタイプと比較して、わずかに低い全体光効率を有するが、厳密に単焦点中心ゾーンを備えたレンズ設計は、製造および材料の摂動への応答においてより頑丈であることが実際に示されている。材料摂動は、材料バッチ間の屈折率のわずかな差になることがある。単焦点中央ゾーンはまた、術後のオートレフラクトメータ測定のためのいくつかの利点を有することができる。これらの理由により、中央ゾーンの選択は、ケースバイケースで行うことが必要にある。
【0105】
図10bは、4つの異なるアパーチャについてシミュレーションした相対強度ピークを示す。対称回折格子は、公称で1.675Dの次数分離を提供するように構成される。しかしながら、シミュレーションデータに示すように、小さい1mmアパーチャでの支配的ピークは、意図した中間ピークの0.6Dだけ下方にある。
図10bのデータを要約すると、(1)1mmアパーチャでの支配的な焦点は、遠視パワーと中間パワー(それぞれ18.32Dと20D)の間に配置され、(2)近視力(約21.7D)に向けられたエネルギーの部分は、他の図示したアパーチャのいずれよりも3mmでより高く、中間エネルギーは、(3)2mmアパーチャにおいて、遠視および近視の両方よりも弱く、(4)4.5mmでは、近視の強度は、遠視および中間よりも弱い。2mm以上の全てのアパーチャでは、最も強いタイプの視力である。
【0106】
本発明に係る適応型回折レンズを作成するには、アパーチャの関数として変化する回折効率を使用することが必要である。
図10c、
図10dおよび
図10eは、基礎となるリニア格子回折単位セルおよびそれらの個々の回折効率の例を示す。効率は、リニア格子プロファイルデータから標準的な方法で計算される。この回折効率計算は、当然ながら任意の形状の任意の単位セルに対して実行できる。この特定レンズでは、使用した慣例を用いて、-1次数が近視力のために配置された光に対応し、0次数が中間視力のために配置された光に対応し、+1次数が遠視力のために配置された光に対応するように構成される。これら3つの図の各々について与えられる合計回折効率は、3つの所望の回折次数の回折効率の和である。
図10cは、
図10aにおいてG1としてマークしたレンズ部分で使用されるプロファイル形状の回折効率を示す。近視力は、他の深さに有利になるように促進され、一方、遠視および中間のものは同様に維持される。
図10dは、
図10aにおいてG2としてマークされたレンズ部分で使用されるプロファイル形状の回折効率を示す。遠視力は、ここでは、他の深さに有利になるように促進されるが、特に近視力に分配される光は極めて低く維持される。
図10eは、
図10aにおいてG3としてマークされたレンズ部分で使用されるプロファイル形状の回折効率を示す。遠視力と中間視力に分配されるエネルギーは比較的類似に維持されるが、追加の近視光は極めて低く維持される。大きいアパーチャ、特に4.5mmを超えるアパーチャでは、近視力に提供される強度の利益は極めて小さいか、ゼロである。ここで使用される格子および/または屈折形状の制限は、望ましくない効果をもたらす。以下にさらに議論されるように、例えば、周辺二重焦点鋸歯状格子または近視力に対応する屈折パワーを備えた周辺部分を用いて、本発明に係る適応レンズを構築することが可能である。これらは、近視力への追加強度をほぼゼロに低減する方法の2つの例である。当然ながら、例えば、グレアおよびハロー効果など、負の光学特性を付与できる。
【0107】
これらの単位セルが特定の例であることを理解することが重要である。
図10aに示すレンズでは、いくつかの異なる単位セルが存在する。アパーチャの関数として、相対強度分布をゆっくり進行させることがしばしば好都合である。この例で示すものよりも極めて異なる回折効率および生じるエネルギー分布を備えた単位セルを使用することが可能である。
【0108】
図11aは、本発明に係る他のレンズ回折プロファイルを示し、レンズの中心部分の支配的パワーを変化させる1つの追加的な方法を示す。
図6aでは、中央ゾーンの曲率を変化させることによって、小さいアパーチャでの支配的パワーが調整されるレンズプロファイルを示す。1mmなどの小さいアパーチャでの支配的な光学パワーの配置も、中央部分の中央プロファイルの水平シフト(即ち、光軸に対して垂直な方向)によって、極めて慎重に調整できる。
図11aのレンズプロファイルは、この水平シフトを除いて、約2.4mmのアパーチャまで
図10aに示すプロファイルと同一である。
図11bは、4つの異なるアパーチャについてシミュレーションした相対強度ピークを示す。このモデルデータを
図10bのデータと比較することは意味がある。
図11aのプロファイルにおけるこの比較的小さい変化のため、1mmにおける支配的なピークは、遠視力のために意図したパワーにより近い約0.8Dに移動している。この構成は、全視力範囲に渡って計算したとき、全体効率をわずかに低下させるが、より強い遠視力を提供する。さらに、極めて小さいアパーチャについて、意図した遠視パワーのものに近い支配的パワーを提供し、これは、ある事情、例えば、眼のパワーを術後に測定するいくつかの方法にとって好都合になる。
【0109】
図10aと
