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特表2024-515005関節軟骨欠損の修復における骨髄間葉系幹細胞エクソソームの応用
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  • 特表-関節軟骨欠損の修復における骨髄間葉系幹細胞エクソソームの応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】関節軟骨欠損の修復における骨髄間葉系幹細胞エクソソームの応用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0775 20100101AFI20240328BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240328BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240328BHJP
【FI】
C12N5/0775
A61P19/02
A61K35/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551722
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2023-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2022126040
(87)【国際公開番号】W WO2023179000
(87)【国際公開日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】202210620951.3
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511128206
【氏名又は名称】南通大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】孫 誠
(72)【発明者】
【氏名】顧 暁松
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 蕾蕾
(72)【発明者】
【氏名】从 猛
(72)【発明者】
【氏名】楊 洪偉
(72)【発明者】
【氏名】張 愉
(72)【発明者】
【氏名】李 枚原
(72)【発明者】
【氏名】王 暁敏
(72)【発明者】
【氏名】徐 来
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BC03
4B065BC07
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BB44
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA96
(57)【要約】
【課題】骨髄間葉系幹細胞エクソソームの関節軟骨欠損の修復中の応用を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、バイオ医薬品の分野に属し、特に、骨髄間葉系幹細胞エクソソームの調製方法及び関節軟骨欠損の修復における応用に関する。前記骨髄間葉系幹細胞エクソソームは、培地により骨髄間葉系幹細胞を刺激して産生され、継代後に培養液から骨髄間葉系幹細胞エクソソームを抽出し、前記骨髄間葉系幹細胞は腸骨又は大腿骨の骨髄に由来する。骨髄間葉系幹細胞から調製された細胞外小胞は、エクソソームの典型的な特徴を有しており、調製したエクソソームは軟骨細胞の活性を向上し、細胞増殖を促進させ、細胞遊走能を増強することができる。ウサギ関節軟骨欠損モデルにおいて、調製したエクソソームは軟骨修復を大幅に促進することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節軟骨疾患の治療薬の調製における骨髄間葉系幹細胞エクソソームの応用であって、前記骨髄間葉系幹細胞エクソソームは、培地により骨髄間葉系幹細胞を刺激して産生され、継代後に培養液から前記骨髄間葉系幹細胞エクソソームを抽出し、前記骨髄間葉系幹細胞は腸骨又は大腿骨の骨髄に由来することを特徴とする、応用。
【請求項2】
