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特表2024-515014抗体Fc断片及び少なくとも1つのフィブリン由来シトルリン化ペプチドを含むハイブリッド分子及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(54)【発明の名称】抗体Fc断片及び少なくとも1つのフィブリン由来シトルリン化ペプチドを含むハイブリッド分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240328BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240328BHJP
   C07K 14/75 20060101ALI20240328BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240328BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240328BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240328BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240328BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/00 ZNA
C07K14/75
C07K7/08
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61K38/17
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555853
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 FR2022050504
(87)【国際公開番号】W WO2022195237
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】2102803
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510139564
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・トゥールーズ・トロワ-ポール・サバティエ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE TOULOUSE III-PAUL SABATIER
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】523346951
【氏名又は名称】ソントル オスピタリエ ユニヴェルシテール ドゥ トゥールーズ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE TOULOUSE
(71)【出願人】
【識別番号】523346962
【氏名又は名称】ソントル オスピタリエ ユニヴェルシテール ドゥ モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE MONTPELLIER
(71)【出願人】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】523346973
【氏名又は名称】アートリティス ルシェルシュ エ デヴロプマン
【氏名又は名称原語表記】ARTHRITIS RECHERCHE & DEVELOPPEMENT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】コンブ, エブ
(72)【発明者】
【氏名】ロベール, ブリューノ
(72)【発明者】
【氏名】マルティノー, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ルイ-プランス, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラルバ, マルタン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンセン, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】トロゲラー, アントニー
(72)【発明者】
【氏名】クラヴェール, シリール
(72)【発明者】
【氏名】セール, ギィ, ブリューノ, ルネ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA41
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB151
4C084ZB152
4C085AA21
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA41
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA50
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのシトルリル残基を有する少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドに共有結合した少なくとも1つの抗体Fc断片を含むハイブリッド分子、そのようなハイブリッド分子の使用、及びその製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシトルリル残基を有する少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドに共有結合した少なくとも1つの抗体Fc断片を含むハイブリッド分子であって、少なくとも1つのスペーサーが前記Fc断片と前記ペプチドとの間に存在していてもよい、ハイブリッド分子。
【請求項2】
前記ペプチドが、少なくとも1つのアルギニル残基をシトルリル残基により置換することにより、脊椎動物のフィブリンのα鎖又はβ鎖の配列の全部又は一部に由来し、前記脊椎動物のフィブリンが、好ましくは哺乳動物、より詳細にはヒトのフィブリンである、請求項1に記載のハイブリッド分子。
【請求項3】
前記スペーサーが、エーテル基を含有する1つ又は複数の繰り返し単位を含有するポリマーであり、前記スペーサーが、好ましくは式PEGnのポリエチレングリコールであり、式中、nは1~100、好ましくは1~10、特に1、2、3、4又は8を表す、請求項1又は2のいずれかに記載のハイブリッド分子。
【請求項4】
前記ペプチドが、少なくとも1つのシトルリル残基を含み、以下からなる群:
a)配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号1)によって定義されるペプチドであって、X、X、及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、前記X又はX又はX残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
b)配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号2)によって定義されるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、前記X又はX残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
c)配列SGIGTLDGFXHXHPD(配列番号3)によって定義されるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、前記X又はX残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
d)配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号4)によって定義されるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、前記X又はX残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
e)配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)によって定義されるペプチドであって、X、X、及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、前記X又はX又はX残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
f)前記ペプチドa)~e)の1つからの少なくとも1つのシトルリル残基を含む少なくとも5個の連続アミノ酸を含むペプチド、から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のハイブリッド分子。
【請求項5】
前記ペプチドが、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23からなる群から選択され、より詳細には配列番号5、配列番号6、配列番号14、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のハイブリッド分子。
【請求項6】
前記Fc断片が、ヒトFc断片、特にIgG、より詳細にはIgG1のものである、請求項1~5のいずれか一項に記載のハイブリッド分子。
【請求項7】
前記Fc断片が野生型又は変異型であり、前記変異型Fc断片が好ましくは少なくとも以下の突然変異:
-L234A及びL235A、又は
-L234A、L235A及びP329G、又は
-G236A、S239D及びI332E、又は
-G236A、S239D、A330L及びI332E、又は
-S239D、H268F、S324T及びI332E
を含み、前記ナンバリングは、EUインデックスに従ってヒトIgG1の配列で示される、請求項1~6のいずれかに記載のハイブリッド分子。
【請求項8】
-前記Fc断片が、少なくとも1つのアジドにカップリングされており、前記ペプチドが、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにカップリングされている、又は
-前記Fc断片が、少なくとも1つのアルキン、例えばシクロオクチン、特にDBCOにカップリングされており、前記ペプチドが、アジドにカップリングされている、又は
-前記Fc断片が、少なくとも1つのアジドにカップリングされており、前記ペプチドが、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされているスペーサーに結合している、又は
-前記Fc断片が、少なくとも1つのアルキン、例えばシクロオクチン、特にDBCOにカップリングされており、前記ペプチドが、アジドにそれ自体がカップリングされているスペーサーに結合している、又は
-前記Fc断片が、アジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのスペーサーに結合しており、前記ペプチドが、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにカップリングされている、又は
-前記Fc断片が、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのスペーサーに結合しており、前記ペプチドが、アジドにカップリングされている、又は
-前記Fc断片が、アジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのスペーサーに結合しており、前記ペプチドが、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされているスペーサーに結合している、又は
-前記Fc断片が、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのスペーサーに結合しており、前記ペプチドが、アジドにそれ自体がカップリングされているスペーサーに結合している、請求項1~7のいずれか一項に記載のハイブリッド分子であって、
前記Fc断片と前記ペプチドとの間の共有結合は、場合により1つ又は複数のスペーサーの存在下で、前記アジドと前記アルキンとの間に作り出される、ハイブリッド分子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のハイブリッド分子であって、前記分子が、以下:
-配列番号19又は配列番号18で表されるペプチドにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片、
-配列番号19又は配列番号18で表されるペプチドにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合したS239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片、
-配列番号19又は配列番号18で表されるペプチドにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合したL234A、L235A及びP329G突然変異を含むFc断片、
-配列番号19又は配列番号18によって表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合した少なくとも1つのアジドにそれ自体がカップリングされているPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片、
-配列番号19又は配列番号18によって表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合したS239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片、によって表され、
nは、好ましくは1~10の整数、より詳細には1、2、3又は4を表す、ハイブリッド分子。
【請求項10】
医薬品として使用するための、特に抗シトルリン化タンパク質自己抗体の産生に関連する自己免疫疾患、特にグージュロー・カルティーウド(Gougerot-Sjogren)症候群及び関節リウマチの処置に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載のハイブリッド分子。
【請求項11】
第2のハイブリッド分子と組み合わせて医薬品として使用するための請求項1~10のいずれか一項に記載のハイブリッド分子であって、前記第2のハイブリッド分子が、少なくとも1つのシトルリル残基を有する少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドを含み、前記ペプチドが、少なくとも1つの抗体又は少なくとも1つの抗体断片に共有結合しており、前記抗体又は断片が、CD38及び/又はCD138に結合することができ、1つ又は複数のスペーサーが、前記ペプチドと前記抗体又は前記断片との間に存在していてもよい、ハイブリッド分子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ又は複数のシトルリル残基を含む少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドに共有結合した少なくとも1つの抗体Fc断片を含むハイブリッド分子、そのようなハイブリッド分子の使用、及びその製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチは、最も一般的なタイプの炎症性リウマチ又は関節炎であるが、最も一般的な自己免疫疾患でもある。この疾患は、滑膜関節の慢性炎症を特徴とし、不可逆的な関節破壊をもたらす。
【0003】
抗シトルリン化タンパク質自己抗体(ACPA)と呼ばれる、シトルリン化タンパク質に対する免疫グロブリンG(IgG)自己抗体の存在は、関節リウマチに非常に特異的である。ACPAを含有する患者由来の血清、それらをそれらの膜上に発現するリンパ球細胞及び患者自身はすべて「ACPA陽性」であると言われる。いくつかの研究は、これらのACPAがリウマチ疾患に特異的な自己免疫反応の中心にあり、したがって選択の治療標的を表すことを実証している。
【0004】
ACPAの抗原標的は特徴付けられている。それらは、特に、炎症を起こした滑膜組織に豊富に存在するタンパク質であるフィブリンのα及びβポリペプチド鎖の脱イミン化形態又はシトルリン化形態に対して特異的に向けられる。このシトルリン化は、ペプチジル-アルギニンデイミナーゼ(PAD)の作用によるこれらのポリペプチド鎖のアルギニル残基の酵素的脱イミン化に対応する。
【0005】