図11aのレンズプロファイル間の1つの追加の変化は、後者が、約2.4mmのアパーチャの外側でより高い回折レンズプロファイルを示す点である。このレンズプロファイルは、ここでは、極めて大きいアパーチャについてより強く、遠視力に向けて強度を増加させることを対象としている。1つの可能性のある設計選択は、大きいアパーチャについて近視光のより強い減退が望ましい場合でも、例えば、4.5mmより大きいアパーチャについて二重焦点鋸歯状格子を使用することである。こうした二重焦点鋸歯状格子は、遠視力および中間視力のための追加の光を提供するように配置できる。さらに他のオプションは、大きいアパーチャについて単焦点鋸歯状構造を使用することである。こうした構造は、多焦点格子よりはるかに高いものが必要であろう。
【0110】
レンズ中心に最も近い山付近までの中心部と回折格子とは分離可能であり、中心部の小さい水平方向シフトが、回折格子の等しいシフトによって接合されなる必要はないことに留意すべきである。同様に、回折格子のシフトが、中央ゾーンの等しいシフトによって接合される必要はない。逆に、中心部分と回折格子を互いに相対的にシフトさせることがしばしば好都合になる。詳細には、レンズ中心に最も近いリッジが、良好に形成されたレンズの式(formula)によって典型的に予想されるものより薄くなるようにシフトを行うことがしばしば好都合になる。これを表現する異なる方法が、回折格子の中央ゾーンと第1谷を、フレネルゾーンプレートの標準式から予想されるよりも互いにより近づけることが好都合であることがしばしば判明していると言える。こうした構成は、全体的な光効率を増加でき、本発明に係るレンズを構築する実行可能な方法である。
【0111】
図12aは、本発明に係る適応多焦点レンズについてのさらに他のレンズプロファイルを示す。ここに示すプロファイルは、屈折ベースラインが少ないことを理解することが重要であり、光学全体に渡って同じであることが理解される。このレンズプロファイルの1つの重要な特徴は、遠視力だけのために光を提供するように配置された純粋に屈折部分を含むことである。この例では、この屈折部分は、5mmのアパーチャの外側でほぼ全てのアパーチャをカバーする。こうした屈折部分は、回折プロファイルのピーク間の高さが計算される場合に考慮すべきではない。多焦点レンズの周囲に屈折部分を有することにより、強い適応レンズを形成する良好な方法にできる。この場合、全ての光は、5mmよりも大きいアパーチャについて遠視力に向けられることになる。ハロー効果のリスクを増加させるであろう。
【0112】
図12aの回折レンズプロファイルの第2の重要な特徴は、純粋に単焦点中心である。この例では、中央ゾーンは、遠視パワーと中間パワーを担当する次数の間の公称絶対差よりも0.125D低い負のパワーを有するように形成される。中心ゾーンと対称多焦点回折格子との間の遷移ポイントは、1.14mmのアパーチャで垂直破線によってマークしている。対称回折格子は、
図10aに示したものに比較的類似した方法で構築される。回折格子は、約2.8mmのアパーチャまで近視力を対象としており、そして、増加するアパーチャとともに、遠視力について、ある程度は中間視力について徐々により強く調整される。
【0113】
図12bは、4つの異なるアパーチャについてシミュレーションした相対強度ピークを示す。対称回折格子は、公称で1.675Dの次数分離を提供するように構成される。シミュレーションデータに示すように、小さい1mmアパーチャについて支配的なピークは、意図した中間ピークより1.4D下方にある。
図12bのデータを要約すると、ここでは、(1)1mmアパーチャにおける支配的な焦点は、意図した遠視パワーと中間パワー(それぞれ18.32Dと20D)の間に配置され、(2)近視の強度は、遠視の強度のものに対して、他の図示したアパーチャのいずれよりも3mmにおいて強く、中間強度(3)は、2mmアパーチャにおいて、遠視と近視の両方よりも弱く、(4)4.5mmでは、近視強度は、遠視そして中間より弱い。2mm以上の全てのアパーチャにおいて、遠視が最も強いタイプの視力である。17D付近の望ましくないピークは、例えば、
図10bに示すピークよりも大きく、これは中央ゾーンの選択に起因する。
【0114】
図13aは、特許に係るレンズ設計についての可能性のある目標エネルギー分布の図である。適応回折多焦点レンズについてのこの理想的な分布は、本文書の早期に人間の眼の働きの議論に基づく。図は、近視力、中間視力および遠視力の各々について、6mmまでのアパーチャで望ましいエネルギー分布を示す。±5パーセント以内の値が理想的な領域内にあると想定できる。しばしば本発明に従って作製されたレンズが、全てのタイプの視力または全てのアパーチャについて理想的な領域に入らないことがある。さらに、これは、エネルギー分布を考慮するだけの理想的な結果を示すことに留意すべきである。特に、薄明瞳から暗所瞳に向かう場合に中間エネルギーと近視エネルギーの極めて劇的な交換は、完全に実現するのは困難である。本発明に係るレンズの設計を行う場合、その特定の設計の周辺部分についての主要な優先順位付けが正しいエネルギー分布とすべきか、または収差および望ましくない光現象の最小化を優先すべきかをしばしば考慮する必要がある。大きいアパーチャについてのエネルギー分布を変化させる極めて効率的な方法は、二重焦点鋸歯状格子と、純粋に単焦点ゾーンとを含む。例えば、二重焦点鋸歯状格子は、大きいアパーチャについて遠視力および中間視力の光のみを提供するように構成できる。