前記応用は、
軟骨細胞の活性を促進するための薬剤の調製における応用、
軟骨細胞の増殖を促進するための薬剤の調製における応用、
軟骨細胞遊走を促進するための薬剤の調製における応用、及び、
軟骨欠損を修復するための薬剤の調製における応用
のいずれかを含むことを特徴とする、請求項1に記載の応用。
【請求項3】
前記培地は、完全培地であることを特徴とする、請求項1に記載の応用。
【請求項4】
前記骨髄間葉系幹細胞の培養条件は、37℃、5%COであることを特徴とする、請求項1に記載の応用。
【請求項5】
骨髄を完全培地に加えてピペッティングでよく混ぜて、インキュベーターに入れて培養し、3日目に半分量交換し、6日目に全量交換し、その後2日ごとに交換し、細胞が80~90%に増殖するまで、P1継代まで継代し、さらに3回の継代を経て初代骨髄間葉系幹細胞が得られることを特徴とする、請求項1に記載の応用。
【請求項6】
前記骨髄間葉系幹細胞を培養する場合、細胞を対数増殖期まで増殖させた後、培地を捨て、PBSで洗浄した後、2%小胞除去血清培地に交換して細胞が80~90%に増殖するまで培養し、上清を回収し、ろ液をエクソソーム抽出に使用することを特徴とする、請求項1に記載の応用。
【請求項7】
メンブレンアフィニティースピンカラムを用いて前記骨髄間葉系幹細胞エクソソームをろ過して回収することを特徴とする、請求項1に記載の応用。
【請求項8】
ろ過した上清を等量のXBPバッファーに加えてよく混ぜた後、前記メンブレンアフィニティースピンカラムに加えて処理し、カラムに吸着したエクソソームをXEバッファーで溶出させることを特徴とする、請求項6に記載の応用。
【請求項9】
前記ろ過方法は、0.2μmろ過膜を用いてろ過することを特徴とする、請求項8に記載の応用。
【請求項10】
よく混ぜた後、前記メンブレンアフィニティースピンカラムに加えて処理し、500gで1分間遠心分離することを特徴とする、請求項8に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬品の分野に属し、特に、骨髄間葉系幹細胞エクソソームの調製方法及び軟骨細胞活性の促進、軟骨細胞増殖の促進、軟骨細胞遊走の増強、軟骨欠損の修復におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
軟骨は、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖タンパク質、若干の細胞及び60~80%の水分等の成分で構成される。軟骨細胞と周囲の細胞外マトリックス(ECM)は共同で軟骨単位を構成し、軟骨の主要な構造、機能、及び代謝の単位とみなされる。正常な軟骨において、軟骨細胞がコラーゲン、プロテオグリカン、及びグリコサミノグリカンなどの物質を合成して、軟骨の恒常性維持、及び傷んだ軟骨の置換に用いられる。軟骨は人体の中で荷重に耐え、関節間の骨の摩擦を軽減するという重要な役割を果たしている。しかし、成人の軟骨組織には血管や神経が存在しないため、傷んだ軟骨組織が自体を修復する能力は非常に限られている。軟骨機能の欠損は、多くの場合、変形性関節症(例えば変形性関節炎、老人性関節炎、肥厚性関節炎)の発生と密接に関係している。変形性関節症を治療するための臨床方法には、非手術的治療及び手術的治療が含まれる。非手術的治療は非ステロイド性抗炎症薬の経口投与、関節内注射、及びリハビリテーションなどが主で、短期的には痛みを和らげ症状を改善できるが、長期的な効果はない。手術的治療には、マイクロフラクチャー、ドリリング、関節置換術、自家軟骨細胞移植、若年同種移植軟骨移植、自家骨軟骨移植などが含まれる。しかし、これらの異なる外科手術の限界(線維軟骨の下位形成、組織の利用可能性の制限、初代軟骨細胞の増殖過程での脱分化による機能喪失、及びドナー部軟骨周囲炎症の可能性を含む)により、軟骨再生のための新規な代替治療戦略が喫緊になる。幹細胞の分化能に基づく軟骨損傷の治療法は、大きな潜在的可能性が臨床的に確認され、幹細胞の腫瘍原性の制約を避けるため、幹細胞から放出される細胞外小胞、特にエクソソームが産生するパラクリン作用による軟骨損傷の修復への注目が益々高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、軟骨細胞活性の促進、軟骨細胞増殖の促進、軟骨細胞遊走の増強、軟骨欠損の修復における骨髄間葉系幹細胞エクソソームの応用を提供することである。前記エクソソームは、軟骨細胞の活性を向上し、細胞増殖を促進させ、細胞遊走能を増強することができる。エクソソームプロセッシングは、欠損した軟骨の修復を大幅に促進し、欠損した軟骨の再生も大幅に改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