より具体的には、フィブリンのα及びβポリペプチド鎖上のACPAによって認識される免疫優性エピトープは、特にPCT/FR00/01857又はPCT/FR2007/000758の出願において特徴付けられ、公開されている。免疫優性エピトープを有する5つのシトルリン化ペプチドは、より詳細には、α36-50Cit(配列番号5に示される)、α171-185Cit(配列番号6に示される)、α501-515Cit(配列番号14に示される)、α621-635Cit(配列番号18に示される)及びβ60-74Cit(配列番号19に示される)と命名されたペプチドである。ACPA陽性患者由来の血清は、これら5つのペプチドのうちの1つ又は複数を認識する。
【0006】
ACPAは、局所形質細胞によってリウマチ滑膜組織に分泌されて、そこに高濃度で見出される。それらは、それらの主な標的であるシトルリン化フィブリンに近いままであり、これも間質沈着物の形態でそこに豊富に存在する。ACPAがこれらの沈着物に結合し、その結果、固定化免疫複合体が形成され、次いで、関節リウマチに関連し局所形質細胞から分泌される他の自己抗体であるリウマチ因子に結合することにより、炎症促進性事象のカスケードが引き起こされる。
【0007】
これらの免疫マクロ複合体によるマクロファージ細胞の、本質的にそれらの膜Fc-ガンマ受容体を介した刺激は、炎症促進性サイトカイン、特にTNF-アルファを分泌させ、これはリウマチ性炎症に関与する主要なサイトカインとして同定されている。
【0008】
今日まで、関節リウマチの治癒的処置はない。処置は、再発の処置及び/又はその出現の予防のみを目的とする。
【0009】
したがって、本発明の目的は、関節リウマチの処置を提供することである。
【0010】
ACPAはオリゴクローナルであるため、少数のクローンBリンパ球の分化から生じる少数のクローン形質細胞によってのみ分泌される。
【0011】
関節リウマチの場合、クローンBリンパ球は、それらの膜上にACPA特異性を有する免疫グロブリンを発現する(これらはACPA陽性Bリンパ球である)が、ACPA陽性クローンBリンパ球の分化から生じる形質細胞(これらはACPA陽性形質細胞である)は、それらの微小環境中にこれらの同じACPAを豊富に分泌する。
【0012】
本発明は、(i)少なくとも1つのシトルリル残基を有する少なくとも1つのフィブリン由来ペプチド及び(ii)ヒト免疫グロブリンのFc断片を含むハイブリッド分子を使用して、それらの表面上にACPAを発現するBリンパ球クローンを標的化し、それらを排除することが可能であることを示す本発明者らの結果に基づく。これらのハイブリッド分子は、ACPA陽性Bリンパ球を特異的に標的とし(前記ACPAによって認識される少なくとも1つのシトルリル残基を有するフィブリン由来ペプチドを使用する)、その後、Fc断片がマクロファージ(食作用を介して)及び/又はNK細胞(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害、すなわちADCCを介して)によって、及び/又は補体カスケードの活性化によって細胞のFc受容体に結合した後に除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】PCT/FR00/01857
【特許文献2】PCT/FR2007/000758
【発明の概要】
【0014】
したがって、ACPAを発現するBリンパ球クローン及びそれ自体がACPAを分泌する形質細胞に分化する細胞を標的とすることによって、本発明のハイブリッド分子は、ACPAを患者の身体から消失させることを目的とする。
【0015】
本発明によるハイブリッド分子
第1の態様では、本発明は、少なくとも1つのシトルリル残基を有する少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドに共有結合した少なくとも1つの抗体Fc断片を含むハイブリッド分子に関し、少なくとも1つのスペーサーが前記Fc断片と前記ペプチドとの間に存在していてもよい。そのような構造の図を図1に示す。
【0016】
本発明によれば、「ハイブリッド分子」は、異なる性質の少なくとも2つの成分、この場合は抗体Fc断片及び前記ペプチドを有する分子を意味する。
【0017】
本発明によれば、抗体の「Fc断片」は、第1の免疫グロブリン定常領域ドメイン(すなわちCH1-CL)を除く免疫グロブリンの定常領域を意味する。したがって、Fc断片はホモダイマーを指し、各モノマーは、IgA、IgD、IgGの最後の2つの定常ドメイン(すなわちCH2及びCH3)、又はIgE及びIgMの最後の3つの定常ドメイン(すなわち、CH2、CH3及びCH4)を含む。
【0018】
本発明によれば、「共有結合した」という表現は、共有結合、すなわち2つの原子が2つの電子を共有する化学結合を意味する。前記共有結合は、極性又は非極性であり得る。
【0019】
本発明によれば、「スペーサー」は、抗体のFc断片を、少なくとも1つのシトルリル残基を有する前記フィブリン由来ペプチドに共有結合的に連結することを可能にする一方で、前記Fc断片を前記ペプチドから分離する(したがって、起こり得る立体障害を低減する)カップリング剤である。それは、任意の分子、特にペプチドであり得る。好ましくは、スペーサーは、ハイブリッド分子の物理的及び化学的特性を改変しない。
【0020】
少なくとも1つのスペーサーの存在は有利であり;ハイブリッド分子の2つのパートナーの独立したアクセス可能性を容易にし(前記ペプチドがACPA陽性Bリンパ球に結合するためにより容易にアクセス可能であるのと同様に、Fc断片は、Fc受容体に結合するためにより容易にアクセス可能である)、及び/又は、ハイブリッド分子を安定化し、及び/又はハイブリッド分子の溶解度を増加させる。
【0021】
一実施形態によれば、本発明によるハイブリッド分子は、1つ又は複数のスペーサーを含み得る。好ましくは、ハイブリッド分子は、1つ又は2つのスペーサーを含む。一実施形態によれば、少なくとも1つのスペーサーが本発明の前記ハイブリッド分子中に存在する場合、前記Fc断片はスペーサーに共有結合し、前記スペーサーはそれ自体が前記ペプチドに共有結合している。別の実施形態によれば、本発明の前記ハイブリッド分子中に少なくとも2つのスペーサーが存在する場合、前記Fc断片は第1のスペーサーに共有結合し、前記第1のスペーサーはそれ自体が第2のスペーサーに共有結合し、第2のスペーサーはそれ自体が前記ペプチドに共有結合している。したがって、Fc断片とペプチドとの間の結合は、直接的又はスペーサーの存在下では間接的でさえあり得る。
【0022】
一実施形態によれば、本発明によるハイブリッド分子は、少なくとも1つのシトルリル残基を有する少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドを含み得る。これは、Fc断片が1つ又は2つのペプチドに結合し得ることを意味する。実際、Fc断片は2つのモノマーを含み、したがって、Fc断片は2つのモノマーのうちの1つのみのペプチドに共有結合することができ、又はFc断片は各モノマーのペプチドに共有結合することができる。好ましくは、2つのペプチドがFc断片に結合している場合、その2つのペプチドは同一であり、例えば、配列番号18又は配列番号19の2つのペプチドである。
【0023】
一実施形態によれば、前記スペーサーは、エーテル基を含有する1つ又は複数の繰り返し単位を含有するポリマーである。特定の実施形態によれば、前記スペーサーは、式PEGnのポリエチレングリコールであり、式中nは、1~100、好ましくは1~10、特に1、2、3、4又は8の整数を表す。本発明によれば、前記ポリエチレングリコールは、例えばアミン基(PEG-NHなどのPEGn-アミン)で官能化することができる。本発明によれば、「1~100の整数」は、1~100のすべての整数値、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100を表す。
【0024】
本発明によれば、「少なくとも1つのシトルリル残基を有するフィブリン由来ペプチド」という表現は、少なくとも1つのアルギニル残基がシトルリル残基によって置換されたフィブリン又はフィブリノーゲンの分子を意味する。本発明による「少なくとも1つのシトルリル残基を有するフィブリン由来ペプチド」とは、ACPAによって認識されるペプチドを意味し、「シトルリン化ペプチド」と呼ぶこともできる。そのようなペプチドは、天然、組換え又は合成のフィブリン又はフィブリノーゲンの断片から得ることができる。このようなペプチドは、直接合成によっても得ることができる。ペプチドを構成するアミノ酸は、L又はDアミノ酸、好ましくはLであり得る。前記置換は、例えば、ペプチジル-アルギニンデイミナーゼ(PAD)の作用下で酵素的脱イミン化工程によって行うことができる。このようなペプチドは、合成されたペプチドに1つ又は複数のシトルリル残基を直接組み込むことによっても得ることができる。本発明によるペプチドはACPAに結合し、少なくとも1つのシトルリル残基を有する前記フィブリン由来ペプチドとACPAとの間の結合は、ELISA試験を用いて、又はSebbag M,Moinard N,Auger I,Clavel C,Arnaud J,Nogueira L,Roudier J,Serre G,Epitopes of human fibrin recognized by the rheumatoid arthritis-specific autoantibodies to citrullinated proteins.Eur J Immunol 36:2250-2263,2006による刊行物に記載されているように検証することができる。
【0025】
一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記ペプチドは、少なくとも1つのアルギニル残基をシトルリル残基で置換することにより、脊椎動物のフィブリンのα鎖又はβ鎖の配列の全部又は一部に由来する。好ましくは、前記ペプチドは、脊椎動物のフィブリンのα鎖(特に、配列番号27によって表される)又はβ(特に、配列番号28によって表される)の少なくとも5個の連続したアミノ酸の配列に由来する。さらにより詳細には、前記脊椎動物のフィブリンは、哺乳動物、好ましくはヒトのフィブリンである。
【0026】
一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、ペプチドは、少なくとも2個の連続するアミノ酸、3個の連続するアミノ酸、4個の連続するアミノ酸、好ましくは5個の連続するアミノ酸、さらにより好ましくは5~25個のアミノ酸のサイズを有する。本発明によれば、「5~25」は、すべての値:5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24及び25を意味する。好ましくは、前記ペプチドは、10~20アミノ酸、より詳細には15アミノ酸のサイズを有する。
【0027】
一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、ペプチドは直鎖状である。
【0028】
一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、ペプチドは、ACPAに対するその反応性を改善するように改変することができる。例として、ペプチドは環化することができ、ペプチドは、レトロペプチド(Lアミノ酸は、再生されるペプチドの逆配列に従って結合する)又はレトロインベルソペプチド(アミノ酸Dアミノ酸は、天然のLアミノ酸の代わりに、再生されるペプチドの逆配列に従って結合する)であり得る。なおさらなる特定の実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記ペプチドの末端カルボキシル官能基(COOH)は、カルボキサミド官能基(CONH)によって置き換えられる。好ましくは、配列番号12のペプチドでは、前記ペプチドの末端カルボキシル官能基(COOH)がカルボキサミド官能基(CONH)によって置き換えられている。例として、β60-74Citペプチド(配列番号19で表される)は、有利には、このようなカルボキサミド官能基を有する。
【0029】
別の実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、ペプチドは、その合成を容易にし、及び/又はその安定性を改善するように改変することができる(例えばアルキル化による)。なおさらなる特定の実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記ペプチドの末端アミン官能基(NH)はアセチルかされている。好ましくは、配列番号1のペプチドにおいて、前記ペプチドの末端アミン官能基はアセチル化されている。例として、α621-635Citペプチド(配列番号18に示される)は、有利には、その末端アミン(NH)にそのようなアセチル官能基を有する。
【0030】
一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、ペプチドのアミン官能基及びカルボキシル官能基は、酸又は塩基に対応する塩の形態であり得る。
【0031】
一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記ペプチドは、少なくとも1つのシトルリル残基を含み、以下からなる群から選択される。
a)配列XPAPPPISGGGYXAX(配列番号1)によって定義されるペプチドであって、X、X、及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、X又はX又はX3残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
b)配列GPXVVEXHQSACKDS(配列番号2)によって定義されるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、X又はX残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
c)配列SGIGTLDGFXHXHPD(配列番号3)によって定義されるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、X又はX残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
d)配列VDIDIKIXSCXGSCS(配列番号4)によって定義されるペプチドであって、X及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、X又はX残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
e)配列XGHAKSXPVXGIHTS(配列番号12)によって定義されるペプチドであって、X、X、及びXがそれぞれシトルリル残基又はアルギニル残基を表し、X又はX又はX残基の少なくとも1つがシトルリル残基である、ペプチド;
f)前記ペプチドa)~e)の1つからの少なくとも1つのシトルリル残基を含む少なくとも5個の連続アミノ酸を含むペプチド。
【0032】
1つの特定の実施形態によれば、前記ペプチドは、少なくとも1つのシトルリル残基を含み、以下からなる群から選択される。
-X若しくはX若しくはXから選択される少なくとも1つの残基がシトルリル残基である、配列番号1の配列によって定義されるペプチド、又は前記シトルリル残基(複数可)を含有する前記配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸の断片を含むペプチド;
-少なくともX若しくはXがシトルリル残基である、配列番号2の配列によって定義されるペプチド、又は前記シトルリル残基(複数可)を含有する前記配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸の断片を含むペプチド;
-少なくともX若しくはXがシトルリル残基である、配列番号3の配列によって定義されるペプチド、又は前記シトルリル残基(単数又は複数)を含有する前記配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸の断片を含むペプチド;
-少なくともX若しくはXがシトルリル残基である、配列番号4の配列によって定義されるペプチド、又は前記シトルリル残基(複数可)を含有する前記配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸の断片を含むペプチド;
-X若しくはX若しくはXから選択される少なくとも1つの残基がシトルリル残基である、配列番号12の配列によって定義されるペプチド、又は前記シトルリル残基(単数又は複数)を含有する前記配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸の断片を含むペプチド。
【0033】
なおさらなる特定の実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記ペプチドは、少なくとも1つのシトルリル残基を含み、以下からなる群から選択される。