図12aに示すような周辺単焦点ゾーンが、遠視力のための光だけを提供するように構成できる。しかしながら、これらの構造の両方は、望ましくない光現象、特に、ハロー効果のリスクを増加させることがある。
【0115】
図13bは、
図10aのハイブリッドレンズについての遠視力、中間視力および近視力の間のシミュレーションしたエネルギー分布をアパーチャの関数として示す。アパーチャは、ここではレンズ半径を単に2倍にするものとして見られる。このシミュレーションでは、遠視力は、全てのアパーチャにおいて支配的であり、2mmアパーチャでは、近視力および中間視力についてのエネルギーは比較的類似している。近視エネルギーは、アパーチャ2.5mm~3mmについて最大のプラトー(台地)を有し、一方、中間エネルギーは、ほぼ同じアパーチャについて最小のプラトーを有する。3.1mmより大きいアパーチャでは、近視エネルギーは、アパーチャの増加とともに減少し、一方、中間エネルギーは、アパーチャの増加とともに増加する。クロスオーバーポイントは、4.5mmのアパーチャに近いと推定される。グラフ中のデータは、最初に回折格子の周期当たり8個のアパーチャでスペクトルを計算し、全部で105個の異なるアパーチャで全てを計算することによって構成される。各アパーチャでは、各視力の強度は、個々のタイプの視力の位置において局所的な最大ピークで近似される。そして、周期全体のグラフデータでの各点を用いて、各視力タイプのスライド平均値を用いてグラフをプロットする。例えば、谷または頂点のみで計算を行った場合、あまり起伏がないラインになるであろう。
【0116】
開示した例および実施形態に対する他の変形例が、図面、開示および添付の請求項の研究から本発明を実施する当業者によって理解でき実施できる。請求項において、用語「備える、含む(comprising)」は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外しない。特定の測定値が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの測定値の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。請求項中の参照符号は、その範囲を限定するものとして解釈すべきでない。同じ参照記号は、等しいまたは等価の要素または動作を参照する。
【0117】
開示した本発明によれば、遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズが提案され、前記レンズは、光軸を備えた光透過性本体、および該レンズ本体の一部に渡って延びる屈折ベースラインを有し、前記レンズはさらに、前記光透過性レンズ本体の中心領域と一致し、半径方向に同心円状に延びる第1部分と、半径方向に同心円状に延びる多焦点の第2部分とを有する。
【0118】
開示した本発明の一実施形態によれば、眼科多焦点レンズの第2部分はさらに、前記屈折ベースライン上に重畳され、レンズの一部をカバーする対称多焦点回折格子を含み、その形状および得られる光強度分布は、光軸までの距離に関して変化している。
【0119】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記眼科レンズの前記第1部分は、実質的に凹形状が光軸周りに前記屈折ベースライン上に重畳されるように構成され、光軸に最も近い前記対称多焦点回折格子のリッジに接続されている。
【0120】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記屈折ベースラインは、中間パワーと実質的に一致する焦点を提供する。
【0121】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記眼科レンズの前記第1部分は、遠視力および中間視力の意図したパワーの間にある支配的な光学パワーを提供するように構成され、単焦点中央ゾーンは、レンズの屈折ベースラインに負のパワーを追加するように構成された曲率を有する。
【0122】
開示した発明の一実施形態によれば、開示した前記実施形態は、中央部分と、回折格子の第1ピークのピークの近くに位置する回折格子との間に遷移ゾーンを提供する。
【0123】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記眼科多焦点レンズは、近視力のために意図したエネルギーに対する遠視力のために意図したエネルギーの比率を有し、その比率は、2mmおよび4.5mmのアパーチャでの同比率に比べて、3mmのアパーチャではより低いように構成される。
【0124】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記眼科多焦点レンズは、5mmのアパーチャについて近視力のために意図したエネルギーが、中間視力および遠視力について意図したエネルギーよりも弱くなるように構成され、前記眼科多焦点レンズは、3mmのアパーチャについて中間エネルギーが近視および遠視エネルギーの両方よりも弱くなるように構成される。