関節軟骨疾患の治療薬の調製における骨髄間葉系幹細胞エクソソームの応用であって、前記骨髄間葉系幹細胞エクソソームは、培地により骨髄間葉系幹細胞を刺激して産生され、継代後に培養液から骨髄間葉系幹細胞エクソソームを抽出し、前記骨髄間葉系幹細胞は腸骨又は大腿骨の骨髄に由来する。
【0005】
さらに、前記応用は、
軟骨細胞の活性を促進するための薬剤の調製における応用、
軟骨細胞の増殖を促進するための薬剤の調製における応用、
軟骨細胞遊走を促進するための薬剤の調製における応用、
軟骨欠損を修復するための薬剤の調製における応用、
のいずれかを含む。
【0006】
さらに、前記培地は、完全培地である。
【0007】
さらに、骨髄間葉系幹細胞の培養条件は、37℃、5%COである。
【0008】
さらに、骨髄を完全培地に加えてピペッティングでよく混ぜて、インキュベーターに入れて培養し、3日目に半分量交換し、6日目に全量交換し、その後2日ごとに交換し、細胞が80~90%に増殖するまで、P1継代まで継代し、さらに3回の継代を経て初代骨髄間葉系幹細胞が得られる。
【0009】
さらに、骨髄間葉系幹細胞を培養する場合、細胞を対数増殖期まで増殖させた後、培地を捨て、PBSで洗浄した後、2%小胞除去血清培地に交換して細胞が80~90%に増殖するまで培養し、上清を回収し、ろ液をエクソソーム抽出に使用する。
【0010】
さらに、メンブレンアフィニティースピンカラムを用いて骨髄間葉系幹細胞エクソソームをろ過して回収する。
【0011】
さらに、ろ過した上清を等量のXBPバッファーに加えてよく混ぜた後、メンブレンアフィニティースピンカラムに加えて処理し、カラムに吸着したエクソソームをXEバッファーで溶出させる。
【0012】
さらに、前記ろ過方法は、0.2μmろ過膜を用いてろ過する。
【0013】
さらに、よく混ぜた後、メンブレンアフィニティースピンカラムに加えて処理し、500gで1分間遠心分離する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、関節軟骨疾患の治療薬の調製における骨髄間葉系幹細胞エクソソームの応用を提供するものとした。前記エクソソームは、軟骨細胞の活性を向上し、細胞増殖を促進させ、細胞遊走能を増強することができる。エクソソームプロセッシングは、欠損した軟骨の修復を大幅に促進し、欠損した軟骨の再生も大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】骨髄間葉系幹細胞エクソソームの抽出と同定を示す図である((a):骨髄間葉系幹細胞エクソソームの抽出フロー、(b):骨髄間葉系幹細胞エクソソームの電子顕微鏡写真、(c):ナノ粒子トラッキング解析装置で解析された骨髄間葉系幹細胞エクソソーム、(d):骨髄間葉系幹細胞エクソソームのタンパク質同定(1:骨髄間葉系幹細胞の総タンパク質サンプル、2:骨髄間葉系幹細胞エクソソームのタンパク質サンプル。)、タンパク質発現はウエスタンブロット法で解析され、(e)骨髄間葉系幹細胞エクソソーム内在化の同定。FITC-Phalloidin:細胞骨格の標識に使用されるフルオレセインイソチオシアネート-ファロイジン、PKH-26:エクソソームの標識に使用される赤色の蛍光色素、DAPI:核の標識に使用される4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、Merge:結合された画像)。
図2】骨髄間葉系幹細胞エクソソームが軟骨細胞の活性及び細胞増殖を促進することを示す図である((a)骨髄間葉系幹細胞エクソソームは、軟骨細胞の活性を向上したもの、(b)骨髄間葉系幹細胞エクソソームは、軟骨細胞の増殖を促進したもの。*p<0.05,***p<0.001,スチューデントのt検定で分析)。