-X、X、及びXがシトルリル残基である、配列番号1の配列によって定義されるペプチド、又は前記配列を含む少なくとも15アミノ酸のペプチド(配列番号19のペプチドである);
-X及びXがシトルリル残基である、配列番号2の配列によって定義されるペプチド、又は前記シトルリル残基を含有する前記配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸の断片を含むペプチド(配列番号5のペプチドである);
-X及びXがシトルリル残基である、配列番号3の配列によって定義されるペプチド、又は前記シトルリル残基を含有する前記配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸の断片を含むペプチド(配列番号14のペプチドである);
-X及びXがシトルリル残基である、配列番号4の配列によって定義されるペプチド、又は前記シトルリル残基を含有する前記配列の少なくとも5個の連続するアミノ酸の断片を含むペプチド(配列番号6のペプチドである);
-X、X及びXがシトルリル残基である、配列番号12の配列によって定義されるペプチド、又は前記シトルリル残基を含有する前記配列の少なくとも10個の連続するアミノ酸の断片を含むペプチド(配列番号18のペプチドである)。
【0034】
なおさらなる特定の実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記ペプチドは、配列番号5(α36-50cit3842)、配列番号6(α171-185cit178181)、配列番号7(α183-197cit186,190)、配列番号8(α246-260cit258)、配列番号9(α259-273cit263,271)、配列番号10(α366-380cit367)、配列番号11(α396-410cit404)、配列番号13(α411-425cit425)、配列番号14(α501-515cit510,512)、配列番号15(α546-560cit547)、配列番号16(α561-575cit573)、配列番号17(α588-602cit591)、配列番号18(α621-635cit621,627,630)、配列番号19(β60-74cit60,72,74)、配列番号20(β210-224cit224)、配列番号21(β281-295cit285,294)、配列番号22(β 420-434cit421)及び配列番号23(β433-447cit436445)からなる群から選択され、より好ましくは配列番号5(α36-50cit3842)、配列番号6(α171-185cit178181)、配列番号14(α501-515cit510,512)、配列番号18(α621-635cit621,627,630)及び配列番号19(β60-74cit60,72,74)からなる群から選択され、さらにより好ましくは配列番号18(α621-635cit621,627,630)及び配列番号19(β60-74cit60,72,74)から選択される。
【0035】
一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記Fc断片は、ヒトFc断片、特にIgG、より詳細にはIgG1のものである。IgG1は、任意のアロタイプ変異体、例えばG1m3又はnG1m1に対応し得る。一例として、IgG1のFc断片は、配列番号24、配列番号25(Fc+Q-タグ)又は配列番号26(Fc+Q-タグビス)によって表される。
【0036】
一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記Fc断片は野生型(WT)又は変異型である。突然変異(複数可)は、血漿半減期を増加若しくは減少させること、又はFc断片のエフェクター機能を改変することを目的とし得る。なおさらなる特定の実施形態によれば、前記変異型Fc断片は、少なくとも以下の突然変異:
-L234A及びL235A(LALA)、又は
-L234A、L235A及びP329G(LALAPG)、又は
-G236A、S239D及びI332E(GASDIE)、又は
-G236A、S239D、A330L及びI332E(GASDALIE)、又は
-S239D、H268F、S324T及びI332E(SDHFSTIE又はSDH)を含み、
ナンバリングは、EUインデックスに従ってヒトIgG1の配列で示される。そのような突然変異は、Bruhns and Jonsson,Immunol Rev.2015 Nov;268(1):25-51による論文に記載されている。好ましくは、ハイブリッド分子が治療に使用される場合、前記変異型Fc断片は、少なくともGASDIE、GASDALIE又はSDH突然変異を含む。
【0037】
一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記Fc断片は、グリコシル化形態の0%~100%のフコシル化率を有する。本発明によれば、「0%~100%」は、0~100のすべての整数値、すなわち、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100%を表す。Fc断片の弱いフコシル化は、強いADCC応答を引き起こす。これが、特定の実施形態によれば、前記Fc断片が、グリコシル化形態の0%~60%、特に50%、40%、30%、20%、10%又は0%のフコシル化率を有する理由である。本発明によれば、フコシル化率は、Fc断片が運ぶことができるフコースの最大量に対する、Fc断片によって運ばれるフコースの平均割合として定義される。
【0038】
Fc断片及びペプチドは、それぞれN末端及びC末端を有する。したがって、Fc断片は、そのN末端又はC末端を介してペプチドのN末端又はC末端に結合することができる。一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記共有結合は、前記Fc断片のC末端と前記ペプチドのN末端との間、又は前記Fc断片のN末端と前記ペプチドのN末端との間に位置する。一実施形態によれば、スペーサーが存在する場合、スペーサーは、そのN末端又はC末端を介してFc断片に連結され得る。別の実施形態によれば、2つのスペーサーが存在する場合、第1のスペーサーは、そのN末端又はC末端を介してFc断片に結合することができ、第2のスペーサーは、そのN末端又はC末端、特にN末端を介してペプチドに結合することができる。あるいは、前記Fc断片と前記ペプチドとの間の前記共有結合(1つ又は複数のスペーサーの存在下であってもよい)は、Fc断片の全部又は一部に作製され得る。本発明によれば、「Fc断片の全部又は一部」は、Fc断片を構成する異なるアミノ酸が前記ペプチドとの共有結合に関与し得ることを意味する。
【0039】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのスペーサーが本発明による前記ハイブリッド分子中に存在する場合、これにより、Fc断片が、前記ペプチドとの共有結合にそれ自体が関与するアジド又はアルキンに結合することが可能になる。一実施形態によれば、少なくとも1つのスペーサーが本発明による前記ハイブリッド分子中に存在する場合、これにより、ペプチドが、Fc断片との共有結合にそれ自体が関与するアルキン又はアジドに結合することも可能にし得る。好ましい実施形態によれば、本発明によるハイブリッド分子は、少なくとも2つのスペーサー:Fc断片がアジド又はアルキンに結合することを可能にする第1のスペーサー及びペプチドがアジド(Fc断片がアルキンに結合している場合)又はアルキン(Fc断片がアジドに結合している場合)に結合することを可能にする第2のスペーサーを含む。
【0040】
本発明による一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、前記Fc断片は、
-少なくとも1つのアジド若しくは1つのアルキン、例えばシクロオクチン、特にDBCOにカップリングされているか、又は
-アジド又はアルキン、例えばシクロオクチン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのスペーサーに結合しており、
且つ、前記ペプチドは、
-アジド又はアルキン、例えばシクロオクチン、特にDBCOとカップリングされているか、
-又は、アジド又はアルキン、例えばシクロオクチン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされているスペーサーに結合しており、
前記Fc断片と前記ペプチドとの間の共有結合は、1つ又は複数のスペーサーの存在下であってもよく、アジドとアルキンとの間に作り出される。
【0041】
本発明による一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、
-Fc断片は、少なくとも1つのアジドにカップリングされ、前記ペプチドは、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにカップリングされているか、又は
-Fc断片は、少なくとも1つのアルキン、例えばシクロオクチン、特にDBCOにカップリングされており、前記ペプチドは、アジドにカップリングされており、
前記Fc断片と前記ペプチドとの間の共有結合は、アジドとアルキンとの間に作り出される。
【0042】
本発明による一実施形態によれば、本発明による前記ハイブリッド分子において、
-Fc断片は、少なくとも1つのアジドにカップリングされ、前記ペプチドは、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされているスペーサーに結合されているか、又は
-Fc断片は、少なくとも1つのアルキン、例えばシクロオクチン、特にDBCOにカップリングされており、前記ペプチドは、それ自体がアジドにカップリングされているスペーサーに結合されているか、又は
-Fc断片は、それ自体がアジドにカップリングされた少なくとも1つのスペーサーに結合されており、前記ペプチドは、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにカップリングされているか、又は
-Fc断片は、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのスペーサーに結合されており、前記ペプチドは、アジドにカップリングされているか、又は
-Fc断片は、それ自体がアジドにカップリングされた少なくとも1つのスペーサーに結合されており、前記ペプチドは、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされているスペーサーに結合されているか、又は
-Fc断片は、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのスペーサーに結合されており、前記ペプチドは、それ自体がアジドにカップリングされたスペーサーに結合されており、
前記Fc断片と前記ペプチドとの間の共有結合は、1つ又は複数のスペーサーの存在下で、アジドとアルキンとの間に作り出される。
【0043】
一実施形態によれば、上記の分子、より詳細には8ページ22行目~9ページ6行目において、使用されるスペーサーは好ましくはPEGnスペーサーであり、より詳細には、nは1~10の整数を表す。本発明によるハイブリッド分子が少なくとも2つのPEGnスペーサーを含む場合、2つのスペーサーの数字nは、同一であっても異なっていてもよい。例えば、第1のスペーサーはPEGとすることができ、第2のスペーサーはPEG又はPEGとすることができる。
【0044】
特に好ましい実施形態によれば、上記の分子、より詳細には8ページ22行目~9ページ6行目において、ペプチドはヒトフィブリン又はフィブリノーゲンに由来し、Fc断片はヒトFc、好ましくはヒトIgG1である。
【0045】
本発明によれば、アジドとアルキンとの間の共有結合の形成は、「クリック化学」工程として知られているものに対応し、アジドのN部分はアルキンと反応する。アジドは、ヒドラゾ酸HNの塩、又は窒素原子の1つが有機化合物の炭素原子と共有結合している有機アジド(例えば、メチルアジドCH)を意味する。好ましくは、アジドは式Nで表される。アルキンは、少なくとも1つの三重結合の存在を特徴とする、一般式C2n-2を有する分子を意味する。アルキンは、好ましくはシクロオクチンであり、さらにより好ましくはジベンゾシクロオクチン(DBCO)である。
【0046】
Fc断片、前記ペプチド及び場合により前記スペーサー(複数可)は、任意の従来使用されている分子カップリング技術(コンジュゲーションなど)によってアルキン又はアジドにカップリングされる。Fc断片をスペーサーに共有結合させるため、及び/又はペプチドをスペーサーに共有結合させるために、任意の技術を使用してもよい。
【0047】
より詳細には、コンジュゲーション技術は、酵素的コンジュゲーション又は化学的コンジュゲーションを意味する。酵素的コンジュゲーションは、例えば、遊離アミン基とグルタミン又はリジン残基との間の共有結合の形成を触媒するトランスグルタミナーゼを使用するコンジュゲーション、又はさらにはソルターゼなどのトランスペプチダーゼを使用するコンジュゲーションを意味する。酵素的コンジュゲーションに関するさらなる情報については、例えば、特許出願US20160361434若しくはUS20170313787、又はOhtsukaらによる刊行物、Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry Volume 64,2000-Issue 12,Comparison of Substrate Specificities of Transglutaminases Using Synthetic Peptides as Acyl donorsを参照されたい。トランスグルタミナーゼ基質は、例えば、配列番号29(LLQG)で表されるグルタミル残基(Qタグ)を含むペプチドである。化学的コンジュゲーションは、例えば、ジスルフィド架橋の還元後に単離されるか又はジスルフィド架橋に関与するシステインと、例えばマレイミドとの間の共有結合を意味する。そのようなコンジュゲーションの例を図9に示す。この例では、Fc断片はQ-タグペプチドを含み、前記Fc断片は、Q-タグのグルタミル残基とPEGnスペーサーが有するNH基との間に共有結合を生成するトランスグルタミナーゼの作用により、(それ自体がアジドにカップリングされている)スペーサーに結合する。
【0048】
本発明によれば、「カップリングされた」又は「分子カップリング」という用語は、共有結合の確立を意味し、したがってFc断片及び/又はペプチド及び/又はスペーサーは、アルキン又はアジドに共有結合している。「結合した」という用語もまた、共有結合を意味する。したがって、例として、「Fc断片は、アジドにカップリングされていて、前記ペプチドは、シクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOにそれ自体がカップリングされているスペーサーに結合されている」という表現は、「Fc断片は、アジドに共有結合しており、前記ペプチドは、スペーサーに共有結合しており、前記スペーサーは、それ自体がシクロオクチンなどのアルキン、特にDBCOに共有結合している」と読むこともできる。
【0049】
本発明による一実施形態によれば、前記ハイブリッド分子は、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された野生型Fc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに連結された突然変異L234A、L235A及びP329Gを含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているアジドに共有結合したシクロオクチンにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているアジドに共有結合したシクロオクチンにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているアジドに共有結合したシクロオクチンにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、L234A、L235A及びP329G突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、L234A、L235A及びP329G突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているスペーサーPEGnにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、G236A、S239D及びI332E突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、G236A、S239D、A330L及びI332E突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された、G236A、S239D及びI332E突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された、G236A、S239D、A330L及びI332E突然変異を含むFc断片によって表され、