【0125】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記眼科多焦点レンズは、1ミリメートル当たり50ラインで測定して、3mmアパーチャでは、遠視力と近視力との変調伝達関数比が、2mmおよび4.5mmアパーチャのものより低くなるように構成される。
【0126】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記対称多焦点回折格子はさらに、交互配列した山と谷の振幅値とを含む波型回折パターンを含み、光軸に垂直な方向に沿って測定したとき、前記第1部分は、レンズの光軸と一致する点から、谷の振幅よりも山の振幅値により接近するように構成された点まで凹状である。
【0127】
開示した本発明の一実施形態によれば、中間視力および遠視力のパワー差は、1.5Dと2.2Dの間であるように構成され、一方、遠視力と近視力のパワー差は、3Dと4.4Dの間であるように構成される。
【0128】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記第1部分は、単焦点のために構成された形状を含む。
【0129】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記対称多焦点回折格子は、3つ、5つ、7つ、9つ(これらに限定されない)の焦点を含むグループから選択される複数の焦点を提供する。
【0130】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記第1部分、前記第2部分、または前記部分の両方のうちの少なくとも1つは、設計波長について実質的に単焦点である鋸歯状回折格子と組み合わされる。
【0131】
開示した本発明の一実施形態によれば、3.5mmより大きいアパーチャでは、レンズは、非対称回折格子、前記屈折ベースライン以外の屈折パワーを提供する形状、前記対称多焦点回折格子とは異なる奇数個の焦点を備えた対称回折格子(これらに限定されない)を含むグループから少なくとも1つの光学的に活性な機構を備える。
【0132】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記対称多焦点回折格子は、4.5mmアパーチャ内では、前記対称多焦点格子の少なくとも2つの周期を含み、該少なくとも2つの周期は、対応するリニア格子単位セルについて、近視力を担当する次数の回折効率が、光軸からさらに遠くに位置する周期と比べて光軸に最も近くに位置する2つの周期の周期のものより少なくとも10パーセント高い関係を有する。
【0133】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記多焦点格子の光軸に最も近い山の最高ポイントは、光軸から0.45mmから0.73mmまでの範囲内の垂直距離に配置される。
【0134】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記多焦点レンズの光軸と一致する前記第1部分のポイントは、前記多焦点レンズの中心3mm内の他の谷よりも前記屈折ベースラインと比べてより低くなるように構成される。
【0135】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記対称多焦点回折格子の最大ピーク間高さは、設計波長では、前記第1部分の谷が省略されるように計算して、完全位相変調の50パーセント未満である。
【0136】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記レンズは、同心1mmアパーチャで測定した場合、図した遠視パワーと中間パワーとの間で支配的なパワーを有する。
【0137】
開示した本発明の一実施形態によれば、前記レンズは、同心1mmアパーチャで測定した場合、遠視力について意図したパワーよりもせいぜい1.2Dだけ強い支配的なパワーを有する。
【0138】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも3つの焦点を含み、近視力、中間視力および遠視力のための光を提供する眼科多焦点レンズが提案される。
【0139】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、レンズの多焦点性は、屈折ベースラインの上に重畳された多焦点対称格子によって提供される。
【0140】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記多焦点対称格子は、レンズの連続部分をカバーし、これは、光学部分全体またはそれよりも小さい部分をカバーできる。
【0141】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記多焦点対称格子は、光軸までの距離の関数として、形状および強度分布の点で相違する。
【0142】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記レンズは、前記レンズの意図した遠視パワーよりも強い1.2D未満だけ強いパワーの支配的なピークを提供する中央ゾーンを有する。