図3】骨髄間葉系幹細胞エクソソームは、軟骨細胞遊走を促進することを示す図である((a)骨髄間葉系幹細胞エクソソームで軟骨細胞を治療し、創傷治癒試験により細胞遊走能を測定したもの、(b)創傷治癒試験の結果の定量分析をしたもの。***p<0.001、one-way ANOVA分析)。
図4】軟骨細胞における骨髄間葉系幹細胞エクソソームの内在化動態解析を示す図である((a)骨髄間葉系幹細胞エクソソームの内在化。骨髄間葉系幹細胞エクソソームをPKH26で標記し、標記したエクソソームを軟骨細胞の治療に使用し、細胞内PKH26のシグナルを異なる時点で検出した。(b)異なる時点での軟骨細胞における骨髄間葉系幹細胞エクソソームのPHK26強度の定量分析。FITC-Phalloidin:細胞骨格の標識に使用されるフルオレセインイソチオシアネート-ファロイジン、PKH-26:エクソソームの標識に使用される赤色の蛍光色素、DAPI:核の標識に使用される4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、Merge:結合された画像。***p<0.001、one-way ANOVA分析)。
図5】骨髄間葉系幹細胞エクソソームが軟骨修復を促進することを示す図である((a)実験フロー、(b)ウサギ膝関節軟骨の外観図、(c)ウサギ膝関節軟骨のヘマトキシリン・エオシン染色(hematoxylin-eosin staining))。
図6】骨髄間葉系幹細胞エクソソームが軟骨再生を促進することを示す図である((a)サフラニンO-ファストグリーン染色(Saf-O/Fast Green staining)。(b)国際軟骨修復学会のスコアリング基準に従い軟骨再生をスコアリングしたもの。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、one-way ANOVA分析)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一、実験手順
1.ヒト骨髄間葉系幹細胞エクソソームの抽出、培養、同定
ヒト骨髄サンプルは、6名の健常な成人(平均年齢35歳、範囲30~40歳、男性3名、女性3名)の腸骨又は大腿骨に由来する。抽出したヒト骨髄1mlを60mmシャーレに入れ、完全培地8mlを加え、ピペッティングでよく混ぜる。前記完全培地は、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したDMEM細胞培養液である。その後、37℃、5%COのインキュベーター内で培養し、3日目に半分量交換し、6日目に全量交換し、その後2日ごとに交換し、細胞が80~90%に増殖するまで、P1継代まで継代する。このようにして、3回の継代を経た後、比較的純粋な初代骨髄間葉系幹細胞が得られ、P3~P5継代の細胞がその後の実験に使用される。
【0017】
2.骨髄間葉系幹細胞エクソソームの抽出
細胞を対数増殖期まで増殖させた後、培地を捨て、PBSで1回洗浄し、2%小胞除去血清培地に交換して培養する。前記2%小胞除去血清培地は、ウシ胎児血清を超遠心分離(100,000g、16時間、4℃)して小胞を除去し、細胞培養培地の調製に使用されるものである。培地の組成:DMEM細胞培養液内に2%小胞除去ウシ胎児血清、1%ペニシリン、及びストレプトマイシンを含む。細胞が80~90%まで増殖したら、上清を回収し、0.2μMフィルターでろ過したろ液をエクソソーム抽出に使用する。0.2μMフィルターでろ過したろ液を新しいチューブに移し、等量のXBPバッファーを加え、チューブを5回ゆっくりと反転させて溶液を混合する。混合物をエクソソームキットのexoEasy Kitカラムに加え、500gで1分間遠心分離した。流出した溶液を捨て、混合物が完全にろ過されるまでサンプルを再度加えた。カラムを同じコレクションチューブに入れ、XWPバッファー10mlを加え、5000gで5分間遠心分離してカラム内の残留液体を除去した。下部の液体を捨て、カラムを新しいコレクションチューブに移し、カラムに吸着したエクソソームをXEバッファーで溶出した。得られたエクソソームを-80℃の冷蔵庫に保存して、その後の実験に使用される。
【0018】
3.エクソソームの同定
(1)エクソソームをPBSに再懸濁し、Nanoparticle tracking analyses(NTA)でエクソソーム粒子径及び濃度を測定し、