nは、好ましくは1~10の整数、より詳細には1、2、3、4又は8を表す。
【0050】
本発明による一実施形態によれば、前記ハイブリッド分子は、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された野生型Fc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された、L234A、L235A及びP329G突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片、
nは、好ましくは1~10の整数、より詳細には1、2、3、4又は8を表す。
【0051】
本発明によるさらにより特定の実施形態によれば、前記ハイブリッド分子は、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された野生型Fc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)で表されるペプチドにカップリングされたシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された、L234A、L235A及びP329G突然変異を含むFc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合した少なくとも1つのアジドにそれ自体がカップリングされているPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片、
-配列番号19(β60-74cit60,72,74)又は配列番号18(α621-635cit621,627,630)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片、
nは、好ましくは1~10の整数、より詳細には1、2、3、4又は8を表す。
【0052】
本発明によるハイブリッド分子の使用
第2の態様では、本発明はまた、医薬品として使用するための上記で定義されたハイブリッド分子に関する。
【0053】
より詳細には、本発明によれば、前記ハイブリッド分子は、患者の体内を標的とし、ADCC及び/又は食作用及び/又は補体活性化によって、全ての「ACPA陽性」B細胞(すなわち、その表面上に抗シトルリン化タンパク質自己抗体[ACPA]を発現するBリンパ球)を溶解することが意図されている。実際、本発明によるハイブリッド分子は、少なくとも1つのシトルリル残基を有するフィブリン由来ペプチド(ACPAの標的エピトープである)のおかげで、「ACPA陽性」Bリンパ球に結合する。本発明によるハイブリッド分子はまた、細胞に結合し、特にマクロファージの表面だけでなくNK細胞(「ナチュラルキラー」細胞)の表面にも存在するそれらのFc断片、天然Fc受容体リガンド(例えば、Fc断片がIgGに由来する場合、Fcガンマ受容体(FcγR))のために、「ACPA陽性」Bリンパ球を破壊することを可能にする。
【0054】
特定の実施形態によれば、本発明は、シトルリン化タンパク質に対する自己抗体の産生に関連する自己免疫疾患、特に、グージュロー・カルティーウド(Gougerot-Sjogren)症候群及び関節リウマチの処置におけるその使用のための、上で定義されるようなハイブリッド分子に関する。この実施形態では、抗シトルリン化タンパク質自己抗体の産生に関連する前記自己免疫疾患の重症型、並びに乾癬性関節炎又は全身性エリテマトーデスなどの他の慢性関節炎を伴う様々ないわゆる「境界」型が標的とされる。
【0055】
一実施形態によれば、本発明はまた、薬学的に許容され得るビヒクルと組み合わせて、先行する請求項のいずれか一項に記載のハイブリッド分子を含む医薬組成物に関する。
【0056】
本発明によれば、「薬学的に許容され得るビヒクル」は、組成物を任意のガレヌス形態で患者に投与するのに適したものにする任意の製剤を意味する。
【0057】
上記のように、本発明は、「ACPA陽性」Bリンパ球を破壊することを目的とする。しかしながら、ACPA分泌形質細胞に分化した「ACPA陽性」Bリンパ球は、もはや前述のハイブリッド分子によって標的化されない。したがって、特定の実施形態によれば、本発明は、第2のハイブリッド分子と組み合わせて医薬品として使用するための前述のハイブリッド分子に関し、前記第2のハイブリッド分子は、少なくとも1つのシトルリル残基を有する少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドを含み、前記ペプチドは、少なくとも1つの抗体又は少なくとも1つの抗体断片に共有結合しており、前記抗体又は断片は、CD38及び/又はCD138に結合することができ、1つ又は複数のスペーサーが前記ペプチドと前記抗体又は前記断片との間に存在していてもよい。そのような併用療法は、ACPA陽性クローン形質細胞及びBリンパ球を特異的に標的化及び破壊し、したがって、患者の身体からACPAを排除することを可能にする。使用される抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0058】
特定の実施形態によれば、この第2のハイブリッド分子において、断片は、抗体の抗原結合部位又は可変領域を含む抗体部分を意味する。そのような抗体断片は、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、dsFv、scFv、単離されたVH又はVL断片などの単鎖断片、ラクダ科VHH、軟骨魚類VNAR、又は異なる断片からなる多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体、又は「ナノボディ」、「ダイアボディ」、「トリアボディ」、「テトラボディ」、若しくはタンデムのscFvなどである。これらの断片は当業者に周知である。これらの断片及び構造に関するさらなる情報は、例えば、国際出願WO 2017137579、Birdら、1988 Science 242:423-426;及びHustonら、1988 Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883、又はNelson,mAbs 2:1,77-83;January/February 2010に記載されている。断片は、好ましくはFab又はF(ab’)2である。
【0059】
特定の実施形態によれば、この第2のハイブリッド分子において、前記抗体又はF(ab’)2断片は、CD38及び別の形質細胞標的に対する二重特異性抗体又はF(ab’)2断片である。あるいは、この第2のハイブリッド分子において、前記抗体又はF(ab’)2断片は、CD138及び別の形質細胞標的に対する二重特異性抗体又はF(ab’)2断片である。本発明によれば、「別の形質細胞標的」は、形質細胞の表面に発現される任意のマーカーを意味する。
【0060】
別の特定の実施形態によれば、この第2のハイブリッド分子において、前記抗体又はF(ab’)断片は、CD38及びCD138に対する二重特異性抗体又はF(ab’)断片である。
【0061】
本発明のこの特定の実施形態によれば、第1及び第2のハイブリッド分子は、同時に、別々に、又は経時的に徐々に投与される。
【0062】
別の実施形態によれば、本発明によるハイブリッド分子は、少なくとも1つの放射性同位体又はA488若しくはA647などの少なくとも1つの蛍光色素にカップリングすることができる。そのような分子は、分子トレーサーツールとして有利に使用することができる。
【0063】
したがって、別の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つのシトルリル残基を有する少なくとも1つのフィブリン由来ペプチドに共有結合した少なくとも1つの抗体Fc断片を含むハイブリッド分子の分子ツールとしてのインビトロ又はエクスビボでの使用に関し、少なくとも1つのスペーサーが前記Fc断片と前記ペプチドとの間に存在していてもよい。そのような構造は、特に、ACPA並びにマクロファージ及びNK細胞のFc受容体へのハイブリッド分子の結合を分析するため、並びにマクロファージ及びNK細胞のハイブリッドの結合に対する反応性、続いてACPAによる後者の架橋などを分析するために使用することができる。放射性同位元素及び/又は蛍光色素は、好ましくはFc断片に、さらにより詳細にはQタグのレベル(存在する場合)又はリジンのレベルでカップリングされる。
【0064】
本発明によるハイブリッド分子の製造するための方法
別の態様では、本発明はまた、先に定義されたハイブリッド分子が移植された免疫細胞を得ることを可能にする方法に関する。
【0065】
したがって、一実施形態によれば、本発明は、以下の工程:
-(i)Fc断片にカップリングされたアジドを得ること、又はFc断片にカップリングされたアルキンを得ること、
-(ii)ペプチドにカップリングされたアルキンを得ること、又はペプチドにカップリングされたアジドを得ること、
-(iii)アジドとアルキンとの間の共有結合の形成、を含む上記で定義したハイブリッド分子を製造するための方法に関し、
-工程(i)は、工程(ii)の前又は後に、あるいは同時に行うことができる。
【0066】
したがって、一実施形態によれば、本発明は、以下の工程:
-(i)場合により少なくとも1つのスペーサーの存在下での、少なくとも1つのアジドとFc断片とのカップリング、又は場合によりスペーサーの存在下での、少なくとも1つのアルキンと少なくとも1つのFc断片とのカップリング、
-(ii)場合によりスペーサーの存在下でのアルキンとペプチドとのカップリング、又は場合によりスペーサーの存在下でのアジドとペプチドとのカップリング、
-(iii)アジドとアルキンとの間の共有結合(複数可)の形成、を含む上記で定義したハイブリッド分子を製造するための方法に関し、
-工程(i)は、工程(ii)の前又は後に、あるいは同時に行うことができる。
【0067】
したがって、別の実施形態によれば、本発明は、以下の工程:
-(i)場合により少なくとも1つのスペーサーの存在下での、Fc断片の各モノマー上の少なくとも1つのアジドのカップリング、又は場合によりスペーサーの存在下での、Fc断片の各モノマー上の少なくとも1つのアルキンのカップリング、
-(ii)場合によりスペーサーの存在下でのアルキンとペプチドとのカップリング、又は場合によりスペーサーの存在下でのアジドとペプチドとのカップリング、
-(iii)アジドとアルキンとの間の共有結合(複数可)の形成、を含む上記で定義したハイブリッド分子を製造するための方法に関し、
-工程(i)は、工程(ii)の前又は後に、あるいは同時に行うことができる。
【0068】
本発明の配列を以下の表1に示す。


【表1】
【0069】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、本発明を説明する添付の図面及び実施例を読むことによって明らかになり、決して本発明を限定することを意図するものではない。
【0070】
例示されたハイブリッド分子では、PEGnスペーサーに結合しているのはFc断片のN末端であり(Cter-PEGで示される場合を除く[図4参照])、DBCOシクロオクチン又は存在する場合には第2のPEGnスペーサーに結合しているのは常に前記ペプチドのN末端である。さらに、例示されたハイブリッド分子では、Fc断片に結合したPEGnスペーサーにおいて、nはより詳細には3又は4を表し、ペプチドに結合したPEGnスペーサーにおいて、PEGnスペーサーは3又は8を表すが、nの他の任意の値、特に1~10を使用することができる。
【0071】
以下の実施例では、「アーム化(armed)又はプレアーム化(pre-armed)」細胞は、本発明によるハイブリッド分子が付着している細胞を意味する。したがって、ハイブリッド分子は、そのFc断片のために細胞のFc受容体に結合する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、本発明によるハイブリッド分子の一例の図を示す。 抗体Fc断片と、シトルリル残基を有するフィブリン由来ペプチド(「シトルリン化ペプチド」と称される)との間にスペーサー(任意)が示されている。
図2図2は、本発明によるハイブリッド分子に結合した膜貫通ACPAをその表面で発現するBリンパ球を示し、前記ハイブリッド分子は、それ自体がFc断片によってNK細胞に結合している。 したがって、NK細胞は、ADCCによってBリンパ球を破壊することができる。より具体的には、この図は、その表面にACPA型BCRを発現し、ハイブリッド分子によって担持されるシトルリン化ペプチドと特異的に相互作用するB細胞(又はBリンパ球)を示す。NK細胞の表面上に発現されたFcγRIIIa(CD16a)に対する、同じハイブリッド分子によって担持されたFc断片の結合は、ADCCを活性化し、ACPA陽性Bリンパ球の特異的破壊を誘導する。(ACPA、抗シトルリン化タンパク質自己抗体;ADCC:抗体依存性細胞傷害性;BCR、B細胞受容体;FcγR、Fc-γ受容体;NK細胞、ナチュラルキラー細胞)。
図3図3は、本発明によるハイブリッド分子に結合した膜貫通ACPAをその表面で発現するBリンパ球を示し、前記ハイブリッド分子は、それ自体がFc断片によってマクロファージに結合している。 したがって、マクロファージは、食作用によってBリンパ球を破壊することができる。より具体的には、この図は、それらの表面にACPA型BCRを発現し、ハイブリッド分子によって担持されるシトルリン化ペプチドと特異的に相互作用するB細胞(又はBリンパ球)を示す。マクロファージの表面上に発現された異なるFcγRに対する、これらの同じハイブリッド分子によって担持されたFc断片の結合は、ADP(すなわち食作用)を活性化し、ACPA陽性Bリンパ球の特異的破壊を誘導する。(ACPA、抗シトルリン化タンパク質自己抗体;ADP:抗体依存性食作用;BCR、B細胞受容体;FcγR、Fc-γ受容体)。
図4図4は、配列番号19(β60-74cit60,72,74)のペプチドを含むいくつかのハイブリッド分子のACPAに対する反応性を示す。 β60-74は、配列番号19のペプチドを表す。Fc-WT-β60-74は、配列番号19(β60-74cit60,72,74)で表されるペプチドにカップリングされたDBCOシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された野生型Fc断片を表す。Fc-LALA-β60-74は、配列番号19で表されるペプチドにカップリングされたDBCOシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された、L234A、L235A及びP329G突然変異を含むFc断片を表す。Fc-SDH-β60-74は、配列番号19で表されるペプチドにカップリングされたDBCOシクロオクチンに共有結合されたアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合された、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片を表す。Fc-WT-PEG-β60-74は、配列番号19(β60-74cit60,72,74)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片を表す。Fc-SDH-PEG-β60-74は、配列番号19(β60-74cit60,72,74)で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片を表す。Fc-SDH(Cter)-PEG-β60-74は、ハイブリッドFc-SDH(Cter)-PEG-β60-74において、第1のPEGnがN末端に付着している他の例とは異なり、第1のPEGnがFc断片のC末端に付着していることを除いて、Fc-SDH-PEG-β60-74に対応する。nは、PEGnスペーサーを使用する場合、1~10の数を表し、好ましくは1、2、3、4又は8である。
図5図5は、配列番号18のペプチ(α621-635cit621,627,630)を含むハイブリッド分子の、ACPAに対する反応性を示す。 α621-635は、配列番号18のペプチドを表す。Fc-WT-PEG-α621-635は、配列番号18で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片を表す。Fc-SDH-PEG-α621-635は、配列番号18で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片を表す。nは、PEGnスペーサーを使用する場合、1~10の数を表し、好ましくは1、2、3、4又は8である。