【0143】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記中央ゾーンは、ベースライン曲率が小さく、遷移ポイントにおいて多焦点回折格子に接続される凹形状である。
【0144】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、近視エネルギーに対する遠視エネルギーの比率は、2mmおよび4.5mmのアパーチャよりも3mmのアパーチャについてより低い。
【0145】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、3mmのアパーチャでは、中間エネルギーは、遠視力および近視力の両方よりも弱い。
【0146】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、1.5mm~6mmのアパーチャについて1ミリメートル当たり50ラインおよび100ラインで測定すると、遠視力の変調伝達関数(MTF)は、近視力のものより少なくとも35%高く、中間視力のものより少なくとも20%よりも高い。
【0147】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、遠視力対近視力のMTF比は、2mmおよび4.5mmのアパーチャよりも3mmのアパーチャでより低い。
【0148】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記回折格子は、交互配列した山と谷の振幅値を有する波型回折パターンを含み、前記遷移ポイントは、前記回折格子の谷の振幅値よりも山の振幅値に近くに位置している。
【0149】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、中間視力について加算パワー値は、1.5D~2.2Dであり、近視力焦点では3D~4.4Dである。
【0150】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記多焦点対称回折格子の各周期の谷は、屈折ベースラインと位置合わせしている。
【0151】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記中央ゾーンは単焦点ゾーンを含む。
【0152】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記多焦点レンズは、三重焦点レンズであり、そのため前記多焦点対称格子は、3つの焦点を提供する。
【0153】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記多焦点対称格子は、4つ、5つ、7つ、9つ(これらに限定されない)の焦点を含むグループから選択される複数の焦点を提供する。
【0154】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記多焦点対称格子は、互いに著しく異なる形状を有する少なくとも2つの回折セルを含む。
【0155】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記多焦点対称格子は、少なくとも第1部分と第2部分とを含み、近視力を担当する次数の回折効率は、第2部分よりも第1部分において少なくとも30%高い。
【0156】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記中央ゾーンは、0.9mm~1.4mmの間の直径を有する。
【0157】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記多焦点対称格子の最大ピーク間高さは、完全位相変調の80%未満、好ましくは完全位相変調の50%未満である。
【0158】
開示した本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、前記中央ゾーンの外側にある回折格子は、良好に形成されたフレネルレンズの間隔に従う回折レンズよりも中央ゾーンに近くに配置される。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ
、特にコンタクトレンズまたは眼内レンズであって、
前記レンズは、光軸を備えた光透過性レンズ本体、および該レンズ本体の一部に渡って延びる屈折ベースラインを有し、
前記レンズはさらに、前記光透過性レンズ本体の中心領域と一致し、半径方向に同心円状に延びる第1部分、半径方向に同心円状に多焦点の第2部分を有し、
眼科多焦点レンズの前記第2部分はさらに、前記屈折ベースライン上に重畳され、レンズの一部をカバーする対称多焦点回折格子を含み、その形状および得られる光強度分布が光軸までの距離に関して変化しており、
前記対称多焦点回折格子は、遠視力に寄与する1つの回折次数および近視力に寄与する1つの回折次数を含み、
前記屈折ベースライン上に重畳された前記対称多焦点回折格子の0次数が、屈折ベースラインのパワーと、レンズの意図した中間パワーと実質的に一致しており、
前記眼科レンズの前記第1部分は、実質的に凹形状が光軸周りに前記屈折ベースライン上に重畳されるように構成され、光軸に最も近い前記対称多焦点回折格子のリッジに接続され、