(2)エクソソームの溶液は、ポリメチル酢酸ビニルとカーボンコーティングされた300メッシュ銅グリッド上に堆積し、室温で3分間放置した後、1.5%酢酸ウラニルで染色した。透過型電子顕微鏡によりグリッドを画像化、観察、写真撮影し、
(3)ウエスタンブロットを用いて骨髄間葉系幹細胞エクソソームの関連タンパク質(CD81、Flotillion-1、TSG101を含む)の発現を検出した。
【0019】
4.軟骨細胞の抽出と培養
軟骨細胞の抽出:(1)生後4週間のニュージーランドウサギの膝関節から軟骨スライスを採取し、(2)それを細かく切断し、PBSで3回洗浄した後、(3)0.25%トリプシンで30分間消化し、(4)上清を捨て、0.2%コラゲナーゼタイプIIを加え、37℃、5%CO2インキュベーターに入れて一晩消化し、(5)200メッシュのフィルターでろ過し、ろ液を500gで5分間遠心分離し、(6)沈殿して軟骨細胞完全培地で再懸濁し、インキュベーターに入れて培養した。
【0020】
軟骨細胞の継代:(1)細胞が80~90%に増殖するまで2日ごとに完全培地に交換し、(2)PBSで2回洗浄した後、適量の0.25%トリプシンを加えて消化し、完全培地を加えて消化を停止させ、細胞を回収し、遠心分離した後細胞播種プレートを再懸濁し、(3)このようにして、1回の継代を経た後、比較的純粋な初代骨髄間葉系幹細胞が得られ、P3~P5継代の軟骨細胞がその後の実験に使用される。
【0021】
5.軟骨細胞の活性測定
96ウェルプレートに、5×10/mlの密度で軟骨細胞を接種する。接種から4時間経った後、2%小胞除去血清を含む培地に交換し、異なる濃度のエクソソーム(5.0×10/ml、1.0×10/ml、2.0×10/ml)を加えて24時間培養した。培地総量の1/10のCCK-8溶液を加えた。培養プレートを37℃のインキュベーターに入れ、2~4時間インキュベートした。波長450nmでの吸光度を測定した。
【0022】
6.軟骨細胞増殖の測定
96ウェルプレートに、5×10/mlの密度で軟骨細胞を接種する。接種から4時間経った後、2%小胞除去血清を含む培地に交換し、調製したエクソソーム(1.0×10/ml)を加えて24時間培養した。各ウェルの培地を吸引除去し、50μlのEdU培地を各ウェルに加え、2時間インキュベートする。培地を捨て、PBSで洗浄した後、固定液100μlを加えて室温で15分間固定し、2mg/mlグリシン溶液100μlを加え、5分間中和し、PBS100μlを加えて5分間洗浄し、0.5%TritonX-100のPBS100μlを加えて10分間反応させ、PBSで5分間洗浄した。染色反応溶液100μlを加え、遮光して室温で30分間インキュベートした。0.5%TritonX-100のPBS100μlを加え、5分間ずつ2回洗浄した。Hoechst染色溶液100μlを加え、遮光して室温で15分間インキュベートした。PBSで振とうして脱色し、5~10分間ずつ3回洗浄し、細胞画像は蛍光顕微鏡EVOS FL Autoで撮影された。
【0023】
7.細胞スクラッチ実験
ibidi装置によるスクラッチ実験のシミュレーション:(1)2ウェル装置を、プレコートされた小さな皿に挿入して、創傷治癒試験を実施する。(2)前処理した細胞懸濁液を用意し、つまり細胞を無血清培地に再懸濁する。ウェルあたり2×10/mlの濃度(100μl)の濃度で細胞懸濁液を加える。(3)12時間後、滅菌ピンセットで2ウェル装置を静かに引き上げ、PBSで1回洗浄する。(4)対照群は2%小胞除去血清培地に、治療群はエクソソーム(1.0×10/ml)を含む2%小胞除去血清培地に交換し、24時間及び48時間培養する。(5)細胞の遊走過程を顕微鏡で観察し、写真を撮る。
【0024】
8.エクソソーム内在化実験