図6図6は、配列番号18のペプチドを含むハイブリッド分子に対する、SDH型突然変異を有する未改変又は改変Fcを含む組換えヒトモノクローナルACPA(クローン2H06)の反応性を示す。 FcWT-PEG-α621-635は、配列番号18で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片を表す。FcSDH-PEG-α621-635は、配列番号18で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片を表す。nは、PEGnスペーサーを使用する場合、1~10の数を表し、好ましくは1、2、3、4又は8である。
図7図7は、Fc断片の誘導及びコンジュゲーションのためのスキームを含む、本発明によるハイブリッド分子の製造プロセスを示す。
図8図8は、ハイブリッド分子Fc-WT-PEG-α621-635arg及びFc-WT-PEG-α621-635citの存在下における食作用及びBリンパ球のパーセンテージの進化を示す。 実施例6に示した6つの実験の結果を示す(N=6)。P値は以下の通りである:*<0.05;**<0.01;***<0.001。
図9図9は、ハイブリッドFcWT-N3-DBCO-PEG3-α621-635Cit及びFcSDH-N3-DBCO-PEG3-α621-635Citの存在下で、その膜上に組換えモノクローナルACPAを発現する形質導入悪性リンパ芽球性ヒトB細胞株由来の細胞のヒトNK細胞による溶解を示す。 Nalm6は、Nalm6細胞のみをインキュベートした場合;Nalm6+NKは、Nalm6細胞をNK細胞とインキュベートした場合;WTαCITは、WTαCITハイブリッドをNalm6細胞及びNK細胞とインキュベートした場合;WTαArgは、WTαArgハイブリッドをNalm6細胞及びNK細胞とインキュベートした場合;SDHαCITは、SDHαCITハイブリッドをNalm6細胞及びNK細胞とインキュベートした場合;及びSDHαArgは、SDHαArgハイブリッドをNalm6細胞及びNK細胞とインキュベートした場合を表す。 その膜上に組換えモノクローナルACPAを発現する形質導入リンパ芽球性悪性ヒトB細胞株は、実施例11及び図10に記載のNalm6株に対応する。モノクローナル抗体は、2H06として公知の022014CCP14CFCT2H06クローンである。
図10図10は、形質導入後のBリンパ芽球性Nalm6株(2H06 Nalm6)によるモノクローナル2H06 ACPAの膜発現を示す。 A-IgG抗Fab抗体及びα621-635citペプチドテトラマー(配列番号18)による二重標識を用いた、モノクローナル2H06 ACPAのその膜上での発現のためのNalm6 B株の形質導入効率のフローサイトメトリーによる分析。B-抗Fab抗体を使用して実施した細胞選別後の2H06 Nalm6形質導入細胞における濃縮のフローサイトメトリーによる分析。C-形質導入Nalm6株によって発現された膜2H06 ACPAと、蛍光色素A647にカップリングされたFc-WT-PEG-α621-635cit(cit)又はFc-WT-PEG-α621-635arg(arg)とのハイブリッドとの間の相互作用のフローサイトメトリー分析。NT Nalm6:形質導入されていない対照Nalm6株。Fc-WT-PEG-α621-635は、配列番号18で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片を表す。Fc-WT-PEG-α621-635argは、X残基がシトルリン化されていない(すなわち、それらはアルギニン残基である)という点で、配列番号18で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc(WT)断片を表す。 モノクローナル2H06 ACPAを発現するNalm6細胞は、実施例で述べた形質導入Nalm6株に対応する。
図11図11は、形質導入2H06 Nalm6 ACPA+B株の細胞のFc-ペプチドα621-635ハイブリッドで前処置したマクロファージによる食作用を示す。 A-図は、細胞集団を散布図の形態で表したフローサイトメトリー実験の結果を示す。T0は、Nalm6標的細胞とマクロファージとを接触させた後の時間0における結果を表す。T2は、ハイブリッド分子の非存在下でNalm6標的細胞とマクロファージとを互いに接触させた2時間後である、時間2hにおける結果を表す(自発的食作用)。他のすべてのサイトメトリーダイアグラムは、Nalm6標的細胞を、Fc-PEG-α621-635cit(シトルリン化)ハイブリッド又はFc-PEG-α621-635arg(非シトルリン化)対照ハイブリッドをアーム化したマクロファージと接触させた2時間後に得られた結果を表す。ハイブリッドは、異なるタイプのFc断片:野生型(WT)Fc断片、GASDIE Fc断片(G236A、S239D及びI332E突然変異を表す)又はFc SDH断片(S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を表す)を使用したことを除いて、図10に記載されるものと同一である。二重蛍光(PKH-67緑色/PKH-26赤色)を示す細胞は、標的細胞を貪食したマクロファージに対応する。単一のPKH-26蛍光を示す細胞は、残存する(すなわち、マクロファージの存在下で2時間後に貪食されない)Nalm6標的細胞に対応する(%標的集団)。サイトメトリーダイアグラムの各象限において、異なる細胞集団は、総細胞集団のパーセンテージとして表される。B-図は、Aに記載される各実験条件について、3回の実験の結果から計算された二重陽性細胞のパーセンテージの平均及び標的集団の細胞のパーセンテージの平均をヒストグラムの形態で示す。黒色のヒストグラムは対照条件を表す。白色のヒストグラムは、Fc-PEG-α621-635citハイブリッドの存在下における条件を表す。p値は以下の通りである:*p<0.05;**p<0.01。
図12図12は、種々の濃度のFc-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下における2H06 Nalm6 ACPA+B株の細胞のプレアーム化マクロファージによる食作用を示す。 この図は、様々な濃度のFc-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下でのインキュベーションによって、2H06 Nalm6 B細胞のプレアーム化マクロファージによる食作用の後に行われたフローサイトメトリー実験の結果を示す。A-図は、各実験条件について、二重陽性細胞のパーセンテージをヒストグラムの形態で示す。B-図は、残存する標的Nalm6集団(すなわち貪食されていない)のパーセンテージを示す。暗いヒストグラムは、非シトルリン化Fc-PEG-α621-635argハイブリッドの存在下で得られた対照条件を表す。明るいヒストグラムは、Fc-PEG-α621-635citハイブリッドの存在下における条件を表す。使用されるハイブリッドの濃度は、5μg/ml~5ng/mlである。ハイブリッドは、図11に記載されているものと同一であり、Fc GASDALIE断片(G236A、S239D、A330L及びI332E突然変異を含む)を有するハイブリッド分子も試験したという点が異なる。
図13図13は、FcWT-PEG-ペプチドα621-635ハイブリッドをプレアーム化したマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用のプロセスの確認を示す。 これらの図は、先の実験でサイトメトリーで観察された二重陽性細胞が、マクロファージによるNalm6標的細胞の食作用によく対応することを示す。左側の4つのパネルは、食作用阻害剤であるサイトカラシンDの存在下又は非存在下で、pHRodo SEで標識された2H06 Nalm6細胞とFc-WT-PEG-α621-635ハイブリッドでアーム化されたマクロファージとを一緒にした後に得られたフローサイトメトリー結果を示す。右側の2つのパネルは、MGGで染色した後に光学顕微鏡によって観察された実験終了時の細胞集団を示す。ハイブリッドは、図10に記載されているものと同一である。
図14図14は、Fc-ペプチドα621-635ハイブリッドでプレアーム化した、又はFc-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下でインキュベートしたマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用を示す。 この図は、フローサイトメトリーによって分析された実験の結果を示す:点群は細胞集団に対応する。T0は、Nalm6標的細胞とマクロファージとを接触させた直後の時間0における結果を表す。T2は、ハイブリッド分子の非存在下でNalm6標的細胞及びマクロファージを接触させた2時間後の結果を表す(自発的食作用)。残りのサイトメトリーダイアグラムは、FcWT-PEG-α621-635若しくはFcGASDIE-PEG-α621-635ハイブリッドでプレアーム化した、シトルリン化した若しくはしていない、又は、WT-PEG-α621-635若しくはFcGASDIE-PEG-α621-635ハイブリッドでインキュベートした、シトルリン化した若しくはしていない、インキュベーション培地中に溶解させた、Nalm6標的細胞及びマクロファージを接触させた2時間後に得られた結果を示す。ハイブリッドは、図11に記載されているものと同一である。 二重蛍光(PKH-67緑色/PKH-26赤色)を示す細胞は、Nalm6標的B細胞を貪食したマクロファージに対応する(%二重陽性)。単一のPKH-67蛍光を示す細胞は、残存する(すなわち、マクロファージの存在下で2時間後に貪食されない)Nalm6標的B細胞に対応する。サイトメトリーダイアグラムの各象限において、異なる細胞集団は、総細胞集団のパーセンテージとして表される。
図15図15は、Fc-PEG-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下及び生理学的血清濃度でのヒトIgGの存在下又は非存在下でインキュベートしたマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用を示す。 図は、Fc-PEG-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下及び生理学的血清濃度でのヒトIgGの存在下又は非存在下でインキュベートしたマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の細胞の食作用の4回(n=4)の独立した同一の実験の結果の平均を示す。図は、各実験条件について、マクロファージと、競合するヒトIgGの存在下(灰色ヒストグラム)又は非存在下(黒色ヒストグラム)で1μg/mlの濃度で可溶性であるシトルリン化(cit)又は非シトルリン化(arg)Fc-PEG-α621-635ハイブリッドとを接触させた2時間後の標的細胞の集団の平均残存率を示す。p値は以下の通りである:*p<0.05;**p<0.01。ハイブリッドは、図11に記載されているものと同一である。
図16図16は、生理学的濃度のヒトIgG又はヒト血清の存在下又は非存在下で、Fc-ペプチドα621-635ハイブリッドと共にインキュベートしたヒトマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用を示す。 図は、フローサイトメトリーによって分析された実験の結果を示し、細胞集団は散布図によって表される。T0は、2H06 Nalm6標的細胞とマクロファージとを接触させた直後に得られた結果に相当する。T2は、ハイブリッド分子の非存在下で標的細胞及びマクロファージを接触させた2時間後の結果を示す(自発的食作用)。残りの図は、標的細胞及びマクロファージを接触させ、FcWT-PEG-α621-635又はFcGASDIE-PEG-α621-635ハイブリッド、シトルリン化(cit)又は非シトルリン化(arg)、及びこれを生理学的血清濃度でのヒトIgG又はヒト血清の存在下又は非存在下でインキュベートした2時間後に得られた結果を表す。CFSE+CD11b+二重陽性細胞は、標的細胞を貪食したマクロファージに対応する。CFSE+単一陽性細胞は、2時間後に貪食されなかった残存Nalm6標的細胞に対応する。サイトメトリーダイアグラムの各象限において、異なる細胞集団は、総細胞集団のパーセンテージとして表される。ハイブリッドは、図11に記載されているものと同一である。
図17図17は、形質導入されていないNalm6株の存在下における、Fc-ペプチドα621-635ハイブリッドでプレアーム化されたヒトマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用を示す。 図は、同じ野生型非形質導入Nalm6株の細胞の存在下で、Fcペプチドα621-635ハイブリッドでプレアーム化したマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の細胞の食作用の実験の結果を示す。フローサイトメトリー分析の結果は、細胞集団を表す点群の形態で現れる。T 0は、2H06 Nalm6標的細胞、非形質導入NT Nalm6細胞及びマクロファージを接触させた直後の時間0における状況を示す。T2は、ハイブリッド分子の非存在下での2時間後の結果を表す(自発的基礎食作用)。残りのサイトメトリーダイアグラムは、FcWT-PEG-α621-635又はFcGASDIE-PEG-α621-635ハイブリッド、シトルリン化(cit)又は非シトルリン化(arg)でアーム化されたマクロファージの存在下で2時間後に得られた結果を表す。CFSE+CD19+二重陽性細胞は、残存する(すなわちマクロファージの存在下で2時間後に貪食されない)2H06 Nalm6標的細胞に対応する。CFSE-CD19-二重陰性細胞はマクロファージである。CFSE-CD19+単一陽性細胞は、残存する(すなわちマクロファージの存在下で2時間後に貪食されない)非形質導入(NT)Nalm6細胞に対応する。CFSE+CD19-単一陽性細胞は、2H06 Nalm6標的細胞を貪食したマクロファージに対応する。サイトメトリーダイアグラムの各象限において、異なる細胞集団は、総細胞集団のパーセンテージとして表される。ハイブリッドは、図11に記載されているものと同一である。
図18図18は、SCID/BEIGE免疫不全マウスにおけるFc-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下での2H06 Nalm6 ACPA+株のヒトNK細胞による特異的インビボ破壊を示す。 図は、SCID/BEIGE免疫不全マウスの腹膜腔におけるヒトNK細胞による、シトルリン化Fc-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下でのACPA+標的細胞(形質導入2H06 Nalm6株)の破壊を示す。A-図は、形質導入されていない2H06 Nalm6及びNT Nalm6細胞の集団のフローサイトメトリーによる分析を示す。観察されたピークは、標的細胞(2H06 Nalm6 CTVhigh)又は対照細胞(NT Nalm6 CTVlow)に対応する。B-図は、7匹のSCID/BEIGE免疫不全マウスの4つの群について得られた全ての結果を示す。これらの結果は、2H06 Nalm6細胞(CTVhigh)及びNT Nalm6細胞(CTVlow)にそれぞれ対応するCTVhigh/CTVlow蛍光の比として表される。比率の減少は、2H06 Nalm6標的細胞の消失を反映する。p値は以下の通りである:*p<0.05;**p<0.01;*** p<0.001。ハイブリッドは、図10に記載されているものと同一である。
図19図19は、SCID/BEIGE免疫不全マウスにおけるFc-ペプチドα621-635ハイブリッドでプレアーム化されたヒトマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+株の特異的インビボ破壊を示す。 図は、SCID/BEIGE免疫不全マウスの腹膜腔におけるヒトマクロファージによる、シトルリン化Fc-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下でのACPA+標的細胞(2H06 Nalm6形質導入株)の破壊を示す。図は、5匹のSCID/BEIGE免疫不全マウスの4つの群について得られた結果を示す。実験終了時の各群の残存2H06 Nalm6 CTVhigh標的細胞の数が示されており、食作用の効率を示している。p値は以下の通りである:*p<0.05。ハイブリッドは、図10に記載されているものと同一である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0073】
実施例1:本発明によるハイブリッド分子の製造例