前記屈折ベースラインは、中間パワーに実質的に一致する焦点を提供し、
前記眼科レンズの前記第1部分は、意図した遠視力パワーと中間視力パワーとの間にある支配的な光学パワーを提供するように構成され
、
前記眼科多焦点レンズは、
5ミリメートルのアパーチャでは、近視力のために意図したエネルギーが、中間視力および遠視力の両方のためにそれぞれ意図したエネルギーよりも弱く、
3ミリメートルのアパーチャでは、中間エネルギーが近視エネルギーおよび遠視エネルギーの両方より弱くなるように構成されることを特徴とする、眼科多焦点レンズ。
【請求項2】
前記眼用多焦点レンズは、近視力のために意図したエネルギーに対する遠視力のために意図したエネルギーの比率を有し、その比率は、2mmおよび4.5mmのアパーチャでの同比率に比べて、3mmのアパーチャではより低いように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項3】
前記眼科多焦点レンズは、1ミリメートル当たり50ラインで測定して、3mmアパーチャでは、遠視力と近視力との変調伝達関数比が、2mmおよび4.5mmアパーチャのものより低くなるように構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項4】
前記対称多焦点回折格子はさらに、交互配列した山と谷の振幅値とを含む波型回折パターンを含み、
光軸に垂直な方向に沿って測定したとき、前記第1部分は、レンズの光軸と一致する点から、谷の振幅よりも山の振幅値により接近するように構成された点まで、凹状であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項5】
中間視力および遠視力のパワー差は、1.5Dと2.2Dの間であるように構成され、一方、遠視力と近視力のパワー差は、3Dと4.4Dの間であるように構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項6】
前記第1部分は、単焦点のために構成された形状を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項7】
前記対称多焦点回折格子は、3つ、5つ、7つ、9つ(これらに限定されない)の焦点を含むグループから選択される複数の焦点を提供することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項8】
前記第1部分、前記第2部分、または前記部分の両方のうち少なくとも1つは、設計波長について実質的に単焦点である鋸歯状回折格子と組み合わされることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項9】
3.5mmより大きいアパーチャでは、レンズは、非対称回折格子、前記屈折ベースライン以外の屈折パワーを提供する形状、前記対称多焦点回折格子とは異なる奇数個の焦点を備えた対称回折格子(これらに限定されない)を含むグループから少なくとも1つの光学的に活性な機構を備えることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項10】
前記対称多焦点回折格子は、4.5mmアパーチャ内では、前記対称多焦点格子の少なくとも2つの周期を含み、該少なくとも2つの周期は、対応するリニア格子単位セルについて、近視力を担当する次数の回折効率が、光軸からさらに遠くに位置する周期と比べて光軸に最も近くに位置する2つの周期の周期のものより少なくとも10パーセント高い関係を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項11】
前記屈折ベースラインに対する、前記多焦点格子の光軸に最も近い山の最高ポイントは、光軸から0.47mmから0.75mmまでの範囲内の垂直距離に配置されることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項12】
前記多焦点レンズの光軸と一致する前記第1部分のポイントは、前記多焦点レンズの中心3mm内の他の谷よりも前記屈折ベースラインと比べてより低くなるように構成されることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項13】
前記対称多焦点回折格子の最大ピーク間高さは、設計波長では、前記第1部分の谷が省略されるように計算して、完全位相変調の50パーセント未満であることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項14】
前記レンズは、同心1mmアパーチャで測定した場合、意図した遠視パワーと中間パワーとの間で支配的なパワーを有することを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【請求項15】
前記レンズは、同心1mmアパーチャで測定した場合、遠視力について意図したパワーよりも、少なくとも0.2Dでせいぜい1.2Dだけ強い支配的なパワーを有することを特徴とする、請求項1~14のいずれかに記載の遠視力、中間視力および近視力を提供するように構成された眼科多焦点レンズ。
【国際調査報告】