PKH26でエクソソームを標識するプロセスは次のとおりである。(1)1×1011/mlの濃度のエクソソーム溶液(100μl)を用意する。(2)エクソソームを250μlのDiluent Cに加え、穏やかに混合する。(3)新しいEPチューブを取り、2μlのPKH26を250μlのDiluent Cに加える。(4)(2)を(3)に加えてよく混ぜる。(5)室温で4分間放置し、1分ごとにピペットでよく混ぜる。(6)等量の1%BSAを加えて染色を停止させる。(7)アミコンウルトラ遠心式フィルターで溶液を濃縮して用意しておく。(8)濃縮したエクソソームを無血清培地で希釈し、最終的に1.0×10/mlのエクソソームを含む溶液を調製した。(9)軟骨細胞を4時間接種した後、PKH26で標識したエクソソームを加え、3、6、12、24、48、72時間共培養する。(10)結合処理後に細胞を4%PFAで固定する。(11)PBSで10分間ずつ2回洗浄する。(12)100μlのDAPI染色溶液を加え、遮光して室温で15分間インキュベートする。(13)共焦点顕微鏡で観察し、写真を撮る。
【0025】
9.軟骨欠損モデルの構築
ニュージーランドウサギは南通大学動物センターから提供された。ウサギを対照群、手術群、手術+低用量エクソソーム群、手術+高用量エクソソーム群という4群に分け、各群は6匹である。まず、メデトミジン(20μg/kg)、ケタミン(5mg/kg)、ブプレノルフィン(0.03mg/kg)を組み合わせた薬剤を筋肉内注射する。イソフルランで麻酔をかけ、ウサギの左後肢にドリルビットを用いて、膝関節の大腿骨滑車溝に直径4mm、深さ3mmの骨軟骨欠損を作製した。切開部を閉じて層ごとに縫合した。感染を防ぐためにペニシリン(5万単位/kg)を3日間連続で筋肉内注射し、鎮痛のためトラマドール2mg/kgを投与した。異なる濃度のエクソソーム300μl(低用量:1.0×1010/ml、高用量:5.0×1010/ml)を週に1回関節腔に注射し、合計4回の治療を行った。
【0026】
10.パラフィン切片
実験終了後、ウサギを安楽死させ、膝関節を完全に摘出し、パラホルムアルデヒドで24時間固定し、10%EDTA(pH7.4)で2~3ヶ月間脱灰し、パラフィンに包埋し、5μmの厚さのスライスに切断した。パラフィン切片を水で脱脂し、順次切片をキシレン(I)20分-キシレン(II)20分-無水エタノール(I)5分-無水エタノール(II)5分-75%エタノール5分に入れ、水道水で洗った。
【0027】
11.ヘマトキシリンとエオシン(H&E)染色
ヘマトキシリン液(60℃)で30~60秒間染色し、ヘマトキシリン液を流水で5~10秒間洗い流し、1%塩酸エタノールに1~3秒間浸け、水で1~2秒間軽く洗浄し、青色促進溶液を5~10秒間青色に戻し、流水で15~30秒間洗い流し、0.5%エオシン溶液で30~60秒間染色し、蒸留水で1~2秒間洗浄し、80%エタノール1~2秒、95%エタノール1~2秒、無水エタノール1~2秒、キシレン(I)2~3秒、キシレン(II)2~3秒に浸け、ニュートラルバルサムでフ封入する。
【0028】
12.サフラニンO-ファストグリーン染色(Safranin O/Fast Green)染色
ファストグリーン染色:スライスをファストグリーン染色液に5~10分間浸し、軟骨が無色になるまで余分な染色液を洗い流し、分化液にしばらく浸し、3回蒸留水ですすぐ。サフラニン染色:切片をサフラニン染色溶液に15~30秒間浸漬し、無水エタノールで素早く脱水した。透徹・封入:キシレンで5分間透徹させ、ニュートラルバルサムで封入する。顕微鏡で検査し、画像を収集して分析した。
【0029】
13.軟骨再生のスコアリング
国際軟骨修復協会(International Cartilage Repair Society、ICRS)に従い軟骨損傷を等級分けし、スコアリングした。
【0030】
まず、上清中の細胞破片を遠心分離により除去し、得られた上清をろ過した後、市販のエクソソーム抽出キットでエクソソームを抽出した(図1a)。得られたエクソソームを同定した。まず、抽出されたエクソソームを電子顕微鏡で観察したところ、抽出されたエクソソームは典型的なエクソソームの形状、つまり二重膜を有するカップ状構造の小胞を示していることが分かった(図1b)。その後、ナノ粒子トラッキング解析装置で解析したところ、抽出されたエクソソームの平均直径は131.20nm、濃度は2x1011粒子/mlであることが分かった(図1c。タンパク質を検出したところ、抽出されたエクソソームの典型的なタンパク質にはCD81、TSG10、Flotillion 1が含まれ、アクチンを発現しないことが分かった(図1d)。最後に、抽出されたエクソソームの内在化能力をテストし、結果は、エクソソームを軟骨細胞と共培養し、エクソソームが内在化できることが判明したことを示している(図1e)。上述の結果は、骨髄間葉系幹細胞の上清から抽出された細胞外小胞がエクソソームであることを示している。