本明細書に記載のハイブリッド分子は、以下の構造を含む:アジドにそれ自体がカップリングされた少なくとも1つのPEGnに共有結合したFc断片、前記アジドは、シトルリン化ペプチドに結合したPEGnスペーサーにそれ自体がカップリングされたアルキンに共有結合されている。そのような分子は、Fc-PEGn-N-DBCO-PEGn-シトルリン化ペプチドと読むことができる。2つのPEGnは同一であっても異なっていてもよい(例えば、第1のPEGnはPEGであることができ、第2はPEGであることができる)。
【0074】
1.NH2-PEGn-N(すなわち、一方の端部でアジドにカップリングさせ、他方の端部で遊離アミン官能基を有するスペーサー)の合成。
【0075】
2.NH-PEGn-Nを、Qタグを有するFc断片及びトランスグルタミナーゼと、好ましくは37°Cで16時間接触させること。このいわゆる「誘導体化」工程は、好ましくはFc断片のモル数の20倍のモル数のNH-PEGn-Nを用いて行われる。トランスグルタミナーゼは、(一方又は両方のモノマー上に)存在するQタグ当たり15U/μmolのレベルで使用される。場合により、脱塩を行って、工程の最後にFc断片に結合していない過剰なスペーサーを除去することができる。これにより、Fc-PEGn-Nが生成される。Fc断片が2つのQタグ(各モノマーに担持されたもの)を含む場合、Fc断片は2つのPEGn-Nを担持することができる。
【0076】
3.シトルリン化Cys-PEGn-ペプチド(すなわち、一方の末端でペプチドに結合し、他方の末端に遊離システインを有するスペーサー)の合成。次いで、アルキン、例えばDBCOを、Cys-PEG-シトルリン化ペプチドにシステインでカップリングさせ、DBCO-PEG-シトルリン化ペプチドを生成する。
【0077】
4.「クリック」の形成:NとDBCOとの間のカップリング。DBCO-PEG-シトルリン化ペプチドを、好ましくはFc-PEGn-Nのモル数よりも10倍多いモル数のDBCO-PEG-シトルリン化ペプチドで、Fc-PEGn-Nと接触させる。クリック反応は、特に室温で行われ、4時間後にほぼ完了する。
【0078】
5.ハイブリッド分子:Fc-PEGn-N-DBCO-PEGn-シトルリン化ペプチドの生成。この実施形態を図7に示す。
【0079】
同様に、Fc-PEGn-DBCO及びN-PEGn-シトルリン化ペプチドを得ることができ、次いでカップリングさせて、Fc-PEGn-DBCO-N-PEGn-シトルリン化ペプチドを得ることができる。
【0080】
同様に、Fc-PEGn-DBCO及びN-シトルリン化ペプチド(又はFc-PEGn-N及びシトルリン化DBCO-ペプチド)を得ることができ、次いでカップリングさせて、それぞれFc-PEGn-DBCO-N-シトルリン化ペプチド又はFc-PEGn-N-DBCO-シトルリン化ペプチドを得ることができる。
【0081】
実施例2:本発明によるハイブリッド分子に対する、シトルリン化され、pH 3で溶出されたペプチド(pH3画分)を用いたペプチドアフィニティークロマトグラフィーによって精製されたACPAの反応性
使用されるACPA(ここではACPA、pH3画分)は、ACPA陽性関節リウマチに罹患している患者の血清から得られるACPAである。そのようなACPAは、本発明の5つの免疫優性ペプチド(配列番号5、配列番号6、配列番号14、配列番号18又は配列番号19を参照)の1つ又は複数を結合抗原として使用して、当業者に公知の標準的なカラムアフィニティークロマトグラフィー法によって得た。
【0082】
a.β60-74citペプチドを含有するハイブリッド分子を用いた実施例
ペプチドβ60-74cit(配列番号19、β60-74とも呼ばれる)、又はハイブリッド分子Fc-WT-β60-74cit、Fc-LALA-β60-74cit、Fc-SDH-β60-74cit、Fc-WT-PEG-β60-74cit、Fc-SDH-PEG-β60-74cit若しくはFc-SDH(Cter)-PEG-β60-74citのいずれかを含む100μLの溶液を使用して、マイクロタイターELISAプレートウェルを受動吸着によってコーティングした。これらの溶液をそれぞれPBS(リン酸緩衝生理食塩水)緩衝液中5μg/mlの濃度で使用し、4°Cで一晩インキュベートした。非シトルリン化ペプチド及び非シトルリン化ペプチドで構築されたハイブリッド分子(シトルリル残基がアルギニル残基によって置き換えられた配列番号19のペプチドに対応するβ60-74arg)を、陰性対照と同じ濃度で使用した。次いで、ウェルを2% BSA(ウシ血清アルブミン)で4°Cにて1時間飽和させた。洗浄後、精製したACPAを1、0.5又は0.25μg/ml(PBS 2% BSA 2M NaCl緩衝液で希釈)で4°Cにて1時間インキュベートした。洗浄後、PBS 2% BSA緩衝液で1/2500に希釈したヒトIgG抗Fab二次抗体を用いてACPA反応性を検出した。結果はΔOD(光学密度の変化)で表され、β60-74citペプチド又はβ60-74citペプチドで構築されたハイブリッド分子で得られたODを、β60-74argペプチド又はβ60-74argペプチドで構築された対応するハイブリッド分子で得られたODからそれぞれ差し引いたものに相当する。
【0083】
結果を図4に示す。それらは、ハイブリッド分子Fc-WT-β60-74cit、Fc-LALA-β60-74cit、Fc-SDH-β60-74cit、Fc-WT-PEG-β60-74cit、Fc-SDH-PEG-β60-74cit又はFc-SDH(Cter)-PEG-β60-74citに関して、β60-74citペプチド上で精製されたACPAの用量依存的反応性を示す。それらは、様々なハイブリッドに含まれる場合、シトルリン化ペプチドがACPAと完全に反応性のままであることを示す。
【0084】
b.α621-635citペプチドを含有するハイブリッド分子を用いた実施例
ELISAプレートウェルを、PBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水)中5μg/mlの濃度で、ペプチドα621-635cit(配列番号18、α621-635とも呼ばれる)又はハイブリッド分子Fc-WT-PEG-α621-635cit又はFc-SDH-PEG-α621-635citも含む100μLの溶液でコーティングし、4°Cで一晩インキュベートした。非シトルリン化ペプチドα621-635arg及び非シトルリン化ペプチドで構築された対応するハイブリッド分子(シトルリル残基がアルギニル残基によって置き換えられた配列番号18のペプチドに対応するα621-635arg)を、陰性対照と同じ濃度で使用した。次いで、ウェルをPBS緩衝液中2% BSA(ウシ血清アルブミン)で4°Cにて1時間飽和させた。洗浄後、精製したACPAを4、2及び1μg/ml(PBS 2% BSA 2M NaCl緩衝液で希釈)で4°Cにて1時間インキュベートした。洗浄後、PBS 2% BSA緩衝液で1/2500に希釈したヒトIgG抗Fab二次抗体を用いてACPA反応性を検出した。結果はΔOD(光学密度の変化)で表され、α621-635citペプチド又はα621-635citペプチドで構築されたハイブリッド分子で得られたODを、α621-635argペプチド又はα621-635argペプチドで構築された対応するハイブリッド分子で得られたODからそれぞれ差し引いたものに相当する。
【0085】
結果を図5に示す。それらは、ハイブリッド分子Fc-WT-PEG-α621-635cit及びFc-SDH-PEG-α621-635citに関して、α621-635citペプチド上で精製されたACPAの強い用量依存的反応性を示す。ハイブリッド分子に対するACPAの反応性は比較的強いが、それらはα621-635citペプチドよりも低いエピトープ密度を示す。
【0086】
実施例3:本発明によるハイブリッド分子に対する、野生形態(野生型、WT)又はそれらのFc断片において突然変異した(SDH突然変異)組換えモノクローナル2H06 ACPAの反応性
ここで使用されるACPAは、組換えモノクローナルヒトACPA(2H06として知られるクローン022014CCP14CFCT2H06)である。そのようなACPAは、Titcombe P.J.,Wigerblad G.,Sippl N.,Zhang N.,Shmagel A.K.,Sahlstrom P.,Zhang Y.,Barsness L.O.,Ghodke-Puranik Y.,Baharpoor A.,et al.Pathogenic Citrulline-Multispecific B Cell Receptor Clades in Rheumatoid Arthritis.Arthritis&Rheumatology 2018,70(12),1933-1945.https://doi.org/10.1002/art.40590に記載されているように得ることができる。2H06 ACPA VHは、Genbankの下でアクセッション番号MH629710.1を有し、VLは、アクセッション番号MH629700.1を有する。
【0087】
ELISAプレートウェルを、ハイブリッド分子Fc-WT-PEG-α621-635cit又はFc-SDH-PEG-α621-635citのいずれかを含有する100μLの溶液でコーティングし、PBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水)中5μg/mlの濃度で使用し、4°Cで一晩インキュベートした。非シトルリン化ペプチド(α621-635arg)で構築したハイブリッド分子を陰性対照と同じ濃度で使用した。次いで、ウェルをPBS 2% BSA(ウシ血清アルブミン)緩衝液中で4°Cにて1時間飽和させた。洗浄後、WT及びSDH組換えモノクローナル2H06 ACPAを40、20及び10μg/ml(PBS 2% BSA 2M NaCl緩衝液で希釈)で4°Cにて1時間インキュベートした。洗浄後、PBS 2% BSA緩衝液で1/2500に希釈したヒトIgG抗Fab二次抗体を用いてそれらの反応性を検出した。結果はΔOD(光学密度の変化)で表され、ペプチドα621-635citで構築したハイブリッド分子で得られたODを、α621-635arg陰性対照ペプチドで構築したハイブリッド分子で得られたODから差し引いたものに相当する。
【0088】
Fc-WT-PEG-α621-635cit及びFc-SDH-PEG-α621-635citハイブリッド分子は、実施例2で使用したものと同一である。
【0089】
結果を図6に示す。結果は、ハイブリッド分子Fc-WT-PEG-α621-635cit及びFc-SDH-PEG-α621-635citに対するWT及びSDHモノクローナルACPAの強い用量依存的反応性を示す。
【0090】
実施例4:生理学的温度での2時間及び20時間でのマクロファージへのハイブリッド分子の結合
健常対象の末梢血から単離したCD14+単球からM-CSF(100ng/ml)の存在下でインビトロで分化させたヒトマクロファージを、5μg/mlのハイブリッド分子、FcWT-N3-DBCO-β60-74Cit(表2及び3においてWTと呼ばれる、配列番号19によって表されるペプチドにカップリングされたDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされたPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片)、FcSDHFSTIE-N3-DBCO-β60-74Cit(表2及び3においてSDHと呼ばれる、配列番号19によって表されるペプチドにカップリングされたDBCOに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされたPEGnスペーサーに結合したS239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片)又はFcLALAPG-N3-DBCO-β60-74Cit(表2及び3においてLALAPGと呼ばれる、配列番号19で表されるペプチドにカップリングされたDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされたPEGnスペーサーに結合したL234A、L235A及びP329G突然変異を含むFc断片)の存在下、37°Cで2時間又は20時間、500,000細胞/ウェルでインキュベートした。マクロファージの表面へのハイブリッド分子の付着は、1/1000で使用されるFITCにカップリングされた抗Fc抗体とマクロファージとのインキュベーション後に細胞蛍光測定法(FACS Canto II)によって実証及び定量される。構造において、nは、PEGnスペーサーが使用される場合、1~10の数、好ましくは1、2、3、4又は8を表す。
【0091】
結果を以下の表2及び表3に示す。「NM」及び「ANTI FC」はそれぞれ、抗体なしで、又は抗Fc抗体のみと共にインキュベートしたマクロファージを含むウェルを表す。
【表2】
【表3】
【0092】
表2及び表3に示される結果は、37°Cの生理学的温度でのハイブリッド分子FcWT-N3-DBCO-β60-74Cit及びFcSDHFSTIE-N3-DBCO-β60-74Citが、2時間目からマクロファージ膜に結合し、20時間後もそこに存在することを示す。これらの結果はまた、ハイブリッドFcSDHFSTIE-N3-DBCO-β60-74Citの結合が野生形態FcWT-N3-DBCO-β60-74Citの結合よりも大きいことを示す。
【0093】
実施例5:B細胞をFcγRIIb(CD32b)を介して精製ACPAでアーム化した場合、シトルリン化Fc-SDHβ60ペプチドハイブリッドによって誘導される食作用
CD19+磁気選別によって健常ドナーの末梢血から新たに精製したヒトBリンパ球を緑色PKH-67(Paul Karl Horan/蛍光脂質マーカー)で標識し、次いで、β60-74citペプチド(配列番号19)上の精製ACPA(実施例2と同様にして得られたpH3画分)と共に、5μg/mlの濃度で37°Cで30分間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、次いで、FcSDHFSTIE-N3-DBCO-PEG3-β60-74Citハイブリッド(配列番号19で表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのスペーサーPEGnに結合した、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片)の存在下に置いた。この構造は、以下の表4においてCITと呼ばれる)。細胞を、FcSDHFSTIE-N3-DBCO-PEG-β60-74Argハイブリッド(β60-74ペプチドがシトルリン化されていないFcSDHFSTIE-N3-DBCO-PEG3-β60-74Cit構築物に対応する)の存在下にも置いた。この構造は、以下の表4においてNCITと呼ばれる)。細胞を、10μg/mlのハイブリッドの存在下、37°Cで30分間置いた。洗浄後、細胞を37°Cで2時間、1個のマクロファージに対して1個のBリンパ球の比でマクロファージ(PKH-26赤色でマーク)と接触させた。次いで、細胞を分離し、フローサイトメトリーによって分析した。二重蛍光(PKH-67緑色/PKH-26赤色)を示す細胞は、リンパ球を貪食したマクロファージに対応する。異なる細胞集団は、全細胞集団のパーセンテージ:食作用のパーセンテージ及びBリンパ球のパーセンテージとして表される。構造において、nは、PEGnスペーサーが使用される場合、1~10の数、好ましくは1、2、3、4又は8を表す。
【0094】
結果を、4つの独立した実験に対応する4つの線として表4に示す。
【表4】
【0095】
得られた結果は、シトルリン化ハイブリッドの存在下で食作用活性が増加することを確認する(Bリンパ球の集団の減少に関連する食作用の増加)。実際、4回の独立した実験では、ハイブリッドFcSDHFSTIE-N3-DBCO-PEG3-β60-74Cit(CIT)対FcSDHFSTIE-N3-DBCO-PEG3-β60-74Arg(NCIT)でBリンパ球をコーティングした場合、常にBリンパ球の集団の有意な減少に関連する食作用のパーセンテージの有意な増加が観察された。
【0096】
実施例6:ハイブリッドFc-WT-PEG-α621-635citをアーム化したマクロファージによる、SDH突然変異を有する組換えモノクローナルヒト2H06 ACPAを負荷したBリンパ球の食作用
CD19+磁気選別によって健常ドナーの末梢血から新たに精製したヒトBリンパ球を緑色PKH-67(Paul Karl Horan/蛍光脂質マーカー)で標識し、次いで、FcがSDH突然変異を有するヒト組換えモノクローナル2H06 ACPAと共に10μg/mlの濃度で37°Cで1時間インキュベートした。このような抗体は、実施例3と同様にして得ることができる。並行して、PKH-26赤色で標識されたマクロファージを、Fc-WT-PEG-α621-635citハイブリッド(配列番号18で表されるペプチドにそれ自体が結合したPEGnスペーサーにカップリングされたDBCOに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされた少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合した野生型Fc断片)及びFc-WT-PEG-α621-635arg(これはFc-WT-PEG-α621-635citハイブリッドであり、ペプチドがシトルリン化されていないという違いがある)の存在下、5μg/mlで37°Cにて1時間置いた。洗浄後、細胞を、37°Cで2時間、1個のマクロファージに対して1個のBリンパ球の割合で接触させた。次いで、細胞を分離し、フローサイトメトリーによって分析した。食作用のパーセンテージは、2つの蛍光色素(PKH-67緑色/PKH-26赤色)によってマークされた細胞のパーセンテージに対応する。構造において、nは、PEGnスペーサーが使用される場合、1~10の数、好ましくは1、2、3、4又は8を表す。
【0097】
結果を、5つの独立した実験に対応する6つの線として表5に示す。NCITは、Fc-WT-PEG-α621-635argペプチドでの結果を表し、CITは、Fc-WT-PEG-α621-635citペプチドでの結果を表し、(ΔCIT-NCIT)は、Fc-WT-PEG-α621-635citの存在下で得られたODと、Fc-WT-PEG-α621-635argの存在下で得られたODとの差を、Fc-WT-PEG-α621-635argの存在下で得られたODで割ったものを表す。
【表5】
【0098】
結果は、シトルリン化ハイブリッドの存在下で食作用活性が増加することを示す:Bリンパ球の集団の減少(3%から17%)に関連する食作用の増加(21%から63%)。6つの実験のそれぞれにおいて、二重陽性のパーセンテージはより高く、そのため、マクロファージがFc-WT-PEG-α621-635arg(NCIT)ハイブリッドに対してFc-WT-PEG-α621-635cit(CIT)ハイブリッドでアーム化されている場合、食作用が増大し、集団Bが減少する。結果を図8A及び図8Bにも示す。
【0099】
実施例7:生理学的温度で30分、24時間及び48時間後のNK細胞へのFc-SDH A488及びFc-SDH β60シトルリン化ペプチドハイブリッドの結合の安定性
NK細胞を、FcSDHFSTIE-N3-DBCO-A488(DBCOに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされた少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合したS239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片であって、分子が、蛍光色素A488で標識されている、Fc断片)又はFcSDHFSTIE-N3-DBCO-PEG3-β60-74cit-lysineA488(配列番号19のペプチドに結合したPEGnスペーサーにカップリングされたDBCOに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされた少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合したS239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片であって、分子が、リジンを介して分子に結合したA488蛍光色素で標識されている、Fcフラグメント)の存在下、37°Cで30分間、24時間又は48時間インキュベートした。NK細胞へのこれら2つの蛍光プローブの結合を細胞蛍光測定法によって分析した。構造において、nは、PEGnスペーサーが使用される場合、1~10の数、好ましくは1、2、3、4又は8を表す。
【0100】
結果を以下の表6(30分)、表7(24時間)及び表8(48時間)に示す。UMは、抗体なしの非標識NK細胞を表す。
【表6】
【表7】
【表8】
【0101】
表6~表8に示される結果は、FcSDHFSTIE-N3-DBCO-A488及びFcSDHFSTIE-N3-DBCO-PEG3-β60-74cit-lysine A488が生理学的温度で少なくとも48時間NK細胞膜に付着したままであり、Fc断片へのペプチドの付着がNK細胞のFcガンマ受容体との相互作用を妨げないことを示す。
【0102】
実施例8:蛍光色素A647で標識された様々な形態のFc(WT、SDH及びLALAPG)のNK細胞への結合
NK細胞を、10μg/mlのFcSDHFSTIE-N3-DBCO-A647断片(DBCOに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされた少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合したS239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片であって、分子が蛍光色素A647で標識されている、Fc断片)の存在下、37°Cで30分間インキュベートした。この構造は、以下の表9ではSDHと呼ばれる)。実験はまた、以下のハイブリッド:FcWT-N3-DBCO-A647(DBCOに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされた少なくとも1つのPEGnスペーサーに連結された野生型Fc断片であって、分子が蛍光色素A647で標識されている、野生型Fc断片)又はFcLALAPG-N3-DBCO-A647(DBCOに共有結合したアジドにそれ自体がカップリングされた少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合したL234A、L235A及びP329G突然変異を含むFc断片であって、分子が蛍光色素A647で標識されている、Fc断片)を用いて同じ濃度で行った。これらの2つの構造は、以下の表9においてそれぞれWT及びLALAPGと呼ばれる。構造において、nは、PEGnスペーサーが使用される場合、1~10の数、好ましくは1、2、3、4又は8を表す。NK細胞へのFc断片の結合を細胞蛍光測定法によって分析した。結果を表9に示す。
【表9】
【0103】
表9に示す結果は、FcWT-N3-DBCO-A647、FcSDHFSTIE-N3-DBCO-A647断片がNK細胞の膜に結合することを示している。FcSDHFSTIE-N3-DBCO-A647の結合は、FcWT-N3-DBCO-A647の結合よりもはるかに大きい。
【0104】
実施例9:生理学的血清濃度まで、増加する濃度のヒトIgGの存在下での同じハイブリッドの結合と比較した、蛍光色素A647標識Fc-SDH断片のNK細胞への結合
NK細胞を、10μg/mlのFcSDHFSTIE-N3-DBCO-A647断片(DBCOに共有結合したアジドにそれ自体がさらにカップリングされた少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合したS239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片であって、分子が蛍光色素A647で標識されている、Fc断片)の存在下、又はこの同じ10μg/mlのFcSDHFSTIE-N3-DBCO-A647断片の存在下、37°Cで30分間インキュベートし、増加する濃度(1、10、100、1,000、10,000μg/ml)でヒトIgGと共インキュベートした。構造において、nは、PEGnスペーサーが使用される場合、1~10の数、好ましくは1、2、3、4又は8を表す。NK細胞へのFcSDHFSTIE-N3-DBCO-A647断片(SDHとして公知)の結合を細胞蛍光測定法によって分析した。
【0105】
結果を表10に示す。
【表10】
【0106】
結果は、100μg/mlのIgGからの、NK細胞へのFcSDHFSTIE-N3-DBCO-A647の結合の用量依存的減少を示し、これは、ヒトにおけるIgGの生理学的血清濃度に対応するFc断片(10,000μg/ml)の濃度よりも1000倍高いIgGの濃度の存在下でも有効かつ高いままである。
【0107】
実施例10:FcWT-N3-DBCO-PEG3-α621-635Cit及びFcSDH-N3-DBCO-PEG3-α621-635Citハイブリッドの存在下での、その膜上に組換えモノクローナルACPAを発現する形質芽球性悪性ヒトB株の細胞のヒトNK細胞による溶解
WTαCITは、配列番号18によって表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合しているアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合している野生型Fc断片を含むハイブリッドを表し;WTαArgは、配列番号18のペプチドがシトルリン化されていないことを除いて、ハイブリッドWTαCITに対応し;SDHαCITは、配列番号18によって表されるペプチドにそれ自体が結合しているPEGnスペーサーにカップリングされているDBCOシクロオクチンに共有結合しているアジドにそれ自体がカップリングされている少なくとも1つのPEGnスペーサーに結合している、S239D、H268F、S324T及びI332E突然変異を含むFc断片を表し;SDHαArgは、配列番号18のペプチドがシトルリン化されていないことを除いて、SDHαCITハイブリッドに対応する。構造において、nは、PEGnスペーサーが使用される場合、1~10の数、好ましくは1、2、3、4又は8を表す。
【0108】
実験は、96ウェル丸底プレートで行った。Nalm6株の細胞(組換えヒトモノクローナル2H06 ACPAの膜発現のために形質導入されたもの)を標的細胞として使用した。100,000細胞/ウェルを、一方では15μg/mlで使用したWTαCit又はSDHαCitハイブリッド分子の存在下で、他方ではエフェクター細胞として使用した新たに精製したNK細胞(紫色細胞トレーサーでマーク)の存在下で、同じく100,000細胞/ウェルで、37°Cで17時間インキュベートした。特異性対照として使用したWTαArg及びSDHαArgハイブリッド分子を同じ条件下でインキュベートした。陰性対照として、Nalm6細胞を、ハイブリッドの非存在下、単独で又はNK細胞の存在下でインキュベートした。細胞溶解を、蛍光プローブ7-AADで標識することによるフローサイトメトリーによって測定した。結果は、このマーカーについて陽性の細胞のパーセンテージ(%死細胞)を示す。(%)(ΔCIT-Arg)は、WT型シトルリン化ペプチド及びSDH型シトルリン化ペプチドを保有するハイブリッドの存在下における7-AAD陽性死細胞のパーセンテージと、それらの非シトルリン化対応物との差を、対応する非シトルリン化ハイブリッドの存在下における7-AAD陽性細胞のパーセンテージで割ったものを表す。
【0109】
結果を図9及び表11に示す。
【表11】
【0110】
結果は、シトルリン化ハイブリッド(WT及びSDH)が、NK細胞によって引き起こされるNalm6 ACPA陽性標的細胞のADCCによる溶解を特異的に増加させることができることを示している。この死亡率の増加は、WT型ハイブリッドについては62%であり、SDH型ハイブリッドについては83%である。
【0111】
実施例11:形質導入後のNalm6 Bリンパ芽球性株によるモノクローナル2H06 ACPAの膜発現
A-ヒトBリンパ芽球性細胞株「Nalm6」を形質導入して、組換えモノクローナル2H06 ACPAの膜発現を誘導した。形質導入効率を、IgG抗Fab抗体及び蛍光アビジンに付着したビオチン化α621-635citペプチドのテトラマーによる二重標識を使用してフローサイトメトリーによって分析した。B-7000万個のNalm6細胞に対して行った選別により、Nalm6 Fab+細胞を回収することが可能になり、そこから、300,000個の細胞のプールを培養に戻した。増殖後、形質導入された2H06 Nalm6株の濃縮をフローサイトメトリーによって確認した。C-Fc-WT-PEG-α621-635cit及びargハイブリッドを、「Lightning Link」キットを使用してAlexa Fluor 647で標識した。形質導入されていない(NT)Nalm6及び2H06 Nalm6株を、Fc-WT-PEG-α621-635ハイブリッドとインキュベートした。洗浄後、Fc-WT-PEG-α621-635ハイブリッドの膜結合をフローサイトメトリーによって分析した。
【0112】
結果を図10及び表12に示す。
【0113】
表12は、平均蛍光強度(MFI)及び蛍光ハイブリッドの存在下の条件と細胞がマークされていない対照条件との間のMFIの比を表す。UMは、蛍光ハイブリッドのない、マークされていないNalm6細胞を表す。
【表12】
【0114】
結果は、細胞の選別及び増殖の後、Nalm6細胞の89.1%がIgG Fab(2H06 ACPAのもの)を発現することを示しており、形質導入の成功及び2H06 Nalm6株の確立を実証している(B)。結果は、2H06 Nalm6株と蛍光Fc-WT-PEG-α621-635citハイブリッドとの間の強い相互作用を示すが、非シトルリン化Fc-WT-PEG-α621-635argハイブリッド(C)との相互作用は存在しない。蛍光Fc-WT-PEG-α621-635citハイブリッド及び蛍光IgG抗Fab抗体による二重標識は、2H06 Nalm6株上の2つの標識の完全な相関を示すが、2つのいずれも非形質導入Nalm6株を標識しない(A)。これらの結果は、ハイブリッドFc-WT-PEG-α621-635citの結合が2H06 ACPAの膜発現に厳密に結合していることを示す。
【0115】
実施例12:形質導入2H06 Nalm6 ACPA+B株の細胞のFc-ペプチドα621-635ハイブリッドで前処置したマクロファージによる食作用
マクロファージを緑色PKH-67膜蛍光色素で標識し、次いで、シトルリン化(Cit)又は非シトルリン化(Arg)形態で、Fc-WT-PEG-α621-635、Fc-SDH-PEG-α621-635又はFc-GASDIE-PEG-α621-635ハイブリッドと共に、5μg/mlの濃度で37°Cで60分間インキュベートした。その膜上のモノクローナル2H06 ACPAの発現のために形質導入されたNalm6ヒトBリンパ芽球性株の細胞を、赤色PKH-26(蛍光脂質マーカー)で標識し、次いで、1個のマクロファージに対して2個のNalm6標的細胞の比で、マクロファージの存在下に置いた。37°Cで2時間後、マクロファージを剥離し、次いで、細胞集団をフローサイトメトリーによって分析した。
【0116】
図11Aの結果は、T2において、ハイブリッドの非存在下で、Nalm6細胞の自発的基礎食作用を証明する二重陽性細胞の増加があることを示す。2時間で、使用したハイブリッド(WT、SDH又はGASDIE)に関係なくハイブリッドの存在下で、マクロファージがアーム化されたシトルリン化ハイブリッドである場合、二重陽性細胞の強い増加及び標的細胞の数の崩壊が観察されるが、ハイブリッドの非シトルリン化バージョンでは存在しない。ここで、本発明者らは、二重陽性細胞の52%から、ハイブリッドFc-WT-PEG-α621-635の存在下で14.6%、Fc-SDH-PEG-α621-635については24.5%、及びFc-GASDIE-PEG-α621-635については最大8%に進み、これが最も効果的である。
【0117】
3つの独立した実験の合成(図11Bを参照)により、二重陽性細胞の70%の平均増加及びNalm6標的細胞の少なくとも50%の減少を伴って、その効果がすべての条件において再現可能かつ有意であることが確認される。
【0118】
実施例13:様々な濃度のFc-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下でのプレアーム化されたマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+B細胞株の食作用
マクロファージを緑色PKH-67膜蛍光色素で標識し、次いで、種々の濃度(5μg/ml;1μg/ml;100ng/ml;50ng/ml;10ng/ml;5ng/ml)で、37°Cで60分間、シトルリン化(Cit)形態又は非シトルリン化(Arg)形態のハイブリッドFc-WT-PEG-α621-635、Fc-SDH-PEG-α621-635 Fc-GASDIE-PEG-α621-635又はFc-GASDALIE-PEG-α621-635でアーム化した。モノクローナル2H06 ACPAの発現のために形質導入されたNalm6 B株の細胞を、赤色PKH-26(蛍光脂質マーカー)でマークし、次いで、1個のマクロファージに対して1個のNalm6標的細胞の比で、アーム化されたマクロファージの存在下に置いた。37°Cで2時間後、マクロファージを剥離し、次いで、細胞集団をフローサイトメトリーによって分析した。
【0119】