【0031】
機能実験により、抽出されたエクソソームが軟骨細胞の活性を向上(図2a)し、細胞増殖を促進(図2b)し、細胞遊走能(図3a、b)を増強できることが示されている。インビボプロセシングを決定するため、エクソソーム内在化動態アッセイを実施した。結果では、軟骨細胞と3時間共培養した後の細胞内にエクソソームが観察され、プロセシング時間の延長とともに細胞内のエクソソーム数が徐々に増加し、プロセシング後72時間目に内在化のピークが現れたことを示している(図4a、b)。インビボ実験では、ウサギ後肢膝関節軟骨欠損モデルを使用し、調製したエクソソームを関節腔に計4回注射し、その後形態学的検査を行って軟骨修復状況を解析した(図5a)。ウサギの膝関節の全体的な形態を観察したところ、手術群のウサギの膝関節軟骨欠損がまだはっきりと見えることが分かった。エクソソームプロセッシング後、軟骨欠損は明らかに回復し、高用量群の回復がさらに良好である(図5b)。ヘマトキシリン・エオシン染色の結果は、エクソソームプロセシングが欠損した軟骨の修復を大幅に促進できることも示している(図5c)。サフラニンO-ファストグリーン染色の結果では、手術群のウサギの膝関節軟骨欠損は改善されなかったが、エクソソームプロセシングにより欠損した軟骨の再生を大幅に改善できることを示している(図6a)。国際軟骨修復学会が定めた基準でスコアリングすると、エクソソームプロセッシングは当該スコアを大幅に上げさせることができ、高用量のエクソソーム群のスコアは低用量のエクソソーム群よりも優れている(図6b)。
【0032】
[付記]
[付記1]
関節軟骨疾患の治療薬の調製における骨髄間葉系幹細胞エクソソームの応用であって、前記骨髄間葉系幹細胞エクソソームは、培地により骨髄間葉系幹細胞を刺激して産生され、継代後に培養液から前記骨髄間葉系幹細胞エクソソームを抽出し、前記骨髄間葉系幹細胞は腸骨又は大腿骨の骨髄に由来することを特徴とする、応用。
【0033】
[付記2]
前記応用は、
軟骨細胞の活性を促進するための薬剤の調製における応用、
軟骨細胞の増殖を促進するための薬剤の調製における応用、
軟骨細胞遊走を促進するための薬剤の調製における応用、及び、
軟骨欠損を修復するための薬剤の調製における応用
のいずれかを含むことを特徴とする、付記1に記載の応用。
【0034】
[付記3]
前記培地は、完全培地であることを特徴とする、付記1に記載の応用。
【0035】
[付記4]
前記骨髄間葉系幹細胞の培養条件は、37℃、5%COであることを特徴とする、付記1に記載の応用。
【0036】
[付記5]
骨髄を完全培地に加えてピペッティングでよく混ぜて、インキュベーターに入れて培養し、3日目に半分量交換し、6日目に全量交換し、その後2日ごとに交換し、細胞が80~90%に増殖するまで、P1継代まで継代し、さらに3回の継代を経て初代骨髄間葉系幹細胞が得られることを特徴とする、付記1に記載の応用。
【0037】
[付記6]
前記骨髄間葉系幹細胞を培養する場合、細胞を対数増殖期まで増殖させた後、培地を捨て、PBSで洗浄した後、2%小胞除去血清培地に交換して細胞が80~90%に増殖するまで培養し、上清を回収し、ろ液をエクソソーム抽出に使用することを特徴とする、付記1に記載の応用。
【0038】
[付記7]
メンブレンアフィニティースピンカラムを用いて前記骨髄間葉系幹細胞エクソソームをろ過して回収することを特徴とする、付記1に記載の応用。
【0039】
[付記8]
ろ過した上清を等量のXBPバッファーに加えてよく混ぜた後、前記メンブレンアフィニティースピンカラムに加えて処理し、カラムに吸着したエクソソームをXEバッファーで溶出させることを特徴とする、付記6に記載の応用。
【0040】
[付記9]
前記ろ過方法は、0.2μmろ過膜を用いてろ過することを特徴とする、付記8に記載の応用。
【0041】
[付記10]
よく混ぜた後、前記メンブレンアフィニティースピンカラムに加えて処理し、500gで1分間遠心分離することを特徴とする、付記8に記載の応用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】