図12に示される結果は、マクロファージがシトルリン化Fc-PEG-α621-635ハイブリッドでアーム化されている場合、それらがWT、SDH、GASDIE又はGASDALIEであるかにかかわらず、二重陽性細胞(A)のパーセンテージの強い増加が標的細胞(B)のパーセンテージの強い減少に関連することを示す。両方とも、非シトルリン化ハイブリッド(Fc-PEG-α621-635Arg)には存在しない。この特異的食作用は、それらをアーム化するために使用される溶液中のFc-PEG-α621-635ハイブリッドの濃度と相関する。このモデルは、食作用が50ng/mlまでのすべてのシトルリン化ハイブリッドについて依然として観察されるので、特に堅牢である。FcγRに対するそれらの増大した親和性のために、Fc-GASDIE-PEG-α621-635Cit及びFc-GASDALIE-PEG-α621-635Citハイブリッドは、Fc-WT-PEG-α621-635Cit又はFc-SDH-PEG-α621-635Citよりも効果的であり、50ng/ml超で活性のままである。
【0120】
実施例14:FcWT-PEG-ペプチドα621-635ハイブリッドをアーム化したマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用プロセスの確認
2H06 Nalm6 B細胞の破壊が食作用プロセスに起因することを確認するために、2H06 Nalm6 B細胞を、中性pHで弱い蛍光強度を示すが酸性培地中で強い蛍光を発するpH感受性色素pHRodoSEで標識した。しかしながら、貪食された要素が見出される細胞質内小胞(リソソーム)のpHは酸性である。したがって、非貪食細胞は検出できないが、リソソーム区画に内在化された貪食細胞は蛍光性になる。
【0121】
したがって、2H06 Nalm6細胞を20ng/mlのpHRodoSE(Thermofisher)で標識した。標識されたNalm6細胞は、5μg/mlのFc-WT-PEG-α621-635Cit又はArgハイブリッドでアーム化された又はされていないマクロファージと37℃で1時間インキュベートされ、2μg/mlのサイトカラシンDで30分間、その後貪食の間1μg/mlで処理された又はされなかった。細胞を37°Cで2時間インキュベートし、次いでマクロファージを分離し、細胞集団をフローサイトメトリーによって分析するか、又は光学顕微鏡による形態学的分析のためにMay Grunwald Giemsa(MGG)で染色した。
【0122】
図13に示される結果は、Fc-WT-PEG-α621-635Citハイブリッドでアーム化されたマクロファージの存在下でのpHRodoSE陽性集団(2番目のピーク)の出現を示し、この集団は、マクロファージがハイブリッドの非シトルリン化バージョンでアーム化されている場合には存在しない。この集団はサイトカラシンD(食作用阻害剤)の存在下では現れず、これは実際に、2H06 Nalm6 B細胞を特異的に貪食したマクロファージの集団に対応することが確認される。これらの結果は、光学顕微鏡分析によって確認され、この分析では、多数の貪食された2H06 Nalm6 B細胞が、Fc-WT-PEG-α621-635シトルリン化ハイブリッドでアーム化されたマクロファージにおいて細胞質内状況で観察されるが(上のパネル)、マクロファージが非シトルリン化形態のハイブリッドでアーム化された場合、この状況は完全に存在しない。
【0123】
実施例15:Fc-ペプチドα621-635ハイブリッドでプレアーム化した、又はFc-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下でインキュベートしたマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用
2H06 Nalm6 B株の細胞を緑色PKH-67膜蛍光色素で標識し、マクロファージを赤色PKH-26で標識した。シトルリン化(Cit)又は非シトルリン化(Arg)形態のFc-WT-PEG-α621-635及びFc-GASDIE-PEG-α621-635ハイブリッドを、5μg/mlの濃度でマクロファージと共に37°Cで1時間インキュベートし(アーム化後に洗浄する)、その後、1個のマクロファージに対して1個のNalm6標的細胞の比で標的細胞と接触させ、37°Cで2時間インキュベートするか、又は、Nalm6標的細胞及びマクロファージを同じ1/1比で含む培地中、同じ濃度で37°Cで2時間インキュベートした。次いで、マクロファージを分離し、細胞集団をフローサイトメトリーによって分析した。
【0124】
図14に示される結果は、マクロファージをプレアーム化したか、又はシトルリン化形態のFc-WT-PEG-α621-635若しくはFc-GASDIE-PEG-α621-635ハイブリッドと共にインキュベートした場合、2H06 Nalm6標的細胞集団の崩壊に関連する二重陽性細胞(食作用)の大きな増加を示す。この結果は、ハイブリッドの非シトルリン化形態では起こらないので、特異的である。
【0125】
実施例16:生理学的血清濃度でのヒトIgGの存在下又は非存在下でFc-PEG-ペプチドα621-635ハイブリッドと共にインキュベートしたマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用
2H06 Nalm6株の細胞を蛍光色素CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で標識し、次いで、Fc-WT-PEG-α621-635又はFc-GASDIE-PEG-α621-635ハイブリッドのそれらのシトルリン化(Cit)又は非シトルリン化(Arg)形態の存在下、1μg/mlの濃度で、37°Cで2時間、10 mg/mlの生理学的血清濃度(ハイブリッドとIgGとの濃度比:1/10.000)の競合ヒトIgGの存在下又は非存在下で、マクロファージとインキュベートした。マクロファージを剥離し、次いで抗CD11b BV421抗体で標識し、細胞集団をフローサイトメトリーによって分析した。
【0126】
図15に示される結果は、競合するIgGの非存在下では、細胞と共にインキュベートされた2つの可溶性ハイブリッドFc-WT-PEG-α621-635及びFc-GASDIE-PEG-α621-635のシトルリン化形態は、非シトルリン化形態を有する2H06 Nalm6細胞の集団には存在しないので、ほぼ完全かつ特異的な食作用を誘導することを示す。IgGの存在は、T2で自発的食作用の相対的であるが有意な阻害(p<0.01)、Fc-WT-PEG-α621-635citハイブリッドによって誘導される食作用のほぼ完全かつ有意な阻害(p<0.05)を誘導するが、この阻害は、Fc-GASDIE-PEG-α621-635ハイブリッド(そのFcは突然変異しており、血清IgGのものよりもFcガンママクロファージ受容体に対する親和性が高い)では部分的かつ非有意であるにすぎない。
【0127】
実施例17:生理学的濃度のヒトIgG又はヒト血清の存在下又は非存在下で、Fc-ペプチドα621-635ハイブリッドと共にインキュベートしたヒトマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用
2H06 Nalm6株の細胞を蛍光色素CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で標識し、次いで、シトルリン化(cit)又は非シトルリン化(arg)形態のFc-WT-PEG-α621-635又はFc-GASDIE-PEG-α621-635ハイブリッドの存在下、10 μg/mlの濃度でマクロファージとインキュベートした。実験は、10mg/mlの濃度の競合ヒトIgG又は同じIgG濃度を有するヒト血清の混合物の存在下又は非存在下、37°Cで2時間にわたって行った。したがって、ここでは、ハイブリッドとIgGとの間の濃度比は1/1000である。細胞を取り出し、マクロファージを同定するために抗CD11b BV421抗体でマークし、次いでフローサイトメトリーによって分析した。
【0128】
図16に示される結果は、2つのシトルリン化ハイブリッドFc-WT-PEG-α621-635及びFc-GASDIE-PEG-α621-635を10μg/mlの濃度で使用すると、2H06 Nalm6細胞の食作用が特異的かつ非常に効果的に誘導されることを示す。ハイブリッドとの競合により、IgGはマクロファージによる2H06 Nalm6細胞の食作用を阻害するが、阻害効果は、Fc-WTハイブリッド(野生型)の方が、GASDIEハイブリッド(突然変異しており、Fcガンママクロファージ受容体に対してより高い親和性を有する)よりもはるかに強い。ヒト血清の存在下で同等の結果が得られ、したがって、後者がIgG以外の食作用阻害因子を含有しないことを示している。
【0129】
実施例18:形質導入されていないNalm6株の存在下における、Fc-ペプチドα621-635ハイブリッドでプレアーム化されたヒトマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+形質導入株の食作用
2H06 Nalm6株の細胞を蛍光色素CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で標識し、次いで、形質導入されていない(NT)Nalm6細胞と1/4の比(4個の形質導入されていない細胞に対して1個の形質導入細胞)で混合した。マクロファージを、37°Cで1g/mlの濃度で1時間インキュベートすることによって、シトルリン化(Cit)形態又は非シトルリン化(Arg)形態のFc-WT-PEG-α621-635又はFc-GASDIE-PEG-α621-635ハイブリッドでプレアーム化した。次いで、2H06 Nalm6細胞及び非形質導入NT Nalm6細胞を識別するために、Nalm6細胞をマクロファージの存在下に37°Cで2時間置いた後、マクロファージを剥離し、全細胞集団をサンプリングし、抗CD19 APC抗体でマークした。次いで、全細胞集団をフローサイトメトリーによって分析した。
【0130】
シトルリン化ハイブリッドの存在下でのACPA+細胞に対する食作用の特異性を確認するために、本発明者らは、2H06 Nalm6標的細胞(ACPA+)及び非形質導入NT Nalm6細胞(ACPA-)を共インキュベートした。図17に示される結果は、膜2H06 ACPAを発現するNalm6細胞(CFSE+CD19+)のみが消失し、マクロファージがシトルリン化形態(Cit)のFc-WT-PEG-α621-635又はFc-GASDIE-PEG-α621-635ハイブリッドで予めアーム化されている場合、マクロファージによって貪食されたことが見出されることを示す。対照的に、NT Nalm6細胞、野生型非形質導入ACPA-(CD 19+CFSE-)の割合は、条件にかかわらず変化せず、誘導された相互作用が実際に特異的であり、ACPAに対するシトルリン化ペプチドの結合に起因することが確認される。1/9の比(9個の非形質導入NT Nalm6細胞に対して1個の2H06 Nalm6細胞)について同じ結果が得られた。
【0131】
実施例19:SCID/BEIGE免疫不全マウスにおけるFc-ペプチドα621-635ハイブリッドの存在下でのヒトNK細胞による2H06 Nalm6 ACPA+株の特異的インビボ破壊
2H06 Nalm6標的細胞上の2H06 ACPAの膜発現を抗Fab抗体で標識することによって確認し、エフェクターヒトNK細胞の溶解活性(ADCC)をインビトロで検証した。2H06 Nalm6標的細胞を高濃度(5μM)でCTV蛍光マーカー(CellTrace Violet)で標識し、非形質導入NT Nalm6細胞を同じマーカーであるが10倍低い濃度(0.5μM)で標識した。したがって、フローサイトメトリーでは、強く標識された細胞(2H06 Nalm6 CTVhigh)を弱く標識された細胞(NT Nalm6 CTVlow)と区別することができる。SCID/BEIGE免疫不全マウスに、マウス腹腔マクロファージのFcRを遮断するために50μgの抗FcR抗体を腹腔内(IP)投与し、次いで、30分後に、新たに調製したヒトNK細胞及びFc-WT-PEG-α621-635ハイブリッド(シトルリン化(cit)又は非シトルリン化(arg))の存在下又は非存在下で、2H06 Nalm6標的細胞及び非形質導入NT Nalm6細胞をIP注射した。
【0132】
以下の細胞及びハイブリッドの組み合わせを腹腔内注射(IP)によって受けた7匹のSCID/BEIGEマウスの4つの群:
-1/ 2.10 Nalm6-2H06標的細胞+2.10 NT Nalm6細胞
-2/ 2.10 Nalm6-2H06標的細胞+2.10 NT Nalm6細胞+2.10 NK細胞
-3/ 2.10 Nalm6-2H06標的細胞+2.10 NT Nalm6細胞+2.10 NK/細胞+3μg/マウスのFc-WT-PEG-α621-635Citハイブリッド
-4/ 2.10 Nalm6-2H06標的細胞+2.10 NT Nalm6細胞+2.10 NK細胞+3μg/マウスのFc-WT-PEG-α621-635Argハイブリッド
【0133】
注射の5時間後、細胞をPBS 2% FCSによる腹膜洗浄によって回収し、次いで、7AAD及びアネキシン(Becton Dickinsonキット)で標識した後、フローサイトメトリーによって分析した。
【0134】
図18に示される結果は、SCID/BEIGE免疫不全マウスの腹膜腔において、Fc-WT-PEG-α621-635CitハイブリッドがNK細胞による2H06 Nalm6標的細胞の完全かつ特異的な破壊を誘導することを示す。実際、2H06 Nalm6細胞に対応するCTVhighピークは、NK細胞及びFc-WT-PEG-α621-635Citハイブリッドの存在下でのみ消失する。
【0135】
この非常に有意な結果(*** p<0.001)は、ACPA標的エピトープを有するFc-シトルリン化ペプチドハイブリッドの存在下でのヒトNK細胞によるACPA+細胞のADCC溶解の有効性及び特異性のインビボ証明を提供する。
【0136】
実施例20:SCID/BEIGE免疫不全マウスにおけるFc-ペプチドα621-635ハイブリッドでプレアーム化されたヒトマクロファージによる2H06 Nalm6 ACPA+株の特異的インビボ破壊
2H06 Nalm6標的細胞上の2H06 ACPAの膜発現を抗Fab抗体で標識することによって確認した。単球の精製は、健常ドナー由来の末梢血を用いて行った。100ng/mlのM-CSFの存在下で単球のマクロファージへの分化を誘導し、このようにして生成されたマクロファージの食作用活性をインビトロで検証した。
【0137】
腹腔内(IP)注射の前に、マクロファージに様々なシトルリン化(cit)又はシトルリン化されていない(arg)Fc-WT-PEG-α621-635ハイブリッドでアーム化し、2H06 Nalm6標的細胞を0.5μMの蛍光マーカーCTV(CellTrace Violet)で標識した:それらが遊離している場合は蛍光が強く(2H06 Nalm6 CTVhigh)、これらの細胞はマクロファージによる食作用後にはるかに弱い蛍光(Nalm6-2H06 CTVlow)を示す。
【0138】
5匹のSCID/BEIGEマウスからなる4つの群に、下記の組み合わせに従って、新鮮なプレアーム化マクロファージの存在下又は非存在下及びFcWT-PEG-α621-635cit又はargハイブリッドの存在下又は非存在下で、IP注射によって標的細胞を与えた:
-1/ 2.10 Nalm6-2H06標的細胞
-2/ 2.10 Nalm6-2H06標的細胞+2.10 非アーム化マクロファージ
-3/ 2.10 Nalm6-2H06標的細胞+2.10 マクロファージ(Fc-WT-PEG-α621-635Citハイブリッドでプレアーム化されている)
-4/ 2.10 Nalm6-2H06標的細胞 2.10 マクロファージ(Fc-WT-PEG-α621-635Argハイブリッドでプレアーム化されている)
【0139】
注射の2時間後、細胞をPBS 5% FCSによる腹膜洗浄によって回収し、穏やかな溶解によって赤血球を除去し、細胞を抗ヒトCD45-FITC抗体、次いで7AAD(Becton Dickinsonキット)で標識した後、フローサイトメトリー分析を行った。
【0140】
図19に示される結果は、SCID/BEIGE免疫不全マウスの腹膜腔において、Fc-WT-PEG-α621-635citハイブリッドを負荷したマクロファージが2H06 Nalm6標的細胞を特異的に貪食し、対照(非シトルリン化Fc-WT-PEG-α621-635argハイブリッド)と比較したそれらの減少が有意である(p<0.05)ことを示す。
【0141】
この結果は、ACPA標的エピトープを有するFc-シトルリン化ペプチドハイブリッドを負荷したヒトマクロファージによるACPA+細胞食作用の有効性及び特異性のインビボ証明を提供する。
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【配列表】
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【国際調査報告】